(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】マルチレチクルフォトニック通信プラットフォーム上のマルチテナント分離
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20241121BHJP
H01L 27/15 20060101ALI20241121BHJP
G02F 1/313 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G02B6/42
H01L27/15 B
H01L27/15 C
G02F1/313
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522367
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 US2022046379
(87)【国際公開番号】W WO2023064337
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520447204
【氏名又は名称】ライトマター インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LIGHTMATTER,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ハリス、ニコラス シー.
(72)【発明者】
【氏名】ターナー、ロバート
【テーマコード(参考)】
2H137
2K102
【Fターム(参考)】
2H137AB01
2H137BA31
2H137BA48
2K102BA08
2K102BC04
2K102DA04
2K102DB04
2K102DC09
(57)【要約】
安全な方法で複数のユーザによる使用を可能にするフォトニック通信プラットフォームが開示されている。プラットフォームは、基板と、基板とモノリシックに集積された第1のフォトニック回路と、基板とモノリシックに集積された第2のフォトニック回路と、を備える。第1のフォトニック回路は、第1の複数のフォトニックモジュールでパターニングされ、第1の複数のフォトニックモジュールは共通のテンプレートフォトニックモジュールのコピーである。第2のフォトニック回路は、第2の複数のフォトニックモジュールでパターニングされ、第2の複数のフォトニックモジュールは共通のテンプレートフォトニックモジュールのコピーである。フォトニックリンクが、第1のフォトニック回路を第2のフォトニック回路に結合する。コントローラが、フォトニックリンクを光学的に遮断することによって、第1のフォトニック回路を第2のフォトニック回路から光学的に分離させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトニック通信プラットフォームであって、
基板と、
前記基板とモノリシックに集積された第1のフォトニック回路であって、第1の複数のフォトニックモジュールでパターニングされ、前記第1の複数のフォトニックモジュールが共通のテンプレートフォトニックモジュールのコピーである、第1のフォトニック回路と、
前記基板とモノリシックに集積された第2のフォトニック回路であって、第2の複数のフォトニックモジュールでパターニングされ、前記第2の複数のフォトニックモジュールが前記共通のテンプレートフォトニックモジュールのコピーである、第2のフォトニック回路と、
前記第1のフォトニック回路を前記第2のフォトニック回路に結合するフォトニックリンクと、
前記フォトニックリンクを光学的に遮断することによって、前記第1のフォトニック回路を前記第2のフォトニック回路から光学的に分離させるように構成されたコントローラと、を備える、フォトニック通信プラットフォーム。
【請求項2】
前記フォトニック通信プラットフォームは、前記フォトニックリンクに結合された出力部を有する光スイッチを更に備え、前記フォトニックリンクを光学的に遮断することは、前記光スイッチを制御して前記出力部から離れるように光をルーティングすることを含む、請求項1に記載のフォトニック通信プラットフォーム。
【請求項3】
前記光スイッチは、マッハツェンダー干渉計を備え、前記出力部は、前記マッハツェンダー干渉計の第1の出力アームを備え、前記光スイッチを制御して前記出力部から離れるように光をルーティングすることは、前記マッハツェンダー干渉計の第2の出力アームに向けて光をルーティングするように前記マッハツェンダー干渉計を制御することを含む、請求項2に記載のフォトニック通信プラットフォーム。
【請求項4】
前記コントローラは、
第1のユーザに前記第1のフォトニック回路へのアクセスを提供し、
第2のユーザに前記第2のフォトニック回路へのアクセスを提供するように、更に構成される、請求項1に記載のフォトニック通信プラットフォーム。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記第2のユーザに対して前記第1のフォトニック回路へのアクセスを拒否し、
前記第1のユーザに対して前記第2のフォトニック回路へのアクセスを拒否するように、更に構成される、請求項4に記載のフォトニック通信プラットフォーム。
【請求項6】
前記第1の複数のフォトニックモジュールのうちの第1のフォトニックモジュールと通信する第1のダイと、
前記第2の複数のフォトニックモジュールのうちの第1のフォトニックモジュールと通信する第2のダイと、を更に備える、請求項1に記載のフォトニック通信プラットフォーム。
【請求項7】
前記第1のダイは、前記第1の複数のフォトニックモジュールのうちの前記第1のフォトニックモジュールの上に積層され、前記第2のダイは、前記第2の複数のフォトニックモジュールのうちの前記第1のフォトニックモジュールの上に積層される、請求項6に記載のフォトニック通信プラットフォーム。
【請求項8】
前記第1のダイは、前記第2のダイから電子的に分離される、請求項6に記載のフォトニック通信プラットフォーム。
【請求項9】
前記第1のダイは第1のプロセッサを備え、前記第2のダイは第2のプロセッサを備える、請求項6に記載のフォトニック通信プラットフォーム。
【請求項10】
前記第1の複数のフォトニックモジュールのうちの第2のフォトニックモジュールと通信する第3のダイと、
前記第2の複数のフォトニックモジュールのうちの第2のフォトニックモジュールと通信する第4のダイと、を更に備える、請求項6に記載のフォトニック通信プラットフォーム。
【請求項11】
前記第1のフォトニック回路は、前記第1のダイを前記第3のダイと光通信した状態にし、
前記第2のフォトニック回路は、前記第2のダイを前記第4のダイと光通信した状態にする、請求項10に記載のフォトニック通信プラットフォーム。
【請求項12】
フォトニック通信プラットフォームを動作させるための方法であって、
基板を得ることを含み、
前記基板は、
前記基板とモノリシックに集積された第1のフォトニック回路であって、第1の複数のフォトニックモジュールでパターニングされ、前記第1の複数のフォトニックモジュールが共通のテンプレートフォトニックモジュールのコピーである、第1のフォトニック回路と、
前記基板とモノリシックに集積された第2のフォトニック回路であって、第2の複数のフォトニックモジュールでパターニングされ、前記第2の複数のフォトニックモジュールが前記共通のテンプレートフォトニックモジュールのコピーである、第2のフォトニック回路と、
前記第1のフォトニック回路を前記第2のフォトニック回路に結合するフォトニックリンクと、を備え、
前記方法は、前記フォトニックリンクを光学的に遮断することによって、前記第1のフォトニック回路を前記第2のフォトニック回路から光学的に分離することを更に含む、方法。
