IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エヌフィニット ナノテクノロジー インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-544178可撓性材料に対する極薄機能性コーティングの堆積
<>
  • 特表-可撓性材料に対する極薄機能性コーティングの堆積 図1
  • 特表-可撓性材料に対する極薄機能性コーティングの堆積 図2
  • 特表-可撓性材料に対する極薄機能性コーティングの堆積 図3
  • 特表-可撓性材料に対する極薄機能性コーティングの堆積 図4A
  • 特表-可撓性材料に対する極薄機能性コーティングの堆積 図4B
  • 特表-可撓性材料に対する極薄機能性コーティングの堆積 図5
  • 特表-可撓性材料に対する極薄機能性コーティングの堆積 図6
  • 特表-可撓性材料に対する極薄機能性コーティングの堆積 図7
  • 特表-可撓性材料に対する極薄機能性コーティングの堆積 図8
  • 特表-可撓性材料に対する極薄機能性コーティングの堆積 図9
  • 特表-可撓性材料に対する極薄機能性コーティングの堆積 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】可撓性材料に対する極薄機能性コーティングの堆積
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20241121BHJP
   B05D 3/04 20060101ALI20241121BHJP
   B05D 7/04 20060101ALI20241121BHJP
   B05C 13/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C23C16/455
B05D3/04 B
B05D7/04
B05C13/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531553
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 IB2022061404
(87)【国際公開番号】W WO2023095060
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】63/282,896
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524199051
【氏名又は名称】エヌフィニット ナノテクノロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ロケ ジー ヨン
(72)【発明者】
【氏名】テオ チー ハウ
(72)【発明者】
【氏名】マッセルマン ケヴィン
【テーマコード(参考)】
4D075
4F042
4K030
【Fターム(参考)】
4D075AE03
4D075BB07Y
4D075BB57Y
4D075BB70Y
4D075CA42
4D075DA04
4D075DB31
4D075DC36
4F042AA22
4F042DF23
4F042DF27
4F042DF30
4K030BA38
4K030BA43
4K030BA44
4K030BA45
4K030BA46
4K030BA47
4K030BA48
4K030BA61
4K030BB12
4K030CA01
4K030CA07
4K030CA12
4K030EA04
4K030EA06
4K030FA01
4K030GA14
4K030JA01
(57)【要約】
可撓性材料上に異なる配合を有する機能性コーティングを堆積するための装置及び方法が開示される。空間的原子層堆積が、下層の可撓性基材に対してコンフォーマルな、ピンホールがほとんど又は全くない高密度のコーティングを製造し、これによりコーティングの機能特性が向上する。この装置及び方法は、単層又は多層で、1つ以上の機能を有するコーティングを製造することができる。この装置及び方法は大気条件下で作動し、スタンドアロン又はインラインの製造プロセスで使用することができる。包装材料への金属酸化物バリアコーティングの空間的原子層堆積が開示される。金属酸化物バリアコーティングは、包装内の製品を保護するための優れたバリア特性を提供し、付加的な機能を果たすことができ、持続可能な包装材料のリサイクル可能性及び/又は堆肥化可能性及び/又は生分解性を損なわないように十分に薄くすることができる。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性基材を経路に沿って搬送するための搬送システムと、
前記可撓性基材にガスを供給するように構成されたガス供給システムと、
ガスを前記可撓性基材に供給するために前記ガス供給システムに接続された第一の空間的原子層堆積(SALD)ヘッドであって、前記第一のSALDヘッドが、大気条件下でガスを前記可撓性基材に供給するために前記経路に隣接して位置決めされたスリットを含む、第一のSALDヘッドと、
ガスを前記可撓性基材に供給するために前記ガス供給システムに接続された第二のSALDヘッドであって、前記第二のSALDヘッドが、大気条件下でガスを前記可撓性基材に供給するために前記経路に隣接して位置決めされたスリットを含む、第二のSALDヘッドと
を備える、装置であって、
前記第一のSALDヘッド及び前記第二のSALDヘッドが、前記可撓性基材が前記経路に沿って搬送されるときに前記可撓性基材にコーティングを塗布するために、前記可撓性基材にガスを順次供給するように前記経路に沿って配置される、装置。
【請求項2】
前記第一のSALDヘッド及び前記第二のSALDヘッドが、前記可撓性基材の同じ側にガスを供給するように配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第一のSALDヘッド及び前記第二のSALDヘッドが、前記可撓性基材の異なる側にガスを供給するように配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記搬送システムが、前記経路における反転を規定するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第一のSALDヘッド及び前記第二のSALDヘッドが、前記反転の同じ脚部に位置決めされている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第一のSALDヘッド及び前記第二のSALDヘッドが、前記反転の異なる脚部に位置決めされている、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記反転が約180度である、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
前記ガス供給システム、並びに前記第一のSALDヘッド及び前記第二のSALDヘッドが、前記コーティングの同じ層を形成するようにガスを適用するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記ガス供給システム並びに前記第一のSALDヘッド及び前記第二のSALDヘッドが、前記コーティングの異なる層を形成するようにガスを適用するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記搬送システム、前記ガス供給システム、並びに前記第一のSALDヘッド及び前記第二のSALDヘッドが取り付けられるフレームをさらに備え、前記フレームが、既存の製造ラインに組み込まれるように成形され、サイズ合わせされている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
第一の空間的原子層堆積(SALD)ヘッド及び第二のSALDヘッドを、可撓性基材を搬送する経路に沿って配置するステップと、
前記可撓性基材を前記経路に沿って搬送するステップと、
前記可撓性基材が前記経路に沿って搬送されるときに、大気条件下で前記第一のSALDヘッド及び前記第二のSALDヘッドを用いて前記可撓性基材にガスを順次供給して、前記可撓性基材にコーティングを塗布するステップと
を含む、方法。
【請求項12】
