(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】イオン交換官能化触媒担体
(51)【国際特許分類】
H01M 4/86 20060101AFI20241121BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20241121BHJP
B01J 32/00 20060101ALI20241121BHJP
C25B 11/067 20210101ALI20241121BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20241121BHJP
C25B 11/054 20210101ALN20241121BHJP
【FI】
H01M4/86 B
H01M4/88 K
B01J32/00
C25B11/067
H01M8/10 101
C25B11/054
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534124
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 US2022046105
(87)【国際公開番号】W WO2023107190
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522422218
【氏名又は名称】1エス1 エナジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】1S1 ENERGY, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100228120
【氏名又は名称】市川 蓮太朗
(72)【発明者】
【氏名】スカンタ バッタチャリャ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ソベク
【テーマコード(参考)】
4G169
4K011
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4G169AA01
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BD03A
4G169BD03B
4G169BD04A
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4K011BA08
4K011DA01
5H018AA06
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5H126BB06
(57)【要約】
イオン交換官能化触媒担体は、セラミック触媒担体と、及びセラミック触媒担体の表面におけるイオン交換基とを含む。セラミック触媒担体は、共有結合性窒化物、共有結合性金属ホウ化物、及び共有結合性炭化物のうちの少なくとも1つを含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換官能化触媒担体であって、
共有結合性窒化物、共有結合性金属ホウ化物、又は共有結合性炭化物を含むセラミック触媒担体と、
前記セラミック触媒担体の表面のイオン交換基と、
を備える、イオン交換官能化触媒担体。
【請求項2】
請求項1に記載のイオン交換官能化触媒担体において、前記セラミック触媒担体は前記共有結合性窒化物を含み、該共有結合性窒化物は、ホウ素、ケイ素又はアルミニウムを含む2元系窒化物を含む、イオン交換官能化触媒担体。
【請求項3】
請求項2に記載のイオン交換官能化触媒担体において、前記2元系窒化物は、窒化ホウ素、窒化ケイ素、又は窒化アルミニウムを含む、イオン交換官能化触媒担体。
【請求項4】
請求項2に記載のイオン交換官能化触媒担体において、前記イオン交換基は、前記2元系窒化物のホウ素原子、ケイ素原子、又はアルミニウム原子を含み、また
前記イオン交換基の前記ホウ素原子、前記ケイ素原子、又は前記アルミニウム原子は、負の形式電荷を有する、イオン交換官能化触媒担体。
【請求項5】
請求項2に記載のイオン交換官能化触媒担体において、前記2元系窒化物は、六方晶窒化ホウ素である、イオン交換官能化触媒担体。
【請求項6】
請求項1に記載のイオン交換官能化触媒担体において、前記セラミック触媒担体は共有結合性窒化物を含み、該共有結合性窒化物は、ホウ素、ケイ素及び炭素のうちの2つを含む3元系窒化物を含む、イオン交換官能化触媒担体。
【請求項7】
請求項6に記載のイオン交換官能化触媒担体において、前記3元系窒化物は、窒化ホウ素炭素、窒化ケイ素炭素、又は窒化ケイ素ホウ素を含む、イオン交換官能化触媒担体。
【請求項8】
請求項6に記載のイオン交換官能化触媒担体において、
前記イオン交換基は、前記3元系窒化物のホウ素原子又はケイ素原子を含み、また
前記イオン交換基の前記ホウ素原子又は前記ケイ素原子は、負の形式電荷を有する、イオン交換官能化触媒担体。
【請求項9】
請求項1に記載のイオン交換官能化触媒担体において、
前記セラミック触媒担体は前記共有結合性金属ホウ化物を含み、
前記イオン交換基は前記共有結合性金属ホウ化物のホウ素原子を含み、また
前記イオン交換基の前記ホウ素原子は負の形式電荷を有する、
ものである、イオン交換官能化触媒担体。
【請求項10】
請求項9に記載のイオン交換官能化触媒担体において、前記共有結合性金属ホウ化物は、チタン、ジルコニウム又はハフニウムを含む、イオン交換官能化触媒担体。
【請求項11】
請求項9に記載のイオン交換官能化触媒担体において、前記共有結合性金属ホウ化物は、バナジウム、ニオブ又はタンタルを含む、イオン交換官能化触媒担体。
【請求項12】
請求項9に記載のイオン交換官能化触媒担体において、前記共有結合性金属ホウ化物は導電性である、イオン交換官能化触媒担体。
【請求項13】
請求項1に記載のイオン交換官能化触媒担体において、前記イオン交換基は、4価のホウ素原子、4価のアルミニウム原子、又は5価のケイ素原子を含む、イオン交換官能化触媒担体。
【請求項14】
請求項1に記載のイオン交換官能化触媒担体において、前記イオン交換基はフッ素を含む、イオン交換官能化触媒担体。
【請求項15】
請求項1に記載のイオン交換官能化触媒担体において、前記セラミック触媒担体が、複合材材料を含む、イオン交換官能化触媒担体。
【請求項16】
請求項15に記載のイオン交換官能化触媒担体において、前記複合材材料は、窒化物複合材、ホウ化物-窒化物複合材、炭化物-窒化物複合材、又は炭化物-ホウ化物複合材を含む、イオン交換官能化触媒担体。
【請求項17】
触媒層であって、
イオン交換官能化触媒担体であり、
共有結合性窒化物、共有結合性金属ホウ化物、又は共有結合性炭化物を含むセラミック触媒担体、及び
前記セラミック触媒担体の表面のイオン交換基を含む、
該イオン交換官能化触媒担体、並びに
前記イオン交換官能化触媒担体上に担持された触媒粒子、
を備える、触媒層。
【請求項18】
請求項17に記載の触媒層であって、さらに、炭素触媒担体を備え、
前記イオン交換官能化触媒担体が前記炭素触媒担体と結び付いている、触媒層。
【請求項19】
請求項17に記載の触媒層であって、さらに、アイオノマーを備える、触媒層。
【請求項20】
請求項17に記載の触媒層において、前記セラミック触媒担体は導電性である、触媒層。
【請求項21】
請求項20に記載の触媒層において、前記触媒層は炭素触媒担体を含まない、触媒層。
【請求項22】
請求項17に記載の触媒層において、
前記セラミック触媒担体は、前記共有結合性窒化物を含み、
前記共有結合性窒化物は、ホウ素、ケイ素、又はアルミニウムを含み、
前記イオン交換基は、前記共有結合性窒化物のホウ素原子、ケイ素原子、又はアルミニウム原子を含み、また
前記イオン交換基の前記ホウ素原子、前記ケイ素原子、又は前記アルミニウム原子は、負の形式電荷を有する、
ものである、触媒層。
【請求項23】
請求項17に記載の触媒層において、
前記セラミック触媒担体は、前記共有結合性金属ホウ化物であり、
前記イオン交換基は、前記共有結合性金属ホウ化物のホウ素原子を含み、また
前記イオン交換基の前記ホウ素原子が、負の形式電荷を有する、
ものである、触媒層。
【請求項24】
請求項22又は23に記載の触媒層であって、さらに、前記イオン交換基とイオン的に結び付いているカチオンを備える、触媒層。
【請求項25】
請求項24に記載の触媒層において、前記カチオンは、プロトン、金属カチオン、又はテトラアルキルアンモニウムを含む、触媒層。
【請求項26】
請求項22又は23に記載の触媒層において、前記イオン交換基は、さらにフッ素を含む、触媒層。
【請求項27】
イオン交換官能化触媒担体の作製方法であって、
セラミック触媒担体の表面をイオン交換基で官能化するステップを備え、前記セラミック触媒担体は、共有結合性窒化物、共有結合性金属ホウ化物、又は共有結合性炭化物を含む、イオン交換官能化触媒担体の作製方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法において、
前記セラミック触媒担体は、ホウ素、ケイ素、又はアルミニウムを含み、また
前記官能化するステップは、求核剤と、前記セラミック触媒担体の表面の前記セラミック触媒担体のホウ素原子、ケイ素原子、又はアルミニウム原子とを共有結合させるステップを含む、方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、前記求核試薬は、フッ化水素、フッ化金属、又はテトラアルキルアンモニウムフルオリドを含む、方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法において、前記求核試薬は、酸、酸の塩、多塩基酸の部分エステル、又はアルコールを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2021年12月7日に出願された米国仮特許出願第63/286,988号及び2022年3月15日に出願された米国仮特許出願第63/320,148号の優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
