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特表2024-544140熱可塑性ポリマー粉末の粒子の真球度を高める方法
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  • 特表-熱可塑性ポリマー粉末の粒子の真球度を高める方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリマー粉末の粒子の真球度を高める方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20241121BHJP
   B01J 2/16 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C08J3/12 CES
C08J3/12 CET
C08J3/12 CEZ
C08J3/12 CFD
C08J3/12 CFG
B01J2/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527765
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 IB2022060807
(87)【国際公開番号】W WO2023084426
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】P.439486
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524177141
【氏名又は名称】アルファ パウダーズ エスピー.ゼット オー.オー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グジック,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ズディバル,ドミニク アントニー
【テーマコード(参考)】
4F070
4G004
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AA15
4F070AA18
4F070AA47
4F070AA52
4F070AA54
4F070AB09
4F070AC04
4F070AC06
4F070AC15
4F070AE23
4F070DA11
4F070DA41
4F070DB05
4F070DC09
4F070DC11
4F070DC13
4G004KA00
(57)【要約】
熱可塑性ポリマー粉末の真球度および真円度を高める方法であって、最初に粉末粒子をガス流中で粉末凝集体の破壊を確実にする装置に導入し、次に任意選択で、粉末を自由落下に近い条件を確実にする装置に輸送し、次に粉末をノズルを介して、放射線源からの放射線で覆われるゾーン内に置かれる光学的に透明なフローチャンバーに輸送し、その後粉末が放射線を吸収して溶融することを可能にし、次に粉末はキャリアガスによって放射線ゾーンから除去され、次に溶融した粉末粒子が制御された結晶化のチャンバー内で制御された結晶化を経ることを可能にする、ことを特徴とする方法。(請求項の数:40)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマー粉末の粒子の真球度を高める方法であって、(a)ポリマー粉末の(ガス流中での運びによる)、粉末の粒子の凝集体の破壊を確実にする装置への導入と、(b)解凝集した粉末の、ノズル(2)を経由する、放射線源(3)で生成される放射線によって覆われる領域に位置する光学的に透明なフローチャンバー(4)への輸送と、(c)ポリマー粉末粒子の完全な溶融またはタイプII相転移のいずれかを引き起こす、前記放射線の前記粉末による吸収と、(d)前記溶融した粉末粒子の、空気圧接続部(5)を介して連続的に供給されるキャリアガス中での浮遊による、前記放射線ゾーンからの除去と、(e)前記ガスによって運ばれている間の前記溶融したポリマー粒子の自発的な球状化と、(f)制御された結晶化のチャンバー(6)内で起こる、前記キャリアガス中の前記ポリマーの前記制御された結晶化のプロセスと、の連続的なステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリマー粉末は、問題の前記ポリマー、特に、ポリアミド-4、ポリアミド-6、ポリアミド-7、ポリアミド-8、ポリアミド-9、ポリアミド-11、ポリアミド-12、ポリアミド-46、ポリアミド-66、ポリアミド-69、ポリアミド-510、ポリアミド-610、ポリアミド-613、ポリアミド-1010、ポリアミド-1012、ポリアミド-1212、ポリアミド-1313、ポリアミド-6T、ポリアミド-6/66、ポリアミド-6/12、ポリアミド-612、これらのポリアミドのコポリマー、ポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度分岐ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレンとポリエチレンのコポリマー(PP-PE)、ポリ[(エチレン)-co-(酢酸ビニル)](EVA)、ポリエチレンワックス(低分子量ポリエチレン)、融点70℃未満のパラフィンワックス、超高分子量ポリエチレン(UHDPE)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ(オキシメチレン)(POM)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、イソタクチックポリスチレン、アタクチックポリスチレン、ポリ(メタクリル酸メチル)イソタクチック、ポリ(メタクリル酸メチル)アタクチック、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE)、および熱可塑性ポリアミドエラストマー(TPA)をベースとするポリマー粉末の熱分解開始温度よりも常に低い融点またはタイプII相転移温度範囲を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリマー粉末は添加剤として、前記ポリマー粒子の体積中または前記ポリマー粒子の表面に分散された放射線吸収剤を0.01重量%~10重量%の量で含み、有利には、前記熱可塑性ポリマー粉末は、前記粒子の体積中に均一に分散された放射線吸収剤添加物を0.01重量%~2重量%の量で含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記放射線吸収添加剤は、カーボンブラック、長さ0.2mm未満の炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレン-C60、マグネタイト(Fe3O4)、ヘマタイト(Fe2O3)、黒色酸化鉄(II)(FeO)、酸化銅(II)(CuO)、ウルトラマリン、コバルト(II、III)(Co3O4)をベースとする顔料、銅フタロシアニンブルーBN(CAS 