(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-27
(54)【発明の名称】抗CD95Lモノクローナル中和抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20241120BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241120BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241120BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241120BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241120BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241120BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241120BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241120BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241120BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241120BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20241120BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20241120BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241120BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20241120BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20241120BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241120BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20241120BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20241120BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20241120BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20241120BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241120BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20241120BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241120BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20241120BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241120BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20241120BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20241120BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241120BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20241120BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241120BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20241120BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20241120BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20241120BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241120BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241120BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20241120BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20241120BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61P37/02
A61P35/00
A61P31/14
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P19/06
A61P17/06
A61P17/00
A61P19/00
A61P17/02
A61P9/10
A61P1/04
A61P11/00
A61P7/00
A61P27/02
A61P27/16
A61P13/12
A61P7/06
A61P7/04
A61P25/00
A61P21/04
A61P1/16
A61P25/08
A61P25/04
A61P15/00
A61P25/28
A61P31/04
A61P31/12
A61P1/18
A61P9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533122
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2022083881
(87)【国際公開番号】W WO2023099578
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】513246469
【氏名又は名称】インサーム(インスティテュ ナシオナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル)
【氏名又は名称原語表記】INSERM(INSTITUT NATIONAL DELA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE)
(71)【出願人】
【識別番号】512132491
【氏名又は名称】エタブリスモン フランセ ドュ サン
【氏名又は名称原語表記】ETABLISSEMENT FRANCAIS DU SANG
【住所又は居所原語表記】20 avenue du Stade de France, F-93218 La Plaine Saint Denis, FRANCE
(71)【出願人】
【識別番号】524208788
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドゥ レンヌ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE RENNES
(71)【出願人】
【識別番号】514058706
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】516324917
【氏名又は名称】サントル・オスピタリエ・ユニベルシテール・ドゥ・ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】524207596
【氏名又は名称】サントル オスピタリエ ユニヴェルシテール ドゥ レンヌ
【氏名又は名称原語表記】CENTRE HOSPITALIER UNIVERSITAIRE DE RENNES
(71)【出願人】
【識別番号】511135813
【氏名又は名称】アンスティテュ ベルゴニエ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【氏名又は名称】藤野 香子
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】レジェンブル,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ヴァシェール,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】コニェ,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ブランコ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ダンジェール,ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】ヴェリテ,フランク
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085BB17
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
発明者らは、JQ3(IgG1Κ)と呼ばれる、抗CD95Lモノクローナル中和抗体(mAb)を作製した。特に、JQ3の中和効果を確認しており、これは、この自家製モノクローナル抗体が、T細胞株ジャーカットにおいて誘導されるCD95媒介アポトーシスシグナリング経路を、NOK-1mAbよりも効率的に阻害したことによる。興味深い点として、JQ3は、様々な炎症性病態(COVID19患者および抗好中球細胞質自己抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)患者)の血清に曝露した好中球において、CD95媒介Ca2+応答を遮断した。したがって、本発明は、JQ3と呼ぶ、抗CD95Lモノクローナル中和抗体に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-相補性決定領域CDR1L、CDR2L、およびCDR3Lを含むVLドメインであって、前記CDR1Lはアミノ酸配列SSVSY(配列番号3)を有し、前記CDR2Lはアミノ酸配列NTF(配列番号4)を有し、前記CDR3Lはアミノ酸配列HQWSSYPT(配列番号5)を有するVLドメイン、ならびに、
-相補性決定領域CDR1H、CDR2H、およびCDR3Hを含むVHドメインであって、前記CDR1Hはアミノ酸配列GFSFTDYI(配列番号7)を有し、前記CDR2Hはアミノ酸配列ISPYYGTA(配列番号8)を有し、前記CDR3Hはアミノ酸配列ARAPNRYEVMDY(配列番号9)を有するVHドメインを有する、抗CD95Lモノクローナル中和抗体。
【請求項2】
キメラ抗体である、
請求項1に記載の抗CD95Lモノクローナル中和抗体。
【請求項3】
ヒト化抗体である、
請求項1に記載の抗CD95Lモノクローナル中和抗体。
【請求項4】
配列番号1と少なくとも70%の同一性を有するVLドメイン、および/または配列番号5と少なくとも70%の同一性を有するVHドメインを含む、
請求項1に記載の抗CD95Lモノクローナル中和抗体。
【請求項5】
本発明の前記抗体の前記VHドメインおよび/または前記VLドメインは、保存的配列修飾を含む、
請求項1に記載の抗CD95Lモノクローナル中和抗体。
【請求項6】
請求項1に記載の抗CD95Lモノクローナル中和抗体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項1に記載の抗CD95Lモノクローナル中和抗体のVHドメインおよび/またはVLドメインをコードする、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項6に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項9】
請求項6に記載のポリヌクレオチドおよび/または請求項8に記載のベクターによって遺伝子導入された、感染した、または形質転換した宿主細胞。
【請求項10】
薬剤としての使用のための、
請求項1に記載の抗CD95Lモノクローナル中和抗体。
【請求項11】
治療を必要とする患者における治療の方法であって、治療有効量の請求項1に記載の抗CD95Lモノクローナル中和抗体を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項12】
処置を必要とする患者におけるがんの処置の方法であって、治療有効量の請求項1に記載の抗CD95Lモノクローナル中和抗体を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項13】
前記患者は、乳がん、結腸がん、肺がん、前立腺がん、精巣がん、脳がん、皮膚がん、直腸がん、胃がん、食道がん、肉腫、気管がん、頭頸部がん、膵臓がん、肝臓がん、卵巣がん、リンパがん、子宮頸がん、外陰がん、メラノーマ、中皮腫、腎臓がん、膀胱がん、甲状腺がん、骨がん、癌腫、肉腫、および軟部組織がんからなる群より選択されるがんに罹患している、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記患者は、トリプルネガティブ乳がんに罹患している、
請求項12に記載の方法。
【請求項15】
処置を必要とする患者における炎症性疾患の処置の方法であって、治療有効量の請求項1に記載の抗CD95Lモノクローナル中和抗体を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項16】
