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特表2024-544232量子通信システムにおいてレーザの周波数を整合させるための方法およびシステム
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  • 特表-量子通信システムにおいてレーザの周波数を整合させるための方法およびシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】量子通信システムにおいてレーザの周波数を整合させるための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/70 20130101AFI20241121BHJP
   H04B 10/27 20130101ALI20241121BHJP
【FI】
H04B10/70
H04B10/27
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534263
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 NL2022050710
(87)【国際公開番号】W WO2023106923
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】2030077
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524215845
【氏名又は名称】キュー・バード・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア・アレクサンデル・スレーター
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ミデルブルフ
(72)【発明者】
【氏名】レモン・シアラン・ベルヴーツ
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AB11
5K102AH02
5K102AH26
5K102AH27
5K102PB01
5K102PH01
5K102PH22
5K102PH31
5K102PH42
5K102PH43
5K102PH49
(57)【要約】
本開示は、量子通信システムにおいてレーザの周波数を整合させるための方法であって、
- 第1の位置における第1の装置から第1の周波数を有する第1のレーザ信号を、および第2の位置における第2の装置を用いて第2のレーザ信号を第3の位置に位置するビームスプリッタに、2つのレーザ信号がビームスプリッタにおいて干渉してビート周波数を有するビート信号を得るように、送信するステップであって、ビート周波数が第1の周波数と第2の周波数との間の周波数差に相当する、ステップと、
- 第3の位置に配置される周波数検出ユニットによってビート信号のビート周波数を測定するステップと、
- ビート周波数が所定の周波数範囲にあるかどうかを判定するステップと、
- 第3の位置から第1または第2の装置のうちの少なくとも1つにフィードバック信号を送信するステップと、
- 第1または第2の装置のうちの少なくとも1つにフィードバック信号を送信することによって第1または第2の周波数を適合させるステップであって、周波数を適合させるステップが、
- ビート周波数が所定の周波数範囲外にある限り第1のアルゴリズムであって、第1のアルゴリズムが、ビート周波数を所定の周波数範囲に入れるように構成される、第1のアルゴリズムと、
- ビート周波数が所定の周波数にあれば第2のアルゴリズムと、
に従って実行されて、第1および第2のレーザ信号の周波数を整合させる、ステップと、
を含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子通信システムにおいてレーザの周波数を整合させるための方法であって、
- 第1の位置における第1の装置から第1の周波数を有する第1のレーザ信号を、および第2の位置における第2の装置を用いて第2のレーザ信号を第3の位置に位置するビームスプリッタに、前記第1および第2のレーザ信号が前記ビームスプリッタにおいて干渉してビート周波数を有するビート信号を得るように、送信するステップであって、前記ビート周波数が前記第1の周波数と第2の周波数との間の周波数差に相当する、送信するステップと、
- 前記第3の位置に配置される周波数検出ユニットによって前記ビート信号の前記ビート周波数を測定するステップと、
- 前記ビート周波数が所定の周波数範囲にあるかどうかを判定するステップと、
- 前記第3の位置から前記第1または第2の装置のうちの少なくとも1つにフィードバック信号を送信するステップと、
- 前記第1または第2の装置のうちの少なくとも1つに前記フィードバック信号を送信することによって前記第1または第2の周波数を適合させるステップであって、前記周波数を適合させるステップが、
- 前記ビート周波数が前記所定の周波数範囲外にある限り第1のアルゴリズムであって、前記第1のアルゴリズムが、前記ビート周波数を前記所定の周波数範囲に入れるように構成される、第1のアルゴリズムと、
- 前記ビート周波数が前記所定の周波数にあれば第2のアルゴリズムと、
に従って実行されて、前記第1および第2のレーザ信号の前記周波数を整合させる、ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1のアルゴリズムを実行するステップが、
- 前記第1のレーザ信号の前記第1の周波数を一定に保つステップと、
- 前記第2の装置に前記フィードバック信号を送信することによって前記第2のレーザ信号の前記第2の周波数を変化させるステップと、
- 前記第1の周波数および前記変化された第2の周波数に基づいて前記ビート信号の前記ビート周波数を測定するステップと、
- 前記ビート周波数が前記所定の周波数範囲外にあれば前記第2のレーザ信号の前記変化された第2の周波数を前記変化させることを繰り返すステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のレーザ信号の前記第2の周波数を変化させるステップが、
- ステップ様式で前記第2の周波数を変化させるステップであって、第1の周波数ステップでは前記周波数の変化が前記周波数検出ユニットの前記所定の周波数範囲に基づき、各以降の周波数ステップに対して前記周波数の前記変化が増加され、前記周波数ステップの符号が反転される、ステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各以降の周波数ステップでの前記周波数の前記変化の前記増加が、前記第1の周波数ステップの前記周波数の前記変化の加算を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、
- 各周波数ステップ後に、前記ビート信号の前記ビート周波数を測定するステップと、
- 前記ビート周波数が前記所定の周波数範囲にあるかどうかを判定するステップと、
