(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】軌道における相対的な位置情報を求めるための方法
(51)【国際特許分類】
B61L 25/02 20060101AFI20241121BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B61L25/02 G
G01C15/00 104C
G01C15/00 102Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527430
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2022082875
(87)【国際公開番号】W WO2023099292
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521346494
【氏名又は名称】トラック マシーンズ コネクティッド ゲゼルシャフト エム.ベー.ハー.
【氏名又は名称原語表記】Track Machines Connected Gesellschaft m.b.H.
【住所又は居所原語表記】Regensburger Strasse 3, 4020 Linz, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン スタントナー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ハートル
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161BB02
5H161DD20
5H161DD22
(57)【要約】
軌道における位置(13)の相対的な位置情報を求めるための方法であって、ここで、測定装置を用いて、軌道構造内の複数の対象物の測定値が求められ、当該測定値は、複数の対象物の少なくとも1つの対象物の特性を記述し、ここで、選択対象物と基準対象物との間の類似性尺度を求めるもとで、複数の対象物から唯一の選択対象物を選択するために、測定値が、基準測定値もしくは基準測定領域と比較されるか、または測定値の測定パターンが、選択された基準対象物の基準測定パターンと比較され、当該基準対象物は、不動の基準対象物としてデータベースに格納されており、当該類似性尺度は、計算によって求められ、当該類似性尺度は、数値によって示され、軌道における位置(13)は、対象物に配置された原点(14)と位置(13)との間のベクトル距離(a)によって示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道における位置(13)の相対的な位置情報を求めるための方法であって、
検測車両が、前記軌道において、当該軌道における出発点(18)から走行方向(1)に一区間だけ走行させられ、
前記検測車両は、前記軌道に位置合わせされた測定領域を有する測定装置を含み、
前記測定装置を用いて、軌道構造内の複数の対象物の測定値が求められ、
前記測定値は、前記複数の対象物の少なくとも1つの対象物の特性を記述する、方法において、
選択対象物と基準対象物との間の類似性尺度を求めるもとで、前記複数の対象物から唯一の選択対象物を選択するために、
前記測定値が、基準測定値もしくは基準測定領域と比較されるか、または
前記測定値の測定パターンが、選択された基準対象物の基準測定パターンと比較され、
前記基準対象物の前記基準測定値もしくは前記基準測定領域は、データベースに格納されており、
前記基準対象物は、不動の基準対象物として前記データベースに格納されており、
前記類似性尺度は、計算によって求められ、前記類似性尺度は、数値によって示すことが可能であり、
前記軌道における前記位置(13)は、対象物に配置された原点(14)と前記位置(13)との間のベクトル距離(a)によって示され、
前記原点(14)は、前記測定装置による測定値によって求めることが可能な特性を有し、前記特性は、前記原点(14)に隣接する第1の点とは異なり、または
前記原点(14)は、第2の点に対する幾何学的条件によって定義されており、前記第2の点は、当該第2の点に隣接する点とは異なることを特徴とする、方法。
【請求項2】
軌道における相対的な位置(13)を求めるための方法であって、
検測車両が、前記軌道において、出発点(18)から走行方向(1)に一区間だけ走行させられ、
前記検測車両は、前記軌道に位置合わせされた測定領域を有する測定装置を含み、
前記測定装置を用いて、軌道構造内の複数の対象物の測定値が求められ、
前記測定値は、前記複数の対象物の少なくとも1つの対象物の特性を記述する、方法において
複数の選択対象物の1つの選択対象物と基準対象物との間の類似性尺度を決定するもとで、前記複数の対象物から選択対象物を選択するために、
前記測定値が、基準対象物グループの基準測定値もしくは基準測定領域と比較されるか、または
前記測定値の測定パターンが、基準測定値の基準測定パターンと比較され、
前記基準対象物グループの前記基準測定値もしくは前記基準測定領域は、データベースに格納されており、
前記基準対象物は、不動の基準対象物として前記データベースに格納されており、
前記類似性尺度は、計算によって求められ、前記類似性尺度は、数値によって示すことが可能であり、
前記選択対象物は、測定値によって記述される少なくとも1つの類似の特性を有し、前記検測車両が出発点(18)から進んだ区間内の前記選択対象物の数nが求められ、ただし、前記n=1,2,3…であり、
前記位置(13)は、原点(14)と前記位置(13)との間のベクトル距離(a)によって示され、
前記原点(14)は、一連の選択対象物の前記走行方向(1)で見てn番目の選択対象物に配置されており、
前記原点(14)は、前記測定装置による測定値によって求めることが可能な特性を有し、前記特性は、前記原点(14)に隣接する第1の点とは異なり、または
前記原点(14)は、第2の点に対する幾何学的条件によって定義されており、前記第2の点は、当該第2の点に隣接する点とは異なることを特徴とする、方法。
【請求項3】
前記選択対象物は、枕木(4~6)または固定手段(7~12)またはマーキングである、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記原点(14)は、前記軌道の中心軸線上に存在している、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記位置(13)は、レール(2,3)上の位置であり、前記ベクトル距離(a)は、前記レール(2,3)に対して平行に測定される距離情報を含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記検測車両は、前記軌道において、前記中心軸線(17)と、基準点(16)を通って延在しかつ前記中心軸線(17)に対して法線方向に配向された直線との間の交点に存在する出発点(18)から走行させる、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記出発点(18)から、前記基準対象物に対して類似性尺度を有する選択対象物までの、もしくは前記基準対象物に対して類似性尺度を有する前記n番目の選択対象物までの区間が求められる、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記類似性尺度は、ユーザーにより定義された類似性領域内に存在する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記測定装置を用いて求めることができる、唯一の選択対象物もしくは一連の選択対象物の最後の選択対象物の前記特性は、データベースに格納される、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記測定値は、測定装置としてカメラを用いて、または回転スキャナを用いて、または渦電流センサを用いて求められる、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記ベクトル距離(a)は、距離検測輪またはカメラを用いて求められる、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による方法に関する。