前記炎症性疾患は、関節炎、関節リウマチ、急性関節炎、慢性関節リウマチ、痛風関節炎、急性痛風関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節炎(degenerative arthritis)、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、椎骨関節炎(vertebral arthritis)、および若年発症型関節リウマチ、変形性関節症(osteoarthritis)、慢性進行性関節炎、変形性関節症(arthritis deformans)、慢性原発性多発性関節炎、反応性関節炎、および強直性脊椎炎、炎症性過剰増殖性皮膚疾患、乾癬、例えば、尋常性乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬、および爪の乾癬、接触皮膚炎、慢性接触皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、疱疹状皮膚炎、およびアトピー性皮膚炎を含む皮膚炎、X連鎖高IgM症候群、慢性自己免疫性じん麻疹を含む、じん麻疹、例えば慢性アレルギー性じん麻疹および慢性特発性じん麻疹、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性表皮壊死症、強皮症、全身性強皮症、硬化症、全身性硬化症、多発性硬化症(MS)、脊髄視神経型(spino-optical)MS、一次進行型MS(PPMS)、および再発寛解型MS(RRMS)、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、汎発性硬化症(sclerosis disseminata)、および失調性硬化症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、大腸炎、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)、潰瘍性大腸炎(colitis ulcerosa)、顕微鏡的大腸炎、コラーゲン性大腸炎、ポリープ様大腸炎(colitis polyposa)、壊死性腸炎、全層性大腸炎、自己免疫性炎症性腸疾患、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、上強膜炎、呼吸促迫症候群、成人または急性呼吸促迫症候群(ARDS)、髄膜炎、ブドウ膜の全部または一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫性血液疾患、リウマチ性脊椎炎、突発性難聴、IgE介在性疾患、例えばアナフィラキシー、およびアレルギー性およびアトピー性鼻炎、脳炎、ラスムッセン脳炎、辺縁系脳炎および/または脳幹脳炎、ブドウ膜炎、前部ブドウ膜炎、急性前部ブドウ膜炎、肉芽腫性ブドウ膜炎、非肉芽腫性ブドウ膜炎、水晶体抗原性(phacoantigenic)ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、自己免疫性ブドウ膜炎、糸球体腎炎(GN)、特発性膜性GNまたは特発性膜性腎障害、膜増殖性(membrano proliferative)または膜性増殖性(membranous proliferative)GN(MPGN)、急速進行性GN、アレルギー性病態、自己免疫性心筋炎、白血球粘着不全症、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus)(SLE)、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematodes)、例えば皮膚SLE、亜急性皮膚エリテマトーデス、新生児ループス症候群(NLE)、汎発性エリテマトーデス(lupus erythematosus disseminatus)、ループス(腎炎、脳炎、小児期発症型(pediatric)、非腎性、腎外、円板状、脱毛性を含む)、小児インスリン依存性糖尿病(IDDM)を含む若年発症型(I型)糖尿病、成人発症型糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫性糖尿病、特発性尿崩症、サイトカインおよびTリンパ球の介在による急性および遅延型過敏症に関連した免疫応答、結核、サルコイドーシス、肉芽腫症、リンパ腫様肉芽腫症、ウェゲナー肉芽腫症、無顆粒球症、血管炎、大型血管炎、リウマチ性多発筋痛症、巨細胞(高安)動脈炎、中型血管炎、川崎病、結節性多発動脈炎、顕微鏡的多発動脈炎、CNS血管炎、壊死性、皮膚、過敏性の血管炎、全身性壊死性血管炎、および、ANCA関連血管炎、例えばチャーグ-ストラウス血管炎または症候群(CSS)など、側頭動脈炎を含む血管炎、再生不良性貧血、自己免疫性再生不良性貧血、クームス陽性貧血、ダイアモンド-ブラックファン貧血、溶血性貧血、または自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を含む免疫性溶血性貧血、悪性貧血(pernicious anemia)(悪性貧血(anemia perniciosa))、アジソン病、赤芽球性貧血または赤芽球ろう(PRCA)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球遊出に関与する疾患、CNS炎症性障害、多臓器傷害症候群、例えば敗血症、外傷、または出血に続発するものなど、抗原抗体複合体介在性疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット(Bechet’s)またはベーチェット病、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス-ジョンソン症候群、類天疱瘡、例えば水疱性類天疱瘡および皮膚類天疱瘡、天疱瘡、任意で尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、粘膜類天疱瘡、紅斑性天疱瘡、自己免疫性多腺性内分泌障害、ライター病または症候群、免疫複合体性腎炎、抗体介在性腎炎、視神経脊髄炎、多発ニューロパチー、慢性ニューロパチー、IgM多発ニューロパチー、IgM介在性ニューロパチー、血小板減少症、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、自己免疫性精巣炎および卵巣炎、原発性甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、亜急性甲状腺炎、自己免疫性甲状腺疾患、特発性甲状腺機能低下症、グレーブス病、多腺性症候群、例えば自己免疫性多腺性症候群(または多腺性内分泌症候群)、神経性腫瘍随伴症候群を含む腫瘍随伴症候群、例えばランバート-イートン筋無力症候群またはイートン-ランバート症候群、スティッフマンまたはスティッフパーソン症候群、脳脊髄炎、アレルギー性脳脊髄炎、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、重症筋無力症、胸腺腫関連重症筋無力症、小脳変性症、神経性筋強直症、オプソクローヌスまたはオプソクローヌス-ミオクローヌス症候群(OMS)、および感覚性ニューロパチー、多巣性運動ニューロパチー、シーハン症候群、自己免疫性肝炎、慢性肝炎、ルポイド肝炎、巨細胞肝炎、慢性活動性肝炎または自己免疫性慢性活動性肝炎、リンパ性間質性肺炎、閉塞性細気管支炎(非移植)とNSIP、ギラン-バレー症候群、ベルジェ病(IgA腎症)、特発性IgA腎症、線状IgA皮膚症、原発性胆汁性肝硬変、肺硬変(pneumonocirrhosis)、自己免疫性腸症症候群、セリアック病(Celiac disease)、セリアック病(Coeliac disease)、セリアックスプルー(グルテン腸症)、難治性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー-ゲーリック病)、冠動脈疾患、自己免疫性耳疾患、例えば自己免疫性内耳疾患(AGED)、自己免疫性難聴など、オプソクローヌス-ミオクローヌス症候群(OMS)、多発性軟骨炎、例えば難治性または再発性多発性軟骨炎など、肺胞蛋白症、アミロイドーシス、強膜炎、非癌性リンパ球増加症、モノクローナルB細胞リンパ球増加症、任意で、良性モノクローナル免疫グロブリン血症または意義不明のモノクローナル免疫グロブリン血症(MGUS)を含む原発性リンパ球増加症、末梢性ニューロパチー、腫瘍随伴症候群、チャネル病、例えばてんかん、片頭痛、不整脈、筋障害、聴覚消失、失明、周期性四肢麻痺、およびCNSのチャネル病など、自閉症、炎症性ミオパチー、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼症、網膜ブドウ膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝障害、線維筋痛症、多発性内分泌不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮症、初老期認知症、脱髄疾患、例えば自己免疫性脱髄疾患など、糖尿病性腎症、ドレッスラー症候群、円形脱毛症、クレスト症候群(石灰化症、レイノー現象、食道運動障害、強指症、および毛細血管拡張症)、男性および女性の自己免疫性不妊症、混合性結合組織病、シャガス病、リウマチ熱、不育症、農夫肺、多形紅斑、心膜切開後症候群、クッシング症候群、鳥飼病、アレルギー性肉芽腫性血管炎、良性リンパ球性血管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えばアレルギー性肺胞炎および線維性肺胞炎など、間質性肺疾患、輸血反応、ハンセン病、マラリア、リーシュマニア症、キパノソーマ症(kypanosomiasis)、住血吸虫症、回虫症、アスペルギルス症、サムプター症候群(Sampter’s syndrome)、カプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維症、びまん性間質性肺線維症、間質性肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性(elevatum et diutinum)紅斑、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シャルマン症候群、フェルティー症候群、フィラリア症、毛様体炎、例えば慢性毛様体炎、異色性毛様体炎、虹彩毛様体炎、またはフックス毛様体炎など、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、エコーウイルス感染症、心筋症、アルツハイマー病、パルボウイルス感染症、風疹ウイルス感染症、予防接種後症候群、先天性風疹感染、エプスタイン-バーウイルス感染症、流行性耳下腺炎、エバンス症候群、自己免疫性性腺機能不全、シデナム舞踏病、レンサ球菌感染後腎炎、血栓血管炎(thromboangitis ubiterans)、甲状腺中毒症、脊髄ろう、脈絡膜炎、巨細胞多発性筋痛症、内分泌性眼症、慢性過敏性肺炎、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、特発性腎炎症候群、微小変化型腎症、良性家族性および虚血再潅流傷害、網膜自己免疫、関節炎、気管支炎、慢性閉塞性気道疾患、珪肺症、アフタ症、アフタ性口内炎、動脈硬化性障害、無精子形成(aspermiogenese)、自己免疫性溶血、ベック病、クリオグロブリン血症、デュピュイトラン拘縮、水晶体過敏性眼内炎(endophthalmia phacoanaphylactica)、アレルギー性腸炎、らい性結節性紅斑、特発性顔面神経麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ性発熱(febris rheumatica)、ハンマン-リッチ病、感音難聴、発作性ヘモグロビン尿症(haemoglobinuria paroxysmatica)、性腺機能低下症、限局性回腸炎(ileitis regionalis)、白血球減少症、伝染性単核球症(mononucleosis infectiosa)、横断性脊髄炎、原発性特発性粘液水腫、ネフローゼ、交感性眼炎(ophthalmia symphatica)、肉芽種性精巣炎、膵炎、(例えば慢性膵炎)、急性多発性神経根炎(polyradiculitis acuta)、壊疽性膿皮症、ケルバン甲状腺炎、後天性脾臓萎縮、抗精子抗体(antispermatozoan antobody)による不妊症、非悪性胸腺腫、白斑、SCIDおよびエプスタイン-バーウイルス関連疾患、後天性免疫不全症候群(AIDS)、寄生虫症、例えばリーシュマニア、毒素性ショック症候群、食中毒、T細胞の浸潤に関与する病態、白血球粘着不全症、サイトカインおよびTリンパ球介在性の急性および遅延型過敏症に関連した免疫応答、白血球遊出に関与する疾患、多臓器傷害症候群、抗原抗体複合体介在性の疾患、抗糸球体基底膜疾患、アレルギー性神経炎、自己免疫性多腺性内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫性萎縮性胃炎、交感性眼炎、リウマチ性疾患、混合性結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多腺性機能不全、末梢性ニューロパチー、自己免疫性多腺性症候群I型、成人発症型特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、完全脱毛症、拡張型心筋症、後天性表皮水疱症(EBA)、ヘモクロマトーシス、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、化膿性または非化膿性副鼻腔炎、急性または慢性副鼻腔炎、篩骨洞炎、前頭洞炎、上顎洞炎、または蝶形骨洞炎、好酸球関連疾患、例えば好酸球増加症、肺浸潤性好酸球増加症、好酸球増加筋肉痛症候群、レフレル症候群、慢性好酸球性肺炎、熱帯性肺好酸球増加症、
気管支肺アスペルギルス症(bronchopneumonic aspergillosis)、アスペルギルス腫、または好酸球を含む肉芽腫など、アナフィラキシー、血清陰性脊椎関節炎、多腺性自己免疫性疾患、硬化性胆管炎、強膜炎、上強膜炎、慢性粘膜皮膚カンジダ症、ブルトン症候群、乳児期の一過性低ガンマグロブリン血症、ウィスコット-アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症、膠原病に関連する自己免疫性疾患、リウマチ、神経疾患、虚血再灌流障害、血圧応答低下、血管機能障害、血管拡張症(antgiectasis)、組織傷害、心血管虚血、痛覚過敏、脳虚血、および血管新生を伴う疾患、アレルギー性過敏障害、糸球体腎炎(glomerulonephritides)、再灌流傷害、心筋または他の組織の再灌流傷害、急性炎症性要素、急性化膿性髄膜炎、または他の中枢神経系炎症性障害を伴う皮膚疾患、眼および眼窩の炎症性障害、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘発性毒性、急性の強い炎症、慢性難治性炎症、腎盂炎、肺硬変(pneumonocirrhosis)、糖尿病性網膜症、糖尿病性大動脈障害、動脈内過形成(endarterial hyperplasia)、消化性潰瘍、弁膜炎、ならびに子宮内膜症からなる群より選択される、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記患者は、全身性エリテマトーデスまたは抗好中球細胞質自己抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)に罹患している、
