(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】二次電池用負極活物質及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20241121BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536013
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 KR2022020067
(87)【国際公開番号】W WO2023121088
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0185219
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513280854
【氏名又は名称】オーシーアイ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OCI Company Ltd.
【住所又は居所原語表記】94,Sogong-ro,Jung-gu,Seoul,100-718(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】オ,ミンギョン
(72)【発明者】
【氏名】ノ,ミンホ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジュンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チ,ウンオク
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA16
5H050CA01
5H050CB08
5H050CB11
5H050EA08
5H050EA23
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA14
5H050HA15
(57)【要約】
本発明の二次電池用負極活物質の製造方法によれば、i)ナノシリコン及び非晶質炭素を含む複合材にピッチコーティング膜が形成された構造;または、ii)グラファイトコア及び前記コアを囲むナノシリコン-ピッチシェルの構造;を有する二次電池用負極活物質を製造することにおいて、2種類の溶媒を用いてピッチコーティング膜を形成することにより、ピッチコーティング膜の均一性及び緻密性を向上させることができる。
また、本発明の二次電池用負極活物質を含む二次電池用負極材は、二次電池の初期放電容量、初期効率および寿命特性を向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ナノシリコン、炭素系導電材および樹脂マトリックスを混合して、混合粉末を製造する段階;
(b)第1溶媒に高軟化点ピッチを溶解させて、ピッチ溶液を製造する段階;
(c)前記ピッチ溶液に前記混合粉末を投入した後、攪拌して、ナノシリコン、炭素系導電材およびピッチを含む分散溶液を製造する段階;
(d)前記分散溶液に第2溶媒を添加して、ナノシリコン及び炭素系導電材を含む複合材上にピッチを析出させ、ピッチコーティング膜を形成する段階;
(e)前記第1溶媒及び第2溶媒を除去して、乾燥粉末を得る段階;及び
(f)前記乾燥粉末を炭化させて、ナノシリコン及び非晶質炭素を含む複合材にピッチコーティング膜が形成された負極活物質を得る段階;を含み、
前記第1溶媒は、高軟化点ピッチに対して溶解性であり、
前記第2溶媒は、高軟化点ピッチに対して不溶性であり、
前記第1溶媒及び前記第2溶媒は、互いに混和性である、
二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項2】
(a’)第1溶媒に高軟化点ピッチを溶解させて、ピッチ溶液を製造した後、グラファイトを投入して、グラファイト-ピッチ溶液を製造する段階;
(b’)上記(a’)とは別途、第2溶媒にナノシリコンを投入して分散させ、ナノシリコン分散溶液を製造する段階;
(c’)前記グラファイト-ピッチ溶液に前記ナノシリコン分散溶液を投入して、グラファイト、ピッチおよびナノシリコンの混合溶液を製造する段階;
(d’)前記グラファイト、ピッチおよびナノシリコンの混合溶液に前記第2溶媒をさらに添加して、前記グラファイト上にナノシリコン及びピッチの混合物を析出し、ナノシリコン及びピッチを含むコーティング膜を形成する段階;
(e’)前記第1溶媒及び第2溶媒を除去して、乾燥粉末を得る段階;
(f’)前記乾燥粉末を乾式粉砕する段階;及び
(g’)前記粉砕した乾燥粉末を炭化させて、グラファイトコア及び前記コアを囲むナノシリコン-ピッチシェルの構造を有する、二次電池用負極活物質を得る段階;を含み、
前記第1溶媒は、高軟化点ピッチに対して溶解性であり、
前記第2溶媒は、高軟化点ピッチに対して不溶性であり、
前記第1溶媒及び前記第2溶媒は、互いに混和性である、
二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項3】
上記(a)段階の前記混合粉末100重量部を基準に、前記ナノシリコンは、40~99重量部で含む、
請求項1に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項4】
