(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】UVおよび光沢特性が改善された繊維強化プラスチック複合材、その製造方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20241121BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20241121BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20241121BHJP
【FI】
C08J5/04 CEZ
C08J7/04 A CER
B32B7/023
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531418
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2022083163
(87)【国際公開番号】W WO2023094542
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】102021130810.0
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524197079
【氏名又は名称】ラミラクス コンポジッツ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】LAMILUX Composites GmbH
【住所又は居所原語表記】Zehstrasse 2, 95111 Rehau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アネリ メアケル
(72)【発明者】
【氏名】ディアク フィッケンシャー
【テーマコード(参考)】
4F006
4F072
4F100
【Fターム(参考)】
4F006AA34
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4F072AA02
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4F072AL17
4F100AA04B
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4F100JD09B
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4F100JN21B
(57)【要約】
本発明は、UV特性が改善された繊維強化プラスチック複合材、その製造方法およびその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐UV性が改善された繊維強化多層平面プラスチック複合材であって、前記複合材は、
a.支持マトリックス体を形成する少なくとも1つのマトリックス層と、さらに、
b.前記マトリックス層上に配置された少なくとも1つの上層と
を有し、前記上層は、前記マトリックス層の表面シーラントとしておよび/または前記マトリックス層のUV防護層として構成されており、前記マトリックス層は、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂および/またはこれらの組み合わせの群からの少なくとも1つの樹脂を有し、前記上層は、少なくとも1つのアクリレート系樹脂を有し、
少なくとも前記マトリックス層は、繊維強化されるように構成されており、
前記上層は、硬化状態で40~150μmの範囲の層厚を有し、前記プラスチック複合材は、DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した1000時間の試験法で表色系L/a/bにおいて<1.0のデルタE値を有し、かつDIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した3000時間の試験法で表色系L/a/bにおいて<1.7のデルタE値を有する、複合材。
【請求項2】
前記上層が、少なくとも1つの深部硬化型UV開始剤を有することを特徴とする、請求項1記載の繊維強化多層プラスチック複合材。
【請求項3】
前記少なくとも1つの深部硬化型UV開始剤が、ホスフィンオキシド基を有することを特徴とする、請求項2記載の繊維強化多層プラスチック複合材。
【請求項4】
前記マトリックス層が、少なくとも1種の繊維をさらに有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の繊維強化多層プラスチック複合材。
【請求項5】
上層とマトリックス層との間に少なくとも1つのさらなる分離層がさらに配置されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の繊維強化多層プラスチック複合材。
【請求項6】
前記上層および/または前記マトリックス層が、少なくとも1つのさらなる添加剤を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の繊維強化多層プラスチック複合材。
【請求項7】
前記複合材が、製造工程中に施与された液状の層材料に対して最大で2重量%の反応性希釈剤の損失を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の繊維強化多層プラスチック複合材。
【請求項8】
前記上層が、DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した9000時間の試験法の後に元の光沢度100%の少なくとも70%の光沢保持率を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の繊維強化多層プラスチック複合材。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載のプラスチック複合材の製造方法であって、前記方法は、少なくとも以下:
a.上層材料を支持体表面に施与する工程;
b.前記上層材料を成形して、前記支持体表面上の層を得る工程;
c.得られた前記上層にUV線を照射して、前記上層を深部硬化させる工程;
d.マトリックス材料を施与して、マトリックス層を形成する工程;
e.前記マトリックス層に繊維材料を施与し、その際、前記繊維材料をまだ液状の前記マトリックス層に沈め、かつ/または前記繊維材料を毛管力によってまだ液状の前記マトリックス層で包囲する工程;
f.前記上層に施与された前記マトリックス層を硬化させる工程;
g.前記支持体材料を除去して、最終製品としての繊維強化多層プラスチック複合材を得る工程
を有する、方法。
【請求項10】
前記方法が、少なくとも工程c)と工程d)との間に、前記深部硬化した上層に少なくとも1つの分離層を施与するさらなる工程を有することを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
少なくとも工程e)と工程f)との間に、前記マトリックス層を覆うためのさらなる支持体材料を施与する、請求項9記載の方法。
【請求項12】
少なくとも工程f)と工程g)との間に、前記支持体材料の自由裏面からの前記上層のUV後硬化を実施することを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項13】
請求項9記載の方法により製造された、繊維強化多層プラスチック複合材。
【請求項14】
請求項9記載の方法により製造された、請求項1から8までのいずれか1項記載の繊維強化多層プラスチック複合材。
【請求項15】
少なくとも請求項9記載の方法により製造された、耐UV性が改善された繊維強化多層平面プラスチック複合材であって、前記複合材は、
a.支持マトリックス体を形成する少なくとも1つのマトリックス層と、さらに、
b.前記マトリックス層上に配置された少なくとも1つの上層と
を有し、前記上層は、前記マトリックス層の表面シーラントとしておよび/または前記マトリックス層のUV防護層として構成されており、前記マトリックス層は、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂および/またはこれらの組み合わせの群からの少なくとも1つの樹脂を有し、前記上層は、少なくとも1つのアクリレート系樹脂を有する、複合材。
【請求項16】
車両、航空機、列車、船舶、トレーラーハウスまたはキャンピングカーの内装材および/または外装材用の面状部材としての、物流および輸送用の面状要素、例えば貨物自動車上部構造体用の面状要素としての、建築産業におけるファサード要素としての、請求項1から8までいずれか1項記載の繊維強化多層プラスチック複合材の使用、および/または請求項1から8までいずれか1項記載の請求項9記載の方法により製造された繊維強化多層プラスチック複合材の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化多層プラスチック複合材、その製造方法およびその使用に関する。
【0002】
繊維強化プラスチックパネルは、複合材から構成されるパネルである。この複合材は、例えば、繊維が埋め込まれた強化ポリマー樹脂マトリックスによって構成されていてよい。ポリマーマトリックスを強化する繊維により、繊維強化プラスチック製品は一般に、非強化ポリマー材料と比較して高い比剛性および高い機械的強度を有する。
【0003】
有利には、「パネル」という用語は、強化ポリマーマトリックスの平面的で平坦な構造であると理解される。
【0004】
繊維強化パネルは、特に屋外領域では、環境の影響、特にUV線や様々な気象条件に無防備に曝されるため、しばしば不利であることが判明した。このような環境の影響により、強化ポリマーマトリックスは徐々に劣化し、かつ/または破壊される。その結果さらに、繊維強化パネルの審美的外観と機械的特性との双方が損なわれ、時間の経過とともに、また環境の影響の増大とともに著しく劣化する。
【0005】
最悪の場合、環境の影響により繊維強化製品は全く使用できなくなる。例えば、ポリマーマトリックスの脆性の増加、光沢の著しい低減および/または明らかな黄変は、環境の影響、UV作用、およびそれに伴う繊維強化プラスチックパネルの経時変化プロセスに起因する。
【0006】
課題
したがって、本発明の課題は、先行技術による公知の繊維強化プラスチック製品と比較してより高い光沢安定性を有するプラスチック複合材を提供することである。
【0007】
さらに、本発明の課題は、ほぼ黄変しないように構成されており、すなわち、環境の影響下で長期間使用した後でもほとんど黄変せず、さらに有利には観察者にとって視認可能な黄変を生じないプラスチック複合材を提供することである。
【0008】
さらに、本発明の課題は、高い品質要求を満たし、かつ/または欠陥が低減されたプラスチック複合材を提供することである。
【0009】
さらに、本発明の課題は、公知の繊維強化プラスチックパネルよりも軽量のプラスチック複合材を提供することである。
【0010】
さらに、本発明の課題は、経時変化中に一定の機械的特性を有する最適化されたプラスチック複合材を提供することである。
【0011】
さらに、本発明の課題は、公知の繊維強化プラスチックパネルと比較して耐エロージョン性が改善されたプラスチック複合材を提供することである。
【0012】
解決手段
これは、請求項1記載の繊維強化多層プラスチック複合材により実現される。
【0013】
本発明の核心は、耐UV性が改善された繊維強化多層平面プラスチック複合材であって、該複合材は、支持マトリックス体を形成する少なくとも1つのマトリックス層と、さらに、マトリックス層上に配置された少なくとも1つの上層とを有し、上層は、マトリックス層の表面シーラントとしておよび/またはマトリックス層のUV防護層として構成されており、マトリックス層は、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂および/またはこれらの組み合わせの群からの少なくとも1つの樹脂を有し、上層は、少なくとも1つのアクリレート系樹脂を有し、上層は、UV照射時に深部硬化するように構成されており、少なくともマトリックス層は、繊維強化されるように構成されており、上層は、硬化状態で40~150μmの範囲の層厚を有し、プラスチック複合材は、DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した1000時間の試験法で表色系L/a/bにおいて<1.0のデルタE値を有し、かつDIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した3000時間の試験法で表色系L/a/bにおいて<1.7のデルタE値を有する、複合材を提供することである。
【0014】
驚くべきことに、このようなプラスチック複合材は、先行技術に比べ多くの改善点を有することが判明した。
【0015】
例えば、アクリレート系の少なくとも1つの不飽和脂肪族樹脂を有する上層は、その下方に配置されたマトリックス層をUVによる損傷や風化から保護する。また、このような樹脂は、UV照射により短時間で架橋することができるため有利であることが判明した。これにより、上層の凹凸を防ぐことができる。
【0016】
さらに、本明細書に記載のアクリレート系材料組成を有する上層の層厚は、著しく低減された厚さを有することができるが、それにもかかわらず、その下方に存在するマトリックス材料が適宜保護されることが、驚くべきことに判明した。
【0017】
さらに、本明細書に記載のプラスチック複合材は、先行技術から公知である繊維強化パネルと比較して、総重量の大幅な低減を達成する。例えば、本明細書に記載のプラスチック複合材では、面積1m2に対して100gまでの軽量化を有利に達成することができる。その結果、本明細書に記載のプラスチック複合材は、有利には、軽量建築、建造物のファサードの建築分野、貨物自動車上部構造体の輸送設備、またはキャラバン分野のレジャー用車両での使用に特に適している。
