(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】無線電力伝送システムの熱性能を改善するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/70 20160101AFI20241121BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20241121BHJP
H01Q 7/06 20060101ALI20241121BHJP
H01Q 19/10 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H02J50/70
H02J50/12
H01Q7/06
H01Q19/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533050
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 US2022081431
(87)【国際公開番号】W WO2023122449
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517073591
【氏名又は名称】ティーシー1 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、ジョン・フレディ
(72)【発明者】
【氏名】キーン、レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】バヴァル、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ハージェス、ダニエル・アイ
(72)【発明者】
【氏名】ユーディス、ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン、ラッセル・ユージーン
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA06
5J020BD04
(57)【要約】
本開示によれば、無線電力伝送システムで使用するための送信共振器が提供される。無線電力伝送システムで使用するための本開示の送信共振器は、環状溝を画定するコアと、環状溝内に配置されたコイル素子と、コア及びコイル素子を取り囲むハウジングと、を含む。ハウジングは、ケーシングと、金属板と、を有し、金属板は、無線電力伝送システムの動作中に、送信共振器における、受信共振器と反対になる側に配置され、無線電力伝送システムの遠方場電磁放射の低減、及び、無線電力伝送システムの冷却の改善を促進する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線電力伝送システムで使用するための送信共振器であって、
環状溝を画定するコアと、
前記環状溝内に配置されたコイル素子と、
前記コア及び前記コイル素子を取り囲むハウジングと、を含み、
前記ハウジングは、
ケーシングと、
金属板と、を有し、
前記金属板は、前記無線電力伝送システムの動作中に、前記送信共振器における、受信共振器と反対になる側に配置され、前記無線電力伝送システムの遠方場電磁放射の低減、及び、前記無線電力伝送システムの冷却の改善を促進する、送信共振器。
【請求項2】
請求項1に記載の送信共振器であって、
前記金属板は、アルミニウム板である、送信共振器。
【請求項3】
請求項1に記載の送信共振器であって、
前記金属板は、アルミニウム合金板である、送信共振器。
【請求項4】
請求項1に記載の送信共振器であって、
前記ケーシングは、プラスチック製である、送信共振器。
【請求項5】
請求項1に記載の送信共振器であって、
前記ケーシングは、熱伝導性材料製である、送信共振器。
【請求項6】
無線電力伝送システムであって、
受信共振器と、
送信共振器と、を備え、
前記送信共振器は、
環状溝を画定するコアと、
前記環状溝内に配置されたコイル素子と、
前記コア及び前記コイル素子を取り囲むハウジングと、を含み、
前記ハウジングは、
ケーシングと、
金属板と、を有し、
前記金属板は、前記無線電力伝送システムの動作中に、前記送信共振器における、受信共振器と反対になる側に配置され、前記無線電力伝送システムの遠方場電磁放射の低減、及び、前記無線電力伝送システムの冷却の改善を促進する、無線電力伝送システム。
【請求項7】
請求項6に記載の無線電力伝送システムであって、
