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特表2024-544109少なくとも2つのデバイスを備えるシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】少なくとも2つのデバイスを備えるシステム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/368 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
A61N1/368
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515616
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2022084522
(87)【国際公開番号】W WO2023110516
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/289,784
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】22150271.9
(32)【優先日】2022-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512158181
【氏名又は名称】バイオトロニック エスエー アンド カンパニー カーゲー
【氏名又は名称原語表記】BIOTRONIK SE & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Woermannkehre 1 12359 Berlin Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミューシグ、ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ストッツ、ラリー
(72)【発明者】
【氏名】ミドゲット、マデリーヌ アン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ウィッティントン、アール.ホリス
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053KK02
(57)【要約】
本発明は、患者30の心臓20の中に移植するための第1の心臓内デバイス100と、少なくとも1つの第2の移植可能なデバイス200と、を備えるシステム10を対象とし、好適には患者の心房の中に移植するための第2のデバイスが、電子部品を減らすように、小型化されるように、及びデバイスの寿命を延ばすように、設計され得る。第1の心臓内デバイス100は、第1の信号生成装置ユニット124を制御するための第1の処理ユニット120と、第1の治療信号のための所定の第1の信号パラメータを有する第1のデータ・メモリ122と、少なくとも1つの身体値及び少なくとも1つの第2の身体値を確定するための第1の測定ユニット126と、を備え、第2のデバイス200は、第2の信号生成装置ユニットを制御するための第2の処理ユニットと、第2の治療信号のための所定の第2の信号パラメータを有する第2のデータ・メモリと、少なくとも1つの第3の身体値を確定するための第2の測定ユニットと、を備える。本発明はさらに、このようなシステムの動作の方法を説明する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者(30)の心臓(20)の中に移植するための第1の心臓内デバイス(100)と、少なくとも1つの第2の移植可能なデバイス(200)とを備えるシステム(10)であって、
前記第1の心臓内デバイス(100)が、第1の信号生成装置ユニット(124)を制御するための第1の処理ユニット(120)、第1の治療信号のための所定の第1の信号パラメータを有する第1のデータ・メモリ(122)、及び少なくとも1つの第1の身体値及び少なくとも1つの第2の身体値を確定するための第1の測定ユニット(126)を備え、
例えば心臓内デバイスである前記第2のデバイス(200)が、第2の信号生成装置ユニットを制御するための第2の処理ユニット、第2の治療信号のための所定の第2の信号パラメータを有する第2のデータ・メモリ、及び少なくとも1つの第3の身体値を確定するための第2の測定ユニットを備え、
前記第1の信号生成装置ユニット(124)が、少なくとも1つの第1の信号パラメータ及び情報伝達パラメータを有する第1の電気及び/又は電磁治療信号を前記患者の心臓(20)に送るように適合され、前記第1の治療信号の前記少なくとも1つの第1の信号パラメータが、前記少なくとも1つの確定された第1の身体値に基づいて前記第1のデータ・メモリ(122)から得られ、前記情報伝達パラメータが、前記確定された第2の身体値に基づいて前記第1の処理ユニット(120)によって確定され、
前記第2の信号生成装置が、第2の電気及び/又は電磁治療信号を例えば前記患者の心臓(20)に送るように適合され、前記第2の治療信号の少なくとも1つの第2の信号パラメータが、前記少なくとも1つの確定された第3の身体値に基づいて第2のデータ・メモリから得られ、さらには、前記第1の心臓内デバイス(100)により直近に提供された前記第1の電気及び/又は電磁治療信号の前記確定された情報伝達パラメータに基づく、システム(10)。
【請求項2】
前記第1の治療信号が電気心室ペーシング信号であり、前記第1の心臓内デバイス(100)の前記少なくとも1つの第1の信号パラメータが、前記心室ペーシング信号の開始時間位置、その振幅、及び/又は心室ペーシング・レートであり、並びに/或いは前記第2の治療信号が電気心房ペーシング信号であり、前記第2のデバイス(200)の前記第2の信号パラメータが、心房ペーシング・レート、前記ペーシング信号の振幅、及び前記心房ペーシング信号の開始時間位置である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記情報伝達パラメータが、AV遅延値の短縮又は延長などのように、所定の第1の電気及び/又は電磁治療信号区間の短縮又は延長の時間量、並びに/或いは所定の第1の電気及び/又は電磁治療信号のレートである、請求項1から2までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の身体値が内因性の心房活動及び/又は内因性の心室活動を含み、並びに/或いは前記第3の身体値が内因性の心室活動及び/又は内因性の心房活動を含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記第2の身体値が、前記第1の測定ユニット(126)の加速度計センサー及び/又はインピーダンス・センサーによって確定される信号である、請求項1から4までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第2のデバイス(200)が、前記第2の測定ユニットが直近に確定された前記情報伝達パラメータの確認を受信する場合にのみ、前記患者の心臓(20)に以前に適用された前記第2の電気及び/又は電磁治療信号の変化を可能にする、請求項1から5までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
