(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】分注デバイス用カートリッジ
(51)【国際特許分類】
B65D 33/38 20060101AFI20241121BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20241121BHJP
B05C 17/005 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B65D33/38
B65D83/00 G
B05C17/005
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528515
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2022082080
(87)【国際公開番号】W WO2023099211
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Hilti Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】アイル, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルナー, ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ドンナー, トビアス
【テーマコード(参考)】
3E014
3E064
4F042
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB05
3E014PC04
3E014PC08
3E014PD30
3E014PE16
3E014PF09
3E064AB14
3E064BA21
3E064GA01
3E064GA06
3E064HG02
3E064HM01
3E064HS04
4F042AB00
4F042BA06
4F042BA12
4F042CB03
4F042FA35
4F042FA43
(57)【要約】
本発明は、本質的に剛性ではなく、材料を受け入れるためのチャンバ(20)を有する少なくとも1つの細長いフィルムパウチ(18)と、フィルムパウチ(18)と相互作用するためのヘッド部(12)と、ヘッド部(12)に面する側でフィルムパウチ(18)に接続された本質的に剛性のインサート(16)とを有し、インサート(16)が少なくとも領域において半径方向にヘッド部(12)内に配置され、接続デバイス(200)が設けられ、それによってインサート(16)をヘッド部(12)に形状嵌合及び/又は圧力嵌合方式に接続することができる、分注デバイス用カートリッジ(10)に関する。インサート(16)は、接続デバイス(200)の少なくとも1つの第1の接続要素(201)と、ヘッド部(12)は、接続デバイス(200)の少なくとも1つの第2の接続要素(202)とを備え、インサート(16)は、長手方向(L)において、長手方向(L)に対して横方向の接続領域(204)において、少なくとも領域において半径方向(R)外向きに面する表面(206)によって、少なくとも領域において半径方向(R)内向きに面するヘッド部(12)の表面(208)と相互作用する。インサート(16)の表面(206)及びヘッド部(12)の表面(208)は、接続領域(204)において、長手方向(L)においてヘッド部(12)に対向する領域よりも長手方向(L)においてヘッド部(12)から離れる方向に面する領域においてより大きな直径を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を受け入れるためのチャンバ(20)を有する少なくとも1つの本質的に剛性でない細長いフィルムパウチ(18)を有する分注デバイス用カートリッジ(10)であって、前記フィルムパウチ(18)と相互作用するためのヘッド部(12)を備え、前記ヘッド部(12)に面する側で前記フィルムパウチ(18)に接続された本質的に剛性のインサート(16)を有し、前記インサート(16)が、前記ヘッド部(12)の半径方向内側に少なくともいくつかの領域に配置され、接続デバイス(200)が設けられ、それによって前記インサート(16)を前記ヘッド部(12)に形状嵌合及び/又は圧力嵌合方式で接続することができ、前記インサート(16)が、前記接続デバイス(200)の少なくとも1つの第1の接続要素(201)を有し、前記ヘッド部(12)が、少なくとも1つの第2の接続要素(202)を有し、前記インサート(16)が、接続領域(12)の長手方向(L)において、少なくとも領域において半径方向(R)外向きに面する表面(206)によって、少なくとも領域において半径方向(R)内向きに面する前記ヘッド部(12)の表面(208)と相互作用し、前記接続領域(204)において、前記インサート(16)の前記表面(206)及び前記ヘッド部(12)の前記表面(208)が、長手方向(L)において前記ヘッド部(12)に面する領域よりも、長手方向(L)において前記ヘッド部(204)から離れる方向に面する領域の方が大きな直径を有することを特徴とする、カートリッジ(10)。