前記可撓性基材の同じ側にガスを供給するように前記第一のSALDヘッド及び前記第二のSALDヘッドを配置するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記可撓性基材の異なる側にガスを供給するように前記第一のSALDヘッド及び前記第二のSALDヘッドを配置するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記経路における反転の同じ脚部に前記第一のSALDヘッド及び前記第二のSALDヘッドを位置決めするステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記経路における反転の異なる脚部に前記第一のSALDヘッド及び前記第二のSALDヘッドを位置決めするステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
大気条件下で前記第一のSALDヘッド及び前記第二のSALDヘッドを用いて前記可撓性基材にガスを順次供給して、前記コーティングの同じ層を形成するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
大気条件下で前記第一のSALDヘッド及び前記第二のSALDヘッドを用いて前記可撓性基材にガスを順次供給して、前記コーティングの異なる層を形成するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記第一のSALDヘッド及び前記第二のSALDヘッドをフレームに取り付け、前記フレーム並びに取り付けられた前記第一のSALDヘッド及び前記第二のSALDヘッドを既存の製造ラインに設置するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2021年11月24日に出願された米国仮特許出願第62/282,896号に対する優先権及びその利益を主張する。
【0002】
本開示は、薄膜堆積及び可撓性材料のコーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
極薄(ultra-thin)機能性コーティングは、広範な包装(packaging)用途のために可撓性(flexible)材料に使用されている。例としては、外的要因から包装に含まれる製品(例えば食品)を保護するコーティング、抗菌特性を提供するコーティング(例えばヘルスケア製品の包装)、並びにスマート包装材料へのエネルギー捕集、感知、及び表示特性の組み込みを可能にするコーティングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0004】
バリアコーティングは、水蒸気、水、酸素、光、臭い、油脂、及び異物を含むが、これらに限定されない、外的要因から製品(例えば食品)を保護するために可撓性包装材料に使用される。これらの外的要因からの保護は、製品の保存期間を延ばし、使用又は消費に安全であることを保証するのに有用である。現在のバリアコーティングの例としては、ポリ二塩化ビニリデン(PVDC)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、及びメタライゼーション(金属又は金属酸化物コーティング)が挙げられる。金属及び金属酸化物バリアコーティングの例としては、アルミニウム、酸化アルミニウム、及び酸化ケイ素が挙げられる。
【0005】
膜(film)製造会社は、可撓性包装材料を製造し、バリアコーティングを塗布することができる。図1は、従来の可撓性包装プロセスを示す図である。ステップ1では、可撓性材料のロールが製造される。可撓性材料を製造するためのプロセスの一例は、ブロー/キャスト押出プロセスであり、これにより、樹脂材料がブロー押出機に供給され、次いで一連のローラ(例えば、コラプシングフレーム、ニップロール、アイドラロール、ダンサロール、及び巻き取り機)を通して供給されて、樹脂が可撓性材料のロールに変換される。
【0006】
図1のステップ2では、バリアコーティングが可撓性材料のロール上に堆積される。金属又は金属酸化物バリアコーティングを堆積するための従来のプロセスは以下を含む。
【0007】
ステップ1:可撓性材料のロールが、材料を巻き戻し、巻き取るための一連のローラを備えた真空チャンバに装填される。メッキドラムが、巻き戻しローラと巻き取りローラとの間に配置される。
【0008】
ステップ2:コーティング材料も真空チャンバに導入され得る。
【0009】
ステップ3:空気がチャンバから排気される。
【0010】
ステップ4:可撓性材料が、巻き戻しローラから巻き戻され、巻き取りローラに巻き取られ、その結果、メッキドラム上を通過する。
【0011】
ステップ5:コーティングプロセス(例えば、反応性蒸着、熱蒸着、電子ビーム蒸着、プラズマ強化化学蒸着)を使用して、材料がメッキドラム上を通過する際に、可撓性材料上にバリアコーティング(例えば、金属又は金属酸化物薄膜)をコーティングする。これは、チャンバ内にガス(例えば酸素)の導入を伴い得る。一般に、コーティングは、水蒸気バリア特性及び酸素バリア特性を有する材料の単層から構成される。
【0012】
ステップ6:チャンバを大気圧に戻し、コーティングした可撓性材料を取り出す。
【0013】
可撓性材料にバリアコーティングを塗布することに加えて、膜製造業者は、可撓性材料を調製するために追加のプロセスを使用することができ、これには、追加の機能性コーティングを塗布すること、包装材料をプリント及びラミネートすることが含まれ得るが、これらに限定されない。調製された包装材料は消費者向け包装商品(CPG)会社に出荷され、その会社は包装材料を使用して完成した包装商品製品を作製する。包装プロセスの一例は、垂直型成形充填シール(vertical form fill and seal:VFFS)プロセスである(図1のステップ3)。VFSSプロセスでは、可撓性材料のロールが、垂直円筒形ホッパに供給されてパッケージの形状を形成する。製品(例えば食品)が円筒内に充填される。カッタ及びシーラを使用して、可撓性材料を切断し、製品を中に入れた包装商品に密封する。その後、包装商品は箱(又は別の外部包装製品)に入れられ、流通業者、店舗及び/又は消費者に出荷される。
【0014】
図1(ステップ2)に示すバリアコーティングプロセスの限界は、それが多段階バッチアプローチであることである。フィルム製造者は、包装材料のロールをチャンバに装填し、ポンプでチャンバの空気を抜いて真空状態にし、材料のロールをコーティングし、次いでチャンバからロールを取り外さなければならない。このプロセスは、コストがかかり(例えば、真空装置が高価である)、時間がかかり(例えば、ポンプでチャンバの空気を抜いて真空状態にする時間が必要である)、材料の廃棄物が生じる(例えば、ロールの端がコーティングされない)。真空チャンバの必要性をなくした、大気圧物理蒸着及び化学蒸着技術を使用して行われる市販及び研究用の装置はあるが、これらの技術は包装材料のコーティングのようなハイスループット用途には設計されていない。包装製造プロセスを簡略化する、より費用対効果の高いバリアコーティングプロセスを追求することが望まれる。
【発明の概要】
【0015】
本明細書に開示されるのは、真空チャンバを用いずに開放空気で可撓性材料上に極薄機能性コーティングをハイスループットで堆積するための装置及び方法であり、コーティングは1つ以上の層から構成される。
【0016】
開示された装置は、1つ以上の空間的原子層堆積(spatial atomic layer deposition:SALD)ヘッド(「コータ(coaters)」又は「コータヘッド(coater heads)」とも呼ばれる)の各々に1つ以上の前駆体ガスを供給するためのガス供給システム、並びにヘッドを通過して可撓性材料を搬送するためのローラ及びヒータのシステムを使用する。
【0017】
開示された装置の様々な実施形態では、全てのSALDヘッドは、可撓性材料の同じ表面をコーティングするように位置決めされる。開示された装置の別の実施形態では、SALDヘッドの1つ以上は、可撓性材料の対向する表面をコーティングするように位置決めされる。
【0018】
開示された装置の様々な実施形態では、可撓性材料又は極薄コーティングの異なる層の特性評価又は修正を可能にするために、他の機器が1つ以上のSALDヘッドに隣接して配置され得る。
【0019】
開示された装置は、スタンドアロンシステム、又は製造ラインに組み込まれるドロップインシステムであり得る。
【0020】
