(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】キノン含有ポリマー、その製造方法、及び電気化学的ガス分離のための使用
(51)【国際特許分類】
C08G 61/08 20060101AFI20241121BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20241121BHJP
B01D 53/32 20060101ALI20241121BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20241121BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20241121BHJP
【FI】
C08G61/08
H01G11/52
B01D53/32
H01M50/449
H01M50/414
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531124
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-23
(86)【国際出願番号】 US2022050836
(87)【国際公開番号】W WO2023096955
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522481031
【氏名又は名称】ヴェルドックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン・ロジャース
(72)【発明者】
【氏名】サハグ・ヴォスキアン
【テーマコード(参考)】
4J032
5E078
5H021
【Fターム(参考)】
4J032CA32
4J032CA68
4J032CB01
4J032CB03
4J032CC03
4J032CD04
4J032CE03
4J032CG01
5E078AA15
5E078AB01
5E078CA06
5E078CA20
5H021BB17
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE20
(57)【要約】
キノン含有ポリマーには、本明細書に定義されるように式(I)~式(IV)の少なくとも1つ又はその水素化誘導体の繰り返し単位が含まれる。キノン含有ポリマーを製造する方法も開示される。キノン含有ポリマーは、複合体、電極アセンブリ、電気化学セル、ガス分離システム、エネルギー貯蔵デバイス、及びエレクトロクロミックデバイスで有用であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)~式(IV)の少なくとも1つ又はその水素化誘導体の繰り返し単位を含むキノン含有ポリマー:
【化1】
(式(I)~式(IV)中、
X
1は、-CH
2-又は-O-であり、
X
2は、-CH
2-又は-O-であり、
X
3は、-CH
2-又は-O-であり、
X
4は、-CH
2-又は-O-であり、
R
1及びR
2は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C
1~6アルキル基、置換若しくは非置換C
1~30アルコキシ基、ポリ(C
1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C
3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C
6~30アリール基、置換若しくは非置換C
6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、
R
3は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C
1~6アルキル基、置換若しくは非置換C
1~30アルコキシ基、ポリ(C
1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C
3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C
6~30アリール基、置換若しくは非置換C
6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、又はチオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、
mは、2~4であり、
式(II)及び式(IV)の破線は、1つ以上の追加の縮合置換又は非置換アリール基の任意選択の存在を示し、
但し、X
1が-CH
2-である場合、R
1及びR
2の少なくとも1つは水素でないことを条件とする)。
【請求項2】
キノン含有ポリマーが、式(I)に従うものである、請求項1に記載のキノン含有ポリマー。
【請求項3】
X
1が、-CH
2-であり、R
1が、水素であり、R
2が、ハロゲン、置換若しくは非置換C
1~6アルキル基、置換若しくは非置換C
1~30アルコキシ基、ポリ(C
1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C
3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C
6~30アリール基、置換若しくは非置換C
6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基である、請求項2に記載のキノン含有ポリマー。
【請求項4】
X
1が、-CH
2-であり、R
1及びR
2の少なくとも1つが、置換又は非置換C
1~6アルキル基である、請求項2に記載のキノン含有ポリマー。
【請求項5】
X
1が、-CH
2-であり、R
1及びR
2がそれぞれ置換又は非置換C
1~6アルキル基であり、好ましくはR
1及びR
2がそれぞれメチル基である、請求項4に記載のキノン含有ポリマー。
【請求項6】
X
1が、-O-である、請求項2に記載のキノン含有ポリマー。
【請求項7】
R
1及びR
2が、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C
1~6アルキル基、置換若しくは非置換C
1~30アルコキシ基、ポリ(C
1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C
3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C
6~30アリール基、置換若しくは非置換C
6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基である、請求項6に記載のキノン含有ポリマー。
【請求項8】
R
1及びR
2が各々水素である、請求項6に記載のキノン含有ポリマー。
【請求項9】
キノン含有ポリマーが、式(II)に従うものである、請求項1に記載のキノン含有ポリマー。
【請求項10】
X
2が、-CH
2-又は-O-であり、mが4であり、追加の縮合置換又は非置換アリール基が存在しない、請求項9に記載のキノン含有ポリマー。
【請求項11】
R
3のそれぞれの出現がハロゲンである、請求項10に記載のキノン含有ポリマー。
【請求項12】
X
2が、-CH
2-又は-O-であり、mが2であり、ポリマーが、式(V)の繰り返し単位を含む、請求項9に記載のキノン含有ポリマー:
【化2】
(式中、pは、0~4であり、R
4は、それぞれの出現において独立してハロゲン、置換若しくは非置換C
1~6アルキル基、置換若しくは非置換C
1~30アルコキシ基、ポリ(C
1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C
3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C
6~30アリール基、置換若しくは非置換C
6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基である)。
【請求項13】
キノン含有ポリマーが、式(I)~式(IV)のいずれかに従う繰り返し単位とは異なる1つ以上の繰り返し単位を更に含むコポリマーである、請求項1に記載のキノン含有ポリマー。
【請求項14】
架橋性基、接着促進基、可溶化基、又はそれらの組合せを含む1つ以上の繰り返し単位を更に含む、請求項13に記載のキノン含有ポリマー。
【請求項15】
コポリマーが、式(VI)~式(VIII)の1つ以上に従う繰り返し単位を更に含む、請求項13に記載のキノン含有ポリマー:
【化3】
。
【請求項16】
キノン含有ポリマーが、式(Ia)~式(IVa)の少なくとも1つの水素化された繰り返し単位を含む、請求項1に記載のキノン含有ポリマー:
【化4】
。
【請求項17】
キノン含有ポリマーを作製する方法であって、
式(IX)~式(XII)の少なくとも1つのキノン含有モノマー:
【化5】
を、オレフィンメタセシス触媒の存在下、式(I)~式(IV)の少なくとも1つ又はその水素化誘導体の繰り返し単位を含むキノン含有ポリマーを提供するのに効果的な条件下で、重合させる工程を含む、方法:
【化6】
(上記の式中、
X
1は、-CH
2-又は-O-であり、
X
2は、-CH
2-又は-O-であり、
X
3は、-CH
2-又は-O-であり、
X
4は、-CH
2-又は-O-であり、
R
1及びR
2は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C
1~6アルキル基、置換若しくは非置換C
1~30アルコキシ基、ポリ(C
1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C
3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C
6~30アリール基、置換若しくは非置換C
6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、
R
3は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C
1~6アルキル基、置換若しくは非置換C
1~30アルコキシ基、ポリ(C
1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C
3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C
6~30アリール基、置換若しくは非置換C
6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、
mは、2~4であり、
式(II)、式(IV)、式(X)、及び式(XII)の破線は、1つ以上の追加の縮合置換又は非置換アリール基の任意選択の存在を示す)。
【請求項18】
キノン含有ポリマーを提供するのに効果的な条件が、20~100℃の温度及び1分~24時間、例えば1~5時間、又は2~3時間の時間を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
基材上に配置されたキノン含有ポリマーを含む複合体であって、キノン含有ポリマーが、式(I)~式(IV)の少なくとも1つの繰り返し単位を含む、複合体
【化7】
(式(I)~式(IV)中、
X
1は、-CH
2-又は-O-であり、
X
2は、-CH
2-又は-O-であり、
X
3は、-CH
2-又は-O-であり、
X
4は、-CH
2-又は-O-であり、
R
1及びR
2は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C
1~6アルキル基、置換若しくは非置換C
1~30アルコキシ基、ポリ(C
1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C
3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C
6~30アリール基、置換若しくは非置換C
6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、
R
3は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C
1~6アルキル基、置換若しくは非置換C
1~30アルコキシ基、ポリ(C
1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C
3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C
6~30アリール基、置換若しくは非置換C
6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、
mは、2~4であり、
式(II)及び式(IV)の破線は、1つ以上の追加の縮合置換又は非置換アリール基の任意選択の存在を示す)。
【請求項20】
基材が、炭素質材料を含む、請求項19に記載の複合体。
【請求項21】
キノン含有ポリマーが、少なくとも部分的に架橋されている、請求項19又は20に記載の複合体。
【請求項22】
多孔質セパレータと、
多孔質セパレータの表面上、多孔質セパレータの細孔中、又は多孔質セパレータの表面上及び細孔中の請求項19に記載の複合体と
を含む電極アセンブリ。
【請求項23】
請求項19に記載の複合体を含む電気化学セル。
【請求項24】
請求項19に記載の複合体を含む第1の電極と、
相補的電気活性層を含む第2の電極と、
第1の電極と第2の電極との間の第1のセパレータと
を含む、請求項23に記載の電気化学セル。
【請求項25】
複合体が、電解質を更に含む、請求項24に記載の電気化学セル。
【請求項26】
ガス入口及びガス出口と流体連通している複数の電気化学セルを含むガス分離システムであって、複数の電気化学セルの各々が請求項24に記載の電気化学セルである、ガス分離システム。
【請求項27】
ガス分離システムが、ガス混合物と流体接触している接触器ユニットを更に含む、請求項26に記載のガス分離システム。
【請求項28】
接触器ユニットが、電解質と流体連通している、請求項27に記載のガス分離システム。
【請求項29】
請求項1に記載のキノン含有ポリマーを含む電気化学セル。
【請求項30】
第1の電極と、
第2の電極と、
第1の電極と第2の電極との間のセパレータと、
第1の電極又は第2の電極の少なくとも1つと接触している電解質と
を含み、
第1の電極、第2の電極、セパレータ、又は電解質の少なくとも1つが、キノン含有ポリマーを含む、請求項29に記載の電気化学セル。
【請求項31】
電解質が、キノン含有ポリマーを含む、請求項30に記載の電気化学セル。
【請求項32】
請求項31に記載の電気化学セルを含むガス分離システムであって、
電気化学セルが、ガス入口及びガス出口と流体連通しており、
キノン含有ポリマーを含む電解質が、ガス混合物と流体接触している、ガス分離システム。
【請求項33】