前記金属板は、アルミニウム板である、無線電力伝送システム。
【請求項8】
請求項6に記載の無線電力伝送システムであって、
前記金属板は、アルミニウム合金板である、無線電力伝送システム。
【請求項9】
請求項6に記載の無線電力伝送システムであって、
前記ケーシングは、プラスチック製である、無線電力伝送システム。
【請求項10】
請求項6に記載の無線電力伝送システムであって、
前記ケーシングは、熱伝導性材料製である、無線電力伝送システム。
【請求項11】
無線電力伝送システムで使用するための送信共振器であって、
環状溝を画定するコアと、
前記環状溝内に配置されたコイル素子と、
前記コア及び前記コイル素子を取り囲むハウジングと、を含み、
前記ハウジングは、前記無線電力伝送システムの熱性能の改善を促進するために、熱伝導性材料から作製される、送信共振器。
【請求項12】
請求項11に記載の送信共振器であって、
前記熱伝導性材料は、高純度アルミニウムセラミックである、送信共振器。
【請求項13】
請求項11に記載の送信共振器であって、
前記ハウジングと前記コアとの間にギャップが画定され、
前記ギャップに、熱伝導性ギャップ材料が充填された、送信共振器。
【請求項14】
請求項13に記載の送信共振器であって、
前記熱伝導性ギャップ材料は、アルミナである、送信共振器。
【請求項15】
請求項11に記載の送信共振器であって、
前記ハウジングは、金属板を含み、
前記金属板は、前記無線電力伝送システムの動作中に、前記送信共振器における、受信共振器と反対になる側に配置される、送信共振器。
【請求項16】
無線電力伝送システムであって、
受信共振器と、
送信共振器と、を備え、
前記送信共振器は、
環状溝を画定するコアと、
前記環状溝内に配置されたコイル素子と、
前記コア及び前記コイル素子を取り囲むハウジングと、を含み、
前記ハウジングは、前記無線電力伝送システムの熱性能の改善を促進にするために、熱伝導性材料から作製される、無線電力伝送システム。
【請求項17】
請求項16に記載の無線電力伝送システムであって、
前記熱伝導性材料は、高純度アルミニウムセラミックである、無線電力伝送システム。
【請求項18】
請求項16に記載の無線電力伝送システムであって、
前記ハウジングと前記コアとの間にギャップが画定され、
前記ギャップに、熱伝導性ギャップ材料が充填された、無線電力伝送システム。
【請求項19】
請求項18に記載の無線電力伝送システムであって、
前記熱伝導性ギャップ材料は、アルミナである、無線電力伝送システム。
【請求項20】
請求項16に記載の無線電力伝送システムであって、
前記ハウジングは、金属板を含み、
前記金属板は、前記無線電力伝送システムの動作中に、前記送信共振器における、受信共振器と反対になる側に配置される、無線電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年12月20日出願の米国特許仮出願第63/291、695号に基づく優先権を主張するものである。上記出願の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、一般に、無線電力伝送システムに関し、より詳細には、無線電力伝送システムの熱性能の改善に関する。
【背景技術】
【0003】
VAD(Ventricular assist device)として知られている心室補助装置(補助人工心臓)は、植込み型の血液ポンプであり、一般に心不全またはうっ血性心不全と呼ばれる心臓が十分な循環を提供することができない症状を患っている患者において、短期使用(すなわち、数日または数か月)及び長期使用(すなわち、数年または生涯)の両方で使用される。心不全を患っている患者は、心臓移植を待つ間に、または、長期のDT治療(destination therapy)として、VADを使用することができる。別の例では、患者は、心臓手術後の回復期に、VADを使用することができる。このように、VADは、弱った心臓を補助したり(すなわち、部分的な補助)、本物の心臓の機能を効果的に代替したりすることができる。
【0004】
VADへの電力供給には、無線電力伝送システムを使用することができる。無線電力伝送システムは、一般に、外部送信共振器と、患者の体内に植え込まれるように構成された植込み型受信共振器とを備える。このような無線電力伝送システムは、経皮エネルギー伝送システム(TETS)とも呼ばれている。
【0005】
