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特表2024-544279車両用ドアハンドル用の慣性安全システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】車両用ドアハンドル用の慣性安全システム
(51)【国際特許分類】
   E05B 77/06 20140101AFI20241121BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20241121BHJP
   E05B 85/16 20140101ALN20241121BHJP
【FI】
E05B77/06 A
B60J5/04 H
E05B85/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535630
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2022085667
(87)【国際公開番号】W WO2023110902
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】21214906.6
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516180070
【氏名又は名称】ミネベア アクセスソリューションズ イタリア ソチエタ ペル アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】MINEBEA ACCESSSOLUTIONS ITALIA S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110003292
【氏名又は名称】弁理士法人三栄国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シモーヌ イラルド
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ32
2E250PP12
(57)【要約】
本発明は、車両用ドアハンドル組立体(10)用の慣性システム(14)であって、作動時にドアハンドル(12)の駆動を防止するように構成された係止装置と第1の慣性質量体を備えた慣性システムに関する。
第1の慣性質量体は、第1の加速度方向に作用する加速力を受けたとき、上記ドアハンドル(12)の駆動によるドアの開放を可能にする休止位置から、上記係止装置を作動させる係止位置まで、第1の移動方向に沿って移動するように構成されている。
上記慣性システム(14)は、第1の加速度方向とは反対の第2の加速度方向に作用する加速力を受けたとき、上記ドアハンドル(12)の駆動による上記ドアの開放を可能にする休止位置から、上記係止装置を作動させる係止位置まで、上記第1の移動方向と反対の第2の移動方向に沿って移動するように構成された第2の慣性質量体をさらに備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアハンドル組立体(10)用の慣性システム(14)であって、
- 作動時にドアハンドル(12)の駆動を防止するように構成された係止装置(16)と、
- 第1の加速度方向に作用する加速力を受けたとき、前記ドアハンドル(12)の駆動によるドアの開放を可能にする休止位置から、前記係止装置(16)を作動させる係止位置まで、第1の移動方向に沿って移動するように構成された第1の慣性質量体(26)と
を備えており、
前記第1の加速度方向とは反対の第2の加速度方向に作用する加速力を受けたとき、前記ドアハンドル(12)の駆動による前記ドアの開放を可能にする休止位置から、前記係止装置(16)を作動させる係止位置まで、前記第1の移動方向と反対の第2の移動方向に沿って移動するように構成された第2の慣性質量体(34)をさらに備えていることを特徴とする慣性システム(14)。
【請求項2】
請求項1に記載の慣性システム(14)において、前記係止装置(16)は係止端(16L)および少なくとも被駆動端(16D,17D)を有し、前記係止装置(16)は、前記ドアハンドル(12)の駆動を防止するために、前記係止端(16L)が、例えば阻止装置を介して前記ドアハンドル(12)に当接する係止位置と、前記係止端(16L)が、例えば前記阻止装置を介した前記ドアハンドル(12)への当接をしない休止位置との間で移動可能であり、前記休止位置と前記係止位置との間の移動およびその逆の移動は、第1および/または第2の慣性質量体(26,34)に連結された駆動端(24D,32D)から前記被駆動端(16D,17D)に加えられる力によって駆動されることを特徴とする慣性システム(14)。