電気化学セルと分離している接触器ユニットを更に含み、接触器ユニット内で電解質がガス混合物と接触する、請求項32に記載のガス分離システム。
【請求項34】
接触器ユニットが、ガス吸着装置、ガス吸収器、又はそれらの組合せを含む、請求項33に記載のガス分離システム。
【請求項35】
複数の電気化学セルを含む、請求項32に記載のガス分離システム。
【請求項36】
請求項1に記載のキノン含有ポリマーを含むエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項37】
請求項19に記載の複合体を含むエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項38】
複数の電気化学セルを含む、請求項36に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項39】
請求項23に記載の電気化学セルを含むエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項40】
請求項1に記載のキノン含有ポリマーを含むエレクトロクロミックデバイス。
【請求項41】
請求項19に記載の複合体を含むエレクトロクロミックデバイス。
【請求項42】
請求項23に記載の電気化学セルを含むエレクトロクロミックデバイス。
【請求項43】
標的ガスを含む流体混合物から標的ガスを分離する方法であって、
流体混合物を、式(I)~式(IV)に従う繰り返し単位を含む還元状態のキノン含有ポリマーと接触させて、標的ガスと還元状態のキノン含有ポリマーとの間でアニオン付加体を形成させる工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年11月24日に米国特許商標庁に出願された米国仮特許出願第63/282,779号の優先権、及び米国特許法第119条に基づきそこから生じる全ての利益を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ガス混合物から標的種を除去することは、多くの研究開発の主題であった。例えば、二酸化炭素の排出を抑制することによって地球温暖化を緩和する取り組みが行われてきた。この目的のために、二酸化炭素をその生成の様々な段階で捕捉しようとして、熱的方法等多くのアプローチが検討されてきた。標的ガス除去の他の潜在的な用途には、空気又は換気空気から標的ガスを直接除去することが含まれる。
【0003】
エレクトロスイング吸着(ESA)は、ガス状混合物から標的ガスを捕捉する代替方法である。典型的に、エレクトロスイング吸着セルの電極には、導電性足場及び電気活性材料が含まれる。改良された生成方法を含めて、エレクトロスイング吸着のための改良された材料に対する必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0030936号
【特許文献2】国際出願PCT/US2021/049751号
【特許文献3】米国特許仮出願第63/113,321号
【特許文献4】米国特許出願第17/345,074号
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/977797号
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0298267号
【特許文献7】米国特許出願公開第2002/0197519号
【特許文献8】米国特許第6,099,984号
【特許文献9】米国特許出願公開第2004/0209150号
【特許文献10】米国特許出願公開第2003/0203260号
【特許文献11】米国特許出願公開第2003/0022052号
【特許文献12】米国特許出願公開第2004/0151975号
【特許文献13】米国特許出願公開第2002/0081477号
【特許文献14】米国特許第6,309,773号
【特許文献15】米国特許第6,756,149号
【特許文献16】米国特許第6,159,629号
【特許文献17】米国特許第6,174,616号
【特許文献18】米国特許第5,486,430号
【特許文献19】米国特許第5,776,625号
【特許文献20】米国特許第6,017,648号
【特許文献21】米国特許第6,440,597号
【特許文献22】米国特許出願公開第2006/0073385号
【特許文献23】米国特許出願公開第2003/0031914号
【特許文献24】米国特許出願公開第2003/0072988号
【特許文献25】米国特許出願公開第2007/0231619号
【特許文献26】米国特許出願公開第2007/0042254号
【特許文献27】米国特許出願公開第2002/0172852号
【特許文献28】米国特許第6,261,711号
【特許文献29】米国特許第6,190,793号
【特許文献30】米国特許出願第16/659,398号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
キノン含有ポリマーは、式(I)~式(IV)の少なくとも1つの繰り返し単位又はそれらの水素化誘導体を含む
【0006】
【0007】
(式(I)~式(IV)中、X1は、-CH2-又は-O-であり、X2は、-CH2-又は-O-であり、X3は、-CH2-又は-O-であり、X4は、-CH2-又は-O-であり、R1及びR2は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、R3は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、又はチオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、mは、2~4であり、式(II)及び式(IV)の破線は、1つ以上の追加の縮合置換又は非置換アリール基の任意選択の存在を示し、但し、X1が-CH2-である場合、R1及びR2の少なくとも1つは水素でないことを条件とする)。
【0008】
キノン含有ポリマーを作製する方法は、式(IX)~式(XII)のキノン含有モノマーを
【0009】
【0010】
オレフィンメタセシス触媒の存在下、式(I)~式(IV)の繰り返し単位又はそれらの水素化誘導体を含むキノン含有ポリマーを提供するのに効果的な条件下で、重合させる工程を含む
【0011】
【0012】
(上記の式中、X1は、-CH2-又は-O-であり、X2は、-CH2-又は-O-であり、X3は、-CH2-又は-O-であり、X4は、-CH2-又は-O-であり、R1及びR2は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、R3は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、mは、2~4であり、式(II)、式(IV)、式(X)、及び式(XII)の破線は、1つ以上の追加の縮合置換又は非置換アリール基の任意選択の存在を示す)。
【0013】
複合体は、基材上に配置されたキノン含有ポリマーを含み、キノン含有ポリマーが、式(I)~式(IV)の少なくとも1つの繰り返し単位を含む
【0014】
【0015】
(式(I)~式(IV)中、X1は、-CH2-又は-O-であり、X2は、-CH2-又は-O-であり、X3は、-CH2-又は-O-であり、X4は、-CH2-又は-O-であり、R1及びR2は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、R3は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、mは、2~4であり、式(II)及び式(IV)の破線は、1つ以上の追加の縮合置換又は非置換アリール基の任意選択の存在を示す)。
【0016】
電極アセンブリは、多孔質セパレータと、多孔質セパレータの表面上、多孔質セパレータの細孔中、又は多孔質セパレータの表面上及び細孔中の複合体とを含む。
【0017】
電気化学セルは、複合体を含む。
【0018】
ガス分離システムは、ガス入口及びガス出口と流体連通している複数の電気化学セルを含む。
【0019】
エネルギー貯蔵デバイスは、キノン含有ポリマー、複合体、又は電気化学セルを含む。
【0020】
エレクトロクロミックデバイスは、キノン含有ポリマー、複合体、又は電気化学セルを含む。
【0021】
標的ガスを含む流体混合物から標的ガスを分離する方法は、流体混合物を式(I)~式(IV)による繰り返し単位又はそれらの水素化誘導体を含む還元状態にあるキノン含有ポリマーと接触させて、標的ガスと還元状態のキノン含有ポリマーとの間でアニオン付加体を形成する工程を含む。
【0022】
上述した特徴及び他の特徴は、図及び詳細な説明によって例示される。
【0023】
以下の図は、例示的な実施形態である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】ポリ(1,4-ジヒドロ-1,4-メタノ-6,7-ジメチルナフタレン-5,8-ジオン)の合成を説明する化学スキームを示す。
【
図2】ポリ(1,4-ジヒドロ-1,4-メタノナフタレン-5,8-ジオン)の合成を説明する化学スキームを示す。
【
図3】ポリ(1,4-ジヒドロ-1,4-メタノアントラセン-9,10-ジオン)の合成を説明する化学スキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
いくつかのレドックス活性ポリマーは、標的ガスに対する親和性が異なる酸化状態と還元状態を切り換えることができる電気活性材料、特にキノン部分を含む材料として検討されてきた。特定のキノン含有ポリマーは、開環メタセシス重合(ROMP)によって調製することができ、レドックス活性材料として望ましい特性を有し得ることが見出された。したがって、これらの材料は、エレクトロスイング吸着(ESA)ガス分離、有機ポリマー電池、及び他の用途に好適であり得る。ROMPは、ポリマー構造及び分子量に対する優れた合成制御を良好な官能基許容性と共に提供する高度に制御されたリビング重合技法である。ROMPのキノン含有構造への拡張によって、レドックス活性ポリマーの多様なクラスにすぐにアクセスすることが可能になる。特定のキノン含有モノマーは、ルテニウム含有ROMP触媒を用いた重合に耐えないことが以前に示された。
【0026】
したがって、当技術分野においては、キノン含有ROMPポリマーの特にESA用途のための使用を可能にする代替合成手法が依然として求められている。本発明者らは、驚くべきことに、キノン含有ROMPポリマーが、Schrock型モリブデン触媒又はタングステンアルキリデン触媒等のオレフィンメタセシス触媒を用いて調製され得ることを発見した。本開示のキノン含有ROMPポリマーは、エネルギー貯蔵、エレクトロクロミック用途、及びガス分離を含むがこれらに限定されない様々な電気化学的用途に特に有用であり得る。特定の一態様において、キノン含有ポリマーは、電極アセンブリ、電気化学セル、及び電気化学的方法によってガス混合物から標的ガス(例えば、CO2又はSO2)を分離するガス分離システムにおいて使用され得る。したがって、著しい改良が本開示によって提供される。
【0027】
したがって、本開示の一態様は、簡潔にするため「ポリキノン」と呼ばれることもあるキノン含有ポリマーである。ポリキノンは、本明細書に定義されるように、式(I)、(II)、(III)、若しくは(IV)、その水素化誘導体、又はそれらの組合せに従う少なくとも5個の繰り返し単位を含むポリマーである。好ましくは、ポリキノンは、式(I)、(II)、(III)、若しくは(IV)、又はそれらの組合せによる少なくとも10個の繰り返し単位、例えば5~100個の繰り返し単位、又は10~100個の繰り返し単位、又は10~75個の繰り返し単位、又は10~50個の繰り返し単位、又は10~30個の繰り返し単位、又は10~25個の繰り返し単位を含む。
【0028】
ポリキノンは、ROMPによって重合され得る環式オレフィンにキノン含有部分が縮合している繰り返し単位を含む。ポリキノンは、式(I)~式(IV)の少なくとも1つの繰り返し単位を含み、
【0029】
【0030】
式(I)~式(IV)中、X1は、-CH2-又は-O-であり、X2は、-CH2-又は-O-であり、X3は、-CH2-又は-O-であり、X4は、-CH2-又は-O-であり、R1及びR2は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、R3は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、又はチオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、mは、2~4であり、式(II)又は式(IV)の破線は、1つ以上の追加の縮合置換又は非置換アリール基の任意選択の存在を示す。式(I)のX1が-CH2-である場合、R1及びR2の少なくとも1つは水素でない。R3がアミン基を含む場合、アミン基は、式-NR'R"(式中、R'及びR"は、それぞれの出現において独立して水素、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、例えばメチル基等の置換若しくは非置換C1~6アルキル基(例えば、-N(CH3)2)である)を有し得る。
【0031】
当業者に理解されるように、R1、R2、及びR3のアイデンティティは、ポリキノンを調製するために使用される条件の影響を受けるおそれがある。例えば、チオール又はアミン等、特定のROMP触媒を被毒するおそれがある官能基もあれば、被毒するおそれがない官能基もある。したがって、当業者は、本開示によって導かれ、ポリキノンを調製するために選ばれる触媒の官能基許容性に基づいて、置換基R1、R2、及びR3として好適な官能基を選択する方法を理解している。
【0032】
一態様において、ポリキノンは、式(I)による繰り返し単位を含み得る。一態様において、ポリキノンは、式(I)による繰り返し単位(式中、X1は-CH2-であり、R1及びR2の少なくとも1つは水素でない)を含み得る。例えば、R1は水素とすることができ、R2は、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基とすることができる。一態様において、X1は-CH2-であり、R1及びR2の少なくとも1つは置換又は非置換C1~6アルキル基である。一態様において、X1は-CH2-であり、R1及びR2は各々置換又は非置換C1~6アルキル基であり、好ましくはR1及びR2は各々メチル基である。
【0033】
一態様において、ポリキノンは、式(I)による繰り返し単位(式中、X1は-O-である)を含み得る。R1及びR2は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基とすることができる。例えば、R1及びR2はそれぞれ水素であり得る。
【0034】
