(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】スチレンブロック共重合体を有するホットメルト接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 153/02 20060101AFI20241121BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20241121BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20241121BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C09J153/02
C09J11/06
C09J11/08
A61F13/53 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534104
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2022084442
(87)【国際公開番号】W WO2023104726
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501305888
【氏名又は名称】ボスティク エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベリーニ, クレマン
(72)【発明者】
【氏名】デュプラガ, ウルシュラ
【テーマコード(参考)】
3B200
4J040
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA16
3B200BB20
3B200DB01
3B200DB02
3B200EA23
4J040BA182
4J040BA202
4J040DM011
4J040JB01
4J040KA26
4J040KA31
4J040LA08
4J040MA09
4J040MA10
4J040MB02
4J040MB03
4J040NA02
4J040NA05
(57)【要約】
本発明は、a)22重量%~60重量%の少なくとも1つのスチレンブロック共重合体(A)(「SBC(A)」と指定される)であって、少なくとも1つの線状スチレンブロック共重合体(A1)と、任意選択的に少なくとも1つのスチレンジブロック共重合体(A2)とを含み、前記スチレンブロック共重合体(A)が、-SBC(A)の全重量に基づいて38重量%以上のスチレン含有量と、-SBC(A)の全重量に基づいて0重量%~10重量%の範囲のジブロック含有量とを有する、少なくとも1つのスチレンブロック共重合体(A);b)0.1重量%~5重量%の少なくとも1つのワックスであって、60℃以上の凝固点及び25℃で2dmm以下の針貫入を有する、少なくとも1つのワックスを含む、ホットメルト接着剤組成物に関し、該ホットメルト接着剤組成物は、120℃で30,000mPa・s以上の粘度、及び177℃で5,000mPa・s以下の粘度を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)22重量%~60重量%の少なくとも1つのスチレンブロック共重合体(A)(「SBC(A)」と指定される)であって、
● 少なくとも1つの線状スチレンブロック共重合体(A1)、および
● 任意選択的に少なくとも1つのスチレンジブロック共重合体(A2)
を含み
- SBC(A)の全重量に基づいて、38重量%以上のスチレン含有量;及び
- SBC(A)の全重量に基づいて、0重量%~10重量%の範囲のジブロック含有量
を有する、少なくとも1つのスチレンブロック共重合体(A)と、
b)0.1重量%~5重量%の少なくとも1つのワックスであって、60℃以上の凝固点及び25℃で2dmm以下の針貫入を有する、少なくとも1つのワックスと
を含む、ホットメルト接着剤組成物であって、
前記ホットメルト接着剤組成物は、120℃で30,000mPa・s以上の粘度、及び177℃で5,000mPa・s以下の粘度を有するホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
スチレンブロック共重合体(A)のジブロック含有量が、SBC(A)の全重量に基づいて、0重量%~5重量%、さらに好ましくは0重量%~2重量%、さらになお好ましくは0重量%~1重量%の範囲にある、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項3】
スチレンブロック共重合体(A)が、前記スチレンブロック共重合体(A)の全重量に基づいて、38重量%~70重量%、さらに好ましくは38重量%~60重量%、さらになお好ましくは40重量%~50重量%の範囲のスチレン含有量を有する、請求項1又は2に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項4】
線状スチレンブロック共重合体(A1)が、次の線状トリブロック共重合体:スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン共重合体(SBBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)、及びそれらの任意の混合物から選択され;さらに好ましくは、線状スチレンブロック共重合体(A1)が、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項5】
ジブロックスチレン共重合体(A2)が、次のジブロック共重合体:スチレン-ブタジエンジブロック共重合体(SB)、スチレン-イソプレンジブロック共重合体(SI)、スチレン-エチレン-ブチレンジブロック共重合体(SEB)、スチレン-エチレン-プロピレンジブロック共重合体(SEP)、スチレン-ブチレン-ブテン(SBB)、及びそれらの混合物から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項6】
スチレンブロック共重合体(A)が、20g/10分以上、好ましくは30g/10分以上のメルトフローインデックス(200℃/5kg)を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項7】
