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特表2024-544146難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/50 20060101AFI20241121BHJP
   B01J 13/12 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20241121BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241121BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20241121BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20241121BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241121BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 31/13 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A61K9/50
B01J13/12
A61K45/00
A61K47/34
A61K47/20
A61K47/18
A61K47/12
A61K47/42
A61K47/24
A61K47/32
A61K31/485
A61K31/445
A61P25/28
A61P25/36
A61K47/38
A61K31/58
A61K31/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528601
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 KR2022018216
(87)【国際公開番号】W WO2023090899
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0159539
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0154290
(32)【優先日】2022-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519140246
【氏名又は名称】インベンテージ ラボ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INVENTAGE LAB INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【弁理士】
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 香子
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュヒ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
4G005
【Fターム(参考)】
4C076AA61
4C076CC01
4C076DD05
4C076DD41
4C076DD49
4C076EE06
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE25
4C076EE32
4C076EE42
4C076FF33
4C076GG02
4C076GG09
4C084AA17
4C084MA38
4C084NA02
4C084ZA16
4C084ZA18
4C086AA01
4C086AA10
4C086BC21
4C086CB23
4C086DA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA38
4C086NA02
4C086ZA12
4C206AA01
4C206AA10
4C206FA29
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA58
4C206NA02
4C206ZA16
4G005AA01
4G005AB25
4G005BA12
4G005BB06
4G005BB08
4G005BB24
4G005DB06Z
4G005DC15W
4G005DC56W
4G005DD27Z
4G005DD44Z
4G005EA03
4G005EA04
(57)【要約】
本発明は、難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法およびこのような方法で製造されたマイクロ粒子に関し、前記マイクロ粒子の製造方法は、2種以上の有機溶媒を用いて、均一で優れた品質を有し、難溶性薬物の封入率が高く、残留有機溶媒量が低いマイクロ粒子を製造することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)難溶性薬物および生分解性高分子を2種以上の有機溶媒を含む混合溶媒に溶解させて油相溶液を製造するステップと、
2)界面活性剤を水に溶解させて水相溶液を製造するステップと、
3)前記油相溶液および前記水相溶液を用いてマイクロ粒子を製造するステップとを含む
難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記混合溶媒は、第1溶媒および共溶媒を含み、
前記第1溶媒は、ジクロロメタンである、
請求項1に記載の難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記共溶媒は、密度が1.3g/cm以下である、
請求項2に記載の難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記共溶媒は、極性(Polarity index)が3以下である、
請求項2に記載の難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記共溶媒は、沸点が50℃以下である、
請求項2に記載の難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法。
【請求項6】
前記共溶媒は、水溶解度が220~820g/100g waterである、
請求項2に記載の難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法。
【請求項7】
前記第1溶媒および共溶媒は、1:0.5~1:10の重量比で含まれる、
請求項2に記載の難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法。
【請求項8】
前記難溶性薬物は、ナルトレキソン(Naltrexone)、ドネペジル(Donepezil)、フィナステリド(Finasteride)、アリピプラゾール(Aripiprazole)、オランザピン(Olanzapine)、パロノセトロン(Palonosetron)、ミノサイクリン(Minocycline)、メマンチン(Memantine)、アレンドロネート(Alendronate)、デオキシコレート(Deoxycholate)、リセドロネート(Risedronate)、イバンドロネート(Ibandronate)、ゾレドロネート(Zoledronate)、リラグルチド(Liraglutide)、エキセナチド(Exenetide)、ランレオチド(Lanreotide)、オクトレオチド(Octreotide)、デスロレリン(Deslorelin)、リュープロレリン(Leuprorelin)、ゴセレリン(Goserelin)、トリプトレリン(Triptorelin)、またはデュタステリド(Dutasteride)である、
請求項1に記載の難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法。
【請求項9】
前記1)ステップの難溶性薬物および混合溶媒が1:7~1:30の重量比で混合される、
請求項1に記載の難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法。
【請求項10】
前記1)ステップの難溶性薬物および生分解性高分子が1:0.5~1:10の重量比で含まれる、
