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特表2024-544155デンプン液化のための高性能アルファ-アミラーゼ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】デンプン液化のための高性能アルファ-アミラーゼ
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/28 20060101AFI20241121BHJP
   C12N 15/56 20060101ALI20241121BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241121BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241121BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241121BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241121BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241121BHJP
   C13K 1/06 20060101ALI20241121BHJP
   C12P 19/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C12N9/28 ZNA
C12N15/56
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C13K1/06
C12P19/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529447
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 US2022050353
(87)【国際公開番号】W WO2023091631
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/280,891
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509240479
【氏名又は名称】ダニスコ・ユーエス・インク
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】アルカン、ヴェリ
(72)【発明者】
【氏名】コークマン、マーク
(72)【発明者】
【氏名】コープマン、フランク
(72)【発明者】
【氏名】リ、サン-キュウ
(72)【発明者】
【氏名】リーファン、クリス
(72)【発明者】
【氏名】ニ、ケフェン
(72)【発明者】
【氏名】プライセリアス、シーナ
(72)【発明者】
【氏名】シャン、ツェン
(72)【発明者】
【氏名】タン、ツォンメイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ブリュッセル-ツヴァイネン、マルコ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AF02
4B064CA21
4B064CB07
4B064CC10
4B064CD19
4B064DA10
4B064DA19
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
(57)【要約】
操作α-アミラーゼに関する組成物及び方法が開示される。操作α-アミラーゼは、現在、業界標準である市販のコンビナトリアル変異体α-アミラーゼよりも性能が優れている。操作α-アミラーゼは、デンプンの液化及び糖化に有用であり、且つデンプン質の染みの洗浄、布地の糊抜き、製パン及び醸造にも有用であり得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、配列番号2、配列番号3及び/又は配列番号4に対して少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有し、且つα-アミラーゼ活性を有する非天然型操作α-アミラーゼ。
【請求項2】
請求項1に記載の非天然型操作α-アミラーゼをコードする核酸。
【請求項3】
請求項2に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項4】
請求項3に記載の発現ベクターを含む細胞。
【請求項5】
請求項1に記載の非天然型操作α-アミラーゼを発現する細胞。
【請求項6】
請求項1に記載の非天然型操作α-アミラーゼを含む製剤化組成物。
【請求項7】
デンプンを含む組成物を糖化して、グルコースを含む組成物を生成する方法であって、
(i)デンプンを含む溶液を、有効量の、請求項1に記載のいずれかの変異体アミラーゼと接触させることと、
(ii)前記デンプンを含む溶液を糖化して、前記グルコースを含む組成物を生成することと
を含み、前記変異体アミラーゼは、前記デンプン溶液のグルコースへの前記糖化を触媒する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月18日に出願された米国仮特許出願第63/280891号明細書の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
効率的なデンプン液化のために設計された操作α-アミラーゼに関する組成物及び方法が開示される。操作α-アミラーゼは、現在、業界標準である市販のコンビナトリアル変異体α-アミラーゼよりも性能が優れている。操作α-アミラーゼは、デンプンの液化及び糖化に有用であり、且つデンプン質の染みの洗浄、布地の糊抜き、製パン及び醸造にも有用であり得る。
【背景技術】
【0003】
デンプンは、アミロース(15~30w/w%)及びアミロペクチン(70~85w/w%)の混合物からなる。アミロースは、約60,000~約800,000の分子量(MW)を有するα-1,4-結合グルコース単位の直鎖からなる。アミロペクチンは、24~30グルコース単位毎にα-1,6分岐点を含有する分岐状ポリマーであり、そのMWは、1億にも達し得る。
【0004】
濃縮デキストロースシロップ形態のデンプン由来の糖は、現在、(i)固体デンプンをα-アミラーゼで糊化及び液化(又は粘度低減)させ、平均重合度が約7~10のデキストリンにすることと、(ii)得られた液化デンプン(すなわちデンプン加水分解物)をグルコアミラーゼで糖化することとを含む酵素触媒プロセスによって生成されている。得られたシロップは、グルコース含量が高い。商業的に生成されるグルコースシロップの多くは、引き続きイソシロップとして公知のデキストロース/フルクトース混合物に酵素的に異性化される。得られたシロップは、例えば、エタノール、クエン酸、乳酸、コハク酸、イタコン酸、グルタミン酸一ナトリウム、グルコン酸塩、リシン、他の有機酸、他のアミノ酸及び他の生化学物質を含む市販の製品を生成するために、酵母などの微生物を用いて発酵させることもできる。発酵及び糖化は、より大きい経済性及び効率を達成するために同時に(すなわち同時糖化発酵(SSF)プロセスを介して)行うことができる。
【0005】
α-アミラーゼは、無作為に内部α-1,4-グルコシド結合を切断することにより、デンプン、グリコーゲン及び関連する多糖類を加水分解する。特にバチルス属(Bacill)由来のα-アミラーゼは、デンプンの液化及び糖化、布地の糊抜き、紙パルプ産業におけるデンプン改質、醸造、製パン、食品工業のためのシロップの生成、発酵プロセスのための供給原料の生成並びに消化性を上昇させるための動物飼料を含む、広範囲の様々な目的のために使用されている。これらの酵素は、食器洗浄及び洗濯洗浄中にデンプン質の汚れ及び染みを除去するためにも使用され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多数の刊行物がα-アミラーゼの単一変異及び複数の(すなわちコンビナトリアル)変異を記載している。しかしながら、従来の戦略を使用して作出されたものよりも性能が優れている、更により強力な操作α-アミラーゼ分子の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の組成物及び方法は、操作α-アミラーゼポリペプチド及びその使用方法に関する。本発明の組成物及び方法の態様及び実施形態は、以下の個別に番号付けされた段落に要約される。
1.第一の態様では、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び/又は配列番号4に対して少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有し、且つα-アミラーゼ活性を有する非天然型操作α-アミラーゼが提供される。
2.いくつかの実施形態では、段落1に記載の非天然型操作α-アミラーゼをコードする核酸が提供される。
3.いくつかの実施形態では、段落2に記載の核酸を含む発現ベクターが提供される。
4.いくつかの実施形態では、段落3に記載の発現ベクターを含む細胞が提供される。
5.いくつかの実施形態では、段落1に記載の非天然型操作α-アミラーゼを発現する細胞が提供される。
6.いくつかの実施形態では、段落1に記載の非天然型操作α-アミラーゼを含む製剤化組成物が提供される。
7.いくつかの実施形態では、デンプンを含む組成物を糖化して、グルコースを含む組成物を生成する方法が提供され、本方法は、(i)デンプンを含む溶液を、有効量の、段落1に記載のいずれかの変異体アミラーゼと接触させることと、(ii)デンプンを含む溶液を糖化して、グルコースを含む組成物を生成することとを含み、変異体アミラーゼは、デンプン溶液のグルコースへの糖化を触媒する。