(一又は複数の)スチレンブロック共重合体(A)の全含有量が、ホットメルト接着剤組成物の全重量に基づいて、25重量%~50重量%、さらに好ましくは25重量%~40重量%、さらになお好ましくは27重量%~37重量%の範囲にある、請求項1から6のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項8】
ホットメルト接着剤組成物の全重量に基づいて、1重量%~5重量%、好ましくは1.5%~4.0%、さらになお好ましくは2.0重量%~4.0重量%の請求項1に記載される少なくとも1つのワックスを含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項9】
ワックスが合成ワックスであり、好ましくは合成ワックスが、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリオレフィンワックス、及びそれらの混合物からなる群より選択され、さらに好ましくは、該ワックスがフィッシャー・トロプシュワックスである、請求項1から8のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項10】
ワックスが、65℃以上、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは75℃以上の凝固点を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項11】
ワックスの針貫入が1dmm以下である、請求項1から10のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項12】
前記ホットメルト接着剤組成物の全重量に対して、約0重量%~約40重量%、好ましくは約5重量%~約35重量%、さらに好ましくは約10重量%~約30重量%の(一又は複数の)可塑剤を含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの粘着付与樹脂であって、好ましくは、
- i)好ましくは10℃~120℃の軟化点を有するテルペン樹脂のホモポリマー、
- ii)アルファ-メチルスチレンと、例えばスチレン、ビニルトルエン、及びそれらの混合物などの他の炭化水素コモノマーとの共重合によって得られる樹脂、
- iii)フェノール変性テルペン樹脂、
- iv)天然及び変性ロジン、例えば、ガンロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、蒸留ロジン、水素化ロジン、二量化ロジン、及び重合ロジンなど、
- v)天然及び変性ロジンのグリセロールエステル及びペンタエリスリトールエステル、例えば、ペールウッドロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、ペールウッドロジンのペンタエリスリトールエステル、水素化ロジンのペンタエリスリトールエステル、トール油ロジンのペンタエリスリトールエステル、及びロジンのフェノール変性ペンタエリスリトールエステルなど、
- vi)脂肪族及び脂環式の、石油由来の炭化水素樹脂(後者の樹脂は特に、主に脂肪族又は脂環式のオレフィン及びジオレフィンからなるモノマーの重合から生じる)、
- vii)脂肪族/芳香族の、石油由来の炭化水素樹脂及びその水素化誘導体、
- viii)それらの混合物
からなる群より選択される、少なくとも1つの粘着付与樹脂
をさらに含むことを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項14】
例えば、ビニルトルエン、スチレン、アルファ-メチルスチレン、又はインデンなどの芳香族モノマーの純粋なモノマーストリームに基づく芳香族樹脂を含まないことを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項15】
120℃で50,000mPa・s以上、さらに好ましくは80,000mPa・s以上の粘度を有することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項16】
177℃で、4,000mPa・s以下、さらに好ましくは3,000mPa・s以下の粘度を有することを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項17】
例えば、おむつ、成人用失禁用品、ベッドパッド、生理用ナプキン、医療用包帯、包帯などの使い捨て吸収性物品の製造のための請求項1から15のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物の使用。
【請求項18】
コア安定化接着剤としての請求項1から16のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物の使用。
【請求項19】
請求項1から16のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物を含む、使い捨て吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレンブロック共重合体とワックスとを含むホットメルト接着剤組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、コア安定化接着剤としての前記ホットメルト接着剤組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
おむつ、大人用失禁用品、生理用ナプキンなどの吸収性物品は、定番製造品としてよく知られている。全体的にフィット感が良好で、吸収力の高いものを提供するために、さまざまな試みがなされている。
【0004】
典型的な吸収性物品は、トップシートとバックシートとの間に挟まれた、吸収性コアを備えている。吸収性コアには、概して、例えばおむつの場合の尿など、大量の体液を貯蔵可能な吸収性ポリマー材料が含まれている。吸収性コアには、コア構造の固定化を可能にする接着剤も含まれている。これらの接着剤は、吸収性コアを吸収性物品のトップシート及びバックシートに接着するために用いられる接着剤とは異なる。
【0005】
吸収性物品は、概して、乾いた状態でも濡れた状態でも長時間着用することができる使い捨て製品である。着用時の良好な快適性を提供するためには、物品が乾燥しているとき、又はコアが(尿又は他の体液で)完全に/部分的に湿っている膨張中の両方で、おむつ又は他の吸収性物品に含まれる吸収性コアの吸収性材料/ネットワークを適所に保つことが重要である。
