(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】特定のα,β-不飽和ケトンをエチニル化するプロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 29/42 20060101AFI20241121BHJP
C07C 33/042 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C07C29/42
C07C33/042
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525885
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2022086014
(87)【国際公開番号】W WO2023111119
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ボンラス, ワーナー
(72)【発明者】
【氏名】クエンジ, ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】ニエト-オルテガ, ベレン
(72)【発明者】
【氏名】メドロック, ジョナサン, アラン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC21
4H006AC41
4H006BB15
4H006BC10
4H006BD10
4H006BD60
4H006FC74
4H006FC80
4H006FE11
(57)【要約】
本発明は、第三級アセチレンアルコールを製造するために特定のα,β-不飽和ケトンをエチニル化するための改良されたプロセスに関する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式中、Rは、H;環系を含み得、且つ酸素原子で置換され得る直鎖状、分枝状若しくは環状のC
1~C
30アルキル基;又は環系を含み得、且つ酸素原子で置換され得る直鎖状、分枝状若しくは環状のC
2~C
30アルキレン部分である)
の化合物の製造のプロセスであって、
第1のステップでは、リチウムがNH
3に添加され、且つ次いで、
エチン(HCCH)が反応混合物に添加され、及び
第2のステップ(ステップ(II))では、式(II)
【化2】
(式中、R及び波線の結合は、式(I)の前記化合物について定義されたものと同じ意味を有する)
の化合物であり、及び
その後、第3のステップ(ステップ(III))では、得られた生成物が加水分解される、プロセスにおいて、前記ステップ(I)及びステップ(II)並びに任意選択的にステップ(III)は、ラマン分光法を使用することにより、反応の進行を監視することによって制御されることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
Rは、H;環系を含み得、且つ酸素原子で置換され得る直鎖状、分枝状若しくは環状のC
1~C
15アルキル基;又は環系を含み得、且つ酸素原子で置換され得る直鎖状、分枝状若しくは環状のC
1~C
15アルケニル基である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
Rは、H;直鎖状若しくは分枝状のC
1~C
10アルキル基;1つの炭素-炭素二重結合を含む直鎖状、分枝状若しくは環状のC
1~C
15アルケニル基;又は
【化3】
(式中、「*」は、前記式(I)及び(II)に結合しているCを示し、及び
R’は、H、又はC
1~C
4アルキル基、又は-(CO)C
1~C
4アルキル、又は-C(COCH
3)(CH
3)
2である)
からなる群から選択される置換シクロヘキセン環である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
Rは、H;直鎖状若しくは分枝状のC
1~C
10アルキル基;1つの炭素-炭素二重結合を含む直鎖状、分枝状若しくは環状のC
1~C
15アルケニル基;又は
【化4】
(式中、「*」は、前記式(I)及び(II)に結合しているCを示す)
からなる群から選択される置換シクロヘキセン環である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
Rは、Hである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
