(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】電解セルを封止するための方法および封止された電解セル
(51)【国際特許分類】
C25B 13/08 20060101AFI20241121BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20241121BHJP
C25B 1/34 20060101ALI20241121BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20241121BHJP
C25B 9/19 20210101ALI20241121BHJP
【FI】
C25B13/08 305
C25B1/04
C25B1/34
C25B9/00 A
C25B9/19
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534085
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(85)【翻訳文提出日】2024-07-23
(86)【国際出願番号】 EP2022084645
(87)【国際公開番号】W WO2023104817
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522219939
【氏名又は名称】ティッセンクルップ・ヌセラ・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コンパニー・コマンディトゲゼルシャフトアウフアクチェン
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100228980
【氏名又は名称】副島 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】トロス,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】アウステンフェルト,セバスティアン
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021AA02
4K021AB01
4K021BA02
4K021BA03
4K021DB49
4K021DC01
4K021DC03
4K021DC15
(57)【要約】
本発明は、少なくとも2つのセル要素(4、5)によって形成されたアノードハーフセル(2)およびカソードハーフセル(3)と、ハーフセル(2、3)を互いに分離するシート状セパレータ(6)と、を備える電解セルを封止するための方法であって、方法が、2つのセル要素(4、5)およびシート状セパレータ(6)を提供することと、2つのセル要素(4、5)間にセパレータ(6)を介在させることおよびセル要素(4、5)のそれぞれのリム領域(9、10)においてセパレータ(6)の各面と2つのセル要素(4、5)との間に封止材(7、8)の層を介在させることと、電解セル(1)を封止することであって、力(F)が、セル要素(4、5)に加えられてリム領域(9、10)を圧縮する、封止することと、を含み、封止材(7、8)が、電気絶縁材料であり、封止するステップの間に、封止材の状態が液体状態から固体状態に変化させられて、封止材(7、8)によってセル要素(4、5)と介在させられたセパレータ(6)との間に接着結合を作り出し、力(F)が、封止材が固化した後に緩和される、方法に関する。本発明はさらに、この方法によって得ることができる封止された電解セルに関する。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのセル要素(4、5)によって形成されたアノードハーフセル(2)およびカソードハーフセル(3)と、前記ハーフセル(2、3)を互いに分離するシート状セパレータ(6)と、を備える電解セル(1)を封止するための方法であって、前記方法(100)が、以下の
・前記2つのセル要素(4、5)および前記シート状セパレータ(6)を提供するステップ(110)、
・前記2つのセル要素(4、5)間に前記セパレータ(6)を介在させるステップ(120)および前記セル要素(4、5)のそれぞれのリム領域(9、10)において前記セパレータ(6)の各面と前記2つのセル要素(4、5)との間に封止材(7、8)の層を介在させるステップ、
・前記電解セル(1)を封止するステップ(130)であって、力(F)が、前記セル要素(4、5)に加えられて前記リム領域(9、10)を圧縮する、封止するステップ(130)