請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記患者は、ウイルス誘発性炎症、特にCOVID19に罹患している、
請求項15に記載の方法。
【請求項19】
請求項1に記載の抗体を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学および腫瘍学の分野のものである。
【背景技術】
【0002】
慢性炎症性疾患は、全世界において主要な死因となってきている。このような疾患は臨床上異なるように思われるが、遺伝的背景および病態生理学的経路について多くの類似点を有する。Th17細胞と称されるIL-17産生CD4+エフェクターT細胞の輸送およびその後の器官におけるその蓄積が、このような疾患に関連した臨床症状の原因となる炎症および組織病変を誘発することが、蓄積された証拠から示唆されている。
【0003】
CD95L(FasL)は、腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーに属し、デスレセプターCD95(Fasとしても知られる)のリガンドである。CD95は健康な細胞において広範に発現されるが、CD95Lは、主にリンパ球の表面において検出される限定的な発現パターンを示し、リンパ球の表面では、感染細胞および形質転換細胞の排除において中心的役割を果たしている(Strasser,A.;Jost,P.J.;Nagata,S.The many roles of FAS receptor signaling in the immune system.Immunity.2009,30,180-192).CD95Lは、細胞間の接触を通じて局所的に作用する膜貫通型糖タンパク質であり、メタロプロテアーゼによって切断された後、可溶性CD95L(s-CD95L)が血流に放出される。この可溶性リガンドは、NF-κBおよびPI3Kなどの非アポトーシスシグナリング経路を誘導することによって、全身性エリテマトーデス(SLE)などの慢性炎症性疾患における炎症の悪化に寄与し(Tauzin,S.et al.PLoS Biol.2011,9,e1001090)、卵巣がんおよび肝臓がんの生存、ならびに肺がんの化学療法抵抗性を促進することによって、発癌促進機能を発揮し得る。CD95またはFasと呼ばれるCD95Lレセプターは、細胞内保存部分であるデスドメイン(DD)を有し、これは、細胞死を誘発するドッキングプラットフォームとして機能する。膜結合型六量体CD95LとCD95との結合は、それぞれのDDを介したホモタイプ相互作用を通じて、アダプタータンパク質FADD(Fas関連デスドメイン)の動員につながる(Holler,N.et al.,Mol Cell Biol.2003,23,1428-1440)。FADDは次に、イニシエーターであるカスパーゼ-8およびカスパーゼ-10を凝集させる。CD95/FADD/カスパーゼ複合体は細胞死誘導シグナリング複合体(DISC)と呼ばれ、アポトーシス機構によってがん細胞の排除をもたらす(Kischkel,F.C.et al.Embo J.1995,14,5579-5588)。対照的に、ホモ三量体s-CD95Lは、DISC形成を誘導しないが、その代わりに、Ca2+応答を行う運動性誘導シグナルリング複合体(MISC)と呼ばれる非アポトーシス複合体の形成を誘発する(Tauzin,S.et al.PLoS Biol.2011,9,e1001090)。近年のデータでは、s-CD95LがCD95とPLCγ1との直接相互作用を誘導することによってカルシウム応答を誘導することが明らかになった(Poissonnier,A.et al.Immunity.2016,45,209-223)。実際に、s-CD95Lの存在下において、カルシウム誘導ドメイン(CID)と呼ばれるCD95の膜近傍領域が、SLEにおいて、PLCγ1を動員してTh17細胞の内皮遊出を誘導する(Poissonnier,A.et al.Immunity.2016,45,209-223)。
【0004】
したがって、炎症に寄与するCD95媒介非アポトーシスシグナリング経路を阻害する薬剤の開発に関心が集まっている。特に、抗CD95Lモノクローナル中和抗体が大きく求められている。
【0005】
特許文献1は、いくつかの抗CD95Lモノクローナル中和抗体、および特にNOK1抗体を公開している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は特許請求の範囲によって規定される。特に、本発明は、抗CD95Lモノクローナル中和抗体および治療目的のその使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、JQ3がヒトおよびサルのCD95Lを認識し、市販の抗CD95L抗体NOK-1と比較して強力な抗CD95L中和mAbであることを示す。Aは、表面プラズモン共鳴法によって測定したJQ3(IgG1κ)およびNOK-1(IgG1κ)ハイブリドーマのKon、Koff、およびKdを示す。IgCD95LをセンサーチップS CM5に固定化し、Biacore T200を使用して抗体結合特性を評価した。Bは、抗ヒトCD95Lモノクローナル抗体NOK-1およびJQ3ならびに抗マウスCD95Lモノクローナル抗体MFL3(1μg/ml)がヒト、サル、またはマウスCD95Lを認識する能力を、提示したCD95LをコードするpcDNA3.1ベクターで一時的に遺伝子導入したHEK/293T細胞を使用してフローサイトメトリーによって決定したことを示す。Cは、NOK-1およびJQ3の結合効率をCD95L発現1A12細胞株に対してフローサイトメトリーによって比較したことを示す。左側のパネルは、ヒストグラムによって抗体濃度(M)に応じたCD95L染色の強度(CD95Lの蛍光の平均-アイソタイプの蛍光の平均)を報告している。右パネルは、CD95L染色の例であり、JQ3またはNOK-1染色を赤色で、アイソタイプ染色を灰色で示す。表は各抗体の半数効果濃度(EC50)を示す。Dは、提示した濃度の抗体の存在下または非存在下で、100ng/mLのIg-CD95L(可溶性で細胞傷害性のヒトCD95L)とともにCD95感受性のジャーカット細胞株(5.10
5細胞)を24時間インキュベートすることによって、NOK1およびJQ3mAbの中和能力を比較したことを示す。
【
図2】
図2は、NOK-1およびJQ3mAbとCD95阻害剤DB550とが、AAVまたはCOVID-19患者の血清による好中球活性化(カルシウム応答)を阻害することを示す。健康なドナー(HD)の好中球にカルシウム(Ca
2+)プローブcal-520を負荷した。蛍光値(F)を刺激前の値(F
0)に対してノーマライズし、F/F
0値(相対的[Ca
2+]
cyt)を得た。データは、平均±s.d.の[Ca
2+]
cyt(細胞質Ca
2+濃度)を表す。Aは、好中球をDB550(1μM)ありまたはなし(コントロール)で30分間プレインキュベートし、その後、提示した血清に曝露したことを示す。一方、COVID-19患者の血清を、NOK-1またはJQ3(10μg/mL)の存在下で30分間プレインキュベートし、その後、好中球を、提示した血清で刺激し、細胞内カルシウム濃度をモニタリングした。Bは、HDの好中球をDB550(1μM)ありまたはなし(コントロール)で30分間プレインキュベートし、その後、提示した血清に曝露したことを示す。一方、抗好中球細胞質自己抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)患者の血清を、NOK-1またはJQ3(10μg/mL)の存在下または非存在下で30分間プレインキュベートした。その後、HDの好中球を、提示した血清に曝露し、細胞内カルシウム濃度をモニタリングした。Cは、DMSO処理が骨髄HL60細胞株の好中球への分化を誘導することを示す。DMSO処理したHL60細胞を、DB550(1μM)の存在下または非存在下(コントロール)で30分間プレインキュベートした。一方、健康なドナー(HD3)、AAV(AAV45)、およびCOVID-19(Covid15)患者の血清を、NOK-1またはJQ3(10μg/mL)ありまたはなしで30分間プレインキュベートした。その後、DMSO処理したHL60細胞を、提示した血清で刺激し、細胞内カルシウム濃度をモニタリングした。
【発明を実施するための形態】
【0009】
主な定義
本明細書において使用する場合、「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すように、本明細書において互換的に使用される。また、該用語は、例えばジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、リン酸化、または標識成分とのコンジュゲーションなど、修飾されたアミノ酸ポリマーを包含する。ポリペプチドは、遺伝子治療の文脈で記載するとき、それぞれのインタクトなポリペプチド、または、インタクトなタンパク質の望ましい生化学的機能を保持する任意のフラグメントもしくは遺伝子工学的に操作したその誘導体を指す。
【0010】
本明細書において使用する場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドを含む任意の長さのヌクレオチドの重合形態、またはその類似体を指す。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドなどの修飾したヌクレオチド、およびヌクレオチド類似体を含み得、非ヌクレオチド成分によって割り込まれ得る。ヌクレオチド構造の修飾は、存在する場合、ポリマーの形成前または後になされ得る。ポリヌクレオチドという用語は、本明細書において使用する場合、二本鎖および一本鎖分子を互換的に指す。特定または要求されない限り、ポリヌクレオチドである、本明細書に記載する本発明のいずれの実施形態も、二本鎖形態、および二本鎖形態を構成することが知られているまたは予測される2つの相補的な一本鎖形態のそれぞれの両方を包含する。
【0011】
本明細書において使用する場合、「由来する」という表現は、第1の成分(例えば第1のポリペプチド)または第1の成分の情報が別の第2の成分(例えば第1のポリペプチドとは異なる第2のポリペプチド)を単離する、導き出す、または作製するために使用されるプロセスを指す。
【0012】
本明細書において使用する場合、2配列間の「同一性パーセント」は、2配列の最適アラインメントのために導入される必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮したうえでの、配列が共有する同一位置の数の関数(すなわち、同一性%=同一位置数/総位置数×100)である。2配列間における配列比較および同一性パーセントの決定は、以下に記載するように、数学的アルゴリズムを使用してなすことができる。2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、ニードルマン・ウンシュアルゴリズム(Needleman,Saul B.&Wunsch,Christian D.(1970).“A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequence of two proteins”.Journal of Molecular Biology.48(3):443-53.)を使用して決定することができる。また、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性パーセントは、例えば、EMBOSS Needle(ペアワイズアラインメント、www.ebi.ac.ukにおいて利用可能)などのアルゴリズムを使用して決定することができる。例えば、EMBOSS Needleは、BLOSUM62マトリックス、「ギャップオープンペナルティ」が10、「ギャップ伸長ペナルティ」が0.5、偽の「エンドギャップペナルティ」、「エンドキャップオープンペナルティ」が10、および「エンドギャップ伸長ペナルティ」が0.5を用いて使用することができる。一般に、「同一性パーセント」は、一致する位置の数を、比較した位置の数で除算し、100を乗算した関数である。例えば、アラインメント後に10個のうちの6個の配列位置が2つの比較した配列間で同一である場合、同一性は60%である。同一性%は、典型的には、分析を行うクエリ配列に全長にわたって決定される。同じ一次アミノ酸配列または核酸配列を有する2つの分子は、任意の化学的および/または生物学的修飾にかかわらず同一である。本発明において、第1のアミノ酸配列が第2のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有するということは、第1の配列が、第2のアミノ酸配列と70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%の同一性を有するということを意味する。
【0013】
本明細書において使用する場合、「コードする」という用語は、規定するヌクレオチド配列(例えばrRNA、tRNA、およびmRNA)または規定するアミノ酸配列のいずれか、およびそれらから得られる生物学的特性を有する、生物学的プロセスにおける他のポリマーおよび高分子を合成するためのテンプレートとして機能するための、例えば、遺伝子、cDNA、またはmRNAなど、ポリヌクレオチドにおけるヌクレオチドの特定の配列の特有の特性を指す。したがって、遺伝子、cDNA、またはRNAは、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳によって細胞または他の生物学的システムにおいてタンパク質を作製する場合に、タンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常配列表に示されるコード鎖と、遺伝子またはcDNAの転写のためのテンプレートとして使用される非コード鎖との両方を、タンパク質または遺伝子もしくはcDNAの他の生成物をコードするとして指すことができる。特定されない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重タイプである、および同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。また、「タンパク質をコードするヌクレオチド配列またはRNA」という表現は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列がいくつかのタイプにおいてイントロンを含み得るという程度にイントロンを含むことができる。
