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特表2024-544084(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの新規な酸付加塩および結晶形
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-27
(54)【発明の名称】(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの新規な酸付加塩および結晶形
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/06 20060101AFI20241120BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241120BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241120BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241120BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
C07D401/06 CSP
A61P35/00
A61P29/00
A61P37/02
A61K31/454
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535878
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 KR2022020591
(87)【国際公開番号】W WO2023113540
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0182188
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508131716
【氏名又は名称】デウン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DAEWOONG PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】35-14,Jeyakgongdan 4-gil,Hyangnam-eup,Hwaseong-si,Gyeonggi-do Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュンファン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ミンジェ
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ジソン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC39
4C086GA07
4C086GA14
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、新規な(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールのシュウ酸塩、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールのマレイン酸塩、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールのパルミチン酸塩および(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩の結晶形を提供する。このような新規な酸付加塩および結晶形は、吸湿性が低く高温および高湿条件での苛酷安定性に優れ、薬学的に使用が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩。
【請求項2】
示差走査熱量(Differential scanning calorimeter)分析において吸熱開始温度が279.68±3℃でかつ、吸熱温度281.04±3℃で最大吸熱ピークを示す、
請求項1に記載の(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩。
【請求項3】
(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩であって、
前記酸付加塩は、シュウ酸塩、マレイン酸塩、またはパルミチン酸塩である、
(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩。
【請求項4】
前記酸付加塩は、二シュウ酸塩である、
請求項3に記載の(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩。
【請求項5】
前記二シュウ酸塩は、示差走査熱量分析において吸熱開始温度が210.42±3℃でかつ、吸熱温度213.66±3℃で最大吸熱ピークを示す、
請求項4に記載の(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩。
【請求項6】
前記二シュウ酸塩は、示差走査熱量分析において吸熱開始温度が193.84±3℃でかつ、吸熱温度203.92±3℃で最大吸熱ピークを示す、
請求項4に記載の(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩。
【請求項7】
前記酸付加塩は、ヘミ-シュウ酸塩である、
請求項3に記載の(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩。
【請求項8】
前記ヘミ-シュウ酸塩は、示差走査熱量分析において吸熱開始温度が253.72±3℃でかつ、吸熱温度255.62±3℃で最大吸熱ピークを示す、
請求項7に記載の(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩。
【請求項9】
前記酸付加塩は、ヘミ-マレイン酸塩である、
請求項3に記載の(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩。
【請求項10】
前記ヘミ-マレイン酸塩は、示差走査熱量分析において吸熱開始温度が90.69±3℃でかつ、吸熱温度110.16±3℃で最大吸熱ピークを示す、
請求項9に記載の(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩。
【請求項11】
前記酸付加塩は、パルミチン酸塩である、
請求項3に記載の(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩。
【請求項12】
前記パルミチン酸塩は、示差走査熱量分析において吸熱開始温度が92.32±3℃でかつ、吸熱温度98.59±3℃で最大吸熱ピークを示す、
請求項11に記載の(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩。
【請求項13】
X線粉末回折パターン(X-ray powder diffraction pattern)において15.0°、17.2°、19.8°、23.6°および27.8°の回折角(2θ±0.2°)でピークを有する、
(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩の結晶形。
【請求項14】
示差走査熱量分析において吸熱開始温度が279.68±3℃でかつ、吸熱温度281.04±3℃で最大吸熱ピークを示す、
請求項13に記載の(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩の結晶形。
【請求項15】
(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールのシュウ酸塩、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールのマレイン酸塩、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールのパルミチン酸塩および(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩の結晶形からなる群より選択される1種以上を含む、癌、炎症性疾患、自己免疫疾患または線維化症の予防または治療用薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの薬学的に許容可能な酸付加塩および結晶形に関する。
【背景技術】
【0002】
薬学的に許容可能な塩およびその結晶多形(polymorphs)の選定は、新薬の研究開発過程において非常に重要な段階である。これは、特定の塩形態およびその結晶多形が原料医薬品製造工程の開発、完成医薬品の設計および剤形に重要な影響を及ぼしかねないからである。
【0003】
具体的には、塩の種類およびその結晶多形は、原料医薬品製造の最終段階、つまり、再結晶および精製過程において再結晶収率、工程速度および純度にまで影響を及ぼしうる。特に、結晶の大きさや形状に応じて結晶化工程での速度が異なりうるので、原料医薬品の生産性および製造コストの面でも塩および結晶多形の選定が重要である。
