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特表2024-544290電磁式の装置ならびにこのような電磁式の装置を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】電磁式の装置ならびにこのような電磁式の装置を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/127 20060101AFI20241121BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20241121BHJP
   H01F 7/14 20060101ALI20241121BHJP
   H01F 41/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01F7/127
F16K31/06 305E
H01F7/14 C
H01F7/14 E
H01F7/14 F
H01F7/14 Z
H01F41/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535846
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-26
(86)【国際出願番号】 EP2022085879
(87)【国際公開番号】W WO2023111032
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】102021133231.1
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】フリートベアト レーター
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン イェンゼン
【テーマコード(参考)】
3H106
5E048
【Fターム(参考)】
3H106DA07
3H106DA13
3H106DA22
3H106DB33
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD02
3H106EE35
5E048AB01
5E048AB04
5E048AB06
5E048AD18
(57)【要約】
電磁式の装置(105)は、長手方向軸線(137)を伴うマグネットコア(135)と、コイル(140)の少なくとも1つのコイル巻線(141)を収容するための少なくとも1つの収容領域(142)を有する、マグネットコア(135)の周囲に配置されているコイル巻枠(128)とを有しており、収容領域(142)は、コイル巻枠材料(134)の少なくとも1つの壁(129)によって形成されており、壁(129)は、マグネットコア(135)の長手方向軸線(137)の方向に延在する第1の領域(131)と、マグネットコア(135)の長手方向軸線(137)に対して横方向に延在する少なくとも1つの第2の領域(132)とを有している。マグネットコア(135)は、環状の取り付け領域(600)を有しており、環状の取り付け領域(600)は、マグネットコア(135)の長手方向軸線(137)に沿った横断面で見て、歯状の輪郭(601)を有していて、マグネットコア(135)が環状の取り付け領域(600)によってコイル巻枠(128)に保持されるように、コイル巻枠材料(134)を押し退けることによってコイル巻枠(128)のコイル巻枠材料(134)に噛み合わされている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁式の装置(105)であって、
前記電磁式の装置(105)は、
長手方向軸線(137)を伴うマグネットコア(135)と、
コイル(140)の少なくとも1つのコイル巻線(141)を収容するための少なくとも1つの収容領域(142)を有する、前記マグネットコア(135)の周囲に配置されているコイル巻枠(128)と
を有しており、
前記収容領域(142)は、コイル巻枠材料(134)の少なくとも1つの壁(129)によって形成されており、前記壁(129)は、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)の方向に延在する第1の領域(131)と、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に対して横方向に延在する少なくとも1つの第2の領域(132)とを有しており、
前記マグネットコア(135)は、環状の取り付け領域(600)を有しており、前記環状の取り付け領域(600)は、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に沿った横断面で見て、歯状の輪郭(601)を有していて、前記マグネットコア(135)が前記環状の取り付け領域(600)によって前記コイル巻枠(128)に保持されるように、前記コイル巻枠材料(134)を押し退けることによって前記コイル巻枠(128)の前記コイル巻枠材料(134)に噛み合わされている、
電磁式の装置(105)。
【請求項2】
前記環状の取り付け領域(600)は、前記コイル巻枠材料(134)が前記歯状の輪郭の周りで流れ、アンダカットを形成するように形成されている、請求項1記載の電磁式の装置(105)。
【請求項3】
前記環状の取り付け領域(600)は、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に沿った横断面において、鋸歯状の輪郭を有している、請求項1または2記載の電磁式の装置(105)。
【請求項4】
前記環状の取り付け領域(600)は、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に対して垂直な方向において前記収容領域(142)が存在しない、特に、前記壁(129)の前記第2の領域(132)が存在する、前記マグネットコア(135)の長手位置に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項5】
ハウジング(170)、特にマグネットハウジングをさらに有しており、前記ハウジング(170)は、前記コイル巻枠(128)の周囲に周方向に配置されていて、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に対して横方向に作用する押圧力(F)を、前記収容領域(124)の前記壁(129)の前記第2の領域(132)に及ぼす、請求項1から4までのいずれか1項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項6】
前記マグネットコア(135)は、前記長手方向軸線(137)に沿って、複数の環状の取り付け領域(600)を有しており、前記複数の環状の取り付け領域(600)は、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に沿った横断面において、それぞれ歯状の輪郭(601)を有している、請求項1から5までのいずれか1項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項7】