【0018】
有利には、脂肪族樹脂とは、芳香族骨格を持たない樹脂であると理解される。これは有利であり、なぜならば、この樹脂はUV照射により架橋可能であり、その際に骨格が破壊されないためである。特に、これはアクリレート系の不飽和脂肪族樹脂で特に良好に機能することが驚くべきことに判明した。
【0019】
有利には、「アクリレート系樹脂」とは、あらゆるタイプのアクリル樹脂および/またはアクリレート樹脂であると理解することができる。
【0020】
有利なことに、完成した最終製品の上層が、特に高い色安定性、またさらには特に高い光沢安定性を有することが判明した。このことは、プラスチック複合材全体が、繊維強化プラスチック複合材として、特に可視面において耐UV性、またさらには耐候性が著しく改善されていることを意味する。有利には、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂および/またはこれらの組み合わせの群から選択されるマトリックス層の材料は、マトリックス層のベース層材料であると理解される。
【0021】
マトリックス材料は、有利には硬化状態で十分な柔軟性を有するように選択される。この場合、破断伸度が1.0~3.0%(DIN EN ISO 527-4/2/2)の範囲にあり、より有利には1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%または3.0%である樹脂が適していることが実証された。その間の値も一緒に開示されているものとみなされる。本明細書に開示された破断伸度は、特に加工し易い材料を提供するという点で有利であることが判明した。破断伸度が低いと、亀裂形成による損傷のリスクが高まる。破断伸度が高いと、全体的に剛性の低い材料となり、得られるプラスチック複合材の加工に明らかに不利となることが判明した。得られるプラスチック複合材を、通常はその後に様々なプレス法によりさらに加工することで、サンドイッチエレメントが得られる。剛性の低い材料は、内部のサンドイッチ構造のトレースを招く傾向があり、表面でも凹凸や波打ちが生じることが多い。
【0022】
樹脂の破断伸度に加えて、提供される荷重たわみ温度も同様に重要である。この荷重たわみ温度を過度に低く選択すると、比較的高い熱負荷を必要とする暗色材料を使用した場合にプラスチック複合材の熱変形を招く可能性がある。したがって特に、ISO 75の方法Aによる荷重たわみ温度が少なくとも60℃の樹脂が適していることが判明した。ISO 75の方法Aによる荷重たわみ温度が70~90℃、より有利には70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、83℃、84℃、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃または90℃である樹脂が特に適していることが判明した。その範囲もすべて同様に開示されているものとみなされる。特に、ISO 75の方法Aにより求められるこの荷重たわみ温度値は、加工が容易で形状が安定したプラスチック複合材を形成するのに有利である。特に有利には、マトリックス材料は、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂および/またはこれらの組み合わせの群から選択される。
【0023】
本発明により、ほぼどのような色でも選択でき、かつ長年にわたっても黄変をかなり最小限に抑えるかまたは完全に防ぐ最大限のUV安定性を有する繊維強化プラスチックから構成されるプラスチック複合材としての包括的な系が初めて創作された。
【0024】
上層および/またはプラスチック複合材および/またはマトリックス層の耐UV性は、表色系L/a/bにおけるデルタE値の色変化の特性によって、および/または光沢低減によって評価することができる。
【0025】
さらに、本明細書に記載のプラスチック複合材が、DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した促進耐候試験とも称されるDIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した試験法である1000時間のXeno試験で表色系L/a/bにおいて<1.0のデルタE値を有し、かつDIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した促進耐候試験とも称されるDIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した試験法である3000時間のXeno試験で表色系L/a/bにおいて<1.7のデルタE値を有することが有利であることが判明した。この試験では、デルタE値が≧3であると、観察者が主観的に感じる変色が生じることに留意すべきである。したがって、観察者が不快に感じる黄変を、数十年後でも排除することができる。ここで、黄変とは、使用者が不快で魅力的でないと感じる著しい色の相違であると理解されることに留意すべきである。有利には、デルタEとは、色差とも称される変色であると理解される。
【0026】
これらのデータは、コニカミノルタの分光光度計CM-2600d(光のタイプD65、SCE、10°)を使用して求めたものであり、色調の値を求めたところ、色値L=44、a=-1.35、b=-2.35であった。ここで、公差は、有利にはL=±1.5、a=±0.7、b=±1.0である。
【0027】
さらに、上層が、硬化状態で40~150μmの範囲の層厚を有すると有利であることが判明した。同時に、本明細書に記載の上層は、上述のように層厚がわずかであるにもかかわらず、欠陥なく製造できることが判明した。特に、得られる硬化した上層は、油染みがなく、厚い箇所がなく、皺がなく、硬化不足がなく、くすみ効果などがない。
【0028】
このような上層を、本明細書で挙げられた層厚で、連続法で180mの長さにわたって欠陥なく製造することが初めて可能となった。
【0029】
層厚が極めてわずかであるため、製造されるプラスチック複合材製品は、同じ厚さでより高いガラス含有量を有し、したがって先行技術からこれまで可能であったものよりも優れた機械的特性をも有することが可能である。また、層厚の低減により軽量化を生じることも考えられる。
【0030】
さらなる有利な実施形態を、以下の従属請求項に示す。
【0031】
さらなる有利な実施形態では、上層が少なくとも1つの深部硬化型UV開始剤を有することが有利であることが判明した。これは、UV線照射時に、架橋プロセスが材料のまさに表面で開始されるのではなく、その下方に存在する体積中で開始されるため有利であることが判明した。その結果、特にUV線が直接照射される露出面を完全に硬化させないようにすることが初めて実現可能となった。また、UV開始剤が酸素阻害を受け易いと、反応が遅くなるため有利であることが判明した。特に形成されたラジカルは、重合を開始できるようになる前に、大気中の酸素のラジカル性によって結合される。境界層での反応が遅くなることで、上層とマトリックス層との化学架橋が可能になり、有利にもマトリックス層と上層との永続的な結合が生じる。本明細書に記載のプラスチック複合材は、上層とマトリックス層との結合特性が非常に優れている。例えば剥がれや亀裂のような形での接着力の低下は観察されない。
【0032】
UV開始剤は、UV線照射時にラジカル重合を開始させるために必要である。ここで留意すべきことは、UV照射なしでは架橋が起こらないということである。このことは、上部材料を保管および提供する際に特に有利であることが判明した。なぜならば、上部材料を、混合されているにもかかわらず長期間使用することができるためである。その結果、UV排除下で数日から数ヶ月、有利には12ヶ月までの特に長いポットライフが得られる。「ポットライフ」とは一般に、2つ以上の反応性成分、例えば樹脂および硬化剤が混合後に使用可能な状態を保つ期間であると理解される。上層は、深部硬化するように構成されている。
【0033】
さらなる有利な実施形態では、深部硬化型UV開始剤が、少なくとも1つのホスフィンオキシド基を有することが有利であることが判明した。この場合、特に、ホスフィンオキシド、例えばジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(Omnirad TPO)、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(Omnirad TPO-L)またはフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(Omnirad 819)が有利であることが判明した。このホスフィンオキシド基は、長波長UV線の照射で硬化および架橋させることができる。UV線が導入される自由上面では、形成されたラジカルが大気中の酸素と結合される。架橋の進行が阻害される。自由上面から離れたところ、すなわちその下の上層体積中では、架橋が明らかにより良好に進行し得る。したがって、ここで上層に導入されたホスフィンオキシド基は、深部硬化を達成することができる。
【0034】
さらに、有利には上述のホスフィンオキシド基から選択される深部硬化型UV開始剤は、上層が少なくとも1つのさらなる添加剤、例えば着色顔料を有する場合に有利であることが判明した。本明細書に開示されたUV開始剤の長波長励起により、上層に導入されたUV線は、まさに着色顔料には吸収されず、したがって上層の重合に完全に利用できる。これにより、着色された上層を高品質で架橋および硬化させることが初めて可能となった。
【0035】
TPO-Lは、この組成物をすでに液体の凝集体状態で供給できるため、特に有利なUV開始剤であることが判明した。他の2つの組成物であるOmnirad 819およびOmnirad TPOは、固体の凝集体状態で存在しており、使用前にまず液体の凝集体状態に変換する必要がある。
【0036】
その後、施与された上層に少なくとも1つのUV線源を照射すると、硬化勾配が形成される。上層の表面ではUV線が直接当たるため、架橋転化率はわずかであり、層厚の延び方向に架橋転化率が増加する。つまり、上層の深部領域は、架橋時の転化率が著しく高くなる。
【0037】
さらに、深部硬化には、製造工程中に上層が平坦なままであるという利点がある。例えば、深部硬化が十分に行われないと、製造工程中に上層が隆起するが、波打ちや隆起のある上層は使用できないため、製造を中止せざるを得なくなる。例えば開始剤がベンゾイルギ酸メチルや1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンである場合や、アセトフェノンやベンゾフェノンを使用した場合にも、十分な深部硬化が行われず、その結果、使用不可能な上層が観察される。
【0038】
さらなる有利な実施形態では、上層のアクリレート系樹脂は、ウレタンアクリレート樹脂であってよい。これは、上層のベース層材料と呼ぶことができる。このベース層材料は、多数のカルバメート基を有する脂肪族骨格を有する。この骨格は、遊離末端基として少なくとも1つのメタクリレート基および/または1つのアクリレート基をさらに有する。架橋は、この基により行われる。架橋の結果、ウレタンアクリレートネットワークが形成され、このネットワークでは、個々のオリゴマーが、脂肪族骨格、この骨格上に配置されたカルバメート基および少なくとも1つの架橋基と相互作用する。このネットワークの安定性は、オリゴマーの架橋性アクリレート基および/またはメタクリレート基により維持される。あるオリゴマーのカルバメート基は、水素橋かけ結合により他のオリゴマーの他のカルバメート基と可逆的に結合することができる。この組み合わせにより、架橋後も上層が依然として十分な柔軟性を保ち、亀裂や破壊が防止される。
【0039】
さらに有利には、少なくとも1つのアクリレート系樹脂は、光による重合開始が可能となるように構成されており、したがって、UV照射時にラジカル重合によって架橋が起こる。これにはさらに、架橋が極めて短い時間間隔で進行することができ、その際、同時に上層の均質な表面構造および全体構造が達成されるという利点もある。UV照射によって深部硬化される上層に、3~30秒、より有利には5~15秒、なおもより有利には5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、10秒、11秒、12秒、13秒、14秒、15秒の時間間隔で、250~500nmの波長範囲のUV線が照射される。有利には、この目的のために、例えば400mJ/cm2±10%の照射量を放出するガリウムドープ水銀ランプや鉄ドープ水銀ランプのような金属ドープ放射線源を使用することができる。上層の深部硬化型架橋を形成するのには、この非常に短い時間間隔で十分である。これにより、特に速い架橋が可能になり、これは、製造工程全体にとって特に高度の時間の節約を意味する。時間の節約に伴ってコストが削減され、市場での成功率を高めることができる。
【0040】
さらなる有利な実施形態では、上層の材料は、さらなる反応性モノマーと混合されていてよい。そのようなモノマーは、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)および/またはトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)であってよい。アクリレート系樹脂に反応性モノマーを添加することにより、上層の特性、特にその柔軟性に関する特性を狙いどおりに変更することができる。例えば、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)および/またはトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)を添加することにより、硬化状態での上層の柔軟性を高めることができる。これにより、上層は深い傷や損傷を受けにくくなる。1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)および/またはトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)は、反応性溶媒と理解することができる。
