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特表2024-544128粉末型電極前駆体材料から電極フィルムを製造するためのカレンダー、対応する方法、及び対応する電極フィルム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】粉末型電極前駆体材料から電極フィルムを製造するためのカレンダー、対応する方法、及び対応する電極フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20241121BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20241121BHJP
   F16C 13/02 20060101ALI20241121BHJP
   F16C 35/07 20060101ALI20241121BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20241121BHJP
   B29C 43/24 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01M4/139
F16C13/00 D
F16C13/02
F16C35/07
H01M50/403 F
B29C43/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024526982
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 DE2022100358
(87)【国際公開番号】W WO2023078489
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/275,857
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522243439
【氏名又は名称】マシューズ インターナショナル ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】524116298
【氏名又は名称】マシューズ インターナショナル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ハラルド バルチュ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ハックフォート
【テーマコード(参考)】
3J103
3J117
4F204
5H021
5H050
【Fターム(参考)】
3J103AA02
3J103AA37
3J103BA31
3J103CA03
3J103CA42
3J103CA63
3J103DA07
3J103FA02
3J103GA02
3J103GA26
3J117AA01
3J117CA04
3J117DA01
3J117DA02
3J117DB10
4F204AC04
4F204AE03
4F204AG01
4F204AH33
4F204AJ08
4F204AR12
4F204FA08
4F204FB02
4F204FQ31
5H021BB19
5H021HH03
5H050AA19
5H050BA17
5H050GA03
5H050GA29
(57)【要約】
本発明は、粉末状の電極前駆体材料から電極フィルムを製造するためのカレンダーに関し、少なくとも第1のニップロールと、第1のニップロールと反対方向に回転し、その間にニップが形成される、少なくとも第2のニップロールとを有し、カレンダーは、粉末状の電極前駆体材料がニップを通過するときに、これにせん断力を受けさせて、このようにして電極フィルムを形成するように設計されており、第1のニップロールまたは第2のニップロールのうちの少なくとも一方が、圧縮方法によってニップ内で生成され、それぞれのニップロールに作用する非軸方向の、特に半径方向及び/または接線方向の力ベクトルに抵抗してニップロールを予張するための少なくとも1つの予張付与装置を有し、予張付与装置によって、予張の方向及び/または予張力の大きさを調整することが可能であることを特徴とする。本発明は、さらに、粉末状の電極前駆体材料から均一な厚さを有する電極フィルムを製造する方法及び対応する電極フィルムに関する。
【選択図】図5A図8A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末型電極前駆体材料(905)から電極フィルム(613)を製造するためのカレンダー(10)であって、
少なくとも1つの第1のニップローラー(201)と、前記第1のニップローラーとは反対方向に回転し、その間にニップ(210)が形成される、少なくとも1つの第2のニップローラー(202)とを備え、前記カレンダー(210)が、前記粉末型電極前駆体材料(605)が前記ニップ(210)を通過するときに、前記粉末型電極前駆体材料(605)にせん断力を加え、それによって電極フィルム(613)を形成するように設計され、
前記第1のニップローラー(201)または前記第2のニップローラー(202)のうちの少なくとも一方が、圧縮プロセスによって前記ニップ(210)内で生成され、前記それぞれのニップロールに作用する非軸方向の、特に半径方向及び/または接線方向の力ベクトル(F)に抵抗して前記ニップローラー(201、202)を予張するための少なくとも1つの予張付与装置(100)を有し、前記予張付与装置(100)によって、前記予張の方向(100)及び/または前記予張力の大きさが調整可能である
ことを特徴とする、前記カレンダー(10)。
【請求項2】
両方のニップローラー(201、202)は、それぞれ、その前部ローラージャーナル(205)を介して機械フレーム(500)内に取り付けられ、前記予張付与装置(100)は、前記第1のニップローラーまたは前記第2のニップローラー(201、202)の少なくとも1つのベアリング(700)に割り当てられ、前記予張付与装置(100)によって、前記ローラージャーナル(205)を、前記少なくとも1つのベアリング(700)に対して、任意の方向に、かつ調整可能な大きさで、半径方向に偏向することができる、請求項1に記載のカレンダー(10)。
【請求項3】
前記予張付与装置(100)は二重偏心器(99)を有し、前記二重偏心器(99)は、互いに独立して回転可能な内側偏心ブッシュ(102)及び外側偏心ブッシュ(101)を有する、請求項1または請求項2に記載のカレンダー(10)。
【請求項4】
前記第1のニップローラー(201)または前記第2のニップローラー(202)が、前記内側偏心ブッシュ(102)内に回転可能に取り付けられている、請求項3に記載のカレンダー(10)。