上記(a)段階の前記炭素系導電材は、カーボンブラックを含む、
請求項1に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項5】
上記(a)段階の前記樹脂マトリックスは、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリエステル、ポリウレタン、メラミン樹脂、アミノ樹脂、及びデキストリン樹脂のうち1種以上を含む、
請求項1に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項6】
前記高軟化点ピッチは、軟化点(softening point)が200~300℃である、
請求項1又は2に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項7】
上記(e)段階又は上記(e’)段階は、
0.5~1barの圧力及び25~40℃の温度の条件下で行う1次気化段階;及び
0.5~1barの圧力及び第1溶媒及び第2溶媒の沸点よりも高い温度の条件下で行う2次気化段階;を含む、
請求項1又は2に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記第1溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、キノリン、トルエン、ピリジン、N-メチルピロリドン(NMP)、キシレン、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、及びn-ヘキサン(n-hexane)からなる群から選択される1種以上を含む、
請求項1又は2に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記第2溶媒は、エタノール(ethanol)、メタノール(methanol)、アセトン(acetone)、及び水(water)からなる群から選択される1種以上である、
請求項1又は2に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記第1溶媒は、テトラヒドロフランを含み、前記第2溶媒は、エタノールを含む、
請求項1又は2に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記炭化は、1000~1100℃の温度で行う、
請求項1又は2に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項12】
上記(f’)段階は、メカノフュージョンミキサーで行うことを特徴とする、
請求項2に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の製造方法に従って製造された二次電池用負極活物質を含む、
二次電池用負極材。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の製造方法に従って製造された二次電池用負極活物質を含む、
二次電池用負極材を含む二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の初期放電容量(IDC)、初期効率(ICE)および寿命特性を向上させることができる二次電池用負極活物質及びこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル機器、電気自動車など、電池を使用する電子デバイスの急速な普及に伴い、小型かつ軽量でありながらも相対的に高容量である二次電池に対する需要が増大しており、このような流れは、さらに加速化しつつある。
【0003】
二次電池用負極材として広く使用される代表的な材料であるグラファイト(graphite)は、優れた電気化学的性能(初期容量)、安値である長所があるものの、充放電サイクルが繰り返えしつつ、充放電効率及び電荷容量が急激に低下して、高容量を求める電子デバイスの要求を満たしにくいという限界点がある。
【0004】
一方、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)などの無機材料は、理論容量が高く、特に、シリコンの場合、リチウムイオンとの電位差が低いという長所があるものの、充放電サイクルで発生する体積膨張により、二次電池の構造の損傷及び短い寿命の限界点がある。
【0005】
上記限界点を克服するために近年、炭素素材及びシリコンを含む複合素材を負極材の活物質として使用しているが、シリコンを安定的に結合させることは困難である。
【0006】
このため、導電材と混合したナノシリコン(Nano Si)粒子上に、炭素素材としてピッチ(pitch)をコーティングするか、グラファイトの表面に、ナノシリコンとピッチとを混合してコーティングする方法などが開発されてきている。
【0007】
一方、ピッチコーティング膜またはピッチとナノシリコンを含むコーティング膜を形成するために使用され得る、従来の代表的なコーティング法では、溶媒を用いる乾式法及び単一溶媒を用いる湿式法によって行われている。
【0008】
先ず、乾式法は、ピッチをサブミクロン以下に粉砕した後、物理的な摩擦で発生するエネルギーを利用して、ラビング(rubbing)方式でコーティングする方法である。しかし、ピッチの特性上、サブミクロンのサイズに粉砕しにくくて、物理的な摩擦を与える過程で、シリコンの構造が破損しやすい。また、ピッチは、自ら固まりやすい物性を有しているため、コーティングされないまま、固まったピッチ粒子がコーティング膜に残っており、コーティング性及び製造された負極材の品質が低下する問題点もある。