一態様において、ポリキノンは、式(II)による繰り返し単位を含み得る。一態様において、ポリキノンは、式(II)による繰り返し単位を含むことができ、X2は、-CH2-又は-O-であり、mは4であり、追加の縮合置換又は非置換アリール基は存在しない。一態様において、mは4とすることができ、R3のそれぞれの出現はハロゲン(例えば、塩素)とすることができる。
【0035】
一態様において、ポリキノンは、式(II)による繰り返し単位を含むことができ、X2は、-CH2-又は-O-であり、mは2であり、ポリマーは、式(V)の繰り返し単位を含む
【0036】
【0037】
(式中、pは、0~4であり、R4は、それぞれの出現において独立してハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基である)。Pが0である場合、フェニル環の原子価は水素で満たされていることが理解されている。一態様において、ポリキノンは、式(V)によるものとすることができ、R3のそれぞれの出現は水素とすることができ、pは0である。一態様において、X2は-CH2-とすることができる。一態様において、X2は-CH2-とすることができ、R3のそれぞれの出現は水素とすることができ、pは0とすることができる。
【0038】
一態様において、ポリキノンは、式(III)による繰り返し単位を含み得る。一態様において、ポリキノンは、式(III)による繰り返し単位(式中、X3は-CH2-である)を含み得る。一態様において、X3は-CH2-であり、R1及びR2の少なくとも1つは、置換又は非置換C1~6アルキル基である。一態様において、X3は-CH2-であり、R1及びR2はそれぞれ置換又は非置換C1~6アルキル基であり、好ましくはR1及びR2はそれぞれメチル基である。一態様において、ポリキノンは、式(III)による繰り返し単位(式中、X3は-O-である)を含み得る。R1及びR2は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基とすることができる。例えば、R1及びR2はそれぞれ水素であり得る。
【0039】
一態様において、ポリキノンは、式(IV)による繰り返し単位を含み得る。一態様において、ポリキノンは、式(IV)による繰り返し単位(式中、X4は-CH2-である)を含み得る。一態様において、ポリキノンは、式(IV)による繰り返し単位(式中、X1は-O-である)を含み得る。
【0040】
一態様において、ポリキノンは、式(I)~式(IV)の少なくとも1つの水素化された繰り返し単位を含み得る。水素化された繰り返し単位は、式(Ia)~式(IVa)によるものとすることができ、
【0041】
【0042】
式中、炭化水素主鎖は、少なくとも部分水素化されたものである。一態様において、ポリキノンは、少なくとも10%水素化することができ、これは、ポリマー主鎖の二重結合の少なくとも10%が単結合に水素化されたものであることを意味する。一態様において、ポリキノンは、少なくとも20%水素化する、又は少なくとも50%水素化する、又は少なくとも75%水素化する、又は少なくとも90%水素化することができる。一態様において、ポリキノン主鎖は、完全水素化され得る(すなわち、ポリマー主鎖の二重結合の100%が単結合に変換されたものである)。
【0043】
一態様において、繰り返し単位の少なくとも10モルパーセント、又は少なくとも20モルパーセント、又は少なくとも30モルパーセント、又は少なくとも40モルパーセント、又は少なくとも50モルパーセント、又は少なくとも75モルパーセント、又は少なくとも80モルパーセント、又は少なくとも90モルパーセント、又は少なくとも95モルパーセント、又は少なくとも99モルパーセント、例えば、50モルパーセント~99.9モルパーセント、又は75モルパーセント~95モルパーセントが、式(I)~式(IV)の少なくとも1つによるものとする。一態様において、ポリキノンは、式(I)、(II)、(III)、又は(IV)による繰り返し単位からなるホモポリマーである。
【0044】
一態様において、キノン含有ポリマーは、式(I)~式(IV)の繰り返し単位と異なる1つ以上の繰り返し単位を更に含むコポリマーである。一態様において、存在する場合、式(I)~式(IV)の繰り返し単位と異なる繰り返し単位は、最大90モルパーセント、又は最大80モルパーセント、又は最大70モルパーセント、又は最大60モルパーセント、又は最大50モルパーセント、又は最大25モルパーセント、又は最大20モルパーセント、又は最大10モルパーセント、又は最大5モルパーセントの量で存在することができる。
【0045】
追加の繰り返し単位は、一般にROMPによって重合可能な任意のモノマーに由来することができる。好ましくは、追加の繰り返し単位は、ノルボルネン又はオキサノルボルネン含有モノマーに由来する。追加の繰り返し単位は、好ましくはポリキノンに所望の特性又は官能性を付与するために選ばれ得る。例えば、1つ以上の繰り返し単位は、架橋性基、接着促進基、可溶化基、又はそれらの組合せを含み得る。
【0046】
架橋性基としては、ポリキノンを含む架橋ネットワークを形成するのに好適な熱、放射線、又は化学的トリガーによって始動される官能基を挙げることができる。架橋性基は、一般に相補的官能基との化学反応に関与することができるいずれの官能基であってもよい。架橋性基から形成される架橋としては、イオン結合、共有結合、又はそれらの組合せを挙げることができる。架橋性官能基の例としては、ビニル、アジド、エポキシ、ヒドロキシ、カルボキシ、アミノ、イソシアナト、アルミニウム塩、ハロゲン化物(例えば、ハロゲン化ベンジル)、又はそれらの任意の組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0047】
例えば、ポリキノンは、式(VI)、(VII)、又はそれらの組合せによる繰り返し単位を更に含む。
【0048】
【0049】
本明細書では「接着促進基」は、ポリキノンと基材の表面との間の相互作用を高めることができる官能基を指す。例えば、ポリキノンを炭素質基材上に配置したい場合、多環式芳香族炭化水素基(例えば、ピレン)等前記炭素質材料と相互作用することができる基を含むのが望ましいことがある。例えば、ポリキノンは、式(VIII)による繰り返し単位を更に含み得る。
【0050】
【0051】
本明細書では可溶化基は、選ばれた溶媒へのポリキノンの溶解度を高めるように設計された繰り返し単位を指す。例えば、好適な可溶化基としては、C1~20アルキル基又はポリ(C1~30アルキレンオキシド)基(例えば、ポリエチレングリコール)を挙げることができる。
【0052】
ポリキノンは、1モル当たり1,000~1,000,000グラムの数平均分子量を有することができる。この範囲内で、ポリキノンは、1モル当たり1,000~750,000グラム、又は1モル当たり1,000~500,000グラム、又は1モル当たり1,000~250,000グラム、1モル当たり1,000~200,000グラム、又は1モル当たり10,000~200,000グラム、好ましくは1モル当たり10,000~100,000グラム、より好ましくは1モル当たり10,000~75,000グラム、更により好ましくは1モル当たり20,000~50,000グラムの数平均分子量を有することができる。一態様において、ポリキノンは、1モル当たり1,000~50,000グラム、又は1モル当たり1,000~25,000グラム、又は1モル当たり1,000~10,000グラムの数平均分子量を有することができる。分子量は、例えば、ポリスチレン標準物質に対するテトラヒドロフラン中でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用して決定され得る。
【0053】
キノン含有ポリマーは、開環メタセシス重合(ROMP)を使用して作製され得るが、特定の触媒が使用されることを条件とする。したがって、キノン含有ポリマーを作製する方法は、本開示の別の態様を表す。
【0054】
方法は、式(IX)~式(XII)のいずれかのキノン含有モノマーを
【0055】
【0056】
オレフィンメタセシス触媒の存在下に式(I)~式(IV)又はその水素化誘導体の繰り返し単位を含むキノン含有ポリマーを提供するのに効果的な条件下で重合させる工程を含む。
【0057】
【0058】
上記の式中、X1は、-CH2-又は-O-であり、X2は、-CH2-又は-O-であり、X3は、-CH2-又は-O-であり、X4は、-CH2-又は-O-であり、R1及びR2は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、R3は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、mは、2~4であり、式(II)、式(IV)、式(X)、及び式(XII)の破線は、1つ以上の追加の縮合置換又は非置換アリール基の任意選択の存在を示す。
【0059】
ポリキノンを提供するのに効果的な条件は、モノマー及び触媒のアイデンティティを含めて様々な特徴に依存し得る。
【0060】
一態様において、オレフィンメタセシス触媒は、モリブデンアルキリデン触媒又はタングステンアルキリデン触媒とすることができる。例示的なモリブデンアルキリデン触媒又はタングステンアルキリデン触媒としては、例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2016/0030936号に記載されているものを挙げることができる。触媒は、任意選択で、in situ生成され得る。一態様において、触媒は、モリブデンアルキリデン触媒とすることができる。例示的なモリブデンアルキリデン触媒としては、XiMo, AG社からX002として市販されている以下の構造の触媒を挙げることができるが、これに限定されない。
【0061】
【0062】
一態様において、オレフィンメタセシス触媒は、ルテニウム含有触媒とすることができる。特に有用なルテニウム含有オレフィンメタセシス触媒としては、N-ヘテロ環式カルベン及びキレート性オルト-アルコキシベンジリデンを含むものを挙げることができる。好ましくは、ホスフィン含有リガンドは、ルテニウム含有オレフィンメタセシス触媒中に存在しない。例示的な触媒としては、第2世代Grubbs-Hoveyda触媒の(1,3-ビス-(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン)ジクロロ(o-イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウム)が挙げられる。そのような触媒は、Sigma Aldrich社からのHoveyda-Grubbs触媒のM720として市販されている。
【0063】
キノン含有ポリマーを提供するのに効果的な条件は、20~100℃の温度及び1分~24時間、例えば1~5時間、又は2~3時間の時間を含み得る。一態様において、重合温度は、20~80℃又は20~50℃又は50~80℃とすることができる。一態様において、重合時間は、1~60分、又は1~30分、又は1~15分とすることができる。
【0064】
重合は、溶媒の存在下に実施され得る。好適な溶媒は、所望のモノマー構造の溶解度に基づいて決定され得る。一態様において、溶媒は、トルエン、クロロホルム、クロロベンゼン、キシレン、N-メチルピロリドン等、又はそれらの組合せ等の有機溶媒とすることができる。一態様において、重合は、水、酸素又はそれらの組合せの非存在下に実施され得る。
【0065】
重合は、例えば、モル過剰のアルデヒドを添加することによってクエンチされ得る。好適なアルデヒドとしては、ベンズアルデヒド、ピバルデヒド、1-ピレンカルボキサルデヒド等、又はそれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。クエンチ剤は、ポリマー末端基の化学構造を決定し、したがって、いくつかの態様において、ポリマー特性を決定づけるのに有用であり、又は官能化若しくはテレケリックポリマーの反応性ハンドルを更に導入するのに有用であり得る。
【0066】
方法は、任意選択で、キノン含有ポリマーを単離する工程を更に含み得る。キノン含有ポリマーの単離は、例えば、過剰量の非溶媒の添加による沈殿によって行うことができる。例示的な非溶媒としては、例えば、メタノールを挙げることができる。沈殿後に、キノン含有ポリマーは、一般に知られている、例えば、濾過又は遠心であるいずれの固液分離技法によっても単離され得る。
【0067】
一態様において、重合は、その後の製剤工程に有用であり得る溶媒中で実施することができ、この溶媒は、所望の用途に基づいて決定され得る。したがって、一態様において、キノン含有ポリマーは、重合反応混合物からの精製又は単離を更に行うことなく使用され得る。一態様において、重合物は、例えば、シリカ又はアルミナ等の吸着剤のカラムに重合溶液を通すことによって精製して、残存している金属触媒を除去することができる。精製された重合混合物は、任意選択で、その後の製剤工程で溶媒からポリキノンを単離することなく更に使用され得る。
【0068】
ポリマー生成物は、核磁気共鳴(NMR)分光法、紫外(UV)-可視分光法、赤外(IR)分光法、及びゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって特徴づけることができる。
【0069】
本開示のキノン含有ポリマーは、様々な電気化学的用途に特に有用であり得る。例えば、本明細書に記載されるキノン含有ポリマーは、エネルギー貯蔵、エレクトロクロミック用途、触媒作用、及びガス分離に有用であり得る。
【0070】
キノン含有ポリマーを含む複合体は、本開示の別の態様を表す。複合体は、基材上に配置された上記のキノン含有ポリマーを含み得る。
【0071】
ポリキノンは、基材の表面の少なくとも一部分上に配置され得る。一態様において、基材は、ポリキノンで含浸され得る。一態様において、1つ以上の介在層が、基材とポリキノンとの間に配置され得る。一態様において、介在層が存在せず、ポリキノンは、基材の表面上に直接配置され得る。一態様において、基材は、炭素質材料を含み得る。例示的な炭素質材料としては、カーボンペーパー(処理済み、テフロン(登録商標)処理済み、又は未処理)、カーボンクロス、カーボン不織マット、又はカーボンナノチューブ不織マットを挙げることができるが、これらに限定されない。一態様において、基材は、カーボンナノチューブ不織マット、例えば同時係属中の国際出願PCT/US2021/049751号に記載されているものを含むことができ、その出願の内容が参照によりその全体としてあらゆる目的で組み込まれる。一態様において、基材は、例えば同時係属中の米国特許仮出願第63/113,321号に記載されているような垂直に整列したカーボンナノチューブを含むことができ、その仮出願の内容が参照によりその全体としてあらゆる目的で組み込まれる。
【0072】