ステップ(I)は、-90℃~-10℃の温度範囲で行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記アセチレンの投入は、1880~1835cm
-1の領域における新しいピークが現れるときに停止される、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
少なくとも1種の不活性溶媒は、1880~1835cm
-1の領域における2つピークが観察されるときに前記反応混合物に添加される、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記少なくとも1種の不活性溶媒は、エーテル及び芳香族炭化水素化合物からなる群から選択される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記少なくとも1種の不活性溶媒は、ジエチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ベンゼン及びトルエンからなる群から選択される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項11】
前記アセチレンの投入は、1880~1835cm
-1の領域における2つのピークが消失し、及び約1885cm
-1におけるピークが現れるときに停止される、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
式(II)
【化5】
(式中、Rは、H;環系を含み得、且つ酸素原子で置換され得る直鎖状、分枝状若しくは環状のC
1~C
30アルキル基;又は環系を含み得、且つ酸素原子で置換され得る直鎖状、分枝状若しくは環状のC
2~C
30アルキレン部分である)
の前記化合物の投入は、約1885cm
-1におけるバンドが消失したときに停止される、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
ステップ(II)は、-70℃~0℃の温度で行われる、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
ステップ(III)は、-70℃~0℃の温度で行われる、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
ステップ(III)において、少なくとも化合物は、硫酸、酢酸、水及び塩化アンモニウムからなる群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、第三級アセチレンアルコールを製造するために特定のα,β-不飽和ケトンをエチニル化するための改良されたプロセスに関する。
【0002】
第三級アセチレンアルコールを製造するためにα,β-不飽和ケトンをエチニル化するプロセスは、よく知られており、特許出願及び刊行物に開示及び記載されている。例えば、米国特許第4320236号明細書又はChimia 40(9),1986 p.323-330では、そのようなエチニル化が詳細に記載されている。
【0003】
本発明は、式(I)
【化1】
(式中、Rは、H、脂肪族又は芳香族炭化水素部分を示し、波線の結合は、それが結合される炭素-炭素二重結合が(E)又は(Z)配置であり得ることを意味する)
の化合物を製造するための改良されたプロセスに関する。
【0004】
そのような化合物は、そのまま使用され得るか、又は追加的に、それらは、他の工業的に関連する化合物(例えば、ビタミンA誘導体及びカロテノイド)の合成における中間体として使用され得る。
【0005】
式(I)の化合物の重要性のため、改良された合成を提供する必要が常にある。
【0006】
上述したように、式(I)の化合物を製造するいくつかの方法がある。
【0007】
文献(例えば、米国特許第4320236号明細書又はChimia 40(9),1986 p.323-330)によると、特定のエチニル化は、以下のスキーム:
【化2】
(式中、Rは、上記で定義された通りであり、以下でさらに詳細に定義される)
で行われるようにまとめることができる。
【0008】
上述の文献で提案されているように、ステップ(I)は、以下の2つのステップ(ステップ(Ia)及びステップ(Ib)):
【化3】
からなる。
【0009】
従来技術で説明されているプロセスの主な欠点及び短所トの1つは、プロセスの制御である。
【0010】