【0009】
次に、湿式法は、溶媒にピッチを溶解させた後、コーティングの対象となる材料と混合した後、真空加熱条件で溶媒を気化させる凝縮過程によって、ピッチコーティング膜を形成する方法である。しかし、湿式法は、凝縮過程で溶媒の量が足りないと、コーティングの均一性が落ちて、製造された負極材の品質を低下させ得、より緻密なコーティングを得ることができないという限界点がある。
【0010】
よって、上記問題点を解決して、二次電池の初期放電容量、初期効率および寿命特性を向上させることができる高品質の二次電池用負極活物質の製造方法を開発することが必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためのものであって、二次電池用負極活物質がピッチを含むコーティング膜を有する複合素材である場合、ピッチコーティング膜を形成するとき、2種類の溶媒を用いることにより、ピッチコーティング膜の均一性及び緻密性を向上させることができる二次電池用負極活物質の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、二次電池の初期放電容量、初期効率および寿命特性を向上させることができるように、前記二次電池用負極活物質を含む負極材、及びこれを含む二次電池を提供することである。
【0013】
本発明の目的は、以上で言及した目的に限らず、言及していない本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解することができ、本発明の実施例によってより明らかに理解することができる。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示した手段及びその組み合わせによって実現できることが分かりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため本発明の一態様によれば、
(a)ナノシリコン、炭素系導電材および樹脂マトリックスを混合して、混合粉末を製造する段階;
(b)第1溶媒に高軟化点ピッチを溶解させて、ピッチ溶液を製造する段階;
(c)前記ピッチ溶液に前記混合粉末を投入した後、攪拌して、ナノシリコン、炭素系導電材およびピッチを含む分散溶液を製造する段階;
(d)前記分散溶液に第2溶媒を添加して、ナノシリコン及び炭素系導電材を含む複合材上にピッチを析出させて、ピッチコーティング膜を形成する段階;
(e)前記第1溶媒及び第2溶媒を除去して、乾燥粉末を得る段階;及び
(f)前記乾燥粉末を炭化させて、ナノシリコン及び非晶質炭素を含む複合材にピッチコーティング膜が形成された負極活物質を得る段階;を含み、前記第1溶媒は、高軟化点ピッチに対して溶解性であり、前記第2溶媒は、高軟化点ピッチに対して不溶性であり、前記第1溶媒及び前記第2溶媒は、互いに混和性である、二次電池用負極活物質の製造方法を提供することができる。
【0015】
本発明の他の一態様によれば、
(a’)第1溶媒に高軟化点ピッチを溶解させて、ピッチ溶液を製造した後、グラファイトを投入して、グラファイト-ピッチ溶液を製造する段階;
(b’)上記(a’)とは別途、第2溶媒にナノシリコンを投入して分散させ、ナノシリコン分散溶液を製造する段階;
(c’)前記グラファイト-ピッチ溶液に前記ナノシリコン分散溶液を投入して、グラファイト、ピッチおよびナノシリコンの混合溶液を製造する段階;
(d’)前記グラファイト、ピッチおよびナノシリコンの混合溶液に前記第2溶媒をさらに添加して、前記グラファイト上にナノシリコン及びピッチの混合物を析出し、ナノシリコン及びピッチを含むコーティング膜を形成する段階;
(e’)前記第1溶媒及び第2溶媒を除去して、乾燥粉末を得る段階;
(f’)前記乾燥粉末を乾式粉砕する段階;及び
(g’)前記粉砕した乾燥粉末を炭化させて、グラファイトコア及び前記コアを囲むナノシリコン-ピッチシェル(shell)の構造を有する、二次電池用負極活物質のグラファイト-シリコン-ピッチ複合材を得る段階;を含み、前記第1溶媒は、高軟化点ピッチに対して溶解性であり、前記第2溶媒は、高軟化点ピッチに対して不溶性であり、前記第1溶媒及び前記第2溶媒は、互いに混和性である、二次電池用負極活物質の製造方法を提供することができる。
【0016】
本発明のさらに他の一態様によれば、前記二次電池用負極活物質の製造方法に従って製造された二次電池用負極活物質を含む二次電池用負極材、及びこれを含む二次電池を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の二次電池用負極活物質の製造方法によれば、2種類の溶媒を用いてピッチコーティング膜を形成することにより、ピッチコーティング膜の均一性及び緻密性が向上する効果がある。
【0018】
より具体的には、本発明の二次電池用負極活物質の製造方法によれば、
i)ナノシリコン及び非晶質炭素を含む複合材にピッチコーティング膜が形成された構造;または
ii)グラファイトコア及び前記コアを囲むナノシリコン-ピッチシェルの構造;
を有する二次電池用負極活物質を製造することにおいて、2種類の溶媒を使用することにより、ピッチコーティング膜のコーティング均一性及び緻密性が向上し得る。