【請求項2】
前記インサート(16)及び前記ヘッド部(12)が、前記接続領域(204)において互いに実質的に相補的であることを特徴とする、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記インサート(16)及び前記ヘッド部(12)が、前記接続領域(204)において円錐形であり、前記接続領域(204)における前記インサート(16)の前記表面(206)及び前記ヘッド部(12)の前記表面(208)と前記長手方向(L)との間に、断面において1°~15°の角度(210)が各場合において存在することを特徴とする、請求項1又は2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記角度(210)が2°~10°であることを特徴とする、請求項3に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記インサート(16)が前記接続領域(204)において凸形状を有し、前記ヘッド部(12)が前記接続領域(204)において凹形状を有することを特徴とする、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記接続デバイス(200)が、ラッチ接続又はスナップ接続として設計されることを特徴とする、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記接続デバイス(200)の前記第1の接続要素(201)が、特に凹部(202)として設計された前記ヘッド部(12)の前記第2の接続要素と相互作用する少なくとも1つのラッチラグを有することを特徴とする、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記インサート(16)が、前記ヘッド部(12)の1つ以上の凹部(202)と係合させることができる複数のラッチラグ(201)を有することを特徴とする、請求項7に記載のカートリッジ。
【請求項9】
前記長手方向(L)に対して横方向に、前記インサート(16)の少なくとも1つの第1の接続要素(201)が、前記ヘッド部(12)の前記少なくとも1つの第2の接続要素(202)に対してオーバーサイズを有することを特徴とする、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記オーバーサイズが、前記フィルムパウチ(18)の直径の1%未満、特に0.6%未満であることを特徴とする、請求項9に記載のカートリッジ。
【請求項11】
前記ヘッド部(12)の前記第2の接続要素(202)を有し、前記フィルムパウチ(18)のベース領域(24)に前記長手方向に面する前記ヘッド部(12)の領域が、前記ヘッド部(12)に対する前記インサート(16)の前記長手方向(L)の移動が可能になるように、無負荷のベース位置において、前記インサート(16)の肩部(212)に対して前記長手方向(L)に距離(214)を有することを特徴とする、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項12】
前記インサート(16)が、カバー(14)によって閉じられた通路(60)を有することを特徴とする、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項13】
前記フィルムパウチ(18)が、底部が閉じられた円筒形フィルムチューブ(26)によって、特に前記フィルムチューブ(26)に接着及び/又は溶接されたベース部(24)によって形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項14】
前記ヘッド部(12)が、少なくとも2つのインサート(16)を接続するように設計されていることを特徴とする、請求項1に記載のカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルにより詳細に記載されたタイプによる分注デバイス用カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
