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  • 特表-アンモニアをクラッキングする方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】アンモニアをクラッキングする方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
C01B3/04 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532494
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2022086703
(87)【国際公開番号】W WO2023117940
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】21216272.1
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュミット マク ギネス,テジャ
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ,ウンベルト
(72)【発明者】
【氏名】ポンツェン,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】シャック,ドミニク
(57)【要約】
【解決手段】 アンモニアを含む供給流を使用した水素を生成する方法を提供する。この方法は、第1の熱交換器において供給流を加熱して、加熱された供給流を生成するステップであって、加熱された供給流は500℃超の温度であるステップと、加熱された供給流を触媒作用でクラッキングするのに有効な条件下で加熱された供給流を第1の反応ゾーン中に導入して、原料水素流を生成するステップであって、原料水素流は、水素及び窒素を含むステップと、第1の冷却液に接して間接的熱交換によって原料水素流を冷却し、冷却された水素流を形成させるステップと、原料水素流を精製して、水素生成物流及びテールガスを生成するステップであって、テールガスは、水素生成物流と比較してより高い濃度の窒素を有するステップと、を含むことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを含む供給流を使用して水素を生成する方法であって、
第1の熱交換器において前記供給流を加熱して、加熱された供給流を生成するステップであって、前記加熱された供給流は500℃超の温度であるステップと、
前記加熱された供給流を触媒作用でクラッキングするのに有効な条件下で前記加熱された供給流を第1の反応ゾーン中に導入して、原料水素流を生成するステップであって、前記原料水素流は、水素及び窒素を含むステップと、
第1の冷却液に接して間接的熱交換によって前記原料水素流を冷却し、冷却された水素流を形成させるステップと、
前記原料水素流を精製して、水素生成物流及びテールガスを生成するステップであって、前記テールガスは、前記水素生成物流と比較してより高い濃度の窒素を有するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の反応ゾーンが、触媒が充填された反応チューブを含み、前記触媒が好ましくは、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原料水素流が、前記第1の反応ゾーンを離れた後で少なくとも550℃の温度である、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記供給流が、第2の冷却液に接して前記第1の熱交換器において間接的熱交換によって加熱され、前記第2の冷却液が前記原料水素流である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記加熱された供給流を触媒作用でクラッキングするのに有効な条件が、20~35バールの圧力(a)及び酸化剤の存在下で燃料を供給された燃焼バーナーを介して前記第1の反応ゾーンへと熱を提供することを含み、前記燃料がアンモニアを含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1の反応ゾーンと並列に第2の反応ゾーンを提供することをさらに含み、前記第2の反応ゾーンが、煙道ガスによって加熱されたガスで加熱されるクラッカーを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の反応ゾーンが、前記加熱された供給流の一部を供給され、前記一部が、前記加熱された供給流の5%~35%である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記燃料が、より低い発熱量(LHV)を有し、前記LHVの15~50%がアンモニアによって提供され、前記LHVの50~85%が水素によって提供される、請求項5~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
