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特表2024-544180界面活性剤を含有する無菌液体製品を滴下分注するためのディスペンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】界面活性剤を含有する無菌液体製品を滴下分注するためのディスペンサ
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/00 20060101AFI20241121BHJP
   B65D 47/18 20060101ALI20241121BHJP
   B65D 51/18 20060101ALI20241121BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20241121BHJP
   A61J 1/00 20230101ALI20241121BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B65D83/00 G
B65D47/18
B65D51/18
A61F9/007 170
A61F9/007 150
A61J1/00 Z
B65D1/02 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531601
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 FR2022052164
(87)【国際公開番号】W WO2023094769
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】2112639
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524199947
【氏名又は名称】ラボラトワーレ テア
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン カグリア
【テーマコード(参考)】
3E014
3E033
3E084
4C047
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB03
3E014PC04
3E014PC07
3E014PD30
3E014PE14
3E014PE16
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3E084EC03
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3E084GA01
3E084GA08
3E084GB01
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3E084KB02
3E084LB02
3E084LC01
3E084LD01
4C047AA05
4C047AA31
4C047BB11
4C047BB13
4C047CC24
4C047DD11
4C047DD33
4C047DD35
(57)【要約】
本発明は、ディスペンサに関し、圧力で変形し、解放時に元の形状に自発的に戻る壁(2)を含むリザーバ(1)を備え、リザーバ(1)は壁(2)によって画定される内部空間内に、液体製品を保持する可撓性バッグ(3)を備える。ディスペンサは、壁(2)と可撓性バッグ(3)との間に空気を入れる空気流入手段(14)と、分注開口部を含む滴下端部片(7)を含むヘッドと、可撓性バッグからの液体が分注途中で通過するように配置された親水性の滅菌微小孔性膜(10)と、2つの分注の間に液体製品で膜(10)を湿潤状態に保つように構成された装置を備える。膜(10)は、ディスペンサが元の形状に戻るときに、空気が可撓性バッグへの再入を防止するように、液体に対して選択的に透過性がある。分注される液体の体積は、空気流入手段(14)を介して壁(2)と可撓性バッグ(3)との間の対応する体積の空気の進入によって補償される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの界面活性剤を含有する無菌液体製品を滴下分注するためのディスペンサであって、
内容積を画定し、ディスペンサのユーザによってリザーバ(1)に及ぼされる圧力の影響下で変形すると共に、前記圧力が解放された後に、その元の形状を自発的に回復するように適合された壁(2)を含む前記リザーバ(1)と、
前記リザーバ(1)は、さらに、前記壁(2)によって画定され、無菌液体製品を収容するように適合された前記内容積の内部における可撓性バッグ(3)と、
前記リザーバ(1)の前記壁(2)と前記可撓性バッグ(3)との間の空気流入手段(14)と、
前記リザーバ(1)のネック(5)に取り付けられたヘッドであって、分注開口部を含む滴下端部片(7)を含むヘッドと、を含み、
前記ディスペンサは、さらに、液体が前記滴下端部片(7)を通って送達されるように、前記可撓性バッグ(3)から来る液体を通過させるように配置される、親水性で滅菌用の微小孔性膜(10)を含み、
前記ディスペンサは、液体製品の2つの分注の間に、前記リザーバ(1)から来る液体製品によって前記膜(10)を湿潤状態に保つように構成された装置を含むことを特徴とし、
前記ディスペンサが、無菌液体製品が分注された後に、その元の形状を回復するときに、前記膜が、前記リザーバ(1)の前記可撓性バッグ(3)への空気の逆流に対抗し、分注される液体の体積は、前記空気流入手段(14)を介して、前記リザーバ(1)の前記壁(2)と前記可撓性バッグ(3)との間の対応する体積の空気の進入によって補償されるように、前記微小孔性膜(10)は、液体に対して選択的に透過性があり、すなわち、これが湿っているときに、水性液体を通過させ、一方でガスの通過に対抗することを可能にする、ディスペンサ。