【0002】
本発明は、検出可能な対象物に関連して、軌道における位置を相対的に測位するための方法に関する。
【0003】
軌道における測位は、例えばGPSまたはGARMINを介して行うことができる。しかしながら、これらの手法の適用は、それぞれのデータが呼び出し可能である、軌道の部分区間に限定される。
【0004】
測位は、それが基準点からの唯一のもしくは複数のレールの特性を求める測定方法の適用を介して行うこともできる。非接触式の測定方法でも、センサと唯一のもしくは複数のレールとの間の接触式に基づいた測定方法でも、そのような測位の方法は、レールの一時的な特性の影響下に置かれる。鉄から製造されたレールは、例えば温度変化に基づく長手方向熱膨張の影響下に置かれる。鉄製レールの温度変化に起因する長さ変化は、例えば、温度変化が10℃で、レール長さが全体で10000,0メートル(測定走行の長さ)の場合には、1.2メートルになり得る。そのようなレールの物理的特性に基づく長さ変化のもとで、レールの一特性としてのレール長さに基づく不十分な精度の測位を推し進めることができないことは素人でさえ認識する。
【0005】
特に、それがセンサと1つまたは複数のレールとの間の機械的な接触に基づく測定方法の場合、この機械的な接触は、測位の精度に影響を及ぼす可変量である。レール上を転動する検測輪を用いた測定の場合には、検測輪とレールとの間で機械的なスリップが常に生じる。さらに、検測輪の車輪表面に機械的な摩耗が生じると、この摩耗は、検測輪の直径を低減させる。したがって、接触ベースの測定装置を用いたレールの長さの測定精度は常に、測定された区間の長さに依存する。
【0006】
独国特許出願公開第102010047580号明細書は、情報を求めるための方法に関し、ここでは、2つの枕木の間の枕木距離と、測定区間にわたるこれらのパターンとが、軌道区間の状態に関する尺度として、また枕木のコード化のために提案される。さらに、この枕木のコード化は、独国特許出願公開第102010047580号明細書の段落[0020]では、キロメートル石を介したキロメートル測定に対する代替案と見なされる。独国特許出願公開第102010047580号明細書で提案されている測位は、特定の枕木近傍の情報に限られている。
【0007】
国際公開第200166401号は、鉄道車両を測位するための方法を開示しており、ここでは、測位が、車両の速度を考慮に入れて、軌道領域内で検出された対象物間の補間によって実施される。
【0008】
国際公開第2002058984号は、独国特許出願第10104946号明細書のパテントファミリーに属する。国際公開第2002058984号は、測位のための方法を開示しており、ここでは、距離区間にわたって記憶されたデータがロードされ、これらのデータが、距離区間の現下のデータと比較される。これは、実質的に、記憶されているデータの特徴と、測位のための実際のデータとの比較である。この国際公開第2002058984号では、特定の特性を有する対象物を求めること、あるいは走行方向に特定の特性を有する対象物を数えることについての示唆は見あたらない。
【0009】
米国特許出願公開第2012274772号明細書は、鉄道車両の位置を特定するための方法を記載しており、ここでは、鉄道車両に対する例えば枕木の既知の位置の間の距離が測定される。
【0010】
国際公開第2015113678号は、車両を位置特定のための方法を開示しており、ここでは、カメラを用いて一連の対象物が記録され、車両の位置に対応するマップ内の位置が、当該マップにプロットされている一連の対象物の基準位置に基づいて求められる。
【0011】
独国特許出願公開第1952104号明細書は、「マップマッチング」を用いて位置特定のための方法を記載している。
【0012】
枕木を選択対象物として用いることが可能なことは以下の明細書に開示されており、例えば、オーストリア国特許出願公開第411277号明細書、およびオーストリア国特許出願公開第509481号明細書でも枕木の識別が主題化されている。
【0013】
以下に論じる本発明が課題としていることは、実施が簡単でかつ高い精度も提供する、軌道における位置を測位するための方法を提供することである。特に、本方法の精度は、一時的な特性もしくは影響に左右されるべきものではない。
【0014】
本発明による方法は、例示的に軌道上を走行する検測車両の使用に基づいて説明される。この検測車両は、ここでは、鉄道車両であってよい。しかしながら、本発明は、鉄道または地上の検測車両の使用のみに限定されるものではない。これに対する等価的なやり方では、ユーザーは、航空機またはそれ以外の地上車両としてドローンを使用することも可能である。
【0015】
どのようなタイプの検測車両が、以下で説明する本発明による車両の実施のために使用されるかという問合せは、実質的には、どのような形式で検測車両に配置された測定装置を軌道に対して相対的に動かすべきかという問合せである。
【0016】
従来技術によれば、軌道の状態または特性を記述する測定値を求めるための通常の測定装置が公知である。本発明は、これらの従来技術によって公知の測定装置の使用に基づいている。このような測定装置の使用に基づいている。本発明による方法の開示の枠内で、例示的に測定装置について述べる。これらの測定装置は、測定値を非接触式で求めることも、あるいはセンサと測定値を求める対象物との間の接触式の形成に基づかせることも可能である。この種の測定装置は、例えばカメラ式センサを備えたカメラであってよい。
【0017】
対象物の特性は、例えば、したがって限定を意図するものではないが、色、例えば限定的ではないが表面構造のような表面性質、サイズ、寸法、マーキング、または対象物の識別子であってよい。識別子は、例えば、対象物の番号付けであってよい。従来技術によれば、対象物のクラス分けを含めて、測定値を対象物クラスに割り当てるための方法が公知である。特性を記述する上述の測定値は、そのような対象物クラスへの割り当てや対象物のクラス分けを実施するのに適している。
【0018】
1つの特性は、コードであってもよく、このコードは、複数の対象物から、1つの対象物もしく対象物グループを一義的にかつ明確に識別することに適している。あるコードは、人にとって視覚的に知覚可能な識別子であってよい。あるコードは、適切な装置を用いてしか読み取ることができない識別子であってもよい。例えば、レールは、レール番号もしくは製造番号をコードとして有している。上述の測定装置は、コードを読み取り、このコードを介して測定値を作成するのに適していてよい。
【0019】