147-14-8)、コバルトブルー(テナードブルー、CoAl2O4)、ポリアニリン(CAS 25233-30-1)、ニグロシン、またはそれらの混合物をベースとする顔料であり、有利には、前記赤外線吸収添加剤は、カーボンブラックまたはマグネタイトをベースとする顔料である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリマー粉末の粒子の凝集体の破壊を確実にする前記装置はベンチュリエジェクタ(1)であり、その吸引部は油圧ライン(6)によって前記熱可塑性ポリマー粉末のリザーバに接続される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記キャリアガス(8)の温度は、前記熱可塑性ポリマー粉末の前記融点または前記タイプII相転移温度を下回るが、同時に同温度より25℃を下回ることはなく、有利には、前記キャリアガスは、前記熱可塑性ポリマー粉末の前記融点または前記タイプII相転移温度より20℃~70℃低い温度で供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記キャリアガス(8)の温度は、前記熱可塑性ポリマー粉末の前記融点または前記タイプII相転移温度を下回るが、25℃以上であり、有利には、前記キャリアガスは、前記熱可塑性ポリマー粉末の前記融点または前記タイプII相転移温度より20℃~50℃低い温度で供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記放射線源はフィラメントベースの赤外線エミッタである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記放射線源はレーザーである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記赤外線エミッタ(3)の前記フィラメントは600℃~2500℃の範囲内の温度に加熱され、有利には、前記赤外線エミッタの前記フィラメントは2200℃±100℃の温度に加熱されて、1.0μm~1.4μmの範囲内の波長当たりの最大スペクトル放射照度を有する放射スペクトルの放射を引き起こす、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記フィラメント赤外線エミッタの公称電力と、前記エミッタによって照射される前記透明なチャンバーの断面積との比は、6.7kW/m2~670kW/m2の範囲内であり、有利には10kW/m2~100kW/m2の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記レーザーによって放射される放射線の波長は、0.01mm(CO2レーザー)、0.001064mm(Nd-YAGレーザー)、0.001319mm(Nd-YAGレーザー)、0.0008mm(NIRダイオードレーザー)、および0.00045mm(青色ダイオードレーザー)のいずれか1つである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記放射線源は、前記光学的に透明なチャンバー内に位置している間に、粉末の流れの方向に対して垂直に向けられ、前記放射線の経路は、前記光学的に透明なチャンバーの壁、前記流れているキャリアガス中に懸濁しているポリマー粉末で満たされている前記光学的に透明なチャンバーの内部、および前記光学的に透明なチャンバーの反対側の壁を連続的に横切る、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記放射線源は、前記光学的に透明なチャンバー内に位置している間に、前記粉末の流れの方向に対して垂直に向けられ、前記放射線の経路は、前記光学的に透明なチャンバーの壁、前記流れているキャリアガス中に懸濁しているポリマー粉末で満たされている前記光学的に透明なチャンバーの内部、前記光学的に透明なチャンバーの壁、および前記放射線を前記光学的に透明なチャンバーの内部へ反射する金属鏡の層を連続的に横切る、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記放射線源は、前記光学的に透明なチャンバー内に位置している間に、前記粉末の流れの方向に対して垂直に向けられ、前記放射線の経路は、前記光学的に透明なチャンバーの壁、前記流れているキャリアガス中に懸濁しているポリマー粉末で満たされている前記透明なチャンバーの内部、前記透明なチャンバーの壁、および平行放射線源を連続的に横切る、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記光学的に透明なチャンバーは、厚さ2mmのサンプルについて測定される、0.001mm~0.0025mmの放射の波長範囲内で90%を超える平均透過率を特徴とするホウケイ酸ガラス、ナトリウムガラス、鉛ガラス、または溶融石英で作られ、有利には、前記チャンバーは、厚さ2mmのサンプルについて測定される、0.001mm~0.0025mmの放射波長の範囲内で90%を超える値を有する平均透過率を特徴とする溶融石英から作られ、最も有利には、前記チャンバーはJGS-2またはJGS-3という名前で市販で知られている溶融石英から作られる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記制御された結晶化は、25℃から、前記ポリマー粉末の前記融点またはタイプII相転移温度より20℃低い温度までの範囲内の温度を有するシールドガス中で行われ、有利には、前記制御された結晶化は、25℃から、前記ポリマー粉末の前記融点またはタイプII相転移温度より50℃低い温度までの範囲内の温度を有するアルゴン、窒素または六フッ化硫黄中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
