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▶ ハーツェーエーエンムエンム・ノンプロフィット・カーエッフテー.の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ワクチン調製物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20241121BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241121BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241121BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20241121BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A61K39/00 Z
A61P37/04
A61P43/00 121
A61P9/00
A61K45/00
A61K39/215
A61P31/14
A61K31/7105
A61K31/137
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535195
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2022084011
(87)【国際公開番号】W WO2023110422
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】A51010/2021
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524221879
【氏名又は名称】ハーツェーエーエンムエンム・ノンプロフィット・カーエッフテー.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】グラブシュニヒ,ステファン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA19
4C084NA06
4C084ZA412
4C084ZB091
4C084ZC751
4C084ZC752
4C085AA03
4C085BA01
4C085BA71
4C085EE03
4C085GG03
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA65
4C086NA06
4C086ZA41
4C086ZB09
4C086ZB33
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA14
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA85
4C206NA06
4C206ZA41
4C206ZC75
(57)【要約】
有害作用が無いか、または少なくともわずかである筋肉内投与されるワクチン調製物は、mRNAワクチンに加えて、エピネフリン、レボノルデフリン、およびノルエピネフリンなどの少なくとも1種の血管収縮剤を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のワクチンを含むワクチン調製物であって、前記ワクチンに加えて少なくとも1種の血管収縮剤を含む、調製物。
【請求項2】
前記ワクチンがmRNAワクチンである、請求項1に記載の調製物。
【請求項3】
前記ワクチンがCOVID-19に対するmRNAワクチンである、請求項2に記載の調製物。
【請求項4】
前記血管収縮剤が、アドレナリン/エピネフリン、ノルエピネフリン、アンギオテンシンIおよびII、セロトニン、トロンボキサンA2、エンドセリン、フェニレフリン、レボノルデフリン、ならびにアルファノルアドレナリン/ノルエピネフリンを含む群から選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項5】
前記ワクチン調製物が筋肉内投与のために作製されている、請求項1~4のいずれか
一項に記載の調製物。
【請求項6】
前記ワクチン調製物が、前記ワクチンに加えて、投与するワクチン調製物の用量あたり0.005~0.1mg、特に0.01~0.05mgの血管収縮剤を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の調製物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のワクチンを含有するワクチン調製物に関する。
【背景技術】
【0002】
