(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-27
(54)【発明の名称】無線電力共振器の導電性コーティングのためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20241120BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H02J50/12
H01F38/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532458
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 US2022080543
(87)【国際公開番号】W WO2023102368
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517073591
【氏名又は名称】ティーシー1 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、ジョン・フレディ
(72)【発明者】
【氏名】バヴァル、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ハージェス、ダニエル・アイ
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン、ラッセル・ユージーン
(72)【発明者】
【氏名】ユーディス、ジェフ
(57)【要約】
経皮エネルギー伝達システム(TETS)で使用するための共振器が提供される。共振器は、ハウジングと、ハウジング内に配置され、かつ、環状溝を画定する環状側壁及び中央ポストを含む磁気コアとを含む。共振器は、環状溝内に配置され、かつ、中央ポストを取り囲むコイル素子と、共振器の動作中に発生する熱の量の低減を促進する導電性材料でコーティングされた金属物体とをさらに含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮エネルギー伝達システムで使用するための共振器であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置され、かつ、環状溝を画定する環状側壁及び中央ポストを含む磁気コアと、
前記環状溝内に配置され、かつ、前記中央ポストを取り囲むコイル素子と、
前記共振器の動作中に発生する熱の量の低減を促進する導電性材料でコーティングされた金属物体とを含む、共振器。
【請求項2】
請求項1に記載の共振器であって、
前記共振器は、植え込み型受信共振器である、共振器。
【請求項3】
請求項1に記載の共振器であって、
前記導電性材料は、銀、銅、金及び/またはアルミニウムである、共振器。
【請求項4】
請求項1に記載の共振器であって、
前記金属物体は、前記共振器の一側に配置された突出形状を有する金属ヘッダーブロックであり、
前記金属ヘッダーブロックは、前記共振器の残りの部分から反対側を向いた外面を有し、
前記外面は、前記導電性材料でコーティングされている、共振器。
【請求項5】
請求項1に記載の共振器であって、
前記金属物体は、前記共振器の背面を形成する金属ディスクであり、
前記金属ディスクは、前記コイル素子の方を向く内面を有し、
前記内面は、前記導電性材料でコーティングされている、共振器。
【請求項6】
請求項5に記載の共振器であって、
前記金属ディスクを取り囲む金属リングと、
前記金属リングの外径を前記ハウジングに結合し、かつ、前記共振器の動作中に発生する熱の量のさらなる低減を促進する材料で作られているろう材とをさらに含む、共振器。
【請求項7】
請求項6に記載の共振器であって、
前記金属リングの前記外径は、前記導電性材料でコーティングされている、共振器。
【請求項8】
無線電力伝送システムであって、
外部送信共振器と、
植込み型受信共振器と、を備え、
前記植込み型受信共振器は、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置され、かつ、環状溝を画定する環状側壁及び中央ポストを含む磁気コアと、
前記環状溝内に配置され、かつ、前記中央ポストを取り囲むコイル素子と、
前記植込み型受信共振器の動作中に発生する熱の量の低減を促進する導電性材料でコーティングされた金属物体とを含む、無線電力伝送システム。
【請求項9】
請求項8に記載の無線電力伝送システムであって、
前記導電性材料が銀、銅、金及び/またはアルミニウムである、無線電力伝送システム。
【請求項10】
請求項8に記載の無線電力伝送システムであって、
前記金属物体は、前記植込み型受信共振器の片側に配置された突出形状を有する金属ヘッダーブロックであり、
前記金属ヘッダーブロックは、前記植込み型受信共振器の他の部分から離れる方向を向く外面を含み、
前記外面は前記導電性材料でコーティングされている、無線電力伝送システム。