【請求項3】
請求項2に記載の慣性システム(14)において、前記係止装置(16)が、前記休止位置と前記係止位置との間で移動する動作は、回動動作であることを特徴とする慣性システム(14)。
【請求項4】
請求項1に記載の慣性システム(14)において、第1の回転軸(20)および前記第1の回転軸(20)を中心に回動する第1の枢動部をさらに有し、前記第1の慣性質量体(26)は前記第1の枢動部(24)により支持されていることを特徴とする慣性システム(14)。
【請求項5】
請求項3に記載の慣性システム(14)において、前記慣性システム(14)は、第1の回転軸(20)および前記第1の回転軸(20)を中心に回動する第1の枢動部をさらに有し、前記第1の慣性質量体(26)は前記第1の枢動部(24)により支持されており、前記係止装置(16)は前記第1の回転軸(20)により支持されており、その回転動作は、前記第1の回転軸(20)を中心とする回動動作であることを特徴とする慣性システム(14)。
【請求項6】
請求項4に記載の慣性システム(14)において、前記第1の枢動部(24)は、前記第1の回転軸(20)に設けられた取付端(24E)を、前記第1の慣性質量体(26)を支持する第1の質量端(24M)に連結させる第1の本体(28)を有することを特徴とする慣性システム(14)。
【請求項7】
請求項5に記載の慣性システム(14)において、前記第1の枢動部(24)は、前記第1の回転軸(20)に設けられた取付端(24E)を、前記第1の慣性質量体(26)を支持する第1の質量端(24M)に連結させる第1の本体(28)を有しており、前記被駆動端(16D)は、前記第1の本体(28)により駆動されることを特徴とする慣性システム(14)。
【請求項8】
請求項4に記載の慣性システム(14)において、第2の回転軸(30)および前記第2の回転軸(30)を中心に回動する第2の枢動部(32)をさらに有し、前記第2の慣性質量体(34)は前記第2の枢動部(32)により支持されていることを特徴とする慣性システム(14)。
【請求項9】
請求項8に記載の慣性システム(14)において、前記第2の枢動部(32)は、第2の駆動端(32D)および第2の質量端(32M)を有し、前記駆動端(32D)および前記第2の質量端(32M)は、前記第2の回転軸(30)の両側から配置されていることを特徴とする慣性システム(14)。
【請求項10】
請求項2に記載の慣性システム(14)において、前記係止装置(16)は第1の被駆動端(16D)および第2の被駆動端(17D)を有し、前記休止位置と前記係止位置の間の前記移動およびその逆の移動は、前記第1の慣性質量体(26)に連結された第1の駆動端(24D)により前記第1の被駆動端(16D)に加えられる力、又は前記第2の慣性質量体(34)に連結された第2の駆動端(32D)により前記第2の被駆動端(17D)に加えられる力により駆動されることを特徴とする慣性システム(14)。
【請求項11】
請求項10に記載の慣性システム(14)において、前記慣性システム(14)は、第1の回転軸(20)および前記第1の回転軸(20)を中心に回動する第1の枢動部をさらに有し、前記第1の慣性質量体(26)は前記第1の枢動部(24)により支持されており、前記慣性システム(14)は、第2の回転軸(30)および前記第2の回転軸(30)を中心に回動する第2の枢動部(32)をさらに有し、前記第2の慣性質量体(34)は前記第2の枢動部(32)により支持されており、前記第2の枢動部(32)は、第2の駆動端(32D)および第2の質量端(32M)を有し、前記駆動端(32D)および前記第2の質量端(32M)は、前記第2の回転軸(30)の両側から配置されており、前記第2の被駆動端(17D)は、前記第2の駆動端(32D)により駆動されることを特徴とする慣性システム(14)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の慣性システム(14)において、第1の弾性手段(36)をさらに有し、前記第1の弾性手段(36)は、前記係止装置(16)が前記休止位置にあるとき、最小の引張応力状態にあり、前記係止装置(16)を前記係止位置から前記休止位置に戻すために、前記係止装置(16)に力またはトルクを加えるように構成されていることを特徴とする慣性システム(14)。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の慣性システム(14)において、第2の弾性手段(38)をさらに有し、前記第2の弾性手段(38)は、前記第2の慣性質量体(34)が前記休止位置にあるとき、最小の引張応力状態にあり、前記第2の慣性質量体(34)を前記係止位置から前記休止位置に戻すために、前記第2の慣性質量体(34)に力またはトルクを加えるように構成されていることを特徴とする慣性システム(14)。