COVID-19に対する最初のmRNAワクチン(Chaudhary,N.、Weissman,D.&Whitehead,K.A.mRNA vaccines for infectious diseases:principles,delivery and clinical translation.Nat.Rev.Drug Discov.20、817~838ページ(2021))が、Pfizer-BioNTech(Benjamini,O.ら、Safety and efficacy of the BNT162b mRNA COVID-19 vaccine in patients with chronic lymphocytic leukemia.Haematologica 107、625~634ページ(2021))およびModerna(Baden,L.R.ら、Efficacy and Safety of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 Vaccine.N.Engl.J.Med.384、403~416ページ(2021))によって導入されてから、この新たなワクチン技術は広く世間の注目を集めてきた。これらのワクチンは高い防御率および良好な忍容性を示したが、心筋炎の症例などの稀な合併症も一部で報告された(Mevorach,D.ら、Myocarditis after BNT162b2 mRNA Vaccine against Covid-19 in Israel.N.Engl.J.Med.385、2140~2149ページ(2021)およびKoizumi,T.ら、Myocarditis after COVID-19 mRNA vaccines.QJM Int.J.Med.114、741~743ページ(2021))。マウスで実施された実験は、mRNAワクチンの血流への進入が心筋炎症の危険性の大幅な増加に関連することを示した(Li,C.ら、Intravenous Injection of Coronavirus Disease 2019(COVID-19)mRNA Vaccine Can Induce Acute Myopericarditis in Mouse Model.Clin.Infect.Dis.74、1933~1950ページ(2022))。mRNAワクチンの適用は筋肉内注射によって行われるが、注射中に血管が損傷する可能性が常にあり、容易に血流進入することがある(Li,C.ら、Intravenous Injection of Coronavirus Disease 2019(COVID-19)mRNA Vaccine Can Induce Acute Myopericarditis in Mouse Model.Clin.Infect.Dis.74、1933~1950ページ(2022)およびArin,Kim.Is injection technique responsible for vaccine side effects?Korean Her.(2021))。
【0003】
注射前に局所麻酔薬とアドレナリンなどの血管収縮剤とを組み合わせることは、確立された手法である(Sisk,A.L.Vasoconstrictors in local anesthesia for dentistry.Anesth.Prog.39、187~193ページ(1992))。これによって麻酔薬の組織を通した移行が著しく低減し、麻酔効果が増強され持続するという利益が生じる(Sisk,A.L.Vasoconstrictors in local anesthesia for dentistry.Anesth.Prog.39、187~193ページ(1992)およびAberg,G.、Dhuner,K.-G.&Sydnes,G.Studies on the Duration of Local Anaesthesia:Structure/Activity Relationships in a Series of Homologous Local Anaesthetics.Acta Pharmacol.Toxicol.(Copenh.)41、432~443ページ(2009))。
【0004】
血管収縮剤の局所麻酔薬への添加は、以下の濃度例で行う(Sisk,A.L.Vasoconstrictors in local anesthesia for dentistry.Anesth.Prog.39、187~193ページ(1992)):
アドレナリン/エピネフリン:
1:50,000(0.02mg/mL)
1:100,000(0.01mg/mL)
1:200,000(0.005mg/mL)
レボノルデフリン:
1:20,000(0,05mg/mL)
ノルエピネフリン
1:30,000(0.033mg/mL)
局所麻酔薬は、例えば、薬物リドカイン20~500mg(専門情報リドカイン https://s3.eu-central-1.amazonaws.com/prod-cerebro-ifap/media_all/78264.pdf)を含有しており、0.5~1.5mLの量で注射によって適用される。これらは、例えば、1:200,000~1:100,000の範囲の濃度のエピネフリンと組み合わせられる。したがって、この血管収縮剤は0.0025~0.015mgの間の用量で適用される。
【0005】
mRNAワクチン:
Moderna(スパイクバックス 特許番号:US10933127)およびPfizer/Biontech(コミナティ 特許番号:GB2594364A)のCoViD-19ワクチンが、本文書で提供される実施例で使用される。これらのワクチンの個々の組成は、それぞれの特許には記載されていない。これらは基本的に、可能性のある成分を列挙しているに過ぎない。それよりも、完全な成分リストは、それぞれのデータシート内に見出され得(製品情報 コミナティ https://www.ema.europa.eu/en/documents/product-information/comirnaty-epar-product-information_en.pdfおよび製品情報 スパイクバックス https://www.ema.europa.eu/en/documents/product-information/spikevax-previously-covid-19-vaccine-moderna-epar-product-information_en.pdf)、これは、欧州医薬品庁(EMA)のホームページからダウンロードすることができる。これらは以下の通りに指定されている:
コミナティ:
このワクチンは複数回量バイアルによって供給される。複数回量バイアル(0.45mL)の内容量は、各0.3mLのワクチン6回分と指定されており、したがって使用前に希釈されなければならない。
【0006】
単回量(0.3mL)は、トジナメラン30マイクログラムを含有する。トジナメランは、脂質-ナノ粒子に包埋された5’キャップ構造の1本鎖メッセンジャーRNA(mRNA)である。
【0007】
その他の成分は以下の通りである:
((4-ヒドロキシブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカン酸)(ALC-0315)
2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(ALC-0159)
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)
コレステロール
塩化カリウム
リン酸二水素カリウム
塩化ナトリウム
リン酸二ナトリウム二水和物
スクロース
注射用水
水酸化ナトリウム(pH調整用)
塩酸(pH調整用)
スパイクバックス:
このワクチンは複数回量バイアルによって供給されるが、単回量であってもよい。
【0008】
製品情報シートの以下の表は、容量および送達形態を記載している:
【0009】
【表1】
エラソメランは、脂質-ナノ粒子に包埋された5’キャップ構造の1本鎖mRNAである。
【0010】
その他の成分は以下の通りである:
SM-102(ヘプタデカン-9-イル8-{(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ}オクタン酸)
コレステロール
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)
1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(PEG2000-DMG)
トロメタモール
トロメタモール塩酸塩
酢酸
酢酸ナトリウム三水和物
スクロース
注射用水
US2003/0147899A1は、内在性エピネフリンおよびグルココルチコイドを含むワクチンを開示している。このワクチンは、抗原特異的細胞性免疫応答および感染病原体、例えば、ウイルスに対する防御を増強すると言われている。エピネフリンおよびコルチゾールなどのグルココルチコイドは、内在性ストレスホルモンとして開示されている。それらのホルモンの組合せは、アジュバントまたは免疫調整剤として使用され、免疫系を活性化すると言われているが、一方では、グルココルチコイド自体は効率的に免疫反応を抑制するために広く使用されている。
【0011】
WO2020/248010A1は、開放創には適用されるが、皮下には適用されない局所薬物送達製剤を開示している。この製剤は、全身作用の急速なピークを回避することを目的としている。薬物の中で、ワクチンについては触れられていない。むしろ、この薬物はアドレナリン(エピネフリン)のような血管収縮薬であってもよい。送達製剤の中で、ワクチンについては開示されていない。
【0012】
US2004/0062778A1は、活性成分の放出と制御を目標とする制御放出系に関する。この組成物は、基材を含むが、ワクチンは含まない。
【0013】
COVID-19ワクチンによるアナフィラキシーの管理:この文献では、アドレナリンの筋肉内投与によって、アナフィラキシー反応を罹患している高齢患者を治療する手法。ワクチン自体においてアドレナリンの使用を指示する開示は無い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
投与時に副作用(重篤な合併症)が無いかまたはほとんど無いワクチン調製物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の特徴を備えたワクチン調製物によって、この目的は実現される。
【0016】
本発明によるワクチン調製物の好ましくて有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0017】
血管収縮剤をワクチン、特にmRNAワクチンに添加することによって、忍容性が改善し、有害反応は少なくなり、この効果は筋肉組織内のワクチンの持続的残存によって実現され得ることは予想外だった。
【0018】
本発明は、体内でのワクチンの分配が最終的にワクチンを取り入れる細胞の量および種類を決定するという仮説に基づいている。血管収縮剤をワクチンに添加することによって、筋肉組織内で持続的に残存し、周囲の組織および血管への輸送が低減することが期待される。
【0019】
