(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】クメン精製のための熱連結した蒸留方式
(51)【国際特許分類】
C07C 7/04 20060101AFI20241121BHJP
C07C 15/085 20060101ALI20241121BHJP
B01D 3/14 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C07C7/04
C07C15/085
B01D3/14 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534600
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 US2022052321
(87)【国際公開番号】W WO2023107650
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508364749
【氏名又は名称】ケロッグ ブラウン アンド ルート エルエルシー
【住所又は居所原語表記】601 Jefferson Street Houston TX 77002(US)
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ライナカ ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン エリック ウィング-タック
【テーマコード(参考)】
4D076
4H006
【Fターム(参考)】
4D076AA16
4D076AA22
4D076BB04
4D076BB05
4D076BB23
4D076DA02
4D076DA36
4D076FA02
4D076FA12
4D076HA20
4D076JA04
4H006AA02
4H006AD11
4H006BD82
(57)【要約】
クメンを精製するための方法は、アルキル化反応生成物を第1の分流と第2の分流とに分けるステップと、大部分が液体である第1の分流をベンゼン塔に給送するステップと、加熱器内で第2の分流を少なくとも部分的に気化させるステップと、少なくとも部分的に気化した第2の分流をベンゼン塔に給送するステップとを含み得る。クメンを精製するための方法はまた、ベンゼン塔およびクメン塔を設けるステップと、液体側排流をベンゼン塔からクメン塔に導くステップであって、液体側排流がDIPBを実質的に含まない液体である、導くステップと、塔頂上管路を用いて、ベンゼン濃縮ベーパをクメン塔からベンゼン塔に戻すステップであって、ベンゼン濃縮ベーパが液体側排流よりもベンゼン濃度が高い、戻すステップと、精製クメンをクメン塔から抜き取るステップとを含み得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル化反応生成物を処理するための方法であって、
前記アルキル化反応生成物を第1の分流と第2の分流とに分けるステップと、
前記第1の分流をベンゼン塔に給送するステップであって、前記第1の分流の大部分が液体であり、前記ベンゼン塔が少なくともベンゼンを前記アルキル化反応生成物から分離するように構成された、給送するステップと、
前記第2の分流を加熱器内で少なくとも部分的に気化させるステップと、
少なくとも部分的に気化した前記第2の分流を前記ベンゼン塔に給送するステップと、
前記ベンゼン塔内で少なくともベンゼンを前記アルキル化反応生成物から分離するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
トランスアルキル化反応生成物を前記ベンゼン塔に給送するステップをさらに含み、前記トランスアルキル化反応生成物は、大部分が液体である前記第1の分流が前記ベンゼン塔に給送される第1の位置と、少なくとも部分的にベーパである前記第2の分流が前記ベンゼン塔に給送される第2の位置との間にある位置で、前記ベンゼン塔に給送される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
クメン塔内で精製クメン・ベーパを生成するステップと、
生成した前記精製クメン・ベーパの少なくとも一部を前記加熱器に導いて、前記第2の分流を少なくとも部分的に気化させるステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
クメン塔内で精製クメン・ベーパを生成するステップと、
前記ベンゼン塔を前記クメン塔と熱連結するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記熱連結が、