カートリッジは主に、接着剤、シーリングコンパウンド、モルタル、塗料、又は潤滑剤などの材料を保管するために使用される。加えて、カートリッジが対応する分注デバイスに挿入されているならば、材料を、カートリッジを介して対象物に容易に適用することできる。材料は、分注デバイスを使用して正確に適用することができる。例えば、分注デバイスのロッドがカートリッジのベースを押し、その結果、カートリッジの容積が圧縮され、それにより、カートリッジ内に位置する材料が開口部から押し出される。材料を制御された正確な方法で対象物に適用することができるように、付属部品をカートリッジに取り付けることができる。
【0003】
一端が本質的に剛性のインサートに接続された本質的に非剛性のフィルムパウチを有するカートリッジが知られている。本質的に剛性のインサートは、次に、例えばスタティックミキサを取り付けることができるヘッド部と動作可能に接続することができる。インサートは、例えば、接着接続によってヘッド部に取り付けられる。
【0004】
欧州特許出願公開第3834951号明細書は、ラッチデバイスによってヘッド部上に配置することができる本質的に剛性のインサートを有するカートリッジを開示している。この設計では、ヘッド部とインサートとの間の封止効果が十分に強くない場合があり、又は追加の対策を必要とする場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、インサートとヘッド部との間の改善された封止を簡単かつ安価に達成することができるカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。独立請求項の主題の有利な実施形態を、従属請求項に見出すことができる。
【0007】
材料を受け入れるためのチャンバを有する少なくとも1つの本質的に剛性でない細長いフィルムパウチを有し、フィルムパウチと相互作用するためのヘッド部を有し、ヘッド部に面する側でフィルムパウチに接続される本質的に剛性のインサートを有し、インサートが少なくともヘッド部の半径方向内側の領域に配置され、接続デバイスが設けられ、接続デバイスによってインサートをヘッド部に形状嵌合及び/又は圧力嵌合方式で接続することができ、インサートが接続デバイスの少なくとも1つの第1の接続要素を備え、ヘッド部が少なくとも1つの第2の接続要素を備え、インサートがヘッド部の接続領域において、少なくとも領域において半径方向外向きに面する第1の表面によって、少なくとも領域において半径方向内向きに面するヘッド部の表面と相互作用する、分注デバイス用カートリッジが提案される。
【0008】
本発明によれば、インサートの第1の表面及びヘッド部の第2の表面は、接続領域において、長手方向においてヘッド部に面する領域よりも長手方向においてヘッド部から離れる方向に面する領域においてより大きな直径を有することが提案される。
【0009】
本発明に従って設計されたカートリッジは、ヘッド部とフィルムパウチ又はインサートとの間の特に良好な封止が、構造的に単純かつ安価な方法で達成されるという利点を有する。インサートの第1の表面及びヘッド部の第2の表面が、接続領域において、長手方向においてヘッド部に面する領域よりも長手方向においてヘッド部から離れる方向に面する領域においてより大きな直径を有するという事実により、特に、分注動作中にヘッド部の方向に作用するフィルムパウチへの圧力を加える間、及びそれによって引き起こされるヘッド部の方向へのインサートの変位中、インサートとヘッド部との間の良好で確実な接触が、対応する良好な封止とともに、半径方向外向きに作用する誘導力によって達成される。
【0010】
更に、圧力が分注デバイスのピストンによってフィルムパウチに加えられ、当該圧力がヘッド部の方向に長手方向に作用するとき、インサートは、改善された封止効果を伴ってヘッド部に対してより強く押し付けられる。
【0011】
特に良好な封止は、接続領域において、ヘッド部だけでなくインサートの直径も、長手方向においてヘッド部から離れる方向に面する第1の端部領域から開始した後に、長手方向においてヘッド部に面する第2の端部領域の方向に着実に増加する場合に達成される。ここで、長手方向の直径プロファイルは柔軟に選択することができる。
【0012】
長手方向におけるヘッド部に対するインサートの固定は、好ましくは、インサートの第1の表面及びヘッド部の第2の表面にわたって、インサートとヘッド部との間を封止するための十分に強い力が無負荷状態においても存在するように、接続デバイスによって達成される。
【0013】
インサートの第1の表面及びヘッド部の第2の表面は、フィルムパウチの無負荷状態において、特に領域において、好ましくはほぼ完全に接続領域内にあり、したがって、特に全周にわたって互いに接触している。インサートとヘッド部との可能な限り広い面積にわたる相互作用によって、封止効果が有利に強くなる。
【0014】
本発明によるカートリッジの有利な実施形態では、インサート及びヘッド部は、接続領域において互いに実質的に相補的である。その結果、インサートとヘッド部との広い面積の相互作用が、関連する良好な封止効果とともに簡単に達成され得る。