従来技術のプロセスでは、優れた収率を得るために出発物質を多量に過剰に使用するため、多量の廃棄物が生じる。特に、式(II)のものなどの不飽和ケトンが過剰にある場合、除去が非常に困難であり、かなりの収率低下を招くオリゴマー及びポリマーが生じ得る。
【0011】
さらに、種々のステップ(ステップ(I)、ステップ(II)及びステップ(III))における出発物質添加の正確な時点も課題である。出発物質の添加が早すぎるか又は遅すぎると、望ましくない副生成物が生じ得、これは、その後、時間のかかる大規模なプロセスで除去しなければならない。
【0012】
化学反応では、試薬の正確な化学量論を用いることが重要であり、理想的な状況は、出発物質を完全に消費するためのまさに正確な量の試薬のみに対するものである。1つの成分(出発物質又は試薬)が過剰に使用されると、これにより、通常、収率が低下し、未反応の過剰分の価値分の費用が増加する。過剰な試薬は、より有害な反応混合物を生成し、より多くの安全管理が必要となり得る。さらに、過剰な試薬は、生成物から除去しなければならず、さらなる費用のかかる精製ステップが必要となり得る。さらに、過剰なある成分が反応して副生成物を生じ得、これは、生成物から除去する必要がある。特に、式(II)の化合物は、有毒であり、さらに重合しやすいことが知られている。ポリマーは、精製ステップにおける除去をかなり困難にし、追加の費用を生じさせる。したがって、反応に使用する試薬の量は、最小限に抑えるべきであり、反応へのその試薬の添加は、他の反応成分が完全に消費されたら直ちに停止すべきである。
【0013】
したがって、本発明の目的は、望ましくない副生成物の量を減少させる、特定の第三級アセチレンアルコールを製造する方法及びプロセスを見出すことであった。
【0014】
驚くべきことに、ラマン分光法を使用することによって反応の進行を監視すると、種々の出発物質を添加する理想的な時点、さらに反応を最適な時点に停止する時点を見出すことが可能であることが判明した。
【0015】
ラマン分光法(インドの物理学者C.V.ラマンにちなんで名付けられた)は、分子間相互作用、多形、結晶性及び全体の化学構造に関する完全な情報を提供する非破壊的な振動分光技術である。
【0016】
ラマン分光法は、高強度レーザ光源の入射光が、レーザ光源と異なる波長で試料から散乱するが、この波長が試料の化学構造に依存するという、いわゆるラマン効果に基づく。
【0017】
したがって、ラマンスペクトルは、散乱光の強度及び波数位置を特徴とし、これらは、特定の分子結合と相関され得、未知の試料の同定又は物質の反応経路の監視を可能にする。
【0018】
いくつかの官能基は、他のものよりもラマン活性が高く、より強いバンドが生じる。例えば、アルデヒドに特徴的なC=O結合は、ラマン活性が高くない。代わりに、C≡Cのような三重結合は、非常に活性が高い。
【0019】
ラマン分光法は、一般的に利用可能な任意の機器を使用して実施され得る。Kaiser Optical Systems、Bruker及びMettler Toledoなど、ラマン機器の複数の製造業者及び供給業者が存在する。これらの機器は、液体、固体及び気体の分析のための様々なプローブ及び光学系を装着され得る。化学反応中にラマン分光法を実施するために非常に好適な方法は、容器内において反応混合物に入れられる浸漬プローブを使用することによるものである。
【0020】
本発明によるプロセスは、以下のように実施される。
【0021】
ステップ(Ia)では、リチウム金属をNH
3に添加し、次にエチン(HCCH)を添加して炭化リチウムを形成する。
【化4】
【0022】
その後、さらにエチン(HCCH)を添加すると(ステップ(Ib))、炭化リチウムがリチウムアセチリドに変換される。
【化5】
【0023】
重要な特徴は、炭化リチウムが完全にリチウムアセチリドに変換される正確な時点を特定することである。この時点において、式(II)
【化6】
(式中、Rは、上記で定義された通りであり、以下でさらに詳細に定義される)
のケトンを添加する。
【0024】
式(II)のケトンの添加が早すぎるか又は遅すぎると、顕著な量の望ましくない副生成物が生じる。そのような副生成物は、時間のかかる大規模な精製プロセスを適用することによって除去しなければならない。
【0025】
さらに、ステップ(II)も、ラマン分光法を使用する反応に従うことによってより良好に制御され得る。
【化7】
式中、Rは、上記で定義された通りであり、以下でさらに詳細に定義される。
【0026】
前述のように、式(II)のケトンを添加する正確な時点は、ラマン分光法によって決定することができる。さらに、ラマン分光法を使用して、全リチウムアセチリドが消費された時点を特定し、式(II)のケトンの添加を停止すべき正確な時点を特定することができる。