液体側排流を前記ベンゼン塔から前記クメン塔に導くステップであって、前記液体側排流がDIPBを実質的に含まない液体であり、前記クメン塔への還流としての役割を果たす、導くステップと、
塔頂上管路を用いて、ベンゼン濃縮ベーパを前記クメン塔から前記ベンゼン塔に戻すステップであって、前記ベンゼン濃縮ベーパが抜き取られた前記液体側排流よりもベンゼン濃度が高い、戻すステップと
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記精製クメン・ベーパが前記加熱器内で少なくとも部分的に凝縮され、前記方法が、
少なくとも部分的に凝縮した前記クメン・ベーパを第1の分流および第2の分流とするステップと、
前記第1の分流を精製クメン生産物として抜き取るステップと、
前記第2の分流を前記クメン塔に戻すステップと
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
アルキル化反応器からアルキル化反応生成物を受け取るように構成された分割給送アセンブリであって、前記アルキル化反応生成物を大部分が液体である第1の分流とするように構成され、第2の分流を少なくとも部分的に気化させて少なくとも部分的にベーパである第2の分流とするように構成された加熱器を備える、分割給送アセンブリと、
大部分が液体である前記第1の分流および少なくとも部分的にベーパである前記第2の分流から少なくともベンゼンを分離するように構成されたベンゼン塔と
を備える、クメンを精製するためのシステム。
【請求項8】
トランスアルキル化反応生成物を前記ベンゼン塔内に給送するように構成されたトランスアルキル化給送流管路をさらに備え、前記トランスアルキル化反応生成物は、大部分が液体である前記第1の分流が前記ベンゼン塔に給送される第1の位置と、少なくとも部分的にベーパである前記第2の分流が前記ベンゼン塔に給送される第2の位置との間にある位置で、前記ベンゼン塔に給送される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
少なくとも精製クメン流を生成するように構成されたクメン塔と、
前記精製クメン流を前記クメン塔から前記加熱器に導くように構成されたクメン排流管路であって、前記精製クメン流が前記加熱器中で少なくとも部分的に凝縮される、クメン排流管路と
をさらに備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
少なくとも精製クメン流を生成するように構成されたクメン塔と、
前記ベンゼン塔を前記クメン塔と熱連結するように構成された熱連結部と
をさらに備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記熱連結部が第1の側排流管および塔頂上管路を備え、
前記第1の側排流管は、DIPBを実質的に含まない液体を前記ベンゼン塔から抜き取り、抜き取られた前記液体を前記クメン塔に導くように構成され、抜き取られた前記液体は前記クメン塔への還流となり、
前記塔頂上管路は、ベンゼン濃縮ベーパを前記クメン塔から前記ベンゼン塔に戻すように構成され、前記ベンゼン濃縮ベーパが抜き取られた前記液体よりもベンゼン濃度が高い、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記塔頂上管路は、前記ベンゼン濃縮ベーパを、前記第1の側排流管がDIPBを実質的に含まない前記液体を抜き取る場所と同じ段に導くように構成された、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記クメン排流管路は、少なくとも部分的に凝縮した前記精製クメン流を第1の分流および第2の分流とするように構成され、前記第1の分流は精製クメン生産物として出ていき、第2の分流は排流段にて前記クメン塔に戻される、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
ベンゼン塔およびクメン塔を設けるステップと、
液体側排流を前記ベンゼン塔から前記クメン塔に導くステップであって、前記液体側排流がDIPBを実質的に含まない液体であり、前記クメン塔への還流としての役割を果たす、導くステップと、
塔頂上管路を用いて、ベンゼン濃縮ベーパを前記クメン塔から前記ベンゼン塔に戻すステップであって、前記ベンゼン濃縮ベーパが前記液体側排流よりもベンゼン濃度が高い、戻すステップと、
精製クメン流を前記クメン塔から抜き取るステップと
を含む、クメンを精製するための方法。
【請求項15】
前記クメン塔から塔頂上ベーパを取り、取られた前記塔頂上ベーパを前記液体側排流と同じ分留内部物の位置に導くように構成された塔頂上排流管路をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
