(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】金属板及びこれを含むOLED画素蒸着のための蒸着用マスク
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20241121BHJP
C23C 14/04 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C23C14/24 G
C23C14/04 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535555
(86)(22)【出願日】2022-11-25
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 KR2022018858
(87)【国際公開番号】W WO2023113291
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0178252
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517099982
【氏名又は名称】エルジー イノテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100228980
【氏名又は名称】副島 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ウヨン
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029HA02
4K029HA03
4K029HA04
(57)【要約】
実施例に係るOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板は、第1方向及び前記第1方向と交差する第2方向が定義され、前記金属板は鉄及びニッケルを含むインバーを含み、前記第1方向の第1残留応力及び前記第2方向の第2残留応力は、5mm以下であり、前記第1残留応力と前記第2残留応力との比は、1:0.4~0.5であり、前記第1残留応力は、前記第1方向が横方向であるXmm×Ymm(横×縦)サイズの任意の第1サンプル金属板の残留応力であり、前記第2残留応力は、前記第2方向が横方向であるYmm×Xmm(横×縦)サイズの任意の第2サンプル金属板の残留応力であり、前記Xは、200mm~220mmであり、前記Yは、140mm~160mmであり、前記残留応力は、前記第1サンプル金属板及び前記第2サンプル金属板それぞれの長幅方向の一終端から長幅方向長さの5%~10%以降の領域の厚さが前記金属板厚の30%~70%となるようにエッチングし、エッチングした前記サンプル金属板を水平台上に据え置いたとき、下記の数式1として定義される。
[数1]
残留応力=H/L
(H:サンプル金属板のエッチング領域が前記水平台の上面から反り上がる最大高さ(mm)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向及び前記第1方向と交差する第2方向が定義される金属板であって、
前記金属板は、鉄及びニッケルを含むインバーを含み、
前記第1方向の第1残留応力及び前記第2方向の第2残留応力は、5mm以下であり、
前記第1残留応力と前記第2残留応力との比は、1:0.4~0.5であり、
前記第1残留応力は、前記第1方向が横方向であるXmm×Ymm(横×縦)サイズの任意の第1サンプル金属板の残留応力であり、
前記第2残留応力は、前記第2方向が横方向であるYmm×Xmm(横×縦)サイズの任意の第2サンプル金属板の残留応力であり、
前記Xは、200mm~220mmであり、前記Yは、140mm~160mmであり、
前記残留応力は、前記第1サンプル金属板及び前記第2サンプル金属板それぞれの長幅方向の一終端から長幅方向長さの5%~10%以降の領域の厚さが前記金属板厚の30%~70%となるようにエッチングし、エッチングした前記サンプル金属板を水平台上に据え置いたとき、下記の数式1として定義される、OLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
[数1]
残留応力=H/L
(H:サンプル金属板のエッチング領域が前記水平台の上面から反り上がる最大高さ(mm)、L:前記サンプル金属板のうちエッチング領域が形成される第1方向の長さ(mm))
【請求項2】
前記第1残留応力と前記第2残留応力との比は、1:0.3~0.6である、請求項1に記載のOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
【請求項3】
前記第1残留応力と前記第2残留応力との比は、1:0.4~0.5である、請求項1に記載のOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
【請求項4】
前記第1残留応力は、複数の第1サンプル金属板の平均値として測定され、
前記第2残留応力は、複数の第2サンプル金属板の平均値として測定される、請求項1に記載のOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
【請求項5】
前記第1方向の第1表面波形及び前記第2方向の第2表面波形は、20ppm以下であり、
前記第1表面波形と前記第2表面波形との比は、1:0.15~0.7であり、
前記第1表面波形は、前記第1方向が横方向である500mm×170mm(横×縦)サイズの任意の第3サンプル金属板の前記第1方向の表面波形であり、
前記第2表面波形は、前記第3サンプル金属板の前記第2方向の表面波形であり、
前記第3サンプル金属板は、第1座標(C1)、第2座標(C2)、第3座標(C3)、及び第4座標(C4)によって形成される仮想の四角形及び前記仮想の四角形内部で等間隔に離隔する複数の座標が設定され、
前記第3サンプル金属板には、前記座標を通過する前記第1方向の複数の第1仮想線及び前記第2方向の複数の第2仮想線が設定され、
前記第1表面波形と前記第2表面波形は、下記数式2によって定義される、請求項1に記載のOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
[数2]
表面波形(ppm)=106*(L-L0)/L0
(Lは、座標の曲線距離を意味し、L0は、座標の直線距離を意味する。
【請求項6】
前記第1表面波形と前記第2表面波形との比は、1:0.2~0.6である、請求項5に記載のOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
【請求項7】