を含む、方法において、
前記封止材(7、8)が、電気絶縁材料であり、前記封止するステップ(130)の間に、前記封止材(7、8)の状態が液体状態から固体状態に変化させられて、前記封止材(7、8)によって前記セル要素(4、5)と前記介在させられたセパレータ(6)との間に接着結合を作り出し、前記力(F)が、前記封止材(7、8)が固化したときに緩和されることを特徴とする、
方法。
【請求項2】
前記封止材(7、8)が、化学硬化性接着剤または溶剤系接着剤であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記封止材(7、8)が、熱可塑性材料であり、前記電解セル(1)を前記封止するステップ(130)が、
・前記封止材(7、8)にエネルギーを入力して前記封止材(7、8)を熱可塑性状態にすること(140)と、
・前記封止材(7、8)が前記熱可塑性状態にある間に、前記セル要素(4、5)と前記介在させられたセパレータ(6)とを結合すること(150)と、
・前記封止材(7、8)の温度を低下させて前記封止材(7、8)を固化させること(160)と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エネルギーが、加熱または超音波によって入力されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記封止材(7、8)が、ポリプロピレン(PP)および/またはポリ塩化ビニル(PVC)を含有することを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記封止するステップ(130)が、
・前記セル要素(4、5)の前記リム領域(9、10)を片側に向かって後方に折り畳むこと(170)
をさらに含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記セル要素(4、5)が、0.8mm以下、特に0.2mm以下の厚さを有する金属シートで作製されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも2つのセル要素(4、5)によって形成されたアノードハーフセル(2)およびカソードハーフセル(3)と、前記ハーフセル(2、3)を互いに分離するシート状セパレータ(6)と、を備える封止された電解セル(1)であって、前記セル要素(4、5)が各々、リム領域(9、10)を有し、かつ前記セパレータ(6)の各面と前記2つのセル要素(4、5)との間に封止材7、8の層を介在させて、電気的に絶縁され封止された様式で前記リム領域(9、10)において互いに取り付けられている、封止された電解セル(1)において、前記封止材(7、8)が、前記セル要素(4、5)間に接着結合を形成し、かつ前記セル要素(4、5)の電気的絶縁および封止を提供する、固化した液体材料であることを特徴とする、封止された電解セル(1)。
【請求項9】
前記封止材(7、8)が、化学硬化型接着剤または乾燥した溶剤系接着剤であることを特徴とする、請求項8に記載の封止された電解セル。
【請求項10】
前記封止材(7、8)が、熱可塑性材料であることを特徴とする、請求項8に記載の封止された電解セル。
【請求項11】
前記封止材(7、8)が、ポリプロピレン(PP)および/またはポリ塩化ビニル(PVC)を含有することを特徴とする、請求項10に記載の封止された電解セル。
【請求項12】
前記シート状セパレータ(6)の縁部(11)が、前記固化した封止材(7、8)内に埋められていることを特徴とする、請求項8から11のいずれか一項に記載の封止された電解セル。
【請求項13】
前記セル要素(4、5)の前記リム領域(9、10)が、片側に向かって後方に折り畳まれていることを特徴とする、請求項8から12のいずれか一項に記載の封止された電解セル。
【請求項14】
前記セル要素(4、5)が、0.8mm以下、特に0.2mm以下の厚さを有する金属シートで作製されていることを特徴とする、請求項8から13のいずれか一項に記載の封止された電解セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の電解セルを封止するための方法および請求項7の前文に記載の封止された電解セルに関する。
【背景技術】
【0002】
水素および/または塩素の大規模生産(すなわち、メガワット範囲)のためのバイポーラ電解槽は、2つの主要な設計カテゴリ、すなわちフィルタプレス設計および単一要素設計に分類することができる。
【0003】