ポリキノンは、基材上にポリキノンが基材から自由拡散又は解離することができないように固定化されているとみなすことができる。ポリキノンは、基材上に様々な形で固定化され得る。例えば、ポリキノンは、基材の表面に(例えば、共有結合、イオン結合、又は静電力、ファンデルワールス力、水素結合、若しくはそれらの組合せ等の分子内相互作用を介して)結合されることによって基材上に固定化され得る。一態様において、ポリキノンは、基材の表面上に吸着されることによって基材上に固定化され得る。一態様において、ポリキノンは、基材上に固定化され得る。ポリキノンを固定化する工程としては、ポリキノンを基材の表面上にグラフト化又は重合させる工程を挙げることができるが、これに限定されない。本明細書では「グラフト化」は、ポリキノンと基材との間に共有結合を生成する化学的又は電気化学的方法を指す。一態様において、ポリキノンは、組成物、例えば、基材上に塗布又は被着されたコーティング又は複合層に含まれることによって基材上に固定化され得る。ポリキノンを固定化する工程としては、電着、プラズマ蒸着、真空浸潤、溶融コーティング、又は上記の任意の組合せも挙げることができる。
【0073】
基材の表面上のポリキノンの厚さは、例えば、0.1~20ナノメートル、又は0.2~15ナノメートル、又は0.5~10ナノメートルとすることができる。基材の表面上のポリキノンの厚さは、被着の様式に依存し得る。
【0074】
複合体は、任意選択で、多孔質であり得る。例えば、複合体は、少なくとも20%、好ましくは30~60%の多孔率を有することができる。
【0075】
複合体は、ポリキノンを複合体の総質量に対して1~90質量%の量で含み得る。この範囲内で、ポリキノンは、複合体の総質量に対して少なくとも2質量%、又は少なくとも5質量%、又は少なくとも7質量%、又は少なくとも10質量%、又は少なくとも20質量%、又は少なくとも25質量%、又は少なくとも30質量%、又は少なくとも40質量%、又は少なくとも50質量%の量で存在することができる。やはりこの範囲内で、ポリキノンは、最大85質量%、又は最大80質量%、又は最大70質量%、又は最大60質量%、又は最大50質量%、又は最大45質量%、又は最大40質量%の量で存在することができる。例えば、ポリキノンは、複合体の総質量に対して1~75質量%、又は5~60質量%、又は7~25質量%の量で存在することができる。
【0076】
電極アセンブリは、本開示の別の態様を表す。一態様において、電極アセンブリは、上記の複合体と多孔質セパレータとを含む。複合体は、多孔質セパレータ上に配置され得るが、任意選択で、1つ以上の介在層が複合体と多孔質セパレータとの間に配置される。一態様において、複合体は、多孔質セパレータに積層され得る。多孔質セパレータは、いずれか好適な材料を含み得る。一態様において、多孔質セパレータは、ポリマーフィルム、例えばポリアミド、ポリオレフィン、ポリアラミド、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂等、又はそれらの組合せを含むフィルムを含み得る。ポリマーは、片面又は両面がセラミックナノ粒子でコーティングされてもよい。一態様において、多孔質セパレータは、セルロース、合成ポリマー材料、又はポリマー/セラミック複合材料を含み得る。セパレータの更なる例としては、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)セパレータ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PVDF-アルミナ複合体セパレータ等を挙げることができる。
【0077】
一態様において、電極アセンブリは、例えば同時係属中の米国特許出願第17/345,074号に記載されているようなパターン化電極を含むことができ、その出願の内容が参照によりその全体としてあらゆる目的で組み込まれる。
【0078】
キノン含有ポリマーを含む電気化学セルは、本開示の別の態様を表す。例えば、電気化学セルは、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間のセパレータと、電解質とを含み得る。本開示のキノン含有ポリマーは、電気化学セル中、第1の電極、第2の電極、セパレータ、又は電解質の少なくとも1つに存在することができる。一態様において、複数の電気化学セルはキノン含有ポリマーを含むことができ、電気化学セルが例えば並列又は直列に電子連通している。
【0079】
一態様において、電気化学セルは、キノン含有ポリマーを含む複合体を含み得る。例えば、電気化学セルは、ポリキノンを含む上記の複合体を含む第1の電極と、相補的電気活性複合層を含む第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間の第1のセパレータとを含み得る。
【0080】
セパレータは、電極アセンブリについて以上に記載の通りであり得る。セパレータは、各電極におけるそれぞれの電気化学反応が互いに干渉するのを防止し得る保護層として機能し得る。セパレータはまた、第1及び第2の電極を互いに又は電気化学セル内の他の成分から電子的に分離して、短絡を防止することにも役立ち得る。本開示の利益を受ける当業者は、好適なセパレータを選択できるであろう。
【0081】
電気化学セルは、電解質を更に含み得る。電解質は、室温(例えば、23℃)において好適な伝導率を有することができる。一態様において、セパレータは、電解質で部分的又は完全に含浸され得る。セパレータを電解質で含浸させる工程は、液中に入れること、被覆、浸漬、又はその他の方法でセパレータを電解質に接触させることによって行うことができる。多孔質セパレータの細孔の一部又は全部は、電解質で部分的又は完全に充填され得る。一態様において、セパレータは電解質で飽和させることができる。
【0082】
一態様において、電解質は、イオン性液体、例えば室温イオン性液体(RTIL)を含む。イオン性液体は、低揮発性、例えば23℃の温度で10-5Pa未満、又は10-10~10-5Paの蒸気圧を有することができ、この蒸気圧は、セパレータが乾燥するリスクを低減させ、蒸発又はエントレインメントによる電解質の損失を低減させ得る。一態様において、イオン性液体は、電解質の実質的に全体(例えば、少なくとも80体積%、又は少なくとも90体積%、又は少なくとも95体積%、又は少なくとも98体積%、少なくとも99体積%、又は少なくとも99.9体積%)を占める。
【0083】
イオン性液体は、アニオン成分及びカチオン成分を含む。イオン性液体のアニオンは、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、スルホン酸イオン、炭酸イオン、重炭酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、PF6、BF4、トリフル酸イオン、ノナフレート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、トリフルオロ酢酸イオン、ヘプタフルオロ酪酸イオン、ハロアルミネート、トリアゾリド、又はアミノ酸誘導体(例えば、窒素上のプロトンが除去されたプロリン)を含み得るが、これらに限定されない。イオン性液体のカチオンは、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム、アンモニウム、スルホニウム、チアゾリウム、ピラゾリウム、ピペリジニウム、トリアゾリウム、ピラゾリウム、オキサゾリウム、グアニジニウム、アルカリカチオン、又はジアルキルモルホリニウムのうちの1つ以上を含み得るが、これらに限定されない。一態様において、室温イオン性液体は、カチオン成分としてイミダゾリウムを含む。一態様において、室温イオン性液体は、カチオン成分として1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム(「Bmim」)を含む。一態様において、室温イオン性液体は、アニオン成分としてビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(「TFSI」)を含む。一態様において、室温イオン性液体は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(「[Bmim][TFSI]」)を含む。一態様において、室温イオン性液体は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(「BF4」)(「[Bmim][BF4]」)を含む。
【0084】
一態様において、本開示の電気化学セルは、第1の電極と、第2の電極と、電極間に配置されたセパレータと、本開示のポリキノンを溶解し得る以上に開示された電解質とを含み得る。
【0085】
電気化学セルの第2の電極は、相補的電気活性複合層を含む。相補的電気活性複合層は、本開示のポリキノンを含む複合体と同じでも異なってもよい。相補的電気活性複合層は、第1の電極の複合体のポリキノンと同じでも異なってもよい電気活性種を含む。
【0086】
一態様において、相補的電気活性複合層は、第1の電極の複合体と同じポリキノンを含む。一態様において、相補的電気活性複合層は、第1の電極の複合体のポリキノンと異なる電気活性種(「第2の電気活性種」)を含む。第2の電気活性種は、第1の電極中に存在する第1の電気活性種を還元するための電子の供給源として機能し得る。同様に、第2の電気活性種は、第1の電気活性種の酸化中、電子のシンクとして機能してよい。第2の電気活性種は、例えば、ポリビニルフェロセン、ポリ(3-(4-フルオロフェニル)チオフェン)、又は第1の電気活性種(例えば、本開示のポリキノン)の第1の還元電位より少なくとも0.5ボルト正である還元電位を有する他のファラデー酸化還元種を含み得る。
【0087】
一態様において、第2の電極は、基材を更に含み得、この基材は、相補的電気活性複合層に近接して又はその間に配置され得る。基材は、相補的電気活性複合層に直接又は間接的に接触し得る。存在する場合、基材は、例えば、カーボンペーパー(処理済み、テフロン(登録商標)処理済み、又は未処理)、カーボンクロス、カーボン不織マット、又はカーボンナノチューブ不織マットを含み得る。一態様において、支持体は、第1の電極の複合体の同じ炭素質材料を含み得る。一態様において、第2の電極の基材は、伝導性材料であり、電気化学セル内の集電体として機能し得る。
【0088】
一態様において、第1の電極は負電極であり得、第2の電極は正電極であり得る。負電極及び正電極という用語は、標的ガスを取得又は放出する場合にのみ技術的に正確である場合があるが、便宜上及び明確化のために使用される。
【0089】
一態様において、第2の電極は、第1の電極の間に配置され得る。第1の電極の各々は、開示された複合体を含み得る。一態様において、第1の電極及び/又は第2の電極は、構成又は組成が同一であり得る。
【0090】
一態様において、電気化学セルは、第1の電極と第2の電極との間、例えば負極と正極との間に配置された、単一のセパレータを含む。セパレータは、各電極におけるそれぞれの電気化学反応が互いに干渉するのを防止し得る保護層として機能し得る。セパレータはまた、第1及び第2の電極を互いに又はエレクトロスイング吸着セル内の他の成分から電子的に分離して、短絡を防止することにも役立ち得る。本開示の利益を受ける当業者は、好適なセパレータを選択できるであろう。
【0091】
一態様において、電気化学セルは、第1の電極と第2の電極との間、例えば負極と正極との間に配置された、単一のセパレータを含む。電気化学セルは、並列構成及び直列構成の任意の好適な組合せでスタックを作るために組み合わせることができる。一態様において、電気化学セルは、2つ以上のセパレータを含み得る。例えば、当業者であれば、直列及び並列構成の選択された組合せに応じて、単一のセパレータが使用されてもよく、又は複数のセパレータが好ましい場合があることを理解するであろう。
【0092】
セパレータは、多孔質セパレータであり得る。多孔質セパレータは、いずれか好適な材料を含み得る。一態様において、多孔質セパレータは、ポリマーフィルム、例えばポリアミド、ポリオレフィン、ポリアラミド、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、又はそれらの組合せを含むフィルムを含み得る。ポリマーは、片面又は両面がセラミックナノ粒子でコーティングされてもよい。一態様において、多孔質セパレータは、セルロース、合成ポリマー材料、又はポリマー/セラミック複合材料を含み得る。セパレータの別の例としては、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)セパレータ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PVDF-アルミナ複合体セパレータ、又は微多孔質ポリエチレン若しくは微多孔質ポリプロピレン等微多孔質オレフィンを挙げることができる。
【0093】
電気化学セルは、電子を電極から隣接セル(直列積層構成)に又は電極から端子接続部(並列積層構成)に通す集電体を更に含み得る。集電体は、例えば、炭素、金属、又はそれらの組合せを含み得る。一態様において、集電体は、炭素を含み得る。炭素の好適な例としては、グラファイト、薄片化グラファイト、膨張グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブ、無定形炭素、グラフェン、又はそれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブを含んでもよい。カーボンナノチューブは、基本的に炭素であるが、ナノチューブ繊維は、ホウ素、窒素、又は様々な金属の1つ以上等他の原子を更に含んでもよい。一態様において、集電体は、金属を含み得る。金属は、Fe、Zn、Ti、Cu、Al、Ni、Mg、Sn、Cr、Mn、Au、Mo、W、In、V、Nb、Ag、それらの合金若しくは金属間化合物、又はそれらの組合せを含み得る。一態様において、合金は、304又は316ステンレス鋼等ステンレス鋼である。
【0094】
一態様において、炭素又は金属は、球状、薄片状、又は繊維状形態を有してもよい。一態様において、金属は、金属メッシュ、フォーム、フェルト、又はエキスパンドメタルの形をとってもよい。炭素又は金属粒は配向され得る。例えば、金属が繊維の形をとる場合、繊維は、長軸が集電体の主面に対して垂直な方向に配向されるように、例えば、繊維が表面と直交する、例えば面外方向に配向されるように配向され得る。
【0095】
一態様において、集電体は、炭素、金属、及び結合剤を含む複合体を含み得る。複合体における炭素又は金属は、複合体の全体積に対して10~98vol%の量で存在することができる。一態様において、複合体は、炭素又は金属を複合体の全体積に対して50~95vol%の量で含む。一態様において、複合体は、カーボンナノチューブ又はグラフェンを含み、カーボンナノチューブ又はグラフェンを複合体の全体積に対して10~40vol%の量で含み得る。複合体は、細孔を含んでもよく、細孔は、ポリマーを含んでもよい。
【0096】
