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特表2024-544267燃料電池システムの動作方法、燃料電池システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】燃料電池システムの動作方法、燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20241121BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20241121BHJP
   H01M 8/04303 20160101ALI20241121BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20241121BHJP
   H01M 8/04111 20160101ALI20241121BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/04302
H01M8/04303
H01M8/04746
H01M8/04111
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535363
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2022084352
(87)【国際公開番号】W WO2023117384
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】102021214682.1
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ケマー ヘラーソン
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127AB15
5H127AC05
5H127BA02
5H127BA28
5H127BA31
5H127BA57
5H127BA58
5H127BA59
5H127BA66
5H127BB02
5H127BB16
5H127BB37
5H127BB39
5H127BB46
5H127DA01
5H127DA11
5H127DC56
5H127DC57
5H127DC58
(57)【要約】
本発明は、それぞれカソード(110、210)とアノード(120、220)を有する複数の燃料電池スタック(100、200)を備える燃料電池システム(1)の動作方法に関し、カソード(110、210)にそれぞれ給気路(111、211)を介して空気が供給され、かつ燃料電池スタック(100、200)から流出する排気がそれぞれ排気路(112、212)を介して排出され、アノード(120、220)にそれぞれアノード回路(121、221)を介して水素が供給される。本発明によれば、燃料電池システム(1)の始動および/またはシャットダウン時に、燃料電池スタック(100)から流出する排気が別の燃料電池スタック(200)のアノード(220)および/またはカソード(210)を不活性化するために利用される。本発明は、方法を実行するための燃料電池システム(1)にも関する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれカソード(110、210)とアノード(120、220)を有する複数の燃料電池スタック(100、200)を備える燃料電池システム(1)の動作方法であって、前記カソード(110、210)に、それぞれ給気路(111、211)を介して空気が供給され、かつ前記燃料電池スタック(100、200)から流出する排気がそれぞれ排気路(112、212)を介して排出され、前記アノード(120、220)にそれぞれアノード回路(121、221)を介して水素が供給される、方法において、
前記燃料電池システム(1)の始動および/またはシャットダウン時に、燃料電池スタック(100)から流出する排気が別の燃料電池スタック(200)の前記アノード(220)および/または前記カソード(210)を不活性化するために利用されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
不活性化するために必要な燃料電池スタック(100)の前記排気は、遮断弁(3)が組み込まれた接続ライン(2)を介して前記別の燃料電池スタック(200)に供給され、このために前記遮断弁が開かれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