本発明によれば、上述した設題は、請求項1または請求項2によって達成可能である。
【0020】
本発明によれば、このことは、以下のことにより、すなわち、
選択対象物と基準対象物との間の類似性尺度を場合により求めるもとで、複数の対象物から唯一の選択対象物を選択するために、測定値が、基準測定値もしくは基準測定領域と比較されるか、または測定値の測定パターンが、選択された基準対象物の基準測定パターンと比較され、
基準対象物の当該基準測定値もしくは当該基準測定領域は、データベースに格納されており、
当該基準対象物は、不動の基準対象物としてデータベースに格納されており、
当該類似性尺度は、計算によって求められ、当該類似性尺度は、数値によって示すことが可能であり、および
軌道における位置は、対象物に配置された原点と位置との間のベクトル距離によって示され、
当該原点は、測定装置による測定値によって求めることが可能な特性を有し、該特性は、原点に隣接する第1の点とは異なり、または
当該原点は、第2の点に対する幾何学的条件によって定義されており、該第2の点は、当該第2の点に隣接する点とは異なる、ことによって達成することができる。
【0021】
測定パターンという用語は、常用の教示に従って公知である。補足的に、測定パターンとは、例えば、一連の測定値および/または空間的次元にわたる関数および/または時間にわたる関数としての測定値の表示を意味するものと理解できることが述べられる。
【0022】
軌道における測位は本発明によれば、唯一の選択対象物が基準対象物によって定義されるように行うことができる。検測台車は軌道において走行し、その際、複数の対象物が測定装置を用いて検出される。複数の対象物の中において、基準対象物によって定義される1つの選択対象物が探索され、この場合、検測車両はこの探索中に現実的または仮想的に軌道において走行する。この選択対象物が見つけられる場合には、この選択対象物上の原点と、位置との間のベクトル距離が決定される。
【0023】
この距離は、ゼロまたはゼロ以上またはゼロ以下であってよい。ゼロよりも長い距離は、例えば、走行方向に測定される距離であってよい。ゼロよりも小さい距離は、例えば、走行方向とは逆向きに測定される距離であってよい。
【0024】
選択対象物は、複数の対象物に対して少なくとも1つの固有の特性を有する。選択対象物の固有の特性は、複数の対象物の特性とは異なる。選択対象物は、複数の固有の特性を有することができ、この場合、1つの特性は、それ自体で単独であってもよいし、あるいはさらなる特性と組み合わせて複数の対象物の1つのもしくは複数の特性に対して固有であってもよい。
【0025】
選択対象物の定義は、測定値もしくは基準対象物が有する基準測定値を介して行われ、測定値は、常用の教示を使用して基準測定値と比較される。ユーザーは、基準測定値を有する基準対象物を選択し、この基準測定値は、測定値との比較により、変位不能に支承された選択対象物の検出を可能にする。
【0026】
本発明の開示の枠内では、鉄道業界で通常の負荷を伴うその対象物が、一般にその位置に変化、特に変位もしくはねじれを受けない場合、対象物は変位不能と見なされる。
【0027】
本発明によれば、このことは、以下のことにより、すなわち、
複数の選択対象物の1つの選択対象物と基準対象物との間の類似性尺度を場合により決定するもとで、複数の対象物から選択対象物を選択するために、測定値が、基準対象物グループの基準測定値もしくは基準測定領域と比較されるか、または測定値の測定パターンが、基準測定値の基準測定パターンと比較され、
基準対象物グループの当該基準測定値もしくは当該基準測定領域は、データベースに格納されており、
当該基準対象物は、不動の基準対象物としてデータベースに格納されており、
当該類似性尺度は、計算によって求められ、当該類似性尺度は、数値によって示され、
当該選択対象物は、測定値によって記述される少なくとも1つの類似の特性を有し、さらに検測車両が出発点から進んだ区間内の選択対象物の数nが求められ、ただしn=1,2,3…であり、
ここで、位置は、原点と位置との間のベクトル距離によって示され、
当該原点は、一連の選択対象物のn番目の選択対象物に配置されており、
当該原点は、測定装置による測定値によって求めることが可能な特性を有し、該特性は、原点に隣接する第1の点とは異なり、または
当該原点は、第2の点に対する幾何学的条件によって定義されており、該第2の点は、当該第2の点に隣接する点とは異なる、ことによって達成することができる。
【0028】
一連の選択対象物の走行方向で見て最後の選択対象物は、出発点から数えてn番目の選択対象物である。
【0029】
測定装置は、本発明による方法の実施の際に、軌道上に配置された測定装置を用いて複数の対象物を検出する。これらの複数の対象物から、1つのグループを選択対象物として定義することができる。このグループの選択対象物は、少なくとも1つの共通の特性によって、またはグループの選択対象物が類似の特性を有している特性によって優れている。選択対象物の少なくとも1つの特性は、複数の対象物に対して固有の特性である。
【0030】
検測車両は、出発点から軌道上を実際にまたは仮想的に走行する。出発点から、このグループの選択対象物の数nが求められる。原点は、走行方向で見てn番目の選択対象物によって定義される。原点は、最後の選択対象物上に存在することができ、あるいはn番目の選択対象物に対して相対的な原点位置を有することもできる。
【0031】
このグループの最後の選択対象物またはn番目の選択対象物から、原点と位置との間のベクトル距離が求められる。この距離は、ゼロまたはゼロ以上またはゼロ以下であってよい。ゼロよりも長い距離は、例えば、走行方向に測定される距離であってよい。ゼロよりも小さい距離は、例えば、走行方向とは逆向きに測定される距離であってよい。
【0032】
したがって位置は、出発点からの選択対象物の数nと、ベクトル距離とによって示される。
【0033】
n番目の選択対象物は、一連の検出された選択対象物の走行方向で見て最後の選択対象物であってよい。
【0034】
上記の説明には、軌道における検測台車の実際のもしくは仮想の変位の特徴が含まれている。
【0035】
検測台車の実際の変位は、例えば軌道保守機械が位置に走行するときに存在し得る。本発明による方法の適用は、位置への接近の間、軌道に接続された車両または軌道に接続された機械を制御することであってよい。実際の変位は、軌道における位置が本発明による方法を使用して測位される場合にも存在し得る。
【0036】
検測台車の仮想の変位は、例えば位置における軌道修理のための手順の計画の際に存在し得る。
【0037】
軌道は、上述の位置において、例えば、したがって限定を意図するものではないが、不連続性を有することができる。本発明の課題は、そのような不連続性を、可及的に簡単な手段を用いて十分に正確に測位することである。
【0038】
本発明者らの理解によれば、複数の対象物から選択対象物の見つけることは、簡単な手段で実施可能な方法である。同様に、基準点から選択対象物を数えることも、簡単な手段で実施可能な方法である。さらに、2点間の距離を測定すること、ここでは、原点と位置との間のベクトル距離を測定することは、簡単な手段で実施可能な方法であることはまぎれもない。
【0039】
本発明による方法は、原点を有する選択対象物に至るまで特別な測定要件が課されないので、検測台車が原点を有する選択対象物まで高速で走行することを可能にすることができる。
【0040】