【請求項5】
前記外側偏心ブッシュ(101)は、前記機械フレーム(500)内に配置されたボア(520)に対して回転可能に取り付けられ、前記ボア(520)内に前記予張付与装置(100)が収容される、請求項3または請求項4のいずれか1項に記載のカレンダー(10)。
【請求項6】
前記ボア(520)と前記外側偏心ブッシュ(101)との間に、第1のラジアルベアリング(110)が形成または配置されている、請求項5に記載のカレンダー(10)。
【請求項7】
前記外側偏心ブッシュ(101)と前記内側偏心ブッシュ(102)との間に、第2のラジアルベアリング(120)が形成または配置されている、請求項3~6のいずれか1項に記載のカレンダー(10)。
【請求項8】
前記内側偏心ブッシュ(102)と前記ローラージャーナル(205)との間に、第3のラジアルベアリング(130)が形成または配置されている、請求項3~7のいずれか1項に記載のカレンダー(10)。
【請求項9】
前記第1のラジアルベアリング(110)及び/または前記第2のラジアルベアリング(120)及び/または前記第3のラジアルベアリング(130)が、円筒形ローラーベアリングまたはニードルベアリングとして設計されている、請求項6~8のいずれか1項に記載のカレンダー(10)。
【請求項10】
前記第1のニップローラー(201)に隣接して第1の支持ローラー(301)が配置され、前記第2のニップローラー(202)に隣接して第2の支持ローラー(302)が配置され、前記支持ローラーが、それぞれ隣接する前記ニップローラーと反対方向に回転する、先行請求項のいずれか1項に記載のカレンダー(10)。
【請求項11】
前記支持ローラー(301、302)の直径(D2)が、前記第1のニップローラー及び前記第2のニップローラー(201、202)の直径よりも大きい、請求項10に記載のカレンダー(10)。
【請求項12】
前記ニップローラー(201、202)の軸と前記支持ローラー(301、302)の軸とが互いに同一平面内で位置合わせされている、請求項10または請求項11のいずれか1項に記載のカレンダー(10)。
【請求項13】
前記第1のニップローラー(201)と前記第1の支持ローラー(301)とが互いに転がり合い、前記第2のニップローラー(202)と前記第2の支持ローラー(302)との間に前記電極フィルム(613)を通過させるためのニップ(210)が形成され、前記第2のニップローラー(202)が、前記第2のニップローラー(202)の上側または下側の周囲に前記電極フィルム(613)を案内するように設計されている、請求項10~12のいずれか1項に記載のカレンダー(10)。
【請求項14】
粉末型電極前駆体材料(905)を前記ローラーニップ(210)内に連続的に搬送する装置(904)が、前記第1のニップローラー(201)と前記第2のニップローラー(202)との間の前記ローラーニップ(210)の上方に配置されている、先行請求項のいずれか1項に記載のカレンダー(10)。
【請求項15】
前記第1のニップローラー(201)または前記第2のニップローラー(202)の少なくとも一方が、その向かい合わせのローラージャーナル(205)のそれぞれに予張付与装置(100)を備えている、先行請求項のいずれか1項に記載のカレンダー(10)。
【請求項16】
前記第1のニップローラー及び前記第2のニップローラー(201、202)の両方が、それぞれ向かい合わせのローラージャーナル(205)のそれぞれに予張付与装置(100)を備えている、先行請求項のいずれか1項に記載のカレンダー(10)。
【請求項17】
粉末型電極前駆体材料(905)から均一な厚さを有する電極フィルム(613)を製造する方法であって、以下のステップ、すなわち、
粉末型電極前駆体材料(905)を、2つのニップローラー(201、202)によって形成されたニップ(210)の中に搬送することと、
前記粉末型電極前駆体材料(905)を前記ニップ(210)に通過させることであって、前記粉末型電極前駆体材料(905)が前記ニップ(210)を通過する際にせん断力を受けることによって、電極フィルム(613)が形成される、前記通過させることと、
前記粉末型電極前駆体材料(905)が前記それぞれのニップロールの前記ニップ(210)を前記通過することによって生じる力ベクトル(F)に対抗するために、前記2つのニップローラー(201、202)のうちの少なくとも一方に予張を印加することと、
を含む、前記方法。
【請求項18】
前記予張の前記印加は、前記それぞれのニップローラー(201、202)の少なくとも1つのローラージャーナル(205)の半径方向の偏向を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのローラージャーナル(205)の前記半径方向の偏向は、前記ローラージャーナル(205)上に設けられた二重偏心器(99)の相対的及び/または均一な枢動を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記半径方向の偏向は、前記ニップローラー(201、202)のうちの少なくとも一方の、対向する2つのローラージャーナル(205)の偏向を含み、両方のローラージャーナル(205)は、同じ方向へ半径方向に偏向される、請求項18または請求項19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記半径方向の偏向は、両方のニップローラー(201、202)の対向する2つのローラージャーナル(205)の前記偏向を含み、前記対向するローラージャーナル(205)は、それぞれ同じ方向に偏向され、前記第1のニップローラー及び前記第2のニップローラー(201、202)の前記ローラージャーナル(205)は、同じ方向に、または直径方向で反対方向に、偏向される、請求項18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ニップローラー(201、202)のそれぞれに対して、それぞれ半径方向に作用する線力によって、前記ニップ(210)から離れた側の前記ニップローラー(201、202)のそれぞれの側で、両方のニップローラー(201、202)を支持すること、をさらに含む、請求項17~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