熱可塑性ポリマー粉末の粒子の真球度を高める方法であって、(a)ポリマー粉末の、粉末の粒子の凝集体の破壊を確実にする装置(9)への導入と、(b)解凝集した粉末の、前記粉末の自由落下に近い動きを確実にし前記シールドガスを前記キャリアガス中に懸濁している前記粉末から分離する装置(10)への輸送と、(c)減圧発生器(14)の作用で前記フローチャンバー内の圧力を低下させることによって引き起こされる、前記懸濁している粉末と前記シールドガスの光学的に透明なフローチャンバー(12)への輸送と、(d)放射線吸収または放射線吸収と対流熱伝達の組合せによる、前記フローチャンバーの壁から前記粉末粒子へのエネルギー伝達と、(e)前記エネルギー伝達の結果としての前記粉末の粒子の完全もしくは部分的な溶融または完全もしくは部分的なタイプII相転移と、(f)前記液体ポリマー粒子が自発的な球状化を経ている間の、前記減圧発生器(14)の作用でチャンバー(15)から光学的に透明な流動反応器内に引き込まれる前記キャリアガスによる、前記溶融した粒子の前記放射線領域からの除去と、(g)制御された結晶化のチャンバー(13)内で起こる、前記キャリアガス中の前記ポリマーの前記制御された結晶化のプロセスと、の連続的なステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記熱可塑性ポリマー粉末は、問題の前記ポリマー、特に、ポリアミド-4、ポリアミド-6、ポリアミド-7、ポリアミド-8、ポリアミド-9、ポリアミド-11、ポリアミド-12、ポリアミド-46、ポリアミド-66、ポリアミド-69、ポリアミド-510、ポリアミド-610、ポリアミド-613、ポリアミド-1010、ポリアミド-1012、ポリアミド-1212、ポリアミド-1313、ポリアミド-6T、ポリアミド-6/66、ポリアミド-6/12、ポリアミド-612、これらのポリアミドのコポリマー、ポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度分岐ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレンとポリエチレンのコポリマー(PP-PE)、ポリ[(エチレン)-co-(酢酸ビニル)](EVA)、ポリエチレンワックス(低分子量ポリエチレン)、融点70℃未満のパラフィンワックス、超高分子量ポリエチレン(UHDPE)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ(オキシメチレン)(POM)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、イソタクチックポリスチレン、アタクチックポリスチレン、ポリ(メタクリル酸メチル)イソタクチック、ポリ(メタクリル酸メチル)アタクチック、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE)、および熱可塑性ポリアミドエラストマー(TPA)をベースとするポリマー粉末の熱分解開始温度よりも常に低い融点またはタイプII相転移温度範囲を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記熱可塑性ポリマー粉末は添加剤として、前記ポリマー粒子の体積中または前記ポリマー粒子の表面に分散された放射線吸収剤を0.01重量%~10重量%の量で含み、有利には、前記熱可塑性ポリマー粉末は、前記粒子の体積中に均一に分散された放射線吸収剤添加物を0.01重量%~2重量%の量で含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記放射線吸収添加剤は、カーボンブラック、長さ0.2mm未満の炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレン-C60、マグネタイト(Fe3O4)、ヘマタイト(Fe2O3)、黒色酸化鉄(II)(FeO)、酸化銅(II)(CuO)、ウルトラマリン、コバルト(II、III)(Co3O4)をベースとする顔料、銅フタロシアニンブルーBN(CAS 147-14-8)、コバルトブルー(テナードブルー、CoAl2O4)、ポリアニリン(CAS 25233-30-1)、ニグロシン、またはそれらの混合物をベースとする顔料であり、有利には、前記赤外線吸収添加剤は、カーボンブラックまたはマグネタイトをベースとする顔料である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記熱可塑性ポリマー粉末は前記放射線吸収剤の添加物を含まず、前記放射線吸収は、前記球状化を経るポリマーによって提供される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記粉末凝集体の破壊を確実にするための装置(9)は、スクリューフィーダーと、機械的振動および/または揺動を受けるスクリーンメッシュとを備える装置である、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記粉末凝集体の破壊を確実にするための前記装置(9)は、スクリューフィーダーと、機械的振動および/または揺動を受ける機械的衝撃要素とを備える装置である、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記粉末粒子の自由落下運動に近い条件を提供し、前記シールドガスを前記キャリアガス中に懸濁している粉末から分離する前記要素(10)は、機械的振動を受ける孔あき要素である、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記キャリアガスは、前記熱可塑性ポリマー粉末の前記融点または前記タイプII相転移温度を下回るが、同時に25℃以上である温度で供給され、有利には、前記キャリアガスは、前記熱可塑性ポリマー粉末の前記融点または前記タイプII相転移温度より20℃~70℃低い温度で供給される、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記キャリアガス(8)の温度は、前記熱可塑性ポリマー粉末の前記融点または前記タイプII相転移温度を下回るが、25℃以上であり、有利には、前記キャリアガスは、前記熱可塑性ポリマー粉末の前記融点または前記タイプII相転移温度より20℃~50℃低い温度で供給される、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
前記放射線源はフィラメントベースの赤外線エミッタである、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
前記放射線源はレーザーである、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記赤外線エミッタ(3)の前記フィラメントは600℃~2500℃の範囲内の温度に加熱され、有利には、前記赤外線エミッタの前記フィラメントは2200℃±100℃の温度に加熱されて、1.0μm~1.4μmの範囲内の波長当たりの最大スペクトル放射照度を有する放射スペクトルの放射を引き起こす、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記フィラメント赤外線エミッタの公称電力と、前記エミッタによって照射される前記透明なチャンバーの断面積との比が、1kW/m2~1000kW/m2の範囲内であり、有利には、10kW/m2~100kW/m2の範囲内である、請求項18に記載の方法。
【請求項32】
