(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】構成部材を支持構造に留め付けるための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
E04B 1/80 20060101AFI20241121BHJP
B25C 1/02 20060101ALI20241121BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
E04B1/80 100A
B25C1/02
E04B1/76 500F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527299
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2022082254
(87)【国際公開番号】W WO2023099231
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Hilti Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】フルカン グェルテキン
(72)【発明者】
【氏名】マルク バラフォン ゴメス
(72)【発明者】
【氏名】グュンター ドマニ
【テーマコード(参考)】
2E001
3C068
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001FA03
2E001FA14
2E001GA12
2E001LA12
2E001QA00
3C068AA01
3C068BB02
(57)【要約】
本発明は、構成部材を留め付けるための方法であって、以下のステップ、釘軸部と釘頭部とを備えた釘を用意するステップと、スリーブを釘軸部上に配置するステップと、打込要素及びガイドチャネルを用意するステップと、外周隙間が釘頭部とガイドチャネルとの間に形成されるように、釘頭部及びスリーブをガイドチャネル内に配置するステップと、釘を基板に向けて打込方向に移動させるために、ガイドチャネルを通して打込要素を釘頭部に向けて打ち込むステップと、釘が基板に向かって移動している間に、釘軸部とガイドチャネルと釘頭部との間でスリーブを圧縮するステップと、釘頭部を用いてスリーブに付勢を与えるステップとを含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成部材、特に断熱材を、基板、特に建物の壁又は天井に留め付けるための方法であって、
釘軸部と釘頭部とを有し、前記釘頭部は、前記釘軸部を越えて突出する頭部直径を有する釘を用意すること、
スリーブを前記釘軸部上に配置すること、
打込要素及び前記頭部直径を超える内径を有するガイドチャネルを用意すること、
周縁隙間が前記釘頭部と前記ガイドチャネルとの間に形成されるように、前記釘頭部及び前記スリーブを前記ガイドチャネル内に配置すること、
前記釘を前記基板に向けて打込方向に移動させるために、前記ガイドチャネルを通して前記打込要素を前記釘頭部に向けて打ち込むこと、
前記釘が前記基板に向かって移動している間に、前記釘軸部と前記ガイドチャネルと前記釘頭部との間で前記スリーブを圧縮すること、そして
前記釘頭部を用いて前記スリーブに予荷重を加えること
を含む、方法。
【請求項2】
前記釘頭部の直径は、前記スリーブの外径よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スリーブは、前記釘軸部と前記ガイドチャネルと前記釘頭部との間での前記圧縮中に塑性変形される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記スリーブは、前記釘軸部と前記ガイドチャネルと前記釘頭部との間での前記圧縮中に、前記釘軸部と前記ガイドチャネルと前記釘頭部との間の空洞を完全に埋める、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記構成部材を保持するための円盤と、前記円盤から突出するとともにシャフト底部を有する中空シャフトとを有し、前記シャフト底部は、特に前記釘軸部のための通路と、前記スリーブとを有し、前記スリーブは、前記シャフト底部から突出する、留め付け要素を用意すること、そして
前記ガイドチャネルが前記シャフト底部を圧迫し、前記スリーブが前記ガイドチャネル内に配置されるまで、前記ガイドチャネルを前記中空シャフトに挿入すること
