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特表2024-544083修飾ベータ-シクロデキストリンを含む医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-27
(54)【発明の名称】修飾ベータ-シクロデキストリンを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20241120BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241120BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241120BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20241120BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241120BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P35/00
A61P35/02
A61K47/69
A61K9/08
A61K47/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535753
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-08-13
(86)【国際出願番号】 KR2022020393
(87)【国際公開番号】W WO2023113479
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】21214940.5
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21214941.3
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22181675.4
(32)【優先日】2022-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22191429.4
(32)【優先日】2022-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523325554
【氏名又は名称】シルラジェン,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SILLAJEN,INC.
【住所又は居所原語表記】9th FL.,109,Sogong-ro,Jung-gu,Seoul 04525,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】バリー,ラック
(72)【発明者】
【氏名】フーベス,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ハウク,ゲリット
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076CC27
4C076DD22Z
4C076DD23D
4C076DD30Z
4C076DD43
4C076EE39E
4C076FF15
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA66
4C086NA02
4C086NA05
4C086NA11
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
本発明は、特許請求の範囲で定義される式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩および修飾ベータ-シクロデキストリンを含む医薬組成物、ならびにがんなどの新生物疾患の処置のために医薬組成物を使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】
またはその薬学的に許容される塩および修飾ベータ-シクロデキストリンを含む医薬組成物。
【請求項2】
前記修飾ベータ-シクロデキストリンが、スルホブチルエーテルベータ-シクロデキストリン(SBE-ベータ-CD)である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記SBE-ベータ-CDが、約6~約7.5の置換度を有する、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記SBE-ベータ-CDが、約6~約7.5の平均置換度を有する、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記SBE-ベータ-CDが、約6.5の平均置換度を有する、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物中のSBE-ベータ-CDの濃度が、最大約400mg/mLである、請求項2から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物中のSBE-ベータ-CDの濃度が、約10mg/mL~約100mg/mLである、請求項2から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物中のSBE-ベータ-CDの濃度が、約30mg/mL~約50mg/mLである、請求項2から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物中の式(I)の前記化合物またはその薬学的に許容される塩の濃度が、遊離塩基としての式(I)の前記化合物に基づいて最大約3.5mg/mLである、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
式(I)の前記化合物またはその薬学的に許容される塩の濃度が、遊離塩基としての式(I)の前記化合物に基づいて約1.5mg/mL~約2.5mg/mLである、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
式(I)の前記化合物またはその薬学的に許容される塩の濃度が、遊離塩基としての式(I)の前記化合物に基づいて約2mg/mLである、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬組成物のpHが、約3.5~約7である、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物のpHが、約4~約6.5である、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記医薬組成物のpHが、4.5~6.5である、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬組成物が、浸透圧剤としての塩を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記塩が、塩化ナトリウムである、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記医薬組成物中の塩濃度が、最大約10mg/mLである、請求項15または請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