(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】胎盤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/50 20150101AFI20241121BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20241121BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20241121BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241121BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20241121BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241121BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241121BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241121BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20241121BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20241121BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241121BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241121BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241121BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241121BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241121BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20241121BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241121BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20241121BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20241121BHJP
【FI】
A61K35/50
A61P1/00
A61P1/18
A61P9/00
A61P9/10
A61P11/00
A61P13/12
A61P17/00
A61P19/02
A61P25/02
A61P25/00
A61P25/28
A61P27/02
A61P29/00
A61P31/04
A61P31/12
A61P37/02
A61P37/08
A23L33/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506655
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 IB2022062160
(87)【国際公開番号】W WO2023119063
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519190665
【氏名又は名称】イーエイチジェイ アイピー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EHJ IP LIMITED
【住所又は居所原語表記】48 Crooks Road,East Tamaki,Auckland 2013,New Zealand
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ブエン, リアン セン
【テーマコード(参考)】
4B018
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD08
4B018MD69
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4C087ZB03
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4C087ZB11
4C087ZB13
4C087ZB15
4C087ZB33
4C087ZB35
(57)【要約】
TNFα、IL-1ベータ、IL-6及び他の炎症促進性サイトカイン、例えば、喘息、感染、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、又はCOVID-19と関連する疾患又は状態の炎症を治療又は予防するための胎盤抽出物及び胎盤抽出物を含む組成物の使用、並びに例えば炎症状態を治療又は予防するための医薬としてのその使用が記載される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症又は免疫モジュレーションと関連する疾患、障害又は状態を治療、予防又は改善する方法であって、有効量の胎盤抽出物又は有効量の胎盤抽出物を含む組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項2】
炎症又は免疫モジュレーションと関連する疾患、障害又は状態の治療、予防又は改善に使用するための組成物であって、胎盤抽出物を含む、組成物。
【請求項3】
炎症又は免疫モジュレーションと関連する疾患、障害又は状態を治療、予防又は改善するための医薬又は組成物の製造における胎盤抽出物の使用。
【請求項4】
前記組成物又は医薬が、食品、飲料、食品添加物、飲料添加物、食品構成要素、飲料構成要素、栄養補助食品、栄養製品、医療食品、栄養機能食品、医薬又は医薬品である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項5】
前記胎盤抽出物が、サイトカインIL-1α、β、IL-2、IL-3、IL-6、IL-7、IL-9、IL-12、IL-17、IL-18、TNF-α、LT、LIF、オンコスタチン、又はIFNc1α、β、γを含む1つ又は複数の炎症促進性サイトカインを阻害するのに十分な濃度で投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項6】
前記胎盤抽出物が、IL-4、IL-10、IL-11、W-13又はTGFβを含む1つ又は複数の抗炎症性サイトカインの発現を刺激するのに十分な濃度で投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項7】
前記胎盤抽出物が、シカ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ロバ、ウサギ又はウシの胎盤に由来し、好ましくは前記胎盤抽出物がシカ胎盤に由来する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項8】
前記胎盤抽出物が、溶媒抽出、超臨界CO2抽出を含む超臨界溶媒抽出、蒸留、向流抽出、煎出、パーコレーション、熟成、分子蒸留、マイクロ波抽出、超音波抽出、及びクロマトグラフィー分離からなる群から選択される抽出法によって胎盤材料から抽出される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項9】
前記胎盤抽出物が、溶媒抽出によって胎盤材料から抽出される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項10】
前記抽出法が、前記胎盤材料と溶媒とを接触させるステップと、前記胎盤材料を前記溶媒から分離するステップと、前記溶媒を少なくとも部分的に除去して抽出物を得るステップとを含む、請求項8又は9に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項11】
前記胎盤材料が、前記溶媒と接触する前にフリーズドライされて粉末化される、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項12】
前記溶媒が水である、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項13】
前記溶媒が有機溶媒である、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項14】
前記溶媒がエタノールである、請求項13に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項15】
前記抽出物が、溶媒抽出、例えばエタノール抽出、続いて蒸留又は超臨界抽出によって調製される、請求項1~11又は13及び14のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項16】
水抽出を使用して前記抽出物を調製する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項17】
前記胎盤抽出物が、乾燥又は粉末化された胎盤材料であるか又はそれを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項18】
前記胎盤材料が、湿式粉砕することによって微粉化され、次いで、フリーズドライ、真空乾燥若しくはスプレードライ、又は流動床乾燥などを行うことによって、粉末化又は顆粒化される、請求項17に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項19】
前記胎盤材料が、まず、任意選択でフリーズドライ又は真空乾燥によって乾燥され、次いで、任意選択で粉末に粉砕される、請求項17に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項20】
前記組成物又は医薬が、錠剤、カプセル剤、液剤、油剤、懸濁剤、エマルション剤、ペースト、ゼリー、プリン、溶液剤、及び粉末剤からなる群から選択される送達製剤として提供される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項21】
前記組成物が、又は前記医薬が、
a.少なくとも約0.1、0.2、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99、99.5、99.8又は99.9重量%の前記胎盤抽出物;
b.少なくとも約0.001、0.01、0.05、0.1、0.15、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18若しくは19グラム又はそれを超える前記胎盤抽出物;又は