開示された方法では、可撓性材料は、SALDを介して極薄コーティングの1つ以上の層を堆積させるために、1つ又は複数のヘッドに隣接して通過する。堆積される層の数及び各層の厚さは、SALDヘッドの数、ヘッド内のガス供給チャネルの数を含むが、これらに限定されない、各SALDヘッドの設計、及び各リアクタに供給される前駆体ガスの選択、とりわけ装置の動作パラメータによって制御され得る。
【0021】
開示された方法の様々な実施形態では、可撓性材料は、SALDヘッドに対して一方向に移動する。開示された方法の別の実施形態では、可撓性材料の移動方向は、より厚いコーティング又は可変の厚さを有するコーティングの堆積を可能にするために変化させることができる。
【0022】
開示された装置及び方法は、様々な表面形態を有し得る可撓性基材材料の1つ以上の表面を、1つ以上のコンフォーマルな極薄の機能性コーティングでコーティングするために使用することができ、各コーティングは、元素材料又は化合物材料の1つ以上の層から構成される。1つ又は複数の極薄コーティングは、1つ以上の機能を果たし得るか、又は可撓性材料の表面上で製造されるデバイスのコンポーネントを構成することができる。
【0023】
本発明の様々な実施形態は、記載されるものに限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、板紙又は紙などの可撓性材料上へのバリアコーティング(例えば、極薄金属酸化物コーティング)の堆積を含む。コーティングは、1つ又は複数の可撓性材料内に包装される製品を保護するためのバリア特性を提供する。この文脈におけるバリアは、典型的には、水蒸気バリア、酸素バリア、臭いバリア、油脂バリア、又は水性液体バリアを意味するが、記載されるものに限定されない。これらのバリア特性は、製品の鮮度を保つために外的要因がパッケージに侵入するのを防ぎ、食品などの製品の保存期間を延ばすことができる。
【0024】
開示されたコーティングの様々な実施形態では、コーティングは、記載されるものに限定されないが、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、又は酸化スズなどの材料の単層から構成される。開示されたコーティングの別の実施形態では、コーティングは、異なる材料の複数の層を含んでもよく、各層の厚さは、開示された方法によって制御され得る(例えば、10ナノメートル(nm)の酸化アルミニウム-5nmの酸化亜鉛-10nmの酸化アルミニウム-5nmの酸化亜鉛-10nmの酸化アルミニウム-10nmの酸化第一銅)。コーティングの異なる層は、増強されたバリア特性、増強された機械的特性、遮光特性、及び抗菌特性を含むが、これらに限定されない、複数の機能を提供することができる。
【0025】
開示されたコーティングの様々な実施形態では、コーティングは、持続可能な包装材料のリサイクル可能性及び/又は堆肥化可能性及び/又は生分解性を損なうことなく、完全にリサイクル可能及び/又は堆肥化可能及び/又は生分解性である持続可能な包装材料に開示された1つ又は複数の機能を提供する。
【0026】
本開示の様々な態様によれば、装置は、経路に沿って可撓性基材を搬送するための搬送システムと、ガスを可撓性基材に送達するように構成されたガス供給システムと、ガスを可撓性基材に供給するようにガス供給システムに接続されたSALDヘッドとを含む。第一のSALDヘッドは、大気条件下で可撓性基材にガスを供給するために経路に隣接して位置決めされたスリットを含む。装置は、可撓性基材にガスを供給するためにガス供給システムに接続された第二のSALDヘッドをさらに含む。第二のSALDヘッドは、大気条件下で可撓性基材にガスを供給するために経路に隣接して位置決めされたスリットを備える。第一のSALDヘッド及び第二のSALDヘッドは、可撓性基材が経路に沿って搬送されるときに可撓性基材にコーティングを塗布するために、可撓性基材にガスを順次供給するように経路に沿って配置される。
【0027】
第一のSALDヘッド及び第二のSALDヘッドは、可撓性基材の同じ側にガスを供給するように配置され得る。
【0028】
第一のSALDヘッド及び第二のSALDヘッドは、可撓性基材の異なる側にガスを供給するように配置され得る。
【0029】
搬送システムは、経路における反転(reversal)を規定するように構成され得る。
【0030】
第一のSALDヘッド及び第二のSALDヘッドは、反転の同じ脚部(leg)に位置決めされ得る。
【0031】
第一のSALDヘッド及び第二のSALDヘッドは、反転の異なる脚部に位置決めされ得る。
【0032】
反転は、約180度であり得る。
【0033】
ガス供給システム、並びに第一のSALDヘッド及び第二のSALDヘッドは、コーティングの同じ層を形成するようにガスを適用するように構成され得る。
【0034】
ガス供給システム、並びに第一のSALDヘッド及び第二のSALDヘッドは、コーティングの異なる層を形成するようにガスを適用するように構成され得る。
【0035】
装置は、搬送システム、ガス供給システム、並びに第一のSALDヘッド及び第二のSALDヘッドが取り付けられるフレームをさらに含み得る。フレームは、既存の製造ラインに組み込まれるように成形され、サイズ合わせされ得る。
【0036】
本開示の様々な態様によれば、方法は、第一のSALDヘッド及び第二のSALDヘッドを、可撓性基材を搬送する経路に沿って配置するステップと、可撓性基材を経路に沿って搬送するステップと、可撓性基材が経路に沿って搬送されるときに、大気条件下で第一のSALDヘッド及び第二のSALDヘッドを用いて可撓性基材にガスを順次供給して、可撓性基材にコーティングを塗布するステップとを含む。
【0037】
方法は、可撓性基材の同じ側にガスを供給するように第一のSALDヘッド及び第二のSALDヘッドを配置するステップをさらに含み得る。
【0038】
方法は、可撓性基材の異なる側にガスを供給するように第一のSALDヘッド及び第二のSALDヘッドを配置するステップをさらに含み得る。
【0039】
方法は、経路における反転の同じ脚部に第一のSALDヘッド及び第二のSALDヘッドを位置決めするステップをさらに含み得る。
【0040】
方法は、経路における反転の異なる脚部に第一のSALDヘッド及び第二のSALDヘッドを位置決めするステップをさらに含み得る。
【0041】
方法は、大気条件下で第一のSALDヘッド及び第二のSALDヘッドを用いて可撓性基材にガスを順次供給して、コーティングの同じ層を形成するステップをさらに含み得る。
【0042】
方法は、大気条件下で第一のSALDヘッド及び第二のSALDヘッドを用いて可撓性基材にガスを順次供給して、コーティングの異なる層を形成するステップをさらに含み得る。
【0043】
方法は、第一のSALDヘッド及び第二のSALDヘッドをフレームに取り付け、フレーム並びに取り付けられた第一のSALDヘッド及び第二のSALDヘッドを既存の製造ラインに設置するステップをさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本開示を明確に理解するために、本開示のいくつかの実施形態が例として示され、それらは添付の図面に限定されない。
【0045】
図1】可撓性材料の製造(ステップ1)、可撓性材料のバリアコーティング(ステップ2)、及び製品パッケージング(ステップ3)を含む、従来の可撓性パッケージングプロセスを示す図である。金属又は金属酸化物のための従来のバリアコーティングプロセスは、真空チャンバ内で実施されるバッチプロセスである。
図2図2Aは、時間的原子層堆積プロセスを示す図である。図2Bは、空間的原子層堆積(SALD)プロセスを示す図である。
図3】開示されたSALD装置のコンポーネントを示す図である。
図4A】開示された装置及び方法における可撓性材料の同じ側へのSALDヘッドの配置を示す図である。
図4B】開示された装置及び方法における可撓性材料の対向する側へのSALDヘッドの配置を示す図である。
図5】開示された装置及び方法におけるSALDヘッド間の他の機器の一部の配置を示す図である。
図6図6Aは、開示された本発明によるスタンドアロン装置を示す図である。図6Bは、開示された本発明によるドロップイン装置を示す図である。
図7】多数のコーティング層、並びにSALDヘッドの特定の配置及びそれぞれの動作パラメータによって制御される各層の厚さを示す図である。
図8図8Aは、SALDヘッドに対する可撓性材料の単一の移動方向を示す図である。図8Bは、SALDヘッドに対する可撓性材料の双方向の移動を示す図である。図8Cは、複数のSALDヘッドに対する可撓性材料の双方向の移動を示す図である。