クメンを精製するためのシステムであって、
ベンゼン塔およびクメン塔と、
DIPBを実質的に含まない液体を前記ベンゼン塔から前記クメン塔に導くように構成された液体側排流管であって、導かれた前記液体が前記クメン塔への還流となる、液体側排流管と、
ベンゼン濃縮ベーパを前記ベンゼン塔に戻すように構成された、前記クメン塔からの塔頂上管路であって、前記ベンゼン濃縮ベーパが抜き取られた前記液体よりもベンゼン濃度が高い、塔頂上管路と、
精製された前記クメンを前記クメン塔から抜き取るように構成された生産物側排流管と
を備える、システム。
【請求項17】
前記クメン塔から塔頂上ベーパを取り、取られた前記塔頂上ベーパを前記液体側排流管と同じ分留内部物の位置に導くように構成された塔頂上排流管路をさらに備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
アルキル化反応器からアルキル化反応生成物を受け取るように構成された分割給送アセンブリであって、前記アルキル化反応生成物を大部分が液体である第1の分流とするように構成され、第2の分流を少なくとも部分的に気化して少なくとも部分的にベーパである第2の分流とするように構成された加熱器を備え、大部分が液体である前記第1の分流および少なくとも部分的にベーパである前記第2の分流が前記ベンゼン塔内に給送される、分割給送アセンブリ
をさらに備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
アルキル化反応生成物の第1の分流を少なくとも部分的に気化させ、前記アルキル化反応生成物の少なくとも部分的に気化した前記第1の分流をベンゼン塔に給送するように構成された分割給送アセンブリと、
前記ベンゼン塔をクメン塔に熱連結するように構成された熱連結部と
を備える、クメンを精製するためのシステム。
【請求項20】
前記分割給送アセンブリは、前記アルキル化反応生成物の前記第1の分流を少なくとも部分的に気化させる加熱器を備え、前記アルキル化反応生成物の第2の分流を大部分が液体である形で前記ベンゼン塔に給送するようにさらに構成されている、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記熱連結部は、
DIPBを実質的に含まない液体を前記ベンゼン塔から抜き取り、抜き取られた前記液体を前記クメン塔に導くように構成された第1の側排流管であって、抜き取られた前記液体が前記クメン塔への還流となる、第1の側排流管と、
ベンゼン濃縮ベーパを前記クメン塔から前記ベンゼン塔に戻すように構成された塔頂上管路であって、前記ベンゼン濃縮ベーパが抜き取られた前記液体よりもベンゼン濃度が高い、塔頂上管路と
を備える、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年12月10日に出願された米国仮特許出願第63/288,376号に基づく優先権を主張するものであり、その内容は、一切の目的のために参照によって組み込まれる。
【0002】
[背景]
[分野]
本明細書に記載する実施形態は、一般にクメン精製のための方法およびシステムに関する。
【0003】
[関連技術の説明]
クメンは、商業的には(過剰量の)ベンゼンとプロピレンとのアルキル化反応によって生産される。反応器の排出流は、相当量のベンゼンおよび少量の軽質成分、ならびに主にジイソプロピルベンゼン(DIPB)によって構成される重質物および少量の他の重質副生成物を含む。分留の後、DIPBは通常、トランスアルキル化反応器内でベンゼンと反応して、より多くのクメンを生成する。従来の製法では、アルキル化主反応器およびトランスアルキル化反応器からの排出流はベンゼン塔に給送して、従来の蒸留法によりベンゼンをクメンから分離した後に排出流をクメン塔に給送して、やはり従来の蒸留法によりクメンをDIPBから分離する。
【0004】
図1は、ベンゼン塔12およびクメン塔14を備える従来の先行技術の設備10を示す。ベンゼン塔12は、アルキル化反応器から第1の給送流16を、トランスアルキル化反応器から第2の給送流18を受け取る。ベンゼン塔12は直接分離シーケンスを用いて、まずベンゼンを塔頂上生産物として除去する。ベンゼン塔12の塔底流20は、クメン塔14に導かれ、そこでクメンとDIPBとの分離が行われる。ベンゼン塔およびクメン塔の分留ステップは大量のエネルギーを要し、これらのリボイラは、クメン製法で消費する高圧蒸気(HPS、通常約40barG)総量の約90%を消費する。
【0005】