【請求項11】
請求項8に記載の無線電力伝送システムであって、
前記金属物体は、前記植込み型受信共振器の背面を形成する金属ディスクであり、
前記金属ディスクは、前記コイル素子の方を向く内面を含み、
前記内面は、前記導電性材料でコーティングされている、無線電力伝送システム。
【請求項12】
請求項11に記載の無線電力伝送システムであって、
前記植込み型受信共振器は、前記金属ディスクを取り囲む金属リングと、
前記金属リングの外径を前記ハウジングに結合するろう材とをさらに含み、
前記ろう材は、前記植込み型受信共振器の動作中に発生する熱の量をさらに低減することを促進する材料から作製されている、無線電力伝送システム。
【請求項13】
請求項12に記載の無線電力伝送システムであって、
前記金属リングの前記外径が前記導電性材料でコーティングされている、無線電力伝送システム。
【請求項14】
経皮エネルギー伝達システム(TETS)で使用するための共振器を組み立てる方法であって、
環状溝を画定する環状側壁及び中央ポストを含む磁気コアをハウジング内に配置するステップと、
前記環状溝内にコイル素子を配置するステップと、
前記共振器の金属物体を、前記共振器の動作中に発生する熱の量の低減を促進する導電性材料でコーティングするステップとを含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
前記共振器は植込み型受信共振器である、方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であって、
前記金属物体を前記導電性材料でコーティングする前記ステップは、前記金属物体を銀、銅、金及び/またはアルミニウムでコーティングすることを含む、方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法であって、
前記金属物体を前記導電性材料でコーティングする前記ステップは、前記共振器の片側に配置された突出形状を有する金属ヘッダーブロックの表面を前記導電性材料でコーティングすることを含む、方法。
【請求項18】
請求項14に記載の方法であって、
前記金属物体を前記導電性材料でコーティングする前記ステップは、前記共振器の背面を形成する金属ディスクの内面を前記導電性材料でコーティングすることを含む、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、
前記金属ディスクを取り囲む金属リングに前記金属ディスクを結合するステップと、
ろう材を用いて前記金属リングの外径を前記ハウジングに結合するステップとをさらに含み、
前記ろう材は、前記共振器の動作中に発生する熱の量をさらに低減することを促進する材料から作製される、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
前記金属リングの前記外径を前記導電性材料でコーティングするステップをさらに含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年12月1日出願の米国特許仮出願第63/284,780号に基づく優先権を主張するものである。上記出願の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、一般的に、無線電力伝送システムに関し、より詳細には、導電性コーティングを含む無線電力伝送共振器に関する。
【背景技術】
【0003】
VAD(Ventricular assist device)として知られている心室補助装置(補助人工心臓)は、植込み型の血液ポンプであり、一般に心不全またはうっ血性心不全と呼ばれる心臓が十分な循環を提供することができない症状を患っている患者において、短期使用(すなわち、数日または数か月)及び長期使用(すなわち、数年または生涯)の両方で使用される。心不全を患っている患者は、心臓移植を待つ間に、または、長期のDT治療(destination therapy)として、VADを使用することができる。他の例では、患者は、心臓手術後の回復期に、VADを使用することができる。このように、VADは、弱った心臓を補助したり(すなわち、部分的な補助)、本物の心臓の機能を効果的に代替したりすることができる。
【0004】
VADへの電力供給には、無線電力伝送システムを使用することができる。しかしながら、無線電力伝送システムが望ましくない熱を発生させることがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、無線電力伝送システムで使用するための共振器の部品における導電性コーティングに関する。
【0006】
一態様では、経皮エネルギー伝達システム(TETS)で使用するための共振器が提供される。共振器は、ハウジングと、ハウジング内に配置され、かつ、環状溝を画定する環状側壁及び中央ポストを含む磁気コアと、環状溝内に配置され、かつ、中央ポストを取り囲むコイル素子と、共振器の動作中に発生する熱の量の低減を促進する導電性材料でコーティングされた金属物体とを含む。
