(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】LTV-17およびβ-ラクタマーゼ阻害剤を含む薬物組成物およびそれらの抗菌剤としての使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/427 20060101AFI20241121BHJP
A61K 31/423 20060101ALI20241121BHJP
A61K 31/429 20060101ALI20241121BHJP
A61K 31/69 20060101ALI20241121BHJP
A61K 31/4535 20060101ALI20241121BHJP
A61K 31/551 20060101ALI20241121BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241121BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241121BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A61K31/427
A61K31/423
A61K31/429
A61K31/69
A61K31/4535
A61K31/551
A61P31/04
A61P31/04 171
A61P43/00 121
A61K45/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527741
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 IB2022060852
(87)【国際公開番号】W WO2023084455
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520106208
【氏名又は名称】フェドラ・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Fedora Pharmaceuticals Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100113398
【氏名又は名称】寺崎 直
(72)【発明者】
【氏名】サラマ, サミー エム.
(72)【発明者】
【氏名】マイティ, サマレンドラ エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ヤンコフスカ, レナータ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA55
4C084NA05
4C084ZB351
4C084ZC202
4C084ZC611
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC16
4C086BC82
4C086CB11
4C086CC01
4C086CC07
4C086DA43
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA09
4C086GA10
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086NA05
4C086ZB35
4C086ZC20
4C086ZC61
4C086ZC75
(57)【要約】
LTV-17(I)、ラクチビシン誘導体、およびβ-ラクタマーゼ阻害剤の薬学的組み合わせが提供され、当該組み合わせは、細菌感染症の治療または予防における使用に適した抗菌剤を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物LTV-17(I):
【化1】
またはその薬学的に許容される塩、その溶媒和物、またはその塩の溶媒和物と、
1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩またはその生物学的に加水分解可能なプロドラッグとを含む、薬物の組み合わせ。
【請求項2】
1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤が、化合物(II
a)~(II
z’):
【化2-1】
【化2-2】
【化2-3】
からなる群より選択される、請求項1記載の薬物の組み合わせ。
【請求項3】
疾患、特に細菌感染症、特にグラム陰性細菌感染症の治療および/または予防に使用するための、請求項1または2記載の薬物の組み合わせ。
【請求項4】
相乗的な組み合わせである、請求項1から3のいずれか一項記載の薬物の組み合わせ。
【請求項5】
前記組み合わせにおける、LTV-17(I)のβ-ラクタマーゼ阻害剤に対する重量比が20:1から1:20の範囲である、請求項1から4のいずれか一項記載の薬物の組み合わせ。
【請求項6】
比が1:1から1:20の範囲である、請求項5記載の薬物の組み合わせ。
【請求項7】
ヒトおよび獣医医療における細菌感染を処置および/または予防するための医薬として使用するための、請求項1または2に記載の薬物の組み合わせ。
【請求項8】
薬学的に許容される希釈剤、賦形剤または担体をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の薬物の組み合わせ。
【請求項9】
対象における細菌感染を治療または予防する方法であって、
化合物LTV-17(I):
【化3】