c.少なくとも約1、10、50、100、125、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900若しくは1000mg又はそれを超える前記胎盤抽出物
を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項22】
前記組成物が、前記医薬が、又は前記方法が、
a.1日2回の投与に好適な約125mgの量で、又は1日1回の投与に好適な250mgの量で胎盤抽出物を投与するステップ;
b.1日2回の投与に好適な約100mg又は125mgの量で、又は1日1回の投与に好適な200mg又は250mgの量で胎盤抽出物を投与するステップ;又は
c.約40%~90重量%の胎盤抽出物を投与するステップ
を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項23】
前記組成物又は前記医薬が、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50重量%の別の抗炎症剤をさらに含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項24】
前記組成物又は医薬が、担体、任意選択で薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項25】
前記組成物又は医薬が、錠剤、カプレット剤、丸剤、硬カプセル若しくは軟カプセル剤、ロゼンジ剤、カシェ剤、分包粉末剤、顆粒剤、懸濁剤、エリキシル剤、液剤、又は、例えば、水若しくはフルーツジュースを含む、食品若しくは飲料に添加することができるその他の形態である、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項26】
前記組成物又は医薬が、保存中の又は投与後の前記組成物の分解を予防するか又は減少させる1つ又は複数の構成要素、任意選択で抗酸化物質をさらに含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項27】
前記組成物又は医薬が、食品、飲料、食品添加物、飲料添加物、栄養補助食品、栄養製品、医療食品、栄養機能食品、医薬若しくは医薬品であるか、又はそれとして製剤化されており、任意選択で、前記組成物又は医薬が、粉末剤、液剤、食品バー、スプレッド、ソース、ペースト、ゼリー、プリン、スープベース、軟膏剤、錠剤又はカプセル剤として製剤化されている、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項28】
前記組成物又は医薬が以下のために製剤化されている:
a.経口、経鼻又は非経口投与、任意選択で、局所、皮下、筋肉内及び静脈内投与;又は
b.摂取、
c.吸入、任意選択で吸入可能な粉末、溶液又はエアロゾルとして投与するために製剤化されている;又は
d.局所適用、任意選択で局所適用のために製剤化されている、好ましくは、軟膏剤、クリーム剤又はローション剤として製剤化されている、
請求項1~27のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項29】
前記胎盤抽出物又は組成物が、炎症促進性サイトカインの発現を阻害することによって及び/又は抗炎症性サイトカインを刺激することによって、炎症関連疾患を治療するのに十分な量で投与されるか又はその量での投与のために製剤化されている、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項30】
前記疾患、障害又は状態が、I型糖尿病;シェーグレン症候群;ブドウ膜炎;セリアック疾患;アレルギー性結膜炎;及び非特異的結腸炎、関節炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患;乾癬;多発性硬化症;神経変性障害;うっ血性心不全;脳卒中;大動脈弁狭窄;腎不全;ループス;膵炎;アレルギー;線維症;貧血;アテローム性動脈硬化症;代謝性疾患;骨疾患;心血管疾患、化学療法/放射線関連合併症;II型糖尿病;肝臓疾患;消化管障害;眼科的疾患;糖尿病性網膜症;肺障害、腎臓疾患;皮膚炎;HIV関連悪液質;脳マラリア;強直性脊椎炎;ハンセン病;貧血;及び線維筋痛症からなる群から選択される炎症関連疾患である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項31】
前記疾患、障害又は状態が、肺の疾患、障害又は状態、例えば、(a)免疫応答と関連するか又はそれによって引き起こされるもの;(b)間質性肺疾患;(c)閉塞性肺疾患;(d)急性肺損傷;又は(e)腫瘍性又は腫瘍随伴性疾患、肺炎、又は嚢胞性線維症によって引き起こされる肺損傷である、疾患、障害又は状態である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項32】
前記疾患、障害又は状態が、
a)自己免疫疾患又は移植片対宿主疾患である、免疫応答と関連するか又はそれによって引き起こされる疾患、障害又は状態;
b)関節リウマチ、強皮症、炎症性腸疾患、又は全身性エリテマトーデスから選択される自己免疫疾患;
c)間質性肺疾患、例えば間質性肺線維症;
d)喘息、気管支炎、急性呼吸窮迫症候群又は慢性閉塞性肺疾患から選択される閉塞性肺疾患;
e)物理的外傷、化学的損傷、例えば、化学的熱傷、煙の吸入、又は毒性物質への曝露のうちの1つ又は複数から選択される急性肺損傷
である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項33】
前記疾患、障害又は状態が、肺線維性疾患、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、COVID-19、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、喘息、肺のウイルス性若しくは細菌性感染症、肺炎(化学的誘発性肺炎を含む)、又は嚢胞性線維症のうちの1つ又は複数である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【請求項34】
ウイルスが、ヘルペスウイルス、例えば、サイトメガロウイルス(CMV);インフルエンザウイルス、例えば、H1N1、H3N2、H5N1又はH5N7ウイルス;パラミクソウイルス、例えば、麻疹;呼吸器合胞体ウイルス;コロナウイルス、例えば、SARS又はSARS-CoV-2(Covid-19);HIVウイルス;肝炎ウイルス;又はロタウイルスからなる群から選択される、前記ウイルスの疾患を治療、予防若しくは改善するための及び/又は前記ウイルスの活性化を阻害するための、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法、組成物又は使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TNFα、IL-1ベータ、IL-6及び他の炎症促進性サイトカイン、例えば、喘息、感染、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、又はCOVID-19と関連する疾患又は状態の炎症を治療又は予防するための胎盤抽出物及び胎盤抽出物を含む組成物の使用に関する。本発明はまた、胎盤抽出物及び胎盤抽出物を含む組成物の投与による治療法、及びこのような疾患又は状態を治療するための医薬又は組成物の製造における胎盤抽出物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自然免疫系細胞による炎症促進性サイトカインの産生は、侵入する病原体に対する最初の宿主防御の介在において重要な役割を果たすが(O’Neill,L.A.et al.,Immunol.Today,(2000),21(5):206-9)、宿主が炎症性応答の性質又は持続を調節できないことにより、慢性炎症性疾患において観察されるような宿主への有害な影響を介在する場合が多い。さらに、敗血症の初期の段階では、宿主の炎症性応答は極度に活発な状況であり、炎症促進性サイトカインの産生における増加が優勢であり、これが宿主組織の損傷及び致死的ショックを介在すると考えられている(Cohen,J.,Nature,(2002),420(6917):885-91)。この点において、炎症促進性サイトカインを抑制する、及び/又は抗炎症性サイトカインを強化する能力は、エンドトキシンの毒性作用を大幅に減少させることが示されている(Berg,D.J.et al.,J.Clin.Invest.,(1995),96(5):2339-47;及びHoward,M.et al.,J.Exp.Med.,(1993),177(4):1205-8)。
【0003】
SARS-CoV-2によって引き起こされるCOVID-19は、また、ウイルスのロードよりはむしろ免疫機能不全によって特徴付けられ、これが炎症促進性サイトカインの異常な産生につながっている(Ma W-T,et al. The protective and pathogenic roles of IL-17 in viral infections:friend or foe? Open Biol. 2019;9(7):190109)。特に、COVID-19は、極度に活発な免疫系及びサイトカインの無制御な放出を介し、肺組織においてサイトカインストームを誘発する場合がある(Ye Q,Wang B,Mao J.Cytokine storm in COVID-19 and treatment. J Infect. 2020;80:607-13)。炎症促進性サイトカイン、例えば、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-1β(IL-1β)、及び腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)は、呼吸器上皮の機能障害による急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を呈するCOVID患者の肺損傷において非常に重要な役割を果たしている(Montazersaheb,S.,Hosseiniyan Khatibi,S.M.,Hejazi,M.S.et al. COVID-19 infection:an overview on cytokine storm and related interventions. Virol J 19,92(2022))。
【0004】
皮膚状態等、異常な又は不所望の炎症と関連する他の状態も、管理するのが困難な場合がある。治療は、薬物療法、例えば、ステロイド、抗ヒスタミン薬及び抗生物質から主になる。ステロイドは抗炎症及び免疫抑制薬効果を有し、良好な効果を示すが、腸管、腎臓、肝臓、骨及び脳に対して有害であり、治療が中断された場合、状態が再発することが多い。
【0005】
化粧品、医薬品、栄養機能食品、サプリメント及び飲料製品に好適な改善された又は代替の製剤の利用可能性は、TNFα、IL-1ベータ、IL-6及び他の炎症促進性サイトカインと関連する異常な又は不所望の炎症と関連する状態に罹患した対象にとって重要である。
【0006】