【0004】
また、特定の薬物に塩を付加することは、薬物の化学的構造を変形させることなく生理化学的特性および生物学的特性を変化させる手段になりうる。薬剤学的な面で、吸湿性、安定性、溶解度、粒子の流れ性、溶出率などの物理化学的特性は塩の形態およびその結晶多形に影響を受けるからである。これによって、塩の形態およびその結晶多形は、完成医薬品の生産工程、生産および保管条件、消費期限などを決定する要因になる。
【0005】
したがって、特定の薬物の製剤を製造するにあたり、より良好な安定性およびより良好な生体利用率を示すことができる塩および結晶多形の選定に関する持続的な研究が必要である。
【0006】
一方、本発明者らは、アミノアシル-tRNA合成酵素(aminoacyl-tRNA synthetase;ARS)ファミリー酵素群の一つでかつ、タンパク質合成のためにアミノ酸を活性化させる役割を果たすPRS(prolyl-tRNA synthetase)酵素を阻害できる新規な活性医薬物質として、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールを確認した。
【0007】
このようなPRSは、EPRS(Glutamyl-Prolyl-tRNA Synthetase)形態の多重合成酵素複合体(multisynthetase complex、MSC)状態で存在するが、多様なMSCの中でも、EPRSは、血管新生(angiogenesis)の核心因子であるVEGF A(vascular endothelial growth factor A)の生成を抑制する転写サイレンサー(translational silencer)として機能をし、また、多様な固形癌と密接な関連性があると報告され(Nat.Rev.Cancer,2011,11,708-718)、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール活性医薬物質は、PRS(prolyl-tRNA synthetase)抗線維化剤、抗炎剤、自己免疫治療剤、または単独または既存の標的抗癌剤との併用して使用可能な次世代抗癌剤として有用に適用可能である。
【0008】
そこで、本発明者らは、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの生体利用率および安定性を向上させることができる薬学的に許容可能な塩およびその結晶多形の選定に関する研究を進めた結果、特定の酸付加塩形態への製造時、吸湿性は低くしつつ苛酷条件での安定性は向上させることができることを確認して、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、吸湿性が低く安定性に優れた(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの薬学的に許容可能な酸付加塩を提供する。
【0010】
また、本発明は、吸湿性が低く安定性に優れた(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの薬学的に許容可能な酸付加塩の結晶形を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、
(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩を提供する。
【0012】
また、本発明は、
(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩であって、前記酸付加塩がシュウ酸塩、マレイン酸塩、またはパルミチン酸塩である、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩を提供する。
【0013】
また、本発明は、
(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩の結晶形を提供する。
【0014】
一方、新規な活性医薬物質である(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールは、下記の化学式1で表される:
<化学式1>
前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールおよびその薬学的に許容可能な塩は、低減された毒性を示しながらPRS酵素活性を抑制することができ、これによって、PRS活性異常によって引き起こされる疾患の予防または治療に使用することができる。したがって、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールおよびその薬学的に許容可能な塩は、PRS活性異常によって引き起こされる癌、炎症性疾患、自己免疫疾患または線維化症の予防または治療に有用に適用可能である。
【0015】
ここで、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールおよびその薬学的に許容可能な塩は、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩である。このような酸付加塩は、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの遊離塩基(free base)および付加しようとする酸を特定の比率で反応させて製造することができる。
【0016】
また、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩は、結晶形態を示すことができる。このような前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩の結晶形は、塩の熱力学的特性および動的特性により選択された、蒸発結晶化法、溶析結晶化法、反応結晶化法、溶媒媒介多形転移法、固体状態多形転移法などの多様な結晶化方法により製造できる。
【0017】
この時、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩の結晶形は、X線粉末回折(X-ray powder diffraction)分析により確認可能である。具体的には、前記結晶形は、X線粉末回折パターン(X-ray powder diffraction pattern)において特徴的なピークを示す回折角(2θ)およびそれぞれの回折角(2θ)に応じたピークの強度により区分される。ここで、回折角(2θ)は、測定用サンプルの製造技術、測定用サンプルの固定手順、測定機器などの様々な因子によって±0.2°、または好ましくは±0.1°に変動可能である。
【0018】
また、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩およびその結晶形は、それぞれ示差走査熱量分析における吸熱開始温度および最大吸熱ピークを示す吸熱温度によっても区分される。ここで、温度は、測定用サンプルの製造技術、測定機器、温度変化の速度などの様々な因子によって±3℃、好ましくは±2℃、またはさらに好ましくは±1℃に変動可能である。
【0019】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0020】
(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩およびパルミチン酸塩
一方、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの遊離塩基(free base、フリー体(free form))形態は安定性が良くないことが知られている。そこで、このような化合物の安定性を改善するために、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩として、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの二塩酸塩(dihydrochloride)が研究されてきた。
【0021】
しかし、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二塩酸塩は、吸湿性が高くて医薬品に製造することが好ましくなかった。そこで、本発明者らは、吸湿性が低いながらも化合物の安定性を向上させることができる酸付加塩について鋭意研究した結果、前記化合物と特定の種類の酸が特定の当量比で結合する場合、吸湿性は低くしつつ苛酷条件での安定性は向上させることができることを確認することができた。
【0022】
具体的には、好ましい(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩は、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩(monohydrochloride)である。
【0023】
このような(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩(monohydrochloride)は、二塩酸塩(dihydrochloride)に比べてイオン化可能な水素イオンと塩素イオンが少なくて空気中に存在する水分との結合を減少させるため、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二塩酸塩に比べて低い吸湿性および苛酷条件での優れた安定性を示すことができる。