- 前記ビート周波数が前記所定の周波数範囲にあれば、少なくとも1つの更なる周波数ステップを行うステップであって、前記少なくとも1つの更なる周波数ステップが、前記第1の周波数ステップの前記周波数の前記変化よりも小さい前記周波数の変化を含み、最後の周波数ステップの前記符号が直前の周波数ステップに等しい、ステップと、
- 前記ビート周波数が前記所定の周波数範囲外にあれば、前記第2のレーザ信号の前記第2の周波数を前記変化させることを繰り返すステップと、
を更に含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの更なる周波数ステップの前記周波数の前記変化が、前記第1の周波数ステップの前記周波数の前記変化の半分である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のアルゴリズムが、
- 前記第1のレーザ信号の前記第1の周波数を一定に保つことと、
- 前記第2の周波数および前記変化された第2の周波数に少なくとも部分的に基づいて前記ビート周波数の勾配を決定することと、
- 前記ビート周波数の前記勾配の方向に前記第2のレーザ信号の前記第2の周波数を変化させることと、
- 前記ビート信号の前記ビート周波数を測定することと、
- 前記ビート周波数が所定の閾値を下回れば、前記ビート周波数が所定の周波数範囲にあるかどうかを判定しつつ所定の時間待機することと、
- 前記ビート周波数が前記所定の閾値を上回れば、前記第2のレーザ信号の前記第2の周波数を前記変化させることを繰り返すことと、
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のアルゴリズムが、
- 検出不可能な周波数差を防止するために前記第2の周波数の前記変化に下限を課すことと、
- 前記ビート信号が前記周波数検出ユニットの前記所定の周波数範囲の外に移動することを防止するために前記第2の周波数の前記変化に上限を課すことと、
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のアルゴリズムの実行中に前記第2の周波数を前記変化させることが前記第2の周波数を前記第2のレーザ信号の有効周波数範囲外に移動させる場合、前記第1のアルゴリズムが、前記第2の周波数が一定に保たれ、前記第1の周波数が変化されて行われる、
請求項2から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のレーザ信号の前記周波数を変化させる前記ステップが、第2のレーザによって出力される前記レーザ信号の前記周波数を制御するように構成されるレーザ信号周波数制御ユニット、例えば温度調節器に供給される電圧を変化させることによって実行される、請求項2から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
量子通信システムにおいてレーザの周波数を整合させるためのシステムであって、
- 第1の位置に位置する第1の周波数を有する第1のレーザ信号を発するための第1のレーザユニットと、
- 第2の位置に位置する第2の周波数を有する第2のレーザ信号を発するための第2のレーザユニットと、
- 第3の位置に位置するビームスプリッタであって、前記第1および第2のレーザ信号が、前記ビームスプリッタ上で干渉してビート周波数のビート信号を得るように構成される、ビームスプリッタと、
- 前記ビート信号の前記ビート周波数を測定するための周波数検出ユニットであって、前記周波数検出ユニットが第3の位置に位置し、
- 前記ビート周波数が所定の周波数範囲にあるかどうかを判定することと、
- 前記第1または第2のレーザユニットのうちの少なくとも1つにフィードバック信号を送信することと、
- 前記第1または第2の装置のうちの少なくとも1つに前記フィードバック信号を送信することによって前記第1または第2の周波数を適合させることであって、前記周波数を適合させることが、
- 前記ビート周波数が前記所定の周波数範囲外にある限り第1のアルゴリズムであって、前記第1のアルゴリズムが、前記ビート周波数を前記所定の周波数範囲に入れるように構成される、第1のアルゴリズムと、
- 前記ビート周波数が前記所定の周波数範囲にあれば第2のアルゴリズムと、
に従って実行されて、前記第1および第2のレーザ信号の前記周波数を整合させる、前記第1または第2の周波数を適合させることと、
をするように構成されるプロセッサを備える、周波数検出ユニットと、
を備える、システム。
【請求項12】
前記第1のアルゴリズムを実行することが、
- 前記第1のレーザ信号の前記第1の周波数を一定に保つことと、
- 前記第2のレーザユニットに前記フィードバック信号を送信することによって前記第2のレーザ信号の前記第2の周波数を変化させることと、
- 前記第1の周波数および前記変化された第2の周波数に基づいて前記ビート信号の前記ビート周波数を測定することと、
- 前記ビート周波数が前記所定の周波数範囲外にあれば前記第2のレーザ信号の前記変化された第2の周波数を前記変化させることを繰り返すことと、
を更に含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第2のレーザ信号の前記第2の周波数を前記変化させることが、
- ステップ様式で前記第2の周波数を変化させることであって、第1の周波数ステップでは前記周波数の変化が前記周波数検出ユニットの前記所定の周波数範囲に基づき、各以降の周波数ステップに対して前記周波数の前記変化が増加され、前記周波数ステップの符号が反転される、ステップ様式で前記第2の周波数を変化させることを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
各以降の周波数ステップでの前記周波数の前記変化の前記増加が、前記第1の周波数ステップの前記周波数の前記変化の加算を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1のアルゴリズムが、
- 各周波数ステップ後に、前記ビート信号の前記ビート周波数を測定することと、
- 前記ビート周波数が前記所定の周波数範囲にあるかどうかを判定することと、
- 前記ビート周波数が前記所定の周波数範囲にあれば、少なくとも1つの更なる周波数ステップを行うことであって、前記少なくとも1つの更なる周波数ステップが、前記第1の周波数ステップの前記周波数の前記変化よりも小さい前記周波数の変化を含み、最後の周波数ステップの前記符号が直前の周波数ステップに等しい、少なくとも1つの更なる周波数ステップを行うことと、
- 前記ビート周波数が前記所定の周波数範囲外にあれば、前記第2のレーザ信号の前記第2の周波数を変化させることを繰り返すことと、
を更に含む、請求項13または14に記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つの更なる周波数ステップの前記周波数の前記変化が、前記第1の周波数ステップの前記周波数の前記変化の半分である、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記第2のアルゴリズムが、