本発明の目的は、改善された若しくは代替の組成物を提供すること、及び/又は少なくとも公衆に有用な選択を提供することである。
【0007】
この明細書では、参照が、特許明細書及び他の文書を含む外部の情報源に対して行われている場合、これは一般的に本発明の特徴を論じるための文脈を提供することを目的としている。特に記載がない限り、このような情報源への言及は、いかなる権限においても、このような情報源が先行技術であるか又は当技術分野において周知の一般的な知識の一部を形成することを認めるものとして解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0008】
したがって、1つの態様において、本発明は、炎症又は免疫モジュレーションと関連する疾患、障害又は状態を治療、予防又は改善する方法であって、有効量の胎盤抽出物又は有効量の胎盤抽出物を含む組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法に関する。
【0009】
別の態様において、本発明は、炎症又は免疫モジュレーションと関連する疾患、障害又は状態の治療、予防又は改善に使用するための組成物であって、胎盤抽出物を含む組成物に関する。
【0010】
別の態様において、本発明は、炎症又は免疫モジュレーションと関連する疾患、障害又は状態を治療、予防又は改善するための医薬又は組成物の製造における胎盤抽出物の使用に関する。
【0011】
好ましくは、組成物又は医薬は、食品、飲料、食品添加物、飲料添加物、食品構成要素、飲料構成要素、栄養補助食品、栄養製品、医療食品、栄養機能食品、医薬又は医薬品である。
【0012】
1つの実施形態において、胎盤抽出物は、サイトカインIL-1α、β、IL-2、IL-3、IL-6、IL-7、IL-9、IL-12、IL-17、IL-18、TNF-α、LT、LIF、オンコスタチン、又はIFNc1α、β、γを含む1つ又は複数の炎症促進性サイトカインを阻害するのに十分な濃度で投与される。
【0013】
1つの実施形態において、胎盤抽出物は、IL-4、IL-10、IL-11、W-13又はTGFβを含む1つ又は複数の抗炎症性サイトカインの発現を刺激するのに十分な濃度で投与される。
【0014】
以下の実施形態は、上記の態様のいずれかと関連し得る。
【0015】
1つの実施形態において、胎盤抽出物は、シカ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ロバ、ウサギ又はウシの胎盤に由来する。好ましくは、胎盤抽出物はシカ胎盤に由来する。1つの実施形態において、胎盤抽出物はCerviCenta(登録商標)である。
【0016】
胎盤材料からの好ましい抽出法としては、溶媒抽出、超臨界CO2抽出を含む超臨界溶媒抽出、蒸留、向流抽出、煎出、パーコレーション、熟成、分子蒸留、マイクロ波抽出、超音波抽出、及びクロマトグラフィー分離がある。
【0017】
抽出法は、胎盤材料と溶媒とを接触させるステップと、胎盤材料を溶媒から分離するステップと、溶媒を少なくとも部分的に除去して抽出物を得るステップとを含み得る。
【0018】
1つの実施形態において、胎盤材料は、溶媒と接触する前にフリーズドライされて粉末化される。本発明の1つの実施形態において、溶媒は水である。本発明の別の実施形態において、いずれの好適な有機溶媒も使用してもよい。溶媒は、エタノール又は任意のこのような溶媒の混合物であってもよい。1つの実施形態において、抽出物は、溶媒抽出、例えば、エタノール抽出、続いて蒸留又は超臨界抽出によって調製される。
【0019】
好ましくは、水抽出を使用して抽出物を調製する。
【0020】
1つの実施形態において、胎盤抽出物は、乾燥又は粉末化された胎盤材料であるか又はそれを含む。1つの実施形態において、抽出法は、湿式粉砕によって胎盤材料を微粉化し、次いで、フリーズドライ、真空乾燥若しくはスプレードライ、又は流動床乾燥などを行うことによって、粉末化又は顆粒化するステップを含む。代替の実施形態において、胎盤材料は、例えば、まず、フリーズドライ又は真空乾燥によって乾燥され、次いで、任意選択で粉末に粉砕される。
【0021】
好ましい実施形態において、組成物又は医薬は、錠剤、カプセル剤、液剤、油剤、懸濁剤、エマルション剤、ペースト、ゼリー、プリン、溶液剤、及び粉末剤からなる群から選択される送達製剤として提供される。
【0022】
1つの実施形態において、組成物又は医薬は、胎盤抽出物を含むか、それから実質的になるか又はそれからなる。
【0023】
1つの実施形態において、胎盤抽出物は、溶媒抽出によって調製された胎盤材料、乾燥若しくは粉末化された胎盤材料、及び/又はそれらの組合せを含むか、それらから実質的になるか、又はそれらからなる。
【0024】
1つの実施形態において、組成物は、又は医薬は、少なくとも約0.1、0.2、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99、99.5、99.8又は99.9重量%の胎盤抽出物を含み、有用な範囲は、前述のこれらの値のいずれかの間(例えば、約0.1~約50%、約0.2~約50%、約0.5~約50%、約1~約50%、約5~約50%、約10~約50%、約15~約50%、約20~約50%、約25~約50%、約30~約50%、約35~約50%、約40~約50%、約45~約50%、約0.1~約60%、約0.2~約60%、約0.5~約60%、約1~約60%、約5~約60%、約10~約60%、約15~約60%、約20~約60%、約25~約60%、約30~約60%、約35~約60%、約40~約60%、約45~約60%、約0.1~約70%、約0.2~約70%、約0.5~約70%、約1~約70%、約5~約70%、約10~約70%、約15~約70%、約20~約70%、約25~約70%、約30~約70%、約35~約70%、約40~約70%、約45~約70%、約0.1~約80%、約0.2~約80%、約0.5~約80%、約1~約80%、約5~約80%、約10~約80%、約15~約80%、約20~約80%、約25~約80%、約30~約80%、約35~約80%、約40~約80%、約45~約80%、約0.1~約90%、約0.2~約90%、約0.5~約90%、約1~約90%、約5~約90%、約10~約90%、約15~約90%、約20~約90%、約25~約90%、約30~約90%、約35~約90%、約40~約90%、約45~約90%、約0.1~約99%、約0.2~約99%、約0.5~約99%、約1~約99%、約5~約99%、約10~約99%、約15~約99%、約20~約99%、約25~約99%、約30~約99%、約35~約99%、約40~約99%、及び約45~約99%)で選択してもよい。
【0025】
1つの実施形態において、組成物は、又は医薬は、少なくとも約0.001、0.01、0.05、0.1、0.15、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18若しくは19グラム又はそれを超える胎盤抽出物を含み、有用な範囲は、前述のこれらの値のいずれかの間(例えば、約0.01~約1グラム、約0.01~約10グラム、約0.01~約19グラム、約0.1~約1グラム、約0.1~約10グラム、約0.1~約19グラム、約1~約5グラム、約1~約10グラム、約1~約19グラム、約5~約10グラム、及び約5~約19グラム)で選択してもよい。
【0026】
好ましくは、組成物は、又は医薬は、少なくとも約1、10、50、100、125、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900若しくは1000mg又はそれを超える胎盤抽出物を含み、有用な範囲は、前述のこれらの値のいずれかの間(例えば、約10~約1000mg、約50~1000mg、約75~約800mg、約75~約500mg、約75~約350mg、約75~約300mg、約75~約250mg、約100~約350mg、約100~約300mg、約100~約250mg、約100~約200mg、約100~約150mg、より好ましくは約100~約125mg)で選択してもよい。
【0027】
1つの実施形態において、組成物は、医薬は、又は方法は、1日2回の投与に好適な約125mgの量で、又は1日1回の投与に好適な250mgの量で、胎盤抽出物を投与するステップを含む。
【0028】
1つの実施形態において、組成物は、医薬は、又は方法は、1日2回の投与に好適な約100mg又は125mgの量で、又は1日1回の投与に好適な200mg又は250mgの量で、胎盤抽出物を投与するステップを含む。
【0029】
1つの実施形態において、組成物は、医薬は、又は方法は、約40%~90重量%の胎盤抽出物、例えば、約50%~80重量%、又は約60%~75重量%の胎盤抽出物を投与するステップを含む。
【0030】
1つの実施形態において、組成物又は医薬は、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50重量%の別の抗炎症剤をさらに含み、有用な範囲は、前述のこれらの値のいずれかの間(例えば、約0.1~約50%、約0.2~約50%、約0.5~約50%、約1~約50%、約5~約50%、約10~約50%、約15~約50%、約20~約50%、約25~約50%、約30~約50%、約35~約50%、約40~約50%、及び約45~約50%)で選択してもよい。
【0031】
1つの実施形態において、組成物又は医薬は、担体、例えば薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0032】
1つの実施形態において、組成物又は医薬は、錠剤、カプレット剤、丸剤、硬カプセル若しくは軟カプセル剤又はロゼンジ剤の形態である。1つの実施形態において、組成物又は医薬は、カシェ剤、分包粉末剤(dispensable powder)、顆粒剤、懸濁剤、エリキシル剤、液剤の形態、又は、例えば水若しくはフルーツジュースを含む、食品若しくは飲料に添加することができるその他の形態である。1つの実施形態において、組成物又は医薬は、保存中の又は投与後の組成物の分解を予防するか又は減少させる1つ又は複数の構成要素(例えば抗酸化物質)をさらに含む。
【0033】
1つの実施形態において、組成物又は医薬は、食品、飲料、食品添加物、飲料添加物、栄養補助食品、栄養製品、医療食品、栄養機能食品、医薬又は医薬品であるか、又はそれとして製剤化されている。好ましくは、組成物又は医薬は、粉末剤、液剤、食品バー、スプレッド、ソース、ペースト、ゼリー、プリン、スープベース、軟膏剤、錠剤又はカプセル剤として製剤化されている。
【0034】
1つの実施形態において、組成物又は医薬は、経口、経鼻、又は非経口(局所、皮下、筋肉内、及び静脈内を含む)投与のために製剤化されている。1つの実施形態において、組成物又は医薬は、摂取、吸入、又は局所適用のために製剤化されている。組成物又は医薬が吸入のために製剤化されている場合、好ましくはそれは、吸入可能な粉末、溶液、又はエアロゾルとして製剤化されている。組成物又は医薬が局所適用のために製剤化されている場合、好ましくはそれは、軟膏剤、クリーム剤、又はローション剤として製剤化されている。
【0035】