前記第1表面波形と前記第2表面波形との比は、1:0.25~0.5である、請求項5に記載のOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
【請求項8】
前記第1表面波形は、前記座標を通過する前記第1仮想線の表面波形の平均値として計算され、
前記第2表面波形は、前記座標を通過する前記第2仮想線の表面波形の平均値として計算される、請求項5に記載のOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
【請求項9】
前記金属板の厚さは、15μm~25μmである、請求項1に記載のOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
【請求項10】
前記第1残留応力は、2mm~5mmであり、
前記第2残留応力は、1mm~3mmである、請求項1に記載のOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
【請求項11】
前記第1表面波形は、10ppm~20ppmであり、
前記第2表面波形は、5ppm~15ppmである、請求項2に記載のOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
【請求項12】
第1項または第2項のいずれか一項の金属板を含み、
前記金属板は、
前記金属板の第1面上の第1面孔及び前記第2面上の大面孔を含む貫通孔を含み、
前記第1面孔の幅は、前記第2面孔の幅よりも小さい、蒸着用マスク。
【請求項13】
前記蒸着用マスクは、25μm~35μmの直進度を有し、
前記直進度は、反る前の蒸着用マスクの反り程度をゼロとしたとき、反った後の蒸着用マスクの最大反り程度として定義される、請求項12に記載の蒸着用マスク。
【請求項14】
前記蒸着用マスクは、15μm~25μmのトータルピッチを有し、
前記トータルピッチは、前記蒸着用マスクの長軸または短軸方向に上部面と下部面との長さ差として定義される、請求項12に記載の蒸着用マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施例は、金属板及びOLED画素蒸着のための蒸着用マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示装置は、多様なデバイスに適用されて使用されている。例えば、表示装置は、スマートフォン、タブレットPCなどの小型デバイスだけでなく、テレビ、モニタ、パブリックディスプレイPD(Public Display)などの大型デバイスに適用されて利用されている。特に、最近は500PPI(Pixel Per Inch)以上の超高解像度UHD(Ultra High Definition)に対する需要が増加しており、高解像度表示装置が小型デバイス及び大型デバイスに適用されている。これにより、低電力及び高解像度を実現するための技術に対する関心が高まっている。
【0003】
一般に使用される表示装置は、駆動方法によって大きくLCD(Liquid Crystal Display)及びOLED(Organic Light Emitting Diode)などに区分され得る。
【0004】
LCDは、液晶(Liquid Crystal)を用いて駆動される表示装置であって、前記液晶の下部には、CCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp)またはLED(Light Emitting Diode)などを含む光源が配置される構造を有し、前記光源上に配置される前記液晶を用いて前記光源から放出される光の量を調節して駆動される表示装置である。
【0005】
また、OLEDは、有機物質を用いて駆動される表示装置であって、別の光源を必要とせず、有機物自体が光源の役割を果たして低電力で駆動され得る。また、OLEDは、無限の明暗比を表現することができ、LCDよりも約1000倍以上の速い応答速度を有し、視野角に優れてLCDを代替できる表示装置として注目されている。
【0006】
特に、OLEDにおいて発光層に含まれた前記有機物は、ファインメタルマスクFMM(Fine Metal Mask)と呼ばれる蒸着用マスクにより基板上に蒸着され得、蒸着された前記有機物は、前記蒸着用マスクに形成されたパターンと対応するパターンで形成されて、画素の役割を果たすことができる。前記蒸着用マスクは、一般に鉄(Fe)及びニッケル(Ni)を含むインバー(Invar)合金金属板で製造される。このとき、前記金属板の一面及び他面には、前記一面及び前記他面を貫通する貫通孔が形成され、前記貫通孔は、画素パターンと対応する位置に形成され得る。これにより、赤色(Red)、緑色(Green)、青色(Blue)などの有機物は、前記金属板の貫通孔を通過して基板上に蒸着され得、基板上には、画素パターンが形成され得る。
【0007】
一方、蒸着用マスクに使用されるインバー合金金属板は、金属板の厚さ及び表面を改質する前処理工程を経た後、金属板に貫通孔を形成することができる。
【0008】
このとき、前処理工程により、金属板内部の応力分布が変化することがある。これにより、金属板内部の応力分布の不均一により金属板が反ることがあり、金属板表面のウェーブネスが増加することがある。
【0009】
したがって、前処理工程が行われた金属板に貫通孔を形成した後、それぞれの蒸着用マスクを単位サイズに切断する際、このような応力により蒸着用マスクが反ることがある。
【0010】
したがって、蒸着用マスクを介して有機物質を蒸着する際、蒸着用マスクと有機物質が蒸着される基板に浮き上がりが発生することがあるので、蒸着効率が低下することがある。
【0011】
したがって、前記金属板の前処理工程による金属板の反り及びこれによる表面波形を制御できる新しい蒸着用マスクが要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
実施例は、反り及び表面波形が減少した金属板及びこれによって製造される蒸着用マスクを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施例に係るOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板は、第1方向及び前記第1方向と交差する第2方向が定義され、前記金属板は鉄及びニッケルを含むインバーを含み、前記第1方向の第1残留応力及び前記第2方向の第2残留応力は、5mm以下であり、前記第1残留応力と前記第2残留応力との比は、1:0.4~0.5であり、前記第1残留応力は、前記第1方向が横方向であるXmm×Ymm(横×縦)サイズの任意の第1サンプル金属板の残留応力であり、前記第2残留応力は、前記第2方向が横方向であるYmm×Xmm(横×縦)サイズの任意の第2サンプル金属板の残留応力であり、前記Xは、200mm~220mmであり、前記Yは、140mm~160mmであり、前記残留応力は、前記第1サンプル金属板及び前記第2サンプル金属板それぞれの長幅方向の一終端から長幅方向長さの5%~10%以降の領域の厚さが前記金属板厚の30%~70%となるようにエッチングし、エッチングした前記サンプル金属板を水平台上に据え置いたとき、下記の数式1として定義される。