【0024】
そして、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩は、示差走査熱量(Differential scanning calorimeter)分析において吸熱開始温度が279.68±3℃でかつ、吸熱温度281.04±3℃で最大吸熱ピークを示すことができる。これに対し、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの二塩酸塩は、示差走査熱量分析において2個の吸熱ピーク(吸熱開始温度が233.09℃でかつ、ピーク内の最大吸熱ピークの吸熱温度が242.09℃である第1ピーク、および吸熱開始温度が271.95℃でかつ、吸熱ピークの吸熱温度が275.07℃である第2ピーク)を示し、これは後述する試験例2から確認可能である。したがって、より高い吸熱開始温度を示す(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩が、二塩酸塩に比べて熱に対する安定性が高いことが分かる。
【0025】
また、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩は、結晶形であってもよい。前記一塩酸塩が結晶形であることが、無定形、または結晶形と無定形との混合物である方に比べて安定性向上および吸湿性改善の面で有利である。
【0026】
さらに、好ましい(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩は、下記の通りである:
(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールのシュウ酸塩(oxalate);
(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールのマレイン酸塩(maleate);および
(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールのパルミチン酸塩(palmitate)。
【0027】
この時、吸湿性改善の面で、前記酸付加塩は、二シュウ酸塩(dioxalate)、ヘミ-シュウ酸塩(hemi-oxalate)、ヘミ-マレイン酸塩(hemi-maleate)、または一パルミチン酸塩(monopalmitate)であることがより好ましい。
【0028】
一実施形態において、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩は、二シュウ酸塩である。前記二シュウ酸塩は、製造方法により、二シュウ酸塩IおよびIIが生成される。
【0029】
具体的には、前記二シュウ酸塩、言い換えれば、二シュウ酸塩Iは、示差走査熱量分析において吸熱開始温度が210.42±3℃でかつ、吸熱温度213.66±3℃で最大吸熱ピークを示すことができる。
【0030】
また、前記二シュウ酸塩、言い換えれば、二シュウ酸塩IIは、示差走査熱量分析において吸熱開始温度が193.84±3℃でかつ、吸熱温度203.92±3℃で最大吸熱ピークを示すことができる。
【0031】
他の実施形態において、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩は、ヘミ-シュウ酸塩である。
【0032】
前記ヘミ-シュウ酸塩は、示差走査熱量分析において吸熱開始温度が253.72±3℃でかつ、吸熱温度255.62±3℃で最大吸熱ピークを示すことができる。
【0033】
さらに他の実施形態において、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩は、ヘミ-マレイン酸塩である。
【0034】
前記ヘミ-マレイン酸塩は、示差走査熱量分析において吸熱開始温度が90.69±3℃でかつ、吸熱温度110.16±3℃で最大吸熱ピークを示すことができる。
【0035】
さらに他の実施形態において、前記パルミチン酸塩は、示差走査熱量分析において吸熱開始温度が92.32±3℃でかつ、吸熱温度98.59±3℃で最大吸熱ピークを示すことができる。
【0036】
一方、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩は、下記の段階を含む製造方法により製造できる:
1)(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの二塩酸塩を、塩基と混合して、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの遊離塩基を製造する段階;および
2)前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの遊離塩基および酸を、有機溶媒の存在下で混合および撹拌する段階。
【0037】
前記段階1)は、製造方法が知られた(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの二塩酸塩を、塩基と混合して、塩酸が除去されたフリー体を製造する段階であり、製造されたフリー体は、粘っこい液体状態を示す。
【0038】
この時、塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムおよび水酸化カリウムから構成される群より選択される1種以上の強塩基が使用できる。
【0039】
また、前記段階1)におけるpHは、約9~約12であることが、塩酸の除去に好ましい。
【0040】
さらに、前記段階2)は、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの遊離塩基および酸を、有機溶媒の存在下で混合および撹拌して、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールと酸とが化学的に結合した塩を製造する段階である。
【0041】
前記段階2)において、前記酸は、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの遊離塩基1当量対比最終的に生成しようとする結合比率により調節して使用可能である。例えば、前記遊離塩基と1価の酸とが結合した1価の酸付加塩を製造しようとする場合、前記酸を前記遊離塩基1当量対比0.8~1.2当量、好ましくは1当量使用することができる。また、前記遊離塩基と2価の酸とが結合した2価の酸付加塩を製造しようとする場合、前記酸を前記遊離塩基1当量対比1.8~2.2当量、好ましくは2当量使用することができる。さらに、2価の遊離塩基と1価の酸とが結合したヘミ(hemi)-酸付加塩を製造しようとする場合、前記酸を前記遊離塩基1当量対比0.4~0.6当量、好ましくは0.5当量使用することができる。
【0042】
ここで、前記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトニトリル、イソプロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびメチルスルホキシドから構成される群より選択される1種以上を使用することができる。このような有機溶媒は、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの遊離塩基の重量対比5倍~60倍の体積の量(mL/g)で使用できる。好ましくは、前記有機溶媒は、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの遊離塩基の重量対比20倍~50倍の体積の量(mL/g)で使用できる。
【0043】
次に、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの遊離塩基、酸および有機溶媒の混合された溶液を撹拌する段階は、20℃~30℃の温度で30分~30時間行われる。この時、撹拌速度は、50~300rpmの範囲内であってもよい。前記範囲で高収率および高純度の塩が生成できる。
【0044】
前記製造方法により製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩は、減圧濾過工程により溶液から回収される。必要に応じて、回収された酸付加塩を洗浄および真空乾燥して、高純度の酸付加塩を得ることができる。また、前記製造方法に記載された溶媒の比率、温度範囲、工程時間などの反応条件は、選択される溶媒により調節可能である。
【0045】
あるいは、塩酸塩を除いた、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの酸付加塩は、下記の段階を含む製造方法によっても製造できる:
1)(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩を、塩基と混合して、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの遊離塩基を製造する段階;および
2)前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの遊離塩基および塩酸以外の酸を、有機溶媒の存在下で混合および撹拌する段階。
【0046】
(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩の結晶形