【0041】
さらなる有利な実施形態では、マトリックス層は、強化材として少なくとも1種の繊維を有することができる。選択される強化材、したがって繊維の種類は、有利には、製造されるプラスチック複合材の予定された用途に依存する。例えば、炭素繊維、ガラス繊維、ポリマー繊維、玄武岩繊維および/またはこれらの組み合わせが可能である。さらに、例えば亜麻繊維のような天然繊維を使用することもできる。マトリックス層に導入された繊維は、外力、例えばレジャー用車両や商用車両の運転による、キャンプ場や道路交通での衝撃荷重による、またはさらには雹や強風などの気象現象によるねじり力に基づく外力に対してマトリックス層を強化する役割を果たす。
【0042】
繊維は、例えばチョップドガラス繊維、チョップドガラスマット、ガラスロービングクロス、多軸織物および/またはこれらの組み合わせとしてマトリックス層に埋め込まれていてよい。加工の容易さおよび高い強化特性に基づき、特にガラス繊維が強化材として特に有利であることが判明した。
【0043】
導入される強化材がテキスタイル半製品であることが特に有利である。これは、例えば、チョップドガラスマット、ガラスロービングクロス、多軸織物および/またはこれらの組み合わせであってよい。
【0044】
本明細書に記載のプラスチック複合材の製造において、例えばチョップドガラスマットを強化材として使用する場合、これを製造工程中に連続的に巻き出し、まずは液状のマトリックス層材料上に上方から配置することができる。毛管力により、まだ液状のマトリックス層でチョップドガラスマットを十分に濡らしかつ/またはまだ液状のマトリックス層をチョップドガラスマットにしみ込ませる。任意に、含浸を促進し改善するために、追加の浸漬助剤を提供することができる。チョップドガラスマットは、まだ液状のマトリックス層に取り込まれる。
【0045】
また、完成したプラスチック複合材の用途に応じて、例えば複数の同一のおよび/または複数の異なる繊維強化材がマトリックス層に埋め込まれていることも考えられる。例えば、複数のチョップドガラスマット、複数の多軸織物および/または複数のガラスロービングクロスがマトリックス層に埋め込まれていることが考えられる。これにより、それぞれの強化材による強化効果を狙いどおりに調整することができる。
【0046】
当然のことながら、まだ硬化していないマトリックス層に複数のチョップドガラスマットを導入することも考えられる。有利には、チョップドガラスマットは、時間的にずらして上方から次々に施与される。複数のチョップドガラスマットを時間的にずらして施与することには、まだ液状の樹脂が層としてそのまま残り、チョップドガラスマットを毛管力により次々に含浸させることができるという利点がある。
【0047】
チョップドガラスマットの縦横にガラス繊維がランダムに配置されることにより、開放的な構造が生じる。この構造こそが、チョップドガラスマットをまだ液状のマトリックス層材料に浸せるようにするのに有利である。もしこの構造があまりに目の詰まったものであれば、層構造の中に空気が混入してしまうであろう。ここで使用されるチョップドガラスマットの非常に開放的な構造により、その含浸が支援され、空気の混入による細孔形成が回避される。すでに施与されたまだ液状のマトリックス層材料に上方からチョップドガラスマットが施与されるため、チョップドガラスマットを液状のマトリックス材料に浸すことができる。
【0048】
一方、通常のチョップドガラスマットの4倍の厚さのチョップドガラスマットを施与する場合、上方からまだ液状のマトリックス層に施与すると、マトリックス層のまだ液状の樹脂が押しのけられ、層が破壊されて全く使用できなくなる。
【0049】
ここで使用されるチョップドガラスマットが連続マットとして提供されると特に有利であることが判明した。その場合、このマットは、マットの縦横にランダムに堆積された有利には連続した長い繊維を有する。その結果、開放的な構造が生じる。この構造こそが、チョップドガラスマットをまだ液状のマトリックス層材料に浸せるようにするのに有利である。もしこの構造があまりに目の詰まったものであれば、層構造の中に空気が混入してしまうであろう。ここで使用されるチョップドガラスマットの非常に開放的な構造により、含浸が支援され、空気の混入による細孔形成が回避される。
【0050】
有利には、完成したプラスチック複合材は、硬化したプラスチック複合材の総重量に対して15~70重量%、すなわち15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%、40重量%、41重量%、42重量%、43重量%、44重量%、45重量%、46重量%、47重量%、48重量%、49重量%、50重量%、51重量%、52重量%、53重量%、54重量%、55重量%、56重量%、57重量%、58重量%、59重量%、60重量%、61重量%、62重量%、63重量%、64重量%、65重量%、66重量%、67重量%、68重量%、69重量%、70重量%のガラス割合を有し、いずれの値も、硬化したプラスチック複合材の総重量に基づくものであり、その間の値も一緒に開示されており、なおもより有利には、硬化したプラスチック複合材の総重量に対して15~65重量%、したがって15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%、40重量%、41重量%、42重量%、43重量%、44重量%、45重量%、46重量%、47重量%、48重量%、49重量%、50重量%、51重量%、52重量%、53重量%、54重量%、55重量%、56重量%、57重量%、58重量%、59重量%、60重量%、61重量%、62重量%、63重量%、64重量%、65重量%のガラス割合を有し、いずれの値も、硬化したプラスチック複合材の総重量に基づくものである。その間の値も一緒に開示されている。これにより、適切な柔軟性を保持しつつ、マトリックス層の十分な強化が保証される。これは、特に仕上げ処理の際に必要であり、なぜならば、さもなくば、連続プラスチック複合材を切断した際に切断端が割れてしまうためである。
【0051】
マトリックス材料が硬化すると、その中に配置された繊維はそれに応じて固定される。これにより、マトリックス材料の構造全体が固定される。変形加工はもはや不可能である。特に、繊維をマトリックス層に固定することにより、繊維への機械的応力の伝達が行われるように繊維強化が達成されるため、得られるプラスチック複合材の、高い比剛性と高い機械的強さ(高い機械的強度と理解されることもできる)とを達成することができる。
【0052】
繊度12~30texの繊維のチョップドガラスマットが特に有利であることが判明した。この繊度の繊維を使用すると、マトリックス層の高い表面平坦性を達成することができる。
【0053】
さらなる有利な実施形態では、上層とマトリックス層との間に少なくとも1つの分離層が配置されていてよい。この少なくとも1つの分離層は、例えば、ガラス不織布として構成されていてよい。この分離層は、上層とマトリックス層の繊維との間に分離を生じさせる役割を担う。一方では、これにより、繊維が製造工程中に深部のみが硬化した上層を損傷し、重大な欠陥を引き起こすのを防ぐことができる。
【0054】
さらに、マトリックス層に埋め込まれた繊維は、繊維痕と呼ばれる構造を上層との界面に形成する。この繊維痕は、完成したプラスチック複合材では上層を通して視認可能である。この繊維痕は、特にプラスチック複合材がキャラバン分野で使用される場合には非常に望ましくない。トレーラーハウスおよび/またはキャンピングカーの壁要素には高い品質要求が課されているため、視認可能な繊維痕は、品質低下または欠陥となる。ガラス不織布が有利には150~250μmの範囲の厚さを有する場合には、上層を通して視認可能な繊維痕が覆われ、その光学的視認性は著しく低下する。ガラス不織布は、有利には15~35gr/m2の範囲の目付を有する。完成したプラスチック複合材中の上記のガラス割合は、総ガラス割合であると理解されるべきである。これには、1つ以上のガラス不織布のガラス割合が含まれる。
【0055】
したがって、少なくとも1つの分離層は、上層とマトリックス層中の繊維との間に光学的分離を生じさせるために使用される。同時に、繊維痕が覆われ、その結果、繊維痕が低減される。したがって、本明細書に記載のプラスチック複合材は、トレーラーハウス壁要素および/またはキャンピングカー壁要素として使用される場合、繊維痕を低減する少なくとも1つの分離層を有する。
【0056】
さらなる有利な実施形態では、マトリックス層は、不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂から構成されており、これらの樹脂は、どちらも不飽和基を有する。不飽和基のラジカル重合を開始させるために、マトリックス材料は有利には、温度に曝されると分解する少なくとも1つの有機過酸化物を有する。さらに、それぞれの樹脂の架橋を引き起こす架橋剤を同様にマトリックス材料中に含有させることもできる。このような架橋剤の例として、スチレンを使用することができる。
【0057】
架橋剤としての機能に加えて、スチレンは、それぞれの樹脂の溶媒としても作用する。例えば不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂が使用される場合、上層の不飽和脂肪族樹脂との共有結合を形成することができる。
【0058】
本発明のさらなる実施形態例では、マトリックス材料は、エポキシ樹脂および/またはポリウレタン樹脂であってもよい。どちらの樹脂も不飽和基を持たない。この種の樹脂を使用する場合、重合反応として重付加を開始させる必要がある。この場合、樹脂を架橋させるために、反応性酸素を有するあらゆる種類の分子を使用することができる。これには例えば、アミン、酸、酸無水物、アルコールおよび/またはチオール、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。エポキシ樹脂および/またはポリウレタン樹脂をマトリックス材料として使用すると、このマトリックス材料は、上層と非共有結合を形成する。これは、2つの層の双方の樹脂材料が界面で少なくとも部分的に溶解し、上層とマトリックス層との間に非共有結合の相互作用が生じることにより起こる。
【0059】
さらなる有利な実施形態では、上層および/またはマトリックス層は、少なくとも1つのさらなる添加剤を有することができる。添加剤は、有利には、着色添加剤、効果顔料、UV開始剤、UV安定剤、ラジカル捕捉剤および/またはこれらの組み合わせの群から選択されていてよい。
【0060】
一実施形態例では、マトリックス層と上層との双方がそれぞれ少なくとも1つの着色添加剤を有すると有利であることが判明した。例えば、有利には上層およびマトリックス層がそれぞれ少なくとも1つの着色顔料または顔料混合物を有することが考えられる。有利には、上層およびマトリックス層は、同じ着色顔料を有する。当然のことながら、これは限定的なものとして理解されるべきではないため、顔料混合物を使用できることも考えられる。本例では、同じ顔料混合物が上層およびマトリックス層に加えられていてよい。このようにプラスチック複合材が全体的に着色されていることにより、例えば傷のような、上層の生じ得る外部損傷が、実質的に目立たなくなる。
【0061】
その結果、上層およびマトリックス層中の少なくとも1つの着色顔料、または上層およびマトリックス層中の少なくとも1つの顔料混合物により、プラスチック複合材の軽微な損傷を光学的に優れた様式で補償することができる。有利には、完成したプラスチック複合材、すなわちその2つの層は、同じ着色顔料または顔料混合物で全体的に着色されている。
【0062】
プラスチック複合材の用途に応じて、例えば二酸化チタンは特に優れた白色着色効果を示す。これにより、二酸化チタンを含む層が白く着色される。二酸化チタンに加えて、例えば硫酸バリウムや硫化亜鉛も着色顔料として挙げられる。これらも、それぞれの層を白色に着色する。
【0063】
当然のことながら、これは限定的なものとして理解されるべきではないため、例えば炭素の添加によって、一方および/または双方の層が黒色に着色されていることも考えられる。
【0064】
さらに、マトリックス層および/または上層を、予定された用途に応じたさらなる着色顔料および/または染料の添加によって狙いどおりに着色することも考えられる。
【0065】
この場合、例えば青色染料は、提供されたマトリックス材料および/または上層材料中にすでに提供することができるため、有利であることが判明した。染料と着色顔料との混合物および/または着色顔料同士の混合物も可能である。例えば、二酸化チタンと炭素を混合することにより、灰色のマトリックス層および/または上層を製造することができる。混合比は、相応して所望の灰色の程度に依存する。別の可能な組み合わせは、少なくとも二酸化チタンとフタロシアニンブルーとを含む顔料混合物の使用である。さらに、顔料として黄色酸化鉄や赤色酸化鉄を単独でまたは相互のもしくは二酸化チタンとの混合物として使用することも考えられる。
【0066】
両層の着色は、ここでは例示的なものとして理解されるが、特に有利である。用途に応じて、上層およびマトリックス層に異なる着色添加剤を加えることも考えられる。
【0067】