を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ガイドチャネルと、前記打込要素と、前記打込要素のための駆動部とを有し、前記ガイドチャネルは、前記打込要素の全ての位置において前記打込要素を越えて前記打込方向に突出する、動力釘打ち機を用意すること、を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
構成部材、特に断熱材を、基板、特に金属基板、特に建物の壁又は天井に留め付けするための装置であって、
釘軸部と釘頭部とを有する釘であって、前記釘頭部は、前記釘軸部を越えて突出する頭部直径を有し、前記釘軸部は、前記釘が前記基板に打ち込まれたときに前記釘軸部に予荷重力を加えるように意図された予荷重要素を有する、釘と、
前記構成部材を保持するための円盤と、前記円盤から突出するとともにシャフト底部を有する中空シャフトとを有する留め付け要素であって、前記シャフト底部は、特に前記釘軸部のための通路と、前記シャフト底部から突出して前記釘軸部上に配置される、スリーブとを有する、留め付け要素と
を含む、装置。
【請求項8】
前記予荷重要素は、前記釘軸部の外周に配置された返しを含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記予荷重要素は、前記釘軸部の前記外周に配置された複数の返しを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記複数の返しは、溝によって離隔されて列状に配置される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記溝は、前記釘軸部の長手方向に対して4°~8°の傾斜角で傾斜している、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記スリーブは、プラスチック、特に熱可塑性プラスチックから実質的になる、請求項7~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記釘、打込要素、及び/又はガイドチャネルは、金属又は合金、特に鋼から実質的になる、請求項7~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記予荷重要素は、前記釘軸部の残り部分の材料よりも大きい材料硬度を有する材料を含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記予荷重要素は、亜鉛とニッケルとを含有する合金を含む、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状に構成された部材を基板に留め付けるための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築分野では、特に層状に構成された部材としての断熱材を、基板としての建物の壁又は天井に留め付けることが必要となる。断熱材は一般に建物の壁又は天井のための断熱材としての役割を果たし、壁又は天井の外側に留め付けられる。このために、留め付け要素が、取付要素例えば釘によって、壁又は天井に留め付けられる。プラスチック製の留め付け要素は、中空シャフトと、留め付け後に断熱材の外側に当接する円盤とを含み、このシャフトは、断熱材の貫通孔内に配置される。中空シャフトは、取付要素のための通路を有するシャフト底部を含み、その結果、取付要素を用いて留め付け要素を取付対象物に間接的に留め付けることができる。
【0003】
取付要素を基板に打ち込むために、ガイドチャネル内に案内される打込要素と、打込要素のための駆動部とを有する取付装置(釘打ち機)が使用される。駆動部が打込要素に加えるエネルギー量は通例、取付要素と留め付け要素と基板とに合わせて調整され、過剰なエネルギーは、留め付け要素及び/又は取付装置内に少なくともある程度散逸され、留め付け要素又は取付装置は、特定の状況下では、機械的な荷重を受けて損傷する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、取付要素すなわち釘と留め付け要素との間の封止が改善される留め付け方法及び留め付け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本目的は、釘軸部と釘頭部とを有する釘が用いられる、基板に構成部材を留め付けるための方法であって、釘頭部は釘軸部を越えて突出する頭部直径を有し、スリーブが釘軸部に配置され、打込要素及びガイドチャネルが用意され、ガイドチャネルは、頭部直径を超える内径を有し、釘頭部及びスリーブは、周縁隙間が釘頭部とガイドチャネルとの間に形成されるようにガイドチャネル内に配置され、打込要素は、釘を基板に向けて打込方向に移動させるために、ガイドチャネルを通して釘頭部に向けて打ち込まれ、スリーブは、釘が基板に向かって移動している間に釘軸部とガイドチャネルと釘頭部との間で圧縮され、釘頭部を用いてスリーブに予荷重(Vorspannung)が加えられる、方法で達成される。結果として、釘頭部がスリーブを圧迫し、それゆえ、釘とスリーブとの間の封止が改善される。構成部材は、好ましくは断熱材であり、及び/又は基板は、好ましくは建物の壁又は天井である。釘頭部の直径は、好ましくはスリーブの外径よりも大きい。