結合剤は存在する場合、ポリマーを含み得る。結合剤は、熱硬化性又は熱可塑性結合剤であり得る。好適なポリマー結合剤としては、例えば、エポキシ、フェノリック、ビニルエステル、ポリアリーレンスルフィド、ポリベンゾオキサジン、イソシアネート、フルオロポリマー、ゴム、又はそれらの組合せを挙げることができる。代表的なポリマー結合剤としては、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニリデンジフルオリド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン-ブタジエン-ゴム、又はフッ素化ゴムを挙げることができる。上記のポリマー結合剤の1つを含む組合せが使用されてもよい。
【0097】
結合剤は、任意選択で、添加剤を更に含み得る。特定の添加剤としては、流促進剤、離型剤、又はそれらの組合せを挙げることができる。一態様において、ポリマー結合剤は架橋され得る。ポリマーは、電気絶縁体又は電気伝導体であり得る。例示的な電気伝導性ポリマーは、例えば、米国特許出願公開第2004/977797号で見ることができ、その内容が参照によりそれらの全体としてあらゆる目的で本明細書に組み込まれる。任意選択で、カーボンブラック、ナノチューブ、炭素繊維、グラフェン等の伝導性材料は、集電体の表面でポリマー結合剤に埋め込まれ得る。これは、特定の理論に拘泥することを望むものではないが、ガス拡散層等の隣接セル成分に対する接触抵抗を低減すると考えられる。
【0098】
一態様において、集電体は、任意選択で、集電体の表面の少なくとも一部分上に配置されたコーティングを含み得る。コーティングは、特定の理論に拘泥することを望むものではないが、腐食を低減し、イオン若しくはガス透過を遮断し、又はガス拡散層若しくは電極への電気接触を改善するように機能し得る。コーティングは存在する場合、炭素、金属、合金、若しくは金属間化合物材料、又はそれらの組合せを含むことができ、金属、合金、又は金属間化合物材料が、Ni、Zn、Ti、Sn、Au、V、Mo、Cr、又はそれらの組合せを含む。コーティングは、金属、合金、又は金属間化合物の酸化物、ホウ化物、窒化物、又は炭化物を含み得る。コーティング組成物の非限定的な例としては、酸化スズ、炭化チタン、炭化タングステン、炭化ジルコニウム、酸化インジウムスズ、酸化インジウム亜鉛、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、チタンニオブ酸化物、チタンタンタル酸化物、ランタンストロンチウムクロム酸化物、ランタンストロンチウムコバルト酸化物、窒化チタン、窒化クロム、窒化バナジウム、又はそれらの組合せを挙げることができる。例えば、一態様において、集電体は、Fe、Ni、若しくはAu等の金属、又はTiN等の耐食材料でメッキされ得る。一態様において、コーティングは、ポリマーを含み得る。ポリマーコーティングの例は、例えば、米国特許出願公開第2007/0298267号に記載されており、その内容が参照によりそれらの全体としてあらゆる目的で本明細書に組み込まれる。一態様において、コーティングは、電気伝導性ポリマーを含み得る。一態様において、コーティングは、上記の結合剤、及びカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、金、銀、又はそれらの組合せ等の伝導性材料の粒子を含み得る。一態様において、コーティングは、蒸着ダイヤモンド様炭素、又は炭素質ポリマーの熱分解の生成物を含む。
【0099】
集電体は、いずれか好適な多孔率を有してもよく、一態様において非多孔質である。一態様において、集電体は、標的ガス、例えば、二酸化炭素を事実上浸透させない。
【0100】
電気化学セルは、直列に積層されていてもよく、集電体は、イオンの輸送並びに反応物及び放出ガスの第1のセルから第2の隣接するセルへの輸送を遮断してもよい。更に、集電体は、機械構造及び安定性を電気化学セルに付与することができる。集電体は、任意選択で、ガスのセル全体への分布のための流場を提供するチャネルを形成するリブを含み得る。リブは、電気化学セルの両端に電子を通してもよく、任意選択で、望ましい構造的統合性を提供してもよい。リブは存在する場合、例えば、以上に開示された炭素、金属、複合体、又はそれらの組合せを含むことができ、任意選択で、コーティングを含むことができ、これらのそれぞれが以上に更に記載されている。リブは、集電体と同じ材料を含んでもよい。リブは、集電体と異なる材料を含んでもよい。リブは、製造時の厚さ許容差に対応するために、部分圧縮され得る材料を含んでもよい。例えば、リブは、電子導電性独立気泡フォーム又はガスケットを含んでもよい。リブは、集電体の表面に対して凸面又は凹面部分であってもよく、いずれか好適な断面形状、例えば矩形又は丸い形状を有し得る。
【0101】
一態様において、集電体の第1の面は、吸着性電極(例えば、第1の電極)に直面することができ、集電体の第2の反対側の面は、非吸着性対向電極(例えば、第2の電極)又はエンドプレートに直面する。一態様において、集電体の両面は、吸着性電極に直面し得る。吸着性電極に直面する集電体の側面は、流場を含んでもよい。集電体の側面、例えば、第1の面及び第2の面は、それぞれ独立して同じ又は異なる材料を含み得る。一態様において、導電性であり、イオン又はガスの輸送を遮断することができる材料等障壁材を含む介在層は、集電体の第1の面と第2の面との間に挿入され得る。一態様において、障壁材は、金属箔を含み得る。
【0102】
集電体は、装置の周囲をシーリングして援助する特徴を含み得る。そのような特徴は、溝、ステップ、ベベル、又はそれらの組合せを含み得る。そのような特徴は、例えば、米国特許出願公開第2002/0197519号に記載されており、その内容が参照によりそれらの全体としてあらゆる目的で本明細書に組み込まれる。
【0103】
集電体は、集電体の内部から延びるチャネルを更に含むことができ、好ましくはそれを通って、冷却材が流動し得る。冷却材チャネルは、当業者によって容易に決定され得るように、最高の発熱速度を有すると予想されるセルの辺りで冷却材流速が最高であるように整列され得る。平行な又は蛇行する構成の使用が述べられている。導電性フォーム又はメッシュ等フォーム又はメッシュが使用される一態様において、冷却材はフォーム又はメッシュを通って流動し得る。フォーム又はメッシュは、集電体の2層の間に設けられてもよい。一態様において、冷却材は、集電体の反対側の層間に設けられているひだ状又は波形構造を通って流動し得る。
【0104】
一態様において、集電体は、第1の面に反応ガス流用のチャネル及び第2の反対側の面に冷却材用のチャネルを含む第1のシートを含み得る。第1のシートは、第2のシートに結合され得る。これによって、シートの面と直交する電気伝導が行われながら、冷却材チャネルのための境界が形成される。第1のシートは、いずれか好適な方法、例えば、ろう付け、溶接、はんだ付け、積層、拡散接合、圧縮、又は接着接合によって第2のシートに結合され得る。冷却材チャネルは、第1及び第2の電極のための流場を含む隣接プレートを入れ子にすることによって形成され得る。冷却材チャネルは、米国特許第6,099,984号に記載されており、更に例示的な冷却材流パターンは、米国特許出願公開第2004/0209150号及び同第2003/0203260号に記載されている通り見られ、それらのそれぞれの内容が参照によりそれらの全体としてあらゆる目的で本明細書に組み込まれる。
【0105】
集電体は、集電体に接続されているセンサー、例えば、電圧センサー又は電圧検出用ワイヤを更に含み得る。一態様において、集電体は、発熱体を更に含み得る。
【0106】
一態様において、集電体は、アライメントピン等アセンブリを促進する部材を含み得る。或いは、フレームを集電体の周辺に設けて、アライメント又はシーリングを援助してもよい。様々な好適な集電体構成要素の例は、米国特許出願公開第2003/0022052号に見られ、この内容が参照によりそれらの全体としてあらゆる目的で本明細書に組み込まれる。
【0107】
電気化学セルは、任意選択で、ガス流場を更に含み得る。ガス流場は存在する場合、第1の電極と集電体との間に配置され得る。ガス拡散層が電気化学セル中に存在しない場合、ガス流場は、セパレータと反対側で、第1の電極に隣接して配置され得る。一態様において、ガス流場は、集電体に隣接して配置することができ、又は集電体の面は、流場を含んでもよい。流場は、反応流体が流入口から流出口に流れるように導く構造を含み得る。特定の理論に拘泥することを望むものではないが、流場は、電極領域に向かう均一な反応物流をもたらすように機能する。好ましくは、流場は、電極領域に向かう均一な反応物流、低い流障壁、例えば、低い圧力低下、及び電極から流場を通って集電体への好適な電気伝導をもたらす。
【0108】
ガス流場は、任意選択で、ガス拡散層を更に含み得る。ガス拡散層は、セパレータと反対側で、第1の電極に隣接して配置され得る。ガス拡散層は、多孔質導電性材料を含み得る。一態様において、ガス拡散層は、例えば、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、又はそれ以上の多孔率を有する。一態様において、ガス拡散層は、85%以下、90%以下、又はそれより大きい値以下の多孔率を有する。これらの範囲の組合せが可能である。例えば、一態様において、第1の電極のガス拡散層は、60%以上、かつ90%以下の多孔率を有する。他の多孔率もまた可能である。ガス拡散層に好適な材料の例としては、カーボンペーパー(処置済み、PTFE処置済み、又は未処置)、カーボンクロス、又は不織炭素繊維若しくはカーボンナノチューブマットが挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
一態様において、流場は、多孔質フォーム又はメッシュを含み得る。フォーム又はメッシュは、伝導性接着剤、溶接、熱結合、又は焼結によって非多孔質プレートに結合され得る。
【0110】
流場は、チャネルを含み得る。チャネルは、2つ以上のリブによって画定され得る。一態様において、チャネル、リブ、又は両方はそれぞれ独立して、少なくとも0.1mm、少なくとも0.2mm、少なくとも0.3mm、少なくとも0.4mm、少なくとも0.5mm、少なくとも0.6mm、少なくとも0.8mm、少なくとも0.9mm、少なくとも1mm、少なくとも2mm、少なくとも3mm、少なくとも4mm、少なくとも5mm、少なくとも6mm、少なくとも7mm、少なくとも8mm、又は少なくとも9mmの平均幅を有し得る。一態様において、チャネル、リブ、又は両方はそれぞれ独立して、10mm以下、9mm以下、8mm以下、7mm以下、6mm以下、5mm以下、4mm以下、3mm以下、2mm以下、1mm以下、0.9mm以下、0.8mm以下、0.7mm以下、0.6mm以下、0.5mm以下、0.4mm以下、0.3mm以下、又は0.2mm以下の平均幅を有し得る。チャネル及び/又はリブの上記平均幅の組合せも可能である。
【0111】
一態様において、チャネル、リブ、又は両方はそれぞれ独立して、少なくとも0.1mm、少なくとも0.2mm、少なくとも0.3mm、少なくとも0.4mm、少なくとも0.5mm、少なくとも0.6mm、少なくとも0.8mm、少なくとも0.9mm、少なくとも1mm、少なくとも2mm、又は少なくとも3mmの平均深さを有し得る。一態様において、チャネル、リブ、又は両方はそれぞれ独立して、4mm以下、3mm以下、2mm以下、1mm以下、0.9mm以下、0.8mm以下、0.7mm以下、0.6mm以下、0.5mm以下、0.4mm以下、0.3mm以下、又は0.2mm以下の平均深さを有し得る。チャネル及び/又はリブの上記平均深さの組合せも可能である。
【0112】
流場を製造する様々な方法、例えば、機械加工、射出成形、圧縮成形、押出、エンボス加工、又は抜き打ちが使用されてもよい。例示的な方法は、例えば、米国特許出願公開第2004/0151975号及び同第2003/0022052号に記載されており、それらのそれぞれの内容が参照によりそれらの全体としてあらゆる目的で本明細書に組み込まれる。一態様において、流場は、例えば、米国特許出願公開第2002/0081477号(その内容が参照によりそれらの全体としてあらゆる目的で本明細書に組み込まれる)に記載されているように、1つのチャネルから隣接するチャネルへの流を定める連結器を備えたひだ状金属を含み得る。
【0113】
流場の流パターンは、例えば、平行、蛇行、又は交互嵌合流をもたらすいずれか好適な構成を有することができる。蛇行流パターンの非限定的な例は、米国特許第6,309,773号に記載されており、その内容が参照によりそれらの全体としてあらゆる目的で本明細書に組み込まれる。流チャネルは、均一な横断面を有することができ、又は例えば、反応物のセル領域全体への好適な分布をもたらす先細り又は狭窄した領域を有し得る。流チャネルは、例えば、反応物の電極への輸送を改善し得る乱れを引き起こす分裂又は障害を含んでもよい。例示的な流チャネルは、米国特許第6,756,149号に記載されており、その内容が参照によりそれらの全体としてあらゆる目的で本明細書に組み込まれる。流場パターン及び寸法は、セル中の各流場について同じであってもよく、又は当業者によって容易に決定され得るように、スタック内のセルの位置及び流場に直面する電極の性質によって変わり得る。一態様において、集電体の両面上のチャネルが存在する場合、チャネルを入れ子にして、スタックの厚さを低減し得る。
【0114】
一態様において、マニホールドを使用して、プロセスガス、例えば、反応ガスをエレクトロスイング吸着セルに送達し、エレクトロスイング吸着セルから生成ガス、例えば、放出ガスを運搬し得る。マニホールドは、ガスを分布させ得る。マニホールド長さや横断面寸法等のパラメータは、圧力低下等好適な特性をもたらすように選択され得る。マニホールドはまた、好ましくはガスの漏出も防止し得る。使用され得る例示的なマニホールド設計としては、米国特許第6,159,629号;同第6,174,616号;同第5,486,430号;同第5,776,625号;及び同第6,017,648号(それらのそれぞれの内容が参照によりそれらの全体としてあらゆる目的で本明細書に組み込まれる)に開示されたものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
一態様において、電気化学セルは、プロセスガスのエレクトロスイング吸着セルからの漏出を防止するシールを含み得る。シール領域に直面する表面、例えば、ガス拡散層、電極、又はセパレータの表面は、それらの周辺においてガス不透過性シーラントで含浸され得る。好ましくは、シールの幾何形状は、セパレータの穿刺、疲労、又は引裂きを生じ得る応力が導入されないように選択される。シールの厚さは、均一であってよく、又は電極の縁部及びガス拡散層に対してシールの様々な領域で変動し得る。シールは、電気絶縁性であり、化学的及び電気化学的に非反応性である。シールは、好適なoリング、ガスケット、又は接着剤を含み得る。シールは、集電体又はマニホールド等の部材の周辺上に被着させた流体不透過性材料のリッジ又はビードを含み得る。一態様において、シールは、エラストマーを含むことができ、熱硬化性又は熱可塑性であってよく、例えば、エポキシ、ゴム、ポリオレフィン、シリコーン、フルオロポリマー、フルオロエラストマー、又はクロロポリマーであり得る。一態様において、シールは、フォーム、例えば発泡ゴムを含み得る。一態様において、シールは、熱収縮性フィルムを含み得る。例示的なシール材料は、米国特許第6,440,597号及び米国特許出願公開第2006/0073385号に記載されており、それらのそれぞれの内容が参照によりそれらの全体としてあらゆる目的で本明細書に組み込まれる。