着色顔料を使用する場合、着色顔料を、液体状態のそれぞれの層に対して1~15phrの範囲で、すなわち1phr、1.1phr、1.2phr、1.3phr、1.4phr、1.5phr、1.6phr、1.7phr、1.8phr、1.9phr、2.0phr、2.1phr、2.2phr、2.3phr、2.4phr、2.5phr、2.6phr、2.7phr、2.8phr、2.9phr、3.0phr、3.1phr、3.2phr、3.3phr、3.4phr、3.5phr、3.6phr、3.7phr、3.8phr、3.9phr、4.0phr、4.1phr、4.2phr、4.3phr、4.4phr、4.5phr、4.6phr、4.7phr、4.8phr、4.9phr、5.0phr、5.1phr、5.2phr、5.3phr、5.4phr、5.5phr、5.6phr、5.7phr、5.8phr、5.9phr、6.0phr、6.1phr、6.2phr、6.3phr、6.4phr、6.5phr、6.6phr、6.7phr、6.8phr、6.9phr、7.0phr、7.1phr、7.2phr、7.3phr、7.4phr、7.5phr、7.6phr、7.7phr、7.8phr、7.9phr、8.0phr、8.1phr、8.2phr、8.3phr、8.4phr、8.5phr、8.6phr、8.7phr、8.8phr、8.9phr、9.0phr、9.1phr、9.2phr、9.3phr、9.4phr、9.5phr、9.6phr、9.7phr、9.8phr、9.9phr、10.0phr、10.1phr、10.2phr、10.3phr、10.4phr、10.5phr、10.6phr、10.7phr、10.8phr、10.9phr、11.0phr、11.1phr、11.2phr、11.3phr、11.4phr、11.5phr、11.6phr、11.7phr、11.8phr、11.9phr、12.0phr、12.1phr、12.2phr、12.3phr、12.4phr、12.5phr、12.6phr、12.7phr、12.8phr、12.9phr、13.0phr、13.1phr、13.2phr、13.3phr、13.4phr、13.5phr、13.6phr、13.7phr、13.8phr、13.9phr、14.0phr、14.1phr、14.2phr、14.3phr、14.4phr、14.5phr、14.6phr、14.7phr、14.8phr、14.9phr、15phr導入するのが有利であることが判明し、上記のすべての値は、液体状態のそれぞれの層に対するものである。その間の値も一緒に開示されている。この範囲で上層に添加される着色顔料は、マトリックス層の黄変に対して十分な保護を提供する。加えて、上層は、さらに深部硬化可能であるように構成されている。
【0068】
上層に二酸化チタンを添加することは、プラスチック複合材の白色着色が望まれる場合に特に有利であることが判明した。上層の十分な硬化を保証できるようにし、かつ硬化中の皺を回避するためには、1.5~8phrの範囲、より有利には1.5phr、1.6phr、1.7phr、1.8phr、1.9phr、2.0phr、2.1phr、2.2phr、2.3phr、2.4phr、2.5phr、2.6phr、2.7phr、2.8phr、2.9phr、3.0phr、3.1phr、3.2phr、3.3phr、3.4phr、3.5phr、3.6phr、3.7phr、3.8phr、3.9phr、4.0phr、4.1phr、4.2phr、4.3phr、4.4phr、4.5phr、4.6phr、4.7phr、4.8phr、4.9phr、5.0phr、5.1phr、5.2phr、5.3phr、5.4phr、5.5phr、5.6phr、5.7phr、5.8phr、5.9phr、6.0phr、6.1phr、6.2phr、6.3phr、6.4phr、6.5phr、6.6phr、6.7phr、6.8phr、6.9phr、7.0phr、7.1phr、7.2phr、7.3phr、7.4phr、7.5phr、7、6phr、7.7phr、7.8phr、7、9phr、8.0phrの二酸化チタンの顔料含有量を選択することが有利であることが判明した。その間の値も一緒に開示されている。例えば、8phrを超える含有量の二酸化チタンが使用される場合、上層の硬化は悪影響を受ける。上層の予備硬化が起こり、それにより表面に皺ができるが、その下方に存在する下地は液体のままとなる。したがって、8phrを超える二酸化チタン含有量は避けるべきである。1.5phr未満の二酸化チタン含有量は低すぎて、十分な着色を生じさせることができない。二酸化チタンや他の着色添加剤の利点は、顔料自体および/またはその吸収性によって、その下方に存在するマトリックス層が保護され、その黄変が防止されることである。したがって、例えば着色顔料、効果顔料および/または染料などの着色添加剤は、その下方に存在する非耐UV性のマトリックス層のUVリフレクターおよび/またはUVフィルターとして構成されている。
【0069】
特に有利な実施形態では、本明細書に開示されたプラスチック複合材は、液状の上層が3~8phr、より有利には3.0phr、3.1phr、3.2phr、3.3phr、3.4phr、3.5phr、3.6phr、3.7phr、3.8phr、3.9phr、4.0phr、4.1phr、4.2phr、4.3phr、4.4phr、4.5phr、4.6phr、4.7phr、4.8phr、4.9phr、5.0phr、5.1phr、5.2phr、5.3phr、5.4phr、5.5phr、5.6phr、5.7phr、5.8phr、5.9phr、6.0phr、6.1phr、6.2phr、6.3phr、6.4phr、6.5phr、6.6phr、6.7phr、6.8phr、6.9phr、7.0phr、7.1phr、7.2phr、7.3phr、7.4phr、7.5phr、7.6phr、7.7phr、7.8phr、7.9phr、8.0phrの着色顔料含有量を有することができることが判明し、ここで、その間の値も一緒に開示されており、上層が同様に少なくとも有する深部硬化型UV開始剤を同時に提供することによって、着色顔料で着色された上層も狙いどおりに硬化および架橋させることが初めて可能となった。通常のUV開始剤、すなわち深部硬化型UV開始剤でないUV開始剤を使用した場合、作用するUV線は着色顔料によってほとんど完全に反射され、架橋は起こらない。したがって、少なくとも1つの深部硬化型UV開始剤との組み合わせで、着色された上層の高品質の硬化が初めて達成された。
【0070】
例えば、上層が3~8phr、すなわち3.0phr、3.1phr、3.2phr、3.3phr、3.4phr、3.5phr、3.6phr、3.7phr、3.8phr、3.9phr、4.0phr、4.1phr、4.2phr、4.3phr、4.4phr、4.5phr、4.6phr、4.7phr、4.8phr、4.9phr、5.0phr、5.1phr、5.2phr、5.3phr、5.4phr、5.5phr、5.6phr、5.7phr、5.8phr、5.9phr、6.0phr、6.1phr、6.2phr、6.3phr、6.4phr、6.5phr、6.6phr、6.7phr、6.8phr、6.9phr、7.0phr、7.1phr、7.2phr、7.3phr、7.4phr、7.5phr、7.6phr、7.7phr、7.8phr、7.9phr、8.0phr(ここで、その間の値も一緒に開示されているものとする)の二酸化チタン含有量を有する場合、さらに、マトリックス層に少なくとも1つの、有利には同じ着色顔料を加えることも有利であることが判明した。上層のわずかな層厚と、3~8phrの範囲、すなわち3.0phr、3.1phr、3.2phr、3.3phr、3.4phr、3.5phr、3.6phr、3.7phr、3.8phr、3.9phr、4.0phr、4.1phr、4.2phr、4.3phr、4.4phr、4.5phr、4.6phr、4.7phr、4.8phr、4.9phr、5.0phr、5.1phr、5.2phr、5.3phr、5.4phr、5.5phr、5.6phr、5.7phr、5.8phr、5.9phr、6.0phr、6.1phr、6.2phr、6.3phr、6.4phr、6.5phr、6.6phr、6.7phr、6.8phr、6.9phr、7.0phr、7.1phr、7.2phr、7.3phr、7.4phr、7.5phr、7.6phr、7.7phr、7.8phr、7.9phr、8.0phrの二酸化チタン含有量との組み合わせに基づき、上層は透明性を示す。つまり、100%の隠蔽力は達成できない。そのため、マトリックス層を同様に相応して着色することが有利であることが判明した。その結果、白色で完全に着色されたプラスチック複合材が得られる。これには、すでに述べたように、傷が全体的に視認しにくくなり、深い傷でも視覚的に目立たなくなるという利点がある。
【0071】
このこともキャラバン分野では特に重要であり、それというのも、これまで使用されてきたプラスチック複合材は、時間の経過とともに著しく黄変し、それにより再販売価値が、また当然のことながら外観も明らかに低下および悪化するためである。
【0072】
同時に、上層中の少なくとも1つの着色顔料の割合が低くても、その硬化やその後の上層の光学的効果に大きな影響を与えないことも判明した。
【0073】
さらに、少なくとも1つの効果顔料も上層および/またはマトリックス層に使用されていてもよい。例えば、少なくとも1つの効果顔料を上層に設けることが考えられる。これにより、例えば、その反射を大幅に増加させることができ、その結果、光輝的な光学効果が得られる。
【0074】
有利であることが判明したそのような効果顔料の例としては、例えば、ガラス粒子、マイカおよび/または層状シリケート粒子が挙げられる。これらは任意に、以下の酸化物のうち少なくとも1つまたは複数でコーティングされていてよい:二酸化チタン、酸化鉄、二酸化ケイ素および/または酸化スズ。
【0075】
効果顔料をアルミニウム粒子、銅粒子、黄銅粒子もしくは青銅粒子およびまたはこれらの組み合わせから選択することも考えられる。これにより、特別なメタリック効果を生じさせることができる。さらに、上層に粒子を使用することで、その散乱効果を利用することができるため、入射するUV線が上層、より正確にはその中に導入された粒子によって反射されることも有利であることが判明した。これによって、その下方に存在するマトリックス層にさらなるUV防護がもたらされ、それによりその黄変が防止される。
【0076】
特に有利には、効果顔料は、10~100μmの範囲の平均粒径を有する。効果顔料の粒径は、レーザーグラニュロメトリーによって決定されるd50値として定められる。d50値は、効果顔料の平均粒径を示し、その際、分析された試料中の効果顔料粒子の50%が、この規定値より小さい。
【0077】
したがって、有利には、あらゆる種類の着色添加剤、効果顔料および染料を着色添加剤としてまとめることができる。これらは、上層および/またはマトリックス層に含まれていてよい。
【0078】
当然のことながら、ここでの実施形態例は限定的なものとして理解されるべきではない。効果顔料、例えばマイカ(雲母)と着色顔料、例えば二酸化チタンとを1対1、1対2、またはさらには1対3の混合比で組み合わせることも有利である。ここで、その場合には、光学的効果と追加のUV防護効果とを有する上層を提供することができる。
【0079】
さらに、上層が、さらなる添加剤として、1つ以上のUV安定剤、UV開始剤および/または1つ以上のラジカル捕捉剤を有することができることも考えられる。選択および割合に応じて、これにより、プラスチック複合材全体の耐UV性および耐候性をさらに改善することができる。
【0080】
さらなる有利な実施形態では、上層は、硬化状態で50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μm、105μmおよび110μmの範囲、ならびにその間のすべての領域の層厚を有することができる。層厚を低減させると、材料消費量が少なくなり、全体的に迅速に硬化させることができる。同時に、本明細書に記載の上層は、上述のように層厚がわずかであるにもかかわらず、欠陥なく製造できることが判明した。特に、得られた硬化した上層は、油染みがなく、厚い箇所がなく、皺がなく、硬化不足がなく、くすみ効果などがない。このような上層を、本明細書で挙げられた層厚で、連続法で180mの長さにわたって欠陥なく製造することが初めて可能となった。層厚が極めてわずかであるため、製造されるプラスチック複合材製品は、同じ厚さでより高いガラス含有量を有し、したがって先行技術からこれまで可能であったものよりも優れた機械的特性をも有することが可能である。また、層厚の低減により軽量化を生じることも考えられる。
【0081】
さらに、プラスチック複合材が、硬化したプラスチック複合材の総重量に対して最大70重量%、より有利には硬化したプラスチック複合材の総重量に対して少なくとも65重量%の高いガラス含有量を有し得ることも考えられる。例えば、このようにして製造された、硬化したプラスチック複合材の総重量に対して70重量%までの高いガラス割合を有するプラスチック複合材は、約400N/mm2(DIN EN ISO 527-4/2/2)の引張強さおよび約23,000N/mm2(DIN EN ISO 527-4/2/2)の引張弾性率を有することが可能である。
【0082】
さらなる有利な実施形態では、有利にはウレタンアクリレートとして構成されている上層は、硬化状態で、液体状態と比較して最大2重量%の損失を有することができる。この損失は、反応溶媒、例えばHDDAによって引き起こされる。反応溶媒は、硬化中に放出される。上層の収縮率が極めて低いことは特に有利であり、なぜならば、これにより材料を節約することができ、その結果、製造コストが低下するためである。
【0083】
さらなる有利な実施形態では、上層は、DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した試験法である3000時間のXeno試験後に少なくとも80%の光沢保持率を有する。この少なくとも80%という値は、試験開始前の元の光沢度を100%とした場合の値である。この試験法は、DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した促進耐候試験とも称される。ここで、光沢度は、光沢計(BYK社製micro-TRI-gloss)で測定角度20°を用いて測定される。プラスチック複合材の上層として使用されるウレタンアクリレートは、着色粒子である程度まで着色することができ、その際、UV線による硬化性が維持されることが有利であることが判明した。
【0084】