【0006】
ホットメルト接着剤組成物は、基材同士を接着するため、又は使い捨て吸収性物品の完全性及び機能性を高めるためによく用いられる。ホットメルト接着剤にスチレン含有量が高いスチレンブロック共重合体を使用することによって吸収性コアの高い凝集力を得るための幾つかの試みがなされてきた。しかしながら、このようなホットメルト接着剤は粘度が高すぎて基材への塗布が困難となり(加工性に乏しいなど)、高温で塗布する必要があるため基材(薄い基材など)が損傷する可能性があり、また多くのエネルギーが必要になる。
【発明の概要】
【0007】
したがって、とりわけ吸収性コアにおいて、良好な接着性及び凝集性を示しつつ、適切な粘度(良好な加工性など)を有するホットメルト接着剤組成物を提供する必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ホットメルト接着剤組成物
本発明は、ホットメルト接着剤組成物であって、
a)22重量%~60重量%の少なくとも1つのスチレンブロック共重合体(A)(「SBC(A)」と指定される)であって、
● 少なくとも1つの線状スチレンブロック共重合体(A1)、及び
● 任意選択的に少なくとも1つのスチレンジブロック共重合体(A2)
を含み、
- SBC(A)の全重量に基づいて、38重量%以上のスチレン含有量、及び
- SBC(A)の全重量に基づいて、0重量%~10重量%の範囲のジブロック含有量
を有する、スチレンブロック共重合体(A)と、
b)0.1重量%~5重量%の少なくとも1つのワックスであって、60℃以上の凝固点及び25℃で2dmm以下の針貫入を有する、少なくとも1つのワックスと
を含むホットメルト接着剤組成物に関し、
該ホットメルト接着剤組成物は、120℃で30,000mPa・s以上の粘度、及び177℃で5,000mPa・s以下の粘度を有する。
【0009】
スチレンブロック共重合体(A)
スチレンブロック共重合体(A)(「SBC(A)」と指定される)は、次のもの:
● 少なくとも1つの線状スチレンブロック共重合体(A1)と、
● 任意選択的に少なくとも1つのスチレンジブロック共重合体(A2)と
を含み、好ましくは本質的にそれらからなり、さらに好ましくはそれらからなり、
前記スチレンブロック共重合体(A)は、
- SBC(A)の全重量に基づいて、38重量%以上のスチレン含有量、及び
- SBC(A)の全重量に基づいて、0重量%~10重量%の範囲のジブロック含有量
を有する。
【0010】
スチレンブロック共重合体(A)は、(一又は複数の)線状スチレンブロック共重合体(A1)のみを含むことができ、スチレンジブロック共重合体(A2)を含まないか、あるいは、少なくとも1つの線状スチレンブロック共重合体(A1)と少なくとも1つのスチレンジブロック共重合体(A2)とのブレンドを含むことができる。ブレンドは、例えば、2つの異なる線状スチレンブロック共重合体(A1)と1つのスチレンジブロック共重合体(A2)、又は3つの異なる線状スチレンブロック共重合体(A1)と2つの異なるジブロック共重合体(A2)、又は1つの線状スチレンブロック共重合体(A1)と1つのスチレンジブロック共重合体(A2)でありうる。
【0011】
SBC(A)に含まれる(一又は複数の)スチレンブロック共重合体、特に(A1)と、任意選択的な(A2)は、スチレン系ポリマーである少なくとも1つの非弾性ブロックA’と、共役ジエン系ブロックポリマーである少なくとも1つの弾性ブロックXとを含み、前記共役ジエン系ブロックポリマーは、水素化されていないことが好ましい。
【0012】
線状スチレンブロック共重合体(A1)(「SBC(A1)」)とは、少なくとも3つのブロックの線状スチレン-共役ジエン系ブロック共重合体を指す。
【0013】
特に、線状SBC(A1)は、次の式(1)のトリブロックSBC、又は次の式(2)のマルチブロックSBCでありうる:
[式中、
-A’は、スチレン系ポリマー、好ましくはポリスチレンの非弾性ブロックであり、
-Xは共役ジエンブロックポリマーの弾性ブロックであり、前記共役ジエンは好ましくはブタジエン、イソプレン、及びそれらの混合物から選択され、
-mは、少なくとも1の整数である]。
【0014】
スチレンジブロック共重合体(A2)(「ジブロック(A2)」)は、スチレン-共役ジエン系ジブロック共重合体、すなわち、スチレン系ポリマー(好ましくはポリスチレン)である1つの非弾性ブロックA’と、共役ジエン系ブロックポリマーである1つの弾性ブロックXとを含む2ブロック共重合体であり、前記共役ジエン系ブロックポリマーは、水素化されていないことが好ましい。
【0015】
スチレンジブロック共重合体(A2)は、次の式(3)で表すことができる:
A’-X (3)
[式中、
-A’は、スチレン系ポリマー、好ましくはポリスチレンの非弾性ブロックであり、
-Xは共役ジエンブロックポリマーの弾性ブロックであり、前記共役ジエンは好ましくはブタジエン、イソプレン、及びそれらの混合物から選択される]。
【0016】
SBC(A)中のジブロック含有量とは、SBC(A)に含まれる(一又は複数の)スチレンジブロック共重合体(A2)の重量による割合を指す。
【0017】
好ましくは、ジブロック含有量は、SBC(A)の全重量に基づいて、0重量%~5重量%、さらに好ましくは0重量%~2重量%、さらになお好ましくは0重量%~1重量%の範囲にある。
【0018】
SBC(A)中のスチレン含有量とは、SBC(A)のスチレンブロック共重合体に含まれるスチレン系ポリマーブロックの重量による割合を指す。
【0019】
好ましくは、SBC(A)は、該SBC(A)の全重量に基づいて、38重量%~70重量%、さらに好ましくは38重量%~60重量%、さらになお好ましくは40重量%~50重量%の範囲のスチレン含有量を有する。
【0020】
一実施形態では、ホットメルト接着剤組成物は、2種類以上の異なるスチレンブロック共重合体(A)の混合物を含む。
【0021】
ホットメルト接着剤組成物が異なるスチレンブロック共重合体(A)(2種類以上)の混合物を含む実施形態では、前記混合物の全体的なスチレン含有量は、前記混合物の全重量に基づいて、少なくとも40重量%、好ましくは40重量%~60重量%、さらになお好ましくは42重量%~50重量%を占めることができる。
【0022】
ホットメルト接着剤組成物が異なるスチレンブロック共重合体(A)(2種類以上)の混合物を含む実施形態では、前記混合物の全体的なジブロック含有量は、前記混合物の全重量に基づいて、0重量%~5重量%、さらに好ましくは0重量%~2重量%、さらになお好ましくは0重量%~1重量%の範囲にありうる。
