(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】鉄道車両の走行速度に影響を与えるための方法および装置
(51)【国際特許分類】
B60T 17/22 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
B60T17/22 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532894
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2022084259
(87)【国際公開番号】W WO2023099755
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】102021131927.7
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503159597
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア シーネンファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Schienenfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80,D-80809 Muenchen,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ フリーゼン
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ フアトヴェングラー
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ハウス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー マハーネ
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト シュタールバウアー
【テーマコード(参考)】
3D049
【Fターム(参考)】
3D049AA04
3D049BB21
3D049BB26
3D049BB28
3D049HH47
3D049HH48
3D049HH52
3D049QQ04
3D049RR01
3D049RR04
3D049RR06
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの摩擦要素(1,2)を含む摩擦ブレーキシステムを備えた鉄道車両の走行速度に影響を与えるための方法に関し、ここで、影響を与えることは、鉄道車両の現下の走行動作状況において摩擦ブレーキシステムにより仮想的に実施された制動過程の際に生じるであろう、少なくとも1つの随伴現象、特に、ブレーキパッド摩耗、ブレーキ騒音、および/またはブレーキ臭に依存して行われる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの摩擦要素(1,2)を含む摩擦ブレーキシステムを備えた鉄道車両の走行速度に影響を与えるための方法において、
前記影響を与えることは、前記鉄道車両の現下の走行動作状況において前記摩擦ブレーキシステムにより仮想的に実施された制動過程の実際の制動に対して付加的に生じるであろう、第1の不所望な随伴現象および/または第2の不所望な随伴現象および/または第3の不所望な随伴現象の少なくとも1つの程度に依存して行われ、
前記方法では、
a)前記鉄道車両の現下の走行動作状況を特徴付ける少なくとも1つのパラメータが捕捉され、
b)前記第1の随伴現象として、前記現下の走行動作状況において前記仮想的に実施された制動過程によって引き起こされる前記少なくとも1つの摩擦要素(1,2)のブレーキ摩耗が用いられ、かつ/または前記第2の随伴現象として、前記現下の走行動作状況において前記仮想的に実施された制動過程によって引き起こされるブレーキ騒音が用いられ、かつ/または前記第3の随伴現象として、前記現下の走行動作状況において前記仮想的に実施された制動過程によって引き起こされるブレーキ臭もしくはブレーキ煙が用いられ、
モデルを用いることにより、
c)前記鉄道車両の前記現下の走行動作状況において前記制動過程が仮想的に実施される場合に、前記少なくとも1つの捕捉されたパラメータと、前記現下の走行動作状況において仮想的に実施された制動過程とに基づいて、前記摩擦要素(1,2)内または前記摩擦要素(1,2)において生じるであろう、前記摩擦要素(1,2)の予測的摩擦要素温度(T
pred)が計算もしくは推定され、
d)割り当て(Γ)内で、前記摩擦要素(1,2)の前記予測的摩擦要素温度(T
pred)に、前記鉄道車両の前記随伴現象のうちの少なくとも1つに関する特定の最大許容走行速度(v
maxAllowed)が割り当てられ、ここで、前記摩擦要素(1,2)の前記予測的摩擦要素温度(T
pred)の際に生じる前記各随伴現象の程度は、前記摩擦要素の前記予測的摩擦要素温度(T
pred)の当該随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、
e)前記鉄道車両の前記走行速度(v)が、前記鉄道車両の特定の最大許容走行速度(v
maxAllowed)に設定もしくは制限され、またはこれに関する信号が出力されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記モデルにおいて、前記摩擦要素(1)の現下の摩擦要素温度(T
act)の第1の値に、前記鉄道車両の現下の走行速度(v
act)の第2の値が割り当てられ、これにより第1の値(T
act)および第2の値(v
act)の許容領域(T
act,v
act)が定義され、前記摩擦要素(1,2)の現下の摩擦要素温度(T
act)の際に生じる前記第1の随伴現象の程度は、最大でも前記第1の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、かつ/または前記摩擦要素(1,2)の現下の摩擦要素温度(T
act)の際に生じる前記第2の随伴現象の程度は、最大でも前記第2の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、かつ/または前記摩擦要素(1,2)の現下の摩擦要素温度(T
act)の際に生じる前記第3の随伴現象の程度は、最大でも前記第3の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、前記許容領域(T
act,v
act)は、前記特定の最大許容走行速度(v
maxAllowed)と前記予測的摩擦要素温度(T
pred)との間の割り当てを定義する境界曲線(Γ)によって制限される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記仮想的制動過程は、所定の制動作用、所定の制動力によって、または所定の制動圧もしくは所定の制動トルクによって実施される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記仮想的制動過程は、定義された制動方式を用いて実施される、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記定義された制動方式として、以下の標準化された制動方式:非常制動、強制制動、緊急制動、危険制動、常用制動のうちの少なくとも1つが用いられる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記鉄道車両の前記現下の走行動作状況を特徴付けるパラメータとして、以下のパラメータ:前記鉄道車両の現下の速度、現下の制動力、現下の制動トルク、現下の制動圧、前記鉄道車両の周囲温度、前記鉄道車両の現下の負荷および/または積載量、前記鉄道車両によって走行される区間の勾配もしくは傾斜のうちの少なくとも1つが用いられる、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記摩擦要素(1,2)は、前記摩擦ブレーキシステムのディスクブレーキのブレーキディスクおよび/またはブレーキパッドを含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記鉄道車両の走行速度を特定の最大許容もしくは最適走行速度(v