理解されるであろうように、投与される組成物又は医薬の用量、投与期間、及び一般的な投与レジメンは、対象の症状の重症度、治療されることになる障害のタイプ、選択される投与様式、並びに対象の年齢、性別及び/又は一般的な健康のような可変的なものに応じて対象間で異なる場合がある。しかし、一般的な例として、発明者らは、1日あたり体重1kgあたり約1mg~約1000mg、好ましくは1日あたり1kgあたり約50~約500mgの本発明の組成物又は医薬の投与が投与されることを検討している。1つの実施形態において、発明者らは、体重1kgあたり約0.05mg~約250mgの本発明による医薬組成物又は医薬を投与することを検討している。投与は1日1回の用量を含む場合があるか、又は複数の個別に分割された用量が必要に応じて投与されることは理解されるべきである。
【0036】
この明細書では、参照が、特許明細書、他の外部文書、又は他の情報源に対して行われている場合、これは一般的に本発明の特徴を論じるための文脈を提供することを目的としている。特に別段の記載がない限り、このような外部文書への言及は、いかなる権限においても、このような文書又はこのような情報源が先行技術であるか当技術分野において周知の一般的な知識の一部を形成することを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0037】
本明細書において開示されるさまざまな数(例えば、1~10)への言及はまた、その範囲内の全ての有理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9及び10)、またその範囲内の有理数のいずれの範囲(例えば、2~8、1.5~5.5及び3.1~4.7)への言及を組み込んでおり、したがって、本明細書において明示的に開示される全ての範囲の全ての部分範囲は、本明細書によって明示的に開示されることが意図される。これらは特に意図されるものの例に過ぎず、列挙される最高値と最低値との間の数値の全ての可能な組合せは、類似の様式で本出願において明示的に規定されると考えられるべきである。
【0038】
本発明はまた、前記部分、要素又は特徴のうちの2つ以上の任意の又は全ての組合せにおいて、個々に又は集合的に本出願の明細書で言及されるか又は示される部分、要素及び特徴からなることを広範に述べることができ、本発明が関連する当技術分野において既知の等価物を有する特定の整数が本明細書において言及される場合、このような既知の等価物は、個々に記載されているかのように本明細書において組み込まれるものと考えられている。
本発明は、単なる例の目的で図面を参照しながら記載されることになる:
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、胎盤抽出物のタンパク質の完全性の判定を提供する:表示されているように、タンパク質抽出物は、4~20%BioRad勾配ゲルで分離され、その後クマシーブリリアントブルーで染色された。次の順序を観察することができる。左か右にレーン1~10:BioRad Precision Plus Protein Standard:上から下にMw(kDa):250/150/100/75/50/37/25/20/15。レーン2:培養培地、レーン3:0.9%NaCl、レーン4:PBS/1%TritonX100、レーン5:PBS/1%SDS、レーン6:レーン7からあふれたもの、レーン7:蒸留水、レーン8/9:PBS。
【
図2】
図2は、IL-1ベータの評価を提供する。PBMCは、記載されているようにDPE及び刺激剤で処理された。上清を単離し、さまざまな希釈率(1/5、1/20及び1/50)でMSDU-Plexマルチプレキシングプラットフォームに移して、反応性の最適な範囲を定義した。最高の反応性は、被検抽出物の1/5希釈で達成された。これらのデータはここに図示される。ザイモサン2(1μg/mL)、エンドトキシン1(0.05EU/mL)。HSKA(10
8細胞)。DPE1/5(12.33mg/mL)、DPE1/20(3.08mg/mL及びDPE1/50(1.23mg/mL)。X軸:反応性(EC単位)、Y軸:刺激
【
図3】
図3は、IL-6の評価を提供する。PBMCは、記載されているようにDPE及び刺激剤で処理した。上清を単離し、さまざまな希釈率(1/5、1/20及び1/50)でMSDU-Plexマルチプレキシングプラットフォームに移して、反応性の最適な範囲を定義した。最高の反応性は、被検抽出物の1/5希釈で達成された。これらのデータはここに図示される。ザイモサン3(0.2μg/mL)、エンドトキシン1(0.05EU/mL)。HSKA(10
8細胞)。DPE1/5(12.33mg/mL)、DPE1/20(3.08mg/mL及びDPE1/50(1.23mg/mL)。X軸:反応性(EC単位)、Y軸:刺激。
【
図4】
図4は、IL-1ベータの誘導におけるDPE干渉を提供する。ヒトPBMCは、記載されているようにDPEで前処理された。その後確立された刺激が次の濃度で与えられた:ザイモサン(1μg/mL)、HKSA(1×10
8)、エンドトキシン(0.05EU/mL)。上清は採取され、Mesoscale U-PLEXプラットフォームで分析した。ここで示されるデータは、Mesoscaleプラットフォームでの1/10希釈に類似している。
【
図5】
図5は、添加してから24時間後のBEAS-2B細胞におけるDPEの用量研究結果を提供する。PC=陽性対照(ZDBCポリウレタンフィルム(SPU-ZDBC);ロット番号:B-172K;Hatano Research Institute、Japan)。値は平均±SD、n=6として与えられる。
【
図6】
図6は、3種類の濃度のDPEを添加し、その後、活性化リンパ球(0.5×10
6細胞/mL、24時間)で刺激してから24時間後のBEAS-2B細胞におけるIL-10放出を提供する。値は平均±SD、n=3として与えられる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、胎盤抽出物が抗炎症活性を含む有用な性質を有するという発見に基づいている。
【0041】
[定義]
「含む(comprising)」という用語は、この明細書で使用される場合、「少なくとも一部からなる」を意味する。その用語を含むこの明細書における記載を解釈する場合、各記載又は請求項においてその用語が前置きされる特徴は、全て存在する必要があるが、他の特徴も存在する場合がある。関連する用語である「含む(comprises)」及び「含まれる(comprised)」は、同様に判断されるべきである。
【0042】
本明細書において使用される場合、「及び/又は」という用語は、「及び」若しくは「又は」、又はこれらの両方を意味する。
【0043】
「有効量」は、治療効果をもたらすのに必要とされる量である。動物及びヒトに関する投薬量の相互関係(体表面1平方メートルあたりのミリグラムに基づく)がFreireichら(1966年)によって記載されている。体表面積は、対象の身長及び体重からおよそ判定してもよい。例えば、Scientific Tables,Geigy Pharmaceuticals,Ardley,New York,1970,537を参照されたい。有効な用量はまた、投与経路、担体の使用などに応じて当業者によって認識されるとおりに変更される。
【0044】
本明細書において使用される場合、「抽出物」という用語は、原材料由来の調製物であって、由来する原材料とは異なる形態の調製物を指す。抽出物は機械的に粉砕された細胞材料と同じくらい単純なものとすることができ、その場合、調製物は、水を除去するために脱水されたものであり得、又は原材料と1つ又は複数の溶媒とを接触させることによって生成された調製物であってもよい。「抽出物」という用語はまた、活性薬剤(複数可)の含有量を富化するために1つ又は複数の分離及び/又は精製ステップを受けた調製物、並びに胎盤材料由来の部分的に又は実質的に精製された分画を含む調製物を包含する。
【0045】
「薬学的に許容される担体」という用語は、これらに限定されないが、賦形剤、希釈剤又は助剤を含む担体であって、組成物の活性を低下させることがなく、有効量の1つ又は複数の活性薬剤を送達するのに十分な用量で投与された場合に毒性のない、本発明の組成物の構成要素として対象に投与することができる担体を指すことが意図される。製剤は経口、経鼻、又は非経口(局所、筋肉内、腹腔内、皮下、及び静脈内を含む)で投与してもよい。
【0046】
「化粧用組成物」という用語は、本明細書において使用される場合、化合物を含み、任意のタイプの製剤を有する組成物を指す。組成物を使用して調製された化粧用製剤の非限定的な例としては、クリーム剤、例えば、皮膚用クリーム剤、栄養クリーム剤、眼用クリーム剤、マッサージ用クリーム剤、及び洗浄用クリーム剤;パック剤;ローション剤、例えば栄養ローション剤;エッセンス剤;セラム剤、湿布剤、軟膏剤;トニック剤、例えば、皮膚軟化及び栄養トニック剤;粉末剤;ファンデーション、及びメイクアップベースがある。本開示の技術目標達成するために、化粧用組成物は、商品化されることになる上記で挙げられた製剤から選択されるいずれの製剤に調製してもよく、本開示は、上記の例に限定されない。さらに、本開示による化粧用組成物は、一般的な化粧品の調製法を使用して製剤化してもよい。
【0047】
「健康機能食品」という用語は、本明細書において使用される場合、ヒト身体において有用な機能性を有する原材料又は成分を使用することによって、錠剤、カプセル剤、ペースト、ゼリー、プリン、ソフトゲル剤、粉末剤、顆粒剤、液剤、丸剤などの形態に調製及び処理された食品を指す。「機能性」という用語は、本明細書において使用される場合、ヒト身体の機能の構造上の栄養分を制御すること、又は衛生目的の有用な効果、例えば、心理的効果などを提供することを指す。本開示の健康機能食品は、当技術分野において通常使用される方法を使用して調製してもよく、当技術分野において通常添加される原材料及び成分を添加することによって調製してもよい。さらに、健康機能食品製剤は、健康機能食品として認識される限りは特に限定されない。本開示の健康機能食品組成物は、ジェネリック薬物とは異なり、原材料として食品を使用しており、したがって、これらの長期投与中に生じる場合がある副作用はなく、携帯性に優れており、皮膚の保湿強化、皮膚の剥離、皮膚の弾力性の改良、皮膚の治癒の促進、紅斑の阻止、皮膚の皺の改善、及び/又は皮膚の光老化の軽減のための、アジュバントとして投与してもよい。
【0048】
「ステロイド節約」という用語は、対象に投与されるステロイド医薬の用量を、対象が本発明の組成物を摂取し始めるか又は本発明の方法を使用し始める前に投与したレベルを下回るレベルまで減少させることができることを意味することが意図される。好ましくは、ステロイドの毎日又は毎週又は毎月の用量を、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は99%減少することができる。
【0049】
本発明による「対象」は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくは哺乳類のコンパニオンアニマル又はヒトである。好ましいコンパニオンアニマルとしては、ネコ、イヌ及びウマがある。