ベクトル距離の情報は、少なくとも1つの距離情報と方向の情報とを含む。距離情報とは、ここでは数値である。方向情報とは、どの方向に距離情報が測定されているかもしくは測定されるべきかを示す情報である。方向情報は、例えば、走行方向に測定するもしくは走行方向に対して横方向に測定するための配列であってよい。
【0041】
上記の説明は、原点の特徴を含む。本発明による方法は、1つの選択対象物もしくは一連の最後の選択対象物において局所的座標系が展開されるものと解釈することができ、当該局所的座標系自身の原点は、1つの選択対象物もしくは一連の最後の選択対象物上の原点に有する。この理由から「出発点」という用語も選択された。局所的座標系は、1次元、2次元、3次元、または4次元(時間成分を含む空間的な測位)であってよい。
【0042】
最も簡単なケースでは、局所的座標系は、1つの選択対象物の存在によってのみ、または原点からの走行方向での走行区間内の選択対象物の数を介してのみ、グローバル座標系と結合される。そこから選択対象物の数が求められる原点は、好適には、グローバル座標系における基準点を介して測位される。
【0043】
上記の説明には、不動の選択対象物の特徴が含まれている。好適なやり方で、ユーザーは、グローバル座標系においてその位置が環境の影響または負荷に基づいて変化しない選択対象物を選択する。このことは、基準対象物がデータベース内に変位不能な対象物として格納されていることを含んでいる。基準対象物を変位不能な対象物としてデータベースに格納することには、対象物の変位不能性および/または適正位置がいつ求められたかに関する情報を含ませることも可能である。
【0044】
本発明による方法は、原点が、変位不能な選択点上に配置されることを想定している。このことは、この原点に対する相対的な位置、ひいてはグローバル座標系における位置も、より長期にわたって測位することができるという技術的な効果を伴う。以下で述べる説明には、第1の時点およびそれに後続する第2の時点での本発明による方法を介した測位が含まれる。この第1の時点とは、当該第1の時点において、位置が検測車両によって測位される時点であってよい。第2の時点とは、当該第2の時点において、保守装置が当該位置まで走行する時点であってよい。第1の時点と第2の時点との間の期間は、比較的長い期間と見なすことができる。
【0045】
本発明による方法は、履歴または時間的経過の記録を取るデータに基づく測位を可能にする。データは、対象物または選択対象物を1つのグループに割り当てることに関する情報を含むことができる。データは、ベクトル距離データを含むことができる。これらのデータは、時間値に結合されてよい。
【0046】
データには、原点が配置されている選択対象物の十分に正確な記述が含まれている。本発明による方法の趣旨において十分に正確な選択対象物の記述は、固有の特性を記述する基準測定値を介して行うことができる。本発明による方法の第2の実施形態を適用するケースでは、n番目の選択対象物の十分に正確な記述は、数nを介してさらに行うこともできる。
【0047】
データは、原点と位置との間のベクトル距離の情報をさらに含む。
【0048】
データは、測位の時間情報を含むことができる。データは、測定装置に関する属性を含むことができる。データは、測位中の環境特性に関する属性を含むことができる。
【0049】
本発明の開示は、レールにおける不連続性の測位のための位置の測位を何度も述べている。本発明による方法は、第1の時点および第2の時点における位置の測位も可能にする。本発明による方法は、第1の時点における位置の相対的な測位を記述する第1のデータと、第2の時点における位置の相対的な測位を記述する第2のデータとの比較について補完することができる。
【0050】
1よりも多い数n>1の選択対象物を求める場合、一連の選択対象物の最後のもしくはn番目の選択対象物がその位置を変化させなければ十分である。ここでは他の選択対象物の存在だけが変化することは許されない。
【0051】
本発明による方法は、影響および変化に対する堅牢性によって優れている。このことは、とりわけ、誤差の連鎖が必然的に伴う一連のベクトル距離が求められるのではなく、原点と位置との間の唯一つのベクトル距離のみが求められることによって達成される。原点が定義されている選択対象物の情報(数値、固有の特性)は、この情報に測位が含まれないため堅牢性がある。
【0052】
原点は、特性を有することができ、該特性は、測定値を介して記述可能であってよく、ひいては測定装置によって求めることが可能であってよい。原点は、当該原点に隣接する第1の点の特性に関して異なる。原点は、第1の点と比較して、少なくとも1つの固有の特性を有する。好適には、選択対象物の特性を記述する測定値を求めるための測定装置と、原点の特性を求めるための測定装置とは、同じ測定装置である。これとは異なる解決手段、例えば異なる測定装置を使用するような解決手段は、等価的な解決手段であるかむしろより不良な解決手段もしくはより手間のかかる解決手段である。
【0053】
これにより、選択対象物上に原点のマーキングを取り付ける必要性なしで達成することができる。位置の測位のために自然に通常のように存在するような選択対象物を使用することができる。本明細書で開示される発明は、マーキングを設けることに限定されるものではない。
【0054】
本発明による方法は、n番目の選択対象物上にマーキングを取り付けるステップを含むこともできる。
【0055】
原点は、第2の点に隣接する点とは異なる第2の点に対する幾何学的条件によって定義されてよい。これによっても、本発明による方法が、原点のマーキングを設けることに限定されないことが達成される。原点は、例えば、点間の接続直線の分割点であってよい。
【0056】
原点は、位置を通って延在する直線の、n番目の選択対象物に対する配向によって、またはn番目の選択対象物の軸線に対する配向によって定義されていてよい。原点は、例えば選択対象物の軸線の、位置を通って延在する直線が当該選択対象物の軸線と定義された角度で交差する点であってよい。この角度は、例えば、限定を意図するものではないが、90度であってよい。
【0057】
選択対象物の上述の軸線は、隣接する第2の点に対する固有の特性を有する上述の点によって定義されてよい。前述の軸線は、選択対象物の幾何形状によって規定されてよく、そのため、前述の軸線は、例示的なものであってよく、限定を意図するものではないが平面図の中心軸線であってよい。
【0058】
上記の説明は、類似性尺度の計算による算出の特徴を述べている。この類似性尺度は、本発明による方法では数値によって示される。
【0059】
本発明による方法の可能な適用は、軌道における位置を第1の時点で決定することであってよい。軌道は、この位置において、例えば、したがって限定を意図するものではないが、レール上の亀裂のような不連続性を有する可能性がある。
【0060】
第1の時点よりも時間的に後に存在する第2の時点では、レールを修理することができる。レールを含む軌道と、特に選択対象物とが、第1の時点と第2の時点との間で変化を受けている可能性は十分にあり、この変化は、とりわけ変化した類似性尺度により、本発明による方法に影響を及ぼす。第1の時点と第2の時点との間の軌道のこのような変化により、保守車両の測位を第2の時点でシミュレートすることが必要になる場合がある。
【0061】
この第2の時点での保守車両の測位は、第2の時点の直前に作成される測定値を用いて行うことができる。これらの測定値は、例えば、保守車両よりも速い速度で軌道上を走行することができる、測定装置を備えた車両を用いて作成することができる。