請求項1に記載の難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法。
【請求項11】
前記生分解性高分子は、ポリラクチド、ポリ乳酸、ポリラクチド-コ-グリコリド、ポリラクティック-コ-グリコール酸、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、ポリホスホエステル、ポリアンハイドライド、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート、ポリアミノ酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、
請求項1に記載の難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法。
【請求項12】
前記界面活性剤は、ポリエチレングリコールソルビタンモノオレート、ソルビタンオレート、ソジウムラウリルスルフェート、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol;PVA)、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、レシチン、ゼラチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ステアリン酸ナトリウム、エステルアミン、リニアジアミン、脂肪アミン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、
請求項1に記載の難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法。
【請求項13】
前記3)ステップは、油相溶液および水相溶液を用いて、エマルジョン法、多孔性メンブレン法、噴霧乾燥法または微細流体法によりマイクロ粒子を製造する、
請求項1に記載の難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法。
【請求項14】
前記3)ステップで製造されたマイクロ粒子内の残留有機溶媒を除去するステップを追加的に含む、
請求項1に記載の難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法。
【請求項15】
前記残留有機溶媒を除去するステップは、
残留有機溶媒を含むマイクロ粒子を水相溶液に入れて、撹拌して残留有機溶媒を除去するものである、
請求項14に記載の難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法。
【請求項16】
前記撹拌工程は、10℃~20℃、200~400rpmで30分~2時間第1撹拌するステップと、
25℃~35℃、200~400rpmで30分~2時間第2撹拌するステップと、
45℃~55℃、200~400rpmで30分~2時間第3撹拌するステップとを含む、
請求項15に記載の難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載のマイクロ粒子の製造方法により製造された
難溶性薬物を含むマイクロ粒子。
【請求項18】
難溶性薬物の封入率が90%以上であり、表面が滑らかで完全な球形状である、
請求項17に記載の難溶性薬物を含むマイクロ粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
難溶性薬物を含むマイクロ粒子または徐放性製剤を製造するためには、難溶性薬物を生分解性高分子と共に有機溶媒に溶解させ、水相で分散させてエマルジョンを製造することが一般的である。例えば、難溶性薬物を含む徐放性製剤は、O/W(oil in water)エマルジョンを製造して難溶性薬物を含むマイクロ粒子(microsphere)を形成させた後、エマルジョンから有機溶媒を除去する工程を経て製造することができる。ただし、エマルジョンを製造してマイクロ粒子を形成する過程で難溶性薬物と生分解性高分子を油相溶液内にすべてよく溶解させ、難溶性薬物が水相溶液に抜け出て損失しないようにして生分解性高分子内の難溶性薬物の封入率を高め、マイクロ粒子の形成後、有機溶媒を除去する過程で難溶性薬物が水相に転移して損失しないようにすることが重要である。これはどの有機溶媒を選択するかによって異なるので、難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法において溶媒の選択は重要な問題である。
【0003】
マイクロ粒子の形成または徐放性製剤の製造のためのエマルジョンの製造過程で、薬物成分を溶媒に溶解させること並みに生分解性高分子を溶解させることが重要であるが、これは薬物の徐放性を達成するためには生分解性高分子内に薬物を封入しなければならないからである。一般的に、生分解性高分子を溶解させるための有機溶媒として、例えば、ジクロロメタンが使用できる。しかし、一部の難溶性薬物は、ジクロロメタンに対して相対的に低い溶解度を示すので、難溶性薬物をジクロロメタン溶媒に溶かすためには多くの溶媒量を使用しなければならない。ところが、使用される溶媒量が増加すると、残留有機溶媒残存の可能性が高くなり、マイクロ粒子を製造する過程で難溶性薬物が油相溶液から水相溶液に抜け出る可能性が高くなる。これによって、マイクロ粒子中の薬物の成分が損失し、薬物の生分解性高分子内の封入率が低くなる問題点がある。
【0004】
また、このようなマイクロ粒子を製造する方法には、例えば、多孔性メンブレンを用いる方法、マイクロチャネルを用いる微細流体法(microfluidics)、エマルジョン法、または噴霧乾燥法がある。
【0005】
前記マイクロ粒子を製造する方法は、難溶性薬物と生分解性高分子とを含む油相溶液の粘度が製造工程に重要な役割を果たし、油相溶液の粘度調節のために有機溶媒の種類と含有量を選択することが重要な問題である。しかし、粘度調節のために有機溶媒の含有量を増加させる場合、前述したように難溶性薬物が損失する可能性が高くなり、残留有機溶媒残存の可能性が高くなる問題点がある。
【0006】
これとともに、マイクロ粒子から溶媒を除去する過程で溶媒の性質によって除去方法が異なるので、どの溶媒を用いて油相溶液を製造するかが難溶性薬物の生分解性高分子内の封入率、残留有機溶媒の含有量、および製法の経済的効率性などに影響を及ぼすことがある。マイクロ粒子から溶媒を除去する方法には、溶媒蒸発法と、溶媒抽出法とがある。
【0007】
前記溶媒蒸発法は、相対的に沸点が低い揮発性溶媒の沸点に温度を上昇させて溶媒を蒸発させることによって溶媒を除去する方法である。これは溶媒抽出法に比べて工程が容易であり、時間が短いという長所があるが、マイクロ粒子の有効成分に相当する薬物の特徴によって、温度上昇によって薬物が溶媒と共に消失し、薬物の生分解性高分子内の封入率が低下するなどの問題が発生することがある。
【0008】
前記溶媒抽出法は、相対的に沸点が高い不揮発性溶媒を、濃度差によってマイクロ粒子から外部溶媒に拡散させて除去する方法である。薬物が溶媒と共に抽出されることを防止するために、低い温度で溶媒抽出が行われ、ベンジルアルコールなどの溶媒抽出を効率よく行うために、マイクロ粒子の外部水相溶液にエチルアセテートまたはエタノールなどの補助溶媒を追加する。
【0009】
難溶性薬物の溶解度を高めるための試みとして、ベンジルアルコールを溶解補助剤として用いて溶解度を改善した方法が研究されてきたが、この場合、溶媒抽出法が使用される。すなわち、ベンジルアルコールは沸点が205.4℃と高いため、これを効果的に除去するためには、溶媒蒸発法ではない溶媒抽出法を用いてベンジルアルコールを除去しなければならない。例えば、難溶性薬物および生分解性高分子をジクロロメタンおよびベンジルアルコールと共に溶解して油相溶液を準備し、油相溶液を水相に分散させてマイクロ粒子を形成させた後、ベンジルアルコールは抽出溶媒としてエチルアセテートまたはエタノールを用いて除去する。
【0010】
ところが、前記のような溶媒抽出法は、濃度勾配によって抽出が起こるため、抽出時間に比例して溶媒が除去される。
【0011】