【0116】
一態様において、シールがガスケットである場合、ガスケットは、任意選択で、好ましくは隣接材料、例えば、集電体材料の熱膨張係数に匹敵するガスケット材料の熱膨張係数を実現し得る充填剤を含み得る。例示的な充填剤としては、ガラス、ポリスチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、又はシリカ若しくはアルミナ等の絶縁性金属酸化物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0117】
好適なシールは、例えば、米国特許出願公開第2003/0031914号(その内容が参照によりそれらの全体としてあらゆる目的で本明細書に組み込まれる)に記載されているように、いずれか好適な方法、例えば、結合性ポリマーをセルの縁部の周りの溝に注入することによって製造され得る。方法は、例えば、米国特許出願公開第2003/0072988号(その内容が参照によりそれらの全体としてあらゆる目的で本明細書に組み込まれる)に記載されているように、溝付き表面を対応して造形されたガスケットを形成する工程を含み得る。一態様において、シーラント材料は、集電体上又はガス拡散層、電極、セパレータ、若しくはそれらの組合せのアセンブリ上にコーティング、噴霧、積層、又は射出成形され得る。シーラントは、セルの外部に直面する縁部を被包し得る。シールの幾何形状の例は、米国特許出願公開第2007/0231619号、同第2007/0042254号、及び同第2002/0172852号、並びに米国特許第6,261,711号に記載されており、それらのそれぞれの内容が参照によりそれらの全体としてあらゆる目的で本明細書に組み込まれる。一態様において、セパレータの反対側のガスケットは、任意選択でセパレータの周辺領域に含まれる貫通孔を通して互いに接続され得る。
【0118】
シーリングを改善するために、一態様において、セパレータは、周辺領域において非多孔質であり得る。セパレータを非多孔質にする方法は、セパレータの材料(例えば、ポリマー材料)を流すのに十分な温度でセパレータをホットプレスし、それによって細孔を充填する工程を含む。セパレータは、ガスケットにホットプレス若しくは熱結合され、又はシーラントで接着され得る。
【0119】
熱を電気化学セルから除去して、内部温度が電気化学セルを損傷するおそれのある温度を超えるのを妨げることが有利であり得る。熱除去は、先に論じられた冷却材チャネルの使用によって達成され得る。一態様において、電気化学セルは、空気を電気化学セルの面全体に吹きかけることによって冷却され得る。一態様において、電気化学セルは、面に沿った又は電気化学セル内のチューブ又は導管に通して冷却材を流すことによって冷却され得る。一態様において、集電体は、いかなる冷却材チャネルもなくてよく、冷却は、プロセスガスを冷却材として効果的に使用して、電気化学セルを通ったプロセスガスの流速を制御することによって実現され得る。この冷却方法は、プロセスガス(反応ガス)が空気である場合特に有利であり得る。
【0120】
一態様において、電気化学セルの少なくとも一部分は加熱され得る。例えば、電気化学セルの端部部分を加熱することができ、又は電気化学セルの端部におけるセル(例えば、「端セル」)を加熱することができる。特定の理論に拘泥することを望むものではないが、電気化学セルを加熱することにより、より高い捕獲率を可能にすることができ、又は湿ったプロセスガスからの水分凝縮を妨げることができる。電気抵抗発熱体は、例えば、エンドプレート又はマニホールドに隣接して組み込まれ又は配置され得る。
【0121】
電気化学セルの両端に圧力を印加することにより、電気化学セル内の成分間の接触抵抗、例えば、流場とガス拡散層都の間の接触抵抗を低減するのが有利であり得る。加圧は、シール気密性の改善にも有利であり得る。圧力は、例えば、タイロッド又は外部クランプを使用して、電気化学セルの両端に印加され得る。タイロッドは、シール及びマニホールドの内又は外にあり得る。機械故障につながり得る機械的応力の領域を局在させることなく、圧力を均一に印加するのが好ましいことがある。当業者は、均一な圧力をかけ、応力集中を回避するワッシャー、ディスクバネ、コイルバネ、ベルヴィルワッシャー、ナット、クランプ、フレーム、ファスナー、コレット、楔、又は圧力プレートの設計に精通している。圧縮アセンブリの例は、例えば、米国特許第6,190,793号に記載されており、その内容が参照によりそれらの全体としてあらゆる目的で本明細書に組み込まれる。
【0122】
本開示のポリキノンは、標的ガスに対して反応性であり得る。標的ガスは求電子性分子である。一態様において、標的ガスは、ルイス酸ガス又はブレンステッド酸ガス、好ましくはルイス酸ガスである。標的ガスは、ポリキノンが還元状態である場合、例えば、還元状態のポリキノンに結合することによってポリキノンと複合体又は付加体を形成することができる。標的ガスは、二酸化炭素(CO2)、二酸化硫黄(SO2)又は三酸化硫黄(SO3)等の酸化硫黄種、硫酸ジメチル等の有機硫酸塩(R2SO4、ここで、各Rは、独立して水素、C1~12アルキル、又はC6~20アリールである)、二酸化窒素(NO2)又は三酸化窒素(NO3)等の酸化窒素種、リン酸トリメチル等のリン酸エステル(R3PO4、ここで、各Rは、独立して水素、C1~12アルキル、又はC6~20アリールである)、ギ酸メチル又はアクリル酸メチル等のエステル(RCOOR'、ここで、各Rは、独立して水素、C1~12アルキル、又はC6~20アリールであり、各R'は、独立してC1~12アルキル又はC6~20アリールである)、ホルムアルデヒド又はアクロレイン等のアルデヒド(RCHO、ここで、各Rは、独立して水素、C1~12アルキル、又はC6~20アリールである)、アセトン等のケトン(R2CO、ここで、各Rは、独立して水素、C1~12アルキル、又はC6~20アリールである)、イソシアン酸メチル等のイソシアネート(RNCO、ここで、各Rは、独立して水素、C1~12アルキル、又はC6~20アリールであり、各R'は、独立してC1~12アルキル又はC6~20アリールである)、イソチオシアネート(RNCS、ここで、各Rは、独立して水素、C1~12アルキル、又はC6~20アリールであり、各R'は、独立してC1~12アルキル又はC6~20アリールである)、トリメチルボラン等のボラン(BR3、ここで、各Rは、独立して水素、C1~12アルキル、又はC6~20アリールである)、又はトリメチルボレート等のボレート(R3BO3、ここで、各Rは、独立して水素、C1~12アルキル、又はC6~20アリールである)を含み得る。標的ガスは、任意選択で、上記の標的ガス種のいずれかの組合せを含み得る。
【0123】
一態様において、還元状態のポリキノンは、少なくとも101M-1、好ましくは101~1020M-1、より好ましくは103~1020の標的ガス(例えば、二酸化炭素)との結合定数を有し得る。一態様において、標的ガスとの結合定数は、103~1020M-1、105~1018M-1、又は108~1015M-1であってもよい。
【0124】
したがって、ポリキノンを含む電気化学セルは、ガス混合物を電気化学セルと接触させる場合、標的ガスのガス混合物からの分離に特に有用であってよく、したがってガス分離システムにおける使用に特に好都合である。ガス分離システムは、ガス入口及びガス出口と流体連通している複数の電気化学セルを含み得る。一態様において、ガス分離システムは、ガス混合物と流体接触している接触器ユニットを更に含み得る。一態様において、接触器ユニットは、電解質と流体連通し得る。接触器ユニットは、例えば、ガス吸着装置、ガス吸収器、又はそれらの組合せを含み得る。
【0125】
入力ガスとも呼ばれるガス混合物は、電気化学セルへの曝露時に少なくとも部分的に分離され得る。ガス混合物は、例えば、周囲空気(例えば、外気等の周囲環境からの空気)であり得る。一態様において、ガス分離システムは、直接的な空気捕捉のために使用され得る。本明細書に記載のシステム及び方法は、事前濃縮工程を必要とせずに、(例えば、温室効果ガスレベルを低減するために)二酸化炭素等の標的ガスを周囲空気から直接除去するのに有用であり得る。本開示の特定の態様は、本明細書に記載のシステム及び方法を、直接的な空気捕捉(例えば、酸素等の周囲空気の主要成分と反応することが熱力学的に避けられる一方で、標的ガスと結合する能力)にとって特に有用にすることができる。
【0126】
一態様において、流体混合物中の標的ガスの濃度は、例えばガス混合物が周囲空気である場合、比較的低い。例えば、電気化学セルへの曝露前のガス混合物中の標的ガスの濃度は、500ppm以下、又は450ppm以下、又は400ppm以下、又は350ppm以下、又は300ppm以下、又は200ppm以下であり得る。一態様において、ガス混合物中の標的ガスの濃度は、100ppm、又は50ppm、又は10ppmという低い値であり得る。
【0127】
一態様において、ガス混合物(例えば、入力ガス混合物)は、換気空気である。換気空気は、囲い込まれた又は少なくとも部分的に囲い込まれた場所における空気(例えば、囲い込まれた場所において循環されている空気)であり得る。ガス混合物(例えば、換気空気)が配置され得る場所の例としては、密閉された建物、部分的に換気された場所、自動車車室、有人潜水艇、航空機等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
換気空気中の標的ガスの濃度は、周囲空気より高いが、工業プロセスに典型的な濃度より低いことがある。一態様において、電気化学セルへの曝露前のガス混合物中の標的ガスの濃度は、5,000ppm以下、又は4,000ppm以下、又は2,000ppm以下、又は1,000ppm以下である。一態様において、ガス混合物中の標的ガスの濃度は(例えば、囲い込まれた空間の換気空気/空気である場合)、1,000ppm、又は800ppm、又は500ppm、又は200ppm、又は100ppm、又は10ppmという低い値である。
【0129】
一態様において、ガス混合物は、酸素ガス(O2)を含む。一態様において、ガス混合物は、(例えば、電気化学セルへの曝露前に)比較的高濃度の酸素ガスを有する。本明細書に記載のシステム及び方法の特定の態様(例えば、特定の電気活性種の選択、システム内のガスの取り扱い方法等)は、酸素ガスが存在するガス混合物中の標的ガスを有害な干渉なしに捕捉する能力に寄与し得る。一態様において、酸素ガスは、(例えば、電気化学セルへの曝露より前の)ガス混合物中に0体積%以上、又は0.1体積%以上、又は1体積%以上、又は2体積%以上、又は5体積%以上、又は10体積%以上、又は20体積%以上、又は50体積%以上、又は75体積%以上、又は90体積%以上、95体積%以上の濃度で存在する。一態様において、酸素ガスは、ガス混合物中に99体積%以下、又は95体積%以下、又は90体積%以下、又は75体積%以下、又は50体積%以下、又は25体積%以下、又は21体積%以下、又は10体積%以下、又は5体積%以下、又は2体積%以下の濃度で存在する。
【0130】
一態様において、ガス混合物は水蒸気を含む。ガス混合物は、周囲空気若しくは換気空気であり又はそれを含むので、例えば、水蒸気を含み得る。一態様において、ガス混合物は(例えば、電気化学セルへの曝露前に)、比較的高い相対湿度を有する。例えば、一態様において、ガス混合物は、-50~140℃の範囲の少なくとも1つの温度で、0%以上、又は5%以上、又は10%以上、又は25%以上、又は50%以上、又は75%以上、又は90%以上の相対湿度を有し得る。一態様において、ガス混合物は、-50~140℃の範囲の少なくとも1つの温度で、100%以下、又は95%以下、又は90%以下、又は75%以下、又は50%以下、又は25%以下、又は10%以下の相対湿度を有し得る。
【0131】
標的ガスは、ガス分離システムの電気化学セル間に電位差を印加することによって、ガス分離システム内のガス混合物から分離され得る。本開示の利益を受ける当業者であれば、電気化学セルにわたって電位を印加する方法を理解するであろう。例えば、電位は、負電極と正電極を分極させることができる好適な電源に負電極及び正電極を接続することによって印加され得る。一態様において、電源は直流電圧であり得る。好適な電源の非限定例としては、電池、電力網、回生電源(例えば、風力発電機、光電池、潮力発電機)、発電機等、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0132】
電位差は、ガス混合物が電気化学セルに曝露される時間の少なくとも一部の間、電気化学セルに印加され得る。一態様において、電位差は、ガス混合物を電気化学セルに曝露する前に印加され得る。
【0133】
充電モード中に、正の電圧を電気化学セルに印加することによって、負極において酸化還元反応が起こり、ポリキノンが還元される。本明細書で論じられるように、ポリキノンは、酸化状態である場合に比べて還元状態である場合に高い標的ガスへの親和性を有するように選ばれる。ポリキノンを還元し、ガス混合物を第1の電極を横断して通すことによって、標的ガスはポリキノンに結合し得る。このように、標的ガスは、ガス混合物から除去されて、(例えば、初期のガス混合物に比べて少ない量の標的ガスを含む)処置済みガス混合物を提供する。
【0134】
充電モード中に電気化学セルに対して印加される電位差は、特定の電圧を有し得る。電気化学セルにわたって印加される電位差は、例えば、第1の電気活性種の少なくとも1つの還元状態の生成のための還元電位、並びに第2の電極におけるポリキノンの還元状態と酸化状態との間の相互変換のための標準電位に依存し得る。電圧は、スタック電気化学抵抗によって乗算される電流を更に含む。一態様において、電位差は、少なくとも0V、又は少なくとも0.1V、又は少なくとも0.2V、又は少なくとも0.5V、又は少なくとも0.8V、又は少なくとも1.0V、又は少なくとも1.5Vである。一態様において、電位差は、2.0V以下、又は1.5V以下、又は0.5V以下、又は0.2V以下である。
【0135】
一態様において、例えば、ポリキノンが式(I)によるものである場合、ポリキノンは、例えば、以下で示すように、その還元状態の少なくとも1つに還元され得る。
【0136】
【0137】
一態様において、ポリキノンが標的ガス、例えば二酸化炭素の存在下で還元される場合、ポリキノンの還元形は二酸化炭素と結合し得る。
【0138】
【0139】