【0014】
[数1]
【0015】
残留応力=H/L
【0016】
(H:サンプル金属板のエッチング領域が前記水平台の上面から反り上がる最大高さ(mm)、L:前記サンプル金属板のうちエッチング領域が形成される第1方向の長さ(mm))
【発明の効果】
【0017】
実施例に係る金属板は、前処理工程後に残留する金属板の残留応力及び表面波形を設定された範囲に制御することにより、前記金属板により製造される蒸着用マスクと蒸着基板との浮き現象を改善することができる。したがって、前記金属板で作製された蒸着用マスクを介して蒸着基板に有機材料を蒸着する場合、蒸着効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例に係る蒸着用マスクが適用された有機物蒸着装置を示す断面図である。
【
図2】実施例に係る蒸着用マスクと蒸着基板との接触関係を説明するための断面図である。
【
図3】実施例に係る蒸着用マスクを製造するための金属板の前処理工程を説明するための図である。
【
図4】実施形態に係る蒸着用マスクを製造するための金属板から製造されるサンプル金属板を説明するための図である。
【
図5】実施形態に係る蒸着用マスクを製造するための金属板から製造されるサンプル金属板を説明するための図である。
【
図6】実施例に係る蒸着用マスクを製造するための金属板の残留応力測定方法を説明するための図である。
【
図7】実施例に係る蒸着用マスクを製造するための金属板の表面波形(waviness)測定方法を説明するための図である。
【
図8】実施例に係る蒸着用マスクの平面図を示す図である。
【
図9】実施例に係る蒸着用マスクのT/P(Total Pitch)と直進度を説明するための図である。
【発明の実施のための形態】
【0019】
以下、添付された図面を参照して、本発明の好ましい実施例を詳しく説明する。但し、本発明の技術思想は、説明される一部の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現され、本発明の技術思想の範囲内であれば、実施例間のその構成要素のうち一つ以上を選択的に結合、置換して使用することができる。また、本発明の実施例で使用される用語(技術及び科学的用語を含む)は、明らかに特別に定義されて記述されない限り、本発明が属する技術分野において、通常の知識を有する者に一般的に理解される意味として解釈することができ、事前に定義された用語のように一般的に使用される用語は、関連技術の文脈上の意味を考慮して、その意味を解釈できるであろう。
【0020】
また、本発明の実施例で使用される用語は、実施例を説明するためのものであり、本発明を制限するものではない。本明細書において、単数形は、フレーズで特に言及しない限り、複数形も含むことができ、「A及び(と)B、Cのうち少なくとも一つ(または一つ以上)」に記載される場合、A、B、Cに結合できるすべての組み合わせのうち一つ以上を含むことができる。
【0021】
また、本発明の構成要素を説明するにあたって、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を用いることができる。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語により当該構成要素の本質や順番または順序などに限定されない。
【0022】
そして、ある構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」または「接続」されると記載された場合、その構成要素は、その他の構成要素に直接的に連結、結合または接続される場合のみならず、その構成要素とその他の構成要素との間にある別の構成要素によって「接続」、「結合」または「接続」される場合も含むことができる。
【0023】
また、各構成要素の「上(うえ)または下(した)」に形成または配置されることが記載される場合には、上(うえ)または下(した)は、二つの構成要素が互いに直接接触される場合のみならず、一つ以上の別の構成要素が二つの構成要素の間に形成または配置される場合も含む。
【0024】
また、「上(うえ)または下(した)」で表現される場合、一つの構成要素を基準に上方向のみならず、下側方向の意味も含むことができる。
【0025】
以下、図面を参照して、実施例に係る蒸着用マスクを説明する。
【0026】
図1は、実施例に係る蒸着用マスクが適用される有機物蒸着装置を示す図である。
【0027】
図1を参照すると、前記有機物蒸着装置1000は、蒸着用マスク1100、マスクフレーム1200、蒸着基板1300、有機物蒸着容器1400、及び真空チャンバ1500を含む。
【0028】
前記蒸着用マスク1100、前記マスクフレーム1200、前記蒸着基板1300、及び前記有機物蒸着容器1400は、前記真空チャンバ1500内に収容される。これにより、前記蒸着用マスク1100を介した蒸着工程は、真空雰囲気で行われ得る。
【0029】
前記蒸着基板1300は、表示装置の製造に使用される基板である。例えば、前記蒸着基板1300は、OLED画素パターンが形成される有機物蒸着基板であってもよい。前記蒸着基板1300上には、光の3原色である画素を形成するために、赤色(Red)、緑色(Greed)、及び青色(Blue)の有機物パターンが形成される。即ち、前記蒸着基板1300上には、RGBパターンが形成される。
【0030】
前記蒸着用マスク1100は、前記蒸着基板1300の一面上に配置される。詳細には、前記蒸着用マスク1100は、前記蒸着基板1300の両面のうち、有機物質が蒸着される蒸着面上に配置される。また、前記蒸着用マスク1100は、前記マスクフレーム1200によって固定される。
【0031】
これにより、前記蒸着用マスク1100に形成される貫通孔THを介して有機物質が通過され、これにより、前記蒸着基板1300の蒸着面には、有機物が蒸着され、これにより、前記蒸着基板1300の蒸着面上にRGBパターンが形成される。
【0032】
前記有機物蒸着容器1400は、るつぼであってもよい。前記るつぼの内部には、有機物質が配置される。前記真空チャンバ1500内で前記有機物蒸着容器1400であるるつぼには、熱源及び/または電流が供給される。これにより、前記有機物質は、前記蒸着用マスク1100を通過し、前記有機物質は、前記蒸着基板1300の蒸着面上に蒸着される。
