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特表2024-544073柔軟及び小型化コンパクト光センサー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-27
(54)【発明の名称】柔軟及び小型化コンパクト光センサー
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/08 20060101AFI20241120BHJP
   H01L 31/02 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H01L31/08 L
H01L31/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532460
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 US2022080657
(87)【国際公開番号】W WO2023102421
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】63/284,451
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509057590
【氏名又は名称】ジョージア ステート ユニバーシティ リサーチ ファウンデーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レイ、シートン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ニンシン
(72)【発明者】
【氏名】オクミ、アイーシャ
【テーマコード(参考)】
5F149
【Fターム(参考)】
5F149AB01
5F149AB07
5F149AB11
5F149CB06
5F149DA41
5F149DA44
5F149LA01
5F149LA02
5F149LA03
5F149XB24
(57)【要約】
縦型積層型センサーを用いた色及び光感知に関する様々な例を提供する。一例では、縦型色感知素子は、第一感知材料を含むR感知チャンネル層、第二感知材料を含むG感知チャンネル層、及び第三感知材料を含むB感知チャンネル層を備える。第一及び第二厚さを有する第一及び第二透明絶縁層が、それぞれ、R及びG感知チャンネル層間並びにG及びB感知チャンネル層間に存在する。第一及び第二厚さが、縦型色感知デバイスに入るR光、G光及びB光の焦点距離に基づき得る。別の例では、縦型光センサーは、第一感知材料を含む第一感知チャンネル層、透明絶縁層、及び第二感知材料を含む第二感知チャンネル層を備え得る。第一感知材料は、vdW-Sであり得、第二感知材料は異なり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦型色感知素子であって、前記縦型色感知素子は、
第一感知材料を含むR感知チャンネル層と;
前記R感知チャンネル層の面上に配置されている第一透明絶縁層であって、前記第一透明絶縁層は、第一厚さを有する、第一透明絶縁層と;
第二感知材料を含むG感知チャンネル層であって、前記G感知チャンネル層は、前記R感知チャンネル層の反対側の前記第一透明絶縁層の面上に配置されている、G感知チャンネル層と;
前記第一透明絶縁層の反対側の前記G感知チャンネル層の面上に配置されている第二透明絶縁層であって、前記第二透明絶縁層は、第二厚さを有する、第二透明絶縁層と;
第三感知材料を含むB感知チャンネル層であって、前記B感知チャンネル層は、前記G感知チャンネル層の反対側の前記第二透明絶縁層の面上に配置されている、B感知チャンネル層と、
を備える、縦型色感知素子。
【請求項2】
前記第一及び第二厚さは、前記縦型色感知デバイスに入るR光、G光及びB光の焦点距離に基づく、請求項1に記載の縦型色感知素子。
【請求項3】
前記焦点距離は、前記縦型色感知デバイスへ前記R光、G光及びB光を方向付けるレンズと関連している、請求項2に記載の縦型色感知素子。
【請求項4】
前記縦型色感知素子は、前記レンズにより生成される像面湾曲部に一致する形状を有する、請求項3に記載の縦型色感知素子。
【請求項5】
前記縦型色感知素子は、UV感知層又はIR感知層を更に含む、請求項3に記載の縦型色感知素子。
【請求項6】
前記UV感知層は、別の透明絶縁層により前記B感知チャンネル層から分離されている、請求項5に記載の縦型色感知素子。
【請求項7】
前記IR感知層は、別の透明絶縁層により前記R感知チャンネル層から分離されている、請求項5に記載の縦型色感知素子。
【請求項8】
前記第一、第二及び第三感知材料の1又は複数は、ファンデルワールス半導体(vdW-S)である、請求項1に記載の縦型色感知素子。
【請求項9】
前記第一、第二又は第三感知材料の厚さは、この感知材料の感度に基づく、請求項1に記載の縦型色感知素子。
【請求項10】
前記第一感知材料は、セレン化銅インジウム(CIS)を含む、請求項1に記載の縦型色感知素子。
【請求項11】
前記第二感知材料は、セレン化インジウム(InSe)を含む、請求項1に記載の縦型色感知素子。
【請求項12】
前記第三感知材料は、硫化ガリウム(GaS)を含む、請求項1に記載の縦型色感知素子。
【請求項13】
前記第一透明絶縁層は、フッ化マグネシウム(MgF)又は雲母を含む、請求項1に記載の縦型色感知素子。
【請求項14】
前記第二透明絶縁層は、フッ化マグネシウム(MgF)又は雲母を含む、請求項1に記載の縦型色感知素子。
【請求項15】
前記第一、第二及び第三感知材料は、一連のファンデルワールス半導体(vdW-S)を含む、請求項1に記載の縦型色感知素子。
【請求項16】
前記vdW-Sは、GaSe1-x、InGa1-xSe、InGa1-xSeTe、TeSe1-x、GaIn1-xSe、GaSSe1-x、MoSSe1-x、又はMo1-xSeであり、0≦x≦1であり、前記第一、第二及び第三感知材料の各々は、異なる禁制帯に同調されている、請求項15に記載の縦型色感知素子。
【請求項17】
請求項1~請求項16のいずれか一項に記載の縦型色感知素子のアレイを備える縦型感知デバイス。
【請求項18】
前記縦型色感知素子のアレイは、湾曲デバイスホルダー上に形成されている、請求項17に記載の縦型感知デバイス。
【請求項19】
前記湾曲デバイスホルダーの湾曲部は、前記縦型色感知素子のアレイへ光を方向付けるレンズにより生成される像面湾曲部と一致する、請求項18に記載の縦型感知デバイス。
【請求項20】
前記縦型色感知素子のアレイは、柔軟性基材上に形成されている、請求項17に記載の縦型感知デバイス。
【請求項21】
縦型光センサーであって、前記縦型光センサーは、
ファンデルワールス半導体(vdW-S)を含む第一感知材料を含む第一感知チャンネル層と;
前記第一感知チャンネル層の面上に配置されている透明絶縁層であって、前記第一透明絶縁層は、厚さを有する、透明絶縁層と;
第二感知材料を含む第二感知チャンネル層であって、前記第二感知チャンネル層は、前記第一感知チャンネル層の反対側の前記透明絶縁層の面上に配置されている、第二感知チャンネル層と、
を備える、縦型光センサー。
【請求項22】
前記第一感知材料は、第一光応答スペクトル範囲を示し、前記第二感知材料は、前記第一光応答スペクトル範囲と異なる第二光応答スペクトル範囲を示す、請求項21に記載の縦型光センサー。
【請求項23】
前記第二感知チャンネルは、UV感知層又はIR感知層である、請求項21に記載の縦型光センサー。
【請求項24】
前記vdW-Sは、III~VI族半導体、III~V族化合物、又は遷移金属カルコゲニドである、請求項21に記載の縦型光センサー。
【請求項25】
前記第一材料は、第一禁制帯に同調された元素の第一組成物を有するvdW-S合金を含み、前記第二感知材料は、第二禁制帯に同調された元素の第二組成物を有するvdW-S合金を含む、請求項21に記載の縦型光センサー。
【請求項26】
前記vdW-S合金は、GaSe1-x、InGa1-xSe、InGa1-xSeTe、TeSe1-x、GaIn1-xSe、GaSSe1-x、MoSSe1-x、又はMo1-xSeであり、0≦x≦1であり、前記第一及び第二感知材料の各々は、異なる禁制帯に同調されている、請求項25に記載の縦型光センサー。
【請求項27】
前記縦型光センサーは、
前記第一透明絶縁層の反対側の前記第二感知チャンネル層の面上に配置されている第二透明絶縁層であって、前記第二透明絶縁層は、第二厚さを有する、第二透明絶縁層と;
