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特表2024-544288最適化された剪断ストリップを備えるエアレスタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】最適化された剪断ストリップを備えるエアレスタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 7/00 20060101AFI20241121BHJP
   B60B 9/10 20060101ALI20241121BHJP
   B60B 9/04 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B60C7/00 H
B60B9/10
B60B9/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535793
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2022085108
(87)【国際公開番号】W WO2023110657
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】2113425
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルコ フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】シュボー クリストフ
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA30
3D131BA02
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB19
3D131BC05
3D131CC03
(57)【要約】
本発明は、エアレスタイヤに関し、より詳細には、その剪断ストリップの質量及び剛性を最適化しようとするものであり、エアレスタイヤは、半径方向内側膜(41)と、複数の剪断要素(5)で構成されている剪断構造体と、半径方向内側膜(41)から平均半径距離Hに位置決めされた半径方向外側膜(42)とを備える。本発明によれば、複数の剪断要素の何らかの剪断要素(5)は、何らかの周方向平面(XZ)において、半径方向内側膜(41)から距離d1に位置決めされた半径方向内端(I1)と、半径方向外側膜(42)から距離d2に位置決めされた半径方向外端(I2)とを持つ非放射状母線(G)を有する主要部分(50)を備え、剪断要素(5)の主要部分(50)の母線(G)は、少なくとも1.25*(H-(d1+d2))に等しい曲線長Lを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径方向外方に、リム又はハブ(3)と協働するように意図された支持構造体(2)と、剪断ストリップ(4)と、トレッド(6)とを備えた車両用エアレスタイヤ(1)であって、
前記剪断ストリップ(4)は、半径方向外方に、半径方向内側膜(41)と、剪断構造体(40)と、前記半径方向内側膜(41)から平均半径方向距離Hに位置決めされた半径方向外側膜(42)とを備え、
前記剪断構造体(40)は、周方向に分散配置された複数の剪断要素(5)から成り、
前記複数の剪断要素の何らかの剪断要素(5)は、前記タイヤの回転軸に垂直な何らかの周方向平面(XZ)において、前記半径方向内側膜(41)から距離d1に位置決めされた半径方向内端(I1)と、前記半径方向外側膜(42)から距離d2に位置決めされた半径方向外端(I2)とを持つ非放射状母線(G)を有する主要部分(50)を含むこと、並びに前記剪断要素(5)の前記主要部分(50)の前記母線(G)が、少なくとも1.25*(H-(d1+d2))に等しい曲線長Lを有すること、を特徴とする、エアレスタイヤ(1)。
【請求項2】
前記母線(G)の前記半径方向内端(I1)から前記半径方向内側膜(41)までの前記距離d1は、前記半径方向内側膜(41)と前記半径方向外側膜(42)との前記平均半径方向距離Hの最大で0.5倍に等しい、請求項1に記載のエアレスタイヤ(1)。
【請求項3】
前記母線(G)の前記半径方向内端(I1)から前記半径方向内側膜(41)までの前記距離d1は0に等しい、請求項1又は2のいずれかに記載のエアレスタイヤ(1)。