窒素、水素、及び未反応のアンモニアからなる前記テールガスが、前記燃焼バーナーへの前記燃料を供給され、前記燃焼バーナーによって煙道ガスが生成され、前記煙道ガスが二酸化炭素を実質的に非含有であり、前記煙道ガスが、前記供給流、前記加熱された供給流、水、前記酸化剤、及びこれらの組合せからなる群から選択される冷却流への加熱を提供するために好ましくは使用される、請求項5~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記原料水素流が第1の水素成分モル流量を有し、前記燃料への水素成分モル流量の合計が第2の水素成分モル流量を規定し、第2の水素成分モル流量と第1のH成分モル流量との比(ηH2f)が0.10~0.30の範囲である、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第1の冷却液が水であり、排出蒸気流が、原料水素流を冷却するステップの間に前記間接的熱交換によって生成され、第2の流量と比較した前記排出蒸気流流量が好ましくは0.25kg蒸気/Nm未満である、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記加熱された供給流が、蒸気の存在下で触媒作用でクラッキングされ、前記蒸気が、窒化物の形成を低減させるのに有効な量である、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記H生成物が第1の質量流量を形成し、供給原料及び燃料のために使用されるアンモニア流の合計が第2の質量流量を形成し、前記第1の質量流量と前記第2の質量流量との比が少なくとも0.132である、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非炭化水素供給原料を使用した水素生成のための方法に関する。さらに具体的には、本発明の実施形態は、炭化水素、特に、天然ガスの代わりに、水素生成施設への供給原料としてアンモニアを使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素排出の効果を低減させる試みにおいて、新規なエネルギー担体はますます重要となっている。有力なエネルギー担体の1つは水素である;しかし、その小さな分子サイズ、高圧の必要性、及び非常に低い沸点によって、元素水素の輸送は困難及び高価である。
【0003】
既存のインフラを貯蔵及び輸送のために使用することができる(例えば、LPGインフラ)ため、アンモニア(NH)は文献において注目を集めてきた。したがって、天然ガスの代わりにアンモニアを使用した水素の生成は、低炭素エネルギー転換における重要な分子としての水素の将来において主要な役割を果たすことが予測されている。
【0004】
様々なNHクラッキング概念がこれまで提案されてきたが、下記の不都合の1つ若しくは複数が関与することが多い:
・クラッキングは、低い圧力で行われるが、水素は低い圧力で得られるという結果を伴う。しかし、水素はその低分子量によって遠心圧縮機において圧縮することができず、代わりに、より効率的なでなく、より信頼のおけない、より高価なピストン型又は膜型の圧縮機において圧縮しなければならない;
・大部分の低圧プロセスは限定された拡張性を有し、したがって、世界規模の水素生成には適さない。大規模生成(すなわち、典型的には、200tpd又は100,000Nm3/h H)のために、アンモニア消費はできるだけ制限しなければならない;
・リサイクルループがクラッカーの周囲で必要とされ、余分な設備及び費用をもたらす;その他の点では、アンモニア消費は理論的最小値より非常に高い;
・蒸気が生成されない効率的な熱統合スキームを考案することは難関であり得る。これは、蒸気生成が全体的な熱統合の欠くことのできない部分であり、且つ水による急冷がメタルダスティング腐食から材料を保護するのに必要とされる水蒸気メタン改質プロセスとは異なり、アンモニアクラッキングは蒸気が生成されることを必要としないためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、上記の不都合を被ることなしにアンモニア供給ガスからの水素の効率的な生成を可能とすることができる解決法を提供することは有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、これらの必要性の少なくとも1つを満足させる器具及び方法を対象とする。本発明のある特定の実施形態において、アンモニア供給ガスは、アンモニアクラッカーの下流で水素圧縮手段が必要とされないように、十分に高い圧力でクラッキングすることができる。別の実施形態において、アンモニアから水素への変換は、リサイクルループを伴わずに行うことができる。さらに別の実施形態において、この方法は、その熱統合のために蒸気システムの使用を必要としない。
【0007】