maxAllowed)に制限もしくは設定することは、自動列車運転システム(ATO)によって実施される、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの摩擦要素(1,2)を含む摩擦ブレーキシステムを備えた鉄道車両の走行速度に影響を与えるための装置において、
前記影響を与えることは、前記鉄道車両の現下の走行動作状況において前記摩擦ブレーキシステムにより仮想的に実施された制動過程の際に生じるであろう、少なくとも1つの随伴現象の少なくとも1つの程度に依存して行われ、
この目的のために、前記装置は、少なくとも以下の要素:
a)前記鉄道車両に接続されかつ前記鉄道車両の前記現下の走行動作状況を特徴付ける少なくとも1つのパラメータを捕捉するように構成された捕捉手段(10,11,12,13)と、
b)モデルが実装されている計算ユニット(7)と、
c)前記鉄道車両の走行速度に影響を与えるように構成された制御装置と、
を含み、ここで、
d)前記モデルは、ステップおよび計算を次のように実行し、すなわち、
d1)第1の随伴現象として、前記現下の走行動作状況において前記仮想的に実施された制動過程で引き起こされる前記少なくとも1つの摩擦要素(1,2)のブレーキ摩耗が用いられ、かつ/または第2の随伴現象として、前記現下の走行動作状況において前記仮想的に実施された制動過程によって引き起こされるブレーキ騒音が用いられ、かつ/または第3の随伴現象として、前記現下の走行動作状況において前記仮想的に実施された制動過程によって引き起こされるブレーキ臭もしくはブレーキ煙が用いられ、
d2)前記少なくとも1つのパラメータと、前記現下の走行動作状況において仮想的に実行された制動過程とに基づいて、前記摩擦要素(1,2)の予測的摩擦要素温度(T
pred)が計算もしくは推定され、
d3)割り当て(Γ)内で、前記摩擦要素の前記予測的摩擦要素温度(T
pred)に、前記鉄道車両の前記随伴現象のうちの少なくとも1つに関する特定の最大許容走行速度(v
maxAllowed)が割り当てられ、ここで、前記摩擦要素(1,2)の現下の摩擦要素温度(T
act)の際に生じる前記各随伴現象の程度は、前記摩擦要素(1,2)の前記予測的摩擦要素温度(T
pred)の前記随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、
e)前記計算ユニットは、自身が前記モデルのステップおよび計算に基づいて前記制御装置のための出力信号を生成するように構成されており、次いで、前記制御装置は、前記出力信号に基づいて前記鉄道車両の走行速度を特定の最大許容走行速度(v
maxAllowed)に制限もしくは設定し、またはこれに関する信号を出力することを特徴とする、装置。
【請求項10】
前記モデルは、前記摩擦要素(1,2)の前記現下の摩擦要素温度(T
act)の第1の値に、前記鉄道車両の走行速度(v
act)の第2の値が割り当てられ、これにより第1の値(T
act)および第2の値(v
act)の許容領域(T
act,v
act)が定義され、前記摩擦要素(1,2)の前記現下の摩擦要素温度(T
act)の際に生じる前記第1の随伴現象の程度は、最大でも前記第1の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、かつ/または前記摩擦要素(1,2)の前記現下の摩擦要素温度(T
act)の際に生じる前記第2の随伴現象の程度は、最大でも前記第2の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、かつ/または前記摩擦要素(1,2)の前記現下の摩擦要素温度(T
act)の際に生じる前記第3の随伴現象の程度は、最大でも前記第3の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、前記許容領域(T
act,v
act)は、前記特定の最大許容走行速度(v
maxAllowed)と前記予測的摩擦要素温度(T
pred)との間の割り当てを定義する境界曲線(Γ)によって制限されるように構成されている、請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記制御装置は、自動列車運転システム(ATO)に含まれている、請求項9または10記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、前記モデルと共働する第1の選択手段を含み、該第1の選択手段により、前記第1の随伴現象および/または前記第2の随伴現象および/または前記第3の随伴現象が選択可能である、請求項9から11までのいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
前記モデルは、前記仮想的制動過程が、所定の制動作用、所定の制動力によって、または所定の制動圧もしくは所定の制動トルクによって実施されるように構成されている、請求項9から12までのいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
前記モデルは、前記仮想的制動過程が定義された制動方式を用いて実施されるように構成されている、請求項9から13までのいずれか1項記載の装置。
【請求項15】
前記モデルは、定義された制動方式として、以下の制動方式:非常制動、強制制動、緊急制動、危険制動、常用制動のうちの少なくとも1つを用いるように構成されている、請求項14記載の装置。
【請求項16】
前記モデルは、前記鉄道車両の前記現下の走行動作状況を特徴付けるパラメータとして、以下のパラメータ:前記鉄道車両の現下の速度、現下の制動力、現下の制動トルク、現下の制動圧、前記鉄道車両の周囲温度、前記鉄道車両の現下の負荷および/または積載量、前記鉄道車両によって走行される区間の勾配もしくは傾斜のうちの少なくとも1つを用いるように構成されている、請求項9から15までのいずれか1項記載の装置。
【請求項17】
鉄道車両であって、請求項9から16までのいずれか1項記載の装置を備えている、鉄道車両。
【請求項18】
コンピュータプログラムであって、請求項9から16までのいずれか1項記載の装置の計算ユニット(7)を用いて請求項1から8までのいずれか1項記載の方法を実施するためのプログラムコード手段を含んでいる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1および9の上位概念による、少なくとも1つの摩擦要素を含む摩擦ブレーキシステムを備えた鉄道車両の走行速度に影響を与えるための方法および装置に関する。本発明は、請求項17による、そのような装置を備えた鉄道車両、ならびに請求項18による、本方法を含んだコンピュータプログラムにも関する。
【0002】
発明の分野
鉄道車両は、多くの場合、電気力学的ブレーキと、付加的に摩擦ブレーキシステムとを備えており(混合型)、ここで、電気力学的ブレーキは、主に、摩擦ブレーキシステムのブレーキ摩耗を低減するために使用される。多くの鉄道車両は、摩擦ブレーキシステムを備えているが、電気力学的ブレーキは備えていない。
【0003】
それゆえ、電気力学的ブレーキが完全にもしくは部分的に故障した場合、常用制動は主としてまたは専ら摩擦ブレーキシステムによって実施されなければならないことが起こり得る。鉄道車両のブレーキ導入速度が速いほど、すなわち、摩擦制動が開始される速度が速いほど、エネルギ入力が大きくなり、ひいてはブレーキディスクおよびブレーキパッドの温度が上昇する。その結果として、ブレーキディスク-ブレーキパッド対の摩擦係数μの変動が大きくなり、ひいては摩擦係数μが低下する確率も高くなる。それゆえ、ブレーキ導入速度が速い場合、ブレーキフェーディングに基づいて制動距離が長くなる危険性が生じる。