- 前記第1のレーザ信号の前記第1の周波数を一定に保つことと、
- 前記第2の周波数および変化された第2の周波数に少なくとも部分的に基づいて前記ビート周波数の勾配を決定することと、
- 前記ビート周波数の勾配の方向に前記第2のレーザ信号の前記第2の周波数を変化させることと、
- 前記ビート信号の前記ビート周波数を測定することと、
- 前記ビート周波数が所定の閾値を下回れば、前記ビート周波数が所定の周波数範囲にあるかどうかを判定しつつ所定の時間待機することと、
- 前記ビート周波数が前記所定の閾値を上回れば、前記第2のレーザ信号の前記第2の周波数を前記変化させることを繰り返すことと、
を含む、請求項11から16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記第2のアルゴリズムが、
- 検出不可能な周波数差を防止するために前記第2の周波数の前記変化に下限を課すことと、
- 前記ビート信号が前記周波数検出ユニットの前記所定の周波数範囲の外に移動することを防止するために前記第2の周波数の前記変化に上限を課すことと、
を含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記第1のアルゴリズムの実行中に前記第2の周波数を前記変化させることが前記第2の周波数を前記第2のレーザ信号の有効周波数範囲外に移動させる場合、前記第1のアルゴリズムが、前記第2の周波数が一定に保たれ、前記第1の周波数がステップ様式で変化されて行われる、
請求項12から18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
- 前記第1および第2のレーザユニットにそれぞれ動作的に接続される第1および第2の周波数制御ユニット、例えば温度調節器であって、前記周波数制御ユニットが、前記周波数制御ユニットに供給される電圧の変化によって前記レーザの前記周波数を変化させるように構成される、周波数制御ユニット、
を更に備える、請求項12から19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記周波数検出ユニットがフォトダイオード検出器および周波数カウンタを備える、請求項11から20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
- ベル状態測定システムと、
- 請求項11から21のいずれか一項に記載のシステムと
を備える、量子通信ネットワーク。
【請求項23】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法ステップを実行するように構成されるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、量子通信システムにおいてレーザの周波数を整合させるための方法およびシステム、そのようなシステムを備える量子通信ネットワーク、ならびに同方法を実行するように構成されるコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
量子情報システムは、情報担体として量子系、例えばキュービットを使用するデータ処理システムである。従来のデータ処理システムでは情報の基本単位は、値『0』か『1』かを有するビットである。対照的に、量子情報システムにおける情報の基本単位はキュービットであり、キュービットは二状態量子力学系であってよい。キュービットの特別な性質は、それが『0』か『1』か同時に両状態の重ね合わせかにあることができるということである。キュービットが使用される量子情報システムの1つの例がQKDシステムである。
【0003】
QKDシステムは、異なる位置における2人以上のユーザがキュービットの特別な性質を少なくとも部分的に利用することによって暗号鍵を安全に生成するのを可能にする。QKDシステム(BB84)の最初の提案は、C.H. BenettおよびG. Brassardによってなされ、論文「Quantum cryptography: Public key distribution and coin tossing」、Proceedings of IEEE International Conference on Computers, Systems and Signal Processing、第175巻、8頁、New York、1984に記載されている。QKDシステムを使用することの利点は、少なくとも理論上、システムに盗聴者が存在する場合にさえ鍵が安全であるということである。
【0004】
QKDの1つの提案が測定装置無依存量子鍵配送(MDI-QKD)プロトコルである。このプロトコルでは、2人のユーザ、アリスおよびボブが、第三者、通常チャーリーと称される、にランダムキュービットを送信する。チャーリーは、次いでもつれたベル状態へチャーリー側で受信した2つのキュービット(1つはアリスから、1つはボブから)の状態を投影するベル状態測定(BSM)を行う。ベル状態が生じるたびに、アリスおよびボブは、彼らの準備基底を公開チャネル上で比較し、彼らが同じ基底を選んだイベントの記録を残すことができる。公開チャネル上でのこの比較後に、ボブは、自分のビット値を、それらがアリスのものと同一になるように後処理する。これらのベル状態測定は、MDI-QKDが1つの重要な例として、多くの量子通信応用にとって基本である。
【0005】
MDI-QKDシステムにおけるベル状態測定が機能するには、良好なBSMを行うために2つの独立したレーザ源(アリスおよびボブ)から2つの区別不可能な光子を生成することが必要である。MDI-QKDシステムにおけるベル状態測定の一例が、R. Valivarthiらによる論文「A cost-effective measurement-device-independent quantum key distribution system for quantum networks」、Quantum Science and Technology、2017年2月に記載されている。
【0006】
しばしばQKDシステムは、時間ビンキュービットを生成するためにレーザおよびフィールドプログラマブルゲートアレイに基づく。時間ビンキュービットは、単一光子励起の2つの独立した時間モードのコヒーレントな重ね合わせによって形成されてよい。時間ビン符号化は、特に単一モード光ファイバ伝搬に適切であり、既存のファイバネットワークと互換性がある。それ故、QKDシステムにおける時間ビンキュービットの形成は、実際的なQKD実装の開発における実際的な要素である。上記参照されたBB84およびMDI-QKDプロトコルのようなQKDプロトコル、コヒーレント一方向(COW)QKDプロトコルならびにVagnilucaらによる論文、Efficient time-bin encoding for practical high-dimensional quantum key distribution、physical review applied 14、014051(2020)に記載されているような他のQKDプロトコルは、連続波(CW)レーザの出力の強度変調およびその後の減衰による一連の位相コヒーレントな時間モードを使用する。