本組成物及び方法のこれら及び他の態様及び実施形態は、本発明の説明及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)及びバチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)由来の操作α-アミラーゼ1~4及び天然型α-アミラーゼのClustal Wアミノ酸配列アラインメントである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.概要
カルシウムイオン及びナトリウムイオンなどの追加の安定化剤の不在下において、低pHで高温液化性能の上昇を示す操作α-アミラーゼ酵素に関する組成物及び方法が記載される。操作α-アミラーゼは、110℃で7~9分間の短時間のインキュベーションに続いて95℃で2時間インキュベーションした後、pH5で50~90%の残存活性、pH4.8で30~70%の活性及びpH4.5で10~35%の活性を示した。
【0010】
操作α-アミラーゼは、デンプンの液化及び糖化に明らかに有用であるが、洗濯、食器洗浄及び他の用途におけるデンプン質の染みを洗浄するため、布地加工(例えば、糊抜き)のため、動物飼料において消化性を改良するため並びに製パン及び醸造のためにも有用であり得る。以下では、本組成物及び方法のこれら及び他の態様について詳細に記載する。
【0011】
2.定義及び略語
本発明の操作α-アミラーゼ及びそれらの使用方法の種々の態様及び実施形態について説明する前に、以下の定義及び略語について説明する。
【0012】
文脈が明白に他のことを指示しない限り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、複数の対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「酵素」への言及は、複数のそのような酵素を含み、「投与量」への言及は、1つ以上の投与量及び当業者に公知のその均等物への言及を含むなどである。
【0013】
本明細書は、読み易くするために多数のセクションで編成されている。しかしながら、読者は、あるセクションでなされた記載を他のセクションに適用できることを理解するであろう。このように、本開示の異なるセクションで使用された見出しを限定的であると解釈すべきではない。
【0014】
別途定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって通常理解される意味と同一の意味を有する。下記では、以下の用語を提供する。
【0015】
2.1.略語及び頭字語
以下の略語/頭字語は、別途指定しない限り、以下の意味を有する。
DE デキストロース当量
DNA デオキシリボ核酸
ds又はDS 乾燥固体
EC 酵素委員会
EOF 発酵終了
GA グルコアミラーゼ
GAU/g ds グルコアミラーゼ活性単位/乾燥固体(g)
HFCS 高フルクトースコーンシロップ
MW 分子量
ppm 百万分率、例えば乾燥固体1グラム当たりのタンパク質(μg)
SSF 同時糖化発酵
SSU/固体(g) 可溶性デンプン単位/乾燥固体(g)
sp. 種
Tm 融解温度
w/v 重量/体積
w/w 重量/重量
v/v 体積/体積
wt% 重量パーセント
℃ 摂氏温度
O 水
DI 脱イオン水
g又はgm グラム
mg ミリグラム
kg キログラム
mL及びml ミリリットル
mm ミリメートル
mM ミリモル濃度
M モル濃度
U 単位
sec 秒
min(s) 分
hr(s) 時間
ETOH エタノール
eq. 当量
Tris-HCl トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩
μg/gds トウモロコシデンプン乾燥固体1グラム当たりの酵素タンパク質(μg)
nd 不検出
【0016】
2.2.定義
「アミラーゼ」又は「デンプン分解酵素」という用語は、特にデンプンの分解を触媒することができる酵素を指す。α-アミラーゼは、デンプン中のα-D-(1→4)O-グリコシド結合を切断するヒドロラーゼである。一般に、α-アミラーゼ(EC3.2.1.1;α-D-(1→4)-グルカングルカノヒドロラーゼ)はデンプン分子内のα-D-(1→4)O-グリコシド結合をランダムに切断して、3つ以上の(1-4)-α-結合D-グルコース単位を含有する多糖類を生じさせるエンド作用性酵素であると定義されている。これとは対照的に、エキソ作用性デンプン分解酵素、例えばβ-アミラーゼ(EC3.2.1.2;α-D-(1→4)-グルカンマルトヒドロラーゼ)及びマルトジェニックα-アミラーゼ(EC3.2.1.133)のようないくつかの生成物特異的アミラーゼは、基質の非還元末端から多糖分子を切断する。β-アミラーゼ、α-グルコシダーゼ(EC3.2.1.20;α-D-グルコシドグルコヒドロラーゼ)、グルコアミラーゼ(EC3.2.1.3;α-D-(1→4)-グルカングルコヒドロラーゼ)並びにマルトテトラオシダーゼ(EC3.2.1.60)及びマルトヘキサオシダーゼ(EC3.2.1.98)のような生成物特異的アミラーゼは、所定の長さのマルトオリゴ糖又は所定のマルトオリゴ糖の濃縮シロップを生成することができる。
【0017】
「デンプン」という用語は、式(C6H10O5)x(式中、Xは任意の数であり得る)を有するアミロース及びアミロペクチンから構成される、植物の複合多糖炭水化物から構成される任意の物質を指す。この用語には、植物系物質、例えば穀物、穀草類、草類、塊茎及び根、より具体的には小麦、大麦、トウモロコシ、ライ麦、米、ソルガム、フスマ、キャッサバ、キビ、ミロ、ジャガイモ、サツマイモ及びタピオカから得られる物質が含まれる。「デンプン」という用語には、粒状デンプンが含まれる。「粒状デンプン」という用語は、生の、すなわち未調理デンプン、例えば糊化を受けていないデンプンを指す。
【0018】
ポリペプチドに関する「野生型」、「親」又は「参照」という用語は、1つ以上のアミノ酸の位置での人為的な置換、挿入又は欠失を含まない天然型ポリペプチドを指す。同様に、ポリヌクレオチドに関する「野生型」、「親」又は「参照」という用語は、人為的なヌクレオシド変化を含まない天然型ポリヌクレオチドを指す。しかしながら、野生型、親又は参照ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、天然型ポリヌクレオチドに限定されず、野生型、親又は参照ポリペプチドをコードする任意のポリヌクレオチドを包含することに留意されたい。
【0019】
野生型ポリペプチドへの言及は、ポリペプチドの成熟形態を含むと理解される。「成熟」ポリペプチド又はその変異体は、例えば、そのポリペプチドの発現中又は発現後のポリペプチドの未成熟形態から切断されて、シグナル配列が存在しないものである。
【0020】
ポリペプチドに関する「変異体」という用語は、アミノ酸の1つ以上の天然型又は人為的置換、挿入又は欠失を含むという点で所定の野生型、親又は参照ポリペプチドと異なるポリペプチドを指す。同様に、ポリヌクレオチドに関する「変異体」という用語は、ヌクレオチド配列が所定の野生型、親又は参照ポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチドを指す。野生型、親又は参照ポリペプチド又はポリヌクレオチドの同一性は、文脈から明らかになるであろう。
【0021】
「操作」という用語は、単一変異又はコンビナトリアル変異を作出するよりも複雑である、タンパク質改変に対する総体的アプローチを含む、任意数の様々な方法を組み合わせて使用して改変された分子を指す。操作タンパク質は、任意の特定の「親」分子から本質的に認識できない可能性があり、したがって「変異体」として特徴付けることが困難である。
【0022】
本発明のα-アミラーゼの場合、「活性」は、本明細書で記載するように測定することができるα-アミラーゼ活性を指す。
【0023】
「性能上の利益」という用語は、分子の望ましい特性における改良を指す。例示的な性能上の利益としては、デンプン基質の増加した加水分解、増加した穀物、穀草類又は他のデンプン基質の液化性能、増加した洗浄性能、増加した耐熱性、増加した洗剤安定性、増加した貯蔵安定性、増加した溶解性、変化したpHプロファイル、減少したカルシウム依存性、増加した比活性、改質された基質特異性、改質された基質結合、改質されたpH依存性活性、改質されたpH依存的安定性、増加した酸化安定性及び増加した発現が挙げられるが、これらに限定されない。場合により、性能上の利益は、比較的低い温度で実現される。場合により、性能上の利益は、比較的高い温度で実現される。
【0024】
「プロテアーゼ」及び「プロテイナーゼ」という用語は、タンパク質を形成するペプチド又はポリペプチド鎖内でアミノ酸同士を連結するペプチド結合の加水分解を指す、「タンパク質分解」又は「タンパク質分解的切断」を実施する能力を有する酵素タンパク質を指す。タンパク質消化酵素としてのプロテアーゼのこの活性は、「タンパク質分解活性」と称される。タンパク質分解活性を測定するための多くの周知の手順が存在する(例えば、Kalisz,”Microbial Proteinases,”In:Fiechter(ed.),Advances in Biochemical Engineering/Biotechnology,(1988)を参照されたい)。
【0025】
「コンビナトリアル変異体」は、2つ以上の変異、例えば2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個又はそれを超える置換、欠失及び/又は挿入を含む変異体である。