一態様において、ポリキノンが第1の電極において還元されている間、電気活性種(例えば、ポリビニルフェロセン等の酸化還元活性ポリマー)が第2の電極において酸化されている。充電モードの間、電気活性種の酸化は、ポリキノンの還元を駆動するための電子の供給源をもたらす。
【0140】
以上に示された例示的な反応は一方向で起こることが示されるが、いくらかの可逆性が提示され得ることが理解されるであろう。当業者に理解されるように、類似の反応は、異なる電気活性種で起こり得る。
【0141】
一態様において、本明細書に記載のプロセスの間に、比較的多量の標的ガスがガス混合物から除去される。比較的多量の標的ガスを除去することは、場合によっては、環境上の理由から大気中に放出されると有害となり得るガスを捕捉する等、様々な用途のいずれに対しても有益であり得る。例えば、標的ガスは、二酸化炭素を含むことができ、ガス混合物から比較的多量の二酸化炭素を除去することは、プロセス(例えば、工業プロセス又は輸送プロセス)の温室効果ガスの影響を制限したり、又は(加熱及び空調プロセスに関する熱力学的理由又は環境的理由のいずれかにより)室内又は大気中の二酸化炭素の量を低減したりするためにも有益であり得る。
【0142】
一態様において、処置済みガス混合物(例えば、電気化学セルに曝露されるとある量の標的ガスが除去されるガス混合物)中の標的ガスの量は、処置前の最初のガス混合物中の標的ガスの量(例えば、電気化学セルに曝露される前のガス混合物中の標的の量)の50%以下、25%以下、10%以下、5%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、0.1%以下(体積%)である。一態様において、処置済みガス混合物中の標的ガスの量は、処置前の最初のガス混合物中の標的ガスの量の0.001%以上、0.005%超、0.01%以上、0.05%以上、0.1%以上、0.5%以上、1%以上、2%以上、5%以上(体積%)である。
【0143】
一態様において、標的ガスの少なくとも一部分がポリキノンに結合した後、第2の電位差が電気化学セルの両端に印加され得る。第2の電位差は、その第1の電位差と異なることがある。一態様において、第2の電位差を印加することによって、ポリキノンと結合している標的ガスの一部分又は全部を放出して、第2の処置済みガス混合物を生成する工程が行われる。第2の処置済みガス混合物は、投入ガス混合物より多量の標的ガスを有し得る。例えば、標的ガスは、第2の処置済みガス混合物中に、その含有量が10体積%(vol%)、20vol%、50vol%、100vol%、200vol%、1000vol%、及び/若しくは最大で2,000vol%、5,000vol%、10,000vol%であり、又は第1のガス混合物中の含有量より高いような量で存在してもよい。
【0144】
ガス分離システムは、各電気化学セルの負極及び正極を、各電気化学セルの負極と正極の両端に電位差を印加するように構成されている電源に接続する外部回路を含み得る。ガス分離システムの電気化学セルの各々は、上記の通りであり得る。ガス分離システムの電気化学セルは、並列又は直列を含む、当技術分野で一般に知られている様々な構成に従って積層され得る。一態様において、キノン含有ポリマーは、電気化学セルの電解質に溶解することができ、ガス混合物は、ガス分離システムの操作中に、溶解したキノン含有ポリマーを含む電解質と流体接触し得る。一態様において、ガス分離システムの電気化学セルは、ガス混合物に直接接触していない必要がある。一態様において、ガス分離システムは、ガス混合物と流体接触し得る吸収器ユニットを更に含み得る。
【0145】
一態様において、ガス分離システムは、電気化学セルの第1のセットと電気化学セルの第2のセットとを含む。第1のセット及び第2のセットの各々は、本開示全体を通して説明される1つ以上の電気化学セルを含む。第1のセット及び第2のセットは、セルの一方のセットが充電モードで動作し、ガス混合物から標的ガス(例えば、CO2)を捕捉する一方で、セルの他方のセットが放電モードで動作して標的ガス(例えば、CO2)を放出するように、交互に並行して動作するように構成され得る。システムは、電気化学セルのセットの各々のための別々のハウジングを含み得る。システムは、所望の様式で流れを導くように配置された導管及び弁を更に含み得る。ガス分離システムは、ガス混合物(例えば、ガス流)のほぼ連続的な分離を可能にし得、ガス混合物は、所定の時点で、充電/捕捉モードで動作するセルのセットに向けられる一方、別の標的ガスに富む処理済み混合物は、放電/放出モードで動作するセルの他のセットにより生成される。更に、電気化学セルの追加のセットは、用途の必要性に応じて、並列又は直列に追加され得る。
【0146】
ガス混合物(例えば、入力ガス流等のガス流)は、特定の流量でガス分離システムに導入することができる。一態様において、流量は、0.001リットル/秒(L/s)以上、0.005L/s以上、0.01以上、0.05L/s以上、0.1L/s以上、0.5L/s以上、1L/s以上、5L/s以上、10L/s以上、10 50L/s以上、又は100L/s以上であってもよい。一態様において、ガス混合物(例えば、投入ガス流等のガス流)の流速は、500L/s以下、400L/s以下、300L/s以下、200L/s以下、100L/s以下、50L/s以下、10L/s以下、1L/s以下、0.5L/s以下、又は0.1 L/s以下であり得る。上記の範囲の好適な組合せが述べられている。
【0147】
一態様において、標的ガスを放出する工程の間又は後に、方法は、電気化学セルに真空条件を適用して、放出された標的ガスの少なくとも一部又は全部を電気化学セルから除去することを更に含む。本開示の利益を受ける当業者であれば、電気化学セルに真空条件を適用するための好適な技術及び装置を理解するであろう。例えば、真空ポンプは、電気化学セルのガス出口に流体接続され得る。真空ポンプは、電気化学セルベッドと下流位置との間に負の圧力差を生じさせるように動作することができる。この真空状態は、上述の放出工程中に放出された標的ガスを電気化学セルから流出させるのに十分な力をもたらし得る。真空条件は、標的ガスの放出中又は放出後の電気化学セル内の圧力が、760torr以下、700torr以下、500torr以下、100torr以下、50torr以下、10torr以下、及び/又は5torr、1torr、0.5torr、0.1torrという低い値となるように適用できる。
【0148】
一態様において、第1の電極の複合体は、標的ガス(例えば、CO2)を吸収する特定の能力を有する。例えば、複合体は、1平方メートル当たり少なくとも0.01モル(mol/m2)、少なくとも0.02mol/m2、少なくとも0.05mol/m2、又はそれ以上の吸収能力を有し得る。一態様において、複合体は、0.2mol/m2以下、0.08mol/m2以下、0.05mol/m2以下、0.03mol/m2以下、又はそれ以下の吸収能力を有し得る。例えば、複合体は、少なくとも0.01mol/m2及び0.2mol/m2以下、又は少なくとも0.02mol/m2及び0.08mol/m2以下の吸収能力を有し得る。
【0149】
一態様において、第1の電極の複合体は、5cm2以上、8cm2以上、10cm2以上、又は最大で10cm2、最大で20cm2若しくはそれ以上の、例えば、ガス混合物に曝露されている特定の表面積を有し得る。
【0150】
システムの種々の構成要素、例えば、電極(例えば、負電極、正電極)、電源、電解質、セパレータ、容器、回路部品、絶縁材料等は、当業者によって種々の構成要素のいずれかから作製され得る。構成要素は、環境にやさしい(green)状態若しくは焼き付け(fired)状態で、成形、機械加工、押出し、プレス、アイソプレス、印刷、浸透、被覆を施すか、又は他の任意の好適な技術によって形成し得る。
【0151】
本明細書に記載される電極(例えば、負電極、正電極)は、任意の好適なサイズ又は形状を有し得る。形状の非限定的な例としては、シート、立方体、円筒、中空管、球体等が挙げられる。電極は、それらが使用される用途(例えば、換気空気からのガスの分離、直接空気捕捉等)に応じて、任意の好適なサイズであり得る。更に、電極は、電極を別の電極、電源、及び/又は別の電気デバイスに接続する手段を含み得る。当業者は、本明細書のシステムの構成要素を形成するための技術を容易に理解することができる。
【0152】
システムの様々な電気部品は、接続のための手段によって、少なくとも1つの他の電気部品と電気的に接続していてもよい。接続のための手段は、第1の構成要素と第2の構成要素との間に電気の流れが発生することを可能にする任意の材料であってよい。2つの電気部品を接続するための手段の非限定的な例は、伝導性材料(例えば、銅、銀等)を含むワイヤである。一態様において、システムは、2つ以上の構成要素(例えば、ワイヤと電極)の間の電気コネクタを含み得る。一態様において、ワイヤ、電気コネクタ、又は接続のための他の手段は、材料の抵抗が低くなるように選択され得る。一態様において、抵抗性は、システムの電極、電解質、又は他の成分の抵抗性より実質的に低くてもよい。
【0153】
本開示の電気化学セル及びガス分離システムは、更に米国特許出願第16/659,398号に記載されている通りであってよく、その内容が参照によりその全体としてあらゆる目的で組み込まれる。
【0154】
本明細書に記載された電気化学セル、システム、及び方法は、様々な用途で実施され得る。電気化学セル又はセルのセットの数は、必要に応じて、特定の用途の要件に合わせて規模を調整することができる。以下の態様は、用途のいくつかの非限定的な例を示す。一態様において、本明細書に記載されるシステム及び方法は、周囲空気から、並びに取り囲まれた空間、例えば、気密建造物、自動車車室(換気のための流入空気の加熱コストを低減するため)、並びにCO2レベルの増加が致命的となり得る潜水艦及び宇宙カプセルから、標的ガス(例えば、CO2)を除去することを目的とする。電力業界に向けた態様では、システム及び方法は、様々な濃度で燃焼後の二酸化炭素を捕捉するために使用され得る。一態様では、システム及び方法は、工業用煙道ガス又は工業プロセスガスから標的ガスを分離するのに適している。システム及び方法はまた、煙道ガスから二酸化硫黄や他のガスを捕捉するためにも使用され得る。石油及びガス産業に向けた態様では、開示されたシステム及び方法は、様々なプロセスから二酸化炭素及び他のガスを捕捉し、下流の圧縮又は処理のためにそれらのガスを転換するために使用され得る。開示されたシステム及び方法は、温暖及び寒冷な気候の温室を暖めるために使用される天然ガスの燃焼からの二酸化炭素を捕捉し、その後、植物が光合成で使用するために、すなわち、植物に栄養を与えるために、捕捉した二酸化炭素を温室内に転換するために適用され得る。
【0155】
本開示は、非限定的である以下の実施例によって更に例示される。
【実施例】
【0156】
ポリ(1,4-ジヒドロ-1,4-メタノ-6,7-ジメチルナフタレン-5,8-ジオン)の合成
ポリ(1,4-ジヒドロ-1,4-メタノ-6,7-ジメチルナフタレン-5,8-ジオン)を、
図1に示されたスキームに従って合成した。
【0157】
窒素グローブボックス中で、攪拌子を備えた20mLのシンチレーションバイアルに、1,4-ジヒドロ-1,4-メタノ-6,7-ジメチルナフタレン-5,8-ジオン(850mg、4.25mmol)及び乾燥トルエン(5mL)を投入した。得られた鮮黄色溶液に、モリブデンアルキリデンメタセシス触媒(「Schrock F6」;CAS:139220-25-0;33mg、43μmol)を固体として一括添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで過剰のベンズアルデヒド(500μL)を添加して、反応をクエンチした。次いで、反応混合物を1時間撹拌し、グローブボックスから取り出し、次いで、急速に撹拌しているMeOH(50mL)に滴下して加えた。得られた沈殿物を濾過により回収し、乾燥して、生成物ポリマーを淡黄褐色固体として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 5.42 (br, 1H); 5.28 (br, 1H); 4.30 (br, 2H); 2.82 (br, 1H); 1.97 (br, 7H).
【0158】
ポリ(1,4-ジヒドロ-1,4-メタノナフタレン-5,8-ジオン)の合成
ポリ(1,4-ジヒドロ-1,4-メタノナフタレン-5,8-ジオン)を、
図2に示されたスキームに従って合成した。
【0159】
窒素グローブボックス中で、攪拌子を備えた20mLのシンチレーションバイアルに、1,4-ジヒドロ-1,4-メタノナフタレン-5,8-ジオン(250mg、1.45mmol)及び乾燥クロロベンゼン(4mL)を投入した。得られた黄色溶液に、モリブデンアルキリデンメタセシス触媒(「Schrock F6」;CAS:139220-25-0;22mg、29μmol)を固体として一括添加した。反応混合物を室温で3時間撹拌し、次いで、過剰のベンズアルデヒド(100μL)を添加して、反応をクエンチした。次いで、反応混合物を1時間撹拌し、グローブボックスから取り出し、次いで、急速に撹拌しているMeOH(50mL)に滴下して加えた。得られた沈殿物を濾過により回収し、乾燥して、生成物ポリマーを灰色粉末として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 6.68 (br, 2H); 5.48 (br, 1H); 5.34 (br, 1H); 4.34 (br, 2H), 2.81 (br, 1H), 1.65 (br, 1H).
【0160】
ポリ(1,4-ジヒドロ-1,4-メタノアントラセン-9,10-ジオン)の合成
ポリ(1,4-ジヒドロ-1,4-メタノアントラセン-9,10-ジオン)を、
図3に示されたスキームに従って合成した。
【0161】
窒素グローブボックス中で、攪拌子を備えた2ドラムのバイアルに、1,4-ジヒドロ-1,4-メタノアントラセン-9,10-ジオン(125mg、0.56mmol)及び乾燥クロロベンゼン(2mL)を投入した。得られた黄色溶液に、モリブデンアルキリデンメタセシス触媒(「Schrock F6」;CAS:139220-25-0;8mg、10μmol)を固体として一括添加した。淡色の固体が反応混合物中に急速に生成する。反応混合物を室温で終夜(約16時間)撹拌し、次いで、過剰のベンズアルデヒド(100μL)を添加して、反応をクエンチした。次いで、反応混合物を1時間撹拌し、グローブボックスから取り出し、次いで、MeOH(50mL)に添加した。懸濁固体を濾過により回収し、乾燥して、生成物ポリマーを淡褐色粉末として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 8.04 (br, 2H); 7.67 (br, 2H); 5.60 (br, 1H); 5.39 (br, 1H); 4.55 (br, 2H); 3.09 (br, 1H); 0.83 (br, 1H).