【0014】
本明細書において使用する場合、「CD95L」いう用語は当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、膜貫通型タンパク質であるCD95の同族リガンドを指す。この用語はまた、APT1LG1、FASL、またTNFSF6としても知られている。CD95Lの例のアミノ酸配列を配列番号1に示す。ヒトCD95Lの細胞外ドメインは、典型的に、配列番号1における103番目のアミノ酸残基から281番目のアミノ酸残基までの範囲であるアミノ酸配列からなる。
配列番号1 >sp|P48023|TNFL6_HUMAN Tumor necrosis factor ligand superfamily member 6 OS=Homo sapiens OX=9606 GN=FASLG PE=1 SV=1。配列において細胞外ドメインに下線を引いている。
MQQPFNYPYPQIYWVDSSASSPWAPPGTVLPCPTSVPRRPGQRRPPPPPPPPPLPPPPPPPPLPPLPLPPLKKRGNHSTGLCLLVMFFMVLVALVGLGLGMFQLFHLQKELAELRESTSQMHTASSLEKQIGHPSPPPEKKELRKVAHLTGKSNSRSMPLEWEDTYGIVLLSGVKYKKGGLVINETGLYFVYSKVYFRGQSCNNLPLSHKVYMRNSKYPQDLVMMEGKMMSYCTTGQMWARSSYLGAVFNLTSADHLYVNVSELSLVNFEESQTFFGLYKL
【0015】
本明細書において使用する場合、「可溶性CD95L」という用語は当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、メタロプロテアーゼによって膜貫通CD95Lを切断することにより産生される可溶性リガンドを指す。「血清CD95L」、「可溶性CD95L」、「メタロプロテアーゼ切断CD95L」、および「s-CD95L」という用語は、本明細書において同じ意味を有する。
【0016】
本明細書において使用する場合、「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は同じ意味を有し、本発明において等しく使用され得る。「抗体」という用語は、本明細書において使用する場合、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性の部分、すなわち、抗原を免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。ゆえに、抗体という用語は、抗体分子全体だけでなく、抗体フラグメント、ならびに抗体および抗体フラグメントの変異体(誘導体を含む)も含む。自然抗体において、2つの重鎖はジスルフィド結合によって互いに結合し、それぞれの重鎖はジスルフィド結合によって1つの軽鎖と結合している。ラムダ(1)およびカッパ(k)の2つの種類の軽鎖がある。抗体分子の機能活性を決定する5つの主な重鎖のクラス(またはアイソタイプ)IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEがある。それぞれの鎖は、特定の配列ドメインを含む。軽鎖は、可変ドメイン(VL)と定常ドメイン(CL)との2つのドメインを含む。重鎖は、可変ドメイン(VH)と、3つから4つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3、およびCH4、これらをまとめてCHと呼ぶ)との3つ(α、δ、γ)から5つ(μ、ε)のドメインを含む。軽鎖(VL)および重鎖(VH)の両方の可変領域が、抗原に対する結合認識および特異性を決定する。軽鎖(CL)および重鎖(CH)の定常領域ドメインは、抗体鎖会合、分泌、経胎盤移動、補体結合、およびFcレセプター(FcR)との結合などの重要な生物学的特性を与える。Fvフラグメントは、免疫グロブリンのFabフラグメントのN末端部であり、1つの軽鎖および1つの重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基との間の構造的相補性にある。抗体結合部位は、主に高頻度可変領域または相補性決定領域(CDR)の残基で構成されている。ときとして、非高頻度可変領域またはフレームワーク領域(FR)の残基が、抗体結合部位に関与し得る、または全ドメイン構造、つまり結合部位に影響し得る。CDRは、共にネイティブ免疫グロブリン結合部位の自然Fv領域の結合親和性および特異性を規定するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖はそれぞれ、L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、およびH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と呼ばれる3つのCDRを有する。ゆえに、抗原結合部位は、典型的に、重鎖および軽鎖のV領域のそれぞれからのCDRのセットを含む6つのCDRを含む。フレームワーク領域(FR)は、CDR同士の間に配置されたアミノ酸配列を指す。本発明において、本発明の抗体の可変ドメイン、相補性決定領域(CDR)、およびフレームワーク領域(FR)におけるアミノ酸残基は、Immunogenetics(IMGT)データベース(http://imgt.cines.fr)を使用して同定される(Lefranc et al.(2003)Dev Comp Immunol.27(1):55-77)。IMGTデータベースは、免疫グロブリン(IgG)、T細胞レセプター(TcR)、および主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の配列情報を使用して開発されたものであり、抗体のλおよびκ軽鎖、重鎖、ならびにT細胞レセプター鎖にわたってナンバリングを統一しており、希な長さの挿入を除いて挿入コードを使用していない。また、IMGTは、Kabatらによるフレームワーク領域(FR)および相補性決定領域(CDR)の定義、Chothiaらによる高頻度可変ループの特性評価、および、X線回折研究による構造データも考慮して、組み合わせている。
【0017】
本明細書において使用する場合、「モノクローナル抗体」、「モノクローナルAb」、「モノクローナル抗体組成物」、「mAb」などという用語は、本明細書において使用するとき、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体は、実質的に均一の抗体の集団から得られ、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、わずかな量で存在し得る自然起源の突然変異の可能性を除いて同一である。
【0018】
本明細書において使用する場合、「キメラ抗体」という用語は、非ヒト抗体のVHドメインおよびVLドメイン、ならびにヒト抗体のCHドメインおよびCLドメインを含む抗体を指す。
【0019】
本明細書において使用する場合、「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体からの可変領域、フレームワーク領域、および定常領域を有するが、以前の非ヒト抗体のCDRを保持する抗体を指す。一部の実施形態において、ヒト化抗体は、最小の非ヒト免疫グロブリン由来配列を含む。多くの場合、ヒト化抗体およびその抗体フラグメントは、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基で置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体または抗体フラグメント)であり得る。
【0020】
本明細書において使用する場合、「抗体フラグメント」という用語は、抗原のエピトープと(例えば、結合、立体障害、安定化/非安定化、空間分布によって)特異的に相互作用する能力を保持する、インタクトな抗体の少なくとも一部分、好ましくはインタクトな抗体の抗原結合領域または可変領域を指す。「フラグメント」は、インタクトな抗体の一部、一般に抗原結合部位または可変領域を含む。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、およびFvフラグメント、ダイアボディ、近接アミノ酸残基の1つの中断のない配列からなる一次構造を有するポリペプチドである任意の抗体フラグメント(本明細書において「単鎖抗体フラグメント」または「単鎖ポリペプチド」と呼ぶ)であって、(1)単鎖Fv分子、(2)付随する重鎖部分を含まない、1つの軽鎖可変ドメインのみを含む単鎖ポリペプチド、または軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含むそのフラグメント、および(3)付随する軽鎖部分を含まない、1つの重鎖可変領域のみを含む単鎖ポリペプチド、または重鎖可変領域の3つのCDRを含むそのフラグメントを限定することなく含むもの、ならびに抗体フラグメントから形成される多特異性抗体を含む。本抗体のフラグメントは、標準的な方法を使用して取得可能である。
【0021】
本明細書において使用する場合、「Fc領域」は、当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、第1の定常領域の免疫グロブリンドメイン以外の抗体の定常領域を含むポリペプチドを含む。したがって、Fcは、IgA、IgD、およびIgGの最後の2つの定常領域の免疫グロブリンドメイン、ならびに、IgEおよびIgMの最後の3つの定常領域の免疫グロブリンドメイン、ならびに、これらのドメインのN末端側の可動ヒンジを指す。IgAおよびIgMでは、FcはJ鎖を含むことができる。IgGでは、Fcは、免疫グロブリンドメインのCガンマ2およびCガンマ3(Cγ2およびCγ3)、ならびに、Cガンマ1(Cγ1)とCガンマ2(Cγ2)との間のヒンジを含む。Fc領域の境界は変わり得るが、ヒトIgG重鎖のFc領域は、残基C226またはP230からそのカルボキシル末端を含むように通常規定され、ナンバリングは、KabatらのようなEUインデックスに従ったものである(1991,NIH Publication 91-3242,National Technical Information Service,Springfield,Va.)。「Kabatが述べたEUインデックス」は、上述のKabatらにより記載されるように、ヒトIgG1のEU抗体の残基ナンバリングを指す。Fcは、単離したこの領域、または、抗体、抗体フラグメント、もしくはFc融合タンパク質の場合におけるこの領域を指し得る。Fc変異体タンパク質は、抗体、Fc融合体、または、Fc領域を含む任意のタンパク質もしくはタンパク質ドメインとすることができる。特に好ましいものは、Fc領域の非自然起源変異体である変異体Fc領域を含むタンパク質である。非自然起源のFc領域(本明細書において「変異体Fc領域」とも呼ぶ)のアミノ酸配列は、野生型のアミノ酸配列と比較して、少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、挿入、および/または欠失を含む。挿入または置換の結果として変異体Fc領域の配列に現れる任意の新しいアミノ酸残基は、非自然起源のアミノ酸残基と呼ぶことができる。留意点として、Kabat270、272、312、315、356、および358を含むがこれらに限定されない、多数のFc位置において、多型性が観察されており、ゆえに、本配列と先行技術の配列との間にわずかな違いが存在することがある。
【0022】
本明細書において使用する場合、「Fcレセプター」または「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合するレセプターを表すように使用する。ADCCを媒介する初代細胞はFcγRIIIを発現し、単球はFcγRI、FcγRII、FcγRIII、および/またはFcγRIVを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、RavetchおよびKinetのAnnu.Rev.Immunol.、9:457-92(1991)に述べられている。分子のADCC活性を評価するため、米国特許第5,500,362号明細書または米国特許第5,821,337号明細書に記載されるものなどのin vitroのADCCアッセイを行うことができる。そうしたアッセイの有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞を含む。あるいは、またはさらに、対象の分子のADCC活性を、例えばClynesらのProc.Natl.Acad.Sci.(米国)、95:652-656(1998)に開示されるものなどの動物モデルにおいて、in vivoで評価することができる。本明細書において使用する場合、「エフェクター細胞」という用語は、1つ以上のFcRを発現してエフェクター機能を示す白血球である。上述の細胞は、少なくともFcγRI、FcγRII、FcγRIII、および/またはFcγRIVを発現し、ADCCエフェクター機能を示す。ADCCを媒介するヒト白血球の例は、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞、および好中球を含む。
【0023】
本明細書において使用する場合、「特異性」という用語は、標的分子(例えば、抗原に提示されるエピトープ)を検出可能に結合する一方で、他の標的分子には検出可能な反応性を比較的小さくしか示さないという抗体の能力を指す。特異性は、本明細書の他の箇所に記載するように、例えばBiacore機器を使用して結合または競合性結合アッセイによって、相対的に測定可能である。特異性は、例えば、他の無関係の分子への非特異的結合に対する特異的抗原への結合における親和性/結合力の約10:1、約20:1、約50:1、約100:1、10.000:1以上の比によって示すことができる。
【0024】