一方、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩の結晶形は、X線粉末回折パターン(X-ray powder diffraction pattern)において15.0°、17.2°、19.8°、23.6°および27.8°の回折角(2θ±0.2°)でピークを有することができる。
【0047】
具体的には、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩の結晶形は、X線粉末回折パターン(X-ray powder diffraction pattern)において15.0°、17.2°、19.8°、20.9°、23.6°、25.1°、27.8°、28.9°および31.3°の回折角(2θ±0.2°)でピークを有することができる。
【0048】
より具体的には、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩の結晶形は、X線粉末回折パターンにおいて7.5°、12.5°、15.0°、16.5°、17.2°、18.9°、19.8°、20.9°、22.3°、23.6°、24.8°、25.1°、26.1°、27.8°、28.9°、30.1°、30.9°、31.3°および32.4°の回折角(2θ±0.2°)でピークを有することができる。
【0049】
また、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩の結晶形は、示差走査熱量分析において吸熱開始温度が279.68±3℃でかつ、吸熱温度281.04±3℃で最大吸熱ピークを示すことができる。
【0050】
前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩の結晶形は、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの二塩酸塩の結晶形とは異なる結晶構造を示し、二塩酸塩(dihydrochloride)に比べてイオン化可能な水素イオンと塩素イオンが少なくて空気中に存在する水分との結合を減少させるため、前記二塩酸塩の結晶形対比吸熱開始温度が高くて比較的高温まで安定して高い熱的安定性を示すことができる。
【0051】
このような前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩の結晶形は、蒸発結晶化方法あるいは溶析結晶化方法を用いて製造できる。
【0052】
一実施形態において、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩の結晶形は、下記の段階を含む蒸発結晶化方法により製造される:
1)(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩を、C1-8脂肪族アルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、メチルアセテート、エチルアセテート、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、エチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびブチレングリコールからなる群より選択された1種以上の溶媒に溶解または懸濁させて溶液または懸濁液を製造する段階;および
2)前記溶液または懸濁液から前記溶媒を蒸発させて前記一塩酸塩を結晶化する段階。
【0053】
前記段階1)は、前記一塩酸塩を完全に溶解させることができる良溶媒(good solvent)または懸濁溶媒を用いて一塩酸塩を溶解する段階であって、20℃~30℃で、好ましくは室温で行われる。また、前記溶媒は、前記一塩酸塩の重量対比5~200倍の体積の量(mL/g)で使用できる。
【0054】
この時、前記C1-8脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、またはn-オクタノールが使用できる。
【0055】
前記段階2)は、前記段階1)で製造された溶液または懸濁液から溶媒を蒸発させることによって、溶液または懸濁液を過飽和状態にして一塩酸塩を結晶化する段階であって、20℃~30℃の温度で、好ましくは室温で1日~4日間行われる。
【0056】
あるいは、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩の結晶形は、下記の段階を含む溶析結晶化方法により製造できる:
1)(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩を、C1-8脂肪族アルコール溶媒に溶解して溶液を製造する段階;および
2)前記溶液に、C1-8脂肪族アルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、メチルアセテート、エチルアセテート、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、エチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびブチレングリコールからなる群より選択された1種以上の結晶化溶媒を投入および撹拌して前記塩酸塩を結晶化する段階。
【0057】
前記段階1)は、前記一塩酸塩を完全に溶解させることができる良溶媒を用いて一塩酸塩を溶解する段階であって、室温で行われる。また、前記溶媒は、前記一塩酸塩の重量対比5~200倍の体積の量(mL/g)で使用できる。
【0058】
前記段階2)は、前記段階1)で製造された溶液に非溶媒(anti-solvent)を投入して、溶解度を変化させて塩酸塩を結晶化する段階であって、前記段階は、20℃~30℃の温度で1日~4日間行われる。
【0059】
また、前記結晶化溶媒は、前記一塩酸塩の重量対比5~200倍の体積の量(mL/g)、または好ましくは5~150倍の体積の量(mL/g)で使用可能であり、前記段階1)の溶媒と前記段階2)の結晶化溶媒との体積比は、1:1~1:2であってもよい。前記範囲で、結晶生成時間の増加および溶媒の過剰使用による経済的損失なく高収率、高純度の結晶が生成できる。
【0060】
前記蒸発結晶化方法または溶析結晶化方法により生成された結晶は、減圧濾過工程により溶液から回収される。必要に応じて、回収された結晶を洗浄および真空乾燥して、純度の高い塩酸塩の結晶形を得ることができる。また、前記製造方法に記載された溶媒の比率、温度範囲、工程時間などの反応条件は、選択される溶媒により調節可能である。
【0061】
一方、本発明は、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールのシュウ酸塩、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールのマレイン酸塩、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールのパルミチン酸塩および(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩の結晶形からなる群より選択される1種以上を含む、薬学組成物を提供する。
【0062】
より具体的には、本発明は、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールのシュウ酸塩、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールのマレイン酸塩、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールのパルミチン酸塩および(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩の結晶形からなる群より選択される1種以上を含む、癌、炎症性疾患、自己免疫疾患または線維化症の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0063】
このような薬学組成物は、通常使用される薬学的に許容可能な担体を含むことができる。前記担体は、通常製剤時に用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウムおよびミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるものではない。前記薬学組成物は、前記成分のほか、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などを追加的に含むことができる。
【0064】
前記薬学組成物は、経口投与するか、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下および経皮投与を含む非経口投与されてもよい。
【0065】
この時、薬学組成物は、治療学的有効量、例えば、約0.001mg/kg~約100mg/kg per dayの有効量で投与可能である。前記用量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度または反応感応性により変更可能である。
【0066】