図2は、単一の隔壁34を用いる分留塔32、または集合的にDWC32を備える別の先行技術の設備30を示す。DWC32は、アルキル化反応器から第1の給送流16を、トランスアルキル化反応器から第2の給送流18を受け取り、ベンゼン、クメンおよびDIPBの3成分分離を行う。任意選択の側流凝縮器34を有する構成が示されている。UOP社(WO2008/147638A1)またはRRT社の特許文献で提案されているように、単一の隔壁塔を用いて3成分分離を達成することも提案されている。当技術分野では、いくつかの応用例でDWC32を用いることで、
図1の設備と比較して蒸留工程に対する入熱総量を減らすことができることが知られている。
【0006】
隔壁塔を用いて3成分分離を達成することは当技術分野でよく知られているが、操業上の自由度が小さく、設計上の課題がさらに提起されているため、産業界ではこれらの設計を採用するのに時間がかかっている。本開示の教示によって、DWCを用いずにこの製法におけるHPSの消費を大幅に減らすことができる。
【0007】
[開示の概要]
本開示は、態様においてクメンを精製するための方法を提供する。この方法は、アルキル化反応生成物を第1の分流と第2の分流とに分けるステップと、大部分が液体である第1の分流をベンゼン塔に給送するステップであって、ベンゼン塔が少なくともベンゼンをアルキル化反応生成物から分離するように構成された、給送するステップと、第2の分流を加熱器内で少なくとも部分的に気化させるステップと、少なくとも部分的に気化した第2の分流をベンゼン塔に給送するステップと、ベンゼン塔内で少なくともベンゼンをアルキル化反応生成物から分離するステップとを含み得る。
【0008】
本開示は、さらなる態様においてクメンを精製するためのシステムを提供する。このシステムは、アルキル化給送流管路を介してアルキル化反応生成物を受け取るように構成された分割給送アセンブリであって、アルキル化反応生成物を大部分が液体である第1の分流とするように構成され、第2の分流を少なくとも部分的に気化させて少なくとも部分的にベーパである第2の分流とするように構成された加熱器を備える、分割給送アセンブリと、大部分が液体である第1の分流および少なくとも部分的にベーパである第2の分流から少なくともベンゼンを分離するように構成されたベンゼン塔とを備え得る。
【0009】
本開示は、さらなる態様においてクメンを精製するための方法を提供する。この方法は、ベンゼン塔およびクメン塔を設けるステップと、液体側排流をベンゼン塔からクメン塔に導くステップであって、液体側排流がDIPBを実質的に含まない液体であり、クメン塔への還流としての役割を果たす、導くステップと、塔頂上管路を用いて、ベンゼン濃縮ベーパをクメン塔からベンゼン塔に戻すステップであって、ベンゼン濃縮ベーパが液体側排流よりもベンゼン濃度が高い、戻すステップと、精製クメンをクメン塔から抜き取るステップとを含み得る。
【0010】
本開示は、さらなる態様においてクメンを精製するためのシステムを提供する。このシステムは、ベンゼン塔およびクメン塔と、DIPBを実質的に含まない液体をベンゼン塔からクメン塔に導くように構成された液体側排流管であって、導かれた液体がクメン塔への還流となる、液体側排流管と、ベンゼン濃縮ベーパをベンゼン塔に戻すように構成された、クメン塔からの塔頂上管路であって、ベンゼン濃縮ベーパが抜き取られた液体よりもベンゼン濃度が高い、塔頂上管路と、精製クメンをクメン塔から抜き取るように構成された生産物側排流管とを備え得る。
【0011】
本開示の特徴の上述の例をかなり大まかに概述したのは、下記の本開示の詳細な説明がより良く理解可能となるため、また当技術分野への貢献が理解可能となるためである。以下に記載し、本明細書に添付する特許請求の範囲の対象となる、本開示のさらなる特徴は当然ながら存在する。
【0012】
本開示を詳細に理解するために、以下の好ましい実施形態の詳細な説明については、添付の図面とともに理解する形で参照すべきである。図面では、類似の要素には類似の番号を付している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】本開示の一実施形態による、クメンを製造するためのシステムを示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態による、クメンを製造するための後付け型システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[詳細な説明]
