特表 2024-544251 モリブデン化合物、その製造方法、およびそれを含む薄膜の製造方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公表特許公報(A)

(11)【公表番号】

(43)【公表日】2024-11-28

(54)【発明の名称】モリブデン化合物、その製造方法、およびそれを含む薄膜の製造方法

(51)【国際特許分類】

   C07F 11/00 20060101AFI20241121BHJP

   C23C 16/06 20060101ALI20241121BHJP

   C23C 16/455 20060101ALI20241121BHJP

【ＦＩ】

C07F11/00 B CSP

C23C16/06

C23C16/455

【審査請求】有

【予備審査請求】未請求

(21)【出願番号】P 2024534612

(86)(22)【出願日】2022-12-01

(85)【翻訳文提出日】2024-06-10

(86)【国際出願番号】 KR2022019325

(87)【国際公開番号】W WO2023113309

(87)【国際公開日】2023-06-22

(31)【優先権主張番号】10-2021-0177724

(32)【優先日】2021-12-13

(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR

(81)【指定国・地域】

(71)【出願人】

【識別番号】515339697

【氏名又は名称】ディーエヌエフ シーオー．， エルティーディー．

【氏名又は名称原語表記】ＤＮＦ ＣＯ．， ＬＴＤ．

(74)【代理人】

【識別番号】100107984

【弁理士】

【氏名又は名称】廣田 雅紀

(74)【代理人】

【識別番号】100182305

【弁理士】

【氏名又は名称】廣田 鉄平

(74)【代理人】

【識別番号】100096482

【弁理士】

【氏名又は名称】東海 裕作

(74)【代理人】

【識別番号】100131093

【弁理士】

【氏名又は名称】堀内 真

(74)【代理人】

【識別番号】100150902

【弁理士】

【氏名又は名称】山内 正子

(74)【代理人】

【識別番号】100141391

【弁理士】

【氏名又は名称】園元 修一

(74)【代理人】

【識別番号】100221958

【弁理士】

【氏名又は名称】篠田 真希恵

(74)【代理人】

【識別番号】100192441

【弁理士】

【氏名又は名称】渡辺 仁

(72)【発明者】

【氏名】クォン ヨンヒ

(72)【発明者】

【氏名】イム ヨンジェ

(72)【発明者】

【氏名】ジョン サンヨン

(72)【発明者】

【氏名】ピョン テソク

(72)【発明者】

【氏名】イ サンチャン

(72)【発明者】

【氏名】イ サンイック

【テーマコード（参考）】

4H050

4K030

【Ｆターム（参考）】

4H050AA01

4H050AA02

4H050AA03

4H050AB78

4H050AB91

4H050BD60

4H050WB11

4H050WB12

4H050WB13

4H050WB14

4H050WB21

4K030AA11

4K030AA13

4K030AA14

4K030AA17

4K030AA18

4K030BA12

4K030BA38

4K030BA42

4K030CA04

4K030CA12

4K030HA01

4K030JA05

4K030JA09

4K030JA10

4K030JA16

4K030LA15

(57)【要約】

本発明は、モリブデン化合物、その製造方法、それを含むモリブデン含有薄膜蒸着用組成物、およびそれを用いたモリブデン含有薄膜の製造方法に関し、本発明のモリブデン化合物は、優れた熱安定性、高い揮発性、および向上した蒸気圧を有し、それを採用することで、向上した蒸着速度で均一な厚さのモリブデン含有薄膜を製造することができる。

【特許請求の範囲】

【請求項1】

下記化学式１で表されるモリブデン化合物。

【化1】

［前記化学式１中、
Ｌは、Ｃ１－Ｃ１０アルキレンまたはＣ３－Ｃ１０シクロアルキレンであり、前記Ｌのアルキレンおよびシクロアルキレンは、Ｃ１－Ｃ１０アルキルでさらに置換されてもよく、
Ｒ_１～Ｒ_４は、互いに独立して、水素またはＣ１－Ｃ７アルキルであり、
Ｒ_５は、水素、Ｃ１－Ｃ１０アルキル、Ｃ６－Ｃ１２アリール、Ｃ６－Ｃ１２アリールＣ１－Ｃ１０アルキル、またはＣ１－Ｃ１０アルコキシであり、
Ｙは、－ＮＲ_１１Ｒ_１２、－ＯＲ_１３、または－ＳＲ_１４であり、
Ｒ_１１～Ｒ_１４は、互いに独立して、Ｃ１－Ｃ１０アルキル、ハロＣ１－Ｃ１０アルキル、Ｃ３－Ｃ１０シクロアルキル、Ｃ６－Ｃ１２アリール、Ｃ６－Ｃ１２アリールＣ１－Ｃ１０アルキルであるか、前記Ｒ_１１とＲ_１２は連結されて環を形成してもよい。］

【請求項2】

前記Ｌは、Ｃ１－Ｃ６アルキレンであり、前記Ｌのアルキレンは、Ｃ１－Ｃ６アルキルでさらに置換されてもよく、
Ｒ_１～Ｒ_４は、互いに独立して、水素またはＣ１－Ｃ４アルキルであり、
Ｒ_５は、水素またはＣ１－Ｃ６アルキルであり、
Ｙは、－ＮＲ_１１Ｒ_１２、－ＯＲ_１３、または－ＳＲ_１４であり、
Ｒ_１１～Ｒ_１４は、互いに独立して、Ｃ１－Ｃ６アルキル、ハロＣ１－Ｃ６アルキル、Ｃ３－Ｃ６シクロアルキル、Ｃ６－Ｃ１２アリール、またはＣ６－Ｃ１２アリールＣ１－Ｃ６アルキルであるか、前記Ｒ_１１とＲ_１２はＣ２－Ｃ６アルキレンで連結されて環を形成してもよい、請求項１に記載のモリブデン化合物。

【請求項3】

下記化学式２で表されるものである、請求項１に記載のモリブデン化合物。

【化2】

［前記化学式２中、
Ｒ_１～Ｒ_４は、互いに独立して、水素またはＣ１－Ｃ４アルキルであり、
Ｒ_５は、水素またはＣ１－Ｃ４アルキルであり、
Ｙは、－ＮＲ_１１Ｒ_１２、－ＯＲ_１３、または－ＳＲ_１４であり、
Ｒ_１１～Ｒ_１４は、互いに独立して、Ｃ１－Ｃ４アルキル、ハロＣ１－Ｃ４アルキル、またはＣ３－Ｃ６シクロアルキルであるか、前記Ｒ_１１とＲ_１２はＣ２－Ｃ６アルキレンで連結されて脂環族環を形成してもよく、
ｍは、１～４の整数である。］