【0015】
特に好ましくは、接続領域におけるインサートは円錐形であり、接続領域において、1°~15°、好ましくは2°~10°の角度が、各場合において、断面及び長手方向Lにおいて、インサートの第1の表面とヘッド部の第2の表面との間に存在する。角度は、好ましくは、インサート及びヘッド部について同一であり、その結果、インサートは、可能な限り大きな面積にわたってヘッド部と相互作用することができる。
【0016】
インサートは、接続領域において凸形状を有することが可能になる。この場合、ヘッド部は、好ましくは、半径方向内側に凹形状であり、ヘッド部の形状は、好ましくは、インサートの形状と実質的に相補的である。接続領域において、ヘッド部及び/又はインサートは、領域において凹形状又は凸形状又は円錐形になるように設計されることも可能になる。ヘッド部及びインサートの特定の形状に応じて、それぞれの用途に望ましい封止効果を達成することができる。
【0017】
本発明によるカートリッジの有利な実施形態では、接続デバイスは取り外し可能である。これにより、例えば、故障した部品を構成要素に交換することが可能となる。更に、取り外し可能な接続デバイスは、接続デバイスの対応する設計によって、規定された力が加えられたときに接続デバイスが解放されることを保証するために使用することができる。このようにして、例えば、ヘッド部、インサート及び/又はフィルムパウチへの損傷を防止することができ、次いで、取り外されたフィルムパウチをインサートによってヘッド部又はコネクタに再接続することができる。
【0018】
本発明の単純な実施形態では、接続デバイスは、ラッチ接続又はスナップ接続などとして設計される。ここで、第1の接続要素は、例えば、ラッチ要素として設計することができ、第2の接続要素と係合させることができ、例えば凹部の形態のカウンタラッチ要素として設計することができ、又はその逆も可能である。このようにして、ヘッド部上へのインサートの単純な配置が達成され、カートリッジの長手方向におけるインサートの位置をヘッド部に対して特に正確かつ規定された方法で固定することも可能である。ラッチ接続又はスナップ接続の対応する設計により、フィルムパウチ又はインサートは、所望のより強い保持力を確保しながら、適度な接合力によってヘッド部に接続することができる。
【0019】
接続デバイスの第1の接続要素は、ヘッド部の少なくとも1つの凹部と相互作用する少なくとも1つのラッチラグ、特に複数のラッチラグを有することが可能になる。
【0020】
接続デバイスは、例えば、円周方向に全周にわたって延在し、接続デバイスの対応するカウンタ要素と相互作用するラッチラグを有することができる。第1の接続要素又は第2の接続要素がラッチラグとして設計され、第2の接続要素又は第1の接続要素が、例えば溝、チャネル、凹部などの形態のカウンタ要素として設計されることが可能になる。
【0021】
接続デバイスの接続要素が位置決め要素を有する場合、ヘッド部に対するインサートの位置を円周方向に規定された方法で固定することができ、特に、ヘッド部に対するインサートの回転を簡単な方法で防止することができる。位置決め要素は、例えば、リッジなどとして設計することができる。接続要素が、例えば、円周方向にほぼ完全に延在するラッチラグとして設計される場合、円周方向におけるヘッド部に対するインサートの位置は、例えば、円周方向における凹部の端部間に配置されたリッジを有する凹部として設計される第2の接続要素によって規定された方法で固定可能である。位置決め要素は、例えば、カウンタ要素を表す少なくとも1つのラッチラグと相互作用する。
【0022】
例えば、ヘッド部に対するインサートの回転を確実に防止するために、インサートは、ヘッド部の1つ以上の凹部と係合することができる複数のラッチラグを有することができる。この場合、例えば、インサートがヘッド部に対して回転することを特に確実に防止するいくつかのリッジが設けられる。
【0023】
少なくとも1つのラッチラグが、長手方向に対して横方向に、ヘッド部の少なくとも1つの第2の接続要素に対してオーバーサイズを有する場合、フィルムパウチの無負荷状態、すなわち、分注デバイスのピストンによってフィルムパウチに圧力が加えられていないときであっても、インサートとヘッド部との間の確実な封止が簡単な方法で達成される。これはまた、無負荷状態で既に開いているフィルムパウチにも適用されるが、これは、このために必要とされるインサートとヘッド部との相互作用は、少なくとも1つのラッチラグのオーバーサイズによって達成されるからである。
【0024】