不活性化するために必要な燃料電池スタック(100)の前記排気は、前記別の燃料電池スタック(200)の前記アノード(220)または前記カソード(210)に直接または間接的に、殊に前記別の燃料電池スタック(200)のアノード回路(221)または前記給気路(211)を介して供給されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記燃料電池システム(1)の始動および/またはシャットダウン時に、空気搬送および空気圧縮システム(213)を切断することによって、ならびに/あるいは少なくとも1つの遮断弁(217)を閉じることによって、前記不活性化されるべき燃料電池スタック(200)の空気供給が中断されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記アノード回路(221)に組み込まれたパージ弁(222)および/またはドレン弁(228)を開くことによって、不活性化されたアノード(220)のアノードガスが前記燃料電池システム(1)から除去されるか、または接続ライン(4)を介して燃料電池スタック(100、200)の排気路(112、212)に導入されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
不活性化するために必要な前記排気は、燃料電池スタック(100、200)の化学量論未満での動作によって生成されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
それぞれカソード(110、210)とアノード(120、220)を有する複数の燃料電池スタック(100、200)を備える燃料電池システム(1)であって、前記カソード(110、210)がそれぞれ入口側で給気路(111、211)に接続されており、出口側で排気路(112、212)に接続されており、前記アノード(120、220)がそれぞれアノード回路(121、221)に連結されている、燃料電池システムにおいて、
燃料電池スタック(100)の前記排気路(112)が別の燃料電池スタック(200)の前記アノード(220)および/または前記カソード(210)に接続されており、それにより排気を用いて前記アノード(220)および/または前記カソード(210)を不活性化可能であることを特徴とする、燃料電池システム。
【請求項8】
燃料電池スタック(100)の前記排気路(112)は、遮断弁(3)が組み込まれた接続ライン(2)を介して前記別の燃料電池スタック(200)の前記アノード(220)および/または前記カソード(210)に接続されていることを特徴とする、請求項7に記載の燃料電池システム(1)。
【請求項9】
前記接続ライン(2)は、前記不活性化されるべき燃料電池スタック(200)の前記アノード(220)または前記カソード(210)に直接接続されていることを特徴とする、請求項8に記載の燃料電池システム(1)。
【請求項10】
前記接続ライン(2)は、前記不活性化されるべき燃料電池スタック(200)の前記アノード(220)に前記アノード回路(221)を介して間接的に、または前記カソード(210)に前記給気路(211)を介して間接的に接続されていることを特徴とする、請求項8に記載の燃料電池システム(1)。
【請求項11】
少なくとも1つの燃料電池スタック(100、200)の前記給気路(111、211)に空気搬送および空気圧縮システム(113、212)が組み込まれていることを特徴とする、請求項7から10までのいずれか1項に記載の燃料電池システム(1)。
【請求項12】
少なくとも1つの燃料電池スタック(100、200)の前記アノード回路(121、221)にパージ弁(122、222)および/またはドレン弁(128、228)が組み込まれていることを特徴とする、請求項7から11までのいずれか1項に記載の燃料電池システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部の特徴を有する燃料電池システムの動作方法に関する。さらに、本発明は、方法を実行するのに適した、もしくはこの方法に従って動作可能である燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
好ましい適用分野は、燃料電池車、殊にスタート・ストップモード(Start-Stopp-Betrieb)を有する燃料電池車である。
【0003】
燃料電池は、電気化学的エネルギー変換器である。反応ガスとして、特に水素(H)と酸素(O)を使用することができる。これらは、燃料電池を用いて電気エネルギー、水(HO)および熱に変換される。燃料電池のコアを形成するのは膜電極接合体(MEA)であり、これは、電極を形成するために両側が触媒材料でコーティングされている膜を含む。燃料電池の動作時には一方の電極であるアノードに水素が供給され、もう一方の電極であるカソードに酸素が供給される。
【0004】
実際には、電力を高めるために、多数の燃料電池を接続して燃料電池スタックもしくはスタックとされる。さらに、複数の燃料電池スタックもしくは燃料電池システムをつなぎ合わせることができる。
【0005】