【0050】
「相乗作用」という用語は、この明細書で使用される場合、本明細書において有用な組成物の効果が、例えば、in vitro又はin vivo又はそれら両方の効果の範囲で測定した場合、個々の薬剤単独での使用と比較して優れていることを意味する。例えば、胎盤抽出物と、別の薬剤、例えば、別の抗炎症抽出物との組合せの効果は、効果が、胎盤抽出物単独又は他の薬剤若しくは抽出物単独で達成可能な効果よりも優れている場合に相乗的である。
【0051】
さらに、組合せの効果は、有益な効果が胎盤抽出物又は他の薬剤又は抽出物単独に対して応答しない(又は応答が少ない)対象の群において得られた場合に相乗的である。さらに、構成成分のうちの1つがその従来の用量で使用され、他の構成要素が減量した用量で使用され、かつ、例えば、in vitro又はin vivo又はそれら両方における効果の範囲で測定した場合にその効果が、組合せ治療の構成成分のうちのいずれか1つの従来の量で達成可能な効果と同等であるか又はそれよりも優れている場合は、組合せの効果は相乗的である。関連用語、例えば「相乗的」も、同様に判断されたい。
【0052】
「治療する」という用語及びその派生語は、可能な限りその幅広い文脈で解釈されるべきである。その用語は、対象が完全に回復するまで治療されることを示唆すると解釈されるべきではない。したがって、「治療する」は、特定の状態の症状又は重症度の発症の改善及び/又は予防を広範に含む。
【0053】
[治療法又は予防法]
本明細書の例におけるデータは、本明細書において記載されるような胎盤抽出物及び胎盤抽出物を含む組成物が、炎症又は免疫モジュレーションと関連する疾患、障害又は状態を含むさまざまな状態を治療又は予防するための方法において有用であることを実証している。
【0054】
1つの実施形態において、本明細書における抽出物及び組成物は、例えば、炎症と関連する状態の治療又は予防において有用な免疫モジュレーション効果を提供する。
【0055】
好ましい実施形態において、胎盤抽出物は、炎症促進性サイトカインの発現を阻害することによって及び/又は抗炎症性サイトカインを刺激することによって、炎症関連疾患を治療するのに十分な量で投与される。
【0056】
本使用としては、これらに限定されるものではないが、疾患と関連する炎症を予防することによって、病理学的進行に関与するサイトカイン調節することにより炎症関連疾患を治療し、したがって炎症関連疾患の発症を予防することがあることは理解するべきである。
【0057】
1つの実施形態において、炎症関連疾患は、I型糖尿病;シェーグレン症候群;ブドウ膜炎;セリアック疾患;アレルギー性結膜炎;及び非特異的結腸炎からなる群から選択される。
【0058】
本明細書において開示されるが特許請求されていない他の炎症関連疾患としては:関節炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患;乾癬;多発性硬化症;神経変性障害;うっ血性心不全;脳卒中;大動脈弁狭窄;腎不全;ループス;膵炎;アレルギー;線維症;貧血;アテローム性動脈硬化症;代謝性疾患;骨疾患;心血管疾患、化学療法/放射線関連合併症;II型糖尿病;肝臓疾患;消化管障害;眼科的疾患;糖尿病性網膜症;肺障害、腎臓疾患;皮膚炎;HIV関連悪液質;脳マラリア;強直性脊椎炎;ハンセン病;貧血;及び線維筋痛症がある。
【0059】
本明細書において開示される神経変性障害としては:アルツハイマー疾患及びパーキンソン疾患、ジェロサイエンス、骨粗鬆症、黄斑変性症、健康寿命の延長(healthspan extension)があり;炎症性腸疾患は、クローン病又は潰瘍性結腸炎からなる群から選択され;消化管合併症は下痢であり;肝臓疾患は、自己免疫性肝炎、C型肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、又は劇症型肝不全からなる群から選択され;骨疾患は骨粗鬆症であり;肺障害は、アレルギー性鼻炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、慢性肉芽腫性炎症、嚢胞性線維症、及びサルコイドーシスからなる群から選択され;心血管疾患は、アテローム性動脈硬化性心疾患、うっ血性心不全及び再狭窄、血栓症(心房細動、AF)、血流力学的ストレス、代謝症候群(MetS)、心拍数変動(HRV)、迷走神経の抗炎症作用(vagal anti-inflammatory)、動脈壁の硬化、心不全、先天性心疾患、血管疾患からなる群から選択され;腎臓疾患は、糸球体腎炎及び血管炎からなる群から選択される。
【0060】
炎症促進性サイトカインはまた、以下を含む多数の他の疾患、障害又は状態と関連しており、これらの全てが本発明の抽出物、組成物及び方法による治療、改善又は予防の影響を受けやすい:
自己免疫-自己免疫性及び炎症性疾患(高血圧症、疲労、自閉症スペクトル障害、双極性障害、がん、腎臓移植、川崎疾患;
脳健康-認知機能障害、血管性及び神経変性障害、アルツハイマー疾患、脳形態、腫瘍壊死;
肺/呼吸器の健康-マクロファージ、慢性呼吸器疾患、肺線維症、オートファジー性、過剰性、制御不全性炎症、インターフェロン(I型IFN)応答、嚢胞性線維症(CF)肺疾患、急性呼吸窮迫症候群、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸器合胞体ウイルス感染症(RSV)、粘液閉塞及び好中球性炎症;
心臓の健康-冠動脈疾患(HIV+個体)、心血管疾患(CVD)、アテローム性動脈硬化症、血栓症(心房細動、AF)、血流力学的ストレス、代謝症候群(MetS)、心拍数変動(HRV)-迷走神経の抗炎症作用、動脈壁の硬化、心不全、先天性心疾患、血管疾患;
皮膚の健康-特徴的な(characterizing)紅斑性毛細血管拡張型(erythematotelangiectatic)酒さ(ETR)、乾癬様皮膚炎症、自己免疫皮膚疾患(乾癬)、皮膚疾患(皮膚がん)、皮膚老化/酸化ストレス、自然皮膚老化、光老化、皮膚バリア機能不全、細胞外マトリックス機能不全、樹状細胞(DC)、皮膚色素沈着、皺;
抑うつ-中枢神経系障害、慢性ストレス、抑うつ、認知症、大鬱病性障害(MDD);
肥満-高脂肪食(HFD)、2型糖尿病(T2DM)、低グレードの炎症;
臓器-喘息性慢性閉塞性肺疾患(ACOS)、腎臓疾患、炎症性腸疾患、臓器疾患(心臓、膵臓、肝臓、腎臓、肺、脳、腸管、生殖器系の組織損傷);
がん-肝臓がん、乳がん、胃がん、腸がん、肺がん、動脈疾患;
その他-脳卒中、心筋梗塞、糖尿病、精神運動性変性。
【0061】
化合物は、炎症促進性サイトカインの発現を阻害する及び/又は抗炎症サイトカインの発現を刺激する量である。1つの実施形態において、化合物は、好ましくは、IL-1α、β、IL-2、IL-3、IL-6、IL-7、IL-9、IL-12、IL-17、IL-18、TNF-α、LT、LIF、オンコスタチン、及びIFNc1α、β、γからなる群から選択される炎症促進性サイトカインのうちの1つ又は複数の少なくとも30%の発現を阻害する量であり:より好ましくはサイトカインの少なくとも40%の発現が阻害され、最も好ましくは50%以上の発現が阻害される。別の実施形態において、化合物は、好ましくは、抗炎症サイトカインの発現を刺激する量である。この実施形態において、化合物は、好ましくは、サイトカインIL-4、IL-10、IL-11、W-13又はTGFβからなる群から選択される抗炎症サイトカインを少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%増加させる量である。
【0062】
1つの実施形態において、状態は、関節炎、筋炎、腱炎、靭帯炎、関節損傷、関節の捻挫又は挫傷、筋肉捻挫、筋肉挫傷、軟骨損傷、変形性関節症、関節リウマチ、アトピー状態、アレルギー、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、心疾患、高血圧症、血餅、低血圧症、血管収縮、がん、又は抑うつである。1つの実施形態において、状態は関節炎である。1つの実施形態において、状態は、筋炎、腱炎、靭帯炎、関節損傷、関節の捻挫又は挫傷、筋肉の捻挫又は挫傷、又は軟骨損傷である。別の実施形態において状態は、変形性関節症又は関節リウマチである。別の実施形態において状態はアトピー状態である。別の実施形態において、状態はアレルギーである。別の実施形態において、状態は、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、心疾患、高血圧症、血餅、低血圧症、血管収縮、がん、又は抑うつである。さまざまな実施形態において、治療は、ステロイド節約効果を伴う。
【0063】
別の実施形態において、本明細書において記載される組合せは、皮膚/組織損傷によって引き起こされる炎症を減少させるのに有用であり、アトピー性皮膚炎、乾癬、光線性角化症、酒さ、皮膚組織治癒及び他の慢性皮膚障害において有用である。
【0064】
別の実施形態において、本明細書において記載される組合せは、肺の疾患、障害又は状態に有用である。ある特定の実施形態において、前記疾患、障害又は状態は、(a)免疫応答と関連するか又はそれによって引き起こされるもの;(b)間質性肺疾患;(c)閉塞性肺疾患;(d)急性肺損傷;又は(e)腫瘍性又は腫瘍随伴性疾患、肺炎、又は嚢胞性線維症によって引き起こされる肺損傷である。
【0065】
ある特定の実施形態において、免疫応答と関連するか又はそれによって引き起こされる前記疾患、障害又は状態は、自己免疫疾患又は移植片対宿主疾患である。さらに別の実施形態において、前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、強皮症、炎症性腸疾患、又は全身性エリテマトーデスである。別の実施形態において、前記間質性肺疾患は、間質性肺線維症である。別の実施形態において、前記閉塞性肺疾患は、喘息、気管支炎、急性呼吸窮迫症候群又は慢性閉塞性肺疾患である。
【0066】
詳細な実施形態において、前記肺の疾患、障害、又は状態は、急性肺損傷である。より詳細な実施形態において、前記急性肺損傷は、物理的外傷、化学的損傷、例えば、化学的熱傷、煙の吸入、又は毒性物質への曝露のうちの1つ又は複数である。別の特定の実施形態において、前記肺の疾患、障害、又は状態は、腫瘍性又は腫瘍随伴性疾患によって引き起こされる損傷である。
【0067】
ある特定の実施形態において、疾患、障害又は状態は、肺線維性疾患、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、COVID-19、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、喘息、肺のウイルス性若しくは細菌性感染症、肺炎(化学的誘発性肺炎を含む)、又は嚢胞性線維症のうちの1つ又は複数である。詳細な実施形態において、肺線維性疾患は間質性肺疾患(びまん型実質性肺疾患)である。より詳細な実施形態において、間質性肺疾患は、珪肺症、石綿肺、ベリリウム症、全身性硬化症、多発性筋炎、又は皮膚筋炎である。他のより詳細な実施形態において、間質性肺疾患は、抗生物質、化学療法薬物、抗不整脈薬物、又は感染症によって引き起こされる。
【0068】