フィルムパウチの直径の1%未満の、特に約0.6%の領域の、少なくとも1つのラッチラグの領域におけるオーバーサイズが有利であることが明らかになり、この場合、望ましくない強い接合力及びヘッド部のプラスチック拡幅を確実に回避することができ、それにもかかわらず、所望の良好な封止効果を達成することができる。約50mmの直径を有するフィルムパウチの場合、オーバーサイズは、特に0.5mm以下、好ましくは約0.3mmである。オーバーサイズを設けることによって、特に長期間にわたって、例えば数週間にわたって、漂白された容器の保管中に、簡単な方法で漏れ止めを達成することが可能である。したがって、インサート間の封止は、負荷状態に加えて、無負荷状態において、したがって動作中に生じる圧力スペクトル全体にわたって保証することができる。
【0025】
本発明の有利な実施形態では、フィルムパウチのベース領域に長手方向に面し、第2の接続要素を有するヘッド部の領域は、無負荷のベース位置においてインサートの肩部から長手方向に距離を有し、それにより、特に分注デバイスのピストンによってフィルムパウチに力が加えられているときに、ヘッド部に対するインサートの移動が長手方向に可能になる。構造的に単純な方法で提供される長手方向の移動のこの可能性の結果として、フィルムパウチを介して加えられる外力が分注プロセス中に増加するとき、より強い封止効果が達成可能である。
【0026】
例えば5°より大きい角度を有するインサート及びヘッド部の円錐設計は、例えば5°未満の小さい角度を有するインサート及びヘッド部の円錐設計の場合よりも、ヘッド部に対する対応するより弱い封止力を有するインサートのより小さい変位を可能にする。大きな変位運動は望ましくないポンピング効果を引き起こし得るので、外力がフィルムパウチに加えられたときのヘッド部に対するインサートの最大変位は、2mm未満、特に1mm未満であるべきであると思われる。更に、ヘッド部に対するインサートの小さな角度及び大きな変位運動によって生成される大きな力は、特にプラスチックで設計されたインサート又はヘッド部の損傷又は故障につながり得る。
【0027】
フィルムパウチを簡単な方法で閉じ、フィルムパウチのチャンバ内に位置する材料からの漏れを簡単な方法で防止するために、インサートは、カバーによって閉じられた通路を有することができる。カバーは、チャンバ内に位置する材料を分注することができるために、簡単で安全な、特に、規定の開口部を可能にする。
【0028】
フィルムパウチは、好ましくは、底部がベース部によって閉じられた円筒形フィルムチューブによって形成することができ、ベース部は、フィルムチューブに、特に接着及び/又は溶接されている。チューブ状フィルム又はインフレーションフィルムとも呼ばれるフィルムチューブは、熱可塑性材料で作ることができ、フィルムチューブは、押出し、又はその長手方向継ぎ目で溶接もしくは接着することができる。ベース部は、特に接着及び/又は溶接されているので、これにより一体的結合が生成され、カートリッジの保管特性が改善され、それにより、フィルムパウチがクリップ閉じ具によって閉じられているカートリッジと比較して、カートリッジの漏れ率が低下される。
【0029】
本発明によるカートリッジの有利な設計において、ヘッド部は、少なくとも2つのインサートを接続するように設計される。これに対応して、2つの、特に本質的に非剛性のフィルムパウチをヘッド部に接続することができ、フィルムパウチは特に異なる材料を有することができる。ヘッド部は、好ましくは、異なる材料が出口開口部の後にのみ接触することができるように、異なる材料がヘッド部の領域において出口開口部まで互いに別々に案内され得るように設計される。これは、例えば、二液型接着剤の場合に重要である。
【0030】
したがって、カートリッジは、異なる材料を受け入れ、多成分包装として機能することができる。この場合、異なる材料の所望の混合比を簡単な方法で設定することができるように、個々のフィルムパウチに関連付けられた出口開口部が互いに異なる直径を有することが可能である。
【0031】
カートリッジ内に位置する材料は、化学材料又は液体、例えば二成分混合物の成分とすることができる。
【0032】
シーリングコンパウンド、多成分モルタル、多成分コーティングコンパウンド、多成分塗料、多成分フォーム前駆体、多成分接着剤、多成分シーリングコンパウンド、及び多成分潤滑剤を、対応するカートリッジ内に保管することができる。例えばエポキシ樹脂などの樹脂を一方のチャンバに保管し、二液型接着剤用の硬化剤を他方のチャンバに貯蔵することが可能である。フィルムパウチは、同等の長さを有することができ、この場合、フィルムパウチのベースの比が、達成されるべき混合比を決定する。これの代替態様として、異なる長さを有する2つのフィルムパウチが使用されることも可能である。
【0033】
ヘッド部の受容部には、カバーを拡張することができる拡張スペースを割り当てることができる。拡張スペースは、流出する材料の流れを妨害しないように、制御された方法でカバーを開くことを可能にする。一方で、乱流をもたらす可能性のある障害物が流路に存在しないので、これは層流をもたらす。他方で、これにより、流量が正確に維持されることが保証され、それは、2つ以上の成分の混合比にとって重要である。