【請求項4】

下記化合物から選択されるものである、請求項１に記載のモリブデン化合物。

【化3】

【請求項5】

ａ）下記化学式３で表されるモリブデン化合物と、前記モリブデン化合物と配位可能なリガンドとを反応させ、中間体を製造するステップと、
ｂ）前記中間体と、下記化学式４で表されるシクロペンタジエン系リガンドとを反応させ、下記化学式１で表されるモリブデン化合物を製造するステップと、
を含む、下記化学式１のモリブデン化合物の製造方法。

【化4】

【化5】

【化6】

［前記化学式１および４中、
Ｌは、Ｃ１－Ｃ１０アルキレンまたはＣ３－Ｃ１０シクロアルキレンであり、前記Ｌのアルキレンおよびシクロアルキレンは、Ｃ１－Ｃ１０アルキルでさらに置換されてもよく、
Ｒ_１～Ｒ_５は、互いに独立して、水素またはＣ１－Ｃ７アルキルであり、
Ｙは、－ＮＲ_１１Ｒ_１２、－ＯＲ_１３、または－ＳＲ_１４であり、
Ｒ_１１～Ｒ_１４は、互いに独立して、Ｃ１－Ｃ１０アルキル、ハロＣ１－Ｃ１０アルキル、Ｃ３－Ｃ１０シクロアルキル、Ｃ６－Ｃ１２アリール、Ｃ６－Ｃ１２アリールＣ１－Ｃ１０アルキルであるか、前記Ｒ_１１とＲ_１２は連結されて環を形成してもよい。］

【請求項6】

請求項１から４の何れか一項に記載のモリブデン化合物を含むモリブデン含有薄膜蒸着用組成物。

【請求項7】

請求項６に記載のモリブデン含有薄膜蒸着用組成物を用いたモリブデン含有薄膜の製造方法。

【請求項8】

ａ）チャンバー内に取り付けられた基板を昇温させるステップと、
ｂ）前記チャンバー内に反応ガスと前記モリブデン含有薄膜蒸着用組成物を注入してモリブデン含有薄膜を製造するステップと、を含む、請求項７に記載のモリブデン含有薄膜の製造方法。

【請求項9】

前記反応ガスは、酸素（Ｏ_２）、オゾン（Ｏ_３）、蒸留水（Ｈ_２Ｏ）、過酸化水素（Ｈ_２Ｏ_２）、一酸化窒素（ＮＯ）、亜酸化窒素（Ｎ_２Ｏ）、二酸化窒素（ＮＯ_２）、アンモニア（ＮＨ_３）、窒素（Ｎ_２）、ヒドラジン（Ｎ_２Ｈ_４）、アミン、ジアミン、一酸化炭素（ＣＯ）、二酸化炭素（ＣＯ_２）、Ｃ_１～Ｃ_１２の飽和または不飽和炭化水素、水素（Ｈ_２）、アルゴン（Ａｒ）、およびヘリウム（Ｈｅ）から選択される何れか一つまたは二つ以上のものである、請求項８に記載のモリブデン含有薄膜の製造方法。

【請求項10】

ｃ）ｂ）ステップの後に、チャンバー内に反応ガスを注入するステップをさらに含む、請求項８に記載のモリブデン含有薄膜の製造方法。

【請求項11】

前記ｂ）およびｃ）ステップを一周期とし、前記周期を繰り返し行う、請求項１０に記載のモリブデン含有薄膜の製造方法。

【請求項12】

モリブデンの含量が７０％以上である、モリブデン含有薄膜。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、モリブデン化合物、その製造方法、それを含む薄膜の製造方法、およびそれを含む薄膜に関する。

【背景技術】

【0002】

種々の有機金属前駆体が金属薄膜の形成に用いられている。多様な技術が薄膜の蒸着のために用いられており、反応性スパッタリング（ｒｅａｃｔｉｖｅ ｓｐｕｔｔｅｒｉｎｇ）、イオン補助蒸着（ｉｏｎ－ａｓｓｉｓｔｅｄ ｄｅｐｏｓｉｔｉｏｎ）、ゾルゲル蒸着（ｓｏｌ－ｇｅｌ ｄｅｐｏｓｉｔｉｏｎ）、化学気相蒸着法（ＣＶＤ）の一種である有機金属化学気相蒸着法（ＭＯＣＶＤ）、原子層エピタキシー（ＡＬＥ）とも呼ばれる原子層蒸着法（ＡＬＤ）などがある。化学気相蒸着法（ＣＶＤ）および原子層蒸着法（ＡＬＤ）は、良好な組成制御、高い膜均一性、良好なドープ制御といった利点を有し、優れたコンフォーマル蒸着（ｃｏｎｆｏｒｍａｌ ｄｅｐｏｓｉｔｉｏｎ）が可能であって、高非平面のマイクロエレクトロニクスデバイスの幾何学構造でも、均一なステップカバレッジを実現することができる。

【0003】

化学気相蒸着法（ＣＶＤ）は、基板上に薄膜を形成するために、有機金属前駆体が用いられる化学的工程である。一般的な化学気相蒸着法（ＣＶＤ）において、前駆体は、低い圧力や大気圧のチャンバーで基板を通過しつつ、基板の表面で反応または分解される。揮発性副産物は、ガスの流れにより除去される。

【0004】

原子層蒸着法（ＡＬＤ）は、精緻な厚さ制御が可能であり、均一なステップカバレッジを実現して、優れたコンフォーマル蒸着が可能な方法であって、基板の表面で反応しつつ逐次膜成長させる方法である。通常、有機金属からなる第１前駆体が基板上に単一層を生成するパルス（ｐｕｒｌｓｅ）Ａ、過量の第１前駆体を除去するパージ（ｐｕｒｇｅ）Ａ、非金属前駆体である第２前駆体が第１前駆体と基板の反応を誘導するパルス（ｐｕｒｌｓｅ）Ｂ、および未反応物を除去するパージ（ｐｕｒｇｅ）Ｂの、４ステップにより行われる。これらの４ステップは、所望の厚さの薄膜が得られるまで繰り返し行われる。