従来のフィルタプレス電解槽では、すべての電解セルを一度に封止するために、シート状セパレータおよびガスケットを隣接する要素間に介在させて複数の要素を積み重ね、スタック全体を圧縮することによって、セルラック内に電解セルのスタックが形成されている。フィルタプレス設計の電解槽では、各セル要素は、1つの電解セルのアノードハーフセルおよび隣接する電解セルのカソードハーフセルをスタック内に形成する。すべてのセルのための封止力は、スタックに沿って延在するタイロッドによって提供されている。
【0004】
単一要素設計の電解槽では、各電解セルは別個に封止されたユニットである。各電解セルは、ハーフシェルの形態の2つのセル要素を備え、2つのセル要素は、セパレータおよびガスケットを間に介在させて、2つのセル要素のリム領域においてボルト締めされている。したがって、各セル要素は電解セルの1つのハーフセルを形成し、ハーフセルはセパレータによって分離されている。電解セルを封止するための封止力は、セル要素のリム領域に沿って円周方向に分配された複数のボルトによって提供されている。
【0005】
両方の設計オプションにおいて、セパレータは、電解槽の意図された目的に応じて、イオン交換膜または多孔質隔膜であり得る。さらに、両方の設計オプションにおいて、各電解セルを形成する2つのセル要素間の短絡は確実に防止されるべきであり、そのため、ガスケットに加えて、通常、電気絶縁材料の少なくとも1つの層を封止前にリム領域内に介在させる。
【0006】
米国特許出願公開第2011/0259735号明細書は、バイポーラ電解槽のフィルタプレス設計および単一要素設計の例を示している。
【0007】
既知のタイプのバイポーラ電解槽は、セルを封止するために組立てに多大な労力がかかるという欠点を有する。フィルタプレス電解槽では、すべてのセルのための封止力は同じ組のタイロッドによって提供されるが、すべてのセパレータ、ガスケット、および絶縁層が一度に正確に位置決めされる必要があるため、セルスタックの封止は複雑で時間がかかる。単一要素電解槽は、動作中に漏れを安全に防止するために、各要素に対して多数のボルト締め接続部を必要とする。さらに、封止力を提供するために必要な構造要素の空間要件は、セル容積に利用可能な空間を減少させ、特に単一要素設計では、従来の封止構成体は各要素の厚さに対して下限を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0259735号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、組立て労力がより少なく、かつ封止構成体の空間要件が低減された、電解セルを封止するための方法および封止された電解セルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1の特徴による電解セルを封止するための方法、および請求項7の特徴を有する封止された電解セルによって達成される。
【0011】
本明細書では、少なくとも2つのセル要素によって形成されたアノードハーフセルおよびカソードハーフセルと、ハーフセルを互いに分離するシート状セパレータと、を備える電解セルを封止するための方法が提供され、方法は、以下の
・2つのセル要素およびシート状セパレータを提供するステップ、
・2つのセル要素間にセパレータを介在させるステップおよびセル要素のそれぞれのリム領域においてセパレータの各面と2つのセル要素との間に封止材の層を介在させるステップ、
・電解セルを封止するステップであって、力が、セル要素に加えられてリム領域を圧縮する、封止するステップ
を含む。
【0012】
本発明によれば、封止材は、電気絶縁材料であり、封止するステップの間に、封止材の状態が液体状態から固体状態に変化させられて、封止材によってセル要素と介在させられたセパレータとの間に接着結合を作り出す。力は、封止材が固化した後に緩和される。
【0013】
セル要素の接着結合を用いて電解セルを封止することにより、もはやボルトを配置して締結する必要がなくなるため、セルの組立てが簡素化される。さらに、接着剤の電気的絶縁特性により、別個の絶縁層を省くことができる。本発明による方法は、電解セルの自動化された製造に特によく適している。加えて、本発明による封止力は封止材とセル要素との間の接着結合によって提供されるため、フィルタプレスタイプの電解槽をセルごとに組み立てることが可能になる。したがって、セルを封止するためにスタックを圧縮する外力はもはや必要とされない。さらに、封止力を維持するための外部構造要素はもはや必要とされないため、本発明の封止構成体の空間要件は特に低く、セルの厚さのさらなる低減を可能にする。
【0014】
