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特表2024-544074薬物送達のための組込みフォーミュレーションの最適化
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  • 特表-薬物送達のための組込みフォーミュレーションの最適化 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-27
(54)【発明の名称】薬物送達のための組込みフォーミュレーションの最適化
(51)【国際特許分類】
   G06N 99/00 20190101AFI20241120BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20241120BHJP
   A61M 5/168 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G06N99/00 180
A61M5/142 520
A61M5/168 500
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532465
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-07-02
(86)【国際出願番号】 US2022051534
(87)【国際公開番号】W WO2023102114
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】17/539,270
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/752,236
(32)【優先日】2022-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519167449
【氏名又は名称】インスレット コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ボク リー
(72)【発明者】
【氏名】イービン ツェン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン オコナー
(72)【発明者】
【氏名】アシュトシュ ザド
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066QQ23
4C066QQ72
4C066QQ78
4C066QQ82
4C066QQ84
4C066QQ92
(57)【要約】
本明細書で開示されるのは、薬物送達アルゴリズムの現在のサイクルに対する液体薬物の最適投与量を決定するための薬物送達デバイスによる実行方法であり、本方法は、薬物の粗離散量からなる粗探索空間と、薬物の精密化された離散量からなる精密化された探索空間とにわたって、モデルとコスト関数の段階的評価を利用する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動薬物送達システムにおける薬剤送達の現在のサイクルでの可能な薬物送達量の探索空間を決定すること;
前記探索空間を解の範囲に分けること;
コスト関数を最小化する解の範囲で選択範囲を決定することによって、前記探索空間を狭めること;
前記選択範囲を、第1の薬物送達のための精密化された値のリストであって、第1の微小増分によって分けられる前記精密化された値のリスト、に分けること;
前記精密化された値のリストにおける前記第1の薬物送達に続く一組の後続送達であって、第2の粗増分によって分けられる前記一組の後続送達、を評価すること;および
前記コスト関数を最小化する前記一組の後続送達に基づく解を選択すること
を備える、方法。
【請求項2】
前記第1の微小増分は、前記第2の粗増分よりも小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記探索空間を解の範囲に分けることは、第3の粗増分を用いて実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記可能な薬物送達量の探索空間は、ゼロから、1つまたは複数の安全制約による最大量、までの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
薬物は、インスリンであり、前記自動薬物送達システムは、ウェアラブル薬物送達デバイスの一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記選択範囲を決定することは、インスリンの特定量の送達に基づき、所定数の将来のサイクルにおける前記自動薬物送達システムのユーザのグルコースレベルを予測するように構成された再帰的グルコースモデルを評価すること、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記コスト関数は、可能なグルコースおよびインスリンの各軌跡のコストを計算し、コストが最も低い前記軌跡を決定する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
非一時的なコンピュータ可読の媒体であって、
自動薬物送達システムにおける薬剤送達の現在のサイクルでの可能な薬物送達量の探索空間を決定し;
前記探索空間を解の範囲に分け;
コスト関数を最小化する解の範囲で選択範囲を決定することによって、前記探索空間を狭め;
前記選択範囲を、第1の薬物送達のための精密化された値のリストであって、第1の微小増分によって分けられる前記精密化された値のリスト、に分け;
前記精密化された値のリストにおける前記第1の薬物送達に続く一組の後続送達であって、第2の粗増分によって分けられる前記一組の後続送達、を評価し;および
前記コスト関数を最小化する前記一組の後続送達に基づく解を選択する
ことを、プロセッサに実行させるように構成された命令を記憶する、非一時的なコンピュータ可読の媒体。
【請求項9】
前記第1の微小増分は、前記第2の粗増分よりも小さい、請求項8に記載の媒体。
【請求項10】
前記探索空間を解の範囲に分けることは、第3の粗増分を用いて実行される、請求項8に記載の媒体。
【請求項11】
前記可能な薬物送達量の探索空間は、ゼロから、1つまたは複数の安全制約による最大量、までの範囲である、請求項8に記載の媒体。
【請求項12】
前記薬物は、インスリンであり、前記自動薬物送達システムは、ウェアラブル薬物送達デバイスの一部である、請求項8に記載の媒体。
【請求項13】
前記選択範囲を決定することは、インスリンの特定量の送達に基づき、所定数の将来のサイクルにおける前記自動薬物送達システムのユーザのグルコースレベルを予測するように構成された再帰的グルコースモデルを評価すること、を含む、請求項8に記載の媒体。
【請求項14】
前記コスト関数は、可能なグルコースおよびインスリンの各軌跡のコストを計算し、コストが最も低い前記軌跡を決定する、請求項14に記載の媒体。
【請求項15】
薬物を貯蔵するように構成されたリザーバと;
ユーザに前記薬物を投与するように構成された薬物送達デバイスと;
プロセッサと;
非一時的なコンピュータ可読の媒体であって、
薬剤送達の現在のサイクルでの可能な薬物送達量の探索空間を決定し;
前記探索空間を解の範囲に分け;
コスト関数を最小化する解の範囲で選択範囲を決定することによって、前記探索空間を狭め;
前記選択範囲を、第1の薬物送達のための精密化された値のリストであって、第1の微小増分によって分けられる前記精密化された値のリスト、に分け;
前記精密化された値のリストにおける前記第1の薬物送達に続く一組の後続送達であって、第2の粗増分によって分けられる前記一組の後続送達、を評価し;および
前記コスト関数を最小化する前記一組の後続送達に基づく解を選択する
ことを、前記プロセッサに実行させるように構成された命令を記憶する、非一時的なコンピュータ可読の媒体と
を備える、自動薬物送達のシステム。
【請求項16】
前記第1の微小増分は、前記第2の粗増分よりも小さい、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記探索空間を解の範囲に分けることは、第3の粗増分を用いて実行される、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記可能な薬物送達量の探索空間は、ゼロから、1つまたは複数の安全制約による最大量、までの範囲である、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記薬物は、インスリンであり、前記自動薬物送達のシステムは、ウェアラブル薬物送達デバイスの一部である、請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