【0005】

薄膜は、半導体装置の製造とナノテクノロジーのような重要なアプリケーションに多様に用いられている。かかるアプリケーションは、例えば、伝導性膜、高屈折率の光学コーティング、腐食防止コーティング、光触媒自己洗浄ガラスコーティング、生体適合性コーティング、電界効果トランジスタ（ＦＥＴ）内のゲート誘電体絶縁膜、誘電体キャパシタ層、キャパシタ電極、ゲート電極、接着体拡散障壁、および集積回路などを含む。また、薄膜は、ダイナミックランダムアクセスメモリー（ＤＲＡＭ）アプリケーションのためのｈｉｇｈ－ｋ誘電体酸化物、赤外線検出器、および不揮発性強誘電体ランダムアクセスメモリー（ｎｏｎ－ｖｏｌａｔｉｌｅ ｆｅｒｒｏｅｌｅｃｔｒｉｃ ｒａｎｄｏｍ ａｃｃｅｓｓ ｍｅｍｏｒｉｅｓ、ＮＶ－ＦｅＦＡＭｓ）に用いられる強誘電性のペロブスカイトのようなマイクロ電子応用分野にも用いられている。マイクロ電子工学部品の小型化が続けられており、これに伴い、誘電体薄膜の使用の必要性が増大している。

【0006】

ＣＶＤおよびＡＬＤに用いるための現在の多くのモリブデン前駆体は、半導体のような次世代装置の製造のための新しい工程を実現するに求められる性能を満たしていない。改善された熱安定性、より高い揮発性、向上した蒸気圧、均一な蒸着、および安定した蒸着速度を有するモリブデン前駆体の開発が必要とされている。

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

本発明の目的は、モリブデン化合物およびその製造方法を提供することにある。

【0008】

本発明の他の目的は、前記モリブデン化合物を含むモリブデン含有薄膜蒸着用組成物を提供することにある。

【0009】

本発明のさらに他の目的は、前記モリブデン化合物を用いたモリブデン含有薄膜の製造方法を提供することにある。

【0010】

また、本発明は、モリブデンの含量が７０％以上であるモリブデン含有薄膜を提供する。

【課題を解決するための手段】

【0011】

本発明は、下記化学式１で表されるモリブデン化合物を提供する。

【0012】

【化1】

［前記化学式１中、
Ｌは、Ｃ１－Ｃ１０アルキレンまたはＣ３－Ｃ１０シクロアルキレンであり、前記Ｌのアルキレンおよびシクロアルキレンは、Ｃ１－Ｃ１０アルキルでさらに置換されてもよく、
Ｒ_１～Ｒ_４は、互いに独立して、水素またはＣ１－Ｃ７アルキルであり、
Ｒ_５は、水素、Ｃ１－Ｃ１０アルキル、Ｃ６－Ｃ１２アリール、Ｃ６－Ｃ１２アリールＣ１－Ｃ１０アルキル、またはＣ１－Ｃ１０アルコキシであり、
Ｙは、－ＮＲ_１１Ｒ_１２、－ＯＲ_１３、または－ＳＲ_１４であり、
Ｒ_１１～Ｒ_１４は、互いに独立して、Ｃ１－Ｃ１０アルキル、ハロＣ１－Ｃ１０アルキル、Ｃ３－Ｃ１０シクロアルキル、Ｃ６－Ｃ１２アリール、Ｃ６－Ｃ１２アリールＣ１－Ｃ１０アルキルであるか、前記Ｒ_１１とＲ_１２は連結されて環を形成してもよい。］

【0013】

一実施形態に係る前記化学式１中、Ｌは、Ｃ１－Ｃ６アルキレンであってもよく、前記Ｌのアルキレンは、Ｃ１－Ｃ６アルキルでさらに置換されてもよく、Ｒ_１～Ｒ_４は、互いに独立して、水素またはＣ１－Ｃ４アルキルであり、Ｒ_５は、水素またはＣ１－Ｃ６アルキルであってもよい。

【0014】

また、Ｙは、－ＮＲ_１１Ｒ_１２、－ＯＲ_１３、または－ＳＲ_１４であってもよく、前記Ｒ_１１～Ｒ_１４は、互いに独立して、Ｃ１－Ｃ６アルキル、ハロＣ１－Ｃ６アルキル、Ｃ３－Ｃ６シクロアルキル、Ｃ６－Ｃ１２アリール、またはＣ６－Ｃ１２アリールＣ１－Ｃ６アルキルであるか、前記Ｒ_１１とＲ_１２はＣ２－Ｃ６アルキレンで連結されて環を形成してもよい。

【0015】

好ましい一実施形態に係るモリブデン化合物は、下記化学式２で表されるものであってもよい。

【0016】

【化2】

［前記化学式２中、
Ｒ_１～Ｒ_４は、互いに独立して、水素またはＣ１－Ｃ４アルキルであり、
Ｒ_５は、水素またはＣ１－Ｃ４アルキルであり、
Ｙは、－ＮＲ_１１Ｒ_１２、－ＯＲ_１３、または－ＳＲ_１４であり、
Ｒ_１１～Ｒ_１４は、互いに独立して、Ｃ１－Ｃ４アルキル、ハロＣ１－Ｃ４アルキル、またはＣ３－Ｃ６シクロアルキルであるか、前記Ｒ_１１とＲ_１２はＣ２－Ｃ６アルキレンで連結されて脂環族環を形成してもよく、
ｍは、１～４の整数である。］

【0017】

一実施形態において、前記モリブデン化合物は、下記化合物から選択されるものであってもよい。

【化3】

【0018】

本発明は、モリブデン化合物を製造する方法を提供し、一実施形態に係る下記化学式１のモリブデン化合物の製造方法は、下記化学式３で表されるモリブデン化合物と、前記モリブデン化合物と配位可能なリガンドとを反応させ、中間体を製造するステップと、前記中間体と、下記化学式４で表されるシクロペンタジエン系リガンドとを反応させ、下記化学式１のモリブデン化合物を製造するステップと、を含んでもよい。