患者(30)の心臓(20)の中に移植された後の第1の心臓内デバイス(100)、及び少なくとも1つの第2の移植可能なデバイス(200)を備えるシステム(100)の動作の方法であって、
前記第1の心臓内デバイス(100)が、第1の信号生成装置ユニット(124)を制御するための第1の処理ユニット(120)、第1の治療信号のための所定の第1の信号パラメータを有する第1のデータ・メモリ(122)、並びに少なくとも1つの第1の身体値及び少なくとも1つの第2の身体値を確定するための第1の測定ユニット(126)を備え、
例えば心臓内デバイスである前記第2のデバイス(200)が、第2の信号生成装置ユニットを制御するための第2の処理ユニット、第2の治療信号のための所定の第2の信号パラメータを有する第2のデータ・メモリ、及び少なくとも1つの第3の身体値を確定するための第2の測定ユニットを備え、
前記方法が、
前記第1の心臓内デバイス(100)の前記第1の測定ユニット(126)により少なくとも1つの第1の身体値を確定するステップと、
前記第1の心臓内デバイス(100)の前記第1の測定ユニット(126)により少なくとも1つの第2の身体値を確定するステップと、
前記確定された少なくとも1つの第2の身体値に基づいて前記第1の処理ユニット(120)により情報伝達パラメータを確定するステップと、
前記第1の信号生成装置ユニット(124)により、少なくとも1つの第1の信号パラメータ及び前記情報伝達パラメータを用いて第1の電気及び/又は電磁治療信号を前記患者の心臓(20)に送るステップであって、前記第1の治療信号の前記少なくとも1つの第1の信号パラメータが、前記少なくとも1つの確定された第1の身体値に基づいて前記第1のデータ・メモリ(122)から得られる、ステップと、
前記第2のデバイス(200)により、前記第1の心臓内デバイス(100)によって提供される前記第1の電気及び/又は電磁治療信号の前記情報伝達パラメータを確定するステップと、
前記第2のデバイス(200)の前記測定ユニットにより少なくとも1つの第3の身体値を確定するステップと、
前記第2の信号生成装置により、第2の電気及び/又は電磁治療信号を例えば前記患者の心臓(20)に送るステップであって、前記第2の治療信号の少なくとも1つの第2の信号パラメータが、前記少なくとも1つの確定された第3の身体値に基づいて第2のデータ・メモリから得られ、さらには、前記第1の心臓内デバイス(100)により直近に提供された前記第1の電気及び/又は電磁治療信号の確定された前記情報伝達パラメータに基づく、ステップと
を含む、動作の方法。
【請求項8】
前記第1の治療信号が電気心室ペーシング信号であり、前記第1の心臓内デバイス(100)の前記少なくとも1つの第1の信号パラメータが、前記心室ペーシング信号の開始時間位置、その振幅、及び/又は心室ペーシング・レートであり、並びに/或いは前記第2の治療信号が電気心房ペーシング信号であり、前記第2のデバイス(200)の前記第2の信号パラメータが、心房ペーシング・レート、前記ペーシング信号の振幅、及び前記心房ペーシング信号の開始時間位置である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記情報伝達パラメータが、AV遅延値の短縮又は延長などのように、所定の第1の電気及び/又は電磁治療信号区間の短縮又は延長の時間量、並びに/或いは所定の第1の電気及び/又は電磁治療信号のレートである、請求項7から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の身体値が内因性の心房活動及び/又は内因性の心室活動を含み、並びに/或いは前記第3の身体値が内因性の心室活動を含む、請求項7から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の身体値が、前記第1の測定ユニット(126)の加速度計センサー及び/又はインピーダンス・センサーによって確定される信号である、請求項7から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2のデバイス(200)が、前記第2の測定ユニットが直近に確定された前記情報伝達パラメータの確認を受信する場合にのみ、前記患者の心臓(20)に以前に適用された前記第2の電気及び/又は電磁治療信号の変化を可能にする、請求項7から11までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
少なくとも2つのデバイスを備えるシステム及びこのようなシステムの動作の方法
本発明は、概して、患者の心臓の中に移植するための第1の心臓内デバイスと、例えば心臓内デバイスである少なくとも1つの第2の移植可能なデバイスと、を備えるシステム、及び、このようなシステムの動作の方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
例えば移植可能な心臓内ペースメーカー(移植可能なリードレス・ペースメーカー(ILP:implantable leadless pacemaker)としても知られる)などの、能動的な心臓内デバイスは、患者の心室又は心房のいずれかである心臓の心臓室(chamber)の中に完全に移植されるよく知られている小型医療デバイスである。これらは心臓ペーシングの将来像であるとみなされる。心臓内ペースメーカーは、例えば、患者の生理的要求を満たすことを目的として、過度に遅く拍動する心臓を有する徐脈を患う患者のために使用される。心臓内デバイスは、生理学的に適切である心拍数を発生させることを目的としてパルスの形態である電気的刺激を心臓に適用することができ、並びに/或いは、より通常な心拍リズムに戻すことを目的として、高速ペーシングの形態であるか又は電気的除細動若しくは徐細動のためのショックの形態である電気的刺激を心臓に適用することができる。能動的な心臓内デバイスは、例えば、抗頻脈ペーシング(ATP:antitachycardia pacing)を提供することができ、すなわち、頻脈を止めるために頻脈レートより高い刺激レートを用いて心臓をペーシングすることができる。心臓内デバイスの代替の又は追加の機能は、心臓又はその周囲の組織に他の電気信号又は電磁信号を提供すること、並びに、心臓及び/又はその周囲の組織の電気信号又は電磁信号或いは他の生理学的パラメータを感知することを含む。デバイスのサイズに大きい制約があることから、これらのデバイスのバッテリー容量は小さい。