電極フィルム(613)であって、均一な厚さを有し、前記電極フィルム(613)の幅方向の厚さのばらつきが10μm以下であり、粉末型電極前駆体材料(905)を、第1のニップローラー(201)と第2のニップローラー(202)との間に形成されたニップ(210)に通過させることであって、その過程で、前記粉末型電極前駆体材料(905)が、せん断力を受けることによって、電極フィルム(613)が形成される、前記通過させることと、前記粉末型電極前駆体材料(905)が前記それぞれのニップローラー(201、202)の前記ニップ(210)を前記通過することによって生じる力ベクトル(F)に対抗するために、前記ニップローラー(201、202)のうちの少なくとも一方に予張を印加することと、によって得られる、前記電極フィルム(613)。
【請求項24】
アノードフィルム、カソードフィルム、セパレータフィルム、電流コレクターフィルム、中間層フィルム、接着フィルム、プライマーフィルム、または上記のフィルムのいくつかで構成されている積層体、のうちの1つ以上である、請求項23に記載の電極フィルム(613)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末状の電極前駆体材料から電極フィルムを製造するためのカレンダーに基づいており、少なくとも1つの第1のニップロールと、第1のニップロールと反対方向に回転し、その間にニップが形成される、少なくとも1つの第2のニップロールとを有し、カレンダーは、粉末状の電極前駆体材料がニップを通過するときに、これにせん断力を受けさせて、この際に電極フィルムを形成するように設計されている。
【0002】
電極は、電子デバイス、電気機械デバイス、電気化学デバイス、及びその他の有用なデバイスに電力を供給するために広く使用されている電気エネルギー貯蔵セルで使用することができる。このようなセルには、一次化学セルや二次(充電式)セルなどのバッテリー、燃料電池、ウルトラキャパシタを含む様々な種類のコンデンサが含まれる。電極は、水処理プラントでも使用され得る。特に電気モビリティは明らかに成長している。電気自動車のエネルギー源であるバッテリーは、コストの大部分を占めている。これは電気自動車の生産に直接関係している。これには、効率的でコスト効率の高い生産と同時に、エネルギー密度の向上が必要になる。このために、リチウムイオン電池などの電池を製造するプロセスチェーン内で、カレンダリング方法は極めて重要である。
【0003】
エネルギー貯蔵システムの貯蔵能力にとって重要な構成要素は電極である。バッテリー電極の容量や効率など、電極の電気化学的能力は、様々な要因によって決まる。これらには、活物質、バインダー、及び添加剤の分布、そこに含まれる材料の物理的特性(活物質の粒径や表面積など)、活物質の表面特性、ならびに電極フィルムの物理的特性(密度、多孔度、凝集性、及び導電性要素への接着性など)が含まれる。乾式処理システム及び方法では、従来、高せん断及び/または高圧の加工ステップを使用して、電極フィルム材料を分解し、混合している。そのようなシステム及び方法は、湿式製造される電極フィルムに比べて、構造上の利点に寄与している可能性がある。しかし、乾式自立型電極フィルム及び乾式電極の製造には、高い加工圧力及び大きなシステム寸法(したがって大きなスペース要件)が必要になるため、改善の余地が残されている。
【0004】
エネルギー貯蔵装置用の乾式電極を製造するためのマルチロールカレンダーが、文献US2020/0 227 722 A1から知られている。このシステムは、乾式電極材料の第1の供給システム、連続して配置された複数のカレンダーロール、及びコントローラを備える。カレンダーロールは、それぞれの間に隙間が形成されるように配置される。第1のニップが、第1の乾式電極材料供給システムから乾式電極材料を受け取り、乾式電極材料から乾式電極フィルムを形成するように設けられる。
【0005】
先行技術から知られているマルチロールカレンダーには、ニップに作用する力によりカレンダーロールが横方向に動く可能性があり、製造される電極フィルムの厚さに不正確さが生じ、またはシステムに振動が生じるという欠点がある。ロール幅が大きくなるほど、またロール直径が小さくなるように選択されるほど、問題は大きくなる。しかし、リチウムイオン電池の需要が増加するにつれて、システムの生産性を高め、電極の品質を向上させるために、とりわけ、より幅の広いロールと、場合によってはより直径の小さいロールとを使用する必要がある。そのため、上記の問題を防ぐ解決策が必要である。
【0006】
したがって、本発明の目的は、より高いプロセス安定性を可能にし、より均一な電極フィルムを製造するように設計されるような方法で、カレンダーを改良することである。その結果、本発明によるカレンダーは、電極を製造するための簡素化された、より費用効果の高い方法を可能にする。
【0007】
この目的は、独立請求項のそれぞれの特徴を有する装置、方法、または電極フィルムによって達成される。
【0008】
そのために、第1のニップロールまたは第2のニップロールのうちの少なくとも一方が、圧縮プロセスによってニップ内で生成され、それぞれのニップロールに作用する非軸方向の、特に半径方向及び/または接線方向の力ベクトルに抵抗してニップロールを予張するための少なくとも1つの予張付与装置を有し、予張付与装置によって、予張の方向及び/または予張力の大きさが調整可能であることが提供される。
【0009】
本発明によるカレンダーは、とりわけ、カレンダーによって形成される電極ウェブが、全てではないが少なくとも一部のプロセスステップの間、カレンダーロール上に位置して支持され得るので、自立型である必要がないという利点を有する。例えば、電極ウェブは、電極ウェブを金属箔上に積層して電極を形成する積層ステップを含む、マルチロールカレンダーシステム内の全てのプロセスステップ中に、少なくとも1つのカレンダーロールによって支持され得る。
【0010】
本発明によるカレンダーを活用して製造されるエネルギー貯蔵装置は、例えば平面状、渦巻に巻かれた形状、ボタン形状、歯付き形状、またはポーチ形状など、任意の好適な構成を有することができる。エネルギー貯蔵装置は、例えば、発電システム、無停電電源システム(UPS)、太陽光発電システム、例えば産業機械及び/または輸送に使用されるエネルギー回収システムなどのシステムの構成要素であり得る。エネルギー貯蔵装置は、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、及び/または電気自動車(EV)を含む、様々な電子機器及び/または動力車に電力を供給するために使用することができる。
【0011】