【0007】
CN112039666Aは、量子鍵配送に基づく周波数同期および位相安定化方法およびシステムに関し、システムは、2つの独立したレーザ源を出力するために使用される超安定レーザを備える周波数同期システムと、2つの独立したレーザ源のビート周波数信号を取得するために使用されるビート周波数モジュールと、ビート周波数信号に従って2つの独立したレーザ源間の周波数差を測定するために使用されるスペクトラムアナライザと、周波数標準器と接続される同期および同調モジュールと、同期および同調モジュールのために周辺の周波数標準を提供するために使用される周波数標準器とを備える。同期および同調モジュールは、周波数標準に基づく周波数差に従って2つの独立したレーザ源間で周波数を一致させるように同調させ、超安定レーザの出力周波数の固有の線形ドリフト量を除去するために使用される。本発明によれば、2つの独立したレーザ源間の周波数同期は、量子鍵配送プロセスにおいて実現され、その結果、参照光信号および2つの独立したレーザ源の量子光信号の位相は安定している。
【0008】
正しく実装されるベル状態測定の要件は、アリスおよびボブが時間ビンキュービットを生じさせるために使用する光場の周波数間の周波数差が最小であるべきであることを必要とする。したがって、周波数差を決定すること、ならびに決定された周波数差に基づいてアリスおよびボブの周波数を整合させようとすることが所望される。更には、周波数の整合は、効率的な方式で行われるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】CN112039666A
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】C.H. BenettおよびG. Brassard、「Quantum cryptography: Public key distribution and coin tossing」、Proceedings of IEEE International Conference on Computers, Systems and Signal Processing、第175巻、8頁、New York、1984
【非特許文献2】R. Valivarthiら、「A cost-effective measurement-device-independent quantum key distribution system for quantum networks」、Quantum Science and Technology、2017年2月
【非特許文献3】Vagnilucaら、Efficient time-bin encoding for practical high-dimensional quantum key distribution、physical review applied 14、014051(2020)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様において、本開示は、量子通信システムにおいてレーザの周波数を整合させるための方法に関する。方法は、第1の位置における第1の装置から第1の周波数を有する第1のレーザ信号を、および第2の位置における第2の装置を用いて第2のレーザ信号を第3の位置に位置するビームスプリッタに、2つのレーザ信号がビームスプリッタにおいて干渉してビート周波数を有するビート信号を得るように、送信するステップであって、ビート周波数が第1の周波数と第2の周波数との間の周波数差に相当する、ステップと、第3の位置に配置される周波数検出ユニットによってビート信号のビート周波数を測定するステップと、ビート周波数が所定の周波数範囲にあるかどうかを判定するステップと、第3の位置から第1または第2の装置のうちの少なくとも1つにフィードバック信号を送信するステップと、第1または第2の装置のうちの少なくとも1つにフィードバック信号を送信することによって第1または第2の周波数を適合させるステップであって、周波数を適合させるステップが、ビート周波数が所定の周波数範囲外にある限り第1のアルゴリズムであり、第1のアルゴリズムが、ビート周波数を所定の周波数範囲に入れるように構成される、第1のアルゴリズムと、ビート周波数が所定の周波数にあれば第2のアルゴリズムとに従って実行されて、第1および第2のレーザ信号の周波数を整合させる、ステップとを含んでよい。
【0012】
一実施形態において、第1のアルゴリズムを実行するステップは、第1のレーザ信号の第1の周波数を一定に保つステップと、第2の装置にフィードバック信号を送信することによって第2のレーザ信号の第2の周波数を変化させるステップと、第1の周波数および変化された第2の周波数に基づいてビート信号のビート周波数を測定するステップと、ビート周波数が所定の周波数範囲外にあれば第2のレーザ信号の変化された第2の周波数を変化させることを繰り返すステップとを含む。
【0013】
一実施形態において、第2のレーザ信号の第2の周波数を変化させることは、ステップ様式で第2の周波数を変化させるステップであり、第1の周波数ステップでは周波数の変化が周波数検出ユニットの所定の周波数範囲に基づき、各以降の周波数ステップに対して周波数の変化が増加され、周波数ステップの符号が反転される、ステップを含む。
【0014】
一実施形態において、各以降の周波数ステップでの周波数の変化の増加は、第1の周波数ステップの周波数の変化の加算を含む。
【0015】
一実施形態において、第1のアルゴリズムは、各周波数ステップ後に、ビート信号のビート周波数を測定することと、ビート周波数が所定の周波数範囲にあるかどうかを判定することと、ビート周波数が所定の周波数範囲にあれば、少なくとも1つの更なる周波数ステップを行うことであり、少なくとも1つの更なる周波数ステップが、第1の周波数ステップの周波数の変化よりも小さい周波数の変化を含み、最後の周波数ステップの符号が直前の周波数ステップに等しい、少なくとも1つの更なる周波数ステップを行うことと、ビート周波数が所定の周波数範囲外にあれば、第2のレーザ信号の第2の周波数を変化させることを繰り返すこととを更に含む。
【0016】
一実施形態において、少なくとも1つの更なる周波数ステップの周波数の変化は、第1の周波数ステップの周波数の変化の半分である。
【0017】
一実施形態において、第2のアルゴリズムは、第1のレーザ信号の第1の周波数を一定に保つことと、第2の周波数および変化された第2の周波数に少なくとも部分的に基づいてビート周波数の勾配を決定することと、ビート周波数の勾配の方向に第2のレーザ信号の第2の周波数を変化させることと、ビート信号のビート周波数を測定することと、ビート周波数が所定の閾値を下回れば、ビート周波数が所定の周波数範囲にあるかどうかを判定しつつ所定の時間待機することと、ビート周波数が所定の閾値を上回れば、第2のレーザ信号の第2の周波数を変化させることを繰り返すこととを含む。