【0019】

【化4】

【0020】

【化5】

【0021】

【化6】

［前記化学式１および４中、
Ｌは、Ｃ１－Ｃ１０アルキレンまたはＣ３－Ｃ１０シクロアルキレンであり、前記Ｌのアルキレンおよびシクロアルキレンは、Ｃ１－Ｃ１０アルキルでさらに置換されてもよく、
Ｒ_１～Ｒ_５は、互いに独立して、水素またはＣ１－Ｃ７アルキルであり、
Ｙは、－ＮＲ_１１Ｒ_１２、－ＯＲ_１３、または－ＳＲ_１４であり、
Ｒ_１１～Ｒ_１４は、互いに独立して、Ｃ１－Ｃ１０アルキル、ハロＣ１－Ｃ１０アルキル、Ｃ３－Ｃ１０シクロアルキル、Ｃ６－Ｃ１２アリール、Ｃ６－Ｃ１２アリールＣ１－Ｃ１０アルキルであるか、前記Ｒ_１１とＲ_１２は連結されて環を形成してもよい。］

【0022】

本発明は、本発明の一実施形態に係るモリブデン化合物を含むモリブデン含有薄膜蒸着用組成物を提供する。

【0023】

また、本発明は、前記モリブデン含有薄膜蒸着用組成物を用いて薄膜を製造する、モリブデン含有薄膜の製造方法を提供する。

【0024】

一実施形態に係る前記製造方法は、
ａ）チャンバー内に取り付けられた基板を昇温させるステップと、
ｂ）前記チャンバー内に反応ガスと前記モリブデン含有薄膜蒸着用組成物を注入してモリブデン含有薄膜を製造するステップと、を含んでもよい。

【0025】

一実施形態に係る前記反応ガスは、酸素（Ｏ_２）、オゾン（Ｏ_３）、蒸留水（Ｈ_２Ｏ）、過酸化水素（Ｈ_２Ｏ_２）、一酸化窒素（ＮＯ）、亜酸化窒素（Ｎ_２Ｏ）、二酸化窒素（ＮＯ_２）、アンモニア（ＮＨ_３）、窒素（Ｎ_２）、ヒドラジン（Ｎ_２Ｈ_４）、アミン、ジアミン、一酸化炭素（ＣＯ）、二酸化炭素（ＣＯ_２）、Ｃ_１～Ｃ_１２の飽和または不飽和炭化水素、水素（Ｈ_２）、アルゴン（Ａｒ）、およびヘリウム（Ｈｅ）から選択される何れか一つまたは二つ以上のものであってもよい。

【0026】

一実施形態に係る前記製造方法は、
ｃ）ｂ）ステップの後に、チャンバー内に反応ガスを注入するステップをさらに含んでもよく、前記ｂ）およびｃ）ステップを一周期とし、前記周期を繰り返し行ってもよい。

【0027】

本発明は、モリブデンの含量が７０％以上であるモリブデン含有薄膜を提供する。

【発明の効果】

【0028】

本発明に係るモリブデン化合物は、より向上した熱安定性、高い揮発性、および向上した蒸気圧を有することで、均一で且つ安定した蒸着速度を示し、高い信頼度を有する薄膜を形成することができる。

【0029】

本発明に係るモリブデン化合物の製造方法は、温和な条件および単純な工程により、産業的に容易にモリブデン化合物を高収率および高純度で製造することができる。

【0030】

本発明に係るモリブデン含有薄膜の製造方法は、原子層蒸着法（ＡＬＤ）および化学気相蒸着法（ＣＶＤ）などにより、高い膜均一性および良好なドープ調整性を有することができる。さらに、前記製造方法は、立体的な半導体装置に対する均一なステップカバレッジ（ｃｏｎｆｏｒｍａｌ ｓｔｅｐ ｃｏｖｅｒａｇｅ）を提供することができる。

【0031】

本発明に係るモリブデン含有薄膜は、一周期当たりに１．３６Å以上の高い蒸着速度で蒸着され、モリブデンの含量が７０％以上である。

【図面の簡単な説明】

【0032】

【図1】実施例３のモリブデン含有薄膜の走査型電子顕微鏡の測定結果を示した写真である。

【発明を実施するための形態】

【0033】

本発明は、モリブデン化合物、その製造方法、それを含むモリブデン含有薄膜蒸着用組成物、およびそれを用いた薄膜の製造方法を提供する。

【0034】

本発明で用いられる単数の形態は、文脈で特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図する。

【0035】

本発明に記載の「含む」は、「備える」、「含有する」、「有する」、または「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型記載であり、追加で挙げられていない要素、材料、または工程を排除しない。

【0036】

本発明に記載の「アルキル」は、直鎖または分岐の形態を何れも含み、１～１０個の炭素原子、好ましくは１～６個の炭素原子であってもよい。また、さらに他の態様において、アルキルは、１～４個の炭素原子を有してもよい。

【0037】

本発明に記載の「シクロアルキル」は、３～１０個の炭素原子を有する非芳香族の単環式（ｍｏｎｏｃｙｃｌｉｃ）または多環式（ｍｕｌｔｉｃｙｃｌｉｃ）の環系を意味し、３～６員の環であってもよく、環内に不飽和結合を有してももよい。

【0038】

本発明に記載の「アルキレン」および「シクロアルキレン」は、「アルキル」および「シクロアルキル」で一つの水素を除去することで誘導された２価の有機ラジカルを意味し、ここで、アルキルおよびシクロアルキルは上記の定義のとおりである。

【0039】

本発明に記載の「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。

【0040】

本発明に記載の「ハロアルキル」は、それぞれ一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味する。例えば、ハロアルキルは、－ＣＦ_３、－ＣＨＦ_２、－ＣＨ_２Ｆ、－ＣＢｒ_３、－ＣＨＢｒ_２、－ＣＨ_２Ｂｒ、－ＣＣｌ_３、－ＣＨＣｌ_２、－ＣＨ_２ＣＩ、－ＣＨＩ_２、－ＣＨ_２Ｉ、－ＣＨ_２－ＣＦ_３、－ＣＨ_２－ＣＨＦ_２、－ＣＨ_２－ＣＨ_２Ｆ、－ＣＨ_２－ＣＢｒ_３、－ＣＨ_２－ＣＨＢｒ_２、－ＣＨ_２－ＣＨ_２Ｂｒ、－ＣＨ_２－ＣＣｌ_３、－ＣＨ_２－ＣＨＣｌ_２、－ＣＨ_２－ＣＨ_２ＣＩ、－ＣＨ_２－ＣＣＩ_３、－ＣＨ_２－ＣＨＩ_２、－ＣＨ_２－ＣＨ_２Ｉ、およびこれと類似のものを含む。ここで、アルキルおよびハロゲンは、上記の定義のとおりである。