燃料電池システムの動作時には、始動フェーズおよび/または停止フェーズで高い負荷がかかり、燃料電池を劣化させる可能性がある。その主な原因は、始動時はアノードにおける水素・空気フロントである。ストップ時もしくは停止時では、それはスタックから電気負荷が抜かれることなしにアノードに水素、カソードに酸素が供給されることによって引き起こされる高電圧の存在である。これは特に停止フェーズが長い場合に起こる可能性がある。
【0006】
始動フェーズおよび/またはストップフェーズにおいて燃料電池の劣化を防ぐために、追加の空気供給なしに電流が抜かれることにより、システムがシャットダウンする前にカソードに存在する酸素を使い果たすことができる。その間、アノードには水素が引き続き供給され、それによりセル電圧に問題はない。しかし、空気がカソードに拡散するとセル電圧が高くなり、そこに数時間とどまり、それによって害を及ぼす電気化学反応が引き起こされる。したがって、通常、停止する場合、空気がカソードに到達することを防ぐ遮断弁が入口側と出口側の両方に設けられる。しかしこれらの遮断弁は、特に耐用期間にわたって、完全には気密でないため、その有効性が限られている。さらに、遮断弁には少なからぬ圧力損失が伴う。
【0007】
定置用途から、不都合な劣化を防ぐために、始動および/またはシャットダウン前にアノードと、場合によってはカソードを窒素で不活性化することが知られている。このために窒素がボンベに貯蔵される。これは、移動用途ではスペースの理由から不可能である。さらに、窒素ボンベを再び充填して保守する必要があるが、これはコストに不利に作用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、燃料電池の劣化を防ぐために、移動式燃料電池システムでも不活性化を可能にするという課題に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の特徴を有する方法、および請求項7に記載の特徴を有する燃料電池システムが提案される。有利な実施形態は、それぞれの従属請求項から読み取ることができる。
【0010】
それぞれカソードとアノードを有する複数の燃料電池スタックを備える燃料電池システムの動作方法が提案される。カソードには、それぞれ給気路を介して空気が供給され、燃料電池スタックから流出する排気はそれぞれ排気路を介して排出される。アノードには、それぞれアノード回路を介して水素が供給される。本発明によれば、燃料電池システムの始動および/またはシャットダウン時に、燃料電池スタックから流出する排気が別の燃料電池スタックのアノードおよび/またはカソードを不活性化するために利用される。
【0011】
燃料電池スタックの排気は酸素を含まないか、または少なくとも酸素が少なく、それにより、この排気は、別の燃料電池スタックのアノードおよび/またはカソードを不活性化するのに適している。したがって、提案される方法では、始動する場合および/または停止する場合に第1の燃料電池スタックの排気が第2の燃料電池スタックを不活性化するために利用される。
【0012】
本発明による方法を用いて、始動する場合および/または停止する場合に生じるスタックの劣化を効果的に解消または少なくとも低減することができる。その結果として、スタックの耐用期間が長くなる。別の利点は、不活性化するために、例えば窒素などの追加のガスを貯蔵する必要がなく、それにより燃料電池システムの所要スペースが実質的に変わらない。
【0013】
好ましくは、不活性化するために必要な燃料電池スタックの排気は、遮断弁が組み込まれた接続ラインを介して別の燃料電池スタックに供給され、このために遮断弁が開かれる。したがって、最も簡単な場合には、本発明による方法を実行するために、さらに1つのラインとさらに1つの弁のみが必要であり、それにより追加の所要スペースは無視できるほど少ない。したがって、この方法は、非常に簡単かつ安価に実現できる。
【0014】
さらに好ましくは、不活性化するために必要な燃料電池スタックの排気は、別の燃料電池スタックのアノードまたはカソードに直接または間接的に供給され、殊に間接的供給は、アノードが不活性されるのか、またはカソードが不活性化されるのかに応じて、別の燃料電池スタックのアノード回路または給気路を介して行われる。したがって、間接的供給では、遮断弁が組み込まれた提案される接続ラインは、不活性化されるべき燃料電池スタックのアノード回路または給気路に通じている。
【0015】
さらに、燃料電池システムの始動および/またはシャットダウン時に、空気搬送および空気圧縮システムを切断することによって、ならびに/あるいは少なくとも1つの遮断弁を閉じることによって、不活性化されるべき燃料電池スタックの空気供給が中断されることが提案される。それによって、不活性化されるべき燃料電池スタックのカソードに空気もしくは酸素が到達しないことが確保される。少なくとも1つの遮断弁を閉じることは、そのような弁がそもそも存在することを前提とする。燃料電池スタックもしくは燃料電池システムの設計によっては、これは必ずしも必要ではない。本発明による方法の実行は、カソードを遮断するための遮断弁を必要とせず、それにより給気路および/または排気路における遮断弁を省略することができる。これは、遮断弁にかかるコストを節約できることを意味する。その結果、圧力損失も生じず、それにより提案される方法を用いて、さらに水素の消費量を減じることができる。