【0034】
「本質的に剛性の構成要素」は、デバイスから取り外された場合にその形状を保持する構成要素を意味すると理解される。このような構成要素は、本質的に安定であるとも呼ばれる。
【0035】
ヘッド部は、市販の付属部品又は標準分注デバイスが、カートリッジ内に位置する材料を適用するのに使用されることを可能にするので、特にヘッド部は、一種のアダプタを表す。
【0036】
一実施形態では、ヘッド部は、受容部と流体接続されている出口ノズルを有する。出口ノズルは、特にその直径を介して、流量を規定することができる。
【0037】
出口ノズルは、ねじ山を有することが可能である。カートリッジ内に位置する材料を適用するための市販の付属部品又は分注デバイスは、出口ノズルの出口開口部においてヘッド部にねじ山によって正確に取り付けることができ、したがって、適用中に材料を正確に位置決め及び計量することが可能になる。
【0038】
出口ノズルはまた、容積を2つ以上の出口チャネルに分割する仕切りを有することができる。出口ノズル内の仕切りの相対位置が、出口チャネルの断面を画定し、したがって、これらの出口チャネルを通る流量を規定する。
【0039】
出口チャネルは、異なる直径を有することができる。出口チャネルは、互いに対して同軸に配向することができる。
【0040】
1つの実施形態では、通路は、先細になっている。その結果、組成物が流出するとき、通路は、コンフューザ又はノズルのように作用する。先細の通路はまた、フィルムパウチが充填されるときにディフューザとして作用することができる。
【0041】
フィルムパウチは、チャンバ内の材料全体を可能な限り使用することができるように、好ましくは、アコーディオンと同様に、分注プロセス中に長手方向において均一に折り畳むことができる。使用に際して、フィルムパウチは、ときにはフィルムパウチに作用し得る化学材料又は液体に曝される。したがって、フィルムパウチの正確な構造は、チャンバ内の材料に、又はチャンバ内の液体に、特に対応する材料特性に、適合させねばならない場合がある。
【0042】
更なる利点は、以下の図の記載に見出され得る。本発明の例示的な実施形態を図に示す。図、説明及び特許請求の範囲は、多数の特徴が組み合わされて含む。当業者は、特徴を適宜個別に検討し、それらを組み合わせて意味のある更なる組み合わせをも形成することになる。
【0043】
図において、同一及び同等の構成要素には、同じ参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明によるカートリッジの分解図での長手方向断面図である。
【
図2】組み立てられた位置における
図1によるカートリッジの詳細の簡略化された断面図であり、インサートをヘッド部に接続するための接続デバイスをより詳細に見ることができる。
【
図3】無負荷状態の
図1及び
図2によるカートリッジの簡略化された断面図であり、インサートのヘッド部との相互作用領域をより詳細に見ることができる。
【
図4】
図1~
図3によるカートリッジの
図3に対応する詳細図であり、分注デバイスのピストンによってフィルムパウチに外力が加えられた場合の状態が示されている。
【
図5】
図1~
図4によるカートリッジのインサートを単独で示す簡略化された3次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、本発明の例示的な実施形態のカートリッジ10の長手方向断面の分解図である。
【0046】
カートリッジ10は、ヘッド部12、2つのカバー14、2つのインサート16、及び2つのフィルムパウチ18を備える。
【0047】
フィルムパウチ18は、本質的に非剛性であり、各々が円筒形で実質的に細長い形状を有する。フィルムパウチ18は各々チャンバ20を画定し、インサート16は開口部22を画定する。チャンバ20は、特に、フィルムパウチ、インサート16及びカバー14によって密封閉鎖可能である。2つのフィルムパウチ18は、インサート17’6及びカバー14と同様に、それらの寸法又は直径に関して異なるが、それらの構造に関しては同等である。例えば、フィルムパウチ18の断面は、1:3又は1:5の断面積比を有し、フィルムパウチ18の断面積比は、原則として、所望に応じて選択することができる。加えて、フィルムパウチ18は、長手方向Lにおいて実質的に同等の長さを有する。
【0048】
示された実施形態では、フィルムパウチ18は、ベース部24及びフィルムチューブ26によって形成されている。ベース部24は、ベース28と、ベース28の周囲に延在するカラー30とを有する。フィルムチューブ26は、溶接又は接着によってカラー30の外側に取り付けられている。原則として、フィルムチューブ26はまた、溶接又は接着によってカラー30の内側に取り付けることもできる。