【0003】
しかし、患者が別の心臓治療を必要とする種々の心不整脈を患うような状況も存在する。このような事例では、少なくとも2つの医療デバイス及び/又は医療ユニットを備える移植可能なデバイスのシステムが移植され得る。
【0004】
特許文献1が、少なくとも1つの心房ペーシング・デバイス及び少なくとも1つの心室ペーシング・デバイスを備えるデュアル・チャンバのリードレス・ペーシング・システム(dual-chamber,leadless pacing system)を開示する。このシステムではペーシング・レートを調整するために、心房ペーシング・デバイスから心室ペーシング・デバイスまで又は心室ペーシング・デバイスから心房ペーシング・デバイスまで信号が送信され、ここでは、受信した信号に基づいてそれぞれのペーシング・レートが調整される。この場合、適切なハードウェア(例えば、アンテナ)、ファームウェア、ソフトウェア、又はこれらの任意の組み合わせを含む心房ペーシング・デバイス又は心室ペーシング・デバイスの別個の通信ユニットは、それぞれの他のペーシング・デバイスと通信しながらエネルギーを消費することになる。
【0005】
前述のとおり、新しい技術には多数の課題が伴う。心臓内デバイスのサイズの制約より、エネルギー消費及び電子構成要素の使用のための要求条件は劇的に厳しくなっている。心室ILPで基本的なVVIRの機能性を実装するような利用可能である解決策が存在し、ここでは、レート応答の機能性が加速度計に基づく。これは、患者が心房性細動にある事例において心室ペーシング・レートを調整するのを可能にする。VVI(R)は、より一般的に使用されるペーシング形態のうちの1つである。VVI(R)は心室デマンド・ペーシングである。心室がペーシングされ、感知され、パルス生成装置が、感知した心室事象に応答してペーシング出力を阻害する。この形態のペーシングは心室性徐脈を防止することから、主として、心房性細動及び低速心室応答を患う患者に適する。しかし、パルス生成装置は心室のみでペーシング及び感知を行うことから、AV同期の損失が存在する可能性があり(つまり、追随する心室電気的活動を伴う心房電気的活動の生理学的状態であり、その間のインターバルが心房から心室へのインパルス伝導のために必要である)、それにより可能性としてペースメーカー症候群を引き起こし得る。
【0006】
心臓の心房の中に移植されることを意図される心臓内デバイスは特別な設計検討を必要とする。デバイスを配置するための利用可能なボリュームが心室の場合より小さく、また、心房組織は心室と比較して有意に細い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0067490号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、エネルギー消費、組織特性、及び利用可能なスペースのための要求条件により良好に対処するための移植可能な心臓内デバイスが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題が、請求項1の特徴を備えるシステム及び請求項7の特徴を含む動作の方法を用いて解決される。
【0010】
具体的には、本発明のシステムは、患者の心臓の中に移植するための第1の心臓内デバイスと、例えば心臓内デバイスである少なくとも1つの第2の移植可能なデバイスと、を備える。したがって、本システムはデュアル・チャンバ・システムとなり得、ここでは、第1の心臓内デバイス及び少なくとも1つの第2の心臓内デバイスは、各々、単一のチャンバ・デバイスを形成することができる。別法として、第1の心臓内デバイス及び少なくとも1つの第2の心臓内デバイスは、各々、デュアル・チャンバ・デバイスを形成することができる。例えば、第1の心臓内デバイスは患者の心臓の心室に関する治療を実現することができ、心臓の心室壁の中に移植され得、第2の心臓内デバイスは、例えば、患者の心臓の心房に関する治療を実現することができ、心臓の心房壁の中に移植され得る。別法として、少なくとも1つの第2のデバイスは、例えば、身体の中に完全に位置するか、又は、身体の中に部分的に位置して且つ第1の心臓内デバイスを携帯する患者の身体の外に位置するデバイスである、別の移植可能なデバイスとなり得る。第1の心臓内デバイスは、第1の信号生成装置ユニットを制御するための第1の処理ユニットと、少なくとも1つの第1の身体値(bodily value)及び第2の身体値を確定するための第1の測定ユニットと、第1の治療信号のための所定の第1の信号パラメータを有する第1のデータ・メモリと、を備える。第1の身体値及び第2の身体値は同じ物理測定量又は化学測定量となり得るか、或いは異なる物理測定量又は化学測定量となり得る。第2の移植可能なデバイスは、第2の信号生成装置ユニットを制御するための第2の処理ユニットと、第2の治療信号のための第2の所定の信号パラメータを有する第2のデータ・メモリと、を備える。第2のデバイスは、少なくとも1つの第3の身体値を確定するための第2の測定ユニットをさらに備えることができる。第1の処理ユニット、第1の信号生成装置ユニット、第1の測定ユニット、及び第1のデータ・メモリは、すべて、電気接続され、第1の心臓内デバイスのハウジングの中に格納される。第2の処理ユニット、第2の信号生成装置ユニット、第2の測定ユニット、及び第2のデータ・メモリは、すべて、電気接続され、第2のデバイスのハウジングの中に格納される。第1の処理ユニット及び/又は第2の処理ユニットは、信号処理(例えば、スケーリング、フィルタリング、整流)を支援するためのハードウェアを備えることができる。
【0011】