両方のニップロールは、それぞれ、その前面ロールジャーナルを介して機械フレーム内に取り付けられ、予張付与装置は、第1のニップロールまたは第2のニップロールの少なくとも1つのベアリングに割り当てられ、予張付与装置によって、ロールジャーナルを、少なくとも1つのベアリングに対して、任意の方向に、かつ調整可能な大きさで、半径方向に偏向することができる、ことが提供され得る。ニップロールは、それぞれ、ロールジャーナルよりも大きな直径を持つ中央カレンダリングセクションを持つことができる。ニップをカレンダリングセクション間に形成することができ、ニップの長さをカレンダリングセクションの長さに対応させることができる。粉末状の電極前駆体材料をニップの長さにわたって均一にニップ内に供給することにより、可能な限り均一な厚さ分布を有する電極フィルムが形成されることが提供され得る。
【0012】
特に、予張付与装置は二重偏心器を備え、この二重偏心器は、互いに独立して枢動可能な内側偏心ブッシュと外側偏心ブッシュとを備えることが提供され得る。内側偏心ブッシュは、少なくとも部分的に外側偏心ブッシュ内に収容することができる。内側偏心ブッシュの外面は、外側偏心ブッシュの内面と対向していてもよい。内側偏心ブッシュと外側偏心ブッシュとの間に、隙間を設けることができる。内側偏心ブッシュは、外側偏心ブッシュから部分的に突出することができる。外側偏心ブッシュは、内側偏心ブッシュから離れて延在するセクションを有することができる。内側偏心ブッシュの外径は、外側偏心ブッシュの内径よりも小さくてもよい。さらに、内側偏心ブッシュは、ロールジャーナルを収容するための内部ボアを有することができる。内側偏心ブッシュ及び外側偏心ブッシュの内部ボアは、それぞれの外径に対して偏心して配置することができる。内側ブッシュと外側偏心ブッシュとの偏心は、開始位置において、内側偏心ブッシュに収容されたロールジャーナルが二重偏心器の中央に収容または配置されるように調整することができる。カレンダーには、内側偏心ブッシュを軸方向に枢動させる装置を設けることができる。カレンダーには、さらに、外側偏心ブッシュを軸方向に枢動させる装置を設けることができる。これにより、内側と外側の偏心ブッシュを互いに独立して枢動させることが可能になる。内側偏心ブッシュと外側偏心ブッシュとを互いに対して枢動させることにより、偏向のオーダーの大きさを調整することができることが提供され得る。さらに、両方の偏心ブッシュをベアリングジャーナルに対して互いに枢動させることによって、偏向の方向を調整できることが提供され得る。二重偏心器は、関連するロールベアリングと連携して、ロールを曲げることができる。ロールベアリングは、ロール上の二重偏心器から軸方向に間隔を空けて配置され、ロールの中心方向にさらに配置することができる。
【0013】
第1のニップロールまたは第2のニップロールが、内側偏心ブッシュ内に回転可能に取り付けられていることが考えられる。それぞれのロールジャーナルは、少なくとも部分的に、予張付与装置または内側偏心ブッシュ内に延びることができる。
【0014】
さらに、外側偏心ブッシュは、機械フレーム内に配置されたボアに対して回転可能に取り付けられ、そのボア内に予張付与装置が収容されることが提供され得る。ボアは、機械フレームに直接導入することができる。あるいは、ボアは、機械フレームに挿入されたシリンダライナーであってもよい。ボアと外側偏心ブッシュとの間に、第1のラジアルベアリングを形成または配置することができる。
【0015】
内側偏心ブッシュが外側偏心ブッシュに対して回転可能に取り付けられることも提供され得る。外側偏心ブッシュと内側偏心ブッシュとの間に、第2のラジアルベアリングを形成または配置することができる。
【0016】
さらに、内側偏心ブッシュとロールジャーナルとの間に、第3のラジアルベアリングを形成または配置することができる。第1のラジアルベアリング及び/または第2のラジアルベアリング及び/または第3のラジアルベアリングは、円筒形ロールベアリングまたはニードルベアリングとして設計することができる。
【0017】
ニップ内に十分な押圧力を発生させ、予張力を発生させるためのカウンターベアリングを提供するために、第1のニップロールに隣接して第1の支持ロールを配置することができ、第2のニップロールに隣接して第2の支持ロールを配置することができ、各支持ロールは、隣接するニップロールと反対方向に回転する。特に、支持ロールの直径は、第1のニップロール及び第2のニップロールの直径よりも大きいことが提供され得る。例えば、ロールの直径は約150~250mm、好ましくは200mmであり得、支持ロールの直径は600~800mm、好ましくは700mmであり得る。二重偏心器の開始位置では、ニップロールと支持ロールとの軸が1つの平面内で互いに位置合わせされることが提供され得る。
【0018】
第1のニップロールと第1の支持ロールとが互いに転がり合い、第2のニップロールと第2の支持ロールとの間に電極フィルムを通過させるためのニップが形成され、第2のニップロールは、第2のニップロールの上側または下側の周囲に電極フィルムを案内するように設計されていることが提供され得る。この場合、第1のニップロールを第1の支持ロール上に支持させることができるように、第1の支持ロールと第1のニップロールとを直接接触させることができる。第2のニップロールと第2の支持ロールとは、設けられたニップのため、互いに間隔を空けて配置され得る。しかしながら、第2のニップロールは、ニップを通って案内される電極フィルムを介して、第2の支持ロール上に間接的に支持させてもよい。
【0019】
第1のニップロールと第2のニップロールとの間のニップの上方には、粉末状の電極前駆体材料をニップ内に連続的に搬送するための装置を配置することができる。装置は、粉末状の電極前駆体材料を受け入れるためのホッパーを備え、このホッパーはニップ幅全体にわたって延在させることができる。ホッパーの下側には、粉末をニップ内に狙い通りに搬送するための搬送ギャップを設けることができる。
【0020】
第1のニップロールまたは第2のニップロールの少なくとも一方には、その向かい合わせのロールジャーナルに予張付与装置が設けられることが提供され得る。ただし、第1のニップロールと第2のニップロールの両方が、それらの向かい合わせのロールジャーナルに、それぞれ予張付与装置を備えていることも提供され得る。このことは、両方のニップロールを互いに独立して、または互いに対抗しても、予張をかけることができることを意味する。
【0021】
本発明はさらに、粉末状の電極前駆体材料から均一な厚さを有する電極フィルムを製造する方法であって、以下のステップを含む方法に関する。
粉末状の電極前駆体材料を、2つのニップロールによって形成されたニップ内に搬送すること。
粉末状の電極前駆体材料をニップに通過させることであって、粉末状の電極前駆体材料がニップを通過する際にせん断力を受けることによって、電極フィルムが形成される、通過させること。
粉末状の電極前駆体材料がそれぞれのニップロールのニップを通過することによって生じる力ベクトルに対抗するために、2つのニップロールのうちの少なくとも一方に予張を印加すること。
【0022】