したがって、残留有機溶媒の完全な除去のためには多くの作業時間がかかる。もし、ベンジルアルコールのような溶媒が完全に除去されずに残留する場合、当該溶媒は薬物成分の可溶化剤として作用してゆっくり放出されなければならない生分解性高分子の放出メカニズムを逸脱してマイクロ粒子から薬物が一度に放出される現象(burst effect)が発生することもあり、放出制御に困難を生じうる。
【0012】
このように、溶媒抽出法は、工程が溶媒蒸発法に比べて複雑であり、製造時間が長くかかるという短所がある。
【0013】
したがって、難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法において、難溶性薬物をよく溶解させ、薬物の生分解性高分子内の封入率を高め、製造方法が単純で製造便宜性を高めることができ、均一なマイクロ粒子を得ることができる、経済的かつ、効率的な製造方法の開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】KR10-2005-0093236A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、難溶性薬物の溶解時、2種以上の有機溶媒を用いて、均一で優れた品質を有し、難溶性薬物の封入率が高く、残留有機溶媒量を容易に製造できる製造方法を提供することである。
【0017】
本発明の他の目的は、少量の有機溶媒を用いて、難溶性薬物および生分解性高分子を有機溶媒に溶解させて、油相溶液の粘度または密度を低下させることができ、微細流体法でマイクロ粒子を製造する場合、マイクロチャネル内に層流を維持可能で、製造されたマイクロ粒子が均質で優れた品質を有しながらも、難溶性薬物の封入率が高いマイクロ粒子を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために、本発明は、難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法に関し、1)難溶性薬物および生分解性高分子を2種以上の有機溶媒を含む混合溶媒に溶解させて油相溶液を製造するステップと、2)界面活性剤を水に溶解させて水相溶液を製造するステップと、3)前記油相溶液および前記水相溶液を用いてマイクロ粒子を製造するステップとを含むことができる。
【0019】
前記混合溶媒は、第1溶媒および共溶媒を含み、前記第1溶媒は、ジクロロメタンであってもよい。
【0020】
前記共溶媒は、密度が1.3g/cm以下であるか、極性(Polarity index)が3以下であるか、沸点が50℃以下であるか、水溶解度が220~820g/100g waterであってもよい。
【0021】
前記第1溶媒および共溶媒は、1:0.5~1:10の重量比で含まれる。
【0022】
前記難溶性薬物は、ナルトレキソン(Naltrexone)、ドネペジル(Donepezil)、フィナステリド(Finasteride)、アリピプラゾール(Aripiprazole)、オランザピン(Olanzapine)、パロノセトロン(Palonosetron)、ミノサイクリン(Minocycline)、メマンチン(Memantine)、アレンドロネート(Alendronate)、デオキシコレート(Deoxycholate)、リセドロネート(Risedronate)、イバンドロネート(Ibandronate)、ゾレドロネート(Zoledronate)、リラグルチド(Liraglutide)、エキセナチド(Exenetide)、ランレオチド(Lanreotide)、オクトレオチド(Octreotide)、デスロレリン(Deslorelin)、リュープロレリン(Leuprorelin)、ゴセレリン(Goserelin)、トリプトレリン(Triptorelin)、またはデュタステリド(Dutasteride)であってもよい。
【0023】
前記1)ステップの難溶性薬物および混合溶媒が1:7~1:30の重量比で混合できる。
【0024】
前記1)ステップの難溶性薬物および生分解性高分子が1:0.5~1:10の重量比で含まれる。
【0025】
前記生分解性高分子は、ポリラクチド、ポリ乳酸、ポリラクチド-コ-グリコリド、ポリラクティック-コ-グリコール酸、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、ポリホスホエステル、ポリアンハイドライド、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート、ポリアミノ酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択できる。
【0026】
前記界面活性剤は、ポリエチレングリコールソルビタンモノオレート、ソルビタンオレート、ソジウムラウリルスルフェート、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol;PVA)、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、レシチン、ゼラチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ステアリン酸ナトリウム、エステルアミン、リニアジアミン、脂肪アミン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択できる。
【0027】
前記3)ステップは、油相溶液および水相溶液を用いて、エマルジョン法、多孔性メンブレン法、噴霧乾燥法または微細流体法によりマイクロ粒子を製造することができる。
【0028】
前記3)ステップで製造されたマイクロ粒子内の残留有機溶媒を除去するステップを追加的に含むことができる。
【0029】
前記残留有機溶媒を除去するステップは、残留有機溶媒を含むマイクロ粒子を水相溶液に入れて、撹拌して残留有機溶媒を除去するものであってもよい。
【0030】
前記撹拌工程は、10℃~20℃、200~400rpmで30分~2時間第1撹拌するステップと、25℃~35℃、200~400rpmで30分~2時間第2撹拌するステップと、45℃~55℃、200~400rpmで30分~2時間第3撹拌するステップとを含むことができる。
【0031】
本発明の他の実施例による難溶性薬物を含むマイクロ粒子は、前記製造方法により製造できる。
【0032】
前記マイクロ粒子は、難溶性薬物の封入率が90%以上であり、表面が滑らかで完全な球形状であってもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、難溶性薬物の溶解時、2種以上の有機溶媒を用いて、均一で優れた品質を有し、難溶性薬物の封入率が高く、残留有機溶媒量を容易に製造することができる。
【0034】
また、少量の有機溶媒を用いて、難溶性薬物および生分解性高分子を有機溶媒に溶解させて、油相溶液の粘度または密度を低下させることができ、微細流体法でマイクロ粒子を製造する場合、マイクロチャネル内に層流を維持可能で、製造されたマイクロ粒子が均質で優れた品質を有しながらも、難溶性薬物の封入率が高いマイクロ粒子を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、1)難溶性薬物および生分解性高分子を2種以上の有機溶媒を含む混合溶媒に溶解させて油相溶液を製造するステップと、2)界面活性剤を水に溶解させて水相溶液を製造するステップと、3)前記油相溶液および前記水相溶液を用いてマイクロ粒子を製造するステップとを含む難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法に関する。
【実施例
【0036】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0037】
難溶性薬物を含むマイクロ粒子が優れた治療効果を示すためには、難溶性薬物がよく溶解して高い比率でマイクロ粒子内に含まれなければならず、薬物の効能と無関係な有機溶媒の残留量が少なくなければならず、マイクロ粒子の大きさが均一でなければならない。
【0038】
難溶性薬物によっては、塩形態では常温で水に対してある程度溶解するが(例:難溶性薬物であるナルトレキソンの塩酸塩の場合、水溶解度が25℃で100mg/mL)、遊離塩基形態の場合、水にほとんど溶けず、有機溶液でも完全な溶解が行われない難溶性を示す。このような遊離塩基形態の難溶性薬物を含みながら優れた性質を有するマイクロ粒子を製造するための有機溶媒としては、難溶性薬物を生分解性高分子と共に溶解させることができかつ、難溶性薬物が水相溶液に損失しないように防止しなければならず、マイクロ粒子の製造後には容易に除去できなければならない。
