(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】水性製剤においてポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/62 20210101AFI20241121BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20241121BHJP
G01N 30/72 20060101ALI20241121BHJP
G01N 30/86 20060101ALI20241121BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20241121BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241121BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241121BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241121BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20241121BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20241121BHJP
C12N 1/15 20060101ALN20241121BHJP
C12N 1/19 20060101ALN20241121BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20241121BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20241121BHJP
C07K 1/14 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
G01N27/62 V
G01N30/88 C
G01N30/72 C
G01N30/86 J
G01N33/15 Z
G01N27/62 X
A61K9/08
A61K47/26
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K38/02
C12P21/00 A
C12N1/15
C12N1/19
C12N5/10
C07K16/00
C07K1/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534709
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2022086583
(87)【国際公開番号】W WO2023117858
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ツォイン アリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ハルバッハ フェリクス
【テーマコード(参考)】
2G041
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041EA12
2G041FA09
2G041FA12
2G041HA01
2G041LA09
4B064AG01
4B064AG27
4B064CA05
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4H045AA20
4H045AA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
ポリソルベート(20)の酸化分解に対するマーカー物質である化合物ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積が、参照サンプルを調査されるサンプルと比較することにより決定される、液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法を使用して、ポリソルベート(20)を各々含有する、水性製剤又はいくつかの水性製剤、特に生物医薬製剤においてポリソルベート(20)の酸化分解の度合いを決定するための方法を提供する。調査中のサンプルに対する相対的なピーク面積は、サンプルにおいてポリソルベート(20)の酸化分解の度合いに比例する。方法はまた、2種以上の水性製剤のポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を互いに比較することにより参照サンプルを使用せずに実行することもできる。さらに、とりわけポリソルベート(20)を使用して組換えタンパク質を投与に好適な薬学的に許容される水性製剤に製剤化するステップ、そこから組換えタンパク質及びポリソルベート(20)を含有する少なくとも1つのサンプルを得るステップ、並びにポリソルベート(20)の酸化分解の度合いを検出するステップを含む、組換えタンパク質を生成するプロセスを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリソルベート20を含有する水性製剤においてポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定するための方法であって、以下のステップ:
参照サンプルとして機能する、検査される水性製剤の第1のサンプルを準備するステップ1;
検査される水性製剤の第2のサンプル及び任意のさらなるサンプルを準備するステップ2;
ステップ1の参照サンプル、並びにステップ2の第2のサンプル及び任意のさらなる各サンプルから、それぞれ、ポリエチレングリコール-6-ラウレートを分離し、及びポリソルベート20の酸化分解の酸化マーカーであるポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を決定するための液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法を使用し、
参照サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積に対して、第2のサンプル及び任意のさらなる各サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積に基づいてポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積を決定するステップ3であって、相対的なピーク面積が、ポリソルベート20の酸化分解の度合いに比例する、ステップ3;並びに
それぞれのサンプルの相対的なピーク面積に基づいて第2のサンプル及び任意のさらなる各サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートの量を定量化してもよいステップ4
を含む方法。
【請求項2】
準備した参照サンプルがポリソルベート20を含有する水溶液であり、ポリソルベート20の含有量が検査される水性製剤と同じであることを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ2で、ポリソルベート20を含有する水性製剤の2つ、3つ又はそれ以上のさらなるサンプルが、同じ長さ又は異なる長さであり得る連続する時間間隔T1、T2、T3....で採取されることを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ3の第2のサンプル及び任意のさらなる各サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積が、
- 得られたピーク面積の差を算出することであって、参照サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を、それぞれ、第2のサンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積及び任意のさらなるサンプルの各々のポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積から減算して、算出すること;
又は
- 得られたピーク面積を正規化することであって、参照サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を100%に設定し、これに基づいて、第2のサンプル及び任意のさらなるサンプルの各々のポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積をそれぞれ算出して、正規化すること
により決定されることを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ポリソルベート20を各々含有するいくつかの水性製剤において、特に各水性製剤が同じ量のポリソルベート20を含有するいくつかの水性製剤において、ポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定するための方法であって、以下のステップ:
検査される各水性製剤のサンプルを準備するステップ1a;
ポリエチレングリコール-6-ラウレートを分離し、ステップ1aの各サンプルから、ポリソルベート20の酸化分解の酸化マーカーであるポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を決定するための液体クロマトグラフィー及び質量分析法をベースにした方法を使用し、
サンプルのピーク面積を互いに比較するステップ2aであって、サンプルのピーク面積の差が、サンプル各々においてポリソルベート20の酸化分解の度合いに比例する、ステップ2a;並びに
それぞれのサンプルの得られたピーク面積に基づいて各サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートの量を定量化してもよいステップ3a
を含む方法。
【請求項6】
各サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積が、
- 得られたピーク面積の差を算出することであって、参照サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積をステップ2aの各サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積から減算して、算出すること;
又は
- 得られたピーク面積を正規化することであって、参照サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を100%に設定し、ステップ2aの各サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積をこれに基づいて算出して、正規化すること
により参照サンプルに対して決定されることを特徴とする、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
以下の条件:
- 極性溶媒が、液体クロマトグラフィーを実行する前に検査されるポリソルベート含有サンプルに添加され、特に液体クロマトグラフィーで使用される溶媒であること;
- 液体クロマトグラフィーが、分離クロマトグラフィーとして使用され、特にカラムクロマトグラフィーの形態で、より具体的に逆相クロマトグラフィーとして使用されること;
- 液体クロマトグラフィーが高性能液体クロマトグラフィーとして使用され、勾配溶出が使用され得ること;
- 液体クロマトグラフィーが超高性能液体クロマトグラフィーとして使用され、勾配溶出が使用され得ること;
- 質量分析法が、特に構造解明の目的で高分解能質量分析法であるように選択されること;
- ポリエチレングリコール-6-ラウレートが、疎水性を使用して液体クロマトグラフィーにより分離されること;及び/又は
- ステップ4若しくはステップ3aの定量化が、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの標準溶液を使用して外部較正で実施されること
の1つ、2つ又はそれ以上を満たすことを特徴とする、
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法のデータ評価のために、抽出イオンクロマトグラムが、約487amuの範囲を含み、特に486.5~487.5amuの範囲を含むか、又はこの範囲からなる質量荷電比から作成されることを特徴とする、
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ4若しくはステップ3に続く追加のステップ5、又はステップ4’若しくはステップ3’に続く追加のステップ5’、又はステップ3a若しくはステップ2aに続く追加のステップ4aを実施し、その各々が、サンプル中でポリソルベート20が既にどの程度酸化分解されているかを、ポリエチレングリコール-6-ラウレートレベルとポリソルベート20レベルとの反比例関係に基づいて推定することを含むことを特徴とする、
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
水性生物医薬製剤が、水性製剤として使用されることを特徴とする、
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
サンプルに存在するポリソルベート20が、
- 薬学的使用、特に薬物での使用を意図していること;及び/又は
- 非経口投与に好適であること
を特徴とする、
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
水性製剤が、1種又は複数のタンパク質を含有し、タンパク質が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体、単鎖抗体若しくはその抗体フラグメント、例えばFv、scFv、Fab、Fab’、scFab、F(ab’)2、Fab2、Fc及びFc’フラグメント、重鎖及び軽鎖の免疫グロブリン鎖並びにこれらの定常、可変若しくは超可変領域並びにFv及びFdフラグメント、二重特異性抗体、三重特異性抗体、scFv-Fc、ミニボディ、若しくは単一ドメイン抗体、又はその混合物から選択され得、
タンパク質が、疾患又は障害の予防又は処置に使用される治療用タンパク質から選択され得ることを特徴とする、
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
組換えタンパク質を生成するプロセスであって、以下のステップ:
細胞培養において組換えタンパク質を発現する真核細胞を細胞培養で培養するステップa);
組換えタンパク質を採取するステップb);
水性製剤を使用する組換えタンパク質を精製するステップc);
ポリソルベート20を使用して、組換えタンパク質を、投与に好適な薬学的に許容される水性製剤に製剤化するステップd);及び
ステップd)の薬学的に許容される水性製剤の少なくとも1つのサンプルを得るステップe);
を含み、
請求項1~9のいずれか1項に記載のポリソルベート20の酸化分解の度合いを、ステップe)で得られたサンプルで検出するための方法を実施することをさらに含み、ステップd)からのサンプルが、原薬サンプル又は医薬品サンプルであり得る、
プロセス。
【請求項14】
ポリソルベート20をそれぞれ含有する水性製剤又はいくつかの水性製剤においてポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定するための方法、特に請求項1~12のいずれか1項に記載の方法における酸化マーカーとしてのポリエチレングリコール-6-ラウレートの使用。
【請求項15】
水性製剤においてポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定するための、ポリソルベート20をそれぞれ含有する水性製剤又はいくつかの水性製剤の開発、製造、貯蔵寿命、又は貯蔵期間中の安定性試験としての請求項1~12のいずれか1項に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性製剤においてポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリソルベート(PS)は、非イオン性界面活性剤の一群を構成し、湿潤化剤又は乳化剤として、例えば化粧品、薬、食品、洗浄剤及び洗剤において広く使用される。その生体適合性及び低毒性により、ポリソルベートが、生物医薬製剤のための最も広く使用される界面活性剤であり、それ自体水溶性ではないタンパク質のような物質を水に可溶化する生物医薬製剤の賦形剤として機能する。特に、これらは、界面張力に対してタンパク質を安定化し、界面により誘導される凝集又は表面吸着を防ぐ。このようにして、これらは、水性製剤中の成分、例えば、タンパク質を安定化する助けとなるので、成分の活性及び有効性を維持する。
ポリソルベートは、可変長のポリ(オキシ)エチレン(POE)鎖に連結するソルビタン又はイソソルビドのコア構造に由来する。これらは、次に脂肪酸によりエステル化し得る。
ポリソルベートの例示的な代表例は、
ポリソルベート20(PS20)又はポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート;
ポリソルベート40(PS40)又はポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート;
ポリソルベート60(PS60)又はポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート;及び
ポリソルベート80(PS80)又はポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート
である。
【0003】
用語「ポリソルベート」に続く数値20、40、60及び80は、分子のポリオキシエチレンソルビタン残基に関連する脂肪酸の種類を表す、すなわち、モノラウレートは20で示され、モノパルミテートは40で示され、モノステアレートは60で示され、モノオレエートは80で示される。用語「ポリオキシエチレン」に続く数値20は、分子に存在するオキシエチレン-(CH2CH2O)-基の総数を指す。市販のポリソルベートは、通常、構造的に関連する分子、例えばエステル化されていないソルビタン及び/又はイソソルビタン-ポリエチレングリコール(PEG)種、モノ、ジ、トリ、テトラエステル、脂肪酸等の混合物からなる。
主要な2種類のポリソルベート、すなわちポリソルベート20(PS20)及びポリソルベート80(PS80)は、生物医薬製剤に最も関連するが、脂肪酸及びポリ(オキシ)エチレン鎖の要素の分布が主に異なる。ポリソルベート40及び60は、食品又は化粧品の産業でより一般的に使用される。
ポリソルベートはいくつかの分解反応を呈するが、これにより多くの分解産物が形成され、機能特性を失い、使用された水性製剤の不安定性を潜在的にもたらす。したがって、ポリソルベートの分解は、水性製剤での粒子形成をもたらし、主要な質の問題及び潜在的なリスク因子であり得る。
【0004】
例えば生物医薬製品で観察されるポリソルベートの分解に対して、2つの主要な分解経路が存在する:典型的に宿主細胞の不純物により触媒され、エステル加水分解を表し、遊離脂肪酸の遊離をもたらす加水分解、並びに、フリーラジカルで開始され、自動酸化とも呼ばれる酸化分解。一般で知られている通り、自動酸化は、所与の部位でのH抽出の反応速度論的特徴が好ましい限り、分子内のいずれの場所でも起こり得る。本文脈では、ポリソルベート20のような複雑な分子に対して、いくつかの異なる分析技術で検出することができる非常に多くの分解産物が、一般に存在し得ることは考慮されなければならない。[1、2]では、例えば、約60種の異なる種が想定される。不飽和脂肪酸、特にオレイン酸の自動酸化が、食品及び油の脂質の酸化におけるその重要性のために数十年間、大規模に研究されているが、酸化ストレス下のポリソルベートの個々の構成要素の実際の分解経路及び安定性についてほとんど知られていない。
【0005】
ポリソルベート20及びポリソルベート80の両方の酸化分解は、既に文献に記載されている。これらの参照文献は、二重結合が存在する不飽和脂肪酸構造に沿うか[1]、又はポリ(オキシ)エチレン鎖構造内[2]のいずれかで生じる酸化分解の機構を記載する目的であり、その両方の因子は、フリーラジカルにより誘導される断片化に感受性がある。
【0006】
ポリソルベート80に対して、第1の経路は、その二重結合を含むオレイン酸の存在により普及している。したがって、分解中に出現し、LC-MS(液体クロマトグラフィー質量分析法)分析により検出することができる異なった下部構造を表す酸化分解により生じる具体的な個々の構成要素は同定される。このような個々の構成要素はまた、酸化マーカーとも呼ばれる。例えば、[1]では、ポリソルベート20及びポリソルベート80の主要な分解産物は、2,2’-アゾビス-2-メチル-プロパンイミドアミド、二塩酸塩(AAPH)により誘導される酸化ストレスで評価される。AAPHは、モデル酸化剤及びフリーラジカル発生器として使用される水溶性アゾ化合物である。見出されるポリソルベート80の酸化性マーカーは、いくつかの構造、例えばヒドロペルオキシ-オレエート(ヒドロペルオキシ-C18:1)、ケト-オレエート(ケト-C18:1)、ヒドロキシル-オレエート(ヒドロキシル-C18:1)、エポキシ-ステアレート(エポキシ-C18:0)、及びオキソ-ノナノエート(オキソ-C9:0)でエステル化したポリ(オキシ)エチレンソルビタンを含み、LC-MSをベースにした検出でその分析を可能にする質量分析法で使用されるそれぞれのイオンの質量荷電比(m/z)を含めて記載される。
【0007】
ポリソルベート20に対して、不飽和脂肪酸の喪失により、ポリソルベートの酸化分解は、マーカー構造として使用することができる新規な構造の出現を必ずしももたらさないポリ(オキシ)エチレン構造内[2]のエーテル結合の断片化を介して主に進行する。したがって、現在の文献は、ポリ(オキシ)エチレン下部構造領域を標的とする液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした分析のためのいずれの酸化性マーカー構造も未だに記載していない。
【0008】
Borisov等[1]によると、4~5のオキシ-エチレン(OE)単位を含むポリ(オキシ)エチレンエステルが、酸化分解の副産物であることが提案される。Kishore等[2]は、1~6のオキシ-エチレン単位を含むポリ(オキシ)エチレンエステルを記載する。Zhang等[3]は、6のEO単位を含むPOE-ラウレートは優勢である混合物である、1~8の酸化エチレン(EO)単位を含むポリ(オキシ)エチレンエステル(POE-ラウレート)の形成を記載するが、これは、L-ヒスチジン及びポリソルベート20が同時に存在する状況で、溶液がO2ガスでさらに飽和された強制的な酸化条件下におけるものであった。しかし、これらの研究のいずれも、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法を介して検出及び分析を可能にする化学構造及びイオンの対応する質量荷電比(m/z比)を提供しない。上述した文献では、全てのポリ(オキシ)エチレン-ラウレート、例えば1~8のオキシ-エチレン単位を有するものは、酸化ストレスから生じ、ストレスを受けた物質として使用されるポリソルベート20から出発することを実証する。これは、典型的に、周囲条件下で水性製剤に移行させることはできず、特に生物医薬製剤に適用することはできない。実際に、これは実施に有効な手法ではない。