【0019】
本発明の二次電池用負極活物質を含む二次電池用負極材は、二次電池の初期放電容量、初期効率および寿命特性を向上させることができる効果がある。
【0020】
上述した効果並びに本発明の具体的な効果は、以下の発明を実施するための形態を説明すると共に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施例1で製造された負極活物質であるナノシリコン-非晶質炭素-ピッチの複合構造体の写真であって、具体的には、複合構造体の5,000倍率に拡大した表面のSEMイメージである。
【
図2】本発明の実施例1で製造された負極活物質であるナノシリコン-非晶質炭素-ピッチの複合構造体の写真であって、具体的には、複合構造体の50,000倍率に拡大した断面のSEMイメージである。
【
図3】本発明の実施例1で製造された負極活物質であるナノシリコン-非晶質炭素-ピッチの複合構造体の写真であって、具体的には、複合構造体の50,000倍率に拡大した断面のSEMイメージである。
【
図4】本発明の実施例2で製造された負極活物質であるグラファイト-ナノシリコン-ピッチの複合構造体の断面写真であって、具体的には、scale bar20μmの断面のSEMイメージである。
【
図5】本発明の実施例2で製造された負極活物質であるグラファイト-ナノシリコン-ピッチの複合構造体の断面写真であって、具体的には、scale bar20μmのEDS mappingイメージである。
【
図6】本発明の実施例2で製造された負極活物質であるグラファイト-ナノシリコン-ピッチの複合構造体の断面写真であって、具体的には、scale bar5μmの断面のSEMイメージである。
【
図7】本発明の実施例2で製造された負極活物質であるグラファイト-ナノシリコン-ピッチの複合構造体の断面写真であって、具体的には、scale bar5μmのEDS mappingイメージである。
【
図8】本発明の比較例1で製造された負極活物質であるグラファイト-ナノシリコン-ピッチの複合構造体の断面写真であって、具体的には、scale bar50μmの断面のSEMイメージである。
【
図9】本発明の比較例1で製造された負極活物質であるグラファイト-ナノシリコン-ピッチの複合構造体の断面写真であって、具体的には、scale bar50μmのEDS mappingイメージである。
【
図10】本発明の実施例1、2及び比較例1の負極活物質で製造されたハーフセルに対する電池寿命の評価結果において、50回サイクルの充放電結果をフローティングしたグラフを示した図であって、横軸は、サイクル回数、縦軸は、放電容量(Discharge Capacity、単位:mah/g)を意味する。
【0022】
本明細書の図面の黒白写真における特定の対象を指称するために使った点線円または実線円は、特定の対象の一部を例示的に指称しただけであり、点線円または実線円で表した部分に限定して解釈されてはならない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
前述した目的、特徴及び長所は、添付の図面を参照して詳細に説明され、これによって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術思想を容易に実施することができる。本発明の説明にあたり、本発明に係る公知の技術に関する具体的な説明が、本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合には、詳細な説明を省略する。後述する用語は、本発明における機能及び作用を考慮して記載した用語であって、各用語の意味は、本明細書の全般にわたる内容に基づいて解釈すべきである。
【0024】
本明細書の説明にあたり、関連する公知の技術に関する具体的な説明が本明細書の要旨を曖昧にすると判断される場合、その詳細な説明は、省略する。
【0025】
本明細書における「ピッチコーティング膜」という記載は、特に制限がない限り、ピッチのみからなる物質のコーティング膜と、ピッチと他の成分(例えば、ナノシリコン)を含む物質のコーティング膜をいずれも指すものと解釈することができる。
【0026】
本明細書における構成要素を「含む」、「有する」、「なる」、「配置する」などが使われる場合、「~のみ」が使われない以上、他の部分を加えることができる。構成要素を単数で表現した場合、特に明示的な記載事項がない限り、複数を含む場合を含む。
【0027】
本明細書における構成要素を解釈するにあたって、別途明示的記載がなくても、誤差範囲を含むと解釈する。
【0028】
以下では、本発明の二次電池用負極活物質の製造方法について詳説する。
【0029】
本発明の二次電池用負極活物質の製造方法に従って製造される負極活物質は、
i)非晶質カーボン-シリコン複合材上にピッチコーティング膜を形成した構造を有する、「ナノシリコン-非晶質炭素-ピッチの複合構造体」;または
ii)グラファイトコア及び前記コアを囲むナノシリコン-ピッチシェルの構造を有する、「グラファイト-ナノシリコン-ピッチの複合構造体」;の構造を有していてもよい。
【0030】
よって、本発明で最終的に製造される二次電池用負極活物質である複合構造体は、(1)ピッチコーティング膜を有する点、及び(2)ピッチコーティング膜の緻密性及びコーティング性を高めるために、2種類の溶媒を使用する点で、技術的共通性を有していてもよい。