【0039】
したがって、これに適した特性を有する有機溶媒の選択が重要である。
【0040】
また、均一な大きさのマイクロ粒子を経済的で効率よく製造するためにも溶媒の選択が重要である。例えば、微細流体法の場合、均一な大きさのマイクロ粒子を作るためには、マイクロチャネル内で水相と油相が層流(laminar flow)を維持しなければならない。
【0041】
同一の流体でもマイクロチャネル内での流体の粘度、密度、流速、チャネルの長さなどによってレイノルズ数(Re)が変化し、レイノルズ数が2300以下の時に層流を形成し、レイノルズ数が4000以上の時に乱流を形成する。乱流は、水相溶液が流れるマイクロチャネルに油相溶液が注入された時、油相溶液粒子(すなわち、分散相)に対して不均一な力を加えるので、一定の大きさの油相溶液粒子の形成を妨げてマイクロ粒子の品質および生産収率を阻害することがある。したがって、層流を形成するためには、流体の速度を低下させたり、油相溶液の粘度および/または密度を低下させたりしなければならない。
【0042】
前記流体の速度を低下させる方法は、生産条件の変更により簡単に層流を形成できるという長所があるが、速度が低くなることによって生産性の低下をもたらすことがある。
【0043】
したがって、生産性を確保しながら層流を維持できるように、油相溶液の粘度や密度を低下させる適切な溶媒が使用される必要がある。
【0044】
その他、マイクロ粒子を製造できる方法として、多孔性メンブレンを用いてマイクロ粒子を製造する場合、油相溶液がメンブレンの空隙をよく通過しなければならないので、油相溶液の粘度が重要である。
【0045】
他の方法であるエマルジョン法でも、粘度が過度に高い場合、外部エネルギーによる油相溶液の分散が不利になるので、油相溶液の粘度が重要である。
【0046】
また、噴霧乾燥法の場合にも、液滴を分散させ、風で溶媒を揮発させてマイクロ粒子を製造するものであるので、揮発性の高い溶媒を使用することが重要である。マイクロ粒子を製造するにあたり、溶媒揮発エネルギーを低下させるための、溶媒の選択も重要である。
【0047】
マイクロ粒子を製造するにあたり、十分な粘度を達成するために溶媒を過剰に使用する場合、微細流体法による場合、層流を維持したり、マイクロ粒子の製造が容易であったりするが、過剰の溶媒を除去するのに多くのエネルギーと時間が費やされ、油相溶液粒子(分散相)から有機溶媒を迅速に除去することが難しいので、薬物が水相溶液に転移して損失する可能性が高くなる。
【0048】
そこで、本発明では、上記の問題を解決して、難溶性薬物の封入率を高め、マイクロ粒子内の残留有機溶媒を効率よく除去できるマイクロ粒子の製造方法に関する。
【0049】
具体的には、本発明の難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法は、1)難溶性薬物および生分解性高分子を2種以上の有機溶媒を含む混合溶媒に溶解させて油相溶液を製造するステップと、2)界面活性剤を水に溶解させて水相溶液を製造するステップと、3)前記油相溶液および前記水相溶液を用いてマイクロ粒子を製造するステップとを含むことができる。
【0050】
前記難溶性薬物および生分解性高分子を溶解させるための、混合溶媒は、第1溶媒および共溶媒を含み、前記第1溶媒は、ジクロロメタンであってもよい。
【0051】
一般的に、有機溶媒を用いてマイクロ粒子を製造するために、薬物および生分解性高分子が溶解しやすい溶媒を用いて、この時、一般的に使用される溶媒は、ジクロロメタンである。
【0052】
ただし、前記ジクロロメタンのような有機溶媒を用いる場合にも、一部の難溶性薬物は低い溶解度を有しており、このような問題を解決するために、本発明では、第1溶媒のほか、共溶媒を追加的に含むことで、難溶性薬物に対する溶解度を高め、追って、有機溶媒の除去時にも容易に除去可能にしたことを特徴とする。
【0053】
前記共溶媒は、密度が1.3g/cm以下であるか、極性(Polarity index)が3以下であるか、沸点が50℃以下であるか、水溶解度が220~820g/100g waterであってもよい。具体的には、前記共溶媒は、密度が1.3g/cm以下であり、0.5~1.3g/cmであり、0.5~1.0g/cmであり、0.6~0.9g/cmであってもよい。
【0054】
また、極性が3以下であり、1~3であり、2~3であってもよい。
【0055】
なお、沸点が50℃以下であり、30℃~50℃であり、30℃~40℃であってもよい。
【0056】
また、水溶解度が220~820g/100g waterであり、320~820g/100g waterであり、520~820g/100g waterであってもよい。
【0057】
前記密度条件、極性条件、沸点条件または水溶解度を満たす共溶媒を第1溶媒と混合して使用する場合、一次溶媒を補助して難溶性薬物の溶解度を増加させる役割を果たし、製造されたマイクロ粒子内で残留有機溶媒を除去する時も、共溶媒を用いる場合、共溶媒が第1溶媒であるジクロロメタンより先に除去されながら、薬物が水相溶液に抜け出ることを防止し、油相溶液に存在する生分解性高分子の濃度または粘度を上昇させ、難溶性薬物と生分解性高分子との間の結合をより強くして薬物の生分解性高分子内の封入率を上昇させることができる。
【0058】
また、前記共溶媒の沸点が50℃以下であるため、溶媒除去過程で加熱しても生分解性重合体の性質が変化しなくなり、マイクロ粒子の放出パターンを変化させない。これとともに、前記共溶媒は低い密度を有するものであるので、少量使用しても油相溶液の粘度または密度を低下させることができ、これによって均一で優れた品質を有するマイクロ粒子の製造が可能である。
【0059】
前記のような共溶媒は、具体的には、揮発性有機溶媒または揮発性非極性有機溶媒であってもよい。
【0060】
前記揮発性有機溶媒は、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、ブチルアルコールカーボンジスルフィド、カーボンテトラクロリド、クロロホルム、シクロヘキサン、1,1-ジクロロエタン、ジメトキシエタン、エタノール、ジエチルエーテル、エチルアセテート、ヘプタン、ヘキサン、メタノール、メチルアセテート、メチルt-ブチルエーテル、ペンタン、プロピルアルコール、テトラヒドロフラン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択できる。
【0061】
また、前記揮発性非極性有機溶媒は、シクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、カーボンテトラクロリド、カーボンジスルフィド、ベンゼン、ジエチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、メチルアセテート、クロロホルム、およびこれらの組み合わせからなる群より選択できる。
【0062】
前記共溶媒を第1溶媒と混合溶媒として用いる場合、前記共溶媒は、たとえそれ自体では難溶性薬物または生分解性重合体をよく溶解させないものであっても、第1溶媒であるジクロロメタンと共に作用する場合、むしろ難溶性薬物または生分解性重合体の溶解度を上昇させ、油相溶液の粘度を低下させることができる。
【0063】
また、先に説明したように、前記共溶媒は、ジクロロメタンより先に揮発したり蒸発する性質を有するものであってもよい。一般的に、薬物の水相溶液への転移は完全に乾燥しないマイクロ粒子の表面で発生し、マイクロ粒子の内部に残留する有機溶媒が除去されながら、内部粘度が高くなり硬化が起こると、水相溶液との反応性が低くなって水相溶液に薬物が転移する確率が低くなる。
【0064】
このため、前記のような特性を有する共溶媒を用いる場合、共溶媒が一次溶媒であるジクロロメタンより先に除去されながら、薬物が水相溶液に抜け出ることを防止し、油相溶液に存在する生分解性高分子の濃度または粘度を上昇させ、難溶性薬物と生分解性高分子との間の結合をより強くして薬物の生分解性高分子内の封入率を上昇させることができる。
【0065】