アンモニアを含む供給流を使用して水素を生成する方法を提供する。この方法は、第1の熱交換器において供給流を加熱して、加熱された供給流を生成するステップであって、加熱された供給流は500℃超の温度であるステップと、加熱された供給流を触媒作用でクラッキングするのに有効な条件下で加熱された供給流を第1の反応ゾーン中に導入して、原料水素流を生成するステップであって、原料水素流は水素及び窒素を含むステップと、第1の冷却液に接して間接的熱交換によって原料水素流を冷却し、冷却された水素流を形成させるステップと、原料水素流を精製して、水素生成物流及びテールガスを生成するステップであって、テールガスは、水素生成物流と比較してより高い濃度の窒素を有するステップとを含むことができる。
【0008】
本発明の方法の任意選択の実施形態では:
・第1の反応ゾーンは、触媒が充填された反応チューブを含み、触媒は好ましくは、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、及びこれらの組合せからなる群から選択される;
・原料水素流は、第1の反応ゾーンを離れた後、少なくとも550℃の温度である;
・供給流は、第2の冷却液に接して第1の熱交換器において間接的熱交換器によって加熱され、第2の冷却液は原料水素流である;
・加熱された供給流を触媒作用でクラッキングするのに有効である条件は、20~35バールの圧力(a)及び酸化剤の存在下で燃料を供給された燃焼バーナーを介して第1の反応ゾーンに熱を提供することを含み、燃料はアンモニアを含む;
・方法はまた、第1の反応ゾーンと並列に第2の反応ゾーンを提供するステップを含むことができ、第2の反応ゾーンは、煙道ガスによって加熱されるガスで加熱されるクラッカーを含む;
・第2の反応ゾーンは、加熱された供給流の一部を供給され、その一部は、加熱された供給流の5%~35%である;
・燃料は、より低い発熱量(LHV)を有し、LHVの15~50%はアンモニアによって提供され、LHVの50~85%は水素によって提供される;
・窒素、水素、及び未反応のアンモニアからなるテールガスは、燃焼バーナーへの燃料を供給され、煙道ガスは燃焼バーナーによって生成され、煙道ガスは二酸化炭素が実質的に非含有であり、煙道ガスは、供給流、加熱された供給流、水、酸化剤、及びこれらの組合せからなる群から選択される冷却流への加熱を提供するために好ましくは使用される;
・原料水素流は、第1の水素成分モル流量を有し、水素生成物流は、第2の水素成分モル流量を有し、第2の水素成分モル流量と第1のH成分モル流量(ηH)の比は、0.70~0.90の範囲である;
・第1の冷却液は水であり、排出蒸気流は、原料水素流を冷却するステップの間に前記間接的熱交換によって生成され、第2の流量と比較した排出蒸気流流量は好ましくは、0.25kg蒸気/Nm未満である;
・加熱された供給流は、蒸気の存在下で触媒作用でクラッキングされ、蒸気は、窒化物の形成を低減させるのに有効な量であり;且つ/又は
・H生成物は、第1の質量流量を形成し、供給原料及び燃料のために使用されるアンモニア流の合計は、第2の質量流量を形成し、第1の質量流量と第2の質量流量の比は、少なくとも0.132である。
【0009】
本発明のこれら及び他の特色、態様、及び利点は、以下の説明、特許請求の範囲、及び添付図面を考慮してより良好に理解されるようになる。しかし、図面は本発明のいくつかの実施形態のみを例示し、したがって、本発明は他の等しく有効な実施形態を認めることができため、本発明の範囲を限定するものであるとは見なされないことが留意される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、従来技術の一実施形態による、アンモニアを供給原料として使用した水素生成施設の一実施形態を示す。
図2図2は、本発明の一実施形態による、改善された熱統合を伴う、アンモニアを供給原料及び燃料として使用した水素生成施設の一実施形態を示す。
図3図3は、本発明の一実施形態による、蒸気システムが必要とされないように、熱統合が改善された、アンモニアを供給原料及び燃料として使用した水素生成施設の別の実施形態を示す。
図4図4は、本発明の一実施形態による、アンモニアを供給原料及び燃料として使用した水素生成施設の別の実施形態を示し、ここでは、ガスで加熱されるクラッカーを主要クラッカーと並行して加え、蒸気システムが必要とされないように熱統合が改善される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明をいくつかの実施形態に関連して記載する一方で、本発明をそれらの実施形態に限定することを意図しないことが理解される。これに反して、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲内に含み得るため、本発明は全ての代替形態、修正形態及び同等物をカバーすることを意図する。
【0012】
図面を参照して、他に断らない限り、2つの設備の間の点線及び破線は、設備が少なくとも熱統合されていることを示すことを意味する。