【0041】

本発明に記載の「アルコキシ」は、－ＯＣＨ_３、－ＯＣＨ_２ＣＨ_３、－Ｏ（ＣＨ_２）_２ＣＨ_３、－Ｏ（ＣＨ_２）_３ＣＨ_３、－Ｏ（ＣＨ_２）_４ＣＨ_３、－Ｏ（ＣＨ_２）_５ＣＨ_３、およびこれと類似のものを含む－Ｏ－（アルキル）を意味し、ここで、アルキルは上記の定義のとおりである。

【0042】

本発明に記載の「アリール」は、６～２０の環原子を含有する炭素環芳香族基を意味する。代表例として、フェニル、トリル（ｔｏｌｙｌ）、キシリル（ｘｙｌｙｌ）、ナフチル、テトラヒドロナフチル、アントラセニル（ａｎｔｈｒａｃｅｎｙｌ）、フルオレニル（ｆｌｕｏｒｅｎｙｌ）、インデニル（ｉｎｄｅｎｙｌ）、アズレニル（ａｚｕｌｅｎｙｌ）などを含むが、これらに限定されるものではない。

【0043】

本発明に記載の「アリールアルキル」は、それぞれ一つ以上の水素原子がアリールで置換されたアルキル基を意味する。ここで、アリールおよびアルキルは上記の定義のとおりである。例えば、アリールアルキルは、ベンジル、フェネチル、フェニルビニルなどを含むが、これに限定されるものではない。

【0044】

本発明に記載のアルキル、アルコキシなどに記載されている炭素数は、置換基の炭素数を含まないものであり、一例として、Ｃ１－Ｃ１０アルキルは、アルキルの置換基の炭素数が含まれていない炭素数１～１０のアルキルを意味する。

【0045】

本発明に記載の「置換された」（ｓｕｂｓｔｉｔｕｔｅｄ）は、置換される部分（例えば、アルキル、アリール、またはシクロアルキル）の水素原子が置換基で代替されることを意味する。

【0046】

以下、本発明について具体的に説明する。この際、用いられる技術用語および科学用語において、別に定義しない限り、この発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明で本発明の要旨を不明瞭にする可能性のある公知機能および構成についての説明は省略する。

【0047】

本発明は、下記化学式１で表されるモリブデン化合物を提供する。

【0048】

【化7】

［前記化学式１中、
Ｌは、Ｃ１－Ｃ１０アルキレンまたはＣ３－Ｃ１０シクロアルキレンであり、前記Ｌのアルキレンおよびシクロアルキレンは、Ｃ１－Ｃ１０アルキルでさらに置換されてもよく、
Ｒ_１～Ｒ_４は、互いに独立して、水素またはＣ１－Ｃ７アルキルであり、
Ｒ_５は、水素、Ｃ１－Ｃ１０アルキル、Ｃ６－Ｃ１２アリール、Ｃ６－Ｃ１２アリールＣ１－Ｃ１０アルキル、またはＣ１－Ｃ１０アルコキシであり、
Ｙは、－ＮＲ_１１Ｒ_１２、－ＯＲ_１３、または－ＳＲ_１４であり、
Ｒ_１１～Ｒ_１４は、互いに独立して、Ｃ１－Ｃ１０アルキル、ハロＣ１－Ｃ１０アルキル、Ｃ３－Ｃ１０シクロアルキル、Ｃ６－Ｃ１２アリール、Ｃ６－Ｃ１２アリールＣ１－Ｃ１０アルキルであるか、前記Ｒ_１１とＲ_１２は連結されて環を形成してもよい。］

【0049】

本発明に係る前記化学式１で表されるモリブデン化合物は、優れた熱安定性、高い揮発性、および向上した蒸気圧を示し、これを採用すると、高い信頼度を有するモリブデン含有薄膜を得ることができる。

【0050】

一実施形態に係る前記化学式１中、Ｌは、Ｃ１－Ｃ６アルキレンであってもよく、前記ＬのアルキレンはＣ１－Ｃ６アルキルでさらに置換されてもよく、Ｒ_１～Ｒ_４は、互いに独立して、水素またはＣ１－Ｃ４アルキルであり、Ｒ_５は、水素またはＣ１－Ｃ６アルキルであってもよい。

【0051】

また、Ｙは、－ＮＲ_１１Ｒ_１２、－ＯＲ_１３、または－ＳＲ_１４であってもよく、前記Ｒ_１１～Ｒ_１４は、互いに独立して、Ｃ１－Ｃ６アルキル、ハロＣ１－Ｃ６アルキル、Ｃ３－Ｃ６シクロアルキル、Ｃ６－Ｃ１２アリール、またはＣ６－Ｃ１２アリールＣ１－Ｃ６アルキルであるか、前記Ｒ_１１とＲ_１２はＣ２－Ｃ６アルキレンで連結されて脂環族環を形成してもよい。

【0052】

好ましい一実施形態に係るモリブデン化合物は、下記化学式２で表されるものであってもよい。

【0053】

【化8】

［前記化学式２中、
Ｒ_１～Ｒ_４は、互いに独立して、水素またはＣ１－Ｃ４アルキルであり、
Ｒ_５は、水素またはＣ１－Ｃ４アルキルであり、
Ｙは、－ＮＲ_１１Ｒ_１２、－ＯＲ_１３、または－ＳＲ_１４であり、
Ｒ_１１～Ｒ_１４は、互いに独立して、Ｃ１－Ｃ４アルキル、ハロＣ１－Ｃ４アルキル、またはＣ３－Ｃ６シクロアルキルであるか、前記Ｒ_１１とＲ_１２はＣ２－Ｃ６アルキレンで連結されて脂環族環を形成してもよく、
ｍは、１～４の整数である。］

【0054】

より好ましい一実施形態に係るモリブデン化合物は、下記化学式２－１で表されるものであってもよい。

【0055】

【化9】

［前記化学式２－１中、
Ｒ_１～Ｒ_４は、互いに独立して、水素またはＣ１－Ｃ４アルキルであり、
Ｒ_５は、水素またはＣ１－Ｃ４アルキルであり、
Ｙは、－ＮＲ_１１Ｒ_１２、－ＯＲ_１３、または－ＳＲ_１４であり、
Ｒ_１１～Ｒ_１４は、互いに独立して、Ｃ１－Ｃ４アルキルまたはハロＣ１－Ｃ４アルキルであるか、前記Ｒ_１１とＲ_１２はＣ２－Ｃ６アルキレンで連結されて脂環族環を形成してもよい。］