前記選択範囲を決定することは、インスリンの特定量の送達に基づき、所定数の将来のサイクルにおける前記ユーザのグルコースレベルを予測するように構成された再帰的グルコースモデルを評価すること、を含む、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年12月1日に出願された米国特許出願第17/539,270号および2022年5月24日に出願された米国特許出願第17/752,236号に基づく優先権を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
従来の自動薬物送達システムの多くは周知であり、例えば、図2に示すタイプのウェアラブル薬物送達装置を含む。薬物送達デバイス102は、任意のタイプの液体薬物をユーザに送達するように設計することができる。特定の実施形態において、薬物送達デバイス102は、例えば、マサチューセッツ州アクトンのInsulet Corporationによって製造されたOmniPod(登録商標)薬物送達デバイスであり得る。薬物送達デバイス102は、米国特許第7,303,549号、米国特許第7,137,964号、米国特許第6,740,059号に記載されているような薬物送達装置とすることができ、それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
ウェアラブル薬物送達デバイス102は、典型的には、プロセッサおよびメモリを備えて構成され、プロセッサおよびメモリに電力を供給するために利用可能な電力量が限られている内部バッテリまたは電力ハーベスティングデバイスによって電力供給されることが多い。さらに、デバイスの大きさのため、処理能力およびソフトウェアアルゴリズムを記憶するためのメモリも制限される場合がある。このような制限のため、ウェアラブル薬物送達デバイスは、センサや他の情報からのフィードバックに基づく一連の計算を通じて、ユーザに送達されるべき液体薬物のタイミングと量を決定するオンボードの薬物送達アルゴリズムを有していない。このような薬物送達アプリケーションは、典型的には、例えば、遠隔個人用糖尿病管理(PDM)またはスマートフォンなどの遠隔デバイス上に見出され、これらのいずれかは、薬物送達指示を送信するように構成されている。
【0004】
薬剤送達アルゴリズムは、最適化アルゴリズムを使用して、ユーザに送達されるべき液体薬物の量を周期的に計算することができる。例えば、医療送達アルゴリズムは、一実施形態では、5分周期で動作してもよい。最適化アルゴリズムは、数理グルコースモデルを利用してもよく、送達されるべき液体薬物の適切な量を決定するためにコスト関数を最小化してもよい。このような最適化アルゴリズムは、高い計算コストと電力消費コストを伴う一連の複雑な計算を必要とすることが多く、組込みアプリケーションのような低消費電力で効率的な処理能力しか利用できないアプリケーションでは実装が困難である。このことは、ウェアラブル薬物送達デバイス102のような使い捨ての小規模電子機器にこのような最適化アルゴリズムを実装することが望まれる場合に特に重要である。
【0005】
従って、最適化アルゴリズムを実行するための計算コストおよび電力消費を低減し、薬剤送達アルゴリズムがウェアラブル薬物送達デバイス102にオンボードで存在できるようにし、ウェアラブル薬物送達デバイス102の寿命およびウェアラブル薬物送達デバイス102のユーザまたは装着者への薬物の送達のために適切な薬物投与量を計算できる速度を向上させる方法を提供することが望ましいであろう。
【0006】
定義
本明細書において、「液状薬物」という用語は、例えば、インスリン、GLP-1、プラムリンチド、モルヒネ、血圧治療薬、化学療法薬、不妊治療薬など、またはGLP-1、プラムリンチド、およびインスリンの2つ以上の共製剤を含む、皮下カニューレを介して薬物送達デバイスによって投与可能な液状の任意の薬物を含むと解釈されるべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本概要は、詳細な説明に後述する概念から抽出されたものを簡略化して紹介するために提供される。本概要は、特許請求される主題の重要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、特許請求される主題の範囲を決定する際の補助として意図されるものでもない。
【0008】
ウェアラブル薬物送達デバイス102におけるような、特定の組み込まれた医療的実装では、最適化問題に対する正確な解は要求されない可能性がある。これは、最適化問題に対する厳密解と最適化問題に対する近似解との間の各サイクルに対する計算された投与量の差が、ウェアラブル薬物送達デバイス102の最小薬物送達分解能以下であり得るという事実によるところが大きい。例えば、特定の実施形態では、液体薬物の送達の分解能は、一定量(例えば、0.05U、または0.0005mL)に制限され得る。すなわち、ウェアラブル薬物送達デバイス102は、特定の離散的な量の液体薬物しか送達できない可能性がある。従って、特定の離散的な量の間に入る推奨用量を提供する最適化問題に対する厳密な解は、送達され得ず、従って、最適化問題に対する解の近似が許容される。さらに、計算された用量と、ウェアラブル薬物送達デバイス102がユーザに送達することができる用量との間の差異は、ユーザの臨床結果に有意な差異をもたらさない場合がある。いくつかの実施形態では、薬剤送達アルゴリズムは、送達可能な最も近い離散量に送達を丸め、次のサイクル中に、計算された用量に、または計算された用量から、任意の差異を加算または減算することができる。
【0009】
従って、最適化アルゴリズムを実行する計算コストは、最小の小数点に対して正確である必要はないが、利用者の治療に影響を与えないように十分に近い解にシステムが到達することを可能にする、最適化アルゴリズムの簡単な実装により、大幅に削減することができる(99%以上)。
【0010】
図面中、同様の参照文字は、一般に、異なる図を通して同じ部分を指す。以下の記述において、本発明の様々な実施形態が、添付の図面を参照して記載される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本明細書で開示するシステムおよび方法を実施するのに適した例示的なシステムの機能ブロック図である。
【0012】
図2図2は、本明細書で開示する発明が使用されるタイプの先行技術のウェアラブル薬物送達装置の図である。
【0013】
図3図3は、開示された方法を構成するステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本開示は、薬物送達アルゴリズムの現在の実行サイクル中にユーザに送達されるべき液体薬物の量を計算するための様々なシステム、構成要素および方法を提示する。本明細書で説明する実施形態は、従来の先行技術のシステム、構成要素および方法に対する1つまたは複数の利点、すなわち、最適化問題を解くために使用される簡略化された計算モデルによる消費電力の節約および必要な処理能力の低下を提供する。
【0015】
本発明の様々な実施形態には、薬物送達デバイス(本明細書では「ポッド」と称される場合がある)を使用して、自律的に、または電子デバイスから受信した無線信号に従って、ユーザに薬剤を送達するためのシステムおよび方法が含まれる。様々な実施形態において、電子デバイスは、スマートフォン、スマートウォッチ、スマートネックレス、薬物送達デバイスに取り付けられたモジュール、またはユーザによって携帯され得るかもしくはユーザの身体に装着され得、薬物の送達の時間および投与量を計算するアルゴリズムを実行する任意の他のタイプもしくは種類の電子デバイスを含むユーザデバイスであり得る。
【0016】
例えば、ユーザデバイスは、インスリンの送達の時間と投与量を計算する「人工膵臓」アルゴリズムを実行することができる。ユーザデバイスはまた、グルコースレベルなど、ユーザの物理的属性または状態に関するデータを収集するグルコースセンサなどのセンサと通信することができる。センサは、ユーザの体内または体上に配置され、薬物送達デバイスの一部であってもよいし、別個のデバイスであってもよい。