またはその薬学的に許容される塩、その溶媒和物、またはその塩の溶媒和物と、1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩またはその生物学的に加水分解可能なプロドラッグとの薬物の組み合わせの治療的有効量を、細菌感染を有する対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項10】
1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤が、化合物(II
a)~(II
z’):
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
【化4-4】
からなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記細菌感染がグラム陰性細菌によって引き起こされる、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
前記対象がヒトである、請求項9から11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
前記組み合わせにおける、LTV-17(I)のβ-ラクタマーゼ阻害剤に対する重量比が20:1~1:20の範囲である、請求項9~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記比が1:1~1:20の範囲である、請求項13の方法。
【請求項15】
前記組み合わせが、相乗的な抗菌作用を有する、請求項9~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記薬物の組み合わせが、更に、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、または担体を含む、請求項9~15のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物化合物および微生物感染症の治療におけるその使用に関する。より詳細には、抗菌活性を有するラクチビシン誘導体と、ある種のβ-ラクタマーゼ阻害剤との組み合わせで、多くの耐性病原微生物に対して互いに相乗的に活性を示す、薬物の(又は薬学的な)組み合わせが提供される。
【背景技術】
【0002】
耐性細菌分離株が病院環境で出現し続けている一方で、医師らは、また、コミュニティにおいて増加する耐性細菌、特にESKAPE病原体(エンテロコッカス・フェシウム〔Enterococcus faecium〕、スタフィロコッカス・アウレウス〔黄色ブドウ球菌、Staphylococcus aureus〕、クレブシエラ・ニューモニエ〔Klebsiella pneumoniae〕、アシネトバクター・バウマンニ〔Acinetobacter baumannii〕、シュードモナス・エルギノーザ〔Pseudomonas aeruginosa〕、およびエンテロバクター種〔Enterobacter species〕)を構成する細菌を含む多剤耐性グラム(-)病原体に遭遇している。一般的に使用されるβ-ラクタム系抗生物質に対する最も一般的な耐性機構の1つは、耐性細菌によるβ-ラクタマーゼと呼ばれる酵素群の産生である。この耐性を克服するために、β-ラクタマーゼ阻害剤が多くのグループによって開発され、臨床現場で一般的に使用されている。
【0003】
もう1つの選択肢は、新しいクラスの抗菌薬を開発することである。細菌のβ-ラクタマーゼの発現が増加していることを考えると、有効な薬剤は非β-ラクタム構造モチーフを有する薬剤である可能性がある。
【0004】
抗菌薬とβ-ラクタマーゼ開始剤の相乗的な組み合わせの開発もまた、現在利用可能な抗菌薬治療の蓄えを増強するであろう。
【0005】
本発明は、そのような新しい抗菌薬治療の開発および他の重要な目標に係るものである。
【発明の概要】
【0006】
一般的に使用されているβ-ラクタム系抗生物質に対するESKAPE病原菌の耐性化が進んでおり、非β-ラクタム系構造モチーフを有する抗菌薬など、細菌感染症治療に適した抗菌薬の開発が求められている。
【0007】
LTV-17(式I; (4S)-2-[(4S)-4-{[(2Z)-2-(2-アミノ-1,3-チアゾール-4-イル)-2-{[(2-カルボキシプロパン-2-イル)オキシ]イミノ}アセチル]アミノ}-3-オキソ-1,2-オキサゾリジン-2-イル]-4-(5,6-ジヒドロキシ-1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)-5-オキソオキソラン-2-カルボン酸)は、β-ラクタム系構造モチーフを欠くラクチビシン(lactivicin)誘導体として開発された(J. Med. Chem. 2014, 57, 3845-3855)。
【化1】
【0008】
LTV-17(I)は高い抗菌活性を示すが(J. Med. Chem. 2014, 57, 3845-3855)、多くのβ-ラクタマーゼ産生株に対しては活性が低下し、臨床での治療不成功の一因となる可能性がある。これは、ラクチビシンが非β-ラクタム系抗生物質である一方で、いくつかのベータ-ラクタマーゼ酵素に対しても感受性を示すという事実に起因する。
【0009】
しかしながら、以下に詳述するように、LTV-17(I)を、選ばれたβ-ラクタマーゼ阻害剤と組み合わせると、感受性細菌に対して驚くべき相乗効果があることが発見された。