【0056】

一実施形態において、前記モリブデン化合物は、下記化合物から選択されるものであってもよいが、これに限定されるものではない。

【化10】

【0057】

本発明は、モリブデン化合物を製造する方法を提供し、一実施形態に係る下記化学式１のモリブデン化合物の製造方法は、下記化学式３で表されるモリブデン化合物と、前記モリブデン化合物と配位可能なリガンドとを反応させ、中間体を製造するステップと、前記中間体と、下記化学式４で表されるシクロペンタジエン系リガンドとを反応させ、下記化学式１のモリブデン化合物を製造するステップと、を含んでもよい。

【0058】

【化11】

【0059】

【化12】

【0060】

【化13】

［前記化学式１および４中、
Ｌは、Ｃ１－Ｃ１０アルキレンまたはＣ３－Ｃ１０シクロアルキレンであり、前記Ｌのアルキレンおよびシクロアルキレンは、Ｃ１－Ｃ１０アルキルでさらに置換されてもよく、
Ｒ_１～Ｒ_５は、互いに独立して、水素またはＣ１－Ｃ７アルキルであり、
Ｙは、－ＮＲ_１１Ｒ_１２、－ＯＲ_１３、または－ＳＲ_１４であり、
Ｒ_１１～Ｒ_１４は、互いに独立して、Ｃ１－Ｃ１０アルキル、ハロＣ１－Ｃ１０アルキル、Ｃ３－Ｃ１０シクロアルキル、Ｃ６－Ｃ１２アリール、Ｃ６－Ｃ１２アリールＣ１－Ｃ１０アルキルであるか、前記Ｒ_１１とＲ_１２は連結されて環を形成してもよい。］

【0061】

本発明の一実施形態に係るモリブデン化合物の製造方法は、温和な条件で進行され、単純な工程により容易に大量生産可能な方法である。

【0062】

本発明の一実施形態に係るモリブデン化合物と配位可能なリガンドは、当業者が認識可能なリガンドであってもよいが、具体的に、前記化学式３のモリブデン化合物において、３個のカルボニル基に代えて配位されることができる化合物であってもよい。より具体的に、１，３，５－トリメチルヘキサヒドロ－１，３，５－トリアジン（トリメチルトリアザシクロヘキサン）、およびアセトニトリルから選択される化合物であってもよい。

【0063】

一実施形態に係る製造方法で用いられる溶媒としては、通常の有機溶媒であれば何れも可能であるが、ヘキサン、ペンタン、ジクロロメタン（ＤＣＭ）、ジクロロエタン（ＤＣＥ）、トルエン（Ｔｏｌｕｅｎｅ）、アセトニトリル（ＭｅＣＮ）、ニトロメタン（Ｎｉｔｒｏｍｅｔｈａｎ）、テトラヒドロフラン（ＴＨＦ）、Ｎ，Ｎ－ジメチルホルムアミド（ＤＭＦ）、およびＮ，Ｎ－ジメチルアセトアミド（ＤＭＡ）からなる群から選択される１種以上を用いることが好ましい。

【0064】

反応温度は、通常の有機合成で用いられる温度で可能であるが、反応物質および出発物質の量によって変わり得る。好ましくは２０℃～２００℃で行われてもよく、具体的に、５０℃～１５０℃で行われてもよく、より具体的には、７０℃～１２０℃で行われてもよい。

【0065】

反応は、出発物質が完全に消耗されたことをＮＭＲなどにより確認してから終結させる。その後、抽出過程、減圧下で溶媒を蒸留させる過程、およびカラムクロマトグラフィーなどの通常の方法により目的物を分離精製する過程を行ってもよい。

【0066】

本発明の一実施形態に係るモリブデン化合物に配位されたシクロペンタジエン系リガンドは、共鳴構造によりモリブデンに安定に配位結合され、モリブデン化合物の熱安定性が非常に向上する。これにより、本発明の一実施形態に係るモリブデン化合物を採用して製造された、モリブデン（Ｍｏ）、モリブデン窒化物（ＭｏＮｘ）、またはモリブデン酸化物（ＭｏＯｘ）から構成される薄膜を高い信頼度で形成することができる。

【0067】

さらに、前記シクロペンタジエン系リガンドは、アミノアルキル、アルコキシアルキル、またはアルキルスルフィドが結合されることで、蒸着工程の時に、モリブデン化合物の熱安定性がより向上することができる。

【0068】

本発明は、本発明の一実施形態に係るモリブデン化合物を含むモリブデン含有薄膜蒸着用組成物を提供する。

【0069】

また、本発明は、前記モリブデン含有薄膜蒸着用組成物を用いたモリブデン含有薄膜の製造方法を提供する。

【0070】

前記モリブデン含有薄膜の製造方法の蒸着は、当業界で用いられる通常の方法、具体的には、原子層蒸着法（ＡＬＤ）、化学気相蒸着法（ＣＶＤ）、有機金属化学気相蒸着法（ＭＯＣＶＤ）、低圧化学気相蒸着法（ＬＰＣＶＤ）、プラズマ強化化学気相蒸着法（ＰＥＣＶＤ）、またはプラズマ強化原子層蒸着法（ＰＥＡＬＤ）であってもよい。

【0071】

より好ましく、一実施形態に係る前記モリブデン含有薄膜の製造方法は、原子層蒸着法（ＡＬＤ）、化学気相蒸着法（ＣＶＤ）、有機金属化学気相蒸着法（ＭＯＣＶＤ）、またはプラズマ強化原子層蒸着法（ＰＥＡＬＤ）であってもよい。

【0072】

本発明の一実施形態に係る前記モリブデン含有薄膜の製造方法は、
ａ）チャンバー内に取り付けられた基板を昇温させるステップと、
ｂ）前記チャンバー内に反応ガスと前記モリブデン含有薄膜蒸着用組成物を注入し、モリブデン含有薄膜を製造するステップと、を含んでもよい。

【0073】

一実施形態において、目的とする薄膜の構造または熱的特性に応じて蒸着条件が調節されてもよく、一実施形態に係る蒸着条件としては、モリブデン含有薄膜蒸着用組成物の投入流量、反応ガスおよび移送ガスの投入流量、圧力、ＲＦパワーなどが挙げられる。