水素燃料電池及び水電解システム等の電気化学電池において、プロトン交換膜(PEMs:proton exchange membranes)は、プロトンを選択的に輸送するために使用される。プロトン交換膜(PEMs)は、ガスを透過させない一方でプロトン(H+)を輸送する半透過膜である。PEMsは、通常、強酸性の官能基を持つ多孔質骨格で構成されている。例えば、ポリフルオロスルホン酸ベースのPEMsは、スルホン酸基を持つポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質骨格を含んでいる。解離しやすいスルホン酸基は、膜でプロトン輸送剤として機能する。水素燃料電池において、水素ガス(H2)は、アノードでプロトン(H+)と電子に分離する。プロトンはPEMを通り抜け、カソードで酸素ガス(O2)と結合して水を生成し、電子は外部回路を流れて電気を生成する。水電解システムでは、電気によりアノードにおいて水を酸素ガス(O2)とプロトン(H+)とに分離する。プロトンはPEMを通り抜け、カソードで電子と結合して水素ガス(H2)を生成する。
【0003】
膜電極アセンブリ(MEA:membrane electrode assembly)は、第1の触媒層と第2の触媒層との間に配置されたPEMを含み得る。触媒層は、金属、金属合金、又は金属酸化物等の電気化学触媒が埋設された導電性電極(アノード及びカソード)である。触媒は、触媒固体担体に結合されていてもよく、該触媒固体担体は、通常、表面積の大きい導電性の炭素(例えばグラファイト又はグラフェン)である。電気化学触媒は、水電解用途における酸素発生反応(OER:oxygen evolution reaction)や水素発生反応(HER:hydrogen evolution reaction)、及び燃料電池用途における水素酸化反応(HOR:hydrogen oxidation reaction)や酸素還元反応(ORR:oxygen reduction reaction)等の電極での電気化学反応を行うのに必要な活性化エネルギーを低減する。
【0004】
いくつかの用途では、触媒層は、イオン導電性ポリマー(例えばアイオノマー)と混合された担持触媒を含む。アイオノマーは、電極内で触媒と結合し、PEM上で触媒層と結合し、カチオン(例えばプロトン)の経路をもたらすことにより、カチオン伝導性を向上させる。いくつかのMEAsでは、触媒層は、PEMと独立して形成されており、MEA積層体においてPEM上に積層される。他のMEAsでは、触媒層は、PEMを覆い、触媒被覆膜(CCMs:catalyst-coated membranes)を形成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
触媒粒子の触媒固体担体との強力な結合は、触媒の性能及びカチオンの伝導性を弱める可能性がある一方で、触媒粒子の弱い結合は、望ましくない触媒損失につながり、それにより触媒回転を低下させる可能性がある。さらに、触媒粒子が触媒層から分離してPEMに入り、PEMを損傷させる可能性がある。したがって、触媒固体担体への触媒の結合は、触媒サイクルで円滑で効率的な関与となるように、強過ぎず弱過ぎない必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の記述では、本明細書で記述される装置、構成、及び/又は方法の1つ以上の態様の簡略化された要旨を、それらの態様の基本的な理解をもたらすために示す。この要旨は、全ての予期される態様の広範囲の概要ではなく、全ての態様の鍵となる要素又は重要な要素を特定するものでも、任意の又は全ての態様の範囲を詳細に説明するものでもない。この目的は、以下で示されるより詳細な記述の前置きとして、本明細書で記述される装置、構成、及び/又は方法の1つ以上のいくつかの概念を、簡略化された形式で単に示すことである。
【0007】
いくつかの例示的な例において、イオン交換官能化触媒担体は、2元系共有結合性窒化物、2元系共有結合性金属ホウ化物、2元系共有結合性炭化物、3元系共有結合性窒化物-ホウ化物、3元系共有結合性窒化物-炭化物、又は3元系共有結合性ホウ化物-炭化物を含むセラミック触媒担体と、及びセラミック触媒担体の表面におけるイオン交換基と、を備える。
【0008】
いくつかの例示的な例において、触媒層は、共有結合性窒化物、共有結合性金属ホウ化物、又は共有結合性炭化物を含むセラミック触媒担体、及びセラミック触媒担体の表面におけるイオン交換基を有する、イオン交換官能化担体と、イオン交換官能化触媒担体上に担持された触媒粒子と、を備える。
【0009】
いくつかの例示的な例において、イオン交換官能化触媒担体の作製方法は、セラミック触媒担体の表面をイオン交換基で官能(基)化するステップであって、該セラミック触媒担体は、共有結合性窒化物、共有結合性金属ホウ化物、又は共有結合性炭化物を含むものである、該官能化するステップを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本明細書で記述される概念をより理解できるように、様々な実施形態を、図面を参照しつつ、単なる例の目的で記述する。図面は、様々な実施形態を示しており、明細書の一部である。示される実施形態は、単なる例であり、本開示の範囲を限定するものではない。図面全体を通して、同一又は類似の参照数字は、同一又は類似の要素を指す。
【
図1A】フルオリド試薬を使用したセラミック触媒担体の表面官能化の例示的スキームを示す。
【
図1B】フルオリド試薬を使用したセラミック触媒担体の表面官能化の他の例示的反応スキームを示す。
【
図2A】酸試薬又はアルコール試薬を使用したセラミック触媒担体の表面官能化の例示的スキームを示す。
【
図2B】酸試薬又はアルコール試薬を使用したセラミック触媒担体の表面官能化の他の例示的スキームを示す。
【
図3】
図1Aのスキームで形成された六方晶窒化ホウ素を含む例示的イオン交換官能化触媒担体を示す。
【
図4】プラチナ(Pt)触媒粒子がイオン交換官能化触媒担体上に担持されている
図3のイオン交換官能化触媒担体を示す。
【
図5】イオン交換官能化触媒担体を組み込んだ例示的プロトン交換膜水電解システムを示す。
【
図6】イオン交換官能化触媒担体を組み込んだ例示的プロトン交換膜燃料電池を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書では、イオン交換官能化触媒担体、イオン交換官能化触媒担体を使用する装置、及びイオン交換官能化触媒担体の作製方法を記述する。例えば、イオン交換官能化触媒担体は、セラミック触媒担体と、セラミック触媒担体の表面におけるイオン交換基とを含み得る。セラミック触媒担体は、共有結合性窒化物、共有結合性金属ホウ化物、共有結合性炭化物、及び/又はこれらのセラミック金属の複合材等の共有結合性セラミック材料を含み得る。共有結合性セラミック材料は、共有結合により特徴付けられ、ホウ素、ケイ素、及び/又はアルミニウム等の多価元素を含む。
【0012】
イオン交換基は、セラミック触媒担体の表面における多価元素、及び多価元素と共有結合しているペンダント表面基を含む。多価元素は、対カチオンがプロトンである場合に、負の形式電荷を多価原子に与え、イオン交換基を本質的にイオン性及び酸性にする拡大した原子価状態を有する。そのため、イオン交換は、負に帯電した多価元素で起こり得る。したがって、セラミック触媒担体の表面は、イオン官能基で官能化される。
【0013】
セラミック触媒担体は、触媒粒子と結合していてもよい。例えば、共有結合性窒化物は、窒素と、ホウ素、ケイ素、アルミニウム及び/又は炭素との間の共有結合により形成される結晶性構造を有する。共有結合性窒化物の表面の窒素原子は、白金、白金族金属、及び非白金族金属等の触媒粒子を引き付けて結合する孤立電子対を有する。同様に、共有結合性金属ホウ化物は、ホウ素と、より電気陰性度が小さい金属原子との間の共有結合により形成される構造を有し、金属炭化物は、炭素とより電気陰性度の小さい金属原子との間の共有結合により形成される構造を有する。金属ホウ化物及び金属炭化物の共有結合性π結合は、触媒粒子とも結合する。触媒粒子は、通常、共有結合性セラミック材料の酸素配位子及び/又は窒素配位子への親和性を有するため、触媒粒子をセラミック触媒担体に近接して維持し、それによって触媒の移動を低減又は防ぐ。
【0014】
本明細書で記述するイオン交換官能化触媒担体は、セラミック触媒担体材料による金属結合特性、及びイオン交換基によるアイオノマー特性の両方を有するとともに、電気伝導性も保持している。触媒層で使用されるときに、本明細書で記述される触媒被覆膜(CCM)又は膜電極アセンブリ(MEA)、イオン交換官能化触媒担体は、電気化学電池システムのイオン伝導度を向上させ、触媒担体、触媒粒子、アイオノマー、及び電極間の接触及び結合を増加させるため、触媒粒子の損失を低減する。さらに、セラミック触媒担体材料の表面のイオン交換官能化は、触媒担体の活性表面積を増加させ、プロトン輸送に追加の機能をもたらすと考えられる。
【0015】
本明細書で使用するとき、「触媒粒子」とは、反応の全体の標準ギブス自由エネルギー変化を変えないで反応の速度を向上させる「ブラックの」又はそのままの粒子(例えば、触媒粒子が結合され得る任意の触媒担体を含まず、任意の触媒添加剤を含まない。)をいう。触媒粒子は、単一の分子であってもよいし、一群の分子であってもよい。
【0016】