ある特定の実施形態において、肺の疾患、障害又は状態は、有害な、有毒な、不適切な又は望ましくない免疫応答、例えば炎症と関連するか又はそれによって引き起こされ、前記疾患、障害又は状態は、肺に影響を与えるか又は症状を発現させる。詳細な実施形態において、前記疾患、障害又は状態は、ループス、例えばエリテマトーデス、強皮症、又はリウマチ疾患(例えば、関節リウマチ)のうちの1つ又は複数である。
【0069】
別の特定の実施形態において、前記疾患、障害又は状態は、リウマチ肺疾患(RLD)、例えば、関節リウマチと関連するリウマチ肺疾患である。別の特定の実施形態において、投与は、RLDの1つ又は複数の症状において検出可能な改善をもたらすのに十分であるか、又は例えば個体の肺におけるRLDの1つ又は複数の症状の進行を検出できるほどに低下又は遅延させるのに十分である。より特定の実施形態において、RLDの前記症状はRLDに付随する状態である。より詳細な実施形態において、RLDに付随する前記状態は、感染症、例えば、肺のウイルス性感染症、又は肺線維症(例えば、メトトレキサート療法の結果としてのもの)である。
【0070】
別の詳細な実施形態において、疾患、障害又は状態は、エリテマトーデス、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)である。より詳細な実施形態において、エリテマトーデスの前記症状は、肺及び/又は胸膜の炎症、胸膜炎(pleurisy)、胸膜炎(pleuritis)、胸水、ループス肺臓炎、又は慢性びまん型間質性肺疾患のうちの1つ又は複数である。
【0071】
別の実施形態において、本明細書において記載される組合せは、ウイルス性疾患の予防又は治療及び/又はウイルス活性化の阻害に有用であり、前記ウイルスは、ヘルペスウイルス、例えば、サイトメガロウイルス(CMV);インフルエンザウイルス、例えば、H1N1、H3N2、H5N1又はH5N7ウイルス;パラミクソウイルス、例えば、麻疹;呼吸器合胞体ウイルス;コロナウイルス、例えば、SARS又はSARS-CoV-2(Covid-19);HIVウイルス;肝炎ウイルス;又はロタウイルスからなる群から選択される。
【0072】
本明細書において記載され有用な組成物、医薬及び治療法又は予防法は、以下で記載されるような組成物を用いてもよい。
【0073】
[化粧品用途]
本明細書において記載されるような胎盤抽出物及び胎盤抽出物を含む組成物は、皮膚の皮膚科学的老化、特に皺及び小じわ、しみ、赤みのある皮膚、黒ずみの兆候及び結果の、予防、減少、改善、及び/又は除去を含めた治療のための、及び/又は皮膚の美的外観の改善、コラーゲン産生の刺激、弾力性及び/又は皮膚トーン及び水和の増加のための方法において有用である。組合せは、皺、小じわ及び皮膚科学的老化の他の兆候(すなわち、内因性老化)又は皮膚の太陽光への曝露(すなわち、外因性老化)のための治療を提供する。
【0074】
本明細書において使用される場合、治療すること及び治療という用語は、特に、皮膚の皺、小じわ、ひだ、深いしわ、深いひだなどに関する老化及び日光への曝露の皮膚科学的影響を予防、減少、改善、改良、軽減、及び/又は除去することを含み包含することを理解されたい。本発明は、口の両側にある「マリオネット」ライン、並びに額のしわ、及び眉間の垂直なしわの上記で定義されたような治療をさらに包含する。本組成物及び方法はまた、限定するものではないが、顔、額、頸部、腕、手、脚、膝、足、胸、背中、鼠径部、臀部などを含む身体の多数の領域における皮膚の皮膚科学的状態を、上記で定義されたような治療に使用するのに好適である。
【0075】
皮膚の皮膚科学的老化、特に皺、小じわ、ひだ、深いしわ、及び老化した皮膚、しみ、赤みのある皮膚、黒ずみの他の兆候の治療、並びに/又は皮膚の美的外観の改善、コラーゲン産生の刺激、弾力性及び/若しくは皮膚トーン及び水和の増加において有用であることが新たに判定された材料を含む組成物、製剤及び方法を提供することは本発明の別の態様である。
【0076】
さらに、ある特定の筋肉、特に顔の筋肉の収縮又は過剰収縮は、皺、小じわなどの出現と関連することが理解されるため、本発明の胎盤抽出物の新たに判定された作用によるこのような筋肉の弛緩及び/又はこのような筋肉の収縮の制御若しくはモジュレーションは、皺、小じわ、ひだ、深いしわなどの治療、予防、減少、改善、又は消失において重要な機能を果たすことができる。
【0077】
本発明によれば、開示される組合せは、限定するものではないが、局所的に適用される日焼け止め、抗酸化物質、抗炎症薬、メイクアップを含む化粧品、抗老化製剤、例えば局所的な小じわ及び/又は皺用のクリーム、皮膚浸透性制汗剤、消臭剤などを含む組成物を含む。また、本発明によれば、さまざまな製品形態、例えば経皮剤、例えばパッチ剤など中のこのような組成物中に製剤化された成分、構成要素、又は化合物は、特に局所投与用に包含される。
【0078】
本発明の別の態様は、顕著な刺激を誘発することのない、好ましくは局所投与用の開示される組合せを含む組成物を提供する。さらに、このような組成物は、好ましくはこれらに限定されないが、ターゲッティング送達システム、例えば、リポソーム、マイクロスフェア、経皮パッチなどの使用によって送達され、活性物質は、適用領域の筋肉層、例えば、顔若しくは頸部又は皮膚の皮層により容易に到達し影響を与えることができるようになる。リポソーム製剤を含む開示される組合せを含む組成物は、筋肉弛緩又は脱収縮を必要とする部位に活性薬剤を沈着させるために、皮下、皮内に直接注射することによって、又はイオン導入によって、投与してもよい。
【0079】
その態様の別のものにおいて、本発明は、次のもの:皮膚科学的老化、特に自然な、光線性の又はホルモン的な老化のうちの少なくとも1つを予防すること、改善すること及び/又は減少することを含む治療することによって皮膚の美的外観を改良することができる、開示される組合せ及びその方法を提供する。改良は、好ましくは本明細書において記載されるような開示される組合せのうちの1つ又は複数を含む製品又は製剤を局所適用した後に生じる。
【0080】
[組成物]
本明細書において記載される組成物は、食品、飲料、食品添加物、飲料添加物、栄養補助食品、栄養製品、医療食品、栄養機能食品、医薬又は医薬品として製剤化してもよい。好ましくは、本発明の組成物は、粉末剤、液剤、食品バー、スプレッド、ソース、軟膏剤、錠剤又はカプセル剤として製剤化されている。適切な製剤は、その技術及びこの明細書の教示に関する当業者によって調製してもよい。
【0081】
本明細書において記載される組成物は、これらに限定されないが、経口、経鼻又は非経口(局所、皮下、筋肉内及び静脈内を含む)投与を含む任意の選択された経路によって対象に投与されるように製剤化してもよい。
【0082】
したがって、本発明において有用な医薬組成物は、意図される投与経路及び標準的な医薬の慣行に関して選択される適切な薬学的に許容される担体(賦形剤及び希釈剤を含む)を用いて製剤化してもよい。例えば、本発明の組成物は、粉末剤、液剤、錠剤若しくはカプセル剤として経口で、又は軟膏剤、クリーム剤若しくはローション剤として局所的に投与してもよい。好適な製剤は、乳化剤、抗酸化物質、香味剤又は着色剤を含む追加の薬剤を必要に応じて含んでいてもよく、即時放出、遅延放出、改変放出、持続放出、パルス放出又は制御放出に適応させてもよい。
【0083】
本明細書において有用な組成物は、単独で又は1つ又は複数の他の治療剤と組み合わせて使用してもよい。治療剤は、食品、飲料、食品添加物、飲料添加物、食品構成要素、飲料構成要素、栄養補助食品、栄養製品、医療食品、栄養機能食品、医薬又は医薬品であってもよい。
【0084】
別の治療剤と組み合わせて使用する場合、本発明の組成物及び他の治療剤の投与は、同時又は連続的であってもよい。同時投与としては、全ての構成要素を含む単一の剤形の投与、並びに個別の剤形として本発明の組成物と他の治療剤との実質的な同時投与がある。連続投与としては、好ましくは本発明の組成物及び他の治療剤が提供される期間において重複が存在するように、本発明の組成物と他の治療剤との異なるスケジュールに従った投与がある。
【0085】
本発明において組成物とともに使用が認められ得る好適な薬剤を同時投与してもよく、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗リウマチ薬、コルチコステロイド、シクロオキシゲナーゼ-2選択的阻害剤を含む非ステロイド系抗炎症薬物(NSAID)、筋弛緩剤を含み、任意の2つ以上のこれらの組合せ及び当技術分野において既知の他の好適な薬剤を含む。
【0086】
理解されるであろうように、投与される組成物の用量、投与期間、及び一般的な投与レジメンは、対象の症状の重症度、治療されることになる障害のタイプ、選択される投与様式、並びに対象の年齢、性別及び/又は一般的な健康のような可変的なものに応じて対象間で異なる場合がある。しかし、一般的な例として、発明者らは、本発明の組成物の体重1kgあたり約1mg~約1000mg又はそれを超える投与が、1日あたり行われること、好ましくは1日あたり1kgあたり約50~約500mgで行われることを検討している。1つの実施形態において、本発明者らは、本発明による医薬組成物の体重1kgあたり約0.05mg~約250mgの投与を検討している。投与は1日1回の用量を含む場合があるか、又は複数の個別に分割された用量が必要に応じて投与されることは理解されるべきである。
【0087】
本明細書において記載される組成物としては、皮膚の保湿強化、皮膚の剥離、皮膚の弾力性の強化、皮膚の治癒の促進、紅斑の阻止、皮膚の皺の改善、及び/又は皮膚の光老化の軽減の効果を有する化粧用組成物もある。
【0088】
別の例示的な実施形態において、化粧用組成物は、皮膚用ローション剤、皮膚軟化剤、皮膚トナー剤、収斂剤、ローション剤、乳ローション剤、保湿ローション剤、栄養ローション剤、マッサージ用クリーム剤、栄養クリーム剤、保湿クリーム剤、ハンドクリーム剤、エッセンス剤、パック剤、マスクパック剤、マスクシート剤、剥離剤、石鹸、シャンプー剤、洗浄用フォーム剤、洗浄用ローション剤、洗浄用クリーム剤、ボディ用ローション剤、ボディ用洗浄剤、エマルション剤、プレスパウダー、ルースパウダー、及びアイシャドウからなる群から選択される任意の1つの製剤に調製される。
【0089】
1つの例示的な実施形態において、胎盤抽出物の量は、化粧用組成物の総重量に対して約0.05~約1重量%の範囲である。好ましくは、胎盤抽出物の量は、約0.05~約0.5重量%、約0.05~約0.4重量%、約0.05~約0.35重量%、約0.1~約0.5重量%、約0.1~約0.4重量%、約0.135~約0.35重量%、又は約0.15~約0.2重量%の範囲である。1つの実施形態において、組成物は、皮膚に適用するためのもの、例えばフェイスマスクであり、0.13重量%の胎盤抽出物を含む。1つの実施形態において、組成物は、抗老化用途のためのクリーム剤、ゲル剤又はローション剤であり、0.135%~0.35重量%の胎盤抽出物を含む。1つの実施形態において、組成物は美白のためのクリーム剤、ゲル剤又はローション剤であり、0.15~0.2重量%の胎盤抽出物を含む。
【0090】