【0007】
他の態様では、無線電力伝送システムが提供される。無線電力伝送システムは外部送信共振器及び植込み型受信共振器を含み、植込み型受信共振器は、ハウジングと、ハウジング内に配置され、かつ、環状溝を画定する環状側壁及び中央ポストを含む磁気コアと、環状溝内に配置され、かつ、中央ポストを取り囲むコイル素子と、植込み型受信共振器の動作中に発生する熱の量(amount of heat induced)の低減を促進する導電性材料でコーティングされた金属物体とを含む。
【0008】
さらに他の態様では、経皮エネルギー伝送システム(TETS)で使用するための共振器を組み立てる方法が提供される。この方法は、環状溝を画定する環状側壁及び中央ポストを含む磁気コアをハウジング内に配置するステップと、コイル素子を環状溝内に配置するステップと、共振器の金属物体を、共振器の動作中に発生する熱の量の低減を促進する導電性材料でコーティングするステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態における無線電力伝送システムの簡略化された電気回路図である。
【
図2】一実施形態における、
図1に示す無線電力伝送システムを使用することにより、心室補助装置(VAD)に電力を供給する例を示す図である。
【
図3】一実施形態における、
図1に示す無線電力伝送システムを実施するために使用することができる共振器300の一実施形態の前面側から見た斜視図である。
【
図4】一実施形態における、
図1に示すシステムを実施するために使用することができる共振器アセンブリの斜視断面図である。
【
図5】一実施形態における、
図1に示すシステムを実施するために使用することができる共振器の斜視図である。
【
図6A】
図5に示す共振器のサーマルダイアグラムである。
【
図6B】
図5に示す共振器のサーマルダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
前述したように、VADは無線電力伝送システムから電力を受信してもよく、または他の方法により無線電力伝送システムから電力を供給してもよい。ここでは特にVADについて言及しているが、他の植込み型デバイスも無線電力伝送システムによって電力を供給されてもよい。一実施形態では、無線電力伝送システムは、外部送信共振器及び植込み型受信共振器を含む。受信共振器は患者の体内に植込まれるように構成されている。電力伝送システムは、経皮エネルギー伝送システム(TETS)と称されることもある。
【0011】
TETSは、送信コイルが振動磁場を生成し、受信コイルに電圧を発生させることによって動作する。具体例としてコイルを挙げているが、他の構造(例えば、積層及び/または容量結合プレート)を用いて電圧を発生させてもよい。TETSの欠点の1つとして、近傍の金属物体に望ましくない電圧が発生することがある。これらの電圧は、金属物体に電流を流すことにより、意図しない熱を発生させる可能性があるため、好ましくない。例えば、TETSに関連する、またはTETSによって発生する交流電流は、各金属物体またはその他の導体の外層を流れることがある(これは「表皮効果」として知られている)。外層に交流電流が流れると、熱が発生する。
【0012】
上記の問題に対処するために、本願では、TETS内の様々な金属物体を、例えば銀、銅、金、及び/またはアルミニウムなどの高導電性材料によってコーティングすることについて記載している。具体的には銀、銅、金、アルミニウムが挙げられるが、他のコーティング材料が用いられてもよい。金属物体を高導電性の金属でコーティングすると、ミラー電流やイメージ電流によって発生した熱の量を低減または除去することができる。さらに、電流が集中する場所を予測することも可能になるであろう。位置が決まれば、その領域に導電性コーティングを選択的に適用することが可能になる。
【0013】
本明細書で使用する「コート」または「コーティング」という語は、溶融または気化した金属を表面に適用して固化させるコーティング工程で材料が塗布されることを必ずしも意味しない。むしろ、本明細書に記載されるコーティングは、下地となる物体の上または周囲に配置され、その物体を部分的にまたは完全に取り囲むか、またはその物体を部分的にまたは完全に包み込む、固体の薄い金属箔またはストリップまたはバンドを含んでいてもよい。
【0014】
したがって、本開示の実施例では、無線電力伝送共振器における導電性コーティングのためのシステム及び方法について説明する。共振器は、ハウジングと、前記ハウジング内に配置され、かつ、環状溝を画定する環状側壁及び中央ポストを含む磁気コアとを含む。共振器は、環状溝内に配置され、かつ、中央ポストを取り囲むコイル素子と、共振器の動作中に発生する熱の量の低減を促進する導電性材料でコーティングされた金属物体とを含む。