【0031】
従来技術である湿式法では、1種類の溶媒を用いてピッチを溶解して析出させるため、均一なコーティング膜を得ることができなかった。このため、本発明者らは、鋭意研究した結果、先ず、ピッチに対して溶解性を示す溶媒(第1溶媒)にピッチを溶解させた後、非晶質カーボン-シリコン複合材にピッチコーティング膜を形成するか、あるいはグラファイトコア上にシリコン-ピッチシェルを形成するために、ピッチに対して不溶性である溶媒(第2溶媒)を添加して、ピッチを析出すると、上記i)の構造またはii)の構造のピッチコーティング膜の均一性及び緻密性が顕著に向上することを見出して、本発明を完成した。
【0032】
本発明の一態様の二次電池用負極活物質の製造方法によれば、i)非晶質カーボン-シリコンの複合材上にピッチコーティング膜を形成した構造を有する、「ナノシリコン-非晶質炭素-ピッチの複合構造体」である二次電池用負極活物質を製造することができる。
【0033】
上記製造方法は、
(a)ナノシリコン、炭素系導電材および樹脂マトリックスを混合して、混合粉末を製造する段階;
(b)第1溶媒に高軟化点ピッチを溶解させて、ピッチ溶液を製造する段階;
(c)前記ピッチ溶液に前記混合粉末を投入した後、攪拌して、ナノシリコン、炭素系導電材およびピッチを含む分散溶液を製造する段階;
(d)前記分散溶液に第2溶媒を添加して、ナノシリコン及び炭素系導電材を含む複合材上にピッチを析出させ、ピッチコーティング膜を形成する段階;
(e)前記第1溶媒及び第2溶媒を除去して、乾燥粉末を得る段階;及び
(f)前記乾燥粉末を炭化させて、ナノシリコン及び非晶質炭素を含む複合材にピッチコーティング膜が形成された負極活物質を得る段階;を含んでいてもよい。
【0034】
(a)段階のナノシリコンは、ナノシリコン粒子の形態として、本技術分野で使われる一般的なものを使用することができ、例えば、(平均)直径が20~400nmの範囲内であるものが好ましいものの、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0035】
(a)段階の炭素系導電材は、ナノシリコン粒子と一緒に混合されるものであって、負極活物質に導電性を付与するために含まれ得、化学変化を引き起こさないで電気伝導性を有するものとして、例えば、炭素系物質であるのが好ましく、カーボンブラックを含むのがさらに好ましい。
【0036】
前記炭素系導電材は、(f)段階である炭化過程を経ると、非晶質炭素の形態に変化して、最終的には、非晶質炭素-シリコン複合材を形成するようになる。
【0037】
(a)段階の樹脂マトリックスは、炭素系導電材及びナノシリコン粒子を互いに良く結合させるための目的で含むものであって、有機系または水系樹脂マトリックスを使用することができる。例えば、前記樹脂マトリックスは、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリエステル、ポリウレタン、メラミン樹脂、アミノ樹脂、デキストリン樹脂などを含んでいてもよく、例えば、フェノール樹脂を含んでいてもよい。
【0038】
前記樹脂マトリックスも、炭素系導電材と共に(f)段階である炭化過程で除去されて、最終の負極活物質では、樹脂マトリックスは、ほとんどまたは全く残っていなくなる。
【0039】
(a)段階の前記混合粉末100重量部を基準に、前記ナノシリコンは、40~99重量部で含むのが好ましく、60~95重量部で含むのがさらに好ましく、70~90重量部で含むのが最も好ましいものの、これに限定されるものではなく、最終に製造される負極活物質の特性によって含量を適宜調節することができる。
【0040】
一方、本発明の他の一態様の二次電池用負極活物質の製造方法によれば、ii)非晶質カーボン-シリコンの複合材上にピッチコーティング膜を形成した構造を有する、「ナノシリコン-非晶質炭素-ピッチの複合構造体」である二次電池用負極活物質を製造することができる。
【0041】
上記製造方法は、
(a’)第1溶媒に高軟化点ピッチを溶解させて、ピッチ溶液を製造した後、グラファイトを投入して、グラファイト-ピッチ溶液を製造する段階;
(b’)上記(a’)段階とは別途、第2溶媒にナノシリコンを投入して分散させ、ナノシリコン分散溶液を製造する段階;
(c’)前記グラファイト-ピッチ溶液に前記ナノシリコン分散溶液を投入して、グラファイト、ピッチおよびナノシリコンの混合溶液を製造する段階;
(d’)前記グラファイト、ピッチおよびナノシリコンの混合溶液に前記第2溶媒をさらに添加して、前記グラファイト上にナノシリコン及びピッチの混合物を析出し、ナノシリコン及びピッチを含むコーティング膜を形成する段階;
(e’)前記第1溶媒及び第2溶媒を除去して、乾燥粉末を得る段階;
(f’)前記乾燥粉末を乾式粉砕する段階;及び
(g’)前記粉砕した乾燥粉末を炭化させて、グラファイトコア及び前記コアを囲むナノシリコン-ピッチシェルの構造を有する、二次電池用負極活物質を得る段階;を含んでいてもよい。
【0042】
前記第1溶媒は、高軟化点ピッチに対して溶解性であるものを選択することができる。例えば、前記第1溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、キノリン、トルエン、ピリジン、N-メチルピロリドン(NMP)、キシレン、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、及びn-ヘキサン(n-hexane)からなる群から選択される1種以上を含んでいてもよく、テトラヒドロフラン(THF)を含むのが好ましいものの、これに限定されるものではない。