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の慣性システム(14)において、減衰手段(40)をさらに有し、前記減衰手段(40)は、前記係止装置(16)の前記係止位置から前記休止位置への復帰を所定時間、好ましくは少なくとも0.5秒間、例えば0.5秒から1秒の間遅延させることを特徴とする慣性システム(14)。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか1項に記載の慣性システム(14)において、前記第1および第2の慣性質量体(26),(34)の少なくとも一つは、緩衝材(27)を挿入することができるソケットを有しており、前記緩衝材(27)は好ましくはゴム製であり、前記ソケット内に注入されることを特徴とする慣性システム(14)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアハンドル用の安全装置に関し、特に、側面衝突の事態中にドアが不意に開くのを回避するための安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が側面衝突を受けると、ハンドル片の慣性によってドアラッチが駆動することがある。その場合の大きなリスクはドアが開くことであり、乗員が外の環境に晒されて怪我をしたり、車外に放り出されたりする可能性がある。
【0003】
このようなリスクを回避するため、現在のほとんどすべての車両ハンドルには、ハンドルの運動をブロックするための部品が組み込まれており、衝撃でドアが開くのを防いでいる。これらのブロック部品または係止部品は、所定の閾値(通常は数十G)超の加速度を受けることで作動するため、通常「慣性システム」または「慣性ロッカー」と呼ばれる。
【0004】
現在の慣性システムは通常、可逆と不可逆の2つのカテゴリーに分けられる。
【0005】
可逆慣性システムは、一般的に、所定の閾値超の加速度を受けてドアが動くと、係止を引き起こすように、係止部品に連結された質量体を含む。この質量体は、加速度が減少すると休止位置に戻るように構成されている。このようなシステムとして、国際公開第2004/042177号(特許文献1)に記載のものが知られている。
【0006】
可逆慣性システムの主な利点は、衝突後、ハンドルが(衝突時に破壊されていない限り)再び自由に作動し、ハンドルを引くことでドアを開けることができることである。このことは乗客の救助に役立つ。このようなシステムのもう一つの利点は、その高い反応性である。可逆的であるため、加速度の変化に対する感度を、通常の使用中にハンドルの使用を永久にブロックするリスクがない程度まで高く設定できる。
【0007】
他方、この感度は、リバウンド、すなわち、交互の加速力が衝突およびトリガー中に発生し、まれではあるが、質量体がその元の休止位置に短時間戻る可能性があるため、ドアハンドルの短時間の係止解除が発生する可能性があり、不利になる。さらに、可逆慣性システムの挙動を、実際の状況で予測するのは困難である。これを避けるために、慣性システムの運動学にダンピングシステムを導入して、休止位置への復帰を減衰させることができる。このようなシステムとして、国際公開第2008/068262号(特許文献2)に記載のものが知られている。
【0008】
一方、不可逆システムには、単にハンドルレバーの回転を永久的に阻止し、所定の閾値を超える加速度を受けたときにドアが開かないようにする構成部品が含まれる。このようなシステムとして、国際公開第2006/003197号(特許文献3)に記載のものが知られている。
【0009】
不可逆慣性システムの主な利点は、一度引き起こされると、確定的に係止されるため、リバウンドが起こらないことである。一方で、その感度は低く保たれなければならない。なぜなら、高加速度を伴う可能性はあるが、車両の通常使用の範囲内(ドアをバタンと閉めたり、振動を伴ったりする等)にとどまる状況では、作動してはならないからである。そのため、衝突時に作動の遅れを引き起こす可能性がある。もうひとつの欠点は、決定的な係止のために、衝突後にドアを開けることができない点にある。これは規制の観点からは容認されるかもしれないが、一部の相手先ブランド製造(OEM)メーカーにとってはそうではない。
【0010】
そのため、リバウンドの影響を受けにくい、すなわち、交互の加速力を受けたときにドアハンドルが短時間で係止解除される可能性が低い、可逆慣性システムを提供することが求められてきた。
【0011】