物中の塩濃度が、約0.5mg/mL~約8mg/mLである、請求項15または請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記医薬組成物中の塩濃度が、約3mg/mLである、請求項15または請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記医薬組成物が、遊離塩基としての式(I)の前記化合物に基づいて約1mg/mL~約3mg/mLの濃度の式(I)の前記化合物またはその薬学的に許容される塩、および約10mg/mL~約100mg/mLの濃度の、約6~約7.5の平均置換度を有するSBE-ベータ-CDを含み、前記医薬組成物のpHが、約4~約6.5である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記医薬組成物が、遊離塩基としての式(I)の前記化合物、約6~約7.5の平均置換度を有するSBE-ベータ-CD、1種以上の緩衝剤、場合により塩、および場合により水から本質的になり、前記医薬組成物のpHが、約4~約6.5である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記医薬組成物が、約1mg/mL~約3mg/mLの濃度の遊離塩基としての式(I)の前記化合物、約10mg/mL~約100mg/mLの濃度の、約6~約7.5の平均置換度を有するSBE-ベータ-CD、1種以上の緩衝剤、場合により塩、および場合により水から本質的になり、前記医薬組成物のpHが、約4~約6.5である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記医薬組成物が、約1.5mg/mL~約2.5mg/mLの濃度の遊離塩基としての式(I)の前記化合物、約30mg/mL~約50mg/mLの濃度の、約6~約7.5の平均置換度を有するSBE-ベータ-CD、1種以上の緩衝剤、場合により塩、および場合により水から本質的になり、前記医薬組成物のpHが、約4~約6.5である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記医薬組成物が、医薬組成物1mL当たりの成分および各成分の量が以下の通りであるものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【表1】
【請求項25】
式(I)の前記化合物またはその薬学的に許容される塩が、遊離塩基としての式(I)の前記化合物である、請求項1から20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
「約」という用語が、関連する数字の5%以下の変動を意味する、請求項1から25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記医薬組成物が、静脈内投与に適している、請求項1から26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
患者における新生物疾患を処置する際に使用するための、請求項1から27のいずれか一項において定義される医薬組成物。
【請求項29】
患者における新生物疾患の処置のための医薬の製造における、請求項1から28のいずれか一項において定義される医薬組成物の使用。
【請求項30】
新生物疾患の処置を必要とする患者における新生物疾患を処置する方法であって、請求項1から27のいずれか一項において定義される医薬組成物を治療有効量で前記患者に投与することを含む方法。
【請求項31】
前記新生物疾患が、がんである、請求項28に記載の使用のための医薬組成物、請求項29に記載の医薬組成物の使用、または請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記新生物疾患が、乳癌、胃癌、結腸直腸癌、肝臓癌、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肺癌、カポジ肉腫、子宮頸癌、膵臓癌、黒色腫、前立腺癌、膀胱癌および白血病から選択されるがんである、請求項28に記載の使用のための医薬組成物、請求項29に記載の医薬組成物の使用、または請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下に記載される活性医薬化合物および修飾ベータ-シクロデキストリン賦形剤を含む医薬組成物、ならびに新生物疾患、特にがんの処置のために医薬組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2015/155042号は、がんの処置において使用するためのトレオニンチロシンキナーゼ(TTK)の最近発見されたクラスの阻害剤について記載している。
【0003】
シクロデキストリンは、アルファ-1,4-グリコシド結合を介して連結された6個(アルファ-シクロデキストリン)、7個(ベータ-シクロデキストリン)または8個(ガンマ-シクロデキストリン)のグルコース単位を含有する環状オリゴ糖である。シクロデキストリンの誘導体化バージョンは、医薬賦形剤として使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/155042号
【発明の概要】
【0005】
課題を解決するための手段
発明の概要
第1の態様では、本発明は、式(I)の化合物
【化1】
またはその薬学的に許容される塩および修飾ベータ-シクロデキストリン
を含む医薬組成物を提供する。
【0006】
二重TTK/ポロ様キナーゼ1(PLK1)阻害剤として、式(I)の化合物は、次世代有糸分裂治療薬の新興クラスのファースト・イン・クラスを表し、本発明者らが認識している限り、マウス腫瘍モデルにおいて単剤として投与した場合に退縮(および治癒)を引き起こす唯一のTTK阻害剤である。しかし、式(I)の化合物は水溶解度が低く、ヒトへの曝露が制限される可能性がある。
【0007】
第I相研究のために、本発明者らは、式(I)の化合物の不十分な溶解度および活性医薬成分(API)の可溶化を改善するために使用される賦形剤の最大許容1日摂取量(ADI)を考慮して、30~60分にわたって静脈内注入として最大500mgの式(I)の化合物を送達することができる製剤を開発することを目的とした。驚くべきことに、スルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリンは、その最大ADIを超えることなく、式(I)の化合物の許容可能な可溶化をもたらすことが見出された。
【0008】
さらなる態様では、本発明は、がんなどの新生物疾患の処置を必要とする患者におけるがんなどの新生物疾患を処置する方法であって、本発明の医薬組成物を例えば治療有効量で前記患者に投与することを含む方法を提供する。
【0009】
さらなる態様では、本発明は、患者におけるがんなどの新生物疾患を処置する際に使用するための本発明の医薬組成物を提供する。
【0010】
さらなる態様では、本発明は、患者におけるがんなどの新生物疾患の処置のための医薬の製造における本発明の医薬組成物の使用を提供する。
【0011】
本発明のさらなる態様および実施形態は、以下により詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一般的な定義
本明細書で使用されるある特定の用語は以下に記載されている。他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。