本明細書で使用するとき、「電解触媒粒子」又は「電気化学触媒粒子」とは、電気化学反応を行うために必要とされる活性化エネルギーを減少させ、及び/又は酸素発生反応(OER)、水素発生反応(HER)、水素酸化反応(HOR)、及び/又は酸素還元反応(ORR)等の電気化学反応の速度を高める触媒粒子をいう。適切な電解触媒としては、限定されるものではないが、白金族金属(PGM)(例えば、白金、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、及びロジウム)等の金属、遷移金属(例えば、銀、金、コバルト、銅、鉄、ニッケル、レニウム及び水銀)、及びポスト遷移金属(例えばスズ)、金属合金(例えば、遷移金属とのPGM合金、及び白金-ルテニウムベースの合金)及び/又は金属酸化物(例えば、酸化イリジウムルテニウム、酸化イリジウム、酸化マグネシウム、及び酸化セリウム(IV))を挙げることができる。
【0017】
本明細書で使用するとき、「触媒担体」とは、触媒粒子を除く、触媒粒子を担持するために使用され得る物質(例えば、触媒粒子が結合され得る物質又は材料、或いは触媒粒子が担持され得る物質又は材料)をいう。触媒担体の例としては、限定されるものではないが、炭素(例えば、グラファイト、カーボンナノチューブ、及び/又はグラフェン)、及び/又は本明細書で記述されるイオン交換官能化触媒担体が挙げられる。
【0018】
本明細書で使用するとき、「触媒」とは、触媒粒子、及び/又は触媒粒子が担持された触媒担体とともに使用される触媒粒子をいう。触媒は、触媒添加剤を含んでもよい。
【0019】
本明細書で使用するとき、「電極触媒」又は「電気化学触媒」とは、「ブラックの」又はそのままの状態の電極触媒、及び電極触媒が担持されている触媒担体とともに使用される電極触媒粒子をいう。電極触媒は、触媒添加物を含んでもよい。
【0020】
本明細書で使用するとき、「金属」とは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ポスト遷移金属、及び半金属を含む。
【0021】
本明細書で使用するとき、「アイオノマー」とは、小さいが、相当な割合(例えば約15mol%以下)の構成単位が、イオン性の及び/又はイオン化可能な基(例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、4価のホウ素ベースの酸性基等)を有する分子で構成されるポリマーをいう。
【0022】
本明細書で使用するとき、「多価」とは、原子が、特定の数の原子価結合に限定されず、それぞれ異なる数の原子価結合を持つ多数の異なる原子価状態を有し得ることを意味する。そのため、多価金属原子は、例えば1~3まで「その原子価状態を拡大」し、負の1(-1)、負の2(-2)、又は負の3(-3)の形式電荷を持つ4価、5価、又は6価構造を形成し得る。例えば、ホウ素は、3個の価電子を有し、基底状態の電子配置が1s22s22p1である。ホウ素は、通常、ホウ素が3個の共有結合を有する3価の中性化合物を形成する。そのため、ホウ素原子は、空のp軌道と混成したsp2であり、これにより3価のホウ素化合物を電子不足にしている。しかしながら、ホウ素は、空のp軌道に起因して多価であるため、4個の共有結合を持つ負に帯電した4価の化合物を形成できる。電気的に中性なアルミニウムも、3個の価電子を有しているため、通常3個の共有結合を形成する。しかしながら、アルミニウムも、1まで原子価状態を拡大し、負の形式電荷を持つ4価のイオンを形成できる。電気的に中性なケイ素は、4個の価電子を有しているため、通常、4個の共有結合を形成する。しかしながら、ケイ素も、1又は2まで原子価状態を拡大し、負の1(-1)又は負の2(-2)の形式電荷をそれぞれ有する5価又は6価のイオンを形成できる。
【0023】
本明細書で使用するとき、「セラミック」とは、2つ以上の元素で形成された無機、非金属、又は半金属の固体化合物を意味する。他の化合物もセラミックになり得るが、セラミックの主な分類としては、酸化物、窒化物、炭化物、及びホウ化物が挙げられる。セラミック材料は、複合セラミックを含んでもよい。セラミック材料は、金属結合力及び/又はファンデルワールス原子間結合力を有していることもあるが、典型的に、セラミック材料は、共有結合力及び/又はイオン原子間結合力で結び付いている。セラミックの微細構造は、全体がガラス質、全体が結晶質、又は結晶質及びガラス質の組み合わせであり得る。セラミックの結晶構造は多く、多様であるため、非常に幅広い物理的性質及び化学的性質をもたらす。セラミック材料の組成は、化学量論的であってもよいし、非化学量論的であってもよく、本明細書のセラミック材料について与えられる一般式は近似値であり、限定することを意図するものではない。セラミックは、例えば特定の用途で使えるように、セラミック材料の様々な物理的、化学的、及び電気的性質(例えば、疎水性、親水性、電気伝導性、熱伝導抵抗性、融点等)を制御又は調整するために、ドーパント、欠陥、及び/又は不純物(例えば元素不純物又は分子不純物)を含んでいてもよい。不純物の例としては酸素であり、いくつかの例では、酸素はセラミック材料の最大約5原子%を構成し得る。
【0024】
本明細書で使用するとき、「複合材」とは、2種以上の区別できる材料を組み合わせた材料をいい、各材料はそれぞれ独特の性質を持つが、構成材料単独では作用しない性質を有する。セラミック複合材は、多数の異なるセラミック材料を組み合わせた材料、並びにセラミック材料及び非セラミック材料(例えば金属、ポリマー、炭素)を組み合わせた材料を含む。
【0025】
本明細書で使用するとき、大部分が共有結合性の原子間結合力を特徴としている場合、材料は「共有結合性」である。通常、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、炭素、窒素、及び/又は酸素等の同程度の電気陰性度の元素で形成されたセラミックは、共有結合性セラミックを形成している。いくつかの金属ホウ化物も、共有結合性セラミックであり得る。一方で、セラミック材料中のイオン結合の度合いは、セラミック材料の結合原子間で電気陰性度の差異が増大するにつれて大きくなる。セラミックは、多数の異なる種類の原子間結合(例えば、イオン性及び共有結合性)を有すること、又は原子間結合を、完全なイオン性、完全な共有結合性、又は完全な金属性と簡単にみなすことができないことを意味する混合結合を有することもある。本明細書で使用するとき、ほとんど(又は全ての)原子間結合がイオン性(又は金属性)よりも共有結合性である場合に、材料は共有結合性である。本明細書で記述されるイオン交換官能化触媒担体で使用され得る共有結合性セラミック材料の例としては、共有結合性窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム)、共有結合性ホウ化物(例えば、ホウ化ニオブ、ホウ化タンタル)、及び共有結合性炭化物(例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素)、並びに共有結合性セラミック材料を含むセラミック複合材が挙げられる。
【0026】
これから例示的イオン交換官能化触媒担体を記述する。イオン交換官能化触媒担体は、セラミック触媒担体、及びセラミック触媒担体の表面のイオン交換基を含む。
【0027】
セラミック触媒担体は、共有結合性セラミック材料を含む。いくつかの例では、共有結合性セラミック材料は、共有結合性窒化物、共有結合性ホウ化物、共有結合性炭化物、及び/又は共有結合性窒化物、共有結合性金属ホウ化物、及び/又は共有結合性炭化物を含む2種以上の共有結合性セラミック材料の複合材である。
【0028】
窒化物は、窒素がほぼ同等の又はより小さい電気陰性度を有する元素と結合しているセラミック化合物である。窒化物は、結合に基づいてイオン性、侵入性又は共有結合性に分類できる。共有結合性窒化物は、大部分が共有結合で形成された構造を有する。共有結合性セラミック窒化物の窒素原子は、触媒粒子を引き付けて結合し得る孤立電子対を有する。いくつかの例では、セラミック材料は、共有結合性窒化物である。いくつかの例では、共有結合性窒化物は、限定されるものではないが、ホウ素、ケイ素、及び/又はアルミニウム等の1つ以上の多価元素と結び付いた窒素を含む。以下でより詳細に説明するように、多価元素は、ペンダント表面基と共有結合することで、窒素原子が触媒粒子と結合しつつ、イオン交換基を形成し得る。
【0029】
いくつかの例では、共有結合性窒化物は、窒化ホウ素(BN)、窒化ケイ素(Si3N4)、又は窒化アルミニウム(AlN)を含む2元系窒化物である。
【0030】
窒化ホウ素は、化学式BNを持つホウ素と窒素の化合物である。窒化ホウ素は、六方晶窒化ホウ素(h-BN)、立方晶窒化ホウ素(c-BN)、ウルツ鉱型窒化ホウ素(w-BN)、及びアモルファス窒化ホウ素(a-BN)等の様々な多形体で存在する。窒化ホウ素の任意の形状を、セラミック触媒担体の共有結合性セラミック材料を構成する共有結合性窒化物として使用してもよい。
【0031】
いくつかの例では、共有結合性窒化物は六方晶窒化ホウ素である。六方晶窒化ホウ素は、グラファイトと類似の構造を有する。六方晶窒化ホウ素は層構造であり、それぞれの層は、グラファイトの炭素-炭素π結合と類似して、ホウ素-窒素π結合で交互に共に結合されたホウ素と窒素の平面の6員環で形成されている。六方晶窒化ホウ素の大部分のsp2混成した窒素原子は孤立電子対を有し、これにより共有結合性窒化物の表面の触媒粒子に特有の電子結合操作をもたらす。
【0032】
六方晶窒化ホウ素は、1つの層のホウ素原子が隣接する層の窒素原子の上に位置するように配置された多数の層を有し得る。隣接する層は、弱いファンデルワールス力で共に結び付いている。しかしながら、グラファイトと異なり、六方晶窒化ホウ素のホウ素-窒素結合は、ホウ素と窒素の電気陰性度の差異に起因して双極性であるため、より電気陰性な窒素原子上に部分的な負の電荷を発生させ、より電気陰性が小さいホウ素原子は、部分的な正の電荷を有する。グラファイトは強力な電気伝導体であるが、六方晶窒化ホウ素は非導電性である。一方で、グラファイトはプロトンを輸送できないが、六方晶窒化ホウ素は、窒素原子及び/又はホウ素原子上の部分電荷によってイオン輸送能力を有する。
【0033】