本開示の化粧用組成物は胎盤抽出物に加えて他の添加物、例えば、賦形剤、担体などをさらに含んでいてもよく、一般的な皮膚化粧品に添加される一般的な成分を化粧用組成物に必要量で適用し、そこで混合してもよい。
【0091】
特に、本開示の化粧用組成物は、経皮浸透促進剤をさらに含んでいてもよい。「経皮浸透促進剤」という用語は、本明細書において使用される場合、所望の構成要素が皮膚の血管細胞に高い吸収速度で浸透することを可能にする組成物を指す。経皮浸透促進剤の非限定的な例としては、レシチン化粧品に使用されるような他のリン脂質構成要素、リポソームの構成要素などがあり得る。
【0092】
さらに、油構成要素として主に使用してもよい油は、植物油、鉱油、シリコーン油、及び合成油から選択される少なくとも1つであってもよい。さらに詳細には、鉱油、シクロメチコーン、スクアラン、オクチルドデシルミリステート、オリーブ油、ヨーロッパブドウ種子油、マカダミアナッツ油、グリセリルオクタノエート、ヒマシ油、エチルヘキシルイソノナノエート、ジメチコーン、シクロペンタシロキサン、ヒマワリ種子油などを使用してもよい。
【0093】
さらに、乳化能力を強化するために、約0.1wt%~約5wt%の界面活性剤、高級アルコールなどを添加してもよい。界面活性剤は、一般的な界面活性剤、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、リン脂質などであってもよく、例えば、ソルビタンセスキノレート、ポリソルベート60、グリセリルステアレート、親油性グリセリルステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタンステアレート、ジアセチルホスフェート、ソルビタンステアレート/スクロースココエート、グリセリルステアレート/ポリエチレングリコール-100ステアレート、セテアレス-6オリベート、アラキジルアルコール/ベヘニルアルコール/アラキジルグルコシド、ポリプロピレングリコール-26-ブテス-26/ポリエチレングリコール-40水素化ヒマシ油などであってもよい。高級アルコールは、C12~C20アルコール、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコールなどであってもよく、これらの高級アルコールは単独で使用しても、それらのうちの少なくとも2つを組み合わせて使用してもよい。
【0094】
水相構成要素の粘度又は硬度を調整するために、カルボマー、キサンタンガム、ベントナイト、マグネシウムアルミニウムシリケート、セルロースガム、デキストリンパルミテートなどから選択される、約0.001wt%~約5wt%の少なくとも1つの増粘剤をさらに添加してもよい。
【0095】
さらに、本開示による化粧用組成物は、必要に応じて、構成要素、例えば、医薬成分、例えば、高級脂肪酸、ビタミンなど;UV遮蔽剤;抗酸化物質(ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、エリソルビン酸、酢酸トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエンなど);保存料(メチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン、フェノキシエタノール、イミダゾリジニル尿素、クロルフェネチンなど);着色料、pH調整剤(トリエタノールアミン、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、フマル酸、フマル酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸一水素ナトリウムなど);保湿剤(グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジグリセリン、ベタイン、グリセレス-26、メチルグルセス-20など);滑沢剤などをさらに含んでいてもよい。
【0096】
さらに、本開示の化粧用組成物は、皮膚にとって必須の栄養素を供給するためのアジュバント、例えば、天然香料若しくは化粧品香料又は薬用ハーブを含むアジュバントをさらに含んでいてもよいが、これらの例に限定されることなくいずれのアジュバントを含んでいてもよい。
【0097】
本明細書において記載される組成物としては、皮膚の保湿強化、皮膚の剥離、皮膚の弾力性の促進、紅斑の阻止、皮膚の皺の改善、及び/又は皮膚の光老化の軽減の効果を有する健康機能食品組成物もある。
【0098】
例示的な実施形態では、健康機能食品組成物は、錠剤、顆粒剤、粉末剤、ソフトゲル剤、ペースト、ゼリー、プリン、カプセル剤、溶液剤(liquid solution)(飲料など)、及び丸剤からなる群から選択される任意の1つの製剤に調製される。
【0099】
1つの例示的な実施形態において、胎盤抽出物の量は、飲料の形態で健康機能食品組成物に存在する場合、約50~約500mgの範囲である。好ましくは、胎盤抽出物の量は、約50~約350mg、約55~約350mg、約60~約300mg、約65~約250mg、約65~約200mg、約65~約180mg、約65~約160mg、又は約65~約155mgの範囲である。1つの実施形態において、健康機能食品組成物はショット剤の形態であり、約10~約100mg、約10~約80mg、約20~約70mg、又は約25~約50mgの胎盤抽出物を含む。
【0100】
別の例示的な実施形態において、化粧用組成物又は健康機能食品組成物は、皮膚の皺を改善する成分をさらに含んでいてもよい。
【0101】
別の例示的な実施形態において、皮膚の皺を改善する成分としては、ビタミンC、レチノイン酸、トランスフォーミング成長因子(TGF)、動物胎盤由来タンパク質、ベツリン酸、及びクロレラ抽出物からなる群から選択される1つ又は複数がある。
【0102】
本発明のさまざまな態様を、以下の例を参照することによって非限定的に説明することになる。
【実施例】
【0103】
[実施例1]
シカ胎盤の免疫モジュレーション効果の評価
材料及び方法
1.胎盤抽出物(DPE)の生成
フリーズドライしたシカ胎盤粉末をさまざまな溶媒中に溶解して、基本材料の主要部分を可溶化し、生理学的試験に準拠する最終被検抽出物を生成した。抽出物(DPE)のタンパク質濃度を280nmにおける吸光度によって判定した。タンパク質の完全性をSDS-PAGE/クマシーブリリアントブルー染色によってチェックした。
【0104】
2.細胞毒性の判定
細胞毒性をISO 10993-5、2009の要求に従って判定した。試験性能は以下に記載することになる。
【0105】
3.急性全身性経口毒性の判定
急性経口毒性の判定を、OECD 423によるGLPのもと、公認の動物試験施設によって行った。
【0106】
4.免疫モジュレーション効果の判定
ヒト免疫細胞(PBMC:末梢血単核細胞)は、規定の時間(16時間、37℃)にわたって、対照としてさまざまな濃度の追加の免疫学的刺激に曝された。この時間後、上清から分離し、細胞及びサイトカインの発現パターンをマルチプレキシングプラットフォーム(Mesoscale Discoveries U-Plex)で分析した。
【0107】
実験の設定:
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
結果
胎盤抽出物の生成:
フリーズドライしたシカ胎盤粉末をさまざまな溶媒中に溶解して基本材料の主要部分を可溶化し、生理学的試験に準拠する最終被検抽出物が生成することを確実にした。抽出物のタンパク質濃度を280nmにおける吸光度によって判定した。タンパク質の完全性をSDS-PAGE/クマシーブリリアントブルー染色によってチェックした(
図1)。
【0114】
【0115】
結論
タンパク質抽出物の生成に関しては、37℃で24時間抽出後、最初に適用された材料の最大約1/3で可溶性タンパク質分画が得られたことを観察することができた。この文脈において、蒸留水とPBSと細胞培養培地(RPMI 1640 w/oフェノールレッド)との間に関連性のある違いは認められず、以下の生理学的試験に関しては細胞培養培地のまま行うという選択肢が得られた。タンパク質の完全性に関しては、類似のバンドパターンをさまざまな抽出物の範囲内で観察することができ、これは界面活性剤を含んでいない抽出物でも例外ではなかった。見かけの分子量150kDaを超えて移動する高分子量バンドは、サイトケラチンに典型的なものである。これらの結果に関しては、以下の設定を、細胞培養培地(生理学的試験より前にFBS(10% f.c.)及びゲンタマイシン(50μg/mL)が添加されたRPMI 1640 w/oフェノールレッド)中で行った。
【0116】
細胞毒性の判定
細胞毒性をISO 10993-5、2009の要求に従って判定した。この特別な文脈において、被検抽出物の1/2希釈~1/1000希釈のさまざまな希釈の範囲に、被検細胞株L929に対する細胞毒性の潜在力の評価を行った。読み出し値は、培養物の目視検査と組み合わせた、生体染料XTT(ISO 10993-5.Annex D)の変換によって生成された。
【0117】
対照:
陰性対照(NC):完全培養培地(ccm)中の被検細胞
陽性対照(PC):完全培養培地及び1%SDS中の被検細胞
溶媒対照(SC):抽出媒体w/o被検物質
【0118】
【0119】
【0120】
光学的評価(等級付け):0:最適な形状の細胞、1:良好な形状の細胞、いくつかの剥離細胞が認められる場合がある、2~3:部分的~決定的に剥離され、アポトーシスの兆候を示している細胞、4:培養物が完全にダメージを受け、生存細胞は認められない
【0121】
結論:
in vitroでの細胞毒性の判定に関しては、希釈率が1:10でタンパク質濃度が3.49mg/mLを下回った際に細胞毒性作用は観察されなかった。
【0122】
急性経口毒性の判定
急性経口毒性の判定を上述のように行った。
【0123】
【0124】
免疫モジュレーション効果の判定
免疫モジュレーション効果の判定に関しては、ヒトPBMCを、示された抽出物及び刺激(16時間、37℃、5%CO2)で又は同じ時間にわたって(1.23mg/mL)でプレインキュベートしてから3時間後に直接処理した。免疫モジュレーション効果の判定に関しては3種類の異なる濃度のものを選択した。出発抽出物(61.6mg/mL)から始め、以下の希釈を試験した。
・1/5希釈:12.32mg/mL→細胞毒性範囲内の抽出物
・1/20希釈:3.08mg/mL→細胞毒性の境界をわずかに下回る抽出物
・1/50希釈:1.23mg/mL→非細胞毒性の範囲内の抽出物。この希釈は、既知の免疫学的活性刺激(エンドトキシン、ザイモサン、熱不活性化黄色ブドウ球菌)を加える前のPBMCの前処理のためにも使用した。
【0125】
処理後、個々の試験培養物からの上清を単離し、マルチプレキシングプラットフォーム(Mesoscale U-Plex)で分析した。次のパラメーター/サイトカインを分析した:IL-1ベータ、IL-6、IL-10、TNF-アルファ。
【0126】
免疫モジュレーション刺激:エンドトキシン(0.1/0.05/0.01EU/mL f.c.);ザイモサン(5/1/0.2mg/mL f.c.);熱不活性化黄色ブドウ球菌(1×108/1×107細胞f.c.)