各前記歯状の輪郭(601)の前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に対して垂直な方向における各延在長さが、前記複数の取り付け領域(600)のうちの1つの取り付け領域(600)から、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に沿って次いで配置されている、前記複数の取り付け領域(600)のうちの1つの取り付け領域(600)へ向かって増大する、請求項6記載の電磁式の装置(105)。
【請求項8】
前記環状の取り付け領域(600)は、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に沿った横断面において、平坦に形成されたヘッド領域を有する輪郭を有している、請求項1から7までのいずれか1項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項9】
前記環状の取り付け領域(600)は、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に沿った横断面において、前記マグネットコア(135)におけるくぼみ(608)を備えた輪郭を有しており、前記くぼみ(608)は、前記取り付け領域(600)の外側での前記マグネットコア(135)よりも小さい外径を有している、請求項1から8までのいずれか1項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項10】
前記歯状の輪郭(601)は、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に対して横方向に延在する面において、前記取り付け領域(600)の外側での前記マグネットコア(135)の外面に対して最大で90°の角度を有している、請求項1から9までのいずれか1項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項11】
前記コイル巻枠材料(134)は、プラスチック材料を有している、または前記マグネットコア(135)が超音波溶接結合を介して前記コイル巻枠(128)へ超音波溶接されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項12】
電磁式のアクチュエータ(100)として形成されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項13】
前記コイル(140)および前記マグネットコア(135)を通る電流によって発生させられた磁場(180)によって移動可能である移動可能なアクチュエータ要素として、移動可能な磁性のアーマチュアボディ(115)を有している、請求項12記載の電磁式の装置(105)。
【請求項14】
前記電磁式の装置は、前記コイル(140)および前記マグネットコア(135)を通る電流によって発生させられた磁場(180)によって移動可能である切換要素もしくは弁要素である移動可能な磁性のアーマチュアボディ(115)を備えた電磁式の切換装置または弁装置(100)として形成されている、請求項1から13までのいずれか1項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項15】
前記電磁式の装置は、電気機械式のリレーまたは電磁弁(100)として形成されている、請求項1から14までのいずれか1項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項16】
前記電磁式の装置は、車両の圧力調整モジュールのための電磁弁(100)として形成されている、請求項1から15までのいずれか1項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか1項記載の電磁式の装置(105)を製造する方法であって、
マグネットコア(135)およびコイル巻枠(128)を提供するステップと、
前記マグネットコア(135)の環状の取り付け領域(600)が前記コイル巻枠内に配置されるまで、前記コイル巻枠(128)内へ前記マグネットコア(135)を挿入する、または前記マグネットコア(135)へ前記コイル巻枠(128)を被せ嵌めるステップと
を有している、電磁式の装置(105)を製造する方法。
【請求項18】
前記コイル巻枠(128)は、前記マグネットコア(135)が挿入可能であるマグネットコア収容空間(143)を有している、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記マグネットコア(135)の長手方向軸線(137)と、前記マグネットコア収容空間(143)の長手方向軸線とが互いに整合するように、前記コイル巻枠(128)内で前記マグネットコア収容空間に対して前記マグネットコア(135)を位置合わせステップをさらに有している、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記マグネットコア(135)を超音波溶接結合を介して前記コイル巻枠(128)へ超音波溶接する、請求項17から19までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネットコアと、マグネットコアの周囲に周方向で配置されているコイル巻枠とを有している電磁式の装置ならびにこのような電磁式の装置を製造する方法に関する。
【0002】
このような電磁式の装置は、たとえば電磁式のアクチュエータにおいて使用され、電磁式のアクチュエータは、たとえば電磁式の切換装置または弁装置の形態で、たとえば電磁式のリレーまたは電磁弁の形態で公知である。たとえば傾動アーマチュア弁の形態の電磁弁は、たとえば車両において、たとえば、商用車または旅客輸送用のバスなどにおいて空気を圧力調整する制御弁として使用される。たとえば、電子式の常用ブレーキシステムを備えた車両のためのブレーキシステムは、圧力調整のために少なくとも1つの制御弁を含んでいる。
【0003】
電磁式の装置を有する傾動アーマチュア弁の形態の電磁式のアクチュエータは、たとえば独国特許出願公開第102016105532号明細書から公知である。電磁式のアクチュエータは、電磁式の装置を有しており、この電磁式の装置は、マグネットコアと、このマグネットコアを取り囲むように配置されているコイル巻枠とを含んでいる。
【0004】
さらに、たとえば独国特許出願公開第102014115207号明細書、独国特許出願公開第102018123997号明細書または独国特許発明第102014115206号明細書に記載されているような、電磁弁の他の構造様式が公知である。
【0005】
一般的に、電磁式の装置では、コイル巻枠とマグネットコアとの間の結合を形成するために、コイル巻枠が射出成形被覆によってマグネットコアに取り付けられる。他の電磁式の装置では、たとえば、マグネットコアをコイル巻枠半部同士の間に位置決めするために、コイル巻枠が長手方向において分割されている。その後、これらのコイル巻枠半部が組み付けられ、これによって、マグネットコアがコイル巻枠内に固定される。一方では、この製造バリエーションは複雑であり、他方では、コイル巻枠はこの分割によって構造上の弱点を有してしまう。