【0016】
アノード回路に組み込まれたパージ弁および/またはドレン弁を開くことによって、不活性化されたアノードのアノードガスを燃料電池システムから除去することができる。代替的に、パージ弁および/またはドレン弁を開いて、不活性化されたアノードのアノードガスを、接続ラインを介して燃料電池スタックの排気路に導入することができる。これは、同一の燃料電池スタックであってもよいし、別の燃料電池スタックであってもよい。次いで、排気ラインにおいてアノードガスが排気と混合され、不活性ガス混合物として導出することができる。
【0017】
本発明の好ましい一実施形態によれば、不活性化するために必要な排気は、燃料電池スタックの化学量論未満での動作によって生成される。
【0018】
さらに、冒頭で述べた課題を解決するために、複数の燃料電池スタックを備える燃料電池システムが提案される。複数の燃料電池スタックは、それぞれカソードとアノードを有する。カソードは、それぞれ入口側で給気路に、および出口側で排気路に接続されている。アノードは、それぞれアノード回路に連結されている。本発明によれば、燃料電池スタックの排気路は、別の燃料電池スタックのアノードおよび/またはカソードに接続されており、それにより他の燃料電池スタックの排気を用いて別の燃料電池スタックのアノードおよび/またはカソードを不活性化することができる。
【0019】
したがって、提案される燃料電池システムは、特に、前述した方法を実行するのに適しているか、もしくはこの方法に従って動作可能であり、それにより同じ利点を達成することができる。特に、始動する場合および/または停止する場合に、燃料電池スタックのアノードおよび/またはカソードを簡単かつ安価に不活性化することができる。
【0020】
好ましくは、燃料電池スタックの排気路は、遮断弁が組み込まれた接続ラインを介して別の燃料電池スタックのアノードおよび/またはカソードに接続されている。これは、最も簡単な場合には、遮断弁が組み込まれた接続ラインの分だけ燃料電池システムを拡張しさえすればよいことを意味する。それによって、燃料電池システムの所要スペースはわずかしか増えない。
【0021】
その場合、接続ラインを不活性化されるべき燃料電池スタックのアノードまたはカソードに直接接続することができる。代替的に、接続ラインは、不活性化されるべき燃料電池スタックのアノードにアノード回路を介して間接的に、またはカソードに給気路を介して間接的に接続されてもよい。排気の間接的供給は、特に簡単に実現できる。
【0022】
さらに、少なくとも1つの燃料電池スタックの給気路に空気搬送および空気圧縮システムが組み込まれていることが提案される。空気搬送および空気圧縮システムを用いて、給気路に特定の空気質量流量と特定の圧力レベルを提供することができる。燃料電池スタックが不活性化されるべき場合、空気搬送および空気圧縮システムを停止することによって酸素含有空気の供給を中断させることができる。
【0023】
さらに好ましくは、少なくとも1つの燃料電池スタックのアノード回路にパージ弁および/またはドレン弁が組み込まれている。パージ弁および/またはドレン弁を開くことによって、アノード回路からアノードガスが排出される。これは特に、不活性化の後、アノードに水素を新たに充填すべき場合に必要である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の本発明による燃料電池システムの概略図である。
図2図1に示される燃料電池システムの本発明による動作方法の手順を示す図である。
図3】第2の本発明による燃料電池システムの概略図である。
図4図3に示される燃料電池システムの本発明による動作方法の手順を示す図である。
図5】第3の本発明による燃料電池システムの概略図である。
図6図5に示される燃料電池システムの停止する場合の本発明による動作方法の手順を示す図である。
図7図5に示される燃料電池システムの始動する場合の本発明による動作方法の手順を示す図である。
図8】本発明による燃料電池システムの始動する場合の代替的な本発明による動作方法の手順を示す図である。
図9】第4の本発明による燃料電池システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付の図面をもとにして詳しく説明する。
【0026】
図1は、第1の燃料電池スタック100と第2の燃料電池スタック200を備える本発明による燃料電池システム1を示す。
【0027】