先行技術とは対照的に、ワクチン、特にmRNAワクチンとアドレナリン/エピネフリンなどの血管収縮剤の組合せは、アジュバントを含まないが、むしろワクチン、特にmRNAをベースにした治療薬の効果を制御するための治療薬組合せを含む。主要成分として病原微生物の1種または複数の抗原を含有する従来のワクチンとは対照的に、mRNA治療薬は、改変合成mRNAカーゴを含む脂質-ナノ粒子を含有する。これらのmRNAは、一旦細胞に取り込まれると自己増幅し、タンパク質、例えば、ウイルススパイクタンパク質の一部の細胞内産生を開始するので、それらの作用様式は著しく異なる。治療薬としてmRNAを使用する考えは、1990年代に既に議論が交わされたが(Gaviria,M.&Kilic,B.A network analysis of COVID-19 mRNA vaccine patents.Nat.Biotechnol.39、546~548ページ(2021)およびWolff,J.A.ら、Direct Gene Transfer into Mouse Muscle in Vivo、Science 247、1465~1468ページ(1990))、これを可能にする基本的技術は2005年以前には開発されておらず(Gaviria,M.&Kilic,B.A network analysis of COVID-19 mRNA vaccine patents.Nat.Biotechnol.39、546~548ページ(2021)およびKarik6,K.Buckstein,M.、Ni,H.&Weissmann,D.Suppression of RNA Recognition by Toll-like Receptors:The Impact of Nucleoside Modification and the Evolutionary Origin of RNA.Immunity 23、165~175ページ(2005))、これはまた、最初のmRNAベースワクチンがPfizer-BiontechおよびModernaによって開発されるずっと前のことだった(Baden,L.R.ら、Efficacy and Safety of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 Vaccine.N.Engl.J.Med.384、403~416ページ(2021)およびBenjamini,0.ら、Safety and efficacy of the BNT162b mRNA COVID-19 vaccine in patients with chronic lymphocytic leukemia.Haematologica 107、625~634ページ(2021)およびChaudhary,N.、Weissmann,D.&Whitehead,K.A.mRNA vaccines for infectious diseases:principles,delivery and clinical translation.Nat.Rev.Drug Discov.20、817~838ページ(2021))。
【0020】
結論として、US2003/0147899A1で開示された従来のワクチンのアジュバントは、mRNAワクチンが完全に異なる技術を含むだけでなく、その時点ではまだ存在していなかったので、mRNAワクチンと共に使用することは企図されていなかった。
【0021】
本発明は、筋肉内注射によって適用される全ワクチンに本質的に適しているが、mRNAワクチンに特に有利である。
【0022】
本発明における適用が検討される血管収縮剤は、アドレナリン/エピネフリン、アンギオテンシンIおよびII、セロトニン、トロンボキサンA2、エンドセリン、フェニレフリン、αーメチルノルエピネフリン、フェリプレシン、およびノルアドレナリン/ノルエピネフリンである。前述の薬剤の少なくとも2種の組合せも考慮される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
【実施例
【0024】
実施例は、製造業者によって供給される容器に合わせて製剤化される。
【0025】
実施例1
6回分のエピネフリンとコミナティとの組合せ(0.45mL)バイアル。この組合せは1回あたりエピネフリン0.01mgを含有する(希釈後0.3mL)。
【0026】
コミナティ0.45ml(ストック)
エピネフリン0.06mg
実施例2
6回分のレボノルデフリンとコミナティとの組合せ(0.45mL)バイアル。この組合せは1回あたりレボノルデフリン0.05mgを含有する(希釈後0.3mL)。
【0027】
コミナティ0.45ml(ストック)
レボノルデフリン0.3mg
実施例3
6回分のノルエピネフリンとコミナティとの組合せ(0.45mL)バイアル。この組合せは1回あたりノルエピネフリン0.033mgを含有する(希釈後0.3mL)。
【0028】
コミナティ0.45ml(ストック)
ノルエピネフリン0.2mg
実施例4
注射準備完了シリンジに入れたエピフリンとスパイクバックス分散液との組合せ。この組合せは、スパイクバックス分散液0.5mLにエピフリン0.01mgを添加した単回量(50マイクログラム)を含有する。
【0029】
スパイクバックス0.5mL(分散液)
エピネフリン0.01mg
実施例5
注射準備完了シリンジに入れたレボノルデフリンとスパクバックス分散液との組合せ。この組合せは、スパイクバックス分散液0.5mLにレボノルデフリン0.05mgを添加した単回量(50マイクログラム)を含有する。
【0030】
スパイクバックス0.5mL(分散液)
レボノルデフリン0.05mg
実施例6
注射準備完了シリンジに入れたノルエピネフリンとスパイクバックス分散液の組合せ。この組合せは、スパイクバックス分散液0.5mLにノルエピネフリン0.033mgを添加した単回量(50マイクログラム)を含有する。
【0031】
スパイクバックス0.5mL(分散液)
ノルエピネフリン0.033mg
結論として、本発明の実施例は、以下の通りに記載され得る。
【0032】
有害な副作用が無いかまたはほとんど無い、mRNAワクチンなどのワクチンの忍容性が改善したワクチン調製物は、アドレナリンなどの少なくとも1種の血管収縮剤をさらに含有する。
【国際調査報告】