【0006】
本発明の根底を成す課題は、冒頭で述べた様式の電磁式の装置を改良して、比較的容易に、かつ迅速に製造可能であり、マグネットコアとコイル巻枠との間の確実な結合を提供する電磁式の装置を提供することである。
【0007】
本発明は、添付の特許請求の範囲に記載された、冒頭で述べた様式の電磁式の装置に関する。本発明の有利な実施形態および発展形態は、従属請求項および以降の説明に示されている。
【0008】
特に本発明の1つの態様は、長手方向軸線を伴うマグネットコアと、コイルの少なくとも1つのコイル巻線を収容するための少なくとも1つの収容領域を有する、マグネットコアの周囲に周方向で配置されているコイル巻枠とを有している電磁式の装置に関する。収容領域は、コイル巻枠材料の少なくとも1つの壁によって形成されており、この壁は、マグネットコアの長手方向軸線の方向に延在する第1の領域と、マグネットコアの長手方向軸線に対して横方向に延在する少なくとも1つの第2の領域とを有している。マグネットコアは、環状の取り付け領域を有しており、この環状の取り付け領域は、マグネットコアの長手方向軸線に沿った横断面で見て、歯状の輪郭を有していて、マグネットコアが環状の取り付け領域によってコイル巻枠に保持されるように、コイル巻枠材料を押し退けることによってコイル巻枠のコイル巻枠材料に噛み合わされている。
【0009】
本発明によって、マグネットコアが、マグネットコアの環状の取り付け領域でもって、コイル巻枠に確実に噛み合っていることによって、電磁式の装置を迅速かつ効率的に製造することが可能になる。さらに、電磁式の装置のこの構成によって、マグネットコアが、長手方向において、コイル巻枠内へ挿入可能であり、マグネットコアとコイル巻枠との間に確実な結合が生じることが可能になる。当然、同じことが、コイル巻枠がマグネットコアに被せ嵌められる場合にも当てはまる。繰り返しを避けるために、コイル巻枠内へのマグネットコアの挿入は、マグネットコアへのコイル巻枠の被せ嵌めと同一視されるべきである。
【0010】
さらに、本発明の電磁式の装置は、マグネットコアおよびコイル巻枠のためのフレキシブルな材料選択を可能にする。これとは異なり、従来技術のマグネットコアの公知の射出成形被覆時には、射出成形被覆材料がマグネットコア上に保持されるように、材料が互いに合わせて調整されていることが必要となる。
【0011】
本発明の別の利点は、マグネットコアをコイル巻枠内に確実に取り付けるために、付加的な構成部材が不要なことである。確実な取り付けは、マグネットコアの環状の取り付け領域によって保証されている。すなわち、本発明の電磁式の装置の利点を発揮するためには、マグネットコアおよびコイル巻枠だけが必要である。2つの部分から成るコイル巻枠と比べて、本発明の電磁式の装置では、2つのコイル巻枠部分と、マグネットコアを2つ部分から成るコイル巻枠内に固定するロック要素との結合が省かれる。
【0012】
電磁式の装置の動作時に、電磁式の装置は、たとえばコイル巻線内の損失熱によって、たいていの場合、高温になり、コイル巻枠は膨張する傾向にある。電磁式の装置の本発明の構成によって、環状の取り付け領域によって、コイル巻枠の膨張にもかかわらず、マグネットコアがコイル巻枠に確実に結合され続け、これによって、マグネットコアが、コイル巻枠からの落下に対して防護される。
【0013】
本発明の電磁式の装置は、基本的に、電磁式のアクチュエータ、たとえば傾動アーマチュア弁および電磁石だけでなく、リレーにおいても使用可能である。好ましくは、本発明の電磁式の装置は、たとえば、車両、特に商用車のブレーキシステムに設けられた電磁弁において使用される。
【0014】
電磁式の装置の1つの実施形態によれば、環状の取り付け領域は、コイル巻枠材料が歯状の輪郭の周りで流れ、アンダカットを形成するように形成されている。これは、コイル巻枠内へのマグネットコアの挿入時に、環状の取り付け領域によって、半径方向で、長手方向軸線に関して外側に押し退けられたコイル巻枠材料が、挿入方向において、取り付け領域の後方で再び膨張し、環状の取り付け領域をアンダカットすることを意味している。この関連において「流れる」という表現は、マグネットコアがコイル巻枠内へ挿入されるときに、コイル巻枠材料が液状であることを意味するのではなく、実質的に、コイル巻枠材料、たとえばプラスチック材料の押し退けおよび/または塑性変形を表している。アンダカットによって、コイル巻枠におけるマグネットコアの確実な取り付けが、あらゆる状況で保証される。代替的に、マグネットコアが、超音波溶接プロセスを介してコイルもしくはコイル巻枠へ超音波溶接されてもよく、つまり、マグネットコアがコイルもしくはコイル巻枠内に配置され、取り付けられてもよい。
【0015】
電磁式の装置の1つの実施形態によれば、環状の取り付け領域は、マグネットコアの長手方向軸線に沿った横断面において、鋸歯状の輪郭を有している。鋸歯状の輪郭では、コイル巻枠が確実かつ堅固にマグネットコアに噛み合うもしくは食い込む。特に、この鋸歯状の輪郭は、マグネットコアが、挿入方向とは逆向きに、コイル巻枠から意図せずに落下し得ることを阻止する。したがって、マグネットコアとコイル巻枠との間で確実な結合が生じる。
【0016】
電磁式の装置の1つの実施形態によれば、環状の取り付け領域は、マグネットコアの長手方向軸線に対して垂直な方向において収容領域が存在しない、マグネットコアの長手位置に配置されている。コイル巻枠のこの領域では、コイル巻枠は収容領域内よりも剛性である。これによって、マグネットコアの挿入後に、コイル巻枠が、マグネットコアの環状の取り付け領域を堅固に取り囲んでいて、これによってコイル巻枠とマグネットコアとの間の確実な結合を可能にすることが実現される。
【0017】
電磁式の装置の1つの実施形態によれば、電磁式の装置は、ハウジング、特にマグネットハウジングを有しており、このハウジングは、コイル巻枠の周囲に周方向に配置されていて、マグネットコアの長手方向軸線に対して横方向に、好ましくは垂直に作用する押圧力を、収容領域の壁に及ぼす。電磁式の装置の動作時に、コイル巻枠は加熱され、膨張する。コイル巻枠の膨張によって、コイル巻枠がマグネットハウジングに支持され、マグネットコアの、環状の取り付け領域に力を導き、これによって、環状の取り付け領域の後方のコイル巻枠のアンダカットが補強される。これによって、コイル巻枠においてマグネットコアを確実に取り付けることが達成される。
【0018】
電磁式の装置の1つの実施形態によれば、マグネットコアは、長手方向軸線に沿って、複数の環状の取り付け領域を有しており、これらの環状の取り付け領域は、マグネットコアの長手方向軸線に沿った横断面において、それぞれ歯状の輪郭を有している。複数の取り付け領域は、コイル巻枠が、長手方向で見て、複数の部分領域でマグネットコアに接し、これによってコイル巻枠が複数のアンダカットを形成することを可能にする。このことから、コイル巻枠におけるマグネットコアのための複数の取り付け点が生じる。コイル巻枠におけるマグネットコアの確実な取り付けが可能になる。
【0019】