【請求項2】
前記可撓性バッグ(3)は、前記リザーバ(1)の内部層の剥離によって形成される、請求項1に記載のディスペンサ。
【請求項3】
前記可撓性バッグ(3)は、格納可能な可撓性バッグである、請求項1に記載のディスペンサ。
【請求項4】
前記空気流入手段(14)は、前記リザーバ(1)の前記壁(2)における穴部(15)によって形成され、前記穴部は、前記ユーザの指(16)によって閉じられるように適合される、請求項1から請求項3の何れか1項に記載のディスペンサ。
【請求項5】
前記空気流入手段(14)は、前記リザーバ(1)の前記壁(2)と前記可撓性バッグ(3)との間に空気が入ることを可能にし、前記リザーバ(1)の前記壁(2)と前記可撓性バッグ(3)との間に存在する空気が前記リザーバ(1)の外側に向かって出ることを防止するように構成された一方向弁(24)を含む、請求項1から請求項3の何れか1項に記載のディスペンサ。
【請求項6】
2つの分注の間に前記膜(10)を湿潤状態に保つように構成された前記装置は、前記分注ヘッドに取り付けられた着脱可能なキャップ(19)である、請求項1から請求項5の何れか1項に記載のディスペンサ。
【請求項7】
2つの分注の間に前記膜(10)を湿潤状態に保つように構成された前記装置は、前記膜(10)と前記滴下端部片の前記分注開口部との間に位置付けられたバルブ(22)を含む、請求項1から請求項6の何れか1項に記載のディスペンサ。
【請求項8】
前記ディスペンサは、前記リザーバと前記微小孔性膜との間に配置されると共に、液体が前記滴下端部片を通って送達するために、前記可撓性バッグから来る液体を通過させるように配置された多孔性パッドを含む、請求項1から請求項7の何れか1項に記載のディスペンサ。
【請求項9】
前記微小孔性膜は、0.45μm未満、好ましくは0.22μm以下の孔径を有する、請求項1から請求項8の何れか1項に記載のディスペンサ。
【請求項10】
前記微小孔性膜と前記分注開口部との間に位置するディスペンサの表面は、例えば銀イオン又は亜鉛イオンをベースとする殺菌コーティングを担持する、請求項1から請求項9の何れか1項に記載のディスペンサ。
【請求項11】
前記微小孔性膜(10)は、例えば、銀イオン又は亜鉛イオンをベースとする殺菌剤を含む、請求項1から請求項10の何れか1項に記載のディスペンサ。
【請求項12】
前記ディスペンサは、前記リザーバ(1)内に、少なくとも1つの界面活性剤を含有する、防腐剤を含まない無菌液体眼科用製品を含む、請求項1から請求項11の何れか1項に記載のディスペンサ。
【請求項13】
前記無菌液体眼科用製品は、体積で0.1%から5%の間の界面活性剤を含む、請求項12に記載のディスペンサ。
【請求項14】
前記少なくとも1つの界面活性剤は、以下の薬剤のうちの1つ又は複数を含む、請求項12又は請求項13に記載のディスペンサ:
ポリエチレングリコール400(PEG400);
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80);
ポリオキシエチレンソルビンモノラウレート(ポリソルベート20);
エチレンオキシド、プロピレンオキシド;
メチルオキシランポリマー;
ヒマシ油PEG-35;
水素化ひまし油PEG-40;
マクロゴールセトステアリルエーテル;
ポリオキシプロピルグリコール407;
ビタミンE(ポリエチレングリコールサクシネート);
マクロゴールヒドロキシステアリン酸15;
カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド;
2-(2-エトキシエトキシ)エタノール;
ポリビニルピロリドン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤を含有する無菌液体製品を滴下分注するためのディスペンサに関する。本発明によって提案されるディスペンサは、界面活性剤を含有する防腐剤を含まない液体眼科用製品を包装するための特定の利点を有する。
【背景技術】
【0002】
工業、特に製薬分野、化粧品分野、食品工業などの多くの分野で滴下しなければならない液体製品がある。これらの製品は、各使用の間にディスペンサから来る1回又は数回の滴下の少量用量で使用されるが、一方、ディスペンサに含まれる製品の残りを、ある長さの時間、一般的には数日間又は数週間、維持することが必要である。ディスペンサに入っている製品は、一般に、ディスペンサの外部から来る細菌等による汚染を避けなければならない。
【0003】
これは、特に、本発明の優先的適用を構成する、特に点眼液を含む医薬組成物の場合である。さらに、防腐剤を含まない眼科用溶液を提案することに特に関心がある。これは、眼科用溶液中の防腐剤として使用される製品は、細菌及び真菌に関する眼科用製品の無菌性を確保するために、有意な望ましくない効果を有し得るためである。
【0004】
保存剤、特に塩化ベンザルコニウムは、眼に対して刺激性があり、涙液膜を損なう可能性があり、アポトーシスによる組織障害を引き起こす可能性がある。防腐剤の長期間の使用は、眼に望ましくない結果をもたらす。
【0005】
したがって、防腐剤を含まない眼科用製品の使用が、非常にしばしば推奨される。このような防腐剤を含まない眼科用製品の無菌性を保存するための第1の溶液は、「単回用量」とも呼ばれる単回用量でそれらを包装することからなる。しかしながら、一回分の包装は全ての製品に適用できず、大量の廃棄物を生じ、使用後に各用量の包装を廃棄しなければならない。したがって、投与期間が長い場合には、単回投与による包装は適切ではないと考えられる。