【0043】
また、前記第2溶媒は、高軟化点ピッチに対して不溶性であるものを選択することができる。例えば、前記第2溶媒は、エタノール(ethanol)、メタノール(ethanol)、アセトン(acetone)、及び水(water)からなる群から選択される1種以上を選択することができ、エタノール(ethanol)を含むのが好ましいものの、これに限定されるものではない。
【0044】
また、本発明のグラファイト-シリコン-ピッチ複合材の製造方法では、第1溶媒に溶解されていた高軟化点ピッチを、第2溶媒を用いて析出させるものであるため、前記第1溶媒及び第2溶媒は、互いに混和性であるのが好ましい。
【0045】
本発明の(a)~(d)段階または(a’)~(d’)段階まで行うと、グラファイト-シリコン複合材上にピッチを析出して、ピッチコーティング膜を形成するか、グラファイト上にシリコン及びピッチの混合物を析出して、コーティング膜を形成する。その後は、(a)~(d)段階または(a’)~(d’)段階で使用した前記第1溶媒及び第2溶媒は、除去することにより、グラファイト-シリコン-ピッチ複合材の最終修得物を得るために、乾燥した状態の粉末を得る(e)段階または(e’)段階を行うことができる。(e)段階または(e’)段階では、第1溶媒及び第2溶媒を気化させて、除去することができる。
【0046】
本発明の(e)段階または(e’)段階は、0.5~1barの圧力及び25~40℃の温度の条件下で行う1次気化段階;及び0.5~1barの圧力および第1溶媒及び第2溶媒の沸点よりも高い温度の条件下で行う2次気化段階;を含んでいてもよいものの、必ずしも前記圧力及び温度の運転条件に限定されるものではない。
【0047】
例えば、第1溶媒としてTHF、第2溶媒としてエタノールを使用する場合、約60℃の温度で溶媒を蒸発させて、除去することができる。
【0048】
例えば、一般的な溶媒の沸点を考慮するとき、2次気化段階の好ましい温度範囲は、40~70℃であってもよいものの、これに限定されるものではない。
【0049】
上記1次気化段階及び2次気化段階を行う時間は、最終に製造しようとする負極活物質の量によって適宜調節することができる。
【0050】
前記第1溶媒及び第2溶媒を気化させるように、沸点よりも高い温度で、一度に乾燥させることができるものの、前記第1溶媒及び第2溶媒にナノシリコン及び高軟化点ピッチなどが混合しているため、溶媒のみを除去するために、室温または室温よりも多少高い温度で1次気化する段階と、溶媒の沸点よりも高い温度で2次気化する段階とに順次行って、溶媒の除去選択性を向上させることができる。
【0051】
本発明における二次電池用負極材のコーティング材料として使用するピッチは、高軟化点ピッチであって、例えば、本発明のピッチの軟化点は、100℃以上であるのが好ましく、200℃以上であるのがより好ましく、200~300℃であるのが最も好ましい。高軟化点ピッチは、高い沸点を有する成分が含有されており、結晶性に優れ、安定性が高いため、二次電池の負極材に適用するとき、二次電池の充放電効率の向上、充電密度の向上と共に、電池の寿命を増加させる利点がある。また、本発明における高軟化点ピッチは、コーティング膜を形成するためのものであるため、ピッチのキノリン不溶分(Quinoline Insoluble,QI)は、低く、炭化収率に連関するコークス値(Coking Value,CV)は、高いものを選択するのが好ましく、具体的なQI及びCV値の程度は、ピッチ溶液を製造するため溶媒の選択によって異なり得る。例えば、以下で後述するように、ピッチ溶液を製造するため第1溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を使用する場合、QIは、0.2%以下であり、CVは、58%以上であるのが好ましいものの、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0052】
上述した「i)構造”を有する非晶質炭素-ナノシリコン-ピッチの複合構造体の負極活物質の製造方法では、上記(e)段階の後、(f)前記乾燥粉末を炭化(carbonization)する段階を行うことができる。
【0053】
非晶質炭素-ナノシリコン複合材は、気孔を有するマイクロサイズの球状粒子であって、ピッチコーティングしても、気孔の間にピッチが一部入りながらコーティングされるたけでなく、炭化工程でも、ピッチが溶ける区間で、気孔の間にさらに投入されることから、コーティング後、粒子の表面をさらに加工する必要がないため、直ちに炭化する工程を採用する。
【0054】
例えば、前記炭化は、不活性気体雰囲気(例:窒素雰囲気)下で、1000~1100℃の温度まで昇温した後、約1時間位維持して行うことができ、このとき、昇温速度は、例えば、5~10℃であってもよい。炭化温度を高くすると、有機系樹脂内の水素、酸素などを除去する効果は、さらに高いものの、1100℃を超えると、SiCが形成される問題点があるため、1000~1100℃の温度で炭化することが好ましい。
【0055】