【0004】
ブレーキフェーディング(制動減少)とは、ここでは、摩擦ブレーキシステムの制動作用が加熱により低下することを意味するものと理解される。このブレーキフェーディングを回避するために、鉄道車両の最大速度は、状況に起因して最大許容速度によって制限される。その他にも、ブレーキ摩耗、ブレーキ騒音、および/またはブレーキ臭もしくはブレーキ煙などの制動の不所望な随伴現象は、これによって最小に抑えられるべきである。
【0005】
従来技術
上位概念に準じた国際公開第2018/054736号は、特に、摩擦ブレーキシステムを備えた鉄道車両のとりわけ許容走行速度に影響を与えるための方法を開示しており、ここでは制動作用が摩擦要素の相互の押し付けによって生成され、ここで、少なくとも、車両の速度、制動圧、および外気温度に関する情報ならびに絶対時間に関する情報から少なくとも複数の摩擦要素のうちの1つの摩擦要素の温度が予測され、ここで、とりわけ計算された許容走行プロファイルに関する許容走行速度に影響を与えるために、摩擦要素を通る熱伝導ならびにこの摩擦要素の速度依存性の冷却も考慮される。
【0006】
摩擦要素を通る熱伝導は、計算の枠内で極めて正確に考慮することができる。なぜなら、それは、ここでは、僅かな散乱幅を有する材料依存性の影響因子だからである。しかしながら、このことは、摩擦要素の速度依存性の冷却の影響因子には当てはまらない。というのも、これに関する影響、例えば空気流における障害または変動する空気湿度は、極めて高い散乱幅を生じさせ、これは予測結果を改竄する可能性があるからである。
【0007】
本発明が基礎とする課題は、鉄道車両の速度を過度に強く低減させる必要性なしで、制動時の不所望な随伴現象が高い信頼性のもとで低減されるように、上述したタイプの方法および装置を発展形成することにある。同様に、そのような装置を備えた鉄道車両も提供されるべきである。
【0008】
この課題は本発明により、独立請求項1、9、17または18の特徴によって解決される。
【0009】
発明の開示
本発明の考察の背景は、鉄道車両の現下の走行動作状況における動作中もしくは走行中に、現下の走行動作状況を特徴付ける少なくとも1つのパラメータを求め、現下の走行動作状況に基づいて、制動過程を仮想的に実施する、例えばシミュレートすることである。
【0010】
それゆえ、初期状況は、鉄道車両が、例えば所定の速度および積載量で、かつ例えば平坦であるか、または所定の傾斜もしくは所定の勾配を有する1つの区間に沿って所定の周囲条件および区間条件下で走行する、現下の走行動作状況を形成する。次いで、例えば、速度、積載量、区間の傾斜もしくは勾配がパラメータとして捕捉される。
【0011】
不所望な随伴現象は、現下の走行動作状況に関してのみ低減させるのではなく、現下の走行動作状況において定義された制動が実行される場合には、事前に定義された枠内に留まるべきものでもある。
【0012】
例えば、所定の周囲温度下で行われ、したがって、同様に摩擦ブレーキ要素にも作用する現下の走行動作状況により、かつ仮想的に実施され、したがって、例えばシミュレートされた制動過程により、少なくとも1つの摩擦ブレーキ要素においてまたは少なくとも1つの摩擦ブレーキ要素内で、モデルを用いて計算もしくは推定される予測的(見込み)温度Tpredが生じるであろう。摩擦要素の予測的温度Tpredは、現下の温度Tactと、仮想的制動過程から結果的に生じる温度勾配ΔTとからの合計である:したがって、現下の走行動作状況および仮想的に実施された制動過程に基づいて計算もしくは推定される予測的温度Tpredは、摩擦要素におけるブレーキ摩耗の形態の所定の程度の不所望な第1の随伴現象、および/またはブレーキ騒音の形態の所定の程度の不所望な第2の随伴現象、および/またはブレーキ煙もしくはブレーキ臭の形態の所定の程度の不所望な第3の随伴現象を引き起こすであろう。
【0013】
本発明が基礎とする認識は、不所望な随伴現象が、それぞれ、走行動作中に上回ってはならない特定の最大許容ブレーキ要素温度に対応しており、したがって、それぞれの随伴現象の程度は、所望の限界値未満に留められることである。
【0014】
しかしながら、実際の条件下では、ブレーキ要素の温度が常に最大許容ブレーキ要素温度未満にあることを保証するだけでは不十分である。というのも、それぞれ最大許容ブレーキ要素温度で常に制動してしまうのならば、例えば非常制動の際のブレーキ要素の不可避で不確定な過熱結果となってしまうからである。
【0015】
この問題を取り除くために、本発明によれば、摩擦要素の予測的摩擦要素温度Tpredに、摩擦要素の予測的摩擦要素温度Tpredの際に生じる各随伴現象の程度が、予め定義された最大許容程度自体と同程度である、第1、第2、および/または第3の随伴現象に関する鉄道車両の特定の最大許容走行速度vmaxAllowedが割り当てられることが提案される。鉄道車両の現下の走行速度vactは、鉄道車両の特定の最大許容走行速度vmaxAllowedに制限される。
【0016】
換言すれば、つまり本発明による解決手段では、鉄道車両の走行速度は、制動時に、環境または構成部品に負担を与える複数の随伴現象のうちの少なくとも1つの随伴現象、特にブレーキパッド摩耗、ブレーキ騒音、およびブレーキ臭からブレーキ煙までの程度が抑えられるように温度に依存して制限される。
【0017】
摩擦要素の予測的温度Tpredは、上記の随伴現象のそれぞれの程度に決定的な影響を与えるので、摩擦要素の予測的温度Tpredは、随伴現象の程度を表すことから出発する。ここでは、もちろん、摩擦要素の予測的温度Tpredと、鉄道車両の走行速度vとの間にも関係が存在している。なぜなら、比較的速い走行速度vからの制動は、比較的高い予測的温度Tpredを招くからである。
【0018】
それゆえ、モデル内では、予測的温度Tpredと、鉄道車両の走行速度vとの間の相関関係または割り当てが確立される。ここでは、このモデルにより、それぞれの随伴現象に関連しかつ現下の走行動作状況だけでなく、付加的に仮想的に実施される制動も考慮する特定の最大許容走行速度vmaxAllowedが決定される。このことは、例えば、動力車運転者または自動列車運転システム(ATO)が、最大でも特定の最大許容走行速度vmaxAllowedと同程度の走行速度vを伴う走行動作状況において、制動過程を開始したような場合であっても、それぞれの随伴現象は依然として許容範囲内にあるであろうことを意味する。
【0019】
他方では、鉄道車両の走行速度vに影響を与える場合、現下の走行動作状況において、例えば、該当する随伴現象の最大程度に、例えば、ブレーキ摩耗および/またはブレーキ煙および/またはブレーキ臭および/またはブレーキ騒音に対する上方の許容限界値にまだ達していない場合、該当する随伴現象の最大程度に達するまで、現下の走行動作状況でまだ存在する速度ポテンシャルが利用されるべきである。したがって、特定の最大許容走行速度vmaxAllowedは、最適な速度も表すことができる。
【0020】
本発明は、第1の態様によれば、少なくとも1つの摩擦要素を含む摩擦ブレーキシステムを備えた鉄道車両の走行速度に影響を与えるための方法に関し、ここで、影響を与えることは、鉄道車両の現下の走行動作状況において摩擦ブレーキシステムにより仮想的に実施された制動過程の際に生じるであろう、第1の随伴現象、第2の随伴現象、または第3の随伴現象の少なくとも1つの程度に依存して行われ、
ここで、本方法では、
a)鉄道車両の現下の走行動作状況を特徴付ける少なくとも1つのパラメータが捕捉され、
b)第1の随伴現象として、現下の走行動作状況において仮想的に実施された制動過程によって引き起こされる少なくとも1つの摩擦要素のブレーキ摩耗が用いられ、かつ/または第2の随伴現象として、現下の走行動作状況において仮想的に実施された制動過程によって引き起こされる騒音が用いられ、かつ/または第3の随伴現象として、現下の走行動作状況において仮想的に実施された制動過程によって引き起こされるブレーキ臭もしくはブレーキ煙が用いられ、