本発明によると、第1の信号生成装置ユニットは、少なくとも1つの第1の信号パラメータ及び情報伝達パラメータを用いて第1の電気及び/又は電磁(electric and/or electromagnetic)治療信号を患者の心臓に送るように適合され、ここでは、第1の治療信号の少なくとも1つの第1の信号パラメータが、少なくとも1つの確定された第1の身体値に基づいて第1のデータ・メモリから得られ、ここでは、情報伝達パラメータは、確定された第2の身体値に基づいて第1の処理ユニットによって確定される。第1の治療信号は第1の信号生成装置によって提供され、患者の健康状態を改善することを目的する治療のための、例えばペーシング信号である、患者の心臓組織に適用される時間依存変化する電界及び/又は電磁場を含む。電界及び/又は電磁場は、例えば、第1の心臓内デバイスから突出して心臓のそれぞれの心臓室の組織の中に固定された電極によって適用され得る。電極は第1の信号生成装置ユニットに電気接続される。第1の治療信号は、例えば、その開始時間位置、信号のその振幅及び/又は周波数(レート)、さらには信号形態(signal morphology)などの、その第1の信号パラメータによって特徴付けられる。第1の信号パラメータは第1のデータ・メモリから得られ、ここでは、選定される第1の信号パラメータが第1のデータ・メモリに保存される所定の信号パラメータである。第1の信号パラメータは、可能性のある測定可能な第1の身体値に関連する例えば所定の信号パラメータを含むデータ行列から、第1の処理ユニットによって選定される。第1の測定ユニットによって確定された少なくとも1つの第1の身体値に従って、適切な少なくとも1つの第1の信号パラメータがデータ行列から選定される。したがって、第1の信号パラメータは、直近で測定された第1の身体値(すなわち、心拍数などの患者の身体のバイタル・サイン)に基づいて所定の信号パラメータを含むデータ行列から選定される。本発明によると、治療信号は、確定された第2の身体値に基づいて第1の処理ユニットによって確定される情報伝達パラメータをさらに現実化する。情報伝達パラメータは、第1の測定ユニットによって確定された第2に身体値に基づいて、第1の処理ユニットにより、所定の情報伝達パラメータを含む第1のデータ・メモリのそれぞれのデータ行列から例えば計算されるか又は得られるなどして、確定される。例えば、第2の身体値は、第1の測定ユニットの加速度計及び/又はインピーダンス・センサーによって確定される活性値となり得、それにより患者の活動を評価する。
【0012】
第2のデバイスは、第1の治療信号を用いて提供される情報伝達値を確定することができ、一部の情報を、情報伝達パラメータの確定された値に関連付ける。例えば、第2のデバイスは、最も直近に(すなわち、直前に)測定された治療信号又は第1の心臓内デバイスのこのような治療信号の確定された第1のパラメータに対して、第1のデータ・メモリに含まれる所定の治療信号及び/又は治療信号の所定の第1のパラメータを比較する。本発明によると、第2の信号生成装置は、第2の電気及び/又は電磁治療信号を例えば患者の心臓に送るように適合され、ここでは、第2の治療信号の少なくとも1つの第2の信号パラメータが、少なくとも1つの確定された第3の身体値に基づいて第2のデータ・メモリから得られ、さらには、第1の心臓内デバイスにより直近に提供された第1の電気及び/又は電磁治療信号の確定された情報伝達パラメータに基づく。第2の電気及び/又は電磁治療信号は、例えば、患者の健康状態を改善することを目的とする治療のための、例えばペーシング信号である、患者の心臓組織に適用される時間依存変化する電界及び/又は電磁場を含むことができる。電界及び/又は電磁場は、例えば、心臓内デバイスである第2のデバイスから突出して心臓のそれぞれの心臓室の組織の中に固定された電極によって適用され得る。電極は第2の信号生成装置ユニットに電気接続される。第2の治療信号は、例えば、その開始時間位置、信号のその振幅及び/又は周波数(レート)、さらには信号形態などの、その第2の信号パラメータによって特徴付けられる。第2の信号パラメータは第2のデータ・メモリから得られ、ここでは、選定される第2の信号パラメータが第2のデータ・メモリに保存される所定の信号パラメータである。第2の信号パラメータは、可能性のある測定可能な第3の身体値に関連する例えば所定の信号パラメータを含むデータ行列から、第2の処理ユニットによって選定される。第2の測定ユニットによって確定された少なくとも1つの第3の身体値に従って、適切な少なくとも1つの第2の信号パラメータがデータ行列から選定される。したがって、第2の信号パラメータは、直近で測定された第3の身体値(すなわち、心拍数などの患者の身体のバイタル・サイン)に基づいて第2の治療信号のための所定の信号パラメータを含むデータ行列から選定される。少なくとも1つの第2の信号パラメータは、さらに、第2の治療信号を患者に適用する前に、確定された情報伝達パラメータに従って適合される。例えば、第2の処理ユニットは、第2のデータ・メモリから得られた少なくとも1つの信号パラメータを使用して、最も直近に(つまり、第1の治療信号を提供することの直前に)提供された第1の治療信号及びこの信号からの直近で確定された情報伝達パラメータに従って少なくとも1つの第2の信号パラメータの少なくとも1つのパラメータを増大させか、低下させるか、又は維持する。
【0013】
一実施例では、第1及び第2の測定ユニットは、例えば、心拍数、PR間隔、QT間隔、ST間隔、P波持続時間、及びT波持続時間を含めた、患者の心内心電図(IEGM:intracardiac electrocardiogram)信号を測定するように適合される。IEGM信号を用いて、第1及び第2の測定ユニットがさらに、それぞれの他の心臓内デバイスからペーシング信号(例えば、その開始時間位置及びその持続時間、さらにはその周波数)を感知することができる。加えて、第1及び第2の測定ユニットは、心臓組織特性を得ることを目的としてインピーダンスを確定するように適合され得る。第1及び第2の測定ユニットはさらに、心室の複数回の収縮を示す複数の信号を感知することができ、これらの複数の信号から心室収縮レートを確定することができる。感知される信号は、例えば、遠視野R波及び/又は心音を含むことができる。この手法での少なくとも2つのデバイスの間の通信は、単純に心臓の中の異なるデバイスからの生じる電気的活動を受動的に感知することによって可能となり得る。例えば、心室で感知及びペーシングを行う一方のデバイス並びに心房で感知及びペーシングを行う第2のデバイスを用いるデュアル・チャンバ・リードレス・ペーサー治療法は、互いに対しての同期を維持するのに、電気的に離間される心臓室からの遠視野活動を各デバイスが感知することに依存することができる。第1の測定ユニットは、後で示されるような加速度計センサー及び/又はインピーダンス・センサーをさらに備えることができる。
【0014】
一実施例では、第1の治療信号は電気心室ペーシング信号であり、ここでは、第1の心臓内デバイスの少なくとも1つの第1の信号パラメータが心室ペーシング信号の開始時間位置及び/又はその振幅であり、並びに/或いは、第2の治療信号は電気心房ペーシング信号であり、ここでは、第2のデバイスの信号パラメータは、心房ペーシング・レート、ペーシング信号の振幅、ペーシング信号の持続時間、及び/又は心房ペーシング信号の開始時間位置である。
【0015】