第三感知材料を含む第三感知チャンネル層であって、前記第三感知チャンネル層は、前記第二感知チャンネル層の反対側の前記第二透明絶縁層の面上に配置されている、第三感知チャンネル層と、
を更に備える、請求項21に記載の縦型光センサー。
【請求項28】
前記第一材料は、第一禁制帯に同調された元素の第一組成物を有するvdW-S合金を含み、前記第二感知材料は、第二禁制帯に同調された元素の第二組成物を有するvdW-S合金を含み、前記第三感知材料は、第三禁制帯に同調された元素の第三組成物を有するvdW-S合金を含む、請求項27に記載の縦型光センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、「Flexible and Miniaturized Compact Vertical Color Sensor」と題され、2021年11月30日に出願された同時係属中の米国特許仮出願第63/284,451号の優先権、及び利益を主張し、この開示は、その全体を参照することにより本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
色感知は、病変及び組織の外観検査、血中酸素レベルの測定、環境研究における植物健康モニタリング、並びに医療及び環境サーベイランスにおける多くの他の応用において重要な役割を果たす。色感知の基本原理は、赤、緑、及び青(RGB)成分の部分から入射光色を検出するためのヒト眼の色知覚構造物を模倣する光電子デバイスを構築することである。したがって、各色センサーは、通常、これらの成分の各々に応じて独立して作動する3つのチャンネルからなる。
【発明の概要】
【0003】
本開示の態様は、縦型積層型センサーを用いた色及び光感知に関する。一態様では、とりわけ、縦型色感知素子は、第一感知材料を含むR感知チャンネル層と;前記R感知チャンネル層の面上に配置されている第一透明絶縁層であって、前記第一透明絶縁層は、第一厚さを有する、第一透明絶縁層と;第二感知材料を含むG感知チャンネル層であって、前記G感知チャンネル層は、前記R感知チャンネル層の反対側の前記第一透明絶縁層の面上に配置されている、G感知チャンネル層と;前記第一透明絶縁層の反対側の前記G感知チャンネル層の面上に配置されている第二透明絶縁層であって、前記第二透明絶縁層は、第二厚さを有する、第二透明絶縁層と;第三感知材料を含むB感知チャンネル層であって、前記B感知チャンネル層は、前記G感知チャンネル層の反対側の前記第二透明絶縁層の面上に配置されている、B感知チャンネル層と、を備える。
【0004】
1又は複数の態様では、第一及び第二厚さは、縦型色感知デバイスに入るR光、G光及びB光の焦点距離に基づき得る。焦点距離は、縦型色感知デバイスへR光、G光及びB光を方向付けるレンズと関連し得る。縦型色感知素子は、レンズにより生成される像面湾曲部に一致する形状を有することができる。縦型色感知素子は、UV感知層又はIR感知層を含むことができる。UV感知層を、別の透明絶縁層によりB感知チャンネル層から分離することができる。IR感知層を、別の透明絶縁層によりR感知チャンネル層から分離することができる。第一透明絶縁層は、フッ化マグネシウム(MgF)又は雲母を含むことができる。第二透明絶縁層は、フッ化マグネシウム(MgF)又は雲母を含むことができる。
【0005】
様々な態様では、第一、第二及び第三感知材料の1又は複数は、ファンデルワールス半導体(vdW-S)であり得る。第一、第二又は第三感知材料の厚さは、この感知材料の感度に基づき得る。第一感知材料は、セレン化銅インジウム(CIS)を含むことができる。第二感知材料は、セレン化インジウム(InSe)を含むことができる。第三感知材料は、硫化ガリウム(GaS)を含むことができる。第一、第二及び第三感知材料は、一連のファンデルワールス半導体(vdW-S)を含むことができる。vdW-Sは、GaSe1-x、InGa1-xSe、InGa1-xSeTe、TeSe1-x、GaIn1-xSe、GaSSe1-x、MoSSe1-x、又はMo1-xSeであり、0≦x≦1であり、第一、第二及び第三感知材料の各々は、異なる禁制帯に同調され得る。
【0006】
別の態様では、縦型感知デバイスは、縦型色感知素子のアレイを含むことができる。縦型色感知素子は、上記特徴を備えることができる。縦型色感知素子のアレイを、湾曲デバイスホルダー上に形成することができる。湾曲デバイスホルダーの湾曲部は、縦型色感知素子のアレイへ光を方向付けるレンズにより生成される像面湾曲部と一致し得る。縦型色感知素子のアレイを、柔軟性基材上に形成することができる。
【0007】
別の態様では、縦型光センサーは、ファンデルワールス半導体(vdW-S)を含む第一感知材料を含む第一感知チャンネル層と;前記第一感知チャンネル層の面上に配置されている透明絶縁層であって、前記第一透明絶縁層は、厚さを有する、透明絶縁層と;第二感知材料を含む第二感知チャンネル層であって、前記第二感知チャンネル層は、前記第一感知チャンネル層の反対側の前記透明絶縁層の面上に配置されている、第二感知チャンネル層と、を備えることができる。第一感知材料は、第一光応答スペクトル範囲を示すことができ、第二感知材料は、第一光応答スペクトル範囲と異なる第二光応答スペクトル範囲を示すことができる。第二感知チャンネルは、UV感知層又はIR感知層であり得る。1又は複数の態様では、vdW-Sは、III~VI族半導体、III~V族化合物、又は遷移金属カルコゲニドであり得る。第一材料は、第一禁制帯に同調された元素の第一組成物を有するvdW-S合金を含み、第二感知材料は、第二禁制帯に同調された元素の第二組成物を有するvdW-S合金を含むことができる。vdW-S合金は、GaSe1-x、InGa1-xSe、InGa1-xSeTe、TeSe1-x、GaIn1-xSe、GaSSe1-x、MoSSe1-x、又はMo1-xSeであり、0≦x≦1であり、第一及び第二感知材料の各々は、異なる禁制帯に同調され得る。様々な態様では、縦型光センサーは、第一透明絶縁層の反対側の第二感知チャンネル層の面上に配置されている第二透明絶縁層であって、第二透明絶縁層は、第二厚さを有する、第二透明絶縁層と;第三感知材料を含む第三感知チャンネル層であって、第三感知チャンネル層は、第二感知チャンネル層の反対側の第二透明絶縁層の面上に配置されている、第三感知チャンネル層と、を備えることができる。第一材料は、第一禁制帯に同調された元素の第一組成物を有するvdW-S合金を含むことができ、第二感知材料は、第二禁制帯に同調された元素の第二組成物を有するvdW-S合金を含むことができ、第三感知材料は、第二禁制帯に同調された元素の第三組成物を有するvdW-S合金を含むことができる。
【0008】
本開示の他のシステム、方法、特徴、及び利点は、以下の図面の検査及び詳細な説明により当業者に明らかであるか又は明らかになるだろう。かかる全ての追加のシステム、方法、特徴、及び利点は、本明細書に含まれ、本開示の範囲であり、添付の特許請求の範囲により保護されるものとする。加えて、記載されている実施形態の全ての所望により存在する及び好ましい特徴及び変更は、本明細書に教示されている本開示の全ての態様において使用することができる。更に、独立請求項の個々の特徴、並びに記載されている実施形態の全ての所望により存在する及び好ましい特徴及び変更は、相互に組合せ可能であり、相互に交換可能である。
【0009】
本開示の多くの態様を、以下の図面を参照してよりよく理解することができる。図面中の構成要素は、必ずしも縮尺通りではなく、その代わりに、本開示の原理を明白に例示することに重点が置かれている。更に、図面では、いくつかの表示全体を通して、同様の参照番号は、対応するパーツを指定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、ベイヤー式カラーフィルターで被覆された従来の横型画素マトリックスの例を示し、R感知チャンネル、G感知チャンネル、及びB感知チャンネルを定義する。
【0011】
図1B図1Bは、本開示の様々な実施形態による、それぞれ、Rチャンネル、Gチャンネル、及びBチャンネルとして機能するCIS層、InSe層、及びGaS層からなるvdW-Sベースの縦型色センサーの実施例を例示する概略図である。
【0012】
図1C図1Cは、本開示の様々な実施形態による、色感知原理を例示する。
図1D図1Dは、本開示の様々な実施形態による、色感知原理を例示する。
図1E図1Eは、本開示の様々な実施形態による、色感知原理を例示する。
【0013】
図2A図2Aは、本開示の様々な実施形態による、B感知チャンネルとして機能することができるGaSの大きい禁制帯を例示する。
【0014】
図2B図2Bは、本開示の様々な実施形態による、G感知チャンネルとして機能することができるInSeの価電子帯及び禁制帯を例示する。