さらに、これらの着色添加剤が、屋外用途でUV線の大部分、有利には入射放射線の>95%を、その下方に存在する繊維強化されたマトリックス層に到達しない程度まで遮断することが有利であることが判明した。ガリウムドープ水銀ランプをUV線源として使用した表1を参照のこと。顔料含有量の異なる上層をPower Puck 2型放射計に載せ、UVランプ下で120W/cm、10m/分で通過させた。
【0085】
【0086】
表1からわかるように、硬化状態の上層の完全配合に対して1.5重量%以上の顔料、例えば二酸化チタンを上層に添加することにより、その下方に存在するマトリックス層の黄変に対するUV防護が得られる。上層に放射線を通した場合、上層の下方ではもはやUV線が検出されない。硬化状態の上層の完全配合に対して0.75重量%の顔料を添加するだけで、明らかに、上層を透過するUV線が低減される。長期的には、これもまた、その下方に存在する非耐UV性のマトリックス層の黄変を招くであろう。
【0087】
本明細書に記載のプラスチック複合材のマトリックス層は、UV線安定剤を含まないように構成されているため、UV照射時に短時間で視認可能であるほど黄色に変色する。UV安定化されたマトリックス系でさえ、視認可能であるほど黄変する傾向にあることが判明した。この効果は、マトリックス樹脂中の芳香族基の割合が高いことに起因する。この変色は、観察者には不快に感じられる。元の白色が黄色に変わり、観察者にも黄色と認識される。いわゆる黄変が起こる。
【0088】
本発明により、ほぼどのような色でも選択でき、かつ長年にわたっても黄変を防ぐ最大限のUV安定性を有する繊維強化プラスチックから構成されるプラスチック複合材としての包括的な系が初めて創作された。このプラスチック複合材は、DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した促進耐候試験とも称されるDIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した試験法であるXeno試験により、所定の期間にわたって所定の照射量のUV線に曝される。DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠したこの試験法を3000時間実施した場合、本明細書に開示されるプラスチック複合材の上層は、少なくとも80%の光沢保持率を有する。この80%という値は、元の光沢度を100%とした場合の値である。
【0089】
さらに、本明細書に記載のプラスチック複合材の上層が、DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した促進耐候試験とも称されるDIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した試験法である1000時間のXeno試験で元の光沢度100%に対して<10%の光沢低減を示すことが判明した。DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した促進耐候試験とも称されるDIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した試験法を、中央ヨーロッパの気候における15~20年の屋外曝露に相当する7000時間にわたって実施した場合、本明細書に記載のプラスチック複合材の上層は、元の光沢度100%に対して<30%の光沢低減しか示さない。このことは、本明細書に記載のプラスチック複合材が、屋外領域で特に高品質で耐久性があるように構成されていることを意味する。15~20年後でさえ、上層の光沢は実質的に保持されるため、プラスチック複合材を使用し続けることができ、曇りやくすみのために交換したり取り替えたりする必要がない。
【0090】
これらのデータは、コニカミノルタの分光光度計CM-2600d(光のタイプD65、測定法SCE、観察者10°)を使用して求めたものであり、測定された色値は、L=44、a=-1.35、b=-2.35と定めることができる。ここで、公差は、有利にはL=±1.5、a=±0.7、b=±1.0である。
【0091】
特に有利には、本明細書に記載のプラスチック複合材は、1.5m~4m、より有利には1.5m、1.6m、1.7m、1.8m、1.9m、2.0m、2.1m、2.2m、2.3m、2.4m、2.5m、2.6m、2.7m、2.8m、2.9m、3.0m、3.1m、3.2m、3.3m、3.4m、3.5m、3.6m、3.7m、3.8m、3.9m、4.0mの幅、および最大250mの長さで、連続法で製造することができる。この250mの長さは、巻き取られた完成プラスチック複合材の仕上げ処理により必要である。製造工程自体は、連続法として構成されている。
【0092】
荷重たわみ温度の決定に関するさらなる有利な実施形態および有利な代替的形態では、本明細書に記載のプラスチック複合材のガラス転移温度(Tg)が少なくとも90℃になる樹脂がマトリックス材料として有利であることが判明した。Tgが90~120℃、すなわち90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃、101℃、102℃、103℃、104℃、105℃、106℃、107℃、108℃、109℃、110℃、111℃、112℃、113℃、114℃、115℃、116℃、117℃、118℃、119℃、120℃である樹脂が特に適していることが判明しており、すべての中間値もここに開示されているものとする。このような樹脂の有利な例は、オルトフタル酸系、イソフタル酸系および/またはテレフタル酸系のUP樹脂、エポキシ樹脂および/またはポリウレタン樹脂、ならびにこれらの混合物である。特にこれらのガラス転移温度は有利であり、なぜならば、これにより、昼光での昇温による熱変形を回避することができるためである。同時に、これらの温度でプラスチック複合材の良好な平坦性を達成することができる。
【0093】
ガラス転移温度は、動的機械分析(DMA)から求められる。測定は、TA Instruments製AR2000型レオメータを使用して実施され、「Rheology Advantage」プログラムを使用して処理される。測定のパラメータは、自由固定長40~44mm、温度勾配0~120℃、ひずみ0.1%、加振周波数1Hz、温度勾配3K/分である。ガラス転移温度Tgは、tanδの曲線の極大に位置する。
【0094】
さらなる有利な実施形態では、異なる色の着色顔料を使用することもできる。これらは、例えば、L=90.09;a=-2.02、b=3.30の色調を生じ、ここで、L=±1.5、a=±0.7、b=±1.0の標準公差が適用される。有利には、これは、少なくとも二酸化チタンとフタロシアニンブルーとを有し得る顔料混合物により達成することができる。DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した促進耐候試験を実施した場合に3000時間後に光沢保持率を求めたところ、元の光沢度100%の少なくとも80%であった。さらに、この条件下で変色であるデルタEを求めたところ、<1.2であった。
【0095】
これらのデータは、コニカミノルタの分光光度計CM-2600d(光のタイプD65、測定法SCE、観察者10°)を使用して求めたものである。光沢度は、反射率計を用いて鏡面反射の角度を考慮して入射光と表面からの反射光との比を測定することによって決定される。ここでは、測定装置としてBYK-Gardner製「tri-gloss」反射率計を用い、測定角度20°を用いた。
【0096】
さらに本発明は、請求項9記載のプラスチック複合材を製造するための製造方法にも関する。
【0097】
本方法は、少なくとも以下:
a.上層材料を支持体表面に施与する工程;
b.上層材料を成形して、支持体表面上の層を得る工程;
c.得られた上層にUV線を照射して、上層を深部硬化させる工程;
d.マトリックス材料を施与して、マトリックス層を形成する工程;
e.マトリックス層に繊維材料を施与し、その際、繊維材料をまだ液状のマトリックス層に沈め、かつ/または繊維材料を毛管力によってまだ液状のマトリックス層で包囲する工程;
f.マトリックス層を硬化させる工程;
g.支持体材料を除去して、最終製品としての繊維強化多層プラスチック複合材を得る工程
を有する。
【0098】
最初の工程a)では、これから硬化させるべき液状の上層材料を支持体表面に施与する。有利な実施形態例では、支持体表面自体がフィルムとして構成されていると有利であることが判明した。特に、支持体表面としてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用し、その上にこれから硬化させるべき上層材料を施与すると有利であることが判明した。この点でポリエチレンテレフタレートは有利であり、なぜならば、上層材料は、このフィルムと永続的な接着結合を形成せず、それに応じてその後の製造工程で上層を破壊することなく容易にこのフィルムを再び除去することができるためである。
【0099】
さらに、PETフィルムが10~350μmの範囲の膜厚を有すると有利であることが判明した。施与される上層材料は、有利には、アクリレート系の不飽和脂肪族樹脂として構成されている。さらに、例えば着色添加剤、UV安定剤、UV開始剤、反応性促進剤およびラジカル捕捉剤ならびに/またはこれらの組み合わせなどの添加剤を加えることができる。これらの添加剤は、有利には、支持体表面への施与前に上層材料にすでに添加されている。
【0100】
当然のことながら、支持体表面をPETフィルムとして構成することは、限定的なものとして理解されるべきではないため、他の支持体表面を使用することも考えられる。例えば、可能な幾何学的形態も支持体表面として考慮することができる。また、テープ状の搬送面を使用することも考えられる。
【0101】
PETフィルムの製造工程または巻き取りから生じる場合があるPETフィルムの皺をなくすために、一実施形態例では、上層材料の施与前にPETフィルムに予備熱処理を施すと有利であることが判明した。ここでは、40~80℃の範囲の温度が有利であることが判明した。この温度は、PETフィルムの巻き出し中、すなわち支持体表面の提供中に生じ得る皺をのばせるようにするのに十分である。これは、例えば一軸および/または二軸方向に引張力を加えることによって行うことができる。
【0102】
次の方法工程b)では、これから硬化させるべき表面材料を所望の層厚に調整する。上層から始まるプラスチック複合材の層構造により、その特性を特に容易かつ狙いどおりに調整および制御することが可能になる。これから硬化させるべき上層材料の層厚の調整を、ドクターブレードで行う。ここで調整される層厚は、次の工程で深部硬化される上層の層厚に相当する。
【0103】
ここで調整される層厚は、体積収縮を考慮した工程c)における深部硬化状態の層厚が40~150μmの範囲、有利には90~110μmの範囲となるように選択されることに留意すべきである。有利には、ここで施与される上層は、元の体積に対して0.5~4%の体積収縮しか示さない。
【0104】
方法工程c)において、今度はこの上層材料にUV線を照射する。この目的のために、例えば、ガリウムドープUV線源を使用することができる。特に効果的で均一な深部硬化を達成するために、UV線を上方から放射させて上層の自由表面に当てる。したがって、上層に、後のプラスチック複合材の層構造に対して背面からUV線を照射する。深部架橋が開始される。深部硬化した上層が形成される。これにはさらに、上層の面のうち放射線とは反対側の方が、支持体表面と連続的な共通接触面を形成しており、これが平滑で平坦なままであるという利点がある。この共通接触面の構造は、支持体表面の構造によって決まる。その後のプラスチック複合材の最終製品では、この共通接触面が可視面となり、風化やUV線にも直接曝される。
【0105】
上層の背面への照射によって、さらに硬化プロセスを制御することができる。これは、例えばホスフィンオキシド基から構成される深部硬化型UV開始剤との組み合わせによって実現される。これにより、薄層の製造工程での深部硬化の制御の提供が初めて可能となった。UV線を直接照射する上層の自由表面は、80~50%しか転化されない。層厚が支持体表面に向かうにつれて、転化の割合は増加する。有利には、支持体表面と上層との界面では、90%を超える架橋転化率が達成できる。これにより、後の可視面が硬化し、この硬化によって安定される。したがって、製造工程での皺を排除することができる。しかし、自由表面は部分的にしか硬化していないままである。これには、上層が自由表面上で化学反応性を維持するという利点がある。
【0106】
任意に、UV照射範囲の前および/または中および/または後で、上層を施与した支持体材料の温度を制御することができる。この目的のために、温度制御可能な板状要素を支持体材料の下方に配置して、この支持体材料を操作することができる。板状要素とは支持面であり、この支持面によって、上層を有する支持体材料が操作されると理解することができる。この板状要素は、UV照射中に生じる可能性のある昇温による熱を迅速かつ制御された様式で放散することができる。これにより、支持体材料の溶融が防止される。
【0107】
さらに、液状の上層を有する支持体材料に、すでにUV照射の前に予備熱処理を施すことも場合により考えられる。これは、支持体フィルムの平坦性に好影響を与えることができ、その結果、その上方に配置された上層に、後続の硬化工程中に皺が寄ることが防止される。
【0108】
これは、次の工程d)でマトリックス層材料を施与する際に特に有利であることが判明した。マトリックス材料が少なくとも部分的に、有利には完全に施与される上層の外面が、まだ化学的に反応性を示すことにより、これと化学的に相互作用することができる。例えば、上層とマトリックス層とが互いに共有結合的または非共有結合的に相互作用することが考えられる。これにより、両層の互いの接着性を著しく改善することができる。さらに、後にラジカル重合反応によって両層が互いに共有結合することも考えられる。
【0109】