【請求項13】
前記基板は、前記フォトニックリンクに結合された出力部を有する光スイッチを更に備え、前記フォトニックリンクを光学的に遮断することは、前記光スイッチを制御して前記出力部から離れるように光をルーティングすることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記光スイッチは、マッハツェンダー干渉計を備え、前記出力部は、前記マッハツェンダー干渉計の第1の出力アームを備え、前記光スイッチを制御して前記出力部から離れるように光をルーティングすることは、前記マッハツェンダー干渉計の第2の出力アームに向けて光をルーティングするように前記マッハツェンダー干渉計を制御することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第1のユーザに前記第1のフォトニック回路へのアクセスを提供することと、
第2のユーザに前記第2のフォトニック回路へのアクセスを提供することと、を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のユーザに対して前記第1のフォトニック回路へのアクセスを拒否することと、
前記第1のユーザに対して前記第2のフォトニック回路へのアクセスを拒否することと、を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第1のダイと前記第1の複数のフォトニックモジュールのうちの第1のフォトニックモジュールとの間の電子通信を可能にするように前記第1のフォトニック回路を制御することと、
第2のダイと前記第2の複数のフォトニックモジュールのうちの第1のフォトニックモジュールとの間の電子通信を可能にするように前記第2のフォトニック回路を制御することと、を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のダイは、前記第1の複数のフォトニックモジュールのうちの前記第1のフォトニックモジュールの上に積層され、前記第2のダイは、前記第2の複数のフォトニックモジュールのうちの前記第1のフォトニックモジュールの上に積層される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のフォトニック回路を前記第2のフォトニック回路から光学的に分離することは、前記第1のダイを前記第2のダイから電子的に分離することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のダイは第1のプロセッサを備え、前記第2のダイは第2のプロセッサを備える、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
第3のダイと前記第1の複数のフォトニックモジュールのうちの第2のフォトニックモジュールとの間の電子通信を可能にするように前記第1のフォトニック回路を制御することと、
第4のダイと前記第2の複数のフォトニックモジュールのうちの第2のフォトニックモジュールとの間の電子通信を可能にするように前記第2のフォトニック回路を制御することと、を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のダイを前記第3のダイと光通信した状態にするように前記第1のフォトニック回路を制御することと、前記第2のダイを前記第4のダイと光通信した状態にするように前記第2のフォトニック回路を制御することと、を更に含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチレチクルフォトニック通信プラットフォーム上のマルチテナント分離に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータシステムは、データ及びマシンコードを格納するためのランダムアクセスメモリ(RAM)を含む。RAMは通常、揮発性メモリであり、電力を取り去ると格納された情報が失われるようになっている。最近の実装形態では、メモリは集積回路の形態をとっている。各集積回路は、複数のメモリセルを含む。格納されたデータ及びマシンコードへのアクセスを可能にするために、メモリはプロセッサと電気通信した状態で配置されている。通常、これらの電気通信は、メモリ及びプロセッサが配置される基板上に形成された金属トレースとして実装されている。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの実施形態は、フォトニック通信プラットフォームであって、基板と、基板とモノリシックに集積された第1のフォトニック回路であって、第1の複数のフォトニックモジュールでパターニングされ、第1の複数のフォトニックモジュールが共通のテンプレートフォトニックモジュールのコピーである、第1のフォトニック回路と、基板とモノリシックに集積された第2のフォトニック回路であって、第2の複数のフォトニックモジュールでパターニングされ、第2の複数のフォトニックモジュールが共通のテンプレートフォトニックモジュールのコピーである、第2のフォトニック回路と、第1のフォトニック回路を第2のフォトニック回路に結合するフォトニックリンクと、フォトニックリンクを光学的に遮断することによって、第1のフォトニック回路を第2のフォトニック回路から光学的に分離させるように構成されたコントローラと、を備える、フォトニック通信プラットフォームに関する。
【0004】
いくつかの実施形態では、フォトニック通信プラットフォームは、フォトニックリンクに結合された出力部を有する光スイッチを更に備え、フォトニックリンクを光学的に遮断することは、光スイッチを制御して出力部から離れるように光をルーティングすることを含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、光スイッチは、マッハツェンダー干渉計を備え、出力部は、マッハツェンダー干渉計の第1の出力アームを備え、光スイッチを制御して出力部から離れるように光をルーティングすることは、マッハツェンダー干渉計の第2の出力アームに向けて光をルーティングするようにマッハツェンダー干渉計を制御することを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、コントローラは、第1のユーザに第1のフォトニック回路へのアクセスを提供し、第2のユーザに第2のフォトニック回路へのアクセスを提供するように更に構成される。
【0007】
いくつかの実施形態では、コントローラは、第2のユーザに対して第1のフォトニック回路へのアクセスを拒否し、第1のユーザに対して第2のフォトニック回路へのアクセスを拒否するように更に構成される。
【0008】
いくつかの実施形態では、フォトニック通信プラットフォームは、第1の複数のフォトニックモジュールのうちの第1のフォトニックモジュールと通信する第1のダイと、第2の複数のフォトニックモジュールのうちの第1のフォトニックモジュールと通信する第2のダイとを更に備える。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1のダイは、第1の複数のフォトニックモジュールのうちの第1のフォトニックモジュールの上に積層され、第2のダイは、第2の複数のフォトニックモジュールのうちの第1のフォトニックモジュールの上に積層される。
【0010】
いくつかの実施形態において、第1のダイは、第2のダイから電子的に分離される。
いくつかの実施形態では、第1のダイは第1のプロセッサを備え、第2のダイは第2のプロセッサを備える。
【0011】