【0023】
線状スチレンブロック共重合体(A1)は、次の線状トリブロック共重合体:スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン共重合体(SBBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)、及びそれらの任意の混合物から選択することができる。好ましくは、線状スチレンブロック共重合体(A1)は、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0024】
ジブロックスチレン共重合体(A2)は、次のジブロック共重合体:スチレン-ブタジエンジブロック共重合体(SB)、スチレン-イソプレンジブロック共重合体(SI)、スチレン-エチレン-ブチレンジブロック共重合体(SEB)、スチレン-エチレン-プロピレンジブロック共重合体(SEP)、スチレン-ブチレン-ブテン(SBB)、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0025】
線状SBC(A1)と任意選択的なジブロック(A2)との弾性ブロック(式(1)、(2)、及び(3)のXに相当)を形成する共役ジエン系ブロックポリマーは、同じであることが好ましい。より好ましくは、SBC(A)はスチレン-ブタジエン系であり、これは、線状SBC(A1)とジブロック共重合体(A2)との弾性ブロックを形成する共役ジエン系ブロックポリマーがポリブタジエンであり、したがって、式(3)、(4)、及び(5)において、B’はポリブタジエンの弾性ブロックであることを意味する。
【0026】
スチレンブロック共重合体(A)は、好ましくは、20g/10分以上、さらに好ましくは30g/10分以上のメルトフローインデックス(200℃/5kg)を有する。
【0027】
ホットメルト接着剤が異なるブロック共重合体(A)の混合物を含む実施形態では、混合物の平均メルトフローインデックスは、好ましくは20g/10分以上(200℃/5kg)、さらに好ましくは30g/10分以上である。混合物の平均メルトフローインデックスは、スチレンブロック共重合体(A)の混合物の全重量と比較した、異なるスチレンブロック共重合体(A)の各々の重量パーセンテージに関連して計算される。
【0028】
メルトフローインデックスは、ASTM D1238に準拠して200℃/5kgで測定することができる。
【0029】
有用なスチレンブロック共重合体(A)は、少なくとも1つの置換又は非置換スチレンモノマーと少なくとも1つの共役ジエンモノマーとから、当技術分野でよく知られている任意のブロック重合方法によって調製することができ、本発明に従って用いられる線状型スチレンブロック共重合体と任意選択的なスチレンジブロック共重合体との混合物を形成することができる。
【0030】
有用なSBC(A)は市販もされている。市販されている有用なSBC(A)の例として、特に以下のものが挙げられる:
-Vector(登録商標)4411(TSRC社から販売される、線状スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体であり、44重量%の範囲のスチレン含有量及び1重量%未満のジブロック含有量を有する);
- Kraton(登録商標)D1162(KRATON社から販売される、線状スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体であり、43重量%の範囲のスチレン含有量及び1重量%未満のジブロック含有量を有する);
-Taipol(登録商標)4202(TSRC社から販売される、線状スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体であり、40重量%のスチレン含有量及び1重量%未満のジブロック含有量を有する)。
【0031】
好ましくは、(一又は複数の)スチレンブロック共重合体(A)の総含有量は、ホットメルト接着剤組成物の全重量に基づいて、25重量%~50重量%、さらに好ましくは25重量%~40重量%、さらになお好ましくは27重量%~37重量%の範囲にある。
【0032】
ワックス
ホットメルト接着剤組成物は、ホットメルト接着剤組成物の全重量に基づいて、上述の少なくとも1つのワックスを、0.1%~5重量%、好ましくは1%~5重量%、さらに好ましくは1.5%~4.0%、さらになお好ましくは2.0%~4.0重量%含む。
【0033】
ワックスは、好ましくは合成ワックスであり、さらに好ましくは、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリオレフィンワックス、及びそれらの混合物からなる群より選択される合成ワックスである。好ましくは、ワックスはフィッシャー・トロプシュワックスである。
【0034】
本明細書で用いられる場合、「合成ポリオレフィンワックス」という用語は、重合から誘導されるオレフィンモノマー単位から構成されるポリマー又は長鎖実体を指す。
【0035】
「フィッシャー・トロプシュワックス」とは、いわゆるフィッシャー・トロプシュ法によって得られるワックスを意味する。フィッシャー・トロプシュ法は、主に水素と一酸化炭素とを含む合成ガスを炭化水素へと変換することを含む。変換は、典型的には、低温又は高温のフィッシャー・トロプシュ動作条件下で、固定床又はスラリー床リアクタ内で、合成ガスを鉄又はコバルト系の触媒などのフィッシャー・トロプシュ触媒と接触させることによって行われる。このようにして、異なる沸点範囲を有する炭化水素の混合物が得られる。次に、この炭化水素混合物から、例えば蒸留によって、フィッシャー・トロプシュワックスが回収される。
【0036】
本発明によるワックスは、60℃以上、好ましくは65℃以上、さらに好ましくは70℃以上、有利には75℃以上の凝固点を有する。本発明によるワックスは、好ましくは80℃以上の凝固点を有する。
【0037】
ワックスの凝固点は、150℃未満、好ましくは120℃未満でありうる。
【0038】
ワックスの凝固点は、ASTM D 938に準拠して決定することができる。
【0039】
本明細書で用いられる場合、「dmm」という用語はデシミリメートルを意味する。
【0040】
ワックスの針貫入は、2dmm以下であり、好ましくは1dmm以下である。
【0041】
本明細書で用いられる場合、「針貫入」、「針貫入硬さ」、「貫入硬さ」という用語は類似している。