一般に、TETSからの遠方場電磁(EM)放射を低減することが望ましい(例えば、他の装置とのEM干渉を低減するために)。例えば、TETSは、少なくとも、様々な標準規格(例えば、CISPR11グループ2クラスBの限度値)に準拠する必要がある。送信共振器は、一般に、遠方場電磁(EM)放射の最大の発生源である。さらに、送信共振器及び受信共振器の温度を低減することが望ましい。したがって、送信共振器による遠方場電磁(EM)放射を低減すること、及び、送信共振器の冷却を改善することは有益であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、無線電力伝送システムで使用するための送信共振器が提供される。無線電力伝送システムで使用するための本開示の送信共振器は、環状溝を画定するコアと、環状溝内に配置されたコイル素子と、コア及びコイル素子を取り囲むハウジングと、を含み、ハウジングは、ケーシングと、金属板と、を有し、金属板は、無線電力伝送システムの動作中に、送信共振器における、受信共振器と反対になる側に配置され、無線電力伝送システムの遠方場電磁放射の低減、及び、無線電力伝送システムの冷却の改善を促進する。
【0007】
別の態様では、無線電力伝送システムが提供される。本開示の無線電力伝送システムは、受信共振器と、送信共振器と、を備え、送信共振器は、環状溝を画定するコアと、環状溝内に配置されたコイル素子と、コア及びコイル素子を取り囲むハウジングと、を含み、ハウジングは、ケーシングと、金属板と、を有し、金属板は、無線電力伝送システムの動作中に、送信共振器における、受信共振器と反対になる側に配置され、無線電力伝送システムの遠方場電磁放射の低減、及び、無線電力伝送システムの冷却の改善を促進する。
【0008】
さらに別の態様では、無線電力伝送システムで使用するための送信共振器が提供される。無線電力伝送システムで使用するための本開示の送信共振器は、環状溝を画定するコアと、環状溝内に配置されたコイル素子と、コア及びコイル素子を取り囲むハウジングと、を含み、ハウジングは、無線電力伝送システムの熱性能の改善を促進するために、熱伝導性材料から作製される。
【0009】
さらに別の態様では、無線電力伝送システムが提供される。本開示の無線電力伝送システムは、受信共振器と、送信共振器と、を備え、送信共振器は、環状溝を画定するコアと、環状溝内に配置されたコイル素子と、コア及びコイル素子を取り囲むハウジングと、を含み、ハウジングは、無線電力伝送システムの熱性能の改善を促進にするために、熱伝導性材料から作製される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、例示的な実施形態による無線電力伝送システムの簡略化された電気回路図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した無線電力伝送システムを使用して、心室補助装置(VAD)に電力を供給する例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した無線電力伝送システムを実施するために使用することができる共振器の一実施形態の前面側から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、送信共振器と受信共振器とを備える無線電力伝送システムの一実施形態の斜視断面図である。
【
図5A】
図5Aは、受信共振器に面する送信共振器の面の熱プロファイルを示す図である。
【
図5B】
図5Bは、送信共振器における、受信共振器とは反対側の面の熱プロファイルを示す図である。
【
図6A】
図6Aは、送信共振器のギャップに熱伝導性アルミナが充填された無線電力伝送システムの熱図である。
【
図6B】
図6Bは、送信共振器のギャップに断熱フォームが充填された無線電力伝送システムの熱図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、一態様では、無線電力伝送システムで使用するための送信共振器に関する。無線電力伝送システムで使用するための本開示の送信共振器は、環状溝を画定するコアと、環状溝内に配置されたコイル素子と、コア及びコイル素子を取り囲むハウジングと、を含む。ハウジングは、ケーシングと、金属板と、を有し、金属板は、無線電力伝送システムの動作中に、送信共振器における、受信共振器と反対になる側に配置され、無線電力伝送システムの遠方場電磁放射の低減、及び、無線電力伝送システムの冷却の改善を促進する。
【0012】
次に図面を参照すると、
図1は、例示的な実施形態による無線電力伝送システム100の簡略化された電気回路である。無線電力伝送システム100は、外部送信共振器102と、植込み型受信共振器104とを備える。