本開示は、クメン蒸留処理の際のエネルギー消費を大幅に減らすための方法および関連するシステムを提供する。リボイラ等の装置は、作動中に塔内を特定の温度に保つために比較的大量のエネルギーを消費する。リボイラはしばしば、このエネルギーを高圧蒸気(HPS)の形で受け取る。本教示により、態様において、特定の処理温度を保つためにリボイラが消費するエネルギー量を減らすことができ、このことにより、次いでリボイラに投入する所要の熱エネルギーが、HPSであれ燃焼型加熱器等の他の装置で得られるものであれ、減少する。本開示は様々な形の実施形態が可能である。本開示の実施形態は、アルキル化給送流について調整を行い、および/またはベンゼン塔をクメン塔と熱連結して、
図1および2に示すような従来の先行技術の設備と比較してHPSの消費を減らす。給送流の調整および熱連結は、共に用いても個別に用いても、やはり先行技術の設備と比べてHPSの消費の減少を達成する。本開示の具体的な実施形態は、図面で示し、本明細書で詳細に記述するが、このことについては、本開示は本開示の原理を例示したものと考えるべきであって、本開示を本明細書で図示し記述したものに限定することを意図していないことに留意されたい。
【0015】
図3を参照すると、1つまたは複数のアルキル化給送流を処理することでベンゼン、クメンおよびDIPBを主要な生産物として分離するための、本開示の一実施形態によるクメン蒸留システム100(以後「システム100」)が示されている。図示した実施形態では、システム100は、アルキル化反応器120およびトランスアルキル化反応器124からのアルキル化給送流およびトランスアルキル化給送流を処理する。
【0016】
アルキル化反応器120は、ベンゼンをプロピレンによってアルキル化して、イソプロピルベンゼンまたはクメンを生成するように構成されている。主に二置換および三置換プロピルベンゼンである、いくつかのポリイソプロピルベンゼンも生成され得る。ベンゼンは過剰量でアルキル化反応器120に給送してもよく、ほぼ全てのプロピレンが反応するようにすることができる。アルキル化反応器120の排出流である第1の給送流122は、主にベンゼン、クメンおよびポリイソプロピルベンゼンを含む。トランスアルキル化反応器124は任意選択で、アルキル化反応器120で生成したポリイソプロピルベンゼンをトランスアルキル化するように構成することができる。トランスアルキル化反応器124の排出流である第2の給送流126は、主にベンゼン、クメンおよびポリイソプロピルベンゼンを含む。
【0017】
非限定的な一実施形態において、システム100は、アルキル化反応生成物から少なくともベンゼンを分離するように構成されたベンゼン塔110と、ベンゼン塔110から受け取った給送流から少なくともクメンを分離するように構成されたクメン塔112とを備え得る。これらの塔110、112は、外殻、外殻内の種々の成分間の接触を促進するための1つまたは複数の分留内部物(例えば、棚段または充填物)、ならびにリボイラおよび凝縮器などのエネルギーを消費する伝熱装置による従来の構成を用い得る。上記の通り、これらのエネルギー消費装置は、HPSまたは他の熱エネルギー投入形態を用い得る。
【0018】
ベンゼン塔110は、アルキル化反応器120から第1の給送流122を、トランスアルキル化反応器124から第2の給送流126を受け取る。HPSの消費を減らすために、システム100は、好適な管流路で形成された分割給送アセンブリ123を備える。一実施形態では、分割給送アセンブリ123は、第1の給送流122を調整するための加熱器128を備え得る。この実施形態では、分割給送アセンブリ123は第1の給送流122を第1の分流130と第2の分流132とに分ける。第1の分流130は大部分が液体として上方の給送位置でベンゼン塔110に入り、ベンゼン塔110内の還流と同様に効果的に作用する。第2の分流132は加熱器128を通過して少なくとも部分的に気化し、第1の分流130の下方にある給送位置でベンゼン塔110に入る。いくつかの実施形態では、第2の分流132は大部分がベーパである。第2の分流132を予熱することは、加熱器128で追加の熱容量が受け取られるため、リボイラの負荷を軽減する一助となる。
【0019】
いくつかの実施形態では、給送流126中のトランスアルキル化反応生成物は、大部分が液体である第1の分流130がベンゼン塔110に給送される第1の位置と、少なくとも部分的にベーパである第2の分流132がベンゼン塔110に給送される第2の位置との間にある位置で、ベンゼン塔110に給送される。非限定的な設備において、第1の給送流122は、110℃~160℃の温度範囲で供給し得る。第1の分流130は110℃~130℃の温度範囲でベンゼン塔110に入り得る。第2の分流132は、加熱器128を通過した後、120℃~170℃の温度範囲でベンゼン塔110に入り得る。加熱器128は、クメン・ベーパを155℃~175℃の温度範囲で受け取ってもよく、クメン・ベーパは145℃~165℃の温度範囲で加熱器128から出てもよい。これらの温度は単に例示的なものであり、本教示を応用し得る温度範囲を限定するものではないことに留意すべきである。さらに、降下弁などの流量制御デバイスは単に分かりやすさのために示さないが、適当な場合に用い得る。