窒化ケイ素は、様々な異なる組成を持つケイ素と窒素の化合物である。いくつかの例では、窒化ケイ素は、通常、熱力学的及び化学的に安定であるSi3N4である。Si3N4は、三方晶(α-Si3N4)、六方晶(β-Si3N4)、立方晶(γ-Si3N4)及びアモルファス等の様々な形態で存在する。窒化ケイ素の任意の組成及び形態を、セラミック触媒担体の共有結合性セラミック材料を構成する共有結合性窒化物として使用できる。
【0034】
窒化アルミニウムは、一般式AlNを持つアルミニウムと窒素の化合物である。六方晶ウルツ鉱構造及び立方晶閃亜鉛鉱相等の様々な形態で存在する。窒化アルミニウムの任意の組成及び形態を、セラミック触媒担体の共有結合性セラミック材料を構成する共有結合性窒化物として使用してもよい。
【0035】
いくつかの例では、共有結合性窒化物は、ホウ素、ケイ素、及び炭素のうちの2種以上の元素と結び付いた窒素を含む。いくつかの例では、共有結合性窒化物は、窒化ホウ素炭素、窒化ケイ素炭素、又は窒化ケイ素ホウ素を含む3元系窒化物であり、それぞれ少なくとも1種の多価元素(例えばホウ素又はケイ素)を含む。
【0036】
窒化ホウ素炭素(B-C-Nと略す)は、一般式BxCyNz、(式中、x、y及びzは3元系B-C-N系内で任意の数字(整数又は実数)の組み合わせであってもよい)を持つホウ素、炭素及び窒素の化合物である。例えば、窒化ホウ素炭素は、B1C1N1、BC4N、BC2N、B13CN、炭素ドープ六方晶窒化ホウ素(h-BCN)、又はB-C-N3元系内で任意の他の組成を含んでいてもよい。B-C-Nでは、ホウ素、炭素及び窒素は共有結合しており、B-C-Nを熱的及び機械的にロバストにしている。B-C-Nの組成(例えば、x、y及びzの値)は、特定の用途に望ましい性質を持つB-C-N組成を得るために調整してもよい。
【0037】
窒化ケイ素炭素(Si-C-Nと略す)は、一般式SixCyNz(式中、x、y、及びzは3元Si-C-N系内で任意の数字(整数又は実数)の組み合わせであってもよい。)を持つケイ素、炭素及び窒素の化合物である。Si-C-Nにおいて、ケイ素、炭素及び窒素は共有結合しており、Si-C-Nを熱的及び機械的にロバストにしている。Si-C-Nの組成(例えば、x、y及びzの値)は、特定の用途に望ましい性質を持つSi-C-N組成を得るために調整してもよい。
【0038】
窒化ケイ素ホウ素(Si-B-Nと略す)は、一般式SixByNz(一般式中、x、y及びzは3元系Si-B-N中の任意の数字(整数又は実数)の組み合わせであってもよい。)を持つケイ素、ホウ素、及び窒素の化合物である。Si-B-Nにおいて、ケイ素、ホウ素及び窒素は共有結合をしており、Si-B-Nを熱的及び機械的にロバストにしている。Si-B-Nの組成(例えばx、y及びzの値)は、特定の用途に適した所望の性質を持つSi-B-N組成を得るために調整してもよい。
【0039】
いくつかの例では、セラミック触媒担体は、共有結合性金属ホウ化物を含む。金属ホウ化物は、ホウ素が、大部分の共有結合によりほぼ同等の又はより小さい電気陰性度の金属と結合しているセラミック化合物である。金属ホウ化物の金属原子は、触媒粒子を引き付けて結合し、セラミック触媒担体の表面のホウ素原子は、ペンダント表面基と共有結合し、イオン交換基を形成する。金属ホウ化物のπ型共有結合は電子供与性であり、金属性触媒粒子との結合を促進する。
【0040】
いくつかの例では、金属ホウ化物の金属(M)は、周期表の2族、4族、5族、6族、8族、13族、及び/又は14族の1種以上の金属である。いくつかの例では、金属ホウ化物の金属は、遷移金属である。いくつかの例では、金属ホウ化物は、4族、5族及び/又は6族から選択される遷移金属を含む。いくつかの例では、金属ホウ化物は、遷移金属(TM)と一ホウ化物(TMB)又は二ホウ化物(TMB2)を形成している。いくつかの例では、遷移金属(TM)は、4族、5族、又は6族から選択される。いくつかの例では、金属ホウ化物の金属は、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、及び/又は上述の金属の任意の組み合わせを含む。
【0041】
いくつかの例では、共有結合性金属ホウ化物は、2元系金属ホウ化物である。2元系金属ホウ化物は、通常、ホウ素(B)と金属(M)の間の短い共有結合により特徴付けられており、該短い共有結合が材料に硬度並びに熱的及び機械的安定性を付与していると考えられている。2元系金属ホウ化物の化学量論は、M5B等のホウ素含有量の低い化合物からMB66又はMB99等のホウ素が豊富な化合物にまで及ぶ。2元系金属ホウ化物は、任意の適切な組成を有していてもよく、ホウ素リッチ(例えばホウ素:金属の比が4:1以上)又は金属リッチ(例えばホウ素:金属の比が4:1未満)であってもよい。セラミック触媒担体として使用され得る金属ホウ化物の適切な例としては、限定されるものではないが、ホウ化ニオブ(例えばNbB、NbB2)、ホウ化タンタル(例えばTaB、TaB2、Ta5B6、Ta3B4)、ホウ化チタン(例えばTiB2)、ホウ化ジルコニウム(例えばZrB2、ZrB12)、ホウ化ハフニウム(例えばHfB2)、ホウ化バナジウム(例えばVB、VB2)、ホウ化アルミニウム(例えばAlB2、AlB12)、ホウ化マグネシウム(例えばMgB2、MgB4、MgB6、MgB7、MgB12、MgB20、Mg2B25)、ホウ化クロム(例えばCrB2)、ホウ化鉄(例えば、FeB、Fe2B、FeB4)、及びホウ化ケイ素(例えばSiB3、SiB6)が挙げられる。
【0042】
第4族から選択される金属を含む金属ホウ化物、例えばホウ化バナジウム(VB)、二ホウ化バナジウム(VB2)、ホウ化ニオブ(NbB)、二ホウ化ニオブ(NbB2)、二ホウ化三ニオブ(Nb3B2)、ホウ化タンタル(TaB)、及び二ホウ化タンタル(TaB2)は、独自の安定構造を有する。
【0043】
いくつかの例では、共有結合性金属ホウ化物は、ホウ化ニオブを含む。ホウ化ニオブは、ニオブ及びホウ素を含む2元系化合物であり、多数の構造的変化物及び化学量論的変化物で存在する。ホウ化ニオブの化学量論的変化物及び非化学量論的変化物は、簡単に一定の比率で合成できる。全ての種類のホウ化ニオブの組成において、ニオブは、ニオブ-ホウ素多重結合でホウ素と共有結合しており、ホウ素は3価状態である。ホウ化ニオブ(NbB)及び二ホウ化ニオブ(NbB2)の両方は、共有結合を有する。二ホウ化ニオブ(NbB2)は、グラファイトのような、共有結合性の平面六方晶シート状構造の層を有する。ホウ化ニオブは、極めて高い熱伝導性及び電気伝導性、並びに酸素に対する優れた化学安定性を持つ非常に安定なセラミック材料である。任意の適切な組成及び構造のホウ化ニオブを、セラミック触媒担体の共有結合性金属ホウ化物として使用してもよい。
【0044】
ホウ化ニオブは、触媒担体としての独自の強みを電気触媒粒子に付与する。ホウ化ニオブは、CCM及びMEAのスループット、性能、及び安定性を向上させる。例えば、ホウ化ニオブ触媒担体は、触媒粒子の可逆的な定着もたらし、触媒粒子の安定性を高め、かつ、触媒粒子の回転率を高める。触媒粒子の可逆定着を付与する効率的な固体触媒担体の設計により、従来の触媒担体と比較して、触媒性能を向上させ、触媒粒子の損失を最小限にする。ホウ化ニオブ触媒担体は、白金族金属(PGM)触媒粒子に対して、より良い触媒作用、触媒サイクル、及び触媒回転に適した共同的効果及び相乗効果も付与する。ホウ化ニオブ触媒担体は、低重量(例えば<10質量%)の白金(Pt)及びPGM触媒粒子と高い効率を示す。
【0045】
ホウ化ニオブ触媒担体は、従来の炭素ベースの触媒固体担体がもたらす電気伝導性を超える、優れた電気伝導性ももたらす。全ての種類のホウ化ニオブ組成において、ニオブは、ニオブ-ホウ素多重結合によってホウ素と共有結合しており、ホウ素は3価状態である。これらの共有結合性ホウ化ニオブ骨格は、独自の定着能力と共に、ホウ化ニオブの極めて高い電気伝導性機構を電解触媒粒子(例えばPGM)にもたらす。
【0046】
また、ホウ化ニオブ触媒担体は、電気化学電池(例えば、触媒粒子、アイオノマー、触媒層、PEM、CCM、ガス拡散層、MEA等)内の様々な層及び組成間/中での接触表面を増加させる。そのため、ホウ化ニオブは、従来の触媒担体と比較して、様々な成分の結合を強化する。PEM、触媒層、及びCCMの疎水性及び親水性のバランスを微調整すると共に、成分の結合を強化することにより、成分同士の性能を向上させる。例えば、ホウ化ニオブ触媒担体は、触媒粒子、電極及び触媒層のアイオノマー間、並びに触媒層とCCMのPEM間、及びCCMとMEAのGDL間での調整された相互作用を確保する。
【0047】
ホウ化ニオブ触媒担体は、電気化学電池の動作条件下で、熱的、機械的及び化学的に耐久性がある。すでに述べたように、ホウ化ニオブは、従来の触媒担体と比較して、電気化学電池の様々な成分の結合を強化する。さらに、ホウ化ニオブは、電気化学反応で重要なパラメータである、酸化及び酸化還元ストレスに対して優れた安定性を有する。
【0048】
いくつかの例では、ホウ化ニオブは導電性である。4族金属と形成される金属ホウ化物は、ホウ化ケイ素及びホウ化ニオブのように導電性である。他の金属ホウ化物は、導電性であってもよい。
【0049】
いくつかの例では、セラミック触媒担体のセラミック材料は、共有結合性炭化物である。炭化物は、炭素及びより電気陰性度が小さい元素又は化合物、通常、金属又は金属酸化物で構成される化合物である。窒化物と同様に、炭化物は、イオン性、侵入性又は共有結合性に分類され得る。共有結合性炭化物は、大部分が共有結合で形成される構造を有する。共有結合性炭化物は、一般的に、ホウ素及び/又はケイ素で形成されている。いくつかの例では、共有結合性炭化物は、炭化ケイ素又は炭化ホウ素等の2元系炭化物である。
【0050】
炭化ケイ素は、炭素及びケイ素で形成されており、一般式SiCを有する。炭化ケイ素は、限定されるものではないが、α炭化ケイ素(α-SiC)、β変性炭化ケイ素((β)3C-SiC)、4H-SiC及び(α)6H-SiC、並びにアモルファス形態等の数多くの様々な結晶性構造(多面体)で存在する。任意の組成及び形態の炭化ケイ素をセラミック触媒担体のセラミック材料として使用してもよい。いくつかの例では、セラミック材料は、六方晶炭化ケイ素で形成されている。