【0074】

かかる蒸着条件の非限定的な一例としては、モリブデン含有薄膜蒸着用組成物の投入流量は１～１０００ｓｃｃｍ、移送ガスは１～５０００ｓｃｃｍ、反応ガスの流量は１０～５０００ｓｃｃｍ、圧力は０．１～１０ｔｏｒｒ、ＲＦパワーは１０～１０００Ｗの範囲で調節されてもよいが、これに限定されるものではない。

【0075】

一実施形態において、前記ａ）ステップで、チャンバー内に取り付けられた基板は２００℃～７００℃に昇温し、具体的に、５００℃～６００℃に昇温してもよいが、これに限定されるものではない。

【0076】

一実施形態に係る基板は、Ｓｉ、Ｇｅ、ＳｉＧｅ、ＧａＰ、ＧａＡｓ、ＳｉＣ、ＳｉＧｅＣ、ＩｎＡｓ、およびＩｎＰの一つ以上の半導体材料を含む基板、ＳＯＩ（Ｓｉｌｉｃｏｎ Ｏｎ Ｉｎｓｕｌａｔｏｒ）基板、石英基板、またはディスプレイ用ガラス基板、ポリイミド（ｐｏｌｙｉｍｉｄｅ）、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ、ＰｏｌｙＥｔｈｙｌｅｎｅ Ｔｅｒｅｐｈｔｈａｌａｔｅ）、ポリエチレンナフタレート（ＰＥＮ、ＰｏｌｙＥｔｈｙｌｅｎｅ Ｎａｐｈｔｈａｌａｔｅ）、ポリメチルメタクリレート（ＰＭＭＡ、Ｐｏｌｙ Ｍｅｔｈｙｌ ＭｅｔｈＡｃｒｙｌａｔｅ）、ポリカーボネート（ＰＣ、ＰｏｌｙＣａｒｂｏｎａｔｅ）、ポリエーテルスルホン（ＰＥＳ）、ポリエステル（Ｐｏｌｙｅｓｔｅｒ）などの可撓性プラスチック基板、であってもよいが、これらに限定されるものではない。

【0077】

一実施形態において、前記反応ガスは限定されるものではないが、酸素（Ｏ_２）、オゾン（Ｏ_３）、蒸留水（Ｈ_２Ｏ）、過酸化水素（Ｈ_２Ｏ_２）、一酸化窒素（ＮＯ）、亜酸化窒素（Ｎ_２Ｏ）、二酸化窒素（ＮＯ_２）、アンモニア（ＮＨ_３）、窒素（Ｎ_２）、ヒドラジン（Ｎ_２Ｈ_４）、アミン、ジアミン、一酸化炭素（ＣＯ）、二酸化炭素（ＣＯ_２）、Ｃ_１～Ｃ_１２の飽和または不飽和炭化水素、水素（Ｈ_２）、アルゴン（Ａｒ）、およびヘリウム（Ｈｅ）から選択される何れか一つまたは二つ以上の混合気体であってもよい。

【0078】

具体的に、前記反応ガスは、酸素（Ｏ_２）、過酸化水素（Ｈ_２Ｏ_２）、亜酸化窒素（Ｎ_２Ｏ）、窒素（Ｎ_２）、および水素（Ｈ_２）から選択される何れか一つまたは二つ以上であってもよく、より詳細は、水素（Ｈ_２）であってもよいが、これに限定されない。

【0079】

一実施形態において、前記蒸着するステップにおける移送ガスは、不活性ガスであって、アルゴン（Ａｒ）、ヘリウム（Ｈｅ）、および窒素（Ｎ_２）から選択される何れか一つまたは二つ以上であってもよく、具体的に、窒素（Ｎ_２）であってもよいが、これらに限定されない。

【0080】

一実施形態に係る前記モリブデン含有薄膜の製造方法は、
ｃ）ｂ）ステップの後に、チャンバー内に反応ガスを注入するステップをさらに含んでもよく、前記ｂ）およびｃ）ステップを一周期とし、前記周期を繰り返し行ってもよい。

【0081】

一実施形態において、前記チャンバー内に移送ガスと前記モリブデン含有薄膜蒸着用組成物を注入した後、基板に吸着されていないモリブデン化合物またはその組成物を、前記移送ガスを用いて除去するパージ（ｐｕｒｇｅ）ステップを行ってもよい。

【0082】

一実施形態において、前記チャンバー内に反応ガスを注入した後、反応副産物および残留反応ガスを、前記移送ガスを用いて除去するパージ（ｐｕｒｇｅ）ステップを行ってもよい。

【0083】

一実施形態において、前記モリブデン含有薄膜蒸着用組成物の注入ステップ、パージ（ｐｕｒｇｅ）、反応ガスの注入ステップ、およびパージ（ｐｕｒｇｅ）の工程を１周期とし、繰り返し行ってもよい。

【0084】

一実施形態に係る前記モリブデン含有薄膜の製造方法により製造された薄膜は、均一で、且つ安定した蒸着速度を示し、大きいアスペクト比を有する構造体に対する均一なステップカバレッジ（ｃｏｎｆｏｒｍａｌ ｓｔｅｐ ｃｏｖｅｒａｇｅ）を提供することができる。

【0085】

本発明に係るモリブデン含有薄膜は、モリブデンの含量が７０％以上であり、具体的に、７２％以上であってもよく、一周期当たりに１．３６Åの高い蒸着速度で製造される。したがって、本発明のモリブデン含有薄膜は、多様な半導体分野の誘電膜として有用に用いられることができる。

【0086】

以下、具体的な実施例を挙げて、本発明に係るモリブデン化合物の製造方法およびそれを採用した薄膜の製造方法についてより詳細に説明する。但し、下記実施例は、本発明を詳細に説明するための一つの参照にすぎず、本発明がこれらに限定されるものではなく、多様な形態で実現可能である。また、本発明の説明で用いられる用語は、特定の実施例を効果的に記述するためのものにすぎず、本発明を制限することを意図しない。

【0087】

また、別に断らない限り、全ての実施例は、不活性雰囲気、例えば、精製された窒素（Ｎ_２）またはアルゴン（Ａｒ）下で、当業界で通常知られている空気－敏感性物質を扱う技術を用いて行われた。