【0010】
本発明は、この発見に基づいており、以下の実施形態に関する:(i)LTV-17(I)と1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤とを含む、薬物の組み合わせおよび医薬、(ii)細菌感染症の治療におけるそのような薬物の組み合わせおよび医薬の使用、並びに(iii)LTV-17(I)と共に1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤とを投与することを含む細菌感染症の治療方法。これらの実施形態の各々において、β-ラクタマーゼ阻害剤は、限定されるものではないが、式(IIa)~(IIz’)から選択される化合物でありうる。LTV-17(I)およびβ-ラクタマーゼ阻害剤のこのような組み合わせは、細菌感染症の治療に使用される場合、相乗効果を示す。
【0011】
具体的には、第1の実施形態において、本発明は、化合物LTV-17(I):
【化2】
またはその薬学的に許容される塩、その溶媒和物、またはその塩の溶媒和物と、
1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩またはその生物学的に加水分解可能なプロドラッグとを含む、薬物の組み合わせに係る。
【0012】
この実施形態の態様において、1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤は、限定されるものではないが、化合物(II
a)~(II
z’)からなる群から選択される化合物であってもよい。
【化3-1】
【化3-2】
【化3-3】
【0013】
本発明のこれらの薬物の組み合わせは、疾患、具体的には細菌感染症、特にヒトおよび獣医医療におけるグラム陰性細菌感染症の治療および/または予防に使用しうる。また、ヒトおよび獣医医療における細菌感染症の治療および/または予防のための医薬として使用してもよい。
【0014】
本発明の好ましい態様において、薬物の組み合わせは、相乗的な組み合わせである。したがって、組み合わせによって示される抗菌活性は、(i)LTV-17(I)および(ii)組み合わせ中に存在する1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤が個別にに示す抗菌活性の合計よりも大きい。
【0015】
本発明の医薬組み合わせは、典型的には、LTV-17(I)のβ-ラクタマーゼ阻害剤に対する重量比が20:1~1:20の範囲で含まれる。いくつかの態様において、その比は1:1~1:20の範囲である。
【0016】
本発明の薬物の組み合わせはまた、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤または担体を含んでもよい。
【0017】
第2の態様において、本発明は、対象における細菌感染を治療または予防する方法に係る。そのような方法は、治療的有効量の本発明の薬物の組み合わせを、それを必要とする対象に投与することを含む。そのような対象は、細菌感染を有する対象および細菌感染を発症するリスクのある対象を含む。
【0018】
したがって、当該実施形態の一態様において、本発明は、対象における細菌感染を治療または予防する方法であって、化合物LTV-17(I)またはその薬学的に許容される塩、その溶媒和物またはその塩の溶媒和物と、1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩またはその生物学的に加水分解可能なプロドラッグとを含む、薬物の組み合わせの治療的有効量を、細菌感染を有する対象に投与することを含む方法に係る。
【0019】
当該実施形態のいくつかの態様において、1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤は、限定されるものではないが、ここで定義される化合物(IIa)~(IIz’)からなる群から選択される化合物でありうる。
【0020】
当該実施形態のいくつかの態様において、細菌感染は、グラム陰性細菌によって引き起こされる。
【0021】
本発明の好ましいいくつかの態様において、本発明の方法において使用される薬物の組み合わせは、相乗的な組み合わせである。したがって、組み合わせによって示される抗菌活性は、組み合わせ中にある(i)LTV-17(I)と(ii)1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤とが別々に示す抗菌活性の合計よりも大きい。
【0022】
本発明の方法において使用される薬物の組み合わせは、典型的には、LTV-17(I)のβ-ラクタマーゼ阻害剤に対する重量比が、20:1~1:20の範囲である。いくつかの態様では、比は1:1~1:20の範囲である。
【0023】
本発明の方法で使用される薬物の組み合わせは、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤または担体を含んでいてもよい。
【0024】
治療に供される被験体は、本発明の薬物の組み合わせが治療効果を有する任意の被験体、例えばヒトでありうる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の詳細な説明:
ラクチビシン類の抗菌薬は、ある範囲のグラム陽性およびグラム陰性細菌に対して活性がある。これらの化合物は、特にグラム(-)微生物に対して優れた抗菌活性を示す特有の二環ペプチドコアを有する。天然のラクチビシンは、2-[(4S)-4-アセトアミド-3-オキソ-1,2-オキサゾリジン-2-イル]-5-オキソオキソラン-2-カルボン酸である非β-ラクタム系抗生物質であり、C-4位のアシルアミノ部分を修飾し、2-アミノチアゾール-4-イル-(Z)-2-メトキシ-イミノアセチル側鎖で置き換えると、抗菌活性の改善が示された。
【0026】
LTV-17(式I;(4S)-2-[(4S)-4-{[(2Z)-2-(2-アミノ-1,3-チアゾール-4-イル)-2-{[(2-カルボキシプロパン-2-イル)オキシ]イミノ}アセチル]アミノ}-3-オキソ-1,2-オキサゾリジン-2-イル]-4-(5,6-ジヒドロキシ-1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)-5-オキソオキソラン-2-カルボン酸)は、分子内にカテコール部分を有するラクチビシン誘導体の1つであり、広範なTon-B依存性(Ton-B-dependent)鉄輸送機構を利用し、その結果、細菌外膜を介したシデロホア(siderophore)受容体媒介取り込みを増強する。本発明は、多くの抗生物質耐性細菌に対して相乗活性を示す様々なβ-ラクタマーゼ阻害剤とLTV-17(I)との組み合わせに関する。
【0027】
薬物の組み合わせ(Pharmaceutical Combinations)
上記に要約したように、本発明は、化合物LTV-17(I)またはその薬学的に許容される塩、その溶媒和物、またはその塩の溶媒和物と、1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩またはその生物学的に加水分解可能なプロドラッグとを含む薬物の組み合わせに関する。本発明の態様において、1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤は、限定されるものではないが、ここに記載される化合物(IIa)~(IIz’)からなる群から選択される化合物でありうる。
【0028】
本発明のこれらの薬物の組み合わせは、ヒトおよび獣医医療における疾患、具体的には細菌感染症、特にグラム陰性細菌感染症の治療および/または予防に使用することができる。これらはまた、ヒトおよび獣医医療における細菌感染症の治療および/または予防のための医薬として使用することができる。
【0029】
方法
上記でさらに要約したように、本発明はまた、対象における細菌感染症を治療または予防する方法に係る。このような方法は、本発明の薬物の組み合わせの治療的有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。このような対象には、細菌感染症を有する対象および細菌感染症を発症するリスクのある対象が含まれる。
【0030】
非限定的な例として、本発明は、化合物LTV-17(I)またはその薬学的に許容される塩、その溶媒和物、またはその塩の溶媒和物を含む薬物の組み合わせの治療的有効量を投与することを含む、対象における細菌感染症を治療または予防する方法に係る。本発明の態様において、1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤は、ここに記載される化合物(IIa)~(IIz’)からなる群から選択される化合物でありうるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明の各実施形態および態様において使用されるように、「β-ラクタマーゼ阻害剤」との用語は、β-ラクタマーゼ活性を阻害することができる化合物のことを指し、ここで、阻害活性とは、クラスA、B、Cおよび/またはDのβ-ラクタマーゼの活性を少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または95%以上阻害することを意味する。本発明の組み合わせおよび方法において使用するための好適なβ-ラクタマーゼ阻害剤には、ここに記載される化合物(IIa)~(IIz’)が含まれる。
【0032】
本発明の各実施形態および態様において使用されるように、「β-ラクタマーゼ」との用語は、β-ラクタム系抗生物質を不活性化することができる酵素のことを指す。
【0033】
本発明はさらに、疾患、特に細菌感染症の治療および/または予防(prophylaxis)において使用しうる医薬の製造のための、本発明、すなわち、LTV-17(I)と1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤、例えば、式(IIa)~(IIz’)の化合物またはその薬学的に許容される塩または上記の生物学的に加水分解可能なプロドラッグとを含む「薬物の組み合わせ」の使用に関する。
【0034】
本発明はさらに、LTV-17(I)または薬学的に許容される担体または希釈剤と、上記の式(IIa)~(IIz’)のいずれかから選択される1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩または生物学的に加水分解可能なプロドラッグとを含む医薬に関する。
【0035】
本発明の「薬物の組み合わせ」は、局所および全身感染症の予防および治療のために、ヒトおよび獣医医療において特に有用である。
【0036】
本発明の「薬物の組み合わせ」は、LTV-17(I)と上記の1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤との適切な比率での物理的組み合わせを意味する。