【請求項4】
前記母線(G)の前記半径方向外端(I2)から前記半径方向外側膜(42)までの前記距離d2は、前記半径方向内側膜(41)と前記半径方向外側膜(42)との前記平均半径方向距離Hの最大で0.5倍に等しい、請求項1から3のいずれかに記載のエアレスタイヤ(1)。
【請求項5】
前記母線(G)の前記半径方向外端(I2)から前記半径方向外側膜(42)までの前記距離d2は0に等しい、請求項1から4のいずれかに記載のエアレスタイヤ(1)。
【請求項6】
前記半径方向内端(I1)における前記母線(G)に対する接線(T1)は、前記エアレスタイヤ(1)の半径方向(ZZ’)と少なくとも45°に等しい角度A1を成す、請求項1から5のいずれかに記載のエアレスタイヤ(1)。
【請求項7】
前記半径方向外端(I2)における前記母線(G)に対する接線(T2)は、前記エアレスタイヤ(1)の半径方向(ZZ’)と少なくとも45°に等しい角度A2を成す、請求項1から6のいずれかに記載のエアレスタイヤ(1)。
【請求項8】
何らかの剪断要素(5)の前記主要部分(50)の前記母線(G)は、湾曲方向の1回の反転を持つ形状を有する、請求項1から7のいずれかに記載のエアレスタイヤ(1)。
【請求項9】
何らかの剪断要素(5)の前記主要部分(50)は、一定でない厚さE0を有する、請求項1から8のいずれかに記載のエアレスタイヤ(1)。
【請求項10】
前記剪断要素(5)は、一定のピッチで周方向に分散配置される、請求項1から9のいずれかに記載のエアレスタイヤ(1)。
【請求項11】
前記複数の剪断要素の何らかの剪断要素(5)は、4%伸長時の伸長弾性率が少なくとも20MPaに等しい、好ましくは少なくとも30MPaに等しい材料から成る、請求項1から10のいずれかに記載のエアレスタイヤ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のエアレスタイヤを目的とし、より詳細にはその剪断ストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
膨張ガス、一般に空気の内圧を受ける従来のタイヤは、荷重、地面と車両の間での力の伝達、及び衝撃吸収の点で能力を有するため、車両に関して好ましい選択となる。しかしながら、従来のタイヤには、衝撃を受ける又は穿孔物体の上を転動する場合に、多かれ少なかれ急に圧力が低下して、車両が動かなくなる結果を招きやすいという固有のリスクがある。
【0003】
このような圧力低下のリスクを排除するために、例えばソリッドタイヤなど、従来のタイヤに代わる解決策が開発されてきた。ソリッドタイヤは、その構造体の圧縮によって荷重を支えるが、従来のタイヤについて上述したような性能上の利点はない。特に、ソリッドタイヤは一般的に重く剛性が高いため、衝撃を吸収する能力が低い。さらに、多くの場合に許容荷重が低く、使用中の発熱が大きいため寿命が短い。結果的に、ソリッドタイヤの使用は、包括的でない例として、運搬機械などの特定車両に限定される。
【0004】
エアレスタイヤ、又はより一般的に膨張ガスを用いないタイヤは、構造部品のおかげで荷重を支え、従来のタイヤと同等の性能を有する、もう一つの公知の代替解決策である。ハブ又はリムに装着されたエアレスタイヤは、「非空気圧弾性ホイール」と呼ぶこともある。
【0005】
このようなエアレスタイヤは、例えば、国際公開第2003/018332号、仏国特許第2964597号、国際公開第2012/102932号、国際公開第2018/101937号、国際公開第2018/102303号、国際公開第2018/102560号、国際公開第2018/125186号の文献に記載されている。
【0006】
以下、周方向又は長手方向とはタイヤの回転方向であり、軸方向又は横方向とはタイヤの回転軸に平行な方向であり、半径方向とはタイヤの回転軸に垂直な方向である。
【0007】
エアレスタイヤは一般に、半径方向外方に、
-構造上、少なくとも部分的に荷重を支え、リム又はハブと協働するように意図された支持構造体、
-転動力(rolling force)を剪断によって支持構造体に伝達し、荷重の担持に少なくとも部分的に寄与するように意図された剪断ストリップ、並びに
-転動力を剪断ストリップに伝達して、摩耗を受け、地面に対するタイヤの密着性を保証するように意図されたトレッド、
を備える。
【0008】