【0013】
600℃のクラッキングTでの現存するSMRにおけるNHのクラッキングをベースとした参照ケースであるケース1aを提供する。この参照ケースを図1において説明する。プロセスNH100を、連続的な熱交換器150、151、及び152において気化させ、事前加熱する。オプションとして、少量の蒸気104/127は(蒸気が好ましくは混合物の1mol%未満の割合を占めるように)NHと混合して、望ましくない窒化物の形成の危険性に対して保護することができる。次いで、加熱されたプロセスNHは、153において500℃を超えたTへと優先的に加熱され、その後、反応器154に送られ、これは触媒が充填されたチューブにおいて少なくとも550℃の出口クラッキングTにてクラッキングされる。次いで、原料H106の熱は連続的に使用され、水を気化させ、プロセスガスボイラー155/169において蒸気を生成し、156/151においてNH供給原料を気化させ、157/168においてボイラー供給水を加熱し、158/150においてNH供給原料をさらに気化させる。原料H2流110は、約40℃のTにてPSA159に入り、そこから高純度(好ましくは、少なくとも99.9%)を有するH流111を回収する。
【0014】
、H、及び未反応のNHを含むPSAオフガス112は改質炉162のバーナーに送られ、これはNH燃料114、及び熱い燃焼用空気117と混合及び燃焼される。この場合、LHVの概ね48%はNHによって提供され、概ね52%はHによって提供される。この混合物の燃焼は、十分に高い火炎速度によって単純である。オプションとして、H生成物の一部は燃料113として使用して、NH燃料消費の部分を相殺することができる。炉において生じた熱の部分は、154において吸熱的クラッキング反応において使用される。次いで、煙道ガス118中の残りの熱を連続的に使用して、163/153において改質供給物を加熱し、164/170において蒸気を過熱し、165/161において燃焼用空気を加熱し、煙道ガスボイラー166/169において蒸気を生じさせ、167/160において燃焼用空気を事前加熱する。このクラッカーにおいて、本発明者らは、プロセスガス及び煙道ガスのための一般の蒸気システムを考慮する。ボイラー供給水124は、168において原料Hによって事前加熱され、ボイラー169においてプロセスガス106及び煙道ガス121によって気化され、170において煙道ガス119によって過熱される。蒸気生成の部分を熱交換器171/152に送り、NH供給原料をさらに気化及び事前加熱する。蒸気生成の残りは、副生成物128として排出される。
【0015】
代わりに、燃料のためのHの必要とされる量がPSAオフガス112中に含有されるように、燃料113として使用される任意選択のH流量は代わりにPSA159の上流で取得されることができるか、又はPSAはより低いH回収を伴って設計することができる。燃料へのHの寄与がPSAの上流で、又はPSAオフガスを介して提供される代替形態を説明するために、本発明者らはまた、表1において下記のように定義される「H2燃料比」、ηH2fを含む。
【数1】
【0016】
図2において記載されているケース1bは、設定が典型的なSMR熱統合から逸脱しているgreenfieldNHクラッカーである。冷却されたNH供給原料200は、一連の3つの熱交換器250、251、及び252において気化/事前加熱される。ここでまた、少量の蒸気204/228はNHと混合され、窒化物形成の危険性から保護することができる。次いで、NH供給原料203は500℃を超えたTへと加熱され、その後、反応器254においてクラッキングされる。熱統合はケース1aにおいて記載したSMR設定と今や異なり、反応したプロセスガス206の熱が最初に使用されて、255/252においてNH供給原料202を事前加熱し、次いで、プロセスガスボイラー256/270において蒸気227を生じさせる。逆もまた可能であり、最初に蒸気が生成され、それに続いてNH供給原料が事前加熱される。次いで、原料H208はボイラー供給水事前加熱器257/269において冷却され、これ209はまた供給原料気化器258/251においてさらに冷却され、その後、PSA259に送られ、ここから本発明者らは純粋なH流211を回収し、任意選択の純粋なH流213は炉262のバーナーに送られる。PSAオフガス212は、NH燃料214及び燃焼用空気215/216/217と混合され、炉において燃焼される。この場合、LHVの概ね43%はNHによって表され、概ね57%はHによって表される。炉において生じた熱の部分を使用して、触媒が充填されたチューブ254においてクラッキング反応を推進し、煙道ガス上の熱交換器の残りは、熱交換器268/250の添加を除いてケース1aにおけるSMRにおけるように正確にアレンジされ、煙道ガス出口において利用可能な低グレード熱を使用して、NH供給原料を気化させる。同様の温度レベルの原料H209及び煙道ガス223を所与として、熱交換器/NH気化器258/251及び268/250は単一の設備へと合わせることができる。