一実施例では、情報伝達パラメータは、例えばAV遅延値を短縮するか又は延長するなどといったように、所定の第1の電気及び/又は電磁治療信号区間の短縮又は延長の時間量、並びに/或いは、所定の第1の電気及び/又は電磁治療信号のレートである。さらに、VA間隔は変調され得る。この短縮時間量又は延長時間量は-50msから50msの間となり得、好適には-15msから15msの間のとなり得、最も好適には-8msから8msの間となり得る。負の値は短縮時間量とみなされ、正の値は延長時間量とみなされる。別の実施例では、短縮時間量又は延長時間量は-8msから-3msの間又は3msから8msの間である。上で言及したすべての間隔にはそれぞれの境界時が含まれる。AV遅延は、心房ペーシング信号の開始時間位置と心室ペーシング信号の開始時間位置との間の時間量である。この実施例では、例えば心室ILPなどの第1の心臓内デバイスが、第1の測定ユニットを使用して第2のデバイスによって生成された心房ペーシング信号の開始時間位置を感知することができる。加えて、例えば心房ILPなどの第2のデバイスが、第2の測定ユニットを使用して第1の心臓内デバイスによって生成された心室ペーシング信号の開始時間位置を感知することができる。第1のデバイス及び第2のデバイスは個別にプログラムされ、第1のデータ・メモリ及び第2のデータ・メモリに保存される、特定の心拍数のための予期されるAV遅延及び/又はペーシング・レートを含む。両方のデバイスが患者のその時点の心拍数を「知っている」事例では、両方のデバイスが生じることになる心室ペースのタイミングの「期待値」を有することができ、つまり両方のデバイスは「通常の」AV遅延及び/又はペーシング・レートを知っている。心室ILPによる「通常の」AV遅延の短縮又は延長並びに/或いはペーシング・レートの変化は、情報を心房デバイスに伝えるのに使用され得る。例えば、心室デバイスが予期されるよりも短縮されたAV遅延でペーシングする場合、つまり、心室ILPのペーシング信号が特定の時間量でより早く又はより遅く開始する場合、心房ILPは、そのデータ・メモリに保存される所定のAV遅延に対して、測定されたAV遅延を比較することにより、AV遅延の短縮及び延長を検出する。AV遅延の短縮が確定される場合、第2の処理ユニットが、心房ペーシング・レートが増大することになる情報を得る。対照的に、心房ペーシング・レートが加速度計及び/又は心室ILPのインピーダンスによって示されるよりも高い場合、心室ILPが心室ペースを伝達するのを遅らせ、これがペーシング・レートを低下させるための心房ILPのための指標となる。加えて又は別法として、一実施例では、心室ペーシング・レートの変化が検出される場合、それに応じて、心房ペーシングが、ペーシングの互いに対しての同期を維持することになるように適合される。このようにすることで、患者が連続する心房性頻脈を有する事例において、2つのリードレス・ペースメーカーが非同期で仕事することになり、加速度計及び/又はインピーダンスに基づくセンサーによって示されるペーシング・レートが心室ILPで利用可能となり、それにより標準的なVVIRペーシングが可能となる。
【0016】
本発明のシステムは、情報を第2のデバイスに伝えるために第1の心臓内デバイスの治療信号を使用し、第2のデバイスは、受信した情報に従ってその治療信号を適応させる。例えば、本発明のシステムは、心室の変化するAV遅延及び/又は変化するペーシング・レートに基づいて、心房ペーシング・レートを増大させるかたまは低下させることができる。別個の通信チャンネルを使用する能動通信(例えば、NF通信又はブルー・トゥース通信)は、第1の心臓内デバイスと第2のデバイスとの間の通信のためには必要ない。したがって、この通信と共に別個の通信チャンネルが使用されないことで、このような通信に関してのエネルギー消費が存在しない。第1の治療信号に関連して使用されるエネルギーは有意に変化しない。加えて、第1の治療信号の開始時間位置の小さいシフトのみが情報を含むことから、特別な変調ユニットは必要ない。情報伝達パラメータは、一般的な近視野電気信号と比較してその値が小さいことから、第1の治療信号の治療活動を変化させず、治療の有効性に影響しないが、第2の測定ユニットにより高い信頼性で測定可能である。
【0017】
一実施例では、情報伝達パラメータは、例えば第1の心臓内デバイス(例えば、心室デバイス)内での遠視野心房検出などの、遠視野信号のタイミングの可変性を考慮に入れる。例えば、心房デバイス及び心室デバイスは、心室デバイス内での遠視野感知のための信号処理・検出機構を原因として、わずかに異なる時間で心房事象を検出する可能性が高い。これは、第2のデバイス(例えば、心房心臓内デバイス)及び第1の心臓内デバイス(例えば、心室デバイス)によって測定されるAV遅延がわずかに異なる可能性があることを意味する。この違いは、ペーシング・レートを伝えることを目的として第2のデバイスによりAV遅延を増大させる又は低下させるための許容差を設定するときに考察され得る。
【0018】
一実施例では、第1の身体値は内因性の心房活動及び/又は内因性の心室活動を含み、並びに/或いは、第3の身体値は内因性の心室活動を含む。例えば、第1の測定ユニット及び第2の測定ユニットは患者の心臓のECG又はIEGMを検出し、例えば高分解能であって高ゲインであるIEGMを検出する。
【0019】
一実施例では、第1の身体値は、内因性の近視野心室電気的活動及び/又は内因性の遠視野心房電気的活動、並びに/或いは、第2のデバイスによって提供される心房ペーシングを含む。第3の身体値は、内因性の近視野心房電気的活動及び/又は内因性の遠視野心室電気的活動、並びに/或いは、第1の心臓内デバイスによって提供される心室ペーシングを含むことができる。
【0020】
別法として又は加えて、第1の身体値は、内因性の若しくはペーシングされた心房活動及び/又は内因性の若しくはペーシングされた心室電活動を含み、並びに/或いは、第3の身体値は、内因性の心室活動、内因性の心房活動、及び/又は内因性の若しくはペーシングされた心房活動を含む。
【0021】
一実施例では、第2の身体値は加速度計センサーによって確定される信号であり、ここでは、加速度計センサーは第1の測定ユニットに一体化される。加速度計センサーは、例えば、所望のペーシング・レート、姿勢(posture)、及び/又は心音データを確定するために活動を測定するように適合される。別法として又は加えて、第2の身体値は、身体組織で測定されるか、又は、例えば心臓の心室の血液の中などの体液の中で測定されるインピーダンス信号である。例えば、患者の血液のpH値(すなわち、酸性度又は塩基性度)によって生じるインピーダンスは、患者の活動に関する特性パラメータとなり得る。インピーダンス・センサーは第1の測定ユニットに一体化され得る。
【0022】
