(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】衝撃励起測定のための改良された衝撃デバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 3/34 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
G01N3/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528537
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2022081437
(87)【国際公開番号】W WO2023083944
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520030800
【氏名又は名称】グラインドソニック・ベスローテン・フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】GRINDOSONIC BV
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン・デン・ボッシェ,アレックス
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA13
(57)【要約】
本発明は、衝撃励起測定中にワークピースに瞬間的な衝撃を付与するための衝撃デバイスであって、-長手方向近位端および長手方向遠位端を備える、屈曲方向の周りで弾性的に変形可能な細長い弾性屈曲可能アームと、-前記ワークピースに機械的に衝撃を与えるための、前記アームの遠位端に取り付けられたハンマー先端部と、-前記アームの前記長手方向近位端に取り付けられたプログラム可能なアクチュエータとを備え、前記アクチュエータが、前記アームの前記屈曲方向に本質的に平行なアクチュエータ軸の周りで前記長手方向近位端を回転させることによって前記アームの前記長手方向近位端に角速度を与えるようにプログラムされ、前記角速度が所定の角速度プロファイルに追従し、前記角速度プロファイルは、前記ワークピースに瞬間的な衝撃を与えるように構成される、衝撃デバイスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃励起測定中にワークピースに瞬間的な衝撃を付与するための衝撃デバイスであって、
-長手方向近位端および長手方向遠位端を備える、屈曲方向の周りで弾性的に変形可能な細長い弾性屈曲可能アームと、
-前記ワークピースに機械的に衝撃を与えるための、前記アームの前記遠位端に取り付けられたハンマー先端部と、
-前記アームの前記長手方向近位端に取り付けられたプログラム可能なアクチュエータと
を備え、前記アクチュエータが、前記アームの前記屈曲方向に本質的に平行なアクチュエータ軸の周りで前記長手方向近位端を回転させることによって、前記アームの前記長手方向近位端に角速度を与えるようにプログラムされ、前記角速度が所定の角速度プロファイルに追従し、
前記角速度プロファイルは、前記ワークピースに瞬間的な衝撃を与えるように構成される、衝撃デバイス。
【請求項2】
前記角速度プロファイルが、前記アームの前記長手方向遠位端に与えられる前記角速度が符号を変化させる転回点を含み、前記転回点が前記ワークピースへの前記衝撃よりも早い、請求項1に記載の衝撃デバイス。
【請求項3】
前記可撓性アームが長手方向に沿った長さL、幅W、および厚さTを有する帯状の形状を備え、L>W>Tであり、前記ハンマー先端部が前記アーム(2)の前記遠位端に取り付けられる、先行する請求項のいずれかに記載の衝撃デバイス。
【請求項4】
前記屈曲可能アームおよび前記ハンマー先端部がモノリシックである、請求項3に記載の衝撃デバイス。
【請求項5】
前記アクチュエータが、回転電気モータと、前記回転電気モータを制御するように構成されたプログラム可能なコンピューティングユニットとを備え、前記プログラム可能なコンピューティングユニットが、本質的に前記角速度プロファイルに追従するように前記回転電気モータを操作するようにプログラムされる、先行する請求項のいずれかに記載の衝撃デバイス。
【請求項6】
前記アームが、交換可能に前記アクチュエータに取り付けられる、先行する請求項のいずれかに記載の衝撃デバイス。
【請求項7】
衝撃励起測定時にワークピースに瞬間的な衝撃を付与するための、衝撃デバイスを使用した衝撃付与方法であって、前記衝撃デバイスが、
-長手方向近位端および長手方向遠位端を備える、屈曲方向の周りで弾性的に変形可能な細長い弾性屈曲可能アームと、
-前記ワークピースに機械的に衝撃を与えるための、前記アームの遠位端に取り付けられたハンマー先端部と