前記薬学組成物は、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法により、薬学的に許容される担体および/または賦形剤を用いて製剤化することによって、単位用量形態に製造されるか、または多用量容器内に入れて製造されてもよい。この時、剤形は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾールなどの経口型剤形、軟膏、クリームなどの外用剤、坐剤および滅菌注射用液などを含めて薬学的製剤に適した形態であれば制限なく使用可能であり、分散剤または安定化剤を追加的に含むことができる。
【発明の効果】
【0067】
本発明による(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの新規な酸付加塩および結晶形は、吸湿性が低く高温および高湿条件での苛酷安定性に優れ、薬学的な使用に適する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】実施例1-1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩の示差走査熱量および熱重量分析結果を示す図である。
図2】実施例1-2で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二シュウ酸塩Iの示差走査熱量および熱重量分析結果を示す図である。
図3】実施例1-3で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二シュウ酸塩IIの示差走査熱量および熱重量分析結果を示す図である。
図4】実施例1-4で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールヘミ-シュウ酸塩の示差走査熱量および熱重量分析結果を示す図である。
図5】実施例1-5で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールヘミ-マレイン酸塩の示差走査熱量および熱重量分析結果を示す図である。
図6】実施例1-6で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールパルミチン酸塩の示差走査熱量および熱重量分析結果を示す図である。
図7】比較例1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二塩酸塩の示差走査熱量および熱重量分析結果を示す図である。
図8】実施例1-1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩の温度に対する苛酷試験1週間後の示差走査熱量分析結果を示す図である。
図9】実施例1-1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩の温度に対する苛酷試験8週間後の示差走査熱量分析結果を示す図である。
図10】比較例1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二塩酸塩の温度に対する苛酷試験1週間後の示差走査熱量分析結果を示す図である。
図11】比較例1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二塩酸塩の温度に対する苛酷試験8週間後の示差走査熱量分析結果を示す図である。
図12】実施例2-1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩の結晶形に対するX線粉末回折パターンを示す図である。
図13】比較例2で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二塩酸塩の結晶形に対するX線粉末回折パターンを示す図である。
図14】実施例2-1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩の結晶形に対する示差走査熱量および熱重量分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記の実施例によって本発明の詳細な説明が限定されるのではない。
【0070】
製造例:(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール(free base)の製造
【0071】
段階1-1)化合物1-3(タート-ブチル(2R,3S)-3-((タート-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2-(3-((3,4-ジクロロ-2-ニトロフェニル)アミノ)プロピル)ピペリジン-1-カルボキシレート)の製造
化合物1-1であるタート-ブチル(2R,3S)-2-(3-アミノプロピル)-3-((タート-ブチルジメチルシリル)オキシ)ピペリジン-1-カルボキシレート(1.0g、2.7mmol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(25mL、0.67M)に入れて溶かした後、化合物1-2である1,2-ジクロロ-4-フルオロ-3-ニトロベンゼン(629.97mg、3.0mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.93mL、5.4mmol)を入れて、60℃で2時間加熱撹拌した。反応が完了すると、エチルアセテートで希釈して飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。有機層を集めて硫酸ナトリウムで乾燥および濾過し、減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:エチルアセテート=5:1)で精製して、化合物1-3(1.2g、収率81%)を得た。
【0072】
1H NMR (500 MHz, MeOD): δ 7.43 (d, 1H), 6.89 (d, 1H), 4.08 (s, 1H), 3.94 (s, 1H), 3.76 (s, 1H), 3.24 (m, 2H), 2.76 (s, 1H), 1.86 (m, 1H), 1.74 (m, 2H), 1.58 (m, 3H), 1.48 (s, 10H), 1.45 (s, 1H), 0.90 (s, 9H), 0.07 (d, 6H)
【0073】
段階1-2)化合物1-4(タート-ブチル(2R,3S)-2-(3-((2-アミノ-3,4-ジクロロフェニル)アミノ)プロピル)-3-((タート-ブチルジメチルシリル)オキシ)ピペリジン-1-カルボキシレート)の製造
前記段階1-1で得られた化合物1-3(2.6mg、4.9mmol)を、メタノール(25mL、0.2M)に溶かした後、ラネーニッケルを適当量加え、水素バルーンを連結した後に、常温で1時間撹拌した。反応が完了すると、反応液をセライトで濾過し、減圧濃縮して、化合物1-4を得た。得られた化合物を精製せずに次の段階に使用した。
【0074】
段階1-3)化合物1-5(タート-ブチル(2R,3S)-3-((タート-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-1-カルボキシレート)の製造
前記段階1-2で得られた化合物1-4を、トルエン(30mL、0.16M)に入れて溶かした後、トリメチルオルトホルメート(1.6mL、14.6mmol)、パラトルエンスルホン酸(168mg、0.98mmol)を入れて、50℃で6時間加熱撹拌した。反応が完了すると溶媒を除去し、エチルアセテートで希釈して飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。有機層を集めて硫酸マグネシウムで乾燥および濾過し、減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:エチルアセテート=1:1)で精製して、化合物1-5(1.8g、収率74%)を得た。
【0075】
1H NMR (500 MHz, MeOD): δ 8.30 (s, 1H), 7.56 (d, 1H), 7.43 (d, 1H), 4.30 (m, 2H), 4.17 (s, 1H), 4.05 (s, 1H), 3.91 (d, 1H), 3.73 (s, 1H), 2.68 (s, 1H), 1.87 (s, 3H), 1.70 (t, 2H), 1.55 (d, 1H), 1.45 (m, 10H), 1.42 (s, 1H), 0.90 (s, 9H), 0.07 (d, 6H)
【0076】
段階1-4)(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二塩酸塩の製造
前記段階1-3で得られた化合物1-5(1.8g、3.6mmol)を、少量のテトラヒドロフランに溶かした後、4N塩化水素ジオキサン溶液(30mL、0.12M)を入れて、常温で12時間撹拌した。反応が完了すると、反応液を減圧濃縮して溶媒を除去し、少量のメタノールを入れて溶かした後、ジエチルエーテルで結晶化して、化合物1-6である、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール2HCl(26mg、収率81%)を得た。
【0077】
