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▶ レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロードの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】溶融装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/235 20060101AFI20241121BHJP
   C03B 5/027 20060101ALI20241121BHJP
   F27B 17/00 20060101ALI20241121BHJP
   F23D 14/48 20060101ALI20241121BHJP
   F23D 14/60 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C03B5/235
C03B5/027
F27B17/00 A
F23D14/48 B
F23D14/60 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532986
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-02
(86)【国際出願番号】 CN2022137993
(87)【国際公開番号】W WO2023124905
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111647596.0
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,タオ
(72)【発明者】
【氏名】ツィアヴァ,レミ
【テーマコード(参考)】
3K017
4G014
【Fターム(参考)】
3K017BF03
3K017CE06
3K017CF03
3K017DB00
4G014AD01
4G014AD04
4G014AF00
(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、少なくとも底壁(120)及び側壁(130)で囲まれた溶融空間であって、溶融空間内で材料を溶融するために使用される溶融空間を含む、溶融装置(100)に関する。溶融装置は、材料を加熱するための溶融空間内に配置された、少なくとも1つの液中バーナ(F)及び少なくとも1つの電気ヒータ(E)を更に含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部で材料を溶融できる溶融空間であって、少なくとも底壁(120)及び側壁(130)で囲まれた前記溶融空間を含む、溶融装置(100)であって、前記溶融装置は、材料を加熱するために前記溶融空間内に配置された少なくとも1つの電気ヒータ(E)及び少なくとも1つの液中バーナ(F)を更に含むことを特徴とする、溶融装置(100)。
【請求項2】
前記液中バーナ(F)及び前記電気ヒータ(E)は、前記溶融空間内の高温点(K)が融液流方向における前記液中バーナ(F)の下流側に位置するように構成され、前記融液流方向は、材料融液が前記溶融空間内を流れ、前記溶融空間から放出される方向であることを特徴とする、請求項1に記載の溶融装置(100)。
【請求項3】
材料融液が前記溶融空間内を流れ、前記溶融空間から放出される融液流方向において、前記液中バーナ(F)は、前記電気ヒータ(E)の上流側に配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の溶融装置(100)。
【請求項4】
前記液中バーナ(F)及び前記電気ヒータ(E)は、材料を加熱して溶融するために使用される前記エネルギーの50%以上、好ましくは70%~80%が前記電気ヒータによってもたらされ、50%未満、好ましくは20%未満が前記液中バーナによってもたらされるように構成されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の溶融装置(100)。
【請求項5】
前記溶融装置は、材料融液の表面(S)の上方に配置されたバーナ(R)を更に含み、前記バーナは、前記液中バーナ(F)及び前記電気ヒータ(E)によって供給されるエネルギー以外の、材料を加熱して溶融するために使用される前記エネルギーの一部を供給するように構成され、前記部分は例えば10%であることを特徴とする、請求項4に記載の溶融装置(100)。
【請求項6】
前記液中バーナ(F)は、前記液中バーナ(F)に供給される燃料及び酸化剤が、連続的に供給される第1の部分と間欠的に供給される第2の部分とに分割されるように構成され、前記第1の部分の流量は、前記第2の部分の流量未満であり、好ましくは、前記第1の部分と前記第2の部分との流量比は調整可能であり、並びに/又は前記第2の部分の供給頻度及び/若しくは供給継続時間は調整可能であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の溶融装置(100)。
【請求項7】
前記液中バーナ(F)は、燃料として水素を使用することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の溶融装置(100)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの液中バーナ(F)は、前記底壁(120)から材料融液中に突出する複数の液中バーナ(F1、F2、F3)を含み、前記複数の液中バーナが前記底壁(120)から突出する高さは、前記融液流方向に順に高くなることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の溶融装置(100)。