支持構造体は、例えば半径方向外方に、リム又はハブへの連結手段、半径方向要素又はスポーク、及び剪断ストリップへの連結手段を備える。しかしながら、支持構造体は一般に、従来のタイヤのように、加圧下のガスを収容するように意図された内部密閉空洞を画定することはない。結果的に、エアレスタイヤは、リム又はハブへの密閉連結部を必要としない。
【0009】
公知の一実施形態では、剪断ストリップは、半径方向外方、
-第1の内側膜、
-1又は2以上のポリマー材から成る剪断層、
-第2の外側膜、
を備える。剪断層は、直接的に第1及び第2の膜と接する。
【0010】
上述の実施形態では、第1及び第2の膜は、多くの場合、ポリマー材剪断層の剪断弾性率よりも著しく高い周方向伸長弾性率を有するので、加わった荷重の下で、転動する時にタイヤが扁平になっても、これらの膜はあまり伸びない。膜間の相互移動は、剪断層内の剪断によって生じる。膜は、ポリマー材で被覆された積層補強層を含むことが好ましい。
【0011】
ポリマー材剪断層は、例えば、天然ゴム又は合成ゴム又はポリウレタンなどのポリマー材から成る。例えば、この剪断層材料は、少なくとも3MPaに等しく、最大で20MPaに等しい剪断弾性率を有し、これにより、荷重下で剪断ストリップは扁平になりやすくなる。
【0012】
長年に亘り、北米ミシュラン社は、上記のようなエアレスタイヤとホイールから成る組立体形態の完全な解決策を製品名MICHELIN(登録商標)TWEEL(登録商標)で販売してきた。この技術的解決策は主に、トレッド、剪断ストリップ又は「剪断バンド」、非常に頑丈なポリ樹脂スポークから成る支持構造体、及び2つの強化鋼部品から成るハブから構成される。
【0013】
先行技術のエアレスタイヤの剪断ストリップには、一般に質量が大きいことと、地面との接触圧発生が比較的狭い値域に入るという2つの主な欠点がある。従って、高い接触圧は、非常に大きな質量を有する剪断ストリップによってだけ発生させることができ、これは機械的に実行できるものでも経済的に許容できるものでもない。さらに、このような剪断ストリップの使用は、実際には、乗用車のように低圧でも高速で機能するエアレスタイヤ、又はBobcat(登録商標)タイプの特定用途車のように高圧かつ低速で機能するエアレスタイヤに限定される。さらに、厳しい環境制約を伴う(例えば、非常に低温)用途では、低い接触圧を発生させるのに必要な剪断ストリップの剪断レベルは、通常のポリマー材から成る剪断層では達成することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2003/018332号
【特許文献2】仏国特許出願公開第2964597号
【特許文献3】国際公開第2012/102932号
【特許文献4】国際公開第2018/101937号
【特許文献5】国際公開第2018/102303号
【特許文献6】国際公開第2018/102560号
【特許文献7】国際公開第2018/125186号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者らは、タイヤの所与の許容荷重に対し、先行技術の剪断ストリップと比べて削減された質量と、目標中接地圧レベルを達成するように適合された剪断剛性とを有する剪断ストリップを含むエアレスタイヤを提案することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0016】
その目的は、半径方向外方に、リム又はハブと協働するように意図された支持構造体と、剪断ストリップと、トレッドとを備えた車両用エアレスタイヤによって達成され、
-剪断ストリップは、半径方向外方に、半径方向内側膜と、剪断構造体と、半径方向内側膜から平均半径方向距離Hに位置決めされた半径方向外側膜とを備え、
-剪断構造体は、周方向に分散配置された複数の剪断要素から成り、
-複数の剪断要素の何らかの剪断要素は、タイヤの回転軸に垂直な何らかの周方向平面において、半径方向内側膜から距離d1に位置決めされた半径方向内端と、半径方向外側膜から距離d2に位置決めされた半径方向外端とを持つ非放射状母線を有する主要部分を含み、並びに
-剪断要素の主要部分の母線は、少なくとも1.25*(H-(d1+d2))に等しい曲線長Lを有する。
【0017】