【0026】
「組換え」という用語は、対象細胞、核酸、タンパク質又はベクターに関して使用される場合、対象がその天然状態から改変されていることを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、天然(非組換え)型の細胞内では見出されない遺伝子を発現するか、又は天然に見出されるものとは異なるレベル若しくは異なる条件下で天然遺伝子を発現する。組換え核酸は、天然配列と1つ以上のヌクレオチドが異なり、且つ/又は異種配列、例えば発現ベクター内の異種プロモーターに作動可能に連結されている。組換えタンパク質は、天然配列と1つ以上のアミノ酸が異なり得、且つ/又は異種配列に融合している。アミラーゼをコードする核酸を含むベクターは、組換えベクターである。
【0027】
「回収された」、「単離された」及び「分離された」という用語は、化合物、タンパク質(ポリペプチド)、細胞、核酸、アミノ酸若しくは他の所定の物質又は構成成分であって、天然に見出されるようにそれが自然に付随している少なくとも1つの他の物質又は構成成分から除去されているものを指す。それらの「単離された」ポリペプチドには、異種宿主細胞内で発現した分泌ポリペプチドを含有する培養ブロスが含まれるが、それに限定されない。
【0028】
「精製された」という用語は、比較的純粋な状態、例えば少なくとも約90%純粋、少なくとも約95%純粋、少なくとも約98%純粋又は更に少なくとも約99%純粋である物質(例えば、単離ポリペプチド又はポリヌクレオチド)を指す。
【0029】
「濃縮された」という用語は、約50%純粋、少なくとも約60%純粋、少なくとも約70%純粋又は更に少なくとも約70%純粋である物質(例えば、単離ポリペプチド又はポリヌクレオチド)を指す。
【0030】
酵素に関連する「熱安定性の」及び「熱安定性」という用語は、高温への曝露後に活性を保持する酵素の能力を指す。酵素、例えばアミラーゼ酵素の熱安定性は、定義された条件下でその間に酵素活性の半分が失われる、分、時間又は日数で与えられるその半減期(t1/2)によって測定される。半減期は、高温への曝露(すなわち高温によるチャレンジ)後の残存α-アミラーゼ活性を測定することによって算出され得る。
【0031】
酵素に関連する「pH範囲」は、酵素が触媒活性を示すpH値の範囲を指す。
【0032】
酵素に関連する「pH安定性の」及び「pH安定性」という用語は、規定の時間(例えば、15分間、30分間、1時間)にわたって幅広いpH値にわたり活性を保持する酵素の能力に関する。
【0033】
「アミノ酸配列」という用語は、「ポリペプチド」、「タンパク質」及び「ペプチド」という用語と同義であり、互換的に使用される。そのようなアミノ酸配列が活性を示す場合、それらは「酵素」と称されることがある。アミノ酸残基に対して従来の1文字コード又は3文字コードが使用され、アミノ酸配列は、標準のアミノからカルボキシ末端方向(すなわちN→C)で表示される。
【0034】
「核酸」という用語は、ポリペプチドをコードすることができるDNA、RNA、ヘテロ二重鎖及び合成分子を包含する。核酸は、一本鎖又は二本鎖であり得、化学修飾を含有し得る。「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、互換的に使用される。遺伝暗号が縮重しているため、特定のアミノ酸をコードするために2つ以上のコドンを使用することができ、本発明の組成物及び方法は、特定のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を包含する。別途示さない限り、核酸配列は、5’から3’の方向で表される。
【0035】
「ハイブリダイゼーション」は、ブロットハイブリダイゼーション技術及びPCR技術中に起こるような、核酸の1本の鎖が相補鎖と二重鎖、すなわち塩基対を形成するプロセスを指す。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、以下の条件下のハイブリダイゼーションによって例示される:65℃及び0.1×SSC(ここで、1×SSC=0.15MのNaCl、0.015MのNaクエン酸塩、pH7.0)。ハイブリダイズした二重鎖核酸は、ハイブリダイズした核酸の2分の1が相補鎖との対を解消する融解温度(Tm)により特徴付けられる。二重鎖内のミスマッチヌクレオチドはTmを低下させる。α-アミラーゼをコードする核酸は、配列番号2のヌクレオチドと、それと一致する相補体との間で形成された二重鎖と比較して1℃~3℃以上低いTmを有し得る。
【0036】
「合成」分子は、生物によるのではなく、インビトロの化学合成又は酵素合成によって生成される。
【0037】
細胞に関連して使用される「形質転換された」、「安定に形質転換された」及び「トランスジェニック」という用語は、細胞が、そのゲノム内に組み込まれた又は複数世代にわたり維持されるエピソームとして保持されている、非天然の(例えば、異種の)核酸配列を含有することを意味する。
【0038】
細胞内に核酸配列を挿入することに関連する「導入された」という用語は、当技術分野で公知のように「遺伝子導入」、「形質転換」又は「形質導入」を意味する。
【0039】
「宿主株」又は「宿主細胞」は、その中に目的のポリペプチド(例えば、アミラーゼ)をコードするポリヌクレオチドを含む、発現ベクター、ファージ、ウイルス又は他のDNA構築物が導入されている生物である。例示的な宿主株は、目的のポリペプチドを発現することができ、且つ/又は糖類を発酵させることができる微生物細胞(例えば、細菌、糸状菌及び酵母)である。「宿主細胞」という用語には、細胞から作り出されたプロトプラストが含まれる。
【0040】
ポリヌクレオチド又はタンパク質に関連する「異種の」という用語は、宿主細胞内で自然には生じないポリヌクレオチド又はタンパク質を指す。
【0041】
ポリヌクレオチド又はタンパク質に関連する「内在性の」という用語は、宿主細胞内で自然に生じるポリヌクレオチド又はタンパク質を指す。
【0042】
「発現」という用語は、核酸配列に基づいてポリペプチドが生成されるプロセスを指す。このプロセスには、転写と翻訳の両方が含まれる。
【0043】
「選択的マーカー」又は「選択可能マーカー」は、遺伝子を保有する宿主細胞の選択を容易にするために宿主内で発現させることのできる遺伝子を指す。選択可能マーカーの例としては、抗菌剤(例えば、ハイグロマイシン、ブレオマイシン若しくはクロラムフェニコール)及び/又は代謝上の利点、例えば栄養上の利点を宿主細胞に付与する遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
「ベクター」は、核酸を1種以上の細胞タイプに導入するように設計されたポリヌクレオチド配列を指す。ベクターには、クローニングベクター、発現ベクター、シャトルベクター、プラスミド、ファージ粒子、カセットなどが含まれる。
【0045】
「発現ベクター」は、目的のポリペプチドをコードするDNA配列を含むDNA構築物を指し、そのコード配列は、好適な宿主内でDNAを発現させることができる好適な制御配列に作動可能に連結されている。そのような制御配列には、転写を生じさせるプロモーター、転写を制御する任意選択的なオペレーター配列、mRNA上の好適なリボソーム結合部位をコードする配列、エンハンサー並びに転写及び翻訳の終了を制御する配列が含まれ得る。
【0046】
「作動可能に連結された」という用語は、所定の構成成分が意図された方法で機能することを許容する関係(並列を含むが、これに限定されない)にあることを意味する。例えば、調節配列は、コード配列の発現が調節配列の制御下にあるようにコード配列に作動可能に連結されている。
【0047】
「シグナル配列」は、細胞外部へのタンパク質の分泌を容易にする、タンパク質のN末端部分に結合しているアミノ酸の配列である。細胞外タンパク質の成熟形態は、分泌プロセス中に切断除去されるシグナル配列を欠如している。
【0048】
「生物学的に活性」は、酵素活性などの所定の生物学的活性を有する配列を指す。
【0049】
「比活性」という用語は、所定条件下で単位時間当たりに酵素又は酵素調製物によって生成物に変換され得る基質のモル数を指す。比活性は、一般に単位(U)/タンパク質(mg)として表される。
【0050】
本明細書で使用する場合、「水の硬度」は、水中に存在する無機質(例えば、カルシウム及びマグネシウム)の尺度である。
【0051】
「アミラーゼを含む培養細胞物質」又は類似の語は、構成成分としてアミラーゼを含む細胞溶解物又は上清(培地を含む)を指す。細胞物質は、アミラーゼを産生させる目的のために培養で増殖された異種宿主由来であり得る。
【0052】
「配列同一性パーセント」は、特定の配列が、デフォルトパラメータを用いてCLUSTAL Wアルゴリズムを使用して整列させた場合、所定の参照配列内のアミノ酸残基と同一のアミノ酸残基を少なくとも一定のパーセンテージで有することを意味する。Thompson et al.(1994)Nucleic Acids Res.22:4673-4680を参照されたい。CLUSTAL Wアルゴリズムのデフォルトパラメータは、以下の通りである。
ギャップ開始ペナルティ:10.0
ギャップ伸長ペナルティ:0.05
タンパク質重量マトリックス:BLOSUMシリーズ
DNA重量マトリックス:IUB
ディレイ発散配列(%):40
ギャップ分離距離:8
DNA遷移重量:0.50
親水性残基のリスト:GPSNDQEKR
ネガティブマトリックスの使用:オフ
トグル残基特異的ペナルティ:オン
トグル親水性ペナルティ:オン
トグル末端ギャップ分離ペナルティ オフ。