を備え、前記方法が、前記アームの前記屈曲方向に本質的に平行なアクチュエータ軸の周りで前記長手方向近位端を回転させることによって、前記アームの前記長手方向近位端に角速度を与えることを含み、前記角速度が所定の角速度プロファイルに追従し、
前記角速度プロファイルが、前記ワークピースに瞬間的な衝撃を与えるように構成される、方法。
【請求項8】
前記角速度プロファイルが、前記アームの前記長手方向遠位端に与えられる前記角速度が符号を変化させる転回点を含み、前記転回点が前記ワークピースへの前記衝撃よりも早い、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ワークピースが3D印刷されたワークピースである、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記ワークピースが金属から作製される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~6のいずれかに記載の衝撃デバイスを装着するための衝撃デバイスキットであって、
-各々が屈曲方向の周りで弾性的に変形可能な細長い弾性屈曲可能アームのセットであって、前記屈曲可能アームが長手方向近位端および長手方向遠位端を備える、屈曲可能アームのセットと、
-前記ワークピースに機械的に衝撃を与えるためのハンマー先端部のセットであって、前記ハンマー先端部の各々が、前記細長い弾性屈曲可能アームのセットのうちのアームの前記遠位端に取り付け可能であり、好ましくは取り付けられる、ハンマー先端部のセットと、
-前記アームの各々の前記長手方向近位端に交換可能に取り付け可能なプログラム可能なアクチュエータと
を備え、前記アクチュエータが、前記アクチュエータが動作アームの前記長手方向近位端に取り付けられたときに、前記動作アームの前記屈曲方向に本質的に平行なアクチュエータ軸の周りで前記長手方向近位端を回転させることによって、前記動作アームの前記長手方向近位端に角速度を与えるようにプログラムされ、前記角速度が所定の角速度プロファイルに追従し、
前記角速度プロファイルが、前記ワークピースに瞬間的な衝撃を与えるように構成される、衝撃デバイスキット。
【請求項12】
瞬間的な衝撃に対するワークピースの振動応答を測定するための衝撃励起(IE)測定システムであって、
-請求項1または6のいずれかに記載の衝撃デバイスと、
-前記瞬間的な衝撃に対する前記ワークピースの振動応答を捕捉するための応答記録デバイスと、
-前記衝撃デバイスおよび前記応答記録デバイスのアクチュエータを制御するための制御ユニットと、
-前記ワークピースを所定の位置に保持するための支持デバイスと
を備える、システム。
【請求項13】
瞬間的な衝撃に対するワークピースの振動応答を測定するための衝撃励起(IE)測定方法であって、
-所定の位置でワークピースを支持することと、
-請求項7~10のいずれかに記載の衝撃付与方法に従ってワークピースに瞬間的な衝撃を付与することと、
-前記瞬間的な衝撃に対する前記ワークピースの振動応答を捕捉することと
を含み、それにより、前記瞬間的な衝撃に対する前記ワークピースの前記振動応答を測定する、衝撃励起(IE)測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃励起測定を実施するときにワークピースに衝撃を送達するための改良されたハンマーに関する。したがって、本発明は、機械的衝撃、特に瞬間的な衝撃に対する振動応答を測定および分析することによってワークピースに関する情報が得られる衝撃励起測定の分野に関する。瞬間的な衝撃はハンマーによって与えられる。
【0002】
背景
ワークピースを特徴付けるための衝撃励起技術は、以下の文献から公知である。
【0003】
文献欧州特許第3658868号明細書は、固体材料サンプルの機械的振動応答を分析するための装置であって、前記固体材料サンプルの表面上のそれぞれの詳細に定義された点に衝撃を付与するように配置されたインパクタのアレイと、前記少なくとも1つのインパクタの衝撃に続いて、前記機械的振動応答を時変信号として捕捉するように構成されたセンサと、前記時変信号を分析して、前記時変信号を構成する正弦波の周波数および減衰定数を決定するように構成された処理手段とを備える、装置を開示している。この発明はまた、固体材料サンプルを特徴付ける対応する方法に関する。
【0004】