【0013】
「医薬組成物」という用語は、患者に影響を及ぼす特定の疾患または状態を予防または治療するために、1種以上の薬学的に許容される賦形剤と共に患者に投与される少なくとも1つの治療剤を含有する液体製剤を指すように本明細書で定義される。
【0014】
「薬学的に許容される」という用語は、本明細書で使用される場合、健全な医学的判断の範囲内で、合理的なベネフィット/リスク比に見合った過剰な毒性または他の合併症なしに、温血動物、例えば哺乳動物またはヒトの組織との接触に適した化合物、材料、組成物および/または剤形などの項目を指す。
【0015】
「処置」という用語は、患者における新生物疾患を処置することに関して本明細書で使用される場合、一般に、何らかの所望の治療効果、例えば新生物疾患の進行の阻害が達成される処置よび治療に関し、進行速度の低下、進行速度の停止、新生物疾患の症状の緩和、新生物疾患の改善、および新生物疾患の治癒を含む。例えば、処置は、障害の1つもしくはいくつかの症状の減弱またはがんなどの障害の完全な根絶であり得る。本開示の意味の範囲内で、「処置する」という用語はまた、疾患を停止させる、その発症を遅延させる(すなわち、疾患の臨床症状発現前の期間)、および/または疾患を発症もしくは悪化させるリスクを低減することを意味する。
【0016】
「薬学的有効量」、「治療有効量」または「臨床的有効量」という用語は、医薬組成物で処置された障害のベースラインの臨床的に観察可能な徴候および症状に対して、観察可能なまたは臨床的に有意な改善をもたらすのに十分な量である。
【0017】
「患者」という用語は、治療的処置のために自身を提示するヒトを指す。
【0018】
「約」という用語は、関連する数字の10%以下の変動を意味する。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、関連する数字の5%以下の変動を意味する。
【0019】
範囲が与えられる場合、範囲の終点は範囲内に含まれる。
【0020】
式(I)の化合物
式(I)の化合物への言及は、上記の式(I)の化合物の遊離塩基および薬学的に許容される塩を指す。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物への言及は、式(I)の化合物の遊離塩基を指す。他の実施形態では、式(I)の化合物への言及は、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩を指す。
【0021】
式(I)の化合物の薬学的に許容される塩は、酸付加塩であり得る。塩は、例えば式(I)の化合物からの有機酸または無機酸を用いて形成される。薬学的に許容される塩は、当業者の一般常識の範囲内である。薬学的に許容される塩は、対応する酸の2つ以上の分子またはイオンを含み得る。
【0022】
式(I)の化合物およびその薬学的に許容される塩は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2015/155042号、特に17頁~19頁に記載されているように、および国際公開第2015/155042号の49頁の実施例17に記載されているように(実施例17~実施例9、中間体Hおよび実施例1の参照を含めて、これも参照により本明細書に組み込まれる)合成することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の濃度は、遊離塩基としての式(I)の化合物に基づいて約1mg/mL~約3.5mg/mLである。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の濃度は、遊離塩基としての式(I)の化合物に基づいて約1mg/mL~約3mg/mLである。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の濃度は、遊離塩基としての式(I)の化合物に基づいて約1.5mg/mL~約2.5mg/mLである。
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の濃度は、遊離塩基としての式(I)の化合物に基づいて最大約3.5mg/mLである。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の濃度は、遊離塩基としての式(I)の化合物に基づいて最大約3mg/mLである。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の濃度は、遊離塩基としての式(I)の化合物に基づいて最大約2.5mg/mLである。
【0025】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の濃度は、遊離塩基としての式(I)の化合物に基づいて少なくとも約1mg/mLである。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の濃度は、遊離塩基としての式(I)の化合物に基づいて少なくとも約1.5mg/mLである。
【0026】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の濃度は、遊離塩基としての式(I)の化合物に基づいて約2mg/mLである。
【0027】
一般に、本発明の医薬組成物中の式(I)の化合物のより高い可溶化濃度は、より低いpHで達成することができる。
【0028】
「遊離塩基としての式(I)の化合物に基づいて」という表現は、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩が使用される場合、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩のmg/mL単位の量が、式(I)の化合物の遊離塩基のmg/mL単位の記載量のモル当量であることを意味する。
【0029】
修飾ベータ-シクロデキストリン
シクロデキストリンは、疎水性薬物分子と相互作用して包接複合体を形成する。ベータ-シクロデキストリンは、比較的低い水溶性を有し、親油性置換基によるものであっても、水素結合形成ヒドロキシル基のいずれかの置換によるベータ-シクロデキストリンの修飾は、誘導体の水溶性の劇的な改善をもたらす。シクロデキストリンの疎水性、親水性、重合、イオン化、非イオン化および多くの他の誘導体が開発されており、置換基には中性、アニオン性および/またはカチオン性官能基が含まれる。
【0030】
修飾シクロデキストリン、例えばアルキル化シクロデキストリンには、例えば、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン、アルキルエーテルシクロデキストリン(例えば、メチル、エチルおよびプロピルエーテルシクロデキストリン)、ヒドロキシアルキルシクロデキストリン、チオアルキルエーテルシクロデキストリン、カルボキシル化シクロデキストリン(例えば、スクシニル-ベータ-シクロデキストリンなど)、硫酸化シクロデキストリンなどが含まれる。スルホアルキルエーテル-アルキルエーテル-シクロデキストリン(例えば、国際公開第2005/042584号および米国特許出願公開第2009/0012042号を参照されたい。)などの2種類以上の官能基を有するアルキル化シクロデキストリンも知られている。
【0031】