【0053】
欠失は、参照配列と比較して非同一である残基として計数される。いずれかの末端で発生している欠失が含まれる。例えば、配列番号1~4の成熟操作α-アミラーゼのC末端の5つのアミノ酸欠失を有するタンパク質は、元のポリペプチドに対して約99%の配列同一性パーセント(612/617個の同一残基×100、最も近い整数に四捨五入)を有することになる。そのようなトランケート型ポリペプチドは、成熟ポリペプチドに対する「少なくとも99%のアミノ酸配列同一性」という語に包含される。
【0054】
「融合した」ポリペプチド配列は、2つの対象ポリペプチド配列間のペプチド結合によって接続されている、すなわち作動可能に連結されている。
【0055】
「糸状菌」という用語は、ユウミコチナ(Eumycotina)亜門の全ての糸状体、特にペジゾミコチナ(Pezizomycotina)種を指す。
【0056】
「重合度」(DP)という用語は、所与の糖中のアンヒドログルコピラノース単位の数(n)を指す。DP1の例は、単糖類のグルコース及びフルクトースである。DP2の例は、二糖類のマルトース及びスクロースである。「DE」又は「デキストロース当量」という用語は、シロップ中の総炭水化物の分率としての還元糖、すなわちD-グルコースのパーセンテージであると定義される。
【0057】
「乾燥固体含量」(ds)という用語は、乾燥重量パーセント基準でのスラリーの総固体を指す。「スラリー」という用語は、不溶性固体を含有する水性混合物を指す。
【0058】
「同時糖化発酵(SSF)」という語句は、エタノール産生微生物などの微生物有機体及びアミラーゼなどの少なくとも1種の酵素が同一プロセス工程中に存在する生化学物質の生成プロセスを指す。SSFには、同一反応容器内における同時の、(粒状、液化又は可溶化)デンプン基質の糖類(グルコースを含む)への加水分解と、アルコール又は他の生化学物質若しくは生体物質への糖類の発酵とが含まれる。
【0059】
「エタノール産生微生物」は、糖又はオリゴ糖をエタノールに変換する能力を備える微生物を指す。
【0060】
「発酵飲料」という用語は、微生物発酵など、例えば細菌及び/又は真菌発酵などの発酵プロセスを含む方法によって生成された任意の飲料を指す。「ビール」は、そのような発酵飲料の一例であり、「ビール」という用語は、デンプン含有植物性物質の発酵/醸造によって生成された任意の発酵麦汁を含むことを意味する。
【0061】
「麦芽」という用語は、任意の穀物類麦芽、例えば大麦麦芽又は小麦麦芽を指す。
【0062】
「補助物質」という用語は、大麦麦芽又は小麦麦芽などの麦芽ではない、任意のデンプン及び/又は糖を含有する植物性物質を指す。例は、当技術分野で周知であり、特別な発酵製品及び安価なビールに広く使用されている。
【0063】
「マッシュ」という用語は、後に麦汁と使用済み穀物とに分離される、水と混合された、任意のデンプン及び/又は糖を含有する植物性物質、例えば破砕大麦麦芽、破砕大麦及び/若しくは他の補助物質又はそれらの組み合わせから構成される、例えば製粉用穀物の水性スラリーを指す。
【0064】
「麦汁」という用語は、マッシング中に製粉用穀物を抽出した後に流出する未発酵酒を指す。
【0065】
「約」という用語は、参照値の±15%を指す。
【0066】
3.操作α-アミラーゼ
本発明の組成物及び方法は、工業用途において単一変異又は変異の組み合わせのいずれかを含む従来のα-アミラーゼ変異体よりも性能が優れている、操作α-アミラーゼ酵素に基づいている。操作分子は、タンパク質科学者の知識及び経験と、高度なコンピュータ分析の使用とを組み合わせて作り出された。そのため、操作α-アミラーゼは、親分子の変異体として特徴付けることが難しく、新たな非天然型分子としてよりよく特徴付けられる。
【0067】
本明細書では、共通して85%超のアミノ酸配列同一性を有する4種の操作α-アミラーゼについて説明し、試験する。これらの分子は、糖質関連酵素データベース(CAZy)ファミリー13アミラーゼの最適化を表しており、同様に、これまで「Termamyl様」という記述用語で称されてきた任意のアミラーゼの最適化も表している。このようなα-アミラーゼの例は、バチルス属種(Bacillus spp.)、例えばB.リケニフォルミス(B.licheniformis)(すなわちBLA及びLAT)、B.ステアロサーモフィラス(B.stearothermophilus)(すなわちBSG)及びB.アミロリクイファシエンス(B.amyloliquefaciens)(すなわちP00692、BACAM及びBAA)、バチルス属種(Bacillus sp.)SG-1、バチルス属種(Bacillus sp.)707、バチルス属種(Bacillus sp.)DSM12368(すなわちA7-7)、バチルス属種(Bacillus sp.)DSM 12649(すなわちAA560)、バチルス属種(Bacillus sp.)SP722、B.メガテリウム(B.megaterium)(DSM90 14)、サイトファーガ属種(Cytophaga sp.)(例えば、CspAmy2アミラーゼ)並びにKSM AP1378に由来するものである。
【0068】
操作α-アミラーゼ1(VES33575M)の成熟形態のアミノ酸配列を以下に配列番号1として示す。
【化1】
【0069】
操作α-アミラーゼ2(VES33367M)の成熟形態のアミノ酸配列を以下に配列番号2として示す。
【化2】
【0070】
操作α-アミラーゼ3(VES33438M)の成熟形態のアミノ酸配列を以下に配列番号3として示す。
【化3】
【0071】
操作α-アミラーゼ4(VES35091M)の成熟形態のアミノ酸配列を以下に配列番号4として示す。
【化4】
【0072】
図1のアミノ酸配列アラインメントに示されているように、4種の操作変異体の全ては、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)由来のα-アミラーゼ内の位置R179、G180、I181及びG182に対応するカルシウム結合ループに隣接するRGXGモチーフに欠失を有する(配列番号16、太字で示す)。この欠失は、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のα-アミラーゼ(配列番号17)に天然に存在する。操作α-アミラーゼにおいて、この欠失は、(配列番号1~4のいずれかを参照して)残基F176とK179との間にある。モチーフ内のRG又はXGのいずれが欠失しても性能に相違がなく、得られた分子は、多くの場合、後続のアミノ酸配列解析に基づいて区別することが困難であることが周知であることに留意されたい。
【0073】
いくつかの実施形態では、操作α-アミラーゼは、非天然型であり、配列番号1~4のいずれかと少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは更に少なくとも99%又はそれを超えるアミノ酸配列相同性/同一性を有する。
【0074】
いくつかの実施形態では、操作α-アミラーゼは、非天然型であり、当技術分野で十分に認識されている任意数の保存的アミノ酸置換を有する。本発明の操作α-アミラーゼは、シグナル配列を含む「前駆体」、「未成熟」若しくは「完全長」又はシグナル配列が欠如した「成熟」であり得る。ポリペプチドの成熟形態が一般に最も有用である。本発明の操作α-アミラーゼはまた、得られたポリペプチドが活性を保持する限り、N末端若しくはC末端を除去するためにトランケートされ得るか、又は追加のN末端若しくはC末端残基を含めるために伸長され得る。
【0075】
多くの細菌(及び他の)α-アミラーゼが、同じ折り畳みを共有し、多くの場合、アミノ酸配列同一性を相当に共有し、ときに同じ変異からの利益を受けることが公知である。したがって、他のファミリー13α-アミラーゼで説明されている変異は、本発明の操作α-アミラーゼに転用可能であると予想される。
【0076】
4.操作α-アミラーゼをコードするヌクレオチド
別の態様では、操作α-アミラーゼをコードする核酸が提供される。核酸は、特定の操作α-アミラーゼ又は特定の操作α-アミラーゼと所定の程度のアミノ酸配列同一性を有するα-アミラーゼをコードし得る。
【0077】
一例では、核酸は、配列番号5~8のいずれか(シグナル配列をコードする核酸の部分を除く)と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は更に少なくとも99%の相同性/同一性を有するアミラーゼをコードする。遺伝暗号の縮重に起因して、複数の核酸が同じポリペプチドをコードし得ることが理解されるであろう。
【0078】
別の例では、核酸は、ストリンジェントな又は極めてストリンジェントな条件下において、配列番号1~4のいずれかと少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は更に少なくとも99%の相同性/同一性を有する操作α-アミラーゼをコードする(又はそれをコードする核酸に相補的な)核酸とハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、核酸は、ストリンジェントな又は極めてストリンジェントな条件下で配列番号5~8のいずれかの核酸又はこれらの核酸に相補的な核酸とハイブリダイズする。
【0079】
核酸は、シグナル配列を含む「完全長」(「fl」若しくは「FL」)アミラーゼ、シグナル配列を欠如しているアミラーゼの成熟形態のみ又は成熟形態のN末端若しくはC末端を欠如しているアミラーゼのトランケート形態をコードし得る。
【0080】