【0051】
炭化ホウ素は、炭素及びホウ素で形成されており、B4C、B12C3、及びBC3等の様々な異なる組成を有し得る。炭化ホウ素は、20面体ベースのホウ化物に特有の複合結晶構造を有する。任意の組成及び形態の炭化ホウ素を、セラミック触媒担体のセラミック材料として使用してもよい。
【0052】
いくつかの例では、セラミック材料は、本明細書で記述される1種以上の共有結合性窒化物、共有結合性金属ホウ化物、及び/又は共有結合性炭化物の組み合わせで形成されたセラミック複合材である。複合材料は、アルミニウム、ホウ素、及び/又はケイ素等の少なくとも1種の多価元素を含む。例えば、セラミック材料は、窒化物複合材、ホウ化物-窒化物複合材、炭化物-窒化物複合材、又は炭化物-ホウ化物複合材であってもよい。いくつかの例では、セラミック複合材材料としては、共有結合性セラミック材料に加えて、非共有結合性セラミック材料(例えば、イオン性又は侵入型窒化物、ホウ化物、又は炭化物)と、並びに/又は金属、ポリマー、及び/若しくはグラファイト、グラフェン及びカーボンナノチューブ等の導電性炭素繊維及び/若しくは炭素粉末等非セラミック材料とが挙げられる。
【0053】
窒化物複合材は、2種以上の共有結合性窒化物(2元系窒化物及び/又は3元系窒化物)で形成されている。窒化物複合材の例示的な例としては、限定されるものではないが、窒化ホウ素-窒化ケイ素(BN-SiN)、窒化ホウ素-窒化アルミニウム(BN-AlN)、窒化ケイ素-窒化アルミニウム(SiN-AlN)、及び窒化ホウ素-窒化ケイ素-窒化アルミニウム(BN-SiN-AlN)が挙げられる。
【0054】
ホウ化物-窒化物複合材は、1種以上の共有結合性金属ホウ化物及び1種以上の共有結合性窒化物(例えば、2元系窒化物及び/又は3元系窒化物)で形成されている。ホウ化物-窒化物複合材の例示的な例としては、限定されるものではないが、二ホウ化チタン-窒化アルミニウム(TiB2-AlN)、窒化ホウ素-ホウ化ニオブ(BN-NbB)、窒化ホウ素-二ホウ化ニオブ(BN-NbB2)、窒化ホウ素-ホウ化タンタル(BN-TaB)、及び二ホウ化ジルコニウム-窒化アルミニウム(ZrB2-AlN)が挙げられる。
【0055】
炭化物-窒化物複合材は、1種以上の共有結合性炭化物及び1種以上の共有結合性窒化物(2元系窒化物及び/又は3元系窒化物)で形成されている。炭化物-窒化物複合材の例示的な例としては、限定されるものではないが、六方晶窒化ホウ素-炭化ホウ素(h-BN-BC)、六方晶窒化ホウ素-炭化ケイ素(h-BN-SiC)、窒化ケイ素-炭化ケイ素(Si3N4-SiC)、及び窒化ケイ素-炭化ホウ素(SiN-BC)が挙げられる。
【0056】
ホウ化物-炭化物複合材は、1種以上の共有結合性金属ホウ化物及び1種以上の共有結合性炭化物で形成されている。炭化物-ホウ化物複合材の例示的な例としては、限定されるものではないが、二ホウ化ジルコニウム-炭化ケイ素(ZrB2-SiC)、二ホウ化-炭化ケイ素(NbB2-SiC)、及び二ホウ化ジルコニウム-炭化ホウ素(ZrB2-B4C)が挙げられる。
【0057】
イオン交換官能化触媒担体のイオン交換基は、セラミック触媒単体の表面の多価元素(例えばホウ素、ケイ素又はアルミニウム)、及び多価元素と共有結合したペンダント表面基を含む。そのため、多価原子は負の形式電荷を有しており、実質的にイオン性及び酸性であり、イオン交換を可能にする。ペンダント表面基は、多価原子と共有結合する、フッ化物試薬の誘導体(例えば、フッ化水素、フッ化金属、又はテトラアルキルアンモニウムフルオリド)、酸試薬(例えば、スルホン酸、アルキル若しくはアリールスルホン酸、リン酸、若しくはその酸の部分エステル、ホスホン酸若しくはその部分エステル、カルボン酸、又は酸の塩)、又はアルコール試薬(例えば、ポリフッ化エタノール若しくはフェノール、又はペルフッ化エタノール若しくはフェノール)であってもよい。例えば、ペンダント表面基は、対カチオンを有するフッ素原子(フッ化物試薬の誘導体)又は酸エステル(酸試薬の誘導体)であってもよい。セラミック触媒担体の表面をイオン交換基で官能化する例示的な例をこれから説明する。
【0058】
(上述の)セラミック触媒担体は、求核試薬を使用して表面を官能化し、セラミック触媒担体の表面のイオン交換基を得るものであってもよい。求核試薬は、セラミック触媒担体の表面の多価原子と共有結合する。いくつかの例では、求核試薬は、フッ化物試薬(例えば、フッ化水素、フッ化金属、及び/又はテトラアルキルアンモニウムフルオリド)である。他の例では、求核試薬は酸試薬である。セラミック触媒担体の表面を管理された方法で変性し、触媒担体の意図した用途に適するように調整された性質を有する触媒担体を得てもよい。イオン交換基の多価元素の負電荷は、フッ化水素又は酸由来のプロトン、フッ化金属由来の金属カチオン、又はテトラアルキルアンモニウムカチオン等の求核試薬由来のカチオンでバランスされる。イオン交換官能化触媒担体は、セラミック材料による(例えば、窒素ドナー原子による)金属結合特性に加えて、イオン交換基によるアイオノマー特性の両方を有しているため、イオン交換官能化触媒担体を電気化学反応に非常に適したものとしている。対カチオンは、親水性と親油性のバランスを調整するために別々に選択してもよい。
【0059】
イオン交換官能化触媒担体についての様々な例示的反応スキームをこれから記述する。以下の例は、単なる例示であり、限定するものではないことを理解されるだろう。
【0060】
図1Aは、フッ化物試薬を使用するセラミック触媒担体の表面官能化の例示的スキーム100Aを示す。図示のように、セラミック触媒担体102は、フッ化物試薬104と結び付き、イオン交換官能化触媒担体106を生成する。セラミック触媒担体102は、セラミック触媒担体102の表面における3価の原子Zを含む。Zは、3個の他の原子(例えば、窒素及び/又は炭素)と共有結合している。いくつかの例では、Zは、ホウ素又はアルミニウムである。セラミック触媒担体102は、窒化ホウ素、金属ホウ化物、炭化ホウ素、窒化アルミニウム、ホウ化アルミニウム、及び/又は前述のいずれかを含む複合材等の、本明細書で記述されるホウ素含有セラミック材料又はアルミニウム含有材料であってもよい。フッ化物試薬104は、フッ化物基(F
-)に結合した基Xを含む。いくつかの例では、Xは水素(H)、金属(M)、又は一般式R
4N
+を有するテトラアルキルアンモニウムである。金属(M)は、任意の適切な金属であってもよい。いくつかの例では、金属(M)は、アルカリ金属(例えばリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K))、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca))、限定されるものではないが、4族の金属(例えばジルコニウム(Zr))、白金族金属(PGM)、非PGM、13族の金属(例えば、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、及びインジウム(In))、及び/又は14族の金属(例えば、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、及びスズ(Sn))等の遷移金属である。いくつかの例では、金属(M)は、触媒粒子又はセラミック触媒担体102上に担持され得る他の触媒粒子との共触媒として機能する。Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基等のアルキル基又はアリール基である。
【0061】
スキーム100Aでは、フッ化物試薬104のフッ化物基が、セラミック触媒担体102のZと共有結合し、Z及びペンダント表面基としてのフッ化物試薬104のフッ素を含むイオン交換基108を形成する。Zは、原子価状態を3から4に拡大し、フッ化物試薬104(例えば、プロトン(H+)、リチウム(Li+)、ナトリウム(Na+)、カリウム(K+)、他の金属カチオン、又はテトラアルキルアンモニウム)由来のカチオン(X+)により釣り合った負の形式電荷を持つ4価となる。そのため、イオン交換官能化触媒担体106は、本質的にイオン性及び酸性であり、イオン交換基108での(例えば原子Zでの)プロトン交換を可能にする。
【0062】
図1Bは、フッ化物試薬を使用したセラミック触媒担体の表面官能化の他の例示的スキーム100Bを示す。スキーム100Bは、スキーム100Bにおいて、表面に結合した4価のケイ素原子(Si)を有するセラミック触媒担体110がフッ化物試薬104と結合し、イオン交換官能化触媒担体112を生成していることを除いて、スキーム100Aと同様である。セラミック触媒担体110は、窒化ケイ素、窒化ケイ素炭素、窒化ケイ素ホウ素、炭化ケイ素、及び/又は前述のいずれかを含む複合材等の本明細書で記述される任意のケイ素含有セラミック材料であり得る。フッ化物試薬104は、スキーム100Aについて上述したとおりである。
【0063】
スキームBにおいて、フッ化物試薬104のフッ化物基は、セラミック触媒担体110の多価ケイ素と共有結合をし、セラミック触媒担体110及びペンダント表面基としてのフッ化物試薬104のフッ素を含むイオン交換基114を形成する。ケイ素は、原子価状態を4から5に拡大し、フッ化物試薬104由来のカチオン(X+)により釣り合った負の形式電荷を持つ5価となる。そのため、イオン交換官能化触媒担体112は、実質的にイオン性及び酸性であり、イオン交換基114での(例えばケイ素原子での)プロトン交換を可能にする。
【0064】
スキーム100A及び100Bの例では、求核試薬は、フッ化物試薬104である。他の例では、求核試薬は、酸試薬又はアルコール試薬である。酸試薬及び/又はアルコール試薬を使用したセラミック触媒担体の表面官能化の例示的スキームをこれから説明する。
【0065】