【0015】
次に図面を参照すると、
図1は、例示的な実施形態による無線電力伝送システム100の簡略化された電気回路である。無線電力伝送システム100は、外部送信共振器102と、植込み型受信共振器104とを備える。
図1に示すシステムでは、電源Vs108が送信共振器102に電気的に接続されており、電源Vs108は送信共振器102に電力を供給する。受信共振器104は、負荷106(例えば、植込み型医療機器)に接続されている。受信共振器104及び負荷106は、スイッチングまたは整流デバイス(図示せず)に電気的に接続されてもよい。
【0016】
一実施形態では、送信共振器102は、コンデンサCx114によって電源Vs108に接続されたコイルLx110を含む。また、受信共振器104は、コンデンサCy116によって負荷106に接続されたコイルLy112を含む。コイルLx110(インダクタLx)及びコイルLy112(インダクタLy)は、結合係数kで接続される。Mxyは、コイルLx110及びコイルLy112間の相互インダクタンスである。相互インダクタンスMxyは、結合係数kと下記の式(1)に示すような関係にある。
【0017】
【0018】
動作中、送信共振器102は、電源Vs108から供給された電力を無線送信する。受信共振器104は、送信共振器102から無線送信された電力を受信し、受信した電力を負荷106に供給する。
【0019】
図2は、外部コイル202(例えば、
図1に示す送信共振器102)を使用して、患者200の体内に植込まれた植込み型コイル204(例えば、
図1に示す受信共振器104)に電力を無線送信する例を示す図である。植込み型コイル204は、受信した電力を植込み型装置206に供給する。例えば、植込み型装置206としては、ペースメーカや心臓ポンプ(例えば、左心室補助装置(LVAD))が挙げられる。いくつかの実施形態では、植込み型コイル204及び/または植込み型装置206は、電池を備えてもよいし、または電池207に接続されてもよい。
【0020】
一実施形態では、外部コイル202は、コンピュータ装置210との間で信号を送受信できるように、例えば有線接続または無線接続を介してコンピュータ装置210に通信可能に接続されている。いくつかの実施形態では、コンピュータ装置210は、外部コイル202の電源としての役割も果たす。他の実施形態では、外部コイル202は、別の電源(図示せず)に接続される。コンピュータ装置210は、メモリ装置214と、メモリ装置214に通信可能に接続されたプロセッサ212とを備える。いくつかの実施形態では、コンピュータ実行可能命令がメモリ装置214に格納されている。
【0021】
コンピュータ装置210は、ユーザインターフェース(UI)216をさらに備える。ユーザインターフェース(UI)216は、ユーザ(例えば、患者200)に情報を提示する。ユーザインターフェース(UI)216としては、例えば、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機LED(OLED)ディスプレイ、及び、「電子インク」ディスプレイなどのディスプレイ装置に接続されるディスプレイアダプタ(図示せず)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース(UI)216は、1以上の表示装置を含む。さらに、いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース(UI)216は、プレゼンテーションインターフェースであるか、または、プレゼンテーションインターフェースを含む。プレゼンテーションインターフェースは、視覚的コンテンツを生成せずに、可聴及び/またはコンピュータで生成された音声コンテンツを生成する。例示的な実施形態では、ユーザインターフェース(UI)216は、外部コイル202と植込み型コイル204との間の接続が最適になるように、患者200が外部コイル202を配置するのを支援するよう作成された1以上の表現または画像を表示する。いくつかの実施形態では、コンピュータ装置210は、例えば腕時計型などのウェアラブルデバイスであってもよい。
【0022】
図3は、
図1に示した無線電力伝送システム100を実施するために使用することができる共振器300の一実施形態の前面側から見た斜視図である。共振器300は、例えば、外部送信共振器102(
図1)、植込み型受信共振器104(
図1)、外部コイル202(
図2)、及び/または植込み型コイル204(
図2)を実施するために使用することができる。
【0023】
一実施形態では、共振器300は、コア302と、コイル素子304とを含む。コア302は、前面305と、背面306と、前面305及び背面306間に延びる環状側壁308とを有する。前面305には環状溝310が形成されており、これにより、前面305の中央部分に中央ポスト部312が形成されている。
【0024】