第1の燃料電池スタック100は、カソード110とアノード120を有する。カソード110には給気路111を介して酸素供給体としての空気が供給される。空気は周囲環境から取り込まれ、空気フィルタ114を介して、特定の空気質量流と特定の圧力レベルを提供するために空気搬送および空気圧縮システム113に供給される。この場合、空気が暖められるため、空気は給気路111に組み込まれた熱交換器115を用いて冷却され、さらに下流で加湿器116を用いて加湿される。次いで、空気は第1の逆止弁117を介して燃料電池スタック100のカソード110に到達する。
【0028】
燃料電池スタック100の排気は、別の逆止弁117が配置された排気路112を介して排出される。逆止弁117の下流において、排気路112に加湿器116が組み込まれており、それにより給気を加湿するために湿った排気を利用することができる。加湿器116の下流において、排気は、タービン131に、続いて圧力調整器130に供給される。空気搬送および空気圧縮システム113はタービン131によって駆動可能であるため、タービンを用いることで、圧縮に用いられるエネルギーの一部を回収することができる。燃料電池スタック100を迂回するために、給気路111と排気路112をバイパス弁119が組み込まれたバイパス路118を介して接続することができる。
【0029】
アノード120にはアノード回路121を介して新鮮なアノードガスもしくは水素、および再循環アノードガスを供給することができる。再循環はジェットポンプ124を用いて受動的に、および送風機123を用いて能動的に行われる。時間の経過とともに再循環アノードガスに窒素が蓄積され、このガスがカソード側からアノード側に拡散するため、アノード回路121にパージ弁122が設けられている。パージ弁122を開くことによって、窒素含有アノードガスがアノード回路121から排出され、開いた水素調量弁(図示せず)を介して新鮮なアノードガスと置き換えられる。それに加えて、再循環アノードガスには水が蓄積するため、アノード回路121には水分離器126が容器127と共に組み込まれている。ドレン弁128を開くことによって、容器127を時々空にすることができる。
【0030】
燃料電池スタック100の動作中に発生する熱は、冷却回路129を用いて排出される。
【0031】
燃料電池スタック100の排気路112は、遮断弁3が組み込まれた接続ライン2を介して別の燃料電池スタック200のアノード回路221に接続されている。したがって、遮断弁3を開いた場合に、燃料電池スタック100からの排気をアノード回路221に導入することができる。その場合、アノード回路221を介して、排気が蓄積されたアノードガスが燃料電池スタック200のアノード220に到達する。停止する場合、図1に示される燃料電池システム1を、以下に説明される図2に示された方法に従って動作させることができる。
【0032】
図2に示される方法のステップS10において、燃料電池スタック200のアノード220の不活性化が開始される。このために、ステップS11において、まず燃料電池スタック200への空気供給が停止される。カソード210が遮断弁によって遮断可能である場合には、ステップS12において、これらの遮断弁が閉じられる。次いで、ステップS13において、燃料電池スタック200のカソード210の酸素希薄化(Sauerstoff-Abmagerung)が続く。ステップS14において、燃料電池スタック100は希薄モード(Magerbetrieb)で動作され、それによりλair≦1である。ステップS15において、燃料電池スタック200の水素調量弁(図示せず)とパージ弁222を閉じることによって、新鮮なアノードガスの供給が中断される。次いで、ステップS16において、接続ライン2における遮断弁3が開かれ、それにより第1の燃料電池スタック100の排気路112からの排気が第2の燃料電池スタック200のアノード回路221に到達する。このようにして、第2の燃料電池システム200のアノード220が不活性化される。ステップS17において、不活性化の完了が検査される。アノード220の不活性化が確認された場合(「イエス」)、続いて、ステップS18において、接続ライン2における遮断弁3を再び閉じることができ、ステップS19において、燃料電池スタック100の希薄モードを通常モードに切り替えることができ、それによりλair≧1である。ステップS20において、方法が終了する。
【0033】
第2の燃料電池スタック200に供給された第1の燃料電池スタック100の排気を、パージ弁222を開くことによって再び除去することができる。代替的に、この排気は、遮断弁5が組み込まれた別の接続ライン4を介して第1の燃料電池システム100の排気路112に排出することができる(図1を参照)。この場合、ステップS16において、両方の遮断弁3および5が開かれ、ステップS18において、両方の遮断弁3および5が再び閉じられる。
【0034】
図3は、第1の燃料電池スタック100と第2の燃料電池スタック200を備える別の本発明による燃料電池システム1を示す。これらの燃料電池スタックは、図1に示される燃料電池システム1の2つの燃料電池スタック100、200に相当する。しかし図3では、接続ライン2‘および4‘は第2の燃料電池スタック200のアノード回路221もしくはアノード220にではなく、カソード210に連結されている。