前記レーザーによって放射される放射線の波長は、0.01mm(CO2レーザー)、0.001064mm(Nd-YAGレーザー)、0.001319mm(Nd-YAGレーザー)、0.0008mm(NIRダイオードレーザー)、および0.00045mm(青色ダイオードレーザー)のいずれか1つである、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記放射線源は、前記光学的に透明なチャンバー内に位置している間に、前記粉末の流れの方向に対して垂直に向けられ、前記放射線の経路は、前記光学的に透明なチャンバーの壁、前記流れているキャリアガス中に懸濁しているポリマー粉末で満たされている前記光学的に透明なチャンバーの内部、および前記光学的に透明なチャンバーの反対側の壁を連続的に横切る、請求項18に記載の方法。
【請求項34】
前記放射線源は、前記光学的に透明なチャンバー内に位置している間に、前記粉末の流れの方向に対して垂直に向けられ、前記放射線の経路は、前記光学的に透明なチャンバーの壁、前記流れているキャリアガス中に懸濁しているポリマー粉末で満たされている前記光学的に透明なチャンバーの内部、前記光学的に透明なチャンバーの壁、および前記放射線を前記光学的に透明なチャンバーの内部へ反射する金属鏡の層を連続的に横切る、請求項18に記載の方法。
【請求項35】
前記放射線源は、前記光学的に透明なチャンバー内に位置している間に、前記粉末の流れの方向に対して垂直に向けられ、前記放射線の経路は、前記光学的に透明なチャンバーの壁、前記流れているキャリアガス中に懸濁しているポリマー粉末で満たされている前記透明なチャンバーの内部、前記透明なチャンバーの壁、および平行放射線源を連続的に横切る、請求項18に記載の方法。
【請求項36】
前記放射線源は、前記光学的に透明なチャンバー内に位置している間に、前記粉末の流れの方向に対して垂直に向けられ、前記放射線の経路は、前記光学的に透明なチャンバーの壁、前記流れているキャリアガス中に懸濁しているポリマー粉末で満たされている前記透明なチャンバーの内部、および前記放射線を前記光学的に透明なチャンバーの内部へ反射する金属鏡の層を連続的に横切る、請求項18に記載の方法。
【請求項37】
前記光学的に透明なチャンバーは、厚さ2mmのサンプルについて測定される、0.001mm~0.0025mmの放射の波長範囲内で90%を超える平均透過率を特徴とするホウケイ酸ガラス、ナトリウムガラス、鉛ガラス、または溶融石英で作られ、有利には、前記チャンバーは、厚さ2mmのサンプルについて測定される、0.001mm~0.0025mmの放射波長の範囲内で90%を超える値を有する平均透過率を特徴とする溶融石英から作られ、最も有利には、前記チャンバーはJGS-2またはJGS-3という名前で市販で知られている溶融石英から作られる、請求項18に記載の方法。
【請求項38】
前記制御された結晶化は、25℃から、前記ポリマー粉末の前記融点またはタイプII相転移温度より20℃低い温度までの範囲内の温度を有するシールドガス中で行われ、有利には、前記制御された結晶化は、25℃から、前記ポリマー粉末の前記融点またはタイプII相転移温度より50℃低い温度までの範囲内の温度を有するアルゴン、窒素または六フッ化硫黄中で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項39】
前記シールドガスおよび前記キャリアガス中に懸濁している粉末は前記反応器内の減圧の作用で前記反応器に導入され、前記減圧は真空ポンプまたはベンチュリエジェクタによって生成され、有利には、前記減圧は真空ポンプによって生成される、請求項18に記載の方法。
【請求項40】
前記シールドガスおよび前記キャリアガス中に懸濁している粉末は前記反応器内の減圧の作用で前記反応器に導入され、前記減圧は真空ポンプまたはベンチュリエジェクタによって生成され、有利には、前記減圧は真空ポンプによって生成される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、熱可塑性ポリマー粉末の粒子の真球度を高める方法である。本明細書で使用される「真球度」という用語は、「楕円度」、「真円度」、「規則性」としても理解されるべきである。本明細書で使用されるポリマー粉末の「grains(粒子)」という用語は、ポリマー粉末の「particles(粒子)」としても理解されるべきである。本明細書で使用される「タイプII相転移」という用語は、「二次相転移」または「ガラス転移」としても理解されるべきである。本明細書で使用される「自発的な球状化」という用語は、任意の形状の粒子の形状が自発的に変化してほぼ完全な球体になるプロセスとして理解されるべきである。粒子は、地球の重力の影響を無視できる程度に流体中に浮遊している液体ポリマーの液滴であり、そのプロセスは主に液体ポリマーの液滴の表面張力、粘度、およびサイズによって制御される。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリマーの粉末について、融点を示す結晶性ポリマーとタイプII相転移を示す非晶質ポリマーの両方は、粉体塗料、静電塗布塗料、溶液および懸濁液からの静電塗布層(EPD-電気泳動堆積)の成分、回転成形プロセス用の供給材料、積層造形技術における選択的レーザー焼結(SLS)プロセス用の供給原料、積層造形技術におけるマルチジェットフュージョン(MJF)プロセス用の供給原料、化粧品用の研磨材、ポリマーコールドスプレープロセス用の材料、またはポリマーフレームスプレー(FSA)プロセス用の供給原料として使用され、またはトナーやインクの製造に使用される。特に、SLSやMJFなどの積層造形技術では、効率的な輸送プロセスと高温での良好な固化を可能にする高い真球度を特徴とする粉末が要求される。これは、高い(ハウスナー比で表される)粉末流動性によって可能となり、粉末流動性はポリマー粒子の真球度と正の相関関係がある。極低温条件下での粉砕を含む、粉砕プロセスに基づいてポリマー粉末を製造する多くの方法では、低い真球度を有する不規則な粉末が生成されるため、流動性が低くなり、その結果、積層造形技術や高い流動性を必要とするその他の分野でのポリマー粉末の使用が大幅に制限される。
【0003】