【0009】
より重要なことに、分解産物は、実際の状況及び通常の水性製剤の条件からかけ離れている、フリーラジカルを発生するための物質を使用して人工的に生成させた。さらに、例えば日常的な安定化条件の下、例えば天然の生物医薬製剤内の実在性が考慮されなかった。さらに、分解産物は、人工的なラジカル開始剤を使用しないポリソルベートの酸化分解に関連しなかった。加えて、分解産物のいずれも、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法を介してモニタリングを可能にするイオンの質量荷電比(m/z比)に関連していない。
液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした無標識分析に加えて、ポリソルベートの酸化分解は、他の技術を使用して調査されている。例えば、ポリソルベート20に適用された酸化ストレスの副産物として生じた遊離脂肪酸エステルの誘導体化のための2,4-ジニトロフェニルヒドラジンの使用が記載されている[4]一方、逆相クロマトグラフィーに連結した荷電エアロゾル検出を使用する[5]。しかし、これらの技術は、酸化ストレス下、ポリソルベートの個々の分解種を明らかにしていない。
【0010】
しかし、ポリソルベートの分解は、特に生物医薬の開発における主要な課題であり、例えば製品の質を劣化させるか、又は安全性の問題が高まることにより成功する製品開発に対して重要なリスクになり得る。したがって、ポリソルベート分解の原因及びプロセスを理解することは、好適な治療戦略を組み立てることが重要である。現在の最新技術によると、直接的で明瞭な分析ツールによるポリソルベートの加水分解と酸化分解との分化が不可能であり、とりわけポリソルベート20の酸化変性の存在を同定する物質は知られていない、すなわち、いかなるマーカー物質も、水性製剤で界面活性剤として広く使用されるポリソルベート20の酸化分解に由来することが知られていない。さらに、今日まで、水性製剤内、特に生物医薬製剤におけるこのようなマーカー物質を検出し、定量化する分析方法も記載されていない。
【0011】
さらに、例えば[1]に開示される液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)の方法は、ポリソルベートでの脂肪酸エステルの絶対的な定量化のための方法として意図とされず、この方法を使用する半定量的な決定のみを可能にする。
さらに、ポリソルベート(PS)分解の機構を研究する方法は[13]に開示される。超高性能液体クロマトグラフィー質量分析法(UPLC-MS)は、18O組込みを測定することによりポリソルベート20及びその分解産物を特徴付けるために使用され、2種の主要ないわゆる分解産物は、遊離ラウリン酸及びポリオキシエチレン(POE)ラウレートであった。
【0012】
[14]によると、サンプルの少なくとも1種のポリソルベート誘導体を定量化するためのプロセスであって、
- ジオキソラニリウムイオンからのシグナルに基づいてサンプルのLC-MS分析を実施するステップ;
- ポリソルベートの内部標準で内部較正を実施するステップ
を含むプロセスを提供する。内部標準は、化学分析において一定量でサンプル、ブランク及び較正標準に添加される化学化合物を指す。これは、サンプルにおいてポリソルベートと一般に非常に類似するが、同一ではない化合物である。一実施形態では、内部標準(IS)は、ポリソルベートに類似する物理化学的特性を有するように1つ又は複数のカルボン酸でエステル化したポリエチレングリコール鎖を有する化合物から選択することができる。
[15]では、ポリソルベートを含む水性製剤においてポリソルベート分解を軽減するための方法であって、シクロデキストリンを製剤に添加するステップを含み、シクロデキストリン対ポリソルベートの得られる質量比が約37.5:1より大きい、方法を記載する。
【0013】
実際に、特許及び学術文献は、全体として、ポリソルベート20に特異的であり、天然に存在する酸化的なポリソルベート分解にとりわけ関連する特異的マーカー物質、特に無標識酸化マーカー種の使用について完全に言及していない。さらに、現在まで、いかなる酸化の副産物も、ポリソルベート20を含有する水性製剤、特に生物学的なAPI(医薬品有効成分)及び通常の賦形剤を含む生物医薬製剤においてポリソルベート20の酸化を追跡する確立したマーカーとして同定されていない。
したがって、本発明の目的は、少なくともこれらの従来技術の問題を克服し、ポリソルベート20の酸化分解にとりわけ関連する、ポリソルベート20に特異的であるマーカー物質、特に無標識酸化マーカー種を同定し、決定することができる方法を提供することである。本方法は、水性製剤において酸化マーカーの物質をモニタリングし、定量化することを可能にすべきである。
【発明の概要】
【0014】
驚くべきことに、具体的なマーカー物質、すなわちポリエチレングリコール-6-ラウレート(PEG-6-ラウレート)が、このマーカー物質がポリソルベート20の酸化分解の間に形成されるので、ポリソルベート20の酸化分解経路に関連することを見出した。このマーカー物質は、前記マーカー物質の相対的なレベルが酸化分解が起こることを示すので、分析方法により水性製剤においてポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定することを可能にする。
【0015】
したがって、ポリソルベート20を含有する水性製剤においてポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定するための(第1の代替での)(第1の)方法であって、以下のステップ:
参照サンプルとして機能する、検査される水性製剤の第1のサンプルを準備するステップ1;
検査される水性製剤の第2のサンプル及び任意のさらなるサンプルを準備するステップ2;
ポリエチレングリコール-6-ラウレートを分離し、それぞれ、ステップ1の参照サンプル、並びにステップ2の第2のサンプル及び任意のさらなる各サンプルから、ポリソルベート20の酸化分解の酸化マーカーであるポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を決定するための液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法を使用し、
参照サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積に対して、第2のサンプル及び任意のさらなる各サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積に基づいてポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積を決定するステップ3であって、相対的なピーク面積が、ポリソルベート20の酸化分解の度合いに比例する、ステップ3;並びに
それぞれのサンプルの相対的なピーク面積に基づいて第2のサンプル及び任意のさらなる各サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートの量を定量化してもよいステップ4
を含む方法を提供する。
【0016】
一実施形態によると、ステップ3の第2のサンプル及び任意のさらなる各サンプルに対するポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積は、
- 得られたピーク面積の差を算出することであって、参照サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を、それぞれ、第2のサンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積及び任意のさらなるサンプルの各々のポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積から減算して、算出すること;
又は
- 得られたピーク面積を正規化することであって、参照サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を100%に設定し、第2のサンプル及び任意のさらなるサンプルの各々のポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積をそれぞれこれに基づいて算出して、正規化すること
により決定される。
【0017】
ゆえに、本発明の方法は、ポリソルベート20を含有する水性製剤でのポリソルベート20の酸化分解の副産物としてポリエチレングリコール-6-ラウレートの同定を提供し、液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法(LC-MSをベースにした方法)により参照に関してこのマーカー物質を分離、検出及び決定し、特異的な分析方法により水性製剤においてこのマーカー物質を定量化してもよいことを可能にする。ピーク面積(積分)が、分析物の濃度に比例することが知られているが、相対的なピーク面積は、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積をポリソルベート20の酸化分解の度合いと相関させることを可能にする。
【0018】
上記の(第1の)方法の第1の代替では、試験される水性製剤の第1のサンプルは、参照サンプルとして採取される。
代替的な実施形態では、外部的に生成又は提供される参照サンプルは、参照として使用される、すなわち、外部参照サンプルは独立して提供される。
したがって、別の実施形態によると、ポリソルベート20を含有する水性製剤においてポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定するための(第2の代替での)(第1の)方法であって、以下のステップ:
ポリソルベート20を含有する水溶液であり、ポリソルベート20の含有量が検査される水性製剤と同じである参照サンプルを準備するステップ1’;
検査される水性製剤の第1のサンプル及び任意のさらなるサンプルを準備するステップ2’;
ポリエチレングリコール-6-ラウレートを分離し、それぞれ、ステップ1’の参照サンプル、並びにステップ2’の第1のサンプル及び任意のさらなる各サンプルから、ポリソルベート20の酸化分解の酸化マーカーであるポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を決定するための液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法を使用し、
参照サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積に対して、第1のサンプル及び任意のさらなる各サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積に基づいてポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積を決定するステップ3’であって、相対的なピーク面積が、ポリソルベート20の酸化分解の度合いに比例する、ステップ3’;並びに
それぞれのサンプルの相対的なピーク面積に基づいて第1のサンプル及び任意のさらなる各サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートの量を定量化してもよいステップ4’
を含む方法を提供する。
【0019】
一実施形態によると、ステップ3’の第1のサンプル及び任意のさらなる各サンプルに対するポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積は、
- 得られたピーク面積の差を算出することであって、参照サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を、それぞれ、第1のサンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積及び任意のさらなるサンプルの各々のポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積から減算して、算出すること;
又は
- 得られたピーク面積を正規化することであって、参照サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を100%に設定し、第1のサンプル及び任意のさらなるサンプルの各々のポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積をそれぞれこれに基づいて算出して、正規化すること
により決定される。
【0020】
本発明の一実施形態では、ステップ2又はステップ2’において、ポリソルベート20を含有する水性製剤のいくつかのサンプルは、連続する時間T1、T2、T3....で採取して、経時的に水性製剤においてランダムサンプルだけでなく、ポリソルベート20の可能な酸化分解の経路も決定することができる。例えば、ステップ2で、ポリソルベート20を含有する水性製剤の2つ、3つ又はそれ以上のさらなるサンプルは、同じ長さ又は異なる長さであり得る連続する時間間隔T1、T2、T3....で採取することができる。
【0021】
上記の第1の方法(第1及び第2の代替)では、1つの水性製剤は、ポリソルベート20の酸化分解に対して試験した。しかし、いくつかの水性製剤もまた検査することができる。したがって、本発明のさらなる実施形態では、以下のステップ:
検査される各水性製剤のサンプルを準備するステップ1a;
ポリエチレングリコール-6-ラウレートを分離し、ステップ1aの各サンプルから、ポリソルベート20の酸化分解の酸化マーカーであるポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を決定するための液体クロマトグラフィー及び質量分析法をベースにした方法を使用し、
サンプルのピーク面積を互いに比較するステップ2aであって、サンプルのピーク面積(相対的なピーク面積)の差が、それぞれの各サンプルにおいてポリソルベート20の酸化分解の度合いに比例する、ステップ2a;並びに
それぞれのサンプルの得られたピーク面積に基づいて各サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートの量を定量化してもよいステップ3a
により、ポリソルベート20をそれぞれ含有する、特に各水性製剤が同じ量のポリソルベート20を含有するいくつかの水性製剤、例えば2種、3種、4種又はそれ以上の水性製剤においてポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定するための(第2の)方法を提供する。
【0022】
本発明のこの(第2の)方法では、ピーク面積は、互いに直接比較することができるか、又は参照を使用して相対的なピーク面積を決定し、次いでサンプルを参照と比較することも可能である。参照は、採取したサンプルの1つであり得、それにより参照として使用することができるサンプルの選択は、個々の場合に依存する。参照はまた、第1の方法に関連して既に記載される通り、外部参照サンプルであり得る。
【0023】
(第2の)方法では、各サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積は、参照サンプルに対して決定することができ、本手順は、
- 得られたピーク面積の差を算出することであって、参照サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を、それぞれステップ2aの各サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積から減算して、算出すること;
又は
- 得られたピーク面積を正規化することであって、参照サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を100%に設定し、ステップ2aの各サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積をこれに基づいて算出して、正規化すること
により実行される。
【0024】
ポリソルベート20の酸化分解の酸化性マーカー物質であると同定されるポリエチレングリコール-6-ラウレートの分離は、その疎水性を使用することによる液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法の一部として液体クロマトグラフィーにより達成される。その後の質量分析法の手順では、検査される分子を、気相に移し、イオン化する。分子は、本方法で断片化され得る。ゆえに、ステップ3、ステップ3’又はステップ2aにおけるポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルの検出及び決定は、液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法を使用して実施される。ステップ4、ステップ4’又はステップ3aの任意の定量化は、例えば、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの標準溶液を使用して外部較正で実施され得る。
液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法の一実施形態によると、液体クロマトグラフィーは、分離クロマトグラフィーとして使用され、特にカラムクロマトグラフィーの形態で、より具体的に逆相クロマトグラフィーとして使用される。
さらなる実施形態では、液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法の一部としての液体クロマトグラフィーは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)である。また、超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)も使用することができる。
液体クロマトグラフィーでの液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法の一実施形態によると、勾配溶出が使用される。
【0025】
別の実施形態では、極性溶媒は、液体クロマトグラフィーを実行する前に調査されるポリソルベート含有サンプルに添加され、特に液体クロマトグラフィーで使用される溶媒である。
さらなる実施形態では、液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法の一部としての質量分析法は、高分解能質量分析法(HR-MS)であるように選択される。高分解能質量分析法は、特に構造解明に使用され得、本目的に有利である。
一実施形態によると、本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法のデータ評価のために、抽出イオンクロマトグラムが、約487amuの範囲を含み、特に486.5~487.5amuの範囲を含むか、又はこの範囲からなる質量荷電比から作成される。
【0026】
ステップ4若しくはステップ3に続き得る追加の任意のステップ5、又はステップ4’若しくはステップ3’に続き得る追加の任意のステップ5’、又はステップ3a若しくはステップ2aに続き得る追加の任意のステップ4aは、どの程度ポリソルベート20がポリエチレングリコール-6-ラウレートレベルとポリソルベート20レベルとの反比例関係に基づいてサンプルで既に酸化分解されているかを推定することを含む。サンプル及びそれゆえの水性製剤でのポリソルベート20の含有量の低下が、酸化性マーカー物質ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルの増加に明らかに相関することにより、ポリソルベート20がますます増加することが見出された。
【0027】
本発明のさらなる実施形態によると、水性製剤は1種又は複数のタンパク質を含有する。タンパク質は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体、単鎖抗体若しくはその抗体フラグメント、例えばFv、scFv、Fab、Fab’、scFab、F(ab’)2、Fab2、Fc及びFc’フラグメント、重鎖及び軽鎖の免疫グロブリン鎖並びにこれらの定常、可変若しくは超可変領域並びにFv及びFdフラグメント、二重特異性抗体、三重特異性抗体、scFv-Fc、ミニボディ(minibody)、若しくは単一ドメイン抗体、又はその混合物から選択され得る。タンパク質は、疾患又は障害の予防又は処置に使用される治療用タンパク質から選択され得る。
別の実施形態によると、水性製剤は、ポリソルベート20を含有する、水性医薬製剤、特に水性生物医薬製剤であり得る。例えば、水性生物医薬製剤は、疾患又は障害の予防又は処置に使用される、薬学的に許容されるポリソルベート20、任意で1種又は複数のタンパク質のようなAPI、及び任意の薬学的に許容される賦形剤を含有し得る。
存在するポリソルベート20は、薬学的使用のため、特に薬物で使用することが意図され得る。特に、ポリソルベート20は、薬学的に許容され、医薬品グレードの質、例えば欧州/米国/中国薬局方の医薬品グレードの質を有し得る。例えば、ポリソルベート20は、非経口投与に好適であり得る。ポリソルベート20の以下の市販品:特にCroda、Edison、NJ、USA若しくはCroda Europe Ltd.から入手可能であるSuper Refined(商標)PS20、Tween(商標)20、Tween(商標)20 HP、Tween(商標)20医薬品グレード若しくはPS20 HP、又は特にNanjing Well Pharmaceutical Co.,Ltd.から入手可能であるPS20中国グレードが例示的に記載される。
【0028】
本発明はまた、組換えタンパク質を生成するプロセス(第3の方法)であって、以下のステップ:
組換えタンパク質を発現する真核細胞を細胞培養で培養するステップa);
組換えタンパク質を採取するステップb)、
水性製剤を使用する組換えタンパク質を精製するステップc);及び
ポリソルベート20を使用して、組換えタンパク質を投与に好適な薬学的に許容される水性製剤に製剤化するステップd);及び
ステップd)の薬学的に許容される水性製剤の少なくとも1つのサンプルを得るステップe);
を含み、
プロセス(第3の方法)が、ステップe)で得られたサンプルで本発明で開示されるポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定するための(第1又は第2の)方法を実施することをさらに含む、プロセスに関する。