【0035】
このようにして、燃料電池システム1を始動する場合にカソードの不活性化をもたらすことができる。例えば、図4に示される方法を実行することができる。
【0036】
図4に示される方法のステップS30において、燃料電池スタック200のカソード210の不活性化が開始される。このために、ステップS31において、第1の燃料電池スタック100が希薄モードで動作される。ステップS32において、接続ライン2‘に組み込まれた遮断弁3‘が開かれる。ステップS33において、カソード210が不活性化されたかどうかが検査される。検査の結果が肯定的(「イエス」)である場合、ステップS34において、遮断弁3‘が再び閉じられる。
【0037】
さらに、アノード220の不活性化が行われるべき場合、図3に示される燃料電池システム1に、図1に示される接続ライン2、4と遮断弁3、5を追加することができる。次いで、ステップS34にステップS35が続き、このステップにおいて、アノード220を不活性化するために遮断弁3、5が開かれる。ステップS36において、不活性化が完了したかどうかが検査される。これが当てはまる場合(「イエス」)、ステップS37において、遮断弁3、5が再び閉じられる。続いて、ステップS38において、燃料電池スタック100の希薄モードから通常モードに切り替えられ、それによりλair≧1である。次いで、ステップS39において、方法が終了する。
【0038】
したがって、カソード210とアノード220の不活性化は、少なくとも3つの遮断弁3、3‘および5を必要とする。遮断弁3、3‘および5の数を低減するために、図5に例示的に示されるように、燃料電池システム1のトポロジをさらに簡略化することができる。
【0039】
図5に示される本発明による燃料電池システム1は、2つの燃料電池スタック100、200を有し、これらの燃料電池スタックは実質的に同じ構造であり、図1の燃料電池システム1の燃料電池スタック100に相当する。したがって同じ参照符号が使用される。両方の燃料電池スタック100、200は、遮断弁3が組み込まれた接続ライン2を介して接続されており、接続ライン2は、第1の燃料電池スタック100の排気路112を第2の燃料電池スタック200のアノード回路221に接続する。
【0040】
停止する場合、燃料電池システム1を図6に示される方法に従って動作させることができる。
【0041】
ステップS50において、燃料電池スタック200の不活性化が開始される。このために、ステップS51において、空気搬送および空気圧縮システム213を切断することによってカソード210の方向の空気供給が中断される。給気路211および/または排気路212に遮断弁が設けられている場合、これらの遮断弁はステップS52において閉じられる。次いで、ステップS53において、燃料電池スタック200のカソード210の酸素希薄化が続く。ステップS54において、燃料電池スタック100は希薄モードで動作され、それによりλair≦1である。ステップS55において、不活性化されるべき燃料電池スタック200のアノード側に配置された圧力調整器225が閉じられる。続いて、ステップS56において、接続ライン2に組み込まれた遮断弁3が開かれる。次いで、ステップS57において、不活性化されるべき燃料電池スタック200のパージ弁222および/またはドレン弁228が開かれる。クロック制御して開くこともできる。次いで、接続ライン2を介して供給された第1の燃料電池スタック100の排気が、開いたパージ弁222および/または開いたドレン弁228を介して再び導出される。ステップS58において実行された検査が、燃料電池スタック200のアノード220が不活性化された(「イエス」)という結果になった場合、ステップS59において、遮断弁3、パージ弁222および/またはドレン弁228を再び閉じることができる。ステップS60において、燃料電池スタック100の希薄モードが再び通常モードに切り替えられ、それによりλair≧1である。ステップS61において、方法が終了する。
【0042】
開始する場合、図7に示される方法を実行することができる。
【0043】