モデル、好適にはシミュレーションモデルを用いることにより、
c)鉄道車両の現下の走行動作状況において制動過程が仮想的に実施される場合に、少なくとも1つの捕捉されたパラメータと、現下の走行動作状況において仮想的に実施された制動過程とに基づいて、摩擦要素内または摩擦要素において生じるであろう、摩擦要素の予測的摩擦要素温度(Tpred)が計算もしくは推定され、
d)割り当て(Γ)内で、摩擦要素の予測的摩擦要素温度(Tpred)に、鉄道車両の第1の随伴現象および/または第2の随伴現象および/または第3の随伴現象に関する特定の最大許容走行速度(vmaxAllowed)が割り当てられ、ここで、摩擦要素の予測的摩擦要素温度(Tpred)の際に生じる第1の随伴現象の程度が第1の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、かつ/または摩擦要素の予測的摩擦要素温度(Tpred)の際に生じる第2の随伴現象の程度は、第2の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、かつ/または摩擦要素の予測的摩擦要素温度(Tpred)の際に生じる第3の随伴現象の程度は、摩擦要素の予測的摩擦要素温度(Tpred)の第3の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、
e)鉄道車両の走行速度(v)が、鉄道車両の特定の最大許容走行速度(vmaxAllowed)に制限もしくは設定される。
【0021】
本発明は、第2の態様によれば、少なくとも1つの摩擦要素を含む摩擦ブレーキシステムを備えた鉄道車両の走行速度に影響を与えるための装置に関し、ここで、本装置は、影響を与えることが、鉄道車両の現下の走行動作状況において摩擦ブレーキシステムにより仮想的に実施された制動過程の際に生じるであろう、第1の随伴現象、第2の随伴現象、または第3の随伴現象の少なくとも1つの程度に依存して行われるように構成されており、ここで本装置は、少なくとも以下の要素:
a)鉄道車両に接続されかつ鉄道車両の現下の走行動作状況を特徴付ける少なくとも1つのパラメータを捕捉するように構成された捕捉手段と、
b)モデル、特にシミュレーションモデルが実装されている計算ユニットと、
c)鉄道車両の走行速度に影響を与えるように構成された制御装置と、
を含み、ここで、
d)当該モデルは、ステップおよび計算を次のように実行する、すなわち、
d1)第1の随伴現象として、現下の走行動作状況において仮想的に実施された制動過程で引き起こされる少なくとも1つの摩擦要素のブレーキ摩耗が用いられ、かつ/または第2の随伴現象として、現下の走行動作状況において仮想的に実施された制動過程によって引き起こされるブレーキ騒音が用いられ、かつ/または第3の随伴現象として、現下の走行動作状況において仮想的に実施された制動過程によって引き起こされるブレーキ煙もしくはブレーキ臭が用いられ、
d2)少なくとも1つのパラメータと、現下の走行動作状況において仮想的に実施された制動過程とに基づいて、摩擦要素の予測的摩擦要素温度(Tpred)が計算もしくは推定され、
d3)割り当て(Γ)内で、摩擦要素の予測的摩擦要素温度(Tpred)に、鉄道車両の第1の随伴現象および/または第2の随伴現象および/または第3の随伴現象に関する特定の最大許容走行速度(vmaxAllowed)が割り当てられ、ここで、摩擦要素の予測的摩擦要素温度(Tpred)の際に生じる第1の随伴現象の程度は、第1の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、かつ/または摩擦要素の予測的摩擦要素温度(Tpred)の際に生じる第2の随伴現象の程度は、第2の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、かつ/または摩擦要素の予測的摩擦要素温度(Tpred)の際に生じる第3の随伴現象の程度は、摩擦要素の予測的摩擦要素温度(Tpred)の第3の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、ここで、
e)計算ユニットは、自身がモデルのステップおよび計算に基づいて制御装置のための出力信号を生成するように構成されており、次いで、この制御装置は、出力信号に基づいて鉄道車両の走行速度を特定の最大許容走行速度(vmaxAllowed)に制限もしくは設定する。
【0022】
したがって、特定の最大許容走行速度vmaxAllowedを決定するために、第1、第2、および第3の随伴現象のグループから1つの随伴現象だけを選択もしくは用いることができる、または2つの随伴現象もしくは3つの随伴現象全てを選択もしくは用いることができる。複数の随伴現象が用いられる場合、例えば、特定の最大許容比走行速度vmaxAllowedは、絶対最小値を有する鉄道車両の許容最大走行速度として選択される。次いで、最大許容走行速度vmaxAllowedは、特定のものでもある。なぜなら、この最大許容走行速度vmaxAllowedは、所定の随伴現象に関係し、このケースでは、まさに特定の最大許容走行速度vmaxAllowedに対する最小値を有する随伴現象に関係するからである。代替的に、例えば区分的には、3つの特定の最大許容走行速度vmaxAllowedのうちのそれぞれ1つを鉄道車両の最大走行速度として用いることができよう。鉄道車両の最大走行速度を決定する際の少なくとも2つの随伴現象についての特定の最大許容走行速度vmaxAllowedの重み付けも考えられる。
【0023】
それゆえ、鉄道車両の走行速度vが鉄道車両の特定の最大許容走行速度vmaxAllowedに制限される場合、この特定の最大許容走行速度vmaxAllowedは、第1の随伴現象および/または第2の随伴現象および/または第3の随伴現象に関する鉄道車両の許容最高速度を表す。ここでは、もちろん鉄道車両は、特定の最大許容走行速度vmaxAllowedに関して僅かな走行速度で動作することが可能である。
【0024】
鉄道車両の走行速度vが、特定の最大許容比走行速度vmaxAllowedに設定されると、この特定の最大許容走行速度vmaxAllowedは、付加的に、鉄道車両の最適な速度も表す。なぜなら、この場合、上述したポテンシャルが完全に利用されるからである。
【0025】
鉄道車両とは、ここでは、駆動機械、特に動力車を有するあらゆるタイプの軌道車両、あるいは駆動機械なしの鉄道車両編成における客車などの軌道車両ならびに複数の鉄道車両からなる鉄道車両編成も意味するものと理解されたい。
【0026】
モデルとは、記憶可能なプログラムによって計算ユニットに実装可能でかつ当該計算ユニットを用いてパラメータに基づき上述した変数を計算することができるあらゆる数学的モデルを意味するものと理解されたい。
【0027】
パラメータは、特に温度変数でなくてよい。したがって、換言すれば、モデルの目的は、少なくとも1つのパラメータから予測的摩擦要素温度Tpredを推定もしくは計算することにあるが、ここでは、この予測的摩擦要素温度Tpredは、好適には、温度センサによって測定されるものではない。したがって、好適には、その取り付け、配線、較正、および実装のためのコストが比較的高い温度センサを回避することができる。
【0028】
しかしながら他方では、現下の走行動作状況からのみ生じる予測的摩擦要素温度Tpredの割合を、摩擦要素に直接または間接的に配置された少なくとも1つの温度センサを用いて測定することも可能である。
【0029】
従属請求項には、独立請求項に記載された本発明の好適な発展形態が示されている。
【0030】