【0029】
さらなる実施形態によると、組換えタンパク質を生成するためのプロセス(第3の方法)は、上述したステップe)において組換えタンパク質及びポリソルベート20を含有する少なくとも1つのサンプルを得るステップを含み、ステップd)からのサンプルは、原薬サンプル又は医薬品サンプルである。
本発明はまた、ポリソルベート20をそれぞれ含有する水性製剤又はいくつかの水性製剤においてポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定するための方法、特に本明細書に開示される(第1又は第2の)方法における酸化マーカーとしてのポリエチレングリコール-6-ラウレートの使用を対象とする。
本発明のさらなる対象は、水性製剤においてポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定するための、ポリソルベート20をそれぞれ含有する水性製剤又はいくつかの水性製剤の開発、製造、貯蔵寿命、又は貯蔵期間中の安定性試験としての本明細書に開示される(第1又は第2の)方法の使用である。
【0030】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して例として記載される。本開示の図面は、本明細書の一部に組み込まれ、構成され、記載される具体的な実施形態を限定せずに本発明の実施形態も示す。図面は、一般的説明及び詳細な説明と共に、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】左側:本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態から得られる水溶液におけるポリソルベート20の2つの完全走査の全イオンクロマトグラム(TIC)の抽出、両方とも約227amu(226.5~227.5amu)の質量荷電比m/zで、上部スペクトルでは酸化触媒AAPHを添加し、下部スペクトルは酸化触媒AAPHを含まないことを示す; 右側:本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態から得られる水溶液におけるポリソルベート20の2つの完全走査の全イオンクロマトグラム(TIC)の抽出、両方とも約487amu(486.5~487.5amu)の質量荷電比m/zで、上部スペクトルでは酸化触媒AAPHを添加し、下部スペクトルは酸化触媒AAPHを含まないことを示す;
【
図1B】酸化的にストレスを受けたポリソルベート20水溶液において本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態から得られる3つのイオンクロマトグラム、すなわち、全イオンクロマトグラム(TIC、上部パネル)、約227amuの質量荷電比m/z(m/z226.5からm/z227.5amuまで)での抽出イオンクロマトグラム(中央パネル)、及び約487amuの質量荷電比m/z(m/z486.5からm/z487.5amuまで)での抽出イオンクロマトグラム(下部パネル);
【
図1C】
図1A及び1Bのクロマトグラムに示すような、本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態から得られる、18.4分で溶出したピークの高分解能質量スペクトラム;
【
図1D】本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態から得られる、2つの質量スペクトル、市販のポリエチレングリコール-6-ラウレートの1つの質量スペクトラム(上部パネル)及びAAPHでストレスを受けたポリソルベート20からのポリエチレングリコール-6-ラウレートの1つの質量スペクトラム(下部パネル);
【
図2A】本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態から得られる、HPLC-CADを介して分析される時間[時間]に対してプロットされた、水性製剤に存在するポリソルベート20濃度[mg/mL](左側y軸)、及び、時間[時間]に対してプロットされた、酸化性マーカーポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積(右側y軸、「Oxmarker」とも呼ばれる);
【
図2B】本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態を使用してポリソルベート20を含有する水性製剤の時間[時間]に対してプロットされた、相対的なピーク面積を示す無処置のポリソルベート20の種のレベルのブロック図;
【
図3】ポリソルベート20、すなわちPOE-ソルビタンモノC12、POE-イソソルビドモノC12、POEモノC12及びPOE-ソルビタンジC12に存在する一部の無処置のポリソルベート20の種の化学構造;
【
図4A】HPLC-CAD分析により決定される時間[カ月]に対してプロットされた、異なるバリアントにモノクローナル抗体を含む水性製剤に存在するポリソルベート20濃度[mg/mL];
【
図4B】本発明の実施形態による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法で決定される時間[カ月]に対してプロットされた、
図4Aの水性製剤に存在する相対的なピーク面積[%]に基づくポリエチレングリコール-6-ラウレート(P6L)酸化マーカーの相対的なレベル;
【
図5A】本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態を使用して水性プラセボ製剤(mAb-1製剤に対するプラセボ)の安定性試験を表す、3カ月間の相対的なピーク面積[%]としての無処置のポリソルベート20の種のレベルのブロック図;
【
図5B】本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態を使用して水性製剤(mAb-1製剤;変法A)を含有するモノクローナル抗体の安定性試験を表す、3カ月間の相対的なピーク面積[%]としての無処置のポリソルベート20の種のレベルのブロック図;
【
図6A】HPLC-CAD分析により決定される時間[カ月]に対してプロットされた、異なるバリアントにモノクローナル抗体を含む水性製剤に存在するポリソルベート20濃度[mg/mL];
【
図6B】本発明の実施形態による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法で決定される時間[カ月]に対してプロットされた、
図6Aの水性製剤に存在する相対的なピーク面積[%]に基づくポリエチレングリコール-6-ラウレート(P6L)酸化マーカーの相対的なレベル;
【
図7A】本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態を使用して水性製剤(mAb-2製剤;変法B)を含有するモノクローナル抗体の安定性試験を表す時間[カ月]に対してプロットされた、相対的なピーク面積[%]としての無処置のポリソルベート20の種のレベルのブロック図;
【
図7B】本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態を使用して水性製剤(mAb-2製剤;変法A)を含有するモノクローナル抗体の安定性試験を表す時間[カ月]に対してプロットされた、相対的なピーク面積[%]としての無処置のポリソルベート20の種のレベルのブロック図;
【
図8A】HPLC-CAD分析により決定される時間[カ月]に対してプロットされた、モノクローナル抗体(mAB-4製剤)及びモノクローナル抗体に対するプラセボ(mAB-4製剤に対するプラセボ)を含む水性製剤に存在するポリソルベート20濃度[mg/mL];
【
図8B】本発明の実施形態による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法で決定される時間[カ月]に対してプロットされた、
図8Aの水性製剤に存在する相対的なピーク面積[%]に基づくポリエチレングリコール-6-ラウレート(P6L)酸化マーカーの相対的なレベル;
【
図9】液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)分析(LC-MS P6L)の検出領域(y軸)が、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの標準溶液(1~25ng/mL)の濃度(x軸)に対してプロットされた、本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法に対する標準曲線。
【発明を実施するための形態】
【0032】
一般用語の定義
本明細書で特別に定義されない用語は、本開示及び文脈に照らして当業者によりそれらに与えられる意味を与えられるべきである。
【0033】
用語「ポリソルベート20」又は「PS20」は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを表し、主要なソルビタンポリオキシエチレン脂肪酸エステルを含有する構造的に関連した分子と実質的な量のポリオキシエチレン、ソルビタンポリオキシエチレン及びイソソルビドポリオキシエチレンとの混合物として市販されている[1、2、4]。ポリソルベートの分子不均一性は、その3つの官能基内の変異性、すなわち、親水性頭部でのEO鎖の長さに関する多分散性、鎖の長さの差(炭素数)、及び疎水性尾部での脂肪酸の不飽和の度合い、並びにソルビトール一無水物及び二無水物(ソルビタン及びイソソルビド、それぞれ)からなるコアを含む種の存在から生じる。さらに、構造当たりの脂肪酸エステルの数に依存して、ポリソルベートは、モノ、ジ、トリ、及びテトラエステルを含有し得る。様々なポリソルベートの組成物の概要は、[1]の表1に提供される。
【0034】
欧州薬局方(Ph.Eur.)の仕様によると、脂肪酸の含有量に対して、ラウリン酸エステルは、ポリソルベート20でエステルの40~60%を占め、残りのエステルは、C8-C18の範囲である。
しかし、簡略化のため、ラウリル酸のポリエトキシル化(POE)ソルビタンモノエステルとしてPS20を考えることが慣例である。[6]、
図1に示すポリソルベート20の理論的構造は、以下:
【0035】
【化1】
の通りである。ポリソルベートの錯体組成物が、多くの適用を伴う優れた界面活性剤を表す理由であると考えられる。
【0036】
用語「酸化マーカー」又は「酸化性マーカー」(oxmarkerとも略される)とは、本明細書に使用される場合、ポリソルベート20の酸化分解に関連する化合物、特にその酸化分解の間に形成される化合物を意味する。したがって、その不純物の場合より高いレベルでの酸化マーカーの存在は、ポリソルベート20の酸化分解が起こるか、又は起こっていることを意味する。本明細書の酸化マーカーは、ポリエチレングリコール-6-ラウレートである。
ポリソルベート20の表現「酸化分解」とは、自動酸化としても知られている、フリーラジカルで開始される分解を指す。酸化分解は、ポリソルベート20の加水分解とは異なり、典型的に宿主細胞の不純物により触媒され、遊離脂肪酸の放出をもたらすエステル加水分解である。
【0037】
用語「酸化分解の度合い」は、本発明で使用される場合、ポリソルベート20の酸化分解の程度、特にどのぐらい酸化分解が既に進行しているかを示すので、どれだけ多く又はどの程度ポリソルベート20が既に酸化的に分解されているかを推定することができる。酸化分解の度合いは、ポリソルベート20を含有する水性製剤において酸化マーカーポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的又は絶対的な量又はレベルに比例する。サンプルにおける相対的な量又はレベルは、参照サンプルに対して、又は別のサンプルの量若しくはレベルを意味する。絶対的な量又はレベルは、定量分析により分析的に決定される実際量である。
【0038】
表現「[ポリエチレングリコール-6-ラウレートの]相対的なピーク面積が、ポリソルベート20の酸化分解の度合いに比例する」の用語「比例」、及び類似の成句は、サンプルでの酸化マーカーポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積とポリソルベート20の酸化分解の度合いとの関係又は相関があることを意味すると理解すべきである。特に、比例関係又はより正確に反比例関係が存在する、すなわち、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの(相対的又は絶対的)量又はレベル及びポリソルベート20の(相対的又は絶対的)量又はレベルは、互いに非相関であり、後でより詳細に説明される。
表現「レベル」は、その最も広い意味と理解すべきであり、化合物が水性液、特に参照サンプル又は水性製剤に存在する量、部分、含有量、又は濃度を意味する。「相対的なレベル」とは、参照に対して、又は参照に関して発現した化合物の量、部分、含有量又は濃度を意味する。
【0039】
用語「水性」とは、水が製剤に存在することを意味することを意図する。例えば、水は、溶媒の一部、例えば溶媒の一部分若しくは主要部分を構成することができるか、又は存在する溶媒のみを表すことができる。実際に、あらゆる種類の水を使用することができる。精製水は好ましい場合があるが、一部の実施形態によると水道水も使用することができる。選択される水の種類は、水性製剤の意図した使用に依存する。本発明によって使用される精製水は、精製プロセス、例えば蒸留、逆浸透、炭素濾過、容量式若しくは電気式脱イオン化、微量濾過又は限外濾過、紫外線酸化等を行って、使用するために好適であるように不純物を除去した水である。これらのプロセスの組合せもまた、その微量汚染物質が十億分率(ppb)又は一兆分率(ppt)で測定されるような高純度の水、例えば超純水を達成するために使用することができる。使用した水はまた、ASTM D1193又はISO3696によると、超純水、例えば1型の超純水(Milli-Q(登録商標)水)であり得る。使用した水はまた、対象への投与に好適な滅菌水、例えば注射用水(WFI)であり得る。また、蒸留水、二回蒸留水又は脱イオン水を使用することができる。
用語「水性製剤」とは、溶媒又は溶媒の1種が水である溶液を指す。溶液は、別段記述されない限り、真溶液、分散液、懸濁液等を含む。本発明による水性製剤は、ポリソルベート並びに任意の1種又は複数のタンパク質及び任意の賦形剤を含む。
【0040】
用語「タンパク質」(「ポリペプチド」及び「アミノ酸残基配列」と互換的に使用)とは、あらゆる長さのあらゆるアミノ酸(天然又は人工)のポリマーを指す。用語「タンパク質」はまた、グリコシル化、糖化、アセチル化、リン酸化、酸化、アミド化又はタンパク質処理を含むが、限定されない、反応を通して翻訳後修飾されるタンパク質を含む。修飾及び変化、例えば他のタンパク質への融合、アミノ酸配列置換、欠失又は挿入は、好ましくは分子がその生物学的な機能的活性を維持しながら、ポリペプチドの構造をもたらし得る。例えばある特定のアミノ酸配列置換は、ポリペプチド又はその基礎となる核酸コード配列をもたらし得、類似する特性を伴うタンパク質を得ることができる。アミノ酸修飾は、例えば、その基礎となる核酸配列において、部位特異的突然変異生成又はポリメラーゼ連鎖反応を介した突然変異生成を実施することにより調製することができる。ゆえに、用語「タンパク質」又は「ポリペプチド」はまた、例えば、免疫クロブリン構成要素、例えばFc構成要素、及び成長因子、例えばインターロイキンからなる融合タンパク質も含む。
【0041】
用語「タンパク質」は、タンパク質、ポリペプチド、そのフラグメント、ペプチド、融合タンパク質を含み、その全ては、宿主細胞系で発現するか、又は化学法を介して合成することができる。所望のタンパク質は、例えば抗体、酵素、サイトカイン、リンホカイン、接着分子、受容体及び誘導体又はそのフラグメント、並びにアゴニスト若しくはアンタゴニストとして機能し、及び/又は治療的若しくは診断的な使用を有することができるあらゆる他のタンパク質又はポリペプチドであり得る。
【0042】
さらに所望のタンパク質又はポリペプチドは、例えば、限定されないが:インスリン、インスリン様成長因子、hGH、tPA、サイトカイン、例えばインターロイキン(IL)、例えばIL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、インターフェロン(IFN)アルファ、IFNベータ、IFNガンマ、IFNオメガ又はIFNタウ、腫瘍壊死因子(TNF)、例えばTNFアルファ及びTNFベータ、TNFガンマ、TRAIL;G-CSF、GM-CSF、M-CSF、MCP-1、VEGF並びに単一ドメイン抗体(例えばラクダ科由来)である。また含まれるのは、エリスロポイエチン又はアゴニスト若しくはアンタゴニストとして機能し、及び/又は治療的若しくは診断的な使用を有することができるあらゆる他のホルモン成長因子及びあらゆる他のポリペプチドの生成である。
ゆえに、タンパク質は、例えば、抗体、例えばモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体、単鎖抗体若しくはその抗体フラグメント、例えばFv、scFv、Fab、Fab’、scFab、F(ab’)2、Fab2、Fc及びFc’フラグメント、重鎖及び軽鎖の免疫グロブリン鎖並びにこれらの定常、可変若しくは超可変領域並びにFv及びFdフラグメント、二重特異性抗体、三重特異性抗体、scFv-Fc、ミニボディ、若しくは単一ドメイン抗体、又はその混合物であり得る。
【0043】
用語「抗体」とは、本明細書で通常使用される場合、単一特異性抗体を指すが、抗体はまた、多重特異性又はそのフラグメントであり得る。本発明の範囲内の例示的な抗体は、抗CD2、抗CD3、抗CD20、抗CD22、抗CD30、抗CD33、抗CD37、抗CD40、抗CD44、抗CD44v6、抗CD49d、抗CD52、抗EGFR1(HER1)、抗EGFR2(HER2)、抗GD3、抗IGF、抗VEGF、抗TNFアルファ、抗IL2、抗IL-5R、抗IL-36R又は抗IgEの抗体を含むが、限定されず、好ましくは、抗CD20、抗CD33、抗CD37、抗CD40、抗CD44、抗CD52、抗HER2/neu(erbB2)、抗EGFR、抗IGF、抗VEGF、抗TNFアルファ、抗IL2、抗IL-36R及び抗IgEの抗体からなる群から選択される。
【0044】
用語「抗体」、「抗体」、又は「免疫クロブリン」は、本明細書で使用される場合、グロブリンから選択されるタンパク質に関し、分化Bリンパ球(形質細胞)からの異物(=抗原)への宿主生物体の反応として自然に形成される。様々なクラスの免疫クロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、IgY、IgWが存在する。抗体は、IgG1抗体又はIgG4抗体のようなIgG抗体であり得る。用語「免疫クロブリン」及び「抗体」は、本明細書で互換的に使用される。抗体は、モノクローナル、単一特異性及び多重特異性(例えば二重特異性又は三重特異性)抗体、単鎖抗体、抗体の抗原結合フラグメント(例えば、Fab又はF(ab’)2フラグメント)、ジスルフィド結合したFv等を含む。抗体は、あらゆる種であり得、キメラ及びヒト化抗体を含む。
【0045】
用語「サンプル」は、分析のために採取される、限定量又はより少量の水性製剤を意味するために、できるだけ広く理解される。サンプリングは、手動で又は自動化された方法で行うことができる。
用語「液体クロマトグラフィー質量分析法」又は「LC-MS法」とは、質量分析法(MS)による質量分析を伴う液体クロマトグラフィー(又はHPLC)による物理的分離を合わせた特定の分析化学技術に基づいた先行技術で知られている方法を意味する。この表現は、当業者に知られている液体クロマトグラフィー及び質量分析法と合わせたあらゆる技術を含むことを意図する。連結液体クロマトグラフィー-MSシステムは化学分析で知られている。これらは、2つの方法を通常、組合せにより相乗的に改善する利点を示す。LC-MSシステムはまた、LC手順により分離された物質がMSイオン源に入ることを可能にする一部の種類の界面を含有する。界面は、LC装置及びMS装置が実際には互いに互換性があるので必要である。LCシステムでは、移動相は加圧下にあるが、MS分析器は通常、高真空下にある。
【0046】
表現「液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法」又は「LC-MSをベースにした方法」は、液体クロマトグラフィー及び質量分析法を含む本発明によって使用される方法として理解すべきであり、順に直接実行することにより、先行技術の当業者に知られている方法(上記で定義した「LC-MS法」)は基礎として機能する。本発明の方法はこれに基づいており、所望の要件を満たし、特に酸化マーカーを対象にし、定量化してもよい本明細書に開示されるやり方で改変させ、適合させる。
【0047】
表現「定量化すること」又は「定量化」等は、その最も広い意味と理解すべきであり、見出される相対的なレベル(相対的なピーク面積)に基づいた物質ポリエチレングリコール-6-ラウレートの濃度又は量を決定することを表し、サンプルを採取し、検査される水性製剤に存在する。定量化は、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの標準溶液を使用する外部較正により達成される。
用語「組換えタンパク質」は、本明細書で使用される場合、分子クローニングのような組換え技術により生成されるタンパク質に関する。このような方法は、多数の供給源からの遺伝物質と共にするか、又は天然に存在しない配列を創出する。組換えタンパク質は、異なる細胞若しくは生物体、若しくはタンパク質を生成するのに使用されるレシピエントの宿主細胞、例えばCHO細胞若しくはHEK293細胞からの異なる種からの配列に典型的に基づいているか、又は融合タンパク質のような人工配列に基づく。本発明の文脈では、組換えタンパク質は、好ましくは、治療用タンパク質、例えば抗体、抗体フラグメント、抗体に由来する分子(例えば、scFv、二重特異性若しくは多重特異性抗体)、又は融合タンパク質(例えば、Fc融合タンパク質)である。
【0048】
用語「組換えタンパク質を発現する」とは、本明細書で使用される場合、組換えタンパク質をコードするDNA配列を含む細胞を指し、翻訳後修飾を含むタンパク質配列に転写及び翻訳される、すなわち、細胞培養で組換えタンパク質の生成をもたらす。
用語「真核細胞」とは、本明細書で使用される場合、核膜内に核を有し、動物細胞、ヒト細胞、植物細胞及び酵母細胞を含む細胞を指す。本発明では、「真核細胞」は、特に、哺乳動物の細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はHEK293細胞由来の細胞、及び酵母細胞を包含する。
用語「原薬」とは、本明細書で使用される場合、賦形剤を含む製剤化した医薬品有効成分(API)を指す。APIは、賦形剤とは対照的に身体において治療効果を有し、APIの送達を補助する。生物学的治療の場合、賦形剤を含む製剤化したAPIは、典型的に、最終剤形で使用される少なくとも最大濃度の濃度で最終製剤緩衝剤におけるAPIを意味し、医薬品とも呼ばれる。