いくつかの実施形態では、封止材は、化学硬化性接着剤または溶剤系接着剤である。化学硬化性および溶剤系接着剤は、高温および/または過酷な化学薬品に耐えることができる特に強力な接着結合であるという利点を有する。封止材として接着剤を使用する場合、封止材の層は、粘性の液体状態の接着剤を両方のセル要素のリム領域に適用することによって介在されることが好ましい。
【0015】
他の実施形態では、封止材は、熱可塑性材料であり、電解セルを封止するステップは、
・封止材にエネルギーを入力して封止材を熱可塑性状態にすることと、
・封止材が熱可塑性状態にある間に、セル要素と介在させられたセパレータとを結合することと、
・封止材の温度を低下させて封止材を固化させることと、
を含む。
【0016】
熱可塑性材料は、容易かつ非破壊的な方法で電解セルを開放および再封止する可能性をもたらすという利点を有する。メンテナンス、例えばセパレータの交換のために、熱可塑性材料が再び熱可塑性状態になり、セル要素を分離できるようになるまで、リム領域を加熱することができる。
【0017】
熱可塑性材料が封止材として使用される場合、接着結合は、封止材の層が最初にセル要素に結合され、次いで封止材の2つの層が封止ステップにおいて互いにおよびセパレータに結合される、2ステッププロセスで作り出され得る。第1の結合は、例えば、2つのセル要素が提供されたときに、既に存在していてもよく、すなわちセル要素には、それらのリム領域内に熱可塑性材料のコーティングが設けられている。あるいは、第1の結合は、封止材を介在させるステップの間に、または封止するステップの間に作り出されてもよい。
【0018】
熱可塑性材料は、異なるタイプのエネルギー供給によって熱可塑性状態にすることができる。最も単純な場合、エネルギーはリム領域の加熱によって入力される。エネルギーを入力する別の可能な方法は、超音波による封止材の層の熱溶着である。
【0019】
電解セルを封止するために特に好ましいのは、ポリプロピレン(PP)、特にアタクチックポリプロピレン(PP-R)、および/またはポリ塩化ビニル(PVC)を含有する熱可塑性材料である。
【0020】
好ましくは、封止するステップは、セル要素のリム領域を片側に向かって後方に折り畳むことをさらに含む。両方のリム領域を同じ側に向かって、例えば120°~180°だけ後方に折り畳むことにより、セルの封止をさらに支持するセル要素の機械的な絡み合いが達成される。特に、折り目は形状ロックによって接着結合を圧力から解放するため、折り目は上昇した内圧で動作させられる電解セルにおいて有利である。
【0021】
好ましい実施形態では、セル要素は、0.8mm以下の厚さを有する金属シートで作製されている。好ましい金属は、ニッケルおよび/またはチタンである。本発明による封止概念により、0.2mm以下の厚さを有する金属箔から電解セルを製造することさえ考えられる。
【0022】
問題は、少なくとも2つのセル要素によって形成されたアノードハーフセルおよびカソードハーフセルと、ハーフセルを互いに分離するシート状セパレータと、を備える封止された電解セルによってさらに解決される。セル要素は各々、リム領域を有し、かつセパレータの各面と2つのセル要素との間に封止材の層を介在させて、電気的に絶縁され封止された様式でリム領域において互いに取り付けられている。本発明によれば、封止材は、セル要素間に接着結合を形成し、かつセル要素の電気的絶縁および封止を提供する、固化した液体材料である。
【0023】
本発明の封止された電解セルの主な利点は、封止力が接着結合によって提供され、封止力を維持するための外部構造要素を省くことができることである。したがって、このタイプの電解セルを使用する電解槽は、利用可能な空間をより有効に使用し、セルをより低い機械的応力下で動作させることができる。さらに、封止構成体は厚さが低減された電解セルを設計する可能性をもはや制限しない。
【0024】
特定の実施形態では、封止材は、化学硬化型接着剤または乾燥した溶剤系接着剤である。
【0025】
他の実施形態では、封止材は、熱可塑性材料である。特に、封止材は、ポリプロピレン(PP)および/またはポリ塩化ビニル(PVC)を含有することが好ましい。
【0026】
好ましい実施形態では、シート状セパレータの縁部は、固化した封止材内に埋められている。したがって、セパレータの毛細管効果による漏れのリスクも回避することができる。これは、多孔質隔膜がセパレータとして使用される場合、多孔質隔膜は、多孔質隔膜がセル要素のリム領域間をセルの外部まで延在する場合に毛細管力によって漏れの問題を引き起こすことが知られているため、特に有利である。