文献国際公開第2020254698号は、高温で試験片の材料特性を音響的に測定するための方法であって、a.試験片を試験温度範囲内に加熱するステップと、b.較正期間内に試験片から振動信号を捕捉することによって前記試験温度範囲内でバックグラウンド測定を実施し、それによってノイズ信号を取得するステップと、c.前記試験温度範囲内および試験期間内で前記試験片に対して音響測定を、c1.試験片に振動励起を付与することによって、c2.試験期間内に試験片の振動信号を捕捉することによって実施し、それによって前記振動励起に対する振動応答信号を取得するステップと、d.振動応答信号を分析することによって試験片の材料特性を取得し、それによってノイズ信号を考慮するステップと、を含む方法を開示している。この発明はまた、高温で試験片の材料特性を音響的に測定するためのシステムに関する。
【0005】
本出願人名義の先行技術文献は両方とも、衝撃励起(IE:impact excitation)測定を実施するための方法および装置に関する。
【0006】
IE技術は基本的に、ワークピースに衝撃を与えることと、振動応答信号を取得および分析することとからなる。この信号は、音響応答信号とも呼ばれる。応答信号は、マイクロフォン、圧電変位センサおよび/またはレーザ干渉計を使用することを含む、いくつかの方法を介して捕捉することができる。
【0007】
ワークピースに与えられる衝撃は、ノイズ信号を低減するために可能な限りクリーンでなければならない。原則として、それ自体がノイズを発生させない衝撃提供機構を使用して、瞬間的な衝撃をワークピースに付与することが望ましい。衝撃提供機構は、典型的には、ワークピースに機械的に衝撃を付与するインパクタと、衝撃を付与するためにインパクタに運動エネルギーを与えるインパクタアクチュエータとを備える。従来技術では、弾道インパクタが使用されており、このような弾道インパクタには、インパクタアクチュエータによって運動量が与えられ、その後、インパクタは、ワークピースに衝突する前に少なくとも短期間、弾道軌道をたどる。衝突後、弾道インパクタは、再捕捉される前に再び弾道軌道をたどってもよい。弾道インパクタを使用することは、本質的に瞬間的な衝撃、すなわちインパクタの運動エネルギーがワークピースに機械的に伝達される非常に短い接触期間である衝撃を可能にするという利点を有する。実際には、以下に起因してノイズが発生する場合がある:
-複数回の衝撃:例えば、インパクタの慣性により、インパクタがワークピースから退避するよりも速くワークピース表面を振動させるため、インパクタはワークピースに2回以上接触する。弾道インパクタの場合、これはまた、インパクタがワークピースに対して2回以上跳ね返らないように、好ましくはワークピースの下から衝撃が与えられることを意味する。
【0008】
-インパクタは、作動時に、典型的にはインパクタとインパクタアクチュエータとの間の摩擦に起因して、ノイズを発生させる場合がある。弾道インパクタの場合、インパクタアクチュエータは、弾道インパクタに正しい方向の速度が与えられることを確実にするためのバレルまたはガイドを備える場合がある。バレルまたはガイドとの摩擦は、ノイズを引き起こす場合がある。
【0009】
-インパクタは、例えば装置の他の部分に触れることによって、または弾道インパクタの場合には再捕捉されるときに、衝撃後にノイズを発生させる場合がある。
【0010】
上記の先行技術文献では、瞬間的な衝撃を可能にする優先的なインパクタとして、弾道インパクタが開示されている。しかしながら、本発明者らは、弾道インパクタが常に最良の解決策であるとは限らないことを見出した。特に、弾道インパクタおよびインパクタアクチュエータは、異なるタイプのワークピースと共に使用されるように常に容易に適合されるとは限らない。さらに、弾道インパクタは、複数回の衝撃の可能性を低減するために下方から最もよく使用され、したがって、異なる側面および/または方向からワークピースに衝撃を与えることが禁止されている場合がある。これは、ワークピース内の異なる振動節を励起または増強したい場合に必要とされ得ることに留意されたい。
【0011】
本発明は、
-任意の種類の材料、幾何学的形状、サイズなどのワークピースに瞬間的な衝撃を与えるために容易に適合可能であり、
-異なる側でおよび/または異なる方向に沿ってワークピースに衝撃を付与するように容易に位置決めまたは再位置決めすることができ、
-特に、基本的に複数回の衝撃の可能性を排除し、インパクタの摩擦または再捕捉によるノイズを低減することによって、ノイズを低減する
衝撃提供機構を提供することを目的とする。
【0012】
そこで、本発明は、ワークピースに対してIE測定を実施するための改良された衝撃デバイス、および衝撃デバイスを動作させるための方法に関する。衝撃デバイスは、インパルス励起測定装置に使用されることが好ましく、したがって、本発明はまた、衝撃デバイスを備えるIE測定装置に関する。
【0013】
発明の概要