1H NMR (500 MHz, MeOD): δ 9.67 (s, 1H). 8.02 (d, 1H), 7.82 (d, 1H), 4.62 (m, 2H), 3.60 (m, 1H), 3.28 (m, 1H), 2.99 (m, 2H), 2.25 (m, 2H), 2.08 (m, 2H), 1.99 (m, 1H), 1.78 (m, 2H), 1.54 (m, 1H)
【0078】
段階1-5)(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール(free base)の製造
前記段階1-4で得られた化合物1-6 200mgをビーカーに入れて、水2mLに溶かした。これに、1N NaOH1mLを入れてよくかき混ぜた後、分別漏斗に入れ、この時のpHは約9.5であった。これをメチレンクロライド(Methylene Chloride;MC)で抽出し、回転蒸発法で濃縮し、この後、真空条件下で残留溶媒を除去して、粘っこい液体状態の(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール(150mg、収率92%)を得た。
【0079】
分子量328.24
1H-NMR (500 MHz, DMSO): δ 8.39 (s, 1H). 7.65 (d, 1H), 7.46 (d, 1H), 4.47 (d, 1H), 4.25 (t, 2H), 2.85 (m, 1H), 2.76 (d, 1H), 2.28 (m, 1H), 2.07 (m, 1H), 1.95 (m, 1H), 1.82 (m, 1H), 1.73 (m, 2H), 1.50 (m, 1H), 1.27 (m, 1H), 1.12 (m, 2H)
【0080】
以下、実施例においては、前記製造例で製造した(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール(free base)を使用した。
【0081】
実施例1-1:(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩の製造
前記製造例で製造した(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール(free base)100mgに、エタノール4mLを入れて、35%HCl溶液32mg(1eq.)を入れて、室温で10分間撹拌した。生成された白色固体を濾過し、エチルアセテートで洗浄して、表題化合物(103mg、収率:93%)を得た。
【0082】
分子量364.70
1H-NMR (500 MHz, DMSO): δ 8.45 (s, 1H). 7.71 (d, 1H), 7.47 (d, 1H), 5.40 (d, 1H), 4.32 (m, 2H), 3.41 (m, 1H), 3.08 (d, 1H), 2.75 (m, 2H), 2.08 (m, 1H), 1.97 (m, 1H), 1.85 (m, 2H), 1.75 (m, 1H), 1.65 (m, 1H), 1.52 (m, 1H(, 1.35 (m, 1H)
【0083】
実施例1-2:(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二シュウ酸塩Iの製造
前記製造例で製造した(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール(free base)100mgに、メタノール5mLを入れて、シュウ酸二水和物(oxalic acid dehydrate)76.9mg(2eq.)を入れて、室温で1日間撹拌した。固体が生成されるまで1日間室温に放置した後、生成された固体を洗浄して、表題化合物(108mg、収率70%)を得た。
【0084】
分子量508.31
1H-NMR (500 MHz, DMSO): δ 8.40 (s, 1H). 7.69 (d, 1H), 7.48 (d, 1H), 4.31 (m, 2H), 3.45 (m, 1H), 3.15 (m, 1H), 2.77 (m, 2H), 2.01 (m, 1H), 1.90 (m, 3H), 1.78 (m, 1H), 1.58 (m, 1H), 1.45 (m, 1H), 1.35 (m, 1H)
【0085】
実施例1-3:(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二シュウ酸塩IIの製造
前記製造例で製造した(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール(free base)100mgに、Acetonitrile5mLを入れて、シュウ酸二水和物76.9mg(2eq.)を入れて、室温で1日間撹拌した。固体が生成されるまで1日間室温に放置した後、生成された固体を洗浄して、表題化合物(140mg、収率90%)を得た。
【0086】
分子量508.31
1H-NMR (500 MHz, DMSO): δ 8.40 (s, 1H). 7.69 (d, 1H), 7.48 (d, 1H), 4.32 (m, 2H), 3.36 (m, 1H), 3.11 (d, 1H), 2.77 (m, 2H), 1.92 (m, 1H), 1.89 (m, 3H), 1.77 (m, 1H), 1.58 (m, 1H), 1.47 (m, 1H), 1.35 (m, 1H)
【0087】
実施例1-4:(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールヘミ-シュウ酸塩の製造
前記製造例で製造した(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール(free base)102.2mgを丸底フラスコに入れて、メタノール5mLに完全に溶かした。前記free baseが溶けているフラスコに、シュウ酸二水和物を19.6mg(0.5eq.)を入れて2時間撹拌した。室温でopen乾燥して、固体である表題化合物(84mg、収率74%)を得た。
【0088】
分子量373.26
1H-NMR (500 MHz, DMSO): δ 8.40 (s, 1H). 7.69 (d, 1H), 7.47 (d, 1H), 4.30 (m, 2H), 3.22 (m, 1H), 3.03 (d, 1H), 2.60 (m, 2H), 2.02 (m, 1H), 1.88 (m, 2H), 1.80 (m, 1H), 1.69 (m, 1H), 1.50 (m, 1H), 1.38 (m, 1H), 1.29 (m, 1H)
【0089】
実施例1-5:(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールヘミ-マレイン酸塩の製造
前記製造例で製造した(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール(free base)100mgをバイアルに入れて、メタノール2.5mLに完全に溶かした。前記free baseが溶けているバイアルに、マレイン酸20.4mg(0.5eq.)を入れて2時間撹拌した。この後、メタノールを吹き飛ばした後、アセトニトリルを入れて4時間撹拌した後、室温でopen乾燥して、固体である表題化合物(88mg、収率74.5%)を得た。
【0090】
分子量386.28
1H-NMR (500 MHz, DMSO): δ 8.40 (s, 1H). 7.68 (d, 1H), 7.49 (d, 1H), 6.01 (s, 1H), 5.07 (s, 1H), 4.30 (m, 2H), 3.17 (s, 1H), 2.98 (d, 1H), 2.62 (m, 2H), 1.98 (m, 1H), 1.80 (m, 3H), 1.69 (m, 1H), 1.45 (m, 1H), 1.29 (m, 2H)
【0091】
実施例1-6:(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールパルミチン酸塩の製造
前記製造例で製造した(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール(free base)100mgをバイアルに入れて、エタノール4.8mLに完全に溶かした。前記free baseが溶けているバイアルに、パルミチン酸78.7mg(1eq.)を入れて2時間撹拌した。この後、エタノールを吹き飛ばした後、エチルアセテートを入れて4時間撹拌した後、室温でopen乾燥して、固体である表題化合物(154mg、収率86.5%)を得た。
【0092】
分子量584.67
1H-NMR (500 MHz, DMSO): δ 8.39 (s, 1H). 7.66 (d, 1H), 7.46 (d, 1H), 4.26 (m, 2H), 2.90 (m, 1H), 2.79 (d, 1H), 2.31 (m, 1H), 2.15 (m, 3H), 1.98 (m, 1H), 1.78 (m, 3H), 1.52 (m, 1H), 1.46 (m, 2H), 1.28 (m, 1H), 1.23 (m, 24H), 1.13 (m, 2H), 0.85 (m, 3H)
【0093】
比較例1:(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二塩酸塩の製造
前記製造例と同様に段階1-1~1-4を行って、表題の(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール2HCl(26mg、収率81%)を得た。