予張の印加は、それぞれのニップロールの少なくとも1つのロールジャーナルの半径方向の偏向を含むことを提供することができる。
【0023】
さらに、少なくとも1つのロールジャーナルの半径方向の偏向は、ロールジャーナル上に設けられた二重偏心器の相対的及び/または均一な枢動を含むことが提供され得る。相対的及び/または均一な枢動は、特に、二重偏心器の内側及び外側の偏心ブッシュに影響を与えることができる。
【0024】
半径方向の偏向は、ニップロールのうちの少なくとも一方の、対向する2つのロールジャーナルの偏向を含み、両方のロールジャーナルが、同じ方向へ半径方向に偏向されることが提供され得る。同じ方向とは、例えば、両方のロールジャーナルが、下向きに偏向されること、またはロール軸を上から見たときにロール軸の片側に向かって水平に偏向されることを意味し得る。
【0025】
さらに、半径方向の偏向は、両方のニップロールの、2つの対向するロールジャーナルの偏向を含み、対向するロールジャーナルはそれぞれ同じ方向に偏向され、第1のニップロール及び第2のニップロールのロールジャーナルは、同じ方向に、または直径方向で反対方向に、偏向されることが提供され得る。例えば、隣接するロールジャーナルは、両方とも下方向または上方向に、互いに向かってまたは互いから離れて偏向する可能性がある。
【0026】
さらに、この方法は、2つのニップロールのそれぞれを、ニップロールのニップから離れた側で、各ニップロールに半径方向に作用する線力によって、支持することを含むことができる。線力は、例えば、2つのニップロールに隣接して配置された支持ロールを介して伝達され得る。
【0027】
本発明はさらに、電極フィルムであって、均一な厚さを有し、電極フィルムの幅方向の厚さのばらつきが10μm以下であり、粉末状の電極前駆体材料を、第1のニップロールと第2のニップロールとの間に形成されたニップに通過させることであって、その過程で、粉末状の電極前駆体材料にせん断力を加えて電極フィルムを形成する、通過させることと、この場合、粉末状の電極前駆体材料がそれぞれのニップロールのニップを通過することによって生じる力ベクトルに対抗するために、ニップロールのうちの少なくとも一方に予張を印加することと、によって得られる、電極フィルムに関する。
【0028】
電極フィルムは、アノードフィルム、カソードフィルム、セパレータフィルム、電流コレクターフィルム、中間層フィルム、接着フィルム、プライマーフィルム、または上記フィルムのいくつかで構成される積層体、のうちの1つ以上であり得る。
【0029】
本発明のさらなる詳細は、以下の図を使用して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】ベアリングジャーナルを半径方向に偏向させる二重偏心器の概略図を示す。
図2】ロールのロールジャーナルの半径方向の偏向によって引き起こされる可能性のあるロールの偏向の概略図を示す。
図3】向かい合わせに配置した本発明による2つのカレンダーの設置状況の側面図を示す。
図4】偏向が全くないか、または偏向が防止されているローラー位置合わせの斜視図を示す。
図5A】二重偏心器の、ニップにおけるカレンダーロールの、結果として生じる水平方向内向きの偏向との相互作用の例示を示す。
図5B】二重偏心器の、ニップにおけるカレンダーロールの、結果として生じる水平方向外向きの偏向との相互作用の例示を示す。
図5C】二重偏心器の、ニップにおけるカレンダーロールの、結果として生じる反対方向の垂直偏向との相互作用の例示を示す。
図5D】二重偏心器の、ニップにおけるカレンダーロールの、結果として生じる反対方向の垂直偏向との相互作用の例示を示す。
図6A】隣接する支持ロールと組み合わせたカレンダーロールの斜視図を示す。
図6B】隣接する支持ロールと組み合わせたカレンダーロール、及びニップ内に搬送される粉末状の電極前駆体材料、またはニップ後に形成された電極フィルムの斜視図を示す。
図7A】隣接する支持ロールと組み合わせたカレンダーロールであって、両方のカレンダーロールには、圧縮プロセスによって誘発された回避曲げがあり、そのため電極フィルムの厚さ分布が不均一になる、カレンダーロールの斜視図を示す。
図7B】隣接する支持ロールと組み合わせたカレンダーロールであって、一方のカレンダーロールには、圧縮プロセスによって誘発された回避曲げがあり、そのため電極フィルムの厚さ分布が不均一になる、カレンダーロールの斜視図を示す。
図8A】隣接する支持ロールと組み合わせたカレンダーロールであって、カレンダーロールの位置合わせが正しいため電極フィルムの厚さ分布が均一になる、カレンダーロールの斜視図を示す。
図8B】隣接する支持ロールと組み合わせたカレンダーロールであって、カレンダーロールの位置合わせが正しいため電極フィルムの厚さ分布が均一になり、電極フィルムが1つの支持ロールの周りに案内される、カレンダーロールの斜視図を示す。
図9A】本発明によるカレンダーにおける電極フィルム製造プロセスの例示的な側面図を示す。
図9B】本発明によるカレンダーにおける電極フィルム製造プロセスの例示的な上面図を示す。
図10】本発明による予張付与装置に取り付けられたロールジャーナルの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、ロールジャーナル205を、それぞれのニップロール201、202の中心軸に直交する任意の角度で、調整可能な大きさで偏向させるために使用される例示的な二重偏心器99を示す。二重偏心器99は、外側偏心ブッシュ101を備え、その内部ボアは外径に対して偏心している。二重偏心器99には内側偏心ブッシュ102も備わっており、その内部ボアは開始位置で外側偏心ブッシュの外径と同心となっている。二重偏心器99は、予張付与装置100を備えたロールジャーナル205の偏向によってニップロール201、202に偏向を作用させるように構成され、ニップロールの偏向が、電極粉末によってニップ内に生成される力ベクトルFによって相殺され得るようにされる。内側偏心ブッシュ102と外側偏心ブッシュ103とは、互いに対してまたは同じ方向に枢動可能であるため、内側偏心ブッシュの内部ボアの偏心度は調整可能であり、偏向の方向と度合いとは可変である。各偏心ブッシュ102、102は、厚肉部と、厚肉部の反対側の薄肉部とを有している。上記の開始位置では、外側偏心ブッシュ101の厚肉部と内側偏心ブッシュ102の薄肉部とが近接しており、外側偏心ブッシュ101の薄肉部と内側偏心ブッシュ102の厚肉部とが近接している。両方の偏心ブッシュ101、102が互いに対して180°だけ回転するとき、中心を外れた可能な最大の偏向を実現できる。
【0032】