【請求項9】
前記電気ヒータ(E)の上流側(E)に、前記底壁(120)は、材料融液中に突出する複数の突出部(C1、C2、C3)を含み、前記複数の突出部の高さは、前記融液流方向に順に高くなることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の溶融装置(100)。
【請求項10】
前記液中バーナ(F)は、前記各突出部の上端から延在することを特徴とする、請求項9に記載の溶融装置(100)。
【請求項11】
前記液中バーナ(F)を冷却するための冷却媒体ノズル又は配管(L)は、前記突出部(C1、C2、C3)内に収容されることを特徴とする、請求項10に記載の溶融装置(100)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの液中バーナ(F)は、冷却システム並びに/又は燃料及び酸化剤を供給するためのシステムを共有する、2つ以上の液中バーナを含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の溶融装置(100)。
【請求項13】
前記材料融液は、溶融ガラス、溶融金属、溶融樹脂、又は溶融状態にある固形廃棄物であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の溶融装置(100)。
【請求項14】
前記液中バーナ(F)は、外側で燃料と酸化剤とが混合するようにそれぞれ前記燃料及び前記酸化剤を前記液中バーナ(F)の外側に放出するように構成された、燃料通路(10)及び酸化剤通路(20)を含むことを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の溶融装置(100)。
【請求項15】
前記燃料通路(10)及び前記酸化剤通路(20)のうちの少なくとも一方は、前記放出された燃料及び/又は酸化剤が旋回流を形成するように構成されることを特徴とする、請求項14に記載の溶融装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料溶融の分野に関し、特に、ガラス及び金属などの材料を溶融する溶融装置、例えば溶融炉又はキルンなどに関する。
【背景技術】
【0002】
材料を溶融する従来の方法は、バーナを用いて溶融装置(例えば溶融炉)内で被加熱材料を加熱して溶融することである。バーナは、燃焼の化学反応によって酸化剤及び燃料を熱エネルギーに変換する装置である。従来、バーナは、火炎放射加熱又は間接加熱(伝熱媒体を介して被加熱材料に火炎燃焼の熱が伝達される)を採用しており、高熱放射、低熱効率、及び高エネルギー消費という特性を有する。
【0003】
典型的には、ガラスの溶融を例に取ると、ガラスは、ケイ酸塩、玄武岩、石灰石、ソーダ灰、及び副次的な量の他の成分などの原材料の混合物から作られる。ガラスを溶融する際に、これらの原料がガラス溶融炉に投入され、約1250℃~1500℃の温度で液体状態に溶融され、次いで、融液に対して成形工程が行われる。様々な用途での融液、例えばガラス又は繊維の使用目的に応じて、成形工程の前に更なる溶融及び清澄ステップが実行される。従来のガラス溶融炉は、ガラス融液の表面と溶融炉の上部との間の空間に火炎を生成するバーナを含み、上部の材料と火炎自体からの輻射によってガラス融液に熱が伝達される。熱伝達の過程で大量のエネルギーが消費される。ガラス溶融などの高温の製造工程では、従来のバーナの火炎加熱法に伴う高熱放射、低熱効率、高エネルギー消費といった上記の問題はより一層深刻になる。
【0004】
近年、CO排出量は、国際社会で広く注目を集める主要なテーマとなっている。CO排出量を削減するための解決策を見い出すために誰もが懸命に取り組んでおり、主なアプローチの1つは、エネルギー消費量を削減し、エネルギー効率を高めることによってCO排出量を削減することである。
【0005】
排出量を削減するための解決策の1つとして、材料(ガラス、金属、及び固形廃棄物など、以下ではガラスを例に取って説明する)を電気加熱によって溶融又は処理することは、明白なアプローチである。本明細書で使用される場合、「電気加熱」という表現は、エネルギー源として電力を用いる電極などの装置によって、電気エネルギーがガラス液などの被加熱媒体中で熱エネルギーに変換される加熱法を意味し、この方法では、被加熱媒体が導電過程に関与して昇温する。電気加熱は、被加熱媒体を直接昇温させ、燃料の燃焼を伴わないので、熱効率が高く、熱損失が少なく、排出量が少ない。しかしながら、電極を用いて電気加熱を行う過程で、イオン群の偏析現象(すなわち、ガラス融液中のマイナスイオンが陽極に集まり、その一方で、プラスイオンが陰極に集まる)がガラス溶融炉内で発生する。これにより、ガラス融液中のガラス液を均質化するための所望の融液流を形成することが困難になり、最終的に、高品質のガラス製品を得ることができなくなる場合がある。更に、イオン群の偏析はなお、ガラス溶融炉内の耐火物の溶損を悪化させる。加えて、電気加熱法の高いコストも、その適用及び広範な複製を妨げる要因である。
【0006】