電磁式の装置の1つの実施形態によれば、各歯状の輪郭のマグネットコアの長手方向軸線に対して垂直な方向における各延在長さが、複数の取り付け領域のうちの1つの取り付け領域から、マグネットコアの長手方向軸線に沿って次いで配置されている、複数の取り付け領域のうちの1つの取り付け領域へ向かって増大する。特に、この延在長さは、コイル巻枠内へのマグネットコアの挿入方向において増大する。この構成は、コイル巻枠による複数の有利なアンダカットの形成を可能にする。このことは、マグネットコアとコイル巻枠との間の取り付けのさらなる改良を意味する。
【0020】
電磁式の装置の1つの実施形態によれば、環状の取り付け領域は、マグネットコアの長手方向軸線に沿った横断面において、平坦に形成されたヘッド領域を有する輪郭を有している。平坦に形成されたヘッド領域は、コイル巻枠に、マグネットコアを固定するためにコイル巻枠がアンダカットすることができる領域を提供する。平坦に形成されたヘッド領域は、マグネットコアがコイル巻枠内で挿入方向に対して逆向きの方向において移動させられる場合に、コイル巻枠内でのマグネットコアの把持を可能にする。マグネットコアの挿入方向は、マグネットコアの長手方向軸線に沿って延在している。これによって、コイル巻枠におけるマグネットコアの確実な取り付けが達成される。
【0021】
電磁式の装置の1つの実施形態によれば、環状の取り付け領域は、マグネットコアの長手方向軸線に沿った横断面において、マグネットコアにおけるくぼみを備えた輪郭を有しており、このくぼみは、取り付け領域の外側でのマグネットコアよりも小さい外径を有している。環状の取り付け領域におけるくぼみは、環状の取り付け領域が、くぼみを有してない場合よりも高い柔軟性を有することを可能にする。これによって、コイル巻枠内へのマグネットコアのより簡単な挿入が可能になる。
【0022】
電磁式の装置の1つの実施形態によれば、歯状の輪郭は、マグネットコアの長手方向軸線に対して横方向に延在する面において、取り付け領域の外側でのマグネットコアの外面に対して最大で90°の角度を有している。コイル巻枠材料が、このように形成された歯状の輪郭の後方で膨張し、アンダカットを形成する場合、マグネットコアは、コイル巻枠内に堅固に装着される。挿入方向とは逆向きにマグネットコアが移動させられる場合、この構成によって、コイル巻枠における取り付け領域の把持が可能になる。これによって、コイル巻枠からマグネットコアが意図せずに引き抜かれてしまうことを効果的に回避することができる。
【0023】
電磁式の装置の1つの実施形態によれば、コイル巻枠材料は、プラスチック材料を有している。このようなコイル巻枠材料を有するコイル巻枠は、有利であり、簡単に製造され、コイル巻枠のフレキシブルな変形を可能にする。特に、プラスチック材料は、コイル巻枠材料の主要な構成部材であってよい。プラスチック材料は、構成部材としてまたは主要な構成部材としてエラストマーを有していてよい。しかしコイル巻枠が、完全にプラスチック、特にエラストマーから形成されていてもよい。
【0024】
1つの実施形態によれば、電磁式の装置は、電磁式のアクチュエータとして形成されている。これは、本発明の電磁式の装置の有利な用途である。
【0025】
電磁式の装置の1つの実施形態によれば、電磁式の装置は、コイルおよびマグネットコアを通る電流によって発生させられた磁場によって移動可能である移動可能なアクチュエータ要素として、移動可能な磁性のアーマチュアボディを有している。これによって、電磁式のアクチュエータの確実な切換が可能になる。
【0026】
1つの実施形態によれば、電磁式の装置は、コイルおよびマグネットコアを通る電流によって発生させられた磁場によって移動可能である切換要素もしくは弁要素である移動可能な磁性のアーマチュアボディを備えた電磁式の切換装置または弁装置として形成されている。
【0027】
1つの実施形態によれば、電磁式の装置は、電気機械式のリレーまたは電磁弁として形成されている。
【0028】
1つの実施形態によれば、電気機械式の装置は、車両の圧力調整モジュールのための電磁弁として形成されている。
【0029】
本発明のさらなる態様は、本発明の電磁式の装置を製造する方法であり、この方法は、
・マグネットコアおよびコイル巻枠を提供するステップと、
・マグネットコアの環状の取り付け領域がコイル巻枠によって取り囲まれるまで、コイル巻枠内へマグネットコアを挿入する、またはマグネットコアへコイル巻枠を被せ嵌めるステップと
を有している。
【0030】
電磁式の装置に関連して挙げた実施形態および利点は、同様に本発明の方法に当てはまる。繰り返しを避けるために、これらは繰り返されない。
【0031】
方法の1つの実施形態によれば、コイル巻枠は、マグネットコアが挿入されるマグネットコア収容空間を有している。
【0032】
方法の1つの実施形態によれば、方法は、マグネットコアの長手方向軸線と、マグネットコア収容空間の長手方向軸線とが互いに整合するように、コイル巻枠内でマグネットコア収容空間に対してマグネットコアを位置合わせする方法ステップを有していてよい。
【0033】
本明細書に記載された実施形態は、共存して適用されても、または相互の任意の組合せにおいて適用されてもよい。
【0034】
以降において、本発明を図面に示された図に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1A図2に示されているような本発明の電磁式の装置が、原理にしたがって適用可能な例示的な傾動アーマチュア弁の概略的な横断面図である。
図1B図2に示されているような本発明の電磁式の装置が、原理にしたがって適用可能な例示的な傾動アーマチュア弁の概略的な横断面図である。
図2】たとえば図1の傾動アーマチュア弁において使用可能な、本発明の電磁式の装置の1つの実施形態の概略的な横断面図である。
図3図2の本発明の電磁式の装置の環状の取り付け領域の概略的な拡大横断面図である。
【0036】
図1は、図1Aおよび図1Bに基づいて、図2に示されているような本発明の電磁式の装置が、原理にしたがって適用可能な傾動アーマチュア弁100の簡略化された横断面図を示している。ここで図1は、傾動アーマチュア弁に基づく電磁式の装置の例示的な実用的な使用を明示している。マグネットコアおよびコイル巻枠の本発明の構成は、図2において、実施例にしたがって詳しく示してあり、当業者によって、基本的に、図1の傾動アーマチュア弁に容易に転用され得る。この関連において、磁場によって移動可能な、切換要素もしくは弁要素としてのアーマチュアボディを備えた切換装置または弁装置のような電磁式の装置の基本的な機能形式が当業者には公知であることを示唆しておく。図3には、電磁式の装置の1つの実施例による環状の取り付け領域が詳細に示されている。
【0037】
傾動アーマチュア弁100は、基本原理によれば、独国特許出願公開第102016105532号明細書に示されている傾動アーマチュア弁100の1つの実施例であってよい。1つのバリエーションでは、これは、図1において参照符号100が付された電磁弁であってよい。しかし、たとえば上で挙げた他の文献に記載されているような電磁弁との関連における他の実施例も可能である。独国特許出願公開第102016105532号明細書に記載された電磁弁の関連する構成、この電磁弁のコンポーネントおよびこの電磁弁の使用は、参照によって本発明の開示の一部でもある。
