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特表2024-544078ガラクトオリゴ糖を含有するラクトースフリー乳製品を調製するための方法、及びその方法による乳製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-27
(54)【発明の名称】ガラクトオリゴ糖を含有するラクトースフリー乳製品を調製するための方法、及びその方法による乳製品
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/12 20060101AFI20241120BHJP
   A23C 9/13 20060101ALI20241120BHJP
   C12P 19/00 20060101ALN20241120BHJP
【FI】
A23C9/12
A23C9/13
C12P19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533268
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 US2022051495
(87)【国際公開番号】W WO2023102101
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】202111453072.8
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391026058
【氏名又は名称】ザ コカ・コーラ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Coca‐Cola Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ボヤ
(72)【発明者】
【氏名】フォン,シンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジア
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ,トゥーシャー
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,フジュン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ジャ ウエイ
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AF04
4B064CA21
4B064CB07
4B064CB30
4B064CD09
4B064DA10
(57)【要約】
開示されるのは、ガラクトオリゴ糖を含有するラクトースフリー乳製品を調製するための方法であって、通常のラクターゼとトランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼとを使用するステップを含み、通常のラクターゼが、乳製品出発原料中のラクトースをガラクトースとグルコースに分解し;トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼが、乳製品出発原料中のラクトースをガラクトースとグルコースに分解し、分解を通して得られたガラクトースを、乳製品出発原料中のラクトースのヒドロキシル基に転移させて、ガラクトオリゴ糖への変換を達成し、任意選択により、より結合数の多いガラクトオリゴ糖への変換を達成し;-分解を通して得られたガラクトースが:1)通常のラクターゼによるラクトースの分解によって得られたガラクトース;及び/又は2)トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼによるラクトースの分解によって得られたガラクトースを含む方法である。開示される方法は、インサイチュで高いレベルのガラクトオリゴ糖を生成し、低コストで簡単なプロセスを通してラクトースフリー基準を達成し、糖低減効果を提供することができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラクトオリゴ糖を含有するラクトースフリー乳製品を調製するための方法であって、
通常のラクターゼとトランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼとを使用するステップを含み、
前記通常のラクターゼが、乳製品出発原料中のラクトースをガラクトースとグルコースに分解し;
前記トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼが、前記乳製品出発原料中のラクトースをガラクトースとグルコースに分解し、分解を通して得られたガラクトースを、前記乳製品出発原料中のラクトースのヒドロキシル基に転移させて、ガラクトオリゴ糖への変換を達成し、任意選択により、前記トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼが、分解を通して得られたガラクトースを、前記ガラクトオリゴ糖のヒドロキシル基に転移させて、より結合数の多いガラクトオリゴ糖への変換を達成し;
前記分解を通して得られたガラクトースが、以下:
1)前記通常のラクターゼによるラクトースの分解によって得られたガラクトース;及び
2)前記トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼによるラクトースの分解によって得られたガラクトース