【0018】
一実施形態において、第2のアルゴリズムは、検出不可能な周波数差を防止するために第2の周波数の変化に下限を課すことと、ビート信号が周波数検出ユニットの所定の周波数範囲の外に移動することを防止するために第2の周波数の変化に上限を課すこととを含む。
【0019】
一実施形態において、第1のアルゴリズムの実行中に第2の周波数を変化させることが第2の周波数を第2のレーザ信号の有効周波数範囲外に移動させる場合、第1のアルゴリズムは、第2の周波数が一定に保たれ、第1の周波数が変化されて行われる。
【0020】
一実施形態において、第2のレーザの周波数を変化させるステップは、第2のレーザによって出力されるレーザ信号の周波数を制御するように構成されるレーザ信号周波数制御ユニット、例えば温度調節器に供給される電圧を変化させることによって実行される。
【0021】
更なる態様において、本開示は、量子通信システムにおいてレーザの周波数を整合させるためのシステムであって、第1の位置に位置する第1の周波数を有する第1のレーザ信号を発するための第1のレーザユニットと、第2の位置に位置する第2の周波数を有する第2のレーザ信号を発するための第2のレーザユニットと、第3の位置に位置するビームスプリッタであり、第1および第2のレーザ信号が、ビームスプリッタ上で干渉してビート周波数のビート信号を得るように構成される、ビームスプリッタと、ビート信号のビート周波数を測定するための周波数検出ユニットであり、周波数検出ユニットが第3の位置に位置し、ビート周波数が所定の周波数範囲にあるかどうかを判定することと、第1または第2のレーザユニットのうちの少なくとも1つにフィードバック信号を送信することと、第1または第2の装置のうちの少なくとも1つにフィードバック信号を送信することによって第1または第2の周波数を適合させることであり、周波数を適合させることが、ビート周波数が所定の周波数範囲外にある限り第1のアルゴリズムであり、第1のアルゴリズムが、ビート周波数を所定の周波数範囲に入れるように構成される、第1のアルゴリズムと、ビート周波数が所定の周波数範囲にあれば第2のアルゴリズムとに従って実行されて、第1および第2のレーザ信号の周波数を整合させる、第1または第2の周波数を適合させることをするように構成されるプロセッサを備える、周波数検出ユニットとを備える、システムに関する。
【0022】
一実施形態において、第1のアルゴリズムを実行することは、第1のレーザ信号の第1の周波数を一定に保つことと、第2のレーザユニットにフィードバック信号を送信することによって第2のレーザ信号の第2の周波数を変化させることと、第1の周波数および変化された第2の周波数に基づいてビート信号のビート周波数を測定することと、ビート周波数が所定の周波数範囲外にあれば第2のレーザ信号の変化された第2の周波数を変化させることを繰り返すこととを含む。
【0023】
一実施形態において、第2のレーザ信号の第2の周波数を変化させることは、ステップ様式で第2の周波数を変化させることであり、第1の周波数ステップでは周波数の変化が周波数検出ユニットの所定の周波数範囲に基づき、各以降の周波数ステップに対して周波数の変化が増加され、周波数ステップの符号が反転される、ステップ様式で第2の周波数を変化させることを含む。
【0024】
一実施形態において、各以降の周波数ステップでの周波数の変化の増加は、第1の周波数ステップの周波数の変化の加算を含む。
【0025】
一実施形態において、第1のアルゴリズムは、各周波数ステップ後に、ビート信号のビート周波数を測定することと、ビート周波数が所定の周波数範囲にあるかどうかを判定することと、ビート周波数が所定の周波数範囲にあれば、少なくとも1つの更なる周波数ステップを行うことであり、少なくとも1つの更なる周波数ステップが、第1の周波数ステップの周波数の変化よりも小さい周波数の変化を含み、最後の周波数ステップの符号が直前の周波数ステップに等しい、少なくとも1つの更なる周波数ステップを行うことと、ビート周波数が所定の周波数範囲外にあれば、第2のレーザ信号の第2の周波数を変化させることを繰り返すこととを更に含む。
【0026】
一実施形態において、少なくとも1つの更なる周波数ステップの周波数の変化は、第1の周波数ステップの周波数の変化の半分である。
【0027】
一実施形態において、第2のアルゴリズムは、第1のレーザ信号の第1の周波数を一定に保つことと、第2の周波数および変化された第2の周波数に少なくとも部分的に基づいてビート周波数の勾配を決定することと、ビート周波数の勾配の方向に第2のレーザ信号の第2の周波数を変化させることと、ビート信号のビート周波数を測定することと、ビート周波数が所定の閾値を下回れば、ビート周波数が所定の周波数範囲にあるかどうかを判定しつつ所定の時間待機することと、ビート周波数が所定の閾値を上回れば、第2のレーザ信号の第2の周波数を変化させることを繰り返すこととを含む。
【0028】
一実施形態において、第2のアルゴリズムは、検出不可能な周波数差を防止するために第2の周波数の変化に下限を課すことと、ビート信号が周波数検出ユニットの所定の周波数範囲の外に移動することを防止するために第2の周波数の変化に上限を課すこととを含む。
【0029】
一実施形態において、第1のアルゴリズムの実行中に第2の周波数を変化させることが第2の周波数を第2のレーザ信号の有効周波数範囲外に移動させる場合、第1のアルゴリズムは、第2の周波数が一定に保たれ、第1の周波数が変化されて行われる。
【0030】
一実施形態において、システムは、第1および第2のレーザユニットにそれぞれ動作的に接続される第1および第2の周波数制御ユニット、例えば温度調節器であり、周波数制御ユニットが、周波数制御ユニットに供給される電圧の変化によってレーザの周波数を変化させるように構成される、周波数制御ユニットを更に備える。
【0031】
更なる態様において、本開示は、ベル状態測定システムといずれか1つの上記の実施形態に係るシステムとを備える量子通信ネットワークに関する。
【0032】
更なる態様において、本開示は、上記の実施形態のいずれか1つに係る方法ステップを実行するように構成されるコンピュータプログラムに関する。
【0033】
ここで例証的な実施形態に詳細に参照がなされることになり、その例が、同様の参照数字が全体を通して同様の要素を指す、添付図面に例示される。例証的な実施形態が図を参照しつつ下記される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】周波数を整合させるためのシステムを備える量子通信システムの一例を示す図である。
図2】周波数を整合させるためのシステムの一例を示す図である。
図3】本発明に係る方法の特性のグラフの一例を示す図である。
図4A】第1のアルゴリズムの実行を例示するグラフの一例を示す図である。
図4B】第1のアルゴリズムの実行を例示するグラフの一例を示す図である。
図4C】第1のアルゴリズムの実行を例示するグラフの一例を示す図である。