【0042】
ワックスの針貫入は、ASTM D 1321に準拠して決定することができる。
【0043】
ワックスは、140℃以下、さらに好ましくは100~120℃の範囲の融点を有しうる。
【0044】
ワックスの融点は、ASTM法D127-60に準拠して測定することができる。
【0045】
本発明によるワックスは、市販のワックスでありうる。本発明に適した市販のワックスの例としては、凝固点が101~108℃、針貫入が2dmmである、Shell社からSX105という商品名で販売されているフィッシャー・トロプシュワックス、凝固点が97℃、針貫入硬さが1dmmである、Sasol社からSASOLWAX(登録商標)H15という商品名で販売されているフィッシャー・トロプシュワックス、又は凝固点が116℃、針貫入硬さが2dmmである、SCG Chemicals社からLP1060Pという商品名で販売されているPEワックスが挙げられる。
【0046】
可塑剤
本発明のホットメルト接着剤組成物は、可塑剤を含むことができる。可塑剤は、固体であっても、液体の可塑剤であってもよい。
【0047】
ホットメルト接着剤組成物は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量に対して、約0重量%~約40重量%、好ましくは約5重量%~約35重量%、さらに好ましくは約10重量%~約30重量%の(一又は複数の)可塑剤を含むことができる。
【0048】
可塑剤は、ナフテン油及びパラフィン油、オレフィンオリゴマー、低分子量ポリマー、グリコールベンゾエート類、植物油及び動物油、並びにそれらの誘導体からなる群より選択することができる。
【0049】
ナフテン油及びパラフィン油は、ナフテン系炭化水素(例えば脂肪族、飽和又は不飽和、C4~C7員の炭化水素環;好ましくは、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンなどのシクロアルカンを含む、脂肪族、飽和又は不飽和、C4~C6員環)、パラフィン系炭化水素(飽和、直鎖又は分岐鎖、アルカン)、及び芳香族炭化水素(単環式又は多環式でありうる、芳香族炭化水素環、好ましくは芳香族C6員炭化水素環)の混合物からなる、石油ベースの油である。
【0050】
ナフテン油及びパラフィン油の分類は、油中の各タイプの炭化水素の量に基づいて行われる。典型的には、可塑剤の全重量に対して、パラフィン油は、少なくとも約50重量%のパラフィン系炭化水素含有量を有し;ナフテン油は、約30%~約50重量%のナフテン系炭化水素含有量を有する。
【0051】
オリゴマーは、約100~約10,000g/モルの平均分子量を有する、ポリプロピレン、ポリブテン、水素化ポリイソプロペン、水素化ブタジエンなどからなる群より選択することができる。
【0052】
植物油及び動物油は、通常の脂肪酸のグリセロールエステル、及びその重合生成物から選択することができる。
【0053】
好ましい実施形態では、可塑剤はナフテン油である。
【0054】
適切な可塑剤は、Nyflex(登録商標)223及びNyflex(登録商標)222B(ナフテン油)の商品名でNynas社から、Parol(登録商標)(パラフィン油)、Kaydol(登録商標)(パラフィン油)の商品名でSonneborn社から、Olympus(登録商標)L500の商品名でErgon社から、Primol(登録商標)352及び382の商品名でExxon Mobil社から、Calsol(登録商標)5550の商品名でCalumet社から、及びKaramay N4010(ナフテン油)の商品名でPetrochina Karamay Petrochemical Co.LTDから市販されている。
【0055】
粘着付与樹脂
ホットメルト接着剤組成物は、少なくとも1つの粘着付与樹脂(粘着付与剤)を含むことができる。
【0056】
ホットメルト接着剤組成物は、組成物の全重量に対して、20重量%~75重量%、好ましくは30重量%~70重量%、さらに好ましくは40重量%~60重量%の(一又は複数の)粘着付与樹脂を含むことができる。
【0057】
適切な粘着付与樹脂は、スチレンブロック共重合体(A)と適合性のあるものである。
【0058】
粘着付与樹脂は、
- i)好ましくは10℃~120℃の軟化点を有するテルペン樹脂のホモポリマー、例えば、任意選択的にフリーデルクラフツ触媒の存在下、モノテルペン(又はピネン)などのテルペン炭化水素を重合することによって得られるもの;
- ii)アルファ-メチルスチレンと、他の炭化水素コモノマー、例えば、スチレン、ビニルトルエン、及びそれらの混合物との共重合によって得られる樹脂;
- iii)フェノール変性テルペン樹脂、例えば、テルペンとフェノールとの酸性媒体中での縮合から得られる樹脂生成物など;
- iv)天然及び変性ロジン、例えば、ガンロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、蒸留ロジン、水素化ロジン、二量化ロジン、及び重合ロジンなど;
- v)天然及び変性ロジンのグリセロール及びペンタエリスリトールエステル、例えば、ペールウッドロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、ペールウッドロジンのペンタエリスリトールエステル、水素化ロジンのペンタエリスリトールエステル、トール油ロジンのペンタエリスリトールエステル、及びロジンのフェノール変性ペンタエリスリトールエステルなど;並びに、
- vi)脂肪族及び脂環式石油由来の炭化水素樹脂(後者の樹脂は特に、主に脂肪族又は脂環式のオレフィン及びジオレフィンからなるモノマーの重合から生じる)。これは、水素化脂肪族及び脂環式石油の炭化水素樹脂も含む;
- vii)脂肪族/芳香族石油由来の炭化水素樹脂及びその水素化誘導体;
- viii)それらの混合物
からなる群より選択することができる。
【0059】
特に、上記で定義したタイプのうち、以下の製品を挙げることができる:
- タイプi)の樹脂:Arizone Chemical社からSylvagum(登録商標)TR及びSylvares(登録商標)TRシリーズ(7115、7125、M1115)の商品名で販売される、ポリテルペン粘着付与剤;
- タイプii)の樹脂:C9モノマーから製造される、Arakawa社のArkon(登録商標)シリーズ、及びKolon社のHikotack(登録商標)シリーズ。