本発明は、請求項1、3および5に記載の衝撃励起測定を実施するために瞬間的な衝撃をワークピースに与えるための衝撃デバイス、衝撃付与方法および衝撃デバイスキットに関する。本発明はまた、請求項5および6に記載の本発明の衝撃デバイスおよび/または方法を使用してワークピースの衝撃励起測定を実施するためのIE測定システムおよび方法に関する。本発明のさらなる実施形態は、従属請求項および本明細書の説明に開示されている。
【0014】
衝撃デバイス、衝撃付与方法、IEシステム、およびIE方法は相互に関連しており、すなわち、衝撃付与方法は衝撃デバイスによって実行することができ、両方とも本発明のIEシステムおよびIE方法によって使用することができることに留意されたい。これはまた、本明細書に開示された特徴が本発明のすべての態様に適用され得ることを意味する。
【0015】
本発明は、ノイズのない、またはノイズが限られた瞬間的な衝撃をワークピースに与えるのに特に適しており、クリーンなIE測定を実施することを可能にする。さらに、本発明は、衝撃デバイスについて安価な解決策をもたらし、ワークピースおよび/またはIE測定セットアップに関して、劣化の場合、または衝撃デバイス、特にそのアームおよびハンマー先端部の特性を変更する必要がある場合に、容易な交換を可能にする。
【0016】
図面の概要
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2A】本発明による衝撃付与方法および衝撃デバイスを示す。
【
図2B】本発明による衝撃付与方法および衝撃デバイスを示す。
【
図2C】本発明による衝撃付与方法および衝撃デバイスを示す。
【
図2D】本発明による衝撃付与方法および衝撃デバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
ここで、本発明を説明するための図を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0019】
したがって、本発明は、衝撃励起測定中にワークピースに瞬間的な衝撃を付与するための衝撃デバイスに関する。
【0020】
衝撃励起測定方法およびシステムは、特許出願欧州特許第3658868号明細書および国際公開第2020254698号に記載されている。IEは、典型的には、実験室などの制御された環境でワークピースに機械的衝撃を与えることに対応する。ワークピースは、基本的に、以下を含むがこれらに限定されない任意のタイプのワークピースとすることができる:
-好ましくは、金属が鉄、アルミニウム、亜鉛、銅、鋼などを含んでもよい、金属または合金を含むかまたはそれらから作製された金属製ワークピース
-ポリマー材料などのプラスチック
-3D印刷材料、好ましくは金属、セラミックまたはポリマー、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)またはポリエーテルイミド(ULTEM(商標)など)
-プラスチックと金属との複合材などの複合材。
【0021】
最も好ましくは、ワークピースは3D印刷されたワークピースであり、および/または本発明の方法は、ワークピースを3D印刷するステップを含む。
【0022】
デバイス(1)は、
-長手方向近位端(4)および長手方向遠位端(5)を備える、屈曲方向(3)の周りで弾性的に変形可能な細長い弾性屈曲可能アーム(2)と、
-アームの遠位端(5)に取り付けられた、ワークピース(7)に機械的に衝撃を与えるためのハンマー先端部(6)と、
-アーム(2)の長手方向近位端(4)に取り付けられたプログラム可能なアクチュエータ(8)と
を備え、アクチュエータ(8)は、アームの屈曲方向(3)に本質的に平行なアクチュエータ軸(9)の周りで前記長手方向近位端(4)を回転させることによって、アームの長手方向近位端(4)に角速度を与えるようにプログラムされ、角速度は、所定の角速度プロファイルに追従し、前記角速度プロファイルはワークピースに瞬間的な衝撃を与えるように構成される。
【0023】
本明細書における「瞬間的な衝撃」という用語は、ハンマー先端部とワークピースとの間の短い接触期間中にエネルギーが伝達される、ワードピースに与えられる単一の弾性跳ね返りを指す。
【0024】
角速度プロファイルの結果として、ハンマー先端部は、ハンマー先端部がワークピースに瞬間的な衝撃を与えるように構成されたハンマー先端部の軌道をたどる。好ましくは、ハンマー先端部の軌道は、ワークピースに対してオフセットした位置で開始する。したがって、ハンマー先端部の軌道は、前記位置オフセット、屈曲可能アームの角速度プロファイルおよび屈曲特性に依存し、好ましくはそれらだけに依存する。
【0025】
図1および
図2A~