本発明によるエアレスタイヤの剪断ストリップは、本質的に、必ずしも一定でないピッチで分散配置された複数の剪断要素の周方向分布を含む。通例、複数の剪断要素は剪断要素のセットであり、剪断要素の全てを含むことが最も多いが、剪断要素の一部だけを含む場合もある。この離散的な剪断構造体により、開放構造の剪断ストリップが可能となり、例えば従来タイヤの頂部(summit)の質量にかなり近いエアレスタイヤの頂部の質量が保証される。慣例により、タイヤの頂部は、エアレスタイヤの場合は支持構造体の半径方向外側、従来タイヤの場合はカーカス補強体の半径方向外側にあるタイヤの主要部分である。
【0018】
剪断ストリップは、半径方向外方に、半径方向内側膜と、剪断構造体と、半径方向内側膜から平均半径方向距離Hに位置決めされた半径方向外側膜とを含む。定義上、半径方向内側膜と半径方向外側膜との半径方向平均距離Hは、タイヤの周囲に亘る平均値である。
【0019】
タイヤの回転軸に垂直な何らかの周方向平面においても、複数の剪断要素のうちの何らかの剪断要素、つまり何らかの基本模様は、放射状ではなく、曲線形状の母線と呼ばれる中央線を持つ周方向断面を有する。この母線は、半径方向内側膜からの距離d1にある半径方向内端位置と、半径方向外側膜からの距離d2にある半径方向外端位置との間を延びる。このことは、半径方向内端と半径方向外端が、それぞれ、半径方向内側膜及び半径方向外側膜の上に必ずしも位置決めされず、結果として、剪断要素の主要部分と半径方向内側膜及び半径方向外側膜との間の界面として機能する移行区域が存在してもよいことを暗示する。さらに、母線の形状は開曲線であり、それ自身の上で閉じる曲線ではないことに留意されたい。例えば、母線は閉じた円形を有することができない。距離d1及びd2は、必ずしもタイヤの軸方向に一定ではなく、すなわち、剪断ストリップの軸方向幅の中で変化してもよい。
【0020】
本発明によれば、この母線は、その半径方向内端と半径方向外端との間で母線に沿って測定した曲線長Lが、その両端間の最短距離(H-(d1+d2)に等しい)の少なくとも1.25倍に等しいことが必要である。従って、このような母線は、ゼロでない平均曲率を有し、剪断要素の幾何学的可撓性を保証する。
【0021】
このような母線形状により、転動時に剪断要素に発生する応力の最適化が可能となる。実際、垂直梁などの単純な構造と比較して、この母線形状により、所与の平均半径方向膜間距離Hに対して、剪断要素の有効作動長を長くするか、又は半径方向内側膜及び半径方向外側膜との界面を十分に厚くして、応力及び変形の最大値をこれら界面のレベルではなく、剪断要素の中心に動かすことが可能となる。
【0022】
さらに、剪断要素の厚さ特性、並びに剪断要素を構成する材料(複数可)の弾性率と組み合わせると、母線の形状により、関係する車両の使用に適した接地圧の分布及び値を得るために、剪断ストリップの機械的剛性特性を最適化することが可能となる。
【0023】
一方で、剪断ストリップの全体的な曲げ剛性は、地面と接触した際の剪断ストリップの座屈を防止するために十分に高くなければならない。この全体的な曲げ剛性は、主として半径方向内側膜及び半径方向外側膜によって保証される。
【0024】
その一方で、剪断ストリップの全体的な剪断剛性も、特に接触領域で要求される平均圧力レベルを保証するように適合させる必要がある。この全体的な剪断剛性は、主として半径方向内側膜と半径方向外側膜との間にある剪断構造体によって与えられる。転動力の作用により、このような剪断ストリップの全体的な剪断は、各剪断要素に局所的な撓みを発生させ、その剪断要素の変形をもたらす。
【0025】
本発明の第1の実施形態により、本タイヤに関して、従来タイヤの頂部の質量と同程度の頂部の質量で高い接地圧を発生させる剪断ストリップの設計が可能となる。全体的な剪断剛性の観点からの剪断ストリップの最適化は、剪断要素を構成する材料(複数可)の弾性率と母線の曲線長とを適合させることで達成され、後者は、剪断要素を構成する材料(複数可)に誘発される応力及び変形が、材料の破断抵抗及び/又は疲労限界特性に対応するほどに高くなる。本発明に従って複数の剪断要素を周方向に分散配置することにより、半径方向内側膜と半径方向外側膜との間に所定の材料体積を得ることが可能となり、高い転動速度で高い接地圧を実現することができる。これにより、現在のエアレスタイヤの使用範囲を拡大することができる。
【0026】