【0027】
最後の段階(ステップIII))
【化8】
(式中、Rは、上記で定義された通りであり、以下でさらに詳細に定義される)
では、加水分解を行い、式(I)の化合物が優れた収率で得られる。一般式(III)の化合物の加水分解は、ブレンステッド酸、例えば硫酸、酢酸、水、塩化アンモニウムの使用などであるが、これに限定されない、それ自体既知の方法によって実行され得る。
【0028】
前述のように、望ましくない副生成物及び廃棄物の量は、プロセス全体で有意に減少する。
【0029】
したがって、本発明は、式(I)
【化9】
(式中、Rは、H;環系を含み得、且つ酸素原子で置換され得る直鎖状、分枝状若しくは環状のC
1~C
30アルキル基;又は環系を含み得、且つ酸素原子で置換され得る直鎖状、分枝状若しくは環状のC
2~C
30アルキレン部分である)
の化合物の製造のプロセス(P)であって、
第1のステップでは、リチウムがNH
3に添加され、且つ次いで、
エチン(HCCH)が反応混合物に添加され、及び
第2のステップ(ステップ(II))では、式(II)
【化10】
(式中、R及び波線の結合は、式(I)の化合物について定義されたものと同じ意味を有する)
の化合物であり、及び
その後、第3のステップ(ステップ(III))では、得られた生成物が加水分解される、プロセス(P)において、ステップ(I)及びステップ(II)並びに任意選択的にステップ(III)は、ラマン分光法を使用することにより、反応の進行を監視することによって制御されることを特徴とするプロセス(P)に関する。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、Rは、H;環系を含み得、且つ酸素原子で置換され得る直鎖状、分枝状若しくは環状のC1~C15アルキル基;又は環系を含み得、且つ酸素原子で置換され得る直鎖状、分枝状若しくは環状のC1~C15アルケニル基である。
【0031】
本発明のより好ましい実施形態では、Rは、H;直鎖状若しくは分枝状のC
1~C
10アルキル基;1つの炭素-炭素二重結合を含む直鎖状、分枝状若しくは環状のC
1~C
15アルケニル基;又は
【化11】
(式中、「*」は、式(I)の化合物及び式(II)の化合物に結合しているCを示し、及び
R’は、H、又はC
1~C
4アルキル基、又は-(CO)C
1~C
4アルキル、又は-C(COCH
3)(CH
3)
2である)
からなる群から選択される置換シクロヘキセン環である。
【0032】
本発明のさらにより好ましい実施形態では、Rは、H;直鎖状若しくは分枝状のC
1~C
10アルキル基;1つの炭素-炭素二重結合を含む直鎖状、分枝状若しくは環状のC
1~C
15アルケニル基;又は
【化12】
(式中、「*」は、式(I)及び(II)に結合しているCを示す)
からなる群から選択される置換シクロヘキセン環である。
【0033】
本発明の最も好ましい実施形態では、式(I’)
【化13】
の化合物が使用される。
【0034】
したがって、本発明は、Rが、H;環系を含み得、且つ酸素原子で置換され得る直鎖状、分枝状若しくは環状のC1~C15アルキル基;又は環系を含み得、且つ酸素原子で置換され得る直鎖状、分枝状若しくは環状のC1~C15アルケニル基である、プロセス(P)であるプロセス(P’)にさらに関する。
【0035】
したがって、本発明は、Rが、H;直鎖状若しくは分枝状のC
1~C
10アルキル基;1つの炭素-炭素二重結合を含む直鎖状、分枝状若しくは環状のC
1~C
15アルケニル基;又は
【化14】
(式中、「*」は、式(I)及び(II)に結合しているCを示し、及び
R’は、H又はC
1~C
4アルキル基又は-(CO)C
1~C
4アルキル又は-C(COCH
3)(CH
3)
2である)
からなる群から選択される置換シクロヘキセン環である、プロセス(P)であるプロセス(P’’)にさらに関する。
【0036】
したがって、本発明は、Rが、H;直鎖状若しくは分枝状のC
1~C
10アルキル基;1つの炭素-炭素二重結合を含む直鎖状、分枝状若しくは環状のC
1~C
15アルケニル基;又は
【化15】
(式中、「*」は、式(I)及び(II)に結合しているCを示す)
からなる群から選択される置換シクロヘキセン環である、プロセス(P)であるプロセス(P’’’)にさらに関する。
【0037】
したがって、本発明は、式(I’)
【化16】
の化合物が使用される、プロセス(P)であるプロセス(P’’’’)にさらに関する。