【0033】
図2は、前記蒸着用マスク1100と前記蒸着基板1300との配置関係を説明するための図である。
【0034】
図2を参照すると、前記蒸着用マスク1100は、前記蒸着基板1300の蒸着面上に配置される、詳細には、前記蒸着用マスク1100は、前記蒸着基板1300の蒸着面と直接または間接的に接触して配置される。
【0035】
前記蒸着用マスク1100は、鉄及びニッケルを含む金属板100に複数の貫通孔THを形成して形成される。詳細には、鉄及びニッケルを含むインバー合金を含む金属板100にエッチング工程を通じて形成される複数の貫通孔THを形成して、前記蒸着用マスク1100を形成する。
【0036】
詳細には、前記金属板100は、互いに反対となる第1面101及び第2面102を含む。前記金属板100の第1面101には、第1面孔V1が形成され、前記金属板100の前記第2面102には、第2面孔V2が形成される。前記第1面孔V1のサイズは、第2面孔V2のサイズよりも小さい。即ち、前記第1面孔V1の直径は、前記第2面孔V2の直径よりも小さい。
【0037】
前記第2面孔V2は、前記有機物蒸着容器1400と対向して配置される。これにより、前記有機物蒸着容器1400の蒸着物質が流入する。前記第1面孔V1は、前記第2面孔V2から流入した蒸着物質が通過する領域である。これにより、前記第1面孔V1から出る有機物質は、前記蒸着基板1300に蒸着される。
【0038】
前記第1面孔V1及び前記第2面孔V2は、前記金属板100を部分的に貫通して形成される。例えば、前記第1面孔V1の深さは、前記第2面孔V2の深さよりも小さい。また、前記第1面孔V1及び前記第2面孔V2は、前記金属板100の厚さ方向に互いに重なる位置に配置され、互いに連通して形成される。
【0039】
これにより、前記金属板100には、前記第1面孔V1及び前記第2面孔V2が連通して形成される複数の貫通孔THが形成される。
【0040】
前記蒸着用マスク1100は、複数の貫通孔THが形成された金属板100を設定された単位面積サイズに切断して製造する。例えば、前記蒸着用マスク1100は、設定された単位面積サイズを有するスティック(stick)形状に切断されて形成され得る。
【0041】
前記蒸着用マスク1100は、前記蒸着用マスク1100の第1面孔V1が前記蒸着基板1300の蒸着面と接触するように配置される。
【0042】
前記金属板100は、前記貫通孔THを形成する前に、前記金属板100の厚さを減少させるための前処理工程が行われる。前記金属板100は、前処理工程により金属板の内部応力、即ち、引張応力及び圧縮応力の分布が変化し得る、このような内部応力分布により金属板が反ることがある。これにより、金属板の表面のウェーブネス、即ち、表面波形が変化することがある。
【0043】
このような金属板100の反り及び表面波形の増加は、前記金属板100によって製造される蒸着用マスク1100の直進度に影響を与える。
【0044】
即ち、前記金属板100に前記貫通孔THを形成するためにエッチング工程を行う際、反った金属板を平坦にするために金属板を引張る工程が行われる。このとき、前記金属板の反りが大きいほど金属板を引張るための引張力が増加する。これにより、前記金属板100に貫通孔を形成し、設定されたサイズに切断して蒸着用マスクを形成する際に、引張による残留応力が増加し、これにより蒸着用マスクの直進度、即ち、反りが増加し得る。
【0045】
したがって、前記蒸着用マスクを用いて蒸着基板に蒸着工程を行う場合、蒸着用マスクと蒸着基板との間にギャップgが形成され得る。これにより、前記蒸着用マスク蒸着効率が減少する。また、前記蒸着用マスクの蒸着領域を通じた有機物質の厚さが領域ごとに変わるので、蒸着基板に蒸着される有機物パターンの厚さが不均一になるという問題がある。
【0046】
以下では、上記のような問題を解決できる金属板及びこれによって製造される蒸着用マスクについて説明する。
【0047】
図3は、実施形態に係る金属板の前処理工程を説明するための図である。
【0048】
図3を参照すると、前記金属板100は、一面101及び前記一面101とは反対となる他面102を含む。
【0049】
前記金属板100は、鉄(Fe)及びニッケル(Ni)を含む。詳細には、前記金属板100は、鉄を約60重量%~約65重量%だけ含むことができ、ニッケルを約35重量%~約40重量%だけ含むことができる。詳細には、前記金属板100は、 鉄を約63.5重量%~約64.5重量%だけ含むことができ、ニッケルを約35.5重量%~約36.5重量%だけ含むことができる。また、前記金属板100は、炭素(C)、ケイ素(Si)、硫黄(S)、リン(P)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、銅(Cu)、銀( Ag)、バナジウム(V)、ナイオブ(Nb)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)のうち少なくとも一つ以上の元素を約1重量%以下だけさらに含むことができる。
【0050】
前記金属板100の一面101及び他面102は、エッチングされる。詳細には、前記金属板100をエッチングできるエッチング液を用いた化学研磨工程を通じて、前記金属板100の両面がエッチングされる。例えば、前記金属板100の一面101は、前記金属板100全体厚さTの20%~30%の範囲の厚さt1でエッチングされ、前記金属板100の他面102は、前記金属板100全体の厚さTの20%~30%の範囲の厚さt2でエッチングされる。
【0051】
これにより、前記金属板100は、前記前処理工程によって第1面110及び前記第1面110と反対となる第2面120を含む。前記金属板100は、前記前処理工程により厚さが減少する。詳細には、前記金属板100は、前処理工程後に5μm~30μmの厚さt3を有する。より詳細には、前記金属板100は、前処理工程後に15μm~25μmの厚さを有する。
【0052】
化学研磨工程により前記金属板100を前処理することにより、前処理工程で発生する金属板100の反りまたは表面波形が増加することを防止することができる。
【0053】
即ち、前記金属板100の原素材が含む圧縮応力、引張応力などの内部応力が他の力によって変化せず、エッチング工程により前記内部応力が除去される。これにより、前処理工程後に、金属板100の内部に残留応力が発生することを最小限に抑えることができる。
【0054】
これにより、前処理工程後に金属板100内部の残留応力を最小限に抑えることができ、金属板100表面のウェーブネスを最小化することができる。
【0055】
図4及び