図7に示される方法のステップS70において、燃料電池スタック200のカソード210の不活性化が開始される。このために、ステップS71において、第1の燃料電池スタック100が希薄モードで動作される。ステップS72において、不活性化されるべき燃料電池スタック200の排気路212に配置された圧力調整器230とバイパス路218のバイパス弁219が閉じられる。圧力調整器230および/またはバイパス弁219を完全に閉じる代わりに、これらを大きく絞るだけでもよい。給気路211および/または排気路212に遮断弁が設けられている場合、これらはステップS73において閉じられる。続いて、ステップS74において、接続ライン2に組み込まれた遮断弁3が開かれる。ステップS75において、パージ弁222および/またはドレン弁228が開かれ、場合によってはクロック制御され、それにより第1の燃料電池スタック100の排気路112からの排気が接続ライン2を介して第2の燃料電池スタック200のアノード回路221に流入し、開いたパージ弁および/またはドレン弁222、228を介して再び流出する。次いで、ステップS76において、アノード220が不活性化されたかどうかが検査される。検査の結果が肯定的(「イエス」)である場合、ステップS77において、不活性化されるべき燃料電池スタック200の遮断弁3とパージ弁および/またはドレン弁222、228が再び閉じられる。ステップS78において、第1の燃料電池スタック100の希薄モードから再び通常モードに切り替えられ、それによりステップS79において、方法を終了することができる。
【0044】
代替的に、始動する場合、不活性化されるべき燃料電池スタック200のカソード210が、図3と同様に、遮断弁3‘が組み込まれた接続ライン2‘を介して第1の燃料電池スタック100の排気路112に連結されている場合、図8に示される方法を実行することができる。
【0045】
図8の方法では、ステップS80において、燃料電池スタック200の不活性化が開始される。このために、ステップS81において、燃料電池スタック100が希薄モードで動作される。次いで、ステップ82において、接続ライン2‘における遮断弁3‘が開かれ、それにより第1の燃料電池スタック100の排気路112からの排気が第2の燃料電池システム200のカソード210に供給される。ステップS83において、カソード210の不活性化が完了したかどうかが検査される。「イエス」である場合、ステップS84において、遮断弁3‘が閉じられる。続いて、ステップS85において、接続ライン2における遮断弁3が開かれ、それにより第1の燃料電池スタック100の排気路112からの排気が第2の燃料電池スタック200のアノード回路221に到達する。さらに、ステップS86において、不活性化されるべき燃料電池スタック200のパージ弁222および/またはドレン弁228が開かれ、それにより、供給された量がこれを介して再び排出可能である。ステップS87において、アノード220の不活性化が完了したかどうかが検査される。「イエス」である場合、ステップS88において、遮断弁3とパージ弁および/またはドレン弁222、228が再び閉じられる。ステップS89において、第1の燃料電池スタック100の希薄モードが再び通常モードに切り替えられる。ステップS90において、方法が終了する。
【0046】
図9は、2つの燃料電池スタック100、200を備える燃料電池システム1を示し、燃料電池スタック200は変更されている。逆止弁217の代わりに、給気路211および排気路212において制御可能な遮断弁232、233が設けられている。アノード220の不活性化中に両方の遮断弁232、233を開いたままにすることによって、開いたパージ弁222および/または開いたドレン弁228を介して流出するアノードガスを用いて同時にカソード210を不活性化することができる。このために、アノードガスは、接続ライン234を介して、不活性化されるべき燃料電池スタック200の排気路212に導入され、遮断弁232、233が開いた場合に、カソード210によって逆の流れ方向に導かれる(図9の矢印を参照)。このようにして、遮断弁3を1つだけ追加することにより、燃料電池スタック200のアノード220とカソード210の両方を不活性化することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 燃料電池システム
2 接続ライン
2‘ 接続ライン
3 遮断弁
3‘ 遮断弁
4 接続ライン
4‘ 接続ライン
5 遮断弁
100 第1の燃料電池スタック
110 カソード
111 給気路
112 排気路
113 空気搬送および空気圧縮システム
114 空気フィルタ
115 熱交換器
116 加湿器
117 逆止弁
118 バイパス路
119 バイパス弁
120 アノード
121 アノード回路
122 パージ弁
123 送風機
124 ジェットポンプ
126 水分離器
127 容器
128 ドレン弁
129 冷却回路
130 圧力調整器
131 タービン
200 第2の燃料電池スタック
210 カソード
211 給気路
212 排気路
213 空気搬送および空気圧縮システム
217 逆止弁
218 バイパス路
219 バイパス弁
220 アノード
221 アノード回路
222 パージ弁
225 圧力調整器
228 ドレン弁
230 圧力調整器
232 遮断弁
233 遮断弁