一実施例では、第2のデバイスは、第2の測定ユニットが最も直近に確定された情報伝達パラメータの確認又は任意の確認を受信する場合にのみ、患者の心臓に以前に適用された第2の電気及び/又は電磁治療信号の変化を可能にする。この確認は、連続して(すなわち、追加的に2回、又はさらには3回以上(例えば、連続して3回又は4回))情報伝達パラメータの少なくとも1回の第2の送信によって提供され、それにより1組の少なくとも2つの連続する第1の治療信号を形成し、これらの両方が同じ情報伝達パラメータ値を含む。第2の治療信号の変化のために必要である同じ情報伝達パラメータ値を含む連続する第1の治療信号の数は、各システムにおいて事前に定められる。これは、システムの安全性及び信頼性を向上させることから有利である。
【0023】
さらに、デバイスの通信が臨床医又は外界にとって可視であることが有利である。既存の表面ECGシステムは心拍リズム(AV遅延又はレートなど)を評価するのに及びひいてはいずれかの又は両方のデバイスからの信号伝達を解釈するのに使用され得る。これはトラブルシューティングを向上させることができるか、又は、例えばAV遅延の監視に基づいてレート応答をプログラムする手法などといったように、第1の心臓内デバイス及び少なくとも1つの第2のデバイスをプログラムする手法を解釈するのに使用され得る。
【0024】
さらに、上記の課題は、患者の心臓の中に移植された後の第1の心臓内デバイスと、例えば心臓内デバイスである少なくとも1つの第2の移植可能なデバイスと、を備えるシステムの動作の方法によって解決され、ここでは、第1の心臓内デバイスは、
第1の信号生成装置ユニットを制御するための第1の処理ユニットと、第1の治療信号のための所定の信号パラメータを有する第1のデータ・メモリと、少なくとも1つの第1の身体値及び少なくとも1つの第2の身体値を確定するための第1の測定ユニットと、を備え、
第2の心臓内デバイスは、第2の信号生成装置ユニットを制御するための第2の処理ユニットと、第2の治療信号のための所定の信号パラメータを含む第2のデータ・メモリと、少なくとも1つの第3の信号値を確定するための第2の測定ユニットと、を備え、
ここでは、本方法は、以下のステップ:
第1の心臓内デバイスの第1の測定ユニットにより少なくとも1つの第1の身体値を確定するステップ、
第1の心臓内デバイスの第1の測定ユニットにより少なくとも1つの第2の身体値を確定するステップ、
確定された少なくとも1つの第2の身体値に基づいて第1の処理ユニットにより情報伝達パラメータを確定するステップ、
第1の信号生成装置ユニットにより、少なくとも1つの第1の信号パラメータ及び情報伝達パラメータを用いて第1の電気及び/又は電磁治療信号を患者の心臓に送るステップであって、第1の治療信号の少なくとも1つの第1の信号パラメータが、少なくとも1つの確定された第1の身体値に基づいて第1のデータ・メモリから得られる、第1の電気及び/又は電磁治療信号を送るステップ、
第2の心臓内デバイスにより、第1の心臓内デバイスによって提供される第1の電気及び/又は電磁治療信号の情報伝達パラメータを確定するステップ、
第2の心臓内デバイスの測定ユニットにより少なくとも1つの第3の身体値を確定するステップ、
第2の信号生成装置により、第2の電気及び/又は電磁治療信号を患者の心臓に送るステップであって、第2の治療信号の少なくとも1つの第2の信号パラメータが、少なくとも1つの確定された第3の身体値に基づいて第2のデータ・メモリから得られ、さらには、第1の心臓内デバイスにより直近に提供された第1の電気及び/又は電磁治療信号の確定された情報伝達パラメータに基づく、第2の電気及び/又は電磁治療信号を送るステップを含む。
【0025】
上記の方法は、上記のシステムに関連して説明した利点を有する。システムに関連して上で言及及び説明した実施例は、上に示される方法にも適用される。
【0026】
次に、添付の概略図面を参照しながら本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のシステムの第1の実施例を示す、患者の心臓の断面図である。
図2図1に示される実施例の第1の心臓内デバイスを示す機能ブロック図である。
図3】ペース・レート情報を心房デバイスへと中継するための、心室デバイスのAV遅延変調の実例を示すグラフである。
図4】第1の列ではECG信号であり、第2の列ではRA信号であり、第3の列では近視野RV信号である、心房信号を経時的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、患者30の心臓20の中に移植された例示のリードレス・ペーシング・システム10を示す。リードレス・ペーシング・システム10は、リードレス心室ペースメーカー・デバイス100と(以下では「心室デバイス100」)、リードレス心房ペースメーカー・デバイス200(以下では「心房デバイス200」)と、を含む。心室デバイス100は、心臓の右心室21の中に移植されるように、この心室をペーシングするように、内因性の心室脱分極を感知するように、及び検出した心室脱分極に応答して心室ペーシングを阻害するように、構成され得る。心房デバイス200は心臓20の右心房22の中に移植され得、心臓20の電気的活動を監視するように及び/又は心臓20に電気治療を提供するように構成され得る。心室デバイス100及び/又は心房デバイス200をプログラムするのに並びに心室デバイス100及び/又は心房デバイス200からデータを検索するのにプログラム装置(programmer)が使用され得る。
【0029】
図2は、心室21(図1)の中に移植されるように構成された例示の心室デバイス100の機能ブロック図を示す。心室デバイス100は、第1の処理ユニット120と、第1のデータ・メモリ122と、第1の信号生成装置ユニット124と、第1の測定ユニット126と、第1の通信ユニット128と、第1の電源132と、を含む。第1の電源132は、例えば再充電可能なバッテリー又は非充電式バッテリーなどの、バッテリーを含むことができる。心室デバイス100に含まれるユニットは、本開示の心室デバイス100に含まれ得る機能性を表す。移植のためにデュアル・チャンバのリードレス・ペースメーカー・システムの一部として提供され得て心臓20の少なくとも1つの心房及び少なくとも1つの心室の中で使用され得る心室ペースメーカー・デバイスにも同様の又は同じユニット及び機能性が含まれ得る。本開示のユニットは、本明細書のユニットに起因する機能を作ることができるアナログ回路及び/又はデジタル回路を実装する任意のディスクリート電子回路部品及び/又は集積電子回路部品を含むことができる。例えば、ユニットは、例えば、増幅回路、フィルター回路、及び/又は他の信号調整回路などの、アナログ回路を含むことができる。ユニットは、例えば、組み合わせ論理回路又は順序論理回路、メモリ・デバイスなどの、デジタル回路をさらに含むことができる。