図5は、実施例に係る金属板から作製されるサンプル金属板を説明するための図である。また、
図6は、実施例に係る金属板の残留応力の測定方法を説明するための図である。即ち、
図6は、前処理工程後の金属板の残留応力の測定方法を説明するための図である。
【0056】
図4および
図5を参照すると、前記金属板100は、400PPI以上の高解像度を具現するために蒸着用マスク100を製造するための金属板として約30μm以下の厚さを有することができる。詳細には、前記金属板100は、前述した前処理工程を通じて5μm~30μmの厚さを有することができる。より詳細には、前記金属板100は、前述した前処理工程を通じて15μm~25μmの厚さを有することができる。
【0057】
前記金属板100の残留応力を測定するために、前記金属板100から設定されたサイズのサンプル金属板150を分離する。前記サンプル金属板150は、前記金属板100の任意の地点で採取したサンプルである。このとき、前記サンプル金属板150は、前記金属板100の任意の地点で採取した少なくとも一つのサンプルであってもよく、前記少なくとも一つのサンプルを用いて残留応力を測定する。
【0058】
詳細には、前記金属板100の任意の地点で、横が縦よりも大きいストリップ状のサンプル金属板を抽出する。詳細には、
図4のように長幅方向が第1方向を有するように抽出された第1サンプル金属板及び
図5のように長幅方向が第2方向を有するように抽出された第2サンプル金属板を抽出する。
【0059】
前記サンプル金属板150は、設定されたサイズを有する。詳細には、前記第1サンプル金属板の第1方向の長さは、Xmmであり、第2方向の長さは、Ymmである。また、前記第2サンプル金属板の第1方向の長さは、約Ymmであり、第2方向の長さは、約Xmmである。
【0060】
このとき、前記Xは、200mm~220mmであり、前記Yは、140mm~160mmである。
【0061】
例えば、前記第1サンプル金属板は、210mm×150mm(横×縦)サイズのサンプルであってもよい。また、前記第2サンプル金属板は、150mm×210mm(横×縦)サイズのサンプルであってもよい。
【0062】
続いて、前記サンプル金属板150をエッチングする。詳細には、前記サンプル金属板150の一面を部分エッチングする。例えば、前記第1サンプル金属板及び前記第2サンプル金属板のそれぞれの一面を部分エッチングする。
【0063】
詳細には、前記サンプル金属板150は、前記サンプル金属板150の長幅方向の一終端から長幅方向長さの5%~10%までの領域は残し、長幅方向長さの5%~10%以降の領域は部分エッチングする。詳細には、前記サンプル金属板150の長幅方向長さの5%~10%以降の領域の厚さが前記サンプル金属板150の厚さの約30%~約70%となるように部分エッチングすることができる。より詳細には、前記サンプル金属板150の長幅方向サイズの5%~10%以降の領域の厚さが前記サンプル金属板150の厚さの50%となるように部分エッチングすることができる。
【0064】
続いて、前記サンプル金属板150を用いて金属板100の残留応力を測定する。
図6を参照すると、前記サンプル金属板150の残留応力を測定するために、前記サンプル金属板150を水平台200上に据え置く。詳細には、前述した部分エッチングが行われた第1サンプル金属板及び第2サンプル金属板を水平台上に配置する。
【0065】
前記サンプル金属板150は、一面及び他面を含む。詳細には、前記サンプル金属板150は、部分エッチングが行われた一面及び部分エッチングが行われていない他面を含む。前記サンプル金属板150は、前記サンプル金属板150の他面が水平台200の上面と対向するように配置する。
【0066】
続いて、第1残留応力及び第2残留応力を測定する。前記第1残留応力は、前記第1前記サンプル金属板の残留応力であり、前記第2残留応力は、前記第2サンプル金属板の残留応力である。
【0067】
詳細には、前記第1残留応力は、前記第1方向が長幅方向である第1サンプル金属板の残留応力であり、前記第2残留応力は、前記第2方向が長幅方向である第1サンプル金属板の残留応力である。
【0068】
前記水平台に据え置かれた前記サンプル金属板150は、金属板自体の内部応力及び前処理工程によって変化する内部応力によって一方向に反ることがある。詳細には、前記サンプル金属板150のエッチング領域のうち少なくとも一つの一終端は、前記水平台200の上面から離れる方向に反ることがある。より詳細には、ハーフエッチングされた前記サンプル金属板150の一面のうち少なくとも一つの一終端は、前記水平台200の上面から離隔して前記サンプル金属板150の中心方向に反ることがある。即ち、前記サンプル金属板150の一終端は、内部応力のために前記水平台から離れる方向に反ることがあり、内部応力の大きさに応じて、前記一終端は、ロール(Roll)の形態に反ることがある。
【0069】
即ち、前記金属板100の残留応力は、前記サンプル金属板150の部分エッチングされた領域が前記水平台の上面から離隔した高さを測定して算出する。
【0070】
詳細には、前記金属板100の残留応力は、前記サンプル金属板のエッチング領域が前記水平台の上面から反り上がった最大高さサイズとして定義される。詳細には、前記金属板100の残留応力は、下記の数式1として定義することができる。
【0071】
[数1]
【0072】
残留応力=H/L
【0073】
(H:前記サンプル金属板のエッチング領域が前記水平台の上面から反り上がる最大高さ、L:前記サンプル金属板のうちエッチング領域が形成される第1方向の長さ)
【0074】
前記数式1により、前記第1サンプル金属板の第1方向の長さは、Xmmであり、第2方向の長さは、Ymmであり、前記第2サンプル金属板の第1方向の長さは、約Ymmであり、第2方向の長さは、約Xmmの場合、前記金属板100は、第1方向にはH/Xの第1残留応力を有し、第2方向にはH/Yの第2残留応力を有する。
【0075】
例えば、前記第1サンプル金属板は、210mm×150mm(横×縦)サイズのサンプルであり、前記第2サンプル金属板は、150mm×210mm(横×縦)サイズのサンプルである場合、前記金属板100は、第1方向にはH/210の第1残留応力を有し、第2方向にはH/150の第2残留応力を有する。
【0076】
前記金属板100の残留応力は、複数のサンプル金属板150を用いて計算される。例えば、前記第1サンプル金属板の第1残留応力は、複数の第1サンプル金属板を上述した方法で測定した平均値から導出した値である。また、前記第2サンプル金属板の第2残留応力は、複数の第2サンプル金属板を上述した方法で測定した平均値から導出した値である。即ち、前記残留応力は、平均残留応力である。
【0077】