【0006】
この文脈において、最初の用量の開封及び送達後を含む、それらが含有する製品の無菌性を確実にするように構成された、いくつかの用量を含有するディスペンサ、又は「多用量」ディスペンサが開発されている。これらのディスペンサの目的は、製品の消費が、ディスペンサの含有量が完全に枯渇するまで持続する限り、ディスペンサ内の無菌性を保存することである。
【0007】
例えば、特許文献1には、ドリップタイプのディスペンサが開示されており、このディスペンサのリザーバは、収容された製品に滅菌膜を通過させる過圧を生じさせることを可能にする変形可能な壁を含む。この膜の表面は、部分的に親水性及び部分的に疎水性であり、より具体的には、その親水性部分において水性液体に対して選択的に透過性であり、その疎水性部分において空気に対して選択的に透過性である。したがって、液体は、滴下分注端部に到達する前に分注中にその親水性部分の膜を通過し、一方、空気は、リザーバがもはや圧縮されず、その初期形状に戻るときに分注される液体の体積を補償するために、疎水性部分を通って分注器に吸引され得る。多孔質パッドは、滴下の適切な形成に必要な、ディスペンサ内のフローの調節を可能にする。
【0008】
このタイプのディスペンサは、多くの防腐剤を含まない無菌製品、特に防腐剤を含まない液体眼科用製品を包装し、分注するのに完全に満足のいくものである。
【0009】
それにもかかわらず、それらはいくつかの製品を調剤するのに適応していない。特に、界面活性剤を含有する眼科用製品は、このタイプのディスペンサによって満足に分注することができない。これは、界面活性剤が膜の疎水性部分と相互作用し(これは疎水性膜の局所的な物理化学的処理によって得られる)、親水性にするためである。これは、分注される液体の量を補償するために必要な、ディスペンサへの空気の逆流を防止する。この結果は、使用されるときのディスペンサ内の負圧の増加であり、これは、ディスペンサの残留変形及び/又は膜の破裂を引き起こし得る。
【0010】
界面活性剤(又は界面活性剤又は表面剤)は、2つの表面間の表面張力を改変する化合物である。これらは、それぞれ親油性及び親水性の異なる極性を有する2つの部分を有する化合物である。それらは二つの非混和性相の溶解を可能にする。したがって、眼科用製品との関連では、界面活性剤が可溶化剤として使用される。したがって、界面活性剤及び可溶化剤という用語は、本文書においては同等である。
【0011】
特許文献2は、多孔質パッド内の空気の保持と同様に、泡の形成を低減する改良されたディスペンサを開示している。それにもかかわらず、提案されたディスペンサは、それ自体が界面活性特性を有する活性成分、又は可溶化剤として使用される界面活性剤添加剤、又はポリビニル誘導体のファミリー又はポリエチレングリコールのファミリーにおける一定の粘着剤又は潤滑剤などの他の賦形剤の何れかを含有する製品の分注の品質を実質的に改善するが、使用される膜の疎水性部分に関する一定の界面活性剤の不適合性の課題を解決しない。
【0012】
特許文献3は、界面活性剤を含有する製品の分注に適合される、防腐剤を含まない液体眼科用製品のためのディスペンサを開示する。それにもかかわらず、提案されたディスペンサは、柔軟な壁を備えたリザーバに基づいており、その内容積が堅いネック部に向かって徐々に減少するにつれて手で変形可能であり、すなわち、実際には、アコーディオン内で変形可能なリザーバ上で変形可能であり、その操作はユーザにとって完全に容易ではない。
【0013】
特許文献4は、眼科用製品のためのディスペンサを提示している。ディスペンサのリザーバは、「剥離」タイプであり、これは、リザーバの内部層が、残りの壁から分離して、変形可能な内部バッグを形成できることを意味する。このディスペンサは、ディスペンサから出てくる製品が通過する逆止弁を含み、この弁の下流側に、特定の細菌を濾過するためのフィルタを含むことができる。しかしながら、このディスペンサは、非常に効果的な逆止め弁の使用を必要とし、濾過機能が実施される場合、複雑な構成を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2816600号明細書
【特許文献2】仏国特許出願公開第2955842号明細書
【特許文献3】仏国特許出願公開第2770495号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1985543号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上述の問題の少なくともいくつかを解決する、少なくとも1つの界面活性剤を含有する無菌液体製品のためのディスペンサを提案することを目的とする。したがって、本発明は、内容積を画定し、ディスペンサのユーザによってリザーバに加えられた圧力の影響下で変形し、圧力が解放された後にその元の形状を自発的に回復するように適合された壁を含むリザーバを含む、界面活性剤を含有する無菌液体製品を滴下分注するためのディスペンサに関する。リザーバは、壁によって画定され、無菌液体製品を収容するように適合された内容積内に可撓性バッグをさらに含む。ディスペンサは、リザーバの壁と可撓性バッグとの間に空気流入手段と、リザーバのネックに取り付けられ、分注用開口部を含む滴下端部片を含むヘッドとを含む。ディスペンサは、さらに、親水性無菌微小孔性膜を含み、滴下端部片を通って液を送達するために、可撓性バッグから来る液を通過させるように配置される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