【0027】
さらに、セル要素のリム領域は、セル要素間に機械的形態のロックを提供するように、片側に向かって後方に折り畳まれていることが好ましい。
【0028】
セル要素は、好ましくは、0.8mm以下、特に0.2mm以下の厚さを有する金属シートで作製されている。好ましい金属は、ニッケルおよび/またはチタンである。
【0029】
特に、本発明は、工業規模の電解セルに関する。したがって、本発明による電解セルのセパレータは、好ましくは0.5m2~4m2の面積を有する。さらに、電解セルは、好ましくは少なくとも3kA/m2の電流密度に構成されている。
【0030】
本発明のさらなる利点は、添付の図面に示された実施形態に関して以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】電解セルを封止するための本発明の方法を示すフロー図を概略的に示す。
【
図2A】本発明による単一要素タイプの封止された電解セルの製作の一段階を概略的に示す。
【
図2B】本発明による単一要素タイプの封止された電解セルの製作の別の段階を概略的に示す。
【
図2C】本発明による単一要素タイプの封止された電解セルの製作のさらに別の段階を概略的に示す。
【
図3A】本発明によるフィルタプレスタイプの封止された電解セルの製作の一段階を概略的に示す。
【
図3B】本発明によるフィルタプレスタイプの封止された電解セルの製作の別の段階を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図面において、同じ部分は一貫して同じ参照符号によって識別され、したがって、一般には一度だけ記載され参照される。
【0033】
図1には、電解セルを封止するための方法100のフロー図が示されており、ステップの順序を抽象的な方法で示している。
図2Aは、方法の封止ステップ前の状態の電解セルを示しており、
図2Bは、封止された電解セル1の一実施形態を示している。
図2Cは、後方に折り畳まれたリム領域を有する封止された電解セル1の異なる実施形態を示している。方法ステップは、
図1および
図2Aから
図2Cを参照して以下に説明される。
【0034】
ステップ110の本発明の方法によれば、2つのセル要素4、5およびシート状セパレータ6が提供される。ステップ120において、セパレータ6は、2つのセル要素4、5間に介在させられ、封止材7、8の層は、セル要素4、5のそれぞれのリム領域9、10においてセパレータ6の各面と2つのセル要素4、5との間に介在させられる。
図2Aは、ステップ120後の組立て段階における電解セルを示している。
【0035】
ステップ130において、電解セル1が封止され、ここでは力Fがセル要素4、5に加えられてリム領域9、10を圧縮する。封止材7、8は電気絶縁材料であり、封止ステップ130の間、封止材7、8の状態は液体状態から固体状態に変化させられて、封止材7、8によってセル要素4、5と介在させられたセパレータ6との接着結合を作り出す。力Fは、封止材7、8が固化した後に緩和される。
図2Bは、ステップ130後の封止された電解セル1を示している。
【0036】
封止材7、8は化学硬化性接着剤であってもよいし、溶剤系接着剤であってもよい。
【0037】
図1に示す方法では、封止材7、8は熱可塑性材料である。したがって、電解セル1を封止するステップ130は、エネルギーをリム領域9、10に入力して封止材7、8を熱可塑性状態にするステップ140と、封止材7、8が熱可塑性状態にある間にセル要素4、5と介在させられたセパレータ6とを結合するステップ150と、封止材7、8の温度を低下させて封止材7、8を固化させるステップ160と、をさらに含む。好ましくは、封止材7、8は、ポリプロピレン(PP)および/またはポリ塩化ビニル(PVC)を含有する。
【0038】
例えば、エネルギーは、封止材がその熱可塑性状態にある温度までリム領域9、10を加熱することによって入力され得る。封止材7、8の温度を低下させることは、例えば、温度を周囲温度に安定させることによって、またはリム領域9、10の能動的冷却によって達成され得る。
【0039】
好ましくは、
図1に示すように、封止するステップ130は、セル要素4、5のリム領域9、10をセパレータの片面に対して後方に折り畳むこと170をさらに含む。折り畳むこと170は、封止材が固化した後、またはその前のいずれかに実行され得る。特に、化学硬化性接着剤または溶剤系接着剤を使用する場合、折り畳むこと170は、接着剤が固化する前に実行されることが好ましい。
図2Cは、折り畳むステップ170後の封止されたセル1の一実施形態を示している。