いくつかの実施形態では、フォトニック通信プラットフォームは、第1の複数のフォトニックモジュールのうちの第2のフォトニックモジュールと通信する第3のダイと、第2の複数のフォトニックモジュールのうちの第2のフォトニックモジュールと通信する第4のダイとを更に備える。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1のフォトニック回路は、第1のダイを第3のダイと光通信した状態にし、第2のフォトニック回路は、第2のダイを第4のダイと光通信した状態にする。
【0013】
いくつかの実施形態は、フォトニック通信プラットフォームを動作させるための方法であって、基板を得ることであって、基板とモノリシックに集積された第1のフォトニック回路であって、第1の複数のフォトニックモジュールでパターニングされ、第1の複数のフォトニックモジュールが共通のテンプレートフォトニックモジュールのコピーである、第1のフォトニック回路と、基板とモノリシックに集積された第2のフォトニック回路であって、第2の複数のフォトニックモジュールでパターニングされ、第2の複数のフォトニックモジュールが共通のテンプレートフォトニックモジュールのコピーである、第2のフォトニック回路と、第1のフォトニック回路を第2のフォトニック回路に結合するフォトニックリンクと、を備える基板を得ることと、フォトニックリンクを光学的に遮断することによって、第1のフォトニック回路を第2のフォトニック回路から光学的に分離することと、を含む方法に関する。
【0014】
いくつかの実施形態では、基板は、フォトニックリンクに結合された出力部を有する光スイッチを更に備え、フォトニックリンクを光学的に遮断することは、光スイッチを制御して出力部から離れるように光をルーティングすることを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、光スイッチは、マッハツェンダー干渉計を備え、出力部は、マッハツェンダー干渉計の第1の出力アームを備え、光スイッチを制御して出力部から離れるように光をルーティングすることは、マッハツェンダー干渉計の第2の出力アームに向けて光をルーティングするようにマッハツェンダー干渉計を制御することを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、方法は、第1のユーザに第1のフォトニック回路へのアクセスを提供することと、第2のユーザに第2のフォトニック回路へのアクセスを提供することとを更に含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、方法は、第2のユーザに対して第1のフォトニック回路へのアクセスを拒否することと、第1のユーザに対して第2のフォトニック回路へのアクセスを拒否することと、を更に含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、方法は、第1のダイと第1の複数のフォトニックモジュールのうちの第1のフォトニックモジュールとの間の電子通信を可能にするように第1のフォトニック回路を制御することと、第2のダイと第2の複数のフォトニックモジュールのうちの第1のフォトニックモジュールとの間の電子通信を可能にするように第2のフォトニック回路を制御することと、を更に含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1のダイは、第1の複数のフォトニックモジュールのうちの第1のフォトニックモジュールの上に積層され、第2のダイは、第2の複数のフォトニックモジュールのうちの第1のフォトニックモジュールの上に積層される。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1のフォトニック回路を第2のフォトニック回路から光学的に分離することは、第1のダイを第2のダイから電子的に分離することを含む。
いくつかの実施形態では、第1のダイは第1のプロセッサを備え、第2のダイは第2のプロセッサを備える。
【0021】
いくつかの実施形態では、方法は、第3のダイと第1の複数のフォトニックモジュールのうちの第2のフォトニックモジュールとの間の電子通信を可能にするように第1のフォトニック回路を制御することと、第4のダイと第2の複数のフォトニックモジュールのうちの第2のフォトニックモジュールとの間の電子通信を可能にするように第2のフォトニック回路を制御することと、を更に含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、方法は、第1のダイを第3のダイと光通信した状態にするように第1のフォトニック回路を制御することと、第2のダイを第4のダイと光通信した状態にするように第2のフォトニック回路を制御することと、を更に含む。
【0023】
本出願の様々な態様及び実施形態は、以下の図を参照して説明される。図面は必ずしも縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。複数の図に現れる項目は、それらが現れる図において同じ参照番号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】いくつかの実施形態による、フォトニック通信プラットフォームに基づくコンピューティングシステムを示す。
【
図2A】いくつかの実施形態による、半導体ウェハを示す。
【
図2B】いくつかの実施形態による、フォトマスクのセットを示す。
【
図2C】いくつかの実施形態による、光導波路を形成するためのフォトマスクの一例を示す。
【
図2D】いくつかの実施形態による、
図2Bのフォトマスクセットに従ってパターニングされた
図2Aのウェハを示す。
【
図2E】いくつかの実施形態による、
図2Dのパターニングされたウェハ上に形成されたフォトニック回路を識別するものである。
【
図3A】いくつかの実施形態による、
図2Eのパターニングされたウェハのフォトニックモジュールの一例を示す。
【
図3B】いくつかの実施形態による、
図3Aに示すタイプのフォトニックモジュールの一群を示す。
【
図4】いくつかの実施形態による、金属トレースの同じパターンを共有するフォトニックモジュールの一群を示す。
【
図5A】いくつかの実施形態による、複数のユーザによる使用をサポートするウェハの一部分の一例を示す。
【
図5B】いくつかの実施形態による、複数のユーザによる使用をサポートするウェハの一部分の別の例を示す。
【
図5C】いくつかの実施形態による、複数のユーザによる使用をサポートするウェハの一部分の更に別の例を示す。
【
図6】いくつかの実施形態による、フォトニックモジュールの隣接するクラスタ上に構築された2つのコンピューティングシステムを示す。
【
図7】いくつかの実施形態による、一対の隣接するフォトニックモジュールを更に詳細に示す。
【
図8】いくつかの実施形態による、フォトニックリンクに結合された光スイッチを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
I.概要
本発明者らは、特定のフォトニック回路はユーザ間でデータのセキュリティを保証するための手段を提供しないので、複数のユーザによる使用には適していないことを認識し、理解した。本発明者らは、ユーザのデータが他のユーザによってアクセス可能でないことを保証する方法で、複数のユーザによる操作をサポートするフォトニック通信プラットフォームを開発した。本発明者らによって開発され、本明細書で説明されるフォトニック通信プラットフォームは、いわゆる「フォトニックモジュール」(本明細書では「フォトニックタイル」又は単に「タイル」とも呼ばれる)に依存する。フォトニックモジュールは、構成可能な方式で他の隣接するフォトニックモジュールに光信号をフォトニックにルーティングし、それによって任意のアーキテクチャのネットワークを可能にする通信ファブリックを形成するための手段を含む。フォトニックモジュールは、フォトリソグラフィの、ステップアンドリピート製造プロセスを使用するテンプレートフォトニックモジュールのコピーとして定義され得る。