「親和性」という用語は、本明細書において使用する場合、標的分子(例えばエピトープ)に対する抗体の結合の強さを意味する。結合タンパク質の親和性は解離定数Kdによって与えられる。抗体では、上述のKdは、[Ab]×[Ag]/[Ab-Ag]として定められ、式中、[Ab-Ag]は、抗体-抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は非結合抗体のモル濃度であり、[Ag]は非結合抗原のモル濃度である。親和定数Kaは1/Kdによって定められる。結合タンパク質の親和性を決定するための好ましい方法は、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1988)、Coliganら、eds.、Current Protocols in Immunology、Greene Publishing Assoc.およびWiley Interscience,N.Y.(1992,1993)、ならびにMuller、Meth.Enzymol.92:589-601(1983)に見受けられ、これらの参考文献は、参照することによって本明細書に全体的に援用される。結合タンパク質の親和性決定について、当該技術分野において周知である、1つの好ましい標準的な方法は、Biacore機器の使用である。
【0025】
本明細書において使用する場合、「結合」という用語は、例えば、共有結合性、静電性、疎水性、ならびに、塩橋および水橋(water bridge)などの相互作用を含むイオンおよび/または水素結合相互作用による、2つの分子間の直接の関連を指す。特に、本明細書において使用する場合、抗体が所定の標的分子(例えば抗原またはエピトープ)に結合するという文脈における「結合」という用語は、典型的に、約10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下、約10-10M以下、またはさらに約10-11M以下のKDに対応する親和性での結合である。
【0026】
本明細書において使用する場合、「エピトープ」という用語は、抗体が結合する1または複数のタンパク質に位置するアミノ酸の特定の配置を指す。エピトープは、多くの場合、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、特定の3次元構造特性および特定の電荷特性を有する。エピトープは、直線状または立体構造とすることができる、すなわち、必ずしも近接しない抗原の種々の領域における2つ以上のアミノ酸配列に関与する。
【0027】
本明細書において使用する場合、「抗CD95Lモノクローナル中和抗体」という用語は、CD95Lに対する特異性を有し、CD95Lの少なくとも1つの活性を低下させるモノクローナル抗体に対する抗体を指す。特に、抗CD95Lモノクローナル中和抗体は、CD95媒介非アポトーシスシグナリング経路を減少させ、および/またはCD95媒介アポトーシスシグナリング経路を減少させる。上述の活性は、当該技術分野における任意の周知の方法によって測定することができ、典型的に、実施例に記載するように測定することができる。
【0028】
本明細書において使用する場合、「JQ3」という用語は、配列番号1に示すようなVLドメインおよび配列番号5に示すようなVHドメインを有する抗体を指す。
配列番号2:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の構造を有するJQ3抗体のVLドメイン
QIVFTQSPAIMSAFLGEEITLTCSASSSVSYMHWYQQKSGTSPKLLIYNTFNLASGVPSRFSGSGSGTFYSLTISSVEAEDAADYYCHQWSSYPTFGGGTKLEIK
配列番号6:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の構造を有するJQ3抗体のVHドメイン
EIQLQQTGPELVKPGASVKISCKASGFSFTDYIMVWVKQSHGKILEWIGDISPYYGTATYNLKFKGKATLTVVKSSSTAYMQLNSLTSEDSAVYYCARAPNRYEVMDYWGQGTSVTVSS
【0029】
本明細書において使用する場合、「処置」または「処置する」という用語は、疾患にかかるリスクを有するまたは疾患にかかったと疑われる患者、および病気であるまたは疾患もしくは医学的状態に罹患していると診断された患者の処置を含む、予防または抑止処置、および根治または疾患修飾処置の両方を指し、臨床における再発の抑制を含む。処置は、障害もしくは再発の障害を予防、治癒、その発症を遅延する、その重篤度を軽くする、もしくはその1つ以上の症状を改善するため、またはそうした処置が存在しない場合に予想される生存期間を超えて患者の生存期間を延長するため、医学的障害を有するまたは最終的にそうした障害に罹患し得る患者に行うことができる。「治療レジメン」は、病気の処置のパターン、例えば治療時に使用する投薬のパターンを意味する。治療レジメンは、誘導レジメンおよび維持レジメンを含むことができる。「誘導レジメン」または「誘導期間」という表現は、疾患における初期の処置に使用される治療レジメン(または治療レジメンの一部)を指す。誘導レジメンの全体的な目的は、処置レジメンの初期期間に高レベルの薬剤を患者に提供することである。誘導レジメンは、「負荷レジメン」を(部分的または全体的に)使用することができ、これは、医師が維持レジメン時に使用し得るものより多い用量の薬剤を投与すること、医師が維持レジメン時に薬剤を投与し得るより頻回で薬剤を投与すること、またはその両方を含むことができる。「維持レジメン」または「維持期間」という表現は、例えば患者を長期間(数か月または数年)寛解の状態に維持するため、病気の処置時に患者のメンテナンスに使用される治療レジメン(または治療レジメンの一部)を指す。維持レジメンは、持続的治療(例えば、薬剤を一定の間隔で、例えば毎週、毎月、毎年等投与すること)、または断続的治療(例えば、中断を含む処置、断続的処置、再発における処置、もしくは所定の特定の条件[例えば痛み、疾患の徴候等]を満たした上での処置)を用いることができる。
【0030】
本明細書において使用する場合、「医薬組成物」という用語は、担体および/または賦形剤などの他の剤を伴う、本明細書に記載する組成物、またはその薬学的に許容される塩を指す。本明細書において提供されるような医薬組成物は、典型的に、薬学的に許容される担体を含む。
【0031】
本明細書において使用する場合、組成物に関する、「から実質的になる」は、上述する本発明の少なくとも1つの抗体が、該組成物内において唯一の治療剤または生物活性を有する薬剤であることを意味する。
【0032】
本明細書において使用する場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、所望の特定の剤形に適するような、任意およびすべての溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散または懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固体結合剤、および潤滑剤等を含む。レミントン薬科学(Remington’s Pharmaceutical-Sciences)、第16版、E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)は、医薬組成物の製剤化に使用される様々な担体、およびその調製のための既知の技術を公開している。
【0033】
本発明の抗体
本発明の第1の目的は、
-相補性決定領域CDR1L、CDR2L、およびCDR3Lを含むVLドメインであって、アミノ酸配列CDR1LはSSVSY(配列番号3)を有し、CDR2Lはアミノ酸配列NTF(配列番号4)を有し、CDR3Lはアミノ酸配列HQWSSYPT(配列番号5)を有するVLドメイン、ならびに、
-相補性決定領域CDR1H、CDR2H、およびCDR3Hを含むVHドメインであって、CDR1Hはアミノ酸配列GFSFTDYI(配列番号7)を有し、CDR2Hはアミノ酸配列ISPYYGTA(配列番号8)を有し、CDR3Hはアミノ酸配列ARAPNRYEVMDY(配列番号9)を有するVHドメインを有する、抗CD95Lモノクローナル中和抗体に関する。
【0034】
一部の実施形態において、本発明の抗体はキメラ抗体である。
【0035】
一部の実施形態において、本発明の抗体はヒト化抗体である。
【0036】
一部の実施形態において、本発明の抗体は抗体フラグメントである。フラグメントは当該技術分野において既知の技術によって作製することができる。例えば、FabまたはF(ab’)2フラグメントは、従来の技術に従って、単離した抗体をプロテアーゼ消化することによって作製することができる。免疫反応性フラグメントを、例えば、in vivoにおいてクリアランスを遅延させて、より望ましい薬物動態プロファイルを得るように、既知の方法を使用して修飾可能であり、フラグメントは、ポリエチレングリコール(PEG)で修飾することができるということが理解される。PEGをFab’フラグメントにカップリングして部位特異的にコンジュゲートするための方法は、例えば、Leongら、Cytokines 16(3):106-119(2001)、およびDelgadoら、Br.J.Cancer 5 73(2):175-182(1996)に記載されており、これらの開示は参照することによって本明細書に援用される。
【0037】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、配列番号1と少なくとも70%の同一性を有するVLドメイン、および/または配列番号5と少なくとも70%の同一性を有するVHドメインを含む。
【0038】
一部の実施形態において、本発明の抗体のVHドメインおよび/またはVLドメインは、保存的配列修飾を含む。「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含むタンパク質の生物学的機能に著しく影響を与えないかまたはそれを改変しないアミノ酸修飾を指す。そうした保存的修飾は、アミノ酸置換、付加、および欠失を含む。修飾は、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発などの当該技術分野において既知の標準的な技術によってタンパク質に導入することができる。「保存的置換」は、ポリペプチドの二次構造および疎水親水特性が実質的に変化しないことをペプチド化学の当業者が予想し得るように、アミノ酸が同様の特性を有する他のアミノ酸に置換されるというものである。したがって、アミノ酸置換は、一般に、例えばその疎水性、親水性、電荷、およびサイズ等、アミノ酸側鎖置換基の相対的な類似性に基づく。種々の上述の特徴を考慮した例の置換は、当業者に周知であり、アルギニンとリジン、グルタメートとアスパルテート、セリンとスレオニン、グルタミンとアスパラギン、およびバリンとロイシンとイソロイシンを含む。アミノ酸置換は、さらに、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性特性の類似性に基づいて行うことができる。例えば、負荷電アミノ酸はアスパラギン酸およびグルタミン酸を含み、正荷電アミノ酸はリジンおよびアルギニンを含み、同様の親水性値を有する無電荷極性頭部基を含むアミノ酸は、ロイシンとイソロイシンとバリン、グリシンとアラニン、アスパラギンとグルタミン、およびセリンとスレオニンとフェニルアラニンとチロシンを含む。保存的変化に相当し得る他のアミノ酸のグループは、(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr、(2)cys、ser、tyr、thr、(3)val、ile、leu、met、ala、phe、(4)lys、arg、his、および(5)phe、tyr、trp、hisを含む。同様の側鎖を有する他のアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、極性無電荷側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。したがって、本発明の抗体内の1つ以上のアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基で置換することができ、改変した抗体をCD95Lへの結合について試験することができる。
【0039】
本発明の抗体は、以下のものに限らないが、単独または組合せにおける、任意の化学的、生物学的、遺伝学的、または酵素学的技術などの、当該技術分野において既知の任意の技術によって作製される。典型的に、当業者は、所望の配列のアミノ酸配列を知ることで、ポリペプチドの作製のための標準的技術により上述の抗体を容易に作製できる。例えば、これは、周知の固相法を使用して、好ましくは、市販で入手可能なペプチド合成装置(Applied Biosystems(Foster City,California)によって製造されているものなど)を使用して、製造者の説明書に従って、合成することができる。あるいは、本発明の抗体は、当該技術分野において周知の組換えDNA技術によって合成することができる。例えば、抗体は、発現ベクターに抗体をコードするDNA配列を組み込むこと、および、所望の抗体を発現し得、後に周知の方法を使用して抗体を単離することができる適切な真核生物または原核生物の宿主にそうしたベクターを導入することの後に、DNA発現生成物として得ることができる。
【0040】
したがって、本発明のさらなる目的は、本発明における抗体をコードするポリヌクレオチドに関する。より具体的には、ポリヌクレオチドは、本発明の抗体のVHドメインおよび/またはVLドメインをコードする。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、本発明の抗体のVHドメインまたはVLドメインをコードする。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、本発明の抗体のVHドメインおよびVLドメインをコードする。
【0041】