上述した「ii)構造」を有するグラファイト-ナノシリコン-ピッチの複合構造体の負極活物質の製造方法では、本発明の(e’)段階の後、前記乾燥粉末を乾式粉砕して、グラファイトコア及び前記コアを囲むシリコン-ピッチシェルの構造を有するグラファイト-シリコン-ピッチ複合材を得る段階を行うことができる。
【0056】
グラファイト-ナノシリコン-ピッチの複合構造体は、2種類の溶液を用いたコーティング膜の形成が完了されると、グラファイトの表面にナノシリコン-ピッチ複合材が単に析出しただけであり、析出したナノシリコン-ピッチ複合材が分離されやすい状態であるため、完全なコーティング膜、つまりシェルを形成するためにはさらなる段階が必要である。
【0057】
よって、硬いコア(グラファイト)-シェル(ナノシリコン-ピッチ)の構造をより緻密かつ硬くするために、乾式粉砕のようなさらなる加工段階を経ることになる。本発明の(f’)段階の粉砕方法は、公知の様々な方法を用いることができ、好ましくは、メカノフュージョンミキサーで行うことができるものの、これに限定されるものではない。
【0058】
本発明の(f’)段階の後、粉砕した乾燥粉末を炭化処理して、グラファイトコア及び前記コアを囲むナノシリコン-ピッチシェルの構造を有する負極活物質を得ることができ、炭化処理は、上記構造i)における説明と同様である。
【0059】
以下では、本発明を実施例及び実験例によってより詳説する。しかし、下記の実施例及び実験例は、本発明を例示するだけであり、本発明の内容が下記の実施例及び実験例に限定されるものではない。
【0060】
1.グラファイト-シリコン-ピッチ複合材の製造
[実施例1]
(1)炭素系導電材としてカーボンブラック(Imerys Graphite&Carbon社、Super-P製品)、樹脂マトリックスとしてレゾール型フェノール樹脂(江南化成社、KC-4300N)およびナノシリコン粒子(D50の平均値111nm、D90の平均値158nm)を混合した後(前記成分順に重量比=5:5:90であり、炭化後を基準とする)、スプレードライして、非晶質カーボン-シリコン複合材の粉末([a])を7g得た。
【0061】
(2)テトラヒドロフラン300mlに高軟化点ピッチ(軟化点:260℃)を2g溶解させた([b])。
【0062】
(3)前記[a]を前記[b]に投入した後、攪拌機を用いて分散させた([c])。
【0063】
(4)前記[c]にエタノール100mlを徐々に投入して、表面にピッチを析出させた([d])。
【0064】
(5)圧力、温度および時間(0.7bar、35℃及び20分)の条件で、前記[d]からテトラヒドロフランを1次気化させた。
【0065】
(6)圧力、温度および時間(0.7bar、60℃及び20分)の条件で、テトラヒドロフラン及びエタノールを完全に気化させて、乾燥粉末を得た。
【0066】
(7)前記乾燥粉末を1000℃の温度、窒素雰囲気下で、60分間炭化処理して、ナノシリコン-非晶質炭素-ピッチの複合構造体を得た。
【0067】
[実施例2]
(1’)テトラヒドロフラン300mlに高軟化点ピッチを5g溶解させた([a]’)。
【0068】
(2’)前記[a]’にグラファイトを26g投入した([b]’)。
【0069】
(3’)エタノール50mlにナノシリコン粒子(D50の平均値111nm、D90の平均値158nm)を3g分散させて、溶液を製造した後、これを前記[b]’に投入した([c]’)。
【0070】
(4’)前記[c]’にエタノールを100mlさらに投入して、高軟化点ピッチ(軟化点:260℃)を析出させた([d]’)。
【0071】
(5’)圧力、温度および時間(0.7bar、35℃及び20分)の条件で、前記[d]’からテトラヒドロフランを1次気化させた。
【0072】
(6’)圧力、温度および時間(0.7bar、60℃及び20分)の条件で、テトラヒドロフラン及びエタノールを完全に気化させて、乾燥粉末([e]’)を得た。
【0073】
(7’)前記乾燥粉末([e]’)をメカノフュージョンミキサーに投入した後、粉砕した。
【0074】
(8’)前記粉砕した乾燥粉末を1000℃の温度、窒素雰囲気下で、60 分間炭化処理して、グラファイト-ナノシリコン-ピッチの複合構造体を得た。
【0075】
[比較例1]
(1”)高軟化点ピッチ(軟化点:260℃)5gをミキサーを用いて粉砕した([a]”)。
【0076】
(2”)メカノフュージョンミキサーにグラファイトを26g投入した後、5分間駆動した。
【0077】
(3”)グラファイトが入っているメカノフュージョンミキサーに前記[a]”と、ナノシリコン粒子(D50の平均値:111nm、D90の平均値:158nm)を3g投入した後、30分間駆動して、グラファイトにナノシリコン-ピッチコーティング膜を形成した。
【0078】
(4”)メカノフュージョンミキサーからグラファイト-ナノシリコン-ピッチの粉末を回収して、1000℃の温度、窒素雰囲気下で、60分間炭化処理し、グラファイト-ナノシリコン-ピッチの複合構造体を得た。
【0079】
2.二次電池の製造
二次電池用負極材の電気化学的特性を分析するために、実施例1で製造した非晶質カーボン-ナノシリコン-ピッチの複合構造体、実施例2及び比較例1で製造したグラファイト-ナノシリコン-ピッチの複合構造体を使用した。
【0080】