【0006】
本発明の有利な態様は、スリーブが、釘軸部とガイドチャネルと釘頭部との間での圧縮中に塑性変形されることを特徴とする。
【0007】
有利な態様は、スリーブが、釘軸部とガイドチャネルと釘頭部との間での圧縮中に、釘軸部とガイドチャネルと釘頭部との間の空洞を完全に埋めることを特徴とする。
【0008】
有利な態様は、構成部材を保持するための円盤と、円盤から突出するとともにシャフト底部を有する中空シャフトとを有する、留め付け要素が用意され、シャフト底部は、好ましくは、釘軸部のための通路と、スリーブとを有し、スリーブは、シャフト底部から突出し、ガイドチャネルは、ガイドチャネルがシャフト底部を圧迫し、スリーブがガイドチャネル内に配置されるまで、中空シャフトに挿入されることを特徴とする。
【0009】
有利な態様は、ガイドチャネルと、打込要素と、打込要素のための駆動部とを有する、動力釘打ち機(取付装置)が用意され、ガイドチャネルは、打込要素の全ての位置において打込要素を越えて打込方向に突出することを特徴とする。
【0010】
本目的は、構成部材を基板、好ましくは金属基板に留め付けするための装置であって、釘軸部と釘頭部とを有する釘であって、釘頭部は、釘軸部を越えて突出する頭部直径を有し、釘軸部は、釘が基板に打ち込まれたときに釘軸部に予荷重力を加えるように意図された予荷重要素を有する、釘を含み、構成部材を保持するための円盤と、円盤から突出するとともにシャフト底部を有する中空シャフトとを有する留め付け要素であって、シャフト底部は、特に釘軸部のための通路と、シャフト底部から突出して釘軸部上に配置される、スリーブとを有する、留め付け要素を含む、装置によって同様に達成される。
【0011】
有利な態様は、予荷重要素が釘軸部の外周に配置された返し、好ましくは複数の返しを含むことを特徴とする。多数の返しは、好ましくは、溝によって離隔されて列状に配置される。特に好ましくは、溝は、釘軸部の長手方向に対して4°~8°の傾斜角で傾斜している。
【0012】
有利な態様は、スリーブが、プラスチック、好ましくは熱可塑性プラスチックから実質的になることを特徴とする。
【0013】
有利な態様は、釘、打込要素、及び/又はガイドチャネルが、金属又は合金、好ましくは鋼からなる/から実質的になることを特徴とする。予荷重要素は、好ましくは、釘軸部の残り部分の材料よりも大きい材料硬度を有する材料を含む。特に好ましくは、予荷重要素は、亜鉛とニッケルとを含有する合金を含む。
【0014】
本発明の実施例について、添付図面を参照して以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】留め付け工程中の留め付け装置の詳細を示す縦断面図である。
【
図3】留め付け工程完了後の
図2の留め付け装置の詳細を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、例えば断熱材などの、構成部材101を、例えば建物の壁又は天井の鉄骨梁又はフレーム要素などの、金属基板102に留め付けるための留め付け装置100の縦断面図を示す。図示の実施例では、外装材103及び被覆フィルム104が、基板102と構成部材101との間に設けられる。留め付け装置100は、留め付け要素110と釘120とを含む。
【0017】
留め付け要素110は、構成部材101を基板102に抗して保持するための円盤111と、円盤111から突出するとともにシャフト底部113を有する、中空シャフト112と、シャフト底部113から突出するスリーブ115とを有する。シャフト底部113は、釘120のための通路114を有する。スリーブ115、好ましくは留め付け要素110全体は、実質的に熱可塑性プラスチックからなる。
【0018】
釘120は、釘先端122、特に円錐形の釘先端を備えた釘軸部121と、釘軸部121を越えて突出する頭部直径を有する釘頭部123とを含む。釘120は、スリーブ115が釘軸部121に当接して釘軸部121を取り囲むように、通路114内に配置される。釘頭部123の直径は、スリーブ115の外径よりも大きい。釘120は、実質的に鋼からなる。