ディスペンサは、液体製品の2つの分注の間にリザーバから来る液体製品によって膜を湿潤状態に保つように構成された装置を含む。微小孔性膜は、液体に対して選択的に透過性であり、すなわち、それは、水性液体が湿ったときに、気体の通過に対抗する間に水性液体を通過させることを可能にし、その結果、ディスペンサが無菌液体製品の分注後にその元の形状を回復するときに、膜がリザーバの可撓性バッグ内への空気の逆流に対抗し、分注される液体の体積は、空気流入手段を介したリザーバの壁と可撓性バッグとの間の対応する体積の空気の進入によって補償される。
【0017】
したがって、本発明は、溶解補助剤(界面活性剤)を含有する製品に完全に適合した滴下分注ディスペンサを提案する。提案されたディスペンサは、リザーバ上の単純な圧力によって製品を分注することを可能にするという点で、直感的であるという点で、ユーザにとって使用するには単純である。さらに、リザーバの壁によって画定される内容積内に存在する可撓性バッグは、それが含有する製品の完全分注を可能にし、すなわち、可撓性バッグ内に含有される製品の全ての用量を実際に分注することができる。製品は、また、ディスペンサが様々な配向で配置されている間に分注され得る。これは、製品の投与が分注されるにつれて、分注される製品の体積は、リザーバの変形可能な壁と可撓性バッグとの間の等量の空気の進入によって補償されるためである。フレキシブルバッグの容量は、それが含有する製品の容量に適合する。したがって、可撓性バッグに収容された製品は、分注ヘッドのすぐ近くに留まり、可撓性バッグ内に気泡は形成されない。ユーザが変形可能な壁に圧力を加えると、リザーバの変形可能な壁と可撓性バッグとの間に存在する空気が空間から出てくることが防止され(空気の出てくることを自動的に防止する手段によるものであっても、ユーザの作用によるものであっても)、その結果、可撓性バッグ自体が加圧され、親水性膜及び滴下端部片を通る製品の排出を引き起こす。
【0018】
滅菌膜は、その送達中の製品の無菌性を保証する。それはまた、ディスペンサの外部から来るあらゆる汚染からリザーバに含まれる製品を保護する。本発明において提案されるディスペンサは、また、製品が分注された後に可撓性バッグ内に空気が戻らないように、滅菌膜が水に対して選択的に透過性がある(又はより一般的には水性液体に対して透過性がある)という特性から利益を得る。換言すれば、ろ過能力がディスペンサに含まれる製品の無菌性を保証する膜は、空気がディスペンサに戻ることを可能にせず、したがって、ディスペンサのための逆流防止装置として働く。
【0019】
空気の通過が全くないことを保証するために、膜は湿潤されなければならない。これは、製品が分注された直後に必然的に当てはまり、その結果、膜は、逆流防止装置の役割を正しく果たし、分注された液体製品の体積を補償するために、空気が可撓性バッグに吸引されることを防止する。それにもかかわらず、製品が眼科用製品である場合、一般に数時間だけ間隔をあけた2つの製品の分注の間で膜が濡れたままであることを確実にするために、膜が濡れたままであることを保証するように適合された装置を提供することが提案される。この装置は様々な方法で形成することができる。液体の貯蔵は、膜の上流で形成することができ、又は非常に少量の液体を膜の下流側で維持することができる。
【0020】
本明細書全体を通して、「上流」及び「下流」という用語は、液体製品が送達される場合、すなわち、リザーバから送達される場合、ディスペンサの端部片から出てくるまでの液体製品の流れの方向を考慮することを意味する。
【0021】
本発明において提案されるディスペンサは、単純な一般的な構成を有することができる。特に、圧力によって変形された後に壁が元の形状を回復し、製品の少量の滴下を引き起こすときに、リザーバの可撓性バッグ内への空気の逆流を防止するために、膜に加えて完全に気密なノンリターン装置を設ける必要はない。
【0022】
可撓性バッグは、リザーバの内部層の剥離によって形成することができる。ディスペンサのリザーバ内の製造から存在する可撓性バッグの代替として、リザーバの壁の剥離によって得られる可撓性バッグは、本発明において求められる機能を得るための、単純な解決策であり、工業的にマスターされ、安価である。
【0023】
あるいは、可撓性バッグは、取り付けられる格納式可撓性バッグであり得る。このような伸縮自在の可撓性バッグを使用することによって、特に、包装される製品の各種容積に対して1つの同じ変形可能な壁を使用しながら、包装される液体製品の初期容積に正確に対応する公称容量を有するバッグを選択することが可能になる。
【0024】
空気流入手段は、ユーザの指で閉鎖されるように適合されたリザーバの壁の穴によって形成することができる。これは、製品がリザーバの外側に向かって分注されるとき、すなわち、圧力がリザーバに印加されるとき、リザーバの壁と可撓性バッグとの間に含まれる空気の出現を防止するための特に単純な解決策である。壁に設けられた穴部の適合された位置決めは、ディスペンサを完全に直感的に利用する。したがって、穴は、有利には、ディスペンサによって収容された製品を分注するためにディスペンサを保持するときに、ユーザの指が自然に載置されるようになるリザーバのゾーンの間に配置することができる。したがって、穴は、リザーバの側壁上、特にリザーバのネックに近接して、又は代わりに、リザーバの下面上に配置することができる。
【0025】
代替的に、空気流入手段は、空気がリザーバの壁と可撓性バッグとの間に入ることを可能にし、リザーバの壁と可撓性バッグとの間に存在する空気がリザーバの外側に向かって出ることを防止するように構成された一方向弁を含むことができる。