熱可塑性ポリマーの高度に球形の粒子を有する粉末を得る一般的に知られている方法は、作用のメカニズム、すなわち、制御された溶融、自発的な球状化、制御された結晶化、および制御された溶液からの沈殿に関して分類されることができる。これらの方法は、液体または気体の対流による熱伝達と組み合わせて前述のメカニズムを利用する。よく知られている方法の1つは、ポリマーを溶液から沈殿させることによって高い真球度パラメータを有する粉末を調製することであり、この沈殿プロセスは、温度を下げるかまたはポリマーの非溶媒である液体を添加することによって引き起こされる。このプロセスは、ポリアミド12(PA12)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド6(PA6)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド11(PA11)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリオキシメチレン(POM)、およびポリラクチド誘導体(PLA)に使用される。この方法の特徴は、有毒な溶媒を使用する必要があることと、圧力反応器でのプロセス条件を厳密に選択する必要があることであるが、これは好ましくない。この方法の既知の応用の例示的な概要は論文(P.Hejmady et al,A processing route to spherical polymer particles via controlled droplet retraction,388,401-411,2021)に示されている。さらに、米国特許第5932687A号には、高圧システムにおいて130℃~165℃の範囲の温度で、1~13個の炭素原子を含む脂肪族アルコールからポリアミド12ベースの材料を制御された方法で沈殿させ、その後110℃~130℃の温度まで冷却する発明が記載されている。もう1つの一般的に知られている方法は、噴霧乾燥プロセスである。噴霧乾燥プロセスは、ポリスルホン(PSU)などの高融点ポリマーを含む幅広い熱可塑性ポリマーに使用されることができる。この方法の主な制限は、質量収率が低いこと、最適なチャンバー温度を選択することが難しいこと、および収集容器内で粒子が過度に固化することである。別のよく知られたプロセスは、熱可塑性材料とマトリックス材料との共押出であり、その後マトリックス材料を除去して、高い真球度を有する熱可塑性粒子を残すことができる。この解決策は、廃棄ポリマーマトリックスの除去および管理の必要性、ならびに粒度分布の制御が不十分であるという事実により、不利である。この溶液はポリプロピレンとポリアミド12に使用されることが知られている。(X.Yang et al.,Preparation of spherical polymer powders for selective laser sintering from immiscible PA12/PEO blends with high viscosity ratios,Polymer,172,58-65,2019)に記載される例示的な結果は、1マイクロメートル未満のふるいサイズを有する画分の形成を示し、これは、積層造形技術における用途や、人間による粉末材料の吸入または摂取のリスクが存在する用途には望ましくない。特許出願DE102006015791A1には、ポリ(エチレングリコール)およびポリ(エチレンオキシド)をベースとする水溶性マトリックスが記載されている。科学文献には、プラトー・レイリー効果を利用して液体マトリックス中の制御された加熱によって熱可塑性ポリマー繊維を球状粒子に変換することができる、よく知られた方法が記載されている。この方法は、例えば、出版物(Y.Zhou et al.,Preparation of near-spherical PA12 particles for selective laser sintering via Plateau-Rayleigh instability of molten fibers,Materials and Design,190,108578,2020)に記載されている。本質的に非常に微細な画分を生成し、また、得られた粉末の純度に悪影響を及ぼし、高温への過剰な曝露による粉末の劣化につながる可能性があるため、効率の点で制限がある。米国特許出願第4345015A号には、ポリマーの非溶媒である液体中に浮遊しているポリマー粒子の加熱を含む、別の既知の方法が記載されている。この方法の特徴は、液体残留物から粉末粒子を洗浄する必要があることであり、これがこの方法の欠点である。米国特許出願第6264861B1号には、熱可塑性ポリマーの不規則な粒子は、非熱可塑性材料の粒子と均質化され、球状化を経ている熱可塑性ポリマーのガラス転移温度を超える温度で混合される、別の既知の方法が記載されている。この解決策は、粒子を丸くするプロセスの後に非熱可塑性材料を分離する必要があるため、劣っており、これにより、高純度で低コストの粉末用途には魅力的ではない。管型反応器ヒーターによるガス中の熱可塑性ポリマー粉末粒子の懸濁液の加熱を含む他の方法が知られている。「加熱されたダウナー反応器(Heated Downer Reactor)」という名前で科学文献や産業文献に存在するこのような解決策の1つは、(M.Sachs et al.,Characterization of a downer reactor for particle rounding,Powder Technology,316,1,357-366,2017)に例示されている。この方法は、ポリスチレン粉末、PBT粉末、ポリエチレン(PE)粉末、およびその他の熱可塑性プラスチックに使用されることができる。装置のサイズが大きいにもかかわらず、この解決策は、約70%の低プロセス効率を特徴とし、これは、粉末リフトガスの入口近くの反応器の壁に溶融熱可塑性粒子が制御されずに堆積するためである。この方法は、約200g/hの粉末生産能力を有する。管型反応器の高さが4メートルを超えるため、この解決策は容易に拡張されることができず、よって、供給された粉末の大部分がプロセス中に破壊されることを考慮すると、有利な生産能力を達成するために必要であろう。米国特許出願第20120070666A1には、NARAのNHS装置を使用する別の既知の解決策が記載され、NARAのNHS装置は、粉末粒子に作用する高いせん断力を提供し、粉末は材料のガラス転移温度より高いが融点より低い温度で導入される。
【0004】
研究の過程で、赤外線が散乱するだけでなく、ガス中のポリマー粉末粒子の懸濁液によって部分的に吸収されることが予想外に判明された。熱可塑性ポリマー粉末粒子が赤外線吸収添加剤を含む場合、加熱プロセスを加速し、粒子の完全な溶融または完全なタイプII相転移に達することができることが観察された。粉末粒子が赤外線吸収添加剤を含まない場合でも、プロセスを実行できることが観察され、前述のプロセスは、質量効率の低下と共に進行し、ポリマーによる赤外線の吸収に基づいている。粒子に放射線吸収添加剤が含まれているかどうかに関係なく、球状化プロセスは放射線吸収メカニズムと対流加熱メカニズムの両方で進行することが観察された。粉末粒子が室温より高く、同時に熱可塑性ポリマーの融点より20℃低い場合、エジェクタと供給ノズル内の熱可塑性ポリマー粉末の凝集を維持することなく、放射線吸収のメカニズムによって気相内の粒子を効果的に溶融できることが観察された。反応器入口付近のガス温度が室温からポリマーの融点までの範囲内であるときに粉末粒子を反応器に導入すると、放射線吸収と対流加熱との混合メカニズムによって粉末粒子を効率的に溶融できることが観察された。反応器入口付近のガスの温度が室温からポリマーの融点までの範囲内であるときに粉末粒子を反応器に導入すると、特に放射線加熱ゾーンと対流加熱ゾーンとが同じ場所に位置する場合、放射線吸収と対流加熱との混合メカニズムによって粉末粒子を効率的に溶融できることが観察された。