【0017】
代替的に、薬物送達デバイスは、センサとユーザデバイスとの間の通信に代えて、またはこれに加えて、センサと通信することができる。通信は、直接(例えば、センサが薬物送達デバイスと一体化されているか、そうでなければ薬物送達デバイスの一部である場合)であってもよいし、遠隔/無線(例えば、センサが薬物送達デバイスとは異なるハウジングに配置されている場合)であってもよい。これらの実施形態において、薬物送達デバイスは、薬剤の送達の時間および投与量を計算するアルゴリズムの一部または全部を実行するコンピューティングハードウェア(例えば、プロセッサ、メモリ、ファームウェア等)を含む。
【0018】
図1は、本明細書に記載のシステムおよび方法を実施するのに適した例示的な薬物送達システム100の機能ブロック図である。薬物送達システム100は、人工膵臓(AP)アプリケーションのような薬物送達アルゴリズムを実装する(および/またはそのための機能性を提供する)ことができ、インスリンのような薬物または薬剤の、ユーザへの自動化された送達を支配または制御する(例えば、血中グルコースの正常レベルである正常血糖値を維持する)。薬物送達システム100は、薬物送達デバイス102(ウェアラブルでもよい)、分析物センサ108(同じくウェアラブルでもよい)、およびユーザデバイス105を含む自動薬物送達システムであってもよい。
【0019】
薬物送達システム100は、任意選択的な例では、スマートウォッチ、パーソナルアシスタントデバイスなどの付属デバイス106も含むことができ、この付属デバイスは、有線または無線通信リンク191~193のいずれかを介してシステム100の他の構成要素と通信することができる。
【0020】
ユーザデバイス
ユーザデバイス105は、スマートフォン、タブレット、個人用糖尿病管理(PDM)デバイス、専用の糖尿病治療管理デバイスなどのコンピューティングデバイスであってもよい。一例において、ユーザデバイス105は、プロセッサ151、デバイスメモリ153、ユーザインタフェース158、および通信インタフェース154を含むことができる。また、ユーザデバイス105は、後述するように、ユーザの血糖値を管理し、ユーザへの薬物、薬剤、または治療薬の送達を制御するためのユーザアプリケーション160など、デバイスメモリ153に記憶されたプログラミングコードに基づく処理を実行するための、および、炭水化物補正投与量、補正ボーラス投与量の計算などの他の機能を提供するための、プロセッサ151として実装され得るアナログ回路および/またはデジタル回路を含むことができる。ユーザデバイス105は、薬物送達デバイス102および/または分析物センサ108ならびに任意選択的なスマート付属デバイス106のプログラム、設定調整、および/または動作制御に使用することができる。
【0021】
プロセッサ151はまた、ユーザアプリ160などのデバイスメモリ153に記憶されたプログラミングコードを実行するように構成されてもよい。ユーザアプリ160は、分析物センサ108、クラウドベースサービス111、および/またはユーザデバイス105もしくは任意選択的な付属デバイス106から受信した情報に基づいて薬剤を送達するように動作可能なコンピュータアプリケーションであってもよい。メモリ153はまた、例えば、ユーザインタフェース158(例えば、タッチスクリーンデバイス、カメラなど)、通信インタフェース154、またはそれに類するものを操作するためのプログラミングコードを記憶することができる。プロセッサ151は、ユーザアプリ160を実行するとき、食事の摂取、血糖測定などに関連する表示および通知を実施するように構成されてもよい。ユーザインタフェース158は、プロセッサ151の制御下にあり、本明細書に記載されるように、食事告知の入力、設定選択の調整などを可能にするグラフィカルユーザインタフェースを提示するように構成されてもよい。
【0022】
具体例では、ユーザアプリ160がAPアプリケーションであるとき、プロセッサ151は、ユーザアプリ160によって管理される糖尿病治療プラン(メモリに記憶され得る)を実行するようにも構成される。上述の機能に加えて、ユーザアプリ160がAPアプリケーションであるとき、糖尿病治療プランに従って、炭水化物補償投与量、補正ボーラス投与量を決定し、基礎投与量を決定する機能をさらに提供することができる。さらに、APアプリケーションとして、ユーザアプリ160は、決定されたボーラス投与量および基礎投与量を送達するために、通信インタフェース154を介して薬物送達デバイス102に信号を出力する機能を提供する。
【0023】
通信インタフェース154は、1つまたは複数の無線周波数プロトコルに従って動作する1つまたは複数のトランシーバを含むことができる。一実施形態では、トランシーバは、セルラートランシーバおよびBluetooth(登録商標)トランシーバから構成され得る。通信インタフェース154は、ユーザアプリ160によって使用可能な情報を含む信号を受信および送信するように構成されてもよい。
【0024】
ユーザデバイス105は、ユーザに様々な信号を提供するために、例えばスピーカや振動変換器である1つまたは複数の出力デバイス155をさらに備えることができる。
【0025】
薬物送達デバイス
様々な例示的な実施形態では、薬物送達デバイス102は、薬物送達デバイス(および例示的な実施形態では、ウェアラブル薬物送達デバイス)に搭載されたメモリ123に記憶された薬剤送達アルゴリズム(MDA)129を実行するコントローラ121によって制御可能な、リザーバ124および駆動機構125を含み得る。代替的に、コントローラ121は、通信リンク194を介して薬物送達デバイス102に通信され、ユーザデバイス105上で実行されるユーザアプリ160から受信する信号に基づいて、リザーバ124および駆動機構125を制御するように動作してもよい。駆動機構125は、液体薬剤を出口流体ポートを通して針/カニューレ186に押し出すように、リザーバを通してプランジャを長手方向に並進させるように動作する。
【0026】
別の実施形態では、薬物送達デバイス102は、2つの異なる液体薬物の独立した送達を可能にする、任意選択の第2のリザーバ124-2および第2の駆動機構125-2を含むこともできる。一例として、リザーバ124にはインスリンを充填し、リザーバ124-2にはプラムリンチドまたはGLP-1を充填することができる。いくつかの実施形態では、リザーバ124、124-2のそれぞれは、MDA129の指示の下、コントローラ121によって別々に制御可能であり得る別々の駆動機構125、125-2をそれぞれ備えて構成され得る。リザーバ124、124-2のいずれも、共通の針/カニューレ186に接続されてもよい。
【0027】
薬物送達デバイス102は、任意選択で、ユーザから入力を受け取るための手段およびユーザに情報を出力するための手段を提供するユーザインタフェース127を備えるように構成されてもよい。ユーザインタフェース127は、例えば、発光ダイオード、薬物送達デバイス102のハウジング上のボタン、サウンド変換器、マイクロディスプレイ、マイクロフォン、デバイスの動作またはユーザのジェスチャー(例えば、デバイスのハウジングのタップ)を検出するための加速度計、またはユーザが情報を入力すること、および/または薬物送達デバイス102がユーザに提示するための情報(例えば、アラーム信号など)を出力することを可能にするように構成された任意の他のタイプのインタフェースデバイスを含むことができる。
【0028】
薬物送達デバイス102は、液体薬物を送達するためにユーザとインタフェースするための患者インタフェース186を含む。患者インタフェース186は、例えば、薬物をユーザの体内に送達するための針またはカニューレであってもよい(これは、皮下、腹腔内、または静脈内で行われ得る)。薬物送達デバイス102は、針/カニューレ186をユーザの体内に挿入するための機構をさらに含んでもよく、この機構は、薬物送達デバイス102と一体的であってもよいし、薬物送達デバイス102に取り付け可能であってもよい。挿入機構は、一実施形態では、針/カニューレ186をユーザの皮膚の下に挿入し、その後、カニューレを所定の位置に残して針を後退させるアクチュエータで構成することができる。
【0029】