【0019】
図2及び
図3は、基板への留め付け中の留め付け装置100の詳細を示す。留め付け方法を実行するために、動力釘打ち機(具体的には図示せず)のガイドチャネル130はまず、ガイドチャネル130がシャフト底部113に当接し、スリーブ115がガイドチャネル130内に配置されるまで、留め付け要素110の中空シャフト112に導入される。(
図2)。ここでは、空洞132が釘軸部121とガイドチャネル130と釘頭部123との間に形成され、スリーブ115は、その空洞内に位置する。ガイドチャネル130の内径は、頭部直径を超えており、その結果、釘頭部123及びスリーブ115がガイドチャネル130内に配置されるときに、釘120がガイドチャネル130内に案内される。周縁隙間131が釘頭部123とガイドチャネル130との間に形成される。
【0020】
後続のステップ(
図3)では、釘打ち機の打込要素は、釘120を基板に向けて打込方向に移動させ、釘120を基板に(
図2~
図3の右側に)打ち込むために、ガイドチャネルを通して釘頭部123に向けて打ち込まれる。ここでは、打込要素は、例えば、釘頭部123の頭部直径よりも若干小さいプランジャ直径を有する鋼製プランジャからなる。
【0021】
釘が基板に向かって移動している間に、スリーブ115は圧縮され、特に、釘軸部121とガイドチャネル130と釘頭部123との間で塑性変形される。この工程中、スリーブ115は、釘軸部121とガイドチャネル130と釘頭部123との間の空洞132を完全に埋める。次いで、釘頭部123を用いてスリーブ115に予荷重が加えられ、したがって、釘頭部123がスリーブ115にしっかりと当接し、スリーブ115が釘軸部121にしっかりと当接することを確実にする。このために、釘120は、以下に説明するように、予荷重要素を有する。これによって、釘120と留め付け要素110との間に水が浸透することがより困難になる。
【0022】
図4及び
図5はそれぞれ、釘120の詳細を示す。釘120は、釘120が基板に打ち込まれたときに釘軸部121に予荷重力を加えるように意図された、多数の予荷重要素124を有する。このために、予荷重要素124は、長手方向溝125と短手方向溝126とによって互いに隔てられた、返しとして構成される。長手方向溝125の深さ及び/又は短手方向溝126の深さは、釘軸部121の軸部直径の少なくとも5%である。好ましくは少なくとも4つの長手方向溝125は、釘軸部121の長手方向に対して6°の傾斜角で螺旋状に傾斜しており、釘先端122内に延びている。いずれの場合にも、隣り合う2つの短手方向溝126間の距離は、好ましくは基板の厚さ以下である。
【0023】
各予荷重要素124は、釘先端122に(
図4及び
図5の右側に)向けられた、好ましくは円錐形の前側フランク127と、釘頭部に(
図4及び
図5の左側に)向けられた、好ましくは円錐形の後側フランク128とを有する。前側フランク127と釘軸部121の長手方向との間の前側フランク角は、後側フランク128と釘軸部121の長手方向との間の後側フランク角(例えば、60°~90°、好ましくは80°~90°)よりも小さい(例えば10°~30℃)。
【0024】
予荷重要素124は、好ましくは釘軸部121の残り部分及び/又は基板の材料硬度よりも大きい、高い材料硬度を有する材料を予荷重要素124の少なくとも表面に含む。このために、予荷重要素124は、好ましくは釘軸部121の被覆として、亜鉛とニッケルとを含有する合金を含む。
【0025】
釘120が基板に打ち込まれたときに、基板の材料は、予荷重要素124の前側フランク127及び後側フランク128を圧迫するように、長手方向溝125及び短手方向溝126状に変形される。基板材料のこの変形は部分的に弾性であるので、基板は、予荷重要素124に力を及ぼし、これらの力は、前側フランク127及び後側フランク128のフランク角が異なる理由から異なる。フランクが急勾配であるほど、釘軸部121の長手方向の力成分が大きくなる。これによって、基板が釘120に及ぼす、釘軸部121の長手方向に沿って釘先端122に向かう予荷重力が生じる。釘120は、釘頭部123を用いてこの予荷重力をスリーブ115に伝達する(
図1)ので、スリーブ115の向上した封止効果は、熱可塑性スリーブ材料の場合でも達成することができる。
【0026】
本発明について、特に断熱材を建物の壁又は天井に留め付けるための方法及び装置の例を用いて説明してきた。しかしながら、本発明が他の目的にも適していることに留意すべきである。
【国際調査報告】