医薬品中で賦形剤として使用される修飾ベータ-シクロデキストリン誘導体の特定の例は、ベータ-シクロデキストリンのスルホブチルエーテル誘導体(SBE-ベータ-CD)、ベータ-シクロデキストリンのヒドロキシプロピル誘導体(HP-ベータ-CD)、およびランダムメチル化ベータ-シクロデキストリン(RM-ベータ-CD)である。
【0032】
修飾ベータ-シクロデキストリンの構造を以下に示す(式II)(式中、各Rは独立して水素または脂肪族置換基を表し、少なくとも1つのRは水素ではない)。
【化2】
【0033】
SBE-ベータ-CDにおいてRは-(CH-SONaであり、HP-ベータ-CDにおいてRは-CH-CHOH-CHであり、RM-ベータ-CDにおいてRは-CHであり(例えば、賦形剤として使用されるシクロデキストリン、EMA/CHMP/333892/2013を参照されたい)であり、各場合において、Rは所与の置換基と水素との混合物であることに留意されたい。医薬品、特に非経口製剤におけるシクロデキストリンの使用のさらなる総説については、Loftsson,Journal of Pharmaceutical Sciences 2021,110:654-664を参照されたい。
【0034】
SBE-ベータ-CDはCAS番号182410-00-0を有し、例えば、Captisol(商標)(Ligand)およびDexolve(商標)(Cyclolab)の商品名で販売されている。それは、欧州薬局方および米国薬局方の両方に列挙されている。Captisol(商標)は、6.5の平均置換度に基づいて2163g/molの分子量を有する(www.captisol.com)。米国特許第9,493,582号明細書によると、Captisol(商標)における置換度は6~7.1である。Dexolve(商標)はまた、6.5の平均置換度を有する(www.cyclolab.hu)。SBE-ベータ-CDは、例えば、米国特許出願公開第2009/011037号明細書、米国特許出願公開第2009/270348号明細書、米国特許出願公開第2015/045311号明細書、米国特許出願公開第2015/284479号明細書および米国特許出願公開第2016/009826号明細書に記載されているように製造することができ、これらはすべて参照により組み込まれる。
【0035】
いくつかの実施形態では、修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)は、約2~約9の置換度を有する。いくつかの実施形態では、修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)は、約4.5~約7.5の置換度を有する。いくつかの実施形態では、修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)は、約6~約7.5の置換度を有する。いくつかの実施形態では、修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)は、約6.5の置換度を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)は、約2~約9の平均置換度を有する。いくつかの実施形態では、修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)は、約4.5~約7.5の平均置換度を有する。いくつかの実施形態では、修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)は、約6~約7.5の平均置換度を有する。いくつかの実施形態では、修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)は、約6.5の平均置換度を有する。いくつかの実施形態では、修飾ベータ-シクロデキストリンは、CAS番号182410-00-0を有するSBE-ベータ-CDである。
【0037】
置換度は、修飾ベータ-シクロデキストリン1モル当たりの置換基のモル数に関する、修飾ベータ-シクロデキストリン分子に結合した置換基の数の尺度である。平均置換度は、本発明の医薬組成物において使用される修飾ベータ-シクロデキストリン生成物内の修飾ベータ-シクロデキストリンの分布に関する修飾ベータ-シクロデキストリン分子当たりに存在する置換基の総数の尺度である。
【0038】
本発明の医薬組成物において使用される修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)の量は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を溶解するのに十分であるべきである。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)の濃度は、約10mg/mL~約400mg/mLである。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)の濃度は、約10mg/mL~約200mg/mLである。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)の濃度は、約10mg/mL~約100mg/mLである。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)の濃度は、約20mg/mL~約60mg/mLである。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)の濃度は、約30mg/mL~約50mg/mLである。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)の濃度は、最大約400mg/mLである。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)の濃度は、最大約200mg/mLである。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)の濃度は、最大約100mg/mLである。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)の濃度は、最大約60mg/mLである。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)の濃度は、最大約50mg/mLである。
【0040】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)の濃度は、少なくとも約10mg/mLである。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)の濃度は、少なくとも約20mg/mLである。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)の濃度は、少なくとも約30mg/mLである。
【0041】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の修飾ベータ-シクロデキストリン(例えば、SBE-ベータ-CD)の濃度は、約40mg/mLである。
【0042】
pH、添加剤、組成物
上述のように、組成物のpHは、SBE-ベータ-CD中の式(I)の化合物の溶解度に影響を及ぼし、より低いpHで溶解度が増加する。
【0043】