図1に示す無線電力伝送システム100では、電源Vsが送信共振器102に電気的に接続されており、電源Vsは送信共振器102に電力を供給する。受信共振器104は、負荷106(例えば、植込み型医療機器)に接続されている。受信共振器104及び負荷106は、スイッチングまたは整流デバイス(図示せず)に電気的に接続されてもよい。
【0013】
一実施形態では、送信共振器102は、コンデンサCxによって電源Vsに接続されたコイルLxを含む。また、受信共振器104は、コンデンサCyによって負荷106に接続されたコイルLyを含む。コイルLx(インダクタLx)及びコイルLy(インダクタLy)は、結合係数kで接続されている。Mxyは、コイルLx及びコイルLy間の相互インダクタンスである。相互インダクタンスMxyは、結合係数kと下記の式(1)に示すような関係にある。
【0014】
【0015】
動作中、送信共振器102は、電源Vsから供給された電力を無線送信する。受信共振器104は、送信共振器102から無線送信された電力を受信し、受信した電力を負荷106に供給する。
【0016】
図2は、外部コイル202(例えば、
図1に示す送信共振器102)を使用して、患者200の体内に植え込まれた植込み型コイル204(例えば、
図1に示す受信共振器104)に電力を無線送信する例を示す図である。植込み型コイル204は、受信した電力を植込み型装置206に供給する。例えば、植込み型装置206としては、ペースメーカや心臓ポンプ(例えば、左心室補助装置(LVAD))が挙げられる。いくつかの実施形態では、植込み型コイル204及び/または植込み型装置206は、電池を備えてもよいし、または電池207に接続されてもよい。
【0017】
一実施形態では、外部コイル202は、コンピュータ装置210との間で信号を送受信できるように、例えば有線接続または無線接続を介してコンピュータ装置210に通信可能に接続されている。いくつかの実施形態では、コンピュータ装置210は、外部コイル202の電源としての役割も果たす。他の実施形態では、外部コイル202は、別の電源(図示せず)に接続される。コンピュータ装置210は、メモリ装置214と、メモリ装置214に通信可能に接続されたプロセッサ212とを備える。いくつかの実施形態では、コンピュータ実行可能命令がメモリ装置214に格納されている。
【0018】
コンピュータ装置210は、ユーザインターフェース(UI)216をさらに備える。ユーザインターフェース(UI)216は、ユーザ(例えば、患者200)に情報を提示する。ユーザインターフェース(UI)216としては、例えば、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機LED(OLED)ディスプレイ、及び、「電子インク」ディスプレイなどのディスプレイ装置に接続されるディスプレイアダプタ(図示せず)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース(UI)216は、1以上の表示装置を含む。さらに、いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース(UI)216は、プレゼンテーションインターフェースであるか、または、プレゼンテーションインターフェースを含む。プレゼンテーションインターフェースは、視覚的コンテンツを生成せずに、可聴及び/またはコンピュータで生成された音声コンテンツを生成する。例示的な実施形態では、ユーザインターフェース(UI)216は、外部コイル202と植込み型コイル204との間の接続が最適になるように、患者200が外部コイル202を配置するのを支援するよう作成された1以上の表現または画像を表示する。いくつかの実施形態では、コンピュータ装置210は、ウェアラブルデバイスであってもよい。例えば、一実施形態では、コンピュータ装置210は、腕時計型デバイスであり、ユーザインターフェース(UI)216は、腕時計型デバイスに情報を提示する。
【0019】
図3は、
図1に示した無線電力伝送システム100を実施するために使用することができる共振器300の一実施形態の前面側から見た斜視図である。共振器300は、例えば、外部送信共振器102(
図1)、植込み型受信共振器104(
図1)、外部コイル202(
図2)、及び/または植込み型コイル204(
図2)を実施するために使用することができる。
【0020】