共振器300(コア302及びコイル素子304を含む)は、コンデンサ(例えば、コイル素子304に電気的に接続されたプリント基板上のコンデンサ)に接続されると、無線電力共振器として機能する。しかしながら、当業者であれば、共振器300は、コンデンサに接続されることなく、コイルアセンブリを構成することを理解するであろう。したがって、本明細書で使用するとき、「共振器」という用語は、無線電力共振器を構成するために、コンデンサに接続されることを必要としない。それどころか、本明細書で使用するとき、「共振器」という用語は、
図3に示すように、コンデンサに接続されていないコア及びコイル素子を含むコイルアセンブリを包含するのに十分な広範さを有する。
【0025】
一実施形態では、コア302は、磁性材料から作製される。磁性材料は、例えば、ニッケル系フェライトやマンガン系フェライトなどのフェライト材料であり得る。ニッケル系フェライトは、一般に、電気伝導率が低く、損失が少ない。一方、マンガン系フェライトは、透磁率が高く(損失は許容範囲内)、磁力線の封じ込めを容易にし、近傍の導体(例えば、近くのPCBのチタン製の筐体や銅)に入る漏れ磁場を低減して損失を防止することができる。他の実施形態では、他の種類のフェライト材料を使用してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、マグネシウム系フェライト(例えば、約1メガヘルツ(MHz)の周波数範囲においてニッケル系フェライトやマンガン系フェライトよりも性能が優れているMgCuZn)を使用してもよい。
【0026】
コイル素子304は環状溝310内に配置され、中央ポスト部312を取り囲む。共振器300は、例えば、リッツ線型の共振器または積層板型の共振器であり得る。リッツ線型の共振器では、コイル素子304は、複数のリッツ線のループを含む。積層板型の共振器では、コイル素子304は、複数の誘電体層及び導電層を交互に積層させて構成した積層板を含む。誘電体層は、例えば、セラミック、プラスチック、ガラス、及び/またはマイカ(雲母)から作製され得る。
【0027】
コイル素子304は、例えば、電源(送信共振器として機能する場合)または負荷106(受信共振器として機能する場合)に電気的に接続される。動作時には、送信共振器として動作する共振器300に電力を供給すると、コイル素子304に電流が流れ、これにより、誘導電流ループが形成される。第1の共振器の共振周波数が第2の共振器の共振周波数と重なることを条件にして、この誘導電流ループにより、第1の共振器から第2の共振器に電力を無線伝送することができる。コイル素子304は、コイル素子304を電源または負荷に電気的に接続することを容易にする複数の端子(図示せず)を有し得る。
【0028】
図4は、共振器アセンブリ400の斜視断面図である。共振器アセンブリ400は、
図3に示した共振器300と同様の共振器を備える。共振器アセンブリ400は、送信共振器402と、受信共振器404とを備える。一実施形態では、送信共振器402は、第1のハウジング412(例えば、セラミックハウジング)と、第1のハウジング412内に配置された第1のコイル素子406及び第1のコア410とを含む。同様に、受信共振器404は、第2のハウジング420(例えば、セラミックハウジング)と、第2のハウジング420内に配置された第2のコイル素子414及び第2のコア418とを含む。上述したように、受信共振器404は、一般に、患者の体内に植え込まれ、送信共振器402は、一般に、患者の体外に配置される。送信共振器402及び受信共振器404は、電界効果トランジスタ(FET)、直列インダクタ、及び/または他の電子部品などの、1以上の電子部品(図示せず)をさらに含み得る。
【0029】
一実施形態では、送信共振器402及び受信共振器404の内側またはその上側(表面)に配置された1以上の金属物体が、高導電性材料のコーティングによって覆われている。上述のように、高導電性材料としては、銀、銅、金、アルミニウムなどが挙げられる。具体的には銀、銅、金、アルミニウムが挙げられるが、コーティング材料としては他の材料を用いてもよい。特に、導電率の高い金属(銀、銅、金、アルミニウムなど)は高い導電性を促進する。高導電性金属を用いない例では、金属物体は、コーティングされる金属物体の導電率よりも高い導電率を有する金属によってコーティングされてもよい。
【0030】
送信共振器402及び受信共振器404によって生成される電流は、例示的な実施形態では交流(AC)である。ACは「表皮効果」を引き起こす可能性があり、表皮効果により、ACの一部、大部分、またはすべてが、コーティングされた金属物体の一部またはすべての表面に押しやられたり、表面に近づけられたりする。共振器アセンブリ400のすべての一般的な動作周波数(例えば、250kHz、1MHz、3.3MHz、6.78MHz)では、ある程度表皮効果が発生する可能性がある。いくつかの実施形態では、表皮効果は高周波数においてより顕著になることがある。
【0031】