【0040】
本発明の方法に従って製造された封止された電解セル1が
図2Bに示されている。封止された電解セル1は、少なくとも2つのセル要素4、5によって形成されたアノードハーフセル2およびカソードハーフセル3と、ハーフセル2、3を互いに分離するシート状セパレータ6と、を備える。
【0041】
アノードハーフセル2およびカソードハーフセル3は、それぞれアノードおよびカソードを包有する(図示されていない)。アノードおよびカソードは、それぞれのセル要素4、5に一体に接合されてもよく、または別個の構成要素として構成されてもよい。
【0042】
セル要素4、5は各々、リム領域9、10を有し、かつセパレータ6の各面と2つのセル要素4、5との間に封止材7、8の層を介在させて、電気的に絶縁され封止された様式でリム領域9、10において互いに取り付けられている。封止されたセル1の封止材7、8は、セル要素4、5間に接着結合を形成し、かつセル要素4、5の電気的絶縁および封止を提供する、固化した液体材料である。
【0043】
固化した封止材は、化学硬化型接着剤または乾燥した溶剤系接着剤である。あるいは、封止材は、熱可塑性材料であり得る。特に、封止材は、ポリプロピレン(PP)および/またはポリ塩化ビニル(PVC)を含有し得る。
【0044】
図2Bに示すように、シート状セパレータ6の縁部11は、固化した封止材内に埋められていることが好ましい。したがって、シート状セパレータ6は、リム領域9、10を通ってセルの外部に延在するのではなく、セル要素4、5間の接着結合内に形状嵌合様式で閉じ込められている。
【0045】
セル要素4、5は、好ましくは、0.8mm以下の厚さを有する金属シートで作製される。特に、セル要素は、0.1mm以下の厚さを有する金属箔で作製されることが考えられる。好ましい金属は、ニッケルおよびチタンである。
【0046】
電解セル1は、アルカリ水電解またはクロルアルカリ電解用に構成されることが好ましい。
【0047】
図2Cは、封止された電解セル11の一実施形態を示しており、ここではセル要素4、5のリム領域9、10は片側に向かって後方に折り畳まれている。したがって、他のすべての点で、
図2Aに示す実施形態の説明は、
図2Bに示す実施形態に適用可能である。
【0048】
図2Bおよび
図2Cの実施形態は、単一要素設計の電解セル1に関する。電解セル1は別個のユニットとして構成されており、セル要素4、5の裏面を隣接するセルに当接させることによって電気的に直列に接続することができる。これにより、電解セル1のスタックを構築し、スタックの最も外側のセルの外側上に電源を設けることができる。
【0049】
図3Aおよび
図3Bは、フィルタプレスタイプの方法および封止されたセル1の一実施形態を示している。各セル要素4、5は、隣接するセルのアノードハーフセル2およびカソードハーフセル3を提供する。複数のセル要素4、5は、フィルタプレスタイプの電解セル1のスタックに対して各々1つのセパレータ6を介在させて互いに1つずつ封止され得る。
【0050】
したがって、他のすべての点で、
図2Aおよび
図2Bに示す実施形態の説明は、
図3Aおよび
図3Bに示す実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 電解セル
2 アノードハーフセル
3 カソードハーフセル
4、5 セル要素
6 セパレータ
7、8 封止材
9、10 リム領域
11 セパレータの縁部
100 電解セルを封止するための方法
110 セル要素およびセパレータを提供する
120 セル要素間にセパレータおよび封止材を介在させる
130 電解セルを封止する
140 リム領域にエネルギーを入力する
150 セル要素とセパレータとを結合する
160 リム領域の温度を下げる
170 リム領域を折り畳む
F 圧縮力
【手続補正書】
【提出日】2024-07-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのセル要素(4、5)によって形成されたアノードハーフセル(2)およびカソードハーフセル(3)と、前記ハーフセル(2、3)を互いに分離するシート状セパレータ(6)と、を備える電解セル(1)を封止するための方法であって、前記方法(100)が、以下の
・前記2つのセル要素(4、5)および前記シート状セパレータ(6)を提供するステップ(110)、
・前記2つのセル要素(4、5)間に前記セパレータ(6)を介在させるステップ(120)および前記セル要素(4、5)のそれぞれのリム領域(9、10)において前記セパレータ(6)の各面と前記2つのセル要素(4、5)との間に封止材(7、8)の層を介在させるステップ、