一実施形態では、薬物送達デバイス102は、通信インタフェース126を含み、これは、Bluetooth、Wi-Fi(登録商標)、近距離無線通信規格、セルラー規格などの1つまたは複数の無線周波数プロトコルに従って動作するトランシーバであってもよい。コントローラ121は、例えば、通信インタフェース126を介して、ユーザデバイス105および分析物センサ108と通信することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、薬物送達デバイス102は、1つまたは複数のセンサ184を備えることができる。センサ184は、コントローラ121に通信可能に結合され、様々な信号を提供する圧力センサ、電力センサなどのうちの1つまたは複数を含み得る。例えば、圧力センサは、患者インタフェース186とリザーバ124との間の流体経路において検出された流体圧力の表示を提供するように構成され得る。圧力センサは、患者インタフェイス186をユーザに挿入するためのアクチュエータに結合されてもよいし、アクチュエータと一体的であってもよい。一実施例では、コントローラ121は、流体圧力の表示に基づいて薬物注入速度を決定するように動作可能であり得る。薬物注入速度は、注入速度閾値と比較されてもよく、比較結果は、残存インスリン(IOB)量または1日の総インスリン(TDI)量を決定する際に使用可能であってもよい。一実施形態では、分析物センサ108は、薬物送達デバイス102と一体的であってもよい。
【0031】
薬物送達デバイス102は、コントローラ121、メモリ123、駆動機構125および/または薬物送達デバイス102の他の構成要素に電力を供給するための、バッテリ、圧電デバイス、エネルギハーベスティングデバイスなどの電源128をさらに含む。
【0032】
薬物送達デバイス102は、ユーザデバイス105または任意選択の付属デバイス106からの入力なしに、薬剤の投与量をユーザに送達するのに必要なプロセスを実施および実行するように構成され得る。より詳細に説明するように、MDA129は、例えば、送達されるべきインスリンの量、IOB、インスリン残量などを決定し、コントローラ121に駆動機構125を作動させてリザーバ124から薬剤を送達させるように動作可能であり得る。MDA129は、分析物センサ108またはユーザアプリ160から受信したデータを入力とすることができる。
【0033】
リザーバ124、124-2は、インスリン、プラムリンチド、GLP-1、インスリンとGLP-1の共製剤、モルヒネ、血圧薬、化学療法薬、不妊治療薬など、自動送達に適した薬物、薬剤、または治療薬を貯蔵するように構成することができる。
【0034】
薬物送達デバイス102は、ウェアラブルデバイスであってもよく、取り付け位置でユーザの身体に取り付けられてもよく、取り付け位置またはその周辺で、インスリンなどの任意の薬物または医薬品を含む任意の治療薬をユーザに送達してもよい。薬物送達デバイス102の表面は、ユーザの皮膚への取り付けを容易にするための接着剤を含んでもよい。
【0035】
ユーザデバイス105または分析物センサ108などの外部デバイスと通信するように構成されているとき、薬物送達デバイス102は、ユーザデバイス105または分析物センサ108から有線または無線リンク194を介して信号を受信することができる。薬物送達デバイス102のコントローラ121は、それぞれの外部デバイスからの信号を受信して処理するとともに、糖尿病治療プランまたは他の薬物送達計画に従ってユーザへの薬物の送達を実施することができる。
【0036】
付属デバイス
任意選択の付属デバイス107は、例えばスマートウォッチ(例えば、Apple Watch(登録商標))、スマートグラス、スマートジュエリー、全地球測位システム対応ウェアラブル、ウェアラブルフィットネスデバイス、スマート衣料などのウェアラブルスマートデバイスであってもよい。ユーザデバイス105と同様に、付属デバイス107も、薬物送達デバイス102の制御を含む様々な機能を実行するように構成され得る。例えば、付属デバイス107は、通信インタフェース174、プロセッサ171、ユーザインタフェース178、およびメモリ173を含むことができる。ユーザインタフェース178は、スマート付属デバイス107のタッチスクリーンディスプレイ上に表示されるグラフィカルユーザインタフェースであってもよい。メモリ173は、スマート付属デバイス107のさまざまな機能を操作するためのプログラミングコード、ならびにユーザアプリ160のインスタンス、または機能を低減したユーザアプリ160の簡易バージョンを記憶することができる。いくつかの実施例では、付属デバイス107は、様々なタイプのセンサも含んでもよい。
【0037】
分析物センサ
分析物センサ108は、コントローラ131、メモリ132、感知/測定デバイス133、任意選択のユーザインタフェース137、電源/エネルギハーベスティング回路134、および通信インタフェース135を含んでもよい。分析物センサ108は、管理デバイス105のプロセッサ151または薬物送達デバイス102のコントローラ121に通信可能に結合されてもよい。メモリ132は、情報およびプログラミングコード136を記憶するように構成されてもよい。
【0038】
分析物センサ108は、グルコース、乳酸、ケトン、尿酸、ナトリウム、カリウム、アルコールレベルなどの複数の異なる分析物を検出し、測定値などの検出結果を出力するように構成されてもよい。分析物センサ108は、例示的な実施形態では、5分毎、1分毎などの所定の時間間隔で血糖値を測定するように構成された持続グルコースモニタ(CGM)であってもよい。分析物センサ108の通信インタフェース135は、測定された血糖値を無線リンク195を介してユーザデバイス105に、または無線通信リンク108を介して薬物送達デバイス102と通信するためのトランシーバとして動作する回路を有することができる。本明細書では分析物センサ108と呼ぶが、分析物センサ108の感知/測定デバイス133は、グルコース測定素子、心拍数モニタ、圧力センサなどの1つまたは複数の追加の感知素子を含んでもよい。コントローラ131は、独立した専用のロジックおよび/またはコンポーネント、特定用途向け集積回路、ソフトウェア命令を実行するマイクロコントローラまたはプロセッサ、ファームウェア、メモリ(メモリ132など)に記憶されたプログラミング命令、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0039】
薬物送達デバイス102のコントローラ121と同様に、分析物センサ108のコントローラ131は、多くの機能を実行するように動作可能であり得る。例えば、コントローラ131は、プログラミングコード136によって、感知および測定デバイス133によって検出されたデータの収集および分析を管理するように構成され得る。
【0040】
分析物センサ108は、図1では薬物送達デバイス102とは分離されて描かれているが、様々な実施形態では、分析物センサ108および薬物送達デバイス102は、同じユニットに組み込まれてもよい。すなわち、様々な例では、分析物センサ108は、薬物送達デバイス102の一部であり、薬物送達デバイス102と一体的であり、薬物送達デバイス102と同じハウジング内に、または薬物送達デバイス102のハウジングに取り付け可能なハウジング内に、またはそうでなければそれに隣接して含まれてもよい。このような構成例では、コントローラ121は、ユーザデバイス105、クラウドベースサービス111、別のセンサ(図示せず)、任意選択の付属デバイス106などからのいかなる外部入力なしに、単独で薬剤の適切な送達に必要な機能を実行することができる。
【0041】
クラウドベースのサービス
薬物送達システム100は、クラウドベースのサービス111と通信するか、またはクラウドベースのサービス111からサービスを受けることができる。クラウドベースのサービス111によって提供されるサービスは、血糖測定値、過去のIOBまたはTDI、以前の炭水化物補償投与量、および他の形態のデータなどの、個人データまたは匿名化されたデータを保存するデータストレージを含み得る。さらに、クラウドベースのサービス111は、複数のユーザからの匿名化されたデータを処理して、TDI、インスリン感受性、IOBなどに関連する一般化された情報を提供し得る。クラウドベースのサービス111をシステム100の各デバイス102、105、106、108に結合する通信リンク115は、セルラーリンク、Wi-Fiリンク、Bluetoothリンク、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0042】
通信リンク