【0017】
ケース1aと比較して、全体的なNH消費は、ケース1bにおいて2.5%減少し、蒸気排出は、3.9t/h(約14%)低減する。
【0018】
NHが炭素非含有又は再生可能な方法で生成されると仮定すれば、NH消費をできるだけ低減させることが望ましい。ケース1cにおいて、蒸気システムを伴わないさらなる実施形態を、図3において提供及び例示する。事前加熱プロセスNH303は、反応器353においてクラッキングされる。蒸気システムが配置されておらず、クラッキングされたプロセスガス304において利用可能な熱を使用して、熱交換システム351/354においてNH供給原料301を気化及び事前加熱し、その後、PSA355に送る。PSAオフガス307、NH燃料309、燃焼用空気310、及び任意選択でH燃料308の組合せを、炉357において燃焼する。LHVの概ね29.5%はNHによって表され、概ね70.5%はHによって表される。
【0019】
このNH/H混合物は、十分に高い火炎速度によって燃焼を単純化する。さらに、燃焼温度が良好に制御される場合、より低いNHレベルはより低いNOxレベルをもたらし得る。熱い煙道ガス312は、熱交換器358/352におけるクラッカー入口においてNHを最初に加熱し、次いで、それ313は熱交換器システム359/356において燃焼用空気と熱を交換する。次いで、煙道ガス314の残留する低グレード熱を使用して、360/350において冷却されたNH供給原料300を気化させる。この配置は蒸気を生成しないが、ケース1aと比較して全体的なNH消費を7.6%低減させる。530℃超の温度で熱い燃焼用空気311上で、材料グレードにおける変更が必要とされる。ケース1cの設定における効率的な熱統合を達成するために、燃焼用空気を670℃へと加熱した。
【0020】
図4は、第4の実施形態、ケース1dを提供し、ここではガスで加熱されるクラッカー454を主要クラッカー453と並列して加え、そのために炉459の下流の煙道ガスシステム上の第1の熱交換器460によって熱を提供する。燃焼用空気を加熱する2つの熱交換器461/458、及び463/457の間で、さらなる熱交換器462/451を使用して、NH供給原料を気化させる。ケース1cと対照的に、熱い燃焼用空気Tはより管理しやすい530℃へと低減させた。
【0021】
別の代わりの実施形態は、bayonetチューブ配置におけるクラッカーが関与し、ここでは、クラッキングされたガスは反応ガスと向流的に熱を交換する。次いで、設定は、図3において記載したものと同様であるように見える。
【0022】
別の代わりの実施形態はケース1eにおいて提案され、ケース1c/図3と同じ配置が使用されるが、クラッキングTは550℃へと低減され、PSAの下流の純粋なH流の一部は、燃料システムに供給される。このような設定において、クラッカー入口における500℃の閾値Tに達することができ、これはNHクラッキング反応が触媒の開始から起こることを確実にするために好ましく、熱い燃焼用空気Tは、材料のグレードにおける変更を他に必要とし得る530℃の閾値を超えない。ケース1dを超えるこの設定の利点は、ガスで加熱されるクラッカーを必要とせず、クラッカーの設計における複雑な状態を伴うbayonetチューブ配置を伴う代替のアレンジメントに反して、この場合単純な単一パスチューブ設計で十分であることである。
【0023】
下記の表1は、本明細書に記載されている様々な実施形態についての比較データを提供する。
【0024】
【表1】
【0025】
本発明をその特定の実施形態と併せて記載してきた一方で、上記に照らせば、多くの代替形態、修正形態、及び変形形態は当業者には明らかであることは明白である。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲の精神及び広範な範囲に入る全てのこのような代替形態、修正形態、及び変形形態を包含することを意図する。本発明は、開示されている要素を適切に含むか、これらからなるか、又はこれらから本質的になってもよく、開示されていない要素の非存在下で実施し得る。さらに、順序について言及する言語、例えば、第1及び第2は、例示的な意味で理解すべきであり、限定的な意味で理解するべきではない。例えば、特定のステップ又は装置は、単一のステップ/装置へと合わせることができることを当業者は認識することができる。
【0026】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈によって明らかにそれ以外のことの指示がない限り、複数の参照対象を含む。特定の約/概ねの値という用語は、文脈によって明らかにそれ以外のことの指示がない限り、その特定の値プラス又はマイナス10%を含む。
【0027】
任意選択又は任意選択でとは、それに続いて記載されている事象若しくは状況が起こり得るか、又は起こり得ないことを意味する。この記載は、事象若しくは状況が起こる場合、及びそれが起こらない場合を含む。