典型的に、上述のポリヌクレオチドはDNAまたはRNA分子であり、これは、プラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージ、またはウイルスベクターなどの任意の適切なベクターに含ませることができる。本明細書において使用する場合、「ベクター」、「クローニングベクター」、および「発現ベクター」という用語は、DNAまたはRNA配列(例えば外来遺伝子)を宿主細胞に導入して、宿主を形質転換し、導入した配列の発現(例えば転写および翻訳)を高めることができる媒体を意味する。したがって、本発明のさらなる目的は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターに関する。このようなベクターは、対象への投与の際に上述の抗体を発現させるまたは発現を誘導するため、プロモーター、エンハンサー、およびターミネーター等の調節因子を含むことができる。動物細胞用の発現ベクターに使用されるプロモーターおよびエンハンサーの例は、SV40の初期プロモーターおよびエンハンサー、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーターおよびエンハンサー、ならびに、免疫グロブリンH鎖のプロモーターおよびエンハンサー等を含む。動物細胞用の発現ベクターは、ヒト抗体C領域をコードする遺伝子を挿入して発現させることができる限り、どれでも使用することができる。適切なベクターの例は、pAGE107、pAGE103、pHSG274、pKCR、およびpSG1βd2-4等を含む。他のプラスミドの例は、複製起点を含む複製プラスミド、または、例えばpUC、pcDNA、およびpBRなどの組込みプラスミドを含む。他のウイルスベクターの例は、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、およびAAVベクターを含む。そうした組換えウイルスは、当該技術分野において既知の方法によって、例えば、パッケージ細胞に遺伝子導入することによって、または、ヘルパープラスミドもしくはウイルスを一時的に遺伝子導入することによって、作製することができる。ウイルスパッケージ細胞の典型的な例は、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞等を含む。そうした複製欠損組換えウイルスを作製するための詳細なプロトコールは、例えば、国際公開第95/14785号、国際公開第96/22378号、米国特許第5,882,877号明細書、米国特許第6,013,516号明細書、米国特許第4,861,719号明細書、米国特許第5,278,056号明細書、および国際公開第94/19478号に見出すことができる。
【0042】
本明細書において使用する場合、「プロモーター/調節配列」という用語は、ポリヌクレオチド配列の特定の転写を開始するために必要とされる細胞の合成機構または導入した合成機構によって認識されて、それによってプロモーター/調節配列に作動可能に連結される遺伝子産物の発現を可能にする、核酸配列(例えばDNA配列)を指す。場合によっては、この配列はコアプロモーター配列とすることができ、他の場合には、この配列はまた、エンハンサー配列および遺伝子産物の発現に必要とされる他の調節因子を含むことができる。プロモーター/調節配列は、例えば、組織特異的に遺伝子産物を発現するものとすることができる。
【0043】
「作動可能に連結される」または「転写コントロール」という用語は、異種核酸配列の発現をもたらす調節配列と異種核酸配列との機能性の連結を指す。例えば、第1の核酸配列は、該第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係で配置されるとき、第2の核酸配列に作動可能に連結されている。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を与えるとき、プロモーターはコード配列に作動可能に連結されている。作動可能に連結されたDNA配列は互いに近接させることができ、例えば2つのタンパク質コード領域を結合する必要がある場合、同じリーディングフレームに存在する。
【0044】
本発明のさらなる目的は、本発明におけるポリヌクレオチドおよび/またはベクターによって遺伝子導入した、感染させた、または形質転換した宿主細胞に関する。
【0045】
本明細書において使用する場合、「形質転換」という用語は、「外来性」(すなわち、外因性または細胞外)遺伝子、DNA、またはRNA配列を宿主細胞に導入することにより、宿主細胞が、導入した遺伝子または配列を発現して、所望の物質、典型的には、導入した遺伝子または配列によってコードされるタンパク質または酵素を生成することを意味する。導入したDNAまたはRNAを受容して発現する宿主細胞は「形質転換」されている。
【0046】
本発明のポリヌクレオチドは、適切な発現系において本発明の抗体を作製するために使用することができる。
【0047】
「発現系」という用語は、例えば、ベクターが有しており、宿主細胞に導入された外来性DNAによってコードされるタンパク質の発現のための、適切な条件下における宿主細胞および対応するベクターを意味する。一般的な発現系は、E.coli宿主細胞とプラスミドベクター、昆虫宿主細胞とバキュロウイルスベクター、および哺乳動物宿主細胞とベクターを含む。他の宿主細胞の例は、原核生物細胞(細菌など)および真核生物細胞(酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等)を限定することなく含む。具体的な例は、E.coli、KluyveromycesまたはSaccharomycesの酵母、哺乳動物細胞株(例えば、Vero細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞等)、および、初代または株化された哺乳動物細胞培養物(例えば、リンパ芽球細胞、線維芽細胞、胚細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞等から作製される)を含む。また、例としては、マウスSP2/0-Ag14細胞(ATCC CRL1581)、マウスP3X63-Ag8.653細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(以下、「DHFR遺伝子」と呼ぶ)を欠損しているCHO細胞(Urlaub G et al;1980)、および、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC CRL1662、以下、「YB2/0細胞」と呼ぶ)等も含む。また、本発明は、本発明における抗体を発現する組換え宿主細胞を作製する方法にも関し、該方法は、(i)in vitroまたはex vivoにおいて、上述のような組換えポリヌクレオチドまたはベクターをコンピテント宿主細胞に導入するステップ、(ii)in vitroまたはex vivoにおいて、得られた組換え宿主細胞を培養するステップ、ならびに、(iii)任意で、上述の抗体を発現および/または分泌する細胞を選択するステップを含む。そうした組換え宿主細胞は、本発明の抗体を作製するために使用することができる。
【0048】
ベクターの例は、組換えポリヌクレオチドを組み込んだコスミド、プラスミド(例えばネイキッドまたはリポソームに含有)、ならびにウイルス(例えばレンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)を限定することなく含む、当該技術分野において既知のすべてのものを含む。
【0049】
本発明の抗体は、例えば、タンパク質A-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動法、ダイアリシス、またはアフィニティークロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製方法によって培地から適切に分離される。
【0050】
一部の実施形態において、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、抗体依存性細胞媒介細胞傷害を媒介するFc領域を含まず、ゆえに抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘発するFc部分を含まない。一部の実施形態において、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、補体依存性細胞傷害(CDC)または抗体依存性食作用を誘発するFc領域を含まない。一部の実施形態において、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、CD95Lポリペプチドを発現する細胞の枯渇を、直接的または非直接的にもたらさない(例えば、CD95L+細胞の数の10%、20%、50%、60%以上の消失または減少をさせない)。一部の実施形態において、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、FcγRIIIA(CD16)ポリペプチドに実質的に結合することができるFcドメインを含まない。一部の実施形態において、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、Fcドメインを有しない(例えばCH2および/もしくはCH3ドメインを有しない)、またはIgG2もしくはIgG4アイソタイプのFcドメインを含む。一部の実施形態において、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、改変したグリコシル化プロファイルを有し、抗体のADCC活性を失くしている、(例えばIgG1の)Fcドメインを含む。一部の実施形態において、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、ダイアボディ、単鎖抗体フラグメント、または複数の異なる抗体フラグメントを含む多特異性抗体からなる、またはそれを含む。一部の実施形態において、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、毒性部分に連結されていない。一部の実施形態において、アミノ酸残基から選択される1つ以上のアミノ酸を、抗体が改変したC2q結合性を有するおよび/またはCDCを低下させるもしくは消失させるように、異なるアミノ酸残基で置換することができる。このアプローチは、ldusogieらによる米国特許第6,194,551号明細書にさらに詳細に記載されている。
【0051】
治療上の使用
したがって、本発明のさらなる目的は、薬剤としての使用のための本発明の抗体に関する。より具体的には、本発明は、治療を必要とする患者における治療の方法を提供し、該方法は、治療有効量の本発明の抗体を患者に投与することを含む。
【0052】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、特に、処置を必要とする対象におけるがんの処置である。
【0053】
本明細書において使用する場合、「がん」という用語は、当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、固形腫瘍および血液由来腫瘍を含むが、これらに限定されない。がんという用語は、皮膚、組織、器官、骨、軟骨、血液、および血管の疾患を含む。「がん」という用語は、原発性がんおよび転移性がんの両方をさらに含む。本発明の方法および組成物によって処置され得るがんの例は、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸管、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頸部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、または子宮のがん細胞を含むが、これらに限定されない。加えて、がんは、具体的には以下の組織型であり得るが、これらに限定されない:悪性新生物、癌腫、未分化癌、巨細胞および紡錘細胞癌、小細胞癌、乳頭癌、扁平上皮癌、リンパ上皮癌、基底細胞癌、毛母癌、移行上皮癌、乳頭状移行上皮癌、腺癌、悪性ガストリノーマ、胆管癌、肝細胞癌、肝細胞癌と胆管癌との混合型、索状腺癌、腺様嚢胞癌、腺腫性ポリープ中の腺癌、家族性大腸ポリポーシス腺癌、固形癌、悪性カルチノイド腫瘍、細気管支肺胞腺癌(branchiolo-alveolar adenocarcinoma)、乳頭腺癌、色素嫌性癌、好酸球癌、好酸性腺癌、好塩基球癌、明細胞腺癌、顆粒細胞癌、濾胞腺癌、乳頭および濾胞腺癌、非被包性硬化性癌、副腎皮質癌、類内膜癌(endometroid carcinoma)、皮膚付属器癌、アポクリン腺癌、皮脂腺癌、耳垢腺癌、粘液性類表皮癌、嚢胞腺癌、乳頭状嚢胞腺癌、乳頭状漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、粘液腺癌、印環細胞癌、浸潤性導管癌、髄様癌、小葉癌、炎症性癌、乳房パジェット病、腺房細胞癌、腺扁平上皮癌、扁平上皮化生を伴う腺癌、悪性胸腺腫、悪性卵巣間質腫瘍、悪性莢膜腫瘍、悪性顆粒膜細胞腫、悪性神経芽細胞腫(roblastoma)、セルトリ細胞癌、悪性ライディッヒ細胞腫、悪性脂質細胞腫、悪性傍神経節腫、悪性乳房外傍神経節腫、褐色細胞腫、グロムス血管肉腫、悪性メラノーマ、無色素性メラノーマ、表在拡大型メラノーマ、巨大色素性母斑中の悪性メラノーマ、類上皮細胞メラノーマ、悪性青色母斑、肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胎児性横紋筋肉腫、胞巣状横紋筋肉腫、間質肉腫、悪性混合腫瘍、ミュラー管混合腫瘍、腎芽腫、肝芽腫、癌肉腫、悪性間葉腫、悪性ブレンナー腫瘍、悪性葉状腫瘍、滑膜肉腫、悪性中皮腫、未分化胚細胞腫、胚性癌、悪性奇形腫、悪性卵巣甲状腺種、絨毛癌、悪性中腎腫、血管肉腫、悪性血管内皮腫、カポジ肉腫、悪性血管外皮腫、リンパ管肉腫、骨肉腫、傍骨性骨肉腫、軟骨肉腫、悪性軟骨芽細胞腫、間葉性軟骨肉腫、骨巨細胞腫、ユーイング肉腫、悪性歯原性腫瘍、エナメル上皮歯牙肉腫、悪性エナメル上皮腫、エナメル上皮線維肉腫、悪性松果体腫、脊索腫、悪性神経膠腫、上衣腫、星細胞腫、原形質性星細胞腫、線維性星細胞腫、星状芽細胞腫、膠芽腫、乏突起膠腫、乏突起膠芽腫、原始神経外胚葉腫瘍(primitive neuroectodermal)、小脳肉腫、神経節芽細胞腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、嗅神経原性腫瘍、悪性髄膜腫、神経線維肉腫、悪性神経鞘腫、悪性顆粒細胞腫、悪性リンパ腫、ホジキン病、ホジキンリンパ腫、側肉芽腫、悪性小リンパ球性リンパ腫、悪性びまん性大細胞型リンパ腫、悪性濾胞性リンパ腫、菌状息肉腫、その他の特定されている非ホジキンリンパ腫、悪性組織球増殖症、多発性骨髄腫、肥満細胞肉腫、免疫増殖性小腸疾患、白血病、リンパ性白血病、形質細胞性白血病、赤白血病、リンパ肉腫細胞性白血病、骨髄性白血病、好塩基球性白血病、好酸球性白血病、単球性白血病、肥満細胞性白血病、巨核芽球性白血病、骨髄性肉腫、ならびに有毛細胞白血病。
【0054】
一部の実施形態において、対象は、乳がん、結腸がん、肺がん、前立腺がん、精巣がん、脳がん、皮膚がん、直腸がん、胃がん、食道がん、肉腫、気管がん、頭頸部がん、膵臓がん、肝臓がん、卵巣がん、リンパがん、子宮頸がん、外陰がん、メラノーマ、中皮腫、腎臓がん、膀胱がん、甲状腺がん、骨がん、癌腫、肉腫、および軟部組織がんからなる群より選択されるがんに罹患している。