α-アミラーゼをコードする核酸は、宿主細胞内でα-アミラーゼを発現するのに好適なベクター内の種々のプロモーター及び調節因子に作動可能に連結され得る。例示的なプロモーターは、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)アミラーゼ(LAT)、枯草菌(B.subtilis)(AmyE又はAprE)及びストレプトマイセス(Streptomyces)CelA由来のものである。そのような核酸は、例えばキメラポリペプチドをコードするために、他のコード配列と連結され得る。
【0081】
5.操作α-アミラーゼの生成
本発明の操作α-アミラーゼは、宿主細胞内において、例えば当技術分野で周知の方法を使用して分泌又は細胞内発現によって生成され得る。試料中のアミラーゼ活性をモニタリングするために、例えば培養培地中のグルコースなどの還元糖を直接測定するアッセイによるなど、好適なアッセイが使用され得る。例えば、グルコース濃度は、グルコース試薬キットNo.15-UV(Sigma Chemical Co.)又はTechnicon Autoanalyzerなどの機器を使用して決定され得る。α-アミラーゼ活性は、下記のPAHBAH又はABTSアッセイなどの任意の公知の方法によっても測定され得る。
【0082】
発酵、分離及び濃縮技術は、当技術分野で周知であり、濃縮した変異体α-アミラーゼポリペプチド含有溶液を調製するために従来法が使用され得る。発酵後に発酵ブロスが得られ、アミラーゼ溶液を得るために、微生物細胞と残存発酵原料を含む種々の懸濁固体とが従来の分離技術によって除去され得る。濾過、遠心分離、精密濾過、回転真空ドラム濾過、限外濾過、遠心分離後に行われる限外濾過、抽出又はクロマトグラフィーなどが一般に使用される。
【0083】
6.操作α-アミラーゼの組成物及び使用
操作α-アミラーゼは、様々な工業用途のために有用である。例えば、操作α-アミラーゼは、デンプン変換プロセスにおいて、特に液化を受けているデンプンの糖化プロセスにおいて有用である。所望の最終生成物は、デンプン基質の酵素的変換によって生成され得る任意の生成物であり得る。例えば、所望の生成物は、HFCSの調製などの他のプロセスにおいて使用され得るか、又はアスコルビン酸中間体(例えば、グルコン酸塩;2-ケト-L-グロン酸;5-ケト-グルコン酸塩;及び2,5-ジケトグルコン酸塩);1,3-プロパンジオール;芳香族アミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン及びトリプトファン);有機酸(例えば、乳酸塩、ピルビン酸塩、コハク酸塩、イソクエン酸塩及びオキサロ酢酸塩);アミノ酸(例えば、セリン及びグリシン);抗生物質;抗菌剤;酵素;ビタミン剤;及びホルモン剤などの多数の他の有用な製品に変換され得る、グルコース及びマルトースが豊富なシロップであり得る。
【0084】
デンプン変換プロセスは、燃料用アルコール又は飲料用アルコール(すなわち飲用アルコール)を生成するために設計された発酵プロセスの前又はそれと同時であり得る。当業者であれば、これらの最終生成物の生成において使用され得る種々の発酵条件を認識している。操作α-アミラーゼは、食品調製物の組成物及び方法においても有用である。以下では、操作α-アミラーゼのこれらの種々の使用についてより詳細に説明する。
【0085】
6.1.デンプン基質の調製
当業者であれば、本明細書に開示されるプロセスで使用するためのデンプン基質を調製するために使用することができる利用可能な方法を十分に認識している。例えば、有用なデンプン基質は、塊茎、根、茎、豆果、穀草類又は全粒穀物から得ることができる。より具体的には、粒状デンプンは、トウモロコシ、トウモロコシ穂軸、小麦、大麦、ライ麦、ライ小麦、ミロ、サゴ、キビ、キャッサバ、タピオカ、ソルガム、米、エンドウマメ、マメ、バナナ又はジャガイモから得ることができる。
【0086】
穀物由来のデンプンは、粉砕されているか又は全粒であり得、穀粒、フスマ及び/又は穂軸などのトウモロコシ固体が含まれる。デンプンは、高度に精製された生デンプン又はデンプン精製プロセスからの供給原料でもあり得る。また、種々のデンプンが市販されている。
【0087】
デンプン基質は、非デンプン分画、例えば胚残渣及び繊維を含有する製粉全粒穀物からの粗デンプンであり得る。製粉は、湿式製粉又は乾式製粉又は粉砕のいずれかを含み得る。湿式製粉では、全粒穀物は、穀物をその構成成分、例えばデンプン、タンパク質、胚、油、穀粒繊維に分離するために水又は希酸中に浸漬される。湿式製粉は、胚とミール(すなわちデンプン顆粒及びタンパク質)とを効率的に分離し、湿式製粉は、シロップを生成するために特に好適である。
【0088】
乾式製粉又は粉砕では、全穀粒は、微粉末に粉砕され、穀物は、多くの場合、その構成成分に分画されずに処理される。場合により、穀粒由来の油及び/又は繊維が回収される。したがって、乾式粉砕穀物は、デンプンに加えて相当量の非デンプン炭水化物化合物を含むことになる。デンプン基質の乾式粉砕は、エタノール及び他の生化学物質の生成のために使用され得る。
【0089】
6.2.デンプンの糊化及び液化
液化とは、粘性が低く鎖長の短いデキストリンにデンプンが変換されるプロセスを指す。一般に、このプロセスは、α-アミラーゼの添加と同時の又はそれが後に続くデンプンの糊化を含むが、追加の液化誘導酵素を任意選択的に添加することができる。デンプン基質は、一般に水でスラリー化される。デンプンスラリーは、約10~55%、約20~45%、約30~45%、約30~40%又は約30~35%の重量パーセントの乾燥固体としてデンプンを含有し得る。この用途に典型的に使用されるα-アミラーゼは、熱的に安定である。α-アミラーゼは、通常、例えばデンプンの乾燥物質1kg当たり約1500単位で供給される。α-アミラーゼの安定性及び活性を最適化するために、スラリーのpHは、典型的には、約pH4.5~6.5に調整され、約1mMのカルシウム(約40ppmの遊離カルシウムイオン)も、使用されるアミラーゼの特性に応じて添加され得る。液化後にスラリー内に残留している細菌α-アミラーゼは、後続の反応工程においてpHを低下させること又は酵素がカルシウム依存性である場合、スラリーからカルシウムを除去することを含む多数の方法によって非活性化され得る。
【0090】
デンプンと操作α-アミラーゼとのスラリーは、105℃に蒸気加熱されたジェットクッカーを通して連続的にポンプ輸送され得る。これらの条件下で糊化が急速に起こり、酵素活性が大きいせん断力と組み合わさってデンプン基質の加水分解が始まる。ジェットクッカー内の滞留時間は短い。部分的に糊化されたデンプンを105~110℃に維持された一連の保持管内に通過させ、5~8分間保持すると糊化プロセスを完了することができる(「一次液化」)。必要とされるDEへの加水分解は、保持タンク内で、約1~2時間にわたる85~95℃以上の高温で完了する(「二次液化」)。その後、スラリーは、室温まで冷却される。この冷却工程は、30分間~180分間、例えば90分間~120分間であり得る。液化デンプンは、典型的には、約10~50%、約10~45%、約15~40%、約20~40%、約25~40%又は約25~35%の乾燥固体含量(w/w)を有するスラリーの形態である。
【0091】
操作α-アミラーゼを用いた液化は、有利には、低pHで行うことができ、pHを約pH4.5~6.5に調整する必要をなくすことができる。操作α-アミラーゼは、2~7のpH範囲、例えばpH3.0~7.5、pH4.0~6.0又はpH4.5~5.8での液化のために使用され得る。変異体アミラーゼは、約85℃~95℃の温度範囲、例えば85℃、90℃又は95℃で液化活性を維持することができる。例えば、液化は、例えば、pH5.8及び85℃又はpH4.5及び95℃において、25%DSトウモロコシデンプン溶液中の800μgのα-アミラーゼを用いて10分間行うことができる。
【0092】
6.3.糖化
液化デンプンは、グルコアミラーゼを任意選択的に別の酵素の存在下で使用して、低DP(例えば、DP1+DP2)糖が豊富なシロップに糖化され得る。有利には、提供される変異体アミラーゼを使用して入手可能なシロップは、糖化デンプン中の総オリゴ糖の30%を超える、例えば45%~65%又は55%~65%の重量パーセントのDP2を含有し得る。糖化デンプン中の(DP1+DP2)の重量パーセントは、約70%、例えば75%~85%又は80%~85%を超え得る。
【0093】
6.4.異性化
アミラーゼを用いた処理により生成される可溶性デンプン加水分解物は、高フルクトースデンプン系シロップ(HFSS)、例えば高フルクトースコーンシロップ(HFCS)に変換され得る。この変換は、グルコースイソメラーゼ、特に固体担体上に固定されたグルコースイソメラーゼを使用して達成され得る。pHは、(イソメラーゼに応じて)約6.0~約8.0、例えばpH7.5に上昇され、Ca2+は、イオン交換によって除去される。好適なイソメラーゼとしては、SWEETZYME(登録商標)、IT(Novozymes A/S);G-ZYME(登録商標)IMGI及びG-ZYME(登録商標)G993、KETOMAX(登録商標)、G-ZYME(登録商標)G993、G-ZYME(登録商標)G993液並びにGENSWEET(登録商標)IGIが挙げられる。異性化後、混合物は、典型的には約40~45%のフルクトース、例えば42%のフルクトースを含有する。
【0094】
6.5.発酵
可溶性デンプン加水分解物、特に高グルコースシロップは、デンプン加水分解物を発酵生物(通常、エタノール産生生物)と、典型的には約32℃の、例えばアルコール産生酵母については30℃~35℃の温度で接触させることによって発酵させることができる。発酵の温度及びpHは、発酵生物に依存することになる。EOF生成物としては、代謝産物、例えばクエン酸、乳酸、コハク酸、グルタミン酸一ナトリウム、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸カリウム、イタコン酸及び他のカルボン酸、グルコノデルタ-ラクトン、エリソルビン酸ナトリウム、リシン及び他のアミノ酸、オメガ3脂肪酸、ブタノール、イソプレン、1,3-プロパンジオール並びに他の生体物質が挙げられる。