いくつかの実施形態では、より高いpH値は式(I)の化合物のより低い溶解度に対応することに留意して、本発明の医薬組成物のpHは約3.5~約9である。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは、約3.5~約7である。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは、約4~約6.5である。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは、約4.5~約6.5である。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは、4.5~6.5である。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは、約4.5~約5.5である。
【0044】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは、少なくとも約3.5である。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは、少なくとも約4である。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは、少なくとも約4.5である。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは、少なくとも4.5である。
【0045】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは、最大約9である。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは、最大約7である。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは、最大約6.5である。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは、最大6.5である。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは、最大約5.5である。
【0046】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは、約5.5である。
【0047】
本発明の医薬組成物のpHは、適切な緩衝剤によって維持され得る。例としては、クエン酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩およびアスパラギン酸塩が挙げられる。当業者は、pHを制御するために本発明の医薬組成物と共に使用することができる多くの他の適切な緩衝剤を認識するであろう。
【0048】
緩衝剤は、当業者によって適切と判断される濃度で使用され得る。約5mM~約100mMなどの濃度、例えば約10mM~約100mM、例えば約20mM~約50mM、例えば最大約100mM、例えば最大約50mM、例えば少なくとも約10mM、例えば少なくとも約20mM、例えば約30mMの濃度を使用することができる。
【0049】
医薬組成物は、緩衝液に加えて、塩、例えば塩化ナトリウムなどの浸透圧剤を含み得る。塩化ナトリウムなどの塩は、当業者によって適切と判断される濃度で使用され得る。いくつかの実施形態では、塩は省略されてもよい。塩が存在する場合、約0.5mg/mL~約10mg/mLなどの濃度、例えば約0.5mg/mL~約8mg/mL、例えば約1mg/mL~約8mg/mL、例えば約2mg/mL~約6mg/mL、例えば最大約10mg/mL、例えば最大約8mg/mL、例えば最大約6mg/mL、例えば少なくとも約0.5mg/mL、例えば少なくとも約1mg/mL、例えば少なくとも約2mg/mL、例えば少なくとも約3mg/mL、例えば約3mg/mLの濃度が使用され得る。
【0050】
他の添加剤、例えばブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、もしくはグルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;および/またはTween(商標)(例えば、Tween(商標)80)、Pluronics(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤;ならびに以下の実施例に記載される共溶媒、親水性ポリマーおよび界面活性剤が本発明の医薬組成物において使用され得る。
【0051】
*いくつかの実施形態では、医薬組成物は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、およびSBE-ベータ-CD(例えば、約6~約7.5の平均置換度を有する)を含み、医薬組成物のpHは、約4~約6.5である。
【0052】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、遊離塩基としての式(I)の化合物に基づいて約1mg/mL~約3mg/mLの濃度の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、およびSBE-ベータ-CD(例えば、約6~約7.5の平均置換度を有する)を含み、医薬組成物のpHは、約4~約6.5である。
【0053】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、遊離塩基としての式(I)の化合物に基づいて約1.5mg/mL~約2.5mg/mLの濃度の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、およびSBE-ベータ-CD(例えば、約6~約7.5の平均置換度を有する)を含み、医薬組成物のpHは、約4~約6.5である。
【0054】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、および約10mg/mL~約200mg/mLの濃度のSBE-ベータ-CD(例えば、約6~約7.5の平均置換度を有する)を含み、医薬組成物のpHは、約4~約6.5である。
【0055】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、および約10mg/mL~約100mg/mLの濃度のSBE-ベータ-CD(例えば、約6~約7.5の平均置換度を有する)を含み、医薬組成物のpHは、約4~約6.5である。
【0056】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、およびSBE-ベータ-CD(例えば、約6~約7.5の平均置換度を有する)を約30mg/mL~約50mg/mLの濃度で含み、医薬組成物のpHは、約4~約6.5である。
【0057】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、遊離塩基としての式(I)の化合物に基づいて約1mg/mL~約3mg/mLの濃度の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、および約10mg/mL~約200mg/mLの濃度のSBE-ベータ-CD(例えば、約6~約7.5の平均置換度を有する)を含み、医薬組成物のpHは、約4~約6.5である。