【0026】
この構成によれば、リザーバの外側に向かう空気の出現は自動的に防止され、そのことは、変形可能なリザーバを有する従来のディスペンサと比較して、ユーザが実施する特定の動作(しかしながら、単純)を有しないので、リザーバの使用を極めて単純にする。
【0027】
2つの分注の間で膜を湿潤状態に保つように構成された装置は、分注ヘッドに取り付けられた取り外し可能なキャップであり得る。キャップは、膜の下流(滴下端部片と同じ側)に不透過性を提供する単純かつ有効な方法を構成する。このような不浸透性は、膜を濡らす液体が2つの点滴注入の間に可撓性バッグに向かって戻ることを防止する。
【0028】
2つの点滴注入の間で膜を湿潤状態に保つように構成された装置は、膜と滴下端部片の分注開口との間に配置されたバルブを含むことができる。このバルブは、本発明において親水性膜によって保証される、水に対して選択的に透過性がある、リザーバへの空気の再生防止の機能を果たすことを目的としないことが注目される。このようなバルブは、特に製品の2つの連続した分注の間において、膜を濡らす液体製品の維持を簡単に保証する。したがって、簡単な安価なバルブを使用することができる。バルブは、ボールバルブ、変形可能な薄膜を有するバルブなどとすることができる。
【0029】
ディスペンサは、リザーバと微小孔性膜との間に位置し、滴下端部片を通る液体の送達を目的として、可撓性バッグから来る液体がこれを通過するように配置された多孔性パッドを含むことができる。膜の上流の多孔質パッドは、製品の最初の分注の前に、液体製品が膜と接触することを回避することができる。最初の使用の前に、液体は、したがって、リザーバ内に完全に閉じ込められたままであり、膜を通過し、したがって、その無菌性を保証することがより困難である端部片のゾーン内に位置する液滴のリスクはない。
【0030】
多孔質パッドはまた、微孔質膜と共同して、製品が分注オリフィスに向かって通過する際に圧力低下を作り出すことを可能にし、このことは、ディスペンサによって分注される液体の流れを調節することを可能にする。言い換えれば、パッドは、ディスペンサから出てくる液体の流れを調節することによって、ユーザが必要とされる液滴の数をより容易に配分することを可能にする。
【0031】
多孔質パッドが膜と接触して配置される場合、このことは、また、液体製品の2つの分注の間にリザーバから来る液体製品で膜を湿潤状態に保つための装置を構成することができる。それにもかかわらず、この構成は、液体製品の蒸発を防止する手段、例えば取り外し可能なキャップによって補完されなければならない。
【0032】
満足を与える微孔性パッドは、ディスペンサに含まれる液体に対して不活性である材料から有利に製造される。適切な材料は、特に、有機ポリマーの様々な樹脂から得ることができるような、開放細孔を有する高気孔率フェルト又は発泡体である。本発明の主な用途では、特に低密度ポリエチレン樹脂又はポリエーテルスルホン樹脂などのポリエステル又は変性ポリエステル樹脂のフェルトカプセルの形態の微孔性パッドを製造することが有利である。
【0033】
このタイプ又は同等の樹脂は、本発明の文脈において、0.5から3cmの直径及び0.2から1cmの間の長さの円筒状パッドを提供することに利点、これは、分注ヘッドの筐体、有利には円筒状の筐体に、強制的、不浸透的に嵌合するのに十分な可撓性を有し、長手方向において、0.3から10ミクロンの間で選択され得る平均孔径を有する液体マイクロチャネルの通過を提供する。
【0034】
微多孔膜は、例えば、0.45μm未満、好ましくは0.22μm以下の孔径を有することができる。このような膜は、細菌、真菌、及び選択された気孔率に依存して、特定のウイルスが通過するのを妨げるという点で、いわゆる滅菌濾過を提供する。膜は、例えば、PES、ナイロン又はPVDFタイプの様々な材料から構成することができる。このことは、製品の分注中の可能な汚染物質の通過を回避するが(通常、製品は滅菌様式で包装され、その結果、汚染物質は、通常、そこに存在しない)、しかしまた、ディスペンサの外部からの汚染物質(細菌、又はウイルスさえ)のリザーバへの通過を防止することによって、リザーバに含有される製品の滅菌性を保証する。従って、製品中に防腐剤は必要ない。
【0035】
微小孔性膜と分注開口部との間に位置するディスペンサの表面は、例えば銀イオン又は亜鉛イオンに基づく殺菌コーティングを担持することができる。微小孔性膜は、例えば、銀イオン又は亜鉛イオンに基づく殺菌剤を含むことができる。
【0036】
膜の下流にあり、分注中に製品と接触し、又は分注後に滴下端部片に残っている製品と接触する傾向があるディスペンサの表面の処理は、ディスペンサから出てくるまでの製品の無菌性を保証する。このような治療は、一般に、ディスペンサの湿潤表面上の細菌増殖を回避する。表面の処理は、これらの表面への被膜の適用からなることができる。あるいは、これらの表面を形成する材料は、その塊に殺菌剤を装填することができる。金属イオン、例えば銀又は亜鉛イオンに基づく殺菌剤は、眼科用製品の包装への本発明の適用のために好ましい。したがって、微小孔性膜は、有利には、ディスペンサの分注開口部にできるだけ近接して配置される。
【0037】
ディスペンサは、そのリザーバ内に、少なくとも1つの界面活性剤を含有する防腐剤を含まない無菌液体眼科用製品を含むことができる。
【0038】
これが本発明の優先的な適用例である。本発明は、ユーザにとって実用的である単純で安価なディスペンサにおいて、多用量形式の製品の包装を可能にする。
【0039】