無線通信リンク115および191~196は、公知の無線通信規格または専用規格を使用して動作する任意のタイプの無線リンクであってもよい。一例として、無線通信リンク191~196は、Bluetooth、Zigbee(登録商標)、Wi-Fi、近距離無線通信標準、セルラー標準、または他の任意の無線プロトコルに基づいた通信リンクを、それぞれの通信インタフェース126、135、154、174を介して提供し得る。
【0043】
動作例
動作例では、ユーザアプリケーション160は、ユーザとの一次インタフェースであるグラフィカルユーザインタフェースを実装し、薬物送達デバイス102の起動および停止、マニュアルモードのための基礎およびボーラス計算機設定のプログラム、ならびに自動モードに特有の設定のプログラム(ハイブリッド閉ループまたは閉ループ)に使用される。
【0044】
ユーザアプリ160は、大きなテキスト、グラフィック、および画面上の指示を使用し、セットアッププロセスを通り、システム100を使用をするようにユーザを促すことができるグラフィカルユーザインターフェイス158を提供する。それはまた、ユーザに合わせた基礎インスリン送達プロファイルをプログラムし、薬物送達デバイス102のステータスをチェックし、インスリンのボーラス投与を開始し、患者のインスリン送達プロファイルに変更を加え、システム警告およびアラームを処理し、ユーザが自動モードとマニュアルモードとの間で切り替えることを可能にするためにも使用される。
【0045】
ユーザアプリ160は、1日の異なる時間帯のための基礎プロファイルまたは一時的な基礎プロファイルを設定するオプションを使用して、ユーザアプリ160がプログラムされた基礎速度およびボーラス量でインスリンを送達するマニュアルモードで動作するように構成され得る。コントローラ121はまた、ボーラス計算機に入力するために分析物センサ108によって提供されるセンサグルコースデータを使用して、マニュアルモードにおいてセンサ付きポンプとして機能する能力を有する。
【0046】
ユーザアプリ160は、ユーザアプリ160が複数の目標血糖値の使用を支援する自動モードで動作するように構成され得る。例えば、一実施形態では、目標血糖値は、110~150mg/dLの範囲内であり得、その増分は、10mg/dLごと、5mg/dLごと、または他の増分であり得るが、好ましくは10mg/dLごとの増分である。ユーザが経験することは、現在のセットアップの流れを反映しており、ここでは、医療提供者は、ユーザが基礎レート、グルコース目標値、およびボーラス計算機設定をプログラムすることを支援する。続いて、これらによってインスリン投与パラメータがユーザアプリ160に通知される。インスリン投与パラメータは、薬物送達デバイス102の各使用中に送達される1日の総インスリン(TDI)に基づいて時間経過と共に適合される。一時的な低血糖保護モードは、自動モードにおいて様々な時間の間、ユーザによって実施され得る。低血糖保護モードでは、アルゴリズムは、インスリン送達を減少させ、運動中など、インスリン感受性が高くなると予想される一時的な期間にわたって使用することを意図している。
【0047】
ユーザアプリ160(またはMDA129)は、過去のグルコース測定値および/または予測区間(例えば、60分)にわたる予測グルコースに基づいて、定期的なインスリンマイクロボーラスを提供することができる。最適な食後コントロールには、ユーザが現在のポンプ療法と同じ方法で食事ボーラスを与えることを必要とし得るが、ユーザアプリ160の通常の動作は、行わなかった食事ボーラスを補償し、持続的な高血糖を軽減する。ユーザアプリ160は、設定された目標グルコース値を実現し、維持しようとする目標に向けたコントロール戦略を使用し、それによって持続的な高血糖および低血糖の継続期間を短縮する。
【0048】
いくつかの実施形態では、ユーザデバイス105と分析物センサ108は互いに直接通信しなくてもよい。代わりに、分析物センサからのデータ(例えば、血糖測定値)は、リンク196を介して薬物送達デバイス102に通信され、その後、リンク194を介してユーザデバイス105に伝えられ得る。いくつかの実施形態では、分析物センサ108とユーザデバイス105との間の通信を可能にするために、分析物センサのシリアル番号がユーザアプリ160に入力されなければならない。
【0049】
ユーザアプリ160は、ボーラス計算機の使用を通じて、提案ボーラス投与量を計算する能力を提供することができる。ボーラス計算機は、摂取された炭水化物、直近の血糖測定値(または、フィンガースティックを使用する場合の血糖測定値)、プログラム可能な補正係数、インスリン対炭水化物比、目標グルコース値、および残存インスリン(IOB)に基づいて、提案ボーラス投与量を決定する際の補助とするために、ユーザの利便のため提供される。IOBは、任意のマニュアルによるボーラスおよびアルゴリズムによって送達されたインスリンを考慮して、ユーザアプリ160によって推計され、IOBは、基礎IOBとボーラスIOBとの間で分割されてもよく、基礎IOBは、アルゴリズムによって送達されたインスリンを考慮し、ボーラスIOBは、任意のボーラス送達を考慮する。
【0050】
実施形態の説明
本発明の主要な実施形態は、ウェアラブル薬物送達デバイス102によってユーザに周期的に送達される液体薬物、例えばインスリンの量の計算において使用される最適化アルゴリズムを簡略化するための方法に関する。主要な実施形態では、計算コストの高い最適化アルゴリズムを実行するのではなく、可能なすべての探索空間にわたる単純な段階的探索を実行して、総計算コストを抑制し、組込み形式で計算を実行できるようにすることができる。
【0051】
典型的な制御アルゴリズムは、提案された薬物投与量の出力を予測するために、制御されるシステムのモデルを利用することができる。このモデルは、ユーザに投与すべき最適な投与量を決定するために使用することができる。例えば、インスリン送達システムにおいて、ユーザのグルコースは、過去のグルコースとインスリン送達値の再帰的モデルとしてモデル化することができる。当業者であれば理解されるように、そのようなモデルであればどのようなものでも使用可能であるが、そのようなモデルの1つは、式(1)によって次のように表すことができる。
【数1】
ここで、kは、グルコースがモデル化されている現在のサイクルであり、Kはゲイン係数であり、b、b、b…はMDA129の各サイクルの重みであり、Gは現在のサイクルkの推定グルコースである。
【0052】
グルコースモデルは、将来のサイクルのグルコースレベルを予測するために再帰的に実行することができる。次のN番目のサイクル数における提案インスリン投与量I(k+N)の各シリーズについて、それらのサイクルにわたる異なるグルコース軌跡G(k+N)が計算され得る。次いで、この予定されたインスリン投与量およびグルコース軌跡の合計値は、以下の式(2)によって表される例示的なコストなど、標準的なコスト関数を計算することによって計算することができる。
【数2】
ここで、係数Qを有する左項は、グルコース設定値からのグルコース偏差のコストであり、係数Rを有する右項は、特定の基礎レートからのインスリン偏差のコストである。
【0053】
ここでも、当業者であれば理解できるように、任意のコスト関数を使用することができる。例示的なコスト関数は、米国特許出願第16/789,051号(米国公開特許出願第2021/0244881号)に詳細に記載されている。
【0054】
特定の実施形態では、グルコース偏差およびインスリン送達コストは、特定の目標(グルコース制御設定値および基礎インスリン送達など)に対する偏差を計算することなど、様々な方法で実行することができ、偏差は、2次またはより高い累乗など、様々な次数について計算することができる。
【0055】
典型的な応用例では、可能なグルコースとインスリンの各軌跡のコストを計算し、最小のコストを持つ軌跡を決定することは、計算コストの高い最適化アルゴリズムによって実行することができる。しかし、上記の概要で説明したように、多くの医療用途では、計算コストの高い最適化アルゴリズムは必要ない。
【0056】
インスリンポンプの典型的な最小分解能(例えば、0.05U)や、各用量が送達されるタイミングの短い時間内での変動は、ユーザの全体的なグルコース結果に大きな変化をもたらさないため、これは特にインスリン送達用途の場合に当てはまる。
【0057】