からなる群から選択される、分解を通して得られたガラクトースを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼが、乳製品出発原料1リットルあたり0.5~12.0gの量で使用され;且つ前記通常のラクターゼと前記トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼの重量比が、1:1~1:25であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼの適用量が、乳製品原料の0.5g/L~6.0g/Lの範囲であり、且つ前記通常のラクターゼとトランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼとの重量比が、1:1~1:10の範囲である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼの適用量が、乳製品原料の2.0g/L~11.0g/Lの範囲であり、且つ前記通常のラクターゼとトランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼとの重量比が、1:4~1:22の範囲である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼを最初に添加し、次いで前記通常のラクターゼを添加することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼを失活又は部分的に失活させた後に、前記通常のラクターゼを添加することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼと前記通常のラクターゼを同時に添加することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記乳製品出発原料が、以下:生乳、還元乳、調製乳、及び濃縮乳からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記乳製品出発原料が、5.0%以上のラクトース含有量を有することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記濃縮乳が、4.0%以上の総タンパク質含有量を有することを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記濃縮乳が、逆浸透濃縮、限外濾過、ナノ濾過、及び膜濾過のうちの1つ又は2つ以上の組み合わせによって調製されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼが、Nurica(商標)であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記通常のラクターゼが、Maxilact LGI 5000であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法によって調製される、ガラクトオリゴ糖を含有するラクトースフリー乳製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容全体が参照によって組み込まれる、2021年12月1日に国家知識産権局で出願された中国特許出願第202111453072.8号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、乳製品を調製するための方法、及び、この方法によって得られる乳製品に関する。詳細には、本発明は、ガラクトオリゴ糖を含有するラクトースフリー乳製品を調製するための方法、及び、この方法によって得られる乳製品に関する。
【背景技術】
【0003】
ガラクトオリゴ糖(ガラクトースオリゴ糖、GOS)は、機能性オリゴ糖の一種である。ガラクトオリゴ糖は、ヒト腸内のビフィズス菌(Bifidobacterium)及びアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)などの有益な細菌のための有効な増殖因子且つ優れた栄養源であるので、ヒト腸内での消化及び吸収を改善することができる。さらに、例えば牛乳及び乳製品中に含有されるラクトースは、乳糖不耐症を有する人において、胃痛、鼓腸、及び下痢などの有害反応を引き起こすこととなる。したがって、ガラクトオリゴ糖を含有するがラクトースフリーである乳製品を開発することが絶対的に必要である。
【0004】
従来の技術では、ラクトースを低下させながら、乳製品中のガラクトオリゴ糖の含有量を増大させる効果は、一般に、以下の2つの方式で達成される:
【0005】
1)高いレベルのトランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼを使用して、乳製品出発原料中のラクトースを、ガラクトオリゴ糖に変換する。例えば:
中国特許出願公開第101396048号明細書(特許文献1)は、牛乳を加熱すること、脂肪を単離して脱脂乳を得ること、低温殺菌し、次いで冷却すること、それに続く固定化されたβ-ガラクトシダーゼでの加水分解、UHT殺菌、及び次いで冷却及び包装を含む、ガラクトオリゴ糖が豊富なミルクを製造するための方法を開示している。したがって、この方法は、ガラクトオリゴ糖が豊富なミルクを調製するために、β-ガラクトシダーゼで牛乳を加水分解する。しかし、こうした方法によって調製される乳製品の出発原料中のラクトースは、完全には分解されない(前記特許の実施例1~5に記録されているラクトース含有量を参照のこと)。
【0006】