無菌液体眼科用製品は、例えば、体積で0.1%から5%の間の界面活性剤を含むことができる。少なくとも1つの界面活性剤は、以下から選択される1つ又は複数の薬剤を含むことができる:
ポリエチレングリコール400(PEG400);
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80);
ポリオキシエチレンソルビンモノラウレート(ポリソルベート20);
エチレンオキシド、プロピレンオキシド;
メチルオキシランポリマー;
ヒマシ油PEG-35;
水素化ひまし油PEG-40;
マクロゴールセトステアリルエーテル;
ポリオキシプロピルグリコール407;
ビタミンE(ポリエチレングリコールサクシネート);
マクロゴールヒドロキシステアリン酸15;
カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド;
2-(2-エトキシエトキシ)エタノール;
ポリビニルピロリドン。
【0040】
液体眼科用製品は、非イオン型の等張剤、酸化防止剤、緩衝系、潤滑ポリマー又はオリゴ糖のグループから選択される少なくとも1つの添加剤を含むことができる。眼科用製品は、さらに、抗緑内障剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗ウイルス剤、抗細菌剤又は抗真菌剤のグループから選択される治療有効量の1つ又は複数の活性剤を含むことができる。
【0041】
本発明の他の特定の特徴及び利点もまた、以下の説明において明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
非限定的な例として与えられる添付の図面において、
図1図1は、断面図で、本発明の一実施形態に係るディスペンサを示す。
図2図2は、含有された製品が送達されているときの図1のディスペンサを断面図で示す。
図3図3は、断面図で、本発明の一実施形態に係るディスペンサを示し、このようなディスペンサで実施することができるいくつかの態様を示す。
図4図4は、断面図で、本発明の別の実施形態に係るディスペンサを示し、このようなディスペンサで実施することができるいくつかの態様を示す。
図5図5は、断面図で、本発明の別の実施形態に係るディスペンサを示す;
図6図6は、本発明のさらに別の実施形態に係るディスペンサを部分断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るディスペンサを示す。ディスペンサは、液体製品、特に無菌液体製品を収容するように適合されたリザーバ1を含む。リザーバ1は、リザーバ1の内容積を形成する変形可能な壁2を含む。壁2は、特に、ユーザが製品の1つ又は複数のドリップを送達することを進めたい場合に、ユーザの手によって加えられる圧力下で変形することができるように構成される。
【0044】
図示の例では、壁2は円筒状の周壁である。壁2は、弾性的に変形可能であり、すなわち、圧力がその上に加えられなくなった後に、自発的にその初期形状を回復する傾向がある。
【0045】
リザーバは、その内容積内に、可撓性バッグ3を含む。可撓性バッグ3は、可撓性プラスチック材料、シリコーン樹脂から形成された取り付けられたバッグとすることができる。あるいは、可撓性バッグ3は、壁2の内部表面の剥離によって形成され、すなわち、可撓性バッグ3は、製品の最初の送達の間に壁2から剥離する。可撓性バッグは、液体製品が収容される受容容積4を形成する。したがって、可撓性バッグは、それが長期間、典型的には数週間又は数ヶ月にわたって含有する液体製品の良好な保存を確実にするのに十分な透過特性を有していなければならない。図示の例では、可撓性バッグは、少なくともリザーバのネック5に近接してリザーバの壁2と接触状態に保たれる。
【0046】
ディスペンサには分注ヘッドが取り付けられている。ここに示す例示的な実施形態では、液滴で液体を分注するためのヘッドは、ディスペンサのネック5の内側に配置されたインサート6を含む。液滴分注用の端部片7(又はノズル)は、インサート6に固定(又は形成)されている。インサート6は、ネック5内に堅固に密閉して固定される。インサート6は、例えば、ネック5に強制的に挿入することができる。
【0047】
インサート6は、多孔質パッド9が受容される空間8を提供するという点で、中空にされていると言うことができ、本発明の文脈では任意である。多孔質パッド9は、ここでは空間8の形状に適合した円筒形である。これは疎水性材料から製造される。これは特に、ポリエチレン充填物を有するフェルトから形成することができる。パッド9は、例えば、約100μmの同等の多孔率を有することができる。それは、分注される液体の流れを調節し、ディスペンサの壁2の圧縮の非存在下で、リザーバ1から端部片7に液体製品が通過するのを防止する効果を有する。
【0048】
ディスペンサは、また、微小孔性膜10を含む。微小孔性膜は、細菌の全部又は一部、並びに適用可能な場合、特定のウイルスの通過を妨げるのに十分に微細なろ過を提供する点で、滅菌又は抗菌であるといえる。
【0049】
微多孔膜は、多孔質パッド9の下流側でかつ端部片7の上流側に配置される。膜は、リザーバ1の可撓性バッグ3内に収容された無菌液体製品をろ過することによって、外部の汚染、特に細菌による汚染から保護する。このことは、また、各分注の間に含有される液体製品を濾過する。
【0050】
微小孔性膜10は、0.45μm未満、好ましくは0.22μm以下、例えば0.1μmから0.2μmの細孔サイズを有する。これは、有利にはポリエーテルスルホンから形成される。使用される微小孔性膜は、水性液体の通過を選択的に可能にするように、(その表面の全体にわたって)親水性である。一方、これは、ガス、特に空気の通過に対抗する。このことは、特に、液体で浸漬される場合である。