【0026】
本発明者らによって開発され、本明細書で説明されるフォトニック通信プラットフォームは、ウェハスケールのフォトニック集積回路を含む。一例において、ウェハは、フォトニックモジュールによって共にネットワーク化されたコンピュータのクラスタをサポートする。本発明者らは、コンピュータのクラスタ全体が、単一のユーザによる使用には大きすぎる場合があり、その結果、コンピューティングリソースの著しいダウンタイムが発生する可能性があることを理解した。本明細書で説明されるプラットフォームを活用することで、同じウェハは、複数の並行するユーザによる使用をサポートすることができる。例えば、クラスタの異なる部分を異なる顧客にライセンス供与することによって、クラスタの利用率を高めてもよい。
【0027】
しかしながら、本発明者らは、複数のユーザが同じプラットフォームを共有することを可能にすることで、ユーザが他のユーザに確保されたデータに意図せずに(又は意図的に)アクセスしようとすることがあるため、データセキュリティの課題が生じることを認識し理解した。いくつかの実施形態では、これは、フォトニックウェハの部分間にフォトニックファイアウォールを構成することによって対処することができる。これは、異なる状況下では、あるユーザに割り当てられたフォトニックモジュールを別のユーザに割り当てられたフォトニックモジュールに結合させる、フォトニックリンクを、遮断することを伴う。遮断されると、フォトニックリンクは、依然として異なるユーザに割り当てられたフォトニックモジュール同士を物理的に接続するが、ユーザに確保されたデータで符号化された光の通過を許可しないか、又は光の通過を全く許可しない。
【0028】
II.フォトニック通信プラットフォーム
図1は、一例による、3×3トポロジで配列された9つのフォトニックモジュールを有するフォトニック通信プラットフォームに基づくコンピューティングシステムの一例を示す。コンピューティングシステム10は、9つのフォトニックモジュール22でパターニングされたフォトニック回路20を含む。このフォトニック通信プラットフォームは、フォトニック回路20の中央に位置決めされた1つのプロセッサダイ(30)と、プロセッサダイを取り囲む8つのメモリノードとをサポートする。いくつかのメモリノードは、単一のメモリチップを含む(例えば、メモリダイ32を参照)。他のメモリノードは、複数の垂直に積層されたメモリダイを含む積層メモリを含む(例えば、積層メモリ34を参照)。ダイは、フォトニックモジュールを規定するウェハの上に積層される。ダイは、フォトニックモジュールと電子的に(例えば、シリコン貫通電極、銅ピラー、マイクロバンプ、ボールグリッドアレイ、又は他の電気相互接続を使用して)及び/又は光学的に(例えば、グレーティングカプラ、プリズム、レンズ、又は他の光カプラを使用して)通信することができる。
【0029】
以下で更に詳細に説明するように、フォトニックモジュールは、光導波路及び光分配ネットワークでパターニングされてもよい。フォトニックモジュールの光分配ネットワークは、その特定のノードのダイを選択的に、コンピューティングシステムの任意の他のダイと光通信した状態にすることができる。例えば、プロセッサダイ30の下に位置するフォトニックモジュールの光分配ネットワークは、プロセッサのニーズに応じて再構成されてもよい。ルーチンの開始時に、プロセッサは、第1のメモリノードに格納されたデータにアクセスすることが必要な場合がある。この読み出し動作は、プロセッサを第1のメモリノードと光通信した状態にするために、それぞれの光分配ネットワークを構成することを伴う。ルーチンの後半に、プロセッサは、第2のメモリノードにデータを書き込むことが必要な場合がある。この書き込み動作は、プロセッサを第2のメモリノードと光通信した状態にするために、光分配ネットワークを再構成することを伴う。
【0030】
フォトニックモジュールを大規模に製造するには、費用がかさむ可能性がある。本明細書で説明されるフォトニック通信プラットフォームは、製造コストを制限するように工学設計される。これらのプラットフォームは、複数のフォトニックモジュールを製造するために共通のフォトマスクセットの使用に依存する。この手法は、2つの方法でコストを削減する。第1に、複数の異なるフォトマスクセットを調達する際に発生する追加コストを低減する。第2に、標準的な半導体ファウンドリを使用してフォトニックモジュールを製造することが可能にし、標準的な半導体ファウンドリのいくつかは、ウェハ全体にわたって同じフォトマスクセット(又は少なくとも1つのフォトマスク)が使用されることを必要とする。少なくとも1つのフォトマスクを共有するフォトニックモジュールを設計することにより、標準的な低コストのステップアンドリピート製造プロセスを活用しながら、同じ半導体ウェハ上に多くのフォトニックモジュールを製造することが可能になる。
【0031】
III.フォトニックモジュール
本明細書で説明されるフォトニックモジュールは、例えば相補型金属酸化膜半導体(CMOS)微細加工技術を含む微細加工技術を使用して製造されてもよい。したがって、いくつかの実施形態は、シリコンフォトニクスベースの光通信プラットフォームに関する。いくつかの特定の微細加工技術は、ステップアンドリピート手法を含んでおり、それにより、ステッパ装置を使用してテンプレートレイアウト(例えば、レチクル)の複数のコピーで半導体ウェハをパターニングする。
図2A~
図2Eは、フォトニックモジュールを製造するための微細加工技術を示す。
図3A~
図3Fは、これらの微細加工技術を使用してパターニングされたフォトニックモジュールの例を示す。
【0032】
まず
図2Aを参照すると、この図は半導体ウェハ100を示す。ウェハ100は、任意の材料から作製され得る。例えば、ウェハ100は、シリコンから作製されてもよい(又はそうでなければ、シリコンを含んでもよい)。一例では、ウェハ100は、絶縁膜上シリコン(silicon-on-insulator、SOI)ウェハである。別の例では、ウェハ100は、バルクシリコンウェハである。ウェハ100は、任意のサイズを有してもよい。例えば、ウェハ100の直径は、他の可能な値の中でもとりわけ、150mm、300nm、又は450mmであってもよい。しかしながら、全てのウェハが円形の形状を有する必要はない。
【0033】
図2Bは、フォトリソグラフィ技術を使用してウェハ100をパターニングするために使用され得るフォトマスクのセットを示す。フォトマスクセット200は、3つのフォトマスク(201、202、及び203)を含むが、他のセットは、より多い又はより少ないフォトマスクを含んでもよい。各フォトマスクは、不透明な領域及び透明な領域の特定のパターンを有する。フォトマスクが露光されると、不透明な領域は光を遮断し、それによって光がウェハを照らすことを防ぎ、透明な領域は光の通過を可能にする。その結果、フォトマスクのパターンがウェハに転写される。
【0034】
各フォトマスクは、フォトニックモジュールの特定の層を規定してもよい。1つのフォトマスクを使用して、光導波路を規定してもよい。ウェハがエッチングプロセスを経ると、露光された領域のみ(又は露光されていない領域のみ)がエッチング除去され、他の領域はエッチングされないままである。このフォトマスクは、ウェハがこのフォトマスクを通して露光されるときに、光導波路のネットワークを形成するようにパターニングされてもよい。