【0049】
APIは、水性製剤に存在し得る。WHOガイドラインによると、「医薬品有効成分(API)」は、薬理学的活性を備えること、或いは疾患の診断、治癒、緩和、処置若しくは予防における直接的な効果を有すること、又はヒトでの生理学的機能の回復、補正若しくは改変における直接的な効果を有することを意図する、医薬品最終製品(FPP)で使用されるあらゆる物質又は物質の組合せである。さらに、賦形剤は、水性製剤に存在し得る。APIは、例えば1種又は複数のタンパク質であり得る。APIを含有する水性製剤は、水性生物医薬製剤と考えられる。
用語「医薬品」とは、本明細書で使用される場合、原薬の市販の最終剤形、例えば錠剤若しくはカプセル剤、又は生物製剤の場合、典型的に、バイアル若しくはシリンジのような適切な封入での注射用溶液を指す。医薬品はまた、凍結乾燥形態であり得る。
用語「宿主細胞タンパク質」(HCP)とは、生物医薬品の製造及び生成の間の宿主生物体により生成されるプロセス関連のタンパク質不純物を指す。精製プロセスの間、生成されるHCPの大部分、通常99%超の不純物は、最終製品から除去される。しかし、残留するHCPは、最終医薬品に残留するので、HCPの除去は、生物医薬品の生成で最も大きな課題の1つである。したがって、発現系に存在する全てのタンパク質又は問題のタンパク質近くの基質は、不純物とみなされ、通常、用語宿主細胞タンパク質(HCP)の下で概説される。
【0050】
表現「含むこと」、「含む」、「含まれる」、「含有すること」、「含有する」又は「含有される」はまた、別段記述しない限り、又は文脈から明らかでない限り、より具体的な用語「からなる」を包含する。
加えて、本開示では、単数形及び複数形を制限されたやり方で使用しないことを留意すべきである。したがって、本明細書で使用される場合、単数形「1つ(a、an、one)」及び「その(the)」は、別段記述しない限り、又は文脈から明らかでない限り、単数及び複数の両方を指す。
表現「約」又は「およそ」とは、示される具体的な値又は上限若しくは下限の範囲の値の10%以内、特に5%以上、より具体的には1%以内又は0.1%以内を意味する。質量荷電比に対して、用語「約」は平均±0.5を有する。これは、「約227amu」が227-0.5amu~227+0.5amu又は226.5~227.5amuの範囲を表し、「約487amu」が487-0.5amu~487+0.5amu又は486.5~487.5amuの範囲を表すことを意味する。
【0051】
本発明の実施形態
続いて、本発明によるマルチステップの方法を記載する。個々の各ステップに対する最適な方法条件及びパラメーターは、存在する特定の水性製剤、任意の賦形剤、選択した水以外の溶媒、及び任意のAPIに依存して様々であり得る。別段指定しない限り、各方法ステップの方法条件及びパラメーターは、当業者により容易に選択することができる。実験手順は、実験の節に提示される。
ポリエチレングリコール-6-ラウレートは、ポリソルベート20の酸化分解の度合いに関する指摘をもたらすマーカー物質であることが分かった。ポリエチレングリコール-6-ラウレートが、ポリソルベート20の酸化分解の特定のモニタリングを可能にする新規なマーカー物質として同定されるので、ポリソルベート20の分解の酸化性マーカー又は酸化マーカーとも呼ばれる。本発明に対してそれに応じて適合させ、改変させる、液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法を使用することにより、サンプルでのマーカー物質の相対的なレベルを決定し、それゆえにポリソルベート20の酸化分解を推測することができる。
【0052】
本発明による液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法の一般的手順は以下の通りである:
最初に、クロマトグラフィー法を実行する。これは、液体クロマトグラフィーのプロセス、特にHPLCプロセスである。
クロマトグラフィーの手順は、質量分析法が続く。質量分析法では、エレクトロスプレーイオン化(ESI)は、分子量を決定するのに使用されるイオンを生成するのに通常使用される。本方法では、ポリソルベート種は、ESI源で(部分的に)断片化され、特に脂肪酸を含有するフラグメントを分離する。これは、1,3-ジオキソラニリウムイオンが生成されることを意味する。このようにして、全イオンは測定することができる。通常、全イオンは、約100~約2000の範囲の質量荷電比(m/z)で測定される。評価のために、検出した種のイオン軌跡を抽出することを可能にする:これらは、いわゆる抽出イオンクロマトグラム又はXIC(抽出イオンクロマトグラム)である。
【0053】
このような抽出イオンクロマトグラム又はXICは、例えば、ラウリン酸の1,3-ジオキソラニリウムイオンを表すイオン痕跡又は約227amu(m/z226.5からm/z227.5amuまで)の質量荷電比でのポリソルベート20の典型的フラグメントに対して、生成される。しかし、本発明では、抽出イオンクロマトグラムXICが、データ評価のために、イオン痕跡又は約487amuを含む、特にm/z486.5からm/z487.5amuまでを含むか、若しくはこれからなる範囲の質量荷電比で生成される場合、有利であると見出され、後でより詳細に説明される。
【0054】
本発明による方法の個々のステップは、ここで、以下で詳細に説明する:
第1の方法、1.代替:
ポリソルベート20を含有する水性製剤においてポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定するための第1の方法の第1の代替では、試験される水性製剤の第1のサンプルは、参照サンプルとして採取される。
【0055】
- プロセスステップ1
プロセスステップ1では、参照サンプルとして機能する、検査される水性製剤の第1のサンプルを提供する。
調査中の水性製剤が不純物として酸化マーカーを既に含有し得るので、酸化マーカーポリエチレングリコール-6-ラウレートそれ自体の存在が、酸化分解が起こることを意味しないので、参照が必要である。酸化分解もまた、水性製剤で既に行われ得る。ポリソルベート20の酸化分解が起こる場合、増加する量のポリエチレングリコール-6-ラウレートを形成する連続プロセスである。酸化分解は、様々な影響、とりわけ光、金属イオンの存在などのような環境影響により引き起こされ得る。
したがって、参照サンプルとしての第1のサンプルは塩基値を決定するのに使用され、サンプル中のポリエチレングリコール-6-ラウレートは塩基値に対して決定される。
本文脈では、市販のポリソルベート20の原料(固体)が、ポリエチレングリコール-6-ラウレートが水性ポリソルベート20を含有する製剤にも存在するので、ポリエチレングリコール-6-ラウレートを通常容易に含有することを留意すべきである。予想に反して、参照サンプルがポリエチレングリコール-6-ラウレートを含有しない場合、別の参照サンプルを提供する。
【0056】
- プロセスステップ2
プロセスステップ2では、検査される水性製剤の第2のサンプル及び任意のさらなるサンプルを提供する。
したがって、検査される水性製剤の2つ以上のサンプル、例えば2、3、4、5つ又はそれ以上のさらなるサンプルが、ステップ2で採取されることを可能にする。サンプルの数は個々の場合に依存する。
サンプルが順に連続する時間間隔T1、T2、T3...で採取する一実施形態によると、時間T1、T2、T3...は、同じ長さ又は異なる長さであり得る。例えば、サンプルは、時間間隔で逐次採取され、例えば同じ長さのものであり得る。例えば、1カ月の時間間隔で、1つのサンプルを、数カ月の期間にわたって、それぞれ採取することができる。このようにして、時間のある特定の期間にわたって、ポリソルベート20の酸化分解が行われるか否か、又はどの程度酸化分解が起こるかをチェックすることができる。
ステップ1及び2でのサンプリングは、専門家に知られているあらゆる手順、例えば人間による手動で又は自動化されたデバイス若しくはシステムにより実施することができる。サンプリングが、以下の分析手順が悪影響を受けないか、又は損なわれないような方法で実施すべきであることは言うまでもない。水性製剤から取り出されるサンプルの量は、サンプルで液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法を実施するのに十分な大きさであるように選択される。当業者は、この分析技術の基礎を熟知している。
【0057】
- プロセスステップ3
続くプロセスステップ3では、液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法を使用して、ポリエチレングリコール-6-ラウレートを分離し、それぞれ、ステップ1の参照サンプル、及びステップ2の水性製剤の各サンプルにおいて、ポリソルベート20の酸化分解に対するマーカー物質であるポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積を決定する。
ポリエチレングリコール-6-ラウレートの「相対的なピーク面積」又は「相対的なレベル」の決定は、本明細書で同義的、互換的に使用される用語であるが、ステップ3では、ポリエチレングリコール-6-ラウレートレベルが参照サンプルと比較して決定されることを意味する。
詳細には、ポリエチレングリコール-6-ラウレートは、ステップ1の参照サンプル(第1のサンプル)から、第2のサンプルから、及びステップ2の任意のさらなる各サンプルから分離し、それぞれの場合で、参照サンプル、第2のサンプル及び任意のさらなる各サンプルでのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を決定する。次いで、第2のサンプル及び任意のさらなる各サンプルでのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を、参照サンプルでのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積に対して決定して、第2のサンプル及び任意のさらなる各サンプルの相対的なピーク面積を得る。
【0058】
プロセスステップ3での第2のサンプル及び任意のさらなる各サンプルに対するポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積を、以下の2つの可能性:
- 得られたピーク面積の差を算出することであって、参照サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を、それぞれ、第2のサンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積及び任意のさらなる各サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積から減算して、第2のサンプル及び任意のさらなる各サンプルに対する相対的なピーク面積を得て、算出すること;
又は
- 得られたピーク面積を正規化することであって、参照サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を100%に設定し、第2のサンプル及び任意のさらなるサンプルの各々のポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積をそれぞれこれに基づいて算出して、正規化すること
の1つにより決定することができる。
【0059】
差が形成される場合、参照サンプルのピーク面積を、各サンプルのピーク面積から減算する。参照のピーク面積は、1回だけ適切に決定され、次いで得られた値(ベースライン)を、それぞれ、各サンプルの得られたピーク面積から減算する。これは、例を用いて説明する。
【0060】
以下のピーク面積は、液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法で決定する:
参照サンプルに対するピーク面積:2000。
第1のサンプルに対するピーク面積:3000。
第1のサンプルに対する相対的なピーク面積:3000-2000=1000。
さらなるサンプルに対するピーク面積:4000。
さらなるサンプルに対する相対的なピーク面積:4000-2000=2000。
負の値は、参照サンプルが水性製剤から採取された第1のサンプルであるので得ることはできず、したがって、通常、採取された他方のサンプル又は任意のさらなるサンプルと等しいか、又は小さい含有量のポリエチレングリコール-6ラウレートを有する。
得られたピーク面積を正規化する場合、参照サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積は100%に設定され、第2のサンプル及び任意のさらなる各サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積はそれぞれこれに基づいて算出される。これは、別の例を用いて説明する。
【0061】
以下のピーク面積は、液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法で決定する:
参照サンプルに対するピーク面積:2000。
他方のサンプルに対するピーク面積:3000。
参照サンプルに対する相対的なピーク面積は100%に設定する。
第2のサンプルに対する相対的なピーク面積:((3000×100):2000=)150%。
さらなるサンプルに対するピーク面積:4000。
参照サンプルに対する相対的なピーク面積は100%に設定したままである。
第2のサンプルに対する相対的なピーク面積:((4000×100):2000=)200%。
ゆえに、ポリソルベート20の酸化分解が起こるか否かを決定するために、参照と比較して水性製剤のサンプルにおいてポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルを決定することが必要なだけである。
【0062】
いくつかのサンプルを採取し、分析する場合、これらのポリエチレングリコール-6-ラウレートレベルが参照サンプルと比較して相対的なレベルとして常に決定されることは言うまでもない(相対的なピーク面積)。したがって、ステップ3では、1、2、3、4、5つ又はそれ以上のサンプルを、液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法を使用して各々分析する:この目的のために、他方のサンプルに含有されるポリエチレングリコール-6-ラウレートを分離し、そのピーク面積を決定し、相対的なピーク面積を、他のサンプルの相対的なピーク面積を得るために既に記載されるように差又は正規化を使用して参照サンプル(第1のサンプル)のピーク面積に対して決定する。同じ手順は、さらなる各サンプルに対して続いてなされる、すなわち、さらなる各サンプルに含有されるポリエチレングリコール-6-ラウレートを、それぞれ分離し、そのピーク面積を決定し、相対的なピーク面積を、さらなる各サンプルの相対的なピーク面積を得るために既に記載されるように差又は正規化を使用して参照サンプルのピーク面積に対して決定する。この手順は、全てのサンプルで繰り返されるので、一連の相対的なピーク面積を決定することができる。一実施形態によると、相対的なピーク面積は、サンプリング時間T1、T2、....の関数として決定することができる。
【0063】
参照サンプルに対して相対的なピーク面積の算出が、全てのサンプルにおいて同様に行われる場合に有用である、すなわち、差が1つのサンプルに対して形成される場合、差が全てのサンプルで使用される場合に有用である。正規化が1つのサンプルで使用される場合、正規化を全てのサンプルに使用する場合に適切である。これは、サンプルの相対的なピーク面積の決定の比較可能性を確実にする。
【0064】
ポリエチレングリコール-6-ラウレートに対する相対的なピーク面積は、ポリソルベート20の酸化分解の度合いに比例する。すなわち、酸化分解の度合いは、検査される水性製剤において酸化マーカーポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルを決定することに直接関係する。ポリソルベート20を酸化的に分解する程度に対して、酸化マーカーポリエチレングリコール-6-ラウレートを形成する。したがって、決定した酸化マーカーの相対的なレベルに基づいて、ポリソルベート20の酸化分解の程度は、特にどのぐらい酸化分解が既に進行しているかを推定するので、どれだけ多く又はどの程度ポリソルベート20が既に酸化的に分解されているかを推定することができる。さらに正確には、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの量又はレベルとポリソルベート20の量又はレベルの反比例関係(非相関)が存在し、後でより詳細に説明される。
したがって、サンプルは、可能な酸化分解の経路を決定するのに使用することができる。例えば、対応する参照サンプルに対してサンプル(例えば安定性サンプル)に存在する酸化マーカーの著しく高いレベルは、ポリソルベート20の酸化分解の高い度合いを表す。
【0065】
しかし、本文脈では、ポリエチレングリコール-6-ラウレート自体が経時的に分解されるので、比例関係はポリソルベート20の分解プロセス全体で得られないことは考慮に入れなければならない。したがって、本発明の教示が、ポリエチレングリコール-6-ラウレートがまだ分解されておらず、記載される比例関係が得られる範囲に関連し得ることは、当業者は理解できる。
したがって、開示される液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法は、ポリエチレングリコール-6-ラウレートのレベルを決定する分析ツールとして機能し、NBE(新規生物学的製剤)溶液のポリソルベート20の酸化分解のある特定の度合いに対応する。したがって、本発明の方法はまた、ポリソルベート20の酸化分解と非酸化分解とを区別することが可能であり、後でより詳細に説明することができる。
【0066】
- プロセスステップ4
プロセスステップ4では、ステップ3に続いて、ポリエチレングリコール-6-ラウレートは、第2のサンプル及び任意のさらなる各サンプルの相対的なピーク面積に基づいてサンプルにおいて定量化してもよい。本ステップは、ポリソルベート20の酸化分解が、見出したポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルに基づいて、既に行われているか否かを決定するのに十分である場合でもあり得るので、任意のものにすぎない。しかし、実際に行われる酸化分解の程度についての定量的言及が必要とされるか、又は望ましい場合、定量的分析が、いずれの場合でも実行され得る。
定量化は、特に外部較正を介して行う。例えば、ステップ4の定量化は、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの標準溶液を使用して外部較正で実施され得る。本手順は当業者で知られており、したがって、全て詳細に手順を説明する必要はない。
ポリエチレングリコール-6-ラウレートの定量化は、例えば、定量化により得られる絶対値を、確立された制限及び/又は範囲の配列に使用した場合、非常に有用であり得る。
【0067】
- プロセスステップ5
プロセスステップ5は、どの程度ポリソルベート20がポリエチレングリコール-6-ラウレートレベルとポリソルベート20レベルとの(およそ)反比例関係に基づいてサンプルで既に酸化分解されているかを推定することを含む。サンプルのポリソルベート20の酸化分解の度合いは、ステップ3で決定したポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積、又はポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積に基づいてステップ4で決定したポリエチレングリコール-6-ラウレートの量に基づいて推定することができる。
【0068】
したがって、水性製剤においてポリソルベート20の非酸化分解と酸化分解とを区別することが可能であるだけでなく、酸化分解の経路及び進行を、本発明の方法を使用して決定することができる。(およそ)反比例関係は、サンプルの水性製剤の(相対的な)ポリソルベート20のレベル又は含有量を経時的に決定し、サンプルの水性製剤の(相対的な)ポリエチレングリコール6-ラウレートのレベル又は含有量を経時的に決定する場合、決定した値は、2つの曲線にプロットし、互いに比較すると、2つの曲線は(およそ)反比例であるという事実により示される。そうでなければ、曲線は互いに反比例ではないが、ポリソルベート20の酸化分解は起こらない。
【0069】
図2Aに示す通り、後で詳細に記載されるが、酸化分解によるポリソルベート20濃度での低下と酸化分解の間に形成されるポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルの増加との相関性が存在する。近似値に対して、ポリソルベート20の濃度が、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルに反比例することが想定され得る。これは、ポリソルベート20の酸化分解が
図2Aで起こることを示す。これは、方法ステップ3で見出されるポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルに基づいてポリソルベート20の酸化分解の推定を可能にする。
ゆえに、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルに対する高い値は、調査したサンプルでのポリソルベート20の高い分解を意味する。ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルに対する中央値は、試験したサンプルでのポリソルベート20の中程度の分解を意味し、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルに対する低い値は、試験したサンプルでのポリソルベート20の低い分解を意味する。
【0070】
決定した相対的なポリエチレングリコール-6-ラウレートレベルに基づく酸化分解の推定が時間に相関する場合、水性製剤でのポリソルベート20の酸化分解の挙動についての非常に有益な情報が得られる。これは、例えば開発、製造、貯蔵寿命、若しくはその貯蔵期間中の水性製剤の安定性試験、又は水性生物医薬製剤のための安定性試験で、例えば経時的にその質をチェックするために、特に関心がもたれている。
次いで、ポリソルベート20を含有する水性製剤、特に水性生物医薬製剤で、どのくらいポリソルベート20の酸化分解が経時的に進展する可能性が最も高いか、又はどのレベルのポリソルベート20の酸化分解がある特定の時間点で予測できるかを推定することもできる。これは、本発明の方法を使用して実施される水性製剤、例えば生物医薬製剤のポリソルベート20の酸化分解のレベルの推定により誘導することができる。同一又は非常に類似する生物医薬製剤は、同じ又は対応した類似するやり方で挙動する。したがって、推定が可能であり、水性製剤、特に水性生物医薬製剤の開発に特に有用である。