【0038】
図1Aは、アーマチュアが第1の位置にある傾動アーマチュア弁100の横断面図を示している。傾動アーマチュア弁100は、コイル要素110と、アーマチュアボディ(または略してアーマチュア)115と、ばね120と、シール要素125と、カバーシェル130とを有している。ここで、コイル要素110は、少なくとも1つのマグネットコア135と、マグネットコア135の周囲に周方向で配置されているコイル巻枠128と、コイル巻枠128の周囲に周方向で配置されている、一群のコイル巻線(詳細には図示せず)を備えるコイル140とを含んでいる。アーマチュア115の端面は、軸受145によって支承されている。アーマチュア115は、第1の位置147と第2の位置149との間で移動可能である。ここで、アーマチュア115は、コイル140の作動時に第1の位置147から第2の(引き付けられた)位置149に移動させられるように構成されている。コイル140の作動時に、アーマチュア115を第2の位置149に保持することができる。アーマチュア115の、コイル要素110とは反対側の面には、さらにシール要素125が配置されている。カバーシェル130において、出口155を有する弁座150と、流体158のための入口157とが形成されている。ここで、アーマチュア115が第1の位置147に配置されている場合には、出口155は、シール要素125によって流体密に閉鎖可能である。ここで、シール要素125はさらに、弁座150へのアーマチュア115の衝突を防止するために、ダンパ要素としても作用することができる。ここで、シール要素125は、加硫によってアーマチュア115または支持体要素に取り付けられていてよい。さらに、弁座150にアーマチュア115もしくはシール要素125が当たるときに、斜めのノズルまたは斜めに成形されたシール要素125または湾曲したアーマチュア115によって角度が形成されることが考えられる。図1Aに明示されていない、このようなノズルは、必ずしも傾動アーマチュア弁100内に組み込まれていなくてよく、外部のハウジング部分によって提供されてもよい。
【0039】
さらに、弁座150がコイル要素110内に配置されていることが考えられるが、このことは、見やすくするために図1Aに明示されていない。このケースでは、アーマチュア115による出口の解放を伝える操作部が有利である。
【0040】
アーマチュア115は、この実施例では、軸受区間162において少なくとも部分的に円形の少なくとも1つの隆起部160を有しており、この隆起部160は、好都合には、傾動アーマチュア弁100のハウジング170の、隆起部160に対向する区間に配置されている凹部165または開口内に係合する。これによって、アーマチュア115は、凹部において、第1の位置147から第2の位置149に移動する際に、コイル140を通る電流のオンの後に滑動することができ、同時に、ハウジング170内の、もしくはカバーシェル130に対する、固定の位置に保持される。好都合には、凹部は台形に形成されており、これによって、凹部165の面にわたった隆起部の滑動時に引き起こされる摩擦ができるだけ小さくなる。凹部165は、たとえばプラスチック材料から製造されていてよく、これによって極めて容易かつ廉価に製造可能であり得る。
【0041】
ばね120は、この例では、板ばねとして形成されており、軸受区間において、アーマチュア115の、コイル140とは反対側の面に配置されている。この場合、ばね120は、たとえばアーマチュア115内に圧入された1つまたは複数の軸受ボールを、コイル要素110のハウジング170内の(たとえば台形の)対向シェルもしくは凹部165に遊びなしに圧着するために用いられる。アーマチュア115はばね120によって固定可能であり、したがって、アーマチュア115はばね120によって所定の位置に保持される。このことは、アーマチュア115に一定の予荷重を加えることができ、ばね120によってアーマチュア115に加えられる力が、回転軸線に位置する力作用点のできるだけ近くでアーマチュア115に導入され得るという利点を提供する。
【0042】
代替的に、アーマチュア115がコイル要素110に懸架されていてもよい。このケースでは、たとえば板ばねとして形成されているばね120が省かれてよい。
【0043】
図1Bは、傾動アーマチュア弁100の横断面図を示しており、アーマチュア115は、第2の位置149にある。このケースでは、コイル140を通る電流がオンされ、アーマチュア115が引き付けられ、これによって、磁力線180によって表される磁場が形成される。コイル140を通る電流のオフ時には、たとえば重力または図示の戻しばねのばね力によって、アーマチュア115が第1の位置147に戻り得る。
【0044】
図2は、本発明の電磁式の装置の1つの実施形態の概略的な横断面図を示しており、この実施形態は、たとえば図1の傾動アーマチュア弁において使用可能である。図1図2および図3において、同一のコンポーネント、同等の作用を有するコンポーネントまたは類似のコンポーネントには、同一の参照符号が付されている。
【0045】
図1の傾動アーマチュア弁100とは異なり、図2の電磁式の装置105は次のようなコイル要素110を有しており、すなわち好ましくは円筒状のマグネットコア135が環状の取り付け領域600を有し、環状の取り付け領域600が、マグネットコア135の長手方向軸線137に沿った横断面において、歯状の輪郭601を有している、コイル要素110を有している。マグネットコア135は、この実施例では、コイル巻枠128によって取り囲まれており、このコイル巻枠128は、好ましくは回転対称に形成されている。コイル巻枠128は、コイル140の少なくとも1つのコイル巻線141を収容するための収容領域142を有している(図2には明示的に図示されていない)。環状の取り付け領域600は、好ましくは、マグネットコア135と一体に成形されているが、基本的には、別体に成形され、取り付けられていてもよい。
【0046】
収容領域142は、横断面で見て、マグネットコア135の長手方向軸線137の方向において延在する第1の領域131と、マグネットコア135の長手方向軸線137に対して横方向(好ましくは垂直)に延在し、第1の領域131の第1の端部に配置されている第2の領域132と、同様にマグネットコア135の長手方向軸線137に対して横方向(好ましくは垂直)に延在し、第1の領域131の第2の端部に配置されている第3の領域133とを有する壁129によって形成されている。壁129の第1の領域131、第2の領域132および第3の領域133は一緒に、桶の様式の、または示されているようにU字型の収容領域142を形成する。
【0047】
コイル巻枠128は、マグネットコア収容空間143を有しており、このマグネットコア収容空間143は、収容領域142の壁129の第1の領域131によって形成されている。マグネットコア収容空間143は、マグネットコア135がコイル巻枠128のマグネットコア収容空間143内に圧入され得るように、マグネットコア135に合わせて調整されている。特に、マグネットコア収容空間143は、円筒状の形状を有している。
【0048】