【0062】
求められた類似性尺度、特に計算により求められた類似性尺度の特徴は、本発明による方法が、計画された後で実際に実施すべき手順のシミュレーションのために仮想的に実施することができるという利点を有する。そのようなシミュレーションは、特に、第1の時点における不連続性の測位が第1の測定装置を用いて行われ、第2の時点における保守車両の測位が第2の測定装置を用いて行われ、ここで、第1の測定装置が第2の測定装置とは異なっている場合に、有意でかつ必要であってよい。各測定装置は、固有の測定精度を有している。異なる測定精度は、特に、異なる測定装置が、異なる機能を有する異なる車両上に異なる環境の影響下で配置されている場合に存在する。計算により求められた類似性尺度およびシミュレーション手段は、本発明による方法の適用下で測位の追跡を可能にする。
【0063】
本発明による方法は、選択対象物が、枕木または固定手段またはマーキングであることによって優れている。
【0064】
本発明による方法は、選択対象物として、軌道において通常のように存在している対象物の使用を可能にすることができる。
【0065】
選択対象物としての枕木は、道床内で変位不能に支承されていてよい。バラスト床内に敷設されたレールは、本方法の枠内では、変位不能に支承されていると見なされる。
【0066】
さらに、レールを枕木に取り付けるための固定装置が、選択対象物として選択されていてよい。枕木は、変位不能に支承されるものと見なされるため、枕木に変位不能に取り付けられた固定要素も同様に変位不能であるものと見なされる。枕木は、原点を空間情報によって定義することができる平坦な要素を表すのに対して、固定要素もしくは固定要素の特にねじは、上方から見たとき、ひいては平面図で見たときに点状の構造部を示し、この点状の構造部では、原点がさらなる情報なしで定義可能である。このケースでも、ねじによって定義される原点は、ねじに隣接する第1の点とは異なる。
【0067】
軌道本体の枕木またはその他の要素は、マーキングを有することができる。枕木は、例えば、枕木の一義的な識別のためのマーキングとしてコードを含むことができる。そのようなマーキングは、本発明による方法の実施の際に選択対象物として使用することができる。
【0068】
上述したように、本発明による方法は、対象物識別に基づいており、この場合、従来技術による方法が適用される。対象物識別は、特に、検出すべき対象物の時間的変化に関して問題となる可能性があるため、当業者は、好適には、可及的に時間的変化にさらされない1つまたは複数の対象物を選択する。枕木が軌道バラストによって部分的に覆われていてよいのに対して、固定ユニットの垂直方向に配向されたねじの外観はこれに該当しない。
【0069】
本発明による方法は、原点が、軌道の中心軸線上に存在していることで優れている可能性がある。
【0070】
中心軸線上に存在する原点は、一義的に定義可能な点であり、そのような原点は、特別な影響にさらされることはない。なぜなら、軌道の中心軸線は、影響に対して安定的な複数の基準点によって定義することができるからである。この中心軸線は、例えば固定装置のねじの間の距離中心によって定義されていてよい。
【0071】
軌道の中心軸線上の1つの点として原点を定義することには、検測台車の正弦波が本発明による方法に影響を及ぼさないという効果がある。さらに、本発明による方法に対するカーブ走行の影響を低減することができる。
【0072】
本発明による方法は、位置が、レール上の位置であり、ベクトル距離が、レールに対して平行に測定される距離情報を含むことで優れている可能性がある。
【0073】
レールに沿って延びる距離情報は、検測輪を用いて測定することができる。例えば、1つの枕木が選択対象物として選択されると、想定すべきやり方では1つの位置が2つの枕木の間に存在する。2つの枕木の間の通常の距離は、約65.0cmであるので、いずれにせよ、検測輪を用いて測定すべきレール方向の距離は、スリップおよび/または摩耗が影響を持たないほど僅かである。同様に、前述した温度差に基づくレールの長手方向長さ変化も無視することができる。
【0074】
本発明による方法は、出発点が、中心軸線と、基準点を通って延在しかつ中心軸線に対して法線方向に配向された直線との間の交点に存在することで優れている。
【0075】
鉄道網は、グローバル座標系において測位された基準点を含む。上記の説明は、出発点と基準点との可能な位置関係である。
【0076】
本発明による方法は、出発点から、基準対象物に対して類似性尺度を有する選択対象物までの、もしくは基準対象物に対して類似性尺度を有するn番目の選択対象物までの区間の長さが求められることによって優れている。
【0077】
区間の長さを特定することにより、軌道における検測車両の移動時に1つの選択対象物を見つけ出すためのさらなるパラメータが得られる。
【0078】
本発明による方法のこの説明では、固有特徴によって定義された枕木が選択対象物として、あるいはn番目の枕木が選択対象物として何度も述べられている。軌道において、これらの枕木は、通常のように65.0cmの距離を有している。選択対象物としての枕木を数えることにより、出発点からn番目の枕木までの区間のおおよその長さを求めることができる。
【0079】
本発明による方法は、類似性尺度が、ユーザーにより定義された類似性領域内に存在することによって優れている。
【0080】
ユーザーは、シミュレーションにおいて、上述した軌道の変化または測定装置の異なる精度を考慮するために類似性領域を選択することができる。ただし、類似性領域の設定が、シミュレーションの実施に必ずしも必要なわけではない。
【0081】
第1の時点に適用されるべき類似性領域は、例えば、第2の時点で適用されるべき類似性領域よりも高い一致性の値などの厳しい基準を示すことができる。
【0082】
本発明による方法は、唯一の選択対象物または一連の選択対象物の最後のもしくはn番目の選択対象物の、さらなる測定装置を用いて求めることができるさらなる特性が、データベースに格納されることによって優れている。
【0083】
本発明による方法は、測定値が、測定装置としてカメラを用いて、または回転スキャナを用いて、または渦電流センサを用いて、またはジオレーダー(地中レーダー)を用いて、またはRFIDを用いて求められることによって優れている。
【0084】
カメラは、複数の画像データの作成に適したカメラであってよく、これらの画像データは、AIなどを用いたデータ処理の基礎に適している。カメラは、コードまたはマーキングの読み取りに適したカメラであってもよい。好適には、カメラは、それらに基づいて前述した課題を満たすことのできる高解像度の画像データを供給する。
【0085】
これらの測定装置は、非接触式の測定方法に基づいている。本発明による方法は、接触式に基づいた測定装置を用いて実施することもできる。そのような測定装置は、歯車などの機械的調節装置を含むことができ、当該調節装置は、選択対象物との接触の際に、測定可能な運動を実施する。
【0086】
上記の測定装置は、通常のように検測台車に取り付けられている。したがって、本発明による方法は、通常の検測台車を用いて実施することができる。
【0087】