一実施形態では、共振器300は、コア302と、コイル素子304とを含む。コア302は、前面305と、背面306と、前面305及び背面306間に延びる環状側壁308とを有する。前面305には環状溝310が形成されており、これにより、前面305の中央部分に中央ポスト部312が形成されている。
【0021】
共振器300(コア302及びコイル素子304を含む)は、コンデンサ(例えば、コイル素子304に電気的に接続されたプリント基板上のコンデンサ)に接続されると、無線電力共振器として機能する。しかしながら、当業者であれば、共振器300は、コンデンサに接続されることなく、コイルアセンブリを構成することを理解するであろう。したがって、本明細書で使用するとき、「共振器」という用語は、無線電力共振器を構成するために、コンデンサに接続されることを必要としない。それどころか、本明細書で使用するとき、「共振器」という用語は、
図3に示すように、コンデンサに接続されていないコア及びコイル素子を含むコイルアセンブリを包含するのに十分な広範さを有する。
【0022】
一実施形態では、コア302は、磁性材料から作製され、例えば、ニッケル系フェライトやマンガン系フェライトなどのフェライト材料から作製され得る。ニッケル系フェライトは、一般に、電気伝導率が低く、損失が少ない。一方、マンガン系フェライトは、透磁率が高く(損失は許容範囲内)、磁力線の封じ込めを容易にし、近傍の導体(例えば、近くのPCBのチタン製の筐体や銅)に入る漏れ磁場を低減して損失を防止することができる。他の実施形態では、他の種類のフェライト材料を使用してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、マグネシウム系フェライト(例えば、約1メガヘルツ(MHz)の周波数範囲においてニッケル系フェライトやマンガン系フェライトよりも性能が優れているMgCuZn)を使用してもよい。
【0023】
図示の実施形態では、コイル素子304は環状溝310内に配置され、中央ポスト部312を取り囲む。共振器300は、例えば、リッツ線型の共振器または積層板型の共振器であり得る。リッツ線型の共振器では、コイル素子304は、複数のリッツ線のループを含む。積層板型の共振器では、コイル素子304は、複数の誘電体層及び導電層を交互に積層させて構成した積層板を含む。誘電体層は、例えば、セラミック、プラスチック、ガラス、及び/またはマイカ(雲母)から作製され得る。
【0024】
コイル素子304は、例えば、電源(送信共振器として機能する場合)または負荷106(受信共振器として機能する場合)に電気的に接続される。動作時には、送信共振器として動作する共振器300に電力を供給すると、コイル素子304に電流が流れ、これにより、誘導電流ループが形成される。第1の共振器の共振周波数が第2の共振器の共振周波数と重なることを条件にして、この誘導電流ループにより、第1の共振器から第2の共振器に電力を無線伝送することができる。図示の実施形態では、コイル素子304は、コア302を貫通して背面306まで延びる複数の端子314を有する。コイル素子304の端子314は、必要に応じて、コイル素子304を電源または負荷に電気的に接続することを容易にする。
【0025】
図4は、送信共振器402と、受信共振器404とを備える無線電力伝送システム400の斜視断面図である。送信共振器402及び受信共振器404はそれぞれ、例えば共振器300(
図3)を用いて実現することができる。
図4に示すように、送信共振器402は、第1のハウジング412と、第1のハウジング412内に配置された第1のコイル素子406及び第1のコア410とを含む。同様に、受信共振器404は、第2のハウジング420と、第2のハウジング420内に配置された第2のコイル素子414及び第2のコア418とを含む。上述したように、受信共振器404は、一的に、患者の体内に植え込まれ、送信共振器402は、一般に、患者の体外に配置される。
【0026】
図示の実施形態では、第1のコイル素子406及び第2のコイル素子414は、充填材料(例えば、ポリエステルポリウレタン)内に埋め込まれている。さらに、図示の実施形態では、第1のコア410及び第2のコア418は、第1のキャビティ430及び第2のキャビティ432を画定する。第1のキャビティ430及び第2のキャビティ432は、1以上の電子部品(例えば、FR4)を格納するために用いることができ、それぞれ、ラミネート層434で覆われる。
【0027】