- タイプiii)の樹脂:DRT社から販売されているDertophene(登録商標)1510:Arizone Chemical社から販売されているDertophene(登録商標)H150、及びSylvarez(登録商標)TP95(これらはフェノール変性テルペン樹脂である);
- タイプiv)の樹脂:Pinova Inc.のForal(登録商標)DX、及びEastman社のForal AX-E(これらは水素化ロジン樹脂である)。
- タイプv)の樹脂:Sylvalite(登録商標)RE 100(Arizone Chemical社から販売されているエステル又はロジン及びペンタエリスリトールである);
- タイプvi)の樹脂:Escorez(登録商標)5400(Exxon Chemicals社から販売されている、軟化温度100℃の水素化ジシクロペンタジエン樹脂);Sukorez(登録商標)SU210(Kolon社から販売されている、軟化点が110℃の部分水素化脂肪族及び脂環式石油由来の炭化水素樹脂);
- タイプvii)の樹脂:Quintone(登録商標)DX390N(Zeon社から販売されている、軟化点が90℃である、水素化されていない脂肪族及び芳香族石油由来の炭化水素樹脂)、及びSukorez(登録商標)SU400(Kolon社から販売されている、水素化脂肪族及び芳香族石油由来の炭化水素樹脂)。
【0060】
好ましい実施形態では、ホットメルト接着剤組成物は、例えば、ビニルトルエン、スチレン、アルファ-メチルスチレン、又はインデンなどの芳香族モノマーの純粋なモノマーストリームに基づく芳香族樹脂を含まない。このような樹脂の例は、Eastman Chemical社から販売されているKristalex(登録商標)又はPlastolyn(登録商標)シリーズである。この好ましい実施形態によれば、ホットメルト接着剤は、これらの特定の粘着付与樹脂が存在しないことにより、臭気が少なく、VOCの放出が低減され、有利には、適切な粘度、接着性、及び機械的特性を発揮する。
【0061】
安定剤
本発明のホットメルト接着剤組成物はまた、少なくとも1つの安定剤(抗酸化剤)を含んでいてもよい。
【0062】
ホットメルト接着剤組成物は、ホットメルト接着剤組成物の全重量に基づいて、約0重量%~約5重量%、好ましくは0重量%~約3重量%、さらに好ましくは約0.1重量%~約3重量%、さらに好ましくは約0.1重量%~2重量%の(一又は複数の)安定剤を含む。
【0063】
適切な安定剤は、典型的には、上記のポリマーを保護し、それによって接着剤の系全体を、接着剤の製造及び塗布中、並びに最終製品が周囲環境に通常さらされる際に通常発生する熱及び酸化劣化の影響から保護するように組み込まれる。
【0064】
適用可能な安定剤としては、例えば、高分子量ヒンダードフェノール、並びに硫黄及びリン含有フェノールなどの多官能性フェノールなどが挙げられる。ヒンダードフェノールは、当業者によく知られており、フェノール性ヒドロキシル基に近接して立体的にかさばったラジカルも含むフェノール化合物として特徴付けることができる。特に、第三級ブチル基は、ベンゼン環上で、概して、フェノール性ヒドロキシル基に対して少なくとも1つのオルト位に置換される。これらの立体的にかさばった置換ラジカルがヒドロキシル基の近傍に存在すると、ヒドロキシル基の伸縮頻度が遅くなり、それに応じて反応性も低下する;したがって、この立体障害により、フェノール化合物に安定化特性がもたらされる。代表的なヒンダードフェノールとしては、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3-5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン;ペンタエリスリトールテトラキス-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;n-オクタデシル-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4.4’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール);2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;6-(4-ヒドロキシフェノキシ)-2,4-ビス(n-オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン;2,3,6-トリス(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチル-フェノキシ)-1,3,5-トリアジン;ジ-n-オクタデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート;2-(n-オクチル-チオ)エチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、及びソルビトールヘキサ-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)プロピオネートが挙げられる。
【0065】
適切な抗酸化剤は、BASF社からIrganox(登録商標)1010(テトラキス(メチレン(3,5-ジ-ter-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート))メタン)、Irgafos(登録商標)168(トリス(2,4-ジtert-ブチルフェニル)ホスフェート)、及びShuangjian社からChinox(登録商標)1010(ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート))、Everspring Chemical社からEvernox(登録商標)1010及びEverfos(登録商標)168、Songwon社からSongnox(登録商標)10及び1680という商品名で市販されている。
【0066】
他の添加剤
ホットメルト接着剤組成物はさらに、少なくとも1つの添加剤を、好ましくはホットメルト接着剤組成物の全重量の0%~5%の量で含むことができる。
【0067】
添加剤は、不活性着色剤(例えば二酸化チタン)、充填剤(例えば、タルク、炭酸カルシウム、粘土、シリカ、雲母、珪灰石、長石、ケイ酸アルミニウム、アルミナ、水和アルミナ、ガラス微小球、セラミック微小球、熱可塑性微小球、及びそれらの混合物)、界面活性剤、スチレンブロック共重合体以外の追加のポリマー、架橋剤、核剤、反応性化合物、難燃性鉱物剤又は有機剤、紫外線(UV)又は赤外線(IR)光吸収剤、並びにUV又はIR蛍光剤からなる群より選択することができる。これらの任意の補助添加剤は、この技術分野ではよく知られている。