図示されていない実施例では、収容領域142が、壁129の第1の領域131、壁129の第2の領域132およびハウジング170のハウジング底部173によって形成されていてもよく、この場合、ハウジング170(特にマグネットハウジング)は、第1の領域131の第2の端部に配置されている。
【0049】
ハウジング170は、内側領域171を備えたポット状の形状を有しており、これはコイル巻枠128をマグネットコア135と一緒にハウジング170内に圧入することができるように形成されている。この実施例では、ハウジング170が、ハウジング底部173に中心の開口172を有しており、この開口172内には、マグネットコア135が圧入されている。ハウジング170がこの種の開口を有していない場合には、マグネットコア135は、組み込まれた状態において、ハウジング底部173において、または挿入方向においてハウジング底部173の手前で終端していてよい。ハウジング170は、環状の側壁174を有しており、この側壁174は、マグネットコア135の長手方向でハウジング底部173から離れる方向に延在していて、したがって、内側領域171を半径方向で画定している。この場合、内側領域171の内径は、コイル巻枠128の外径よりもやや小さいので、ハウジング170内へのコイル巻枠128の挿入時に、半径方向における押圧(押圧力Fによって図示されている)がコイル巻枠128に、特にコイル巻枠128の壁129の第2の領域132および第3の領域133の半径方向外側の端部に及ぼされる。半径方向の押圧に基づいて、コイル巻枠128のアンダカットが、環状の取り付け領域600の後方において付加的に支援される。換言すれば、コイル巻枠を、固定されるべき面において、過大寸法を備えて形成することができるので、次いで行われるハウジングの組み付け時に、コイル巻枠に半径方向の押圧が及ぼされる。この押圧は、幾何学形状的なアンダカットの形成を支援する。この半径方向の押圧によって、マグネットコア135がコイル巻枠128において確実に取り付けられ、これによって、電磁式の装置105の動作時にコイル巻枠128を加熱した際に、マグネットコア135からコイル巻枠128が離れてしまうことを機械的に回避することができる。好ましくは、ハウジング170は一体形に形成されている。
【0050】
動作時に、電磁式の装置105は、コイル巻線141内の損失熱によって加熱され、その結果、コイル巻枠128が膨張する。コイル巻枠128の膨張によって、コイル巻枠128はハウジング170に支持され、このことは図2において力の矢印Fよって図示されており、マグネットコア135の環状の取り付け領域600に力が伝達される。これは、コイル巻枠128の膨張が、環状のまたは閉じているハウジング170に関連して、コイル巻枠128のアンダカットを、コイル巻枠材料のエラストマーの流動特性によって、力の作用のもとで、環状の取り付け領域600の後方で強め、熱膨張時にマグネットコア135から離れてしまうことを阻止することを意味している。これによって、マグネットコア135はコイル巻枠128において確実に保持されている。しかし、マグネットコア135は、基本的にハウジング170なしでもコイル巻枠において確実に保持される。
【0051】
ハウジング170は、当業者に公知の、たとえば独国特許出願公開第102016105532号明細書に記載されているような磁性材料を有している。
【0052】
マグネットコア135における環状の取り付け領域600は、マグネットコア135の外面に配置されており、したがって、マグネットコア135がコイル巻枠128内へ挿入されている場合に、環状の取り付け領域600がコイル巻枠128に、特に半径方向内側に位置する面に接触する。壁129の第1の領域131は、マグネットコア収容空間143を、長手方向軸線137に対して半径方向で画定している。
【0053】
この実施例では、環状の取り付け領域600は、マグネットコア135がコイル巻枠128において自身の挿入終端位置にある場合に、環状の取り付け領域600が長手方向で見て、壁129の第2の領域132の高さに配置されているように、マグネットコア135に配置されている。この位置では、コイル巻枠128は、第1の領域131における位置よりも剛性であり、これによって、マグネットコア135が、有利にはコイル巻枠128内に取り付けられている。換言すれば、環状の取り付け領域600は、挿入終端位置において環状の取り付け領域600が、長手方向において、好ましくはコイル巻枠128における収容領域142の外側に配置されているように、すなわち、コイル140がコイル巻枠128の周りに巻回され得る領域の外側に配置されているように、マグネットコア135に配置されている。
【0054】
図示されていない実施例では、環状の取り付け領域600は、挿入終端位置において、代替的または付加的に、壁129の第1の領域131に配置されていてよい。これによって、マグネットコア135が同様に、コイル巻枠128において噛み合うことが可能になる。
【0055】
図示されていない別の実施例では、環状の取り付け領域600は、代替的または付加的に、環状の取り付け領域600が挿入終端位置において、壁129の第3の領域133に対向して配置されているように、マグネットコア135に配置されていてよい。この実施例でも、コイル巻枠128におけるマグネットコア135の確実な取り付けが可能になる。
【0056】
マグネットコア135が、複数の環状の取り付け領域600を有していてもよく、これらの取り付け領域600は、マグネットコア135の長手方向において、マグネットコア135に分散している。3つまたはそれ以上の環状の取り付け領域600が存在する場合には、3つまたはそれ以上の環状の取り付け領域が、マグネットコア135の長さに均一に分散していてもよいし、不規則に分散していてもよい。これに関連して、均一とは、第1の環状の取り付け領域と、第2の環状の取り付け領域との間の間隔が、第2の環状の取り付け領域と第3の環状の取り付け領域との間の間隔と正確に同じ大きさであることを意味している。
【0057】
マグネットコア135が複数の環状の取り付け領域600を有している場合には、各歯状の輪郭601のマグネットコア135の長手方向軸線137に対して垂直な方向における取り付け領域600の各延在長さが、複数の取り付け領域600のうちの1つの取り付け領域600から、マグネットコア135の長手方向軸線137に沿って次いで配置されている、複数の取り付け領域600のうちの1つの取り付け領域600へ向かって増大し得る。この場合、相前後して位置する取り付け領域600の、マグネットコア135の長手方向軸線137に対して垂直な方向における延在長さ(隆起部の高さ)が、圧入方向において増大すると有利であり、これによって、実質的に常に同じ量のコイル巻枠材料が押し退けられるはずである。
【0058】
図3は、マグネットコア135の歯状の輪郭601を有する環状の取り付け領域600の概略的な拡大横断面図(区間A)を示している。
【0059】
環状の取り付け領域600の第1の端部602は、図3では上方に配置されている。マグネットコア135がコイル巻枠128内へ挿入されると、まず、環状の取り付け領域600の第1の端部602がコイル巻枠128内に進入する。これに、歯状の輪郭601が続く。この歯状の輪郭601については、以降で例示的に説明する。