本方法の一発展形態では、モデルにおいて、摩擦要素の現下の摩擦要素温度Tactの第1の値に、鉄道車両の走行速度vactの第2の値が割り当てられ、これにより第1の値Tactおよび第2の値vactの許容領域(Tact,vact)が定義され、摩擦要素の予測的摩擦要素温度の際に生じる第1の随伴現象の程度は、最大でも第1の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、かつ/または摩擦要素の予測的摩擦要素温度の際に生じる第2の随伴現象の程度は、最大でも第2の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、かつ/または摩擦要素の予測的摩擦要素温度の際に生じる第3の随伴現象の程度は、最大でも第3の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであることが提案される。ここでは、許容領域(Tact,vact)は、特定の最大許容走行速度vmaxAllowedと予測的摩擦要素温度Tpredとの間の割り当てを定義する境界曲線Γによって制限される。
【0031】
換言すれば、摩擦要素の現下の温度Tactが求められる、測定される、または推定される。さらに、車両の現下の速度vactは既知である。与えられたTactおよびvactからは予測的摩擦要素温度Tpredが計算され、つまり、現下の時点で定義された制動が実行される場合の仮想的目標温度が計算されるであろう。ただし、Tpredは、Tmaxよりも大であることは決して許されないが、理想的にはTpredを僅かに下回って存在する。Tpredが実際にどの程度大きくても許されるかは、境界曲線Γから読み取ることができる。Tpredがまだ大幅にTmaxを下回って存在することが識別された場合には、この走行動特性ポテンシャルが未だに利用し尽くされておらず、つまり、vactは、まだ高めることができ、詳細にはvmaxAllowedまで高めることができると推論することができる。このvmaxAllowedは、境界曲線Γの縁部に存在する。
【0032】
さらに本方法では、仮想的制動過程は、所定の制動作用、所定の制動力によって、または所定の制動圧もしくは所定の制動トルクによって実施することができる。
【0033】
本方法では、仮想的制動過程は、標準化された制動方式を用いて実施することもでき、この場合、標準化された制動方式として、DIN EN 14478:2005-06に準拠した以下の制動方式:非常制動、強制制動、緊急制動、危険制動、常用制動のうちの少なくとも1つが用いられる。
【0034】
本方法の発展形態によれば、鉄道車両の現下の走行動作状況を特徴付けるパラメータとして、以下のパラメータ:鉄道車両の現下の速度、現下の制動力、現下の制動トルク、現下の制動圧、鉄道車両の周囲温度、鉄道車両の現下の負荷および/または積載量、鉄道車両によって走行される区間の勾配もしくは傾斜のうちの少なくとも1つを用いることができる。
【0035】
摩擦要素は、特に、摩擦ブレーキシステムのディスクブレーキのブレーキディスクおよび/またはブレーキパッドを含むことができる。
【0036】
鉄道車両の走行速度を特定の最大許容走行速度(vmaxAllowed)に制限もしくは設定することは、特に、自動列車運転システム(ATO)によって、または動力車運転者(Tf)によって実施することができる。
【0037】
一発展形態によれば、鉄道車両の摩擦ブレーキシステムが複数の摩擦ブレーキ装置を含んでいる場合、鉄道車両の走行速度に影響を与えることは、特定の最大可能もしくは許容走行速度vmaxAllowedの最小値が求められたホイールブレーキ装置に基づいて行うことができる。
【0038】
上述したように特定の最大許容走行速度(vmaxAllowed)を求めることによって走行速度に影響を与えることは、局所的な摩擦ブレーキ装置、すなわち、例えば所定のディスクブレーキに関係するものであり得る。したがって、セグメントレベル、コンシストレベル、および列車レベルを有する列車階層では、摩擦ブレーキ装置iにおいて局所的に求められた最大許容列車速度vmaxAllowed iを列車階層内で統合することができる。この統合については様々な方法が使用可能である:
-最も簡単なケースでは、(列車内の全ての摩擦ブレーキ装置にわたって求められた)絶対的に最小の特定の最大許容速度vmaxAllowed iが、鉄道車両編成全体の最大許容走行速度として用いられる。
-その他に、統計的外れ値を消去するための様々な方法が使用可能である。例えば、求められた全ての値vmaxAllowed
iを一連の上昇値で分類して最小のX%(この場合Xは予め定義されたパーセンテージである)から用いることができ、次いで、最小のX%の平均値もしくは最大値を用いることができる。
【0039】
既に上述したように、現下の走行動作状況を特徴付けるパラメータは、以下のパラメータ:鉄道車両の現下の速度、現下の制動力、現下の制動トルク、現下の制動圧、鉄道車両の周囲温度、鉄道車両の現下の負荷および/または積載量、鉄道車両によって走行される区間の勾配もしくは傾斜、定義された制動方式の場合の制動作用よりも少ない制動作用を有する常用制動または非常制動のうちの少なくとも1つであってよい。この列挙は、網羅的なものではない。さらに、鉄道車両の現下の走行動作状況を特徴付けることができるさらなるパラメータ、例えば車輪とレールとの間の摩擦係数も考えられる。
【0040】
好適には、摩擦ブレーキシステムの少なくとも1つの摩擦要素は、摩擦ブレーキシステムのディスクブレーキのブレーキディスクおよび/またはブレーキパッドを含むことができる。
【0041】
本装置の一発展形態によれば、モデルは、摩擦要素の現下の摩擦要素温度(Tact)の第1の値に、鉄道車両の走行速度(vact)の第2の値が割り当てられ、これにより第1の値(Tact)および第2の値(vact)の許容領域(Tact,vact)が定義され、摩擦要素の現下の摩擦要素温度(Tact)の際に生じる第1の随伴現象の程度は、最大でも第1の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、かつ/または摩擦要素の現下の摩擦要素温度(Tact)の際に生じる第2の随伴現象の程度は、最大でも第2の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、かつ/または摩擦要素(1)の現下の摩擦要素温度(Tact)の際に生じる第3の随伴現象の程度は、最大でも第3の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、ここで、許容領域(Tact,vact)は、特定の最大許容走行速度(vmaxAllowed)と予測的摩擦要素温度(Tpred)との間の割り当てを定義する境界曲線(Γ)によって制限されるように構成されていてよい。
【0042】
好適には、本装置では、制御装置は、自動列車運転システム(ATO)を含んでいてよい。
【0043】
また本装置によれば、モデルと共働する第1の選択手段が含まれていてもよく、該第1の選択手段により、第1の随伴現象および/または第2の随伴現象および/または第3の随伴現象が選択可能である。この選択手段は、特に、操作者が第1の随伴現象および/または第2の随伴現象および/または第3の随伴現象を選択することができる操作フィールドをさらに含むことができ、次いでこの場合、モデルは、選択された随伴現象に基づいて、上述の計算、割り当て、およびステップを実行する。
【0044】
本装置では、モデルは、仮想的制動過程が、所定の制動作用、所定の制動力によって、または所定の制動圧もしくは所定の制動トルクによって実施されるように構成されていてもよい。
【0045】
さらに、本装置では、モデルは、仮想的制動過程が定義された制動方式を用いて実施され、この場合、モデルは、定義された制動方式として、以下の制動方式:非常制動、強制制動、緊急制動、危険制動、常用制動のうちの少なくとも1つを用いるように構成されていてよい。
【0046】