この状況は、放射線を部分的に透過し、熱伝導率係数が低い材料で作られた反応器を実装することによって有利に実現される。研究の過程で、ポリマー粉末の粒子の凝集状態が続かない場合に、放射線による球状化の方法が有効であることが判明した。そうしないと、球状化は平均粒径の増大と共に進行する。粉末をプロセスへ供給する便利な方法は、ベンチュリエジェクタを使用して、シールドガスによって粉末化し、本発明の一部ではないよく知られた方法の一つを使用して粉末をエジェクタの吸引セクションに分配することであることが観察された。粉末を供給する有利な方法は、自由落下に近い条件下で、特にふるい、複数のふるいの配置、またはふるい(複数可)と粉末凝集体破砕要素に基づく配置を通って供給することであることが観察された。粉末を供給する有利な方法は、自由落下に近い条件下で、特にふるい、複数のふるいの配置、またはふるい(複数可)と粉末凝集体破砕要素に基づく配置を通って供給することであり、粉末とシールドガスの流れは、反応器セクション出口付近の圧力を下げることによって制御され、それにより、シールドガスとポリマー粉末が同時に反応器に引き込まれることが観察された。研究の過程で、溶融粒子の固化を避けるために、本発明は、溶融粒子の、放射線による加熱が行われる透明なチャンバーを出た後の制御された結晶化のステップを含むべきであり、有利には、制御された結晶化は、室温から熱可塑性粉末の融点より50℃低い温度までの範囲内の温度を有する化学的に不活性なシールドガス中で行われることが観察された。本発明の目的は、添付の図面に視覚化されている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、熱可塑性ポリマーの粉末粒子の真球度を高める方法であって、粉末粒子を運ぶガスの温度を低下させ、粉末の高温にさらされる時間を短縮し、球状化されているポリマーの熱劣化の程度を低減し、プロセスの達成可能な収率とスループットを向上させることを特徴とする方法である。
【0006】
本発明の本質は、ポリマー粒子の制御された溶融または制御されたタイプII相転移、その後の自発的な球状化、および最終のシールドガスにおける制御された結晶化のための放射線熱輸送メカニズムに基づく装置を使用することによって、熱可塑性ポリマー粉末粒子の真球度を高めることであり、ポリマー粉末粒子を運ぶシールドガスの温度は、熱可塑性ポリマー粒子の溶融温度よりも低い。
【0007】
本発明による熱可塑性ポリマー粉末の粒子の真球度を高める方法は、ガス流中での熱可塑性ポリマー粉末の、粉末材料の粒子の凝集体の破壊を確実にする装置への導入に基づき、次に粉末はノズル(2)を通って放射線源(3)によって生成される放射線の領域に位置する光学的に透明なフローチャンバー(4)に輸送され、次に粉末は放射線を吸収して、粉末の完全な溶融またはタイプII相転移を引き起こし、次に溶融した粒子は、空気圧接続部(5)を通じて連続的に供給されるキャリアガスにおいて運ばれることで放射線領域から除去され、キャリアガスによって運ばれている間に、液体ポリマーの自発的な球状化が起こり、次にポリマーが、制御された結晶化のチャンバー(6)内でキャリアガス中で結晶化することを可能にする。
【0008】
本発明による熱可塑性ポリマー粉末の粒子の真球度を高める方法は、一連のステップを特徴とし、熱可塑性ポリマー粉末は、粉末の粒子の凝集体の破壊を確実にする装置(9)に導入され、次に粉末は、粒子の自由落下に近い条件を確実にしシールドガスをキャリアガスに懸濁している粉末から分離する装置(10)に導入され、次にガス中の粉末懸濁物とシールドガスは、減圧発生器(14)でフローチャンバー内の圧力を下げることによって、光学的に透明なフローチャンバー(12)に輸送され、次に放射線吸収、またはフローチャンバーの壁からの対流熱伝達を伴う放射線吸収が発生し、次にエネルギーの吸収による粒子の完全または部分的な溶融または完全または部分的なタイプII相転移が起こり、次に溶融した粒子は、減圧発生器(14)の作用でチャンバー(15)から流動反応器に引き込まれたガス中で運ばれることで放射線領域から除去され、次にキャリアガス中での輸送の間に液体ポリマー粒子の自発的な球状化が起こり、次に制御された結晶化のチャンバー(13)内でキャリアガス中で、制御された結晶化が起こる。
【0009】
熱可塑性ポリマー粉末は、問題のポリマーの、特に、ポリアミド-4、ポリアミド-6、ポリアミド-7、ポリアミド-8、ポリアミド-9、ポリアミド-11、ポリアミド-12、ポリアミド-46、ポリアミド-66、ポリアミド-69、ポリアミド-510、ポリアミド-610、ポリアミド-613、ポリアミド-1010、ポリアミド-1012、ポリアミド-1212、ポリアミド-1313、ポリアミド-6T、ポリアミド-6/66、ポリアミド-6/12、ポリアミド-612、これらのポリアミドのコポリマー、ポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度分岐ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレンとポリエチレンのコポリマー(PP-PE)、ポリ[(エチレン)-co-(酢酸ビニル)](EVA)、ポリエチレンワックス(低分子量ポリエチレン)、融点70℃未満のパラフィンワックス、超高分子量ポリエチレン(UHDPE)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ(オキシメチレン)(POM)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、イソタクチックポリスチレン、アタクチックポリスチレン、ポリ(メタクリル酸メチル)イソタクチック、ポリ(メタクリル酸メチル)アタクチック、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE)、および熱可塑性ポリアミドエラストマー(TPA)をベースとするポリマー粉末の熱分解開始温度よりも常に低い融点またはタイプII相転移温度範囲を有する。
【0010】
有利には、熱可塑性ポリマー粉末は添加剤として、ポリマー粒子の体積中またはポリマー粒子の表面に分散された放射線吸収剤を0.01重量%~10重量%の量で含み、有利には、熱可塑性ポリマー粉末は、粒子の体積中に均一に分散された放射線吸収剤添加物を0.01重量%~2重量%の量で含む。
【0011】
有利には、放射線吸収添加剤は、カーボンブラック、長さ0.2mm未満の炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレン-C60、マグネタイト(Fe3O4)、ヘマタイト(Fe2O3)、黒色酸化鉄(II)(FeO)、酸化銅(II)(CuO)、ウルトラマリン、コバルト(II、III)(Co3O4)をベースとする顔料、銅フタロシアニンブルーBN(CAS 147-14-8)、コバルトブルー(テナードブルー、CoAl2O4)、ポリアニリン(CAS 25233-30-1)、ニグロシン、またはそれらの混合物をベースとする顔料であり、有利には、赤外線吸収添加剤は、カーボンブラックまたはマグネタイトをベースとする顔料である。