その目的で、互いに正反対の加速力の下で慣性によって駆動される二個の質量体を含む慣性システムが検討されてきた。このようなシステムとして、欧州特許出願公開第2818614号明細書(特許文献4)に記載のものが知られている。しかし、この文献に示されている慣性システムの空間構成と運動学は、特にその構成要素の形状とその運動スキームのために、慣性システムを大型化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2004/042177号
【特許文献2】国際公開第2008/068262号
【特許文献3】国際公開第2006/003197号
【特許文献4】欧州特許出願公開第2818614号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、高い反応性を有し、リバウンドを防止し、その挙動が予測可能であり、衝突後でもドアを開くことができる、コンパクトな慣性システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明の車両用ドアハンドル組立体用の慣性システムは、
- 作動時にドアハンドル組立体の駆動を防止するように構成された係止装置と、
- 第1の加速度方向に作用する加速力を受けたとき、ドアハンドルの駆動によるドアの開放を可能にする休止位置から、上記係止装置を作動させる係止位置まで、第1の移動方向に沿って移動するように構成された第1の慣性質量体と
を備えており、
上記第1の加速度方向とは反対の第2の加速度方向に作用する加速力を受けたとき、上記ドアハンドルの駆動による上記ドアの開放を可能にする休止位置から、上記係止装置を作動させる係止位置まで、上記第1の移動方向と反対の第2の移動方向に沿って移動するように構成された第2の慣性質量体をさらに備えていることを特徴とする。
【0015】
慣性質量体が1個だけでなく2個存在し、それらが休止位置からブロック位置まで2つの反対方向に従って移動するという事実のおかげで、慣性システムは、リバウンドの場合に予測可能な挙動を有し、かつ高感度の可逆慣性システムのように動作することができる。衝突した場合、衝撃による初期加速度が、一方または両方の質量体の移動を引き起こし、ドアハンドル組立体の駆動を妨げる。そして、リバウンドした場合、反対方向に沿う後続の加速度が生じたとしても、第2の質量体の移動が引き起こされるので、ドアの係止解除は起こらず、ドアハンドル組立体の駆動の阻止は維持される。
【0016】
さらに、質量体が各休止位置から2つの異なる方向に沿って各係止位置に移動するという事実により、質量体を、例えば、回動軸の同じ側に配置することができるので、質量体の一層コンパクトな構成が可能となる。
【0017】
慣性システムの小型化を更に確実にするために、上記係止装置は、係止端および少なくとも被駆動端を有し、上記係止装置は、上記ドアハンドルの駆動を防止するために、上記係止端が、例えば阻止装置を介して上記ドアハンドルに当接する係止位置と、上記係止端が、例えば上記阻止装置を介した上記ドアハンドルへの当接をしない休止位置との間で移動可能であり、上記休止位置と上記係止位置との間の移動およびその逆の移動は、第1および/または第2の慣性質量体に連結された駆動端から上記被駆動端に加えられる力によって駆動される。
【0018】
分かり易くするため、上記係止装置が、上記休止位置と上記係止位置との間で移動する動作は、例えば回動動作である。
【0019】
分かり易くするため、上記慣性システムは、例えば、第1の回転軸および前記第1の回転軸を中心に回動する第1の枢動部を有し、上記第1の慣性質量体は上記第1の枢動部により支持されている。
【0020】
慣性システムの小型化を更に確実にするために、上記係止装置は、例えば、上記第1の回転軸により支持されており、その回転移動は、上記第1の回転軸を中心とする回動動作である。
【0021】
好ましい実施形態によれば、上記第1の枢動部は、例えば、上記第1の回転軸に設けられた取付端を、上記第1の慣性質量体を支持する第1の質量端に連結させる第1の本体を有する。
【0022】
慣性システムの小型化を更に確実にするために、上記被駆動端は、例えば、上記第1の本体に接触して駆動される。
【0023】
好ましい実施形態によれば、上記慣性システムは、好ましくは、第2の回転軸および前記第2の回転軸を中心に回動する第2の枢動部を有し、上記第2の慣性質量体は上記第2の枢動部により支持されている。
【0024】
慣性システムの小型化を更に確実にするために、上記第2の枢動部は、例えば、駆動端および第2の質量端を有し、前記駆動端および前記第2の質量端は、上記第2の回転軸の両側から配置されている。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記係止装置は第1の被駆動端および第2の被駆動端を有し、上記休止位置と上記係止位置の間の上記移動およびその逆の移動は、上記第1の慣性質量体に連結された第1の駆動端により上記第1の被駆動端に加えられる力、又は上記第2の慣性質量体に連結された第2の駆動端により上記第2の被駆動端に加えられる力により駆動される。