図2Aは、酸試薬及び/又はアルコール試薬を使用したセラミック触媒担体の表面官能化の例示的スキーム200Aを示す。示されているように、セラミック触媒担体202は、試薬204と結び付き、イオン交換官能化触媒担体206を生成する。セラミック材料202は、本明細書で記述される任意のホウ素含有セラミック材料又はアルミニウム含有セラミック材料であってもよく、上述のセラミック触媒担体102と同一又は類似であってもよい。試薬204は、一般式A-OHを有し、一般式中、OHはヒドロキシル基であり、Aはヒドロキシル基を除く試薬の一部を表す。試薬204は、酸又はアルコールであり得る。例えば、スルホン酸試薬は、一般式(R-S(=O)
2-OH)を有し、一般式中、Rはアルキル基又はアリール基であり、非置換であってもよいし、全置換又は部分置換であってもよい。そのため、Aは、アルキルスルホニル基(R-S(=O)
2-)を表す。試薬204は、脱プロトン化後の酸素原子によって、セラミック触媒担体202のZと共有結合をしてもよい。酸試薬の例示的な例は、限定されるものではないが、スルホン酸(H
2SO
4又はS(=O)
2(OH)
2)アルキルスルホン酸及びアリールスルホン酸(R-S(=O)
2-OH)、リン酸(H
3PO
4又はP(=O)(OH)
3)及びその部分エステル、ホスホン酸(R-P(=O)(OH)
2)及びこれらのエステル、カルボン酸(R-C(=O)(OH))、並びに前述の酸の塩(硫酸塩、硫酸水素塩、スルホン酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、ホスホン酸塩、ホスホン酸水素塩)が挙げられ、ここで、Rは、アルキル基又はアリール基であり、非置換又は全置換若しくは部分置換である。アルコール試薬の例示的な例としては、限定されるものではないが、ポリフッ素化アルコール及びペルフッ素化アルコール(例えば、トリフルオロメタノール、ペンタフルオロエタノール、テトラフルオロフェノール、ペンタフルオロフェノール)が挙げられる。いくつかの例において、スキーム200Aは、多数の異なる試薬204を使用している。
【0066】
酸試薬204の塩又はアニオンは、エステル結合でセラミック触媒担体202のZと共有結合をし、セラミック触媒担体202のZ及びペンダント表面基としての酸試薬204のエステルを含むイオン交換基208を形成する。Zは、原子価状態を3から4に拡大し、酸試薬204由来のプロトン(H+)により釣り合った負の形式電荷を持つ4価となる。イオン交換基208によって、イオン交換官能化触媒担体206は、実質的にイオン性及び酸性であり、Z原子でのプロトン交換を可能にする。
【0067】
図2Bは、セラミック触媒担体の表面官能化の他の例示的スキーム200Bを示す。スキーム200Bは、スキーム200Bにおいて、表面に結合した4価のケイ素原子(Si)を有するセラミック触媒担体210が、試薬204と結び付き、イオン交換官能化触媒担体212を生成すること除いて、200Aと同様である。セラミック触媒担体210は、本明細書で記述される任意のケイ素含有セラミック材料であってもよく、上述のセラミック触媒担体110と同一又は類似であってもよい。試薬204のアニオン又は塩は、セラミック触媒担体210の多価ケイ素と共有結合し、それによってセラミック触媒担体210及びペンダント表面基としての試薬204のエステルを含むイオン交換基214を形成する。ケイ素は、原子価状態を4から5に拡大し、試薬204由来のプロトン(H
+)により釣り合った負の形式電荷を持つ4価となる。そのため、イオン交換官能化触媒担体212は、本質的にイオン性及び酸性であり、イオン交換基214での(例えばケイ素原子での)プロトン交換を可能にする。
【0068】
セラミック触媒担体102及び202がホウ化ニオブ、ホウ化チタン、及び/又はホウ化ジルコニウムを含む
図1A及び
図2Aの例において、表面のニオブ、チタン、及び/又はジルコニウムは、フッ化物試薬104のフッ化物基と又は強酸試薬204と部分的に反応し、負の形式電荷をニオブ原子、チタン原子、及び/又はジルコニウム原子上に発生させ得るため、官能化反応は、ホウ素(Z)だけに100%の選択性を保たないかもしれない。その場合には、隣接するホウ素原子は、フッ化物試薬104又は酸試薬204と反応して4価とならなくてもよい。それでもなお、表面に結合した大部分のホウ素原子は、フッ化物試薬104又は酸試薬204と反応して4価となる。
【0069】
図3は、スキーム100Aにより形成された例示的イオン交換官能化触媒担体300を示す。特定の実施に供し得るときに、他のセラミック材料、並びに他のフッ化物試薬、酸試薬、及びアルコール試薬を使用してもよいため、
図3はイオン交換官能化触媒担体の1つの考えられる形態の単なる例示であることを認識されるだろう。図示のように、イオン交換官能化触媒担体300は、向かい合うホウ素原子と窒素原子との間のファンデルワールス力(垂直破線で示されている)で結び付いている多層を有する六方晶窒化ホウ素(h-BN)を含むセラミック触媒担体302を含む。h-BNセラミック触媒担体302の各層が任意の数の六員環を有し得、h-BNセラミック触媒担体302が任意の数の層を有し得るため、
図3は、イオン交換官能化触媒担体300の一部のみを示している。さらに、h-BNセラミック触媒担体302は、粒子、ナノ粒子、ナノチューブ、シート又は多孔質骨格等の任意の形状及び形態を有していてもよい。
【0070】
図示のように、h-BNセラミック触媒担体302の上面は、共に共有結合したフッ素(F)原子及びh-BNセラミック触媒担体302のホウ素(B)原子をそれぞれ含むイオン交換基304で官能化されている。フッ素原子と結合することで、ホウ素原子は4価となり、負の形式電荷を有する。結果として、イオン交換官能化触媒担体300の官能化された表面は、実質的にイオン性であり、ホウ素原子でのカチオン交換を可能にする。
図3は、イオン交換官能化触媒担体300の上面がイオン交換基304で官能化されていることのみを示しているが、h-BNセラミック触媒担体302の他の表面がイオン交換基304で官能化されていてもよい。さらに、
図3は、上面の全ての表面ホウ素原子がフッ素原子に結合されていることを示しているが、表面官能化の程度は、限定試薬としてフッ化物試薬を使用することで所望により変更してもよい。
【0071】
イオン交換官能化触媒担体300は、触媒粒子を結合させる触媒担体として使用してもよい。4価の窒素原子は、触媒粒子を引き付けて結合する孤立電子対を有する。
図4は、白金(Pt)触媒粒子が、h-BNセラミック触媒担体302の上面で窒素原子と結合しているイオン交換官能化触媒担体300を示す。
図4は、h-BNセラミック触媒担体302の窒素と結合した個々の白金原子を示しているが、触媒粒子は、多数の白金原子を有するバルク触媒粒子を含んでいてもよい。
図4は、イオン交換官能化触媒担体300の上面のみが触媒粒子を担持していることを示しているが、h-BNセラミック触媒担体302の他の面が触媒粒子を担持していてもよい。さらに、
図3は、上面の全ての表面窒素原子が触媒粒子と結合していることを示しているが、結合している触媒の程度は、所望により変更してもよい。また、特定の実施をもたらし得るときに、他の触媒粒子を使用してもよいことを認識されるだろう。
【0072】
セラミック触媒担体の3価のホウ素原子若しくはアルミニウム原子、又は4価のケイ素原子の、4価のホウ素若しくはアルミニウム、又は5価のケイ素への表面改質は、それぞれ金属触媒粒子の結合を向上させ、触媒層、CCM及びMEAの他の成分への架橋支持をもたらす。さらに、イオン交換官能化触媒担体を使用することで、触媒、電極、及び触媒層のアイオノマー間の接触、CCMの触媒層及びPEM間の接触、並びにCCM及びガス拡散層(GDL)及びMEAの透過層間の接触を増加させ、これらの全ては、CCM及びMEAのスループット、性能及び安定性を向上させる。本明細書で記述されるイオン交換官能化触媒担体は、(表面のイオン交換基による)アイオノマー特性、及び向上した金属結合特性の両方を有しているため、イオン交換官能化触媒担体が電気化学用途に非常に適したものとなる。したがって、イオン交換官能化触媒担体は、MEAの異なる成分(例えば、触媒、アイオノマー、及び膜)間の結合を向上させるだけでなく、触媒層、CCM、及び/又はMEAの電解触媒担体を担持するために使用してもよい。
【0073】
いくつかの例では、イオン交換官能化触媒担体を、炭素ベースの触媒担体又はCCMの他の従来の触媒担体と(例えばこれらに加えて)使用し、CCMをサイクル数の増加に耐えられるようにし、はるかに小さい触媒重量で、かつ、触媒損失を低減してCCMを動作できるようにし得る。例えば、イオン交換官能化触媒担体は、炭素触媒担体(例えば、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ等)と結合されていてもよいし、或いは炭素触媒担体に担持されていてもよい。他の例では、イオン交換官能化触媒担体のセラミック触媒担体は、共有結合性セラミック材料及び導電性炭素(例えば、グラファイト、グラフェン、及びカーボンナノチューブを含む炭素繊維及び炭素粉末)を含むセラミック-炭素複合材であってもよい。炭素触媒担体と共にイオン交換官能化触媒担体を組み込んだCCMは、CCMで使用されている従来の炭素担体に対して、非常に耐久性があり、効果的な代替物として大きな可能性がある。
【0074】
イオン交換官能化触媒担体のセラミック材料が導電性(例えば、導電性金属ホウ化物)である場合、イオン交換官能化触媒担体は、炭素担体を完全に取り換えてもよい。そのような例において、触媒層は炭素担体を含まない。
【0075】