第1のデータ・メモリ122は、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリー・メモリ(ROM)、不揮発性RAM(NVRAM:non-volatile RAM)、電気的に消去可能でありプログラム可能であるROM(EEPROM:electrically-erasable programmable ROM)、フラッシュ・メモリ、又は任意の他のメモリ・デバイスなどの、任意の、揮発性媒体、不揮発性媒体、磁気媒体、又は電子媒体を含むことができる。さらに、第1のメモリ・ユニット122は、1つ又は複数の処理回路によって実行されるときに本明細書のユニットに起因する種々の機能をユニットに実施させる命令を含むことができる。本明細書のユニットに起因する機能は、1つ又は複数のプロセッサ、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はこれらの任意の組み合わせとして具現化され得る。ユニットのとしての別の特徴の記述は別の機能的態様を強調することを意図され、別個のハードウェア・コンポーネント又はソフトウェア・コンポーネントによりこれらのユニットが実現されなければならないことを必ずしも暗に示すわけではない。むしろ、1つ又は複数のユニットに関連付けられる機能性は別個のハードウェア・コンポーネント又はソフトウェア・コンポーネントによって実施され得るか、或いは、共通の又は別個のハードウェア・コンポーネント又はソフトウェア・コンポーネントに一体化され得る。第1の処理ユニット120は第1のデータ・メモリ122と通信することができる。第1のデータ・メモリ122は、処理ユニット120によって実行されるときに本明細書の処理ユニット120に起因する種々の機能を処理ユニット120に実施させるコンピュータ可読命令を含むことができる。例えば、メモリ122は、ペーシング命令、並びに、基準値心室ペーシング・レート、基準値心室ペーシング間隔、及び基準値AV遅延などの、第1の治療信号のための第1の信号パラメータを含むことができる。ペーシング命令及び第1の信号パラメータは、通信ユニット128を使用してプログラム装置によって更新され得る。
【0030】
第1の処理ユニット120は第1の信号生成装置ユニット124及び第1の測定ユニット126と通信することができる。第1の信号生成装置ユニット124及び第1の測定ユニット126は電極111、112に電気的に連結される。第1の測定ユニット126は、心臓20の電気的活動を監視することを目的として電極111、112からの信号を監視するように構成される。さらに、第1の測定ユニット126は、加速度計及び/又は圧力センサー並びに/或いはインピーダンス・センサーを含むことができる。第1の信号生成装置ユニット124は、電極111、112を介して電気的刺激を心室21に送るように構成される。
【0031】
第1の処理ユニット120は、電極111、112を介して電気的刺激を生成して心室21に送るように、第1の信号生成装置ユニット124を制御することができる。電気的刺激はペーシング・パルスを含むことができる。第1の処理ユニット120は、第1のデータ・メモリ122に保存され得る、ペーシング命令及びペーシング値を含む1つ又は複数の心室治療プログラムに従って電気的刺激治療を提供するように、第1の信号生成装置ユニット124を制御することができる。
【0032】
第1の測定ユニット126は、センサーから電気信号を取得する回路を含むことができる。第1の測定ユニット126によって取得される電気信号は、内因性の心室電気的活動及び/又は内因性の心室心臓電気的活動などの、内因性の心臓電気的活動を含むことができる。第1の測定ユニット126は、未加工デジタル・データを生成するために、取得した電気信号をフィルタリングして、増幅させ、デジタル化することができる。第1の処理ユニット120は、第1の測定ユニット126によって生成されたデジタル化されたデータを受信することができる。いくつかの実例では、第1の処理ユニット120は、デジタル・フィルタリングなどの種々のデジタル信号処理オペレーションを未加工のデータに対して実施することができる。
【0033】
処理ユニット120は、第1の測定ユニット126から受信されたデータに基づいて心臓事象を感知することができる。例えば、第1の処理ユニット120は、第1の測定ユニット126から受信されたデータに基づいて心室事象を確定することができる。いくつかの実例では、第1の処理ユニット120は、第1の測定ユニット126から受信されたデータに基づいて心室活動を確定することができる。例えば、第1の処理ユニット120は、第1の測定ユニット126から受信されたデータに基づいて、心室活動を示す遠視野R波(FFRW:far-field R-wave)を検出することができる。
【0034】
心室デバイス100は、ハウジングと、固定タインと、電極111、112と、を含むことができる。ハウジングは、いくつかの実例では、錠剤形状の円筒形形状因子(pill-shaped cylindrical form factor)を有することができる。固定タインは、心室デバイス100を心臓20に接続(例えば、固着する)するように構成される。固定タインは、ニチノールなどの形状記憶材料から製造され得る。いくつかの実例では、固定タインは、心臓20の心臓室のうちの1つの心臓室の中で、心室デバイス100を心臓20に接続することができる。例えば、図1に関連して本明細書で示されて説明されるように、固定タインは、右心室21の中で心室デバイス100を心臓20に固着するように構成され得る。心室デバイス100は右心室の中で心室デバイス100を心臓組織に固着するように構成された複数の固定タインを含むが、他の種類の固定機構を使用して、本開示によるリードレス・デバイスが患者の心臓20の他の心臓室の中の心臓組織に固定され得ることも企図される。
【0035】
心室デバイス100は、心臓20の電気的活動を感知するための及び/又は電気的刺激を心臓20に送るための1つ又は複数の電極111、112を含むことができる。心室デバイス100は2つの電極111、112を含むが、他の実例では2つの以上の電極が心室デバイスに含まれてもよい。電極111、112は、心房によって生成されたP波及び心室によって生成されたFFRWなどの、心臓20によって生成された種々の電気信号を検出することが可能となるように十分な距離で離間され得る。ハウジングは心室デバイス100の電子構成要素を収容する。電子構成要素は、上述の心室デバイス100に起因する機能を提供することができるアナログ回路及び/又はデジタル回路を実装する任意のディスクリート電子回路部品及び/又は集積電子回路部品を含むことができる。
【0036】
第1の通信ユニット128は、プログラム装置又は他の外部患者モニターなどの、他の電子デバイスとリードレス・デバイス100が通信するのを可能にすることができる。いくつかの実例では、ハウジング108は無線通信のためのアンテナを収容することができる。ハウジングは第1の電源132をさらに含むことができる。
【0037】