【0094】
分子量401.15
1H NMR (500 MHz, MeOD): δ 9.67 (s, 1H). 8.02 (d, 1H), 7.82 (d, 1H), 4.62 (m, 2H), 3.60 (m, 1H), 3.28 (m, 1H), 2.99 (m, 2H), 2.25 (m, 2H), 2.08 (m, 2H), 1.99 (m, 1H), 1.78 (m, 2H), 1.54 (m, 1H)
【0095】
試験例1:PRS酵素活性抑制実験
前記実施例1-1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩のPRS酵素活性抑制に対するIC50値を次のように測定した。
【0096】
具体的には、EPRSのcDNA中でPRSに相応する部分をサブクローニングして、得られた高純度のPRSタンパク質を精製して実験に使用した。反応緩衝液(20mM KPO(pH7.4)、6mM MgAc、5mM ATP、400mg/mL tRNA、0.5mM DTT、20mCi[H]プロリン(1mCi/mL))に、前記実施例で製造した化合物(1μM)を入れて、37℃で5分~10分間反応させた。反応は5%TCAを添加して、予め乾燥させた3Mペーパーで終結させた。放射性(radioactivity)は、液体閃光計数器(liquid scintillation counter)を用いて測定した。化合物に対する%阻害およびIC50値の算出および結果分析はマイクロソフトエクセルまたはシグマプロット8.0を用いて行い、その結果、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩は74nMの値を示した。
【0097】
これによって、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩は、PRS酵素活性を抑制して、PRS活性異常によって引き起こされる疾患の予防または治療用薬学組成物に使用可能であることが分かる。
【0098】
試験例2:酸付加塩の示差走査熱量および熱重量分析
前記実施例1-1~1-6および比較例1で製造した酸付加塩に対して示差走査熱量および熱重量分析を実施し、その結果をそれぞれ図1~7に示した。この時、示差走査熱量分析は、示差走査熱量計(DSC3、Mettler-Toledo社製造)を用いて、密閉されたファン内で、窒素ガス下、10℃/minのスキャン速度で20℃から350℃に昇温しながら行われた。また、熱重量分析(thermogravimetric analysis;TGA)は、熱重量分析器(Q50、TA Instrument U.S.A社製造)を用いて、窒素ガス下、10℃/minのスキャン速度で20℃から350℃に昇温しながら行われた。
【0099】
図1を参照すれば、前記実施例1-1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩は、示差走査熱量分析において吸熱開始温度が279.68℃でかつ、吸熱温度281.04℃で最大吸熱ピークを示すことを確認することができる。また、熱重量分析において残留溶媒および水分は確認されなかった。
【0100】
図2を参照すれば、前記実施例1-2で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二シュウ酸塩Iは、示差走査熱量分析において吸熱開始温度が210.42℃でかつ、吸熱温度213.66℃で最大吸熱ピークを示すことを確認することができる。
【0101】
図3を参照すれば、前記実施例1-3で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二シュウ酸塩IIは、示差走査熱量分析において吸熱開始温度が193.84℃でかつ、吸熱温度203.92℃で最大吸熱ピークを示すことを確認することができる。ただし、前記図3の64℃で示されたピークに対してホットステージ顕微鏡(Hot stage Microscopy;HSM、BA310Pol、Motic社製造)で確認した結果、水分ではない残留溶媒によるピークと判断される。
【0102】
図4を参照すれば、前記実施例1-4で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールヘミ-シュウ酸塩は、示差走査熱量分析において吸熱開始温度が253.72℃でかつ、吸熱温度255.62℃で最大吸熱ピークを示すことを確認することができる。また、熱重量分析結果、温度の増加により溶融しながら分解されることが分かる。
【0103】
図5を参照すれば、前記実施例1-5で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールヘミ-マレイン酸塩は、示差走査熱量分析において吸熱開始温度が90.69℃でかつ、吸熱温度110.16℃で最大吸熱ピークを示すことを確認することができる。また、熱重量分析結果、温度の増加により溶融しながら分解されることが分かる。
【0104】
図6を参照すれば、前記実施例1-6で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールパルミチン酸塩は、示差走査熱量分析において吸熱開始温度が92.32℃でかつ、吸熱温度98.59℃で最大吸熱ピークを示すことを確認することができる。また、熱重量分析結果、温度の増加により溶融しながら分解されることが分かる。
【0105】
図7を参照すれば、前記比較例1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二塩酸塩は、2個の吸熱ピーク(吸熱開始温度が233.09℃でかつ、ピーク内の最大吸熱ピークの吸熱温度が242.09℃である第1ピーク、および吸熱開始温度が271.95℃でかつ、吸熱ピークの吸熱温度が275.07℃である第2ピーク)を示すことを確認することができる。また、熱重量分析において残留溶媒および水分は確認されなかった。
【0106】
試験例3:吸湿性試験
前記実施例1-1~1-6および比較例1で製造した酸付加塩に対して吸湿性試験を実施した。
【0107】
それぞれの酸付加塩試料40mgを10mLビーカーに入れて、これを、下記表1のように、常温で、一定の相対湿度の条件下、様々な塩の飽和水溶液が入っているそれぞれのガラスデシケーターに入れて密閉保管した。1日経過後の重量変化を測定した後、他のデシケーターに移して、前記実験を繰り返した。この時、水着(sorption)分析のために、試料を湿度の低いデシケーターから高いデシゲートルに移して重量変化を測定し、脱着(desorption)分析のために、試料を湿度の高いデシケーターから低いデシケーターに移して重量変化を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
前記表2を参照すれば、実施例の酸付加塩は、相対湿度の増加でも水分による重量変化がほとんどないだけでなく、比較例1の二塩酸塩対比93%RHで顕著に低い吸湿性を示すことが分かる。
【0111】
試験例4:安定性確認試験
前記一部の実施例および比較例で製造した酸付加塩に対して高温および高湿に対する安定性テストを実施した。
【0112】
具体的には、温度に対する苛酷試験は、50mgの試料をバイアルに入れて蓋をした後、60℃および相対湿度10%未満のチャンバーに保管しながら、1週、2週、4週、8週間後にHPLC(Azura、KNAUER、P6.11L、DAD6.1L)を用いて不純物の含有量を測定することによって行われた。
【0113】
そして、水分に対する苛酷試験は、50mgの試料を10mLビーカーに入れて、試料が空気中の水分と十分に接触できるように蓋をしない状態で93%RHデシケーターに保管しながら、1週、2週、4週、8週間後にHPLC(Azura、KNAUER、P6.11L、DAD6.1L)を用いて不純物の含有量を測定することによって行われた。
【0114】
(1)HPLCを用いた主成分に対するピーク面積の計算
試験開始後の定められた時点で、それぞれの時点あたり1個のバイアルまたはビーカーを取り出して(試験あたりの検体数n=1)、下記表3のような条件でHPLCを用いて不純物を分析した。以後、検出されたすべてのピークに対して積分によりピーク面積を求めた後、主成分に対する相対ピーク面積(%)を計算して平均値として示し、その結果を下記表4に示した。
【0115】
【表3】
【0116】
【表4】
(*ただし、二塩酸塩は93%RHの条件で1週間内に潮解される)
【0117】
前記表3および4に示されているように、実施例で製造された酸付加塩は、高温条件および高湿度露出条件下、意味のある主成分のピーク面積減少を示さないことが分かる。したがって、実施例で製造された結晶形は、苛酷条件下、温度および湿度の影響とは関係なく不純物の増加を抑制して、優れた化学的安定性を示すことを確認することができる。
【0118】
(2)示差走査熱量分析
実施例1-1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩、および比較例1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二塩酸塩に対して、温度に対する苛酷試験が進行中のデシケーターで、試験開始後1週および8週間後に各ビーカーを取り出して示差走査熱量分析を実施し、その結果をそれぞれ図8図11に示した。この時、示差走査熱量分析は、示差走査熱量計(DSC Q20、TA Instruments社製造)を用いて、密閉されたファン内で、窒素浄化下、10℃/minのスキャン速度で20℃から300℃に昇温しながら行われた。