【0026】
好ましくは、上記被駆動端は、例えば、上記駆動端に接触して駆動される。
【0027】
上記係止装置がその休止位置に復帰するのを助けることによって上記慣性システムの可逆性を容易にするために、上記慣性システムは、第1の弾性手段をさらに有し、上記第1の弾性手段は、上記係止装置が上記休止位置にあるとき、最小の引張応力状態にあり、上記係止装置を上記係止位置から上記休止位置に戻すために、上記係止装置に力またはトルクを加えるように構成されている。
【0028】
上記第1の慣性質量体がその休止位置に復帰するのを助けることによって上記慣性システムの可逆性を容易にするために、上記慣性システムは、第2の弾性手段をさらに有し、上記第2の弾性手段は、上記第1の慣性質量体が上記休止位置にあるとき、最小の引張応力状態にあり、上記第1の慣性質量体を上記係止位置から上記休止位置に戻すために、上記第1の慣性質量体に力またはトルクを加えるように構成されている。
【0029】
上記第2の弾性手段は、実施形態を簡略化するために省略することができ、上記係止装置の作用によって上記第1の慣性質量体を休止位置に戻すことができる。
【0030】
上記第1の慣性質量体がその休止位置に復帰するのを助けることによって上記慣性システムの可逆性を容易にするために、上記慣性システムは、例えば、第3の弾性手段をさらに有し、上記第3の弾性手段は、上記第1の慣性質量体が上記休止位置にあるとき、最小の引張応力状態にあり、上記第1の慣性質量体を上記係止位置から上記休止位置に戻すために、上記第1の慣性質量体に力またはトルクを加えるように構成されている。
【0031】
上記係止装置が急激に休止位置に戻るのを防ぐため、すなわち衝突の間中上記ドアが係止されたままであることを保証するため、上記慣性システムは、例えば、減衰手段も備えている。上記減衰手段は、上記係止装置の係止位置から休止位置への復帰を所定時間、好ましくは少なくとも0.5秒間、例えば0.5秒から1秒の間遅延させる。この所定時間は、通常1秒未満の僅かな衝突継続時間に対応するように選択される。
【0032】
休止位置から係止位置への移動時およびその逆の移動時に、質量体が受ける衝撃力を低減し、発生する騒音を低減するために、上記第1および第2の慣性質量体の少なくとも一つは、例えば、緩衝材を挿入することができるソケットを有しており、前記緩衝材は好ましくはゴム製であり、上記ソケット内に注入される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明は、添付の図面を参照しながら以下の説明を読むことにより、より良く理解されるであろう。
【0034】
図1図1は、本発明の特定の実施形態による慣性システムを備えるドアハンドル組立体の概略斜視図である。
図2図2は、第1の慣性質量体および第2の慣性質量体がそれぞれの休止位置にある、図1の慣性システムの側面図である。
図3図3は、係止体を除いた以外図2と同様の側面図である。
図4図4は、第1の慣性質量体および第2の慣性質量体がそれぞれの休止位置にあり、かつハウジング、第1の回転軸および減衰手段が除かれた、図1の慣性システムの平面図である。
図5図5は、第1の慣性質量体がその係止位置にあり、第2の慣性質量体がその休止位置にある以外図2と同様の側面図である。
図6図6は、第1の慣性質量体がその係止位置にあり、第2の慣性質量体がその休止位置にある以外図4と同様の平面図である。
図7図7は、第1の慣性質量体がその休止位置にあり、第2の慣性質量体がその係止位置にある以外図2と同様の側面図である。
図8図8は、第1の慣性質量体がその休止位置にあり、第2の慣性質量体がその係止位置にある以外図4と同様の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の特定の実施形態による車両ドアハンドル組立体10を図1に示す。
【0036】
車両ドアハンドル組立体10は、ここでは従来技術から知られているドアハンドル12を備えており、通常、慣性システム14が取り付けられるブラケット(理解を高めるために図示せず)を備えている。
【0037】
慣性システム14は、作動時にドアハンドル12の駆動を防止するように構成された係止装置16を備えている。慣性システム14はハウジング15により保護されている。このハウジングの形状はここではほぼ平行六面体であるが、この形状は変更してよい。
【0038】
係止装置は、第1の回転軸20上に回動可能に取り付けられた係止体18を備えている。図の向きおよび図に示すフレームの向きを考慮すると、第1の回転軸20はZ軸に沿って延びている。
【0039】