図2Dでは、屈曲方向およびアクチュエータ軸が紙面に垂直に示されていることに留意されたい。また、屈曲方向とは、アームを屈曲させることができる方向を指すことに留意されたい。
【0026】
可撓性アームは、好ましくは、長手方向に沿った長さL、幅W、および厚さTを有するストリップ状の形状を備え、L>W>Tである。先端部(6)は、アーム(2)の遠位端(5)に取り付けられている。好ましくは、アームおよびハンマー先端部はモノリシックである。好ましくは、アームおよび/またはハンマー先端部は、プラスチック、金属、合金、またはそれらの組み合わせを含むか、またはそれらから作製される。最も好ましくは、アームおよびハンマー先端部はモノリシックであり、かつプラスチックから作製される。アームの形状およびアームの材料特性は、好ましくは、長手方向に垂直な屈曲方向、より好ましくは幅方向の周りのアームの屈曲性を保証するように選択され、最も好ましくは、アームの形状およびアームの材料特性は、幅方向のみの周りのアームの屈曲性を保証するように選択され、すなわち、アームは、角速度プロファイルの実行中に幅方向の周りのみ屈曲する。
【0027】
好ましい実施形態では、アクチュエータは電気モータ、より好ましくは回転電気モータを備える。電気モータは、好ましくは、屈曲可能アームの近位端の角速度プロファイルが電気モータのロータによって決定され得るように、屈曲可能アームの近位端に取り付けられたロータを備える。
【0028】
好ましい実施形態では、角速度プロファイルは、アームの長手方向遠位端に与えられる角速度が符号を変化させる転回点を含み、前記転回点は、ワークピースへの衝撃よりも早い。これは、ハンマー先端部のむち打ち状の動きによって瞬間的な衝撃がワークピースに与えられることを確実にするために特に好ましい。この動作は
図1および
図2A~
図2Dに示されている。
図1には、方法の開始時の状況が示されており、可撓性アーム(2)は基本的に静止して真っ直ぐであるか、またはわずかに屈曲している(例えば、可撓性アームおよびハンマー先端部の自重のために)。次いで、アクチュエータは、角速度プロファイルの実行を開始する。
図2Aでは、角速度(10)は、アームの近位端がワークピース(7)に向かって回転するようなものである。アームおよびハンマー先端部の慣性により、屈曲可能アームは屈曲方向(3)の周りに屈曲し、それによって可撓性アームを湾曲させる。次いで、角速度プロファイルは、可撓性アームの近位端(4)に加えられる角速度(11)が本質的にゼロである転回点を含む。転回点(
図2Bを参照)において、アクチュエータは、アーム(2)の長手方向端部(4)の回転を停止する。しかしながら、アームの湾曲およびその弾性のために、ハンマー先端部は、ワークピースに向かって移動したままである。ワークピースへの衝撃の瞬間(
図2Cを参照)に、アクチュエータはすでに、ワークピースから離れる角速度(12)がアームの近位端(4)に加えられており、衝撃後にハンマー先端部がワークピースに複数回衝撃を与えないことを確実にする。これを
図2Dに示し、アクチュエータは、アームの近位端の回転を停止している(13)。これにより、ハンマー先端部は、ワークピースから離れるように移動しており、
図1の状況に従って静止するように戻ることができ、フォローアップ測定のために再び開始する準備ができている。
【0029】
好ましくは、プログラム可能なアクチュエータは、プログラム可能なコンピューティングユニット、より好ましくはArduinoコンピューティングユニットまたはraspberry piコンピューティングユニットを備える。プログラム可能な計算ユニットは、電気モータ、好ましくは回転電気モータを制御するように構成することができ、電気モータを操作して本質的に角速度プロファイルに従うようにプログラムすることができる。
【0030】
図4は、本発明による角速度プロファイル(16)を示す。角速度プロファイルは、静止(t=0でω=0)から開始し、時間t
1での最大角速度(ω
max)まで連続的に増加することが好ましい。図中、正の角速度はアームの長手方向近位端がワークピースに向かって回転することを示し、負の角速度はアームの長手方向近位端がワークピースから離れるように回転することを示すことに留意されたい。角速度プロファイルは、時間t
2における転回点(14)を含む。t
2よりも後の瞬間t
3において、ハンマー先端部は、単一の弾性跳ね返りでワークピースに衝突する。この瞬間t
3では、角速度は負であり、アームの近位端がワークピースから離れていく回転を示している。瞬間t
4において、アクチュエータは静止状態に戻る(ω=0)。
【0031】
角速度プロファイルの転回点(14)は、角速度が特に正から負に符号が変化する、すなわちワークピースに向かう回転からワークピースから離れる回転に変化する瞬間を指すことに留意されたい。