【0020】
以下に記載するように、加熱器128は熱エネルギーを、クメン塔112から抜き取られたクメンから受け取る。加熱器128は、熱交換器または予熱器などの間接的加熱器でよい。しかし、他の実施形態では、加熱器128は熱エネルギーを、異なる源から受け取ってもよい。全体を通して使用される、「大部分」は過半数を意味し、例えば、大部分が液体であるとは、流体の50パーセントより多くが液体であることを意味する。
【0021】
ベンゼン塔110は、ベンゼン塔頂上流140、ベンゼン生産物側排流142、クメン側排流144および塔底流146を始めとしたいくつかの排出流を有する。ベンゼン生産物側排流142内の流体は、所定のベンゼン生産物濃度基準値まで精製されたベンゼンを含む。クメン側排流144は、ベンゼン塔110の上方部分から取られ、クメン塔112に給送される。この側排流144は大部分が、ジイソプロピルベンゼン(DIPB)を実質的に含まない液体のクメンである。ここで、「DIPBを実質的に含まない」とは、DIPB濃度が精製クメン生産物における所定の濃度水準未満であることを意味する。実施形態では、100重量ppm未満のDIPB含有量は「DIPBを実質的に含まない」とみなしてもよい。クメン側排流144は、クメン塔112に対する還流としての役割を果たす。塔底流146は、実質的にベンゼンを含まず、やはりクメン塔に給送される。ここで「ベンゼンを実質的に含まない」とは、ベンゼン濃度が側排流142におけるベンゼン濃度未満であることを意味する。実施形態では、100重量ppm未満のベンゼン含有量は「ベンゼンを実質的に含まない」とみなしてもよい。
【0022】
クメン塔112は、ベーパ塔頂上流150、クメン生産物側排流152、およびDIPB塔底流154を始めとしたいくつかの排出流を有する。塔頂上ベーパ150は、ベンゼン塔110内の、側排流144と同じ段に戻るベンゼンが豊富なクメン流である。戻る位置は、一般にベンゼン生産物側排流142と塔底流146の上方との間である。生産物品質であるクメン側排流152は、クメン塔112から取ったベーパ流であり、加熱器128内で少なくとも部分的に凝縮して先述のように給送流の第2の分流132のために給送流を予熱する。この側排流152は、熱交換器154で2次的に冷却してもよく、この熱交換器154は低圧蒸気を生成するために用い得る。冷却した側排流152は凝縮され、凝縮したクメン生産物として出ていく第1の分流156と、還流としてクメン塔112に戻る第2の分流158とに分けることができる。第2の分流158は、側排流152をベンゼン塔110から取る場所に近い位置で戻し得る。
【0023】
側排流144およびベーパ塔頂上流150はベンゼン塔110とクメン塔112とを熱連結していることを理解すべきである。側排流144およびベーパ塔頂上流150は、本開示による熱連結部148の非限定的な一実施形態を形成している。熱連結部148は、2つの塔110、112の各々における特定の位置の間をベーパ流が液体流と逆方向に移動する場合に、直接接触することによって熱を伝達するように構成されている。例えば、ベンゼン塔110における特定の位置は、側排流144が取られ塔頂上ベーパ150がベンゼン塔110に戻される、分留内部物の同じ段でもよい。同様に、クメン塔112における特定の位置は、側排流144が受け取られ塔頂上ベーパ150がクメン塔112から取られる位置、例えば分留内部物の最上部またはその上方でもよい。
【0024】
図4を参照すると、既存の従来のシステム202を改造することで得ることができるクメン蒸留システム200が示されている。「改造する」とは、既存のシステムに構成要素および/または他の構造を追加し、それらにより既存のシステムの基本性能、機能および/または効率を修正または別様に変更することを意味する。従来のシステム202は、既存のベンゼン塔12および既存のクメン塔14を備え得る。ベンゼン塔12は、アルキル化反応器から第1の給送流16を、トランスアルキル化反応器から第2の給送流18を受け取る。「既存の」という用語は、上記の構成要素が、改造を行う前から存在していたことを意味する。いくつかの実施形態では、トランスアルキル化反応生成物給送流18は、大部分が液体である第1の分流216がベンゼン塔12に給送される第1の位置と、少なくとも部分的にベーパである第2の分流218がベンゼン塔12に給送される第2の位置との間にある位置で、ベンゼン塔12に給送される。