前記方法により、前記金属板100の第1方向の第1残留応力と前記第2方向の第2残留応力とが測定される。詳細には、前記第1サンプル金属板を介して前記第1残留応力が測定され、前記第2サンプル金属板を介して前記第2残留応力が測定される。
【0078】
前記第1残留応力の大きさと前記第2残留応力の大きさは、設定された大きさを有する。
【0079】
前記第1残留応力と前記第2残留応力は、10mm以下であってもよい。詳細には、前記第1残留応力と前記第2残留応力は、7mm以下であってもよい。より詳細には、前記第1残留応力と前記第2残留応力は、5mm以下であってもよい。より詳細には、第1残留応力と前記第2残留応力は、1mm~5mmであってもよい。
【0080】
前記第1残留応力及び前記第2残留応力の大きさが10mmを超える場合、前記金属板内部の残留応力により金属板表面波形が増加することがあり、前記金属板を用いて蒸着用マスクを製造する際、製造される蒸着用マスクの直進度特性が低下することがある。
【0081】
また、前記第1残留応力の大きさは、前記第2残留応力の大きさとは異なる。詳細には、前記第1残留応力の大きさは、前記第2残留応力の大きさよりも大きい。例えば、前記第1残留応力の大きさと前記第2残留応力の大きさとの比は、1:(0.2~0.7)であってもよい。詳細には、前記第1残留応力の大きさと前記第2残留応力の大きさとの比は、1:(0.3~0.6)であってもよい。より詳細には、前記第1残留応力の大きさと前記第2残留応力の大きさとの比は、1:(0.4~0.5)であってもよい。
【0082】
例えば、前記第1残留応力の大きさは、1mm~10mmであってもよい。詳細には、前記第1残留応力の大きさは、1.5mm~7.5mmであってもよい。より詳細には、前記第1残留応力の大きさは、2mm~5mmであってもよい。
【0083】
また、前記第2残留応力の大きさは、0.5mm~8mmであってもよい。詳細には、前記第2残留応力の大きさは、0.5mm~5mmであってもよい。より詳細には、前記第2残留応力の大きさは、1mm~3mmであってもよい。
【0084】
実施例に係る金属板は、前処理工程後に残留する金属板の残留応力を上記のような範囲に制御することにより、前記金属板によって製造される蒸着用マスクの反りを改善することができる。したがって、前記金属板によって製造された蒸着用マスクを介して蒸着基板に有機物質を蒸着する際、向上した蒸着効率を有する。
【0085】
一方、実施例に係る金属板は、設定されたサイズ範囲の表面波形(waviness)を有する。即ち、実施例に係る金属板は、設定されたサイズ範囲の残留応力を有する。または、実施例に係る金属板は、設定されたサイズ範囲の表面波形(waviness)を有する。または、実施例に係る金属板は、設定されたサイズ範囲の残留応力及び表面波形(waviness)を有する。
【0086】
図7は、実施例に係る金属板の表面波形を測定する方法を説明するための図である。
【0087】
図7を参照すると、前記金属板の表面波形は、金属板の平坦度を測定するものであり、非接触三次元測定器を用いて測定することができる。即ち、前記金属板に等間隔に離隔する複数の座標を設定し、平坦度の大きさを長さのサイズに換算して測定することができる。
【0088】
図7を参照すると、前記金属板100の表面波形を測定するために、前記金属板100で設定されたサイズのサンプル金属板150を分離する。前記サンプル金属板150は、前記金属板100の任意の地点で採取したサンプルである。このとき、前記サンプル金属板150は、前記金属板100の任意の地点で採取した少なくとも一つのサンプルであってもよく、前記少なくとも一つのサンプルを用いて表面波形を測定する。
【0089】
詳細には、前記金属板100の任意の地点で、横が縦よりも大きいストリップ状のサンプル金属板を抽出する。詳細には、
図7のように長幅方向が第1方向を有するように抽出された第3サンプル金属板を抽出する。
【0090】
前記サンプル金属板150は、設定されたサイズを有する。詳細には、前記第3サンプル金属板の第1方向の長さは、Ammであり、第2方向の長さは、Bmmである。このとき、Aは、490mm~510mmであり、Bは、160mm~180mmである。
【0091】
例えば、前記第3サンプル金属板は、500mm×170mm(横×縦)サイズのサンプルであってもよい。
【0092】
前記第3サンプル金属板には、複数の座標が設定される。即ち、前記第3サンプル金属板には、第1座標(C1)、第2座標(C2)、第3座標(C3)及び第4座標(C4)が設定される。
【0093】
また、前記第1座標(C1)、前記第2座標(C2)、前記第3座標(C3)及び前記第4座標(C4)を連結して形成される仮想の四角形の内部には、等間隔に離隔する複数の座標が設定される。
【0094】
前記金属板100の表面波形は、座標の曲線距離と直線距離との比を通じて測定され得る。詳細には、前記第1方向の第1表面波形及び前記第2方向の第2表面波形は、下記数式2によって定義される。
【0095】
[数2]
【0096】
表面波形(ppm)=106*(L-L0)/L0
【0097】
(Lは、座標の曲線距離を意味し、L0は、座標の直線距離を意味する。)
【0098】
前記金属板100の第1方向の表面波形は、前記座標を通過する第1方向の第1仮想線VL1の表面波形の平均値として算出され、前記第2方向の表面波形は、前記座標を通過する第2方向の第2仮想線VL2の表面波形の平均値として算出される。
【0099】
この方法により、前記金属板100の第1方向の第1表面波形と前記第2方向の第2表面方向とが測定される。
【0100】
前記第1表面波形の大きさと前記第2表面波形の大きさは、設定された大きさを有する。
【0101】
前記第1表面波形と前記第2表面波形は、25ppm以下であってもよい。詳細には。前記第1表面波形と前記第2表面波形は、20ppm以下であってもよい。より詳細には、前記第1表面波形と前記第2表面波形は、5ppm~25ppmであってもよい。
【0102】
前記第1表面波形及び前記第2表面波形の大きさが25ppmを超える場合、前記金属板表面の平坦性が低下する。これにより、前記金属板を用いて製造される蒸着用マスクを用いて、蒸着基板に有機物質を蒸着する際、蒸着用マスクと蒸着基板との間の浮き上がりが大きくなって、蒸着効率が低下することがある。
【0103】
また、前記第1表面波形の大きさは、前記第2表面波形の大きさとは異なる。詳細には、前記第1表面波形の大きさは、前記第2表面波形の大きさよりも大きい。例えば、前記第1表面波形の大きさと前記第2表面波形の大きさとの比は、1:(0.15~0.7)であってもよい。詳細には、前記第1表面波形の大きさと前記第2表面波形の大きさとの比は、1:(0.2~0.6)であってもよい。より詳細には、前記第1表面波形の大きさと前記第2表面波形の大きさとの比は、1:(0.25~0.5)であってもよい。