図2は、対向する2つのロールジャーナル205のそれぞれに予張付与装置100を備えたニップロール201の可能な偏向を例示しており、これは偏心ブッシュ101、102を開始位置に対して回転させることによって実現され得る。図2は、ロールジャーナル205が垂直下方に偏向することになる、偏心ブッシュ101、102の回転、ロールジャーナル205が水平左方に偏向することになる、偏心ブッシュ101、102の回転、ロールジャーナル205が垂直上方に偏向することになる、偏心ブッシュ101、102の回転、及びロールジャーナル205が水平右方に偏向することになる、偏心ブッシュ101、102の回転の表現を含む。内側偏心ブッシュと外側偏心ブッシュとの対応する枢動方向が、それぞれの場合に示されている。例えば、ロールジャーナル205を垂直上方に偏向させるには、まず、外側偏心ブッシュ101を内側偏心ブッシュ102とともに、図に示すように反時計回りに約120°だけ枢動させ、次に、内側偏心ブッシュ102を外側偏心ブッシュ101に対して時計回りに約90°だけ元へ枢動させる。さらなる偏向位置は、それぞれの場合に例示されている矢印の方向で示されるように、対応する方法で設定される。
【0033】
図3は、実施形態による統合圧延システムにおける支持ロール301、302に対するロール201、202の配置を示すカレンダー10の側面図を示す。カレンダー10は、両面に電極フィルム613がコーティングされたセパレータフィルム303を製造するために使用される。装置2は、正面に並んで配置された2つのカレンダー装置を有し、これらのカレンダー装置は、反対方向の主搬送方向Y1、Y2を有する。カレンダー装置は、それぞれ6つのロール301、201、202、302、401を有し、各場合において、入力側エンドロール301は、第1のニップロール201上を直接転がる支持ロール301として設計され、出力側エンドロールは共通のエンドニップ13を形成する。セパレータフィルム303は、上から垂直にエンドニップ13に供給され、2つのカレンダー装置で製造された電極フィルム613によって両面がコーティングされるため、コーティングされたセパレータフィルム303は、エンドニップ13から垂直下向きに出て、長さに合わせて切断され、及び/または巻き取られ、またはさらに加工され得る。
【0034】
図4は、偏向を伴わずに、したがって、ニップロール201、202に設けられた1つ以上の予張付与装置100が開始位置にあるニップロール201、202の位置合わせを示す。この位置合わせは、第2のニップロール202に隣接して平行に配置されたニップロール201を備える。
【0035】
図5A図5Dは、ニップロールの偏向をニップ210に作用する力ベクトルFに整合させる際の、ニップロール201、202の内側偏心ブッシュ102及び外側偏心ブッシュ202の相互作用を示す。図5Aは、第2のニップロール202と一列に並んだニップロール201を示しており、第1のニップロール201の偏心ブッシュ102、102は、ロールジャーナル205の水平方向左への偏向を生じさせ、したがってロールの水平方向右への偏向を生じさせるように位置合わせされており、第2のニップロール202の偏心ブッシュ102、102は、ロールジャーナル205の水平方向右への偏向を生じさせ、したがってロールの水平方向左への偏向を生じさせるように位置合わせされている。図5Bは、第2のニップロール202と一列に並んだニップロール201を示しており、第1のニップロール201の偏心ブッシュ102、102は、ロールジャーナル205の水平方向右への偏向を生じさせ、したがってロールの水平方向左への偏向を生じさせるように位置合わせされており、第2のニップロール202の偏心ブッシュ102、102は、ロールジャーナル205の水平方向左への偏向を生じさせ、したがってロールの水平方向右への偏向を生じさせるように位置合わせされている。図5Cは、第2のニップロール202と一列に並んだニップロール201を示しており、第1のニップロール201の偏心ブッシュ102、102は、ロールジャーナル205の垂直方向上への偏向を生じさせ、したがってロールの垂直方向下への偏向を生じさせるように位置合わせされており、第2のニップロール202の偏心ブッシュ102、102は、ロールジャーナル205の垂直方向下への偏向を生じさせ、したがってロールの垂直方向上への偏向を生じさせるように位置合わせされている。図5Dは、第2のニップロール202と一列に並んだニップロール201を示しており、第1のニップロール201の偏心ブッシュ102、102は、ロールジャーナル205の垂直方向下への偏向を生じさせ、したがってロールの垂直方向上への偏向を生じさせるように位置合わせされており、第2のニップロール202の偏心ブッシュ102、102は、ロールジャーナル205の垂直方向上への偏向を生じさせ、したがってロールの垂直方向下への偏向を生じさせるように位置合わせされている。
【0036】
図6A図6Bは、ニップロール201、202と支持ロール301、302との位置合わせと、電極フィルム613を製造するためのロールの使用とを示す。これには、左から右に、全てが互いに位置合わせされている、第1の支持ロール301、第1のニップロール201、第2のニップロール202、及び第2の支持ロール302を含む、隣接するロールの配置が含まれる。粉末状の電極前駆体材料905は、2つのニップロール201、202間のニップ210に上から供給され、そこで電極フィルム613に形成され、ニップロール201、202の下側でニップ210を出ていく。
【0037】
図7A図7Bは、本発明による予張付与装置100によって予張がかけられていない場合に、ニップロール201、202の偏向から生じる許容できない厚さ公差を示す。電極粉末905がニップ210を通って搬送されることで生じるニップ210内の押圧力のため、ニップロール201、202は上方への偏向を受け、または押圧力を回避する。その結果、許容できない厚さ公差を有する電極フィルム613が製造され、具体的にはフィルムの厚さが中心に向かって増加する可能性がある。図7Bに示すように、ニップロール201、202の回避動作は非対称に行われることもあり、その結果、ニップロール201、202の一方のみが偏向し、またはニップロール201、202が異なる程度に偏向する。図示の例では、第2のニップロール202のみが上方に偏向し、第1のニップロール201は全く偏向を受けない。なぜなら、第1のニップロール201と第1の支持ロール301とは直接接触しているため、その間の摩擦が高くなるが、第2のニップロール202と電極フィルム613との間の摩擦は低くなるからである。
【0038】