いくつかの例では、イオン交換官能化触媒担体は、触媒インク組成物中の添加剤であってもよい。例えば、イオン交換官能化触媒担体を、アイオノマー、炭素(又は他の触媒担体)、及び触媒粒子を含む適切な組成物と混合してもよい。イオン交換官能化触媒担体は、触媒の結合を促進させるのに役立ち、また、基質上により良い触媒層を形成するのに役立つため、MEAの製造中に触媒層を基質へ輸送する間のデカール転写プロセスのスループットを高める。水電解用及び燃料電池用途で触媒インクの成分としてイオン交換官能化触媒担体を使用することで、効率的な触媒-アイオノマー-電極の結合をもたらし、水電解システム及び燃料電池システムのCCM及びMEAの性能を向上させ、かつ、触媒の損失を低減することで触媒回転数を向上させる。例えば、イオン交換官能化触媒担体により、CCMの成分の結合を高めることや、PEM、触媒層、及びCCMでの疎水性及び親水性のバランスを微調整することが可能になり、これらは、電気化学電池のPEM、触媒層、及びCCMの性能に多大な影響を及ぼす。触媒結合が促進されることで、触媒性能を向上させ、触媒の損失を最小化する。
【0076】
既述のとおり、本明細書で記述されるイオン交換官能化触媒担体は、触媒層及び/又はCCMで使用されてもよく、これらは、水電解用及び燃料電池用途のMEA、他の用途のMEAに含まれ得る。イオン交換官能化触媒担体を組み込んでいる例示的触媒層、CCM及びMEAをこれから記述する。
【0077】
図5は、例示的プロトン交換膜水電解システム500(PEM水電解システム500)を示す。PEM水電解システム500は、電気を使用して電気化学反応により酸素(O
2)及び水素(H
2)に分解する。PEM水電解システム500の構成は単なる例示であり、他の適切な水電解システムだけでなく、他の適切な構成がポリフルオロ化リンカー変性多孔質ポリマーを組み込んでもよいように、限定されるものではない
【0078】
図5で示されるように、PEM水電解システム500は、膜電極アセンブリ502(MEA502)、多孔質輸送層504-1及び504-2、バイポーラ板506-1及び506-2、並びに電力供給源508を含む。PEM水電解システム500は、特定の実施に供し得るときに、追加の又は代わりの構成要素を含んでいてもよい。
【0079】
MEA502は、第1の触媒層512-1及び第2の触媒層512-2の間に配置されるPEM510を含む。PEM510は、第1の触媒層512-1を第2の触媒層512-2から電気的に分離しているとともに、プロトン(H+)等のカチオンの選択的な伝導性をもたらし、かつ、水素や酸素等の気体を透過させないようにしている。PEM510は、任意の適切な有機又は無機PEMで実施され得る。有機PEMの例示的な例としては、限定されるものではないが、合成ポリマー及び天然ポリマーが挙げられる。合成ポリマーの例としては、ナフィオン(登録商標)(デュポン・ド・ヌムール社から様々な形態及びグレードで入手できる。ナフィオン-H、ナフィオンHP、ナフィオン117、ナフィオン115、ナフィオン212、ナフィオン211、ナフィオンNE1035、ナフィオンXL等)、アクイビオン(登録商標)(異なる形態及びグレードでソルベイ社から入手できる。アクイビオンE98-05、アクイビオンPW98、アクイビオンPW87S等)、ゴアセレクト(登録商標)(WLゴア&アソシエイツ社から購入できる。)、フレミオン(旭ガラス社から購入できる。)、ペミオン+(アイオノマーイノベーションズ社から購入できる。)及びこれらの任意の組み合わせ、誘導体、グレード又は形態等のスルホン酸官能化ポリマーが挙げられる。天然ポリマーの例としては、限定されるものではないが、リグニン、セルロース又はキチンが挙げられる。無機PEMの例としては、限定されるものではないが、アモルファス無機材料(例えば、ガラス、石英ガラス、又はセラミック)、及び/又は結晶性無機材料(例えば、クオーツ、単結晶シリカ、又はアルミナ)が挙げられる。いくつかの例では、PEMは4価のホウ素を含む。
【0080】
第1の触媒層512-1及び第2の触媒層512-2は、イオン交換官能化触媒担体に担持された白金、ルテニウム、及び/又は酸化セリウム(IV)等の電気化学触媒粒子(図示せず)が埋設された導電性電極である。イオン交換官能化触媒担体は、本明細書で記述される任意の1つ以上のイオン交換官能化触媒担体であってもよい。いくつかの例では、第1の触媒層512-1及び/又は第2の触媒層512-2は、炭素触媒担体及び/又はアイオノマーも含む。アイオノマーは、触媒粒子を結合させるため及びイオンの伝導性を向上させるために使用され得る。
【0081】
MEA502は、多孔質輸送層504-1及び504-2の間に設置され、該多孔質輸送層504-1及び504-2は、流路514-1及び514-2がバイポーラ板506及び多孔質輸送層504の間に位置する状態で、バイポーラ板506-1及び506-2の間に設置される。
【0082】
MEA502では、第1の触媒層512-1がアノードとして機能し、第2の触媒層512-2がカソードとして機能する。PEM水電解システム500が、電力供給源508により電力を共有されると、下記電気化学半反応、すなわち、
2H2O → O2+4H++4e-
で表される酸素発生反応(OER)がアノード512-1で起こる。
プロトンは、PEM510によってアノード512-1からカソード512-2に伝導し、電子は、PEM510周辺の伝導経路によりアノード512-1からカソード512-2に伝導する。PEM510は、アノード512-1からカソード512-2へのプロトン(H+)及び水の輸送を可能にするが、酸素及び水素は透過させない。カソード512-2では、プロトンは、下記電気化学半反応、すなわち、
4H++4e- → 2H2
で表される水素発生反応(HER)で電子と結合する。
【0083】
OER及びHERは、下記全体の水電解反応、すなわち、
2H2O → 2H2+O2
により表される電解により水を分離する2つの補い合う電気化学反応である。
【0084】
図6は、ポリフルオロ化リンカー変性ポリマーを含む例示的プロトン交換膜燃料電池600(PEM燃料電池600)を示す。PEM燃料電池600は、電気化学反応の結果として電気を生成する。この例では、電気化学反応は、水素ガス(H
2)及び酸素ガス(O
2)の発生を伴い、水及び電気を生成する。PEM燃料電池600の構成は、単なる例示であり、他の適切なPEM燃料電池だけでなく、他の適切な構成がポリフルオロ化リンカー変性多孔質ポリマーを組み込んでもよいように、限定されるものではない。
【0085】
図6で示されるように、PEM燃料電池600は、膜電極アセンブリ602(MEA602)、多孔質輸送層604-1及び604-2、バイポーラ板606-1及び606-2を含む。電気負荷608は、MEA602と電気的に接続され、PEM燃料電池600により駆動され得る。PEM燃料電池600は、特定の実施に供するときに、
図6で示されていない追加の又は代わりの構成要素を含んでいてもよい。
【0086】
MEA602は、第1の触媒層612-1と第2の触媒層612-2との間に配置されるPEM610を含む。PEM610は、第1の触媒層612-1を第2の触媒層612-2から電気的に分離するとともに、プロトン(H+)等のカチオンの選択的な伝導性をもたらし、かつ、水素や酸素等の気体を透過させないようにする。PEM610は、本明細書で記述されるPEM(例えばPEM510)等の任意の適切なPEMで実施され得る。
【0087】
第1の触媒層612-1及び第2の触媒層612-2は、イオン交換官能化触媒担体上に担持された、電気化学触媒(図示せず)が埋設された導電性電極である。イオン交換官能化触媒担体は、本明細書で記述される任意の1つ以上のイオン交換官能化触媒担体であり得る。いくつかの例では、第1の触媒層612-1及び/又は第2の触媒層612-2は、炭素触媒担体及び/又はアイオノマーも含む。アイオノマーを、触媒粒子を結合するため及びイオンの伝導性を向上させるために使用してもよい。
【0088】
MEA602は、多孔質輸送層604-1及び604-2の間に配置され、該多孔質輸送層604-1及び604-2は、流路614-1及び614-2が間に配置される状態で、バイポーラ板606-1及び606-2の間に配置される。MEA602では、第1の触媒層612-1はカソードとして機能し、第2の触媒層612-2はアノードとして機能する。カソード612-1及びアノード612-2は、負荷608に電気的に接続され、PEM燃料電池600により発生された電気により負荷608を駆動させる。
【0089】
PEM燃料電池600の動作中に、水素ガス(H2)は、PEM燃料電池600のアノード側に流れ、酸素ガス(O2)は、PEM燃料電池600のカソード側に流れる。アノード612-2で、水素分子は、下記水素酸化反応(HOR)、すなわち、
2H2 → 4H++4e-
に従って、プロトン(H+)及び電子(e-)に電気的に分解される。
プロトンは、PEM600を通ってアノード612-2からカソード612-1に伝導し、電子は、PEM610を避け、伝導経路及び負荷608を通ってアノード612-2からカソード612-1に伝導する。カソード612-1で、プロトン及び電子は、下記酸素還元反応(ORR)、すなわち、
O2+4H++4e- → 2H2O
に従って酸素ガスと結合する。
したがって、PEM燃料電池600の全体の電気化学反応は、
2H2+O2 → 2H2O
となる。
【0090】
全反応において、PEM燃料電池600は、カソード612-1で水を生成する。水は、PEM610を通ってカソード612-1から612-2に流れることができ、またPEM燃料電池600のカソード側及び/又はアノード側の排水口を通じて除去され得る。全反応により、アノードで負荷608を駆動する電子を発生させる。
【0091】
いくつかの例では、システム500又はシステム600のアイオノマー、膜、及びPEMの1つ以上を、2021年4月28日に出願された国際特許出願PCT/US2021/029705、2021年6月24日に出願された国際特許出願PCT/US2021/038956、2022年8月9日に出願された国際特許出願PCT/US2022/039845、2022年9月16日に出願された国際特許出願PCT/US2022/043878、2022年1月25日に出願された米国仮特許出願第63/302,755号、及び2022年3月28日に出願された米国仮特許出願第63/324,471号に記述されているアイオノマー、膜、及び/又はPEMにより実施してもよく、そのそれぞれは、全体が本明細書に組み込まれる。