図4に示すように、第1のハウジング412は、第1のコイル素子406及び第1のコア410を実質的に取り囲んでいる。また、本実施形態では、詳細については後述するが、第1のハウジング412は、第1のケーシング440と、第1のプレート442とによって形成されている。本実施形態では、第1のケーシング440は、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリマーから作製される。また、
図4に示すように、第1のハウジング412の少なくとも一部と、第1のコア410との間に、ギャップ444が形成されている。
【0028】
同様に、第2のハウジング420は、第2のコイル素子414及び第2のコア418を実質的に取り囲んでいる。第2のハウジング420は、第2のケーシング460と、第2のプレート462とによって形成されている。さらに、本実施形態では、内側シェル464により、第2のケーシング460は、第2のコア418から分離されている。第2のケーシング460は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から作製され、第2のプレート462は、例えば、チタンから作製され、内側シェル464は、例えば、ジルコニアから作製される。あるいは、第2のケーシング460、第2のプレート462、及び内側シェル464は、任意の他の適切な材料から作製してもよい。
図4に示すように、第2のハウジング420の少なくとも一部と、第2のコア418との間に、ギャップ470が形成されている。ギャップ470には、ガス(例えば、ヘリウム及び/またはアルゴン)が充填される。
【0029】
図示の実施形態では、第1のプレート442は、金属板(例えば、アルミニウム板、アルミニウム合金板、銅板、銀板など)である。さらに、
図4に示すように、第1のプレート442は、送信共振器402における、受信共振器404とは反対側の面480(すなわち、受信共振器404とは反対側を向いた面480)に配置される。すなわち、第1のプレート442は、第1のハウジング412における、送信共振器402とは反対側を向いた部分を形成する。本実施形態では、第1のプレート442は、高導電性であり、面480の実質的に全体を形成する。
【0030】
注目すべきことには、第1のプレート442の構成及び配置は、無線電力伝送システム400からの遠方場電磁(EM)放射の低減を促進するとともに、送信共振器402の外面全体の温度をより均一にし、冷却を改善する。本明細書で使用するとき、遠方場電磁(EM)放射とは、第1のコア410の外径よりも大きい(第1のコア410の外径の数倍の距離を含む)第1のコイル素子406からの距離における電磁(EM)放射を指す。
【0031】
より具体的には、無線電力伝送システム400の動作中に、第1のプレート442に誘導されたイメージ電流は、遠方場磁場効果を部分的に相殺する。さらに、導電性材料は熱伝導性である傾向もあるため、第1のプレート442は、ヒートスプレッダとしても機能し、送信共振器402の外面全体の温度をより均一にする。これにより、送信共振器402の全体の冷却が改善され、送信共振器402の外面におけるホットスポットの低減が促進される。
【0032】
例えば、
図5Aは、受信共振器404に面する送信共振器402の面490(すなわち、面490は、面480とは反対側の面である)の熱プロファイルを示す
図500である。面490は、一般に、無線電力伝送システム400の動作中に、送信共振器402における、患者の皮膚に接触する面である。
図5Bは、送信共振器402における、第1のプレート442を有する面480の熱プロファイルを示す
図502である。
図5A及び
図5Bに示すように、第1のプレート442を有する面480は、その反対側の面490と比べて、はるかに均一な温度プロファイルを有し、ホットスポットは存在しない。したがって、面480全体にわたって冷却が行われ、これにより、より効果的な冷却が得られる。
【0033】
第1のプレート442の利点を検証するために、金属板(例えば、第1のプレート442など)を有していない送信共振器を、金属板を有する送信共振器と実験的に比較した。注目すべきことには、金属板を有する場合、遠方場電磁(EM)放射は約35%減少した。さらに、金属板の直径を大きくすると、遠方場電磁(EM)放射はさらに減少した(最大で約43%)。
【0034】
図4を再び参照して、無線電力伝送システム400において、送信共振器402の設計及び構成は、受信共振器404の熱性能に影響を与える。一般に、受信共振器404の設計ストラテジは、送信共振器402の設計ストラテジとは異なるべきである。
【0035】