第1の方法、2.代替:
ポリソルベート20を含有する水性製剤においてポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定するための第1の方法(2.代替)の代替的な実施形態では、外部参照サンプルを使用する。この違いを除いて、第1の代替のための説明全てが第2の代替に同じ方法に適用する。
【0071】
- プロセスステップ1’
プロセスステップ1’では、ポリソルベート20を含有する水溶液であり、ポリソルベートの含有量が検査される水性製剤と同じである参照サンプルを提供する。例えば、市販のポリソルベート20を使用することができる。
ポリソルベート20が、通常既にポリエチレングリコール-6-ラウレートを含有するので、ポリソルベート20の水溶液もこれを含有する。
プロセスステップ1’では、塩基値を決定するのに使用される外部参照サンプルは提供され、サンプル中のポリエチレングリコール-6-ラウレートは塩基値に対して決定される。言い換えると、ステップ1での参照サンプルに対する説明は、必要な変更を加えて本明細書に適用する。
【0072】
- プロセスステップ2’
プロセスステップ2’では、検査される水性製剤の第1のサンプル及び任意のさらなるサンプルを提供する。したがって、検査される水性製剤の2つ以上のサンプル、例えば2、3、4、5つ又はそれ以上のさらなるサンプルが、ステップ2’で採取されることを可能にする。サンプルの数は個々の場合に依存する。
サンプルが順に連続する時間間隔T1、T2、T3...で採取する一実施形態によると、時間T1、T2、T3...は、同じ長さ又は異なる長さであり得る。
ステップ1’及び2’でのサンプリングは、専門家に知られているあらゆる手順、例えば人間による手動で又は自動化されたデバイス若しくはシステムにより実施することができる。サンプリングが、以下の分析手順が悪影響を受けないか、又は損なわれないような方法で実施すべきであることは言うまでもない。水性製剤から取り出されるサンプルの量は、サンプルで液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法を実施するのに十分な大きさであるように選択される。当業者は、この分析技術の基礎を熟知している。
【0073】
- プロセスステップ3’
以下のプロセスステップ3’では、液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法を使用して、ポリエチレングリコール-6-ラウレートを分離し、各サンプルでのポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積を決定し、それにより第1のサンプルの代わりに、外部参照を使用する。
【0074】
詳細には、本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法を使用して、ステップ1’の参照サンプルから、ステップ2’の第1のサンプル及び任意のさらなる各サンプルからポリエチレングリコール-6-ラウレートを分離し、それぞれの場合で、参照サンプル、第1のサンプル及び任意のさらなる各サンプルでのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を決定する。次いで、第1のサンプル及び任意のさらなる各サンプルでのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積は、参照サンプルでのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積に対して決定して、第1のサンプル及び任意のさらなる各サンプルの相対的なピーク面積を得る。
各サンプルに対して参照サンプルにおいてポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を決定せず、一旦ピーク面積を決定し、参照としてこの値(ベースライン)を使用することが好都合である。次いで、採取した各サンプルに対して、そのピーク面積を、参照のピーク面積のこの値(ベースライン)に対して決定する。
【0075】
プロセスステップ3’での相対的なピーク面積は、以下の2つの可能性:
- 得られたピーク面積の差を算出することであって、参照サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を、それぞれ、第1のサンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積及び任意のさらなる各サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積から減算して、第1のサンプル及び任意のさらなる各サンプルに対する相対的なピーク面積を得て、算出すること;
又は
- 得られたピーク面積を正規化することであって、参照サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を100%に設定し、第1のサンプル及び任意のさらなる各サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積をそれぞれこれに基づいて算出して、正規化すること
の1つにより決定することができる。
さらに、ステップ3のさらなる説明もまた本明細書に適用する。
【0076】
- プロセスステップ4’及び5’
プロセスステップ4’では、化合物ポリエチレングリコール-6-ラウレートを定量化してもよく、それにより第1のサンプル及び任意のさらなる各サンプルの相対的なピーク面積は基礎として得る。プロセスステップ5’では、どの程度ポリソルベート20がポリエチレングリコール-6-ラウレートレベルとポリソルベート20レベルとの反比例関係に基づいてサンプルで既に酸化分解されているかを推定することが可能である。
プロセスステップ4及び5に対する説明は、プロセスステップ4’及び5’に対応するやり方で本明細書に適用する。
第2の方法:
本発明では、いくつかの水性製剤においてポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定するための(第2の)方法も提供され、特に各水性製剤は、同じ量のポリソルベート20を含有する。水性製剤の数は限定されず、例えば2、3、4、5つ又はそれ以上の水性製剤を使用することができ、特に、最大で10個、最大で20個、最大で50個又はさらにそれ以上の水性製剤を使用することができる。水性製剤は、それらの組成物の点から互いに異なり得るが、特にポリソルベート20の含有量のみ同じになるように選択される。
【0077】
- プロセスステップ1a
プロセスステップ1aでは、ポリソルベート20をそれぞれ含有する検査される各水性製剤のサンプルを提供する。サンプリングは、専門家に知られているあらゆる手順、例えば人間による手動で又は自動化されたデバイス若しくはシステムにより実施することができる。サンプリングが、以下の分析手順が悪影響を受けないか、又は損なわれないような方法で実施すべきであることは言うまでもない。水性製剤から取り出されるサンプルの量は、サンプルで液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法を実施するのに十分な大きさであるように選択される。当業者は、この分析技術の基礎を熟知している。
この第2の方法でのサンプルのピーク面積を互いに比較することができるので、本明細書で参照を使用する必要はない。これは、特に、連続試験を実施する場合に有用である。例えば、異なる製剤組成物を、その安定性について試験することができる。
一実施形態によると、採取したサンプルから参照サンプルを選択し、この参照サンプルについて各サンプルの相対的なピーク面積を決定することも可能である。どのサンプルが参照サンプルとして選択されるかは、場合により変化する。
【0078】
- プロセスステップ2a
プロセスステップ2aでは、液体クロマトグラフィー及び質量分析法をベースにした方法は、ステップ1aの各サンプルからポリエチレングリコール-6-ラウレートを分離し、各サンプルにおいてポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を決定するために使用され、ポリエチレングリコール-6-ラウレートは、ポリソルベート20の酸化分解に対するマーカー物質である。次いで、サンプルのピーク面積は互いに比較し、それにより、サンプルのピーク面積の変化は、ポリソルベート20の酸化分解の度合いに比例する。
ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積は、サンプルを互いに間接的に比較することができるので本明細書で決定する必要はない。
しかし、別の実施形態では、各サンプルの相対的なピーク面積は、参照サンプルに関して決定することができ、参照サンプルは、サンプルの1種である。したがって、第1及び第2の方法に対する説明も本明細書に適用する。
【0079】
- プロセスステップ3a
プロセスステップ3aでは、化合物ポリエチレングリコール-6-ラウレートの任意の定量化は、それぞれのサンプルの得られたピーク面積に基づいて実行される。この目的のために、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの標準溶液を使用する外部較正曲線を提供する。このような手順は、プロセスステップ4及び4’に関連して既に記載されている。
【0080】
- プロセスステップ4a
ステップ3aに続くプロセスステップ4aでは、本明細書に詳述される通り、どの程度ポリソルベート20がポリエチレングリコール-6-ラウレートレベルとポリソルベート20レベルとの反比例関係に基づいてサンプルで既に酸化分解されているかを推定することができる。
したがって、いくつかの水性製剤をこの目的に対して検査するので、第2の方法をまた使用して、ポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定して、非酸化分解と酸化分解とを区別し、経時的な酸化分解の経路を決定することができる。
第2の方法は、例えば品質管理に使用することができる。ゆえに、例えば、いくつかの異なる水性製剤から特に安定な組成物を同定することを可能にする。
続いて、本発明の一部の態様を詳述する。
【0081】
ポリソルベート20特異的酸化マーカーとしてのポリエチレングリコール-6-ラウレート(PEG-6-ラウレート)
実際に、ポリエチレングリコール-6-ラウレートが通常使用され、十分に特徴付けられた物質であり、例えば、洗剤として、又は多様なエステル化した化合物のための遊離体としてのその使用のため科学文献及び様々な特許出願に大規模に記載されており[7]、化粧用組成物、例えばヘアコンディショナー/シャンプーの組成物の添加物質としても知られている[8、9]。ポリエチレングリコール-6-ラウレート(C24H48O8)の分子構造は、以下の通りである:
【0082】
【化2】
しかし、現在まで、ポリエチレングリコール-6-ラウレートは、本明細書に記載されるポリソルベート20の分解に対する分析の酸化性マーカー物質としての機能に関連していない。ポリエチレングリコール-6-ラウレートが、十分に特徴付けられた公知の化合物であるので、当業者は、本明細書に開示される液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法を使用してこれを容易に検出し、同定することは可能である。
【0083】
液体クロマトグラフィーによりここで分離させた化学化合物の混合物は、ポリソルベート20の様々な分解産物であり、既に説明した通り、これ自体既に、異なる物質の混合物である。酸化マーカーポリエチレングリコール-6-ラウレートが、ここでこの混合物から分離されるので、その存在は検出することができる。この目的のために、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法は、とりわけ、以下の通り、改変され、適合させる:
液体クロマトグラフィーは、とりわけ分離クロマトグラフィーとして、特にカラムクロマトグラフィーの形態で使用される。カラムクロマトグラフィーでは、化学化合物の混合物は、1つ又は複数の移動相で溶出される固体固定相を含むカラムを使用して分離する。
【0084】
本発明によると、一実施形態では、逆相クロマトグラフィーは、液体クロマトグラフィーで使用される。逆相クロマトグラフィーでは、順相クロマトグラフィーと対照的に、無極性表面特性を伴う固定相及び極性特性を伴う移動相を使用する。逆相クロマトグラフィーの公知の極性溶媒は、例えば水、メタノール、及びアセトニトリルである。他の溶媒も可能である。
液体クロマトグラフィーでの液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法の一実施形態によると、勾配溶出が使用される。例えば、極性溶媒を含む2つの移動相を使用する。例えば、水は、移動相Aとして使用することができ、ギ酸、例えば1%のギ酸を有利に含有し得るアセトニトリルは、移動相Bとして使用することができる。勾配は、移動相の1つ、特に移動相Bの数パーセント、例えば移動相Bの1~10%、特に1~5%で開始することができ、移動相Bの100%で終了する。次いで、移動相Aは、100%の残りの割合を表す。勾配の線形傾斜を使用することができる。当業者は、使用することができる1つ又は複数の移動相の好適な組成物及び適切な勾配を容易に見つけることができる。
【0085】
試験されるポリソルベート20を含有するサンプルに、極性溶媒を液体クロマトグラフィーを実施する前に添加する場合に有利である。極性溶媒は、特に液体クロマトグラフィーで使用される溶媒である。
本発明の一実施形態では、液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法の一部としての液体クロマトグラフィーは、高性能液体クロマトグラフィーHPLCであり、超高性能液体クロマトグラフィーを使用することができる。UPLCは、より高いポンプ圧を使用するので、HPLCと比較してより効果的である。HPLCのポンプ圧は、通常40MPaであり、UPLCに対してはおよそ100MPaである。UPLCは、HPLCと比較してより小さい粒径の固定相を使用するので、UPLCは、より小さい粒子の分離を可能にする。
一実施形態によると、液体クロマトグラフィーは、逆相クロマトグラフィーを使用する高性能液体クロマトグラフィーにより実行され、これにより、ポリソルベート20に存在する異なるポリソルベート種の分離が、高い疎水性に基づいて実行されることから、ポリエチレングリコール-6-ラウレートは、その疎水性を使用する液体クロマトグラフィーにより分離することができる。手順自体は専門家に周知されている。液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法の改変し、適合させた特徴は本明細書に開示され、当業者は、容易に公知の液体クロマトグラフィー質量分析法の手順を使用し、ポリエチレングリコール-6-ラウレートを分離する本開示による本手順を改変し、適合させることができる。したがって、全て詳細に手順を説明する必要はない。したがって、当業者は、開示される詳細及び与えられた説明に基づいて液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の一部として液体クロマトグラフィーを容易に実行し、最適化することができる。
【0086】
液体クロマトグラフィーが実行された後、分離したポリエチレングリコール-6-ラウレートは、その後、液体クロマトグラフィーを連結した質量分析法により同定することができる。
一実施形態では、質量分析法は、加熱エレクトロスプレーイオン化(HESI)供給源で実施する。
さらなる実施形態では、質量分析法は、高分解能質量分析法(HR-MS)であるように選択される。例えば、高分解能質量分析法は、特に構造解明に使用される。
別の実施形態によると、本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法のデータ評価のために、抽出イオンクロマトグラムが、約487amu、特に486.5~487.5amuを含むか、又はこれらからなる範囲を含む質量荷電比から作成される。ポリエチレングリコール-6-ラウレートは、驚くべきことに、液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした分析により高度に特異的なモニタリングを可能にする質量スペクトラムでの異なったm/z比を呈する。これは、存在する場合、ポリエチレングリコール-6-ラウレートを明瞭に同定することを可能にする。
【0087】
当業者は、開示される詳細及び与えられた説明に基づいて質量分析法を容易に実行することができる。
約487amuの質量荷電比m/z、特に486.5~487.5amuを含むか、又はこれからなる質量荷電比m/zが、特にポリエチレングリコール-6-ラウレートを検出するのに有利で、とりわけ好適である理由を実証するために、
図1A~1Dに示すスペクトルを参照する。
図1A~1Dは、ポリソルベート20の自動酸化を示すのに役立ち、どのようにポリエチレングリコール-6-ラウレートを、本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法を使用してサンプルにおいて分離及び検出により決定することができるか、特に同定することができるかを例示する。
【0088】
水溶液においてポリソルベート20からなるサンプルを調製し、酸化触媒を、2,2’-アゾビス-2-メチル-プロパンイミドアミド、二塩酸塩(当該技術分野では2,2-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩又は2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩とも呼ばれる)(AAPH)の形態でサンプルに添加して、ポリソルベート20の酸化分解を誘導する、すなわち、ポリソルベート20の自動酸化を人工的に誘導する。とりわけ、酸化ストレスを、1.5mM 2,2’-アゾビス-2-メチル-プロパンイミドアミド、二塩酸塩(AAPH)を使用してポリソルベート20水溶液に適用する。サンプル調製の詳細は、実験の節、章「1.1材料」、ポイント「c)人工的にストレスを受けたポリソルベート20のサンプル調製」で説明される。
【0089】
酸化触媒AAPHは、モデル酸化体及びフリーラジカル発生器として知られている水溶性アゾ化合物である。既に記載される通り、ポリソルベート20は、自動酸化の結果として原位置で過酸化物を生成する傾向を有する。したがって、AAPHは、ポリソルベート20の自動酸化を刺激するのに使用される。
さらに、水溶液においてポリソルベート20からなる別のサンプルを調製する。酸化触媒は他のサンプルには添加しない。
【0090】
本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法を使用して、サンプル、酸化触媒が存在する1つのサンプル及び酸化触媒を含まない1つのサンプルを調査する。液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法の一部として使用される質量分析法は、完全走査モードで使用され、得られたスペクトルは比較される。使用される液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法の詳細は、実験の節、章「1.2方法」、ポイント「c)液体クロマトグラフィー質量分析法を介する酸化マーカーPEG-6ラウレート(P6L)(LCMS P6L)の定量化」で記載するが、記載される手順での最終ステップ、すなわちポリエチレングリコール-6-ラウレートの定量化は実施しない。結果は
図1A~1Dに示す。
【0091】
図1Aでは、左側で、本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態から得られる水溶液におけるポリソルベート20の2つの完全走査の全イオンクロマトグラム(TIC)の抽出は、約227amu(226.5~227.5amu)の質量荷電比m/zで示す。約227amuのm/z比を、ポリソルベート20で最も顕著であると知られているラウレートでエステル化した化合物、すなわち特にラウリン酸の1,3-ジオキソラニリウムイオンに対応するように使用する。
図1Aでは、左側で、上部パネルは、酸化触媒AAPHを添加して、ポリソルベート20の酸化分解を人工的に開始させる、ストレスを受けたポリソルベート20溶液のサンプル、すなわち水溶液中のポリソルベート20を示す。
図1Aの左側の下部パネルは、酸化触媒AAPHを添加しない、ポリソルベート20溶液のストレスを受けていないサンプル、すなわち水溶液中のポリソルベート20を示す。
図1Aの左側に示す表は、上部パネルにわたって、酸化触媒AAPHあり(
図1Aで「1.5mM AAPH」と呼ばれる)及び酸化触媒AAPHなし(
図1Aで「AAPHなし」と呼ばれる)での左側に示すスペクトルの見られたピーク並びにピーク面積を概説する。
【0092】
ストレスを受けていないサンプル(
図1A、左側、下部パネル)をAAPHでストレスを受けたサンプル(
図1A、左側、上部パネル)と比較して、およそ3.4倍の約18.4分の保持時間で溶出する構造、すなわちポリエチレングリコール-6-ラウレートの増加が、ストレスを受けたサンプルで観察される。
図1Aでは、右側では、本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態から得られる水溶液におけるポリソルベート20の2つの完全走査の全イオンクロマトグラム(TIC)の抽出を示し、両方とも約487amu(486.5~487.5amu)の質量荷電比m/zで、上部クロマトグラムでは酸化触媒AAPHを添加し、下部クロマトグラムは酸化触媒AAPHを含まないことを示す。しかし、
図1Aでの両方のクロマトグラムは、右側で、約487amu(486.5~487.5amu)の質量荷電比m/zで示す。これらのクロマトグラムでは、約18.4分でのピークが、約227amuの質量荷電比m/z(
図1A、左側)でのクロマトグラムにおいて約18.4分でのピークより、驚くべきことに、20倍高い(
図1A、右側)ことが分かる。結果として、クロマトグラムが、約487amuを含むか、又はこれからなるm/z比で、選択性が高く、干渉が小さく、感受性が高く、シグナルがAAPHストレスの後に約18.4分の保持時間で約20倍増加すると結論付けることができる。
【0093】
データ評価に基づいてクロマトグラム間の差を示すために、
図1Bを参照する。