図9図9Aは、開示された本発明により製造された可撓性材料上の複数の機能性を有する単層コーティングを示す図である。図9Bは、開示された本発明により製造された可撓性材料上の複数の機能性を有する多層コーティングを示す図である。
図10図10A図10Dは、可撓性材料にバリアコーティングを付加するための空間的原子層堆積プロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
原子層堆積(ALD)は、コーティングが、下層表面に対してコンフォーマルであり得、バリア性能を低下させるピンホールがないため、優れたバリアコーティングを製造することができる薄膜堆積技術である。従来の時間的ALDは、曝露の間に排気及びパージステップを伴い、化学前駆体ガス及び反応体ガスを真空チャンバ内に順次挿入することによって操作する。従来の時間的ALDプロセスを図2Aに示す。適切な実験条件が使用される場合、各シーケンスの後に材料の単一の原子層が形成され、このシーケンスが複数回繰り返されて膜を構築する。しかしながら、従来の時間的ALDは非常に時間のかかるバッチプロセスであり、真空チャンバも必要であるため、包装材料のコーティングのようなハイスループット用途には適していない。
【0047】
従来の時間的ALDは、前駆体ガス及び反応体ガスを、排気及びパージステップを介して時間的に分離するため、時間がかかる。対照的に、空間的原子層堆積(SALD)技術が開発されており、これは、前駆体ガス及び反応体ガスを時間的ではなく空間的に分離する。コーティングされる表面はガスの間を移動して連続的な曝露を反復する。SALDプロセスは図2Bに示され、一般に、1つ以上のスリット200を介して作動ガス(例えば、前駆体ガス、反応体ガス、不活性ガスなど)を排出し、1つ以上のスリット202を介して排気ガスを引き出すことを含み、スリット200、202は、SALDコータ又はヘッドと呼ばれ得る構造体内のチャネルのネットワークとガスを連通する。これにより、時間的ALDを低速にする排気及びパージステップが排除又は削減され、その結果、SALDは従来のALDよりも1~2桁高速になり得る。SALDは、小型、コンフォーマル、及びピンホールフリー(pinhole-free)の材料の極薄コーティング(例えば金属酸化物)を製造することができ、真空チャンバを必要とせずに、開放大気圧下、及び室温又は低温でコーティングを堆積させることができる。SALDはスケーラブルで、ロール・ツー・ロール製造に適合し、プラスチック及び紙を含むが、これらに限定されない様々な表面で機能することが実証されている。これらの利点により、SALDはバリアコーティングのような大面積で低コストのコーティングのハイスループット製造に非常に魅力的である。ALD及びSALDに関するより詳細な情報は、2020年12月18日に出願された「Apparatus and Method for Thin Film Deposition」と題された国際公開第2021/119829号に見出すことができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
包装業界は、典型的にはリサイクル不可能な多層構造のプラスチック包装を使用することが多い。この業界は、リサイクル可能な単層構造のプラスチック包装、生分解性材料、より薄いプラスチック、より多くの紙の含有量、毒性(例えば、塩素、BPA)の排除、及び持続不可能な材料(例えば、アルミニウム)の除去を含むが、これらに限定されない、より持続可能な解決策に向かって進んでいる。「持続可能な包装材料」は、完全にリサイクル可能、及び/又は堆肥化可能、及び/又は生分解可能な材料である。しかしながら、これらの持続可能な包装の解決策には、製品を保護するためのバリア性能が欠けている。これは典型的には、水、酸素、光、臭い、及び微生物などの外的要因からそれらを保護することによって、包装された食品の鮮度を保つことであるが、これに限定されない。
【0049】
従来のバリアコーティングのほとんどは、製品(例えば食品)を保護するための持続可能な包装に使用するには十分ではない。ポリ二塩化ビニリデン(PVDC)はリサイクル不可能であり、環境に有害である。エチレンビニルアルコール(EVOH)は特定のバリア特性に欠ける。金属コーティング(例えばアルミニウム)を有するプラスチック包装は、リサイクル施設でプラスチックから金属層を分離するのが難しいため、リサイクルできない。リサイクル施設で金属探知機が金属を検出し、それを不良品と判定する。この業界における次のステップは、優れたバリア性能を提供する代替のバリアコーティング材料を使用することである。酸化アルミニウム、酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛、及び酸化スズなどの金属酸化物バリアコーティングは、極薄(例えば50ナノメートル)であっても優れたバリア性能を発揮することができる。バリアコーティングの非常に薄い性質(例えば100ナノメートル未満)は、包装における金属濃度が非常に低くなることを意味する。例えば、100マイクロメートルの包装材料上の25nmの酸化アルミニウムバリアコーティングでは、包装におけるアルミニウム濃度は土壌中の濃度よりも数桁低くなる。材料が環境中で分解した場合、酸化アルミニウムバリアからのいくらかの残留物が残るが、その濃度は土壌中に既に存在する濃度よりも低く、堆肥化可能性に関するASTM D6400-19基準を満たすと予想される。金属酸化物コーティングはセラミックで、不活性であり、包装が堆肥化されても環境に重大な害を及ぼすことはない。さらに、金属酸化物コーティングは非金属であるため、包装をリサイクルすることを可能にする。金属酸化物バリアコーティングのさらなる利点としては、コーティングが電子レンジ対応であること、及び透明であり得ること(すなわち、包装の中を覗いて製品を見ることができる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
改良されたバリア特性に加えて、コーティングはまた、遮光特性、製品を見るための透明性、耐腐食性、抗菌特性、レトルト性(retortability)、摩擦低減、エネルギー捕集、感知、ディスプレイ機能、偽造防止、及び改ざん検知などの追加の機能性を提供するために、持続可能な包装材料にも望まれている。適切なコーティングは、プラスチック及び他の包装材料の循環型経済の発展を加速させることができる。
【0051】
したがって、可撓性材料上に極薄で、連続的で、コンフォーマルである機能性コーティングを堆積するための改良された装置及び方法が必要とされている。
【0052】
本明細書に記載される実施形態は、可撓性基材材料上の1つ以上の層から構成される極薄機能性コーティング、並びにコーティングを塗布するための装置及び方法に関する。より具体的には、コーティングは、それ自体で、又は1つ以上の他の成分と組み合わせて、1つ以上の機能を果たす元素材料又は化合物材料であり得る。機能としては、水バリア特性、酸素バリア特性、油脂バリア特性、臭いバリア特性、遮光性、耐腐食性、製品を見るための透明性、耐腐食性、抗菌特性、レトルト性、摩擦低減、エネルギー捕集、感知、ディスプレイ機能、偽造防止、及び改ざん検知などが挙げられ得るが、これらに限定されない。極薄機能性コーティングは、可撓性材料の製造中に形成されてもよいか、又は空間的原子層堆積技術を使用して後の製造段階に形成されてもよい。
【0053】
図3は、開示された空間的原子層堆積装置300の一実施形態を示す。図3には、少なくとも1つのSALDヘッド302、搬送システム304、及びガス供給システム306を含むが、これらに限定されない、例示的なコンポーネント(component)が示される。ヒータ308は、SALDヘッド302に設けられ得る。搬送システム304によってSALDヘッド302を通過して搬送される可撓性材料上にコーティングを堆積させるために、ガス供給システム306によって任意の適切な組み合わせのガスが任意の適切な数のSALDヘッド302に供給されてもよい。
【0054】
搬送システム304は、ローラ310、ウェブガイド312、ニップローラ313、アイドラ314、ダンサ316、ロードセル318、及び材料の薄いシート又はメンブレン(membrane)(特に包装業界では「フィルム」と呼ばれることがあるが、これは堆積される薄膜又はコーティングと混同してはならない)などの可撓性基材材料324を搬送するために巻き戻し機(unwinder)320と巻き取り機(winder)322との間に位置決めされる同様のコンポーネントを備え得る。搬送システム304では、可撓性基材材料324は、巻き戻し機320でロールから巻き戻され、SALDヘッド302によってコーティングされ、巻き取り機322で別のロールに巻き取られ得る。ローラの位置決めは、可撓性材料を1つ以上のSALDヘッド302に対して位置決めするために使用され得、可撓性材料324の表面とSALDヘッド302の表面との間の距離を制御するために使用され得る。