【0015】
図2C図2Cは、本開示の様々な実施形態による、R感知チャンネルとして機能することができるCISの光応答スペクトル及び禁制帯を例示する。
【0016】
図2D図2Dは、本開示の様々な実施形態による、色センサーデバイス製造の実施例を例示する。
【0017】
図2E図2Eは、本開示の様々な実施形態による、感知チャンネルの正規化された光応答性(P.R.)スペクトル及び光電流-光強度曲線の実施例を示す。
図2F図2Fは、本開示の様々な実施形態による、感知チャンネルの正規化された光応答性(P.R.)スペクトル及び光電流-光強度曲線の実施例を示す。
【0018】
図2G図2Gは、本開示の様々な実施形態による、RGB感知チャンネルの光電流及び暗電流曲線の実施例を例示する。
図2H図2Hは、本開示の様々な実施形態による、RGB感知チャンネルの光電流及び暗電流曲線の実施例を例示する。
図2I図2Iは、本開示の様々な実施形態による、RGB感知チャンネルの光電流及び暗電流曲線の実施例を例示する。
【0019】
図3A図3Aは、本開示の様々な実施形態による、色温度測定のための実験セットアップの実施例を例示する。
【0020】
図3B図3Bは、本開示の様々な実施形態による、RGB感知チャンネルにより感知された生の値及び補正された三刺激値の実施例を例示する。
【0021】
図3C図3Cは、本開示の様々な実施形態による、実験的に測定された色温度に対する色座標及び発光スペクトルを例示するCIEカラースペクトルチャートである。
図3D図3Dは、本開示の様々な実施形態による、実験的に測定された色温度に対する色座標及び発光スペクトルを例示するCIEカラースペクトルチャートである。
【0022】
図4A図4Aは、本開示の様々な実施形態による、3画素色センサーの実施例を示す回路図である。
【0023】
図4B図4Bは、本開示の様々な実施形態による、色センサーデバイス製造の実施例を例示する。
【0024】
図4C図4Cは、本開示の様々な実施形態による、3画素vdW-Sをベースとする縦型色の偽色走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【0025】
図4D図4Dは、本開示の様々な実施形態による、空間分解光強度マッピング及び色感知のための実験的構成の光学像である。
【0026】
図4E図4Eは、本開示の様々な実施形態による、光強度分布の検出の実施例を例示する。
【0027】
図4F図4Fは、本開示の様々な実施形態による、3画素色センサーアレイによるRGB光色認識検査の実施例を示す。
【0028】
図4G図4Gは、本開示の様々な実施形態による、色収差補正のためのvdW-Sベースの縦型色センサーの設計原理及び製造された縦型色センサーの横断面のSEM画像を例示する。
図4H図4Hは、本開示の様々な実施形態による、色収差補正のためのvdW-Sベースの縦型色センサーの設計原理及び製造された縦型色センサーの横断面のSEM画像を例示する。
【0029】
図4I図4Iは、本開示の様々な実施形態による、湾曲デバイスホルダー上に形成された凹形デバイスホルダー及び色センサーを示す画像である。
図4J図4Jは、本開示の様々な実施形態による、湾曲デバイスホルダー上に形成された凹形デバイスホルダー及び色センサーを示す画像である。
【0030】
図5A図5Aは、本開示の様々な実施形態による、補正前後のCISの光応答性スペクトルの実施例を例示する。
図5B図5Bは、本開示の様々な実施形態による、補正前後のCISの光応答性スペクトルの実施例を例示する。
図5C図5Cは、本開示の様々な実施形態による、補正前後のCISの光応答性スペクトルの実施例を例示する。
【0031】
図6A図6Aは、本開示の様々な実施形態による、CISの厚さ依存性光応答性スペクトルの実施例を例示する。
図6B図6Bは、本開示の様々な実施形態による、CISの厚さ依存性光応答性スペクトルの実施例を例示する。
【0032】
図7A図7Aは、本開示の様々な実施形態による、CIS(Rチャンネル)、InSe(Gチャンネル)、及びGaS(Bチャンネル)の厚さプロファイルの実施例を例示する。
図7B図7Bは、本開示の様々な実施形態による、CIS(Rチャンネル)、InSe(Gチャンネル)、及びGaS(Bチャンネル)の厚さプロファイルの実施例を例示する。
図7C図7Cは、本開示の様々な実施形態による、CIS(Rチャンネル)、InSe(Gチャンネル)、及びGaS(Bチャンネル)の厚さプロファイルの実施例を例示する。
【0033】
図8図8は、本開示の様々な実施形態による、色マッチング関数のグラフの実施例を例示する。
【0034】
図9A図9Aは、本開示の様々な実施形態による、様々な禁制帯を有する一連のvdW-S合金を含む層を含む単画素分光計の実施例を例示する。
図9B図9Bは、本開示の様々な実施形態による、様々な禁制帯を有する一連のvdW-S合金を含む層を含む単画素分光計の実施例を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
縦型積層型センサーを用いた色及び光感知に関する様々な例を、本明細書において提供する。画像センサーは、透明半導体薄膜の多層を含む縦型色感知アーキテクチャーを含むことができる。前記薄膜は、ファンデルワールス半導体、ペロブスカイト膜、有機半導体薄膜等を含むことができるが、これらに限定されない。可視画像キャプチャーの例として、かかる半導体薄膜の3層を、それぞれ、赤色光、緑色光及び青色光を感知するために縦型に積層することができる。隣接する半導体層を、透明絶縁材を用いて分離する。追加の半導体層及び絶縁層を加えることにより、感知スペクトル範囲は更に広がり赤外及び/又は紫外範囲を含むことができる。いくつかの実施形態では、センサーを、交互に重なる感知層を用いて単色イメージングのために構成することができる。ここで、図面中に例示されている実施形態の記載を詳細に参照し、いくつかの表示全体を通して、同様の参照番号が同様のパーツを示す。
【0036】
従来の半導体の入手可能性及び一般的な平面デバイス製造技術により限定されるが、赤色、緑色、及び青色(RGB)チャンネルは、通常、色成分分離のため上部にカラーフィルターを有する同じ光検出器の横型アレイから構築される。横型センサーのこの分類の一例は、ベイヤー式カラーフィルターで被覆されたシリコン光検出アレイである。図1Aは、ベイヤー式カラーフィルターで被覆された従来の横型画素マトリックスの例を示し、R感知チャンネル、G感知チャンネル、及びB感知チャンネルを定義する。その広い及び成熟した応用にもかかわらず、ベイヤー式センサーは、協同して色認識機能を達成するための4以上の隣同士の検出器(Gチャンネル用2つ)を必要とし、したがって、余分な物理的スペースを占める。このことは、デバイスの小型化、詳細には、何百万ものこれらの構造物が画像センサー、すなわち、カメラのケンネルに集積される場合、デバイスの小型化にとって大きな障害となる。この問題に取り組むため、フォビオンセンサーは、シリコンにおける波長依存性のある光の侵入深さを利用する縦型色感知構成を用いて開発された。それにもかかわらず、そのRGBチャンネルは、光応答スペクトルにおける著しい重複を有し、フォビオンセンサーは、色成分の識別においてベイヤー式構造物より精度が低くなる。
【0037】
ファンデルワールス半導体(vdW-S)の開発及び積層技術は、新規ハードウェアアーキテクチャーを鼓舞することにより上記ジレンマを克服するための代替アプローチを示す。従来の半導体と比較して、vdW-Sは、豊富な選択肢及び同調広帯域構造を示し、それ自体、追加のカラーフィルターを必要とすることなく、それぞれ、R光、G光、及びB光を検出するための最適な材料の使用を可能とする。使用することができる他の材料は、例えば、ペロブスカイト膜、有機半導体薄膜等を含む。更に、継続的に改良される積層技術は、従来の半導体ヘテロ構造、例えば、格子不整合において遭遇する課題について心配することなく複雑な縦型光電子アーキテクチャーの製造を可能とする。
【0038】
これらの固有の利益を考慮して、新規縦型及びコンパクト色センサーを開示している。図1Bの実施例において例証されているように、Rチャンネル、Gチャンネル、及びBチャンネルとして機能するための層状感知材料(例えば、CuInSe11、InSe、及びGaS)の積層により、センサーを強化することができる。図1Bの光学的画像は、感知デバイスの製造において使用される生vdW-S結晶を示す。製造されたままのセンサーは、色感知における高精度、並びにコンパクトなデバイス体積を示す。色感知機能は、精巧な材料選択及び正確なエネルギー帯域構造操作によるvdW-Sオプトエレクトロニクスにおいて実装されてきた。新しく開発されたセンサーのこの型の拡張性を有する統合は、生物学的、医療、及び環境応用のためのマイクロロボティクスに適合した小型化画像キャプチャーデバイス及びカメラを届けることができる可能性がある。拡張性を有する製造の可能性を示すため、色収差補正の機能を有する3画素縦型色センサーも構築され、次に、光学レンズの設計を簡素化し、カメラの小型化を加速することができる。