例えば接触式または非接触式などの測定のタイプに依存することなく、それぞれ少なくとも1つの測定装置が、左方のレール用と右方のレール用とに設けられてよい。例えば左方の測定装置の測定領域は、左方のレール周りの領域に位置合わせされる。例えば右方の測定装置の測定領域は、右方のレール周りの領域に位置合わせされる。そのような測定装置の配置は、とりわけ、選択対象物相互の位置の算出を可能にさせる。
【0088】
複数の測定装置を、選択対象物の検出のために使用することができる。個々の測定装置を用いた選択対象物の検出の結果は、比較することができる。
【0089】
本発明による方法は、ベクトル距離が、距離検測輪またはカメラを用いて求められることで優れている可能性がある。
【0090】
ベクトル距離を求めるためのカメラは、測定装置として用いられるカメラであってよい。
【0091】
本発明は、図面に示されている以下の実施形態に基づいて補足的に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図1】本発明による位置を測位するための方法の可能な実施形態を示す図である。
【
図2】本発明による位置を測位するための方法のさらに可能な実施形態を示す図である。
【
図3】本発明による方法を実施するための装置の可能な実施形態を示す図である。
【
図4】測定装置としてのカメラを用いて作成された画像データからなる画像を示した図である。
【
図5】本発明による方法のさらなる適用手段を示す図である。
【
図6】分岐器の例における、可能性のある出発点および原点を示す図である。
【0093】
図面に示されている実施形態は、単に可能な実施形態を示しているに過ぎず、この場合、この箇所では、本発明が、これらの特別に示された同一の変形実施形態に限定されるのではなく、個々の変形実施形態同士の組み合わせおよび実施形態と上述した一般的な説明との組み合わせも可能であることに留意されたい。これらのさらなる可能な組み合わせは、明示的に言及する必要はないであろう。なぜなら、これらのさらなる可能な組み合わせは、本発明による具体的な技術的行為の教示に基づいて、当該技術分野に携わる当業者の能力の範囲内にあるからである。
【0094】
保護範囲は、特許請求の範囲によって決定されている。しかしながら、特許請求の範囲の解釈のためには、明細書および図面を考慮する必要がある。図示され説明された異なる実施形態の個々の特徴または特徴の組み合わせは、それ自体で独立した発明の解決手段を表すことができる。独立した本発明による解決手段の基礎となる課題は、明細書から引き出すことができる。
【0095】
図面中以下の要素は、前置した参照符号によって特徴付けられている:
1 走行方向
2 左方のレール
3 右方のレール
4~6 枕木
7~10 固定要素
11,12 枕木6の固定要素
13 位置
14 原点
15 交点
16 基準点
17 軌道軸線
18 出発点
19 (空き)
20 第1の測定装置
21 第2の測定装置
22 第3の測定装置
23 直線a
24 さらなる位置
25 さらなる位置
31 分岐器出発点
32 分岐器終端点
33 分岐器終端点
34 舌先端
35 車輪操舵出発点
36 車輪操舵終端点
37 轍叉
38 ジョー枕木
39 中間枕木
40 分岐器中心点
【0096】
図1は、本発明による方法の可能な実施形態を示している。既に上述したように、本発明による方法は、その仮想的なかつ/または実際の実施可能性によって優れている。
【0097】
図1は、本発明による方法の以下の説明のための、または本発明による方法を実施するための主要な要素である要素と共に軌道を示している。なお本発明による方法の開示は、本明細書で例示的に述べるこれらの要素の存在および使用の限定を意図するものではない。ユーザーは、軌道の他の要素を使用することも可能である。
【0098】
軌道は、走行方向1で見て、左方のレール2と右方のレール3とを有する。これらのレール2,3は、固定要素11,12を介してレール6に固定されている。枕木6は、例えば、したがって限定を意図するものではないが、バラスト道床内に敷設されていない。したがって、枕木6は、変位不能にまたは不動に支承されている。
【0099】
本明細書で説明する本発明の課題は、第1の時点での位置13を、データによって第2の時点での位置13を見つけ出すことができるように捕捉することである。したがって、本明細書で開示される発明は、位置13の十分な説明のためにこれらのデータを作成するステップも含む。
【0100】
検測車両を用いて測定装置は、軌道において走行方向1に走行する。検測車両および測定装置は、
図1には図示されていない。
【0101】
測定装置を用いて、一般的に複数の測定値が作成される。測定値が常用の教示の適用のもとで分類可能になった後、軌道に配置されている複数の対象物に関する測定値が作成される。例えば、測定領域に依存して、レール2,3、バラスト砕石、ならびに枕木6に関する測定値が作成される。
【0102】
使用される測定装置に依存して、特定の種類の測定値が特定される。測定装置としてカメラが使用される場合には、例えば、対象物の色、形状、およびサイズを特定することができる。当業者は、対象物の特性を十分に正確に記述するのに適した測定値を求めるための測定装置を選択する。
【0103】
本発明による方法の
図1に示されている実施形態は、複数の対象物から選択対象物を識別するステップを含む。複数の対象物から唯一の選択対象物を選択するために、測定値は、基準測定値もしくは基準測定領域と比較することができる。これに対してさらにまたは代替的に、複数の対象物から唯一の選択対象物を選択するために、測定値の測定パターンを、選択された基準対象物の基準測定パターンと比較することも可能である。
【0104】
測定値と基準測定値との比較は、選択対象物と基準対象物との間の類似性尺度を求めるステップを含むことができる。類似性尺度を求めるステップは、計算により、常用の教示による方法の適用のもとで行われ、この場合、数値によって定義される類似性尺度が結果として求められる。
【0105】
(さらなる意図において)基準対象物との比較により、複数の対象物から選択対象物を選択するための上述したステップは、基準測定値もしくは基準測定領域がデータベースに格納されていることを含んでいる。ここで決定的なのは、測定値と、基準測定値などとの比較のもとで、空間内で変位不能に支承されている選択対象物が選択されるように、基準対象物が選択されることである。好適なやり方で、基準対象物は、データベース内に、変位不能に支承された対象物として、あるいは特定の確率で変位不能に支承された対象物として格納されている。
【0106】
図6では、例えば、したがって限定を意図するものではないが、枕木6を選択対象物とする。枕木6は、その支承に基づき空間内で変位不能である。冒頭で述べたように、測定装置は、鉄道車両上に配置されている。鉄道車両によれば、自重に基づいて、あるいは機械的な装置を用いて負荷状態を得ることができ、当該負荷状態では、選択対象物の変位不能な支承が検査できる。ここでは例示的に限定を意味することなく述べた変位不能な支承のこの検査には、場合により生じ得る枕木の変位を測定するために、測定装置の使用を必要とする。ここでは、1つの好適なやり方で、上述の測定装置を使用することができる。
【0107】
本発明による方法は、複数の対象物に対して固有の特性を有する選択対象物としての枕木6に相対する位置13が測位されることを想定している。距離測定装置の使用のもとで、この位置13と、選択対象物としての枕木6の定義された原点14との間のベクトル距離aが測定される。
【0108】
距離aは、例えば、原点14と位置13との間を延在する直線23の長さとして測定することができる。