図2Cは、ウェハ100上に導波路を形成するために使用され得るフォトマスクの一部分を示す。フォトマスク201の線は、不透明な領域を表す。フォトマスク201の背景は、透明である。フォトマスク201を露光してフォトマスクの像がウェハ100上に投影されるようにすることにより、不透明な領域の形状に導波路をパターニングすることが可能になる。この特定の例では、フォトマスクの線のパターンが導波路のグリッドになる。
【0035】
いくつかのフォトニックモジュールは、異なるレベルの光導波路の使用を伴う。いくつかのそのような実施形態では、フォトマスクセット200は、導波路レベルごとに専用フォトマスクを含んでもよい。別のフォトマスクを使用して、nドープされた領域を規定してもよい。ウェハがイオン注入又はドーパント拡散プロセスを経るとき、露光された領域のみ(又は、露光されていない領域のみ)がドーピングを受け、他の領域はドープされないままである。別のフォトマスクを使用して、同様のプロセスを使用してpドープされた領域を規定してもよい。いくつかのフォトニックモジュールは、異なるドーピング濃度の使用を伴う。いくつかのそのような実施形態では、フォトマスクセット200は、ドーピング濃度ごとに専用フォトマスクを含んでもよい。他の実施形態では、フォトマスクセット200は、ゲルマニウムなどのシリコン以外の半導体材料、及び/又はIII族若しくはV族などの周期表の他の材料の堆積を規定するために使用されるフォトマスクを含んでもよい。別のフォトマスクを使用して、金属コンタクトを規定してもよい。別のフォトマスクを使用して、金属トレースを規定してもよい。いくつかのフォトニックモジュールは、異なるレベルの金属トレースの使用を伴う。いくつかのそのような実施形態では、フォトマスクセット200は、金属トレースレベルごとに専用フォトマスクを含んでもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、ウェハ100は、ステップアンドリピート方式でパターニングされる。ウェハ100がステッパ装置で処理されると、フォトマスクのパターンは、ウェハの表面にわたって格子状に繰り返し露光される。このプロセスは、ウェハをステッパのレンズの下で前後左右にステップ移動させ、各ステップでフォトマスクを露光することを伴う。その結果、ウェハ100は、フォトマスクによって規定されたパターンの複数のコピーでパターニングされる。この動作は、セットのフォトマスクごと(又は少なくともいくつかのフォトマスク)に繰り返されてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、このプロセスを使用して、テンプレートフォトニックモジュールの複数のコピーでウェハ100をパターニングしてもよい。
図2Dの例では、ウェハ100は、フォトニックモジュール22のグリッドでパターニングされている。フォトニックモジュールは、セット200の1つ以上のフォトマスクのパターンを共有してもよい。例えば、フォトニックモジュールは、同じ導波路フォトマスク及び/又は同じmトレースフォトマスクのパターンを共有してもよい。他の実施形態では、フォトニックモジュールは、セット200の全てのフォトマスクのパターンを共有する。例えば、フォトニックモジュールは、同じ光導波路パターン、同じnドーピングされたパターン、同じpドーピングされたパターン、同じコンタクトパターン、同じ金属トレースパターンなどを共有してもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、ウェハ100の表面全体が、フォトマスクセット200を使用してパターニングされる。しかしながら、ウェハ100のいくつかの部分が第1のフォトマスクセットを使用してパターニングされ、ウェハ100の他の部分が第2のフォトマスクセットを使用してパターニングされる場合もあるため、全ての実施形態がこの点において限定されるわけではない。いくつかの実施形態では、第1及び第2のフォトマスクセットは、導波路フォトマスクなどの1つ以上の共通フォトマスクを共有してもよい。
【0039】
パターニングされると、ウェハ100は複数のフォトニック回路を含んでもよい。一例では、
図2Eのウェハは、ウェハ100から6つのフォトニック回路を得るように印が付けられている。フォトニック回路は、ウェハとモノリシックに集積される。この図は、1つのフォトニックモジュール22のみを有する1×1フォトニック回路、4つのフォトニックモジュール22を有する2×2フォトニック回路、6つのフォトニックモジュール22を有する2×3フォトニック回路、及び9つのフォトニックモジュール22をそれぞれ有する3つの3×3フォトニック回路を識別するものである。ウェハからフォトニック回路を分離することは、所望のフォトニック回路の外周に沿ってウェハをダイシングすることを伴う。ウェハ100の3×3フォトニック回路のうちの1つを、
図1のコンピューティングシステムの例のフォトニック回路として使用してもよい(フォトニック回路20参照)。
【0040】
図2A~
図2Dに関連して説明した技術により、比較的低コストでフォトニックモジュールを製造することが可能になる。いくつかの半導体ファウンドリは、ウェハ全体(又はウェハの少なくとも一部分)をパターニングするために、同じフォトマスクセット(又は少なくとも1つのフォトマスク)が使用されることを必要とする。そうでない場合は、異なるフォトマスクを使用してウェハの異なる部分をパターニングすることは、フォトリソグラフィ露光の間で1つのフォトマスクを別のフォトマスクに置き換えることが必要となり、ステップアンドリピートプロセスが非効率的で高価なものになる。少なくとも1つのフォトマスクを共有するフォトニックモジュールを設計することにより、標準的な低コストのステップアンドリピートプロセスを活用しながら、同じ半導体ウェハ上に多くのフォトニックモジュールを製造することが可能になる。
【0041】
図3Aは、フォトニックモジュール22の一例を示す。この例では、フォトニックモジュール22は矩形として形づくられている(ただし、正方形又は他の多角形などの他の形状もまた可能である)。したがって、フォトニックモジュール22は、4つの境界線(境界線1、2、3、及び4)によって境界が定められている。境界線1は境界線2と対向し、境界線3は境界線4と対向する。境界線1は境界線3及び4に隣接し、境界線2もまた境界線3及び4に隣接する。フォトニックモジュール22は、導波路111、112、113及び114に結合された光分配ネットワーク104を含む。導波路111は、光分配ネットワーク104を境界線1に光学的に結合する。したがって、光分配ネットワーク104から導波路111に結合された光信号は、境界線111を越えることによってフォトニックモジュールの外部に転送することができる。同様に、導波路112は光分配ネットワーク104を境界線2に光学的に結合し、導波路113は光分配ネットワーク104を境界線3に光学的に結合し、導波路114は光分配ネットワーク104を境界線4に光学的に結合する。いくつかの実施形態では、フォトニックモジュールの境界線は、フォトリソグラフィショットに基づいて規定される(例えば、境界線は、フォトニックモジュールを製造するために使用されるフォトマスクの境界線によって規定される)。しかしながら、他の実施形態では、1つのフォトリソグラフィショットが2つ以上のフォトニックモジュールを規定してもよい。例えば、フォトマスクは、テンプレートフォトニックモジュールの複数の隣り合っているインスタンスでパターニングされてもよい。いくつかのそのような実施形態では、フォトニックモジュールの境界線は、テンプレートフォトニックモジュールの隣接するインスタンスが交わる場所で規定される。
【0042】