【0088】

［実施例１］（（ＣＨ_３）_２Ｎ（ＣＨ_２）_２Ｃｐ）ＭｏＨ（ＣＯ）_３の製造
還流装置（ｒｅｆｌｕｘ ｃｏｎｄｅｎｓｅｒ）が備えられた反応器に、Ｍｏ（ＣＯ）_６１００ｇ（０．３８ｍｏｌ）およびトルエン３００ｍＬを投入して撹拌した。前記反応器に１，３，５－トリメチルヘキサヒドロ－１，３，５－トリアジン（トリメチルトリアザシクロヘキサン、ＴＭＴＡＣＨ））１２８．７ｇ（１．０ｍｏｌ）をゆっくりと投入した後、１２０℃で１０時間以上撹拌した。外部オイルバブラーでＣＯガスの発生がそれ以上観察されないまで反応を続けさせた。反応器の温度を１００℃に下げた状態で濾過を行った後、トルエン５０ｍＬで３回洗浄し、真空乾燥して、（ＴＭＴＡＣＨ）Ｍｏ（ＣＯ）_３の黄色粉末を８４ｇ（収率：７２％）得た。

【0089】

還流装置（ｒｅｆｌｕｘ ｃｏｎｄｅｎｓｅｒ）が備えられた反応器に、上記で得た（ＴＭＴＡＣＨ）Ｍｏ（ＣＯ）_３８４ｇ（０．２７ｍｏｌ）およびＴＨＦ２００ｍＬを投入して撹拌した。前記反応器に（２－ジメチルアミノエチル）シクロペンタジエン３７ｇ（０．２７ｍｏｌ）をゆっくりと投入した後、７０℃で１０時間以上撹拌した。黄色の混合物が全て濃い赤色に変わったことを確認した後、溶媒を減圧蒸発させた。残留物をヘキサン３００ｍＬで２回抽出した。抽出された濃い赤色溶液を減圧蒸発させ、濃い赤色の液体を得た。得られたものを９２℃、０．３Ｔｏｒｒで蒸留し、（（ＣＨ_３）_２Ｎ（ＣＨ_２）_２Ｃｐ）ＭｏＨ（ＣＯ）_３を約４０ｇ（収率：Ｍｏ（ＣＯ）_６から４５％）得た。
^１Ｈ ＮＭＲ（４００ ＭＨｚ， Ｃ６Ｄ６） δ ４．８ － ４．９５ （ｄ， ４Ｈ）， ２．０ － ２．２ （ｍ， ４Ｈ）， ２．０ （ｓ， ６Ｈ）， １．６－１．８ （ｍ， １Ｈ）

【0090】

［実施例２］（（ＣＨ_３）Ｏ（ＣＨ_２）_２Ｃｐ）ＭｏＨ（ＣＯ）_３の製造
還流装置（ｒｅｆｌｕｘ ｃｏｎｄｅｎｓｅｒ）が備えられた反応器に、上記で得た（ＴＭＴＡＣＨ）Ｍｏ（ＣＯ）_３１００ｇ（０．３２ｍｏｌ）およびＴＨＦ２００ｍＬを投入して撹拌した。前記反応器に（２－メトキシエチル）シクロペンタジエン４０．１７ｇ（０．３２ｍｏｌ）をゆっくりと投入した後、７０℃で１０時間以上撹拌した。黄色の混合物が全て濃い赤色に変わったことを確認した後、溶媒を減圧蒸発させた。残留物をヘキサン３００ｍＬで２回抽出した。抽出された濃い赤色溶液を減圧蒸発させ、濃い赤色の液体を得た。得られたものを８５℃、０．２５Ｔｏｒｒで蒸留し、（（ＣＨ_３）Ｏ（ＣＨ_２）_２Ｃｐ）ＭｏＨ（ＣＯ）_３を約４５ｇ（収率：Ｍｏ（ＣＯ）_６から３４．６％）得た。
^１Ｈ ＮＭＲ（４００ ＭＨｚ， Ｃ６Ｄ６） δ ４．８ － ４．９５ （ｄ， ４Ｈ）， ３．１０ （ｍ， ２Ｈ）， ３．０１ （ｓ， ３Ｈ）， ２．３４ （ｍ， ２Ｈ）， １．６－１．８ （ｍ， １Ｈ）

【0091】

［実施例３］モリブデン含有薄膜の製造
前記実施例１に係るモリブデン化合物を使用し、反応ガスとして水素（Ｈ_２）を用いて、原子層蒸着法（Ａｔｏｍｉｃ ｌａｙｅｒ ｄｅｐｏｓｉｔｉｏｎ）によりモリブデン含有薄膜を製造した。

【0092】

シリコン酸化膜と窒化チタン膜を順に形成した基板を５８０℃に維持させた状態で、ステンレス鋼製のバブラー容器に１００℃で充填された、前記実施例１に係るモリブデン化合物を５０ｓｃｃｍの窒素（Ｎ_２）とともに１秒間移送させることで、基板に吸着させた。その後、２０００ｓｃｃｍの窒素（Ｎ_２）を用いて、３秒間、吸着されていないモリブデン化合物を除去するパージ（ｐｕｒｇｅ）ステップを行った。

【0093】

次に、２０００ｓｃｃｍの水素（Ｈ_２）を５秒間供給し、前記吸着されたモリブデン化合物を反応させることで、モリブデン含有薄膜を形成させた。その後、２０００ｓｃｃｍの窒素（Ｎ_２）を用いて、３秒間、反応副産物および残留反応ガスを除去するパージ（ｐｕｒｇｅ）ステップを行った。

【0094】

上記のような工程を１周期とし、５００周期を繰り返すことで、モリブデン含有薄膜を形成した。

【0095】

形成されたモリブデン含有薄膜の厚さを走査型電子顕微鏡を用いて測定した結果を図１に示した。モリブデン含有薄膜の厚さは６８０Åであり、蒸着速度は周期当たりに１．３６Åと確認された。

【0096】

また、Ｘ線光電子分析の結果、モリブデンが約７２％含有されているモリブデン含有薄膜を確認した。

【0097】

このことから、本発明の一実施形態に係るモリブデン化合物は、より向上した熱安定性、高い揮発性、および向上した蒸気圧を有することで、それを用いて薄膜を製造した際に、均一で且つ安定した蒸着速度を示し、優れた蒸着特性を有する薄膜を製造することができる。

【0098】

以上のとおり、本発明では特定の事項と限定された実施例および比較例により説明されたが、これは、本発明のより全般的な理解のために提供されるものにすぎず、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。

【0099】

したがって、本発明の思想は上述の実施例に限定されて決まってはならず、添付の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等なもの、または等価的変形があるものなどは、何れも本発明の思想の範疇に属するといえる。

【図1】

【国際調査報告】