均一で優れた品質のマイクロ粒子を製造するためには、マイクロ粒子、生分解性高分子および有機溶媒を含む油相溶液の粘度または密度が重要である。前記共溶媒は、一次溶媒より低い密度を有するので、少量使用しても油相溶液の密度を低下させることが可能で、微細流体法によりマイクロ粒子を製造しようとする場合、マイクロチャネル内で油相溶液と水相溶液が層流を維持するようにして均一で優れた品質のマイクロ粒子の製造を可能にし、残留有機溶媒が容易に除去できるようにする。
【0066】
前記共溶媒は、好ましくは、ジエチルエーテルまたはペンタンであってもよいが、前記例に限らず、前記共溶媒の条件を満たし、第1溶媒と共に難溶性薬物の溶解度を高め、第1溶媒より先に揮発したり蒸発する性質を有するものは制限なくすべて使用可能である。
【0067】
前記1)ステップにおいて、難溶性薬物および混合溶媒の重量比は、約1:7~約1:30であり、約1:7~約1:29であり、約1:7~約1:28であり、約1:7~約1:27であり、約1:7~約1:26であり、約1:7~約1:25であり、約1:7~約1:24であり、約1:7~約1:23であり、約1:7~約1:22であり、約1:7~約1:21であり、約1:7~約1:20であり、約1:7~約1:19であり、約1:7~約1:18であり、約1:7~約1:17であり、約1:7~約1:16であり、約1:7~約1:15であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0068】
前記1)ステップにおいて、難溶性薬物および生分解性高分子の重量比は、約1:0.5~約1:10であり、約1:0.5~約1:9であり、約1:0.5~約1:8であり、約1:0.5~約1:7であり、約1:0.5~約1:6であり、約1:1~約1:5であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0069】
前記1)ステップにおいて、共溶媒および一次溶媒の重量比は、約1:0.5~約1:10であり、約1:0.5~約1:9であり、約1:0.5~約1:8であり、約1:0.5~約1:7であり、または約1:0.5~約1:6であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0070】
好ましくは、難溶性薬物および混合溶媒の重量比は、1:15~1:20であり、共溶媒および第1溶媒の重量比は、1:0.5~1:6であってもよいが、前記例に限定されるものではない。前記範囲内で難溶性薬物がよく溶解できるもので、前記範囲値未満で混合溶媒が含まれる場合、難溶性薬物が再結晶化されて析出する問題が発生し、粘度が過度に高くなるので、濾過および製造に困難が発生することがある。溶媒量を過度に多く使用する場合、製造には大きな問題がないが、絶対的な有機溶媒の使用量が多くなって難溶性薬物が水相溶液に損失し、残留有機溶媒を除去しにくいことがある。
【0071】
有機溶媒内の生分解性高分子の含有量は、生分解性高分子(例:ポリラクチド-コ-グリコリド共重合体)の使用量を基準として約5~約50重量%であり、約5~約40重量%であり、約5~約30重量%であり、約5~約20重量%であり、約5~約10重量%であってもよいが、これに限定されない。前記有機溶媒の全体使用量は、生分解性高分子の粘度および難溶性薬物の使用量によって変更可能である。難溶性薬物の量が多かったり、生分解性高分子の粘度が高かったりすれば、有機溶媒の使用量を増加させて全体濃度を低下させることができる。ただし、前記範囲内で有機溶媒内に生分解性高分子を溶解する場合、マイクロ粒子の製造便宜を達成し、残留有機溶媒の除去も容易な範囲内である。
【0072】
前記難溶性薬物は、ナルトレキソン(Naltrexone)、ドネペジル(Donepezil)、フィナステリド(Finasteride)、アリピプラゾール(Aripiprazole)、オランザピン(Olanzapine)、パロノセトロン(Palonosetron)、ミノサイクリン(Minocycline)、メマンチン(Memantine)、アレンドロネート(Alendronate)、デオキシコレート(Deoxycholate)、リセドロネート(Risedronate)、イバンドロネート(Ibandronate)、ゾレドロネート(Zoledronate)、リラグルチド(Liraglutide)、エキセナチド(Exenetide)、ランレオチド(Lanreotide)、オクトレオチド(Octreotide)、デスロレリン(Deslorelin)、リュープロレリン(Leuprorelin)、ゴセレリン(Goserelin)、トリプトレリン(Triptorelin)、またはデュタステリド(Dutasteride)であってもよい。
【0073】
前記ナルトレキソンは、N-シクロプロピル-メチルノルオキシモルホン(N-Cyclopropyl-methylnoroxymorphone)、N-シクロプロピルメチル-14-ヒドロキシジヒドロ-モルフィノン(N-Cyclopropylmethyl-14-hydroxydihydro-morphinone)、17-(シクロプロピルメチル)-4,5アルファ-エポキシ-3,14-ジヒドロキシモルフィナン-6-オン(17-(Cyclopropylmethyl)-4,5α-epoxy-3,14-dihydroxymorphinan-6-one)、EN-1639A、またはUM-792とも呼ばれる。
【0074】
前記ナルトレキソンは、下記化学式で表す化合物であってもよい:
【0075】
【化1】
【0076】
前記ドネペジルは、1-ベンジル-4-[5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イルメチル]ピペリジン(1-Benzyl-4-[(5,6-dimethoxy-1-indanon-2-YL)methyl]piperidine)とも呼ばれる。
【0077】
前記ドネペジルは、下記化学式で表す化合物であってもよい:
【0078】
【化2】
【0079】
前記フィナステリドは、N-(1,1-ジメチルエチル)-3-オキソ-(5α,17β)-4-アザアンドロスト-1-エン-17-カルボキサミド(N-(1,1-dimethylethyl)-3-oxo-(5α,17β)-4-azaandrost-1-ene-17-carboxamide)とも呼ばれる。
【0080】
前記フィナステリドは、下記化学式で表す化合物であってもよい:
【0081】
【化3】
【0082】
前記本発明の難溶性薬物は、難溶性薬物の溶媒和物、立体異性体、プロドラッグ(prodrug)、代謝体(例、6β-naltrexol)、誘導体(例えば、naloxone)、遊離塩基(free base)、またはこれらの組み合わせ形態であってもよい。
【0083】
前記立体異性体(stereoisomer)は、分子式および構成原子の連結方法も同一であるが、原子間の空間的配置が異なるものをいう。前記溶媒和物(solvate)は、有機または無機溶媒に溶媒和された化合物をいう。前記溶媒和物は、例えば、水和物である。前記立体異性体は、部分立体異性体(diastereomer)または鏡像異性体(enantiomer)であってもよい。前記プロドラッグは、化合物を投与した後、生体内で標的化合物に変化する化合物であってもよい。前記代謝体は、化合物が生体内の代謝過程により生成された化合物であってもよい。前記誘導体(derivative)は、難溶性薬物の構造の一部を他の原子や原子団に置換して得られる化合物をいう。
【0084】
前記生分解性高分子は、ポリラクチド、ポリ乳酸、ポリラクチド-コ-グリコリド、ポリラクティック-コ-グリコール酸、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、ポリホスホエステル、ポリアンハイドライド、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート、ポリアミノ酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択できるが、前記例に限定されるものではない。
【0085】