【0058】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、遊離塩基としての式(I)の化合物に基づいて約1mg/mL~約3mg/mLの濃度の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、および約10mg/mL~約100mg/mLの濃度のSBE-ベータ-CD(例えば、約6~約7.5の平均置換度を有する)を含み、医薬組成物のpHは、約4~約6.5である。
【0059】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、遊離塩基としての式(I)の化合物に基づいて約1.5mg/mL~約2.5mg/mLの濃度の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、および約30mg/mL~約50mg/mLの濃度のSBE-ベータ-CD(例えば、約6~約7.5の平均置換度を有する)を含み、医薬組成物のpHは、約4~約6.5である。
【0060】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、遊離塩基としての式(I)の化合物に基づいて約2mg/mLの濃度の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、および約40mg/mLの濃度のSBE-ベータ-CD(例えば、約6~約7.5の平均置換度を有する)を含み、医薬組成物のpHは4.5~6.5(例えば約5.5)である。
【0061】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、遊離塩基としての式(I)の化合物、SBE-ベータ-CD(例えば、約6~約7.5の平均置換度を有する)、1種以上の緩衝剤、場合により塩、および場合により水から本質的になり、医薬組成物のpHは、約4~約6.5である。
【0062】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1mg/mL~約3mg/mLの濃度の遊離塩基としての式(I)の化合物、SBE-ベータ-CD(例えば、約6~約7.5の平均置換度を有する)、1種以上の緩衝剤、場合により塩、および場合により水から本質的になり、医薬組成物のpHは、約4~約6.5である。
【0063】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1.5mg/mL~約2.5mgの濃度の遊離塩基としての式(I)の化合物、SBE-ベータ-CD(例えば、約6~約7.5の平均置換度を有する)、1種以上の緩衝剤、場合により塩、および場合により水から本質的になり、医薬組成物のpHは、約4~約6.5である。
【0064】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、遊離塩基としての式(I)の化合物、約10mg/mL~約200mg/mLの濃度のSBE-ベータ-CD(例えば、約6~約7.5の平均置換度を有する)、1種以上の緩衝剤、場合により塩、および場合により水から本質的になり、医薬組成物のpHは、約4~約6.5である。
【0065】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、遊離塩基としての式(I)の化合物、約10mg/mL~約100mg/mLの濃度のSBE-ベータ-CD(例えば、約6~約7.5の平均置換度を有する)、1種以上の緩衝剤、場合により塩、および場合により水から本質的になり、医薬組成物のpHは、約4~約6.5である。
【0066】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、遊離塩基としての式(I)の化合物、約30mg/mL~約50mg/mLの濃度のSBE-ベータ-CD(例えば、約6~約7.5の平均置換度を有する)、1種以上の緩衝剤、場合により塩、および場合により水から本質的になり、医薬組成物のpHは、約4~約6.5である。
【0067】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1mg/mL~約3mg/mLの濃度の遊離塩基としての式(I)の化合物、約10mg/mL~約200mg/mLの濃度のSBE-ベータ-CD(例えば、約6~約7.5の平均置換度を有する)、1種以上の緩衝剤、場合により塩、および場合により水から本質的になり、医薬組成物のpHは、約4~約6.5である。
【0068】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1mg/mL~約3mg/mLの濃度の遊離塩基としての式(I)の化合物、約10mg/mL~約100mg/mLの濃度のSBE-ベータ-CD(例えば、約6~約7.5の平均置換度を有する)、1種以上の緩衝剤、場合により塩、および場合により水から本質的になり、医薬組成物のpHは、約4~約6.5である。
【0069】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1.5mg/mL~約2.5mg/mLの濃度の遊離塩基としての式(I)の化合物、約30mg/mL~約50mg/mLの濃度のSBE-ベータ-CD(例えば、約6~約7.5の平均置換度を有する)、1種以上の緩衝剤、場合により塩、および場合により水から本質的になり、医薬組成物のpHは、約4~約6.5である。
【0070】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約2mg/mLの濃度の遊離塩基としての式(I)の化合物、約40mg/mLの濃度のSBE-ベータ-CD(例えば、約6~約7.5の平均置換度を有する)、1種以上の緩衝剤、場合により塩、および場合により水から本質的になり、医薬組成物のpHは4.5~6.5(例えば約5.5)である。
【0071】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、医薬組成物1mL当たりの成分および各成分の量が以下の通りであるものである:
【表1】
【0072】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、医薬組成物1mL当たりの成分および各成分の量が以下の通りであるものである:
【表2】
【0073】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、医薬組成物1mL当たりの成分および各成分の量が以下の通りであるものである:
【表3】
【0074】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、医薬組成物1mL当たりの成分および各成分の量が以下の通りであるものである:
【表4】
【0075】
例示的な医薬組成物は、医薬組成物1mL当たりの成分および各成分の量が以下の通りであるものである:
【表5】
【0076】
製造方法
式(I)の化合物およびその薬学的に許容される塩は、上記のように調製することができる。修飾ベータ-シクロデキストリンは、上記のように調製することもでき、または商業的供給源から得ることもできる。本発明の医薬組成物は、初期容量の水(WFI)を容器に装入し、緩衝液を添加し、例えば塩酸を使用してpHを所望のレベルに調整した後、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を例えば粉末として添加し、溶解するまで混合することによって調製され得る。修飾ベータ-シクロデキストリンを添加し、溶解するまで混合することによって、プロセスを継続することができる。式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩および修飾ベータ-シクロデキストリンの溶解後、pHは、所望のpH範囲に対応するように調整され、溶液は水で容量まで構成され得る。医薬組成物は、0.2μmフィルタを使用して濾過することによって滅菌することができる。最後に、医薬組成物をバイアルにアリコートし、密封することができる。当業者は、代替の製造方法も可能であることを認識するであろう。