【0037】
具体的には、LTV-17(I)と1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤との「薬物の組み合わせ」を含有する薬物組成物または医薬において、活性成分の担体に対する重量比は、通常、1:20~20:1の範囲である。いくつかの態様において、その比は1:1~1:20の範囲である。
【0038】
複数の本発明の「薬物の組み合わせ」(pharmaceutical combinations)のうちには、一の組み合わせ中に(in the combination)、LTV-17(I)の塩、溶媒和物およびその塩の溶媒和物を含む。
【0039】
本発明の「薬物の組み合わせ」のうちには、エナンチオマーまたはジアステレオマーを含む化合物、およびそれらのそれぞれの混合物を含めてもよい。
【0040】
本発明の「薬物の組み合わせ」のうちには、互変異性体を含む化合物を含めてもよく、よって、本発明はすべての互変異性体を包含する。
【0041】
β-ラクタマーゼ阻害剤と同時投与すると、LTV-17(I)は相乗効果をもたらす。「相乗効果」との用語は、2つ以上の薬剤を同時投与した場合に生じる効果であって、それらの薬剤を個々に投与した場合に生じる効果よりも大きい効果のことをいう。
【0042】
LTV-17(I)および1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤は、サンプル薬学的製剤または別々の薬学的製剤のいずれかで対象に同時投与してもよく、よって本発明の「薬物の組み合わせ」の基礎を形成する一方で、LTV-17(I)またはその薬学的に許容される塩は、β-ラクタマーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩または生物学的に加水分解可能なプロドラッグもまた別個に投与される治療の過程において、別個の薬剤として投与することができることを理解すべきである。したがって、LTV-17(I)および1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤は、連続的または同時的に、任意の順序で、重複する又は重複しない投与期間で投与することができる。これらの薬剤を投与期間が重ならないように順次投与する場合でも、時間的に近接して投与すれば、例えば2つの薬剤を互いに1時間以内に投与すれば、相乗効果を得られる。
【0043】
「治療的有効量」とは、疾患を治療するために対象に投与された場合に、疾患、障害または症状のそのような治療に影響を与えるのに十分な、薬物の組み合わせの量のことをいう。治療的有効量は、例えば、「薬物の組み合わせ」、疾患、障害、疾患の症状、疾患や障害の重症度、および/または、治療される患者の年齢、体重、および/または健康に応じて変えることができる。
【0044】
典型的には、成人に対する本発明の薬物の組み合わせの治療的有効量は、活性薬剤(active agents)約50mg~約3000mgである。他の実施形態において、治療的有効量は、約100mg~約2000mgである。他の実施形態において、治療的有効量は、約500mg~約1200mgである。典型的には、投薬(記載量)は、1日1回~4回行われる。一実施形態において、投薬は、1日3回投与される。場合によっては、これらの範囲外の投薬を行うことが必要でありうる。
【0045】
「用量」、「単位用量」、「単位投与」、または「有効用量」との用語は、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性成分(active ingredient)を含有する物理的に個別の単位を指す。
【0046】
本発明はさらに、本発明の薬物の組み合わせを、通常、1又は複数の、不活性で、毒性がなく、薬学的に許容される担体または希釈剤と共に含む医薬、ならびに前述の目的のためのそれらの使用に関する。組成物は、注射剤、懸濁液、エマルジョン、コーティング錠剤、ペレット、ゼラチンカプセル、液体を含有するカプセル、粉末、顆粒、徐放性製剤、座薬、エアゾール、スプレー、軟膏、クリーム、または使用に適した任意の他の形態をとることができる。
【0047】
「薬物の組み合わせ」は、全身的または局所的に作用しうる。これらは、この目的のために、例えば、親に、肺に、鼻に、舌下に、舌に、頬に(buccally)、直腸に、皮膚に、経皮的に、結膜に、耳に、適切な方法で、または、インプラントまたはステントとして投与することができる。
【0048】
これらの投与経路に対して、本発明の「薬物の組み合わせ」を適切な投与形態で投与することができる。したがって、本発明の薬物の組み合わせは、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤または担体を含んでもよい。
【0049】
非経口投与は、吸収工程(例えば、静脈内、動脈内、心臓内、脊椎内、または腰椎内)を回避して、または吸収工程(例えば、筋肉内、皮下、皮内、経皮又は腹腔内)を含めて、行うことができる。非経口投与に適した投与形態は、特に、溶液、懸濁液、エマルジョン、凍結乾燥剤または無菌粉末の形態の注射および注入(infusion)用製剤である。
【0050】
他の投与経路に適しているのは、例えば、吸入用の薬学的な形態(特に、粉末吸入器、ネブライザー)、点鼻薬、溶液、スプレー、錠剤、フィルム/ウエハーまたはカプセル、舌、舌下または頬(buccal)投与用、座薬、耳または眼用製剤、水性懸濁液(ローション、振盪混合物)、親油性懸濁液、軟膏、クリーム、経皮治療システム(パッチなど)、ペースト、発泡体、散布粉末、インプラントまたはステントである。