【0095】
エタノール産生微生物としては、酵母、例えばサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)及び細菌、例えばアルコールデヒドロゲナーゼ及びピルビン酸デカルボキシラーゼを発現するザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)が挙げられる。エタノール産生微生物は、キシロースをキシルロースに変換するキシロースレダクターゼ及びキシリトールデヒドロゲナーゼを発現することができる。例えば、高温に耐え得るエタノール産生微生物の改良株は、当技術分野で公知であり、使用され得る。発酵によってクエン酸及び乳酸などの他の代謝産物を生成する微生物も当技術分野で公知である。
【0096】
糖化プロセス及び発酵プロセスは、SSFプロセスとして実行され得る。発酵は、例えば、後続のエタノールの濃縮、精製及び回収を含み得る。発酵中、ブロス(又はビール)のエタノール含量は、約8~18v/v%、例えば14~15v/v%に達し得る。ブロスは、濃縮された、例えば96%純粋なエタノール溶液を生成するために蒸留され得る。発酵によって生じたCOを、COスクラバーを用いて収集し、圧縮し、例えば、飲料の炭酸化又はドライアイスの生成などの他の使用のために市場に出すことができる。発酵プロセスからの固形廃棄物は、高タンパク質製品、例えば家畜飼料として使用され得る。
【0097】
このプロセスの変形形態は、基質が発酵の進行につれて少しずつ添加される「流加発酵」系である。流加系は、異化代謝産物抑制が細胞の代謝を抑制し得る場合及び培地中に限定量の基質を有することが望ましい場合に有用である。流加系内での実際の基質濃度は、pH、溶存酸素及びCOなどの廃ガスの分圧などの測定可能因子の変化によって推定される。バッチ発酵及び流加発酵は、当技術分野で一般的であり、周知である。
【0098】
連続発酵は、定義された発酵培地をバイオリアクタに連続的に添加し、処理のために等量の馴化培地を同時に除去する開放系である。連続発酵は、一般に、培養物を一定の高密度に維持し、細胞は、主に対数増殖期にある。連続発酵により、細胞増殖及び/又は生成物濃度の調節が可能となる。例えば、炭素源又は窒素源などの制限栄養素は一定比率で維持され、他の全てのパラメータは、調節することができる。増殖は定常状態で維持されるため、培地を取り出すことによる細胞消失は、発酵中の細胞増殖速度に対して平衡が保たれなければならない。連続発酵プロセスを最適化して生成物形成速度を最大化する方法は、工業微生物学の分野で周知である。
【0099】
6.6.操作α-アミラーゼを含む組成物
操作α-アミラーゼは、グルコアミラーゼ(EC3.2.1.3)、例えばトリコデルマ属(Trichoderma)グルコアミラーゼ又はその変異体と組み合わせることができる。代わりに、グルコアミラーゼは、植物(藻類を含む)、真菌又は細菌に由来する別のグルコアミラーゼであり得る。
【0100】
操作α-アミラーゼとともに使用され得る他の好適な酵素としては、フィターゼ、プロテアーゼ、プルラナーゼ、β-アミラーゼ、イソアミラーゼ、異なるα-アミラーゼ、α-グルコシダーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、他のヘミセルラーゼ、β-グルコシダーゼ、トランスフェラーゼ、ペクチナーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、エステラーゼ、酸化還元酵素又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0101】
本発明のアミラーゼを含む組成物は、緩衝液、塩、保存料、水、共溶媒、界面活性剤などと一緒に、本明細書に列記した追加の酵素のいずれか1つ以上を更に含み得る水性又は非水性製剤、顆粒、粉末、ゲル、スラリー、ペーストなどであり得る。そのような組成物は、スラリー、水浴、洗濯機、食品又は飲料製品などに既に存在する内因性酵素又は他の成分(例えば、内因性植物(藻類を含む)酵素、先行する処理工程からの残存酵素など)と組み合わせて機能し得る。
【0102】
7.製パン及び食品調製のための組成物及び方法
本発明の組成物及び方法は、アミラーゼを含む食品、動物飼料及び/又は食品/飼料添加物を含むが、それらに限定されない食品組成物並びに操作α-アミラーゼと1つ以上の食品成分とを混合することを含む、そのような食品組成物を調製する方法又はそれらの使用にも関する。
【0103】
更に、本発明の組成物及び方法は、食品組成物の調製における操作α-アミラーゼの使用であって、食品組成物が本発明のポリペプチドの添加に続いて焼成される使用に関する。
【0104】
操作α-アミラーゼは、ベークド製品の老化、すなわちクラムの固化を防止する又は遅延させるために、単独で又は他のアミラーゼと組み合わせて更に添加され得る。抗老化性アミラーゼの量は、典型的には、粉1kg当たり酵素タンパク質0.01~10mg、例えば0.5mg/kg(ds)の範囲内である。1種のアミラーゼと組み合わせて使用され得る追加の抗老化性アミラーゼには、エンドアミラーゼ、例えばバチルス属(Bacillus)由来の細菌エンドアミラーゼが含まれる。
【0105】
アミラーゼを含む製パン組成物は、ホスホリパーゼ又はホスホリパーゼ活性を備える酵素を更に含み得る。ホスホリパーゼ活性を備える酵素は、リパーゼ単位(LU)で測定することができる活性を有する。ホスホリパーゼは、リン脂質から脂肪酸を除去してリゾリン脂質を形成するためのA1又はA2活性を有し得る。ホスホリパーゼは、リパーゼ活性、すなわちトリグリセリド基質への活性を有するか又は有しない場合がある。ホスホリパーゼは、典型的には、30~90℃、例えば30~70℃の範囲に至適温度を有する。添加されるホスホリパーゼは、動物起源、例えば膵臓(例えば、ウシ若しくはブタの膵臓)、ヘビ毒又はハチ毒由来であり得る。代わりに、ホスホリパーゼは、例えば、微生物起源、例えば糸状菌、酵母又は細菌由来であり得る。
【0106】
ホスホリパーゼは、製パン後の初期の期間中、特に最初の24時間中のパンの柔らかさを改良する量で添加される。ホスホリパーゼの量は、典型的には、粉1kg当たり酵素タンパク質0.01~10mg、例えば0.1~5mg/kgの範囲内である。すなわち、ホスホリパーゼ活性は、一般に20~1,000LU/粉(kg)の範囲内であり、ここで、リパーゼ単位は、乳化剤としてのアラビアガム及び基質としてのトリブチリンを用いて、30℃、pH7.0で1分間当たり1μmolの酪酸を遊離させるために必要とされる酵素の量であると定義されている。
【0107】
ドウの組成物は、一般に小麦ミール若しくは小麦粉及び/又は他のタイプのミール、粉若しくはデンプン、例えばトウモロコシ粉、トウモロコシデンプン、ライ麦ミール、ライ麦粉、オート麦粉、オートミール、大豆粉、ソルガムミール、ソルガム粉、ジャガイモミール、ジャガイモ粉若しくはジャガイモデンプンを含む。ドウは、新鮮なもの、冷凍されたもの又は半焼成されたものであり得る。ドウは、発酵を起こさせたドウ又は発酵を受けるドウであり得る。ドウは、種々の方法において、例えば化学膨張剤、例えば炭酸水素ナトリウムを添加すること又はパン種、すなわち発酵中のドウを添加することによって発酵を起こさせることができる。ドウは、好適な酵母培養物、例えばサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)(パン酵母)の培養物、例えば市販のS.セレビジエ(S.cerevisiae)の株を添加することによって発酵を起こさせることもできる。
【0108】
ドウは、他の従来のドウ成分、例えばタンパク質、例えば粉乳、グルテン及び大豆;卵(例えば、全卵、卵黄又は卵白);酸化剤、例えばアスコルビン酸、臭素酸カリウム、ヨウ素酸カリウム、アゾジカルボンアミド(ADA)又は過硫酸アンモニウム;アミノ酸、例えばL-システイン;砂糖;又は塩、例えば塩化ナトリウム、酢酸カルシウム、硫酸ナトリウム又は硫酸カルシウムも含み得る。ドウは、脂肪、例えばトリグリセリド、例えば粒状脂肪又はショートニングを更に含み得る。ドウは、乳化剤、例えばモノグリセリド若しくはジグリセリド、モノグリセリド若しくはジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、脂肪酸の糖エステル、脂肪酸のポリグリセロールエステル、モノグリセリドの乳酸エステル、モノグリセリドの酢酸エステル、ポリオキシエチレンステアレート又はリゾレシチンを更に含み得る。特に、ドウは、乳化剤を添加せずに製造することができる。
【0109】
ドウ製品は、蒸しパン及び餅などの揚げた、たっぷりの油で揚げた、ローストした、焼いた、蒸した及び茹でたドウを含む、任意の加工ドウ製品であり得る。一実施形態では、食品は、ベーカリー製品である。典型的なベーカリー(ベークド)製品としては、パン、例えば、ローフパン、ロールパン、バンズ、ベーグル、ピザベースなど、ペストリー、プレッツェル、トルティーヤ、ケーキ、クッキー、ビスケット、クラッカーなどが挙げられる。
【0110】