【0039】
積層vdW-S色センサーを実装するため、適切な候補は、国際照明委員会(CIE)により導入された色感知原理に従って豊富な材料データベースから先ず選択される。感知材料は、vdW-S化合物及び所望の光反応スペクトル範囲をカバーするこれらの合金を含むことができる。例えば、感知材料は、III~VI族半導体(例えば、InTe、InSe、GaSe、GaS、GaTe、InCuSe、及びこれらの合金、例えば、InTeSe1-x、GaIn1-xSe、GaSSe1-x等の形態)、III~V族vdW-S化合物(例えば、窒化ホウ素(BN)、窒化ホウ素炭素(CBN)等)、又は遷移金属カルコゲニド(例えば、MoS、MoSe、MoTe、WS、WSe、WTe、NbSe、TiS等、及び、MoSSe1-x、Mo1-xSe等のこれらの合金)を含むことができる。感知材料は、有機半導体薄膜又は有機ペロブスカイト薄膜を含むこともできる。図1C~1Eは、色感知原理を例示する。基本的に、色センサーは、R光、G光、及びB光範囲に位置するこれらのそれぞれの最大光応答を有し、それと同時に、図1Cに例示されているように合理的なスペクトル重複を示す3チャンネルを備える。この構成では、全ての感知チャンネルは、入射光に対して応答し、対応する応答(例えば、光電流)を生じ、この比率は、色の測定であるということが分かる。対照的に、過剰又は不十分な重複のいずれかの極端なシナリオは、RGBチャンネルが、このような場合、図1D及び1Eに説明されているように光色の変化を効果的に識別することができないので、色認識エラーをもたらすだろう。図1Cに示されているような合理的なスペクトル重複は、RGBチャンネルアウトプットの比率に基づいて色認識を可能とするが、図1Dに示されているような過剰な重複又は図1Eに示されているような不十分な重複は、識別できないアウトプットをもたらし、結果として色感知エラーをもたらす。
【0040】
小さい禁制帯はR光、G光、及びB光に対して同等に感受性にするので、過剰な重複は、実際、シリコンベースのフォビオンセンサーの1つの主要な問題である。他方では、波長依存性である侵入深さは、とにかく、これらの成分を効果的に分離することができない。vdW-S、特に、そのより小さい禁制帯が強力なG光及びB光応答をもたらし、その結果、過剰な重複をもたらすかも知れないR感知材料において、同様な課題が存在する可能性もある。G感知材料は、同様な懸念をもたらし得る。したがって、vdW-S色センサーの実現化への最初の工程は、R範囲、G範囲、及びB範囲に主に分布しているが、合理的重複を更に有する比較的狭い光応答スペクトルを有する材料候補を特定することである。
【0041】
追加の半導体層及び絶縁層を加えることにより、感知スペクトル範囲は更に広がり赤外(IR)及び/又は紫外(UV)感知を含むことができる。UV感知層を、最上部感知層(例えば、UVは可視青色範囲より短波長であるので、B感知層上に配置されている)として形成することができ、IR感知層は、最下部感知層(例えば、IR波長は可視赤色より長いので、R感知層下に配置されている)であり得る。例えば、デバイスは、(底部から上部へ)IR感知層、R感知層、G感知層、B感知層、及びUV感知層を備えることができる。感知層間では、透明絶縁層を形成して短絡及び干渉を避けることができる。UV/IR光に対する光応答を示す材料を、例えば、同調可能な禁制帯により、UV感知のための窒化ホウ素又はIR感知のためのCuInSeを含むUV又はIR感知のために使用することができる。
【実施例
【0042】
Bチャンネルのため、GaS(約25nm厚さ)を、図2Aに例示されているように、その比較的大きい(又は広い)禁制帯が理由で選択された。一方、数層のInSeが、スペクトル重複に対して見事な解決策を届けるその固有及び魅力的な帯域が理由でG感知材料として使用された。InSeは、厚さの減少と共に直接から間接帯域構造遷移を示すIII~VI族層状材料に属する。詳細には、研究は、数層のInSeが、図2Bに例示されているように、セレンアニオンのp軌道から主になる価電子帯を含む間接禁制帯を有することを示した。InSeは、これらの対称性により分類することができるp軌道及びpxy軌道からなるその価電子帯(VB)を有する。p軌道は、伝導帯(CB)と同面内パリティを共有する。これらのp軌道は、数層のInSeの禁制帯を主に決定するが、これらから伝導帯(インジウムカチオンのs軌道)へのバンド間双極性遷移は、デバイスにおいて使用された図2Bに示されているように、正常光射構成(面内偏光)において禁制される。これは、Se p軌道及びIn s軌道が、水平偏波を用いた双極性励起を無効にする同面内パリティ対称性(P対称性)を共有するからである。この効果的でないバンド間遷移は、図2Eに例示されているように、R光にまで及ぶ長いスペクトルテールを生じる。他方、pxy帯域の非常にフラットな分散は、状態密度(DoS)における特異点を引き起こし、G光に対する最も強いその光応答を生じるが、B光に対して効果的でない。
【0043】
G感知及びB感知チャンネルと比較して、R感知vdW-Sに関する研究は、上記の繊細な帯域構造だがより狭い禁制帯を有する帯域構造を再現するIII~VI属材料を特定するための挑戦であるということが分かった。他方、強いR光励起を有するMoSなどのvdW-Sの他の群は、通常、B領域及びG領域において広い光応答を有し、過剰なスペクトル重複の前述の問題を繰り返す。幸運なことに、層状CIS、新たに出現した三元vdW-Sが、600~700nmの範囲内により強力な光応答並びにG領域及びB領域に厚さ制御可能な感度を有し、理想的なR感知候補にすることが発見された。所望のデバイス製造パラメータを見出すため、様々な厚さを有する一連のCISサンプルを、バルク結晶(図1Bに示す)から機械的に剥離し、図2C(左パネル203)に示されているように、これらの光応答スペクトル(P.R.)を収集した。スペクトルを、
R(λ)=[Ilight(λ)-Idark(λ)]/P(λ)
の式を用いて算出し、式中、Ilight及びIdarkは、1Vバイアス電圧を用いて測定された光電流及び暗電流である。P(λ)は、入射光を示す。
【0044】
図2Cは、この試験中に使用された30nm厚デバイスの光学及びAFM画像(206)も示す。プロファイル測定を、AFMマッピング画像(206)中の実線に沿って行った。これらの測定から、G領域及びB領域における光電流レベルは、CISがより薄くなると共に減少するが、R光領域(600~700nm)は、強力なままであるという興味深い現象が現れる。この異常な挙動は、材料がより薄くなると共に光応答ピークの青色シフトを経験する前述のIII~VI族材料及び遷移金属ジカルコゲニド(TMDC)を含む他のvdW-SからCISを識別する。電流実験観察は、図2Cに例示されているように、電子構造変化の概要を提供する。右パネル209は、CISの推測されるエネルギーバンド構造を示す。サンプルがより薄くなると共に、VBはより低いDoSを有するが、表面状態のDoSは、厚さに著しく依存し、R光に対する支配的な光応答を得る。R光及びG/B光応答は、CISにおける2つの異なる光励起及び遷移に由来する。サンプル厚さが減少すると、G/B光励起に対応するDoSは、R励起より急速に低下し、したがって、上記スペクトル観察を提供する。更に、R光励起は、そのDoSがサンプル厚さに有意に依存しないCIS格子面上の表面状態に由来する可能性はあるが、G/B光励起は、より薄いサンプルにおけるDoS低下と共にエネルギーバンド間の遷移に由来する。現在の実験結果に基づいて、対応する支配的R光応答並びにB領域への合理的拡張が理由で、10nmのCIS厚さが選択される。
【0045】