中国特許出願公開第106455600号明細書(特許文献2)は、ガラクトオリゴ糖を含有する乳製品を製造するために、高いレベルのトランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼを低温で使用するための方法を開示しており、ここでは、酵素を失活させるために、熱処理が使用される。同様に、こうした方法によって調製される乳製品の出発原料中のラクトースは、やはり完全には分解されない(前記特許の実施例3に記録されているラクトース含有量を参照のこと)。
【0007】
2)ラクターゼを使用して、乳製品出発原料中のラクトースを完全に分解し、ガラクトオリゴ糖を添加する。例えば:
中国特許出願公開第104286174号明細書(特許文献3)は、ラクトースフリーの発酵乳を調製するための方法を開示しており、ここでは、2つのステップにおいて、出発原料乳中のラクトースをグルコースとガラクトースに分解する酵母ラクターゼと真菌ラクターゼが連続的に使用されて、ラクトースフリーの発酵乳を得、且つ、出発原料に甘味料としてガラクトオリゴ糖が添加される(この明細書の[0014]段落並びに実施例2及び4を参照のこと)。しかし、こうした方法は、ガラクトオリゴ糖の添加を必要とし、これは、製造コストを増大させ、また、製造中の外部からのコンタミネーションのリスクを生じさせる。
【0008】
さらに、中国特許第100473283号明細書(特許文献4)は、乳製品組成物を製造するための方法をさらに開示しており、ここでは、ラクトースフリー乳製品出発原料を得るための、限外濾過、ナノ濾過、及び逆浸透を組み合わせた複数の分離ステップの使用が記録されている。限外濾過、ナノ濾過、及び逆浸透の組み合わせは、ラクトースの大部分を除去する効果を達成することができるが、このプロセスは、高エネルギー消費と高コストとの複合であり、操作中の生乳からの栄養素の喪失が、多大である。
【0009】
要約すると、上述の欠点を克服することが可能である、ガラクトオリゴ糖を含有するラクトースフリー乳製品を調製するための方法、特に、追加のガラクトオリゴ糖の添加を必要としない、且つガラクトオリゴ糖をインサイチュで生成することがさらに可能である、且つ高いレベルのガラクトオリゴ糖を達成する、且つ低コストで簡単なプロセスを通して最終乳製品中のラクトースフリー基準を達成することができる、ガラクトオリゴ糖を含有するラクトースフリー乳製品を調製するための方法の緊急の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】中国特許出願公開第101396048号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第106455600号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第104286174号明細書
【特許文献4】中国特許第100473283号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明によって解決されることとなる技術的問題は、ガラクトオリゴ糖を含有するラクトースフリー乳製品を調製する現存する方法の以下の欠点を克服することである:
1)乳製品出発原料中のラクトースをガラクトオリゴ糖に変換するために、高いレベルのトランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼを単に使用する方法は、調製される乳製品の出発原料中のラクトースが完全には分解されないという問題を有する。
2)乳製品出発原料中のラクトースを完全に分解するために、ラクターゼを単に使用し、且つガラクトオリゴ糖を添加する方法は、インサイチュでガラクトオリゴ糖を生成できないことに起因して、ガラクトオリゴ糖の添加が必要とされ、これは、製造コストを増大させ、また、製造中の外部からのコンタミネーションのリスクを生じさせるという問題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ガラクトオリゴ糖を含有するラクトースフリー乳製品を調製するための方法であって、
通常のラクターゼとトランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼとを使用するステップを含み、
通常のラクターゼが、乳製品出発原料中のラクトースをガラクトースとグルコースに分解し;
トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼが、乳製品出発原料中のラクトースをガラクトースとグルコースに分解し、分解を通して得られたガラクトースを、乳製品出発原料中のラクトースのヒドロキシル基に転移させて、ガラクトオリゴ糖への変換を達成し、任意選択により、トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼが、分解を通して得られたガラクトースを、ガラクトオリゴ糖のヒドロキシル基に転移させて、より結合数の多いガラクトオリゴ糖への変換を達成し;
分解を通して得られたガラクトースが、以下:
1)通常のラクターゼによるラクトースの分解によって得られたガラクトース;及び
2)トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼによるラクトースの分解によって得られたガラクトース
からなる群から選択される、分解を通して得られたガラクトースを含む
方法を提供する。
【0013】
本発明は、本発明の方法によって調製されたガラクトオリゴ糖を含有するラクトースフリー乳製品をさらに提供する。
【0014】