次の方法工程d)では、マトリックス材料を施与して、マトリックス層を形成する。マトリックス材料を、上層に施与する。層の調整を、例えば表面層と同様に行うことができる。例えば、一実施形態例では、マトリックス層の厚さをドクターブレードで予め定めることが可能であることが考えられる。
【0110】
これに続き、次の方法工程e)では、マトリックス層に強化材を導入する。繊維強化材として、織布または不織布、レイドウェブネット、マット、短繊維または他の繊維を導入することができる。この目的のために、例えばガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維および/またはポリマー繊維、例えばアラミド繊維ならびにこれらの組み合わせなど、様々な種類の繊維を使用することができる。
【0111】
特に有利な実施形態では、ガラス繊維は、チョップド繊維だけでなく、すでにテキスタイル半製品としても使用でき、有利には予め仕上げ処理が施されたチョップドガラスマットとしても使用できるため、特に有利であることが判明した。このチョップドガラスマットは、特に1平方メートル内にガラス繊維が一定分布しているという点で有利であることが判明した。繊維がバインダーで固定されているため、これにより含浸中の繊維のずれが防止される。チョップドガラスの場合には、ずれは避けられない。さらに、既存の切断技術ではガラスの分布の精度が著しく低いため、表面の平坦性が低下し、さほど安定した信頼性の高い強化の提供ができなくなる。このため、本明細書に記載のプラスチック複合材では、テキスタイル半製品、有利にはチョップドガラスマットが有利に使用される。さらに、チョップドガラスマットは、マトリックス層全体に平面的に導入することができ、したがって均一に分布するという点で有利であることが判明した。これはまさに、ランダムなチョップド繊維の分布では困難なことであり、なぜならば、しばしばチョップド繊維の不均一な集積が生じるためである。その場合、これによってマトリックス層の品質に悪影響が生じる。これにより、しばしば製品の不合格率が高くなる。
【0112】
有利には、使用されるガラス繊維はEガラスであり、これは電気用途またはプラスチック強化に使用される。Eガラスとは、有利にはアルカリ金属酸化物を実質的に含まないホウケイ酸アルミニウムガラスと理解することができる。当然のことながら、これは限定的なものとして理解されるべきではないため、他のタイプのあらゆるガラスを強化材としてここで使用することができる。
【0113】
したがって、本明細書に記載の方法の特に有利な実施形態では、プラスチック複合材の繊維強化のためにチョップドガラスマットが使用される。このチョップドガラスマットは、まだ硬化していないマトリックス層に導入される。毛管力とチョップドガラスマットの平面的な形成とに基づいて、有利にはマトリックス層の製造幅全体にわたって、チョップドガラスマットはマトリックス層中にゆっくりと制御された様式で沈む。チョップドガラスマットは、いわば浸漬され、マトリックス材料に浸される。これにより、チョップドガラスマットは同時に含浸される。
【0114】
これから硬化させるべきマトリックス層へのチョップドガラスマットのこのように制御された供給とその粗い形成とによって、空気の混入が完全に回避される。この場合、毛管力とチョップドガラスマットの粗い構造とによって、生じ得る混入空気が上方に運ばれ、マトリックス層から抜ける。この結果、高品質のマトリックス層が得られ、これを次の工程f)で硬化させる。
【0115】
当然のことながら、チョップドガラス繊維および/またはチョップドガラスマットの使用は限定的なものとして理解されるべきではないため、チョップドガラスマットの代わりに例えば炭素繊維マットやポリマー繊維マットを使用することもできる。
【0116】
方法工程f)での硬化は、有利には熱的に行われる。マトリックス材料の選択、特にそれが依然として不飽和基を有するか否かに応じて、上層とマトリックス層とが互いに共有結合的または非共有結合的に相互作用することができ、その結果、複合材として相互接続された層構造が形成される。
【0117】
マトリックス材料が、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂および/またはポリウレタン樹脂および/またはこれらの少なくとも1つの組み合わせの群から選択されている場合には、層状複合材を熱硬化させる。当然のことながら、これは限定的なものとして理解されるべきではないため、他の硬化方法も与えられている。その後の使用にもよるが、強化材がすでに配置されているマトリックス層は、硬化状態で0.3~5mmの範囲の層厚を有することができる。
【0118】
最後の工程g)では、支持体表面を除去する。これが例えばフィルムとして構成されている場合には、このフィルムを単にプラスチック複合材から下向きに除去し、例えば再び巻き取ることができる。
【0119】
次いで、最終製品に仕上げ処理を施すことができる。最終製品は、有利にはパネル状に構成されている。
【0120】
特殊な用途向けのプラスチック複合材が予定される場合には、例えば外側のマトリックス層がある面をさらに処理することが考えられる。これは、例えば接着性の向上であってもよいし、表面の濡れ性および極性を調整するためのコロナ処理および/または火炎処理であってもよい。これに対して、上層は製造時のままである。最後に、任意にさらにプラスチック複合材の側面を研磨することができる。これにより、ファサード建築要素として使用される場合の設置可能性の改善を達成することができる。
【0121】
さらなる有利な実施形態では、本明細書に記載の方法を連続法として構成することが有利であることが判明した。これにより、250mまでの長さを有し得る幅4mまでのプラスチック複合材を短い製造時間で製造することができる。
【0122】
さらなる有利な実施形態では、少なくとも工程c)と工程d)との間に、深部硬化した上層に少なくとも1つの分離層を施与するさらなる工程を挿入することが有利であることが判明した。分離層は特に、後にマトリックス層の繊維強化によって形成される場合がある繊維痕を低減する役割を果たす。分離層は、有利にはガラス不織布として導入することができ、この分離層によって、上層とマトリックス層との間の界面における大幅なガラス繊維痕が防止される。
【0123】
さらなる有利な実施形態では、少なくとも工程e)と工程f)との間に、マトリックス層を覆うためのさらなる支持体材料を施与することが判明した。最も単純な場合、この支持体材料は、フィルムとして、なおもより有利にはPETフィルムとして構成されていてよい。したがって、マトリックス層を覆うための支持体材料は、上層を施与するための支持体材料と同じであることが考えられる。この追加的な被覆は、硬化を改善し、製造工程全体における欠陥を低減する役割を果たす。
【0124】
さらなる有利な実施形態では、工程f)と工程g)との間に追加の方法工程を実施することができる。この工程は、支持体材料の自由裏面からの上層のUV後硬化工程として実施することができる。挿入されたこの方法工程では、上層を後硬化させる。上記ですでに説明したように、上層はこれまで深部硬化しかされていない。UV線照射により行われるここでの後続の後硬化によって、上層を完全に硬化させることができる。特に、上層とマトリックス層との間の共通接触面は、まだ反応性があり、完全には硬化および架橋されていない。この後硬化にはさらに、これにより耐亀裂性の大幅な低下を達成できるという利点もある。
【0125】
したがって、後硬化工程を実施することが有利であることが判明した。UV線照射を下方から行うと、特に有利で効果的であることが判明した。これは、UV線源が本明細書に記載の層構造の下方に配置されていることを意味する。これにより、UV線は支持体表面を通って上層に直接照射される。このことは、繊維強化材が埋め込まれたマトリックス層材料全体にUV線を照射する必要がないため、特に有利であることが判明した。下方からの方向でUV線を照射することで、マトリックス層との界面における上層の有利には完全な深部架橋および硬化を特に短時間で達成することができる。上記の層厚では、上層はわずか3~15秒後に硬化する。これにより、時間短縮およびコスト削減を伴う製造方法が達成される。
【0126】
本明細書に記載の方法は、上記のようにプラスチック複合材を製造する方法とも理解することができる。
【0127】
さらに、本発明は、車両、航空機、列車、船舶、トレーラーハウス、キャンピングカーの内装材および/もしくは外装材用の面状部材としての、物流および輸送用の面状要素、例えば貨物自動車上部構造体用の面状要素としての、ならびに/または建築産業におけるファサード要素としての、本発明によるプラスチック複合材の使用に関する。
【0128】
これにより、プラスチック複合材の黄変による光学的障害がほぼ生じないため、価値の保持がもたらされる。
【0129】
さらに、本発明は、前述の製造方法により製造されるプラスチック複合材にも関する。
【0130】
本明細書に記載のプラスチック複合材を、平方メートル単位の広い面積にわたって製造することが初めて可能となった。例えば、プラスチック複合材が、少なくとも1m×少なくとも1m、少なくとも1m×少なくとも1.5m、少なくとも1.5m×少なくとも1.5m、少なくとも1m×少なくとも2m、少なくとも2m×少なくとも2m、少なくとも2m×少なくとも4mの面積を形成することが可能である。有利には、プラスチック複合材は、平面的な形状を有する。用途に応じて、プラスチック複合材は、パネル品として、またはさらにはロール品として構成されていてよい。したがって、断片に切断する必要なく、広い面積を本明細書に記載のプラスチック複合材で覆うことができる。これにより、使用状態での特に審美的な外観が生み出される。
【0131】
さらに、ウレタンアクリレート樹脂をベースとする上層自体は、初期には、プラスチック複合材の表面硬度の向上を引き起こさないことが判明した。しかし、上層の層厚がわずかであると、マトリックス材料の高硬度がより効果的となる。同時に、これにより品質が向上する。例えば、汚染粒子が上層に押し付けられた場合には、層厚がわずかであることから、この粒子をさほど排除することができない。これは、圧痕が著しく弱くなることを意味する。このことは特に有利であり、なぜならば、本明細書に記載のプラスチック複合材が、後にプレス工程でさらに加工されることが多いためである。この場合、プレス表面とプラスチック複合材との間の汚染粒子がより頻繁に発生する可能性がある。その結果、層厚がわずかであることによって、加えられるプレス圧による汚染物の圧痕を著しく減少させることができる。1平方メートル当たり1.5~4tのプレス圧で作業されることが多い。その結果、押圧された汚染物により生じる廃棄物が著しく少なくなる。
【0132】
本明細書に記載の本発明は、有利には、光沢度を保持しつつ、ほぼ変色を示さずに高い耐UV性を示す。これは特に、上層中の着色添加剤によって達成することができる。
【0133】
さらに、着色添加剤、有利には着色顔料は、UV安定化されておらず、例えば不飽和ポリエステルおよび/またはエポキシ樹脂を有する、その下方に存在するマトリックス層をUV線から防護し、したがって黄変を防止するため有利であることが判明した。
【0134】
さらに、本明細書に記載のプラスチック複合材の機械的特性は、各種繊維強化材を使用することにより15~20倍の範囲で調整可能であることが判明した。この結果、DIN EN ISO 527-4/2/2に準拠した一連の特性が得られる:
- 短繊維マット:強度約60N/mm2|弾性率約6,000N/mm2
- 織物強化材:強度約150N/mm2|弾性率約10,000N/mm2
- 二軸レイドウェブ強化材:強度約400N/mm2|弾性率約23,000N/mm2
- 一軸レイドウェブ強化材:強度約1,000N/mm2|弾性率約45,000N/mm2
- 一軸炭素繊維レイドウェブ強化材:強度約1,300N/mm2|弾性率約110,000N/mm2。
【0135】
さらなる利点、特徴および構成の選択肢は、非限定的なものであると理解すべき実施形態例に示されている。「実質的に」という用語は、本発明の範囲でこの用語が用いられる本明細書で利用されるすべての場合において、この用語を用いない場合に与えられるであろう規定からのずれが1%~20%、より有利には1%~10%、さらにより有利には1%~5%の範囲であることと理解される。
【0136】
実施形態例の詳細な説明
「phr」という用語は、液体状態の上層またはマトリックス層のそれぞれのベース層材料100部に対する重量部であると理解される。
【0137】
1.キャラバンの外部側壁
キャラバンの外壁の本明細書に記載の実施形態例では、製造された最終製品の総厚は1.5mm±0.1mm、総幅は2.8mである。本製造方法は連続法として構成されているため、製品の長さは可変であり、顧客の要求に応じて仕上げ処理することができる。
【0138】
まず、二軸延伸フィルム、有利にはPETフィルムに液状の表面材料を施与する。その後すぐに、ドクターブレードで層厚を110μm±15μmに調整する。PETフィルムは支持体材料として機能し、それ自体の厚さは10~400μmであるが、PETフィルムの厚さは100μmが特に有利であることが判明した。PETフィルムは支持体フィルムとして利用するのに十分な安定性を有し、さらにはUV架橋に必要なUV線を通過させるのに十分な薄さである。有利には、表面材料は、少なくとも1つのウレタンアクリレートを含むように構成されていてよい。
【0139】
本実施形態例で施与する表面材料は、以下の組成を有することができる:
100phrのウレタンアクリレート(Laromer UA9089)
0.5phr Hostaphin 3058 LIQ
0.5phr UV吸収剤としてのTinuvin 1130
4phr 酸化チタン
1.5phr 深部硬化型UV開始剤としてのTPO-L
または
100phr ウレタンアクリレート (Ebercryl IRR 1032)
0.5phr Hostaphin 3058 LIQ
0.5hr UV吸収剤としてのTinuvin 1130
4phr 酸化チタン
1.5phr 深部硬化型UV開始剤としてのTPO-L。
【0140】