【0077】
本発明の医薬組成物は、希釈せずに、または例えば生理食塩水で希釈した後に、患者に静脈内投与することができる。
【0078】
本発明の医薬組成物の使用
本発明の医薬組成物は、例えば静脈内投与によって、がんなどの新生物疾患を処置するために使用され得る。本発明の医薬組成物は、任意の臨床ステージまたは病理学的グレード(例えば、腫瘍ステージI、腫瘍ステージII、腫瘍ステージIII、腫瘍ステージIV)または処置状況(例えば、予防的、アジュバント、ネオアジュバント、緩和処置を含む治療的)でがんを処置するために使用され得る。本発明の医薬組成物は、がんの進行もしくはがんの成長を遅らせる、遅延させるもしくは停止させる、または全生存時間もしくはがんの無増悪生存時間もしくはがんの進行までの時間を増加させる、または患者(例えば患者)の生活の質もしくは機能状態を改善もしくは維持するのに使用するためのものであり得る。本発明の医薬組成物はまた、がんからの治療後回復において使用され得る。本発明の医薬組成物は、転移性がんの処置に使用され得る。
【0079】
例えば、本発明の医薬組成物は、(i)がん細胞の数を低減する;(ii)腫瘍体積を低減する;(iii)腫瘍退縮率を増加させる;(iv)末梢器官へのがん細胞浸潤を低減するかもしくは遅らせる;(v)腫瘍転移を低減するかもしくは遅らせる;(vi)腫瘍成長を低減もしくは阻害する;(vii)がんの発生および/もしくは再発を予防もしくは遅延させる、ならびに/または疾患のない生存期間もしくは腫瘍のない生存期間を延長させる;(viii)全生存期間を増加させる;(ix)処置頻度を低減する;ならびに/または(x)がんに関連する症状の1つ以上を軽減するために使用され得る。
【0080】
上述のように、本発明の医薬組成物は、新生物疾患の処置に使用することができる。新生物疾患の例としては、以下に限定されないが、上皮性新生物、扁平上皮新生物、基底細胞新生物、移行細胞乳頭腫および癌腫、腺腫および腺癌、付属器および皮膚付属器新生物、粘膜表皮新生物、嚢胞性新生物、粘液性および漿液性新生物、乳管、小葉および髄内新生物、腺房細胞新生物、複合上皮新生物、特殊性腺新生物、傍神経節および乳腺腫瘍、母斑および黒色腫、軟組織腫瘍および肉腫、線維腫新生物、粘液腫性新生物、脂肪腫新生物、筋腫新生物、複合混合型および間質新生物、線維上皮新生物、滑膜様新生物、中皮腫新生物、胚細胞新生物、栄養膜新生物、中膜腫、血管腫瘍、リンパ管腫瘍、骨性および軟骨腫性新生物、巨細胞腫、種々の骨腫瘍、歯原性腫瘍、神経膠腫、神経上皮腫性新生物、髄膜腫、神経鞘腫瘍、顆粒細胞腫瘍および肺胞軟部肉腫、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、他のリンパ細網性新生物、形質細胞腫瘍、肥満細胞腫瘍、免疫増殖性疾患、白血病、種々の骨髄増殖性障害、リンパ増殖性障害および骨髄異形成症候群が挙げられる。
【0081】
いくつかの実施形態では、新生物疾患はがんである。罹患した身体の器官および部分に関するがんの例には、以下に限定されないが、脳、乳房(トリプルネガティブ乳癌および管腔B乳癌を含む)、子宮頸部、卵巣、結腸、直腸(結腸直腸、すなわち結腸直腸癌を含む)、肺(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、大細胞肺癌および中皮腫を含む)、内分泌系、骨、副腎、胸腺、肝臓、胃、腸(胃癌を含む)、膵臓、骨髄、血液悪性腫瘍(例えば、リンパ腫、白血病、骨髄腫またはリンパ性悪性腫瘍)、胆管、膀胱、尿路、腎臓、皮膚、甲状腺、頭頸部、前立腺および精巣が含まれる。
【0082】
いくつかの実施形態では、新生物疾患は、乳癌(トリプルネガティブ乳癌および管腔B乳癌を含む)、胃癌、結腸直腸癌、肝臓癌(肝細胞癌を含む)、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肺癌(非小細胞肺癌を含む)、カポジ肉腫、子宮頸癌、膵臓癌、黒色腫、前立腺癌、膀胱癌および白血病、例えば急性骨髄性白血病(AML)(複合核型AMLを含む)から選択されるがんである。
【0083】
いくつかの実施形態では、新生物疾患は乳癌である。
【0084】
いくつかの実施形態では、新生物疾患はトリプルネガティブ乳癌である。
【0085】
いくつかの実施形態では、新生物疾患は管腔B乳癌である。
【0086】
いくつかの実施形態では、新生物疾患は胃癌である。
【0087】
いくつかの実施形態では、新生物疾患は結腸直腸癌である。
【0088】
いくつかの実施形態では、新生物疾患は肝細胞癌である。
【0089】
いくつかの実施形態では、新生物疾患は子宮内膜癌である。
【0090】
いくつかの実施形態では、新生物疾患は急性骨髄性白血病(AML)(複合核型AMLを含む)である。
【0091】
いくつかの実施形態では、新生物疾患は、肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌)である。
【0092】
いくつかの実施形態では、新生物疾患は子宮頸癌(例えば、転移性または再発性子宮頸癌)である。
【0093】
いくつかの実施形態では、新生物疾患は頭頸部癌(例えば、頭頸部の再発性または転移性扁平上皮癌)である。
【0094】
いくつかの実施形態では、新生物疾患はウィルムス腫瘍である。
【0095】
いくつかの実施形態では、新生物疾患は脳腫瘍(例えば、神経膠腫、例えば進行性神経膠腫または再発性神経膠腫、髄芽腫、例えば再発性髄芽腫)である。
【0096】
いくつかの実施形態では、新生物疾患は神経芽細胞腫である。
【0097】
いくつかの実施形態では、新生物疾患は精巣癌(例えば転移性非精上皮腫性生殖細胞腫瘍)である。
【0098】
いくつかの実施形態では、新生物疾患は膀胱癌(例えば、異常な腎機能を有するものを含む進行膀胱癌)である。
【0099】
いくつかの実施形態では、新生物疾患は網膜芽細胞腫(例えば、再発性または進行性網膜芽細胞腫)である。
【0100】
がんは、原発性腫瘍および/または転移であり得る。がんは、固形または液状(例えば、血液学的または腹腔内)腫瘍に由来し得る。いくつかの実施形態では、処置される新生物疾患(例えば、がん)は、腫瘍、例えば固形腫瘍である。
【0101】
本明細書に記載の本発明のすべての態様および実施形態は、可能な限り任意の組合せで組み合わせることができる。
【0102】
本発明および本発明が関係する最新技術をより十分に説明および開示するために、いくつかの刊行物が本明細書で引用される。これらの参考文献の各々は、あたかも各個々の参考文献が具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示されているのと同程度に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0103】
本発明の特定の実施形態は、本発明をより詳細に例証するのに役立つ以下の実施例に記載されており、決して本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0104】