【0028】
範囲は、本明細書において、1つの特定の約の値から、及び/又は別の特定の約の値までと表し得る。このような範囲が表されるとき、別の実施形態は、前記範囲内の全ての組合せを伴った、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までであることを理解すべきである。

図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-06-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを含む供給流を使用して水素を生成する方法であって、
第1の熱交換器において前記供給流を加熱して、加熱された供給流を生成するステップであって、前記加熱された供給流は500℃超の温度であるステップと、
前記加熱された供給流を触媒作用でクラッキングするのに有効な条件下で前記加熱された供給流を第1の反応ゾーン中に導入して、原料水素流を生成するステップであって、前記原料水素流は、水素及び窒素を含むステップと、
第1の冷却液に接して間接的熱交換によって前記原料水素流を冷却し、冷却された水素流を形成させるステップと、
前記原料水素流を精製して、水素生成物流及びテールガスを生成するステップであって、前記テールガスは、前記水素生成物流と比較してより高い濃度の窒素を有するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の反応ゾーンが、触媒が充填された反応チューブを含み、前記触媒が好ましくは、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原料水素流が、前記第1の反応ゾーンを離れた後で少なくとも550℃の温度である、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記供給流が、第2の冷却液に接して前記第1の熱交換器において間接的熱交換によって加熱され、前記第2の冷却液が前記原料水素流である、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記加熱された供給流を触媒作用でクラッキングするのに有効な条件が、20~35バールの圧力(a)及び酸化剤の存在下で燃料を供給された燃焼バーナーを介して前記第1の反応ゾーンへと熱を提供することを含み、前記燃料がアンモニアを含む、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1の反応ゾーンと並列に第2の反応ゾーンを提供することをさらに含み、前記第2の反応ゾーンが、煙道ガスによって加熱されたガスで加熱されるクラッカーを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の反応ゾーンが、前記加熱された供給流の一部を供給され、前記一部が、前記加熱された供給流の5%~35%である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記燃料が、より低い発熱量(LHV)を有し、前記LHVの15~50%がアンモニアによって提供され、前記LHVの50~85%が水素によって提供される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
窒素、水素、及び未反応のアンモニアからなる前記テールガスが、前記燃焼バーナーへの前記燃料を供給され、前記燃焼バーナーによって煙道ガスが生成され、前記煙道ガスが二酸化炭素を実質的に非含有であり、前記煙道ガスが、前記供給流、前記加熱された供給流、水、前記酸化剤、及びこれらの組合せからなる群から選択される冷却流への加熱を提供するために好ましくは使用される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記原料水素流が第1の水素成分モル流量を有し、前記燃料への水素成分モル流量の合計が第2の水素成分モル流量を規定し、第2の水素成分モル流量と第1のH成分モル流量との比(ηH2f)が0.10~0.30の範囲である、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第1の冷却液が水であり、排出蒸気流が、原料水素流を冷却するステップの間に前記間接的熱交換によって生成され、第2の流量と比較した前記排出蒸気流流量が好ましくは0.25kg蒸気/Nm未満である、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記加熱された供給流が、蒸気の存在下で触媒作用でクラッキングされ、前記蒸気が、窒化物の形成を低減させるのに有効な量である、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記H生成物が第1の質量流量を形成し、供給原料及び燃料のために使用されるアンモニア流の合計が第2の質量流量を形成し、前記第1の質量流量と前記第2の質量流量との比が少なくとも0.132である、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