【0038】
ラマン分光法は、種々の反応化合物の添加時点又は添加停止時点を決定するために使用される。
【0039】
前述のように、(式(I)及び式(II)の)波線の結合を導入することにより、式(I)の化合物が、式(Ia)の化合物又は式(Ib)の化合物
【化17】
(式中、Rは、上記で定義された通りである)
及び式(Ia)の化合物と式(Ib)の化合物との任意の比率での混合物(Rは、上記で定義されたのと同じ意味を有する)であり得ることを意味する。
【0040】
式(II)の化合物及び式(III)の化合物についても同様である。
【0041】
一般に公知であり、市販されている任意のラマン分光デバイスを使用することができる。好ましくは、浸漬プローブがラマン分析器又はラマン分光計に取り付けられる。そのようなラマンデバイスは、種々の製造業者及び供給業者から市販されている。ラマン浸漬プローブは、プロセス機器に容易に組み込むことができる。
【0042】
本特許出願で示されるすべての値は、Kaiser Optical Systems社製のラマン分光計(Kaiser Raman Rxn2分析器)を用いて測定される。この分光計は、CCD検出器を備え、数秒で完全なラマンスペクトルを記録することができる。785nmレーザを50mWで使用した。
【0043】
本特許に記載される実験では、2cm-1よりも優れた分解能で1分毎にスペクトルを記録した。反応時間全体にわたり、10秒の露光時間を使用した。蛍光の影響は、観察されなかった。
【0044】
前述のように、プロセス中の種々の試薬の正確な添加時点は、ラマン分光法によって決定される。
【0045】
エチニル化の反応条件は、米国特許第4320236号に開示されているものと同様である。
【0046】
ステップ(I)(ステップIa及びIbの両方)は、通常、-90℃~-10℃の温度範囲で行われる。リチウム金属は、通常、撹拌しながら添加される。
【0047】
したがって、本発明は、ステップ(I)が-90℃~-10℃の温度範囲で行われる、プロセス(P)、(P’)、(P’’)、(P’’’)又は(P’’’’)であるプロセス(P1)にさらに関する。
【0048】
ステップ(Ia)
【化18】
では、ラマン分光法を使用し、リチウムが最初にアンモニアに添加された時点を特定し、その後、炭化リチウムの形成を監視する。
【0049】
本発明によるプロセスの開始時(リチウムが依然としてNH
3に添加されていない)、3000cm
-1~3500cm
-1に3つのピークが見られる(
図1を参照されたい)(N-H伸縮バンド)。
【0050】
リチウムをNH
3に添加すると、3000cm
-1~3500cm
-1の3つのピークがこの領域で消失し(
図2を参照されたい)、N-H屈曲バンドにシフトが観察される。
【0051】
リチウムの添加が完了した後、アセチレンの投入が開始される。
【0052】
アセチレンの投入は、ラマン分光法によって追跡され得る。2つのバンドが1895~1865cm
-1の領域で記録され、これは、アセチレン溶媒和種に起因すると考えることができる(
図3)。
【0053】
アセチレンを添加し続けると、溶媒和種の2つのラマンバンドが消失し、1880~1835cm
-1の領域で2つのバンドが検出される(
図4)。このとき、アセチレンの添加を停止することができ、炭化リチウムが形成される。
【0054】
ラマン分光法では、炭化リチウムの形成が完了し、アセチレンの添加が停止されたときを示す。
【0055】
したがって、本発明は、(1880~1835cm-1の領域における)新しいピークが現れるときにアセチレンの投入が停止される、プロセス(P)、(P’)、(P’’)、(P’’’)、(P’’’’)又は(P1)であるプロセス(P2)にさらに関する。
【0056】
この時点で少なくとも1種の不活性溶媒を反応混合物に添加する。本発明によるプロセスに好適な不活性溶媒は、エーテル及び芳香族炭化水素化合物、例えばジエチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ベンゼン及びトルエンである。
【0057】
したがって、本発明は、1880~1835cm-1の領域における2つピークが観察されるときに少なくとも1種の不活性溶媒が反応混合物に添加される、プロセス(P)、(P’)、(P’’)、(P’’’)、(P’’’’)、(P1)又は(P2)であるプロセス(P3)にさらに関する。
【0058】
したがって、本発明は、少なくとも1種の不活性溶媒が、エーテル及び芳香族炭化水素化合物からなる群から選択される、プロセス(P3)であるプロセス(P3’)にさらに関する。