【0104】
例えば、前記第1表面波形の大きさは、8ppm~25ppmであってもよい。詳細には、前記第1表面波形の大きさは、10ppm~20ppmであってもよい。より詳細には、前記第1表面波形の大きさは、12ppm~18ppmであってもよい。
【0105】
また、前記第2表面波形の大きさは、3ppm~25ppmであってもよい。詳細には、前記第2表面波形の大きさは、5ppm~15ppmであってもよい。より詳細には、前記第2表面波形の大きさは、7ppm~10ppmであってもよい。
【0106】
実施例に係る金属板は、前処理工程後に残留する金属板の表面波形を上記のような範囲に制御することにより、前記金属板によって製造される蒸着用マスクと蒸着基板との浮き上がり現象を改善することができる。したがって、前記金属板によって製造 される蒸着用マスクを介して蒸着基板に有機物質を蒸着する際、向上した蒸着効率を有する。
【0107】
以下、
図8を参照して、前述した前処理された金属板が適用される蒸着用マスクについて説明する。
【0108】
図8は、実施例に係る蒸着用マスクの平面図を示す図である。
【0109】
図8を参照すると、実施例に係る蒸着用マスク1100は、蒸着領域DA及び前記非蒸着領域NDAを含む。
【0110】
前記蒸着領域DAは、蒸着パターンを形成するための領域である。即ち、前記蒸着領域DAを通じて、蒸着物質が前記蒸着用マスクを介して蒸着基板に蒸着される。
【0111】
前記蒸着用マスク1100は、複数の蒸着領域DAを含む。例えば、前記蒸着領域DAは、有効部及び非有効部を含む。詳細には、前記蒸着領域DAは、複数の貫通孔が形成されて蒸着パターンを形成できる複数の有効部及び貫通孔が形成されない非有効部UAを含む。前記有効部には、前述した複数の貫通孔THが形成される。
【0112】
前記複数の有効部は、第1有効部AA1、第2有効部AA2、及び第3有効部AA3を含むことができ、離隔領域IA1、IA2によって互いに離隔する。
【0113】
スマートフォンなどの小型表示装置の場合、蒸着用マスク1100に含まれた複数の蒸着領域のうちいずれか一つの有効部は、一つの表示装置を形成するためのものであり得る。または、テレビなどの大型表示装置の場合、一つの蒸着用マスク1100に含まれた複数の有効部が一つの表示装置を形成するための一部であり得る。これにより、一つの蒸着用マスク1100は、複数の有効部を含むことができるので、複数の表示装置を同時に形成することができる。したがって、実施例に係る蒸着用マスク1100は、工程効率を向上させることができる。
【0114】
前記非蒸着領域NDAは、前記蒸着領域DAの長手方向の両側部に配置される。即ち、前記非蒸着領域NDAは、前記蒸着領域DAの長手方向の外側に配置される。
【0115】
前記非蒸着領域NDAは、蒸着に関与しない領域である。前記非蒸着領域NDAは、蒸着用マスク1100をマスクフレーム1200に固定するためのフレーム固定領域FA1、FA2を含む。また、前記非蒸着領域NDAは、ハーフエッチング部HF1、HF2、オープン部OA1、OA2、および突出部PA1、PA2を含む。
【0116】
実施例に係る蒸着用マスク1100は、前述した前記金属板100によって製造される。これにより、前記蒸着用マスクを製造するための金属板が低い残留応力及び表面波形を有するので、これにより、製造される蒸着用マスクの直進度及びトータルピッチT/P(Total Pitch)特性も共に向上する。
【0117】
図9は、実施例に係る蒸着用マスク1100の直進度及びトータルピッチT/P(Total Pitch)を説明するための図である。
【0118】
図9を参照すると、反る前と反った後の蒸着用マスク1100が示されている。前記蒸着用マスク1100の直進度及びトータルピッチは、反る前および反った後の蒸着用マスク1100の位置差として計算される。
【0119】
詳細には、前記蒸着用マスク1100の直進度は、蒸着用マスクの反り程度として測定される。詳細には、前記蒸着用マスク1100の直進度は、反る前の蒸着用マスクの反り程度をゼロとしたとき、反った後の蒸着用マスクの反り程度として測定される。より詳細には、前記蒸着用マスク1100の直進度は、反る前の蒸着用マスクの反り程度を0としたとき、反った後の蒸着用マスクの最大反り程度で測定される。
【0120】
前記金属板100を用いて製造される前記蒸着用マスク1100は、50μm未満の直進度サイズを有することができる。即ち、前記蒸着用マスク1100の最大反りサイズは、50μm未満であってもよい。詳細には、前記金属板100を用いて製造される前記蒸着用マスク1100は、40μm以下の直進度の大きさを有することができる。より詳細には、前記金属板100を用いて製造される前記蒸着用マスク1100は、15μm~40μmの直進度を有することができる。より詳細には、前記金属板100を用いて製造される前記蒸着用マスク1100は、25μm~35μmの直進度を有することができる。
【0121】
また、前記蒸着用マスク1100のトータルピッチは、長軸方向に上部面と下部面との長さ差、または短軸方向に上部面と下部面との長さ差で測定する。
【0122】
前記金属板100を用いて製造される前記蒸着用マスク1100は、30μm未満のトータルピッチサイズを有することができる。詳細には、前記金属板100を用いて製造される前記蒸着用マスク1100は、20μm以下のトータルピッチサイズを有することができる。より詳細には、前記金属板100を用いて製造される前記蒸着用マスク1100は、15μm~25μmのトータルピッチを有することができる。
【0123】
実施例に係る蒸着用マスクは、残留応力および表面波形が減少した金属板から製造される。これにより、前記金属板から製造される蒸着用マスクの直進度特性およびトータルピッチ特性を向上させることができる。詳細には、蒸着用マスクの直進度サイズおよびトータルピッチサイズを減少させることができる。
【0124】
これにより、実施例に係る蒸着用マスクは、前記蒸着用マスクの反りが減少する。したがって、前記蒸着用マスクと前記蒸着基板とが接触する際に、前記蒸着用マスクの蒸着領域と前記蒸着基板とが浮き上がることを最小限に抑えることができる。
【0125】
これにより、実施例に係る蒸着用マスクは、前記蒸着用マスクと前記蒸着基板とのギャップを最小化して、これによる蒸着厚さの不均一を最小化して蒸着効率を向上させることができる。
【0126】
また、前記蒸着用マスクを形成した後、前記蒸着用マスクの表面波形を減少するための別の引張工程を省略することができる
【0127】