従来の技術と比較して、本発明は、以下の有益な効果を有する:この方法は、乳製品出発原料にガラクトオリゴ糖を添加する必要なく、乳製品中の高いレベルのガラクトオリゴ糖を生じることができ、この方法はまた、トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼと通常のラクターゼとの組み合わせ使用のおかげで、低コストで、簡単なプロセスを通して、乳製品がラクトースフリー基準を達成できるようにする。さらに、ガラクトオリゴ糖は、乳製品出発原料中に元々含有されるラクトースと単糖を使用して生成され、またガラクトオリゴ糖は、ヒトの体によって吸収できないので、糖低減という効果も達成される。
【0015】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、この詳細な説明及び具体的な例は、本発明の好ましい実施形態を特定するが、本発明の趣旨及び範囲内の様々な変化及び改良がこの詳細な説明から当業者に明らかとなるので、これらは、例として与えられるに過ぎないことが理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ガラクトオリゴ糖を含有するラクトースフリー乳製品を調製するための方法であって、
通常のラクターゼとトランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼとを使用するステップを含み、
通常のラクターゼが、乳製品出発原料中のラクトースをガラクトースとグルコースに分解し;
トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼが、乳製品出発原料中のラクトースをガラクトースとグルコースに分解し、分解を通して得られたガラクトースを、乳製品出発原料中のラクトースのヒドロキシル基に転移させて、ガラクトオリゴ糖への変換を達成し、任意選択により、トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼが、分解を通して得られたガラクトースを、ガラクトオリゴ糖のヒドロキシル基に転移させて、より結合数の多いガラクトオリゴ糖への変換を達成し;
分解を通して得られたガラクトースが、以下:
1)通常のラクターゼによるラクトースの分解によって得られたガラクトース;及び
2)トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼによるラクトースの分解によって得られたガラクトース
からなる群から選択される、分解を通して得られたガラクトースを含む
方法を提供する。
【0017】
本発明の方法は、乳製品出発原料にガラクトオリゴ糖を添加する必要なく、乳製品中の高いレベルのガラクトオリゴ糖を生じることができ、この方法はまた、トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼと通常のラクターゼとの組み合わせ使用のおかげで、低コスト且つより高い生産性で、簡単なプロセスを通して、乳製品がラクトースフリー基準を達成できるようにする。さらに、ガラクトオリゴ糖は、乳製品出発原料中に元々含有されるラクトースと単糖を使用して生成され、またガラクトオリゴ糖は、ヒトの体によって吸収できないので、糖低減(すなわち、単糖及び二糖の総量の低下)という効果も達成される。
【0018】
用語「ガラクトオリゴ糖」又は「GOS」は、化学量論式(Gal)Glc又は(Gal)(式中、i=1~8及びj=2~9)を有するオリゴ糖を意味する。GOSは一般に、異なる程度の重合及び異なる連結構造を有する様々なGOS分子の混合物として存在する。この混合物は、直鎖GOS分子と分岐GOS分子を含むことができる。ラクトースは、GOS分子とみなされない。
【0019】
本発明の方法は、そのトランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼが、乳製品出発原料中のラクトースをガラクトースとグルコースに分解し、且つ分解を通して得られたガラクトースを、乳製品出発原料中のラクトースのヒドロキシル基に転移させて、ガラクトオリゴ糖への変換を達成するのであれば、当技術分野で利用可能な様々な種類の「トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼ」を使用することができる。最も好ましくは、トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼは、米国の会社International Flavors&Fragrancesによる商標名Nurica(商標)を有する酵素調製品であり;Nurica(商標)は、乳製品中のラクトースを利用して、ガラクトオリゴ糖の形態の食物繊維を天然に生成することができる。Nurica(商標)酵素調製品の酵素活性の範囲は、500~800BLU/g、好ましくは540~760BLU/gであり、Nurica(商標)酵素調製品中のβ-ガラクトシダーゼ(ベータガラクトシダーゼ)の含有量は、5~8%(w/w)である。
【0020】
本発明の方法は、その通常のラクターゼが、乳製品出発原料中のラクトースをガラクトースとグルコースに分解するのであれば、当技術分野で利用可能な様々な種類の「通常のラクターゼ」を使用することができる。例は、Maxilact LGI 5000及びDupontによるGODO-YNL2ラクターゼである。最も好ましくは、通常のラクターゼは、DSMによるMaxilact LGI 5000であり;Maxilact LGI 5000酵素調製品の酵素活性の範囲は、5000NLU/g以上である。
【0021】