【0068】
追加のポリマーは、ポリオレフィン、非晶質ポリ-アルファ-オレフィン、エチルビニルアセテートポリマー(EVA)、ポリアミド、及びそれらの混合物からなる群より選択することができる。ホットメルト接着剤は、組成物の全重量で、約0%~約5重量%の少なくとも1つの追加のポリマーを含むことができる。
【0069】
ホットメルト接着剤組成物
粘度は、約177℃又は120℃の温度で、スピンドル27型のブルックフィールド粘度計を使用して、ASTM規格D-3236の標準方法に準拠して測定する。
【0070】
ホットメルト接着剤組成物は、120℃で30,000mPa・s以上、好ましくは50,000mPa・s以上、さらになお好ましくは80,000mPa・s以上の粘度を有する。
【0071】
ホットメルト接着剤組成物は、177℃で、5,000mPa・s以下、好ましくは4,000mPa・s以下、さらになお好ましくは3,000mPa・s以下の粘度を有する。
【0072】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は、有利には、適切な温度(例えば160℃など)で塗布可能な十分な粘度を有する。さらに、粘度は、有利なことに、120℃ではそれほど低くなく、これにより、結果として得られる接着剤構造の塗布性がより良好になり、均質性もより良好になる。実際、低すぎる塗布温度では、ホットメルト接着剤が液体になりすぎた場合に、急速な冷却プロセスによって接着剤構造が不均一になる。
【0073】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は、有利には、良好な接着性及び凝集性を示しつつ、良好な加工性(177℃及び120℃での粘度範囲による)を有する。吸収性材料と基材との接触を維持するには、良好な接着性が重要である。良好な内部凝集性は、使用中に特に外部からの力を受けても接着剤が破損しないことを確実にする。したがって、高い内部凝集性は、有利なことに、吸収性コアを乾燥状態でも、またコアが湿っている間の膨張時にも、一緒に維持することを可能にする。
【0074】
これらの特性により、ホットメルト接着剤組成物は、有利には、コア安定化接着剤として有用になる(とりわけ吸収性物品の使用時に、コアの吸収性材料を適所に保ち、コア構造の完全性を維持するため)。
【0075】
ホットメルト接着剤組成物を調製するプロセス
本発明はまた、上述のホットメルト接着剤組成物を調製するプロセスにも関する。
【0076】
ホットメルト接着剤組成物は、少なくとも1つのスチレン系ブロック共重合体P、少なくとも1つのフィッシャー・トロプシュワックスを溶融状態で混合することによって調製することができる。上述の組成物の任意選択的な他の成分又は添加剤を、上述の成分と混合してもよい。
【0077】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、当技術分野で知られている技法のいずれかを使用して製造することができる。好ましくは、混合工程は、130℃~180℃の温度で行われる。成分は、好ましくは少なくとも数時間、典型的には少なくとも4時間、好ましくは4~6時間、混合される。
【0078】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は、二酸素の存在下(例えば、空気雰囲気下)で調製することができ、又は好ましくは、酸化反応による潜在的な劣化を制限するために、例えば二酸化炭素又は窒素下などの不活性雰囲気下で調製することができる。
【0079】
幾つかの実施形態によれば、本発明によるホットメルト接着剤組成物を調製するプロセスは、
- 粘着付与樹脂及び(一又は複数の)可塑剤を、好ましくは存在する場合には抗酸化剤とともに、150℃~180℃の範囲の温度で、少なくとも粘着付与樹脂がすべて溶融するのに十分な時間混合する第1の工程、
- 混合物を130℃~150℃の範囲の温度に冷却する第2の工程、
- スチレン系ブロック共重合体(A)を、前工程で得られた混合物に、少なくともスチレン系ブロック共重合体の全てが溶融するのに十分な時間、撹拌下、130℃~150℃の範囲の温度で加熱しながら添加する第3の工程、
- ワックスを、前工程で得られた混合物に、スチレン系ブロック共重合体がすべて溶融するのに十分な時間、撹拌下、130℃~150℃の範囲の温度で加熱しながら添加する第4の工程
を含む。
【0080】
加えて、本発明のプロセスは、前述のプロセスのいずれかの工程の前又は後に、混合物内に閉じ込められた空気を除去するために真空を適用する工程を含むことができる。
【0081】
本発明によるホットメルト接着剤組成物中に存在する可能性がある他の有用な任意選択的な成分又は添加剤は、上述のように、本発明によるプロセスの任意の段階で添加することができる。
【0082】
使用
本発明は、本明細書で定義されるホットメルト接着剤組成物を、例えばおむつ、成人用失禁用品、ベッドパッド、生理用ナプキン、医療用包帯、包帯などの使い捨て吸収性物品の製造に使用することに関する。
【0083】
本発明は、本明細書で定義されるホットメルト接着剤組成物をコア安定化接着剤として使用することに関する。
【0084】
本発明は、上に定義されるホットメルト接着剤組成物を含む使い捨て吸収性物品に関する。使い捨て吸収性物品は、おむつ、成人用失禁用品、ベッドパッド、生理用ナプキン、医療用包帯、包帯からなる群より選択することができ、好ましくはおむつである。
【0085】
使い捨て吸収性物品は、コアと、任意選択的にコアラップとを含む、吸収性コアを備えている。
【0086】
吸収性コアは、インライン(すなわち、使い捨て吸収性物品)の組立ラインで製造することができる。あるいは、コアをオフラインで製造し、後日又は別の場所で使用するために巻き上げる、又は飾り付けることもできる。
【0087】
コアのデザインや形状はさまざまでありうる。長方形は犬の骨のような形状にすることができる。1つの連続した形状にすることもできるし、又は例えばトップシートとバックシートによって形成されたチャネルへと分割することもできる。
【0088】
吸収性コアは、概して、物品内の中央に配置され、取り付け手段(例えば接着剤)を介してトップシートとバックシートとの間にしっかりと固定される。
【0089】