一旦、材料候補が決定されたら、これらのvdW-Sにより強化されたプロトタイプ積層色センサーの製造を進めることができる。図2Dは、デバイス製造ワークフローの実施例を例示する。この目的を達成するために、機械的剥離方法を使用して、図1Bに示されているバルク結晶から適切な厚さを有するこれらのvdW-Sを単離し、これらをドライ転写して、図2Dに例示されているボトムアップ方式でプロトタイプ縦型色センサーを構築することができる。積層構造物全体の底部に、Rチャンネル層(例えば、10nmのCIS層)を、例えば、直接レーザー描画システム又は他の適切な方法によりパターン化された電極(215)を用いてR感知チャンネルとして機能するように形成する(212)。次いで、第一絶縁層を、例えば、MgF若しくは雲母などの誘電体材料又は、例えば、GaF、SiO、ポリマー薄膜等の他の絶縁材を成膜又は転写のいずれかによりRチャンネル層及び電極(218)上に導入する。第一絶縁層上、同じ手順を反復して、G感知チャンネルとしてGチャンネル層(218)(例えば、13nm InSeから作製)及びパターン化された電極(221)を創設する。次いで、第二絶縁層を、Gチャンネル層及び電極上に形成し(224)、次いで、B感知チャンネルとしてBチャンネル層(224)(例えば、25nm GaS層を用いて製造)を形成し、電極(227)をパターン化する。電極は、透明電極(例えば、金属酸化インジウムスズ)であり得る。図2Dは、積層方法の光学画像及び得られたプロトタイプデバイスも含む。これらのスケールは、各画像中の白色実線により示されているように5μmである。いくつかの実装では、積層構造物は、Bチャンネル層上に形成された第三絶縁層を備えることができ、次いで、UV感知チャンネルを形成(及び電極のパターン化)する。場合によっては、積層構造物は、底部にIR感知チャンネル(及び電極)を備え、上にRチャンネル層を形成することができるIR感知チャンネル上に最初の絶縁層を備えることができる。
【0046】
製造を成功した後、デバイスの機能検証を行った。より早く導入されるとき、新しく設計された色センサーの基本原理は、各感知層上でRGB光成分を個々に検出し、vdW-S及びこれらの広く同調可能なエネルギーバンド構造物の豊富な選択を利用することである。成功したプロトタイプ製造の実証として、図2Eは、
R(λ)=[Ilight(λ)-Idark(λ)]/P(λ)
の式を用い、それぞれ、50.0、1.0、及び53.4の因子を乗算することにより算出されたこれらのRGBチャンネル(1Vのバイアス電圧)の正規化された光応答スペクトル(P.R.)を示す。こうすることにより、スペクトル曲線の各々により囲まれた領域は、フラットなスペクトルを有する白色光があらゆるチャンネルから同じ応答レベルを与えるように等しくされる。(すなわち、とりわけ、比率は、1:1:1である)。この手順は、ホワイトバランス(WB)補正として知られており、正確な色感知に向けて重要な工程である。
【0047】
参照として、スペクトルチャートは、光応答曲線の下に挿入され、製造されたプロトタイプにおける各感知層が、R光を第一に検出するCIS;G色に対して主に応答するInSe;及びB領域において作動するGaSを用いて設計された機能を上手く発揮することを明白に実証する。より重要なことに、合理的重複は、正確な色認識を約束するために基本的色感知原理により必要とされる場合、これらのそれぞれの最大値に沿って存在する。CISの大きい倍率は、図2Dに示されているように、剥離で得られる比較的小さいサンプル領域に起因し得るが、GaSの大きい因子は、高い電極接触抵抗に起因し得、これはGaNなどの広い禁制帯半導体についての共通の課題である。
【0048】
スペクトル感応性に加えて、色感知のための別の必要条件は、各感知チャンネルにおける入射光パワーに対する光電流の線形依存性である。理由は、色測定が、代わりに光輝度を表すこれらの絶対値以外のこれらのチャンネルからの光電流の読み間の比率に依存することである。したがって、各チャンネルにおける優れた線形性は、強度に依存しない正確な色測定を保証することができる。さもなければ、検出された光色は、強度が変化すると色ずれし得る。プロトタイプデバイスの線形性を評価するため、GaS、InSe、及びCIS層の光電流-発電(I-P)依存性を、調整可能な輝度を有する458nm、514nm、及び647nmレーザーを光らせることによりそれぞれ測定した。図2Fは、1Vのバイアス電圧で測定された各感知チャンネルの光電流-光強度曲線を示す。CIS、InSe及びGaS層の曲線を、それぞれ、50.0、1.0、及び53.4のスペクトル正規化因子で乗算する。
【0049】
図2Fは、デバイスにおける全ての感知チャンネルが、線形I-P挙動を有し、色感知必要条件を満足することを明らかにしている。感知チャンネルCIS、InSe及びGaSの暗電流及び光電流I-V曲線も、それぞれ、図2G~2Iに示されているように試験した。GaS層、InSe層、及びCIS層を、17.5mW/cmの強度で、それぞれ、458nm、514nm、及び647nmで励起した。非常に低く一定の暗電流が全ての感知チャンネルにおいて確認された。一方、全ての光電流は、より高いバイアス電圧と共に増加し、飽和しない合理的範囲におけるより高い電圧を示唆するが、感知層は、これらの感度及び検出能を増強することができる。挿入物は、暗電流に関する詳細なデータを示す。
【0050】
上記光電子特性評価、詳細には、光電流スペクトル及びI-P測定は、色感知能力のその後の検査を準備する。例として、センサーを使用して、色温度をプローブし、色温度は、冶金のプロセス制御、星の活動モニタリングなど多数のもの、多くの応用に使用されるパラメータである。実験では、センサーを、ハロゲンランプで照射した。図3Aは、色温度測定実験に使用された実験セットアップを例示する。様々な電力設定306を有するハロゲンランプ303を使用して、異なる色温度を有する白色光を生成した。vdW-Sベースの縦型色センサー309をランプの近くに配置し、スイッチボックス315によりソースメータユニット312に接続して、それぞれの感知チャンネルからの光電流を読み取った。ランプ電力を調整することにより、白熱するタングステンワイヤはほぼ黒体放射体であるので、測定される色温度にほぼ等しいフィラメント温度に調節することができる。プロトタイプデバイス309により測定される色を、(R、G、B)の形式、すなわち、図3Bの上側の表に列挙されているように、各感知層から読み取る光電流で表すことができる。上側の表は、4つの異なる電力設定点(S1~S4)下、本発明者らのデバイスにより感知されたRGB生の値を列挙している。
【0051】
他の色センサーと同様に、これらの値は、物理的特性、詳細にはデバイスの光応答スペクトルに依存する。したがって、(R、G、B)の生の色値を、データ交換及び処理のため標準化及びデバイスに依存する形式への変換を必要とする。CIE 1931 XYZ色空間は、この目的のための最も広く受け入れられている色表現システムの1つである。CIEシステムにおいて標準値を得るため、生の色座標を、(X、Y、Z)のCIE色値に先ず投影することができ、前記CIE色値は、
【数1】

により与えられる。ここで、Mは、色補正マトリクス(CCM)と呼ばれる3×3行列であり、その決定は、ホワイトバランス補正、色空間変換等を含むいくつかの工程を含み、各工程は、MWB、MCT等として示されるその対応する補正行列を有する。得られたCCMはM=MCT×MWBとして表すことができる。プロトタイプセンサーの光応答スペクトルは異なるR、G、及びBピーク及び標準的三刺激曲線と同様な適切なスペクトル重複を有するので、MCTが同じ行列であり、その結果、Mは約MWBと仮定してもよい。製造されたセンサーの一例について、CCMを、MWB
【数2】

により近似してもよい。
これらの行列の要素は、図2E中のCIS、InSe、及びGaSスペクトル面積と等しくする正規化パラメータであり、色補正マトリクスを用いて補正された三刺激値を生成する。したがって、図3Bの下側の表は、4電力設定点(S1~S4)のXYZ計算値を示す。これは一次近似であるが、色を感知する合理的精度を有するプロトタイプセンサーを得る。
【0052】
更に、三次元(X、Y、Z)表現を、
a=X/(X+Y+Z) (3)
b=Y/(X+Y+Z) (4)
の式の使用により二次元に簡素化することができ、これらの絶対値の代わりに座標中の比のみが光色を表すので、絶対光強度を無視する。これらの(a、b)の値は、図3Cに示されている二次元CIE1931色空間における色座標と定義される。4電力設定点の座標は、図3C中の白色点として分類され、2500K、2750K、3000K、及び3400Kの対応する色温度を示す。十字は、647nm、514nm、及び458nmにおけるレーザーラインの色座標測定値を示す。
【0053】