図示の例、特に図2においてより具体的に示す例では、係止体18は、実質的に円筒形の形状であり、第1の回転軸20を収容するように中空にされている(すなわち、係止体18は環状である)。したがって、係止体18は、第1の回転軸20に沿って延びている。このようにして、係止装置16は、第1の回転軸20を中心として回動することができる。
【0040】
さらに、係止装置16は、係止端16L、第1の被駆動端16D、および第2の被駆動端17Dを備えている。
【0041】
ここで、係止端16Lおよび両被駆動端16D,17Dは、第1の回転軸20に対して実質的に垂直に係止体18から突出している。
【0042】
より具体的には、被駆動端16D,17Dは第1の回転軸20に対して同じ側で係止体18から突出し、係止端16Lは第1の回転軸20に対して反対側に配置される。ここで、係止装置16の製造を簡単にするため、係止体18、係止端16Lおよび被駆動端16Dは一体に作られている。
【0043】
慣性システム14により占められる体積を最適化するため、係止端16Lは、第1の回転軸20に沿って、被駆動端16D,17Dの間に配置される。
【0044】
係止端16Lは、第1の回転軸20と平行な軸に沿って延在している。この例では、係止端16Lは、台形断面を有しているが、他の形状の断面を有していてもよい。いずれにせよ、好ましくは、係止端16Lは、以下説明するように、ドアハンドル12の開放を阻止する阻止装置22に当接する平面を有する。
【0045】
両被駆動端16D,17Dはまた、第1の回転軸20と平行で且つ係止体18の全長より長くなるように延びている軸に沿って、延在している。この例では、両被駆動端16D,17Dは、台形断面を有しているが、他の形状の断面を有していてもよい。いずれにせよ、好ましくは、両被駆動端16D,17Dも、後に明らかになる目的のために、平面を有している。この例では、第1の被駆動端16Dは、第1の回転軸20に沿って第2の被駆動端17Dより若干長い。
【0046】
係止装置16は、係止端16Lが、ドアハンドル12、この例ではドアハンドル12の駆動を阻止する阻止装置22に当接する係止位置と、係止端16Lが、阻止装置22を介したドアハンドル12への当接をしない休止位置との間で移動可能である。
【0047】
係止装置16が、休止位置と係止位置との間で移動する動作は、回動動作である。ここで、前記回動動作は第1の回転軸20を中心とする。
【0048】
慣性システム14はまた、第1の回転軸20を中心に回動する第1の枢動部24を備えている。第1の枢動部24は、第1の被駆動端16Dに対向して配置されている。
【0049】
図示の実施形態、特に図2,3においてより具体的に示す例では、第1の枢動部24は、第1の回転軸20に設けられた取付端24Eを、第1の慣性質量体26を支持する第1の質量端24Mに連結する第1の本体28を備えている。換言すると、第1の枢動部24はレバー状である。
【0050】
本実施例では、取付端24Eは実質的に円筒形であり、係止体18と同様に、第1の回転軸20を収容するために中空となっている(すなわち、取付端24Eは環状である)。よって、取付端24Eは、第1の回転軸20に沿って延在している。しかし、係止体18と比較して、取付端24Eは、第1の回転軸20の長さのより短い部分に沿って延びている。
【0051】
第1の慣性質量体26には、緩衝材27を挿入可能なソケットを設けることができる。例えば、緩衝材27はゴムまたは同等の材料で作られ、ソケット内に注入される。緩衝材27は、慣性質量体26が移動して、その位置停止部に当たるときの、慣性質量体の騒音の影響を低減する。この移動については後述する。
【0052】
第1の枢動部24はまた第1の駆動端24Dを備えており、図3から明らかなように、第1の駆動端24Dは、第1の慣性質量体26から被駆動端16Dに向けて突出し、被駆動端16Dに対向している。図2,3に示される構成を考慮すると、第1の駆動端24Dは、第1の回転軸20に対して垂直に延在している。
【0053】
係止装置の被駆動端16Dは、ここではその平面を介して第1の駆動端24Dと接触することができ、以下説明するように、第1の本体28によっても駆動される。
【0054】
実際、第1の慣性質量体26は、第1の加速度方向に作用する慣性力(図6のF1参照)を受けると、図2,3および4に示す、ドアハンドル12の駆動によってドアを開くことができる休止位置から、第1の移動方向に沿って移動し、図5および図6に示す、係止装置16を作動させる係止位置まで移動するように構成されている。
【0055】
図の向きおよび図に示すフレームの向きを考慮すると、第1の加速度方向は、Y軸と反対方向である。
【0056】
ここで、最初の第1の移動方向はまたY軸の方向であり、第1の慣性質量体26の全体的な移動は、第1の回転軸20を中心とする回転移動である。この回転移動は、図示の例では反時計方向である。