【0109】
距離aの測定は、枕木6と位置13との間の距離a1かまたは本発明による方法の実施を論じる枠内で例示的に位置13が存在するレール2の長さに短縮することも可能である。位置13のこの情報は、左方のレール2上に位置13が存在する情報を含むことができる。レール2の長さは、位置13と、点状の固定要素11,12を通って延在する直線(ここでは枕木軸線に等しい)とレール2との間の交点15との間の長さとして測定することができる。位置13と枕木6の軸線との間の直交する距離も、位置13の相対的な測位のための選択対象物として求めることができる。
【0110】
本発明による方法は、枕木6に対する位置13の相対的な測位が、例示的に述べた選択対象物として、客観的に追跡可能な尺度情報に従って行われることで優れている。
【0111】
当業者は、位置13と原点14もしくは選択対象物との間のベクトル距離aを特定する上述した手法を、当業者がその専門知識の適用のもとで求めた尺度情報によって実施することができる。当業者は、原点14もしくは選択対象物に対する位置13の相対的な測位をそのような尺度情報によって実施することができる。このことは、
図1に関連して説明した実施形態および本発明による方法のさらなる実施形態にも適用可能である。
【0112】
図1に対する上述の説明は、選択対象物としての枕木6の固有の特性を記述する測定値を求めるために測定装置の使用の示唆を含む。原点14は、測定装置を用いて、当該原点14が選択対象物としての枕木6の周囲の点に対して固有の特性を有するように定義することができる。
【0113】
原点14は、固有の特性を有する枕木6のさらなる点の間の幾何形状の特性の情報のもとで定義することもできる。原点14は、点状の固定要素11,12の間を延在する直線の中心である。ユーザーは、さらなる点の間のさらなる幾何形状の特性を定義することができる。
【0114】
原点14は、軌道中心軸線17上に存在し得る。軌道中心軸線17は、レール2,3に対して同一の離間距離を有する軸線として定義されている。
【0115】
距離測定は、不精度の影響下に置かれる可能性がある。本発明による方法は、固有の特性を有する選択対象物としての枕木6に対して相対的な位置13の測位が、比較的短い距離を求めるもとで行われるという利点を提供する。
図1に示されている上述の実施例は、枕木6の使用に基づいている。枕木間の通常の距離は約65cmであるため、軌道の延在方向に対して平行に測定すべき距離a1は、最大で約65cmであるか、またはさらに良好には最大で約32.5cmである。軌道内の短い他の寸法に対して比較的短い距離のために、距離測定の不精度は無視することができる。
【0116】
本発明による方法は、選択対象物としての枕木6に対する位置13の相対的な測位が、出発点17および/または基準点16から走行方向1での走行区間内の選択対象物としての枕木6の存在のみを介して実施されることで優れている。
【0117】
選択対象物としての1つの枕木6の代わりに、例えば走行方向1で見て左方の固定要素12を、選択対象物として使用することもできる。同様に、(
図1には示されていない)路傍標識を使用することもできる。選択対象物としての対象物の選択は、当該対象物が、1つの固有の特性もしくは複数の固有の特性を有しかつ当該対象物が変位不能に支承されていることに限定される。
【0118】
選択対象物としての枕木の固有の特性は、枕木6と結合されているコードであってよい。
【0119】
図2には、軌道における位置13を測位するための本発明による方法のさらなる実施形態が示されている。
【0120】
図2には、本発明による方法を説明するために重要であると思われる要素を含む軌道が示されている。本開示は、
図2に単なる例示として示されている要素に限定されるわけではない。本発明による方法は、他の要素に適用することも可能である。
【0121】
軌道は、走行方向1で見て、左方のレール2と右方のレール3とを含んでいる。これらのレール2,3は、固定要素7~12を介して枕木4,5,6に固定されている。この固定は、枕木4,5,6毎に2つの固定要素7~12を介して行われる。
【0122】
検測車両は、軌道における出発点18から走行方向1に走行する。この検測車両は、軌道における複数の対象物に関する測定値を求めるために適した測定装置を含んでいる。この目的のために、測定装置の測定領域が軌道に位置合わせされる。ユーザーは、多数の測定値を低減したり、複数の測定値の数も低減したりするために、測定領域を軌道の特定の領域に向けることができる。
【0123】
図2では、検測車両、測定装置および測定領域は示されていない。
【0124】
測定値は、対象物の特性を記述する。これらの測定値は、複数の対象物から1つの選択対象物グループを選択するのに適している。ここでは、対象物の測定値が、複数の対象物から選択対象物を選択するための基準測定値または基準測定領域と比較される。これと等価的なやり方で、測定値の測定パターンを基準測定パターンと比較することができる。
【0125】
実質的に、
図1の図面の説明に記述された方法は、対象物の分類のために適用される。上述した方法とは異なり、複数の対象物に対し少なくとも1つの固有の特性を有する唯一の選択対象物が選択されるのではなく、むしろ、複数の選択対象物と、複数の対象物に対する少なくとも1つの固有の特性との間で少なくとも1つの類似の特性を有する選択対象物のグループが選択される。換言すれば、第1の特性によってつながっている選択対象物のグループは、第2の特性により、さらなる対象物とは異なっている。
【0126】
ここでも、計算手法を用いて類似性尺度を求めることが可能になり、このことは、実質的に上述した技術的な効果を可能にする。
【0127】
したがって、
図2には示されていない検測台車が出発点18から走行する場合、選択対象物を走行区間に沿って検出することが可能である。
図2は、選択対象物としての枕木4,5,6の検出に基づいている。これらの選択対象物の検出により、出発点18から検測車両が進んだ区間内の選択対象物としての枕木の数n(n=1,2,3…)を求めることが可能になる。
【0128】
選択対象物としての枕木4,5,6の数は、位置13の直前まで求めることができる。枕木6は、走行方向1で見て位置13の前の最後の枕木である。この枕木6は、第3の枕木である。ベクトル距離aは、実質的に走行方向1で測定される。
【0129】
同様に、走行方向1で見て位置13の後の最初の枕木を含めたそこまでの枕木の数を求めることも可能である。この枕木は、
図2には示されていないが第4の枕木になるはずのものである。このベクトル距離aは、実質的に走行方向1とは逆向きに測定される。
【0130】
位置13は、枕木6に対して相対的に、位置13の前の最後の枕木として、かつ選択対象物として測位される。枕木6の原点14と、位置13との間のベクトル距離aが求められる。
図1についての上述の説明を参照されたい。
【0131】
図2にはさらに、さらなる位置24,25の相対的な測位が示されている。原点14に対するさらなる位置24,25の相対的な測位は、ベクトル距離bもしくはcを求めることによって行われる。これらのベクトル距離b,cは、原点14とさらなる位置24,25との間の距離を記述している。
【0132】
さらなる位置24,25を求めることは、中心軸線17に対して特定の角度でのレール2,3間の軌道距離の特定を可能にさせる。位置13と、さらなる位置25との間の距離は、中心軸線17に対して特定の角度での位置13,25間の距離である。位置13と、さらなる位置24との間の距離は、直角での位置13,24間の距離である。最後に述べた距離は、軌間であってよい。