精度を検査するため、2650K、2830K、2960K、及び3250Kの色温度を、黒体放射曲線を用いてこれらの設定点の発光スペクトルをフィッティングすることによっても決定した。図3Dは、4電力設定点を有するハロゲンランプの発光スペクトル及び黒体放射曲線(破線321)を用いたスペクトルフィッティングにより得られた色温度を示す。シリコン光検出器をスペクトル収集に使用したので、UV~可視光範囲(400~800nm)のスペクトルのみをフィッティングのために採用した。比較により、データセット間の密接な一致を、上記2方法から5.0%以内の誤差で得て、デバイスアーキテクチャーの実践的な実現可能性及び測定精度を確認した。更に、図3BにおけるRGB値及び図3Dにおけるスペクトルに示されているように、より高電力と共にハロゲンランプ輝度が増加することに留意すべきである。それにもかかわらず、色温度測定は、先に紹介したように、絶対光強度の効果を排除する優れた線形I-P関係性のおかげでこの変化による影響を受けなかった。
【0054】
同様の手順に従って、647nm、514nm、及び458nmのレーザーラインの色座標を、図3Cに示されているように測定した。測定及び予想される座標間にいくつかの偏差が存在するが、センサーは、これらの色も上手く識別することがわかった。これは、この方法におけるWB補正を含むことのみに起因するかも知れないが、MCTの導入は、より正確な測定を得ることができる。しかし、MCTの補正は、本開示における基本原理及び実践的応用の可能性を実証することにより焦点を超えた精巧だが確立された手順を利用する。
【0055】
色認識のためのスタンドアロンユニットとして作動するのに加えて、本開示のアーキテクチャーを、カメラにおける画像センサーとして機能するアレイ又はマトリクスに統合することもできる。そのコンパクト設計及び優れた光電子性能は、マイクロロボット技術の傾向に特に従った生物学的及び環境応用のための画像センサー及びカメラの小型化へ向かう新たな経路を開く。したがって、シングルユニットプロトタイプで満足するのではなく、先行する画像センサーにおいてめったに達成されていない色収差補正構成を含む、拡張可能な製造の可能性の探査を継続した。この目的を達成するために、3画素色センサーを、図4Aに示されている回路図を用いて設計した。色センサーは、図4Aに示されているように2電極を有するこれらの各1つを含む合計9つの光検出器を備える。
【0056】
異なる画素の「上部」電極は接続させたが、同じチャンネルは互いに接続させてチャンネル選択(CS)端子を得た。同画素における全ての3「下部」電極をまとめて、画素選択(PS)端子を形成する。このように、各チャンネル及び各画素を、各CS及びPS端子の任意の組合せにより個別に制御することができる。図4Bは、図2Dに関して紹介された同様な転写及び積層手順を用いて3画素センサーアレイの構築のためのワークフローを例示する。403において、Rチャンネル感知層(例えば、10nmのCIS層)を形成し、電極をパターン化する。次に、406において、第一絶縁層(例えば、MgF若しくは雲母、又は、例えば、GaF、SiO、ポリマー薄膜等の他の絶縁材)を、R感知チャンネル及び電極上に成膜し、Gチャンネル感知層(例えば、13nmのInSe層)を第一絶縁層及びパターン化された電極上に形成する。409において、第二絶縁層を、Gチャンネル感知層及び電極上に形成し、次いで、Bチャンネル感知層(例えば、25nmのGaS層)を形成し、電極をパターン化する。絶縁層(MgF薄膜、雲母、又は、GaF、SiO、ポリマー薄膜等の他の絶縁材)を、熱蒸着法中に制御される厚さを有する隣接する感知チャンネル間に熱蒸着することができる。これらの工程に続いて、モノシリック構造を、例えば、412において集束イオンビーム(FIB)により独立した3画素に切断し、図4Cに示されているその偽色走査電子顕微鏡(SEM)画像を有する設計されたままの3画素色センサーアレイを届けることができる。
【0057】
製造後、光強度分布の空間解像度及び色認識を含む2デバイス機能性試験を、デバイスで行った。空間解像度試験を、プローブステーション及び20μmの径を有する光ファイバーによりデバイスに近接して結合された入射光で行った。光ファイバーは、画素に対して同様な大きさを有し、その位置を、個々の画素が主に照射されることを可能とするマイクロマニピュレータにより制御した。図4Dは、検査中のデバイス、電気プローブ、及び光ファイバーを含む空間分解光強度マッピング及び色感知のために構成された実験セットアップの光学顕微鏡画像を示す。電気プローブを、CS及びPS端子によりセンサーアレイと接続する。そして、20μm光ファイバーは、アレイ中の画素を選択的に照射することができる。写真中の白く光る点は、サンプルの面積を照射するファイバーチップにより投影された光である。アレイを横切る光ファイバーの位置を動かすことにより、光電流マッピング(Gチャンネルから)を得た。
【0058】
図4Eは、検出された光強度分布の一実施例を例示する。3画素アレイを、上パネルに示されている2つの光ファイバーアライメント構成(C1及びC2)を用いて照射した。下パネルは、グレイスケールにおいてこれらの画素の光応答を示し、これを、80%において最高光電流の読み及び0%において0を設定することにより正規化する。結果は、アレイが、光強度の空間分布を検出することができることを検証する。加えて、R光、G光、及びB光を、それぞれ、第一、第二、及び第三画素と接続して、これらの色認識能を検査した。図4Fは、彩色されたグレイスケールの形態で3画素色センサーアレイに対するRGB光色認識試験からこれらの画素由来の応答性を示す。R光、G光、及びB光を、それぞれ、第一、第二、及び第三画素と接続し、WB因子(Rチャンネルに対して50.0、Gチャンネルに対して1.0、及びBチャンネルに対して53.4)を掛けた対応する応答性を、高光電流の読みを100%に、0を0%に設定する彩色されたグレイスケールで示す。全ての画素は、これに投影された光の色を正しく認識し、これら全てが、完全色感知能を有することを示した。空間分解色認識能の成功した実証実験は、複数の画素の大規模統合による超コンパクトな画像センサーのためのデバイスアーキテクチャーの応用性を示している。
【0059】
縦型デバイスアーキテクチャーは、本質的に光学レンズにある色収差の問題を根本的に対処することもできる。デバイス製造の間に、隣接する色感知層間の、MgF、雲母、又は、例えば、GaF、SiO、ポリマー薄膜等の他の絶縁材を熱蒸着等されている絶縁層の厚さを、正確に制御することができる。かかる方法では、R光、G光、及びB光のフォーカスポイントを、対応する感知層に整列し、本質的に単一レンズに起因する色収差を補正することができる。これを、IR及びUV感知層及び色感知層間の絶縁層に適用することもできる。図4Gは、色収差補正のためのvdW-Sベースの縦型色センサーの設計原理を概略的に例示する。30μm及び150μmの面半径を有するモデル単一BK7両凸レンズのため、R光、G光、及びB光の焦点距離を、それぞれ、73.650nm、72.767nm、及び72.548nmとして算出することができる。したがって、640nm及び160nmのMgF絶縁層を、感知層間に形成して、色収差を補正する。この構造では、色収差を補正するための正屈折率及び負屈折率の両方を有する要素からなる接着レンズを使用する必要がない。簡素化されたレンズ設計は、次に、よりコンパクトなカメラ設計を容易にする。
【0060】
例として、30μmの半径R及び150μmの半径Rを有するBK7レンズの色収差を、式
【数3】

に従って算出し、B光、G光、及びR光に対してそれぞれ72.548μm、72.767μm、及び73.650μmの焦点距離を見つけた。したがって、GaS感知層及びInSe感知層間に160nmのMgF絶縁層並びにInSe層及びCIS層間に640nmのMgF絶縁層を用いて、デバイスを製造した。図4Hは、製造された縦型色センサーの横断面のSEM検査画像である。これらの製造パラメータを、レンズの設計により調整することができる。なお、vdW-Sは優れた機械的柔軟性を自然に有しているので、画像センサーは、像面湾曲部を補償するようにランダム形状を得ることができる。この原理は、縦型vdW-Sアーキテクチャーに基づく完全色画像センサーにも当てはまる。
【0061】
デバイス構造全体は柔軟性であるので、マイクロメートルに至るまで湾曲部半径を有する湾曲したセンサーを得ることができるが、従来のシリコンベースのセンサーは、ミリメートルスケールの曲げまでしか達することができない。マイクロスケールの曲げを、図4Iに示されている実施例などの前以て製造された湾曲したセンサーホルダー上に仕上げされた柔軟なセンサーを形成することにより行うことができる。感知デバイスの形状を、デバイス中に光を向けさせる光学レンズにより生じる像面湾曲部を補償するように使用することができる。絶縁層厚さを、レンズシステムにより発生する色収差を補償するように変更することができる。フレキシブル半導体により実装される像面湾曲部補正を、湾曲されたセンサーホルダーを用いて行うことができる。センサーホルダーを、例えば、マイクロ3Dプリンティングを用いて一定の曲率で製造することができる。図4Jは、湾曲されたホルダー上の製造された色センサーの実施例を示す。製造された色センサーはホルダーから取り外すことができ、色センサーは、その柔軟性が理由でそれ自体曲率にぴったり合っている。