【0057】
そのため、係止装置16の第1の被駆動端16Dと第1の駆動端24Dとの間の接触による、係止装置16の休止位置と係止位置との間の移動およびその逆の移動は、第1の慣性質量体26によって第1の被駆動端16Dに加えられる力によって駆動される。
【0058】
慣性システム14はまた、第2の回転軸30および前記第2の回転軸30を中心に回動する第2の枢動部32を備えている。第2の枢動部32は、第2の被駆動端17Dに対向して配置されている。
【0059】
ここで、第2の回転軸30は第1の回転軸20と平行である。
【0060】
第2の枢動部32は、駆動端32Dに連結された第2の本体33および第2の慣性質量体34を備えている。第2の本体33は、第2の回転軸30を収容するために中空となっている。第2の駆動端32Dおよび第2の質量端32Mは、第2の回転軸30の両側から配置されている。
【0061】
係止装置16の第2の被駆動端17Dは、第2の枢動部32の駆動端32Dに当接し、駆動されることができる。
【0062】
第2の慣性質量体34にも、第1の慣性質量体26と同様に緩衝材を設けることができる。
【0063】
第1の加速度方向とは反対の第2の加速度方向に作用する加速力(図8でF2と記す)を受けると、第2の慣性質量体34は、図3および図4に示す、ドアハンドル12の駆動によるドアの開放を可能にする休止位置から、第2の移動方向に沿って移動するように構成されており、係止装置18を作動させる係止位置まで移動する。
【0064】
図の向きおよび図に示すフレームの向きを考慮すると、第2の加速度方向は、Y軸の方向である。
【0065】
第2の移動方向,すなわち、第2の慣性質量体34がその休止位置からその係止位置に移動する方向は、第1の慣性質量体26の第1の移動方向と反対である。
【0066】
ここで、最初の第2の移動方向はまたY軸と反対方向であり、第2の慣性質量体34の全体的な移動は、第2の回転軸30を中心とする回転移動である。この回転移動は、図示の例では時計方向である。
【0067】
そのため、係止装置16の被駆動端17D(または図示しない変形例では16D)と第2の枢動部32の駆動端32Dとの間の接触により、係止装置16の休止位置と係止位置との間の移動およびその逆の移動は、第2の慣性質量体34によって被駆動端17D(または図示しない変形例では16D)に加えられる力によって駆動される。
【0068】
第1の慣性質量体26がその休止位置に復帰するのを助けることによって慣性システム14の可逆性を容易にするために、慣性システム14はまた、係止装置16が休止位置にあるときに最小の引張応力状態にある第1の弾性手段36であって、係止装置16に力またはトルクを加えて係止装置16を係止位置から休止位置に戻すように構成された第1の弾性手段36を備えている。
【0069】
本実施形態では、図2に示すように、第1の弾性手段36はばねを含み、図3,4および8から明らかなように、また当業者に公知のように、その第1の端部を上にして第1の回転軸20を中心に巻回されている。より具体的には、ばね36は、その他端がハウジング15に接続されており、係止装置16とハウジング15との間で作用する。
【0070】
同様に、第2の慣性質量体34がその休止位置に戻るのを助けることによって慣性システムの可逆性を容易にするために、慣性システム14はまた、第2の慣性質量体34が休止位置にあるときに最小の引張応力状態にある第2の弾性手段38であって、第2の慣性質量体34に力またはトルクを加えて第2の慣性質量体34を係止位置から休止位置に戻すように構成された第2の弾性手段38を備えている。
【0071】
本実施形態では、図2~8に示すように、当業者に公知のように、第2の弾性手段38は、第2の回転軸30を中心に巻回されたばねを含む。より具体的には、ばね38は、図2から明らかなように、その他端がハウジング15に接続されており、第2の慣性質量体34とハウジング15との間で作用する。
【0072】
図示の構成では、第1の慣性質量体26は、弾性手段の数を最小限にするため、係止装置16により直接休止位置に押し戻される。
【0073】
しかし、図示していない実施形態において、係止装置16が休止位置に戻るのを助けることにより慣性システムの可逆性をさらに容易にするために、慣性システムは、例えば、第1の慣性質量体26が休止位置にあるときに最小の引張応力状態にある第3の弾性手段であって、係止装置16に力またはトルクを加えて、第1の慣性質量体26を係止位置から休止位置に戻すように構成された第3の弾性手段を備えることもできる。
【0074】
係止装置16が急激に休止位置に戻るのを防ぐため、すなわち衝突の間中ドアが係止されたままであることを保証するため、慣性システム14は減衰手段40も備えている。
【0075】