【0055】
ガス供給システム306は、不活性ガス並びに前駆体及び反応体の化学物質が入っているベッセル(vessel)330、332、334、マスフローコントローラ336、オン-オフバルブ338、及びこれらのコンポーネントを流動的に接続するガスライン340を備える。各ガスライン340は、それぞれのマスフローコントローラ336及びオン-オフバルブ338によって制御される流量で、不活性ガス、前駆体、及び反応体の純粋物又は混合物をSALDヘッド302に供給することができる。図3におけるコンポーネントの構成及び配置は、開示された装置の例示的な実施形態を表す。他の実施形態では、コンポーネントは異なる構成及び配置を有し得る。
【0056】
ガスライン340は、SALDヘッド302の上流のコンポーネント間に接続された、ステンレス鋼又はテフロン(登録商標)などの化学的に安定又は不活性な材料から作製された管であり得る。このようなコンポーネントには、不活性ガスベッセル330、化学物質含有ベッセル(例えば、バブラ)332、334、マスフローコントローラ336、及びオン-オフバルブ338が含まれ得る。このガス供給システム306は、1つ以上の前駆体ガス、1つ以上の反応体ガス、及び1つ以上の不活性ガスを、純粋な形態又は適切な混合物で、SALDヘッド302に供給する目的を果たす。不活性ガスベッセル330は、不活性で非反応性のガスをSALDヘッド302に供給し、前駆体ガスベッセル334からの前駆体ガス及び/又は反応体ガスベッセル332からの反応体ガスをSALDヘッド302に運ぶためにも使用することができる。不活性ガスの圧力は、1つ以上の圧力調整器によって調整することができる。前駆体ガス及び反応体ガスは、液体化学物質を不活性ガスでバブリングすること、液体化学物質を噴霧すること、液体又は固体化学物質を加熱すること、あるいはそれらの組み合わせなどの技術によって生成することができるが、これらに限定されない。また、化学物質の蒸気は、貯蔵タンクから気体状態で供給することもできるか、又は反応体ガスを生成するために使用され得るオゾン発生器などの別のデバイスによって生成することもできる。不活性ガス、1つ以上の前駆体ガス、及び1つ以上の反応体ガスの流量は、マスフローコントローラ336及びオン-オフバルブ338、例えば、手動ダイヤフラムバルブ又は空気圧バルブによって制御される。流量コントローラ336及びバルブ338は、手動で制御されてもよいか、又は制御システムによって電子的に制御されてもよい。
【0057】
図3に示すように、1つ以上のSALDヘッド302は、前駆体、反応体、及び不活性ガスを可撓性基材材料324上に供給する。ヘッド302は、図2に示すように、SALDをもたらす適切な配置で可撓性材料324上にガスをリダイレクトし、分配する複数の内部ガスチャネルを備える。ヘッド302は、可撓性基材材料324にガスを出力するための任意の適切な数及び構成のスリット350を備える。冷却及び加熱素子並びにプラズマ源を含むが、これらに限定されない、他のコンポーネントが、1つ以上のSALDヘッド302に統合されてもよい。例えば、コーティング堆積に必要な温度を下げるために、1つ以上のプラズマ源がヘッドに組み込まれてもよい。図3によれば、1つ以上の排気ポンプ342がヘッド302に接続されている。排気ポンプ342は、ヘッド302の動作面344と可撓性材料324の表面との間の空間から、未反応の前駆体及び/又は反応体、並びに不活性ガスなどのガスを除去する。
【0058】
図3に示すように、ヒータ308は、可撓性材料324の表面上での化学反応を促進するために可撓性材料324を加熱するために使用され得る。図3に示される実施形態では、ヒータ308はヘッド302の長さにわたっている。異なる加熱力を有し、異なる形状及びサイズを有する様々なヒータ(例えば、可撓性材料が巻き付くドラムヒータ)が設けられてもよい。さらに、1つ以上のヒータがヘッド302に組み込まれてもよい。1つ以上のヒータはまた、ヒータの機械的位置決めに基づいて、SALDヘッド302のうちの1つ以上に対する可撓性材料の表面の位置を制御するために使用されてもよい。搬送システム304のローラの1つ以上は、可撓性材料324の温度を制御するために加熱されてもよい。
【0059】
開示された装置の他の実施形態では、可撓性材料の1つ又は複数のシートは、コーティングプロセスのために単一方向又は両方向のいずれかでヘッドを通過して移動する並進ステージ上に取り付けられ得る。並進ステージは加熱されてもよく、可撓性材料の表面とSALDヘッド302の表面との間の距離を制御するために使用されてもよい。
【0060】
ガス供給システム、SALDヘッド、排気ポンプ、ヒータ、及び並進ステージの可能な実施形態に関するより多くの情報は、参照により本明細書に組み込まれる、2020年12月18日に出願された「Apparatus and Method for Thin Film Deposition」と題された国際公開第2021/119829号に見出すことができる。
【0061】
開示された発明では、SALDヘッドは、可撓性材料の1つ以上の側をコーティングするように位置決めされ得る。図4A及び4Bは、SALDヘッドが可撓性材料の表面に対してどのように位置決めされ得るかの例を示す。開示された発明の様々な実施形態では、全てのSALDヘッドは、可撓性材料の同じ表面をコーティングするように位置決めされる。開示された装置の別の実施形態では、SALDヘッドの1つ以上は、可撓性材料の対向する表面をコーティングするように位置決めされる。
【0062】
図4Aに示すように、装置400は、可撓性基材324を経路に沿って搬送するための搬送システム402と、ガスを供給するように構成されたガス供給システム404と、ガス供給システム404からガスを受け取り、可撓性基材324にガスを供給するための複数のSALDヘッド406、408とを備える。任意の適切な数及び構成のSALDヘッド406、408が使用されてもよい。
【0063】
搬送システム402は、SALDヘッド406、408を通り過ぎて可撓性材料324を搬送するローラ410、412を備える。搬送システム402は、巻き戻し機320においてストックロールから可撓性基材324を取り出し、巻き取り機322においてコーティングされたストックロールに可撓性材料324を提供することができる。あるいは、例えば可撓性材料324を使用して製品を製造する製造ラインにおいて、搬送システム402は上流プロセスから可撓性基材324を取り出し、可撓性材料324を下流プロセスに提供することができる。上流プロセスは、巻き戻し機320又は可撓性材料324を形成するプロセスであり得る。下流プロセスは、包装機械、追加コーティングを塗布する機械、変換機械、スリット機械、印刷機などであってもよい。この例では、4つのローラ410、412が、可撓性基材324がたどる経路の反転を規定するように位置決めされている。このような反転は、例えば180度の経路の完全な回転であってもよい。搬送システムに関するさらなる詳細については、図3及び関連する説明を参照することができる。
【0064】
ガス供給システム404は、前駆体、反応体、及び/又は不活性ガスをSALDヘッド406、408に提供する。同じ又は異なる組み合わせのガスが、各SALDヘッド406、408に供給されてもよい。ガス供給システムに関するさらなる詳細については、図3及び関連する説明を参照することができる。
【0065】
第一のSALDヘッド406は、可撓性基材324にガスを供給するためにガス供給システム404に接続されている。第一のSALDヘッド406は、大気条件下で可撓性基材324にガスを供給するために、可撓性基材324がたどる経路に隣接して位置決めされた、任意の適切な数及び構成のチャネル及びスリットを備える。チャンバ、真空チャンバ又はその他を使用する必要はない。
【0066】
第二のSALDヘッド408は、可撓性基材324にガスを供給するためにガス供給システム404に接続されている。第二のSALDヘッド408は、大気条件下で可撓性基材324にガスを供給するために、経路に隣接して位置決めされた、任意の適切な数及び構成のチャネル及びスリットを備える。この場合も、チャンバ、真空チャンバ又はその他を使用する必要はない。