また、本装置では、モデルは、鉄道車両の現下の走行動作状況を特徴付けるパラメータとして、以下のパラメータ:鉄道車両の現下の速度、現下の制動力、現下の制動トルク、現下の制動圧、鉄道車両の周囲温度、鉄道車両の現下の負荷および/または積載量、鉄道車両によって走行される区間の勾配もしくは傾斜のうちの少なくとも1つを用いるように構成されていてもよい。
【0047】
本発明は、上述した装置を備えた鉄道車両にも関する。
【0048】
以下では本発明の実施例を図面に示し、以下の明細書で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】ブレーキディスクとブレーキパッドを有するブレーキキャリパとを備えた空気圧式摩擦ブレーキ装置の例示的な実施形態を示す概略図である。
【
図2】本発明による方法を実行するための本発明による装置の例示的な実施形態を示す機能説明図である。
【
図3】好適な実施形態による本発明による方法を示すフローチャートである。
【
図4】現下の摩擦要素温度T
actと走行速度vとの間の割り当て、ならびに随伴現象「ブレーキ摩耗」についての許容領域Γが示されている線図である。
【0050】
実施例の説明
図1に概略的に示されている鉄道車両の摩擦ブレーキ装置の部分図は、空気圧式ディスクブレーキを示している。この空気圧式ディスクブレーキは、例えば鉄道車両の図示されていない車輪セット軸に支承されたブレーキディスクとして構成された第1の摩擦要素1、ならびにブレーキキャリパを含む。このブレーキキャリパは、第2の摩擦要素2を有し、該第2の摩擦要素2は、2つのブレーキパッドを含む。さらに、ブレーキキャリパは、圧縮空気接続部6を有するブレーキシリンダ4およびピストン5、ならびにロッド3を有している。ピストン5はロッド3を操作し、これによって、ロッド3上に配置されたブレーキパッド、すなわち第2の摩擦要素2は、ブレーキディスク、すなわち第1の摩擦要素1に押し付けられる。圧縮空気接続部6を介して、ピストン5は、ロッド3の操作のために、鉄道車両の図示されていない圧縮空気システムから圧縮空気を印加される。
【0051】
圧縮空気システムは、例えばコンプレッサ、ブレーキ制御機器などの摩擦ブレーキ装置を開ループ制御および閉ループ制御するためのコンポーネントを有する。
【0052】
図2に示されている、鉄道車両の走行速度に影響を与えるための装置の好適な実施形態は、計算ユニット7を有しており、この計算ユニット7には、本発明による方法に対応して計算、割り当て、およびステップが実施されるモデルが実装されている。
【0053】
本装置は、モデルの計算、割り当て、およびステップの結果に基づいて鉄道車両の走行速度vに影響を与える制御ユニット8をさらに含む。
【0054】
第1の摩擦要素1および第2の摩擦要素2の対向的相互押し付けは、鉄道車両への制動作用を引き起こす。その際、鉄道車両の運動エネルギから熱への変換が行われ、これによって、第1の摩擦要素1および第2の摩擦要素2の温度上昇が引き起こされる。第1の摩擦要素1および第2の摩擦要素2相互の解離は、鉄道車両に対する制動作用の低減もしくは解除を生じさせる。このことと、既知の熱伝達原理の作用とによって、第1の摩擦要素1内ならびに第2の摩擦要素2内の温度が低減され、すなわち、第1の摩擦要素1および第2の摩擦要素2は冷却される。記述された温度特性は、本発明による方法を用いて計算もしくは推定される。
【0055】
本装置は、走行速度vを捕捉するための走行速度センサ10、制動圧pひいては制動力FBを捕捉するための制動圧センサ11、周囲温度TUを捕捉するための周囲温度センサ12、絶対時間tを捕捉するための時間測定機器13、ならびに対応するデータ線路を介して計算ユニット7に接続されている表示ユニット9を含んでいる。走行速度センサ10、制動圧センサ11、および周囲温度センサ12は、鉄道車両の図示されていないシャーシ内に配置されている。しかしながら、走行速度vならびに制動圧pを鉄道車両のデータバスシステムから計算ユニット7内に読み取ることも考えられる。
【0056】
さらに、制動圧pを、減速と制動すべき質量とから近似的に決定することも想定可能である。この減速は、ここでは、例えば、走行速度vの微分によって計算され、制動すべき質量mは、負荷ブレーキ装置を介して決定される。
【0057】
その上さらに、走行速度vの代わりに、車輪の角速度もしくは車輪回転数を捕捉し、この角速度もしくはこの車輪回転数を用いて熱計算を実施することも考えられる。
【0058】
時間測定機器13ならびに計算ユニット7は、図示されていない制御機器内に実装されて、図示されていない客車ボックス内に配置されている。計算ユニット7は、対応するデータ線路を介して走行速度センサ10から走行速度vに関するデータを受信し、制動圧センサ11から制動圧pもしくは制動力FBに関するデータを受信し、周囲温度センサ12から周囲温度TUに関するデータを受信し、ならびに時間測定機器13から絶対時間tに関するデータ(タイムスタンプ)を受信し、本発明による方法に応じて計算演算を実行する。さらに、計算ユニット7内への設定された鉄道車両の構成データも、計算演算に含めることができる。ここでは、例えば、鉄道車両の現下の走行動作状況は、走行速度v、TU、周囲温度TU、絶対時間t、および構成データを用いて特徴付けられる。
【0059】
図3によれば、実際の実験および/または技術的な経験に基づいて本発明による方法を実施するために、準備ステップ100において、最初に、1つまたは複数の随伴現象個別の境界曲線Γが作成されて提供され、この境界曲線Γは、全ての値対T_
act,v_
actの領域を曲線経過の下方に制限し、これについては、T_
act,v_
actからの定義された制動の場合であったとしても、摩擦要素温度は、新たな温度T_
pred、T_
pred=T_
act +ΔTが依然として最大許容摩擦要素温度未満のままであるような程度にしか上昇せず、これは、これに結び付く随伴現象(例えばブレーキ摩耗など)が発生しないか、または僅かに許容できる程度にしか発生し得ないことを意味する。境界曲線Γの形状は、ここでは、随伴現象のタイプと、定義された仮想的制動方式とに依存する。
【0060】
最初のステップ200では、鉄道車両の現下の走行動作状況FBSが用いられ、この走行動作状況FBSは、現下で算出可能であるか、または呼び出し可能に格納されている。現下の走行動作状況は、本実施例では、以下の技術的パラメータ:制動圧pもしくは制動力、走行速度v、摩擦要素、好適にはブレーキディスクの表面温度T_act、周囲温度TU、時間(スタンプ)t、および種々の構成データによって特徴付けられる。
【0061】
続くステップ300では、どの障害的な随伴現象、ブレーキ摩耗、ブレーキ騒音、ブレーキ臭もしくはブレーキ煙を最小化すべきかが確定され、これによって、仮想的制動方式および所属する随伴現象個別の境界曲線Γの選択も結び付けられる。この境界曲線では、予測的温度Tpredの計算は、現下の速度vactに依存して既に暗黙的に値対として含まれている。
【0062】
任意選択的な平行ステップ400では、境界曲線Γが設定されていないかまたは完全には設定されていない場合に、仮想的に実施された制動過程に基づくこれらの入力情報に基づいて、鉄道車両の現下の走行動作状況において制動過程が仮想的に実施される場合に、摩擦要素内または摩擦要素において生じるであろう、摩擦要素の予測的摩擦要素温度Tpredが計算もしくは推定もしくは測定される。ここからは、割り当てられた速度に関係する値対Tpred,vactも結果的に生じる。仮想的に実施される制動過程は、例えばシミュレーションモデルに基づいて行うことができる。
【0063】
続くステップ500では、値対Tact,vactがまだ境界曲線Γの曲線経過の下方に存在するかどうか、もしくはステップ400において代替的に計算された温度Tpredが、最大許容温度Tmaxよりも小さいかどうかが求められる。そうでない場合は、仮想的制動の際に、予測的温度Tpredは最大許容温度を上回るであろう。それゆえ、この場合、警告もしくはアラームが出力され、これにより、手動もしくは自動で、障害的な随伴現象の予測される程度を、速度低減を用いて低減することができる。
【0064】