排出量を削減するための別の解決策は液中燃焼であり、液中燃焼では、概して液中バーナがガラス原料の表面の下方に配置される。液中バーナは、ガラス溶融炉の側壁及び/又は底部に取り付けられ得る。炉の上部に取り付けられ得る液中バーナもいくつか存在するが、それらのノズルはガラス融液に浸される。液中バーナの場合、燃料及び酸化剤の燃焼によって発生した火炎及び燃焼生成物がガラス融液中を通過してガラス融液に直接接触するため、伝熱効果がガラス融液面の上方の火炎による輻射加熱法での伝熱効果と比較して一層効果的である。したがって、ガラス溶融炉内の耐火物への熱伝達と煙道ガス中の熱損失が低減される。これにより、燃料消費量、ひいてはCO排出量を削減することができる。加えて、ガラス融液の上方の燃焼室内のより低い温度に起因して、燃焼過程でNOx排出量も削減される。更に、酸化剤及び燃料によって発生する高い流速の燃焼生成物がガラス融液中に入り、液中燃焼過程で発生するガスが膨張し、ガラス原料を急速に溶融させ、大きな乱流を発達させ、したがって、溶融ガラスの均一な混合をより容易にする。これにより機械的撹拌機の必要性を回避又は低減することができ、低温融液と高温融液との間の熱伝達がより効果的になる。その上、液中バーナは、ガラス融液の上方に配置される従来のバーナと比較して、サイズが小さく、生産効率が高く、溶融炉の設置コストが低い。しかしながら、液中燃焼によって、ガラス融液中に大きな乱流が生じる一方で、様々な種類の気泡(大きな気泡及び微細な気泡)が発生する可能性も高い。気泡の発生は最終ガラスの品質に悪影響を及ぼし、満足のいく品質のガラス製品を得るために後処理を追加的に行う必要がある場合が多い。当然ながら、気泡含有量に関する要件がより低い場合(例えば、ガラス100グラム当たり直径0.1mmを超える気泡の数が10個超であり得る)、かかる追加の後処理に関する要件が引き下げられることがあるが、これは、気泡含有量に関する要件がより低い最終製品のみに対するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、先行技術における上述の問題及び/又は他の欠点の少なくとも1つを解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内部で材料を溶融できる溶融空間であって、少なくとも底壁及び側壁で囲まれた溶融空間を含む、溶融装置であって、溶融装置は、材料を加熱するために溶融空間内に配置された少なくとも1つの電気ヒータ及び少なくとも1つの液中バーナを更に含む、溶融装置を提供する。
【0009】
本発明の例示的な実施形態によれば、液中バーナ及び電気ヒータは、溶融空間内の高温点が融液流方向における液中バーナの下流側に位置するように構成され得、融液流方向は、材料融液が溶融空間内を流れ、溶融空間から放出される方向である。
【0010】
本発明の例示的な実施形態によれば、材料融液が溶融空間内を流れ、溶融空間から放出される融液流方向において、液中バーナは、電気ヒータの上流側に配置され得る。
【0011】
本発明の例示的な実施形態によれば、液中バーナ及び電気ヒータは、材料を加熱して溶融するために使用されるエネルギーの50%以上、好ましくは70%~80%が電気ヒータによってもたらされ、50%未満、好ましくは20%未満が液中バーナによってもたらされるように構成され得る。
【0012】
本発明の例示的な実施形態によれば、溶融装置は、材料融液の表面の上方に配置されたバーナを更に含み得、バーナは、液中バーナ及び電気ヒータによって供給されるエネルギー以外の、材料を加熱して溶融するために使用されるエネルギーの一部を供給するように構成され、前記部分は例えば10%である。
【0013】
本発明の例示的な実施形態によれば、液中バーナは、液中バーナに供給される燃料及び酸化剤が、連続的に供給される第1の部分と間欠的に供給される第2の部分とに分割されるように構成され得、第1の部分の流量は、第2の部分の流量未満であり、好ましくは、第1の部分と第2の部分との流量比は調整可能であり、並びに/又は第2の部分の供給頻度及び/若しくは供給継続時間は調整可能である。
【0014】
本発明の例示的な実施形態によれば、液中バーナは、燃料として水素を使用し得る。
【0015】
本発明の例示的な実施形態によれば、少なくとも1つの液中バーナは、底壁から材料融液中に突出する複数の液中バーナを含み得、複数の液中バーナが底壁から突出する高さは、融液流方向に順に高くなる。
【0016】
本発明の例示的な実施形態によれば、電気ヒータの上流側に、底壁は、材料融液中に突出する複数の突出部を含み得、複数の突出部の高さは、融液流方向に順に高くなる。
【0017】
本発明の例示的な実施形態によれば、液中バーナは、前記各突出部の上端から延在し得る。
【0018】
本発明の例示的な実施形態によれば、液中バーナを冷却するための冷却媒体ノズル又は配管は、突出部内に収容され得る。
【0019】
本発明の例示的な実施形態によれば、少なくとも1つの液中バーナは、冷却システム並びに/又は燃料及び酸化剤を供給するためのシステムを共有し得る、2つ以上の液中バーナを含み得る。
【0020】
本発明の例示的な実施形態によれば、材料融液は、溶融ガラス、溶融金属、溶融樹脂、又は溶融状態にある固形廃棄物であり得る。
【0021】
本発明の例示的な実施形態によれば、液中バーナは、外側で燃料と酸化剤とが混合するようにそれぞれ燃料及び酸化剤を液中バーナの外側に放出するように構成された、燃料通路及び酸化剤通路を含み得る。
【0022】
本発明の例示的な実施形態によれば、燃料通路及び酸化剤通路のうちの少なくとも一方は、放出された燃料及び/又は酸化剤が旋回流を形成するように構成され得る。
【0023】
本発明による溶融装置は、少なくとも以下の技術的効果をもたらす。材料を溶融して加熱するために電気加熱と液中燃焼とを組み合わせることで、予期せぬ結果が得られ、これにより、2つの加熱法の強度が、これらの加熱法の弱点を補いながら高められ、第1に、電気加熱方式でのイオン群の偏析の問題を緩和し、これにより、ガラス液の均質化レベルを高めるために液中燃焼が用いられ、第2に、液中燃焼方式での気泡の問題が電気加熱によって解消され、同時に、これらの2つの加熱法の本来の利点が可能な限り保持され、それにより、材料溶融の高品質の生成物を低コストで得るための生産装置及び方法を提供する。
【0024】