【0025】
非限定的な一実施形態において、システム200における分留段数を増やすために、精留塔210を加え得る。追加の分留段は、クメン塔14に対して棚段の数を増やすためのリトレイ、例えば3段につき4段にするリトレイを行うことで増やしてもよい。この全体的な構成によりクメン塔14への液圧負荷が減少するので、棚段の数を増やし棚段の間隔を詰めても能力が犠牲になることはおそらくないであろう。「リトレイ」とは、棚段であれ充填物であれ、塔14内の分留内部物を置き換えることを意味する。簡便のために、「棚段」に言及して議論を行うことにする。
【0026】
第1の給送流16を調整するために、この改造により分割給送予熱アセンブリ214がベンゼン塔12に加わる。ベンゼン塔12では、アルキル化反応器(図示せず)からの第1の給送流16の第1の分流216は液体として上方の給送位置でベンゼン塔12に入る。第1の給送流16の第2の分流218は給送流加熱器220内で部分的に気化し、大部分がベーパとして第1の分流216の下方にある給送位置でベンゼン塔12に入る。給送流加熱器220は、以下に記載するように熱エネルギーをクメン排出流から受け取ってもよく、または別の源から熱エネルギーを受け取ってもよい。
【0027】
精留塔210はベンゼン塔12をクメン塔14と熱連結する。一実施形態では、実質的にDIPBを含まない、ベンゼン塔12からの塔頂上ベーパ224は改造精留塔210に給送され、改造精留塔210からの液体排流226はベンゼン塔12に対する還流としての役割を果たす。塔頂上ベーパ224はベンゼン塔12から出て、液体排流226はベンゼン塔12に入るが、両者ともに第1の給送分流216の進入位置の少なくとも上方にあることに留意すべきである。実施例では、塔頂上ベーパ224がベンゼン塔12から排出され得、同じ位置で液体排流226がベンゼン塔12に入り得る。精留塔210はベンゼンとクメンとを分離する。実質的にDIPBおよびベンゼンを含まない、精留塔210からの液体塔底流228は、還流としてクメン塔14に給送される。大部分がクメンを含む、クメン塔12からの塔頂上ベーパ232の第1の分流230は、改造精留塔210の塔底に戻る。塔頂上ベーパの第2の分流236は、ベンゼン塔給送流加熱器220において、給送流を予熱するために用いられる。ベンゼン塔12からの塔底流234は実質的にベンゼンを含まず、既存の装置を用いてクメン塔14に給送される。既存のベンゼン塔頂上流凝縮システム250を改造精留塔210のために再応用することができる。既存のクメン塔頂上流凝縮システム252は、いくつか変形を加えて再応用することができる。塔頂上ベーパの第2の分流236は、ベンゼン塔給送流加熱器220において、給送流を予熱するために用いられる。
図3に示す2つの給送流加熱器220は、同一の給送流加熱器であることに留意すべきである。したがって、
図4の実施形態では、精留塔210によって熱連結部235が形成され、塔頂上ベーパ232の第1の分流230はクメン塔14から精留塔210に戻り、精留塔210からの液体塔底流228は、還流としてクメン塔14に給送される。
【0028】
[仮説的な実施例]
以下は、
図1で示す先行するシステム、
図3の実施形態によるシステム、および
図4の実施形態によるシステムに関するHPS負荷の予測使用量を示す表である。以下に示すように、上述のシステムは、従来のクメン蒸留システムのベンゼン塔およびクメン塔と比較して、リボイラの所要熱量が30%より大きく減少すると予測される。また、これら2つの塔は通常クメン製法に対する入熱総量の約90%を占めるため、本教示によってクメン製法の全体的な効率を大幅に改善し得る。
【0029】
【0030】
上記から、これまで記述してきたものはクメンを精製するためのシステムを含むことを理解すべきである。このシステムは、既存のベンゼン塔および既存のクメン塔と、既存のクメン塔内に配置された新規のリトレイ・アセンブリであって、既存のクメン塔内の既存の棚段アセンブリよりも多くの棚段を有する、新規のリトレイ・アセンブリと、新規の改造精留塔とを備え得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、クメンを精製するための上述のシステムは、アルキル化反応器からの給送流を受け取る新規の分割給送アセンブリであって、第1の給送管路と、第2の給送管路と、加熱器とを備え、第1の給送分流は第1の給送管路を経て液体としてベンゼン塔に入り、第2の給送分流は第2の給送管路を経てベンゼン塔に入り、加熱器は第2の給送分流をベンゼン塔に入る前に少なくとも部分的に気化させる、分割給送アセンブリを備え得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