図8A図8Bは、一実施形態による、正しく位置合わせされたニップロール201、202によって製造される均一な層厚を有する電極フィルム613を示す。正しく調整された予張付与装置100により、2つのニップロール201、202が正しく位置合わせされることによって、正味の偏向がなくなり、またはニップ内に存在する加工の力と予張の力とが互いに相殺し、その結果、均一な厚さ分布を持つフィルム613が製造される。図8Bは、主搬送方向にロールの周りを曲がりくねって案内される電極フィルム613のさらなる給送を示す。
【0039】
動作中、乾燥粉末混合物905がニップ210を通過するときに形成されるフィルム613を調整するように、ニップロール201、202は偏向される。いくつかの実施形態では、ロールジャーナル205の偏向は、いずれの場合も、約200mmの直径を有するロールに基づいて、約5μm、約10μm、約15μm、約20μm、約25μm、約30μm、約35μm、約40μm、約45μm、約50μm、約55μm、約60μm、約65μm、約70μm、約75μm、約80μm、約85μm、約90μm、約95μm、または約100μmである。あるいは、偏向の大きさは、圧力ロールの全体寸法に基づいて選択された比率として表すこともできる。一実施形態では、ロールの偏向量をロール直径で割った値に基づいて、偏向比は、約2.5×10-5~約0.0005、約5×10-5~約0.0005、または約7.5×10-5~約0.0005である。上記値は、直径200mmのニップロールに基づいて示されているが、ローラーの直径は、このように限定されるものではない。
【0040】
ロールの偏向の量と方向とに加えて、個々のロールに接続された偏心ブッシュのみを回転させることによって、ニップロール201、202を個別に制御することができる。これにより、ユーザーは、ロール間の距離をさらに制御し、結果として、ロール間を通過するフィルムの厚さを制御することが可能になる。回転方向は限定されず、偏心ブッシュ101、102のそれぞれを任意の量だけ別々に回転させることができる。さらに、特定のニップロールに接続された個々の偏心ベアリングを調整できるため、各ロールの偏向をさらに制御することが可能になる。
【0041】
いくつかの実施形態では、ニップロール201、202はクラウンを有し、これは、ロールが電極フィルム613に及ぼす精度と精密度とをさらに高めるために使用される。クラウンは、ロールが偏向され、または別の方法で操作される場合にも、接触面、つまりフィルムのプロファイル及び厚さが平坦で正確な状態に維持されることを保証する。クラウンの高さには制限はなく、特定のフィルムの要件と各ロールに選択された偏向とに応じて選択される。いくつかの実施形態では、加圧ローラーのクラウンは、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μmであり、あるいは上記の値の任意の範囲、例えば3μm~約10μm、約4μm~約9μm、または約4μm~約8μmなどである。
【0042】
ニップロール201、202によって形成されるフィルム613は、限定されず、金属、ポリマー、紙、セラミック、またはこれらの1つ以上の混合物もしくは積層体であってもよい。特定の実施形態では、フィルムは乾燥粉末から形成され、これは、その後、リチウムイオンセルの一部として成形される。乾燥粉末からフィルムが形成されると、そのフィルムは、電池を構築するためのカソードまたはアノードの形状に形作られる。
【0043】
フィルムの厚さを制御するためにニップロール201、202間のニップ210を調整することに加えて、ニップロール201、202及び予張付与装置100を使用して、フィルムにかけられる圧力を調整することもできる。第1のニップロール201または第2のニップロール202によって加えられる力の大きさは、もっぱら偏心ベアリングによってなされる調整のみによるものであり、外部構造または外部装置が全くない場合では、最大約75kN、最大約50kN、最大約25kN、約1kN~約75kN、約1kN~約50kN、約10kN~約50kN、約10kN~約40kN、約10kN~約30kN、または上記範囲の1つ以上の任意の組み合わせとなり得る。このようにして、第1のニップロール201と第2のニップロール202とは、それぞれ独立して調整することができ、粉末またはフィルムに対して大きな圧力をかけることができる。上記の圧力は、二重偏心器99によってなされる調整のみによるものであり、第1のニップ210及び第2のニップ210は、装置内の他の構造に基づいて、それぞれ追加の力をかけてもよいと想定される。
【0044】
あるいは、二重偏心器99及び関連するニップロール201、202の精度は、ニップロール201、202によって形成されるフィルム613の均一性によって測定される。いくつかの実施形態では、ニップロール201、202によって形成されるカソードフィルムまたはアノードフィルムの測定される厚さのばらつきは、約10μm以下、約8μm以下、約6μm以下、約4μm以下、約3μm以下、約2μm以下、約1μm以下、約1~10μm、約1~8μm、約1~6μm、約1~4μm、約1~3μm、または約1~2μmである。上記の値は、製造される電池のフォームファクターに必要なフィルムの幅全体にわたって測定される。
【0045】
ニップロールのクラウン、ニップロールに加えられる力、ならびにフィルムの均一性によって測定される偏心ベアリング及び関連するニップロールの精度について説明した上記の各段落では、これらの値は、本装置を使用して製造されることになるリチウムイオンセルなどのセルのフォームファクターに必要な幅に関して順番に測定される。フォームファクターの例は、限定されず、円筒形セル10440または1044(直径10mm、長さ44mm)、14500または1450(直径14mm、長さ50mm)、16340または1634またはCR123A(直径16mm、長さ34mm)、18650または1865(直径18mm×長さ65mm)、21700または2170(直径21mm×長さ70mm)、26650または2665(直径26mm×長さ65mm)、32650または3265(直径32mm×長さ65mm)、及び4680(直径46mm×長さ80mm)を含む。角柱型セルやポーチ型セルも考えられ、考慮される寸法に制限はない。
【0046】
開示された装置は、さらに、偏心ベアリング99、ニップロール201、202、またはその両方に接続される1つ以上の位置センサーを含むことができる。位置センサーは、偏心ベアリングの回転量またはニップロールの回転量を決定し、ニップロールまたは偏心ベアリングのその回転量に対応するデジタル信号またはアナログ信号を供給する。このような位置センサーは、限定されず、電位差センサー、静電容量位置センサー、または光学位置センサーを含む。光学位置センサーは、紫外線(UV)、可視光、または赤外線を含む、任意の光で動作できる。特定の実施形態では、光位置センサー用に選択される光は、上記の帯域幅の1つを有するレーザーである。