【0012】
熱可塑性ポリマー粉末の粒子の凝集体の破壊を確実にする装置はベンチュリエジェクタ(1)であり、その吸引部は油圧ライン(6)によって熱可塑性ポリマー粉末のリザーバに接続される。
【0013】
本発明による粉末粒子凝集体の破壊を確実にする装置(9)は、スクリューフィーダーと、機械的振動および/または揺動を受けるふるいとを備える装置である。
【0014】
本発明による粉末粒子凝集体の破壊を確実にする装置(9)は、スクリューフィーダーと、機械的振動および/または揺動を受ける機械的衝撃要素とを備える装置である。
【0015】
有利には、粉末粒子の自由落下に近い条件を確実にし、シールドガスをキャリアガス中に浮遊している粉末から分離する要素(10)は、孔あき要素である。
【0016】
有利には、キャリアガス(8)は制御された結晶化が起こるシールドガスであると同時に、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、六フッ化硫黄、またはそれらの混合物からなる群のうちの物質または元素であり、有利には、キャリアガスは窒素、アルゴンまたは六フッ化硫黄である。
【0017】
有利には、キャリアガス(8)の温度は、熱可塑性ポリマー粉末の融点またはタイプII相転移温度を下回るが、25℃以上であり、有利には、キャリアガスは、熱可塑性ポリマー粉末の融点またはタイプII相転移温度より20℃~50℃低い温度で供給される。
【0018】
有利には、キャリアガスとキャリアガス中に浮遊している粉末は、反応器内に存在する減圧の結果として反応器に導入される。
【0019】
反応器内の減圧は、真空ポンプまたはベンチュリエジェクタによって生成される。有利には、反応器内の減圧は真空ポンプによって生成される。
【0020】
放射線源はフィラメントベースの赤外線エミッタである。
【0021】
放射線源はレーザーである。
【0022】
有利には、赤外線エミッタ(3)のフィラメントは600℃~2500℃の範囲内の温度に加熱され、有利には、赤外線エミッタのフィラメントは2200℃±100℃の温度に加熱されて、1.0μm~1.4μmの範囲内の波長当たりの最大スペクトル放射照度を有する放射スペクトルの放射を引き起こす。
【0023】
有利には、フィラメント赤外線エミッタの公称電力と、該エミッタによって照射される透明なチャンバーの断面積との比は、6.7kW/m2~670kW/m2の範囲内であり、有利には、10kW/m2~100kW/m2の範囲内である。
【0024】
有利には、レーザーによって放射される放射線の波長は、0.01mm(CO2レーザー)、0.001064mm(Nd-YAGレーザー)、0.001319mm(Nd-YAGレーザー)、0.0008mm(NIRダイオードレーザー)、および0.00045mm(青色ダイオードレーザー)のいずれか1つである。
【0025】
有利には、放射線源は、光学的に透明なチャンバー内に位置している間に、粉末の流れの方向に対して垂直に向けられ、放射線の経路は、光学的に透明なチャンバーの壁、流れているキャリアガス中に浮遊しているポリマー粉末で満たされている光学的に透明なチャンバーの内部、および光学的に透明なチャンバーの反対側の壁を連続的に横切る。
【0026】
有利には、放射線源は、光学的に透明なチャンバー内に位置している間に、粉末の流れの方向に対して垂直に向けられ、放射線の経路は、光学的に透明なチャンバーの壁、流れているキャリアガス中に浮遊しているポリマー粉末で満たされている光学的に透明なチャンバーの内部、光学的に透明なチャンバーの壁、および放射線を光学的に透明なチャンバーの内部へ反射する金属鏡の層を連続的に横切る。
【0027】
有利には、放射線源は、光学的に透明なチャンバー内に位置している間に、粉末の流れの方向に対して垂直に向けられ、放射線の経路は、光学的に透明なチャンバーの壁、流れているキャリアガス中に浮遊しているポリマー粉末で満たされている透明なチャンバーの内部、透明なチャンバーの壁、および平行放射線源を連続的に横切る。
【0028】
有利には、光学的に透明なチャンバーは、厚さ2mmのサンプルについて測定される、0.001mm~0.0025mmの放射の波長範囲内で90%を超える平均透過率を特徴とするホウケイ酸ガラス、ナトリウムガラス、鉛ガラス、または溶融石英で作られ、有利には、チャンバーは、厚さ2mmのサンプルについて測定される、0.001mm~0.0025mmの放射波長の範囲内で90%を超える値を有する平均透過率を特徴とする溶融石英から作られ、最も有利には、チャンバーはJGS-2またはJGS-3という名前で市販で知られている溶融石英から作られる。
【0029】
有利には、制御された結晶化は、25℃から、ポリマー粉末の融点またはタイプII相転移温度より20℃低い温度までの範囲内の温度を有するシールドガス中で行われ、有利には、制御された結晶化は、25℃から、ポリマー粉末の融点またはタイプII相転移温度より50℃低い温度までの範囲内の温度を有するアルゴン、窒素または六フッ化硫黄中で行われる。
【0030】
本発明による解決策の利点は、球状化を経ている熱可塑性ポリマー粉末の制御された溶融を行うための放射線熱輸送メカニズムの使用である。本発明は、球状化されているポリマーの融点よりも低いシールドガス温度の使用を特徴とし、それにより、熱可塑性ポリマーの熱劣化のリスクを最小限に抑える。さらに、この解決策は、熱可塑性ポリマーの粒子が溶融すると予想されるフローチャンバー内の正確な位置に対する制御を可能にする。この解決策は、シールドガスの温度が熱可塑性ポリマー粒子の融点を超えるシステムに存在することが知られている、溶融粒子がフローチャンバーの壁に付着するという問題を軽減する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
実施例1)
D90が0.130mm未満、数平均真円度(circularity)パラメータが0.70、数平均真円度(roundness)パラメータが0.65の、ポリアミド12をベースとする粉末材料を、空気中で100℃で反応器に供給した。粉末材料を、直径が35mm、壁厚が1mm、長さが300mmの、円形断面を有する、ホウケイ酸ガラス製の透明なフローチャンバーに導入した。粉末材料は0.03kg/hの速度で導入された。この実施例では、公称電力対照射面積比が66kW/m2のフィラメント赤外線エミッタと、吸収されなかった放射線を透明なチャンバーに反射して戻すために、放射線源と反対の側の光学的に透明なチャンバーの表面と共形のアルミニウム反射層とを使用した。粉末は、可変の断面積を有する平らなノズルを通って導入され、断面の詳細な形状は本出願の主題ではないので、ここでは報告しない。制御された結晶化は、室温で空気中で行われた。顕微鏡画像解析法を使用して、得られた材料に対してサイズ分布分析と形状分析を施し、この場合、ポリマー材料は、測定を妨げる可能性のある凝集体の形成を避けるために、液体中の浮遊物で分析された。球状化後に得られた粉末材料は、D90が0.145mm未満の粒径、0.79の数平均真円度係数および0.75の数平均真円度パラメータを特徴とした。結果は、供給材料よりも球状で規則的な平均粒子形状を呈することで、粉末の全体的な真球度の改善を示している。