【0092】
本明細書で記述されるイオン交換官能化触媒担体は、燃料電池及び水電解以外の用途で使用されてもよい。例えば、イオン交換官能化触媒担体は、窒素及び水素を使用したアンモニア生成、及び二酸化炭素(CO2)の電気化学還元を使用したメタノール生成などの他の電気化学反応で使用してもよい。
【0093】
前述の説明では、様々な例となる実施形態及び例を説明してきた。しかしながら、以下の特許請求の範囲から逸脱しないで、様々な改良及び変形をそれらに加えてもよく、さらなる実施形態及び例を実施してもよいことは明らかであるだろう。例えば、本明細書で記述される1つの実施形態又は例のある特徴は、本明細書で記述される他の実施形態又は例の特徴と組み合わされてもよいし、或いは置き換えられてもよい。したがって、記述及び図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味であるとみなされたい。
【0094】
本開示の利点及び特徴を、以下の実施例によりさらに記述し得る。
【0095】
[実施例1]イオン交換官能化触媒担体であって、共有結合性窒化物、共有結合性金属ホウ化物、又は共有結合性炭化物を含むセラミック触媒担体と、及びセラミック触媒担体の表面におけるイオン交換基と、を備えるイオン交換官能化触媒担体。
【0096】
[実施例2]実施例1に記載のイオン交換官能化触媒担体において、セラミック触媒担体は、ホウ素、ケイ素、又はアルミニウムを含む2元系窒化物を含む、イオン交換官能化触媒担体。
【0097】
[実施例3]実施例2に記載のイオン交換官能化触媒担体において、2元系窒化物は、窒化ホウ素、窒化ケイ素、及び窒化アルミニウムを含む、イオン交換官能化触媒担体。
【0098】
[実施例4]実施例2に記載のイオン交換官能化触媒担体において、イオン交換基は、共有結合性窒化物のホウ素原子、ケイ素原子、又はアルミニウム原子を含む、イオン交換官能化触媒担体。
【0099】
[実施例5]実施例4に記載のイオン交換官能化触媒担体において、イオン交換基のホウ素原子、ケイ素原子、又はアルミニウム原子は、負の形式電荷を有する、イオン交換官能化触媒担体。
【0100】
[実施例6]実施例2に記載のイオン交換官能化触媒担体において、2元系窒化物は六方晶窒化ホウ素である、イオン交換官能化触媒担体。
【0101】
[実施例7]実施例1に記載のイオン交換官能化触媒担体において、セラミック触媒担体は、ホウ素、ケイ素及び炭素のうちの2つを含む3元系窒化物を含む、イオン交換官能化触媒担体。
【0102】
[実施例8]実施例7に記載のイオン交換官能化触媒担体において、3元系窒化物は、さらに炭素を含む、イオン交換官能化触媒担体。
【0103】
[実施例9]実施例7に記載のイオン交換官能化触媒担体において、3元系窒化物は、窒化ホウ素炭素、窒化ケイ素炭素、又は窒化ケイ素ホウ素を含む、イオン交換官能化触媒担体。
【0104】
[実施例10]実施例7に記載のイオン交換官能化触媒担体において、イオン交換基は、3元系窒化物のホウ素原子又はケイ素原子を含む、イオン交換官能化触媒担体。
【0105】
[実施例11]実施例10に記載のイオン交換官能化触媒担体において、イオン交換基のホウ素原子又はケイ素原子は、負の形式電荷を有する、イオン交換官能化触媒担体。
【0106】
[実施例12]実施例1に記載のイオン交換官能化触媒担体において、セラミック触媒担体は金属ホウ化物を含み、イオン交換基は金属ホウ化物のホウ素原子を含む、イオン交換官能化触媒担体。
【0107】
[実施例13]実施例12に記載のイオン交換官能化触媒担体において、イオン交換基のホウ素原子は、負の形式電荷を有する、イオン交換官能化触媒担体。
【0108】
[実施例14]実施例12に記載のイオン交換官能化触媒担体において、金属ホウ化物は、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムを含む、イオン交換官能化触媒担体。
【0109】
[実施例15]実施例12に記載のイオン交換官能化触媒担体において、金属ホウ化物は、バナジウム、ニオブ、又はタンタルを含む、イオン交換官能化触媒担体。
【0110】
[実施例16]実施例12に記載のイオン交換官能化触媒担体において、金属ホウ化物は導電性である、イオン交換官能化触媒担体。
【0111】
[実施例17]実施例1~16のいずれかに記載のイオン交換官能化触媒担体において、イオン交換基は、4価のホウ素原子、4価のアルミニウム原子、又は5価のケイ素原子を含む、イオン交換官能化触媒担体。
【0112】
[実施例18]実施例1~17のいずれかに記載のイオン交換官能化触媒担体において、イオン交換基は酸エステルを含む、イオン交換官能化触媒担体。
【0113】
[実施例19]実施例1~17のいずれかに記載のイオン交換官能化触媒担体において、イオン交換基はフッ素を含む、イオン交換官能化触媒担体。
【0114】
[実施例20]実施例1~19のいずれかに記載のイオン交換官能化触媒担体であって、さらに、炭素担体を備え、セラミック触媒担体が炭素担体と結合している、イオン交換官能化触媒担体。
【0115】
[実施例21]実施例1~20のいずれかに記載のイオン交換官能化触媒担体において、セラミック触媒担体は複合材料を含む、イオン交換官能化触媒担体。
【0116】
[実施例22]実施例21に記載のイオン交換官能化触媒担体において、複合材料は、共有結合性窒化物及び共有結合性炭化物を含む、イオン交換官能化触媒担体。
【0117】
[実施例23]実施例22に記載のイオン交換官能化触媒担体において、複合材料は、窒化ホウ素-炭化ホウ素複合材、窒化ホウ素-炭化ケイ素複合材、窒化ケイ素-炭化ケイ素複合材、又は窒化ケイ素-炭化ホウ素複合材を含む、イオン交換官能化触媒担体。
【0118】
[実施例24]実施例21に記載のイオン交換官能化触媒担体において、複合材料は、3元系窒化物、及び炭化ホウ素又は炭化ケイ素のうちの少なくとも1つを含む、イオン交換官能化触媒担体。
【0119】
[実施例25]触媒層であって、イオン交換官能化触媒担体であり、共有結合性窒化物、共有結合性金属ホウ化物、又は共有結合性炭化物を含むセラミック触媒担体、及びセラミック触媒担体の表面のイオン交換基を含む、該イオン交換官能化触媒担体、並びにイオン交換官能化触媒担体に担持された触媒粒子、を備える、触媒層。
【0120】
[実施例26]実施例25に記載の触媒層であって、さらに炭素担体を備え、イオン交換官能化触媒担体が炭素担体と結合している、触媒層。
【0121】
[実施例27]実施例25又は26に記載の触媒層であって、さらにアイオノマーを備える、触媒層。
【0122】
[実施例28]実施例27に記載の触媒層において、アイオノマーは4価のホウ素ベースの酸性基を含む、触媒層。
【0123】
[実施例29]実施例25~28のいずれかに記載の触媒層において、セラミック触媒担体は導電性である、触媒層。
【0124】
[実施例30]実施例29に記載の触媒層において、触媒層は炭素担体を含まない、触媒層。
【0125】
[実施例31]実施例25~30のいずれかに記載の触媒層において、触媒粒子は、白金族金属、遷移金属、金属合金、又は金属酸化物を含む、触媒層。
【0126】
[実施例32]実施例25~31のいずれかに記載の触媒層において、セラミック触媒担体は共有結合性窒化物を含み、共有結合性窒化物は、ホウ素、ケイ素、又はアルミニウムを含み、イオン交換基は、共有結合性窒化物のホウ素原子、ケイ素原子、又はアルミニウム原子を含む、触媒層。
【0127】
[実施例33]実施例32に記載の触媒層において、イオン交換基のホウ素原子、ケイ素原子、又はアルミニウム原子は、負の形式電荷を有する、触媒層。
【0128】
[実施例34]実施例33に記載の触媒層であって、さらに、イオン交換基のホウ素原子、ケイ素原子、又はアルミニウム原子とイオン的に連結したカチオンを備える、触媒層。
【0129】
[実施例35]実施例34に記載の触媒層において、カチオンは、プロトン、金属カチオン、又はテトラアルキルアンモニウムを含む、触媒層。
【0130】
[実施例36]実施例25~35に記載の触媒層において、セラミック触媒担体は金属ホウ化物を含み、イオン交換基は金属ホウ化物のホウ素原子を含む、触媒層。
【0131】
[実施例37]実施例36に記載の触媒層において、イオン交換基のホウ素原子は負の形式電荷を有する、触媒層。
【0132】
[実施例38]実施例37に記載の触媒層であって、さらに、イオン交換基のホウ素原子とイオン的に連結したカチオンを備える、触媒層。
【0133】
[実施例39]実施例38に記載の触媒層において、カチオンは、プロトン、金属カチオン、又はテトラアルキルアンモニウムを含む、触媒層。
【0134】
[実施例40]実施例25~39のいずれかに記載の触媒層において、イオン交換基はフッ素を含む、触媒層。
【0135】
[実施例41]実施例25~39のいずれかに記載の触媒層において、イオン交換基は酸エステルを含む、触媒層。
【0136】
[実施例42]イオン交換官能化触媒担体の作製方法であって、セラミック触媒担体の表面をイオン交換基で官能化するステップを備え、セラミック触媒担体は、共有結合性窒化物、共有結合性金属ホウ化物、又は共有結合性炭化物を含む、イオン交換官能化触媒担体の作製方法。
【0137】
[実施例43]実施例42に記載の方法において、セラミック触媒担体は、ホウ素、ケイ素、又はアルミニウムを含み、官能化するステップは、セラミック触媒担体の表面のセラミック触媒担体のホウ素原子、ケイ素原子、又はアルミニウム原子と求核試薬とを共有結合させるステップを含む、方法。
【0138】
[実施例44]実施例43に記載の方法において、求核試薬は、フッ化水素、フッ化金属、又はテトラアルキルアンモニウムフルオリドを含む、方法。
【0139】
[実施例45]実施例43に記載の方法において、求核試薬は、酸、酸の塩、ポリ塩基酸の部分エステル、又はアルコールを含む、方法。
【国際調査報告】