図1Bでは、酸化的にストレスを受けたポリソルベート20水溶液において本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態から得られるイオンクロマトグラム、すなわち、全イオンクロマトグラム(TIC;上部クロマトグラム)、約227amuの質量荷電比m/zで生成された抽出イオンクロマトグラム(m/z226.5×からm/z227.5amuまで;中央クロマトグラム)、及び約487amuの質量荷電比m/zで生成された抽出イオンクロマトグラム(m/z486.5×からm/z487.5amuまで;下部クロマトグラム)を示す。上部クロマトグラムでは、いくつかのピークが重なる。約227amu(226.5~227.5amu)のm/z比で生成された中央の抽出イオンクロマトグラムでは、約18.4分の保持時間でおそらく2つのピークからの干渉が存在する一方、酸化マーカー(「PEG-6-ラウレート」と呼ばれる)ポリエチレングリコール-6-ラウレートのピークは含まれる。約487amu(486.5~487.5amu)を含むm/z比で生成された下部の抽出イオンクロマトグラムでは、質量スペクトラムが約487amuを含むm/z比であるので、優れた選択性及び感受性を有する酸化マーカーポリエチレングリコール-6-ラウレートの単一のピークが存在する。ゆえに、約487amuを含むか、又はこれからなるm/z比は、約227amuを含むか、又はこれからなるm/zと比較して、優れた選択性及び感受性を示す。したがって、供給源での遊離脂肪酸の断片化を伴って約227amuを含むか、又はこれからなるm/z比が、供給源での断片化を伴わないで約487amuを含むか、又はこれからなるm/z比より著しく好適ではないことを理解することができる。したがって、約487amuを含むか、又はこれからなる質量荷電比m/zを使用した液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法のデータ評価は、特に有利であり、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法においてポリエチレングリコール-6-ラウレートを検出するのにとりわけ好適である。
【0094】
これに関して、487amuの質量荷電比に対する値が約487amuの値をむしろ表すことを留意すべきである。したがって、本発明によると、質量荷電比は、特に、約487amuに相当する486.5~487.5amuの範囲である。
【0095】
約18.4分で溶出したピークの基礎となる構造が、先に同定され、ポリエチレングリコール-6-ラウレートを実際に表すことを実証するために、高分解能質量分析法を使用する液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法を実施する。高分解能質量分析法を使用する液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法の詳細は、実験の節、章「1.2方法」、ポイント「b)高分解能質量分析法(HR-MS)」に記載される。
【0096】
デコンボリューション質量スペクトラムは
図1Cに示し、約443Da、約487Da及び約531Daを有する一連の構造を示す。これらの構造は、それぞれ5、6及び7のオキシ-エチレン単位を含むラウレートでエステル化したPOE(ポリオキシエチレン)鎖フラグメントのナトリウム付加物としてモノアイソトピックピークの厳密な決定を介して同定することができた。対応する分子構造は以下の通りである:
約443Daでピーク:C
22H
44O
7(PEG-5-ラウレート)のナトリウム付加物、
約487Daでピーク:C
24H
48O
8(PEG-6-ラウレート)のナトリウム付加物、及び
約531Daでピーク:C
26H
52O
9(PEG-7-ラウレート)のナトリウム付加。
【0097】
ポリエチレングリコール-6-ラウレート(本明細書でPEG-6-ラウレート又はP6Lとも呼ばれる)は、約487Daで最大のシグナル強度を示す。本明細書で同定されるこれら3つの構造が、潜在的な酸化機構としてPOE鎖の還元を提案する当該技術分野の概念[1、2]に対応することが特に重要である。ゆえに、これらの構造から、ポリソルベート20の酸化が本経路を介して起こる証拠が提供される。
【0098】
直交するアプローチ(合成及び再分析によるポリエチレングリコール-6-ラウレートの化学構造の検証)によりポリエチレングリコール-6-ラウレートの同定及び構造を明瞭に提供するために、ChiroBlock GmbH、Bitterfeld-Wolfen、ドイツにより合成した市販のポリエチレングリコール-6-ラウレートを購入し、本発明の液体クロマトグラフィー質量分析をベースにした方法により分析し、ストレスを受けたポリソルベート20溶液(AAPHを添加した水溶液中のポリソルベート20)のサンプルと直接比較した。
図1Dは、本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態から得られる、市販のポリエチレングリコール-6-ラウレートの上部の質量スペクトラム(上部パネル)及び下部の質量スペクトラムに、AAPHでストレスを受けたポリソルベート20からのポリエチレングリコール-6-ラウレートのサンプル(下部パネル)を示す。
図1Dから得ることができる通り、それぞれ487.32497Da及び487.32493Daでの上部スペクトル及び下部スペクトルでのポリエチレングリコール-6-ラウレートは、実験的に決定された値と非常によく一致し、市販のポリエチレングリコール-6-ラウレートが、実験的に決定された酸化マーカーポリエチレングリコール-6-ラウレートに対応することを示し、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの酸化マーカー構造の同定を確認する。最後の小数位の異なる数値は、測定誤差によるものであるが、測定の変異性内にある。
【0099】
ポリソルベート20の分解とポリエチレングリコール-6-ラウレート濃度との相関
ポリソルベート20の酸化マーカーは、ポリソルベート20の酸化分解の進行と共にますます形成されるので、ポリソルベート20の含有量の低下が、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの含有量の増加を伴うことが望まれる。実際に、ポリソルベート20の酸化分解と酸化マーカー物質の相対的なレベルの検出との直接的な相関性が存在することを確認することができ、これは、以下に説明する。
相対的なポリエチレングリコール-6-ラウレートレベルとポリソルベート20の人工的に誘導された分解との相関性を調査するために、ポリソルベート20サンプルは、2,2’-アゾビス-2-メチル-プロパンイミドアミド、二塩酸塩(AAPH)を添加することにより、ポリソルベート20の自動酸化を刺激するように選択される好適な温度で人工的に分解される。サンプルの調製に対して、実験の節、章「1.1材料」、ポイント「c)人工的にストレスを受けたポリソルベート20のサンプル調製」を参照する。
【0100】
ポリソルベート20の酸化分解の進行を評価するために、サンプルは異なる時点で採取する。ポリソルベート20の酸化分解の進行はまた、ストレス期間として本明細書で呼ばれる。詳細には、ポリソルベート20濃度、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベル及び人工的に酸化させたポリソルベート20の無処置のポリソルベート20の種の相対的なレベルは、異なるサンプリング点で決定する。ポリソルベート20濃度をHPLC-CADを介してサンプルで分析し、サンプルに存在する酸化マーカーポリエチレングリコール-6-ラウレート並びに無処置のポリソルベート20の種のレベルは、本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態を介して評価される。
HPLC-CADにより実施されるポリソルベート20濃度の分析の詳細な説明のために、実験の節、章「1.2方法」、ポイント「d)高性能液体クロマトグラフィー荷電エアロゾル検出(HPLC-CAD)を介するポリソルベート20の定量化」を参照する。
【0101】
本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態を介した酸化マーカーポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルの分析の詳細な説明のために、実験の節、章「1.2方法」、ポイント「c)液体クロマトグラフィー質量分析法を介する酸化マーカーPEG-6ラウレート(P6L)(LCMS P6L)の定量化」を参照する。
本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態を介したサンプルに存在する無処置のポリソルベート20の種の相対的なレベルの分析の詳細な説明のために、実験の節、章「1.2方法」、ポイント「a)液体クロマトグラフィー質量分析法を介した無処置のポリソルベート20の種(LC-MS POE)のスクリーニング」を参照する。
【0102】
分析の結果は
図2Aに示し、ポリソルベート20濃度[mg/mL](左側y軸)及び酸化性マーカー(「Oxmarker」と呼ばれる)ポリエチレングリコール-6-ラウレート(右側y軸)の相対的なピーク面積は、時間[時間]に対してプロットされる。HPLC-CADで測定されるポリソルベート20濃度は、三角を有する曲線に示す一方、本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態で測定される酸化マーカーポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルは、丸を有する曲線に示す。
【0103】
図2Aでは、三角を有する曲線で表されるポリソルベート20濃度は、0.043mg/mL(0時間)から0.009mg/mL(35時間)への連続した低下を示し、これはサンプリング時間T
0(0時間)からサンプリング時間T
6(35時間)への79%のポリソルベート20濃度の喪失に対応する。これは、ポリソルベート20の分解の進行を通して、ポリソルベート20濃度での連続した低下を観察したことを意味する。加えて、HPLC-CAD法は、安定性を示すHPLC法として確認を行い(データは示さず)、AAPHを使用するポリソルベート20の分解が確実に、正確に再現され、実証されることを見出す。結果として、ポリソルベート20の分解の進行を表す測定した曲線(三角を有する曲線)は、確実に、厳密に値を示す。
【0104】
さらに、酸化マーカーポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルは、本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態を介して評価した。液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)分析のデータもまた
図2Aに示す。参照サンプルは、時間T
0に採取する。ポリソルベート20の検出した分解と一致し、相関するので、丸を有する曲線で表されるポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積は、最大でサンプリングの時点T
4(12時間)(
図2Aを参照)まで増加し、次いでわずかに減少することを示す。12時間後、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルは、減少するが、初期レベルより高い状態を維持する。次いで、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルは、再び、24時間後にわずかに減少し、この時点までにポリソルベート20の分解がより進行していることと一致する。これに関して、ポリエチレングリコール-6-ラウレートが、ポリソルベート20の酸化分解の中間生成物にすぎず、これがさらに分解され、24時間後にポリエチレングリコール-6-ラウレートレベルの観察された減少をもたらすことは留意すべきである。したがって、ポリソルベート20濃度の減少が、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルの増加に相関することが実際に示される。
【0105】
これは、当業者が容易に決定することができる範囲で、ポリエチレングリコール-6-ラウレートとポリソルベート20との間に明らかな非相関性があり、ポリソルベート20の人工的な酸化分解に対する直接的なマーカーとしてのポリエチレングリコール-6-ラウレートの適合性を実証することを意味する。
既に記載した通り、ポリソルベート20は、単一の物質ではないが、一連の異なる物質及び種の混合物を表す。ポリソルベート20の自動酸化は、ポリソルベート20に存在する全ての化合物及び種に影響を及ぼす。したがって、ポリソルベート20の人工的に引き起こした自動酸化及び分解が実際に起こり、他の化合物も網羅するか否かをチェックした。ゆえに、ポリソルベート20出発物質に存在するいくつかの無処置のポリソルベート20の種、すなわちポリソルベート20に存在するポリオキシエチレンエステルの相対的なレベルは、本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法の実施形態により、ポリソルベート20の分解の前(参照、時間T
0=0時間)及びポリソルベート20の分解の間に分析する。結果は、ポリソルベート20の無処置のポリソルベート20の種の見出される相対的なピーク面積が時間[時間]に対してプロットされている
図2Bのブロック図に示す。分析される無処置のポリソルベート20の種は、POE-ソルビタンモノC12、POE-イソソルビドモノC12、POEモノC12及びPOE-ソルビタンジC12であり、その化学構造は、
図3([10]を参照)に示す。
【0106】
図2Bは、種POE-ソルビタンモノC12、POE-イソソルビドモノC12及びPOE-ソルビタンジC12に対する相対的なレベル(相対的なピーク面積)の連続した減少を示し、その全ては、酸化ストレスの期間の増加とともに減少する。最も大きい減少は、実験中にポリソルベート20において酸化分解に感受性があると見出された種POE-ソルビタンジC12で観察される(データは示さず)。換言すると、溶液でのポリソルベート20の分解は、
図2Bに示すように液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態で見出される無処置のポリソルベート20の種の相対的なレベルにより確認される。
したがって、ポリエチレングリコール-6-ラウレートレベルと無処置のポリソルベート20レベルとの間に明らかな非相関性が存在し、ポリソルベート20の人工的な酸化分解に対する直接的なマーカーとしてのポリエチレングリコール-6-ラウレートの適合性を実証する。
【0107】
賦形剤及び任意の他の成分を含む水性製剤
ポリエチレングリコール-6-ラウレートが、人工的に酸化ストレスを受けたサンプルに対する確かな(authenthic)酸化マーカーとして機能することを見出す。酸化マーカーとして使用するために、ポリソルベート20の異なる分解経路を区別できるように、周囲条件下、とりわけ水性生物医薬製剤においても、補充した触媒の人工的な影響なしに確実で正確であることを決定することを可能にすべきである。これに関連して、例えば水性生物医薬製剤に典型的に存在する製剤の賦形剤が、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの決定に干渉していないことを確認することも重要である。
実際に、ポリソルベート20の酸化分解での酸化マーカーとしてのポリエチレングリコール-6-ラウレートの存在が、人工的に生成した酸化分解に適用するだけでなく、この酸化マーカーもまた水性製剤でのポリソルベート20の天然に存在する酸化分解の間に起こることを見出す。水性製剤における様々な通常の製剤の賦形剤の存在が、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの決定に干渉せず、いかなる形でも本発明の方法に悪影響を及ぼさないことも見出した。
さらに、1種又は複数のタンパク質のような他の成分の存在もまた、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの決定を妨害しない。
【0108】
有利に使用することができるタンパク質は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体、単鎖抗体若しくはその抗体フラグメント、例えばFv、scFv、Fab、Fab’、scFab、F(ab’)2、Fab2、Fc及びFc’フラグメント、重鎖及び軽鎖の免疫グロブリン鎖並びにこれらの定常、可変若しくは超可変領域並びにFv及びFdフラグメント、二重特異性抗体、三重特異性抗体、scFv-Fc、ミニボディ、若しくは単一ドメイン抗体、又はその混合物から選択される。
したがって、水性製剤は、通常の製剤賦形剤を含む水性製剤であり得る。これは、生物医薬の分野で使用することができる水性製剤であり得、1種又は複数の賦形剤及びタンパク質のような任意の1種又は複数の他の成分を含む。
【0109】
生物医薬製剤としての水性製剤
一実施形態によると、水性製剤は、水性生物医薬製剤であり得る。水性生物医薬製剤は、薬学的に許容されるポリソルベート20、1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤、及び任意の1種又は複数の医薬品有効成分(API)を含有し得る。薬学的に許容されるポリソルベート20の例は既に記載されている。生物医薬製剤で使用することができる薬学的に許容される賦形剤は、当業者に周知されている。
1種又は複数の医薬品有効成分(API)は、例えば、疾患又は障害の予防又は処置に使用される治療用タンパク質から選択される1種又は複数のタンパク質であり得る。
したがって、酸化マーカーはまた、ポリソルベート20の酸化分解が既に起こっているか否かを決定するために、水性生物医薬製剤に関連して使用することもできる。本発明の方法がまた、水性生物医薬製剤で機能することは、以下の調査から実証され、確認される。
【0110】
ポリソルベート20の酸化分解は、いくつかの水性生物医薬製剤で調査する。この目的のために、mAb-1製剤及びmAb-2製剤と呼ばれる2種の異なるモノクローナル抗体製剤、並びにmAb-1製剤に対するプラセボを使用した。mAb-1製剤に対するプラセボは、モノクローナル抗体mAb-1が存在しないが、mAb-1製剤と同じ水性生物医薬製剤である。
mAb製剤並びにプラセボ製剤の両方は、水性製剤であり、薬学的に許容されるポリソルベート並びに薬学的に許容される賦形剤を含有する。mAb-1及びmAb-2モノクローナル抗体に詳細な情報、並びに水性生物医薬製剤の組成物、すなわちmAb-1製剤及びmAb-2製剤並びにmAb-1製剤に対するプラセボは、実験の節、章「1.1材料」、ポイント「a)モノクローナル抗体」で見出すことができる。
加えて、mAb-1製剤で使用されるmAb-1を、異なる変法、すなわち変法A及び変法Bにより調製し、それにより変法Bの下流プロセスを、宿主細胞の不純物の除去について最適化した。したがって、mAb-1製剤は、変法A及びBで、2つの代替物で検査した。
【0111】
また、mAb-2製剤で使用されるmAb-2は、異なる変法、すなわち変法A及び変法Bで調製した。変法Aは実験室規模で実施し、変法Bは生物医薬的な植物で実施した。したがって、mAb-2製剤はまた、変法A及びBで、2つの代替物で検査した。
モノクローナル抗体mAb-1及びmAb-2は、両方とも、疾患又は障害の予防又は処置に使用される治療用タンパク質である。
経時的にポリソルベート20の酸化分解を調査するために、上述したmAb-1製剤は、AAPHのようないかなる人工的な酸化触媒も添加せずに、室温(25℃)で3カ月貯蔵し;mAb-2製剤は、AAPHのようないかなる人工的な酸化触媒も添加せずに、室温(25℃)で6カ月貯蔵した。
【0112】
最初に、mAB-1製剤及び対応するプラセボ製剤に対するポリエチレングリコール-6-ラウレート酸化マーカーのポリソルベート20濃度及び相対的なレベルは、異なるサンプリング時間で決定した。結果は
図4A及び4Bに示す。
図4Aは、HPLC-CAD分析により決定される時間[カ月]に対してプロットされた、ポリソルベート20濃度[mg/mL]を示す。HPLC-CAD分析の詳細は、実験の節、章「1.2方法」、ポイント「d)高性能液体クロマトグラフィー荷電エアロゾル検出(HPLC-CAD)を介するポリソルベート20の定量化」に見出すことができる。
図4Bは、本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法で決定される時間[カ月]に対してプロットされた、相対的なピーク面積[%]に基づくポリエチレングリコール-6-ラウレート酸化マーカーの相対的なレベルを示す。方法の詳細のために、実験の節、章「1.2方法」、ポイント「c)液体クロマトグラフィー質量分析法を介する酸化マーカーPEG-6ラウレート(P6L)(LCMS P6L)の定量化」を参照する。
【0113】
図4Aでは、両方のmAb1製剤は、mAb-1が2つの異なる変法A及びBを使用して生成されるが、異なる反応速度論にもかかわらず、それぞれポリソルベート20レベルの低下を示す。また、プラセボ製剤は、ポリソルベート20レベルの低下を示す(三角を有する曲線)。
詳細には、
図4Aでは、mAb-1製剤は、変法Aから生じるが(丸を有する曲線:mAb-1(変法A))、HPLC-CADにより測定された、貯蔵期間の全ポリソルベート20の著しい喪失を示す。変法Aと対照的に、変法B(四角を有する曲線:mAb-1(変法B))では、下流プロセスは、宿主細胞の不純物の除去について最適化したので、貯蔵期間に実質的に安定であるmAb-1製剤を得、できるだけ最小にするポリソルベート20の分解を示す。
【0114】
図4Bでは、プラセボ製剤(三角を有する曲線:mAb-1製剤に対するプラセボ)のみ、ポリエチレングリコール-6-ラウレート酸化マーカーの相対的なレベルでの増加を示す。さらに、
図4Bで分かる通り、mAb-1製剤の変法A及びBの両方は等しく、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルでの増加を示さない。しかし、対応するプラセボ製剤と比較する場合、プラセボ製剤でのポリソルベート20の著しい喪失は、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルでの同時増加(
図4B:三角を有する曲線も)と合わせて観察される(
図4A:三角を有する曲線)。宿主細胞タンパク質(HCP)で引き起こされる分解がプラセボ製剤で除外することができるので、ポリソルベート20の喪失は、酸化分解によるべきである。
さらに、mAb-1製剤の変法A及びBの両方が、
図4Bに示すポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルでの増加を示さないので、ポリソルベート20の酸化分解は、両方のmAb-1製剤で起こらない。さらに、mAB-1製剤でのポリソルベート20、変法Aが、酸化分解ではなく加水分解にかけることは、
図4A及び4Bから想定され得る。
結果として、
図4A及び4Bは、見出されるポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルに基づいてポリソルベート20の分解での非酸化分解と酸化分解とを区別するが可能であることを明らかに実証する。