・前記電解セル(1)を封止するステップ(130)であって、力(F)が、前記セル要素(4、5)に加えられて前記リム領域(9、10)を圧縮する、封止するステップ(130)
を含む、方法において、
前記封止材(7、8)が、電気絶縁材料であり、前記封止するステップ(130)の間に、前記封止材(7、8)の状態が液体状態から固体状態に変化させられて、前記封止材(7、8)によって前記セル要素(4、5)と前記介在させられたセパレータ(6)との間に接着結合を作り出し、前記力(F)が、前記封止材(7、8)が固化したときに緩和されることを特徴とする、
方法。
【請求項2】
前記封止材(7、8)が、化学硬化性接着剤または溶剤系接着剤であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記封止材(7、8)が、熱可塑性材料であり、前記電解セル(1)を前記封止するステップ(130)が、
・前記封止材(7、8)にエネルギーを入力して前記封止材(7、8)を熱可塑性状態にすること(140)と、
・前記封止材(7、8)が前記熱可塑性状態にある間に、前記セル要素(4、5)と前記介在させられたセパレータ(6)とを結合すること(150)と、
・前記封止材(7、8)の温度を低下させて前記封止材(7、8)を固化させること(160)と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エネルギーが、加熱または超音波によって入力されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記封止材(7、8)が、ポリプロピレン(PP)および/またはポリ塩化ビニル(PVC)を含有することを特徴とする、請求項
3に記載の方法。
【請求項6】
前記封止するステップ(130)が、
・前記セル要素(4、5)の前記リム領域(9、10)を片側に向かって後方に折り畳むこと(170)
をさらに含むことを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記セル要素(4、5)が、0.8mm以
下の厚さを有する金属シートで作製されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記セル要素(4、5)が、0.2mm以下の厚さを有する金属シートで作製されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも2つのセル要素(4、5)によって形成されたアノードハーフセル(2)およびカソードハーフセル(3)と、前記ハーフセル(2、3)を互いに分離するシート状セパレータ(6)と、を備える封止された電解セル(1)であって、前記セル要素(4、5)が各々、リム領域(9、10)を有し、かつ前記セパレータ(6)の各面と前記2つのセル要素(4、5)との間に封止材7、8の層を介在させて、電気的に絶縁され封止された様式で前記リム領域(9、10)において互いに取り付けられている、封止された電解セル(1)において、前記封止材(7、8)が、前記セル要素(4、5)間に接着結合を形成し、かつ前記セル要素(4、5)の電気的絶縁および封止を提供する、固化した液体材料であることを特徴とする、封止された電解セル(1)。
【請求項10】
前記封止材(7、8)が、化学硬化型接着剤または乾燥した溶剤系接着剤であることを特徴とする、請求項
9に記載の封止された電解セル。
【請求項11】
前記封止材(7、8)が、熱可塑性材料であることを特徴とする、請求項
9に記載の封止された電解セル。
【請求項12】
前記封止材(7、8)が、ポリプロピレン(PP)および/またはポリ塩化ビニル(PVC)を含有することを特徴とする、請求項
11に記載の封止された電解セル。
【請求項13】
前記シート状セパレータ(6)の縁部(11)が、前記固化した封止材(7、8)内に埋められていることを特徴とする、請求項
9に記載の封止された電解セル。
【請求項14】
前記セル要素(4、5)の前記リム領域(9、10)が、片側に向かって後方に折り畳まれていることを特徴とする、請求項
9に記載の封止された電解セル。
【請求項15】
前記セル要素(4、5)が、0.8mm以
下の厚さを有する金属シートで作製されていることを特徴とする、請求項
9から
14のいずれか一項に記載の封止された電解セル。
【請求項16】
前記セル要素(4、5)が、0.2mm以下の厚さを有する金属シートで作製されていることを特徴とする、請求項9から14のいずれか一項に記載の封止された電解セル。
【国際調査報告】