、クメンを精製するための上述のシステムは、ベンゼン塔からの塔頂上ベーパを第1の位置で取り、取った塔頂上ベーパを新規の改造精留塔に給送する新規の第1の塔頂上排流管路と、改造精留塔からの液体を第1の位置に隣接した位置で抜き取り、抜き取った液体をベンゼン塔に給送する新規の液体排流管路と、新規の改造精留塔からの液体塔底流を抜き取り、抜き取った液体塔底流を還流としてクメン塔に給送する新規の塔底排流管路と、既存のクメン塔からの塔頂上ベーパを受け取る新規の第2の塔頂上管路であって、塔頂上ベーパの第1の分流を新規の改造精留塔の塔底に給送し、塔頂上ベーパの第2の分流を加熱器に給送する、新規の第2の塔頂上管路とを備え得る。
【0033】
上記から、これまで記述してきたものはクメンを精製するための方法も含むことを理解すべきである。いくつかの実施形態では、この方法は、既存のベンゼン塔に新規の分割給送アセンブリを加えるステップであって、新規の分割給送アセンブリが第1の給送管路、第2の給送管路、および加熱器を備える、加えるステップと、新規のリトレイ・アセンブリを用いて既存のクメン塔をリトレイするステップであって、新規のリトレイ・アセンブリが既存のクメン塔内の既存の棚段アセンブリよりも多くの棚段を有する、リトレイするステップと、新規の分割給送アセンブリを用いて、既存のアルキル化反応器からの給送流を受け取るステップと、第1の給送分流を第1の給送管路を経て液体として既存のベンゼン塔に給送するステップと、第2の給送分流を第2の給送管路を経て既存のベンゼン塔に給送するステップと、加熱器を用いて第2の給送分流を既存のベンゼン塔に入る前に部分的に気化させるステップとを含み得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、クメンを精製するための上述の方法は、新規の改造精留塔を加えるステップと、新規の改造塔を既存のベンゼン塔に連結する新規の第1の塔頂上排流管路を加えるステップと、新規の改造塔を既存のベンゼン塔に連結する新規の第1の液体排流管路を加えるステップと、新規の改造塔を既存のクメン塔に連結する新規の塔底排流管路を加えるステップと、既存のクメン塔を新規の改造精留塔に連結する新規の第2の塔頂上管路を加えるステップと、新規の第1の塔頂上排流管路を用いて既存のベンゼン塔からの塔頂上ベーパを取り、取った塔頂上ベーパを新規の改造精留塔に給送するステップと、新規の液体排流管路を用いて、新規の塔頂上排流管路と同じ位置で新規の改造精留塔からの液体を取り、抜き取った液体を既存のベンゼン塔に給送するステップと、新規の塔底排流管路を用いて新規の改造精留塔からの液体塔底流を取り、取った液体塔底流を還流として既存のクメン塔に給送するステップと、新規の第2の塔頂上管路を用いて既存のクメン塔からの塔頂上ベーパを受け取るステップであって、新規の第2の塔頂上管路は塔頂上ベーパの第1の分流を新規の改造精留塔の塔底に給送し、塔頂上ベーパの第2の分流を加熱器に給送する、受け取るステップとを含み得る。
【0035】
全体を通して使用される、「分留塔」および「塔」という用語は、異なる沸点を有する2つ以上の成分を含む混合物を分離するのに好適な任意のシステム、デバイスまたはシステムおよび/もしくはデバイスの組合せを指す。このような分留塔または塔は、スクラブ塔、蒸留塔、精留塔およびストリップ塔を含み得るが、これらに限定されない。
【0036】
全体を通して使用される、「分留内部物」という用語は、単位体積あたりの表面積が大きい素材で形成された充填物を含むが、これに限定されない。充填物により、ベーパまたは液体は、金属、セラミックまたはプラスチックで作られてもよい表面と持続的に接触することができるようになる。「分留内部物」はまた、棚段を含むが、これに限定されない。棚段は、分留塔110内の気相と液相との接触を改善できる1つまたは複数の型の棚段を含み得るが、これに限定されない。例示的な棚段は、穿孔型棚段、篩型棚段、泡鐘型棚段、浮き弁型棚段、固定弁型棚段、トンネル型棚段、カートリッジ型棚段、二重流れ型棚段、バッフル型棚段、シャワー・デッキ型棚段、円盤およびドーナツ型棚段、軌道型棚段、馬蹄型棚段、カートリッジ型棚段、スナップイン・バルブ型棚段、煙突型棚段、スリット型棚段、またはこれらの任意の組合せを含み得るが、これらに限定されない。上記のように、「リトレイ」という用語は、任意の形態の分留内部物を置き換えることを指すために一般的に使用される。
【0037】
上述は、本発明の実施形態を対象とするが、本発明の他の、およびさらなる実施形態を本発明の基本的範囲から逸脱することなく考案することができ、その範囲は以下の特許請求の範囲で定められてもよい。
【国際調査報告】