好ましくは、トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼは、1リットルの乳製品出発原料あたり0.5~12g、さらに好ましくは2.0~11.0g/L(乳製品原料)、好ましくは0.5~6.0g/L(乳製品原料)、さらに好ましくは1リットルの乳製品出発原料あたり3.0~4.0gの量で使用され;通常のラクターゼとトランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼの重量比は、1:1~1:25であり、好ましくは、一般的なラクターゼとトランスガラクトシル活性を有するβ-ガラクトシダーゼとの重量比は、1:1~1:10、さらに好ましくは1:6~1:7の範囲内であり、一般的なラクターゼとトランスガラクトシル活性を有するβ-ガラクトシダーゼとの重量比は、1:4~1:22の範囲内である。
【0022】
本発明は、トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼと通常のラクターゼが添加される順序に関する特定の要件を有しない。好ましくは、この方法は、最初にトランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼを添加し、次いで通常のラクターゼを添加する。より好ましくは、この方法は、トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼを失活又は部分的に失活させた後に、通常のラクターゼを添加する。より好ましくは、この方法は、トランスガラクトシル活性を有するβ-ガラクトシダーゼと一般的なラクターゼを同時に添加することができる。2つの酵素を同時に添加することは、全生成プロセスにおける酵素的加水分解の総時間をさらに短くすることができる。さらに、酵素失活の別のステップを省略することもできる。酵素的加水分解後の他の条件(殺菌など)が、酵素失活の役割を果たすことができる。
【0023】
本発明の方法は、使用することができる乳製品出発原料に関する特定の制限を課さず、使用することができる乳製品出発原料は、次のもの:生乳、還元乳、調製乳、及び濃縮乳からなる群から選択され得る。乳製品出発原料の動物源には、限定はされないが、ヒト、乳牛、ヒツジ、ヤギ、スイギュウ、ラクダ、ラマ、雌ウマ、及びシカが含まれる。この中では、ウシ及びヒツジが好ましい。具体的には、本発明の方法に使用することができる乳製品出発原料は、好ましくは、以下のもののうちの1つ以上であり得る:
1.生の全乳又は脱脂乳;
2.全粉乳、脱脂粉乳、又は濃縮乳タンパク質からの還元乳;
3.いずれかの膜濾過技術によって脱脂及び濃縮を受け、必要とされる脂肪、タンパク質、及びラクトース含有量をなすように薄いクリームで埋め戻した生乳;
4.凍結濃縮技術によって濃縮された生乳;及び
5.膜蒸発技術によって濃縮された生乳。
【0024】
好ましくは、使用することができる乳製品出発原料は、上述の項目3~5の乳製品出発原料であり、乳製品出発原料中の脂肪、タンパク質、及びラクトースなどの構成成分の含有量は、様々な集団の人々の需要によって変動する可能性がある。例えば、濃縮は、タンパク質含有量を有意に増大させ、摂取効率を上げることができる。
【0025】
一般に、生の全乳又は脱脂牛乳は、4.0~5.4%、好ましくは4.5~5.4%のラクトース含有量を有する。好ましくは、乳製品出発原料は、5.0%以上のラクトース含有量を有することができる。乳製品出発原料はまた、15.0%という高いラクトース含有量を有することができる。好ましくは、乳製品出発原料は、6.0%~10.0%のラクトース含有量を有し;好ましくは、乳製品原料は、7.0%~8.0%のラクトース含有量を有し;さらには、乳製品原料は、8.0%~9.0%のラクトース含有量を有し;さらには、乳製品原料は、9.0%~10.0%のラクトース含有量を有する。この好ましい範囲のラクトースは、必要とされるのに十分な量のGOSのインサイツ生成のための出発原料としての機能を果たすことができる。
【0026】
一般に、生の全乳又は脱脂牛乳は、3.2~3.8%の総タンパク質含有量を有する。好ましくは、濃縮乳は、4.0%以上の総タンパク質含有量を有する。好ましくは、濃縮乳は、4.0%~10.0%のタンパク質含有量を有する。好ましくは、濃縮乳は、5.0%~9.0%のタンパク質含有量を有する。より好ましくは、濃縮乳は、5.0%~6.0%のタンパク質含有量を有し;このタンパク質含有量範囲の濃縮乳は、タンパク質についての身体の需要を容易に満たし、腸内で容易に吸収され、過剰量の液体を摂取する必要がないので、腸への負荷増大が回避される。
【0027】
濃縮乳は、当技術分野で一般的に使用される様々な濃縮方法によって得る、例えば、逆浸透濃縮、限外濾過、ナノ濾過、及び膜濾過のうちの1つ又は2つ以上の組み合わせによって調製することができる。逆浸透濃縮は、25℃で、より好ましくは2~10℃で行われることが好ましい。膜濾過は、限外濾過、ナノ濾過、又は逆浸透であり得る。濃縮生乳は、4.0%以上の総タンパク質含有量を有することが好ましく;さらに任意選択により4.0%~10.0%のタンパク質含有量を有し;より好ましくは5.0%~9.0%のタンパク質含有量を有し、さらに好ましくは、これは、5.0%~6.0%のタンパク質含有量を有する。
【0028】
さらに、本出願の出願人は、4.0%以上の総タンパク質含有量を有する濃縮された高タンパク質乳製品出発原料を使用する場合に、その高タンパク質乳製品出発原料中のラクトースが、トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼを独自に使用することによって完全には加水分解できないことを発見した。さらに、トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼが、酵素分解ステップ後に失活されないならば、保管中に、この酵素の存在が、代わりに、既に形成されているGOSを分解することとなり、例えば、最終生成物中のGOSの減少を引き起こす。特に、ヨーグルトなどの乳製品を調製するために、酵素分解ステップ後に発酵ステップがさらに実施される場合、乳酸細菌と、失活されていないトランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼが、発酵ステップにおいて両方とも存在するならば、酵素分解ステップにおいて生成された、より多くのGOSが消費されることとなり、最終生成物中のGOSの有意な減少がもたらされる。