234 接続ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれカソード(110、210)とアノード(120、220)を有する複数の燃料電池スタック(100、200)を備える燃料電池システム(1)の動作方法であって、前記カソード(110、210)に、それぞれ給気路(111、211)を介して空気が供給され、かつ前記燃料電池スタック(100、200)から流出する排気がそれぞれ排気路(112、212)を介して排出され、前記アノード(120、220)にそれぞれアノード回路(121、221)を介して水素が供給される、方法において、
前記燃料電池システム(1)の始動および/またはシャットダウン時に、燃料電池スタック(100)から流出する排気が別の燃料電池スタック(200)の前記アノード(220)および/または前記カソード(210)を不活性化するために利用されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
不活性化するために必要な燃料電池スタック(100)の前記排気は、遮断弁(3)が組み込まれた接続ライン(2)を介して前記別の燃料電池スタック(200)に供給され、このために前記遮断弁が開かれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
不活性化するために必要な燃料電池スタック(100)の前記排気は、前記別の燃料電池スタック(200)の前記アノード(220)または前記カソード(210)に直接または間接的に、殊に前記別の燃料電池スタック(200)のアノード回路(221)または前記給気路(211)を介して供給されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記燃料電池システム(1)の始動および/またはシャットダウン時に、空気搬送および空気圧縮システム(213)を切断することによって、ならびに/あるいは少なくとも1つの遮断弁(217)を閉じることによって、前記不活性化されるべき燃料電池スタック(200)の空気供給が中断されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記アノード回路(221)に組み込まれたパージ弁(222)および/またはドレン弁(228)を開くことによって、不活性化されたアノード(220)のアノードガスが前記燃料電池システム(1)から除去されるか、または接続ライン(4)を介して燃料電池スタック(100、200)の排気路(112、212)に導入されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
不活性化するために必要な前記排気は、燃料電池スタック(100、200)の化学量論未満での動作によって生成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
それぞれカソード(110、210)とアノード(120、220)を有する複数の燃料電池スタック(100、200)を備える燃料電池システム(1)であって、前記カソード(110、210)がそれぞれ入口側で給気路(111、211)に接続されており、出口側で排気路(112、212)に接続されており、前記アノード(120、220)がそれぞれアノード回路(121、221)に連結されている、燃料電池システムにおいて、
燃料電池スタック(100)の前記排気路(112)が別の燃料電池スタック(200)の前記アノード(220)および/または前記カソード(210)に接続されており、それにより排気を用いて前記アノード(220)および/または前記カソード(210)を不活性化可能であることを特徴とする、燃料電池システム。
【請求項8】
燃料電池スタック(100)の前記排気路(112)は、遮断弁(3)が組み込まれた接続ライン(2)を介して前記別の燃料電池スタック(200)の前記アノード(220)および/または前記カソード(210)に接続されていることを特徴とする、請求項7に記載の燃料電池システム(1)。
【請求項9】
前記接続ライン(2)は、前記不活性化されるべき燃料電池スタック(200)の前記アノード(220)または前記カソード(210)に直接接続されていることを特徴とする、請求項8に記載の燃料電池システム(1)。
【請求項10】
前記接続ライン(2)は、前記不活性化されるべき燃料電池スタック(200)の前記アノード(220)に前記アノード回路(221)を介して間接的に、または前記カソード(210)に前記給気路(211)を介して間接的に接続されていることを特徴とする、請求項8に記載の燃料電池システム(1)。
【請求項11】
少なくとも1つの燃料電池スタック(100、200)の前記給気路(111、211)に空気搬送および空気圧縮システム(113、212)が組み込まれていることを特徴とする、請求項7から10までのいずれか1項に記載の燃料電池システム(1)。
【請求項12】
少なくとも1つの燃料電池スタック(100、200)の前記アノード回路(121、221)にパージ弁(122、222)および/またはドレン弁(128、228)が組み込まれていることを特徴とする、請求項7から10までのいずれか1項に記載の燃料電池システム(1)。
【国際調査報告】