いくつかの実施形態では、表皮効果の特定の効果及び/またはACが様々な電子部品に集中する可能性がある場所が(例えば、人間のオペレータ及び/またはコンピューティングデバイスによって)予測できる場合がある。例えば、コンピューティングデバイスにより様々なシミュレーション(有限要素法など)を実行して、各電子部品に対する表皮効果の影響を判断する。
【0032】
ACが集中している、または集中する場所の決定及び/または予測が行われたら、金属物体の様々な部分に高導電性コーティング材料を適用してもよい。上述したように、コーティング材料は、銀、銅、金、アルミニウム、及び/または他の適切な材料であってもよい。高伝導性コーティング材料により、これらの場所においてACが集中することによって発生する熱の低減を促進する。
【0033】
いくつかの実施形態では、金属物体の表面全体がコーティングされる。一方、金属物体の一部を選択的にコーティングする方がコスト効率を高めることもある。
【0034】
一般的に、コーティング材料の配置は注意深く監視及び制御する必要がある。例えば、高導電性コーティングを不注意に配置すると、送信共振器402と受信共振器404との間の磁気結合が低下し、無線電力配置の効率が低下する恐れがある。例えば、コーティングされた電子部品をコイルの1つに近接して配置したり、2つのコイル間の領域に配置したりすると、システムの磁気結合機能が低下する可能性がある。
【0035】
図5は、一実施形態に係る植込み型TETS共振器500の斜視図である。
図5は、TETS共振器500に関する熱の情報も示している。植込み型TETS共振器500は、
図3に示して説明した共振器300及び/または
図4に示して説明した受信共振器404と同様であり得る。TETS共振器500は、突出形状を有する金属ヘッダーブロック502を含む。金属ヘッダーブロック502は、TETS共振器500の端部に配置されてもよいし、あるいは、TETS共振器500に結合されてもよい。金属ヘッダーブロック502は、丸みを帯びた側壁を備えた略平面状の上面を含んでいてもよい。一実施形態では、金属ヘッダーブロック502は、TETS共振器500の他の部分の方を向く内面(図示せず)が含んでいてもよい。丸みを帯びた側壁は、TETS共振器50とは反対側を向く外面504の一部であってもよい。
【0036】
図5に示す例では、金属ヘッダーブロック502はチタンを含む。ここではチタンについて説明しているが、他の材料を使用してもよい。本実施形態では、TETS共振器500の動作中において金属ヘッダーブロック502に発生する熱は約0.5Wである。
図5に示すように、TETS共振器500の最高温度は、TETS共振器500の中心506またはその近傍、及び金属ヘッダーブロック502に近接するTETS共振器500の端部508またはその近傍で測定される。金属ヘッダーブロック502の表面(外面504を含む)も、高温となる。
【0037】
図6A及び
図6Bは、植込み型TETS共振器500(
図5に示す)の複数の表面温度602を含む、断面における熱を示す図である。
図6Aにおいて、TETS共振器500はチタン製の金属ヘッダーブロック502を備えており、金属ヘッダーブロック502は導電性コーティングを含まない。一方、
図6Bでは、金属ヘッダーブロック502は、外面504に高導電性材料のコーティングを含む。本実施形態では、導電性コーティングは厚さ約100ミクロン(pm)の銀コーティングである。特に、外面610を導電性コーティングでコーティングすることにより(
図6Aのように)、発生する熱が大幅に減少する。
【0038】
例えば、
図6Aに示す実施形態(コーティングなし)では、ヘッダーブロック502によって発生する熱は約0.5ワット(W)であった。一方、コーティングを含む場合、ヘッダーブロック502によって発生する熱は約0.028Wであり、また、コーティングによって発生する熱は約0.060Wであり、結果として発生する合計熱量は0.088W(0.5Wと比較されたい)となる。追加された導電性コーティングには独自の抵抗損失があるが、導電性コーティングは下層のチタンをシールドし、下層のチタンの抵抗損失を低減する。その結果、TETS共振器600によって発生する熱の量が大幅に減少する。
【0039】
図4を参照すると、この実施形態では、受信共振器404は、送信共振器402とは反対側に、金属ディスク450をさらに含む。金属ディスク450は、例えば、チタンから作製されてもよい。金属ディスク450は、外面452と、内面454(すなわち、第2のコイル素子414側の方を向く面)とを含む。導電性コーティングを使用しない場合、受信共振器404の動作中に、金属ディスク450内に約0.5Wの熱が発生し得る。対照的に、高導電性コーティング(例えば銅)を適用すると、内面454において発生する熱は約0.084Wに減少する。具体的には、金属ディスク450において発生する熱は0.031Wであり、導電性コーティングにおいて発生する熱は0.053Wである。導電性コーティングはヒートスプレッダとして機能し、受信共振器404全体に熱を分散する。さらに、内面454の全体、または一部のみを導電性コーティングによってコーティングしてもよい。