以下、本発明の様々な特徴及び効果について、非限定的な実施形態を通じて、図面を参照して詳細に説明する。ここでは、図面は単に概略的なものであり、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。加えて、図面は、本発明を説明するのに必要な部分のみを示しており、他の部分は省略されているか又は簡単な用語でのみ触れられている場合がある。すなわち、図面に示す構成要素又は主要な要素に加えて、本発明は他の構成要素又は主要な要素も含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の実施形態による溶融装置の横断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態による溶融装置の縦断面図である。
図3図3は、本発明の別の実施形態による溶融装置の縦断面図である。
図4図4は、本発明の別の実施形態による溶融装置の部分縦断面図である。
図5図5は、本発明の実施形態による溶融装置で使用される液中バーナの概略図である。
図6図6は、本発明の実施形態による溶融装置で使用される液中バーナ組立体の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の例示的な実施形態について、図面を参照して以下で詳細に説明する。以下の説明では、本発明のより包括的な理解を当業者に与えるために、多くの具体的な詳細が説明されている。しかしながら、当業者には明らかであるように、本発明は、これらの具体的な詳細の一部なしに実現される場合がある。また、提示された具体的な実施形態に本発明が限定されないことも理解されるべきである。それどころか、異なる実施形態に関係するかどうかにかかわらず、本明細書で述べる特徴と主要な要素との任意の組み合わせを使用して本発明を実現することが考えられ得る。したがって、以下の態様、特徴、実施形態、及び利点は、例示的な目的に役立つものに過ぎず、特許請求の範囲に明示的な記載がない限り、特許請求の範囲の主要な要素又は定義とみなされるべきではない。
【0027】
以下の特定の実施形態の説明では、「上方」、「下方」、「前方」、「後方」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「上部」、「底部」、「内側」及び「外側」などの用語が示す向き又は位置関係は、図面に示す向き又は位置関係に基づくものであり、参照される装置又は要素が具体的な向きを有しなければならないこと又は具体的な向きで構築され操作されなければならないことを示すことも又は示唆することもなく、本発明の説明を容易にし簡略化するように意図されたものに過ぎず、それゆえ、本出願を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解しなければならない。
【0028】
加えて、「第1の」及び「第2の」という用語は、単に説明の目的で使用されており、相対的な重要性を示す若しくは示唆するものとして、又は示された技術的特徴の量を黙示的に特定するものとして解釈してはならない。よって、「第1の」及び「第2の」で定義される特徴は、1つ又は複数の特徴を明示的又は暗示的に含み得る。本発明の説明において、「複数」とは、特段の明確な定めのない限り、2つ又は3つ以上を意味する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「燃料」という用語は、交換可能に又は互いに組み合わせて使用できる気体燃料、液体燃料、又は固体燃料を指す。燃料が少なくとも部分的に気体状である場合、燃料をバーナに直接導入することができる。燃料が液状又は固体状である場合、燃料はバーナの近傍に導入される。気体燃料は、天然ガス(主にメタン)、プロパン、水素、合成ガス、バイオマスガス、又は任意の他の炭化水素及び/又は硫黄含有化合物及び/又は窒素含有化合物であり得る。固体燃料又は液体燃料は主に、炭素含有形態及び/又は炭化水素形態及び/又は硫黄含有形態の任意の化合物であり得る。当業者であれば、必要に応じて、気体燃料、液体燃料、又は固体燃料が導入される方法を決定することができる。この点に関していかなる制限を課すことも本発明の目的ではない。
【0030】
本明細書で使用される場合、「ノズル」という用語は、バーナの先端に位置決めされる構成要素であって、燃料と酸化剤を噴射して燃焼させる構成要素を指し、ノズルは、独立した構成要素であり得るか、又は別の構成要素と一体に形成された構成要素であり得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、「融解」及び「溶融」という用語は、被加熱媒体を実質的に固体状態から実質的に液体状態に加熱する操作を含む。
【0032】
本明細書で使用される場合、「融液」又は「溶融材料」という用語は、無機成分、金属、又は有機成分などを含有し得る、溶融によって得られた物質を指し、溶融ガラス、溶融金属、溶融樹脂、溶融廃棄物などであり得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、「ガラス融液」及び「ガラス液」という用語は、ガラス製品を生産するための組成物を指す。この組成物は、実質的に固体状態と実質的に液体状態を含む、実質的に固体状態と実質的に液体状態との間の任意の状態で存在することができる。このような状態は、原料と溶融ガラスとの間の任意の程度の部分的溶融を含む、原料と溶融ガラスとの間にある(原料と溶融ガラスとを含む)。
【0034】
本明細書で使用される場合、「軸方向」という用語は、回転軸線、対称軸線、又はバーナの中心軸線の方向に実質的に平行な略中心線の方向を指す。
【0035】
以下の説明では、ガラス原料が、被加熱材料の例として使用される。しかしながら、当業者であれば、被加熱材料が、加熱して溶融する必要がある任意の他の物質、例えば金属、固形廃棄物、又は他の固形物質などでもあり得ることを理解するであろう。
【0036】