【0051】
したがって、膜10は、水性液体が、その2つの面の間の圧力差の影響下で、これを通過することを可能にし、一方、空気の通過に対抗する。特に、膜が液体で湿潤される限り、膜の面間に圧力差が存在するにもかかわらず、膜は空気の通過に強く対抗する。
【0052】
図示の例では、この膜10は、端部片7とインサート6との間に介在している。より詳細には、膜10は、分注端部片7の基部12に対して支持される。ディスクの形式では、この基部の周辺環11とインサート6の一端に向かって存在する協働面との間の熱溶接によってその周辺上に固定される。
【0053】
ここで、端部片7の基部12は、インサート6に嵌合する中空ディスクの形式である。基部12は、その内部面(リザーバ1の内容積に向かって導かれる)上に、排出開口に向かう液体の排出を容易にするマイクロチャネル13を含むことができる。
【0054】
ディスペンサは、空気流入手段14をさらに含む。空気流入手段14は、壁2と可撓性バッグ3との間に適合するように、空気がディスペンサ1の壁2を通過することを可能にする。ここに示した例では、空気流入手段14は、例えば直径数ミリメートルの丸い穴のような穴部15によって形成される。穴部15は、壁2にわずかに中空に形成することができる。
【0055】
図2は、それが含有されている製品が配送されているときの図1のディスペンサを示す。液体製品の1つ又は複数の液滴の送達を引き起こすために、ユーザは、ディスペンサを、例えば、2つの指16の間で押圧し、したがって、壁2を変形させ、その内容積を減少させる。ディスペンサが手動で圧縮されると、指16の1つが穴部15を塞ぐように配置され、これによって壁2と可撓性バッグ3との間に存在する空気が排出されないようにする。この結果は、壁2と可撓性バッグ3との間に存在する空気に関して、及び液体製品に関して、いずれもリザーバ内の圧力の増加であり、圧力は可撓性バッグ3によって伝達される。
【0056】
リザーバ1の内容積と周囲空気との間の圧力差は、多孔質パッド9を通るリザーバ内に含有される液体製品の流れを引き起こす。多孔質パッド9は、このフローを調節する圧力降下を作り出す。
【0057】
次に、液体は微小孔性膜10に到達し、これは発泡体の非存在下で自由に通過する。液体は、次いで、端部片7を通って、例えば、小さな断面、例えば、毛細管チャネルを有するチャンネル17を介して、端部片7に形成され、規則的な液滴18の形成を可能にする。
【0058】
ユーザがリザーバ1に加えている圧力を解放すると、ユーザの指16は、穴部15を密閉して閉じさせる。このように、空気は、壁2と可撓性バッグ3との間に形成された空間に自由に入る。同時に、親水性膜10は、端部片7を介する可撓性バッグ内への空気の回復に対抗する。この結果、排出される液体製品の体積は、壁2と可撓性バッグ3との間のリザーバ1への対応する体積の空気の進入によって完全に補償される。
【0059】
このように、ディスペンサは、二官能基親水性/疎水性の滅菌(抗菌)膜の操作を妨害し得る界面活性剤を含有する、いくつかの用量のパッケージング及び防腐剤を含まない無菌液体製品、特に防腐剤を含まない眼科用製品の送達を可能にする。
【0060】
このようなディスペンサに実装することができる多数の他の態様を、以下の図に示す。特に、可撓性バッグ3内への空気の吸引がなく、より一般的に親水性膜10の上流側で液体製品と接触することを保証するために、様々な手段を、互いの代替物として、又はそれに加えて使用することができる。まず、端部片7を閉じる取り外し可能なキャップ19を使用することができる。キャップ19は、特に、ディスペンサのネック5の周りにねじ込まれるように適合させることができる。キャップは、ディスペンサのネック5に固定するこの方法のおかげで、及び/又は補助手段のおかげで、空気に対する不透過性を提供する。特に、端部片7を収容するシリンダ20をキャップ19内に形成することができ、またチャンネル17を閉鎖するスタッド21を形成することができる。したがって、ディスペンサが閉じられると、2つの製品ディスペンスの間で、分注端部片7を介した空気の進入は起こり得ない。
【0061】
図3の実施形態では、多孔質パッド9は、膜10と接触するか、又は近接するようにさらにサイズ決定される。このように、パッドは、製品の2つの分注の間に、膜を湿潤させる際に持続する液体の貯蔵を形成し、したがって、その選択的特性を強化し、すなわち、それは、液体の通過を可能にしながらガスの通過を妨げる。このことは、空気が膜の下、その上流に浸透する可能性を大幅に制限する。
【0062】
図4は、キャップ19の使用に加えて、膜の下流側に非常に少量の液体を保つことによって、膜が製品の2つの分注間に湿潤されたままであることが保証される、本発明の別の実施形態を示す。これは、ディスペンサに、例えば端部片7の端部のすぐ近くにバルブ22を設けることによって達成することができる。図4に示すバルブはボールバルブであるが、特にチャンネル17内に存在する毛管現象に加えて、そのすぐ下流側に位置する液体による膜10の湿潤を持続させることを可能にするために、そのバルブが可能にするならば、他のいかなるバルブ技術も明らかに適切であり得る。したがって、それは必ずしも膜の下流側に完全なシールを作り出す場合ではなく、膜がその選択的に親水性を果たす空気の逆流防止の役割を果たし続けることを確実にすることが注目に値する。
【0063】