【0067】
明確にするために、周囲条件の一例は、製造プラント内で見られ得る温度、圧力及び湿度の通常の空気である。周囲条件の別の例は、所定の製造作業に適する設定された温度、圧力及び湿度であり、呼吸することも可能な浄化又は調整された空気である。
【0068】
SALDヘッドに関する更なる詳細については、図3及び関連する説明を参照することができる。
【0069】
第一のSALDヘッド406及び第二のSALDヘッド408は、可撓性基材324が搬送システム402によって経路に沿って搬送されるときに、可撓性基材324にコーティングを塗布するために可撓性基材324にガスを順次供給するように基材搬送経路に沿って配置される。第一のSALDヘッド406及び第二のSALDヘッド408は、ガスを供給するように配置されるので、可撓性基材324の同じ側にコーティングを付与する。第一のSALDヘッド406及び第二のSALDヘッド408は各々、前駆体、反応体、及び不活性ガスの任意の適切な組み合わせを受け取ることができる。
【0070】
第二のSALDヘッド408は、第一のSALDヘッド406の下流に位置決めされる。したがって、第二のSALDヘッド408は、第一のSALDヘッド406によって堆積されたコーティングの同じ層に付加するために使用され得る。すなわち、第二のSALDヘッド408は、第一のSALDヘッド406によって形成されるものと同じ材料を構築することができる。あるいは、第二のSALDヘッド408は、第一のSALDヘッド406によって堆積されたものとは異なる層を形成するために使用され得る。すなわち、第二のSALDヘッド408は、第一のSALDヘッド406によって形成されたコーティング材料とは異なるコーティング材料を形成することができる。代替的又は付加的に、SALDヘッド406、408は、多層コーティングを形成するために使用され得る。例えば、第一のSALDヘッド406は、第一のSALDヘッド406に供給される2つ以上の異なる前駆体ガスを使用して多層コーティングを堆積するように構成され得る。
【0071】
この例では、第一のSALDヘッド406及び第二のSALDヘッド408は、経路の反転の異なる脚部に位置決めされる。換言すれば、ローラ410などの搬送システム402の一部が、第一のSALDヘッド406と第二のSALDヘッド408との間に位置決めされ、これにより可撓性基材324の移動方向が変更される。第一のSALDヘッド406及び第二のSALDヘッド408は、異なる位置にある可撓性基材324のセグメント上で動作し、経路が完全な反転である場合、これらのセグメントは互いに平行になる。
【0072】
図4Bに示すように、装置420は、可撓性基材324を経路に沿って搬送するための搬送システム402と、ガスを供給するように構成されたガス供給システム404と、ガス供給システム404からガスを受け取り、可撓性基材324にガスを提供するための複数のSALDヘッド406、408、422とを備える。任意の適切な数及び構成のSALDヘッド406、408、422を使用することができる。
【0073】
装置420は、図4Aの装置400と同様であり、相違点のみを詳細に説明する。図4A及び関連する説明は、ここでは繰り返さない詳細について参照することができる。
【0074】
SALDヘッド422は、他のSALDヘッド406、408が位置決めされている側とは反対側の可撓性材料324の側に位置決めされる。したがって、可撓性材料324の両側は、搬送システム402によって規定された経路に沿って可撓性材料が同じ経路を通過中に処理され得る。
【0075】
SALDヘッド422は、別のSALDヘッド408と、可撓性材料324の経路の同じ脚部に位置決めされ得る。
【0076】
開示された装置の様々な実施形態では、可撓性材料の特性評価又は修正、あるいは極薄コーティングの異なる層の特性評価又は修正を可能にするために、1つ以上のSALDヘッドに隣接して他の機器を配置することができる。
【0077】
図5に示すように、装置500は、可撓性基材324を経路に沿って搬送するための搬送システム402と、ガスを供給するように構成されたガス供給システム404と、ガス供給システム404からガスを受け取り、可撓性基材324にガスを提供するための複数のSALDヘッド502、504、506とを備える。任意の適切な数及び構成のSALDヘッド502、504、506を使用することができる。
【0078】
装置500は、図4Aの装置400と同様であり、相違点のみを詳細に説明する。図4A及び関連する説明は、ここでは繰り返さない詳細について参照することができる。
【0079】
第一のSALDヘッド502及び第二のSALDヘッド504は、可撓性基材324がたどる経路の同じ脚部に位置決めされる。第三のSALDヘッド506は、経路の異なる脚部に位置決めされる。
【0080】
機器508の一部が第一のSALDヘッド502に隣接して配置され、別の機器510の一部が第二のSALDヘッド504と第三のSALDヘッド506との間に配置され、それによって、可撓性材料324が、第一のヘッド502によってコーティングされる前に第一の機器508の一部を過ぎて経路に沿って移動し、第一のヘッド502及び第二のヘッド504によってコーティングされた後であるが、第三のヘッド506によってコーティングされる前に第二の機器510の一部を過ぎて移動する。SALDヘッド502、504、506に隣接して配置され得る機器508、510の例としては、ウェブクリーニング機器(例えば、埃を除去するための圧縮空気及び排気、脱イオン装置など)、より良好なコーティング接着のために可撓性材料の表面の表面エネルギーを除去又は修正するための1つ以上のプラズマ源、コーティングされた層を洗浄するための1つ以上のプラズマ源、コーティングされた層を特性評価するための1つ以上のエリプソメータ、又はコーティングされた層を特性評価するための1つ以上の反射分光計、又は1つ以上の他の特性評価方法、及びコーティングプロセスの信頼性を監視するための1つ以上の品質保証又は品質管理機器が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
開示された装置は、図6A及び図6Bに示すように、スタンドアロンシステムであってもよいか、又は製造ラインに組み込まれるドロップインシステムであってもよい。様々なスタンドアロンの実施形態では、開示された装置の全てのコンポーネントはフレームに取り付けられ、電源、ガス、及び/又は排気を含むが、これらに限定されない、外部接続を伴うキャビネット内に収容されてもよく、機能性コーティングはキャビネット内に装填された可撓性材料上で製造される。様々なドロップインの実施形態では、開示された装置からの1つ以上のSALDヘッドは製造ラインに配置され、開示された装置の他のコンポーネント(ガス供給システム、排気ポンプ、ヒータなど)も製造ライン内に配置されてもよいか、又は異なるコンポーネント間の適切な接続を伴って製造ラインに近接して配置されてもよい。様々なドロップインの実施形態では、搬送システム、ガス供給システム、及び適切な数のSALDヘッドを備えるユニットが、既存の製造ラインにドロップインする(drop-in)ためにフレームに取り付けられる(及びキャビネット内に収容されてもよい)。入力には、電力及び可撓性材料が含まれ得る(フレームにも取り付けられた巻き戻しロールによって提供されない場合)。出力には、コーティングされた可撓性材料及び排気ガスが含まれる。図6A及び図6B図1と比較すると、開示された装置の様々な実施形態は、可撓性包装製造プロセスにおける別個のバッチ式バリアコーティングプロセスの必要性を軽減又は排除することができることが理解されるべきである。
【0082】
図6Aに示すように、例示的なスタンドアロン装置600は、搬送システム602と、ガス供給システム604と、SALDヘッド606とを備える。搬送システム602、ガス供給システム604、及びSALDヘッド606は、コンポーネントを一緒に固定するためにフレーム610に取り付けられ得る。搬送システム602、ガス供給システム604、SALDヘッド606、及びフレーム610は、コンテナ612に位置決めされ得る。搬送システム602、ガス供給システム604、及びSALDヘッド606に関するさらなる詳細については、図4、4A、4B、及び5の説明を参照することができる。
【0083】