任意選択的に、追加の酵素は、抗老化性α-アミラーゼ及びホスホリパーゼと一緒に使用され得る。追加の酵素は、第2のアミラーゼ、例えばアミログルコシダーゼ、β-アミラーゼ、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼであり得るか、又は追加の酵素は、ペプチダーゼ、特にエキソペプチダーゼ、トランスグルタミナーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、プロテアーゼ、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ、例えば国際公開第95/00636号パンフレットに開示されているタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ、例えば、グルコシルトランスフェラーゼ、分岐酵素(1,4-α-グルカン分岐酵素)、4-α-グルカノトランスフェラーゼ(デキストリングリコシルトランスフェラーゼ)若しくはオキシドレダクターゼ、例えば、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ、グルコースオキシダーゼ、アマドリアーゼ、メタロプロテイナーゼ、ピラノースオキシダーゼ、リポオキシゲナーゼ、L-アミノ酸オキシダーゼ若しくは炭水化物オキシダーゼであり得る。追加の酵素は、哺乳動物及び植物を含む任意の起源並びに特に微生物(細菌、酵母又は真菌)起源の酵素であり得、当技術分野で従来使用されている技術によって得ることができる。
【0111】
操作α-アミラーゼは、抗老化性アミラーゼ、ホスホリパーゼ及び/又はリン脂質と一緒に粉を含むプレミックスで使用され得る。プレミックスは、他のドウ改良添加物及び/又はパン改良添加物、例えば、上述の酵素を含む添加物のいずれかを含有し得る。アミラーゼは、製パン用添加物として使用するための抗老化性アミラーゼとホスホリパーゼとを含む酵素調製物の構成成分であり得る。
【0112】
8.布地の糊抜き組成物及びそれらの使用
企図されるのは、操作α-アミラーゼを使用して織物を処理する(例えば、布地を糊抜きする)ための組成物及び方法でもある。織物処理方法は、当技術分野で周知である。例えば、織物の感触及び外観は、織物を溶液中のアミラーゼと接触させることを含む方法によって改良され得る。織物は、加圧下で溶液を用いて処理され得る。
【0113】
操作α-アミラーゼは、布地の機織り中若しくは機織り後又は糊抜き段階中或いは1つ以上の追加の織物加工工程中に適用され得る。操作α-アミラーゼは、これらの糊付けデンプン又はデンプン誘導体を除去するために機織り中又は機織り後に適用され得る。機織り後、織物の更なる加工前にアミラーゼを使用して糊付けコーティングを除去し、均質で耐洗濯性の結果を確保することができる。
【0114】
操作α-アミラーゼを洗剤添加物として単独で又は他の糊抜き化学試薬及び/若しくは糊抜き酵素とともに使用して、綿含有織物を含む織物を例えば水性組成物中で糊抜きすることができる。操作α-アミラーゼは、インジゴ染色デニム織物及び衣服上にストーンウォッシュ外観を生み出すための組成物及び方法に使用することもできる。
【0115】
9.洗浄組成物
本発明の組成物及び方法の一態様は、構成成分として操作α-アミラーゼを含む洗浄組成物である。操作α-アミラーゼポリペプチドは、例えば、手洗い、洗濯洗浄、食器洗浄及び他の硬質表面洗浄のための洗剤組成物中の構成成分として使用され得る。そのような組成物には、単位用量型の洗濯用洗剤組成物を含む強力液体(HDL)、強力乾燥(HDD)及び手洗い(手作業)洗濯用洗剤組成物並びに単位用量型の食器洗浄組成物を含む自動食器洗浄(ADW)及び手洗い(手作業)食器洗浄組成物が含まれる。
【0116】
好ましくは、操作α-アミラーゼは、洗剤中のα-アミラーゼに対して従来使用される濃度又はそれに近い濃度で洗剤に組み込まれる。例えば、操作α-アミラーゼポリペプチドは、洗液/食器洗浄洗液1L当たり0.00001~1mgのアミラーゼ(純粋酵素タンパク質として算出)に相当する量で添加され得る。例示的な製剤は本質的に無数にあり、本発明の操作α-アミラーゼを用いた公知の又はわずかに改変された洗剤製剤の単なる説明(又は新規性の主張)は、真の比較データを伴う発明であると決して推定されるべきではない。
【0117】
10.醸造組成物
本発明の操作α-アミラーゼは、醸造のプロセスにおいて、すなわち発酵麦芽飲料を製造する際に使用される醸造組成物の構成成分であり得る。非発酵性炭水化物は、最終ビール中の溶存固体の大半を形成する。この残渣は、麦芽アミラーゼがデンプンのα-1,6-結合を加水分解することができないために残留する。非発酵性炭水化物は、ビール12オンス当たり約50カロリーに寄与する。操作α-アミラーゼは、グルコアミラーゼ並びに任意選択的にプルラナーゼ及び/又はイソアミラーゼと組み合わせて、デンプンをデキストリン及び発酵性糖に変換し、最終ビール中の残存非発酵性炭水化物を減少させることを支援する。
【0118】
本明細書で引用した全ての参考文献は、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。本組成物及び方法並びにそれらの利点について更に説明するために、以下の具体的な実施例を、それらが限定的ではなく、例示的であるという理解の下に提供する。
【実施例
【0119】
実施例1
操作α-アミラーゼ変異体株の構築
4種の操作α-アミラーゼを合成によりアセンブリした。操作α-アミラーゼの識別情報並びに関連するアミノ酸配列及び核酸配列情報を表1に要約する。操作α-アミラーゼ番号及び内部参照番号は、区別なく使用される。
【表1】
【0120】
これらのα-アミラーゼを発現させるために、操作α-アミラーゼ1、2、3又は4を過剰発現するDNAカセットをそれぞれB.リケニフォルミス(B.licheniformis)株BF62のcat遺伝子座に組み込んだ(国際公開第2018156705A1号パンフレット)。発現カセットは、cat遺伝子に対して下流の相同アーム(配列番号15)を含有し、この相同アームは、カナマイシン耐性タンパク質遺伝子発現カセットをコードするDNA(配列番号9)に作動可能に連結され、合成p3プロモーター(配列番号10)に作動可能に連結されており、枯草菌(B.subtilis)aprE 5’UTRをコードするDNA(配列番号11)に作動可能に連結されており、改変B.リケニフォルミス(B.licheniformis)amyLシグナル配列をコードするDNA(配列番号12)に作動可能に連結されており、α-アミラーゼ1、2、3又は4をコードするDNA(配列番号5、6、7又は8)に作動可能に連結されており、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)amyL転写ターミネーター(配列番号13)に作動可能に連結されており、cat遺伝子に対して上流の相同アームをコードするDNA(配列番号14)に作動可能に連結されていた。操作α-アミラーゼ1、2、3又は4を過剰発現するDNAカセットを、化学的DNA合成及び/又はオーバーラップ伸長PCR技術を利用して構築した。
【0121】
4種のα-アミラーゼ過剰発現DNAカセットをそれぞれ、国際公開第2018156705A1号パンフレットに記載されている方法を使用してBF62株を形質転換するために使用した。簡潔に述べると、BF62コンピテント細胞を、100ppmのスペクチノマイシンを含有するルリアブロス中でBF62細胞を振盪しながら37℃でインキュベートすることにより作製した。翌日、100ppmのスペクチノマイシンを含有する新鮮ルリアブロスを再度使用して、OD600が0.7になるまで培養物を希釈した。培養物を250RPMで振盪しながら37℃で1時間増殖させ、D-キシロースを添加してcomK発現を誘導した。培養物を、250RPMで振盪しながら37℃で更に4時間増殖させた。細胞を1700gで遠心分離して採取し、α-アミラーゼ1、2、3及び4のDNAカセットを利用した形質転換のためのコンピテント細胞として使用した。BF62コンピテント細胞をDNAカセットのアリコートと混合した。細胞/DNA混合物を1200rpmで振盪しながら37℃で1.5時間インキュベートし、続いて3mg/Lのネオマイシン三硫酸塩水和物(Sigma-Aldrich、N1876-25G)を含有するハートインフュージョン(HI)寒天プレートにプレーティングした。プレートを37℃で48時間インキュベートした。4種の操作α-アミラーゼの各々を個別に発現する形質転換コロニーをPCR増幅によってスクリーニングし、予想された組み込みを確認した。
【0122】
α-アミラーゼの各々を発現するコロニーを、5mg/Lのネオマイシン三硫酸塩水和物を補充したルリアブロス中で一晩培養し、20v/v%グリセロール中において-80℃で保存した。
【0123】
酵素性能をアッセイするのに十分な量の操作α-アミラーゼを得るために、標準的な小規模又は実験室規模の発酵条件を使用して細胞を培養した(例えば、国際公開第2018/156705号パンフレット及び国際公開第2019/055261号パンフレットを参照されたい)。
【0124】
関連するアミノ酸及び核酸配列を以下に示す。操作α-アミラーゼ1(VES33575M)の成熟形態のアミノ酸配列を配列番号1として示す。
【化5】
【0125】
操作α-アミラーゼ2(VES33367M)の成熟形態のアミノ酸配列を以下に配列番号2として示す。
【化6】
【0126】
操作α-アミラーゼ3(VES33438M)の成熟形態のアミノ酸配列を以下に配列番号3として示す。
【化7】
【0127】
操作α-アミラーゼ4(VES35091M)の成熟形態のアミノ酸配列を以下に配列番号4として示す。
【化8】
【0128】
操作α-アミラーゼ1の成熟形態をコードする核酸配列を以下に配列番号5として示す。
【化9】
【0129】
操作α-アミラーゼ2の成熟形態をコードする核酸配列を以下に配列番号6として示す。