【0032】
図5は、本発明による別の角速度プロファイル(17)を示す。角速度プロファイルは、好ましくは休止(t=0でω=0)から開始する。
図4に示す実施形態とは対照的に、角速度は、第2の転回点(19)で終了する第1の期間(18)の間は負であり、第2の転回点(19)は、角速度が負から正に符号が変化する点、すなわち、ワークピースから離れる回転からワークピースに向かう回転に変化する点を指す。第1の期間(18)の後、角速度は、基本的に、
図4に示されるのと同様のプロファイルに追従する。すなわち、角速度は、時刻t
1での最大角速度(ω
max)まで連続的に増加する。角速度プロファイルは、時間t
2における転回点(14)を含む。t
2よりも後の瞬間t
3において、ハンマー先端部は、単一の弾性跳ね返りでワークピースに衝突する。この瞬間t
3では、角速度は負であり、アームの近位端がワークピースから離れていく回転を示している。瞬間t
4において、アクチュエータは静止状態に戻る(ω=0)。
【0033】
好ましくは、アームは交換可能にアクチュエータに取り付けられ、例えば先端部の劣化の場合、またはIE測定を実施するために別のタイプのアームおよび/もしくはハンマー先端部が必要とされる場合に、アームおよび/またはハンマー先端部を容易に交換することを可能にする。例えば、アームおよび/または先端部は、異なる弾性特性、特に他の屈曲性特性を有する別のアームおよび/または先端部と交換されてもよい。アームおよび/またはハンマー先端部を交換する別の理由は、例えば、より硬いもしくはより柔らかい先端部が必要とされる場合、または特定のワークピースの最適なIE測定のために異なる材料(例えば、プラスチックの代わりに金属)の先端部が必要とされる場合など、ワークピースが別のタイプのハンマー先端部によって衝撃を受ける必要がある場合である。これに関して、金属製ワークピースの場合、硬いハンマー先端部を使用したい場合があるが、3D印刷材料から作製されたワークピースの場合、プラスチック製のハンマー先端部が好ましい場合があることに留意されたい。したがって、本発明は、様々なワークピースを試験するために使用されてもよい。ここで、本発明は、以下:
-各々が屈曲方向の周りで弾性的に変形可能な細長い弾性屈曲可能アームのセットであって、屈曲可能アームが長手方向近位端および長手方向遠位端を備える、屈曲可能アームのセットと、
-ワークピースに機械的に衝撃を与えるためのハンマー先端部のセットであって、ハンマー先端部の各々が、細長い弾性屈曲可能アームのセットのうちのアームの遠位端に取り付け可能であり、好ましくは取り付けられる、ハンマー先端部のセットと、
-アームの各々の長手方向近位端に交換可能に取り付け可能なプログラム可能なアクチュエータと
を備える衝撃デバイスキットを含み、
アクチュエータは、アクチュエータが動作アームの長手方向近位端に取り付けられたときに、動作アームの屈曲方向に本質的に平行なアクチュエータ軸の周りで前記長手方向近位端を回転させることによって、前記動作アームの長手方向近位端に角速度を与えるようにプログラムされ、角速度は、所定の角速度プロファイルに追従し、角速度プロファイルは、ワークピースに瞬間的な衝撃を与えるように構成される。
【0034】
本発明はさらに、瞬間的な衝撃に対するワークピースの振動応答を測定するための衝撃励起(IE)測定システムに関し、衝撃励起(IE)測定システムは、
-本発明による衝撃デバイスと、
-瞬間的な衝撃に対するワークピースの振動応答を捕捉するための応答記録デバイスと、
-衝撃デバイスのアクチュエータおよび応答記録デバイスを制御する制御ユニットと、
-ワークピースを所定の位置に保持するための支持デバイスと
を備える。
【0035】
本発明はまた、瞬間的な衝撃に対するワークピースの振動応答を測定するための衝撃励起(IE)測定方法に関し、方法は、
-所定の位置でワークピースを支持するステップと、
-本発明による衝撃付与方法に従ってワークピースに瞬間的な衝撃を付与するステップと、
-瞬間的な衝撃に対するワークピースの振動応答を捕捉するステップと
を含み、それにより、瞬間的な衝撃に対するワークピースの振動応答を測定する。
【0036】
本明細書において、応答記録デバイスは、好ましくは、振動応答を捕捉するためのマイクロフォン、圧電変位センサおよび/またはレーザ干渉計を備えてもよい。応答記録デバイスはまた、好ましくは、振動応答を記録および/または分析するための処理ユニットおよび/またはメモリユニットを備える。
【0037】
ワークピースは、所定の位置で支持される必要があり、前記所定の位置は、好ましくは、角速度プロファイルを考慮して選択され、および/または角速度プロファイルは、所定の位置を考慮して選択される。
【国際調査報告】