ステップ600では、仮想的制動過程によって得られた、摩擦要素の予測的摩擦要素温度Tpredに関する認識の結果として、鉄道車両の割り当てられた随伴現象に関する特定の最大許容走行速度vmaxAllowedが割り当てΓ(Tact)において割り当てられ、この割り当てでは、摩擦要素の予測的摩擦要素温度Tpredの際に生じる随伴現象の程度は、摩擦要素の予測的摩擦要素温度Tpredの当該随伴現象の最大許容程度と同じ大きさである。このステップは、ステップ500に対する拡張(最適化)とみなすことができる。ステップ500では、運転者または自動走行システムに、鉄道車両が過度に高速にもしくは過度に低速に走行していることのみ、あるいは過度に高速にもしくは過度に低速に走行しているかどうかのみが通知され、それに対して、ステップ600では、具体的な最大許容走行速度が通知される。
【0065】
この最大許容走行速度vmaxAllowedは、運転者に例えばステップ700における最適速度への示唆として表示可能であり、かつ/または制御ユニットの平行ステップ800において制御信号として設定可能である。
【0066】
図4には、本発明による方法が、随伴現象「ブレーキ摩耗」の場合に対する例示として示されている。境界曲線Γは、この境界曲線Γを下回る、つまり斜線領域内の各値対T
act,v
actについて、予め定義された条件下で、かつ予め定義された仮想的シナリオもしくは実際のシナリオを使用して、走行動作のいずれの時点でも、ブレーキディスク温度の値が、摩耗最適化にとっての臨界温度値T
maxよりも大きくならないように選択される。
【0067】
境界曲線Γの定義は、制動ユニットの材料組成および寸法設定などの機器固有の要因に依存し、予め定義されたブレーキシナリオの下でも温度安全性などの状況関連の要件に依存する。
【0068】
この実施例では、Tact,vactに対する最適化された値対は、境界曲線Γの縁部に存在する。つまり、値対Tact,vactが境界曲線Γの下方に存在すべきならば、温度を維持しながら、速度vを値vmaxAllowedに高めることができ、それによって、値対Tact,vmaxAllowedが境界曲線Γの縁部に存在する。それゆえ、vmaxAllowedは、最大許容速度として使用されるであろう。
【0069】
予測的摩擦要素温度Tpredは、この線図を用いて幾何学的に求めることができる。値対Tact,vactによって記述される実際の現下の状態は、線図における座標点である。Tpredは、これに基づいて以下のように求めることができる:
1.座標点を通り、水平な直線、つまりx軸に対して平行な直線を形成する。
2.平行な直線は、交点において曲線Γと交差する。座標点の位置に依存して、交点は、多くの場合、座標点の右側に存在する。交点が座標点と同一であるならば、交点は座標点の左側に存在している。
3.温度ストロークΔTは、いずれにせよ、交点から鉛直方向T=Tmaxまでの距離に対応する。
4.Tpred=Tact+ΔT。
【0070】
ただし、速度vの最適化は、全ての場合において所望されるわけではなく、または可能なわけではないことに留意されたい。というのも、一方では、随伴現象の低減は、最適化された速度vよりも高い優先度を有することであってよいからである。例えば、ブレーキパッドの摩耗を最小化するためには、低減された速度vを用いて走行することがより重要であってよい。他方では、そのような速度上昇が許されない、動作に起因するフレーム条件が存在し、例えば、住宅地を通る低減された速度設定での走行、停留場への低減された速度での進入などがある。
【0071】
しかしながら、速度最適化が許可されかつ有意であることが基本的条件によって許容されるべきならば、この方法も、走行計画における遅延を適切な区間上で補償するために使用することができる。
【0072】
さらに、例示的に上述したブレーキ摩耗を最適化するための方法は、相応に、残りの前記した各随伴現象について随伴現象固有の境界曲線Γを使用して、つまり「ブレーキ騒音」および/または「ブレーキ臭」から「ブレーキ煙」まで同様に使用することができることに留意されたい。その上さらに、これらの複数の方法を同時に投影することができ、次いで、状況固有に投影された方法のうちの1つを選択および使用することもできよう。
【符号の説明】
【0073】
1 第1の摩擦要素
2 第2の摩擦要素
3 ロッド
4 ブレーキシリンダ
5 ピストン
6 圧縮空気接続部
7 計算ユニット
8 制御ユニット
9 表示ユニット
10 走行速度センサ
11 制動圧センサ
12 周囲温度センサ
13 時間測定機器
v 走行速度
vact 現下の走行速度
vmaxAllowed 特定の最大許容走行速度
TU 周囲温度
p 制動圧
Tact 現下の摩擦要素温度
Tpred 予測的摩擦要素温度
Γ 境界曲線
【手続補正書】
【提出日】2024-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの摩擦要素(1,2)を含む摩擦ブレーキシステムを備えた鉄道車両の走行速度に影響を与えるための方法において、
前記影響を与えることは、前記鉄道車両の現下の走行動作状況において前記摩擦ブレーキシステムにより仮想的に実施された制動過程の実際の制動に対して付加的に生じるであろう、第1の不所望な随伴現象および/または第2の不所望な随伴現象および/または第3の不所望な随伴現象の少なくとも1つの程度に依存して行われ、
前記方法では、
a)前記鉄道車両の現下の走行動作状況を特徴付ける少なくとも1つのパラメータが捕捉され、
b)前記第1の随伴現象として、前記現下の走行動作状況において前記仮想的に実施された制動過程によって引き起こされる前記少なくとも1つの摩擦要素(1,2)のブレーキ摩耗が用いられ、かつ/または前記第2の随伴現象として、前記現下の走行動作状況において前記仮想的に実施された制動過程によって引き起こされるブレーキ騒音が用いられ、かつ/または前記第3の随伴現象として、前記現下の走行動作状況において前記仮想的に実施された制動過程によって引き起こされるブレーキ臭もしくはブレーキ煙が用いられ、
モデルを用いることにより、
c)前記鉄道車両の前記現下の走行動作状況において前記制動過程が仮想的に実施される場合に、前記少なくとも1つの捕捉されたパラメータと、前記現下の走行動作状況において仮想的に実施された制動過程とに基づいて、前記摩擦要素(1,2)内または前記摩擦要素(1,2)において生じるであろう、前記摩擦要素(1,2)の予測的摩擦要素温度(T
pred)が計算もしくは推定され、
d)割り当て(Γ)内で、前記摩擦要素(1,2)の前記予測的摩擦要素温度(T
pred)に、前記鉄道車両の前記随伴現象のうちの少なくとも1つに関する特定の最大許容走行速度(v
maxAllowed)が割り当てられ、ここで、前記摩擦要素(1,2)の前記予測的摩擦要素温度(T
pred)の際に生じる前記各随伴現象の程度は、前記摩擦要素の前記予測的摩擦要素温度(T
pred)の当該随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、
e)前記鉄道車両の前記走行速度(v)が、前記鉄道車両の特定の最大許容走行速度(v
maxAllowed)に設定もしくは制限され、またはこれに関する信号が出力されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記モデルにおいて、前記摩擦要素(1)の現下の摩擦要素温度(T
act)の第1の値に、前記鉄道車両の現下の走行速度(v
act)の第2の値が割り当てられ、これにより第1の値(T
act)および第2の値(v
act)の許容領域(T
act,v
act)が定義され、前記摩擦要素(1,2)の現下の摩擦要素温度(T
act)の際に生じる前記第1の随伴現象の程度は、最大でも前記第1の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、かつ/または前記摩擦要素(1,2)の現下の摩擦要素温度(T