【0062】
要約すると、縦型積層vdW-Sにより強化されたプロトタイプ色センサーを、上手く実証した。vdW-Sエネルギーバンド構造の広い選択及び広い同調性を利用して、優れた光応答は、CIS、InSe、及びGaSからなる積層センサーから実装され、それぞれ、R、G、及びBの3つの一次色を感知した。補正後、この構造物は、光の色を効果的に認識し、CIE1931色空間で対応する色座標をアウトプットすることができる。光電子特性及び色感知実験全ては、コンパクトな体積を有し、デバイス性能を妥協しないこの設計の実現可能性及び有効性を確認した。更に、画素アレイへの縦型積層アーキテクチャーの拡張可能な製造方法も、色収差補正の能力を用いて例示した。実証されたままのセンサーアレイは、それ自体コンパクトな縦型構造を有するだけでなく、光学レンズシステムの簡素化も容易にする。そのようなものとして、センサーアーキテクチャーは、とりわけ、生物学的、医療、及び環境応用のための総合的小型化及びカメラの改良に対する見事な解決策を生み出すことができる。
【0063】
方法
材料合成。CIS及びINSeを、S. Lei et al.による“Ternary CuInSe11:towards ultra-thin layered photodetectors and photovoltaic devices”(Adv.Mater.,26,7666-7672,2014)及びS.Lei et al.による“Evolution of the electronic band structure and efficient photo-detection in atomic layers of InSe”(ACS Nano,8,1263-1272(2014)に従って合成した。GaS単結晶を、sigma Aldrichの化学量論量のガリウム及び硫黄(純度<99.99)を用いて成長させた。GaS結晶成長を行うため、2ゾーンを有する管状炉を使用し、950℃及び450℃の温度で24時間保持した。ガリウムを、950℃のゾーン内に入れた。次いで、室温に達するまで、管を自然冷却させた。
【0064】
サンプル調製。二酸化ケイ素上のvdW-S剥離を、ブルーテープを用いて行った(Nitto SPV224PR-MJ)。同様に、ポリジメチルシロキサン(PDMS)薄膜(Gel Pak Gel Film PF-30-X4)上の絶縁層の材料の雲母を剥離し、これは、転写媒体の役割を果たす。乾式転写法を使用することにより、自作乾式転写ワークフローを用いて、雲母を第一層vdW-Sの上部に転写した。加熱可能な底部固定ステージに、標的基材を配置し、転写する必要があるPDMS上の新しい薄片を、上部透明ガラス製ステージ上に固定し、上部ガラス製ステージのXYZノブは、その動きを制御することができた。上部薄片及び底部基材を、顕微鏡下で相互に並べることができる。整列後、基材に接触するまで、上部ガラス製ステージを下げた。完全に接触させて、転写成功率を向上させるために、標的基材に対して90℃で3分間熱処理を行った。転写終了後、先ず加熱を止めて、上部ガラス製ステージを、急な上昇により予期せぬ引き裂きがあった場合に備えて、ゆっくり上昇させた。この試験では、他の上部の適切な絶縁層及びvdW-S薄片を含む全ての転写方法のため、同じ手順を行った。
【0065】
材料特性評価。タッピングモード下、Veeco MultiMode V AFM systemでAFM試験を行った。ソースメータユニット(例えば、SMU、Keithley 2450)、ローノイズ電流増幅器(例えば、Stanford Research System SR570)、オシロスコープ(例えば、Tektronix TBS 2000シリーズ デジタルオシロスコープ)を共同して光応答性スペクトルをキャプチャーした。色センサーのRGB成分のI-V及びI-P特性曲線を、Keithley 2634B SMUを備えた自作高真空プローブステーションで測定した。Bio-Radアルゴン-クリプトンイオンレーザー、及びLexel 85アルゴンイオンレーザーを使用して、458nm、514nm、及び647nm励起を発生させた。強度を、連続して2つのポラライザにより制御した。
【0066】
デバイス製造。本試験における全デバイス製造のため、450nmダイオードレーザーを備えた自作直接レーザー描画システムを使用して、光電子試験のための各色感知層上に電極を製造した。各色感知層の剥離及び転写後、100nmアンダーカットレジスト(例えば、Kayaku Advanced Material PMGI SF 3S)及び300nm KL5305フォトレジスト(例えば、Kem Lab KL5305 HR)をスピンコーティングした。露光終了後、KL5305マッチング現像液(例えば、Kem Lab TMAH現像液0.26N)に30秒間浸漬することによりパターンを得た。次に、熱蒸発(Ti 5nm/Au 45nm)及び金属リフトオフ手順を行い、デバイス製造を完了した。
【0067】
集束イオンビームミリング。3画素アレイに対するFIBミリングを、Hitachi NB5000 nanoDUE’T FIB-SEM systemで行い、FIBカッティングのために40kV Gaイオンビームを使用した。色収差補正構造物の横断面を、Raith Velion集束イオンビームリソグラフィーシステムで切断した。Raith Velionシステムは、レーザー干渉計ステージ利用によるナノメートルスケール配置精度と信頼性を有する配向用の専用35kVナノFIBカラム、Gaフリー、2ビーム(最小フィーチャサイズ16.7nmのSi又は最小フィーチャサイズ18.6nmの金のいずれか)ナノファブリケーションを提供する。試験では、Au++集束イオンビームは、CIS、InSe、GaS、及びMgF積層のミリングにおいてSi++集束イオンビームより優れた結果を得た。
【0068】
走査電子顕微鏡。全SEM画像は、Tescan Vega3 systemでキャプチャーした。
【0069】
ハロゲンランプのスペクトル収集。iDus 420 TE冷却CCDカメラが装備されたAndor 500R分光計を使用して、ハロゲンランプの放射スペクトルをキャプチャーした。CCDカメラを、-40℃まで冷却した。
【0070】
光応答性スペクトル補正方法。
スペクトル補正は、正確な光応答の結果を得ることを容易にする。これを達成するため、単色光源の入射光パワーの影響を考慮する。ここで、CISを例として挙げ、本試験における特定の補正工程を以下のように説明する:
図5Aは、暗電流、すなわち、(Ilight-Idark)を抽出することによりCIS層の元の光応答性スペクトル対補正前の波長を示す。これは、400nmから700nmへ連続的増加を示す。補正及び正確な応答ピークを見つけるのは困難である。
図5Bは、波長の関数、P(λ)として入射光パワーに関する単色光源のスペクトルである。
・補正は、R(λ)=(Ilight-Idark)/P(λ)の式で算出することができる波長の関数R(λ)として絶対的光応答性を要求する。図5Cは、補正後CISの光応答性スペクトルを示す。これは、550nm~700nmの赤色光バンドにおいて強い応答性を示す。こうすることにより、正しいスペクトルが示され、特定の応答ピーク位置も明白である。同じ光応答性スペクトル補正方法を、InSe及びGaS感知層にも適用する。
【0071】
CIS厚さ依存性光応答性スペクトル発展。赤色感知のための適切な材料候補を得るため、材料厚さと光応答スペクトルの発展との関係性を探索する。様々な厚さを有する一連のCISサンプルを剥離し、これらの光応答スペクトルを収集した。2つのデバイスの光学写真及びAFMデータの実施例を、図6A及び6Bに示す。図6Aでは、上パネルは、このvdW-Sベースの縦型色センサーにおけるCIS光学画像であり、中央パネル及び下パネルは、AFMマッピング及びその厚さプロファイルの両方を示し、厚さ10nmであると確認した。AFMマッピング画像のスケールは、5μmであり、AFMマッピング画像中のライン603に沿ってプロファイル測定を行った。この厚さを有するCISは、赤色光波長範囲の550nm~700nmで強力な応答性を示す。
【0072】