上述した実施例に説明された特徴、構造、効果などは、本発明の少なくとも一つの実施例に含まれ、必ずしも一つの実施例にのみ限定されるものではない。さらに、各実施例において例示された特徴、構造、効果などは、実施例が属する分野における通常の知識を有する者によって他の実施例に対しても組合せまたは変形されて実施可能である。したがって、このような組合せと変形に関係した内容は、本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【0128】
また、以上で実施例を中心に説明したが、これは単なる例示にすぎず、本発明を限定するものではなく、本発明が属する分野の通常の知識を有した者であれば、本実施例の本質的な特性を逸脱しない範囲で、以上で例示されていない多様な変形と応用が可能であることが分かるだろう。例えば、実施例に具体的に示された各構成要素は、変形して実施することができるものである。そして、このような変形と応用に関係した差異点は、添付した請求範囲で規定する本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄及びニッケルを含むインバーを含
む金属板を含み、
前記金属板の第1方向の第1残留応力及び
前記第1方向と交差する第2方向の第2残留応力は、5mm以下であり、
前記第1残留応力と前記第2残留応力との比は、1:0.4~0.5であり、
前記第1残留応力は、前記第1方向が横方向であるXmm×Ymm(横×縦)サイズの任意の第1サンプル金属板の残留応力であり、
前記第2残留応力は、前記第2方向が横方向であるYmm×Xmm(横×縦)サイズの任意の第2サンプル金属板の残留応力であり、
前記Xは、200mm~220mmであり、前記Yは、140mm~160mmであり、
前記残留応力は、前記第1サンプル金属板及び前記第2サンプル金属板それぞれの長幅方向の一終端から長幅方向長さの5%~10%以降の領域の厚さが前記金属板の厚さの30%~70%となるようにエッチングし、エッチングした前記サンプル金属板を水平台上に据え置いたとき、下記の数式1として定義される、OLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
[数式1]
残留応力=H/L
(H:サンプル金属板のエッチング領域が前記水平台の上面から反り上がる最大高さ(mm)、L:前記サンプル金属板のうちエッチング領域が形成される第1方向の長さ(mm))
【請求項2】
前記第1残留応力と前記第2残留応力との比は、1:0.3~0.6である、請求項1に記載のOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
【請求項3】
前記第1残留応力と前記第2残留応力との比は、1:0.4~0.5である、請求項1
または請求項2に記載のOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
【請求項4】
前記第1残留応力は、複数の第1サンプル金属板の平均値として測定され、
前記第2残留応力は、複数の第2サンプル金属板の平均値として測定される、請求項1
または請求項2に記載のOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
【請求項5】
前記第1方向の第1表面波形及び前記第2方向の第2表面波形は、20ppm以下であり、
前記第1表面波形と前記第2表面波形との比は、1:0.15~0.7であり、
前記第1表面波形は、前記第1方向が横方向である500mm×170mm(横×縦)サイズの任意の第3サンプル金属板の前記第1方向の表面波形であり、
前記第2表面波形は、前記第3サンプル金属板の前記第2方向の表面波形であり、
前記第3サンプル金属板は、第1座標(C1)、第2座標(C2)、第3座標(C3)、及び第4座標(C4)によって形成される仮想の四角形及び前記仮想の四角形内部で等間隔に離隔する複数の座標が設定され、
前記第3サンプル金属板には、前記座標を通過する前記第1方向の複数の第1仮想線及び前記第2方向の複数の第2仮想線が設定され、
前記第1表面波形と前記第2表面波形は、下記数式2によって定義される、請求項1
または請求項2に記載のOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
[数式2]
表面波形(ppm)=10
6
*(L-L
0
)/L
0
(Lは、座標の曲線距離を意味し、L
0は、座標の直線距離を意味する。)
【請求項6】
前記第1表面波形と前記第2表面波形との比は、1:0.2~0.6である、請求項5に記載のOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
【請求項7】
前記第1表面波形と前記第2表面波形との比は、1:0.25~0.5である、請求項5に記載のOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
【請求項8】
前記第1表面波形は、前記座標を通過する前記第1仮想線の表面波形の平均値として計算され、
前記第2表面波形は、前記座標を通過する前記第2仮想線の表面波形の平均値として計算される、請求項5に記載のOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
【請求項9】
前記金属板の厚さは、15μm~25μmである、請求項1
または請求項2に記載のOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
【請求項10】
前記第1残留応力は、2mm~5mmであり、
前記第2残留応力は、1mm~3mmである、請求項1
または請求項2に記載のOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
【請求項11】
前記第1表面波形は、10ppm~20ppmであり、
前記第2表面波形は、5ppm~15ppmである、請求項
5に記載のOLED画素蒸着のための蒸着用マスクの製造に使用される金属板。
【請求項12】
第1項または第2項のいずれか一項の金属板を含み、
前記金属板は、
前記金属板の第1面上の第1面孔及び
第2面上の
第2面孔を含む貫通孔を含み、
前記第1面孔の幅は、前記第2面孔の幅よりも小さい、蒸着用マスク。
【請求項13】
前記蒸着用マスクは、25μm~35μmの直進度を有し、
前記直進度は、反る前の蒸着用マスクの反り程度をゼロとしたとき、反った後の蒸着用マスクの最大反り程度として定義される、請求項12に記載の蒸着用マスク。
【請求項14】
前記蒸着用マスクは、15μm~25μmのトータルピッチを有し、
前記トータルピッチは、前記蒸着用マスクの長軸または短軸方向に上部面と下部面との長さ
の差として定義される、請求項12に記載の蒸着用マスク。
【国際調査報告】