次に、すべての可能な探索空間にわたって実行される段階的アルゴリズムを説明し、図3にフローチャートの形で示す。段階的アルゴリズムのステップ302において、現在のサイクルの可能なグルコース送達量の範囲が決定される。典型的には、MDA129は、任意のサイクル中に、投与量が送達されないようにするか、または投与量が送達されないことを推奨するオプションを有するため、範囲の下限は0.0となる。可能なグルコース送達量の上限範囲または限界は、過剰なインスリンが送達されるのを防止するためにMDA129に組み込まれた安全制約によって、または任意の他の理由のために制約され得る。例えば、一実施形態では、送達範囲は、1サイクル当たり0.0Uと0.6Uとの間に設定され得る。開示された方法の説明のために、この例示的な範囲が使用される。
【0058】
ステップ304で、範囲は、粗離散量からなる粗探索空間に画定される。例えば、0U~0.6Uの例示的な範囲では、探索空間は0.1Uの粗離散量に区切られることがある。従って、粗く区切られた探索空間は、0.0U、0.1U、0.2U、0.3U、0.4U、0.5U、0.6Uのように区切られることになる。当業者であれば理解できるように、薬物送達デバイスの最小送達分解能に対して粗いものであれば、どのような粗離散量でも範囲を画定するために使用することができる。
【0059】
ステップ306で、粗探索空間が最適化される。探索空間は、粗最適インスリン送達を決定することによって初めに狭められることができる。具体的には、続くNサイクルにおけるすべてのインスリン送達率が、当該探索空間内に粗離散量で固定値で設定することができ、対応するグルコース軌跡を計算することができる。
【0060】
説明例では、式(1)で表現された再帰的モデルは、7回計算され得、ここで、各回のI(k+1)…I(k+N)は粗探索空間での各量で計算されるとする。そして、対応するコストは、コスト関数を用いて計算することができ、その一例は式(2)で表される。説明例では、この結果、以下の例示的な計算となる。
【表1】
【0061】
このように、例示的なモデルとコスト関数によれば、次のサイクルで0.3Uのグルコースを投与するのが最も低コストとなる。
【0062】
ステップ308で、探索空間の粗い区切りが精密化される。探索空間は、最も低いコスト(説明の例では、0.3U)を有する粗離散量の周りのより小さい領域に絞られる。探索空間の2回目の精密化された区切りでは、最初のインスリン送達(すなわち、I(k+1))検索空間は、ユーザに提供されるべき実際のインスリン送達がより詳細な分解能で提供されるために、最も低いコストを有する粗離散量を中心とする、より微小な増分に分割することができる。残りのデータセットの探索空間(すなわち、I(k+2)…I(k=N))の探索空間は、粗離散量を使用して評価することができる。
【0063】
上記説明例では、探索空間は狭められ、0.3Uを中心としている。従って、最初の予定インスリン送達は、より微小な増分(例えば、0.025U)で0.2Uと0.4Uの間になるように定義することができ、残りの予測インスリン送達は、同じ増分またはより粗い増分(例えば、0.05U)で0.2Uと0.4Uの間になるように定義することができるが、好ましくは、計算要件を減らすために、より粗い増分で定義する。当業者であれば理解できるように、より微小な増分は任意の所望の量とすることができ、一方、範囲は任意の範囲とすることができ、好ましくは、最小コストを有する粗い解を中心とする。ステップ310では、精密化された探索空間を最適化することができる。説明例では、計算により以下の結果が得られる。
【表2】
【0064】
このように、説明例では、合計52回の計算しか必要とされなかった。これには、粗探索空間の最適化ステップ306における7回の計算と、精密化された探索空間の最適化ステップ310における45回の計算が含まれる(9[0.2、0.225、0.25、0.275、0.3、0.325、0.35、0.375、0.4]×5[0.2、0.25、0.3、0.35、0.4])。異なる区間および範囲が選択された他の実施形態では、ステップ306および310の両方で必要とされる計算の総数が変化する可能性がある。しかし、粗探索空間および精密化された探索空間の段階的探索は、従来の計算コストの高い最適化アルゴリズムを実行するよりもはるかに計算効率が良い。
【0065】
最後に、ステップ312で、推奨インスリン投与量が最終決定される。第2の精密化された探索空間において最小のコストを提供する解は、推奨されるインスリン送達軌跡として提供され得る。上記説明例では、上記に見られるように、コスト関数の最小の計算は、0.375区間で起こり、従って、現在のサイクルの推奨インスリン送達投与量は、0.375Uであろう。314では、上記で説明したように、推奨投与量が薬物送達デバイス102によってユーザに送達される。
【0066】
推奨投与量が薬物送達デバイス102の分解能内に収まらない場合、実際に送達される投与量は、分解能に基づいて、薬物送達デバイス102が送達可能な最も近い離散増分に切り上げまたは切り捨てられる可能性があることに留意されたい。薬物送達デバイス102の増分離散分解能の間に位置する残余分は、次のサイクルの推奨投与量に加算されるか、または推奨投与量から減算される。
【0067】
上記のプロセスは、MDA129の各サイクルについて繰り返される。一実施形態では、MDA129は、他の間隔が選択されてもよいが、5分毎にサイクルを実行してもよい。
【0068】
前述したように、開示された方法によって使用される様々な探索空間と分解能パラメータは、広く調整可能であることに留意することが重要である。例えば、粗間隔の計算では、説明例で使用したような0.1Uの分解能ではなく、0.2Uに分解能を落とすことができる。
【0069】
全体として、開示された方法は、グルコースモデルとコスト関数の計算の反復回数を著しく少なくする。上記説明例で提供された52回の計算は、広範で多変量の探索空間を持つ典型的な最適化アルゴリズムよりも、計算の負担が著しく少ない。薬物投与推奨の分解能は、それでもなお薬物送達メカニズムの分解能の範囲内である。
【0070】
以下の実施例は、ユーザに送達される薬物の可能な量の探索空間の段階的探索を提供することにより、薬物の最適送達を決定する方法を提供するための、本明細書に開示されるシステムおよび方法の様々な実施形態に関する。
【0071】
実施例1は、粗探索空間を定義するステップと、粗探索空間内の各離散量についてモデルおよびコスト関数を評価するステップと、精密化された探索空間を定義するステップと、精密化された探索空間にわたってモデルおよびコスト関数を評価するステップと、最も低いコストを有する精密化された離散量を薬物の推奨投与量として選択するステップとを備える方法である。
【0072】
実施例2は、実施例1、または本明細書に開示された他の実施例の拡張であって、ベースは、粗探索空間で使用される離散量よりも小さい離散量を使用する。
【0073】
実施例3は、実施例1、または本明細書に開示された他の実施例の拡張であって、精密化された探索空間は、粗探索空間よりも小さい。
【0074】
実施例4は、実施例1、または本明細書に開示された他の実施例の拡張であって、薬物の可能な投与量の範囲は、ゼロから薬剤送達アルゴリズムによって決定される最大量までである。
【0075】
実施例5は、実施例4、または本明細書に開示された他の実施例の拡張であって、最大量は、薬剤送達アルゴリズムに組み込まれた安全制約に依存する。
【0076】
実施例6は、実施例1、または本明細書に開示された他の実施例の拡張であって、薬物は、ウェアラブル薬物送達装置によって送達されるインスリンである。
【0077】
実施例7は、実施例6、または本明細書に開示された他の実施例の拡張であって、モデルは、特定量のインスリン送達に基づいて、所定数の将来のサイクルにおけるユーザのグルコースレベルを予測するために使用される再帰的グルコースモデルであった。
【0078】
実施例8は、実施例7、または本明細書に開示される他の実施例の拡張であって、コスト関数は、可能なグルコースおよびインスリンの各軌跡のコストを計算し、最も低いコストを有する軌跡を決定する。
【0079】
実施例9は、実施例8、または本明細書に開示された他の実施例の拡張であって、コスト関数は、グルコース偏差およびインスリン送達に基づいており、グルコース偏差は、特定の目標に対して計算される。
【0080】
実施例10は、プロセッサと、プロセッサによって実行される薬剤送達アルゴリズムを実装するソフトウェアとを備えるシステムであり、ソフトウェアは、粗探索空間を定義する機能と、コア探索空間内の各離散量についてモデルおよびコスト関数を評価する機能と、精密化された探索空間を決定する機能と、精密化された探索空間にわたってモデルおよびコスト関数を評価する機能と、最も低いコストを有する精密化された離散量を薬物の推奨投与量として選択する機能とを実行することによって、薬物送達アルゴリズムの現在のサイクルに対する薬物の推奨投与量を決定する。