前記一例として、ポリラクチド-コ-グリコリドは、ラクチドに対するグリコリドのモル比が約60:40~約90:10であり、約60:40~約85:15であり、約60:40~約80:20であり、約60:40~約75:25であり、約65:35~約90:10であり、約70:30~約90:10であり、約75:25~約90:10であり、約65:35~約85:15であり、約70:30~約80:20であってもよいが、前記例に限定されるものではないが、好ましくは、ポリラクチド-コ-グリコリドにおいてラクチドに対するグリコリドのモル比は、約75:25であってもよい。
【0086】
前記生分解性高分子は、1種以上のポリラクチドおよび1種以上のポリラクチド-コ-グリコリドを含むことができる。本発明において、生分解性高分子は、例えば、ポリラクチド2種、ポリラクチド1種とポリラクチド-コ-グリコリド1種、ポリラクチド-コ-グリコリド2種、ポリラクチド3種、ポリラクチド2種とポリラクチド-コ-グリコリド1種、ポリラクチド1種とポリラクチド-コ-グリコリド2種などの組み合わせを含むことができ、特に、ポリラクチド1種とポリラクチド-コ-グリコリド1種、またはポリラクチド-コ-グリコリド2種を含むことができるが、これに限定されない。
【0087】
前記生分解性高分子は、2種以上のポリラクチド-コ-グリコリドを含むことができる。
【0088】
前記水相溶液は、水および界面活性剤を含むことができる。ここで、界面活性剤は、油相溶液が安定したマイクロ粒子の形成を補助できるものであれば制限なく使用可能である。
【0089】
具体的には、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つ以上であってもよい。例えば、界面活性剤は、ポリエチレングリコールソルビタンモノオレート、ソルビタンオレート、ソジウムラウリルスルフェート、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol;PVA)、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、レシチン、ゼラチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ステアリン酸ナトリウム、エステルアミン、リニアジアミン、脂肪アミン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されたいずれか1つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0090】
前記水相溶液に含まれる界面活性剤の含有量は、0.1~1.0%(w/v)であり、0.2~0.8%(w/v)であり、0.25~0.7%(w/v)であり、0.4~0.6%(w/v)であり、0.4~0.5%(w/v)であり、0.5~0.6%(w/v)であり、0.1~0.3%(w/v)であり、0.2~0.3%(w/v)であり、0.25~0.3%(w/v)であってもよいが、これに限定されるものではない。例えば、界面活性剤を含む水相溶液は、0.5%(w/v)のPVA溶液であってもよいが、前記例に限定されない。
【0091】
前記1)ステップの油相溶液に対する粘度は、流体の粘度(単位:cP;centipoise)がマイクロチャネル内での流体を層流状態に維持させる範囲にある。前記流体の粘度は、ブルックフィールドモデル(Brookfield Model)LVT粘度計で測定可能であり、LV01またはLV02スピンドルを用いて80~100rpmで測定可能である。前記油相溶液の粘度測定は25℃で測定し、粘度計で測定を開始すると、測定溶液が安定化された後、一定の数値の粘度を測定し、一般的に、溶液の安定化は1分前後で進行させた。
【0092】
前記1)ステップの油相溶液は、前記2)ステップの水相溶液と層流状態を維持するようにする粘度または密度を有するものであってもよい。具体的には、マイクロチャネル内に流れている水相溶液に油相溶液が注入された時、マイクロチャネル内の流体が層流状態を維持するように、油相溶液が粘度または密度を有することができる。例えば、マイクロチャネル内に流れる流体のレイノルズ数が2,300以下を満足するように、油相溶液が粘度または密度を有することができる。
【0093】
前記3)ステップは、油相溶液および水相溶液を用いて、エマルジョン法、多孔性メンブレン法、噴霧乾燥法または微細流体法によりマイクロ粒子を製造することができる。
【0094】
具体的には、前記微細流体法によりマイクロ粒子を製造する工程は、a)油相溶液を直線方向のマイクロチャネルに注入するステップと、b)水相溶液を両側面または一側面のマイクロチャネルに注入するステップと、c)マイクロ粒子を収集するステップとを含むことができる。
【0095】
前記a)ステップは、油相溶液を直線方向のマイクロチャネルに注入して、流れるようにするものであり、前記b)ステップは、水相溶液を直線方向のマイクロチャネルと交差点を形成するように形成された両側面または一側面のマイクロチャネルに注入して流れるようにするものである。すなわち、油相溶液は、直線方向のマイクロチャネルに沿って流れ、水相溶液は、前記直線方向のマイクロチャネルを基準として両側面または一側面で直線方向のマイクロチャネルと交差点を形成するマイクロチャネルに沿って流れて、油相溶液の流れと出会うことができる。
【0096】
また、直線方向のマイクロチャネルに注入される油相溶液より、油相溶液の流れと交差点を形成する水相溶液の流れをより速い流速で流れるようにするために、より高い圧力条件下で水相溶液を流れるようにすることが可能である。
【0097】
前記のように、油相溶液および水相溶液の流速を異ならせ、水相溶液の流速を油相溶液の流速より速くすることで、油相溶液の流れと水相溶液の流れとが出会う地点で相対的により速い流速を有する水相溶液が油相溶液を圧縮するようになり、この時、油相溶液および水相溶液の反発力によって油相溶液内の生分解性高分子および難溶性薬物が球形状のマイクロ粒子を生成し、前記球形状のマイクロ粒子は球形の生分解性高分子に薬物が均等に分布している形態で形成することができる。
【0098】
前記微細流体法によるマイクロ粒子の製造は、難溶性薬物、有機溶媒、および生分解性高分子が溶解している油相溶液を水相溶液と共にマイクロチャネルに投入して一定の大きさのマイクロ粒子を形成する方法で、水相溶液内でマイクロ粒子を製造する方法である。このように形成されたマイクロ単位の粒子は、水相溶液内の界面活性剤によって安定化され、形成された粒子は乾燥条件によって粒子内部の有機溶媒が蒸発または揮発しながら粒子内の有機溶媒が除去されて、マイクロ粒子を形成することができる。
【0099】
前記エマルジョン法は、難溶性薬物、有機溶媒、および生分解性高分子が溶解している油相溶液と界面活性剤が含まれた水相溶液とを混合した後、その混合物に外部のエネルギー(超音波、または高速回転力など)を加えて、油相溶液が水相溶液内でマイクロ単位の粒子を形成するようにする方法である。前記エマルジョン法により形成されたマイクロ粒子は、乾燥条件によって粒子内部の有機溶媒が蒸発または揮発しながら粒子内の有機溶媒が除去され、マイクロ粒子が形成される。
【0100】
前記多孔性メンブレン法は、難溶性薬物、有機溶媒、および生分解性高分子が溶解している油相溶液(分散相)を、微細空隙(micro pore)が開いている多孔性メンブレンの一側面に流し、多孔性メンブレンの反対側側面に界面活性剤が含まれた水相溶液(連続相)を流すことで、水相溶液の流れで油相溶液を切ってマイクロ粒子を製造する方法である。
【0101】
前記噴霧乾燥法は、水相溶液を使用せず、難溶性薬物、有機溶媒、および生分解性高分子が溶解している油相溶液を、噴霧乾燥機で噴霧しながら加温された空気を吹き込んでマイクロ粒子を製造する方法である。油相溶液を微細噴霧しながらマイクロ単位の粒子が形成され、加温された空気によって粒子内部の有機溶媒が蒸発または揮発しながら溶媒が除去され、マイクロ粒子が形成される。
【0102】
前記エマルジョン法および噴霧乾燥法の具体例は、例えば、文献[Koerner,J.(2019).Harnessing Dendritic Cells for Poly(D,L-lactide-co-glycolide)Microspheres(PLGA MS)―Mediated Anti-tumor Therapy.Frontiers]、および文献[Wang,Y(2016).Manufacturing Techniques and Surface Engineering of Polymer Based Nanoparticles for Targeted Drug Delivery to Cancer.Nanomaterials6(2),26]に記載されているが、これに限定されるものではない。