実施例
遊離塩基化合物としての式(I)の化合物は、非常に強い親油性挙動を有する(Log P4.13)。計算されたpKaが8.9、3.8、および0.5(MarvinSketch(商標)18.24.0、ChemAxon Ltd.)の3つの主な塩基性官能基の存在は、pH<1.8で水に可溶にするが、pH≧4.5で実質的に不溶にし、溶解度≦0.02mg/mLである。これらの特徴を考慮し、一般に4.0以上に設定される静脈内(IV)溶液のpH要件に基づいて、式(I)の化合物の水溶解度を実質的に増加させることができる可溶化剤を同定するために溶解度研究を行った。
【0105】
方法
溶解度測定を以下のように行った:0時間(バイアル1)および24時間(バイアル2)での溶解度試験のために2つのバイアルを調製する。バイアル内容物を、2.5mgの式(I)の化合物から出発して調製する。一次賦形剤を添加し、続いて任意のさらなる賦形剤を添加し、次いで緩衝水を添加して総体積を500μLにする。すべての成分をボルテックスミキサーで、例えば5分間混合する。すべてが溶解したら、さらに2.5mgの式(I)の化合物を添加し、約5分間再びボルテックスする。これを、飽和溶液(懸濁液)が得られるまで繰り返す。
【0106】
バイアル1内の溶解度は、以下に記載されるように直ちに測定される。バイアル2の成分を、マグネチックスターラーを用いてバイアル内で24時間一緒に撹拌し、次いで溶解度を測定する前に、例えば5分間ボルテックスする。
【0107】
溶解度を測定するために、懸濁液400μlを取り、0.2μmフィルタの上の遠心分離装置に入れる。遠心分離を14,000rpmで10分間行い、必要に応じてさらに10分間繰り返す。バイアルからフィルタを取り除き、100μLを取り、400μLの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)希釈溶液(下記参照)で希釈するか、または5mg以上の式(I)の化合物が使用された場合には、900μLのHPLC希釈溶液で希釈する。溶液のpHを測定する。5mg以上の式(I)の化合物が使用された場合、さらに100μLのバイアル溶液を取り、400μLのHPLC希釈液で希釈するか、または900μLのHPLC希釈液で希釈する。溶液対対照ストック溶液のアッセイをHPLCによって測定し、溶解度を以下に記載されるように計算する。HPLC希釈液溶液は、アセトニトリル(ACN)および水(1:1 v/v)中の0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)である。
【0108】
使用したpHメーターを標準緩衝液(pH)2.00、4.01、7.00、9.00で毎日較正し、傾きおよびオフセット値を決定する。傾きの指定合格基準は90~105%であり、オフセットは-30mV~30mVである。
【0109】
すべての溶解度試験は室温で行う。
【0110】
溶解度を評価するためのHPLC方法は、以下のように実施される。
【表6】
【表7】
【0111】
式(I)の化合物の溶解度は、以下の式に従って計算される:
【数1】
溶解度=式(I)の化合物の溶解度(mg/mL)
A=試験した試料の化合物のピーク面積
a=線形回帰式y=ax+bにおける定数「a」の値
b=線形回帰式y=ax+bにおける定数「b」の値
n=希釈時間
【0112】
*安定性評価のための製剤を以下のように調製する:
各製剤の500mLバッチ(目標pH4.0およびpH5.5)を以下の表2の処方に従って調製する。使用したバイアルは、50mLの20mmクラウン、I型、Vial(Gerresheimer)、部品番号80018303030であった。使用したストッパは、20mm S10-F451 Stopper 4432/50 Gray、(Flurotec(商標)On Plug Only)B2-40 Coating Westar RS部品番号19700021であった。
【0113】
各製剤を0.22μmナイロンシリンジフィルタで濾過する。バイアルに10mLの製剤を充填し、栓をし、密封し、40℃/75%相対湿度(RH)または60℃(湿度制御なし)で最大14日間置く。各バイアルは、安定条件の間に溶液との最大ストッパ接触が達成され得るように逆さに配置される。各時点で、条件と製剤の両方からのバイアルを取り出し、アッセイおよび不純物について分析する。
【表8】
【0114】
溶解度を評価するために使用したのと同じHPLC法を使用して測定したアッセイおよび不純物。
【0115】
結果
単一の可溶化剤の効果
表3に示すように、様々な潜在的可溶化剤を、式(I)の化合物を可溶化する能力について試験した。
【表9-1】
【表9-2】
【0116】
静脈内使用に適した可溶化剤の濃度での式(I)の化合物の高い溶解度は、スルホブチルエーテルベータ-シクロデキストリン(SBE-ベータ-CD)で観察された。ヒドロキシプロピルベータ-シクロデキストリンを含む静脈内に適した濃度で試験した他の可溶化剤では、式(I)の化合物の低い溶解度が観察された。式(I)の化合物のより高い溶解度をもたらすPEG 400およびプロピレングリコールの濃度は500mg/mLであり、静脈内使用には高すぎる。
【0117】
SBE-ベータ-CDとの溶解度に関するpHの影響
SBE-ベータ-CDとの式(I)の化合物の溶解度に関するpHの効果を調査した。結果を表4に示す。
【表10】
【0118】
溶液のpHが溶解度に影響を及ぼし、より高いpHでは式(I)の化合物のより低い溶解度が観察された。特にpH4~pH5.5の間で高い溶解度が観察された。
溶解度に関する追加の賦形剤の効果
【0119】
式(I)の化合物のSBE-ベータ-CDとの溶解度に関する追加の賦形剤を添加する効果を調査した。結果を表5に示す。
【表11-1】
【表11-2】
【表11-3】
【表11-4】
【0120】
PEG 400、グリセロール、プロピレングリコールおよびPEG 4000は、式(I)の化合物のSBE-ベータ-CDによる溶解度を増加させないことが観察された。エタノールおよびPEG 300による可溶化は、PEG 400と同様である(より高濃度のSBE-ベータ-CDがこれらの試験で使用されたことに留意されたい)。Kollidon(商標)12 PF、Kolliphor(商標)P188、大豆レシチンは、SBE-ベータ-CDによる溶解度に関する影響が非常に小さい。Tween(商標)80の添加は、溶解度をわずかに改善する。カルボキシメチル-セルロースナトリウムの添加は溶解度を低下させ、溶液は24時間で粘着性になった。これらの結果はまた、生理食塩水が溶解度に及ぼす影響が非常に小さいことを示している。
溶解度に関する緩衝液の効果
【0121】
式(I)の化合物のSBE-ベータ-CDとの溶解度に関する異なる緩衝液の効果を調査した。結果を表6に示す。
【表12】
【0122】
式(I)の化合物の試験した緩衝液(クエン酸、酢酸、グルコン酸、乳酸およびアスパラギン酸緩衝液)との溶解度はほぼ同じであることが観察された。
安定性に関するpHの影響
【0123】
式(I)の化合物のSBE-ベータ-CDによる製剤安定性に関するpHの効果を試験した。結果を表7に示す。
【表13】
【0124】
結果は、式(I)の化合物とSBE-ベータ-CDとを含有する製剤の安定性が、40℃/75% RHストレス条件下でpH4.0とpH5.5とで同様であることを示す。しかし、60℃のストレス条件では、pH5.5の製剤は、pH4.0の製剤と比較して不純物が少なく、アッセイの損失が少なかった。
【国際調査報告】