例えば、一実施形態では、受信共振器404は、無線電力伝送システム400の動作中に、一般に最も高温になる生体組織(例えば、送信共振器402と受信共振器404との間の生体組織)から熱を逃がすために、高熱伝導性材料と低熱伝導性材料との組み合わせを含む。
【0036】
その一方で、熱性能を改善する(向上させる)ために、送信共振器402を可能な限り熱伝導性にしてもよい。これにより、最も高温になる生体組織から熱を逃がすことを促進する。このことを達成するために、(患者に接触する)第1のハウジング412は、高純度アルミニウムセラミック、ジルコニア、及び/または、窒化ホウ素ナノシートを有するポリマー複合体などの熱伝導性材料から作製され得る。
【0037】
したがって、いくつかの実施形態では、第1のハウジング412は、比較的高い熱伝導率を有する熱伝導性ハウジングである(ただし、無線電力伝送システム400の動作と干渉することを避けるために、金属などの導電体ではない)。これにより、いくつかの熱的利点が得られる。
【0038】
例えば、送信共振器402における、患者と接触する部分の全体を熱伝導性にすることにより、患者の皮膚下の生体組織から熱を逃がすことができる。さらに、送信共振器402の残りの部分を熱伝導性にすると、患者の生体組織から逃がした熱が面480の全体に広がり、これにより、冷却が改善される。
【0039】
さらに、送信共振器402のギャップ444に様々な材料を配置することにより、熱性能がさらに改善される。例えば、
図6Aは、送信共振器402のギャップ444に熱伝導性アルミナが充填された無線電力伝送システム400の熱
図600である。対照的に、
図6Bは、送信共振器402のギャップ444に断熱フォーム(例えば、ポリウレタンまたはポリスチレンベースの発泡体)が充填された無線電力伝送システム400の熱
図602である。
図600及び
図602における図中の矢印は、熱流の方向及び大きさを示す。
図600及び
図602に示すように、アルミナを使用した場合に、送信共振器の高温中心からより多くの熱を逃がすことできる。
【0040】
例えば、実験中に、送信共振器402の第1のハウジング412がプラスチック製(例えば、PEEK)である場合、受信共振器404の表面の最大温度上昇は、送信共振器402のギャップ444に発泡体が充填された場合には摂氏2.81度であったが、送信共振器402のギャップ444にアルミナが充填された場合には、摂氏2.39度だけであることが分かった。
【0041】
別の実施例では、プラスチック製のハウジングを、熱伝導性アルミナ製のハウジングに置き換えた。この場合、受信共振器404の表面の最大温度上昇は、2.42℃から2.22℃に低減した。注目すべきことには、受信共振器404の温度上昇の低減は有益である。
【0042】
本明細書で説明した実施形態は、無線電力伝送システムで使用するための送信共振器に関する。無線電力伝送システムで使用するための本開示の送信共振器は、環状溝を画定するコアと、環状溝内に配置されたコイル素子と、コア及びコイル素子を取り囲むハウジングと、を含む。ハウジングは、ケーシングと、金属板と、を有し、金属板は、無線電力伝送システムの動作中に、送信共振器における、受信共振器と反対になる側に配置され、無線電力伝送システムの遠方場電磁放射の低減、及び、無線電力伝送システムの冷却の改善を促進する。
【0043】
本開示の実施形態及び実施例を、特定の実施形態を参照して説明したが、これらの実施形態及び実施例は、本開示の原理及び適用の単なる例示であることを理解されたい。したがって、特許請求の範囲によって定義される本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態及び実施例に対して様々な変更を加えたり、他の構成を考案したりすることができることを理解されたい。したがって、本出願は、それらの実施形態の改変例や変形例、及びそれらの均等物を包含することを意図している。
【0044】
本明細書は、実施例を用いて、最良の実施の形態(ベストモード)を含む本発明の内容を開示し、かつ、本開示を当業者が実施(任意の装置またはシステムの作製及び使用、並びに組み込まれた任意の方法の実施を含む)することを可能にする。本発明の特許される技術範囲は、特許請求の範囲の請求項の記載によって定義され、当業者が想到可能な別の実施例も包含する。そのような別の実施例は、請求項の文言と相違しない構成要素を含む場合、または、請求項の文言とは実質的に相違しない均等な構成要素を含む場合、その請求項の範囲内に含まれるものとする。
【国際調査報告】