【0029】
したがって、その後の保管又はさらなる加工(例えば、発酵又は別のステップ)中のGOSの有意な減少を軽減又は回避するために、トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼは、そのトランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼがGOSの生成を完了した直後に失活されることが好ましい。トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼの失活は、加熱失活(例えば、90~95℃で5~10分間維持すること)又は酸失活(例えば、発酵によって系のpH値を4.5未満に下げること)などの、当技術分野で一般的に使用される失活方法を使用して実施することができる。本発明の方法は、インサイチュで高いレベルのGOSを生成し、GOSの安定性を確実にすることができるだけでなく、低コストで高い製造効率で、簡単なプロセスを通してラクトースフリー基準を達成し、また、糖低減という効果を達成する。
【0030】
本発明はまた、本発明の方法によって調製される、ガラクトオリゴ糖を含有するラクトースフリー乳製品を提供し、ここでは、好ましくは、ガラクトオリゴ糖の含有量は、100mlの乳製品あたり0.5~3.8g、好ましくは0.5~2.3g/100ml、好ましくは1.0g/100mlであり、ラクトース含有量は、100mlの乳製品あたり0.2g未満、より好ましくは100mlの乳製品あたり0.1g未満であり、最も好ましくは、ラクトース含有量は0%である。乳製品は、風味付けされていない乳、風味付けされた乳、アイスクリーム、ヨーグルト、及び乳又は乳成分から調製することができるあらゆる液体栄養製品であり得る。
【0031】
本発明の目的、構造的特徴、及び利点を、具体的な実施例を列挙することによって、以下にさらに詳細に説明する。以下のこれらの実施例は、本発明をさらに十分に説明する目的で列挙されるに過ぎず、保護範囲を制限しない。
【実施例
【0032】
実施例1
この実施例を使用して、ガラクトオリゴ糖を含有するラクトースフリー乳製品を調製するための方法、及びその方法による乳製品を示す。
【0033】
(1)高タンパク質、高ラクトースのミルクベースの調製
188kgの生の脱脂牛乳(総タンパク質3.5%、ラクトース含有量4.5%)を、4±2℃で逆浸透濃縮にかけ、再構成された生乳中の脂肪を調整するために45.0%の脂肪含有量を有するクリームを添加して、最終的に、5.3%に達している総タンパク質含有量、4.0%に達している脂肪含有量、及び7.5%に達しているラクトース含有量を有する、高タンパク質、高ラクトースのミルクベースを得る。
【0034】
(2)高タンパク質、高ラクトースのミルクベースの酵素分解
ステップ(1)で得られた高タンパク質ミルクベース(5.3%タンパク質+4.0%脂肪+7.5%ラクトース)に、Nurica(商標)酵素調製品(酵素活性650±150BLU/g)を、1kgの高タンパク質ミルクベースあたり3.2gの濃度で添加し;10℃での15時間の酵素分解後、Maxilact LGI 5000(5000NLU/gを超える酵素活性)を、1kgの高タンパク質ミルクベースあたり0.5gの濃度で添加し、酵素分解を10℃の温度で15時間継続する。
【0035】
(3)酵素分解後の発酵
ステップ(2)で得られた酵素分解後の高タンパク質、高ラクトースのミルクベースを、30℃に加熱し、ケフィア発酵調製物(Dupontから購入したChoozit Kefir Mild 01)を0.0050g/Lの濃度で添加し、次いで、30℃を20時間維持する。最終的に、4.45のpHを有するヨーグルトが得られる。
【0036】
実施例2
この実施例を使用して、ガラクトオリゴ糖を含有するラクトースフリー乳製品を調製するための方法、及びその方法による乳製品を示す。
【0037】
(1)高タンパク質、高ラクトースのミルクベースの調製
188kgの生の脱脂牛乳(総タンパク質3.5%、ラクトース含有量4.5%)を、4±2℃で逆浸透濃縮にかけ、再構成された生乳中の脂肪を調整するために45.0%の脂肪含有量を有するクリームを添加して、最終的に、5.3%に達している総タンパク質含有量、4.0%に達している脂肪含有量、及び7.5%に達しているラクトース含有量を有する、高タンパク質、高ラクトースのミルクベースを得る。
【0038】
(2)高タンパク質、高ラクトースのミルクベースの酵素分解
ステップ(1)で得られた高タンパク質ミルクベース(5.3%タンパク質+4.0%脂肪+7.5%ラクトース)に、Nurica(商標)酵素調製品(酵素活性650±150BLU/g)を、1kgの高タンパク質ミルクベースあたり3.2gの濃度で添加し;10℃での15時間の酵素分解後、Maxilact LGI 5000(5000NLU/gを超える酵素活性)を、1kgの高タンパク質ミルクベースあたり0.5gの濃度で添加し、酵素分解を10℃の温度で15時間継続する。
【0039】
(3)酵素分解後の発酵によるヨーグルトの調製