【0060】
第1の端部602を起点として、マグネットコア135のコイル巻枠128内への挿入方向で見て、マグネットコア135の直径は、環状の取り付け領域600外側でのマグネットコア135の直径よりも大きな直径を有する、環状の取り付け領域600のクランプ領域(ヘッド領域)606まで均一に拡大する。環状の取り付け領域600の、連続的に増大するこの直径は、環状の取り付け領域600の拡張領域604に位置している。拡張領域604は、換言すれば、クランプ領域606の外径に至るまで均一な勾配を有している。
【0061】
取り付け領域600の外側でのマグネットコア135の直径の延長部と拡張領域604の勾配とによって形成されている角度αは、約1~90度の、好ましくは10~35度の値を有し得る。拡張領域604のこのような構成によって、マグネットコア135は、コイル巻枠128に対して、圧入中に、コイル巻枠材料134が歯状の輪郭601の周りで流れ、歯状の輪郭601の後方でアンダカットが形成されることを可能にする。このとき、内径が持続的に拡張されたり、しかも機械加工によって拡大されることはない。さらに、このような角度αによって、マグネットコア135をコイル巻枠128内に圧入するための組み付け力を低減させ、コイル巻枠材料の機械的な削り取りを回避することが可能になる。
【0062】
環状の取り付け領域600のクランプ領域606の外径は、マグネットコア135の予め規定された長手方向区間の間、ほぼ一定に保たれ(面取りされたヘッド領域)、このことは有利には、圧入時の流れプロセスを促進する。すなわち、クランプ領域606の外径は、自身の長さにわたって変化しない。これに、マグネットコア135の挿入方向においてくぼみ608が続く。このくぼみ608は、狭窄部と称されることもある。くぼみ608は、取り付け領域600の外側でのマグネットコア135の直径よりも小さい直径を有しており、ひいてはクランプ領域606よりも小さい直径を有している。クランプ領域606からくぼみ608への移行部607は、半径方向の面に配置されている。このことは、移行部607が、好ましくはクランプ領域606から直角βでくぼみ608へと通じており、したがって、歯状の輪郭601が形成されることを意味する。換言すれば、歯状の輪郭601は、マグネットコア135の長手方向軸線137に対して横方向に(好ましくは垂直に)延在する面で、環状の取り付け領域600の外側でのマグネットコア135の外面に対して最大で90°の角度(β)を有している。換言すれば、歯の背面は鋭角的に最大で90°の角度をもって構成され、これによってアンダカットが形成可能であり、負荷が加えられた状態において、組み付け方向とは逆向きに食い込みが生じる。
【0063】
図示されていない実施例では、角度βがクランプ領域606と移行部607との間の鋭角として形成されているように、すなわち、角度βが90°未満の値を有するように移行部607が形成されていてよい。
【0064】
くぼみ608には、環状の取り付け領域600の第2の端部610が続いており、この第2の端部610は、取り付け領域600の外側でのマグネットコア135の直径を有している。くぼみ608と取り付け領域600の第2の端部610との間の移行部609は、たとえば僅かに傾斜して形成されていて、急な傾斜面を形成している。換言すれば、くぼみ608と第2の端部610との間の直径は、挿入方向におけるマグネットコア135の短い長さにおいて変化する。
【0065】
図示されてない実施例では、移行部609が、マグネットコア135の長手方向軸線に対して垂直に形成されていてもよい。このことは、マグネットコア135が跳躍的に、すなわち傾斜面状の移行部を伴わずに、くぼみ608の直径からマグネットコア135の直径へと拡大することを意味している。
【0066】
すなわち、本発明の電磁式の装置は、マグネットコア135において、環状の取り付け領域600を設けており、この環状の取り付け領域600は、コイル巻枠材料が歯状の輪郭の周りで流れ、これによってアンダカットが形成されるように構成されており、このとき、単にコイル巻枠の内径だけが拡張されたり、しかも機械加工によって拡大されることはない。さらに、これによって、コイル巻枠の熱膨張時に、結合が支持され、確実に位置に保持される。本発明は、迅速な組み付けも可能にする。マグネットコアが、超音波溶接設備を介した超音波溶接プロセスを介して超音波溶接されてもよい。
【符号の説明】
【0067】
100 傾動アーマチュア弁
105 電磁式の装置
110 コイル要素
115 アーマチュアボディ
120 ばね
125 シール要素
128 コイル巻枠
129 壁
130 カバーシェル
131 第1の領域
132 第2の領域
133 第3の領域
134 コイル巻枠材料
135 マグネットコア
137 長手方向軸線
140 コイル
141 コイル巻線
142 収容領域
143 マグネットコア収容空間
145 軸受
147 第1の位置
149 第2の位置
150 弁座
155 出口
157 入口
158 流体
160 隆起部
162 軸受区間
165 凹部
170 ハウジング
171 内側領域
172 開口
173 ハウジング底部
174 側壁
180 力線
600 環状の取り付け領域
601 歯状の輪郭
602 第1の端部
604 拡張領域
606 クランプ領域
607 移行部
608 くぼみ
609 移行部
610 第2の端部
α 角度
β 角度
図1A
図1B
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-10-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁式の装置(105)であって、
前記電磁式の装置(105)は、
長手方向軸線(137)を伴うマグネットコア(135)と、
コイル(140)の少なくとも1つのコイル巻線(141)を収容するための少なくとも1つの収容領域(142)を有する、前記マグネットコア(135)の周囲に配置されているコイル巻枠(128)と
を有しており、
前記収容領域(142)は、コイル巻枠材料(134)の少なくとも1つの壁(129)によって形成されており、前記壁(129)は、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)の方向に延在する第1の領域(131)と、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に対して横方向に延在する少なくとも1つの第2の領域(132)とを有しており、
前記マグネットコア(135)は、環状の取り付け領域(600)を有しており、前記環状の取り付け領域(600)は、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に沿った横断面で見て、歯状の輪郭(601)を有していて、前記マグネットコア(135)が前記環状の取り付け領域(600)によって前記コイル巻枠(128)に保持されるように、前記コイル巻枠材料(134)を押し退けることによって前記コイル巻枠(128)の前記コイル巻枠材料(134)に噛み合わされている、
電磁式の装置(105)。