【0115】
実際に、安定性研究は、上記の結論を確認する。この理由のために、安定性研究を実施した。変法Aによって調製したmAb-1製剤に対するプラセボ及びmAb-1製剤を、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)の方法を使用して分析した。見出されるデータは、
図5A及び5Bの棒グラフに示す。
図5A及び5Bは、3カ月間の製剤の安定性研究を示し、時間[カ月]に対してプロットされている相対的なピーク面積を、本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法の実施形態によるLC-MS-POE及び液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)の方法によるLC-MS-FFAで分析した。LC-MS-POE及びLC-MS-FFAの方法の詳細は、実験の節(章「1.2方法」、ポイント「a)液体クロマトグラフィー質量分析法を介した無処置のポリソルベート20の種(LC-MS POE)のスクリーニング」及び章「1.2方法」、ポイント「e)液体クロマトグラフィー質量分析法を介した遊離脂肪酸(FFA)(LC-MS FFA)の決定」)に説明する。LC-MS-FFAに対するデータは、示していない。
図5Aは、mAb-1製剤に対するプラセボの安定性研究を表す3カ月間の相対的なピーク面積[%]としての無処置のポリソルベート20の種の含有量レベルのブロック図を示す。また、無処置のポリソルベート20の種は、酸化ポリソルベート20の分解が起こる前(参照、開始)及び最大3カ月観察されるポリソルベート20の酸化分解の間、ポリソルベート20に存在する化合物である。分析される無処置のポリソルベート20の種は再び、POE-ソルビタンモノC12、POE-イソソルビドモノC12、POEモノC12及びPOE-ソルビタンジC12であり、その化学構造は、
図3([10]を参照)に示す。
【0116】
図5A及び5Bでは、水性製剤の第1のサンプルは参照サンプルとして採取しないが、別の参照サンプルは使用される。別の参照サンプルは、水溶液においてポリソルベート20(市販の原料)である(図に示さず)。相対的なピーク面積の決定に対して、記載される正規化の手順を使用する。別の参照サンプルを使用するので、出発サンプルの相対的なピーク面積は100%ではない。
図5Bは、mAb-1製剤(変法A)に対する安定性研究を表す3カ月間の相対的なピーク面積[%]としての無処置のポリソルベート20の種の相対的なレベルのブロック図を示す。安定性貯蔵期間にわたる無処置のポリソルベート20の種のプロファイルの比較は、
図5BでのmAb-1製剤(変法A)に対する全ての種の減少を示し、対応するプラセボ製剤のみ、POE-ソルビタンジC12の明らかな減少を示す。
mAb-1製剤(
図5B)と比較したプラセボ製剤(
図5A)のポリソルベート20でのPOE-ソルビタンジC12の大きい減少は、POE-ソルビタンジC12のようなジエステル化したポリソルベート20の種が、立体障害により酵素的分解に感受性がほとんどない一方、典型的に、酸化分解の間に高速で減少するという事実から説明することができる(
図5A参照)[1]。
【0117】
図4Bに示すようなプラセボ製剤におけるポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルの増加により、これは、プラセボ製剤においてポリソルベート20の酸化分解を明らかに示す。
ゆえに、ポリエチレングリコール-6-ラウレートはまた、生物医薬製剤での酸化分解経路の存在に対するマーカー物質として機能することができる。
したがって、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルは、人工的な酸化触媒を含まない適切な貯蔵条件下、これらの水性生物医薬製剤で検出することができ、ポリエチレングリコール-6-ラウレートがまた、天然の生物医薬製剤において信頼性が高い酸化マーカーでもあることを示す。
【0118】
多くの他の実験を行ったが、全てでポリエチレングリコール-6-ラウレートがポリソルベート20の酸化分解に対する信頼性が高い酸化マーカーであることが確認され、また通常の賦形剤及び/又は医薬品有効成分(API)の存在と関係なく、水性生物医薬製剤において決定することができる。
ポリエチレングリコール-6-ラウレートが天然の水性生物医薬製剤に効果的な信頼性が高い酸化マーカーであることを実証するために、水性生物医薬製剤、すなわちmAb-2製剤を含有する別のモノクローナル抗体の結果は、以下に示す(モノクローナル抗体mAb-2並びに水性生物医薬製剤、すなわちmAb-2製剤の組成物の詳細な情報は、実験の節、章1.1、ポイントa)に示す)。
この場合、mAb-2製剤を調査したが、mAb-2は、2つの異なるプロセス、すなわちバリアントA及びバリアントBで調製される。変法Aは実験室規模で実行し、変法Bは生物医薬的な植物で実行した。データは
図6A及び6Bに示す。
【0119】
図6Aは、HPLC-CAD分析により決定される時間[カ月]に対してプロットされた、ポリソルベート20濃度[mg/mL]を示す(詳細は、実験の節、章1.2、ポイントd)を参照する)。
図6Bは、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法で決定される時間[カ月]に対してプロットされた、相対的なピーク面積[%]に基づくポリエチレングリコール-6-ラウレート酸化マーカーの相対的なレベルを示す(詳細は、実験の節、章1.2、ポイントc)を参照する)。
図6Aで分かる通り、変法Aで調製されるmAb-2製剤及び変法Bで調製されるmAb-2製剤は、異なる反応速度論にもかかわらず、それぞれ、同程度である速度の全ポリソルベート20の分解を示す。しかし、
図6Bに示す通り、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルの増加は、mAb-2製剤の変法A(三角を有する曲線)でのみ検出され、両方の変法が、それらの分解経路で異なることを示し、それにより変法Aのみ、ポリソルベート20の酸化分解を示す、安定性貯蔵の間のポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルの増加を示す。
【0120】
したがって、
図6A及び6Bはまた、見出されるポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルに基づいて、水性生物医薬製剤でのポリソルベート20の分解での非酸化分解と酸化分解とを区別するが可能であることを実証する。その分離及び検出によるポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルの決定は、1種又は複数の賦形剤の存在と関係なく、1種又は複数のタンパク質、例えば治療用タンパク質の存在と関係なく可能である。
また、これは、LC-MS-POE及びLC-MS-FFAで見出されるmAb-2製剤の変法A及びBの安定性研究に対するLC-MS特徴付けデータと良好に対応する(LC-MS-POE及びLC-MS-FFAの方法の詳細は、実験の節、章1.2、ポイントa)及び章1.2、ポイントe)で説明される)。LC-MS-FFAに対するデータは、示していない。
【0121】
結果は、
図7A(変法B)及び
図7B(変法A)に示される。
図7A及び7Bでは、
図5A及び5Bと異なり、調査中の水性製剤の第1のサンプルは、参照サンプルとして使用される。相対的なピーク面積の決定に対して、記載される正規化の手順を使用する。第1のサンプルが参照サンプルとして機能するので、出発サンプルの相対的なピーク面積は100%である。
図7A及び7Bでは、mAb-2製剤の両方の変法は、無処置のポリソルベート20の種の減少を示す。しかし、変法A(
図7B)のみ、
図6B(三角を有する曲線)に示すようにポリソルベート20の酸化分解を示す安定性貯蔵の間のポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルの増加を示す。酸化分解は、ジエステル化したポリソルベート20の種が立体障害により酵素的分解に感受性がほとんどないことからmAb-2製剤の変法Aに対するジエステル化した種POE-ソルビタンジC12の減少により確認されるが(
図7B)、典型的に、酸化分解の間の減少を示す[1]。
【0122】
ポリエチレングリコール-6-ラウレートが実際に天然の水性生物医薬製剤に信頼性が高い酸化マーカーであることのさらなる証拠として、
図8A及び8Bでは、水性生物医薬製剤、すなわちmAb-4製剤及びmAb-4製剤に対するプラセボを含有する別のモノクローナル抗体の結果を示す(モノクローナル抗体mAb-4並びに水性生物医薬製剤及びプラセボ製剤の組成物、並びに安定性条件の詳細な情報は、実験の節、章1.1、ポイントa)及びb)に示す)。
図8Aは、HPLC-CAD分析により決定される時間[カ月]に対してプロットされた、ポリソルベート20濃度[mg/mL]を示す(詳細は、実験の節、章1.2、ポイントd)を参照する)。
図8Bは、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法で決定される時間[カ月]に対してプロットされた、相対的なピーク面積[%]に基づくポリエチレングリコール-6-ラウレート酸化マーカーの相対的なレベルを示す(詳細は、実験の節、章1.2、ポイントc)を参照する)。
図8Aで分かる通り、mAb-4製剤(三角を有する曲線)は、実質的に、無処置のポリソルベート20の種の濃度の減少を示さないが、抗体を含有しないmAb-4製剤に対するプラセボ(点を有する曲線)は、安定貯蔵の間、無処置のポリソルベート20の種の濃度の著しい減少を示す。したがって、2つの曲線は、プラセボ製剤でのみ、ポリソルベート20の明らかな分解が存在し、ポリソルベート20は、6カ月後に実質的に完全に分解されることを示す。
【0123】
図8Bは、本発明のLC-MSをベースにした方法によると、ポリエチレングリコール-6-ラウレートが、プラセボ製剤で大きな程度まで、ポリソルベート20の分解産物として形成されるが、mAb製剤は、PEG-6-ラウレートレベルでほとんど増加を示さないことを示す。したがって、
図8A及び8Bの曲線は、一時的に互いに非相関である。
したがって、ポリエチレングリコール-6-ラウレートは、人工的な条件下だけでなく、天然の水性製剤、例えば生物医薬製剤及びサンプルの安定性試験においても真の酸化マーカーとして機能する。マーカー物質、特にその相対的なレベルは、1種又は複数の医薬品有効成分(API)、例えばタンパク質、特にモノクローナル抗体の存在及び非存在の両方で、酸化分解を示すことが可能である。
酸化マーカーポリエチレングリコール-6-ラウレートはまた、1種又は複数の医薬品有効成分(API)を伴うか又は伴わず、1種又は複数の賦形剤を伴うか又は伴わずに、水性製剤、特に水性生物医薬製剤でのポリソルベート20の分解において非酸化分解と酸化分解とを区別することが可能である。
【0124】
方法の実施
したがって、本発明の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法は、特に相対的なピーク面積又はその相対的なレベル及びポリエチレングリコール-6-ラウレートの任意の定量化の観点から、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの分離、検出、同定に使用されるように適合させた。液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法が実行可能で、信頼性が高い試験方法であることを検証するために、方法を、公知の当該技術分野のデータによって直線性、特異性、真正性、頑健性及び精度について調査した[11、12]。
存在するポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルについての直線的で、厳密で、正確で、特異的な信頼性が高い結果を提供する好適な方法であることを見出した。詳細は、実験の部(章「2.LC-MS P6Lの方法の実施の特徴付け」及び
図8)に示す。
【0125】
本発明のさらなる対象
本発明によると、組換えタンパク質を生成するプロセス(第3の方法)であって、以下のステップ:
組換えタンパク質を発現する真核細胞を細胞培養で培養するステップa);
組換えタンパク質を採取するステップb);
水性製剤を使用する組換えタンパク質を精製するステップc);
ポリソルベート20を使用して、組換えタンパク質を投与に好適な薬学的に許容される水性製剤に製剤化するステップd);及び
ステップd)の薬学的に許容される水性製剤の少なくとも1つのサンプルを得るステップe);
を含み、
プロセス(第3の方法)が、ステップe)で得られたサンプルで本発明で開示されるポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定するための方法(第1又は第2)を実施することをさらに含む、プロセスも提供する。
【0126】
一実施形態によると、組換えタンパク質を生成するための上記のプロセス(第3の方法)は、上述したステップe)において組換えタンパク質及びポリソルベート20を含有する少なくとも1つのサンプルを得るステップを含み、ステップd)からのサンプルは、原薬サンプル又は医薬品サンプルである。
本発明の上記のプロセスの組換えタンパク質は、発現に続いて真核細胞で生成され、組換えタンパク質は採取し、さらに精製する。組換えタンパク質は、採取した細胞培養流体(HCCF)での分泌タンパク質として培養培地から、又は細胞溶解物(すなわち、細胞膜及び任意の細胞壁の酵素的、化学的、浸透、機械的、及び/又は物理的破壊を含むが、限定されないあらゆる手段で溶解させた細胞の含有物を含有する流体)から回収し、当該技術分野で周知されている技術を使用して精製することができる。次いで、組換えタンパク質を、ポリソルベート20を使用して投与するのに好適な薬学的に許容される水性製剤に製剤化し、組換えタンパク質及び製剤化した組換えタンパク質のポリソルベート20を含有する少なくとも1つのサンプルを得る。
【0127】
上述したプロセス(本発明の第3の方法)は、ステップe)で得られたサンプルで本発明で開示されるポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定するための方法(本発明の第1の又は第2の方法)を実施することをさらに含む。
本発明はまた、ポリソルベート20をそれぞれ含有する水性製剤又はいくつかの水性製剤においてポリソルベート20の酸化分解に関連した方法、特に本明細書に開示される(第1又は第2の)方法における酸化マーカーとしてのポリエチレングリコール-6-ラウレートの使用を対象とする。
本発明の対象はまた、水性製剤においてポリソルベート20の酸化分解を決定するための、ポリソルベート20をそれぞれ含有する水性製剤又はいくつかの水性製剤の開発、製造、貯蔵寿命、又は貯蔵期間中の安定性試験としての本明細書に開示される(第1又は第2の)方法の使用である。
【0128】
本発明の利点は多種多様である。
ポリソルベート20は、水性製剤に存在する成分を安定化するその公知の機能により特に重要であるので、その公知の自動酸化は、水性製剤の酸化分解と結果として起こる障害をもたらす。ポリソルベート20の酸化分解をモニタリングすることは、ここで、分解を示す化合物を使用する第1の時間に可能となる。これはポリエチレングリコール-6-ラウレートであり、ポリソルベート20の酸化分解の酸化マーカーである。当該技術分野では、ポリソルベート20に対する酸化マーカーは、様々な提案された分解機構に基づいて仮定されているが、これらは、ポリソルベート20の酸化分解プロセスの真の構成要素として実験的にまだ同定されていない。
ポリエチレングリコール-6-ラウレートが、実際に、ポリソルベート20の自動酸化が酸化触媒の添加により人工的に生じる場合、ポリソルベート20を含有する溶液に対する酸化マーカーであることを実証することができる。しかし、酸化分解に特異的なポリエチレングリコール-6-ラウレートはまた、酸化触媒を添加せずにポリソルベート20を含有する水性製剤を貯蔵する間、すなわちポリソルベート20の酸化分解が自然に起こる場合に生じる。
したがって、ポリエチレングリコール-6-ラウレートは、人工的にストレスを受けたサンプルに対する確かな酸化マーカーとして機能するだけでなく、水性製剤、例えば水性生物医薬製剤において信頼性が高く、正確な酸化マーカーである。
【0129】
本発明によると、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法は、水性製剤での相対的なレベルの酸化マーカーポリエチレングリコール-6-ラウレートの分離及び検出による信頼性が高い決定を可能にすることを提供する。液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法は、既存の方法に基づいており、本発明による酸化マーカーポリエチレングリコール-6-ラウレートに対して改変させ、適合させる。
ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルを決定するための液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法は、ポリソルベート20のみを含有する単純な水溶液、並びに医薬品有効成分(API)を伴って及び伴わずに、賦形剤を含有する非常に複雑な水性製剤並びに生物医薬製剤において機能する。生物医薬製剤はまた、典型的な賦形剤、例えば緩衝剤、糖、安定剤等を含むことができ、酸化マーカーの相対的なレベルの決定に干渉しない。
【0130】
酸化マーカーの存在と関係なく、ポリソルベート20での酸化分解の発生は、本発明の方法に関係なく安定性研究で確認している。このような安定性研究では、全ての無処置のポリソルベート20の種での減少が観察され、1種のジエステル種で著しく減少した。これらのジエステル種は、立体障害により酵素的分解に感受性がほとんどないことが知られているが、典型的に、酸化分解時に高速で減少するので、酸化分解を確認する。
したがって、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした分析法は、複雑な水性製剤でさえ、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルをモニタリングすることを可能にし、酸化マーカーとしてポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルをモニタリングすることは、水性製剤におけるポリソルベート20の加水分解と酸化分解との区別を可能にする。
実際に、本発明の開発した液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)をベースにした方法は、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルを、複雑な水性製剤でさえ、直線的、厳密に、及び正確に測定することができることを可能にする。
【0131】
ポリエチレングリコール-6-ラウレートのマーカー物質の相対的なレベルでの増加は、酸化が人工的に誘導される場合とポリソルベート20の酸化が自然に起こる場合の両方で、酸化分解の間にポリソルベート20の喪失と良好に相関する。したがって、本発明によると、水性製剤でのポリソルベート20の分解において、非酸化分解と酸化分解とを区別することが可能である。ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルでの同時増加と相関するポリソルベート20の分解を観察する場合、ポリソルベート20の酸化分解が明らかに存在する。ポリソルベート20の分解を観察するが、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルでの同時増加が生じない場合、ポリソルベート20の非酸化分解が明らかに存在する。これまで、直接的な分析手段でポリソルベート20の加水分解と酸化分解との区別を可能にする分析ツールは、先行技術で記載されていない。
ゆえに、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なレベルは、水性製剤での酸化分解経路の存在に対するマーカーとして機能する。酸化性マーカーはまた、タンパク質、例えばモノクローナル抗体のような医薬品有効成分(API)の存在及び非存在の両方で、水性生物医薬製剤において酸化分解を示すことが可能である。
酸化マーカーポリエチレングリコール-6-ラウレートの追加の定量化はまた、酸化分解の度合いを推定し、それゆえに水性製剤に存在したままであるポリソルベート20についての結論を導くことを可能にする。
【0132】
本発明の方法に基づいて、特定の時間で水性製剤のポリソルベート20の酸化分解の推定に基づいた同一又は非常に類似する水性製剤のポリソルベート20の予期した酸化分解について予測することをさらに可能である。これは、水性製剤、特に水性生物医薬製剤の開発に特に重要であり得る。
本発明では、いくつかの水性製剤においてポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定することも可能であり、特に各水性製剤は、同じ量のポリソルベート20を含有する。これは、例えば品質管理又は安定性管理を可能にする多くの水性製剤で実行される連続試験を可能にする。このようにして、最適化した製剤組成物もまた創出することができる。
したがって、本発明は、水性製剤、例えば水性生物医薬製剤において、先に記載されていない分析物、すなわちポリエチレングリコール-6-ラウレートをモニタリング、検出、及び任意で定量化して、ポリソルベート20の酸化分解を観察及び推定する分析法を使用する第1の時間法を提供する。
【0133】
略語のリスト
【表1】
実行される実験の詳細は以下の通りである。実験の以下の詳細な情報は、本発明の限定と理解すべきではない。
【0134】
実験
1.材料及び方法
1.1材料
全ての実験を、ポリソルベート20高純度(PS20 HP)(Croda、Edison、NJ、USA)で行った。ポリエチレングリコール-6-ラウレート(PEG-6ラウレート)として、ChiroBlock GmbH、Bitterfeld-Wolfen、ドイツ)により合成された、純度95%の式C24H48O8、分子量464.65g/mol、合成ポリエチレングリコール-6-ラウレートを使用した。使用した全ての他の化学物質は、分析グレードのものであり、市販の供給源から得られた。
【0135】
a)モノクローナル抗体
特定の製剤中の4種のモノクローナル抗体(mAb)を使用した:
mAb-1製剤は、IgG1型抗体である、mAb-1を含有する。
mAb-1製剤で使用されるmAb-1を、異なる変法、すなわち変法A及び変法Bにより調製し、それにより変法Bの下流プロセスを、宿主細胞の不純物の除去について最適化した。
mAb-1製剤の変法Aは、65mg/mLで濃縮させ、0.200g/mLのポリソルベート20、11.4mM L-ヒスチジン、12.8mM L-ヒスチジンHCl+2H2O、213.0mMマンニトール、28.3mMスクロース、pH6.0で製剤化する。