コアは、異なる層を備えることができる。コアは、典型的には、トップシートから受け取った体液を吸収可能な吸収性材料を含む。コアは、セルロース繊維(すなわち綿毛)、木材パルプ、綿、合成繊維、不織布、ティッシュ、発泡体、超吸収性ポリマー(「SAP」)又は他の吸収性材料を含みうる。
【0090】
本発明によるホットメット(met)接着剤組成物は、コーティング(層)として、又は繊維の形態で塗布することができる。
【0091】
コアラップは、コアの構成要素を適所に保持するためにコアの周囲を包む任意の材料でありうる。コアラップは、概して、コアの2つの長い側面を包み、両端は開いたままにしておく。コアラップは、不織布及びティッシュからなる群より選択することができる。
【0092】
ホットメルト接着剤組成物は、吸収性材料を適所(特に、存在する場合はコアラップ内)に保持するために、及び/又は乾燥状態(非膨張状態)及び湿潤状態(膨張状態)の両方でコア構造の完全性を確保するために使用することができる。
【0093】
本発明によれば、「xとyの間に含まれる」、又は「x~yの範囲」とは、限界値x及びyが含まれる範囲を意味する。例えば、「1%~3%の間を含む」範囲には、特に1%及び3%が含まれる。
【0094】
以下の例は、純粋に本発明の説明のために与えられたものであり、いかなる状況においても、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0095】
実験部分
次の材料を使用した:
- 可塑剤1:Nynas社のNyflex(登録商標)223(ナフテン油);
- 樹脂1:Kolon社のSukorez(登録商標)SU 525(125℃の環球式軟化点を有する部分的に水素化された樹脂DCPD/C9);
- 樹脂2:Kolon社のSukorez(登録商標)SU 400(100℃の環球式軟化点を有する部分的に水素化された樹脂DCPD/C9);
- 樹脂3:Kolon社のSukorez(登録商標)SU 420(120℃の環球式軟化点を有する部分的に水素化された樹脂DCPD/C9);
- ポリマーP1:TSRC社のVECTOR(登録商標)4411は、スチレンブロックとしての44%のスチレン及び1%未満のジブロック含有量を有する、線状SIS共重合体である;
- ポリマーP2:TSRC社のTAIPOL(登録商標)4202は、スチレンブロックとしての40%のスチレン及び1%未満のジブロック含有量を有する、線状SBS共重合体である;
- ワックス1:SASOL社のSASOLWAX(登録商標)H1は、97℃の凝固点及び1dmmの針貫入を有する、フィッシャー・トロプシュワックスである;
- 抗酸化剤1:BASF社のIrganox(登録商標)1010(テトラキス(メチレン(3,5-ジ-ter-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート))メタン);
- 抗酸化剤2:BASF社のIrgafos(登録商標)168(トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)。
【0096】
A1:ホットメルト接着剤の調製
以下の表1のホットメルト接着剤組成物は、次の順序で成分を混合することによって調製される:
(一又は複数の)ポリマーと(一又は複数の)樹脂の半分とを加え、(一又は複数の)可塑剤とともに140℃で、すべてが均一な混合物になるまで混合する。最後に(一又は複数の)ワックスと(一又は複数の)樹脂の残りの半分とを同じ温度で加え、混合して最終的な均質な接着剤混合物を得る。最後に、混合物を冷却して回収し、そのまま使用する。
【0097】
A2:ホットメルト接着剤組成物の特性
貯蔵弾性率(G’):動的機械分析(DMA)
レオメータによって接着剤に剪断応力を加え、一定温度で生じた歪み(剪断変形)応答を測定した。
【0098】
機器:TA Instrument社のDHR-1レオメータ(接着剤の線形粘弾性領域(例えば1%)内で一定の振動歪みを達成するために小さい振動応力を加印加する)。
【0099】
一般的なプロトコル:接着剤を、下側の固定プレートとして機能するPeltierプレートと、剪断応力を発生させるためにモータの駆動軸に接続された半径Rが10mmの上側プレートとの間に置いた。両方のプレート間の間隙は1,000μmの高さHを有する。Peltierプレートは材料の温度を制御する(±0.5℃)。
【0100】
試験の実施:
- GAP 0が80℃になった後、温度を開始温度(すなわち150℃)に設定する;
- 接着剤(1cm3)をPeltierプレート上に置く;
- 上側プレートを1,700μmの間隙まで下げ、接着剤に接触させる;
- 余分な材料を除去し、を120℃に設定する;
- 上側プレートを1,000μmの間隙まで下げる;
- 温度を120℃の開始温度に設定し、一定の測定歪みを1%、一定振動周波数を1Hz、冷却速度を6℃/分(120℃~-10℃)に設定する;
- 試験の完了後、接着剤を溶かし、上側プレートを持ち上げ、Peltierプレートと上側プレートの両方から接着剤を除去する。
- 温度を室温に戻す。
【0101】
結果:貯蔵弾性率を、冷却工程全体にわたって30秒ごとに計算した。それに応じて21℃及び60℃でのG’を決定した。
【0102】
ブルックフィールド粘度
ブルックフィールド粘度は、177℃の温度で、スピンドル27型のブルックフィールド粘度計を使用して、ASTM規格D-3236の方法に準拠して測定した。
【0103】
【0104】
N/A:ホットメルトは均質ではなく、上述のDMA分析方法では分析できないため、非適用。
n.d.:未検出
【0105】
表の結果は、2つのホットメルト接着剤組成物HM1及びHM2が、21℃で高い貯蔵弾性率(好ましくは0.150MPaを超える、さらには0.2MPaを超える)を示し、同時に177℃での粘度を3,000mPa・s未満に維持し、ホットメルトの塗布中に良好な加工性が得られるという利点があることを示している。したがって、ホットメルト接着剤組成物HM1及びHM2は、高い内部凝集力および良好な加工性を可能にするという利点がある。
【0106】
比較組成物HM3(ワックスなし)、HM4(ワックスなし)及びHM5(10重量%のワックス)で得られた貯蔵弾性率は、本発明のホットメルト接着剤組成物HM1及びHM2で得られた貯蔵弾性率よりも低い。
【0107】
さらに、HM1及びHM2の60℃での貯蔵弾性率も、比較ホットメルト接着剤組成物HM3、HM4、及びHM5で得られる貯蔵弾性率より高い。
【国際調査報告】