【0133】
ユーザーは、これらの距離を、本明細書に開示された測位の適用のもとに、軌道の負荷のもとで、および軌道の無負荷状態において実施することができる。ユーザーは、これらの距離を介して軌道の状態を開示された測位のもとで説明することができる。
【0134】
さらなる位置24,25の相対的な測位は、
図1に示されている方法においても考えることができよう。
【0135】
図1および
図2に対する上記の説明に対して補足的に以下のことを書き留めておく。
【0136】
本発明による方法は、特定の1つの選択対象物あるいは枕木または固定手段またはマーキングなどの複数の特定の選択対象物に限定されない。この選択対象物もしくはこれらの選択対象物は、好適には、さらなる対象物に対する少なくとも1つの固有の特性を有し、この特性は、少なくとも1つの測定値によって十分に正確に記述可能であり、さらに測定装置を用いて求めることが可能である。
【0137】
原点14は、好適には軌道の中心軸線上に存在している。
【0138】
位置13は、レール2,3上の位置であってよく、この場合、ベクトル距離は、各レール2,3に対して平行に測定される距離情報を含む。この距離情報は、例えば検測輪を用いて特定可能である。この比較的短い長さの測定の不精度は無視することができる。
【0139】
図1および
図2では、出発点18の他に基準点16もプロットされており、当該基準点16は、例えば、限定を意図するものではないが、軌道に隣接して配置されている。軌道網は、通常のようにグローバルに測位された複数の基準点16を含む。ここで、基準点16に基づく少なくとも1つのそのような基準点の統合について論じるが、このことは、実質的に、基準点16に対する出発点18の位置の問合せに還元することができる。
【0140】
検測車両は、軌道において、軌道軸線17もしくは軌道の中心軸線と、基準点16を通って延在しかつ軌道軸線17に対して角度をつけて配向された直線との間の交点に存在する出発点18から走行させることができる。この角度は、例えば90度であってよい。
【0141】
選択対象物としての枕木6からの上述した相対的な測位に対して補足的に、本発明による方法は、出発点18から選択対象物としての枕木6までの区間を求めることも含むことができる。
【0142】
図3には、検測車両における測定装置の可能な配列が示されている。検測車両には、異なる測定タスクに対処するために、異なる測定装置が配置されていてよい。
【0143】
図3では、個々の測定装置が実質的に低減されて示されている。
【0144】
検測台車は、不連続性を検出するための第1の測定装置20を含むことができる。当業者は、第1の測定装置20を用いて探索することができる不連続性の種類に依存して第1の測定装置を選択する。この第1の測定装置は、例えば、レールにおける亀裂の検出のための従来技術による超音波測定装置であってよい。
【0145】
検測台車は、上述した検測値を求めるための第2の測定装置21を含む。この第2の測定装置21は、例えば十分な解像度を備えたカメラであってよく、当該カメラは、軌道上の複数の画像材料を上方からの平面図で供給する。この画像材料からは測定値として、従来技術による方法の適用のもとで、選択対象物としての枕木4~6の存在を求めることができる。
【0146】
検測台車は、上記で説明したように、原点14と位置13との間のベクトル距離を求めるための第3の測定装置22を含んでいる。第3の測定装置22は、例えば検測輪であってよい。
【0147】
複数の測定装置を使用する場合に重要なのは、個々の測定装置20,21,22の中央の測定点の間の距離d1,d2が既知であることである。このことは、距離d1,d2の少なくとも1つが可変であってよいことを排除しない。距離d1,d2の十分な知識のこの特定は、唯一の測定装置を全ての測定タスクの対処のために使用する場合には省かれる。
【0148】
本発明の説明では、測定装置のための例が挙げられている。
【0149】
図4は、測定装置としてのカメラを用いて撮影される撮影を示す。枕木4~6が選択対象物として用いられる。
【0150】
枕木4~6は、通常のように、約65.0cmの距離で敷設されている。このパターンは、斜視的な歪みにおいても良好に認識可能である。
【0151】
図5は、本発明による方法のさらなる可能な適用形態を示す。
【0152】
例示的に使用される選択対象物としての枕木4は、n番目の選択対象物である。例えば点状の固定要素7~10は、枕木4上の原点14に対して相対的な位置13として、各ベクトル距離を求めるもとで、相対的に測位することができる。この点状の固定要素7~10の相対的な測位は、第1の時点における点状の固定要素7~10の間にプロットされた距離x1~x6を求めることを可能にする。ユーザーは、書き込まれた距離から個々の距離を選択することができ、あるいいはさらなる距離を求めることができる。本明細書に開示された方法は、本明細書においていかなる限定規定にも通じるものではない。
【0153】
好適なやり方で、これらの距離により、選択対象物としての枕木4,5の距離と、選択対象物としての枕木4,5の位置とが相互に記述される。
図5に示されている、限定を意図して挙げられたものではない選択対象物としての枕木4,5の例に関連して、軌道が枕木4,5間の領域において曲線を有しているか否かをこれらの距離を介して識別することができる。
【0154】
本発明による方法の1つの利点は、上述した距離が、原点14に対して相対的に測位されていることにある。n番目の枕木4に基づくn番目としての選択対象物は、単に数nを介して基準点16と測位されているに過ぎない。基準点16に対する原点14の測位は、基準点16と原点14との間の長さが付加的に求められない限り、専らかつ/または十分に正確に数nによって行われる。
【0155】
ユーザーは、第1の時点と第2の時点とで、前述の点状の固定要素7~10の相対的な測位を実施することができる。これにより、ユーザーは、第1の時点と第2の時点との間の期間における枕木4,5間の軌道の変化を確定することができる。そのため、例えば、枕木5が、変位可能な不良の支承部を有していることを識別することができる。
【0156】
不良の枕木5’は、枕木5および枕木5’の測位に利用された枕木4を介して見つけることができる。不良の枕木5’は、枕木4に対する目標距離の使用のもとで、簡単に目標位置にもたらすことができる。
【0157】
第1の実施形態による本発明による方法および/または第2の実施形態による本発明による方法は、分岐器における測位を可能にすることができる。
図6は、分岐器の一例を示し、この
図6の分岐器では、個々の分岐器部品にそれぞれ参照符号が付されている。以下の分岐器部品は、例えば、本発明による方法の一実施形態による測位において、出発点または原点14として使用することができ、この場合、以下のリスト:
分岐器出発点31
分岐器終端点32
分岐器終端点33
舌先端34
車輪操舵開始点35
車輪操舵終端点36
轍叉37
ジョー枕木38
中間枕木39
分岐器中心点40
は、必ずしも完全である必要はない。
【0158】
例示的な点のうちの1つ、または例示的に述べた対象物のうちの1つが、原点14として用いられる場合、本発明による方法は、このような点を測定装置、例えばカメラを用いて求めることを検出することができる。
【国際調査報告】