ステップ(2)で得られた酵素分解後の高タンパク質、高ラクトースのミルクベースを、42℃に加熱し、YO-MIX 558発酵調製物(Dupontから購入したストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)及びラクトバチルス・デルブリッキィ亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)を含有する複合乳酸細菌調製物)を0.0274g/Lの濃度で添加し、次いで、42℃を20時間維持する。最終的に、3.95のpHを有するヨーグルトが得られる。
【0040】
実施例3
この実施例を使用して、ガラクトオリゴ糖を含有するラクトースフリー乳製品を調製するための方法、及びその方法による乳製品を示す。
【0041】
(1)高タンパク質、高ラクトースのミルクベースの調製
188kgの生の脱脂牛乳(総タンパク質3.5%、ラクトース含有量4.5%)を、5℃で逆浸透濃縮にかけ、再構成された生乳中の脂肪を調整するために45.0%の脂肪含有量を有するクリームを添加して、最終的に、5.3%に達している総タンパク質含有量、4.0%に達している脂肪含有量、及び7.5%に達しているラクトース含有量を有する、高タンパク質、高ラクトースのミルクベースを得る。
【0042】
(2)高タンパク質、高ラクトースのミルクベースの酵素分解
ステップ(1)で得られた高タンパク質ミルクベース(5.3%タンパク質+4.0%脂肪+7.5%ラクトース)に、Nurica(商標)酵素調製品(酵素活性650±150BLU/g)を、1kgの高タンパク質ミルクベースあたり3.2gの濃度で添加し;10℃での15時間の酵素分解後、95℃で7分間、熱処理を実施する。熱処理終了後、温度を42℃に下げ、Maxilact LGI 5000(5000NLU/gを超える酵素活性)を、1kgの高タンパク質ミルクベースあたり0.5gの濃度で添加し、酵素分解を10℃の温度で15時間継続して、最終の乳製品を得る。
【0043】
実施例4~9
これらの実施例は、ガラクトオリゴ糖を含有するラクトースフリー乳製品を調製するための方法、及びその方法による乳製品を示すために使用される。
【0044】
(1)高タンパク質、高ラクトースのミルクベースの調製
188kgの生の牛乳(総タンパク質3.3%、ラクトース含有量4.3%)を、5℃で逆浸透濃縮にかけ、再構成された生乳中の脂肪を調整するために30~45.0%の脂肪含有量を有するクリームを添加して、最終的に、6.5%に達している総タンパク質含有量、3.8%に達している脂肪含有量、及び7.5~9.8%に達しているラクトース含有量を有する、高タンパク質、高ラクトースのミルクベースを得る(詳細については表1を参照)。
【0045】
(2)高タンパク質、高ラクトースのミルクベースの酵素分解
ステップ(1)で得られた高タンパク質ミルクベース(6.5%タンパク質+3.8%脂肪+7.5%ラクトース又は6.5%タンパク質+3.8%脂肪+9.8%ラクトース)に、Nurica(商標)酵素調製品(酵素活性650±150BLU/g)とMaxilact LGI 5000(5000NLU/gを超える酵素活性)を、同時に添加し;10℃での18~20時間の酵素分解後、90℃で10分間、熱処理を実施して、最終の乳製品を得る。Nurica(商標)酵素調製品及びMaxilact LGI 5000の濃度は、下の表1に示す通りである。
【0046】
【表1】
【0047】
比較例1
この比較例を使用して、ガラクトオリゴ糖を含有するラクトースフリー乳製品を調製するための従来の技術における方法、及びその方法による乳製品を示す。
【0048】
(1)高タンパク質、高ラクトースのミルクベースの調製
188kgの生の脱脂牛乳(総タンパク質3.5%、ラクトース含有量4.5%)を、5℃で逆浸透濃縮にかけ、再構成された生乳中の脂肪を調整するために45.0%の脂肪含有量を有するクリームを添加して、最終的に、5.3%に達している総タンパク質含有量、4.0%に達している脂肪含有量、及び7.5%に達しているラクトース含有量を有する、高タンパク質、高ラクトースのミルクベースを得る。
【0049】
(2)Maxilact LGI 5000のみを使用する高タンパク質、高ラクトースのミルクベースの酵素分解
ステップ(1)で得られた高タンパク質ミルクベース(5.3%タンパク質+4.0%脂肪+7.5%ラクトース)に、Maxilact LGI 5000(5000NLU/gを超える酵素活性)を、1kgの高タンパク質ミルクベースあたり0.5gの濃度で添加し、10℃の温度での15時間の酵素分解後、最終の乳製品が得られる。
【0050】
比較例2
この比較例を使用して、ガラクトオリゴ糖を含有するラクトースフリー乳製品を調製するための従来の技術における方法、及びその方法による乳製品を示す。
【0051】
(1)高タンパク質、高ラクトースのミルクベースの調製
188kgの生の脱脂牛乳(総タンパク質3.5%、ラクトース含有量4.5%)を、5℃で逆浸透濃縮にかけ、再構成された生乳中の脂肪を調整するために45.0%の脂肪含有量を有するクリームを添加して、最終的に、5.3%に達している総タンパク質含有量、4.0%に達している脂肪含有量、及び7.5%に達しているラクトース含有量を有する、高タンパク質、高ラクトースのミルクベースを得る。
【0052】
(2)Nurica(商標)酵素調製品のみを使用する高タンパク質、高ラクトースのミルクベースの酵素分解
ステップ(1)で得られた高タンパク質ミルクベース(5.3%タンパク質+4.0%脂肪+7.5%ラクトース)に、Nurica(商標)酵素調製品(酵素活性650±150BLU/g)を、1kgの高タンパク質ミルクベースあたり3.2gの濃度で添加し、10℃での15時間の酵素分解後、最終の乳製品が得られる。
【0053】
比較例3