図4D】第1のアルゴリズムの実行を例示するグラフの一例を示す図である。
図5】周波数を整合させるための方法の一例を示す図である。
図6】第1のアルゴリズムを使用する方法の一例を示す図である。
図7】第2のアルゴリズムを使用する方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
総則
本明細書で使用される術語が単に特定の実施形態を説明する目的であり、本開示の範囲は添付の請求項によって定められることになるので、限定的であるとは意図されないことが理解されるはずである。
【0036】
更には、別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。それでも、或る要素は、明瞭さおよび参照の容易さのために以下に定義される。
【0037】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間の、文脈が別途明記しない限り下限の単位の10分の1までの、各介在値およびその規定された範囲内の任意の他の規定または介在値が本開示内に包含されることが理解される。これらの小さい範囲の上下限は、小さい範囲に独立して含まれてよく、本開示内にも包含されるが、規定された範囲において任意の限度が特に除外され得る。規定された範囲が限度の一方または両方を含む場合、それらの含まれた限度の一方または両方を除外した範囲も本開示に含まれる。
【0038】
本明細書でおよび添付の請求項で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が別途明記しない限り複数の指示対象を含むことが留意される。請求項がいかなる任意選択の要素も除外するように作成されてよいことが更に留意される。そのため、この文は、請求項要素の詳述と関連した「専ら」、「単に」等のような排他的術語の使用、または「否定的」限定の使用のための先行詞としての役割をすると意図される。
【0039】
本開示を読んだ上で当業者には明らかであろうが、本明細書に記載および例示される個々の例証的な実施形態の各々は、その他の幾つかの例証的な実施形態のいずれかの特徴と容易に分離されまたは組み合わされ得る個別の構成要素および特徴を有する。いかなる詳述される方法も、詳述された事象の順序でまたは論理的に可能である任意の他の順序で実施できる。
【0040】
詳細な説明
図1は、本開示の一実施形態に係る周波数を整合させるためのシステムを備える量子通信システムの一例を描く。システム100は、第1のキュービットモジュール102、第2のキュービットモジュール104および中央ノード110を備える。第1のキュービットモジュール102は、連続光場を供給するためのレーザユニット114、例示された例では分布帰還型レーザを備える。レーザユニット114の後に、レーザ光を安定させるためにアイソレータ115が配置される。アイソレータの後で、レーザ光は、偏光ビームスプリッタPBS128によって分割される。PBS128から来る第1のアームが光ファイバ106を通って、第1および第2のキュービットモジュール102、104からのレーザを安定させるための周波数測定装置139に至る。周波数測定装置139は、第2のキュービットモジュール104からのレーザ光も光ファイバ107を通して受光する。PBS128から来る第2のアームが、フィールドプログラマブルゲートアレイCOMP125からキュービット状態情報を受信するキュービット生成装置124に至る。キュービット生成装置124は、例えばキュービットのために所望の性質を得るために様々な強度変調器、位相変調器、可変光減衰器および/またはアイソレータを備えてよい。キュービット生成装置124によって作られたキュービットは、次いで第1のキュービットモジュール102から光ファイバ108を通じて中央ノード110に送信される。図1に例示されないが、第2のキュービットモジュール104は、第1のキュービットモジュール102に対して記載されたのと同じ要素および特徴を備える。
【0041】
光ファイバ108を通じて送信されるキュービットは、ベル状態測定(BSM)装置138において受信され、キュービットにベル状態測定を行うことができる。ベル状態測定に対応するこのキュービット情報は、次いで秘密鍵の作成のためにローカルコンピュータCOMP129に送信される。
【0042】
図2は、第1および第2のキュービットモジュール202、204からの周波数を安定させるための周波数測定装置239を描く。周波数測定装置239は、ビームスプリッタ240、フォトダイオード242および周波数カウンタ244を備える。ビームスプリッタに対する入力は、第1のキュービットモジュール202から光ファイバ206を通って来るレーザ光および第2のキュービットモジュール204から光ファイバ207を通って来るレーザ光である。フォトダイオード242は、入射光子を登録し、光子数を電圧に変換する。2つの光源からのレーザ光がビームスプリッタ240に入射するにつれて、ビート周波数を有するビート信号がビームスプリッタ240によって発されることになる。周波数カウンタ244は、ビート信号の周波数がどうであるかをフォトダイオードの出力から判定するように構成される。周波数カウンタ244によって発生される信号に基づいて、周波数測定装置239のコントローラ246が、通信チャネル248および249を通して第1のキュービットモジュール202か第2のキュービットモジュール204かにフィードバック信号を送信する。通信チャネル248および249は、光ファイバ、イーサネット、またはフィードバック信号を送信するのに適切である任意の他のチャネルであってよい。通信チャネル248からのフィードバック信号は、周波数制御ユニット250によって第1のキュービットモジュール202において受信される。通信チャネル249からのフィードバック信号は、周波数制御ユニット252によって第2のキュービットモジュール204において受信される。周波数制御ユニット250、252は、1つの実施形態において温度調節器であることができ、温度調節器は、温度調節器に供給される電圧に基づいてレーザの周波数が変化されるようにレーザ214a、214bの温度を適合させるように構成される。
【0043】
図3は、周波数カウンタ244によって検出されるビート周波数に対する温度調節器の電圧のグラフを図示する。より詳細には、X軸に、周波数制御ユニット250、この例では温度調節器に供給される電圧が示される。この供給される電圧は、通信チャネル248を通して送信されるフィードバック信号によって決定されてよい。Y軸に、周波数カウンタ244によって得られ、ビート信号から決定される周波数が示される。
【0044】