【0081】
実施例11は、実施例10、または本明細書に開示された他の実施例の拡張であって、推奨投与量の薬物をユーザに送達するための薬物送達デバイスをさらに含む。
【0082】
実施例12は、実施例11、または本明細書に開示された他の実施例の拡張であって、プロセッサおよびソフトウェアは、薬物送達デバイスと一体的である。
【0083】
実施例13は、実施例10、または本明細書に開示された他の実施例の拡張であって、精密化された離散量は、粗離散量よりも小さい。
【0084】
実施例14は、実施例10、または本明細書に開示された他の例の拡張であって、精密化された探索空間は粗探索空間よりも小さい。
【0085】
実施例15は、実施例10、または本明細書に開示された他の実施例の拡張であって、薬物の可能な投与量の範囲は、ゼロから、薬剤送達アルゴリズムによって決定される最大量までである。
【0086】
実施例16は、実施例15、または本明細書に開示された他の実施例の拡張であって、最大量は、薬物送達アルゴリズムに組み込まれた安全制約に依存する。
【0087】
実施例17は、実施例11、または本明細書に開示された他の実施例の拡張であって、薬物は、ウェアラブル薬物送達デバイスによって送達されるインスリンである。
【0088】
実施例18は、実施例17、または本明細書に開示された他の実施例の拡張であって、モデルは、特定量のインスリン送達に基づいて、所定数の将来のサイクルにおけるユーザのグルコースレベルを予測するために使用される再帰的グルコースモデルである。
【0089】
実施例19は、実施例18、または本明細書に開示される他の実施例の拡張であって、コスト関数は、可能なグルコースおよびインスリンの各軌跡のコストを計算し、最も低いコストを有する軌跡を決定する。
【0090】
実施例20は、実施例19、または本明細書に開示された他の実施例の拡張であって、コスト関数は、グルコース偏差およびインスリン送達偏差に基づいており、グルコース偏差は、特定の目標に対して計算される。
【0091】
本明細書で説明する技術のソフトウェアに関連する実装としては、ファームウェア、特定用途向けソフトウェア、または1つ若しくは複数のプロセッサによって実行され得る任意の他のタイプの、コンピュータ可読命令が含まれ得るが、これらに限定されない。コンピュータ可読命令は、非一時的なコンピュータ可読の媒体を介して提供され得る。本明細書で述べる技術のハードウェアに関連する実装には、集積回路(IC)、特定用途向けIC(ASIC)、フィールドプログラマブルアレイ(FPGA)、および/またはプログラマブルロジックデバイス(PLD)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの例では、本明細書で述べる技術、および/または本明細書で述べるいずれのシステムもしくは構成コンポーネントも、1つまたは複数のメモリコンポーネント上に記憶されたコンピュータ可読命令を実行するプロセッサを用いて実行され得る。
【0092】
本発明が関連する技術分野の当業者は、本発明の多くの変更および適応を実現し得る。調整可能なパラメータの値を含む、本明細書で提供される実装形態は、例示的なものとみなされるべきであり、本発明をいかなる意味においても限定するものではない。当業者であれば理解するように、本明細書で述べた実装形態の多くの変形が可能であり、本発明の範囲内に入る。さらに、本明細書で説明した様々な実施形態の特徴は、相互に排他的なものではなく、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、そのような組み合わせまたは順列が本明細書で明示されなかったとしても、様々な組み合わせおよび順列で存在し得ることを理解されたい。したがって、本明細書に開示された方法および装置は、本発明の限定としてではなく、その例示として捉えられるべきである。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-07-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年12月1日に出願された米国特許出願第17/539,270号の継続出願であり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0092
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0092】
本発明が関連する技術分野の当業者は、本発明の多くの変更および適応を実現し得る。調整可能なパラメータの値を含む、本明細書で提供される実装形態は、例示的なものとみなされるべきであり、本発明をいかなる意味においても限定するものではない。当業者であれば理解するように、本明細書で述べた実装形態の多くの変形が可能であり、本発明の範囲内に入る。さらに、本明細書で説明した様々な実施形態の特徴は、相互に排他的なものではなく、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、そのような組み合わせまたは順列が本明細書で明示されなかったとしても、様々な組み合わせおよび順列で存在し得ることを理解されたい。したがって、本明細書に開示された方法および装置は、本発明の限定としてではなく、その例示として捉えられるべきである。
[構成1]
自動薬物送達システムにおける薬剤送達の現在のサイクルでの可能な薬物送達量の探索空間を決定すること;
前記探索空間を解の範囲に分けること;
コスト関数を最小化する解の範囲で選択範囲を決定することによって、前記探索空間を狭めること;
前記選択範囲を、第1の薬物送達のための精密化された値のリストであって、第1の微小増分によって分けられる前記精密化された値のリスト、に分けること;
前記精密化された値のリストにおける前記第1の薬物送達に続く一組の後続送達であって、第2の粗増分によって分けられる前記一組の後続送達、を評価すること;および
前記コスト関数を最小化する前記一組の後続送達に基づく解を選択すること
を備える、方法。
[構成2]
前記第1の微小増分は、前記第2の粗増分よりも小さい、構成1に記載の方法。
[構成3]
前記探索空間を解の範囲に分けることは、第3の粗増分を用いて実行される、構成1に記載の方法。
[構成4]
前記可能な薬物送達量の探索空間は、ゼロから、1つまたは複数の安全制約による最大量、までの範囲である、構成1に記載の方法。
[構成5]
薬物は、インスリンであり、前記自動薬物送達システムは、ウェアラブル薬物送達デバイスの一部である、構成1に記載の方法。
[構成6]
前記選択範囲を決定することは、インスリンの特定量の送達に基づき、所定数の将来のサイクルにおける前記自動薬物送達システムのユーザのグルコースレベルを予測するように構成された再帰的グルコースモデルを評価すること、を含む、構成1に記載の方法。
[構成7]
前記コスト関数は、可能なグルコースおよびインスリンの各軌跡のコストを計算し、コストが最も低い前記軌跡を決定する、構成6に記載の方法。
[構成8]
非一時的なコンピュータ可読の媒体であって、
自動薬物送達システムにおける薬剤送達の現在のサイクルでの可能な薬物送達量の探索空間を決定し;
前記探索空間を解の範囲に分け;
コスト関数を最小化する解の範囲で選択範囲を決定することによって、前記探索空間を狭め;
前記選択範囲を、第1の薬物送達のための精密化された値のリストであって、第1の微小増分によって分けられる前記精密化された値のリスト、に分け;
前記精密化された値のリストにおける前記第1の薬物送達に続く一組の後続送達であって、第2の粗増分によって分けられる前記一組の後続送達、を評価し;および
前記コスト関数を最小化する前記一組の後続送達に基づく解を選択する
ことを、プロセッサに実行させるように構成された命令を記憶する、非一時的なコンピュータ可読の媒体。
[構成9]
前記第1の微小増分は、前記第2の粗増分よりも小さい、構成8に記載の媒体。
[構成10]
前記探索空間を解の範囲に分けることは、第3の粗増分を用いて実行される、構成8に記載の媒体。
[構成11]
前記可能な薬物送達量の探索空間は、ゼロから、1つまたは複数の安全制約による最大量、までの範囲である、構成8に記載の媒体。
[構成12]