【0103】
本発明の他の実施例による難溶性薬物を含むマイクロ粒子は、前記製造方法により製造されたマイクロ粒子である。
【0104】
前記マイクロ粒子の難溶性薬物に対する封入率は、約90%であり、約91%であり、約92%であり、約93%であり、約94%であり、約95%であり、約96%であり、約97%であり、約98%であり、約99%であり、約100%であってもよい。
【0105】
前記マイクロ粒子は、微粒球またはマイクロスフィアとも称され、粒子内に有効成分として難溶性薬物を含むことができるものを意味することができる。
【0106】
前記マイクロ粒子の中間粒子サイズ(D50)は、約30μm~約65μmであり、約30μm~約60μmであり、約30μm~約55μmであり、約30μm~約50μmであり、約35μm~約65μmであり、約40μm~約65μmであり、約45μm~約65μmであり、約35μm~約60μmであり、約40μm~約55μmであり、約45μm~約50μmであってもよい。
【0107】
一態様において、マイクロ粒子は、中間粒子サイズを基準として±5μm、±7μm、±10μm、±12μm、または±15μmの範囲で粒度分布を有するものであってもよい。
【0108】
また、マイクロ粒子は、このような粒度分布範囲内に全体マイクロ粒子を基準として60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、または99重量%以上のマイクロ粒子が存在するものであってもよい。
【0109】
[実験例1]ジクロロメタンおよびジエチルエーテルの組み合わせによる溶解度の比較
溶媒の種類および組み合わせによる難溶性薬物の溶解度の比較のために、難溶性薬物である遊離塩基形態のナルトレキソン(Mallinckrodt社製;以下、同一)0.5gに生分解性高分子(Corbion社製;PDLG7504(エステル型)使用;以下、同一)1.0gを同じ総量の有機溶媒(7.0g)に溶解させ、下記表1に示しているように混合し、常温でナルトレキソンと生分解性高分子の溶解の有無を肉眼で観察した。この時、肉眼で結晶や粒子が見えない透明な状態は完全溶解と判断した。
【0110】
【表1】
【0111】
ジクロロメタンを過剰に使用する場合、ナルトレキソンを溶解させることはできるが、それによって使用される総溶媒量が増加して、上述した残留有機溶媒などの問題点が発生することがある。このような問題点を回避するために、比較例1のようにジクロロメタンを単独で使用しかつ、その使用量ができるだけ最小にしてナルトレキソンを溶解させることはできるが、ナルトレキソンが析出する再結晶現象が発生し、これは油相溶液を水相溶液と共にモジュールを通して噴射する時、圧縮空気による圧力の変化および溶媒の揮発などによって飽和溶液でナルトレキソンが結晶として析出すると推定される。また、ジエチルエーテルを有機溶媒として単独で使用した比較例2は、ナルトレキソンだけでなく、生分解性高分子も全く溶解しなかった。これとは異なり、第1溶媒であるジクロロメタンに共溶媒としてジエチルエーテルを混合した実施例1および2では、ナルトレキソンおよび生分解性高分子がすべて完全に溶解し、溶媒それぞれを単独で使用した時より溶解度もはるかに高くなり、再結晶現象も発生しなかった。
【0112】
これは、ナルトレキソンおよび生分解性高分子に対する溶解度が良くないジエチルエーテルを共溶媒として使用することが、第1溶媒であるジクロロメタンおよびナルトレキソン分子間の配置に影響を与えて、ナルトレキソンおよび生分解性高分子に対する溶解度を増加したものである。
【0113】
前記実験結果によれば、ジクロロメタンまたはジエチルエーテルを単独で使用すると、ナルトレキソンおよび生分解性高分子とも溶解しないが、ジエチルエーテルをジクロロメタンと組み合わせて共溶媒として用いる場合、ナルトレキソンと生分解性高分子の溶解度を上昇させることを確認することができる。
【0114】
前記のように、ジクロロメタンとジエチルエーテルを共に使用すると、少ない溶媒量を使用してもナルトレキソンおよび生分解性高分子を完全に溶解させることができることを確認した。
【0115】
これによって、前記実施例1および2のような混合溶媒を用いてマイクロ粒子を製造する場合、ナルトレキソンの損失も減少させて封入率を上昇させることができ、有機溶媒の使用量を減少可能で、残留有機溶媒を効果的に除去することができる。
【0116】
以後、このような効果を確認するための追加の実験を進行させた。
【0117】
[実験例2]溶媒によるナルトレキソンマイクロ粒子の封入率、残留有機溶媒および溶解の比較実験
(1)ナルトレキソンを含むマイクロ粒子の製造
実験に使用するためのマイクロ粒子を下記のように製造し、マイクロ粒子の製造時に使用した成分の含有量は表2にまとめた。
【0118】
[実施例3]
遊離塩基形態のナルトレキソン0.5gおよびDL-ラクチド/グリコリド共重合体1.0gを、ジクロロメタン10.0gおよびジエチルエーテル2.3gに混合して溶解した。混合した油相溶液をマイクロチャネルにそれぞれ適用して、油相溶液および水相溶液の交差点でマイクロ粒子に製造し、これを水相溶液上(10℃)で収集した。水相溶液は0.5%(w/v)のPVA溶液(水に0.5%(v/v)のPVAを混合する)である。
【0119】
前記製造されたマイクロ粒子は10℃で1時間、30℃で1時間および50℃で1時間撹拌して有機溶媒を除去した。製造されたマイクロ粒子を篩で得た後、凍結乾燥して、乾燥したマイクロ粒子の製造を完了した。
【0120】
[実施例4]
ジクロロメタン8.0gおよびジエチルエーテル2.0gを混合したことを除き、実施例3と同様に製造した。
【0121】
[比較例3]
ジエチルエーテルなしにジクロロメタン8.0gを混合したことを除き、実施例3と同様に製造した。
【0122】
[比較例4]
ジエチルエーテルなしにジクロロメタン12.3gを混合したことを除き、実施例3と同様に製造した。
【0123】
【表2】
【0124】
(2)共溶媒使用および有機溶媒量による封入率、残留有機溶媒、析出有無の比較
前記実験例2.(1)から製造されたマイクロ粒子に対して溶解度、封入率、残留有機溶媒を評価した。溶解の有無は肉眼で析出したかを確認し、封入率は高性能液体クロマトグラフィー(high-performance liquid chromatography、HPLC)を用いて測定した。残留有機溶媒は気体クロマトグラム(GC、gas chromatogram)により分析した。その結果を表3に記載した。
【0125】
【表3】
【0126】
比較例3および比較例4を比較する時、ナルトレキソンはジクロロメタンに難溶性であるので、ジクロロメタンの量が十分でない場合、油相溶液を製造する過程で有機溶媒に溶解したナルトレキソンが再結晶化によって析出する現象が発生し、これによってマイクロ粒子を製造することができなかった。比較例4と実施例3および実施例4を比較する時、共溶媒としてジエチルエーテルを使用すると、ジクロロメタンを単独で使用した時より封入率が約6%上昇し、ジクロロメタンの残留有機溶媒量も減少することを確認し、全体有機溶媒の残留量も減少することを確認した。
【0127】
前記結果によれば、沸点がジクロロメタンより低いジエチルエーテルを共に使用することにより封入率の上昇効果が見られるが、これは、ジエチルエーテルがジクロロメタンより低い温度で溶媒揮発が起こるにつれ、マイクロ粒子内のナルトレキソンと生分解性高分子の濃度が増加して、マイクロ粒子内に存在する油相溶液の粘度を上昇させ、これによってナルトレキソンと生分解性高分子との間の結合をより強く維持させることによるものである。
【0128】
[実験例3]溶媒の混合比率によるナルトレキソンマイクロ粒子の封入率、残留有機溶媒、溶解の比較実験
(1)ナルトレキソンを含むマイクロ粒子の製造
実験に使用するためのマイクロ粒子を下記のように製造し、マイクロ粒子の製造時に使用した成分の含有量は表4にまとめた。
【0129】
[実施例5]