図1及び図2は、本発明の実施形態による溶融装置(ここでは、例としてガラス溶融炉として示す)の概略図である。ガラス溶融炉100内において、ガラス原料は、供給ポート(図示せず)を通して炉内に導入された後、加熱され溶融されて、ガラス融液又はガラス液を形成し、ガラス融液又はガラス液は、ある程度の清澄化及び均質化などの後、最終的に、図2に示す出口110から放出され、次の工程ステップ、例えば後処理又は成形を受ける。
【0037】
ガラス溶融炉100は、少なくとも底壁及び側壁で囲まれた溶融空間を含み得、ガラス原料は溶融空間内で加熱されて溶融される。図示の実施形態では、溶融空間は、例えば、底壁120と4つの側壁130とで囲まれた略直方体形状の空間である。図1は、直方体の短側壁に平行な方向に沿った横断面図であり、図2は、直方体の長側壁に平行な方向に沿った縦断面図である。図2に示すように、出口110は、直方体の短側壁のうちの一方の底部に配置され、その一方で、供給ポートは、前記短側壁とは反対側の他方の短側壁付近に配置され、したがって、炉内に供給されたばかりのガラス原料Yは、前記他方の短側壁付近に集まる。ガラス原料が連続的に溶融すると、ガラス融液は、溶融空間内に融液面(液面)Sを形成し、概ね出口110に向かって流れ、最終的に溶融空間から出口110を通して放出され、これにより形成された融液流方向は、溶融空間の長側壁に平行な、図2における実質的に左から右に向かう方向である。それに応じて、図2の左側に近接し、出口110から離れた位置又は領域は、融液流方向における上流側であり、その一方で、右側に近接し、出口110に近接する位置又は領域は、融液流方向における下流側である。
【0038】
ガラス原料を加熱して溶融するために、ガラス溶融炉100は、少なくとも1つの液中バーナFと、少なくとも1つの電気ヒータEとを含む。図1には、ガラス溶融炉100の長手方向中心平面Pの左側に複数の液中バーナFが示されており、複数の液中バーナFは、溶射ランスの一般的な形態であり得、例えば、ガラス溶融炉100の底壁120上に配置され、底壁120からガラス融液中に上方に延在する。液中バーナの先端にあるノズルから導出された燃料及び酸化剤の燃焼が生じ、これにより発生した火炎及び燃焼生成物が、ガラス融液を通過してガラス融液に直接接触するので、良好な加熱効果が達成される。また、1つ以上の液中バーナFをガラス溶融炉100の側壁に設けることも可能である。図1には、ガラス溶融炉100の長手方向中心平面Pの右側に複数の電気ヒータEが示されており、複数の電気ヒータEは、例えば電極を使用して実現され得る。図示の実施形態では、電気ヒータEは、ガラス溶融炉の底壁120からガラス融液中に延在する複数の電極ロッドE1、任意選択的にガラス溶融炉の側壁130に配置された複数の電極板E2を含み得る。通電されると、電気ヒータEは、ガラス融液を直接加熱するために、ガラス融液中の導電性イオンによって形成される電流によって熱を発生させる。
【0039】
本発明では、ガラス原料を溶融するために、2つの加熱方法、具体的には液中バーナF及び電気ヒータEは、ガラス溶融炉内で組み合わせて使用される。したがって、第1に、液中バーナFは、大小の多数の気泡を発生させながら、動作中にガラス融液中に大きな乱流を引き起こし、溶融空間内のガラス融液の清澄化及び均質化という有益な効果(これにより機械的撹拌機の必要性が低減される、例えば、ガラス生産で一般的に使用されるバブラー又は他の撹拌装置が置き換えられる)を達成できるだけではなく、溶融空間内でのガラス融液流を形成又は促進する傾向もある。この促進されたガラス融液流は、電気ヒータEの周囲で発生するイオン群の偏析の低減に寄与するのに適している。イオン群の偏析の問題の解消によって、最終ガラス製品の品質を高めるために、電気ヒータEの領域でのガラスの均質化効果を高めることができ、溶融炉の耐火物の溶損を低減することもでき、それにより、溶融炉の耐用年数が延びる。第2に、電気ヒータEの領域に達した後、液中バーナの作用に起因して、溶融空間内を流れ、気泡を含んだガラス融液が、電気ヒータEによってもたらされる高温加熱効果を受け、この高温加熱効果は、ガラス融液中の気泡をガラス液面まで浮上させて脱出させ、これにより、ガラス融液中の気泡含有量を低減し、最終ガラス製品の品質を高めるのに役立つ。
【0040】
見て分かるように、液中バーナを電気ヒータと組み合わせた加熱方式は、これらの2つの加熱法に元々存在する大きな欠点を抑制する。同時に、液中燃焼及び電気加熱の利点(高い加熱効率、低い熱損失、少ない放熱量、高度なガラス均質化など)が維持され、コスト面で良好なバランスが取られる。
【0041】
実施形態では、液中バーナF及び電気ヒータEは、溶融空間内の高温点が融液流方向における液中バーナFの下流側に位置するように構成され得る。すなわち、液中バーナF及び電気ヒータEの数、それらの出力、並びに液中バーナF及び電気ヒータEの配置方法などは、ガラス溶融炉内の温度のピーク値が下流領域に発生するように制御される。したがって、液中バーナFが設けられた領域から溶融炉出口に向かって下流側に流れる、気泡を含んだガラス融液が、下流領域において温度ピーク値に達し、高温がガラス融液にもたらす気泡除去効果を高める又は最適化することができる。例示的な温度曲線Cが図2のガラス液面Sの上方に示されており、見て分かるように、ガラス溶融炉/溶融空間内の温度は、上流領域から下流方向に向かってピーク値点(高温点)Kまで徐々に上昇し、次いで、下流方向に向かって徐々に低下する。点Kよりも下の領域は、複数の電気ヒータE(電極)が集中している位置に対応し得る。点Kに達する前に、温度が徐々に上昇するにつれて、ガラス融液中の気泡が連続的にガラス液面まで浮上して泡Mになり、温度が最も高い点Kにおいて最も強力な気泡除去効果が得られ、その後、泡M及び気泡の数を大幅に低減することができる。当然ながら、当業者であれば、作製されたガラス製品中の気泡含有量に関する要件が低い場合(例えば、ガラス100グラム当たり直径0.1mmを超える気泡の数が10個超であり得る)、溶融空間内の高温点も融液流方向における液中バーナFの上流側に位置し得ることを理解するであろう。この場合、溶融炉出口に向かって概ね下流側に流れるガラス融液に高温点が及ぼす気泡除去効果は、全体として、高温点が液中バーナの下流側に配置される方式の気泡除去効果に比べて劣っているが、それでも、局所的に逆流するガラス融液から気泡を除去するのに役立つ可能性があり、この気泡除去効果は、気泡含有量に関する要件が高くないシナリオで用いられるのに十分なものである。