【0055】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、特に、トリプルネガティブ乳がんの処置のためのものである。本明細書において使用する場合、「トリプルネガティブ乳がん」という表現は、当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、当該乳がんが、ホルモンであるエストロゲン(ER陰性)およびプロゲステロン(PR陰性)、ならびにタンパク質であるHER2に対するレセプターを欠いているか、またはそれらが低いレベルで発現していることを意味する。
【0056】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、特に、(例えば、トリプルネガティブ乳がんに罹患している対象における)転移の予防のためのものである。
【0057】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、特に、炎症性疾患の処置のためのものである。一部の実施形態において、炎症性疾患は、関節炎、関節リウマチ、急性関節炎、慢性関節リウマチ、痛風関節炎、急性痛風関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節炎(degenerative arthritis)、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、椎骨関節炎(vertebral arthritis)、および若年発症型関節リウマチ、変形性関節症(osteoarthritis)、慢性進行性関節炎、変形性関節症(arthritis deformans)、慢性原発性多発性関節炎、反応性関節炎、および強直性脊椎炎、炎症性過剰増殖性皮膚疾患、乾癬、例えば、尋常性乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬、および爪の乾癬、接触皮膚炎、慢性接触皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、疱疹状皮膚炎、およびアトピー性皮膚炎を含む皮膚炎、X連鎖高IgM症候群、慢性自己免疫性じん麻疹を含む、じん麻疹、例えば慢性アレルギー性じん麻疹および慢性特発性じん麻疹、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性表皮壊死症、強皮症、全身性強皮症、硬化症、全身性硬化症、多発性硬化症(MS)、脊髄視神経型(spino-optical)MS、一次進行型MS(PPMS)、および再発寛解型MS(RRMS)、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、汎発性硬化症(sclerosis disseminata)、および失調性硬化症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、大腸炎、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)、潰瘍性大腸炎(colitis ulcerosa)、顕微鏡的大腸炎、コラーゲン性大腸炎、ポリープ様大腸炎(colitis polyposa)、壊死性腸炎、全層性大腸炎、自己免疫性炎症性腸疾患、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、上強膜炎、呼吸促迫症候群、成人または急性呼吸促迫症候群(ARDS)、髄膜炎、ブドウ膜の全部または一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫性血液疾患、リウマチ性脊椎炎、突発性難聴、IgE介在性疾患、例えばアナフィラキシー、およびアレルギー性およびアトピー性鼻炎、脳炎、ラスムッセン脳炎、辺縁系脳炎および/または脳幹脳炎、ブドウ膜炎、前部ブドウ膜炎、急性前部ブドウ膜炎、肉芽腫性ブドウ膜炎、非肉芽腫性ブドウ膜炎、水晶体抗原性(phacoantigenic)ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、自己免疫性ブドウ膜炎、糸球体腎炎(GN)、特発性膜性GNまたは特発性膜性腎障害、膜増殖性(membrano proliferative)または膜性増殖性(membranous proliferative)GN(MPGN)、急速進行性GN、アレルギー性病態、自己免疫性心筋炎、白血球粘着不全症、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus)(SLE)、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematodes)、例えば皮膚SLE、亜急性皮膚エリテマトーデス、新生児ループス症候群(NLE)、汎発性エリテマトーデス(lupus erythematosus disseminatus)、ループス(腎炎、脳炎、小児期発症型(pediatric)、非腎性、腎外、円板状、脱毛性を含む)、小児インスリン依存性糖尿病(IDDM)を含む若年発症型(I型)糖尿病、成人発症型糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫性糖尿病、特発性尿崩症、サイトカインおよびTリンパ球の介在による急性および遅延型過敏症に関連した免疫応答、結核、サルコイドーシス、肉芽腫症、リンパ腫様肉芽腫症、ウェゲナー肉芽腫症、無顆粒球症、血管炎、大型血管炎、リウマチ性多発筋痛症、巨細胞(高安)動脈炎、中型血管炎、川崎病、結節性多発動脈炎、顕微鏡的多発動脈炎、CNS血管炎、壊死性、皮膚、過敏性の血管炎、全身性壊死性血管炎、および、ANCA関連血管炎、例えばチャーグ-ストラウス血管炎または症候群(CSS)など、側頭動脈炎を含む血管炎、再生不良性貧血、自己免疫性再生不良性貧血、クームス陽性貧血、ダイアモンド-ブラックファン貧血、溶血性貧血、または自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を含む免疫性溶血性貧血、悪性貧血(pernicious anemia)(悪性貧血(anemia perniciosa))、アジソン病、赤芽球性貧血または赤芽球ろう(PRCA)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球遊出に関与する疾患、CNS炎症性障害、多臓器傷害症候群、例えば敗血症、外傷、または出血に続発するものなど、抗原抗体複合体介在性疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット(Bechet’s)またはベーチェット病、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス-ジョンソン症候群、類天疱瘡、例えば水疱性類天疱瘡および皮膚類天疱瘡、天疱瘡、任意で尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、粘膜類天疱瘡、紅斑性天疱瘡、自己免疫性多腺性内分泌障害、ライター病または症候群、免疫複合体性腎炎、抗体介在性腎炎、視神経脊髄炎、多発ニューロパチー、慢性ニューロパチー、IgM多発ニューロパチー、IgM介在性ニューロパチー、血小板減少症、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、自己免疫性精巣炎および卵巣炎、原発性甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、亜急性甲状腺炎、自己免疫性甲状腺疾患、特発性甲状腺機能低下症、グレーブス病、多腺性症候群、例えば自己免疫性多腺性症候群(または多腺性内分泌症候群)、神経性腫瘍随伴症候群を含む腫瘍随伴症候群、例えばランバート-イートン筋無力症候群またはイートン-ランバート症候群、スティッフマンまたはスティッフパーソン症候群、脳脊髄炎、アレルギー性脳脊髄炎、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、重症筋無力症、胸腺腫関連重症筋無力症、小脳変性症、神経性筋強直症、オプソクローヌスまたはオプソクローヌス-ミオクローヌス症候群(OMS)、および感覚性ニューロパチー、多巣性運動ニューロパチー、シーハン症候群、自己免疫性肝炎、慢性肝炎、ルポイド肝炎、巨細胞肝炎、慢性活動性肝炎または自己免疫性慢性活動性肝炎、リンパ性間質性肺炎、閉塞性細気管支炎(非移植)とNSIP、ギラン-バレー症候群、ベルジェ病(IgA腎症)、特発性IgA腎症、線状IgA皮膚症、原発性胆汁性肝硬変、肺硬変(pneumonocirrhosis)、自己免疫性腸症症候群、セリアック病(Celiac disease)、セリアック病(Coeliac disease)、セリアックスプルー(グルテン腸症)、難治性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー-ゲーリック病)、冠動脈疾患、自己免疫性耳疾患、例えば自己免疫性内耳疾患(AGED)、自己免疫性難聴など、オプソクローヌス-ミオクローヌス症候群(OMS)、多発性軟骨炎、例えば難治性または再発性多発性軟骨炎など、肺胞蛋白症、アミロイドーシス、強膜炎、非癌性リンパ球増加症、モノクローナルB細胞リンパ球増加症、任意で、良性モノクローナル免疫グロブリン血症または意義不明のモノクローナル免疫グロブリン血症(MGUS)を含む原発性リンパ球増加症、末梢性ニューロパチー、腫瘍随伴症候群、チャネル病、例えばてんかん、片頭痛、不整脈、筋障害、聴覚消失、失明、周期性四肢麻痺、およびCNSのチャネル病など、自閉症、炎症性ミオパチー、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼症、網膜ブドウ膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝障害、線維筋痛症、多発性内分泌不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮症、初老期認知症、脱髄疾患、例えば自己免疫性脱髄疾患など、糖尿病性腎症、ドレッスラー症候群、円形脱毛症、クレスト症候群(石灰化症、レイノー現象、食道運動障害、強指症、および毛細血管拡張症)、男性および女性の自己免疫性不妊症、混合性結合組織病、シャガス病、リウマチ熱、不育症、農夫肺、多形紅斑、心膜切開後症候群、クッシング症候群、鳥飼病、アレルギー性肉芽腫性血管炎、良性リンパ球性血管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えばアレルギー性肺胞炎および線維性肺胞炎など、間質性肺疾患、輸血反応、ハンセン病、マラリア、リーシュマニア症、キパノソーマ症(kypanosomiasis)、住血吸虫症、回虫症、アスペルギルス症、サムプター症候群(Sampter’s syndrome)、カプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維症、びまん性間質性肺線維症、間質性肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性(elevatum et diutinum)紅斑、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シャルマン症候群、フェルティー症候群、フィラリア症、毛様体炎、例えば慢性毛様体炎、異色性毛様体炎、虹彩毛様体炎、またはフックス毛様体炎など、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、エコーウイルス感染症、心筋症、アルツハイマー病、パルボウイルス感染症、風疹ウイルス感染症、予防接種後症候群、先天性風疹感染、エプスタイン-バーウイルス感染症、流行性耳下腺炎、エバンス症候群、自己免疫性性腺機能不全、シデナム舞踏病、レンサ球菌感染後腎炎、血栓血管炎(thromboangitis ubiterans)、甲状腺中毒症、脊髄ろう、脈絡膜炎、巨細胞多発性筋痛症、内分泌性眼症、慢性過敏性肺炎、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、特発性腎炎症候群、微小変化型腎症、良性家族性および虚血再潅流傷害、網膜自己免疫、関節炎、気管支炎、慢性閉塞性気道疾患、珪肺症、アフタ症、アフタ性口内炎、動脈硬化性障害、無精子形成(aspermiogenese)、自己免疫性溶血、ベック病、クリオグロブリン血症、デュピュイトラン拘縮、水晶体過敏性眼内炎(endophthalmia phacoanaphylactica)、アレルギー性腸炎、らい性結節性紅斑、特発性顔面神経麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ性発熱(febris rheumatica)、ハンマン-リッチ病、感音難聴、発作性ヘモグロビン尿症(haemoglobinuria paroxysmatica)、性腺機能低下症、限局性回腸炎(ileitis regionalis)、白血球減少症、伝染性単核球症(mononucleosis infectiosa)、横断性脊髄炎、原発性特発性粘液水腫、ネフローゼ、交感性眼炎(ophthalmia symphatica)、肉芽種性精巣炎、膵炎、(例えば慢性膵炎)、急性多発性神経根炎(polyradiculitis acuta)、壊疽性膿皮症、ケルバン甲状腺炎、後天性脾臓萎縮、抗精子抗体(antispermatozoan antobody)による不妊症、非悪性胸腺腫、白斑、SCIDおよびエプスタイン-バーウイルス関連疾患、後天性免疫不全症候群(AIDS)、寄生虫症、例えばリーシュマニア、毒素性ショック症候群、食中毒、T細胞の浸潤に関与する病態、白血球粘着不全症、サイトカインおよびTリンパ球介在性の急性および遅延型過敏症に関連した免疫応答、白血球遊出に関与する疾患、多臓器傷害症候群、抗原抗体複合体介在性の疾患、抗糸球体基底膜疾患、アレルギー性神経炎、自己免疫性多腺性内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫性萎縮性胃炎、交感性眼炎、リウマチ性疾患、混合性結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多腺性機能不全、末梢性ニューロパチー、自己免疫性多腺性症候群I型、成人発症型特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、完全脱毛症、拡張型心筋症、後天性表皮水疱症(EBA)、ヘモクロマトーシス、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、化膿性または非化膿性副鼻腔炎、急性または慢性副鼻腔炎、篩骨洞炎、前頭洞炎、上顎洞炎、または蝶形骨洞炎、好酸球関連疾患、例えば好酸球増加症、肺浸潤性好酸球増加症、