【化10】
【0130】
操作α-アミラーゼ3の成熟形態をコードする核酸配列を以下に配列番号7として示す。
【化11】
【0131】
操作α-アミラーゼ4の成熟形態をコードする核酸配列を以下に配列番号8として示す。
【化12】
【0132】
カナマイシン耐性タンパク質遺伝子発現カセットの核酸配列;下線はコード配列(配列番号9)
【化13】
【0133】
合成p3プロモーターの核酸配列を以下に配列番号10として示す。
GTCGCTGATAAACAGCTGACATCAATATCCTATTTTTTCAAAAAATATTTTAAAAAGTTGTTGACTTAAAAGAAGCTAAATGTTATAGTAATAAA
【0134】
枯草菌(B.subtilis)aprE 5’-UTR領域の核酸配列を以下に配列番号11として示す。
ACAGAATAGTCTTTTAAGTAAGTCTACTCTGAATTTTTTTAAAAGGAGAGGGTAAAGA
【0135】
改変B.リケニフォルミス(B.licheniformis)amyLシグナルペプチドコード配列をコードする核酸配列を以下に配列番号12として示す。
ATGAAACAACAAAAACGGCTTTACGCCCGATTGCTGACGCTGTTATTTGCGCTCATCTTCTTGCTGCCTCATTCTGCAGCTTCAGCA
【0136】
B.リケニフォルミス(B.licheniformis)amyL転写ターミネーターの核酸配列を以下に配列番号13として示す。
AAGAGCAGAGAGGACGGATTTCCTGAAGGAAATCCGTTTTTTTATTTT
【0137】
天然B.リケニフォルミス(B.licheniformis)cat遺伝子の上流相同アームの核酸配列を以下に配列番号14として示す。
【化14】
【0138】
天然B.リケニフォルミス(B.licheniformis)cat遺伝子の下流相同アームの核酸配列を以下に配列番号15として示す。
【化15】
【0139】
実施例2
実験室規模の液化アッセイ
実施例1でクローン化し発現させた4種の操作α-アミラーゼの液化性能を、実験室規模のトウモロコシデンプン液化アッセイを使用して評価した。簡潔に述べると、試料キャニスタ内で9.75gのトウモロコシデンプン(Ingredion BUFFALO 034010-102)と15.25gのミリQ水とを一緒に混合することにより、35%が乾燥固体のトウモロコシデンプンスラリーを調製した。1M水酸化カリウム又は硫酸溶液を使用して、pHを事前に選択した値に調整した。次いでα-アミラーゼを添加して混合した。インキュベーションを迅速粘度分析器(Perten RVA 4800)で90℃において実施し、2分かけて110℃まで昇温させ、110℃で7分間保持し、次いで1分かけて95℃まで冷却した。反応混合物を50mLコニカルチューブに移し、更に水浴(Thermofisher)中において95℃で2時間インキュベートした。各反応混合物の一部を20mM硫酸溶液で200倍に希釈し、デキストロース当量(DE)の測定に使用した。
【0140】
液化物のDEを、BCAアッセイキット(Generay)を使用して還元糖の量(グルコース当量として)を測定することにより決定した。100μLのBCAワーキング溶液と200倍希釈試料各5μLをPCRマイクロプレート(Axygen)中で混合し、これをサーモサイクラー(T100、Bio-Rad)内において95℃で3分間インキュベートし、次いで20℃まで冷却した。次いで、80μLの各試料を新たなマイクロプレート(Costar 9017)に移し、吸光度を562nmで読み取った。試料中の還元糖の量を、既知のグルコース標準液と比較することにより決定した。次いで、試料中の総炭水化物に対するグルコース当量のパーセンテージ(w/w)をDEとして算出した。全ての実施例で使用した対照酵素を表2に記載する。
【表2】
【0141】
低pH(すなわち4.5及び4.8)下でのα-アミラーゼの液化性能をそれぞれ表3及び表4に要約する。試験した全ての試料のうち、VES33367Mは、等しい酵素用量でpH4.5において最高の性能を示した。pH4.8において、VES33367M、VES33438M、VES35091M及びVES33575は、全て許容可能なDEの結果をもたらした。表5に、pH5.0超での液化性能を列記する。VES33367M及びVES33438Mは、低酵素用量下でpH5.0からpH5.8まで安定した性能を示し、DEの変動が少なかった。一部の試料については、粘度の高さに起因してDEが決定されなかった(nd)。
【表3】
【表4】
【表5】
【0142】
実施例3
実験室規模の糖化アッセイ
DE値が10~14である実施例2の液化物を糖化アッセイでの評価のために選択した。糖化の前に、液化物をpH3未満に調整し、95℃で30分間加熱した後にpH4.5に調整し戻した。糖化アッセイのために、各液化物95μLを新たなマイクロプレート(Corning 3357)に移し、0.16GAU/gdsのグルコアミラーゼ(OPTIMAX(登録商標)4060、Danisco US Inc.)を加えて糖化反応を開始させた。プレートをiEMS振盪インキュベータ(Thermofisher)内において60℃で48時間インキュベートした。インキュベーションの終了時に反応混合物を5mM硫酸で40倍に希釈した。DP組成を、80℃でのROA-Fast acid H+カラムとRID検出器とを使用したHPLCで分析した。5mM硫酸溶液を移動相として流量1mL/分で使用した。結果を表6に要約する。
【表6】
【0143】
実施例4
比活性アッセイ
1%(w/v)トウモロコシデンプン(Ingredion Inc.)を、5ppmのCa2+及び20ppmのNaを含むpH4.5の50mM酢酸カリウム緩衝液に溶解させた。溶解したトウモロコシデンプンを電子レンジで煮沸させた後、一晩、軽くかき混ぜながら室温まで冷却した。4種の操作α-アミラーゼ分子(すなわちVES33367M、VES33575、VES33438M、VES35091M)の各々を、SPEZYME(登録商標)HT(商標)及びSPEZYME(登録商標)SL(商標)とともに、5ppmのCa2+及び20ppmのNaと0.002%TWEEN80(登録商標)(Sigma-Aldrich)とを含むpH4.5の20mM酢酸カリウム緩衝液で0.2ppmに希釈した。96ウェルPCRマイクロタイタープレート内で90μLの1%基質を9μLの0.2ppm酵素と混合し、サーモブロック内において95℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、反応物を25℃まで冷却した。
【0144】
アルファアミラーゼ活性を、Pierce BCA Protein Assay Kit(ThermoFisher、23224)を使用して、デンプンアッセイで生じた還元糖当量を検出することにより測定した。反応物を室温まで冷却した後、96ウェルPCRマイクロタイタープレート内の90μLのBCA試薬に10μLの反応混合物を添加した。この混合物を95℃まで3分間加熱した。次いで、加熱したBCA反応物80μLをポリスチレンの読み取りプレートに移し、吸光度を562nmで測定した。
【0145】
表7は、SPEZYME(登録商標)HT(商標)及びSPEZYME(登録商標)SL(商標)ベンチマークアミラーゼと比較した、選択した分子の相対酵素活性を示しており、ベンチマーク分子の活性を100%に設定した。高温での活性は、4種の操作α-アミラーゼの全てについて、両方のベンチマークα-アミラーゼと比較して著しく高かった。
【表7】
【0146】
実施例5
熱安定性の測定
1%(w/v)トウモロコシデンプン(Ingredion Inc.)を、80ppmのCa2+及び320ppmのNaを含むpH5.6の50mM酢酸カリウム緩衝液に溶解させた。溶解したトウモロコシデンプンを電子レンジで煮沸させた後、一晩、軽くかき混ぜながら室温まで冷却した。4種の操作α-アミラーゼ分子(すなわちVES33367M、VES33575、VES33438M、VES35091M)の各々を、SPEZYME(登録商標)HT(商標)及びSPEZYME(登録商標)SL(商標)とともに、5ppmのCa2+及び20ppmのNaと0.002%TWEEN80(登録商標)(Sigma-Aldrich)とを含むpH4.5の50mM酢酸カリウム緩衝液で0.04ppmに希釈した。96ウェルマイクロタイタープレート内で90μLの1%基質を0.04ppmのストレス非負荷酵素9μLと混合し、iEMS振盪インキュベータ(Thermo Scientific)内において60℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、反応物を25℃まで冷却した。
【0147】
0.04ppmの酵素希釈液50μLを96ウェルPCRマイクロタイタープレート内でインキュベートし、サーモブロック内において94℃で10分間インキュベートした。インキュベーション後、マイクロタイタープレートを25℃まで冷却した。96ウェルマイクロタイタープレート内で90μLの1%基質を0.04ppmの熱ストレス負荷酵素9μLと混合し、iEMS振盪インキュベータ(Thermo Scientific)内において60℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、反応物を25℃まで冷却した。
【0148】
ストレス非負荷及びストレス負荷の酵素反応の吸光度並びに残存活性のパーセントを表8に示す。VES33367Mは、VES33438Mとともに最も高い残存活性パーセントを示す。
【表8】
図1
図1-2】
【配列表】
2024544155000001.xml
【国際調査報告】