【0059】
したがって、本発明は、少なくとも1種の不活性溶媒が、ジエチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ベンゼン及びトルエンからなる群から選択される、プロセス(P3)であるプロセス(P3’’)にさらに関する。
【0060】
ステップ(Ib)では、少なくとも1種の溶媒の添加後、アセチレンがさらに反応混合物に添加される。
【化19】
【0061】
(NH
3から少なくとも1種の不活性溶媒への)溶媒交換及びアセチレンのさらなる添加後、炭化リチウムのバンドが減少し(1880~1835cm
-1の2つのバンド)、リチウムアセチリドを検出することができる。この時点でリチウムアセチリドへの完全変換が達成され、これは、ラマンによって観察され得る(約1885cm
-1におけるバンド)(
図5を参照されたい)。
【0062】
したがって、本発明は、1880~1835cm-1の領域における2つのピークが消失し、及び1885cm-1の領域におけるピークが現れるときにアセチレンの投入が停止される、プロセス(P)、(P’)、(P’’)、(P’’’)、(P’’’’)、(P1)、(P2)、(P3)、(P3’)又は(P3’’)であるプロセス(P4)にさらに関する。
【0063】
この時点(ステップII)において、式(II)
【化20】
(式中、Rは、上記で定義されたものと同じ意味を有する)
の化合物が反応混合物に添加され、式(III)
【化21】
(式中、Rは、上記で定義されたものと同じ意味を有する)
の化合物が形成される。
【0064】
[ステップ(II)の反応スキーム:]
【化22】
式中、Rは、上記で定義されたものと同じ意味を有する。
【0065】
式(III)の化合物は、約1885cm
-1のラマンバンドが消失するまで反応混合物に添加される。この時点で式(II)の化合物の添加を停止する(
図6を参照されたい)。
【0066】
ラマン分光法は、リチウムアセチリドの完全消費及び式(III)の化合物の形成(約2090cm-1におけるバンド)の時点を示す。
【0067】
したがって、本発明は、1885cm-1におけるバンドが消失したときに式(II)の化合物の投入が停止される、プロセス(P)、(P’)、(P’’)、(P’’’)、(P’’’’)、(P1)、(P2)、(P3)、(P3’)、(P3’’)又は(P4)であるプロセス(P5)にさらに関する。
【0068】
ステップ(II)の温度は、通常、-70℃~0℃である。
【0069】
したがって、本発明は、ステップ(II)が-70℃~0℃の温度で行われる、プロセス(P)、(P’)、(P’’)、(P’’’)、(P’’’’)、(P1)、(P2)、(P3)、(P3’)、(P3’’)、(P4)又は(P5)であるプロセス(P6)にさらに関する。
【0070】
最終ステップ(ステップ(III))
【化23】
(式中、Rは、上記で定義されたものと同じ意味を有する)
は、望ましくない副生成物の生成の観点であまり重要でないため、このステップ後にラマン分光法を行う場合、このステップは、任意選択的である。
【0071】
加水分解ステップであるステップ(III)は、通常、-70℃~0℃、好ましくは-40℃~-5℃の温度で行われる。
【0072】
したがって、本発明は、ステップ(III)が-70℃~0℃の温度で行われる、プロセス(P)、(P’)、(P’’)、(P’’’)、(P’’’’)、(P1)、(P2)、(P3)、(P3’)、(P3’’)、(P4)、(P5)又は(P6)であるプロセス(P7)にさらに関する。
【0073】
したがって、本発明は、ステップ(III)が-40℃~-5℃の温度で行われる、プロセス(P)、(P’)、(P’’)、(P’’’)、(P’’’’)、(P1)、(P2)、(P3)、(P3’)、(P3’’)、(P4)、(P5)又は(P6)であるプロセス(P7’)にさらに関する。
【0074】
ステップ(III)の加水分解は、少なくとも1種のブレンステッド酸、例えば硫酸、酢酸、水、塩化アンモニウムを使用して行われる。
【0075】
したがって、本発明は、ステップ(III)において、少なくとも化合物が、硫酸、酢酸、水及び塩化アンモニウムからなる群から選択される、プロセス(P)、(P’)、(P’’)、(P’’’)、(P’’’’)、(P1)、(P2)、(P3)、(P3’)、(P3’’)、(P4)、(P5)、(P6)、(P7)又は(P7’)であるプロセス(P8)にさらに関する。
【0076】