支持体材料に施与した液状の表面材料に、層厚調整後に上方から少なくとも1つのUV線源を照射する。このようにして、UVを表面材料層の露出面を通じて直接導入する。有利には、このためにガリウムドープ水銀ランプをUV線源として使用する。これは、有利には400mJ/cm2±10%のUV照射量を有する。
【0141】
有利には、照射時間は、3~30秒、より有利には5~15秒の範囲であり、なおもより有利には5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、10秒、11秒、12秒、13秒、14秒、15秒である。
【0142】
支持体材料として構成されたPETフィルムは、さらに、フィルムと表面材料との界面における酸素阻害を防止するという役割も担っている。これにより、この界面の領域で>90%の高い架橋転化率が達成される。それに対して、自由表面は空気と接触しており、酸素阻害される。このため、自由表面の架橋度は50~80%になる。
【0143】
硬化剤ラジカルの酸素阻害の影響を受けない深部層では、通常は>90%の架橋度が達成される(IR-ATRで測定;C-C二重結合のピーク面積で計算)。これに関して特筆すべきことは、IR-ATRでは、400~4000の範囲の波数(cm-1)の光が試料に照射されることである。放射線は、存在する共有結合に応じて表面で吸収され、その後、残りは装置に反射される。架橋測定には、二重結合の吸収が関係する。二重結合は、約809cm-1に固有のピークを生成する。ここではランベルト・ベールの法則が適用され、これは、ピーク面積が結合密度に正比例することを意味する。
【0144】
したがって、まず液体試料を測定し、測定されたピークの下方の面積を積分する。この面積は、0%または100%の非架橋結合の架橋度に相当する。硬化後に再び積分するが、面積はこの場合も、未架橋の結合の量を示す。両者の差が、達成された架橋度に相当する。次の工程では、表面材料の少なくとも部分的にUV硬化した露出面に、マトリックス材料を施与する。マトリックス材料の層厚は、その後の用途に適合させることができる。本実施形態例では、1100μm±100μmの層厚を選択した。層厚を、さらなるドクターブレードで調整する。
【0145】
本明細書に記載の例では、マトリックス材料は以下の組成を有する:
100phr 不飽和樹脂、有利には中反応性のオルトフタル酸系マトリックス樹脂Palatal P4 L21
5phr 二酸化チタン
0.15phr 1%コバルト促進剤
1.7phr 硬化剤、有利にはCurox I300。
【0146】
コバルト促進剤として、例えばスチレン、キシレン、TXIB、2-エチルヘキサン-1-オールのような、対応するコバルト割合を有する溶媒を使用することができる。
【0147】
本実施形態例では、除去されるマトリックス材料に強化材を導入する。マトリックス材料がまだ液体の凝集体状態であるため、強化材はマトリックス材料層中に沈むことができ、実質的に完全に、有利には完全にマトリックス材料層で包囲される。これにより、強化材を同時に含浸させる。本実施形態例で挙げた用途では、通常はチョップドガラスマットが強化材として選択される。チョップドガラスマットは、375gr/m2の目付を有する。チョップドガラスマットの代替として、チョップドガラス繊維を強化のために導入することもできる。
【0148】
チョップドガラス繊維および/またはチョップドガラスマットの繊維痕を低減するために、有利には、マトリックス層の施与前または施与後に、上層とチョップドガラス繊維および/またはチョップドガラスマットとの間に少なくとも1つの分離層を配置する。分離層は、有利にはガラス不織布として構成されている。さらに有利には、ここで使用されるガラス不織布は、有利には20g/m2の目付を有する。これにより、安定性が改善され、個々のチョップドガラス繊維および/またはマットのガラス繊維が上層に押し付けられて、最悪の場合には上層を貫通してプラスチック複合材から突出することが防止される。さらに、上層と繊維との界面がより均一になり、繊維構造が視覚的に遮蔽され、最小限に抑えられる。
【0149】
本明細書に記載の実施形態例では、個々の層の以下の構造が生じる:
- 上層
- 分離層、有利にはガラス不織布
- チョップドガラスマットが導入されたマトリックス層
または
- 上層
- 分離層が有利にはガラス不織布として導入され、かつチョップドガラスマットが導入されたマトリックス層。
【0150】
最後に、有利にはさらなる支持体フィルム、有利にはPETフィルムをマトリックス層に施与する。これにより、マトリックス材料の硬化中の酸素阻害が防止される。PETフィルムと樹脂との間の混入空気を除去するため、層系全体をカレンダー処理する。その後、マトリックス材料を100℃に20分間加熱して熱硬化させる。その後、プラスチック複合材を元通りに室温まで冷却する。ウレタンアクリレートを含む上層を架橋させるために、プラスチック複合材に再度UV線を照射する。これは、例えば、400mJ/cm2±10%の照射量を放出するガリウムまたは鉄ドープ水銀ランプとして構成された、さらなる、有利には深部硬化型UV線源を用いて行うことができる。製造工程では、この放射線源は層系の下方に配置されているため、まず支持体面に照射し、次に上層に照射する。したがって、照射は下方から行う。照射時間は、有利には3~30秒、より有利には5~15秒、なおもより有利には5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、10秒、11秒、12秒、13秒、14秒、15秒の範囲である。
【0151】
最後の工程では、ここまでプラスチック複合材の面積を制限していた2つの支持体フィルムを除去する。その後、プラスチック複合材に仕上げ処理を施す。このようにして製造されたプラスチック複合材は、DIN EN ISO 527-4/2/2による引張強さが70N/mm2であり、DIN EN ISO 527-4/2/2による引張弾性率が6,000N/mm2であることが判明した。
【0152】
本明細書に記載の本実施形態例では、得られるプラスチック複合材は、硬化したプラスチック複合材の総重量に対して20~30重量%のガラス含有量を有する。
【0153】
本明細書に記載の2つの可能な上層の選択肢を有するプラスチック複合材は、光沢安定性の著しい向上を示し、DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した試験法でほぼ黄変を示さず、公知の繊維強化プラスチックパネルと比較して約100g/m2の重量減少を示し、同時に機械的特性も改善されている。特に、DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した促進耐候試験とも称されるDIN EN ISO 4892-2-A1(上記参照)に準拠した試験法であるXeno試験で判明した数十年にわたる黄変の大幅な低減および光沢度の保持は、キャラバン分野における価値の保持にとって極めて重要である。例えば、トレーラーハウスが15年経っても新品同様で、くすんだ黄変がなく光沢のある白色に見えれば、これにより再販売価値は格段に高くなる。
【0154】
2.商用車両の外壁
本明細書に記載の第2の実施形態例では、製造された最終製品、すなわちプラスチック複合材は、商用車両の外部側壁に使用される。この第2の実施形態例にしたがって製造されたプラスチック複合材の総厚は1.4mm±0.1mm、総幅は2.4mである。本製造方法は連続法として構成されているため、製品の長さは可変であり、顧客の要求に応じて仕上げ処理することができる。
【0155】
まず、二軸延伸フィルム、有利にはPETフィルムに液状の表面材料を施与する。その後すぐに、ドクターブレードで層厚を110μm±15μmに調整する。PETフィルムは支持体材料として機能し、それ自体の厚さは10~400μmであるが、PETフィルムの厚さは100μmが特に有利であることが判明した。PETフィルムは支持体フィルムとして利用するのに十分な安定性を有し、さらにはUV架橋に必要なUV線を通過させるのに十分な薄さである。有利には、表面材料は、少なくとも1つのウレタンアクリレートを含むように構成されていてよい。
【0156】
本実施形態例で施与する表面材料は、以下の組成を有することができる:
100phrのウレタンアクリレート(Laromer UA9089)
0.5phr Hostaphin 3058 LIQ
0.5phr Tinuvin 1130(UV吸収剤)
4phr 二酸化チタン(シェードカラーの白色調または色の場合、より多くの種類の顔料を加えることができる)
1.5phr TPO-L
または
100phr ウレタンアクリレート (Ebercryl IRR 1032)
0.5phr Hostaphin 3058 LIQ
0.5phr Tinuvin 1130(UV吸収剤)
4phr 二酸化チタン(シェードカラーの白色調または色の場合、より多くの種類の顔料を加えることができる)
1.5phr TPO-L。
【0157】
支持体材料に施与した液状の表面材料に、層厚調整後に上方から少なくとも1つのUV線源を照射する。このようにして、UVを表面材料層の露出面を通じて直接導入する。有利には、このためにガリウムドープ水銀ランプをUV線源として使用する。これは、有利には400mJ/cm2±10%のUV照射量を有する。有利には、照射を3~30秒、より有利には5~15秒、なおもより有利には5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、10秒、11秒、12秒、13秒、14秒、15秒行う。
【0158】
支持体材料として構成されたPETフィルムは、さらに、フィルムと表面材料との界面における酸素阻害を防止するという役割も担っている。これにより、この界面の領域で>90%の高い架橋転化率が達成される。それに対して、自由表面は空気と接触しており、酸素阻害される。このため、自由表面の架橋度は50~80%になる。硬化剤ラジカルの酸素阻害の影響を受けない深部層では、通常は>90%の架橋度が達成される(IR-ATRで測定;C-C二重結合のピーク面積で計算-測定および評価については、実施形態例1-キャラバン外壁を参照)。
【0159】
次の工程では、施与し、少なくとも部分的に硬化した上層材料の露出面にマトリックス材料を施与する。マトリックス材料の層厚は、その後の用途に適合させることができる。本明細書に開示された実施形態例では、マトリックス層は、有利には700μm±50μmの範囲の層厚を有する。
【0160】
有利には、マトリックス層は、少なくとも1つのエポキシ樹脂を含むように構成されており、以下の組成を有する:
100phr Biresin LXR 121
26phr Biresin LXH 121-3。
【0161】
施与したエポキシ樹脂を、この場合には部分的に硬化するように構成された上層の裏面に施与し、ドクターブレードで700μm±50μmの層厚となるように除去する。
【0162】
本実施形態例では、除去されるマトリックス材料に強化材を導入する。マトリックス材料がまだ液体の凝集体状態であるため、強化材はマトリックス材料層中に沈むことができ、実質的に完全に、有利には完全にマトリックス材料層で包囲される。これにより、強化材を同時に含浸させる。
【0163】
本明細書に記載の実施形態例では、個々の層の以下の構造が生じる:
- 上層
- 以下のものを有するマトリックス層
- 812gr/m2の目付を有する第1の二軸ガラスレイドウェブ
- 812gr/m2の目付を有する第2の二軸ガラスレイドウェブ。
【0164】
使用した二軸ガラスレイドウェブは、二軸に配置されたガラスロービングストランドを有するテキスタイル半製品である。
【0165】
このような二軸ガラスレイドウェブの利点は、同じ厚さを維持しつつ、得られるプラスチック複合材中のガラス割合をより多くすることができるという点にある。これにより、より低い重量で、なおもさらに機械的特性の改善を実現することができる。この二軸ガラスレイドウェブの使用に伴って、低熱膨張係数も得られる。
【0166】
最後に、有利にはさらなる支持体フィルム、有利にはPETフィルムをマトリックス層に施与する。これは、マトリックス層から、すなわち本実施形態例ではマトリックス層を構成するエポキシ樹脂から脱型するのに適したものでなければならない。PETフィルムと樹脂との間の混入空気を除去するため、層系全体をカレンダー処理する。その後、マトリックス材料を100℃に30分間加熱して熱硬化させる。その後、プラスチック複合材を元通りに室温まで冷却する。ウレタンアクリレートを含む上層を架橋させるために、プラスチック複合材に再度UV線を照射する。これは、例えば、400mJ/cm2±10%の照射量を放出するガリウムまたは鉄ドープ水銀ランプとして構成された、さらなる、有利には深部硬化型UV線源を用いて行うことができる。製造工程では、この放射線源は層系の下方に配置されているため、上層に直接照射する。したがって、照射は下方から行う。有利には、照射を、3~30秒、より有利には5~15秒、さらに有利には5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、10秒、11秒、12秒、13秒、14秒、15秒行う。
【0167】
最後の工程では、ここまでプラスチック複合材の面積を制限していた2つの支持体フィルムを除去する。その後、プラスチック複合材に仕上げ処理を施す。このようにして製造されたプラスチック複合材は、DIN EN ISO 527-4/2/2による引張強さが400N/mm2であり、DIN EN ISO 527-4/2/2による引張弾性率が23,000N/mm2であることが判明した。本明細書に記載のプラスチック複合材は、光沢安定性の著しい向上を示し、ほぼ黄変を示さず、機械的特性の改善を示しつつ、公知の繊維強化プラスチックパネルと比較して100g/m2までの重量減少を示す。特に、DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した促進耐候試験法とも称されるDIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した試験法(Xeno試験法とも称される)で判明した数十年にわたる黄変の大幅な低減および光沢度の保持は、貨物自動車上部構造体の価値の保持にとって極めて重要である。例えば、貨物自動車上部構造体が15年経っても新品同様で、くすんだ黄変がなく光沢のある白色に見えれば、これにより再販売価値は格段に高くなる。また、耐エロージョン性も高い。