【0051】
本発明の薬物の組み合わせは、記載された投与形態、すなわち本発明の薬物組成物に変換することができる。これは、それ自体公知の方法で行うことができ、不活性で毒性のない薬学的に許容される担体または希釈剤、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、アラビアゴム、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、注射用水、生理食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、プロピレングリコール、ポリソルベート80(Tween-80TM)、ポリ(エチレン)グリコール300および400(PEG300および400)、PEG化ヒマシ油(例:クレモファーEL)、ポロキサマー407および188、親水性および疎水性担体、ならびにそれらの組み合わせなど、と混合することによって行うことができる。疎水性担体としては、例えば、脂肪乳剤、脂質、PEG化リン脂質、ポリマーマトリックス、生体適合性ポリマー、リポスフェア、小胞、粒子、およびリポソームなどが挙げられる。これらの用語からは、特に細胞培養培地を除外する。
【0052】
本発明の薬物組成物は、所望であれば、少量の湿潤剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸)、分散剤または乳化剤、またはpH緩衝剤、および防腐剤を含有することもできる。さらに、補助剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤、および着色剤を含めることができる。薬物組成物は、従来の方法で製剤化することができる。適切な製剤化は、選択された投与経路に依存する。
【0053】
本発明の薬物の組み合わせを含む薬物組成物において、活性成分の担体に対する重量比は、通常、1:20から20:1の範囲である。
【0054】
本発明の化合物が抗菌活性を有する細菌としては、例えば、腸内細菌目(Enterobacterales)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、エンテロバクターspp.(Enterobacter spp.)、クレブシエラspp.(Klebsiella spp.)、セラチアspp.(Serratia spp.)、シュードモナスspp.(Pseudomonas spp.)、ステノトロフォモナスspp.(Stenotrophomonas spp.)、シトロバクターspp.(Citrobacter spp.)、アシネトバクターspp.(Acinetobacter spp.)、カンピロバクターspp.(Campylobacter spp.)、ヘリコバクターspp.(Helicobacter spp.)、ビブリオspp.(Vibrio spp.)、ボルデテラspp.(Bordetella spp.)、サルモネラspp.(Salmonella spp.)、シゲラspp.(Shigella spp.)、フランシセラspp.(Francisella spp.)、バークホルデリアspp.(Burkholderia spp.)、クロストリジアspp.(Clostridia spp.)、アルカリゲネスspp.(Alcaligenes spp.)、モラクセラspp.(Moraxella spp.)、プロテウスspp.、ナイセリアspp.(Neisseria spp.)、ヘモフィルスspp.(Haemophilus spp.)、アクロモバクターspp.(Achromobacter spp.)、およびエルウィニアspp.(Erwinia spp.)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の化合物が抗菌活性を有する細菌の特定の属としては、ESKAPE病原体の1又は複数、すなわちエンテロコッカス・フェシウム、スタフィロコッカス・アウレウス、クレブシエラ・ニューモニエ、アシネトバクター・バウマンニ、シュードモナス・エルギノーザ、およびエンテロバクター種が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
本発明の薬物の組み合わせおよび方法を用いて治療しうる獣医医療上の動物としては、非ヒト霊長類、鳥、馬、牛、ヤギ、羊、イヌ、ネコ、または齧歯類などの伴侶動物(コンパニオン・アニマル)、または他の哺乳動物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
例(Examples)
薬剤の組み合わせの相乗活性を、特定の組み合わせに限定されることなく、表1に示す。
表1:β-ラクタマーゼ阻害剤(II
j)と組み合わせたLTV-17(I)の相乗活性アビバクタム:アビバクタム(II
j)との併用および非併用におけるLTV-17(I)のMIC(μg/ml)
【表1】
【0057】
in vitro抗菌性評価法
分離菌:クラス-C β-ラクタマーゼ産生菌を保有する代表的な耐性株である、エシェリヒア・コリ、シトロバクター・フレウンディ、エンテロバクター・クロアカ、クレブシエラ・ニューモニエ、およびプロテウス・ミラビリスを用いて、LTV-17(I)にβ-ラクタマーゼ阻害剤(IIj)を加えた場合の相乗効果を検討した(表1)。
【0058】