【0047】
さらに他の実施形態では、または提供された位置センサーと組み合わせて、1つ以上の層厚さセンサーを設けることもできる。このフィルム厚さセンサーは、限定されず、レーザーセンサーなどの光学センサーを含む。フィルム厚さセンサーは、フィルム上の少なくとも1点のフィルム厚さを測定することにより、圧力ロールによって形成されたフィルムの厚さを決定する。いくつかの実施形態では、フィルムの幅全体にわたる複数の点で厚さを測定するように構成された1つ以上のフィルム厚さセンサーがある。厚さセンサーは、フィルムの厚さに対応するデジタル信号またはアナログ信号を供給する。
【0048】
本開示のニップロール201、202及び関連構成要素の使用は、限定されないが、特定の使用が望ましい。いくつかの実施形態では、本開示のニップロールに加えて、当業者に知られている他の様々な構成要素を含む生産ラインが構築される。ニップロールは、生産ライン全体で、製造されるフィルムの厚さを正確に制御するために使用される。本開示のニップロール及び関連構成要素で形成されるように構成されたフィルム、または本開示のニップロール及び関連構成要素を使用するように構成されたフィルムの例には、1つ以上のアノードフィルム、カソードフィルム、セパレータフィルム、電流コレクターフィルム、中間層フィルム、接着フィルム、プライマーフィルム、または上記のフィルムの2つ以上を含む積層体が含まれる。
【0049】
開示されたニップロール201、202及び関連構成要素は、粉末からフィルムを形成するために有用であると開示されているが、他の用途もある。例えば、ニップロール及び関連構成要素が、スラリーなどの液体または非ニュートン流体のフィルムを形成できることが考えられる。
【0050】
図9A及び図9Bは、本開示の特に有利な実施形態の例示を示す。図9A及び図9Bによれば、カレンダー10は、粉末電極材料905を受け入れるための粉末ホッパー904のすぐ近くに配置された第1のニップロール201及び第2のニップロール202を備える。さらに、第1のニップロール201及び第2のニップロール202の一方の側には、第1の支持ロール301及び第2の支持ロール302が配置されている。使用時には、典型的には乾式電極用の粉末である電極材料905が、第1のニップロール201及び第2のニップロール202によって圧縮され、それによって乾式電極フィルム613が形成される。乾式電極フィルム613は、第1のニップロール201及び第2のニップロール202を通過して、それらから圧力を受けて変形した後、第1のカレンダーロール302及び第2のカレンダーロール401に巻き付く。乾式電極フィルム613は、その移動中に圧縮され、第1の加圧ローラー201と第2の加圧ローラー202とに等しく反対方向の力を加える。しかしながら、第1のニップロール201と第2のニップロール202とは、摩擦差のため異なる力を受ける。図示の例では、第1のニップロール201は偏向を受けるため、それに応じて予張付与装置100(図示せず)によって予張される必要がある。第2のニップロール202は、乾式電極613に囲まれており、図示のように偏向はない。そのため、第2のニップロール202は、第1のニップロール201に必要とされる程度まで調整される必要がない。
【0051】
したがって、ここで説明する文書及び図9Bでは、第1のニップロール201及び第2のニップロール202は、1つ以上の予張付与装置100によって調整され、第1のニップロール201に及ぼされる調整力の大きさが、第2のニップロール202に及ぼされる調整力の大きさよりも大きくなるように調整される。その結果、乾式電極フィルム613が通過する際に、第1のニップロール201と第2のニップロール202との間の隙間が均一かつ正確に制御されることが保証される。
【0052】
図10は、ニップロール201と、ニップロール201のロールジャーナル205に取り付けられた予張付与装置100とを通る断面図を示す。ローラー201は、ロールベアリング700を用いて機械フレーム500に取り付けられている。さらに、機械フレームには、ローラー201、202の前面に、その中にシリンダブッシュが収容されたボア520があり、その中にニップロール201、202のロールジャーナル205が収容され、予張付与装置100に取り付けられる。予張付与装置100は、本質的に内側偏心ブッシュ102と外側偏心ブッシュ101とからなる二重偏心器99を備える。内側偏心ブッシュ102は、外側偏心ブッシュ101に部分的に重なるように挿入される。外側偏心ブッシュ101は、第1のラジアルベアリング110を介して、シリンダブッシュに対して軸方向に回転可能に取り付けられている。内側偏心ブッシュ102は、第2の軸方向に回転可能なラジアルベアリング120を介して、外側偏心ブッシュ101に対して取り付けられている。ロールジャーナル205は、第3のラジアルベアリング130を介して、内側偏心ブッシュ102に対して軸方向に回転可能に取り付けられている。図示の配向では、二重偏心器99はその開始位置にあり、その場合、外側偏心ブッシュの厚い部分が内側偏心ブッシュ102の薄い部分に近接し、外側偏心ブッシュ101の薄い部分が内側偏心ブッシュ102の厚い部分に近接しているので、ロールジャーナルは中央に配置され、偏向されない。偏心ブッシュ101及び102は、別個の枢動装置によって、互いに独立して調整可能である。ロールセンターに規定のロールベンドを作るために、ロールジャーナル205が収容された二重偏心器99は、二重偏心器99とロールベアリング700との間の距離がレバーアームとして機能するように、ロールベアリング700に対して偏向される。
【0053】
上記の説明、図、及び特許請求の範囲に開示された本発明の特徴は、個別にも、また任意の組み合わせでも、本発明の実施に不可欠となり得る。
【符号の説明】
【0054】
(参照符号のリスト)
10 カレンダー
100 予張付与装置
99 二重偏心器
101 外側偏心ブッシュ
102 内側偏心ブッシュ
110 第1のラジアルベアリング
120 第2のラジアルベアリング
130 第3のラジアルベアリング
201 第1のニップロール
202 第2のニップロール
205 ロールジャーナル
206 カレンダリングセクション
210 ニップ
301 第1の支持ロール
302 第2の支持ロール
303 セパレータフィルム
401 カレンダーロール
500 機械フレーム
520 ボア
613 電極フィルム
700 ロールベアリング
904 粉末ホッパー
905 粉末電極前駆体材料
D1 ロール直径
D2 支持ロール直径
F 力ベクトル
X 偏向方向
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
【国際調査報告】