心房デバイス200の構造は上述の心室デバイス100の構造と同様となり得る。例えば、心房デバイス100は、心室デバイス100のハウジング、固定タイン、及び電極と同様である、ハウジング、固定タイン、及び電極を有することができる。加えて、心房デバイス200は、第1の処理ユニット120と同様である第2の処理ユニットと、第1のデータ・メモリ122と同様である第2のデータ・メモリと、第1の信号生成ユニット124と同様である第2の信号生成ユニットと、第1の測定ユニット126と同様である第2の測定ユニットと、を有することができるが、レート応答のために患者の活動レベルを確定するのに使用される加速度計及び/又はインピーダンス・センサー並びに/或いは任意の他のセンサーは心房デバイスでは必要ない。さらに、心房デバイス200は、プログラム装置又は他の外部患者モニターと通信するための、第1の通信ユニット128と同様である第2の通信モジュールを備えることができる。
【0038】
図3は、心房ペーシング・レートの変化をトリガーするのにAV遅延情報が如何にして使用され得るかの実例を示す。心房デバイス200は、少なくとも、内因性の心房活動、心室活動(遠視野から)を感知することができ、心房心臓組織をペーシングすることができる。心室デバイス100は、少なくとも、心室活動を感知することができ、心室組織をペーシングすることができ、心房活動の検出(遠視野から)に基づいて心室ペーシングをトリガーすることができ、心室デバイス100の第1の測定ユニット126の加速度計及び/又はインピーダンス・センサーによって提供される信号に基づいて所望の心房ペーシング・レートを提供することができる。両方のデバイス100、200は、第1の測定ユニット126によって確定された特定の心拍数のための予期されるAV遅延を含めて、個別にプログラムされる。両方のデバイス100及び200が患者30のその時点の心拍数を「知って」おり、生じることになる心室ペースのタイミングの「期待値」を有する。その理由は、これらの信号パラメータが第1及び第2のデータ・メモリに保存されるかである。したがって、心室デバイス100による所定の(予期される)AV遅延の延長又は短縮の形態である情報伝達パラメータは、第1の信号生成装置ユニット124により第1の治療信号が適用されるときに単純な情報を心房デバイスに伝えるのに使用される。これは、例えば心室デバイス100が予期されるよりも短縮されたAV遅延でペーシングする場合に、心房デバイス200の心房ペーシング・レートを増大させる必要があるという情報として利用される。対照的に、心房ペーシングが加速度計及び/又はインピーダンス・センサーによって示されるよりも高い場合、心室デバイス100が心室ペースを伝達するのを遅らせ、つまりAV遅延を延長し、これがそのペーシング・レートを低下させるための心房デバイス200の指標となる。図3の実例は、心室デバイス内の加速度計及び/又はインピーダンス・センサーがまず要求に合うように心房ペーシング・レートを低下させることの必要性を示すシナリオを描いている。加速度計により及び/又はインピーダンスにより確定されたレートの低下は、予期される値からのAV遅延の差の5msステップでの増大を引き起こし、それにより、加速度計によって及び/又はインピーダンスによって確定されるレートに対して心房ペーシング・レートが適合するときである予期される値にまでAV遅延が戻るようになるまで一定のレートでの心房ペーシング・レートの低下をトリガーする。一定時間の一定の心房ペーシング・レートの後、加速度計によって及び/又はインピーダンスによって確定されるレートが増大し、それにより、予期される値から5ms短縮された一定時間のAV遅延を引き起こし、それにより心房ペーシング・レートの増大をトリガーする。AV遅延が予期される値に戻ると、心房ペーシング・レートが安定化する。患者が一連の心房性頻脈を進行させる事例では、2つのデバイス100、200は非同期で仕事することになり、加速度計及び/又はインピーダンスに基づく第1の測定ユニット126によって示されるペーシング・レートが心室デバイス100で利用可能となり、それにより標準的なVVIRペーシングが可能となる。
【0039】
加えて、より高いペーシング・レートでの短縮されたAV遅延の通常のプログラミングに基づく、提案される解決策は本質的に安全である。所望の心房ペーシング・レートのさらなる増大のための情報を心房デバイス200に送信するためには、心室デバイス100は、ペーシングされるAV遅延をさらに短縮することが必要となる。心房ペーシング・レートの変化を伝えるのに使用される情報伝達パラメータ(すなわち、AV遅延の短縮又は延長の値)は所定の値の範囲内にある必要があると考えられる(例えば、3msから8msの間(延長)及び-8msから-3msの間(短縮)である時間量である予期されるAV遅延の変化が信号とみなされる。これらの予期される範囲内にないAV遅延の変化はノイズとみなされる)。一実施例では、情報伝達パラメータを使用する信号送信は、心房デバイス200のための入力を有効なものとするための特定のシーケンスで繰り返される必要があり、例えば連続して3回繰り返される必要がある。
【0040】
別の実施例では、この手法での複数のリードレス(心臓内)ペーシング・デバイスの間の通信は、単純に心臓の中のそれぞれの他のデバイスからの生じる電気的活動を受動的に感知することによって可能となり得る。心室で感知及びペーシングを行う心室デバイス100並びに心房で価値及びペーシングを行う心房デバイス200を用いるデュアル・チャンバ・リードレス・ペーサー治療法は、互いに対しての同期を維持するのに、電気的に離間される心臓室からの遠視野活動を各デバイスが感知することに依存する。VDD治療の場合は遠視野心房活動が心室デバイスによって感知され、予備的な臨床前データが、さらに心室活動からの遠視野電気信号が心房内に存在することを示す。心房で記録される例示の心室遠視野信号が図4に示される(第2の列及び矢印を参照されたい)。この実施例では、情報伝達パラメータは、例えば、ペーシング時間及び/又はペーシング・レートとなり得る。
【0041】
本発明の技術的利点は、2つの独立したデバイス100、200からなるリードレス・ペースメーカー・システム内での心房のレート応答によるペーシングを実現する能力である。心房デバイス200は、患者の治療を妥協することなく、より単純化されるように(より少ない電子構成要素)、より小型になるように、及びデバイスの寿命を延ばすように、設計され得る。さらに、加速度計及び/又はインピーダンス・センサーに基づくレート応答のようなデバイスの機能性の重複が、例えば心房デバイス200において、回避される。代わりに、心室デバイス100が心室ペーシング・レートを計算し、この情報を心房デバイス200に伝える。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】