【0042】
実施形態では、図2及び図3に示すように、液中バーナFは、融液流方向における電気ヒータEの上流側に配置され得る。したがって、上流領域に配置された液中バーナFは、乱流及びそれにより生じる気泡によって、元々溶融炉出口に向かって概ね下流側に流れていたガラス融液流を促進する傾向があり、下流領域に達した後、この促進されたガラス融液流は、下流領域における電気ヒータEの周囲で発生するイオン群の偏析をより効果的に低減することができる。更に、液中バーナFの下流側に電気ヒータEを配置することは、高温点に達するまで温度が下流方向に徐々に上昇する溶融空間内の状態を形成するのに役立つ。したがって、液中バーナFが位置する上流領域から概ね下流側に、気泡を含んだガラス融液が流れるときに、加熱ヒータによってもたらされる温度上昇及び高温点によって気泡をより効果的に除去することができる。当然ながら、本発明は、液中バーナが電気ヒータの上流側に配置される方式に限定されるものではない。液中バーナも電気ヒータの下流側に配置され得るが、この場合、イオン群の偏析をなくし気泡を除去する観点での効果は、液中バーナが電気ヒータの上流側に配置される方式の効果に比べて劣っているが、この効果は、ガラス製品の品質に関する要件があまり高くないシナリオに適している。代替的に、複数の液中バーナF及び/又は電気ヒータEが設けられる状況では、液中バーナ及び電気ヒータはまた、融液流方向に互いに交互に配置され得る。
【0043】
実施形態では、液中バーナF及び電気ヒータEは、ガラス原料を加熱して溶融するために使用されるエネルギーの50%以上、好ましくは70%~80%が電気ヒータEによってもたらされ、50%未満、好ましくは20%未満、例えば15%が液中バーナによってもたらされるように構成される。すなわち、電気ヒータは、ガラス溶融のための主熱源として使用され、液中バーナは2次熱源として機能する。研究では、液中燃焼が占める熱の割合が高すぎると、ガラス融液中に多数の気泡が現れ、下流側での電気加熱でも、これらの気泡を満足のいくレベルまで除去することは困難であり、このことは最終ガラス製品の品質に好ましくない、又は所望の品質のガラス製品を得るために、気泡を除去するための追加の後処理工程ステップを追加する必要があることが示されている。当業者であれば、製造されたガラス製品中の気泡含有量に関する要件が低い場合(例えば、グラスウール、断熱用のガラス繊維フィラメントなどを用意する際に、例えば、ガラス100グラム当たり直径0.1mmを超える気泡の数が10個超であり得、この場合、ガラス液の追加の後処理に関する要件を下げることができる)又は追加の気泡後処理工程ステップがガラス溶融炉の下流側で行われる場合、液中燃焼が占める熱の割合が、適切に僅かに増加し、さもなければ僅かに減少し得ることを理解するであろう。図1に示すように、液中バーナF及び電気ヒータEに加えて、従来のバーナRも、ガラス液面Sとガラス溶融炉100の上方のアーチ型のクラウン140との間の空間内に補助熱源として設けられ得る。このバーナが噴出する火炎は、より良好な溶融効果を達成し、ガラス液面の上方の空間内の温度及び雰囲気を制御するために、ガラス液面S付近の材料を輻射加熱するために使用される。それに応じて、バーナRは、液中バーナF及び電気ヒータEによって供給されるエネルギー以外の、ガラスを加熱して溶融するために使用されるエネルギーの一部を供給するように構成され、例えば、この部分は10%である。
【0044】
実施形態では、1つ以上の液中バーナFは、液中バーナFに供給される燃料及び酸化剤が、連続的に供給される第1の部分と間欠的に供給される第2の部分とに分割されるように構成され得る。すなわち、燃料及び酸化剤の一方の部分(第1の部分)は連続的に液中バーナに供給され、燃料及び酸化剤の他方の部分(第2の部分)は、第1の所定の時間間隔でのみ液中バーナにパルス状に送られ、第2の所定の継続時間にわたって供給される。燃料及び酸化剤の連続的に供給される第1の部分の機能は、液中バーナの火炎を維持し、ガラス融液が液中バーナのノズルに逆流することを防止することである。したがって、第1の部分の流量(圧力)は、第2の部分の流量(圧力)未満であり得る。間欠的に供給される燃料、酸化剤、及び対応する燃焼生成物の第2の部分は、ガラス融液に対する撹拌及び混合効果を高めて、ガラス液の均質化レベルを向上させることができる。加えて、燃料及び酸化剤の高流量での連続供給と比較して、このタイプのパルス状の間欠供給により、燃焼ガス間の及び生成された気泡間の激しい衝突及び破裂を回避又は軽減でき、それにより、除去が困難な多数の小さな気泡がガラス融液中での分裂により形成される可能性を低減し、最終ガラス製品の気泡率を低下させるのに役立つ。好ましくは、供給される燃料及び酸化剤の第1の部分と第2の部分との流量比は調整可能であり、並びに/又は燃料及び酸化剤の第2の部分の供給頻度(上で述べた第1の所定の継続時間によって決定される)及び/又は供給継続時間(すなわち、上で述べた第2の所定の継続時間)は調整可能である。したがって、ガラス融液中の気泡の発生を異なるシナリオ及び要求に応じて適応的に抑制することができる。
【0045】