本発明の第2の実施形態により、例えば地球外環境で遭遇する極低温などの厳しい環境制約に適合する、非常に可撓性の高い剪断ストリップを設計することが可能となる。これは、剪断要素の母線長を適合させて、構成材料(複数可)に誘発される応力及び変形が構成材料の破断抵抗及び/又は疲労限界特性に対応するのに十分となるようにすることで可能である。
【0027】
母線の半径方向内端から半径方向内側膜までの距離d1は、有利には、半径方向内側膜と半径方向外側膜との平均半径方向距離Hの最大で0.5倍に等しい。
【0028】
また、母線の半径方向内端から半径方向内側膜までの距離d1は、有利には0に等しい。これは、剪断要素の主要部分と半径方向内側膜との間の界面を形成する移行区域が存在しないことを意味する。
【0029】
母線の半径方向外端から半径方向外側膜までの距離d2は、有利には、半径方向内側膜と半径方向外側膜との平均半径方向距離Hの最大で0.5倍に等しい。
【0030】
母線の半径方向外端から半径方向外側膜までの距離d2はまた、有利には0に等しい。これは、剪断要素の主要部分と半径方向外側膜との間の界面を形成する移行区域が存在しないことを意味する。
【0031】
半径方向内端における母線に対する接線は、有利にはエアレスタイヤの半径方向と少なくとも45°に等しい角度A1を成す。
【0032】
また、半径方向外端における母線に対する接線は、有利にはエアレスタイヤの半径方向と少なくとも45°に等しい角度A2を成す。
【0033】
何らかの剪断要素の主要部分の母線は、S字形状など、湾曲方向の1回の反転を持つ形状を有することが有利である。
【0034】
また、何らかの剪断要素の主要部分は、有利には一定でない厚さE0を有する。この厚さの変動により、この剪断要素における応力及び変形の分布を最適化することが可能となる。所与の周方向平面で測定される厚さE0は、2つの異なる周方向平面の間で、すなわちタイヤの軸方向で変化する場合もある。
【0035】
剪断要素は、一定のピッチで周方向に分散配置されることが好ましい。
【0036】
また、何らかの剪断要素は、4%伸長時の伸長弾性率が少なくとも20MPaに等しい、好ましくは少なくとも30MPaに等しい材料から成ることが好ましい。この伸長弾性率は静的に測定される。
【0037】
剪断要素の母線形状は、転動力から生じる剪断ストリップ内の剪断によって発生する応力が、従来のタイヤ分野で日常的に使用されるエラストマ材よりも高い弾性率を持つ材料の使用を可能にするほどに低いという結果を有する。
【0038】
高い弾性率を備えた材料を使用することで、周方向平面における剪断要素の有効断面を削減して剪断ストリップの重量を減らすこと、又は接地圧を増大させるような態様で転動ストリップを剛化することが可能となる。
本発明の特徴は、図1-5に概略的に示すが、縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明によるエアレスタイヤの全体図である。
図2】第1の実施形態(d1及びd2がゼロでない)による剪断要素の周方向断面図である。
図3】第1の実施形態(d1及びd2がゼロでない)による剪断要素の主要部分の周方向断面図である。
図4】第2の実施形態(d1及びd2がゼロである)による剪断要素の周方向断面図である。
図5】第2の実施形態(d1及びd2がゼロである)による剪断要素の主要部分の周方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、本発明によるエアレスタイヤ1の全体図である。このエアレスタイヤ1は、半径方向外方に、リム又はハブ3と協働するように意図された支持構造体2と、剪断ストリップ4と、トレッド6とを備える。剪断ストリップ4は、半径方向外方に、半径方向内側膜41と、剪断構造体40と、半径方向外側膜42とを備える。剪断構造体40は、周方向に分散配置された複数の剪断要素5から成る。複数の剪断要素の各剪断要素5は、半径方向内端I1と半径方向外端I2とを持つ非放射状母線を有する。
【0041】