【0032】
実施例2)
D90が0.130mm未満、数平均真円度が0.70、数平均真円度が0.65の、ポリアミド12をベースとする粉末材料を、空気中で150℃で反応器に供給した。粉末材料は、市販の名称がJGS-2の石英ガラスで作られる、円形断面形状を有する、内径が40mm、壁厚が3mm、長さが300mmの透明なフローチャンバーに導入された。粉末材料は0.03kg/hの速度で導入された。この実施例では、公称電力対照射面積比が66kW/m2のフィラメント赤外線エミッタと、吸収されなかった放射線を透明なチャンバーに反射して戻すために放射線源と反対の側の光学的に透明なチャンバーの表面と共形のアルミニウム反射層とを使用した。粉末は、可変の断面積を有する平らなノズルを通って導入され、断面の詳細な形状は本出願の主題ではないので、ここでは報告しない。制御された結晶化は、室温で空気中で行われた。顕微鏡画像解析法を使用して、得られた材料に対して造粒分布分析と形状分析を施し、この場合、ポリマー材料は、測定を妨げる可能性のある凝集体の形成を避けるために、液体中の浮遊物で分析された。得られた粉末材料は、D90が151μm未満の粒径、0.81の数平均真円度パラメータ、および0.79の数平均真円度係数を特徴とした。結果は、供給材料よりも球状で規則的な平均粒子形状を呈することで、粉末の全体的な真球度の改善を示している。
【0033】
実施例3)
D90が0.146mm、数平均真円度が0.62、真円度が0.55の、ポリアミド12をベースとする粉末材料を空気中で100℃で反応器に供給した。粉末材料は、市販でJGS-2として知られている溶融石英で作られる、円形断面形状を有する、内径が17mm、壁厚が1.5mm、高さが300mmの透明なフローチャンバーに導入された。粉末材料は0.002kg/hの速度で導入された。本実施例では、公称電力対照射面積比が70kW/m2のフィラメント赤外線エミッタと、吸収されなかった放射線を透明なチャンバーに反射して戻すために放射線源と反対の側に位置する光学的に透明なチャンバーの表面とコヒーレントになる金反射層とを使用した。粉末は、振動-揺動スクリーンフィーダーと統合されたスクリューフィーダーを通じて供給され、その後、粉末粒子の自由落下に近い条件を確実にしシールドガスをキャリアガス中に浮遊している粉末から分離する孔あき要素の中に向けられた。制御された結晶化は空気中で70℃で行われた。顕微鏡画像解析法を使用して、得られた材料に対して粒度分布分析および形状分析を施し、ここで、ポリマー材料は、測定を妨げる可能性のある凝集体の形成を避けるために、非溶媒中に懸濁している状態で分析された。この実施例に記載の方法による球状化の後に得られた粉末材料は、D90が167μmの粒径、0.91の数平均真円度パラメータ、および0.81の数平均真円度係数を特徴とした。結果は、粉末の全体的な真球度の改善、および供給原料よりも球状で規則的な平均粒子形状への移行を示している。
【0034】
実施例4)
D90が0.125mm、数平均真円度が0.68、真円度が0.63の、ポリプロピレンをベースとする粉末材料を空気中で100℃で反応器に供給した。粉末材料は、市販でJGS-2として知られている溶融石英で作られる、円形断面形状を有する、内径が17mm、壁厚が1.5mm、高さが300mmの透明なフローチャンバーに導入された。粉末材料は0.0015kg/hの速度で導入された。この実施例では、公称電力対照射面積比が70kW/m2のフィラメント赤外線エミッタと、吸収されなかった放射線を透明なチャンバーに反射して戻すために放射線源と反対の側に位置する光学的に透明なチャンバーの表面とコヒーレントになる金反射層とを使用した。粉末は、振動-揺動スクリーンフィーダーと統合されたスクリューフィーダーを通って供給され、その後、粉末粒子の自由落下に近い条件を確実にしシールドガスをキャリアガス中に浮遊している粉末から分離する孔あき要素の中に向けられた。制御された結晶化は空気中で70℃で行われた。顕微鏡画像解析法を使用して、得られた材料に対して粒度分布分析および形状分析を施し、ここで、ポリマー材料は、測定を妨げる可能性のある凝集体の形成を避けるために、非溶媒中に浮遊している状態で分析された。この実施例に記載の方法による球状化の後に得られた粉末材料は、D90が160μmの粒径、0.89の数平均真円度パラメータ、および0.85の数平均真円度係数を特徴とした。結果は、粉末の全体的な真球度の改善、および供給原料よりも球状で規則的な平均粒子形状への移行を示している。
【0035】
実施例5)
D90が0.143mm、数平均真円度が0.82、真円度が0.62の、熱可塑性ポリウレタン(TPU)をベースとする粉末材料は空気中で100℃で反応器に供給された。粉末材料は、市販でJGS-2として知られている溶融石英で作られる、円形断面形状を有する、内径が17mm、壁厚が1.5mm、高さが300mmの透明なフローチャンバーに導入された。粉末材料は0.0027kg/hの速度で導入された。本実施例では、公称電力対照射面積比が70kW/m2のフィラメント赤外線エミッタと、吸収されなかった放射線を透明なチャンバーに反射して戻すために放射線源と反対の側に位置する光学的に透明なチャンバーの表面とコヒーレントになる金反射層とを使用した。粉末は、振動-揺動スクリーンフィーダーと統合されたスクリューフィーダーを通じて供給され、その後、粉末粒子の自由落下に近い条件を確実にしシールドガスをキャリアガス中に懸濁している粉末から分離する孔あき要素の中に向けられた。制御された結晶化は空気中で70℃で行われた。顕微鏡画像解析法を使用して、得られた材料に対して粒度分布分析および形状分析を施し、ここで、ポリマー材料は、測定を妨げる可能性のある凝集体の形成を避けるために、非溶媒中に浮遊している状態で分析された。この実施例に記載の方法による球状化の後に得られた粉末材料は、D90が152μmの粒径、0.90の数平均真円度パラメータ、0.93の数平均真円度係数を特徴とした。結果は、粉末の全体的な真球度の改善、および供給原料よりも球状で規則的な平均粒子形状への移行を示している。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は熱可塑性ポリマー粉末の球状化の概略図を示す。
図2図2は実施例1による球状化プロセスを受けた熱可塑性ポリマーの粒子を示す。
図3図3は自由落下技術と、部分真空によって粉末およびシールドガスを反応器に引き込むメカニズムとを使用する熱可塑性粉末の球状化の概略図を示す。
図1
図2
図3
【国際調査報告】