図6Bは、搬送システム622、ガス供給システム624、及びSALDヘッド626を備える例示的なドロップイン装置620を示す。搬送システム622、ガス供給システム624、及びSALDヘッド626は、コンポーネントを一緒に固定するためにフレーム630に取り付けられ得る。アセンブリは、便宜上、コンテナ内に提供されてもよい。搬送システム622、ガス供給システム624、及びSALDヘッド626に関するさらなる詳細については、図4、4A、4B、及び5の説明を参照することができる。フレーム630は、既存の製造ラインの物理的制約の範囲内に適合するように成形され、サイズ合わせされ得る。
【0084】
ドロップイン装置620への入力は、可撓性材料636のストリーム及び電力を含むことができる。ドロップイン装置620の出力は、コーティングされた可撓性材料638のストリーム及び排気ガスを含むことができる。様々な例では、ガス供給システム624によって使用されるガス(前駆体、反応体、及び/又は不活性ガス)もまた、入力として提供され得る。
【0085】
装置620は、製造ラインの上流システム640と下流システム642との間に「ドロップイン」することができる。例示的な上流システム640は、可撓性材料636を形成するブロー又はキャストフィルム押出システムである。例示的な下流システム642は、コーティングされた可撓性材料638で製品を包装するための成形、充填、及びシールシステムである。上流及び/又は下流システム640、642として使用され得る他の例としては、プライマー/アンカーコーティング機械、ラミネーション機械、トップコーティング/ラッカー/ワニスコーティング機械、印刷機械、スリット機械などが挙げられる。フレーム630は、特定的に成形され、サイズ合わせされ得、搬送システム622、ガス供給システム624、及びSALDヘッド626は、既存の製造ラインの物理的制約内に適合するように、フレーム630において特定的に構成され、位置決めされ得る。装置620の特定の形状、サイズ、及び構成は、物理的制約を共有する様々な製造ラインとともに使用され得る。
【0086】
図3及び図7を参照すると、SALDヘッドの内部ガスチャネル及び出力スリットは、本質的にモジュール式であり得る。ガスチャネル及びスリットは、図2に示すように、反応器の隣を移動する可撓性材料が前駆体及び反応器の化学物質に順次曝露され、SALDが生じるように配置され得る。1つ以上のSALDヘッドは、異なる層厚の堆積を可能にするために、異なる数及び構成のモジュール式ガスチャネル及びスリットを有することができる。異なる材料が堆積され得るように、異なる前駆体及び/又は反応体の化学物質が、ガス供給システムによって異なるガスチャネルに供給され得る。これにより、多層コーティングが可能になる。
【0087】
図7は、装置700の例示的な実施形態を示し、前駆体ガス及び反応体ガスの3つの異なる組み合わせが、それぞれのSALDヘッド702、704、706の異なる数の別個のガスチャネル及びスリットに供給され、その結果、3つの層から構成される機能性コーティングの堆積が生じ得、これらの各層は、異なる厚さ及び異なる材料であってもよい。可撓性材料がSALDヘッド702、704、706に対して移動する速度、SALDヘッド702、704、706に提供されるガスの流量、及びそれぞれのSALDヘッド702、704、706の各々によって提供されるサイクルの数を含むが、これらに限定されない、堆積される各層の厚さ及び組成を制御するために装置の他の態様も調整され得る。サイクルは、SALDヘッド702、704、706の特定のガス出力スリットによって堆積されるコーティング材料である。SALDヘッド702、704、706が同じガスを供給する特定の数のスリットを含む場合、ヘッドは同じ数のサイクルを提供すると言うことができる。層は、特定の数のサイクルから作製され得る。例えば、SALDヘッド702が前駆体ガスAのための10個のスリットを有する場合、コーティングAの層は、10サイクルに対応する厚さを有することができる。同様に、SALDヘッド704が前駆体ガスBのための5個のスリットを有する場合、コーティングBの層は、5サイクルに対応する厚さを有することができる。
【0088】
装置700は、第一の前駆体ガス及び/又は第一の反応体ガスを可撓性材料の表面に供給するためのガスチャネル及び出力スリットの第一の構成を有する第一のSALDヘッド702を備え得る。装置700は、第二の前駆体ガス及び/又は第二の反応体ガスを可撓性材料の表面に供給するためのガスチャネル及び出力スリットの第二の構成を有する第二のSALDヘッド704をさらに備え得る。第二のSALDヘッド704は、可撓性材料の移動方向に対して、第一のSALDヘッド702の下流に位置決めされ得る。装置700は、第三の前駆体ガス及び/又は第三の反応体ガスを可撓性材料の表面に供給するためのガスチャネル及び出力スリットの第三の構成を有する第三のSALDヘッド706をさらに備え得る。第三のSALDヘッド706は、可撓性材料の移動方向に対して、第二のSALDヘッド704の下流に位置決めされ得る。第一、第二、及び第三の構成は異なっていてもよい。
【0089】
装置700について説明した原理は、図3、4A、4B、5、6A、及び6Bに関して説明した実施形態とともに使用することができる。図3、4A、4B、5、6A、及び6Bに関する説明は、装置700に関して上記で繰り返していない詳細について参照することができる。
【0090】
図8A、8B、及び8Cに示すように、本明細書に説明される様々な搬送システムは、可撓性材料が1つ以上のSALDヘッドに対して一方向に、又は1つ以上のSALDヘッドに対して両方向に移動することを可能にし得る。
【0091】
図8Aに示すように、装置800は、可撓性材料をSALDヘッド802に対して一定の速度で一方向に移動するように作動され得るローラを備え得る。
【0092】
図8Bに示すように、装置800のローラは、可撓性材料をSALDヘッド802に対して両方向に移動するように作動され得、これにより、可撓性材料を任意の適切な回数SALDヘッド802を通過させて振動させることによって、可撓性材料上により厚いコーティングの堆積が生じ得る。
【0093】
図8Cに示すように、装置820は、可撓性材料を2つ(又はそれ以上)のSALDヘッド822、824に対して両方向に移動させるように作動されるローラを備えることができ、これにより、(例えば、可撓性材料を、SALDヘッドを通過させて振動させることによって)可撓性材料上により厚いコーティングの堆積、及び/又は(例えば、可撓性材料の異なる部分を異なるヘッドに異なる時間曝露することによって)可変の厚さ及び/又は組成を有するコーティングの堆積が生じ得る。
【0094】
装置800、820について記載されている原理は、図3、4A、4B、5、6A、6B、及び7に関して説明した実施形態とともに使用することができる。図3、4A、4B、5、6A、6B、及び7に関する説明は、装置800、820に関して上記で繰り返していない詳細について参照することができる。
【0095】
説明される装置及び方法により、記載されるものに限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、板紙及び紙、又はそれらの組み合わせなどの可撓性材料上に(プライマー層、アンカー層、又はタイ層(tie layer)を有する又は有しない)機能性コーティングを直接塗布することができる。コーティング材料は金属酸化物であってもよいが、金属、金属窒化物、金属アルコキシド、金属硫化物、多成分合金、及びドープ材料などの他の組成物を使用することもできる。機能性コーティングは、典型的には10~100ナノメートルのオーダーの厚さを有するが、記載される厚さに限定されるものではない。開示された装置及び方法では、1つ以上のSALDヘッド内のガスチャネルの数、ガスチャネルによって供給される前駆体及び/又は反応体の化学物質の数、並びに可撓性材料がガスチャネルに曝露される順序を変化させることができ、単層(図9A)及び多層薄膜コーティング(図9B)を可能にする。可変厚さの1種類のコーティング材料(例えば、酸化アルミニウム)から構成される単層機能性コーティングが開示される。多層(又はナノラミネート)機能性コーティングも開示される。多層機能性コーティングは、2つ以上のコーティング材料(例えば、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ケイ素、二酸化チタン)を含み得る。あるいは、多層コーティングは、1つのコーティング材料(例えば、酸化アルミニウム)で構成されてもよく、この場合、限定されないが、少量の追加元素で層の一部をドープすること、層の一部に使用する堆積条件(例えば、堆積温度)を変化させること、使用する前駆体及び反応体の化学物質の割合を変化させること、前駆体又は反応体の種類を変化させることなどの技術を使用して材料の特性を異なる層間で変化させる。多層機能性コーティングは、任意の数の層を有することができ、これらの層は、繰り返しパターン(例えば、酸化アルミニウム-酸化亜鉛-酸化スズ層の繰り返し)を含む任意の順序で堆積させることができる。さらに、多層コーティング内の各層は、数十ナノメートル以下のオーダーの任意の厚さを有することができる。