点254は、周波数制御ユニット250に供給される特定の電圧において周波数カウンタ244によって測定されるビート周波数の測定値である。点254を通る線256は、周波数制御ユニット252に供給されるフィードバック信号の電圧が一定に保持されるという条件下で、周波数制御ユニット250に供給される電圧の変化と周波数カウンタ244によって測定されるビート周波数との間の関係である。領域258では周波数カウンタ244はビート周波数を測定しない。所定の周波数範囲Fにおいて周波数カウンタ244はビート周波数を測定する。本例では、所定の周波数範囲Fは1.200Vと1.204Vとの間である。所定の周波数範囲がシステムの具体的なセットアップに依存していることは当業者にとって明らかである。当業者は、所定の周波数範囲Fに対して異なるレーザが異なる電圧の範囲になることを理解するであろう。線256は、谷260を備える形状を有する。谷260の地点262においてビート周波数は実質的にゼロHzであり、最低地点262においてレーザ214aおよびレーザ214bの周波数間の差が実質的にゼロであることを意味する。レーザ214aおよびレーザ214bの周波数が実質的に同じであるように、ビート周波数が実質的にゼロであるフィードバック信号の電圧を決定することが本発明の目的である。領域258では第1のアルゴリズムが実行されてよい。所定の周波数範囲Fでは第2のアルゴリズムが実行されてよい。本開示の文脈では、第1のアルゴリズムは、広域探索アルゴリズムとして特性化されてよい。第1および第2のアルゴリズムは、中央ノード210のコントローラ246によって実行されてよい。
【0045】
図4A図4Dは、第1のアルゴリズムの実行の様々な段階を描く。X軸に示される電圧は、コントローラ246によって周波数制御ユニット250に送信されるフィードバック信号の電圧に関する。図4A図4Dの全てにおいて第2のキュービットモジュール104の周波数制御ユニット252に送信されるフィードバック信号は一定に保たれる。図4Aにおいて、第1のアルゴリズムは、地点364での電圧から始まる。地点364において、地点364では電圧が1.200Vよりも低いので、電圧は所定の周波数範囲F外にある。第1のステップでは、第1のアルゴリズムは、周波数制御ユニット250に送信されるフィードバック信号の電圧に1.6mVを加算する。これは、地点364から地点366に電圧を移動させる。図4Aに見て取れるように、地点366は、まだ所定の周波数範囲F外にある。
【0046】
第1のステップ中に加算される電圧差は、所定の周波数範囲Fによって少なくとも部分的に決定される。一実施形態において、第1のステップは、所定の周波数範囲Fの半分未満である電圧差を含んでよい。一実施形態において、第1のステップは、所定の周波数範囲Fの半分未満であって所定の周波数範囲Fの1/4を超える電圧差を含む。
【0047】
図4Bにおいて、第1のアルゴリズムは、地点366での電圧を有する。地点366において、地点366では電圧が1.200Vよりも低いので、電圧は所定の周波数範囲F外にある。第2のステップでは、第1のアルゴリズムは、周波数制御ユニット250に送信されるフィードバック信号の電圧に3.2mVを減算する。これは、地点366から地点368に電圧を移動させる。図4Bに見て取れるように、地点368は、まだ所定の周波数範囲F外にある。
【0048】
一実施形態において、第2のステップは、第1のステップの電圧差の2倍である電圧差を含む。一実施形態において、第1のステップおよび第2のステップからの電圧差の符号は異なる。本例では、第1のステップの符号が正である一方で、第2のステップの符号は負である。
【0049】
図4Cにおいて、第1のアルゴリズムは、地点368での電圧を有する。地点368において、地点368では電圧が1.200Vよりも低いので、電圧は所定の周波数範囲F外にある。第3のステップでは、第1のアルゴリズムは、周波数制御ユニット250に送信されるフィードバック信号の電圧に6.4mVを加算する。これは、地点368から地点370に電圧を移動させる。図4Cに見て取れるように、地点370は所定の周波数範囲F内にある。
【0050】
一実施形態において、第3のステップは、第1のステップの電圧差の3倍である電圧差を含む。一実施形態において、第2のステップおよび第3のステップからの電圧差の符号は異なる。本例では、第2のステップの符号が負である一方で、第3のステップの符号は正である。
【0051】
図4Dにおいて、第1のアルゴリズムは、地点370での電圧を有する。地点370において、地点370では電圧が1.200Vと1.204Vとの間にあるので、電圧は所定の周波数範囲F内にある。第4のステップは、少なくとも1つの更なる周波数ステップとも命名されてよく、第1のアルゴリズムは、周波数制御ユニット250に送信されるフィードバック信号の電圧に0.8mVを加算する。これは、地点370から地点372に電圧を移動させる。図4Dに見て取れるように、地点372も所定の周波数範囲F内にある。
【0052】
一実施形態において、第4のステップは、第1のステップの電圧差の半分である電圧差を含む。コントローラ246は、直前のステップが電圧を所定の周波数範囲Fに入れた場合に電圧差が第1のステップの半分である第4のステップを実行すると決定してよい。一実施形態において、第3のステップおよび第4のステップからの電圧差の符号は同じである。本例では、第3のステップの符号が正である一方で、第4のステップの符号は正である。
【0053】
第4のステップ後に、コントローラ246は、第2のアルゴリズムを実行してよい。本開示の文脈では、第2のアルゴリズムは、勾配降下アルゴリズムとして特性化されてよい。第2のアルゴリズムは、所定の周波数範囲F内のビート周波数の極小を見つけるために使用される。
【0054】
図5は、周波数を整合させるための方法の一例を描く。ステップ502では第1および第2のレーザユニット214aおよび214bは、中央ノード210に配置されるビームスプリッタ240にそれぞれの第1の周波数および第2の周波数のそれらのレーザ信号を送信する。ステップ504ではビームスプリッタ240から生じるビート信号のビート周波数がフォトダイオード242および周波数カウンタ244によって測定される。ステップ506ではコントローラ246は、ビート周波数が所定の周波数範囲Fにあるかどうかを判定してよい。所定の周波数範囲Fは、フォトダイオード242および周波数カウンタ244が有効なビート周波数を決定することができるビート周波数の範囲である。言い換えれば、所定の周波数範囲Fは、ビート周波数が周波数カウンタ244によって測定するのに高すぎないビート周波数の範囲である。ビート周波数が所定の周波数範囲F外にあれば、コントローラ246は、ステップ508で第1のアルゴリズムに従って周波数を適合させる。第1のアルゴリズムは、通信チャネル248または249を通してフィードバック信号を送信することによって実行されてよい。第1のアルゴリズムは、所定の周波数範囲F内にあるビート周波数に達するように構成される。ビート周波数が所定の周波数範囲F内にあれば、コントローラ246は、ステップ510で第2のアルゴリズムに従って周波数を適合させる。第2のアルゴリズムは、通信チャネル248または249を通してフィードバック信号を送信することによって実行されてよい。第2のアルゴリズムは、ビート周波数の極小を見つけるように構成される。
【0055】