有利には、液中バーナFは、燃料として水素を使用し得る。水素にはクリーンエネルギーとしての多くの利点があるが、燃料として水素が使用される場合、水素炎が明るくなく、放射輝度が低く、加熱の際の熱伝達効率が低いという問題があることが分かっている。液中バーナでは、液中燃焼での直接接触による熱の対流及び伝導の特性に起因して、水素炎の熱を、被加熱材料に完全に伝達することができ、したがって、水素燃焼の熱エネルギーをより良好に利用することができる。液中バーナの燃料としての水素の使用には、次のような利点もある。水素の酸化燃焼の唯一の生成物が水であるので、燃焼過程で発生するCOの排出量を削減することができ、加えて、例えばガラス融液を、その中の気泡を除去するために清澄化する必要があるが、燃料として水素が使用される場合には、生成される気体状の水の分圧が、ガラス中に存在する他のガスの分圧と異なり、その結果、これらのガスの気泡が、より容易に吸収され、合体して大きな気泡を形成し、次いで、放出され、更に、水素燃焼により生成される多数のOHが、大小様々な種類の気泡の周囲のガラス液面の張力を低下させることができ、また、これにより、気泡内のガスがガラスから脱出することを容易にすることができる。水素のこれらの利点の全てによって、水素が、材料溶融の際の液中バーナの燃料としての使用に適したものになる。
【0046】
実施形態では、図3に示すように、ガラス融液中に突出する複数の液中バーナFは、複数の(図では例として3つとして示す)液中バーナF1、F2、F3を含む、ガラス溶融炉100の底壁120上に設けられ得、液中バーナF1、F2、F3は、底壁から突出し、液中バーナF1、F2、F3の高さは、融液流方向(すなわち、図3における実質的に左から右に向かう方向)に順に高くなる。このような複数の液中バーナを配置するレイアウトは、ガラス融液中における、融液流方向に徐々に上昇する融液流の形成を補助する。このようなガラス融液の流れ方向は、溶融空間内のガラス融液の流路を増大させ、それにより、ガラス液の清澄化及び均質化の継続時間を延ばすのに役立つ。更に、ガラス液面Sに向かって徐々に上昇するような、気泡を含んだガラス融液の流れも、液面Sからの気泡の脱出に大きく寄与する。当業者であれば、液中バーナの突出高さ及び間隔並びに互いに対する出力比を適切に設定することによって、必要に応じて溶融空間内の他の適切な経路に沿ってガラス融液流を作り出すことも可能であることを理解するであろう。
【0047】
液中バーナF1、F2、F3を配置する上記のレイアウトに対する代替又は追加の解決策として、ガラス融液中に突出する複数の(同じく図では例として3つとして示す)突出部C1、C2、C3も、図4に示すように、ガラス溶融炉100の上流領域における底壁120上に設けられ得、また、複数の突出部の高さは、融液流方向に順に高くなる。同様に、このような構成は、融液流方向に徐々に上昇する融液流を生成し、図4に示す液中バーナを配置するレイアウトと同様の上述の効果を達成することができる。このような構成では、対応する液中バーナ(図示せず)は、突出部C1、C2、C3の上端から突出し得、対応する冷却媒体ノズル又は配管Lは、対応する液中バーナを冷却するために突出部内に設けられ得る。
【0048】
ここで、本発明によるガラス溶融炉100内で使用され得る液中バーナFの具体的な構成について説明する。図5の部分(a)及び(b)はそれぞれ、2つの例示的な液中バーナFの上面図及び縦断面図を示す。これらの液中バーナは各々、燃料供給源に接続された燃料通路10と、酸化剤供給源に接続された酸化剤通路20とを含む。燃料通路10及び酸化剤通路20はそれぞれ、燃料及び酸化剤を液中バーナFの外側に放出し、外側で燃料と酸化剤とが混合するように構成され得る。例えば、図示の実施形態では、燃料通路10及び酸化剤通路20は、バーナの軸線に平行に液中バーナの先端にあるノズルまで延在し得る。すなわち、燃料及び酸化剤は、ノズルから噴出される前に予混合を受けなくてもよい。液中バーナがガラス融液中に延在するので、融液中の高温によって、ノズルの外側にあるときにのみ混合される燃料及び酸化剤が迅速に点火することも可能となる。更に、水素が燃料として使用される場合、水素と酸化剤(例えば酸素)の燃焼は反応時間が非常に短く、このことも急速燃焼に寄与する。当然ながら、燃料通路10及び酸化剤通路20の少なくとも一方はまた、放出された燃料及び/又は酸化剤が旋回流を形成し、その結果、燃料及び/又は酸化剤がより良好に混合されるように構成され得る。例えば、燃料通路10及び/又は酸化剤通路20の内壁に螺旋溝が設けられ、その結果、それに応じて放出された燃料及び/又は酸化剤が旋回流を形成する。図5の部分(b)に示す液中バーナFは、冷却媒体の循環を可能にする冷却ジャケット30が、液中バーナを冷却する目的で、部分(b)における液中バーナの外周に更に設けられている点において、部分(a)に示す液中バーナFと異なる。
【0049】
また有利には、2つ以上の液中バーナFが設けられ得る。一定の熱量を提供する必要がある場合、液中バーナの数が多いほど、各液中バーナの出力が低下する可能性がある。各液中バーナのより低い出力は、それにより生成される火炎をより短くし、熱をより完全にガラス液に伝達することができる。また、低出力の液中バーナによってガラス融液中に発生する気泡が少なくなり、小さくなる。実施形態では、上で述べた2つ以上の液中バーナFは、冷却システム並びに/又は燃料及び酸化剤を供給するためのシステムを共有し、それによりバーナ組立体を形成し得る。図6に示すように、例えば3つの液中バーナによって形成されたバーナ組立体は、供給される燃料及び酸化剤を受け入れるために共通の燃料配管210及び共通の酸化剤配管220に接続され得、冷却用に同じ冷却システムを利用するために共通の冷却媒体流入管230及び共通の冷却媒体流出管240に接続され得る。
【0050】