【0040】
図4の実施形態では、受信共振器404は、金属ディスク450の周縁部に当接する金属リング460をさらに含む。金属リング460は、金属ディスク450と同じ金属(例えば、チタン)から作製されてもよい。金属リング460は、金属ディスク450に溶接または他の方法で結合され、金属ディスク450と第2のハウジング420との間の接合部分としての機能を果たす。さらに、金属リング460は、第2のハウジング420にろう付けまたは他の方法で結合される。
【0041】
本実施形態では、金属ディスク450の内面454における導電性コーティングは、金属リング460を磁場から遮蔽することを促進しない。例えば、発生する熱は、金属ディスク450で4.9ミリワット(mW)、導電性コーティングで8.9mW、金属リング460で180mW、金属リング460と第2のハウジング420との間のろう材で75.7mW(その結果、発生する熱の量の合計は約269.5mW)となる。なお、発生する熱の量の合計はいくつかの方法によって低減することが可能である。
【0042】
例えば、ろう付け材料を変更することにより、発生する熱を低減することが可能である。一実施形態では、ろう付け材料は、金、チタン、及び/または他の金属の合金から作製されてもよい。したがって、ろう付け材料は、(例えば、純金といった)他の材料よりも導電率が低くなることがある。ろう付け材料を純金の製造に変更すると、金属リング460がシールドされ、発生する熱による損失が約3分の2減少し、合計熱損失が最大約137.3mWとなる。その一方で、これはろう付け材料の機械的強度に影響を及ぼす恐れがある(ただし、これは植込み型受信共振器404ではあまり重要ではない可能性もある)。
【0043】
他の実施形態では、受信共振器404の内側の側壁(例えば、側壁470)に高導電性コーティング(例えば、銅)を適用してもよい。本実施形態では、コーティングは浅型のカップのような形状を形成することがある。内側の側壁が高ければ高いほど(すなわちコーティングが増えるほど)、熱は減少する。例えば、受信共振器404が高さ4ミリメートル(mm)の銅でコーティングされた側壁を含む場合、発生する熱の合計は約191.9mWになる。一方、本実施形態では、高さ4mmの銅でコーティングされた側壁が、送信共振器402及び受信共振器404の間の結合を妨げる恐れがある。別の実施形態では、高さ2mmの銅でコーティングされた側壁により、送信共振器402及び受信共振器404の間の結合が妨げられることがなくなり、発生する熱の合計は209.9mWとなる。上述した技術は、互いに組み合わせることもできることに注意されたい。例えば、純金ろう付け材料と高さ2mmの銅でコーティングされた側壁とを組み合わせると、発生する熱の合計は約134.7mWとなる。
【0044】
さらに他の態様では、金属リング460の外径に高導電性コーティングを適用してもよい。例えば、金属リング460の外径に銀コーティングを追加し、純金のろう付け材料を使用すると、発生する熱の合計が約89.1mWに減少し、他の実施形態では約20mWに減少する。
【0045】
本開示で説明する実施形態は、無線電力伝送共振器のシステム及び方法に関するものである。共振器は、ハウジングと、ハウジング内に配置され、環状溝を画定する環状側壁及び中央ポストを含む磁気コアとを含む。共振器には、環状溝内に配置され、中央ポストを取り囲むコイル素子と、共振器の動作中に発生する熱の量の低減を促進する導電性材料によってコーティングされた金属物体とをさらに含む。
【0046】
本開示の実施形態及び実施例を、特定の実施形態を参照して説明したが、これらの実施形態及び実施例は、本開示の原理及び適用の単なる例示であることを理解されたい。したがって、特許請求の範囲によって定義される本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態及び実施例に対して様々な変更を加えたり、他の構成を考案したりすることができることを理解されたい。したがって、本出願は、それらの実施形態の改変例や変形例、及びそれらの均等物を包含することを意図している。
【0047】
本明細書は、実施例を用いて、最良の実施の形態(ベストモード)を含む本発明の内容を開示し、かつ、本開示を当業者が実施(任意の装置またはシステムの作製及び使用、並びに組み込まれた任意の方法の実施を含む)することを可能にする。本発明の特許される技術範囲は、特許請求の範囲の請求項の記載によって定義され、当業者が想到可能な別の実施例も包含する。そのような別の実施例は、請求項の文言と相違しない構成要素を含む場合、または、請求項の文言とは実質的に相違しない均等な構成要素を含む場合、その請求項の範囲内に含まれるものとする。
【国際調査報告】