図2は、第1の実施形態(d1及びd2がゼロでない)による剪断要素5の周方向の図である。剪断要素5は、タイヤの回転軸に垂直な任意の周方向平面XZにおいて、半径方向内側膜41から距離d1に位置決めされた半径方向内端I1と、半径方向外側膜42から距離d2に位置決めされた半径方向外端I2とを持つ非放射状母線Gを有する主要部分50を含み、剪断要素5の主要部分50の母線Gは、少なくとも1.25*(H-(d1+d2))に等しい曲線長Lを有しており、Hは半径方向内側膜41と半径方向外側膜42との平均半径方向距離である。図示の実施形態では、母線Gの半径方向内端I1から半径方向内側膜41までの距離d1、並びに母線Gの半径方向外端I2から半径方向外側膜42までの距離d2は、平均半径方向距離Hの0.5倍未満であり、ゼロではない。さらに、半径方向内端I1における母線Gに対する接線T1は、エアレスタイヤ1の半径方向ZZ’と、少なくとも45°に等しく、さらには90°に近い角度A1を成す。同様に、半径方向外端I2における母線Gに対する接線T2は、エアレスタイヤ1の半径方向ZZ’と、少なくとも45°に等しく、さらには90°に近い角度A2を成す。最後に、剪断要素5の主要部分50の母線GはS字形状を有し、剪断要素5の主要部分50は一定の厚さE0を有する。
【0042】
図3は、第1の実施形態(d1及びd2がゼロでない)による剪断ストリップ4の主要部分の周方向断面図である。剪断ストリップ4は、半径方向外方に、半径方向内側膜41と、剪断構造体40と、半径方向外側膜42とを備える。剪断要素5は、図2を参照して説明したタイプのものである。
【0043】
図4は、第2の実施形態(d1及びd2がゼロである)による剪断要素5の周方向断面図である。この剪断要素5は、より顕著な湾曲を備えた母線Gの形状、より長い母線長G、及びより小さい主要部分の厚さによって、図2のものと異なる。さらに、母線Gの半径方向内端I1から半径方向内側膜41までの距離d1、並びに母線Gの半径方向外端I2から半径方向外側膜42までの距離d2は、ゼロである。言い換えれば、主要部分50は、半径方向内側膜41及び半径方向外側膜42との直接的な界面である。
【0044】
図5は、第2の実施形態(d1及びd2がゼロである)による剪断ストリップ4の主要部分の周方向断面図である。上述したように、剪断ストリップ4は、半径方向外方に、半径方向内側膜41と、剪断構造体40と、半径方向外側膜42とを備える。剪断要素5は、図4を参照して説明したタイプのものである。
【0045】
本発明者らは、本発明を2つの異なる実施形態R1及びR2でより詳細に研究した。
【0046】
第1の実施形態R1は、欧州タイヤ及びリム技術機構(ETRTO)という欧州規格で規格マニュアル2020に規定される、バン型車両に装備するように意図された、寸法235/65 R16 LI/SI 121Rの基準タイヤを置き換えることを目的としたエアレスタイヤに関係する。R1の場合,剪断要素を構成する材料の4%伸長時の伸長弾性率は150MPaであり、例えば熱可塑性エラストマ(TPE)に相当する。
【0047】
第2の実施形態R2は、極低温の極限環境での走行に適合された車両に装備するように意図された、800mmに等しい外径と300mmに等しい全幅とを有するエアレスタイヤに関係する。R2の場合、剪断要素を構成する材料の4%伸長時、-200℃における伸長弾性率は5800MPaに等しく、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)タイプの熱可塑性プラスチック又はポリイミドに相当する。
【0048】
以下の表1は、2つの実施形態R1及びR2のそれぞれの特徴を明示する:
【表1】
【0049】
本発明者らが有限要素計算ソフトウェアを用いて実施した数値シミュレーションによれば、第1の実施形態R1によるタイヤの剪断ストリップで発生する平均接地圧は、剪断ストリップの質量が8.7kgに等しい場合、5barに等しい。
【0050】
本発明者らが有限要素計算ソフトウェアを用いて実施した数値シミュレーションによれば、第2の実施形態R2によるタイヤの剪断ストリップで発生する平均接地圧は、0.075barに等しい。
【符号の説明】
【0051】
5 剪断要素
41 半径方向内側膜
42 半径方向外側膜
50 主要部分
A1 接線T1が半径方向と成す角度
A2 接線T2が半径方向と成す角度
d1 半径方向内端の半径方向内側膜からの距離
d2 半径方向外端の半径方向外側膜からの距離
E0 主要部分の厚さ
G 非放射状母線
H 半径方向内側膜と半径方向外側膜との平均半径方向距離
I1 半径方向内端
I2 半径方向外端
L 非放射状母線の曲線長
T1 半径方向内端における接線
T2 半径方向外端における接線
X 周方向
Y 軸方向
Z 半径方向
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】