この比較例を使用して、ガラクトオリゴ糖を含有するラクトースフリー乳製品を調製するための従来の技術における方法、及びその方法による乳製品を示す。
【0054】
(1)高タンパク質、高ラクトースのミルクベースの調製
188kgの生の牛乳(総タンパク質3.3%、ラクトース含有量4.3%)を、5℃で逆浸透濃縮にかけ、再構成された生乳中の脂肪を調整するために30~45.0%の脂肪含有量を有するクリームを添加して、最終的に、6.5%に達している総タンパク質含有量、3.8%に達している脂肪含有量、及び9.8%に達しているラクトース含有量を有する、高タンパク質、高ラクトースのミルクベースを得る。
【0055】
(2)Nurica(商標)酵素調製品のみを使用する高タンパク質、高ラクトースのミルクベースの酵素分解
ステップ(1)で得られた高タンパク質ミルクベース(6.5%タンパク質+3.8%脂肪+9.8%ラクトース)に、Nurica(商標)酵素調製品(酵素活性650±150BLU/g)を、1kgの高タンパク質ミルクベースあたり2.0gの濃度で添加し、10℃での20時間の酵素分解後、90℃で10分間、熱処理を実施して、最終の乳製品を得る。
【0056】
上述の実施例1~9及び比較例1~3において得られた乳製品を、超高温(UHT)瞬間殺菌によって、すべて殺菌する。殺菌温度は、摂氏137℃であり、殺菌時間は、4秒である。
【0057】
効果検証実施例
実施例1~3及び比較例1~2で得られた乳製品を、同一条件下で、糖組成について試験した。
【0058】
糖組成を試験するための方法は、次の通りであった:
【0059】
carrez試薬1及び2を、すべての固体を凝固させるのに十分な量で、試験されることとなる1mlの試料に添加した。2相の混合物を、15分間遠心し(6000rpm)、さらなる濾過のために使い捨てPTFEマイクロフィルター(0.22ミクロン)を使用した。次いで、糖の最終の透明な溶液を、HPLCバイアルに入れ、分析した。
【0060】
使用されたHPLC方法は、次の通りであった:
システム:Waters
カラム:Agilent HiPlex Caポリマーイオン交換カラム
溶離液:MilliQ水
カラム温度:60℃
流速:0.6mL/分
圧力:600psi(こうしたカラムについて、最大値は1000psiである)
検出器:RID、35℃
【0061】
定量化は、ピーク面積及び公知のラクトース濃度に基づく。すべての糖の応答計数も算出した。SigmaのDP2、DP3、及びDP4オリゴ糖及び単糖の分析標準を先に使用して、オリゴ糖保持時間をあらかじめ決定した。
【0062】
糖組成は、乳製品が調製されたばかりの時、10℃での3日の保管後、及び10℃での17日の保管後に試験した。試験結果を、下の表2に示す:
【0063】
【表2】
【0064】
表2から、実施例1~3で使用された乳製品出発原料の濃縮後、タンパク質とラクトースの濃度はどちらも増大し、高いレベルのトランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼと通常のラクターゼが組み合わせて使用されるので、濃縮乳中の高含有量のラクトースが完全に分解されてGOSに変換され、それによって高タンパク質、高GOS、且つ低単糖の乳製品が得られることが分かる。比較例1~2では、高いレベルのトランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼが独自に使用される、又は通常のラクターゼが独自に使用される;ラクトースは完全に分解することができない、又はGOSは生成されないので、本発明の方法によって調製される乳製品の優れた特性は、いずれの場合にも達成できない。
【0065】
さらに、ヨーグルト調製プロセスは、発酵ステップも含むので、当業者は、一般に、発酵がGOSの分解を引き起こすと考えるであろう;しかし、下の表3に示される結果から、天然に生じるGOSの含有量は、本発明の実施例1~2における異なるプロセスのヨーグルト発酵ステップによって有意に低下せず、プレバイオティクス効果を生じるのに依然として十分であることが分かる。
【0066】
【表3】
【0067】
すなわち、本発明の実施例1~2の方法では、発酵ステップはまた、酵素分解ステップ後に実施されて、ヨーグルトが調製される;発酵ステップは、GOS含有量に有意に影響を与えず、さらに、高いレベルのトランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼが加熱によって失活されている実施例3の技術的溶液と比較して、発酵ステップを含む技術的溶液はまた、酵素を失活させる特別なステップを省くことができ、それによって、製造効率を増大させる且つ製造コストを低下させるという技術的効果が達成される。
【0068】
実施例4~9及び比較例3の試料は、乳製品が調製されたばかりの時に糖組成試験を受けた。
【0069】
【表4】
【0070】
表4から、2種の酵素を同時に添加することにより、酵素分解に必要とされる時間を有意に短縮することができ、また、最終の乳製品が、ラクトースフリーであるための中国国家標準(national standard)GB28050-2011の含有量要件を満たすことができることが分かる。
【0071】
本明細書に概略的に開示される本発明は、本明細書に特に開示されていないいずれかの要素が存在しない場合、適切に実行することができる。しかし、この方法に対する多くの変化、変更、及び改良、並びにこれらのものの他の使用及び適用が可能であり;本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない変化、変更、改良、他の使用、及び適用が、添付の特許請求の範囲のみによって定義される本発明によって包含されるとみなされることが、当業者に明らかであろう。

【国際調査報告】