ナルトレキソン0.5gおよびDL-ラクチド/グリコリド共重合体1.0gをジクロロメタン6.0gおよびジエチルエーテル2.0gに混合して溶解した。混合した油相溶液をマイクロチャネルにそれぞれ適用して、油相溶液および水相溶液の交差点でマイクロ粒子に製造し、これを水相溶液上(10℃)で収集した。水相溶液は0.5%(w/v)のPVA溶液である。製造されたマイクロ粒子は10℃で1時間、30℃で1時間および50℃で1時間撹拌して有機溶媒を除去した。製造されたマイクロ粒子を篩で得た後、凍結乾燥して、乾燥したマイクロ粒子の製造を完了した。
【0130】
[実施例6]
マイクロ粒子を10℃で1.5時間、30℃で1.5時間および50℃で1.5時間撹拌して有機溶媒を除去したことを除き、実施例5と同様に製造した。
【0131】
[実施例7]
ジエチルエーテル3.0gを混合したことを除き、実施例5と同様に製造した。
【0132】
【表4】
【0133】
(2)溶媒の混合比率によるナルトレキソンマイクロ粒子の封入率、残留有機溶媒、溶解の比較
【0134】
【表5】
【0135】
実施例5および実施例6を比較する時、有機溶媒の除去時間を長くするほど封入率がむしろ低下することを確認することができ、このような結果は、有機溶媒の除去時間が長いほど有機溶媒の残留量において有意な差はないことを確認した。
【0136】
実施例5および実施例7を比較する時、有機溶媒として用いたジクロロメタンとジエチルエーテルとの比率が封入率に影響を及ぼすことを確認した。ジクロロメタンに対するジエチルエーテルの比率が増加すると、マイクロ粒子のナルトレキソン封入率が上昇することを確認することができる。
【0137】
[実験例4]共溶媒としての有機溶媒の種類による実験
ジエチルエーテルのほか、他の共溶媒を使用した時、マイクロ粒子の封入率および残留有機溶媒の含有量を評価した。実験例2の実施例3と同様の方法でマイクロ粒子を製造した。ジエチルエーテルを含む使用可能な共溶媒の特性を表6にまとめ、表7に多様な共溶媒を使用した実施例をまとめた。
【0138】
【表6】
【0139】
(1)ドネペジルを含むマイクロ粒子の製造
[実施例8]
ドネペジル0.98264g、DL-ラクチド/グリコリド共重合体1.0gおよびラクチド共重合体3.0gを、ジクロロメタン22.667gを混合して溶解した。混合した油相溶液をマイクロチャネルにそれぞれ適用して、油相溶液および水相溶液の交差点でマイクロ粒子に製造し、これを水相溶液上(10℃)で収集した。水相溶液は0.25%(w/v)のPVA溶液である。製造されたマイクロ粒子は10℃で1時間、30℃で1時間および40℃で3時間撹拌して有機溶媒を除去した。製造されたマイクロ粒子を篩で得た後、凍結乾燥して、乾燥したマイクロ粒子の製造を完了した。
【0140】
[実施例9]
ドネペジル0.98264g、DL-ラクチド/グリコリド共重合体1.0gおよびラクチド共重合体3.0gを、ジクロロメタン6.0gおよびジエチルエーテル4.5gを混合して溶解し、製造方法は実施例8と同様に製造した。
【0141】
[実施例10]
ドネペジル0.98264g、DL-ラクチド/グリコリド共重合体1.0gおよびラクチド共重合体3.0gを、ジクロロメタン8.0gおよびペンタン3.0gを混合して溶解し、製造方法は実施例8と同様に製造した。
【0142】
[実施例11]
ドネペジル0.98264g、DL-ラクチド/グリコリド共重合体1.0gおよびラクチド共重合体3.0gを、ジクロロメタン6.0gおよびメチル-t-ブチルエーテル4.5gを混合して溶解し、製造方法は実施例8と同様に製造した。
【0143】
【表7】
【0144】
(2)共溶媒の種類によるドネペジルマイクロ粒子の封入率、残留有機溶媒の比較
【0145】
【表8】
【0146】
実施例8および実施例9を比較する時、共溶媒であるジエチルエーテルの使用によってジクロロメタンの使用量が減少して、同一の乾燥条件でジエチルエーテルを使用した実施例9で、ジクロロメタンの残留溶媒がより低かった。
【0147】
また、実施例10の場合、共溶媒として用いたペンタンの残留溶媒が非常に高く測定されたが、これは、ペンタンの沸点がジエチルエーテルより低いが、水に対する溶解度が良くなくてペンタンが水を通して外部に除去できなかったからである。
【0148】
実施例11の場合、メチル-t-ブチルエーテルの沸点がペンタンより高いが、水に対する溶解度がペンタンより高くて残留溶媒が除去されたと見られるが、沸点が最終乾燥温度より高くて十分に溶媒が除去されておらず、マイクロ粒子の表面が滑らかでなく、穴が生じていることを確認することができた。
【0149】
[実験例5]共溶媒の使用による油相溶液のポリマーの比率増加の評価
油相溶液の調製時、共溶媒の使用で粘度が低くなって、ジクロロメタンの単独溶媒の使用時より高い濃度のポリマーを溶解して製造が可能である。
【0150】
(1)ドネペジルを含むマイクロ粒子の製造
【0151】
【表9】
【0152】
[実施例12]
DL-ラクチド/グリコリド共重合体1.0gおよびラクチド共重合体3.0gを、ジクロロメタン22.667gに混合して溶解し、製造方法は実施例8と同様に製造した。
【0153】
[実施例13]
ドネペジル0.98264g、DL-ラクチド/グリコリド共重合体1.0gおよびラクチド共重合体3.0gを、ジクロロメタン6.0gに混合して溶解し、製造方法は実施例8と同様に製造した。
【0154】
[実施例14]
ドネペジル0.98264g、DL-ラクチド/グリコリド共重合体1.0gおよびラクチド共重合体3.0gを、ジクロロメタン10.5gに混合して溶解し、製造方法は実施例8と同様に製造した。
【0155】
[実施例15]
ドネペジル0.98264g、DL-ラクチド/グリコリド共重合体1.0gおよびラクチド共重合体3.0gを、ジクロロメタン6.0gおよびジエチルエーテル4.5gに混合して溶解し、製造方法は実施例8と同様に製造した。
【0156】
[実施例16]
ドネペジル0.98264g、DL-ラクチド/グリコリド共重合体1.0gおよびラクチド共重合体3.0gを、ジクロロメタン4.0gおよびジエチルエーテル3.0gを混合して溶解し、製造方法は実施例8と同様に製造した。
【0157】
(2)共溶媒の比率による油相溶液の粘度の比較および製造可能か否かの確認
【0158】
【表10】
【0159】
実施例8と比較して、主成分を溶解しないプラシーボ溶液である実施例12の粘度は類似しており、これは主成分が粘度に大きな影響を及ぼさないことを意味する。
【0160】
また、実施例13と実施例14によりジクロロメタンの単一溶媒を使用し、固形分の比率が30%超過の高濃度の油相溶液は製造が不可能であることを確認することができた。
【0161】
しかし、共溶媒ジエチルエーテルを用いた実施例15および実施例16の場合、固形分の比率が30%超過であるにもかかわらず、同一の固形分の比率が同一のジクロロメタンの単一溶媒群と比較して粘度も低く、問題なしにマイクロ粒子の製造が可能であることを確認することができる。
【0162】
マイクロ粒子の製造のための有機溶液の粘度または密度によって、どれだけ均一なマイクロ粒子が製造されるかを評価し、マイクロ粒子の製造時間をどれだけ短縮することができ、どれだけ効率よく残留有機溶媒を除去できるかを評価し、これによってマイクロ粒子の製造が容易に行われるかを評価した。
【0163】
以上の説明から、本発明の属する技術分野における通常の技術者は本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。これに関連し、以上に述べた実施例はすべての面で例示的であり、限定的ではないものと理解しなければならない。本発明の範囲は上記の詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその等価概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明は、難溶性薬物を含むマイクロ粒子の製造方法に関する。
【0165】
本発明は、下記の国家研究開発事業の支援を受けた。
【0166】
[課題固有番号]1465031634
[課題番号]HI20C0936
[部処名]保健福祉部
[課題管理(専門)機関名]韓国保健産業振興院
[研究事業名]バイオヘルス投資インフラ連携型R&D
[研究課題名]制御最適化された製造技術を用いたオピオイド(opioid)およびアルコール依存性治療用の長期持続型注射剤の開発
[寄与率]1/1
[課題実行機関名]インベンテージラボ
[研究期間]2022.01.01~2022.12.31
【国際調査報告】