前記薬物は、インスリンであり、前記自動薬物送達システムは、ウェアラブル薬物送達デバイスの一部である、構成8に記載の媒体。
[構成13]
前記選択範囲を決定することは、インスリンの特定量の送達に基づき、所定数の将来のサイクルにおける前記自動薬物送達システムのユーザのグルコースレベルを予測するように構成された再帰的グルコースモデルを評価すること、を含む、構成8に記載の媒体。
[構成14]
前記コスト関数は、可能なグルコースおよびインスリンの各軌跡のコストを計算し、コストが最も低い前記軌跡を決定する、構成14に記載の媒体。
[構成15]
薬物を貯蔵するように構成されたリザーバと;
ユーザに前記薬物を投与するように構成された薬物送達デバイスと;
プロセッサと;
非一時的なコンピュータ可読の媒体であって、
薬剤送達の現在のサイクルでの可能な薬物送達量の探索空間を決定し;
前記探索空間を解の範囲に分け;
コスト関数を最小化する解の範囲で選択範囲を決定することによって、前記探索空間を狭め;
前記選択範囲を、第1の薬物送達のための精密化された値のリストであって、第1の微小増分によって分けられる前記精密化された値のリスト、に分け;
前記精密化された値のリストにおける前記第1の薬物送達に続く一組の後続送達であって、第2の粗増分によって分けられる前記一組の後続送達、を評価し;および
前記コスト関数を最小化する前記一組の後続送達に基づく解を選択する
ことを、前記プロセッサに実行させるように構成された命令を記憶する、非一時的なコンピュータ可読の媒体と
を備える、自動薬物送達のシステム。
[構成16]
前記第1の微小増分は、前記第2の粗増分よりも小さい、構成15に記載のシステム。
[構成17]
前記探索空間を解の範囲に分けることは、第3の粗増分を用いて実行される、構成15に記載のシステム。
[構成18]
前記可能な薬物送達量の探索空間は、ゼロから、1つまたは複数の安全制約による最大量、までの範囲である、構成15に記載のシステム。
[構成19]
前記薬物は、インスリンであり、前記自動薬物送達のシステムは、ウェアラブル薬物送達デバイスの一部である、構成15に記載のシステム。
[構成20]
前記選択範囲を決定することは、インスリンの特定量の送達に基づき、所定数の将来のサイクルにおける前記ユーザのグルコースレベルを予測するように構成された再帰的グルコースモデルを評価すること、を含む、構成15に記載のシステム。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動薬物送達システムにおける薬剤送達の現在のサイクルでの可能な薬物送達量の探索空間を決定すること;
前記探索空間を解の範囲に分けること;
コスト関数を最小化する解の範囲で選択範囲を決定することによって、前記探索空間を狭めること;
前記選択範囲を、第1の薬物送達のための精密化された値のリストであって、第1の微小増分によって分けられる前記精密化された値のリスト、に分けること;
前記精密化された値のリストにおける前記第1の薬物送達に続く一組の後続送達であって、第2の粗増分によって分けられる前記一組の後続送達、を評価すること;および
前記コスト関数を最小化する前記一組の後続送達に基づく解を選択すること
を備える、方法。
【請求項2】
前記第1の微小増分は、前記第2の粗増分よりも小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記探索空間を解の範囲に分けることは、第3の粗増分を用いて実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記可能な薬物送達量の探索空間は、ゼロから、1つまたは複数の安全制約による最大量、までの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
薬物は、インスリンであり、前記自動薬物送達システムは、ウェアラブル薬物送達デバイスの一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記選択範囲を決定することは、インスリンの特定量の送達に基づき、所定数の将来のサイクルにおける前記自動薬物送達システムのユーザのグルコースレベルを予測するように構成された再帰的グルコースモデルを評価すること、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記コスト関数は、可能なグルコースおよびインスリンの各軌跡のコストを計算し、コストが最も低い前記軌跡を決定する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
非一時的なコンピュータ可読の媒体であって、
自動薬物送達システムにおける薬剤送達の現在のサイクルでの可能な薬物送達量の探索空間を決定し;
前記探索空間を解の範囲に分け;
コスト関数を最小化する解の範囲で選択範囲を決定することによって、前記探索空間を狭め;
前記選択範囲を、第1の薬物送達のための精密化された値のリストであって、第1の微小増分によって分けられる前記精密化された値のリスト、に分け;
前記精密化された値のリストにおける前記第1の薬物送達に続く一組の後続送達であって、第2の粗増分によって分けられる前記一組の後続送達、を評価し;および
前記コスト関数を最小化する前記一組の後続送達に基づく解を選択する
ことを、プロセッサに実行させるように構成された命令を記憶する、非一時的なコンピュータ可読の媒体。
【請求項9】
前記第1の微小増分は、前記第2の粗増分よりも小さい、請求項8に記載の媒体。
【請求項10】
前記探索空間を解の範囲に分けることは、第3の粗増分を用いて実行される、請求項8に記載の媒体。
【請求項11】
前記可能な薬物送達量の探索空間は、ゼロから、1つまたは複数の安全制約による最大量、までの範囲である、請求項8に記載の媒体。
【請求項12】
前記薬物は、インスリンであり、前記自動薬物送達システムは、ウェアラブル薬物送達デバイスの一部である、請求項8に記載の媒体。
【請求項13】
前記選択範囲を決定することは、インスリンの特定量の送達に基づき、所定数の将来のサイクルにおける前記自動薬物送達システムのユーザのグルコースレベルを予測するように構成された再帰的グルコースモデルを評価すること、を含む、請求項8に記載の媒体。
【請求項14】
前記コスト関数は、可能なグルコースおよびインスリンの各軌跡のコストを計算し、コストが最も低い前記軌跡を決定する、請求項に記載の媒体。
【請求項15】
薬物を貯蔵するように構成されたリザーバと;
ユーザに前記薬物を投与するように構成された薬物送達デバイスと;
プロセッサと;
非一時的なコンピュータ可読の媒体であって、
薬剤送達の現在のサイクルでの可能な薬物送達量の探索空間を決定し;
前記探索空間を解の範囲に分け;
コスト関数を最小化する解の範囲で選択範囲を決定することによって、前記探索空間を狭め;
前記選択範囲を、第1の薬物送達のための精密化された値のリストであって、第1の微小増分によって分けられる前記精密化された値のリスト、に分け;
前記精密化された値のリストにおける前記第1の薬物送達に続く一組の後続送達であって、第2の粗増分によって分けられる前記一組の後続送達、を評価し;および
前記コスト関数を最小化する前記一組の後続送達に基づく解を選択する
ことを、前記プロセッサに実行させるように構成された命令を記憶する、非一時的なコンピュータ可読の媒体と
を備える、自動薬物送達のシステム。
【請求項16】
前記第1の微小増分は、前記第2の粗増分よりも小さい、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記探索空間を解の範囲に分けることは、第3の粗増分を用いて実行される、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記可能な薬物送達量の探索空間は、ゼロから、1つまたは複数の安全制約による最大量、までの範囲である、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記薬物は、インスリンであり、前記自動薬物送達のシステムは、ウェアラブル薬物送達デバイスの一部である、請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
前記選択範囲を決定することは、インスリンの特定量の送達に基づき、所定数の将来のサイクルにおける前記ユーザのグルコースレベルを予測するように構成された再帰的グルコースモデルを評価すること、を含む、請求項15に記載のシステム。
【国際調査報告】