当業者であれば、上で説明した実施形態が全て例示的なものであり、当業者がそれら実施形態に改良を加え得ること、また、実施形態で説明した様々な主要な要素が構造又は原理の点で矛盾しない限り自由に組み合わされ得ることを理解するであろう。
【0051】
本発明の好ましい実施形態の詳細な説明の後、当業者であれば、添付の特許請求の範囲の保護範囲及び趣旨から逸脱することなく様々な変更及び改良を加えることができ、本発明が、本明細書に例として説明する実施形態に限定されないことを明確に理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-07-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部で材料を溶融できる溶融空間であって、少なくとも底壁(120)及び側壁(130)で囲まれた前記溶融空間を含む、溶融装置(100)であって、前記溶融装置は、材料を加熱するために前記溶融空間内に配置された少なくとも1つの電気ヒータ(E)及び少なくとも1つの液中バーナ(F)を更に含み、
前記少なくとも1つの液中バーナ(F)は、前記底壁(120)から材料融液中に突出する複数の液中バーナ(F1、F2、F3)を含み、前記複数の液中バーナが前記底壁(120)から突出する高さは、融液流方向に順に高くなることを特徴とする、溶融装置(100)。
【請求項2】
前記液中バーナ(F)及び前記電気ヒータ(E)は、前記溶融空間内の高温点(K)が融液流方向における前記液中バーナ(F)の下流側に位置するように構成され、前記融液流方向は、材料融液が前記溶融空間内を流れ、前記溶融空間から放出される方向であることを特徴とする、請求項1に記載の溶融装置(100)。
【請求項3】
材料融液が前記溶融空間内を流れ、前記溶融空間から放出される融液流方向において、前記液中バーナ(F)は、前記電気ヒータ(E)の上流側に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の溶融装置(100)。
【請求項4】
前記液中バーナ(F)及び前記電気ヒータ(E)は、材料を加熱して溶融するために使用されるエネルギーの50%以上が前記電気ヒータによってもたらされ、50%未満が前記液中バーナによってもたらされるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の溶融装置(100)。
【請求項5】
前記液中バーナ(F)及び前記電気ヒータ(E)は、材料を加熱して溶融するために使用されるエネルギーの70%~80%が前記電気ヒータによってもたらされるように構成されることを特徴とする、請求項4に記載の溶融装置(100)。
【請求項6】
前記液中バーナ(F)及び前記電気ヒータ(E)は、材料を加熱して溶融するために使用されるエネルギーの20%未満が前記液中バーナによってもたらされるように構成されることを特徴とする、請求項4に記載の溶融装置(100)。
【請求項7】
前記溶融装置は、材料融液の表面(S)の上方に配置されたバーナ(R)を更に含み、前記バーナは、前記液中バーナ(F)及び前記電気ヒータ(E)によって供給されるエネルギー以外の、材料を加熱して溶融するために使用される前記エネルギーの一部を供給するように構成されていることを特徴とする、請求項4に記載の溶融装置(100)。
【請求項8】
前記バーナ(R)は、材料を加熱して溶融するために使用されるエネルギーの10%を供給するように構成されていることを特徴とする、請求項7に記載の溶融装置(100)。
【請求項9】
前記液中バーナ(F)は、前記液中バーナ(F)に供給される燃料及び酸化剤が、連続的に供給される第1の部分と間欠的に供給される第2の部分とに分割されるように構成され、前記第1の部分の流量は、前記第2の部分の流量未満であり、前記第1の部分と前記第2の部分との流量比は調整可能であり、並びに/又は前記第2の部分の供給頻度及び/若しくは供給継続時間は調整可能であることを特徴とする、請求項1に記載の溶融装置(100)。
【請求項10】
前記液中バーナ(F)は、燃料として水素を使用することを特徴とする、請求項1に記載の溶融装置(100)。
【請求項11】
前記電気ヒータ(E)の上流側(E)に、前記底壁(120)は、材料融液中に突出する複数の突出部(C1、C2、C3)を含み、前記複数の突出部の高さは、前記融液流方向に順に高くなることを特徴とする、請求項1に記載の溶融装置(100)。
【請求項12】
前記液中バーナ(F)は、記突出部の上端から延在することを特徴とする、請求項11に記載の溶融装置(100)。
【請求項13】
前記液中バーナ(F)を冷却するための冷却媒体ノズル又は配管(L)は、前記突出部(C1、C2、C3)内に収容されることを特徴とする、請求項1に記載の溶融装置(100)。
【請求項14】
前記少なくとも1つの液中バーナ(F)は、冷却システム並びに/又は燃料及び酸化剤を供給するためのシステムを共有する、2つ以上の液中バーナを含むことを特徴とする、請求項1に記載の溶融装置(100)。
【請求項15】
前記材料融液は、溶融ガラス、溶融金属、溶融樹脂、又は溶融状態にある固形廃棄物であることを特徴とする、請求項1に記載の溶融装置(100)。
【請求項16】
前記液中バーナ(F)は、外側で燃料と酸化剤とが混合するようにそれぞれ前記燃料及び前記酸化剤を前記液中バーナ(F)の外側に放出するように構成された、燃料通路(10)及び酸化剤通路(20)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の溶融装置(100)。
【請求項17】
前記燃料通路(10)及び前記酸化剤通路(20)のうちの少なくとも一方は、放出された前記燃料及び/又は前記酸化剤が旋回流を形成するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の溶融装置(100)。
【国際調査報告】