図6Bでは、上パネルは、別のCISサンプルの光学画像であり、中央部パネル及び下パネルは、AFMマッピング及びその厚さプロファイルを示し、厚さ130nmであると確認した。AFMマッピング画像のスケールは、20μmであり、AFMマッピング画像中のライン606に沿ってプロファイル測定を行った。これらの3デバイスを比較することにより、短波長範囲(400nm~550nm)に対するCISの光応答スペクトルは、より厚いサンプルに対してより高感度であり、厚さ増加は、可視波長範囲全体をカバーするフラットな応答性をもたらすことが分かる。この傾向は、より薄いCISは、この範囲におけるその強力な光応答性が理由で、赤色色感知のための適切な候補材料であろうことを決定する助けとなる。
【0073】
vdW-Sベースの縦型色センサーの原子間力顕微鏡(AFM)画像、乾式転写及び積層デバイス製造手順。このvdW-Sベースの縦型色センサーにおける各感知材料の厚さは、感知能に対する影響をもたらす対応する色に対するその光応答性を制御するだろう。ここで、本発明者らは、赤色、緑色及び青色感知層の厚さを特性評価するために原子間力顕微鏡を使用する。図7A~7Cは、本試験において、それぞれ、10nm、13nm及び25nmの厚さを有するCIS(Rチャンネル)層、InSe(Gチャンネル)層及びGaS(Bチャンネル)層のAFM画像を示す。この厚さは、スペクトル上のそれぞれの応答間隔は、赤色、緑色及び青色波長範囲と一致することを保証し、デバイスの色感知機能の実現性を更に確認する。左パネルは、AFMマッピング画像を示し、右パネルは、厚さプロファイルを示す。図7AのAFMマッピング画像のスケールは、5μmであり、AFMマッピング画像中のライン703に沿ってプロファイル測定を行った。図7BのAFMマッピング画像のスケールは、20μmであり、AFMマッピング画像中のライン706に沿ってプロファイル測定を行った。図7CのAFMマッピング画像のスケールは、20μmであり、AFMマッピング画像中のライン709に沿ってプロファイル測定を行った。
【0074】
製造の積層に関して、比較的クリーンな乾式転写方法を選択して、化学試薬の汚染を避けた。自作プラットフォームを使用して、乾式転写を終え、感知層及び絶縁層を含む全ての層を積層した。プラットフォーム全体は、2つの部分:転写される材料を配置するための透明スライドガラスを含む上側部分及び標的基材を保持するように設計された下側部分を含む。これは、XYZ方向に調整することができるマイクロコントローラー上に固定され、回転可能な加熱ステージを備える。XYZ方向の調整及び回転機能は、最善な積層位置及び転写プロセス中の角度を見つける助けとなる。それと同時に、加熱機能は、層間の接着を得ることにより転写の成功率を更に向上させることができる。しかしながら、加熱温度は、転写される材料及びその厚さにより変わり、厚さが増加すると共に、より高い温度又はより長い時間が必要であるという基本的傾向がある。
【0075】
色マッチング機能。自然の色はいずれも、異なる割合でR、G及びBの3基本要素を混合することにより得ることができる。したがって、これらの3つのRGB色標準は、全ての他の色の色知覚及び正確な再現において重要な役割を果たすことができる。1920年代後半に、一連の色マッチング実験が開始され、CIE色空間標準を表す国際照明委員会(CIE)によっても使用されているかかる定量を行った。実験は、同じスクリーン上の3つの基本要素(RGB)の混合物である試験光及び標準光を投影し、観察者が、標準光における3つの要素の構成比を変えることによりこれらの間の違いを識別することができないと同時に、これらが同じ色と見做されるまでこれらの2つを比較した。後者の赤色、緑色、及び青色混合比を、前者の色を再現するための標準値として記録した。大量の単色光を試験することにより、色マッチングデータを得た。これに基づいて、CIEは、前述の実験から得られたRGB色値を補正するための色補正マトリクスを適用することによりXYZ色空間の概念を提案し、したがって、図8に示されているように、広く使用されている国際色標準値でもある3成分CIE XYZ色マッチング関数を得た。このグラフから、可視光範囲におけるいずれもの波長の標準R、G及びB成分を直接的に読み取ることができる。
【0076】
通常のRGB色画像センサー以外、積層多層設計の機能性を拡張することができる。例えば、デバイスの機能性をオンチップ分光計、並びに医療診断、薬物同定、及び材料分析のためのスペクトル分析機能を有するカメラに拡張することがきる。かかるカメラでは、各画素は、スペクトル分析の能力を提供することができる。現在のオンチップ分光計は、マイクロ格子、フィルターアレイ、不規則フォトニック構造、及び線形可変バンドパスフィルターなどの光分散機構を含み、システムの更なるダウンスケーリングを妨げることができる。
【0077】
連続的に変化する光応答スペクトル範囲を有するvdW-Sの多層積層により、代替の解決方法を提供することができる。この目的のため、層状vdW-S合金を、元の化合物の代わりに使用して、禁制帯に連続的に同調し、所望の光応答特性を得ることを可能とする。例えば、GaSeS、InGaSe、InGaSeTe、InTe、InSe、GaSe、GaS、GaTe、InCuSe、MoS、MoSe、MoTe、WS、WSe、WTe、NbSe、TiSなどのvdW-S、又は他のvdW-S合金を使用することができる。
【0078】
一例として、徐々に開く禁制帯を有するGaSe1-x合金の群を検討する。この場合、カットオフ波長は、硫黄の比率(x)が増加すると共に青色シフトし得る。他の例としては、InGa1-xSe、InGa1-xSeTe、TeSe1-x、GaIn1-xSe、GaSSe1-x、MoSSe1-x、Mo1-xSe等を挙げることができるが、これらに限定されない。図9Aは、市販のローパスフィルター(上の段)及び合成されたGaSeS合金サンプル(下の段)の実施例を例示する。色変化の類似性は、合成サンプルの成功した禁制帯同調を明白に示した。
【0079】
画素当たりの分光計(SPP)デバイスを、記載されているように様々な禁制帯を有するvdW-S合金を用いて製造することができる。これは、各層が、禁制帯より高いエネルギーを有する光子を検出する光センサーとして機能することと同時に、後続レベルに低エネルギー光子を選択的に放出するローパスフィルターとして同時に作用する、2つの機能を提供するような方法で機能する。図9Bは、2倍の機能性を提供する層を含む単一画素分光計の実施例を例示する。それぞれの波長範囲を感知することに加えて、各層は、後続層のためのローパスフィルターとしても機能する。示されているように、各層は、次の層を通過するより低エネルギー光子を可能とする光子を検出する。
【0080】
SPPマトリックスを備えるカメラは、通常のカメラと同じ大きさを有すると共に、追加の光学要素を有しない完全スペクトル分析の機能性を提供する。そのようなものとして、これは、例えば、内視鏡検査、医用画像、がん診断、並びに画像キャプチャー及び光学的分光測定能力の両方から利益を得るだろう他の分野を含む広範囲の応用に適用することができる。
【0081】
本開示の上記実施形態は、単に、本開示の原理の明瞭な理解のために明記された実装の可能な実施例にすぎないことを強調すべきである。本開示の趣旨及び原理から実質的に逸脱することなく上記実施形態に多くの変更及び改変を行ってもよい。全てのかかる改変及び変更は、本明細書において本開示の範囲内に含まれ、後続の特許請求の範囲により保護されるものとする。
【0082】
用語「実質的に」は、意図されている目的に悪影響を与えない記述用語からの乖離を許容することが意図される。記述用語は、たとえ用語が実質的に言葉により明示的に修正されないとしても、実質的に言葉により修正されると暗黙的に理解される。
【0083】
なお、比、濃度、量、及び他の数値データは、本明細書において範囲の形式で表され得る。かかる範囲の形式は、便宜及び簡略のために使用されると理解されるべきであり、したがって、範囲の限界として明示的に記載されている数値だけでなく、あたかも各数値及びサブレンジが明示的に記載されているかのように、この範囲内に包含される全ての個々の数値又はサブレンジを含むように柔軟に解釈されるべきである。例示するため、「約0.1%~約5%」の濃度範囲は、約0.1重量%~約5重量%の明示的に記載されている濃度だけでなく、指定されている範囲内の個々の濃度(例えば、1%、2%、3%、及び4%)及びサブレンジ(例えば、0.5%、1.1%、2.2%、3.3%、及び4.4%)も含むと解釈されるべきである。用語「約(about)」は、数値の有効数字により伝統的な四捨五入を含むことができる。加えて、フレーズ「約『x』~『y』」は、「約『x』~約『y』」を含む。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
【国際調査報告】