【0127】
全てのパラメーターを少なくとも2つの個々の設定において分析した。シグナル強度の平均値を以下のグラフ及び表に示す。
【0128】
【0129】
結論:
IL-1β
ヒトPBMCを刺激した際のIL-1ベータの誘導に関しては、細胞毒性を誘発する濃度(12.33mg/mL)のDPEによって、陽性対照であるHKSAの範囲内でPBMCからIL-1ベータの誘導/放出がもたらされ、刺激物質のザイモサン及びエンドトキシンよりもさらに高いことを観察することができた。細胞毒性境界を下回るDPE濃度(1:20:3.08mg/mL;1:50:1.23mg/mL)に関しては、IL-1ベータの誘導が強力に減少したことを観察することができる(
図2)。
【0130】
IL-6
ヒトPBMCを刺激した際のIL-6の誘導に関しては、細胞毒性を誘発する濃度(12.33mg/mL)のDPEによって、陽性対照であるエンドトキシンの範囲内でPBMCからIL-6の誘導/放出がもたらされたが、ザイモサン(0.2μg/mL)及びHKSA(10
8細胞)を用いた刺激よりも明らかに低いことを観察することができた。細胞毒性の境界を下回るDPE濃度(1:20:3.08mg/mL;1:50:1.23mg/mL)に関しては、IL-6の誘導が明らかに減少したことを観察することができる(
図3)。
【0131】
サイトカイン誘導の干渉
刺激した際の炎症性サイトカインの誘導に対するDPEの潜在的な干渉を判定するために、ヒトPBMCを、細胞毒性の境界線を明らかに下回る濃度(最初の抽出物の1/50希釈:1.23mg/mL)のDPEで3時間前処理した。その後、確立されたPBMC刺激物質であるエンドトキシン、ザイモサン及び加熱殺菌された黄色ブドウ球菌(HKSA)を培養物に添加し、さらに16時間前処理した。最後のステップで、上清を除去し、Mesoscale U-Plexプラットフォームで分析した。
【0132】
【0133】
結論:
インターロイキン1ベータ(IL-1β)は、炎症促進性サイトカインと考えられ、炎症性応答の重要なメディエーターである。
【0134】
示された刺激を加える前の、ヒトPBMCに対する1.23mg/mLの濃度のDPE処理の干渉に関しては、エンドトキシンによるIL-1ベータ発現は、23.7%に減少し、HSKAによるものは37.2%に減少し、ザイモサンによる誘導は49.5%減少したことを観察することができる(
図4)。
【0135】
【0136】
インターロイキン6(IL-6)は、炎症促進性サイトカインとして作用するインターロイキンであり、IL-6は、予後不良を伴う重度のCOVID-19感染症に関する炎症性マーカーとして使用することができるといういくつかのエビデンスが存在する。
【0137】
示された刺激を加える前の、ヒトPBMCに対する1.23mg/mLの濃度のDPE処理の干渉に関しては、ザイモサンによるIL-6発現はDPE依存性抑制(-24.9%)であることを観察することができる。
【0138】
【0139】
結論:
インターロイキン10(IL-10)は、免疫系の調節において多くの機能を有する抗炎症サイトカインと考えられている。
【0140】
示された刺激を加える前の、ヒトPBMCに対する1.23mg/mLの濃度のDPE処理の干渉に関しては、HKSAによるIL-10発現はDPEによって誘発された(19.3%)ことを観察することができる。
【0141】
【0142】
ヒトPBMCを、記載されているようにDPEで前処理した。その後、確立された刺激を次の濃度:ザイモサン2(1μg/mL)、HKSA1(1×108)、エンドトキシン1(0.05EU/mL)で与えられた。上清を採取し、Mesoscale U-PLEXプラットフォームで分析した。ここで示されるデータは、Mesoscaleプラットフォームでの1/10希釈に類似している。
【0143】
結論:
一般的に、DPE処理自体は、TNF-アルファの発現を誘導しなかった。刺激因子であるエンドトキシンの反応性も背景にあり、ヒトPBMCのDPE前処理によって抑制も誘発もされなかった。
【0144】
示された刺激を加える前の、ヒトPBMCに対する1.23mg/mLの濃度のDPE処理の干渉に関しては、HKSAによるTNF-アルファ発現は、エンドトキシンによってわずかに(9%)抑制され、DPEによって(11.8%)抑制されたことを観察することができる。ザイモサンによるIL-10発現はDPEでの前処理によって明らかに抑制された(60.3%)。
【0145】
最終結論:
細胞毒性の判定:
DPEの細胞毒性作用が3.5mg/mLを超える高濃度で観察された。3.5mg/mLを下回る希釈では細胞毒性作用は示されていない。
【0146】
急性全身性経口毒性の判定:
急性全身性経口毒性は観察されなかった
【0147】
免疫モジュレーション効果の判定:
細胞毒性範囲(12.33mg/mL)における濃度でのヒトPBMCに対する直接作用に関しては、炎症性サイトカインIL-1ベータ及びIL-6の誘導が観察された。3.08mg/mLを下回る濃度ではこれらの作用は低下した。DPEの免疫モジュレーション効果に関しては、強力な活性化因子、例えば、エンドトキシン、ザイモサン及び加熱殺菌された黄色ブドウ球菌を用いて刺激する前に、非細胞毒性濃度(1.23mg/mL)のDPEでヒトPBMCを前処理することによって、DPEが、IL-1ベータ、IL-6、及びTNF-アルファのザイモサン依存的誘導を減少させることを観察することができた。IL-1ベータの発現に対する一般的な効果を観察することができた。DPEはまた、加熱殺菌された黄色ブドウ球菌に対する応答において抗炎症サイトカインIL-10の発現を誘導することを示した。
【0148】
上記で検討されたように、SARS-CoV-2によって引き起こされるCOVID-19は、ウイルスのロードよりはむしろ免疫機能不全によって特徴付けられ、これが、炎症促進性サイトカインの異常な産生につながっている。特に、COVID-19は、極度に活発な免疫系及びサイトカインの無制御な放出を介し、肺組織においてサイトカインストームを誘発する場合がある。炎症促進性サイトカイン、例えば、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-1β(IL-1β)、及び腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)は、呼吸器上皮の機能障害による急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を呈するCOVID患者の肺損傷において非常に重要な役割を果たしている。
【0149】
DPEがIL-6、IL-1β及びTNF-αそれぞれの誘導を抑制し、並びに抗炎症サイトカインIL-10の発現を誘導することができるという発見は、COVID-19と関連する炎症性応答を抑制するための潜在的な治療法としてのDPEの可能性を示している。
【0150】
[実施例2]
[方法]
DPE生成
試験生成物:DPE(シカ胎盤粉末、ロット番号NPR00/65#2/2R008)。4℃で冷蔵保存された。
【0151】
シカ胎盤粉末(100mg/mL)を、添加物を含まない細胞培養培地(KGM2、Promocell)中に溶解し、37±1℃で24±2時間インキュベートした。抽出物(DPE)を遠心分離し(2分、14000rpm、室温)、ろ過した(0.4μm)。抽出物のタンパク質濃度を280nmにおける吸光度測定によって判定した。
【0152】
用量研究結果
DPEの作業濃度を、細胞生存率に対するその作用に基づいて評価した。ニュートラルレッド取り込みアッセイを行った。
【0153】
以下の実験に関しては、この生存率試験の結果に従って、抽出物を1つの濃度(非毒性)又は3つの濃度(非毒性/境界線/毒性)で生成した。
【0154】
リンパ球刺激
in vitro試験系として、BEAS-2B不死化ヒト気管支上皮細胞株を使用した。BEAS-2B細胞株を、炎症プロセスに基づくさまざまな疾患、例えば、喘息、感染、ARDS又はCOVID-19に関するin-vitroモデルとして使用した。
【0155】
BEAS-2B細胞に、3つの異なる濃度のDPEを24時間添加するか又は添加せずに放置した(対照)。DPEの最終濃度は:3.6mg/mL;1.8mg/mL;0.9mg/mLであった。
【0156】
Tリンパ球を、Pan T細胞単離キット(Miltenyi Biotec)を使用して新たに採取したヒト血液試料から単離し、T細胞transAct(Miltenyi Biotec)を使用して活性化した。
【0157】
その後、炎症プロセスのトリガーとして、活性化T-リンパ球を事前に添加された細胞に1時間にわたって添加した。さらに24時間後、上清試料を採取してサイトカイン分析を行った。
【0158】
細胞を採取し、総細胞タンパク質を参照値として判定した。
【0159】
サイトカイン分析
上清中のヒトインターロイキン10(IL-10)濃度を、ELISA技術(製造業者:RnD Systems D1000B;ロット/有効期限:P32207118.10.2022)によって判定した。
【0160】
[結果]
抽出物の調製
タンパク質含有量を、NanoQuant Plate及びInfitite 200Proプレートリーダー(Tecan)を使用して、280nmの分光光度法によって判定した。
【0161】
シカ胎盤粉末抽出物中のタンパク質含有量:25.33mg/mL
【0162】
用量研究結果
DPEの作業濃度を細胞生存率に対するその作用に基づいて評価した。
図5は、用量研究の結果を示している。
【0163】
生存率アッセイの結果に基づいて、表15において示すDPEの濃度を使用してさらに調査した:
【0164】
【0165】
活性化リンパ球を用いて刺激した後のインターロイキン10
BEAS-2B細胞におけるDPEのIL-10放出に対する効果の評価に関しては、細胞に、3つの異なる濃度のシカ胎盤抽出物(C1:3.6mg/mL;C2:1.8mg/mL;C3:0.9mg/mL)を24時間にわたってあらかじめ添加するか又は添加せずに放置した(対照)。その後、炎症プロセスに関するトリガーとして、細胞を、新たに単離され活性化されたリンパ球とともに共培養するか又は非活性化リンパ球とともに共培養した。24時間後、上清試料を採取してサイトカイン分析を行った。活性化リンパ球を、in vitro試験系における炎症プロセスに関するトリガーとしてCOVID-19に関する代表として選択した。
【0166】
細胞を採取し、総細胞タンパク質を参照値として判定した。結果を
図6に示す。
【0167】
IL-10は、非活性化リンパ球を含むBEAS-2B培養物の上清において検出することができなかった。活性化リンパ球によってストレスが誘発された際、IL-10は全ての群において検出可能であった。
【0168】
IL-10の放出は、対照と比較して1.0mg/mLDPEによって強化された。
【0169】
上記の方法は、限定するものと決して考えられるべきではなく、好適な変形形態又は代替のものは当業者であれば明らかであろう。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明は、炎症状態の治療又は予防において有用性を有する。本発明の記載される組成物及び方法は、上記で検討された状態のうちの1つ又は複数を治療又は予防するために用いてもよい。
【0171】
当業者であれば、上記の説明は例示のみを目的として提供されており、本発明はそれに限定されるものではないことは理解するであろう。
【国際調査報告】