図1及び図2に示される例示的な実施形態において、空気流入手段14は、ユーザによって容易に遮られ得る穴部15によって形成される。しかしながら、穴部15の位置決めは、ユーザにとって自然でなければならないが、ディスペンサに従って適合させることができる。この位置は、壁2の上部、その中央(ディスペンサの一般的な延長方向)、又はディスペンサの底部23であり得る。
【0064】
図3及び図4に例示されているように、穴部15は、一方向弁24で置き換えることができ、空気が壁2と可撓性バッグ3との間の空間に入ることを可能にするが、この空間から再び出ることを防止する。一方向弁24は、可撓性リップ、ボール弁などを備えた弁とすることができる。それは、図4に示されるように、壁2の上に、又は図3に示されるようにディスペンサの底部23の上に配置することができる。図3の実施形態では、一方向弁は、ディスペンサの底部23に形成された中空部25に含まれる。
【0065】
最後に、図5は、空気流入手段14が、ディスペンサの上部、すなわち、そのネック5に示される例に組み込まれる実施形態を示す。導管26は、空気流入手段を通って、壁2と可撓性バッグ3との間に位置する空間に向かって流入空気を導く。空気流入手段14を形成する一方向弁24は、導管26の口に配置される。この実施形態は、空気流入手段の別個の組み込みを可能にし、この手段のための位置決めを提供し、ディスペンサに含まれる製品の分注中の意図しない閉鎖のいかなるリスクも回避する。
【0066】
一方向弁の代わりに、空気流入手段14は、空気に対して透過性があるが、(この要素を通る空気の拡散がゆっくりとしか起こらないように)有意な圧力低下を生じさせるように適合された要素を(本発明の任意の実施形態において)備えることができる。この要素を形成するために、例えばシリコーン樹脂から作製された、空気に対して透過性のある薄いカバーを使用することができる。
【0067】
従って、製品の送出中、ユーザがリザーバ1を押すと、高い圧力差が生ずるが、端部片7を通る製品の排出に対する抵抗は、カバーによって生成される空気の通過に対する抵抗よりも小さく、分注に必要な時間は、カバーを通る空気の有意な通過を可能にするには短すぎる。
【0068】
リザーバ上の圧力が解放されると、親水性膜10によって防止されている端部片7を通る空気の進入は、圧力がバランスするまで、リザーバの内容積と外部との間の圧力差が、カバーを通る空気の段階的な通過を引き起こす。したがって、壁2と可撓性バッグ3との間の空気によって分注される製品の体積の補償が達成される。
【0069】
図6は、本発明の別の実施形態を提示する。ここで、可撓性バッグ3は、取り付けられた可撓性バッグであり、空気流入手段は、可撓性バッグと、可撓性バンクが接続されたディスペンサの要素との間のインタフェースに一方向弁24を形成する要素を含む。
【0070】
ここに示す例では、可撓性バッグ3は、インサート6に接続される(この構成は、取り付けられたバッグを含む任意の実施形態にさらに適用可能である)。
【0071】
一方向弁24を形成する要素は開いており、ディスペンサの外部とリザーバの内容積との間に圧力差がない場合に空気の通過を可能にするか、リザーバの内容積内に小型負圧が発生するとすぐにそれを開くように構成される。一方、内容積が、ディスペンサの外部の圧力(大気圧)と比較して過圧になると、すぐに、一方向弁24を形成する要素が閉じ、壁2と可撓性バッグ3との間に位置する空間から空気が逃げるのを防止する。
【0072】
特に、一方向弁24を形成する要素は、ディスペンサの内部と外部との間の圧力差に従って、ディスペンサの外部と、導管26を閉鎖するリザーバの内容積とを接続する導管26の排出口上に押圧され得るか、又は反対に、導管26を透明に残すために分離又は変形され得る薄いカラー又は平坦なシールによって形成され得る。上述のような空気透過性のカバーは、この実施形態の変形例で使用することもできる。
【0073】
図6の実施形態は、図5の実施形態の利点を提供し、実施が簡単である。以下に提示される全ての実施形態において、より一般的には、本発明の全ての実施形態において、膜10の下流側に位置し、ディスペンサに含まれる液体製品によって湿潤されることができるディスペンサの表面に抗菌効果を付与することに利点があり得る。これは、これらの表面の処理又はこれらの表面を形成する材料の処理によって得ることができる。例えば、銀イオン又は亜鉛イオンに基づくこのような処理は、これらの表面上の任意の細菌増殖を回避することを可能にする。少量の液体が膜10の下流側に保持される場合、処理は、また、この少量の液体における任意の細菌増殖を回避する。
【0074】
したがって、抗菌処理は、図示の例では、端部片7、特にチャンネル17、及び適用可能な場合にはバルブ22の内部表面に関する。有利には、膜10の下流表面もまた、細菌の発生を回避するように処理される。
【0075】
本発明の他の実施形態を形成するために、例として与えられた図を参照して上に提示された様々な態様を組み合わせることができることは、極めて明らかである。このように開発されたディスペンサは、防腐剤を含まない無菌液体製品の「マルチドーズ」包装を可能にする。さらに、親水性膜上に疎水性部分がないことは、界面活性剤を含有する防腐剤を含まない無菌液体製品の「マルチドーズ」パッケージングを可能にする。さらに、ディスペンサは、製品を受け入れる容積内への空気の吸引を防止するために、液体(それが通過することを可能にする)及び気体(その通過が反対である)に関する親水性膜の選択的特徴を利用する。さらに、液体製品の容積に適合されるバッグの容積は、ディスペンサに存在する最後の投与を含む、全ての製品を、リザーバの壁の残留変形なしに、困難なく分注することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】