【0162】
本開示は、更に以下の態様を包含する。
【0163】
態様1:式(I)~式(IV)の少なくとも1つの繰り返し単位又はそれらの水素化誘導体を含むキノン含有ポリマー
【0164】
【0165】
(式(I)~式(IV)中、X1は、-CH2-又は-O-であり、X2は、-CH2-又は-O-であり、X3は、-CH2-又は-O-であり、X4は、-CH2-又は-O-であり、R1及びR2は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、R3は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、又はチオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、mは、2~4であり、式(II)及び式(IV)の破線は、1つ以上の追加の縮合置換又は非置換アリール基の任意選択の存在を示し、但し、X1が-CH2-である場合、R1及びR2の少なくとも1つは水素でないことを条件とする)。
【0166】
態様2:キノン含有ポリマーが、式(I)によるものである、態様1に記載のキノン含有ポリマー。
【0167】
態様3:X1が-CH2-であり、R1が水素であり、R2が、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基である、態様2に記載のキノン含有ポリマー。
【0168】
態様4:X1が-CH2-であり、R1及びR2の少なくとも1つが、置換又は非置換C1~6アルキル基である、態様2に記載のキノン含有ポリマー。
【0169】
態様5:X1が-CH2-であり、R1及びR2が各々置換又は非置換C1~6アルキル基であり、好ましくはR1及びR2が各々メチル基である、態様4に記載のキノン含有ポリマー。
【0170】
態様6:X1が-O-である、態様2に記載のキノン含有ポリマー。
【0171】
態様7:R1及びR2が、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基である、態様6に記載のキノン含有ポリマー。
【0172】
態様8:R1及びR2が各々水素である、態様6に記載のキノン含有ポリマー。
【0173】
態様9:キノン含有ポリマーが、式(II)によるものである、態様1に記載のキノン含有ポリマー。
【0174】
態様10:X2が、-CH2-又は-O-であり、mが4であり、追加の縮合置換又は非置換アリール基が存在しない、態様9に記載のキノン含有ポリマー。
【0175】
態様11:R3のそれぞれの出現がハロゲンである、態様10に記載のキノン含有ポリマー。
【0176】
態様12:X2が、-CH2-又は-O-であり、mが2であり、ポリマーが、式(V)の繰り返し単位を含む、態様9に記載のキノン含有ポリマー
【0177】
【0178】
(式中、pは、0~4であり、R4は、それぞれの出現において独立してハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基である)。
【0179】
態様13:キノン含有ポリマーが、式(I)~式(IV)のいずれかによる繰り返し単位と異なる1つ以上の繰り返し単位を更に含むコポリマーである、態様1から12のいずれか一態様に記載のキノン含有ポリマー。
【0180】
態様14:架橋性基、接着促進基、可溶化基、又はそれらの組合せを含む1つ以上の繰り返し単位を更に含む、態様13に記載のキノン含有ポリマー。
【0181】
態様15:コポリマーが、式(IV)~式(VI)の1つ以上による繰り返し単位を更に含む、態様13又は14に記載のキノン含有ポリマー。
【0182】
【0183】
態様16:キノン含有ポリマーが、式(Ia)~式(IVa)の少なくとも1つの水素化された繰り返し単位を含む、態様1から15のいずれか一態様に記載のキノン含有ポリマー。
【0184】
【0185】
態様17:キノン含有ポリマーを作製する方法であって、方法が、式(IX)~式(XII)の少なくとも1つのキノン含有モノマーを
【0186】
【0187】
モリブデンアルキリデン触媒又はタングステンアルキリデン触媒の存在下に式(I)~式(IV)の少なくとも1つ又はその水素化誘導体の繰り返し単位を含むキノン含有ポリマーを提供するのに効果的な条件下で重合させる工程を含む、方法
【0188】
【0189】
(上記の式中、X1は、-CH2-又は-O-であり、X2は、-CH2-又は-O-であり、X3は、-CH2-又は-O-であり、X4は、-CH2-又は-O-であり、R1及びR2は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、R3は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、mは、2~4であり、式(II)、式(IV)、式(X)、及び式(XII)の破線は、1つ以上の追加の縮合置換又は非置換アリール基の任意選択の存在を示す)。
【0190】
態様18:キノン含有ポリマーを提供するのに効果的な条件が、20~100℃の温度及び1分~24時間、例えば1~5時間、又は2~3時間の時間を含む、態様17に記載の方法。
【0191】
態様19:基材上に配置されたキノン含有ポリマーを含む複合体であって、キノン含有ポリマーが、式(I)~式(IV)の少なくとも1つの繰り返し単位を含む、複合体
【0192】
【0193】
(式(I)~式(IV)中、X1は、-CH2-又は-O-であり、X2は、-CH2-又は-O-であり、X3は、-CH2-又は-O-であり、X4は、-CH2-又は-O-であり、R1及びR2は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、R3は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C6~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、アミン基、アミド基、エステル基、又はケトン基であり、mは、2~4であり、式(II)及び式(IV)の破線は、1つ以上の追加の縮合置換又は非置換アリール基の任意選択の存在を示す)。
【0194】
態様20:基材が、炭素質材料を含む、態様19に記載の複合体。
【0195】
態様21:キノン含有ポリマーが、少なくとも部分架橋される、態様19又は20に記載の複合体。
【0196】
態様22:多孔質セパレータと、多孔質セパレータの表面上、多孔質セパレータの細孔中、又はそれらの組合せの態様19から21のいずれか一態様に記載の複合体とを含む電極アセンブリ。
【0197】
態様23:態様19から21のいずれか一態様に記載の複合体を含む電気化学セル。
【0198】
態様24:態様19から21のいずれか一態様に記載の複合体を含む第1の電極と、相補的電気活性層を含む第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間の第1のセパレータとを含む、態様23に記載の電気化学セル。
【0199】
態様25:複合体が、電解質を更に含む、態様24に記載の電気化学セル。
【0200】
態様26:ガス入口及びガス出口と流体連通している複数の電気化学セルを含むガス分離システムであって、複数の電気化学セルの各々が、態様24又は25に記載のものである、ガス分離システム。
【0201】
態様27:ガス分離システムが、ガス混合物と流体接触している接触器ユニットを更に含む、態様26に記載のガス分離システム。
【0202】
態様28:接触器ユニットが、電解質と流体連通している、態様27に記載のガス分離システム。
【0203】
態様29:態様1から16のいずれか一態様に記載のキノン含有ポリマーを含む電気化学セル。
【0204】
態様30:第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間のセパレータと、第1の電極又は第2の電極の少なくとも1つと接触している電解質とを含み、第1の電極、第2の電極、セパレータ、又は電解質の少なくとも1つが、キノン含有ポリマーを含む、態様29に記載の電気化学セル。
【0205】
態様31:電解質が、キノン含有ポリマーを含む、態様30に記載の電気化学セル。
【0206】
態様32:態様31に記載の電気化学セルを含むガス分離システムであって、電気化学セルが、ガス入口及びガス出口と流体連通しており、キノン含有ポリマーを含む電解質が、ガス混合物と流体接触している、ガス分離システム。
【0207】
態様33:電気化学セルと分離している接触器ユニットを更に含み、そこで電解質がガス混合物と接触する、態様32に記載のガス分離システム。
【0208】
態様34:接触器ユニットが、ガス吸着装置、ガス吸収器、又はそれらの組合せを含む、態様33に記載のガス分離システム。
【0209】
態様35:複数の電気化学セルを含む、態様32に記載のガス分離システム。
【0210】
態様36:態様1から16のいずれか一態様に記載のキノン含有ポリマー、態様19から21のいずれか一態様に記載の複合体、又は態様23から25のいずれか一態様に記載の電気化学セルを含むエネルギー貯蔵デバイス。
【0211】
態様37:態様1から16のいずれか一態様に記載のキノン含有ポリマー、態様19から21のいずれか一態様に記載の複合体、又は態様23から25のいずれか一態様に記載の電気化学セルを含むエレクトロクロミックデバイス。
【0212】
態様38:標的ガスを含む流体混合物から標的ガスを分離する方法であって、方法が、流体混合物を、式(I)~式(IV)による繰り返し単位を含む還元状態のキノン含有ポリマーと接触させて、標的ガスと還元状態のキノン含有ポリマーとの間でアニオン付加体を形成する工程を含む、方法。
【0213】
組成物、方法、及び物品は、代替的に、本明細書に開示された任意の好適な材料、工程、又は成分を含むか、それらから成るか、又はそれらから本質的に成ることができる。組成物、方法、及び物品は、追加的に又は代替的に、組成物、方法、及び物品の機能若しくは目的の達成に必要でない任意の材料(若しくは種)、工程、若しくは成分を含まないように、又は実質的に含まないように、製造され得る。
【0214】
本明細書に開示された全ての範囲は、終点を包含し、終点は、独立して互いに組合せ可能である。「組合せ」は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物等を包含する。「第1」、「第2」等の用語は、順序、数量、又は重要性を示すものではなく、ある要素を他の要素から区別するために使用されるものである。用語「a」及び「an」並びに「the」は、数量の制限を示すものではなく、本明細書において特に指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方を意味すると解釈される。「又は」は、明確に別段の記載がない限り、「及び/又は」を意味する。本明細書全体を通して「一態様」への言及は、その態様に関連して説明される特定の要素が、本明細書に記載される少なくとも1つの態様に含まれ、他の態様において存在してもしなくてもよいことを意味する。本明細書で使用される「それらの組合せ」という用語は、列挙された要素の1つ以上を含み、挙げられていない1つ以上の同様の要素の存在を許容する、開放的なものである。加えて、記載された要素は、様々な局面において任意の好適な仕方で組み合わされてよいことを理解されたい。
【0215】
本明細書で反対の指定がない限り、全ての試験規格は、本出願の出願日、又は優先権が主張される場合は、試験規格が現れる最も早い優先権出願の出願日において有効な最新の規格である。
【0216】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本出願が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。引用された全ての特許、特許出願、及び他の文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ただし、本出願の用語が、組み込まれた文献の用語と矛盾又は相反する場合、本出願の用語が、組み込まれた文献の矛盾する用語に優先して適用される。
【0217】
化合物は、標準的な命名法を用いて記載されている。例えば、指示された基で置換されていない位置は、指示された結合又は水素原子によってその原子価が満たされているものと理解される。2つの文字又は記号の間にないダッシュ(「-」)は、置換基の結合位置を示すのに使用される。例えば、-CHOは、カルボニル基の炭素を介して結合する。
【0218】
本明細書で使用する場合、「ヒドロカルビル」という用語は、それ自体で使用するか、別の用語の接頭辞、接尾辞、又は断片として使用するかを問わず、炭素及び水素のみを含有する残基を指す。残基は、脂肪族又は芳香族、直鎖、環状、二環状、分岐、飽和、又は不飽和であり得る。残基はまた、脂肪族、芳香族、直鎖、環状、二環状、分岐、飽和、及び不飽和の炭化水素部分の組合せを含有し得る。しかしながら、ヒドロカルビル残基が置換として記載される場合、ヒドロカルビル残基は、任意選択で、置換基残基の炭素及び水素員に加えて、ヘテロ原子を含有していてもよい。したがって、特に置換として記載される場合、ヒドロカルビル残基は、1つ以上のカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシル基等を含有することもでき、又はヒドロカルビル残基の主鎖内にヘテロ原子を含有することもできる。「アルキル」という用語は、分岐鎖又は直鎖の飽和脂肪族炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、並びにn-及びs-ヘキシルを意味する。「アルケニル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基(例えば、エテニル(-HC=CH2))を意味する。「アルコキシ」とは、酸素を介して結合しているアルキル基(すなわち、アルキル-O-)、例えば、メトキシ基、エトキシ基、及びsec-ブチロキシ基を意味する。「アルキレン」とは、直鎖又は分岐鎖の飽和二価脂肪族炭化水素基(例えば、メチレン(-CH2-)又はプロピレン(-(CH2)3-))を意味する。「シクロアルキレン」は、二価環状アルキレン基-CnH2n-x(式中、xは、環化によって置換された水素の数である)を意味する。「シクロアルケニル」とは、1つ以上の環及び環中に1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する一価の基を意味し、全ての環原子は炭素である(例えば、シクロペンチル、及びシクロヘキシル)。「アリール」とは、フェニル、トロポン、インダニル、又はナフチル等の、所定の数の炭素原子を含有する芳香族炭化水素基を意味する。「アリーレン」は、二価のアリール基を意味する。「アルキルアリーレン」は、アルキル基で置換されたアリーレン基を意味する。「アリールアルキレン」は、アリール基(例えば、ベンジル)で置換されたアルキレン基を意味する。接頭辞の「halo」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードのうちの1つ以上の置換基を含む基又は化合物を意味する。異なるハロ原子の組合せ(例えば、ブロモ及びフルオロ)、又はクロロ原子のみが存在し得る。接頭辞「ヘテロ」は、化合物又は基がヘテロ原子(例えば、1、2、又は3個のヘテロ原子)である少なくとも1つの環原子を含むことを意味し、ここでヘテロ原子はそれぞれ独立してN、O、S、Si、又はPである。「置換」とは、置換原子の通常の価数を越えないことを条件として、化合物又は基が、水素の代わりに、それぞれ独立して、C1~9アルコキシ、C1~9ハロアルコキシ、ニトロ(-NO2)、シアノ(-CN)、C1~6アルキルスルホニル(-S(=O)2-アルキル)、C6~12アリールスルホニル(-S(=O)2-アリール)、チオール(-SH)、チオシアノ(-SCN)、トシル(CH3C6H4SO2-)、C3~12シクロアルキル、C2~12アルケニル、C5~12シクロアルケニル、C6~12アリール、C7~13アリールアルキレン、C4~12ヘテロシクロアルキル、及びC3~12ヘテロアリールであってもよい、少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、又は4つ)の置換基で置換されていることを意味する。基において示される炭素原子の数は、置換基を除いたものである。例えば、-CH2CH2CNは、ニトリルで置換されているC2アルキル基である。
【0219】
特定の実施形態を説明してきたが、現在予期されていない又は予期されていなくてもよい代替、修正、変形、改良、及び実質的な均等形態が、出願人ら又は他の当業者に生起する可能性がある。したがって、出願時の及び修正され得る、添付された特許請求の範囲は、全てのそのような代替、修正、変形、改良、及び実質的な均等物を包含することを意図している。
【国際調査報告】