最小発育阻止濃度(MIC)試験方法:すべての抗生物質を、臨床・検査標準協会(CLSI:Clinical and Laboratory Standards Institute)の推奨(M07)に従ったブロスマイクロダイリューション法と、鉄欠乏CA-MHBプロトコールを含む改良CLSI法の両方で試験した。MICは、96ウェルプレートにおいて透明なウェルを得るための抗生物質の最低濃度と定義した。MICの解釈は、CLSI M100-23S(2013)およびEuropean Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing (EUCAST;2013)のブレークポイント基準に基づいて行った。相乗作用は、同一株に対するMICの2倍希釈減(two-fold dilution reduction)の数(回数)に基づいて、LTV-17(I)及びβ-ラクタマーゼ阻害剤アビバクタム(IIj)を併用した場合と、LTV-17(I)単独の場合とを対比することにより、算定した。2倍減(two-fold reduction)の数(回数)が多いほど、相乗作用は強い。
【0059】
試験結果
LTV-17(I)およびアビバクタム(IIj)は試験株に対して相乗作用を示し、MICにおける2倍減(two-fold reduction)は2倍から9倍以上の幅を示した。アビバクタムは4μg/mLの固定濃度で試験した。この結果は、LTV-17(I)にβ-ラクタマーゼ阻害剤を加えることで、細菌増殖抑制に必要なLTV-17(I)の濃度の減少に有意な影響を与えることを示唆している。このことは、本組み合わせ品が、治療予防薬として、またはグラム陰性菌の耐性株による感染症の治療のために使用できることも示唆している。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物LTV-17(I):
【化1】
またはその薬学的に許容される塩、その溶媒和物、またはその塩の溶媒和物と、
1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩またはその生物学的に加水分解可能なプロドラッグとを含む、薬物の組み合わせ。
【請求項2】
1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤が、化合物(II
a)~(II
z’):
【化2-1】
【化2-2】
【化2-3】
からなる群より選択される、請求項1記載の薬物の組み合わせ。
【請求項3】
疾患、特に細菌感染症、特にグラム陰性細菌感染症の治療および/または予防に使用するための、
請求項1に記載の薬物の組み合わせ。
【請求項4】
相乗的な組み合わせである、
請求項1に記載の薬物の組み合わせ。
【請求項5】
前記組み合わせにおける、LTV-17(I)のβ-ラクタマーゼ阻害剤に対する重量比が20:1から1:20の範囲である、
請求項1に記載の薬物の組み合わせ。
【請求項6】
比が1:1から1:20の範囲である、請求項5記載の薬物の組み合わせ。
【請求項7】
ヒトおよび獣医医療における細菌感染を処置および/または予防するための医薬として使用するための、
請求項1に記載の薬物の組み合わせ。
【請求項8】
薬学的に許容される希釈剤、賦形剤または担体をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の薬物の組み合わせ。
【請求項9】
対象
(但し、ヒトを除く)における細菌感染を治療または予防する方法であって、
化合物LTV-17(I):
【化3】
またはその薬学的に許容される塩、その溶媒和物、またはその塩の溶媒和物と、1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩またはその生物学的に加水分解可能なプロドラッグとの薬物の組み合わせの治療的有効量を、細菌感染を有する対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項10】
1又は複数のβ-ラクタマーゼ阻害剤が、化合物(II
a)~(II
z’):
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
【化4-4】
からなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記細菌感染がグラム陰性細菌によって引き起こされる、
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記対象が
、鳥および哺乳動物からなる群より選ばれる動物である、
請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記組み合わせにおける、LTV-17(I)のβ-ラクタマーゼ阻害剤に対する重量比が20:1~1:20の範囲である、
請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記比が1:1~1:20の範囲である、請求項13の方法。
【請求項15】
前記組み合わせが、相乗的な抗菌作用を有する、
請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記薬物の組み合わせが、更に、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、または担体を含む、請求項9~15のいずれか一項記載の方法。
【国際調査報告】