図3Aの例は、光分配ネットワークを境界線の各々に結合する導波路を示すが、全ての実施形態がこのように配列されるわけではない。他の実施形態では、フォトニックモジュール22は、これらの4つの導波路のうちの2つ、例えば導波路111及び112、又は導波路111及び113を含んでもよい。更に他の実施形態では、フォトニックモジュール22は、これらの4つの導波路のうちの3つ、例えば導波路111、112及び113を含んでもよい。光分配ネットワーク104は、フォトニックモジュール22の内側及び外側に光信号をルーティングするためのフォトニックコンポーネント(例えば、フォトニックスイッチ)を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、フォトニックモジュールは、フォトニック導波路の複数の層を含んでもよい。導電性トレースの複数の層が、電気信号をルーティングする電子回路の能力を高める方法と同様に、導波路の複数の層は、光信号をルーティングするフォトニックモジュールの能力を高める。一例では、1つの層がシリコン導波路を含み、1つの層が窒化シリコン導波路を含む。別の例では、複数の層がシリコン導波路を含む。追加的又は代替的に、複数の層は、窒化シリコン導波路を含む。各導波路層の材料の選択は、導波路によってルーティングされることになる光の波長によって決定してもよい。例えば、シリコン及び窒化シリコン層は、約1.3μm又は1.5μmの波長を有する電気通信帯域内の赤外光をルーティングするために使用されてもよい。いくつかの例では、導波路の複数の層はまた、可視光をUV波長までルーティングするために使用可能な窒化アルミニウム導波路、又はUV光をルーティングするために使用される酸化アルミニウム導波路を含んでもよい。各層は、層の導波路間で信号をルーティングする光分配ネットワークとともに、
図3Aに示す構成と同様の構成で配列されてもよい。
【0044】
フォトニックモジュール22は、1つ以上の面外カプラ(
図3Aには図示せず)を更に含んでもよい。面外カプラは、xy面外に、例えば、z軸に平行な方向に、又はz軸に対してある角度で光を放射するように構成されてもよい。面外カプラは、xy平面の外側から照らしている光を捕捉するように更に構成されてもよい。いくつかの実施形態では、面外カプラにより、フォトニックモジュール22と、フォトニックモジュールの上方及び/又はフォトニックモジュールの下方に配置されたダイとの間の光通信が可能になる。面外カプラは、例えば、光学格子、レンズ、及びプリズムを含む、任意の好適な光学コンポーネントを使用して実装されてもよい。いくつかの実施形態では、光分配ネットワークは、同じ面外カプラが、光分配ネットワーク104からダイへと、およびダイから光分配ネットワーク104へと、の両方向の光通信を可能にするように構成されてもよい。
【0045】
光分配ネットワーク104は、フォトニックモジュール22の任意のコンポーネントを、フォトニックモジュール22の任意の他のコンポーネントに選択的に結合してもよい。例えば、光分配ネットワーク104は、導波路111と導波路112との間、及び/又は導波路111と導波路113との間、及び/又は導波路113と導波路114との間などの、光の通過を可能にしてもよい。これは、光分配ネットワークに制御可能な光スイッチを装備することによって実現され得る。
【0046】
フォトニック回路は、光ネットワークを集合的に形成するために、ともに接続された複数のフォトニックモジュールを含んでもよい。
図3Bは、6つのフォトニックモジュール22を含む2×3フォトニック回路の一例を示す。このフォトニック回路は、ウェハ100から2×3フォトニックモジュールの一群をダイシングすることによって得られる(
図2E参照)。フォトニックモジュール22は、光学モジュールの導波路111が、その光学モジュールの左側の光学モジュールの導波路112と位置合わせされ、光学モジュールの導波路112が、その光学モジュールの右側の光学モジュールの導波路111と位置合わせされ、光学モジュールの導波路113が、その光学モジュールの上方の光学モジュールの導波路114と位置合わせされ、光学モジュールの導波路114が、その光学モジュールの下方の光学モジュールの導波路113と位置合わせされるように配列されている。その結果、光学モジュールは光ネットワークを形成している。光分配ネットワーク104は、ネットワークの内部又は外部の任意の場所に光信号をルーティングしてもよい。例えば、フォトニック回路の北西の角に位置決めされたフォトニックモジュールにプロセッサが取り付けられ、フォトニック回路の南東の角に位置決めされたフォトニックモジュールにメモリが取り付けられていると仮定する。読み出し動作は、プロセッサをメモリと光通信した状態にするために、光分配ネットワークを(例えば、その光スイッチを制御することによって)再構成することを伴い得る。例えば、光通信経路は、1)プロセッサをそのプロセッサが取り付けられるフォトニックモジュールの面外カプラに結合し、2)そのフォトニックモジュールの面外カプラを同じフォトニックモジュールの導波路112に結合し、3)そのフォトニックモジュールの導波路112を隣接するフォトニックモジュール(中央最上部のフォトニックモジュール)の導波路111に結合し、4)中央最上部のフォトニックモジュールの導波路112を次の隣接するフォトニックモジュール(フォトニック回路の北東角)の導波路111に結合し、5)北東角に位置決めされたフォトニックモジュールの導波路114をメモリが取り付けられているフォトニックモジュールの導波路113に結合し、6)メモリが取り付けられているフォトニックモジュールの導波路113を同じフォトニックモジュールの面外カプラに結合するように形成されてもよい。
【0047】
上述したように、隣接するフォトニックモジュールの導波路は、互いに光学的に結合され、それによって、あるフォトニックモジュールから次のフォトニックモジュールへの光の通過が可能になる。いくつかの実施形態では、導波路の端部を物理的に接続させてもよい。他の実施形態では、導波路間に隙間があってもよい。この例では、各導波路は、境界線からある距離に位置する端部を有する。したがって、境界線領域に隙間が形成されている。隙間があるにもかかわらず、隣接するフォトニックモジュールの導波路は、依然として互いに光学的に結合されている。この場合、実際には、導波路の端部で放射された光は、自由空間伝搬によって他の導波路の端部に到達する。
【0048】
いくつかの実施形態では、フォトニックモジュール22は、共通の金属トレースフォトマスクに従ってパターニングされてもよい。その結果、フォトニックモジュールは金属トレースの同じパターンを共有する。いくつかの実施形態では、フォトニックモジュール22は、複数の共通のフォトマスクに従ってパターニングされる。その結果、金属トレースの複数のレベルは、異なるフォトニックモジュールにわたって同じパターンを共有する。金属トレースのうちのいくつかは、フォトニック回路にわたって電力を送達するために使用されてもよい。例えば、金属トレースのうちのいくつかは、以下で更に詳細に説明されるように、電力グリッドを形成するように配列されてもよい。
図4は、2×3フォトニック回路を示しており、各フォトニックモジュール22が、金属トレースの同じパターンを共有している。説明のために、金属トレースのみがこの図に示されているが、各フォトニックモジュールは、導波路、1つ以上の面外カプラ、及び光分配ネットワークを更に含む。この例では、2つのレベルの金属トレースがある。各レベルの金属トレースは、異なるフォトニックモジュールにわたって同じフォトマスクを使用して製造されている。金属トレースレベル1の金属トレースは、水平方向に延びており、それによって、水平方向に互いに隣接するフォトニックモジュールを電気的に結合している。金属トレースレベル2の金属トレースは、垂直方向に延びており、それによって、垂直方向に互いに隣接するフォトニックモジュールを電気的に結合している。当然ながら、他の配列もまた可能である。例えば、他の実施形態では、同じレベルの金属トレースは、1つのフォトニックモジュールを、それに隣接する全てのフォトニックモジュールに電気的に結合してもよい。