【0049】
フィルムチューブ26は、例えばエッジ領域を接着又は溶接することによってフィルムから製造することができる。既製フィルムチューブ又は既製フィルムパウチを使用することも可能である。
【0050】
ベース28は、例えば、円形であり、それにより、チャンバ20は円筒形である。しかしながら、原則として、任意の形状、例えば長方形又は多角形のベース28が考えられる。
【0051】
インサート16は、本質的に剛性であり、開口部22を通して関連するフィルムパウチ18の対応するチャンバ20内に内部で少なくとも部分的に挿入され、フィルムチューブ26は、特に溶接方法を介して外部でインサート16に接続することができる。カバー14は、同様に溶接方法によってインサート16に接続されることが好ましい。
【0052】
図2~
図5でより詳細に見ることができるインサート16は、チャンバ20がヘッド部12に向かって先細になるように、チャンバ20に面する内面38上に湾曲したプロファイルを有する。
【0053】
長手方向Lにおいてヘッド部12に面する側において、インサート16は、カバー14が接続される表面46を有する。表面46は、長手方向Lに対して垂直に延在する横方向に対して斜めに配置されているので、インサート16はこの領域において円錐形である。ヘッド部12に面する表面46は、水平方向Hに対して、例えば約15°~35°の角度を形成する。
【0054】
チャンバ20に面するインサート16の内面38は、ヘッド部12の方向に先細になる通路60を取り囲む。
【0055】
原則として、インサート16は、環状であり、それにより、円筒形フィルムチューブ26に結合することができる。
【0056】
フィルムチューブ26の内面は、インサート16に接続され、フィルムチューブ26は、水平方向Hにおいてインサート16の外面42に接続される。フィルムチューブ26は、好ましくはインサート16に溶接又は接着される。
【0057】
カバー14は、
図1から読み取れるように、ヘッド部12とインサート16との間に設けられている。カートリッジ10の組み立て状態では、カバー14は、表面46上の半径方向外側領域に載置される。
【0058】
カバー14は、例えば溶接又は接着によってインサート16に接続され、通路60を閉じる。したがって、カバー14は、チャンバ20を閉じ、それにより、チャンバ20は、好ましくは、カバー14の組み立て状態で完全に封止される。
【0059】
図1に示す実施形態では、ヘッド部12は2つの受容部66を有し、各場合において、インサート16は受容部66に接続可能である。
【0060】
受容部66は、受容部66内の窪みとして設計された拡張領域74を更に備え、
図1に見られるように、拡張高さ90を有する拡張スペース74を形成する。
【0061】
ヘッド部12はまた、出口開口部78及び出口チャネル80を有する出口ノズル76を有する。出口開口部78は、出口チャネル80を介して拡張スペース74及び受容部66と流体接続している。
【0062】
図1に示す出口ノズル76は、それぞれの受容部66と流体接続しており、受容部66を分離する接続片84から出口開口部78まで延在する仕切り82によって互いに分離されている2つの出口チャネル80を有する。
【0063】
図1に示すように、2つの出口チャネル80は、個々のフィルムパウチ内の材料の所望の混合比を設定するために、異なる断面、特に異なる直径を有することが可能である。
【0064】
出口ノズル76はまた、ねじ部86を有し、それによって、付属部品(不可視)をヘッド部12の出口開口部78に取り付けることができる。
【0065】
図2~
図5に見ることができる接続デバイス200は、インサート16をヘッド部12に形状嵌合して接続するために設けられる。この目的のために、インサート16は、ラッチラグとして設計された少なくとも1つの第1の接続要素201を有し、ヘッド部12は、カウンタラッチ要素として設計された少なくとも1つの第2の接続要素202を有する。本発明では、少なくとも1つの第2の接続要素202は、ヘッド部12内の凹部又は溝として設計され、特に、ラッチラグとして設計された接続要素201に対して相補的であるように設計されるが、例えば、均一な溝の形態で設計することもできる。
【0066】
インサート16又はフィルムパウチ18は、取り付けられた状態で、接続デバイス200によって簡単な方法でヘッド部12に固定することができる。
【0067】
図5でより詳細に見ることができるように、例えば、本発明のインサート16は、円周方向の全周に完全に延在し、ヘッド部12内の完全に円周方向の凹部又は溝202と相互作用するように設計された単一の接続要素201を有する。
【0068】