【0119】
具体的には、図8および9は、それぞれ実施例1-1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩の温度に対する苛酷試験1週および8週間後の示差走査熱量分析結果を示す図である。
【0120】
また、図10および11は、それぞれ比較例1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二塩酸塩の温度に対する苛酷試験1週および8週間後の示差走査熱量分析結果を示す図である。
【0121】
前記図8~11を参照すれば、比較例1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二塩酸塩は、高温条件で時間の経過により前部分の第1ピークが小さくなって示差走査熱量パターンが変化したのに対し、実施例1-1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩は、高温条件で8週間経過後にも示差走査熱量パターンの変化が現れないことが分かる。これを通して、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩の化学的安定性に優れていることが確認される。
【0122】
実施例2-1:アセトニトリル溶媒を用いた(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩の結晶形の製造
前記実施例1-1で製造した(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩10mgを、1mLのアセトニトリル溶媒に懸濁させた後、これを室温で3時間撹拌した。以後、製造された懸濁液を室温で1日以上放置して溶媒を蒸発させた。結晶生成後、減圧濾過により結晶を分離して、(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩の結晶形I8mgを得た。
【0123】
実施例2-2~2-9
前記実施例2-1においてアセトニトリル溶媒の代わりに下記表5に記載された溶媒を用いたことを除けば、実施例2-1と同様の方法で(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩の結晶を得て、これに対して製造された結晶の示差走査熱量分析結果、前記実施例2-1と同一の結晶形態(結晶形I)を示すことが分かった。
【0124】
実施例2-10
前記実施例1-1で製造した(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩10mgを、1mLのメタノール溶媒に溶解した後、これを室温で3時間撹拌した。以後、製造された溶液を室温で1日以上放置して溶媒を蒸発させた。結晶生成後、減圧濾過により結晶を得て、これに対して製造された結晶の示差走査熱量分析結果、前記実施例2-1と同一の結晶形態(結晶形I)を示すことが分かった。
【0125】
実施例2-11
前記実施例1-1で製造した(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩10mgを、0.8mLのメタノール溶媒に溶解して溶液を製造した。以後、製造された溶液に非溶媒(anti-solvent)として1mLのアセトニトリル溶媒を投入し、室温で1日以上放置した。結晶生成後、減圧濾過により結晶を得て、これに対して製造された結晶の示差走査熱量分析結果、前記実施例2-1と同一の結晶形態(結晶形I)を示すことが分かった。
【0126】
実施例2-12~2-19
前記実施例2-11において非溶媒としてアセトニトリルの代わりに下記表5に記載された溶媒を用いたことを除けば、実施例2-11と同様の方法で(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩の結晶を得て、これに対して製造された結晶の示差走査熱量分析結果、前記実施例2-1と同一の結晶形態(結晶形I)を示すことが分かった。
【0127】
【表5】
【0128】
前記表5を参照すれば、前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩は、結晶化方法および使用される溶媒を異ならせても1つの結晶形だけが生成されることを確認することができる。特に、実施例2-12のメタノール/アセトン溶媒の条件下で製造された前記(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オールの一塩酸塩は、単結晶(single crystal)であることを確認することができた。
【0129】
比較例2:アセトニトリル溶媒を用いた(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二塩酸塩の結晶形の製造
前記比較例1で製造した(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二塩酸塩が結晶形であるので、これを比較例2として使用した。
【0130】
試験例5:X線粉末回折(X-ray powder diffraction)分析
前記実施例2-1および比較例2で製造した結晶形に対してX線粉末回折分析を実施し、その結果をそれぞれ図1および図2に示した。この時、X線粉末回折分析は、X線粉末回折分光器(D8 Advance、Bruker社製造)を用いて、45kVの電圧、40mAの電流量、1゜の発散および散乱スリット、0.2mmの受光スリットおよび走査速度3゜/分(0.4秒/0.02゜間隔)の条件下、CuKαターゲットを用いて5°~35°の回折角(2θ)の範囲で行われた。
【0131】
図12を参照すれば、前記実施例2-1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩の結晶形は、X線粉末回折パターンにおいて7.5°、12.5°、15.0°、16.5°、17.2°、18.9°、19.8°、20.9°、22.3°、23.6°、24.8°、25.1°、26.1°、27.8°、28.9°、30.1°、30.9°、31.3°および32.4°の回折角(2θ)でピークを有することを確認することができる。
【0132】
図13を参照すれば、前記比較例2で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二塩酸塩の結晶形は、X線粉末回折パターンにおいて9.6°、10.9°、12.2°、13.9°、15.8°、16.9°、17.9°、19.2°、20.2°、20.8°、22.2°、23.6°、24.5°、24.8°、25.2°、25.6°、27.6°、27.9°、28.6°、29.2°、30.2°および31.5°の回折角(2θ)でピークを有することを確認することができる。
【0133】
また、図12および13を参照すれば、前記実施例2-1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩の結晶形と、前記比較例2で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール二塩酸塩の結晶形は、互いに異なる結晶形であることが分かる。
【0134】
試験例6:結晶形の示差走査熱量分析
前記実施例2-1で製造した結晶形に対して示差走査熱量分析を実施し、その結果を図14に示した。この時、示差走査熱量分析は、示差走査熱量計(DSC Q20、TA Instrument社製造)を用いて、密閉されたファン内で、窒素浄化下、10℃/minのスキャン速度で20℃から300℃に昇温しながら行われた。
【0135】
図14を参照すれば、前記実施例2-1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩の結晶形は、示差走査熱量分析において吸熱開始温度が279.68±3℃でかつ、吸熱温度281.04±3℃で最大吸熱ピークを示すことを確認することができる。したがって、前記実施例2-1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩の結晶形は、二塩酸塩の結晶形に比べて吸熱開始温度が高いだけでなく、最大吸熱ピークを有する吸熱温度も高くて、二塩酸塩の結晶形対比熱的安定性が改善できる。
【0136】
そして、前記実施例2-1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩の結晶形の示差走査熱量分析結果は、前記実施例1-1で製造された(2R,3S)-2-(3-(4,5-ジクロロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)プロピル)ピペリジン-3-オール一塩酸塩の示差走査熱量分析結果と同一であった。したがって、前記実施例1-1で製造された一塩酸塩も結晶形であり、その結晶形態が前記実施例2-1で製造された一塩酸塩の結晶形態(結晶形I)と同一であることが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】