【0049】
金属トレースは、フォトニックモジュールの境界線を越えて電気(例えば、信号及び/又は電力)を搬送するように配列されている。これは、フォトニックモジュールの境界線を越えて連続するように金属トレースをパターニングすることによって実現され得る。この例では、レベル1の金属トレースは、垂直方向の境界線を越えて連続しており、レベル2の金属トレースは水平方向の境界線を越えて連続している。異なるレベルの金属トレースは、ビアを使用して互いに接続されてもよい。いくつかの実施形態では、フォトニックモジュールは、同じパターンのビアを共有してもよい。言い換えれば、同じビアフォトマスクを各フォトニックモジュールに使用してもよい。いくつかの実施形態では、フォトニックモジュールは、より多くの(数十から数百の)金属トレースを有してもよい。これらの金属トレースのうちのいくつかは、フォトニックモジュールにわたって連続するように配列されてもよいが、いくつかの実施形態では、大多数の金属トレースは、モジュールにわたって連続するようにパターニングされる必要はない。
【0050】
IV.マルチユーザ動作
本明細書で説明されるフォトニック通信プラットフォームは、マルチユーザ動作をサポートしてもよい。本発明者らは、フォトニックウェハのコンピューティングクラスタ全体が、単一のユーザによる使用には大きすぎる場合があり、その結果、コンピューティングリソースの著しいダウンタイムが発生する可能性があることを理解した。本明細書で説明されるプラットフォームを活用することで、同じウェハは、複数のユーザによる並行使用をサポートすることができる。例えば、クラスタの異なる部分を異なる顧客にライセンス供与することによって、クラスタの利用率を高めてもよい。
【0051】
図5Aは、いくつかの実施形態による、複数のユーザによる並行使用をサポートするウェハの一部分の一例を示す。
図5Aのウェハ部分は、3つの別個のフォトニック回路(501、502、及び503)をサポートし、その各々は、ウェハの基板とモノリシックに集積されている。フォトニック回路501は、フォトニックモジュールの2×2クラスタによって形成されている。フォトニック回路502は、フォトニックモジュールの2×3クラスタによって形成されている。フォトニック回路503は、フォトニックモジュールの3×5クラスタによって形成されている。いくつかの実施形態では、フォトニックモジュールの各クラスタは、異なるユーザにライセンス供与されてもよい。各ユーザは、割り当てられたクラスタを、電子プロセッサ、グラフィック処理ユニット(GPU)、メモリ及び/又は他の電子集積回路と組み合わせて使用して、所望のコンピューティングアーキテクチャを形成してもよい。
【0052】
本明細書で説明されるタイプのフォトニック回路は、任意の形状を有し得ることに留意されたい。
図5Bの例では、ウェハはまたフォトニック回路(501、502、503、504及び505)に分割されているが、フォトニック回路は、フォトニックモジュールの正方形又は長方形配列以外の形状を有する。更に、フォトニック回路のフォトニックモジュールは隣接している必要はない。
図5Cの例では、フォトニック回路503の隣接しない部分は、光ファイバを介して互いに結合されている。同様に、フォトニック回路505の隣接しない部分もまた、光ファイバを介して互いに結合されている。隣接しない部分は、別個のウェハの一部であってもよく、同じウェハの一部であってもよい。
【0053】
図6は、いくつかの実施形態による、フォトニックモジュールの隣接するクラスタ上に構築された2つのコンピューティングシステムを示す。より具体的には、
図6は、フォトニック回路501の一部分上に構築されたコンピューティングシステムと、フォトニック回路502の一部分上に構築されたコンピューティングシステムとを示す。フォトニック回路501は、第1のユーザによる使用のために割り当てられてもよく、フォトニック回路502は、第2のユーザによる使用のために割り当てられてもよい。フォトニック回路501上に構築されたコンピューティングシステムは、プロセッサダイ801、メモリダイ802、及び他のラベル付けされていないダイを含む。フォトニック回路502上に構築されたコンピューティングシステムは、プロセッサダイ811、メモリダイ812、及び他のラベル付けされていないダイを含む。いくつかの実施形態では、
図6のダイは、フォトニック回路をホストするウェハの上に積層される。例えば、各ダイは、対応するフォトニックモジュールの上に積層されてもよい。各ダイは、ビア又は他のタイプの相互接続を使用して、下にあるフォトニックモジュールと電気的に通信してもよい。
【0054】
本発明者らは、フォトニック回路501とフォトニック回路502との間に規定された境界線を越えて通信が行われることを許可すると、いずれかのユーザに確保されたデータのセキュリティが損なわれることを理解した。
図7は、一対の隣接するフォトニックモジュールを更に詳細に示す。
図7の左側のフォトニックモジュールは、フォトニック回路501の一部であり、
図7の右側のフォトニックモジュールは、フォトニック回路502の一部である。境界線505は、隣接するフォトニックモジュール間に規定されている。いくつかの実施形態では、境界線505は仮想境界線を表す。例えば、ウェハは、共通のフォトニック回路の隣接するフォトニックモジュール間の物理的な仕切り、又は異なるフォトニック回路の隣接するフォトニックモジュール間の物理的な仕切りを欠いてもよい。仮想境界線は、第1のユーザによって使用されるウェハの部分からの信号が、第2のユーザによって使用されるウェハの部分に伝わらないように、ウェハ内のフォトニックスイッチを切り替えることによって形成することができる。いくつかの実施形態では、フォトニックスイッチは、完全な消光比を有しない場合があり、及び/又は2人のユーザの信号間にフォトニックな/電子的な交差が存在する場合がある。この場合、ある割合までの信号の混信は避けられない。この場合、混信の最大量が、システム内の信号受信器/検出器を使用して識別することができるもの未満であるようにウェハが設計されることが好ましい。あるいは、物理的な仕切り(例えば、基板を貫通して形成されたトレンチ、半導体バリアなど)を異なるフォトニック回路の隣接するフォトニックモジュール間に配置してもよいが、同じタイプの仕切りを共通のフォトニック回路の隣接するフォトニックモジュール間に配置してもよい。このようにして、フォトニックモジュールは、異なるアーキテクチャを形成するために経時的に再構成され得る。例えば、ある時点では、2つのフォトニックモジュールが共通のフォトニック回路の一部であってもよく、後の時点では、同じ2つのフォトニックモジュールが異なるフォトニック回路の一部であってもよい。
【0055】
フォトニックリンク510(例えば、光導波路)は、隣接するフォトニックモジュールが、同じフォトニック回路の一部であるように構成されているのか、異なるフォトニック回路の一部であるように構成されているのかにかかわらず、一対の隣接するフォトニックモジュールを互いに接続する。しかしながら、隣接するフォトニックモジュールが
図7のように異なるフォトニック回路の一部であるように構成され、その結果、異なるユーザによって使用される場合、フォトニックリンク510は遮断され、それによってフォトニック回路が互いに分離され得る。遮断されると、フォトニックリンクは、ユーザに確保されたデータで符号化された光の通過を許可しないか、又は光の通過を全く許可しない(ただし、ノイズの形態の光は通過し得る)。