範囲は、本明細書において、1つの特定の約の値から、及び/又は別の特定の約の値までと表し得る。このような範囲が表されるとき、別の実施形態は、前記範囲内の全ての組合せを伴った、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までであることを理解すべきである。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] アンモニアを含む供給流を使用して水素を生成する方法であって、
第1の熱交換器において前記供給流を加熱して、加熱された供給流を生成するステップであって、前記加熱された供給流は500℃超の温度であるステップと、
前記加熱された供給流を触媒作用でクラッキングするのに有効な条件下で前記加熱された供給流を第1の反応ゾーン中に導入して、原料水素流を生成するステップであって、前記原料水素流は、水素及び窒素を含むステップと、
第1の冷却液に接して間接的熱交換によって前記原料水素流を冷却し、冷却された水素流を形成させるステップと、
前記原料水素流を精製して、水素生成物流及びテールガスを生成するステップであって、前記テールガスは、前記水素生成物流と比較してより高い濃度の窒素を有するステップと
を含む、方法。
[2] 前記第1の反応ゾーンが、触媒が充填された反応チューブを含み、前記触媒が好ましくは、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、及びこれらの組合せからなる群から選択される、[1]に記載の方法。
[3] 前記原料水素流が、前記第1の反応ゾーンを離れた後で少なくとも550℃の温度である、[1]又は[2]のいずれかに記載の方法。
[4] 前記供給流が、第2の冷却液に接して前記第1の熱交換器において間接的熱交換によって加熱され、前記第2の冷却液が前記原料水素流である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 前記加熱された供給流を触媒作用でクラッキングするのに有効な条件が、20~35バールの圧力(a)及び酸化剤の存在下で燃料を供給された燃焼バーナーを介して前記第1の反応ゾーンへと熱を提供することを含み、前記燃料がアンモニアを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 前記第1の反応ゾーンと並列に第2の反応ゾーンを提供することをさらに含み、前記第2の反応ゾーンが、煙道ガスによって加熱されたガスで加熱されるクラッカーを含む、[5]に記載の方法。
[7] 前記第2の反応ゾーンが、前記加熱された供給流の一部を供給され、前記一部が、前記加熱された供給流の5%~35%である、[6]に記載の方法。
[8] 前記燃料が、より低い発熱量(LHV)を有し、前記LHVの15~50%がアンモニアによって提供され、前記LHVの50~85%が水素によって提供される、[5]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9] 窒素、水素、及び未反応のアンモニアからなる前記テールガスが、前記燃焼バーナーへの前記燃料を供給され、前記燃焼バーナーによって煙道ガスが生成され、前記煙道ガスが二酸化炭素を実質的に非含有であり、前記煙道ガスが、前記供給流、前記加熱された供給流、水、前記酸化剤、及びこれらの組合せからなる群から選択される冷却流への加熱を提供するために好ましくは使用される、[5]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10] 前記原料水素流が第1の水素成分モル流量を有し、前記燃料への水素成分モル流量の合計が第2の水素成分モル流量を規定し、第2の水素成分モル流量と第1のH 成分モル流量との比(ηH2f)が0.10~0.30の範囲である、[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11] 前記第1の冷却液が水であり、排出蒸気流が、原料水素流を冷却するステップの間に前記間接的熱交換によって生成され、第2の流量と比較した前記排出蒸気流流量が好ましくは0.25kg蒸気/Nm 未満である、[1]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12] 前記加熱された供給流が、蒸気の存在下で触媒作用でクラッキングされ、前記蒸気が、窒化物の形成を低減させるのに有効な量である、[1]~[11]のいずれかに記載の方法。
[13] 前記H 生成物が第1の質量流量を形成し、供給原料及び燃料のために使用されるアンモニア流の合計が第2の質量流量を形成し、前記第1の質量流量と前記第2の質量流量との比が少なくとも0.132である、[1]~[12]のいずれかに記載の方法。
【国際調査報告】