【0168】
3.建築産業用カーテンウォールファサードパネル
本明細書に記載の第3の実施形態例では、本実施形態例にしたがって製造されたプラスチック複合材を、例えば建築産業におけるカーテンウォールファサードパネルとして使用する。製造されたプラスチック複合材、すなわち最終製品の総厚は5.0mm±0.15mm、総幅は約2.4mである。本製造方法はさらに連続法として構成されているため、製品の長さは可変であり、顧客の要求に応じて仕上げ処理することができる。
【0169】
まず、二軸延伸フィルム、有利にはPETフィルムに液状の表面材料を施与する。その後すぐに、ドクターブレードで層厚を110μm±0.15μmに調整する。PETフィルムは支持体材料として機能し、それ自体の厚さは10~400μmであるが、PETフィルムの厚さは100μmが特に有利であることが判明した。PETフィルムは支持体フィルムとして利用するのに十分な安定性を有し、さらにはUV架橋に必要なUV線を通過させるのに十分な薄さである。有利には、表面材料は、少なくとも1つのウレタンアクリレートを含むように構成されていてよい。
【0170】
本実施形態例で施与する表面材料は、以下の組成を有することができる:
100phrのウレタンアクリレート(Laromer UA9089)
0.5phr Hostaphin 3058 LIQ
0.5phr Tinuvin 1130(UV吸収剤)
4phr 二酸化チタン(シェードカラーの白色調または色の場合、さらなる種類の顔料を加えることができる)
1.5phr TPO-L
または
100phr ウレタンアクリレート (Ebercryl IRR 1032)
0.5phr Hostaphin 3058 LIQ
0.5phr Tinuvin 1130(UV吸収剤)
4phr 二酸化チタン(シェードカラーの白色調または色の場合、さらなる種類の顔料を加えることができる)
1.5phr TPO-L。
【0171】
支持体材料に施与した液状の表面材料に、層厚調整後に上方から少なくとも1つのUV線源を照射する。このようにして、UVを表面材料層の露出面を通じて直接導入する。有利には、このためにガリウムドープ水銀ランプをUV線源として使用する。これは、有利には400mJ/cm2±10%のUV照射量を有する。有利には、照射を3~30秒、より有利には5~15秒、なおもより有利には5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、10秒、11秒、12秒、13秒、14秒、15秒行う。
【0172】
支持体材料として構成されたPETフィルムは、さらに、フィルムと表面材料との界面における酸素阻害を防止するという役割も担っている。これにより、この界面の領域で>90%の高い架橋転化率が達成される。それに対して、自由表面は空気と接触しており、酸素阻害される。このため、自由表面の架橋度は50~80%になる。硬化剤ラジカルの酸素阻害の影響を受けない深部層では、通常は>90%の架橋度が達成される(IR-ATRで測定;C-C二重結合のピーク面積で計算-測定および評価については、実施形態例1-キャラバン外壁を参照)。次の工程では、表面材料の少なくとも部分的にUV硬化した露出面にマトリックス材料を施与する。マトリックス材料の層厚は、その後の用途に適合させることができる。本実施形態例では、3700±100μmの液状のマトリックス材料の層厚を選択する。層厚の調整を、さらなるドクターブレードで行う。
【0173】
本明細書に記載の例では、マトリックス材料は以下の組成を有する:
100phrの不飽和樹脂、有利には中反応性のオルトフタル酸系マトリックス樹脂Palatal P4 L21
5phr 二酸化チタン(シェードカラーの白色調または色の場合、さらなる種類の顔料を加えることができる)
0.15phr 1%コバルト促進剤
1.7phr 硬化剤(例えばCurox I300)。
【0174】
本実施形態例では、除去されるマトリックス材料に強化材を導入する。強化材の導入を上方から行う。マトリックス材料がまだ液体の凝集体状態であるため、強化材はマトリックス材料層中に沈むことができ、実質的に完全に、有利には完全にマトリックス材料層で包囲される。これにより、強化材を同時に含浸させる。本実施形態例で挙げた用途では、通常はチョップドガラスマットが強化材として選択される。また、チョップドガラスマットの代替として、チョップド繊維を強化のために導入することもできる。
【0175】
チョップド繊維および/またはチョップドガラスマットの繊維痕を低減するために、有利には、マトリックス層の施与前または施与後に、上層とチョップド繊維および/またはチョップドガラスマットとの間に少なくとも1つの分離層を配置する。分離層は、有利にはガラス不織布として構成されている。さらに有利には、ここで使用されるガラス不織布は、有利には20g/m2の目付を有する。これにより、安定性が改善され、個々のチョップドガラス繊維および/またはマットのガラス繊維が上層に押し付けられて、最悪の場合には上層を貫通してプラスチック複合材から突出することが防止される。さらに、上層と繊維との界面がより均一になり、繊維構造が視覚的に遮蔽される。
【0176】
本明細書に記載の実施形態例では、個々の層の以下の構造が生じる:
- 上層
- 20g/m2の目付を有するガラス不織布
- 以下のものを有するマトリックス層:
- 目付375gr/m2の第1のチョップドガラスマット
- 目付375gr/m2の第2のチョップドガラスマット
- 目付375gr/m2の第3のチョップドガラスマット
- 目付375gr/m2の第4のチョップドガラスマット
- 目付450gr/m2の連続マット
または
- 上層
- 以下のものを有するマトリックス層:
- 導入された分離層であって、有利には20g/m2の目付を有するガラス不織布として構成されているもの
- 目付375gr/m2の第1のチョップドガラスマット
- 目付375gr/m2の第2のチョップドガラスマット
- 目付375gr/m2の第3のチョップドガラスマット
- 目付375gr/m2の第4のチョップドガラスマット
- 目付450gr/m2の連続マット。
【0177】
ここで使用する4つのチョップドガラスマットを、これから硬化させるべきマトリックス層に上方から次々と導入する。毛管作用により、チョップドガラスマットを次々に含浸させ、マトリックス層で包囲させる。有利には、ガラス不織布および連続マットも、有利には同様に上方から、これから硬化させるべきマトリックス層に導入する。4つの個々のチョップドガラスマットをマトリックス層に次々と導入するのが有利であることが判明した。このためには、マトリックス材料を高度に均一に分布させる必要がある。例えば、4つの個々のマットに対応する厚いチョップドガラスマットを1つだけ導入した場合、マトリックス層材料は側方に押し出され、プラスチック複合材全体が不良品となる。
【0178】
最後に、有利にはさらなる支持体フィルム、有利にはPETフィルムをマトリックス層に施与する。これにより、マトリックス材料の硬化中の酸素阻害が防止される。PETフィルムと樹脂との間の混入空気を除去するため、層系全体をカレンダー処理する。その後、マトリックス材料を90℃に30分間加熱して熱硬化させる。その後、得られたプラスチック複合材を元通りに室温まで冷却する。ウレタンアクリレートを含む上層を架橋させるために、プラスチック複合材に再度UV線を照射する。これは、例えば、400mJ/cm2±10%の照射量を放出するガリウムまたは鉄ドープ水銀ランプとして構成された、さらなる、有利には深部硬化型UV線源を用いて行うことができる。製造工程では、この放射線源は層系の下方に配置されているため、上層に直接照射する。したがって、照射は下方から行う。有利には、照射を、3~30秒、より有利には5~15秒、さらに有利には5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、10秒、11秒、12秒、13秒、14秒、15秒行う。最後の工程では、ここまでプラスチック複合材の面積を制限していた2つの支持体フィルムを除去する。その後、プラスチック複合材に仕上げ処理を施す。このようにして製造されたプラスチック複合材は、DIN EN ISO 527-4/2/2による引張強さが60N/mm2であり、DIN EN ISO 527-4/2/2による引張弾性率が6,000N/mm2であることが判明した。
【0179】
本明細書に記載の2つの可能な上層の選択肢を有するプラスチック複合材は、光沢安定性の著しい向上を示し、ほぼ黄変を示さず、機械的特性の改善を示しつつ、公知の繊維強化プラスチックパネルと比較して100g/m2までの重量減少を示す。特に、DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した促進耐候試験とも称されるDIN EN ISO 4892-2-A1に準拠したXeno試験法で判明した数十年にわたる黄変の大幅な低減および光沢度の保持は、ファサード要素の価値の保持にとって極めて重要である。本明細書に記載のプラスチック複合材は、特に建造物のファサードが何十年にもわたって魅力的な外観を保つ必要がある建築分野では有利である。例えば、何十年も屋外で風化した後でも、依然としてほぼ新品のように見えるファサード要素を提供することができる。耐エロージョン性が高い。高価な改修措置やファサード要素の交換は特に必要でない。これによりコストを大幅に削減することができる。
【0180】
有利には、Xeno試験という用語は、DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠して実施される試験法であると理解される。このDIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した試験法は、DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した促進耐候試験またはDIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した促進耐候試験法とも称されることがある。
【0181】
さらなる利点、特徴および構成の選択肢は、非限定的なものであると理解すべきき実施形態例の以下の図面の説明に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【
図1】DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した試験法を示す図である。
【
図2】DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した試験法を示すさらなる図である。
【0183】
DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した促進耐候試験法の上述のように分光光度計を用いて測定したデータを、
図1および
図2に示す。
【0184】
図1は、DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した促進耐候試験法による人工的風化下での本明細書に記載のプラスチック複合材(破線)の挙動を、変色デルタb(黄変)(y軸)として時間(x軸)経過に対して示したものである。本明細書に記載のプラスチック複合材であって、有利には硬化状態での上層の総重量に対して少なくとも1.5重量%、最大で8重量%の顔料、例えば二酸化チタンを有利にはウレタンアクリレートとして構成された上層に有するものが、破線で示されている。黄変が、時間の経過とともに非常にゆっくりと1.5の値までしか増加しないことがわかる。これは、色の相違がせいぜいのところごくわずかに存在するが、観察者自身には感じられないことを意味する。比較として、実線は、上層に着色顔料を含まない、同じプラスチック複合材を示す。マトリックス層の黄変が特に迅速に生じることがわかる。
【0185】
図2は、DIN EN ISO 4892-2-A1準拠した試験法による人工的風化下での光沢低減(y軸)を時間(x軸)経過に対して示したものである。本明細書に記載のプラスチック複合材であって、有利には硬化状態での上層の総重量に対して少なくとも1.5重量%、最大で8重量%の顔料、例えば二酸化チタンを有利にはウレタンアクリレートとして構成された上層に有するものが、実線で示されている。経年での光沢低減が、ごくわずかにしか減少しないことがわかる。DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した約9000時間の試験法で、光沢度は、元の新しい光沢度100%の約80%を保持している。光沢度は、反射率計を用いて鏡面反射の角度を考慮して入射光と表面からの反射光との比を測定することによって決定される。ここでは、測定装置としてBYK-Gardner製「tri-gloss」反射率計を用い、測定角度20°を用いた。点線は、比較として、従来の標準(ネオペンチルグリコールを含むイソフタル酸系ポリエステル樹脂)による上層を有する同じプラスチック複合材を示す。DIN EN ISO 4892-2-A1に準拠した試験法では、すでに約1000時間という非常に短い時間の後に光沢低減が80%を超えていることがわかる。
【0186】
本発明を有利な実施形態例によって詳細に図示および説明したが、本発明は開示された実施例に限定されるものではない。当業者であれば、本発明の保護範囲から逸脱することなく、ここから他の変形例を導き出すことができる。特に、本発明は、以下に示す特徴の組み合わせに限定されるものではなく、当業者にとって明らかに実施可能な、開示された特徴の他の組み合わせや部分的な組み合わせも形成可能である。
【国際調査報告】