mAb-1製剤の変法Bは、65mg/mLで濃縮させ、0.200g/mLのポリソルベート20、11.4mM L-ヒスチジン、12.8mM L-ヒスチジンHCl+2H2O、43.9mMマンニトール、184mMスクロース、pH6.0で製剤化する。
【0136】
mAb-2からなるmAb-2製剤は、IgG1型抗体であるが、50mg/mLで濃縮され、0.400mg/mLのポリソルベート20、4.23mM酢酸、15.8mM酢酸ナトリウム三水和物、220mMグリシン、20mMトレハロース二水和物、pH5.5で製剤化する。
mAb-3からなるmAb-3製剤は、IgG1型抗体であるが、60mg/mLで濃縮され、0.400mg/mLのポリソルベート20、45mMアセテート、150mMスクロース、25mM L-アルギニンHCL、pH5.5で製剤化する。
mAb-1製剤に対するプラセボは、0.200g/mLのポリソルベート20、11.4mM L-ヒスチジン、12.8mM L-ヒスチジンHCl+2H2O、43.9mMマンニトール、184mMスクロース、pH6.0を含有する製剤であり、mAb-1を含有しない。
mAb-4からなるmAb-4製剤は、IgG4型抗体であるが、80mg/mLで濃縮され、0.400mg/mLのポリソルベート20、10mMアセテート、240mMトレハロース、pH5.2で製剤化する。
mAb-4製剤に対するプラセボは、0.400g/mLのポリソルベート20、10mMアセテート、240mMトレハロース、pH5.2を含有する製剤であり、mAb-4を含有しない。
【0137】
b)mAb安定性研究
mAb-1及びその対応するプラセボの安定性研究は、20Rガラスバイアル(含有量:20mL)において25℃(室温)の貯蔵条件で3カ月間実施した。mAb-2の安定性研究は、20Rガラスバイアルにおいて25℃(室温)/60%のRH(相対湿度)の貯蔵条件で6カ月間実施した。
mAb-4及びその対応するプラセボの安定性研究は、6Rガラスバイアル(含有量:3mL)において25℃(室温)/60%のRH(相対湿度)の貯蔵条件で6カ月間実施した。
【0138】
c)人工的にストレスを受けたポリソルベート20のサンプル調製
PEG-6-ラウレートの同定のための実験:
1.5mM 2,2’-アゾビス-2-メチル-プロパンイミドアミド、二塩酸塩(AAPH)を、0.040mg/mLの水性ポリソルベート20溶液に添加した。ポリソルベート20溶液に、50℃で40時間ストレスをかけた。
全ポリソルベート20の分解との相関に対して:
1.5mM 2,2’-アゾビス-2-メチル-プロパンイミドアミド、二塩酸塩(AAPH)を、0.040mg/mLの水性ポリソルベート20溶液に添加した。ポリソルベート20溶液に、50℃で35時間ストレスをかけた。0、1、3、8、12、24及び35時間後、サンプルを溶液から採取し、各時点での分解を停止するために-20℃で直ちに凍結させた。
【0139】
1.2方法
a)液体クロマトグラフィー質量分析法を介した無処置のポリソルベート20の種(LC-MS POE)のスクリーニング
液体クロマトグラフィー:
ポリソルベートの特徴付け法は、移動相(MP)Aとしての水、及び移動相(MP)Bとしてのアセトニトリル(ACN)中の1%のギ酸を使用して、これらの高い疎水性(1200シリーズ、Agilent)の順序でポリソルベート種の分離のために0.250mL/分の流速で、50℃で操作した逆相クロマトグラフィー(Kinetex XB-C C18、2.6μm、2.1×150mm、Phenomenex)を使用した。分析の勾配は、25分になるまで、5%のMP Bで開始し、線形傾斜を伴って20分で100%のMP Bとした。MP Bを、25.1分で、0.1分の傾斜で5%に減少させ、30分になるまで、5%のMP Bでカラム洗浄及び再平衡化ステップが続いた。カラムロードは、通常、ACN中の1~2μgのポリソルベートサンプルであった。
【0140】
質量分析:
次いで、分離した種を、加熱エレクトロスプレーイオン化(HESI)供給源(HESIプローブを伴うIon Maxイオン源、Thermo Fisher Scientific)でイオン化した。装置を、4kVの電源電圧、310℃で陽イオン化モードで操作した。続くインソース断片化により生成した脂肪酸特異的フラグメントを、質量分析計(LTQ、Thermo Fisher Scientific)で検出した。毛細管温度は275℃であり、43kVで操作した。完全走査スペクトルを、100~2000amu(原子質量単位)のm/z範囲にわたって収集した。ポリソルベート20の脂肪酸エステルを、完全走査データから抽出イオンクロマトグラム(EIC又はXIC)を生成することにより評価して、LCquan(商標)(液体クロマトグラフィーの定量分析用のソフトウェア)を使用して選択した化合物のピーク面積を得た。同じ脂肪酸を含む種のフラグメントは、特徴とする保持時間により異なった。
b)高分解能質量分析法(HR-MS)
液体クロマトグラフィー:
クロマトグラフィーの条件に対して、上記の章a)(LC-MS POE)を参照する。
【0141】
質量分析:
分離した種を、加熱エレクトロスプレーイオン化(HESI)供給源(HESIプローブを伴うIon Maxイオン源、Thermo Fisher Scientific)でイオン化した。装置を、4kVの電源電圧、310℃で陽イオン化モードで操作した。続くインソース断片化により生成した脂肪酸特異的フラグメントを、質量分析計(LTQ Orbitrap XL、Thermo Fisher Scientific)で検出した。毛細管温度は275℃であり、9kVで操作した。30000の分解能を伴う完全走査スペクトルを、100.0~2000.0amuのm/z範囲にわたって収集した。構造を、モノアイソトピックピークの厳密な決定を介して同定した。
【0142】
c)液体クロマトグラフィー質量分析法を介する酸化マーカーPEG-6ラウレート(P6L)(LCMS P6L)の定量化
液体クロマトグラフィー:
LC-MS P6L法のクロマトグラフィーの条件に対して、上記の章a)(LC-MS POE)を参照する。カラムロードは、ACN中の1μgのポリソルベートサンプルであった。
【0143】
質量分析:
次いで、分離した種を、加熱エレクトロスプレーイオン化(HESI)供給源(HESIプローブを伴うIon Maxイオン源、Thermo Fisher Scientific)でイオン化した。装置を、4kVの電源電圧、310℃で陽イオン化モードで操作した。生成したイオンを、質量分析計(LTQ、Thermo Fisher Scientific)で検出した。毛細管温度は275℃であり、43kVで操作した。完全走査スペクトルを、300.0~550.0amuのm/z範囲にわたって収集した。PEG-6-ラウレートを、完全走査データから抽出イオンクロマトグラム(EIC)を生成することにより評価して、LCquan(商標)(液体クロマトグラフィーの定量分析用のソフトウェア)を使用して選択した化合物のピーク面積を得た。
【0144】
d)高性能液体クロマトグラフィー荷電エアロゾル検出(HPLC-CAD)を介するポリソルベート20の定量化
mAb及びプラセボのサンプルを、方法の較正範囲内の水対ポリソルベート20濃度で1:2に希釈した。水性ポリソルベート20溶液を使用して外部較正曲線を調製した。注射体積は10μLであった。HPLC-CADを、Agilent 1290 LCシステム(Agilent)に連結したCAD Veo RS(Thermo Fisher Scientific)で測定した。クロマトグラフィー分離を、1ml/mL及び30℃のカラム温度で混合モードカラムOasis MAXオンライン(20×2.1mm、30μm、水)の助けと共に実施した。MP Aは、10mMギ酸アンモニウム、20%の2-プロパノール、pH3からなり;MP Bは、アセトニトリル/2-プロパノール50/50%(v/v)からなった。分析の勾配は、0%のMP Bアイソクラチックで開始し、続いて14.0~14.1分で10%のMP Bまで0.1分の傾斜とした。20分で、MP Bは、0%まで増加し、25分まで再平衡した。CADは、70℃の蒸発温度、検出力関数1.0、フィルター定数5秒及び10Hzのデータ収集速度で操作した。記録したクロマトグラムを積分し、ポリソルベート20濃度を、二次回帰(Empower)を使用して算出した。
【0145】
e)液体クロマトグラフィー質量分析法を介した遊離脂肪酸(FFA)(LC-MS FFA)の決定
ポリソルベートの特徴付け法は、LC-MSを介して遊離脂肪酸、すなわちラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸を決定した。mAb及びポリソルベート20のサンプルを水で希釈して、0.040mg/mLのポリソルベート20最終濃度にした。注射体積は20μLであった。クロマトグラフィー分離に対して、50℃でのRPカラム(Jupiter C18、3μm、2×150mm、Phenomenex)及び0.300mL/分の流速でのHPLCシステム(LC-30AD、SIL-30 AC、Shimadzu)を使用した。10mM酢酸アンモニウムをMB Aとして、MBとして2-プロパノールを使用した。分析の勾配は、2.5分になるまで、50%のMP Bで開始し、線形傾斜を伴って1分で100%のMP Bとした。3.5分で、MP Bは、0.1分の傾斜で100%まで増加した。MP Bを、5分で、0.1分の傾斜で50%に減少させ、11分になるまで、50%のMP Bでカラム洗浄及び再平衡化ステップが続いた。
【0146】
FFAは、HESI(HESIプローブを伴うIon Maxイオン源、Thermo Fisher Scientific)でイオン化し、負モードで質量分析計(LTQ、Thermo Fisher Scientific)で分析した。装置を、3.5kVの電源電圧、310℃で陽イオン化モードで操作した。脂肪酸を、質量分析計(LTQ、Thermo Fisher Scientific)で検出した。毛細管温度は275℃であり、-49kVで操作した。完全走査スペクトルを、150.0~300.0amuのm/z範囲にわたって収集した。最終的に、抽出イオンクロマトグラム(EIC)は、LCquan(商標)(液体クロマトグラフィーの定量分析用のソフトウェア)を使用して完全走査データから生成した。FFA較正標準(10~1500ng/mL)を使用することにより、定量化の決定を実施した。
【0147】
2.LC-MS P6Lの方法の実施の特徴付け
LC-MSをベースにした方法が、信頼性が高く(realiable)、好適な試験方法であるか否かを検証するために、方法を、当該技術分野に周知の手順によって直線性、特異性、正確性、及び精度について調査した。
直線性:
最初に、方法の直線性を、標準曲線の決定係数(R
2)の評価により検査した。1~25ng/mLのPEG-6-ラウレートの標準曲線のR
2評価は、方法の良好な直線性を明らかにする(R
2=0.9979)。LC-MS P6L法の標準曲線は
図8に示す。
図8は、標準溶液の濃度(1~25ng/mL)(y軸)に対するLC-MS分析の検出領域(LC-MS P6L)(x軸)をプロットすることによりPEG-6-ラウレートの標準曲線を示す。標準曲線の線形適合は、0.9979の決定係数(R
2)を示す。したがって、方法は、良好な直線性を有する。
【0148】
特異性:
合成PEG-6-ラウレートをスパイクされたmAb-3及びmAb-3に対するプラセボを使用する特異性分析は、スパイクされたPEG-6-ラウレートのシグナルとのAPI、ポリソルベート20又は他の製剤化合物の干渉を明らかにしなかった。すなわち、PEG-6-ラウレートを、スパイクされたサンプルで検出したが、干渉するシグナルを対照溶液で検出しなかった。PEG-6-ラウレートのみをスパイクされたサンプルで検出するので、LC-MS P6L法の特異性が得られる。結果は、表1に概説する。
【0149】
精度及び正確性:
精度及び正確性の評価を、濃度毎に独立して調製した3つの複製で(PEG-6-ラウレート濃度毎にn=3)、2.5ng/nL及び20ng/nLの合成PEG-6-ラウレートでスパイクされたNBE溶液の分析を介して実施した。精度の評価の結果は、両レベルのPEG-6-ラウレートサンプル(2.5ng/mLのPEG-6-ラウレートでの%RSD:2%;20ng/mLでの%RSD:3%)に対して低い相対的な標準偏差(%RSD)を示す。さらに、標的レベル(スパイク濃度)に対する両方のPEG-6-ラウレートサンプルの相対的な平均回収率は、90~104%の間で変化する良好な結果を示し、LC-MS P6L法の良好な精度及び正確性を示す。結果はまた、表1に概説する。
以下の表1では、PEG-6-ラウレート(P6L)を検出及び定量化する方法の特異性、精度及び正確性パラメーターの評価の結果を示す。
【0150】
【0151】
要約すると、PEG-6-ラウレートの定量化のための本発明のLC-MSをベースにした方法の特徴付けは、良好な実施を示し、特異的で、厳密及び正確なNBE溶液でのPEG-6-ラウレートのレベルを決定することができる。その後、方法LC-MS P6Lは、NBEにおいて重大なPEG-6-ラウレートの閾値の同定に使用し、それにより製剤化の間の分析ツール及び生物医薬品のような水性製剤のプロセス開発を提供することができる。
【0152】
引用文献
本発明は、以下のセンテンスに開示される態様を含む。
【0153】
センテンス
1.以下のステップ:
参照サンプルとして機能する、検査される水性製剤の第1のサンプルを準備するステップ1;
検査される水性製剤の別のサンプル及び任意のさらなるサンプルを準備するステップ2;
ポリエチレングリコール-6-ラウレートを分離し、それぞれ、ステップ1の参照サンプル、ステップ2の他方のサンプル及び任意のさらなるサンプルから、ポリソルベート20の酸化分解の酸化マーカーであるポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を決定するための液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法を使用し、
参照サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積に対して、他方のサンプル及び任意のさらなる各サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積に基づいてポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積を決定するステップ3であって、相対的なピーク面積が、ポリソルベート20の酸化分解の度合いに比例する、ステップ3;並びに
他方のサンプル及び任意のさらなる各サンプルの相対的なピーク面積に基づいて化合物ポリエチレングリコール-6-ラウレートを定量化してもよいステップ4
により、ポリソルベート20を含有する水性製剤においてポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定するための方法。
【0154】
2.準備した参照サンプルがポリソルベート20を含有する水溶液であり、ポリソルベート20の含有量が検査される水性製剤と同じである、
センテンス1に記載の方法。
3.ステップ2で、ポリソルベート20を含有する水性製剤の2つ、3つ又はそれ以上のさらなるサンプルが、同じ長さ又は異なる長さであり得る連続する時間間隔T1、T2、T3....で採取される、
センテンス1に記載の方法。
【0155】
4.ステップ3の他方のサンプル及び任意のさらなる各サンプルに対するポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積が、
- 得られたピーク面積の差を形成することであって、他方のサンプル及び任意のさらなるサンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積から、それぞれ、参照サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を減算して、形成すること;
又は
- 得られたピーク面積を正規化することであって、参照サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を100%に設定し、他方のサンプル及び任意のさらなるサンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積をそれぞれこれに基づいて算出して、正規化すること
により決定される、
センテンス1に記載の方法。
【0156】
5.以下のステップ:
検査される各水性製剤のサンプルを準備するステップ1a;
ポリエチレングリコール-6-ラウレートを分離し、ステップ1aの各サンプルから、ポリソルベート20の酸化分解の酸化マーカーであるポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を決定するための液体クロマトグラフィー及び質量分析法をベースにした方法を使用し、
サンプルのピーク面積を互いに比較するステップ2aであって、サンプルのピーク面積の変化が、ポリソルベート20の酸化分解の度合いに比例する、ステップ2a;並びに
それぞれのサンプルの得られたピーク面積に基づいて化合物ポリエチレングリコール-6-ラウレートを定量化してもよいステップ3a
により、ポリソルベート20を各々含有する、特に各水性製剤が同じ量のポリソルベート20を含有するいくつかの水性製剤においてポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定するための方法。
【0157】
6.各サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートの相対的なピーク面積が、
- 得られたピーク面積の差を形成することであって、サンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積から、参照サンプルから得られた別のサンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を減算して、形成すること;
又は
- 得られたピーク面積を正規化することであって、参照サンプルから得られたサンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積を100%に設定し、別のサンプルのポリエチレングリコール-6-ラウレートのピーク面積をこれに基づいて算出して、正規化すること
により参照サンプルに対して決定される、
センテンス5に記載の方法。
【0158】
7.以下の条件:
- 極性溶媒が、液体クロマトグラフィーを実行する前に調査されるポリソルベート含有サンプルに添加され、特に液体クロマトグラフィーで使用される溶媒であること;
- 液体クロマトグラフィーが、分離クロマトグラフィーとして使用され、特にカラムクロマトグラフィーの形態で、より具体的に逆相クロマトグラフィーとして使用されること;
- 液体クロマトグラフィーが高性能液体クロマトグラフィーとして使用され、勾配溶出が使用され得ること;
- 液体クロマトグラフィーが超高性能液体クロマトグラフィーとして使用され、勾配溶出が使用され得ること;
- 質量分析法が、特に構造解明の目的で高分解能質量分析法であるように選択されること;
- ポリエチレングリコール-6-ラウレートが、疎水性を使用して液体クロマトグラフィーにより分離されること;及び/又は
- ステップ4若しくはステップ3aの定量化が、ポリエチレングリコール-6-ラウレートの標準溶液を使用して外部較正で実施されること
の1つ、2つ又はそれ以上を満たす、
先のセンテンス1~6のいずれか1つのセンテンスに記載の方法。
【0159】
8.液体クロマトグラフィー質量分析法をベースにした方法のデータ評価のために、抽出イオンクロマトグラムが、約487amuの範囲を含み、特に486.5~487.5amuの範囲を含むか、又はこの範囲からなる質量荷電比から作成される、
先のセンテンス1~7のいずれか1つのセンテンスに記載の方法。
9.ステップ5、ステップ5’又はステップ4aが、どの程度ポリソルベート20がポリエチレングリコール-6-ラウレートレベルとポリソルベート20レベルとの反比例関係に基づいてサンプルで既に酸化分解されているかを推定することを含む、
先のセンテンス1~8のいずれか1つのセンテンスに記載の方法。
10.水性生物医薬製剤が、水性製剤として使用される、
先のセンテンス1~9のいずれか1つのセンテンスに記載の方法。
11.存在するポリソルベート20が、
- 薬学的使用、特に薬物での使用を意図している;及び/又は
- 非経口投与に好適である、
先のセンテンス1~10のいずれか1つのセンテンスに記載の方法。
【0160】
12.水性製剤が、1種又は複数のタンパク質を含有し、タンパク質が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体、単鎖抗体若しくはその抗体フラグメント、例えばFv、scFv、Fab、Fab’、scFab、F(ab’)2、Fab2、Fc及びFc’フラグメント、重鎖及び軽鎖の免疫グロブリン鎖並びにこれらの定常、可変若しくは超可変領域並びにFv及びFdフラグメント、二重特異性抗体、三重特異性抗体、scFv-Fc、ミニボディ、若しくは単一ドメイン抗体、又はその混合物から選択され得、
タンパク質が、疾患又は障害の予防又は処置に使用される治療用タンパク質から選択され得る、
先のセンテンス1~11のいずれか1つのセンテンスに記載の方法。
【0161】
13.組換えタンパク質を生成するプロセスであって、以下のステップ:
細胞培養において組換えタンパク質を発現する真核細胞を培養するステップa);
組換えタンパク質を採取するステップb);
水性製剤を使用する組換えタンパク質を精製するステップc);及び
ポリソルベート20を使用して組換えタンパク質を投与に好適な薬学的に許容される水性製剤に製剤化するステップd);
ステップd)から組換えタンパク質及びポリソルベート20を含有する少なくとも1つのサンプルを得るステップe);
を含み、
先のセンテンス1~9のいずれか1つのセンテンスに記載のポリソルベート20の酸化分解をステップe)で得られたサンプルで検出するための方法を実施することをさらに含み、ステップd)からのサンプルが、原薬サンプル又は医薬品サンプルであり得る、
プロセス。
【0162】
14.ポリソルベート20をそれぞれ含有する水性製剤又はいくつかの水性製剤においてポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定するための方法、特に先のセンテンス1~12のいずれか1つのセンテンスに記載の方法における酸化マーカーとしてのポリエチレングリコール-6-ラウレートの使用。
15.水性製剤においてポリソルベート20の酸化分解の度合いを決定するための、ポリソルベート20をそれぞれ含有する水性製剤又はいくつかの水性製剤の開発、製造、貯蔵寿命、又は貯蔵期間中の安定性試験としての先のセンテンス1~12のいずれか1つのセンテンスに記載の方法の使用。
【国際調査報告】