これに対する代替的な実施形態では、インサート16が複数の接続要素、例えば円周方向に分布された6つのラッチラグを有し、これらのラッチラグが特にヘッド部の対応する数の溝又は凹部と相互作用するようにすることも可能になる。接続要素の互いに対する位置は、ここでは調整され得、関連する円周にわたって均一に又は不均一に分布され得る。不均一な分布は、インサート16のヘッド部12への接続が、規定された位置においてのみ可能であり、それによって、1つの配向のみが可能であるという利点を有する。
【0069】
図5による接続デバイス200は、取り外し可能であるように設計されており、すなわち、ラッチラグ201は、ヘッド部12の凹部202と可逆的に係合することができる。ラッチラグ201は、長手方向Lにおいてヘッド部12から離れる方向に作用する力が規定の限界値を超えたときに、ラッチラグ201がヘッド部12の凹部202から解放されるように、凹部202の領域におけるヘッド部12の設計と調整することができる。その結果、ヘッド部12、インサート16及びフィルムパウチ18への損傷を防止することができ、ヘッド部12上のフィルムパウチ18へのインサート16の再取り付けを達成することができる。
【0070】
図2及び
図3によるフィルムパウチ18の無負荷状態では、すなわち、分注デバイスのピストンからフィルムパウチ18に作用する外力がない状態では、少なくとも領域において半径方向Rに外向きに面する第1の表面206によって長手方向Lに延在する接続領域204において、インサート16は、少なくとも領域において半径方向Rに内向きに面するヘッド部12の表面208と相互作用する。
【0071】
インサート16は、第1の表面206の領域において円錐形であり、インサート16は、ベース部24に面する領域において、ヘッド部12に面する領域よりも大きな直径を有する。同様に、接続領域204における受容部66の領域におけるヘッド部12は、半径方向内側にあり、ヘッド部12の第2の表面208は、長手方向Lにおいてヘッド部12に面する領域よりも、ベース部24に面する領域における接続領域204において大きな直径を有する。フィルムパウチ18の無負荷状態では、インサート16は、第1の面206で、特に接続領域204のほぼ全体にわたって、ヘッド部12の第2の面208に載置される。
【0072】
本発明では、インサート16及びヘッド部12は、接続領域204において互いに実質的に相補的であり、その結果、インサート16とヘッド部12との大きな相互作用領域が形成される。
【0073】
図2~
図4による断面において、第1の表面206及び第2の表面208は各々、長手方向Lに対して1°~15°、特に2°~10°、特に好ましくは3°~5°の角度210を有する。
【0074】
更に、長手方向Lに対して横方向に、ここではラッチラグとして設計された接続要素201は、凹部として設計された接続要素204に対してオーバーサイズを有し、この接続要素は、例えば、フィルムパウチ18の直径の約0.6%である。これは、ラッチラグ201として設計された接続要素の最大直径が、ヘッド部12に接続されていない状態において、凹部204として設計された接続要素204の領域におけるヘッド部12の最大内径よりも0.6%大きな直径を有することを意味する。このオーバーサイズの結果として、インサート16がヘッド部12に接続された状態において、一方では確実な保持が達成され、他方ではフィルムパウチ18の無負荷状態においても所望の押圧作用が達成され、その結果、インサート16とヘッド部12との間に信頼性のある封止が達成される。
【0075】
図2及び
図3に示すように、フィルムパウチ18の無負荷状態では、受容部66の領域におけるヘッド部12の下端と肩部212との間に長手方向Lに距離214が存在し、この距離は、ヘッド部12に対するインサート16の移動を可能にする。
【0076】
例えば、分注デバイスのピストンによる分注プロセス中に、力Fがフィルムパウチ18に対して長手方向Lにおいてヘッド部12の方向に作用する場合、インサート16は、
図4により詳細に見ることができるように、ヘッド部12に対して長手方向Lにおいてヘッド部12の方向又はベース部24から離れる方向に変位される。この場合、インサート16とヘッド部12との間の押圧力が増大するので、インサート16とヘッド部12との間の封止効果が増大し、フィルムパウチ18内に位置する材料が接続領域204においてインサート16とヘッド部12との間から漏れるリスクが低減される。
【0077】
約50mmの直径を有するフィルムパウチ18の場合、ヘッド部12に対するインサート16の好ましい最大変位は、特に2mm未満、好ましくは約1mmである。
【0078】
示された実施形態では、カートリッジ10は、1つ又は2つのチャンバ20と、対応する数のカバー14、インサート16、フィルムパウチ18、受容部66、及び出口チャネル80を備える。一般に、カートリッジは、特に1つのフィルムパウチのみを有することもできる。
【国際調査報告】