【0056】
信頼できるコントローラを使用して、異なるユーザ間のフォトニックモジュールの割り当てを調停してもよい。いくつかの実施形態では、信頼できるコントローラは、ユーザのダイと並んで、フォトニック通信プラットフォーム上に配置されたダイであってもよいが、ユーザによってアクセス可能でなくてもよい。信頼できるコントローラは、フォトニック通信プラットフォームのオペレータによってのみアクセス可能であってもよい。再び
図6を参照すると、ダイ600が配置されているフォトニックモジュールは、ネットワークオペレータに確保されてもよく、ダイ600は、信頼できるコントローラを含んでもよい。他の実施形態では、信頼できるコントローラは、ウェハの外側に位置決めされたチップを含んでもよい。他の機能の中でもとりわけ、信頼できるコントローラは、フォトニックリンクの遮断/確立を制御してもよく、それによって、プラットフォームのニーズに応じて、隣接するフォトニックモジュール間の分離又は隣接するフォトニックモジュール間の通信を可能にする。
【0057】
フォトニックリンクの遮断/確立は、いくつかの実施形態では、光スイッチ(例えば、光分配ネットワーク104の光スイッチ)を使用して実行されてもよい。
図8は、光スイッチの一例を示す。この例では、光スイッチ512は、1つの入力部(導波路520)と、3つの出力部(回路内導波路522及び524並びにフォトニックリンク510)とを有する。回路内導波路522及び524は、光スイッチ512がその一部である同じフォトニック回路(501)の、隣接するフォトニックモジュールに結合する導波路である。フォトニックリンク510は、別のフォトニック回路(502)の隣接するフォトニックモジュールに結合する導波路である。したがって、フォトニックリンク510は境界線505と交差する。いくつかの実施形態では、フォトニックリンク510を遮断することは、スイッチ512を制御して、導波路520を介して提供された光を(例えば、光を導波路522、導波路524、又はその両方にルーティングすることによって)リンク510から離れるようにルーティングすることを伴う。
【0058】
スイッチ512は、信頼できるコントローラを使用して制御してもよい。したがって、信頼できるコントローラは、どのフォトニックリンクが確立され、どのフォトニックリンクが遮断されるかに応じて、ユーザにフォトニック回路へのアクセスを提供し、拒否する。一例では、信頼できるコントローラは、第1のフォトニック回路へのアクセスを第1のユーザに提供し、第2のフォトニック回路へのアクセスを第2のユーザに提供する。いくつかのそのような実施形態では、信頼できるコントローラは更に、第2のユーザに対して第1のフォトニック回路へのアクセスを拒否し、第1のユーザに対して第2のフォトニック回路へのアクセスを拒否し得る。
【0059】
スイッチ512は、任意のタイプの電子的に(又は光学的に)制御可能な光スイッチを含んでもよい。いくつかの実施形態では、スイッチ512はマッハツェンダー干渉計を含む。マッハツェンダー干渉計は、第1の出力アーム及び第2の出力アームを有する。第1の出力アームはフォトニックリンク510に接続されてもよく、第2の出力アームは別の導波路(例えば導波路522)に接続されてもよい。このシナリオでは、光スイッチを制御してフォトニックリンクから離れるように光をルーティングすることは、マッハツェンダー干渉計の第2の出力アームに光をルーティングするようにマッハツェンダー干渉計を制御することを含む。3つ以上の出力導波路間で切り替えるために、ネスト型マッハツェンダー干渉計を採用してもよい。マッハツェンダー干渉計は、熱ヒータ、キャリア注入/空乏、又は機械的な変調方式を使用してもよい。他の実施形態では、スイッチ512は、リング又はディスク共振器、及び結合共振器又はカプラ-共振器光導波路(coupler-resonator optical waveguide、CROW)などの共振スイッチを含み得る。更に、各ユーザによって送信されたデータは、それらの光波長を使用して区別することができる。
【0060】
V.追加のコメント
本出願の技術のいくつかの態様及び実施形態をこのように説明してきたが、様々な変更、修正、及び改善が当業者に容易に想起されることを理解されたい。そのような変更、修正、及び改善は、本出願に記載される技術の趣旨及び範囲内にあることが意図される。したがって、前述の実施形態は、例としてのみ提示され、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内で、本発明の実施形態は、具体的に説明されるものとは別様に実践されてもよいことを理解されたい。加えて、本明細書に記載される2つ以上の特徴、システム、物品、材料、及び/又は方法の任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、物品、材料、及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、本開示の範囲内に含まれる。
【0061】
また、説明したように、いくつかの態様は、1つ以上の方法として具現化され得る。方法の一部として実行される動作は、任意の適切な方法で順序付けられてもよい。したがって、説明された順序とは異なる順序で動作を実行する実施形態が構築されてもよく、例示的な実施形態では順次動作として示されていても、いくつかの動作を同時に実行することを含んでもよい。
【0062】
本明細書で定義され、使用される全ての定義は、辞書的定義、参照により組み込まれる文書における定義、及び/又は定義された用語の通常の意味よりも優先すると理解されたい。
【0063】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、不定冠詞「a」及び「an」は、明確に反対の指示がない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されたい。
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「及び/又は」という語句は、そのように接続された要素の「いずれか又は両方」、すなわち、いくつかの場合では連言的に存在し、他の場合では選言的に存在する要素を意味すると理解されたい。
【0064】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、1つ以上の要素のリストに関して「少なくとも1つ」という語句は、要素のリスト内の要素のうちの任意の1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしも要素のリスト内に具体的に列挙された各要素及び全ての要素のうちの少なくとも1つを含むわけではなく、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外するわけではないと理解されたい。この定義はまた、「少なくとも1つ」という語句が言及する要素のリスト内で具体的に特定された要素以外の要素が、具体的に特定された要素に関連するか関連しないかにかかわらず、任意選択で存在し得ることを可能にする。
【0065】
「およそ(approximately)」及び「約(about)」という用語は、いくつかの実施形態では目標値の±20%以内、いくつかの実施形態では目標値の±10%以内、いくつかの実施形態では目標値の±5%以内、更にいくつかの実施形態では目標値の±2%以内を意味するために使用され得る。「およそ(approximately)」及び「約(about)」という用語は、目標値を含み得る。
【国際調査報告】