act)の際に生じる前記第2の随伴現象の程度は、最大でも前記第2の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、かつ/または前記摩擦要素(1,2)の現下の摩擦要素温度(T
act)の際に生じる前記第3の随伴現象の程度は、最大でも前記第3の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、前記許容領域(T
act,v
act)は、前記特定の最大許容走行速度(v
maxAllowed)と前記予測的摩擦要素温度(T
pred)との間の割り当てを定義する境界曲線(Γ)によって制限される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記仮想的制動過程は、所定の制動作用、所定の制動力によって、または所定の制動圧もしくは所定の制動トルクによって実施される、請求項
1記載の方法。
【請求項4】
前記仮想的制動過程は、定義された制動方式を用いて実施される、請求項
1記載の方法。
【請求項5】
前記定義された制動方式として、以下の標準化された制動方式:非常制動、強制制動、緊急制動、危険制動、常用制動のうちの少なくとも1つが用いられる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記鉄道車両の前記現下の走行動作状況を特徴付けるパラメータとして、以下のパラメータ:前記鉄道車両の現下の速度、現下の制動力、現下の制動トルク、現下の制動圧、前記鉄道車両の周囲温度、前記鉄道車両の現下の負荷および/または積載量、前記鉄道車両によって走行される区間の勾配もしくは傾斜のうちの少なくとも1つが用いられる、請求項
1記載の方法。
【請求項7】
前記摩擦要素(1,2)は、前記摩擦ブレーキシステムのディスクブレーキのブレーキディスクおよび/またはブレーキパッドを含む、請求項
1記載の方法。
【請求項8】
前記鉄道車両の走行速度を特定の最大許容もしくは最適走行速度(v
maxAllowed)に制限もしくは設定することは、自動列車運転システム(ATO)によって実施される、請求項
1記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの摩擦要素(1,2)を含む摩擦ブレーキシステムを備えた鉄道車両の走行速度に影響を与えるための装置において、
前記影響を与えることは、前記鉄道車両の現下の走行動作状況において前記摩擦ブレーキシステムにより仮想的に実施された制動過程の際に生じるであろう、少なくとも1つの随伴現象の少なくとも1つの程度に依存して行われ、
この目的のために、前記装置は、少なくとも以下の要素:
a)前記鉄道車両に接続されかつ前記鉄道車両の前記現下の走行動作状況を特徴付ける少なくとも1つのパラメータを捕捉するように構成された捕捉手段(10,11,12,13)と、
b)モデルが実装されている計算ユニット(7)と、
c)前記鉄道車両の走行速度に影響を与えるように構成された制御装置と、
を含み、ここで、
d)前記モデルは、ステップおよび計算を次のように実行し、すなわち、
d1)第1の随伴現象として、前記現下の走行動作状況において前記仮想的に実施された制動過程で引き起こされる前記少なくとも1つの摩擦要素(1,2)のブレーキ摩耗が用いられ、かつ/または第2の随伴現象として、前記現下の走行動作状況において前記仮想的に実施された制動過程によって引き起こされるブレーキ騒音が用いられ、かつ/または第3の随伴現象として、前記現下の走行動作状況において前記仮想的に実施された制動過程によって引き起こされるブレーキ臭もしくはブレーキ煙が用いられ、
d2)前記少なくとも1つのパラメータと、前記現下の走行動作状況において仮想的に実行された制動過程とに基づいて、前記摩擦要素(1,2)の予測的摩擦要素温度(T
pred)が計算もしくは推定され、
d3)割り当て(Γ)内で、前記摩擦要素の前記予測的摩擦要素温度(T
pred)に、前記鉄道車両の前記随伴現象のうちの少なくとも1つに関する特定の最大許容走行速度(v
maxAllowed)が割り当てられ、ここで、前記摩擦要素(1,2)の現下の摩擦要素温度(T
act)の際に生じる前記各随伴現象の程度は、前記摩擦要素(1,2)の前記予測的摩擦要素温度(T
pred)の前記随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、
e)前記計算ユニットは、自身が前記モデルのステップおよび計算に基づいて前記制御装置のための出力信号を生成するように構成されており、次いで、前記制御装置は、前記出力信号に基づいて前記鉄道車両の走行速度を特定の最大許容走行速度(v
maxAllowed)に制限もしくは設定し、またはこれに関する信号を出力することを特徴とする、装置。
【請求項10】
前記モデルは、前記摩擦要素(1,2)の前記現下の摩擦要素温度(T
act)の第1の値に、前記鉄道車両の走行速度(v
act)の第2の値が割り当てられ、これにより第1の値(T
act)および第2の値(v
act)の許容領域(T
act,v
act)が定義され、前記摩擦要素(1,2)の前記現下の摩擦要素温度(T
act)の際に生じる前記第1の随伴現象の程度は、最大でも前記第1の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、かつ/または前記摩擦要素(1,2)の前記現下の摩擦要素温度(T
act)の際に生じる前記第2の随伴現象の程度は、最大でも前記第2の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、かつ/または前記摩擦要素(1,2)の前記現下の摩擦要素温度(T
act)の際に生じる前記第3の随伴現象の程度は、最大でも前記第3の随伴現象の最大許容程度と同じ大きさであり、前記許容領域(T
act,v
act)は、前記特定の最大許容走行速度(v
maxAllowed)と前記予測的摩擦要素温度(T
pred)との間の割り当てを定義する境界曲線(Γ)によって制限されるように構成されている、請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記制御装置は、自動列車運転システム(ATO)に含まれている、請求項
9記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、前記モデルと共働する第1の選択手段を含み、該第1の選択手段により、前記第1の随伴現象および/または前記第2の随伴現象および/または前記第3の随伴現象が選択可能である、請求項
9記載の装置。
【請求項13】
前記モデルは、前記仮想的制動過程が、所定の制動作用、所定の制動力によって、または所定の制動圧もしくは所定の制動トルクによって実施されるように構成されている、請求項
9記載の装置。
【請求項14】
前記モデルは、前記仮想的制動過程が定義された制動方式を用いて実施されるように構成されている、請求項
9記載の装置。
【請求項15】
前記モデルは、定義された制動方式として、以下の制動方式:非常制動、強制制動、緊急制動、危険制動、常用制動のうちの少なくとも1つを用いるように構成されている、請求項14記載の装置。
【請求項16】
前記モデルは、前記鉄道車両の前記現下の走行動作状況を特徴付けるパラメータとして、以下のパラメータ:前記鉄道車両の現下の速度、現下の制動力、現下の制動トルク、現下の制動圧、前記鉄道車両の周囲温度、前記鉄道車両の現下の負荷および/または積載量、前記鉄道車両によって走行される区間の勾配もしくは傾斜のうちの少なくとも1つを用いるように構成されている、請求項
9記載の装置。
【請求項17】
鉄道車両であって、請求項9から16までのいずれか1項記載の装置を備えている、鉄道車両。
【請求項18】
コンピュータプログラムであって、請求項9から16までのいずれか1項記載の装置の計算ユニット(7)を用いて請求項1から8までのいずれか1項記載の方法を実施するためのプログラムコード手段を含んでいる、コンピュータプログラム。
【国際調査報告】