好酸球増加筋肉痛症候群、レフレル症候群、慢性好酸球性肺炎、熱帯性肺好酸球増加症、気管支肺アスペルギルス症(bronchopneumonic aspergillosis)、アスペルギルス腫、または好酸球を含む肉芽腫など、アナフィラキシー、血清陰性脊椎関節炎、多腺性自己免疫性疾患、硬化性胆管炎、強膜炎、上強膜炎、慢性粘膜皮膚カンジダ症、ブルトン症候群、乳児期の一過性低ガンマグロブリン血症、ウィスコット-アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症、膠原病に関連する自己免疫性疾患、リウマチ、神経疾患、虚血再灌流障害、血圧応答低下、血管機能障害、血管拡張症(antgiectasis)、組織傷害、心血管虚血、痛覚過敏、脳虚血、および血管新生を伴う疾患、アレルギー性過敏障害、糸球体腎炎(glomerulonephritides)、再灌流傷害、心筋または他の組織の再灌流傷害、急性炎症性要素、急性化膿性髄膜炎、または他の中枢神経系炎症性障害を伴う皮膚疾患、眼および眼窩の炎症性障害、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘発性毒性、急性の強い炎症、慢性難治性炎症、腎盂炎、肺硬変(pneumonocirrhosis)、糖尿病性網膜症、糖尿病性大動脈障害、動脈内過形成(endarterial hyperplasia)、消化性潰瘍、弁膜炎、ならびに子宮内膜症からなる群より選択される。
【0058】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、全身性エリテマトーデスまたは抗好中球細胞質自己抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)の処置に特に適している。
【0059】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、ウイルス誘発性炎症、特にCOVID19の処置に特に適している。
【0060】
医薬組成物
本発明のさらなる目的は、本発明の抗体を含む、それからなる、またはそれから実質的になる組成物に関する。
【0061】
一部の実施形態において、本発明の組成物は医薬組成物であり、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0062】
この組成物に使用することができる薬学的に許容される担体は、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばホスフェート、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分的なグリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂を含むが、これらに限定されない。患者への投与における使用では、組成物は、患者への投与のために製剤化し得る。本発明の組成物は、経口、非経口、吸入スプレー、経局所、経直腸、経鼻、経口腔、経膣で、または留置リザーバーを介して投与することができる。本明細書において使用されるものは、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝内、病変内、および頭蓋内の注射または注入技術を含む。本発明の組成物の滅菌注射剤形は、水性または油性の懸濁液とすることができる。これらの懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、当該技術分野において既知の技術に従って製剤化することができる。また、滅菌注射調製物は、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液として、非毒性で非経口に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射溶液または懸濁液とすることができる。使用できる許容可能なビヒクルおよび溶媒のなかには、水、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌の固定油は、従来より、溶媒または懸濁媒体として使用されている。この目的のため、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の刺激の少ない固定油を使用することができる。脂肪酸、例えばオレイン酸およびそのグリセリド誘導体は、オリーブ油またはヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油、特にそれらのポリオキシエチル化タイプと同様に、注射剤の調製に有用である。また、これらの油性溶液または懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤、例えばエマルションおよび懸濁液を含む薬学的に許容される投与剤形の製剤に一般的に使用される、カルボキシメチルセルロースまたは同様の分散剤を含有することができる。また、Tween、Spanなどの他の一般的に使用される界面活性剤、および、薬学的に許容される固体、液体、または他の投与剤形の製造に一般的に使用される他の乳化剤または生物学的利用能増強剤も、製剤の目的で使用することができる。本発明の組成物は、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液または溶液を含むが、これらに限定されない、任意の経口に許容される投与剤形で経口投与することができる。経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用される担体としては、ラクトースおよびコーンスターチを含む。また、滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムが、典型的に添加される。カプセル剤形での経口投与では、有用な希釈剤としては、例えばラクトースを含む。経口使用に水性懸濁液を必要とするとき、活性成分は乳化剤および懸濁剤と組み合わせられる。望ましい場合、特定の甘味料、香味料、または着色剤を添加することもできる。あるいは、本発明の組成物は、直腸投与のための坐剤の剤形で投与することができる。これらは、室温では固体であるが直腸温では液体であり、したがって直腸で溶解して薬物を放出する、適切な非刺激性賦形剤と、薬剤とを、混合することによって、調製することができる。そうした物質は、カカオバター、ミツロウ、およびポリエチレングリコールを含む。また、本発明の組成物は、特に、眼、皮膚、または下部腸管の疾患を含む、局所の適用によって容易にアクセス可能である領域または器官を処置の標的に含むとき、経局所で投与することができる。適切な局所用製剤は、これらの領域または器官のそれぞれに対して容易に調製される。局所の適用では、組成物は、1つ以上の担体に懸濁または溶解した活性成分を含有する適切な軟膏剤に製剤化することができる。本発明の化合物の局所投与のための担体は、鉱物油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、および水を含むが、これらに限定されない。あるいは、組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体に懸濁または溶解した活性成分を含有する適切なローション剤またはクリーム剤に製剤化することができる。適切な担体は、鉱物油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルズワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水を含むが、これらに限定されない。下部腸管のための局所の適用は、直腸坐剤(上述を参照)または適切な浣腸剤で行うことができる。また、貼付剤も使用することができる。また、本発明の組成物は、鼻エアロゾルまたは吸入によって投与することができる。そうした組成物は、医薬製剤の技術分野において周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、生物学的利用能を増強させるための吸収促進剤、フルオロカーボンおよび/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を使用して、生理食塩水中の溶液として調製することができる。例えば、この発明の医薬組成物に存在する抗体は、100mg(10mL)または500mg(50mL)のいずれかの単回使用バイアルにおいて10mg/mLの濃度で提供することができる。製品は、9.0mg/mLの塩化ナトリウム、7.35mg/mLのクエン酸ナトリウムニ水和物、0.7mg/mLのポリソルベート80、および滅菌注射用水中において静脈内投与用に製剤化される。pHは6.5に調整する。この発明の医薬組成物における抗体の適切な投与量範囲の例は、約1mg/m2~500mg/m2とすることができる。しかしながら、これらの計画は例示であり、臨床試験において決定する必要のある医薬組成物における特定の抗体の親和性および認容性を考慮して、最適な計画およびレジメンを適応させることができるということが理解される。注射(例えば筋肉内、静脈内)用の本発明の医薬組成物は、滅菌バッファー水(例えば筋肉内では1ml)、および、約1ng~約100mg、例えば約50ng~約30mg以上、好ましくは約5mg~約25mgの本発明の抗体を含有するように調製することができる。
【0063】
本発明を以下の図面および実施例によってさらに例示する。しかしながら、これらの実施例および図面は、本発明の範囲を限定するようにいかようにも解釈されるべきでない。
【実施例】
【0064】
方法
抗CD95Lモノクローナル中和抗体JQ3の作製
Balb/cマウスに免疫付与し、脾臓内経路において組換え可溶性CD95L(Peprotech)で繰り返しブーストした。血清を採取し、IgCD95Lをコートしたプレートを用いたELISAによって免疫応答効率を評価した。最も高い力価を示したマウスの脾臓細胞を、マウスSP2/O-Ag14細胞株マウス(DSMZ,ACC146)と融合させ、抗体産生ハイブリドーマを作製するために選択した。CD95L標的IgGを産生するハイブリドーマを、マイクロタイタープレートに固定化したIgCD95Lと結合する能力に基づいて選別し、次に、CD95L発現1A12細胞に対してフローサイトメトリーを使用して検証した。クローニングステップの後、モノクローナル抗体JQ3を選択し、ローラーボトル内にて作製し、プロテインAカラム(GE)において精製した。
【0065】
細胞死の測定
細胞生存率は、既述のようにMTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム臭化物)アッセイを使用して評価した(48)。簡単に説明すると、100ng/mLのIgCD95L(すなわち、ジャーカットT細胞において100%の細胞死を誘導するIgCD95Lの濃度)を含む培地を、提示した濃度のJQ3、NOK-1、またはコントロール抗体とともに30分間プレインキュベートし、その後、最終容量100μLの平底96ウェルプレートにおいてジャーカットT細胞(4.104)とともに24時間インキュベートした。その後、MTT(PBS中において5mg/mLで15μl)を加え、37℃で4時間インキュベートした後、Infinite200Pro(Tecan,Maennedorf,Switzerland)を使用して570nmの波長で吸光度を測定した。
【0066】
DMSO処理したHL60細胞
HL60細胞株の好中球分化を誘導するために、対数期生細胞を、1.25%DMSOを含む完全RPMI1640増殖培地に24~96時間再懸濁した。
【0067】
カルシウム濃度のイメージング([Ca2+]i)
新しい蛍光発生カルシウム感応色素であるCal-520を使用して、シングルセル細胞質カルシウムイメージングを行った。Cal-520は、基底蛍光が低く、[Ca2+]の小さな変化に応答して蛍光が大きく増加し、良好な信号対雑音比をもたらすため、最も性能の良い緑色発光色素であることが示された(44)。さらに、このCa2+プローブは、他のカルシウム色素よりも良好な細胞内滞留性を示す。ハンクス平衡塩溶液(HBSS)中において室温(20~25℃)で30分間、細胞にCal-520(2μM)を負荷した。細胞を遠心分離して細胞外プローブを除去し、HBSSですすぎ、15分間インキュベートして色素の脱エステル化を完了した。負荷された細胞を、40倍のUApo/340-1.15W水浸対物レンズ(Olympus,Tokyo,Japan)を備えた倒立型落射蛍光顕微鏡(OlympusIX70)のステージ上に位置する記録チャンバー内に配置されたガラスカバースリップ上に堆積させる。UV光曝露を最小限にするため、4×4ビニング機能を使用した。Cal-520を485+/-22nmで励起し、高速スキャンカメラ(CoolSNAP fx Monochrome,Photometrics)によって12ビット分解能で一定の10秒間隔において530+/-30nmで、イメージを取得した。データ収集を特定の領域に制限するために、特定の記録した細胞において対象領域を得た。MetafluorおよびMetamorphを含むUniversal Imagingソフトウェアによって、イメージングを制御した。蛍光強度の変化を、初期蛍光値F0(刺激前の20フレームにおいて平均したピクセル)に対してノーマライズし、F/F0(相対的[Ca2+]cyt)として表した。各カバースリップから1フィールドを取得し、3つの別の日における6つの独立したカバースリップからデータをプールした。
【0068】
結果
JQ3(IgG1κ)と呼ぶ、抗CD95Lモノクローナル中和抗体(mAb)を作製した。抗体の特性を、
図1A、
図1B、および
図1Cに記載する。特に、JQ3の中和効果を確認しており、これは、この自家製モノクローナル抗体が、T細胞株ジャーカットにおいて誘導されるCD95媒介アポトーシスシグナリング経路を、NOK-1mAbよりも効率的に阻害したことによる(
図1D)。興味深い点として、JQ3は、健康なドナーから単離されて、COVID19および抗好中球細胞質自己抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)を含む様々な炎症性疾患に罹患している患者から単離された血清で刺激された好中球において、CD95媒介Ca
2+応答を遮断した(
図2)。
【0069】
参考文献
本願において、様々な参考文献によって、本発明が属する技術の現状が記載されている。これらの参考文献の開示は、本明細書において言及することによって本開示に援用される。
【配列表】
【国際調査報告】