したがって、本発明は、ステップ(III)が-70℃~0℃の温度で行われる、プロセス(P)、(P’)、(P’’)、(P’’’)、(P’’’’)、(P1)、(P2)、(P3)、(P3’)、(P3’’)、(P4)、(P5)、(P6)、(P7)、(P7’)又は(P8)であるプロセス(P9)にさらに関する。
【0077】
したがって、本発明は、ステップ(III)が-40℃~-5℃の温度で行われる、プロセス(P)、(P’)、(P’’)、(P’’’)、(P’’’’)、(P1)、(P2)、(P3)、(P3’)、(P3’’)、(P4)、(P5)、(P6)、(P7)、(P7’)又は(P8)であるプロセス(P9’)にさらに関する。
【0078】
ステップ(III)の終了時、式(I)の化合物が得られ、単離され、一般的に公知の方法を用いることによって精製される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図2】リチウムを一部添加した後のアンモニアのラマンスペクトルである。
【
図3】アンモニア中の溶媒和化されたアセチレンのラマンスペクトルである。
【
図5】リチウムアセチリドのラマンスペクトルである。
【
図6】リチウムアルコキシド生成物IIIのラマンスペクトルである。
【
図7】実施例1及び比較例1(C1)の反応のラマンスペクトルである。
【0080】
以下の実施例は、本発明を限定することなく、本発明を説明する。示されるすべてのパーセント及び部は、重量に関するものであり、特に記載がない場合、温度は、℃で示され、圧力は、絶対圧である。
【0081】
[実施例]
[実施例1]
アンモニアガスを、アルゴン下でラマンプローブが取り付けられた冷却済み(-50~-30℃)の2Lジャケット付き容器内において、容器が約500mlの液体アンモニウムを収容するまで濃縮する。リチウム金属(10.5g)を撹拌しながらゆっくりと添加する(
図1→
図2)。アセチレンガスを約1L/分の速度で反応混合物に添加する(
図3)。ラマンスペクトルが炭化リチウムの形成を示したときにアセチレンの添加を停止する(
図4)。
【0082】
反応温度は、-10~10℃に上昇し、ジエチルエーテル(約625ml)を添加する。反応混合物を-15~-5℃に冷却し、アセチレンガスを約1L/分の速度で添加する。リチウムアセチリドの完全な形成が観察される(
図5)と、メチルビニルケトン溶液(120mlのジエチルエーテル中120g)が調製され、約3.3ml/分でリチウムアセチリド溶液に添加される。反応は、ラマン分光法によって監視され、リチウムアセチリドの消費が完了する(
図6)と直ちに添加を停止し、未使用のメチルビニルケトン溶液を破棄する(約171gのMVK溶液を添加)。反応混合物を撹拌した後、約20分かけて冷却した硫酸溶液(30%、約400ml)に添加した。
【0083】
エーテル層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、エーテルの大部分を標準圧力で除去し、黄色の油状物として粗3-メチルペンタ-1-エン-4-イン-3-オール(248.5g、53.3重量%含有量、MVKを基準にして97.9%の収率及びリチウムを基準にして91.3%の収率)を得る。
【0084】
[比較実施例1(C1)(反応の進行を監視するためにラマン分光法を使用しない)]
実施例1の手順を繰り返すが、ラマン分光法を使用せず、同量のリチウム金属及びメチルビニルケトン溶液を使用した。リチウムアセチリドが完全消費される時点は、約193gのMVK溶液(約1.59モル)の添加後に達すると予測された。
【0085】
ワークアップ後、255.8gの粗3-メチルペンタ-1-エン-4-イン-3-オール(51.5重量%含有量、MVKを基準にして86.6%の収率)を黄色の油状物として得た。加えて、ポリマーが形成され(
図7を参照されたい)、これにより反応器からの混合物の除去及び精製をかなり困難なものとした。
【0086】
[比較実施例2(C2)(反応の進行を監視するためにラマン分光法を使用しない)]
実施例1の手順を繰り返すが、ラマン分光法を使用せず、同量のリチウム金属及びメチルビニルケトン溶液を使用した。リチウムアセチリドが完全消費される時点は、約146gのMVK溶液(約1.20モル)の添加後に達すると予測された。
【0087】
ワークアップ後、209.8gの粗3-メチルペンタ-1-エン-4-イン-3-オール(52.9重量%含有量、MVKを基準にして96.3%の収率及びリチウムを基準として76.5%の収率)を黄色の油状物として得た。
【国際調査報告】