図6は、第1のアルゴリズムを使用する方法の一例を描く。ステップ612で第1のレーザユニット214aの第1の周波数が一定に保たれる。これは、通信チャネル248を通して送信されるフィードバック信号を一定に保つことによって達成されてよい。ステップ614で第2のレーザユニット214bの第2の周波数が第1の周波数ステップで変化されてよい。第2の周波数は、通信チャネル249を通してフィードバック信号を変化させることによってコントローラ246によって変化されてよい。フィードバック信号の変化は、変化された電圧であってよい。第1の周波数ステップでの電圧変化は、ビート周波数の有効な測定値を決定できる電圧範囲によって決定されてよい。例えば、第1の周波数ステップでの第1の電圧変化は、所定の周波数範囲Fの半分でよい。変化された電圧は、第2のレーザユニット214bの第2の周波数を変化させるように周波数制御ユニット252に命令する。第1の周波数ステップで第2の周波数がフィードバック信号によって変化された後、第1の周波数および変化された第2の周波数のビート周波数がフォトダイオード242および周波数カウンタ244によって決定されてよい。ステップ616でコントローラ246は、第1の周波数および変化された第2の周波数のビート周波数が所定の周波数範囲Fにあるかどうかを判定してよい。ビート周波数が所定の周波数範囲F内にあれば、コントローラ246は、ステップ618で1つの更なる周波数ステップを行ってよい。
【0056】
ビート周波数が所定の周波数範囲F外にあれば、コントローラ246は、ステップ620で第2の周波数ステップで第2の周波数を変化させてよい。第2の周波数ステップの電圧変化は、1つの実施形態において第1の周波数ステップでの電圧変化の2倍の大きさである。第2の周波数ステップの電圧変化の符号は、1つの実施形態において第1の周波数ステップの電圧変化の符号とは異なる。例えば、第1の周波数ステップが+2mVの電圧変化を含んでよい一方で、第2の周波数ステップは-4mVの電圧変化を含んでよい。第2の周波数ステップで第2の周波数がフィードバック信号によって変化された後、第1の周波数および変化された第2の周波数のビート周波数がフォトダイオード242および周波数カウンタ244によって決定されてよい。ステップ622でコントローラ246は、第1の周波数および変化された第2の周波数のビート周波数が所定の周波数範囲Fにあるかどうかを判定してよい。ビート周波数が所定の周波数範囲F内にあれば、コントローラ246は、ステップ618で1つの更なる周波数ステップを行ってよい。
【0057】
ビート周波数が所定の周波数範囲F外にあれば、コントローラ246は、ステップ624で第3の周波数ステップで第2の周波数を変化させてよい。第3の周波数ステップの電圧変化は、1つの実施形態において第2の周波数ステップでの電圧変化に第1の周波数ステップの電圧変化が加算される。言い換えれば、第3の周波数ステップの電圧変化は、第1の周波数ステップの電圧変化の3倍である。第3の周波数ステップの電圧変化の符号は、1つの実施形態において第2の周波数ステップの電圧変化の符号とは異なる。例えば、第2の周波数ステップが-4mVの電圧変化を含んでよい一方で、第3の周波数ステップは+6mVの電圧変化を含んでよい。
【0058】
ステップ618で、1つの更なる周波数ステップは、第1の周波数ステップの電圧変化の半分である電圧変化を含んでよい。1つの更なる周波数ステップの電圧変化の符号は、1つの実施形態において直前の周波数ステップの電圧変化の符号に等しい。例えば、直前の周波数ステップが+6mVの電圧変化の第3の周波数ステップであったならば、更なる周波数ステップは+1mVの電圧変化を含んでよい。1つの更なる周波数ステップを行った後にコントローラ246は、ステップ626で第2のアルゴリズムを実行してよい。
【0059】
一実施形態において、周波数ステップが第2のレーザユニット214bの有効周波数範囲外に至る場合、コントローラ246は、第2のレーザユニット214bへのフィードバック信号を一定に保ちつつ第1のレーザユニット214aへのフィードバック信号を変化させることによって通信チャネル249および248を通してフィードバック信号を変化させてよい。本開示における有効周波数範囲は、レーザユニット214a、214bの作働可能な周波数範囲を意味する。実際には、有効周波数範囲は、レーザユニット214a、214bの最小および最大周波数間の周波数に達する。
【0060】
図7は、第2のアルゴリズムを使用する方法の一例を描く。ステップ728でコントローラ246は、第2の周波数および変化された第2の周波数に少なくとも部分的に基づいてビート周波数の勾配を決定する。ステップ730で第2の周波数が勾配の方向に変化される。第2の周波数を変化させることは、コントローラ246がフィードバック信号の電圧を変化させることによって実行されてよい。ステップ732で第1の周波数および変化された第2の周波数のビート信号のビート周波数がフォトダイオード242および周波数カウンタ244によって測定される。ステップ734でコントローラ246は、ステップ732で測定されるビート周波数が所定の閾値を下回るかどうかを判定してよい。ビート周波数が所定の閾値を下回るということは、第1の周波数および第2の周波数が整合されていることを意味する。一実施形態において、ビート周波数が所定の閾値を下回るということは、第1の周波数および第2の周波数が実質的に等しいことを意味する。ビート周波数が所定の閾値を下回れば、ステップ736でコントローラ246は、第1の周波数と第2の周波数との間のビート周波数を測定するために所定の時間待機してよい。ビート周波数が所定の閾値を下回らなければ、ステップ738でコントローラ246は、第2のレーザユニット214bの第2の周波数を変化させることを繰り返してよい。
【0061】
本開示は、決して上記のその好適な実施形態に限定されない。求められる権利は以下の請求項によって定められ、その範囲内で多くの変更を想定できる。
【符号の説明】
【0062】
100 システム
102 第1のキュービットモジュール
104 第2のキュービットモジュール
106 光ファイバ
107 光ファイバ
108 光ファイバ
110 中央ノード
114 レーザユニット
115 アイソレータ
124 キュービット生成装置
125 フィールドプログラマブルゲートアレイCOMP
128 偏光ビームスプリッタPBS
129 ローカルコンピュータCOMP
138 ベル状態測定(BSM)装置
139 周波数測定装置
202 第1のキュービットモジュール
204 第2のキュービットモジュール
206 光ファイバ
207 光ファイバ
210 中央ノード
214a レーザ
214b レーザ
239 周波数測定装置
240 ビームスプリッタ
242 フォトダイオード
244 周波数カウンタ
246 コントローラ
248 通信チャネル
249 通信チャネル
250 周波数制御ユニット
252 周波数制御ユニット
254 点
256 線
258 領域
260 谷
262 最低地点
364 地点
366 地点
368 地点
370 地点
372 地点
F 周波数範囲
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
【国際調査報告】