【0096】
開示された単層コーティングは、コーティング材料及びコーティング特性(例えば、厚さ及び粗さ)に応じて複数の機能を有することができる。機能としては、水バリア特性、水蒸気バリア特性、酸素バリア特性、油脂バリア特性、臭いバリア特性、遮光性、耐腐食性、製品を見るための透明性、抗菌特性、レトルト性、摩擦低減、エネルギー捕集、感知、ディスプレイ機能、偽造防止、及び改ざん検知が挙げられるが、これらに限定されない。単層機能性コーティングの例は図9Aに示される。様々な実施形態は、水蒸気バリア機能及び/又は酸素バリア機能を有する酸化アルミニウムコーティングを含む。別の実施形態は、紫外線遮断及び/又は抗菌機能を有する酸化亜鉛コーティングである。別の実施形態は、水蒸気バリア、酸素バリア、及び耐腐食機能を有する酸化ケイ素コーティングである。
【0097】
開示された多層バリアコーティングは、複数の機能を有することができ、これには、水バリア特性、水蒸気バリア特性、酸素バリア特性、油脂バリア特性、臭いバリア特性、遮光性、耐腐食性、製品を見るための透明性、耐腐食性、抗菌特性、レトルト性、摩擦低減、エネルギー捕集、感知、ディスプレイ機能、偽造防止、及び改ざん検知が含まれ得るが、これらに限定されない。多層コーティングは、基材の屈曲により発生し得る亀裂を抑制することにより水分及び/又は酸素バリアをさらに増強することができる。多層機能性コーティングの例は図9Bに示される。様々な実施形態は、水蒸気バリア及び/又は酸素バリア及び/又は紫外線遮断及び/又は抗菌機能を有する酸化アルミニウム-酸化亜鉛積層コーティングを含む。別の実施形態は、水蒸気バリア及び/又は酸素バリア及び/又は紫外線遮断及び/又は抗菌及び/又は耐腐食機能を有する酸化アルミニウム-酸化亜鉛-酸化ケイ素積層コーティングである。
【0098】
本開示のさらなる実施形態によれば、開示された機能性コーティングは、他の技術を使用して堆積された他の機能性層又は材料と組み合わせることができる。例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、及びグラビア印刷コーティングなどの技術によって堆積された発光フィルム、金属回路、又はナノ粒子が、可撓性包装材料上の開示された機能性コーティングの上及び/又は開示された機能性コーティングの下に配置されてもよく、及び/又は開示された機能性コーティング内に埋め込まれてもよい。
【0099】
図10A図10Dは、可撓性包装材料上への金属酸化物バリアコーティングの付加を示す図である。図10Aは、本質的にバリア性能が低いコーティングされていない可撓性包装材料を示す。ここで、バリア性能は、水蒸気透過率及び酸素透過率によって特徴付けられ得、これは1日当たり面積1平方メートル当たりどれだけの水分及び酸素が可撓性材料を通過するかを測定するものである。しかしながら、他のバリアには、油脂、光及び臭いのバリアも含まれ得るが、これらに限定されない。図10Bは、バリアコーティングを付加するためにSALDヘッドの横を通過する可撓性包装材料を示す。図10Cは、図3、4A、4B、5、6A、6B、7、8A、8B、8C、9A、及び9Bに関して説明された技術によって可能になる本開示のSALDコーティングプロセスを示す。可撓性包装材料がSALDヘッドを通過するとき、それは異なる化学物質、典型的には、限定されないが、ガス状の化学物質に曝露される。前駆体化学物質(例えば、酸化アルミニウムのためのトリメチルアルミニウム、Al(CH)及び反応体化学物質(例えば、HOなどの酸化剤)の逐次反応により、包装材料の表面上にコーティングのおよそ1つの原子層が形成される。異なる前駆体及び反応体化学物質を、異なるコーティング材料のために利用することも、バリアコーティングの特性を制御するために利用することもできる。前駆体及び反応体は、窒素などのキャリアガスによって供給され得、可撓性材料の表面を横切って延びるヘッド内の平行チャネルから供給される。図10Cに示すように、不活性ガス(例えば、窒素)も専用のヘッドチャネルから可撓性包装材料の表面に供給される。不活性ガスは、前駆体及び反応体化学物質を空間的に分離し、包装材料の表面に到達する前にそれらが混合して反応するのを防ぐガスカーテンとして機能する。ヘッドの表面と可撓性材料の表面との間の空間からガスを除去するためにヘッド内に排気チャネルを含めることもできる。前駆体及び反応体の化学物質の空間的分離により、可撓性材料の表面上で逐次化学反応を行うことができるので、コーティングにより一度におよそ1つの原子層を付加でき、コーティングの厚さの正確な制御を提供することができる。図10Dは、バリア性能が改良されたコーティングされた可撓性包装材料を示す。
【0100】
開示された金属酸化物バリアコーティングは、低密度のピンホールを含むか、又はピンホールを含まなくてもよいので、1つ又は複数の可撓性材料内に包装される製品を保護するための優れたバリア特性を提供する。バリアは、典型的には、水蒸気バリア又は酸素バリアを指すが、記載されるものに限定されない。これらのバリア特性は、製品の鮮度を保つために水分、酸素、及び他の外部要素がパッケージに侵入するのを防ぎ、食品などの製品の保存期間を延ばすことができる。
【0101】
開示された金属酸化物バリアコーティングは、持続可能な包装材料の堆肥化可能性及び/又は生分解性及び/又はリサイクル可能性に影響を与えないように数十ナノメートルの厚さしかない。それらの極薄の性質に起因して、開示されたコーティングは包装材料の機械的柔軟性にも大きな影響を与えない。
【0102】
図1に見られるように、従来のバリアコーティングプロセスと比較して、開示された発明は、真空チャンバを用いずに開放空気で作動し、プロセスの資本コスト及び/又は運用コストを削減し、その速度、スループット、及び/又は生産性を向上させる。開示された方法はまた、無溶媒である。
【0103】
本開示は、好ましい実施形態及びその具体例を参照して本明細書に例示及び説明されているが、他の実施形態及び実施例が同様の機能を果たし得ること、及び/又は同様の結果を達成し得ることは、当業者には容易に明らかであろう。そのような同等の実施形態及び実施例は全て本開示の趣旨及び範囲内にある。
【0104】
上記の説明では、説明の目的のために、実施形態の完全な理解を提供するために多数の詳細が記載されている。しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細が必要でない場合があることは明らかであろう。他の例では、理解を不明瞭にしないために、周知の構造をブロック図の形態で示すことがある。例えば、本明細書に記載される実施形態の要素が、ソフトウェアルーチン、ハードウェア回路、ファームウェア、又はそれらの組み合わせとして実装されるかどうかに関する特定の詳細は提供されない。
【0105】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためだけであり、システム又は本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」は、関連する列挙された項目の1つ以上の任意及び全ての組み合わせを含む。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上明確に他に指示がない限り、単数形と同様に複数形も含むことが意図される。本明細書で使用される場合、用語「含む」及び/又は「含んでいる」は、記載された特徴、ステップ、操作、要素、及び/又はコンポーネントの存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、ステップ、操作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらの群の存在又は追加を除外するものではないことがさらに理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】