【請求項2】
前記環状の取り付け領域(600)は、前記コイル巻枠材料(134)が前記歯状の輪郭の周りで流れ、アンダカットを形成するように形成されている、請求項1記載の電磁式の装置(105)。
【請求項3】
前記環状の取り付け領域(600)は、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に沿った横断面において、鋸歯状の輪郭を有している、請求項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項4】
前記環状の取り付け領域(600)は、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に対して垂直な方向において前記収容領域(142)が存在しない、特に、前記壁(129)の前記第2の領域(132)が存在する、前記マグネットコア(135)の長手位置に配置されている、請求項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項5】
ハウジング(170)、特にマグネットハウジングをさらに有しており、前記ハウジング(170)は、前記コイル巻枠(128)の周囲に周方向に配置されていて、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に対して横方向に作用する押圧力(F)を、前記収容領域(124)の前記壁(129)の前記第2の領域(132)に及ぼす、請求項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項6】
前記マグネットコア(135)は、前記長手方向軸線(137)に沿って、複数の環状の取り付け領域(600)を有しており、前記複数の環状の取り付け領域(600)は、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に沿った横断面において、それぞれ歯状の輪郭(601)を有している、請求項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項7】
各前記歯状の輪郭(601)の前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に対して垂直な方向における各延在長さが、前記複数の取り付け領域(600)のうちの1つの取り付け領域(600)から、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に沿って次いで配置されている、前記複数の取り付け領域(600)のうちの1つの取り付け領域(600)へ向かって増大する、請求項6記載の電磁式の装置(105)。
【請求項8】
前記環状の取り付け領域(600)は、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に沿った横断面において、平坦に形成されたヘッド領域を有する輪郭を有している、請求項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項9】
前記環状の取り付け領域(600)は、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に沿った横断面において、前記マグネットコア(135)におけるくぼみ(608)を備えた輪郭を有しており、前記くぼみ(608)は、前記取り付け領域(600)の外側での前記マグネットコア(135)よりも小さい外径を有している、請求項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項10】
前記歯状の輪郭(601)は、前記マグネットコア(135)の前記長手方向軸線(137)に対して横方向に延在する面において、前記取り付け領域(600)の外側での前記マグネットコア(135)の外面に対して最大で90°の角度を有している、請求項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項11】
前記コイル巻枠材料(134)は、プラスチック材料を有している、または前記マグネットコア(135)が超音波溶接結合を介して前記コイル巻枠(128)へ超音波溶接されている、請求項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項12】
電磁式のアクチュエータ(100)として形成されている、請求項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項13】
前記コイル(140)および前記マグネットコア(135)を通る電流によって発生させられた磁場(180)によって移動可能である移動可能なアクチュエータ要素として、移動可能な磁性のアーマチュアボディ(115)を有している、請求項12記載の電磁式の装置(105)。
【請求項14】
前記電磁式の装置は、前記コイル(140)および前記マグネットコア(135)を通る電流によって発生させられた磁場(180)によって移動可能である切換要素もしくは弁要素である移動可能な磁性のアーマチュアボディ(115)を備えた電磁式の切換装置または弁装置(100)として形成されている、請求項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項15】
前記電磁式の装置は、電気機械式のリレーまたは電磁弁(100)として形成されている、請求項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項16】
前記電磁式の装置は、車両の圧力調整モジュールのための電磁弁(100)として形成されている、請求項記載の電磁式の装置(105)。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか1項記載の電磁式の装置(105)を製造する方法であって、
マグネットコア(135)およびコイル巻枠(128)を提供するステップと、
前記マグネットコア(135)の環状の取り付け領域(600)が前記コイル巻枠内に配置されるまで、前記コイル巻枠(128)内へ前記マグネットコア(135)を挿入する、または前記マグネットコア(135)へ前記コイル巻枠(128)を被せ嵌めるステップと
を有している、電磁式の装置(105)を製造する方法。
【請求項18】
前記コイル巻枠(128)は、前記マグネットコア(135)が挿入可能であるマグネットコア収容空間(143)を有している、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記マグネットコア(135)の長手方向軸線(137)と、前記マグネットコア収容空間(143)の長手方向軸線とが互いに整合するように、前記コイル巻枠(128)内で前記マグネットコア収容空間に対して前記マグネットコア(135)を位置合わせステップをさらに有している、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記マグネットコア(135)を超音波溶接結合を介して前記コイル巻枠(128)へ超音波溶接する、請求項17記載の方法。
【国際調査報告】