減衰手段40は、好ましくは一方向ダンパー、例えば一方向オイルダンパーである。減衰手段40は、係止装置16が休止位置から係止位置に向かって回転するとき、係止装置の動きを妨げないように自由に回転する。しかし、係止装置16が係止位置から休止位置に向かって回転するとき、減衰手段40はこの移動を遅らせ、係止装置16が復帰すると、開放される。減衰効果は、磁石を使ったものや摩擦を使ったもの等、様々なシステムにより得られる。
【0076】
好ましくは、減衰手段40は、係止装置16の係止位置から休止位置への復帰を所定時間、好ましくは少なくとも0.5秒間、例えば0.5秒から1秒の間遅延させる。この所定時間は、通常1秒未満の僅かな衝突継続時間に対応するように選択される。この遅延は、ダンパーの減衰トルクと、第1の弾性手段、ここではスプリング36のトルクとの間の関係によって与えられる。
【0077】
慣性システム14の動作について、以下簡単に説明する。
【0078】
高い加速度(衝突条件)の下で、質量体26,34は、慣性により各々の軸20,30を中心に回動し、係止装置16の被駆動端16Dまたは17Dのいずれかと接触することによって、ドアハンドル12が駆動されないようにして車両ドアが開かないようにする遮断装置22に達するまで、係止装置16を回動させる。
【0079】
より正確には、図5,6に示すように、第一の加速度方向に沿う力F1の下で、第1の慣性質量体26は、第1の移動方向に沿って第1の回転軸20を中心として回動し、係止装置16が阻止装置22と接触するように、係止装置16を駆動する。次に、第1の弾性手段36は、係止装置16を、図2図4に示す休止位置に復帰させる。しかし、減衰手段40は、ドアの係止が十分に長く持続することを保証するため、係止装置16が所定時間、例えば僅かな衝突継続時間に相当する所定時間の後にのみ休止位置に戻るように、設けられている。係止装置16はまた、休止位置に復帰することにより、第1の慣性質量体26を駆動し、休止位置に戻す。
【0080】
図7,8に示すように、第1の加速度方向と反対の第2の加速度方向に沿う力F2の下で、第2の慣性質量体34は、第1の移動方向と反対の第2の移動方向に沿って、第2の回転軸30を中心として回動し、係止装置16が阻止装置22に当接するように、係止装置16を駆動する。次いで、第1の弾性手段36が係止装置16を図2~4に示す休止位置に復帰させるとともに、第2の弾性手段38が第2の慣性質量体34を図2~4に示す休止位置に復帰させる。しかし、減衰手段40は、ドアの係止が十分に長く持続することを保証するため、係止装置16が所定時間、例えば僅かな衝突継続時間に相当する所定時間の後にのみ休止位置に戻るように、設けられている。第2の弾性手段38はまた、第2の慣性質量体34を、図2~4に示す休止位置に復帰させる。
【0081】
このように、1個ではなく2個の慣性質量体26,34が存在し、それらが2つの反対方向に従って休止位置から阻止位置に移動するという事実のおかげで、慣性システム14は、リバウンドの場合に予測可能な挙動を有しながら、高感度を有する可逆慣性システムのように作用し得ることが明確に理解される。衝突した場合、衝撃による初期加速度は、質量体26,34のいずれか一方または両方の移動を誘発し、従って、ドアハンドル組立体の駆動を阻止する。
【0082】
そして、リバウンドの場合、続いて起こる加速が反対方向に沿って生じたとしても、それが第2の質量体34の移動を誘発するので、ドアの係止解除を引き起こさず、従って、ドアハンドル組立体10の駆動の阻止を維持する。
【0083】
さらに、質量体26,34が、各休止位置から2つの異なる方向に沿って各係止位置に移動するという事実により、質量体26,34を第1の回転軸20の特に同じ側に配置し、小型のハウジング15内に収容することができるので、質量体26,34の一層コンパクトな構成が可能となる。
【符号の説明】
【0084】
10・・・車両用ドアハンドル組立体
12・・・ドアハンドル
14・・・慣性システム
15・・・慣性システ用ハウジング
16・・・係止装置
16D・・・係止装置の第1の被駆動端
16L・・・係止装置の係止端
17D・・・係止装置の第2の被駆動端
18・・・係止体
20・・・第1の回転軸
22・・・阻止装置
24・・・第1の枢動部
24D・・・第1の駆動端
24E・・・第1の枢動部の取付端
24M・・・第1の枢動部の質量端
26・・・第1の慣性質量体
27・・・質量体用緩衝材
28・・・第1の本体
30・・・第2の回転軸
32・・・第2の枢動部
32D・・・第2の駆動端
33・・・第2の本体
34・・・第2の慣性質量体
36・・・第1の弾性手段
38・・・第2の弾性手段
40・・・減衰手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】