実施例1~2及び比較例1でそれぞれ製造された複合構造体15%と、人造黒鉛85%と混合した粉末を最終活物質として使用して、負極極板を製作した。負極極板は、活物質と導電材(Imerys Graphite&Carbon社、Super-P製品)、バインダ(CMC:SBR=3:7)を94:1:5の重量比で混合したスラリーを10マイクロ厚さの銅ホイルにドクターブレード法でキャスティングした後、真空乾燥し、ロールプレスを用いて、50マイクロ厚さで圧延して製造した。製作された負極極板は、リチウムメタルと共にコインセルに製作して、ハーフセルで電気化学的性能を測定した。
【0081】
充放電条件は、充電CC/CV:0.01V/0.01C、放電CC1.5Vであり、律速は、0.2Cとした。
【0082】
ハーフセル装置TOSCAT-3100装備を用いて、初期充電効率(Initial coulombic efficiency;ICE;最初充電量に対する放電量)、初期充電容量(Initial charge capacity;ICC;最初充電容量)および初期放電容量(Initial discharge capacity;IDC;最初放電容量)をそれぞれ測定して、下記の表1に示し、50サイクルでの寿命を測定して、寿命特性を
図10にグラフで示した(横軸:サイクル数、縦軸:放電容量)。
【0083】
3.実験例
[実験例1-複合構造体の表面の観察]
実施例1、2及び比較例1の複合構造体の表面に対してSEM分析を行った。
【0084】
実施例1の分析結果である
図1には、非晶質カーボン及びナノシリコン複合材上にピッチが均一であり、全体的に緻密にコーティングされて、球状の複合構造体が形成されたことを観察することができた。
図2及び3は、
図1の拡大写真であって、
図2及び3における点線円で表示した球状粒子の表面の白色部分がピッチコーティング膜であり、
図3における実線円で表示した部分が、非晶質カーボン-ナノシリコン複合材である。
図2及び3の写真を観察した結果、非晶質カーボン-ナノシリコン複合材の表面上に薄いかつ均一なピッチコーティング膜が形成されたことを確認することができた。
【0085】
実施例2の分析結果である
図4~
図7の結果でも、その間にグラファイトコアが存在し、その上にピッチ-ナノシリコンで形成されたシェルが均一かつ緻密にコーティングされていることを観察することができた。黒白図面である
図4及び
図6における色の濃い中間部分がグラファイトであり、比較的に色の薄い白色部分がピッチ-ナノシリコンで形成されたシェルを示し、EDS mappingイメージである
図5及び
図7の紫色部分が、グラファイト(color labelで炭素(C)と表記されている)であり、黄色い部分がピッチ-シリコンシェル(color labelでシリコン(Si)と表記されている)を示す。
【0086】
他方、比較例1は、乾式法でコーティング膜を形成したものであって、サイズの大きいピッチが混じている場合、ピッチ自体がコーティングではない、コアの役割が可能になるため、ピッチを非常に小さく粉砕することが必要であり、比較例1の(1)”段階を行った。
【0087】
このように、比較例1では、ピッチを小さく粉砕した結果、50~100μm 水準のピッチ粒子と、0.1~1μm水準の微分とが混在するようになるため、粉砕したピッチ同士に固まり、ナノシリコン-ピッチシェルではない、ピッチのみで固まったピッチ塊が観察され(
図8の点線円で表示した部分;及び
図9の黄色い部分であって、color labelでシリコン(Si)と表記している)、ピッチコーティングが全くなされていないグラファイト塊も観察された(
図8の実線円で表示した部分及び
図9の赤色部分であって、color labelで炭素(C)と表記している)。
【0088】
[実験例2-電池性能の評価]
二次電池用負極材の電気化学的特性を分析するために、実施例1で製造した非晶質カーボン-ナノシリコン-ピッチの複合構造体、実施例2及び比較例1で製造したグラファイト-ナノシリコン-ピッチの複合構造体を使用した。
【0089】
実施例1~2及び比較例1でそれぞれ製造された複合構造体15%と、人造黒鉛85%と混合した粉末を最終活物質として使用して、負極極板を製作した。負極極板は、活物質と導電材(superP)、バインダ(CMC:SBR=3:7)を94:1:5の重量比で混合したスラリーを10マイクロ厚さの銅ホイルにドクターブレード法でキャスティングした後、真空乾燥し、ロールプレスを用いて、50マイクロ厚さで圧延して製造した。製作された負極極板は、リチウムメタルと共にコインセルに製作して、ハーフセルにおける電気化学的性能を測定した。
【0090】
充放電条件は、充電CC/CV:0.01V/0.01C、放電CC1.5Vであり、律速は、0.2Cとした。
【0091】
ハーフセル装置TOSCAT-3100装備を用いて、初期充電効率(Initial coulombic efficiency;ICE;最初充電量に対する放電量)、初期充電容量(Initial charge capacity;ICC;最初充電容量)および初期放電容量(Initial discharge capacity;IDC;最初放電容量)をそれぞれ測定して、下記の表1に示し、50サイクルでの寿命を測定して、寿命特性を
図10にグラフで示した(横軸:サイクル数、縦軸:放電容量)。
【0092】
【0093】
上記表1から分かるように、本発明による実施例1~2の二次電池の性能が、比較例1の二次電池の性能に比べて顕著に優れることを確認することができた。
【0094】
以上、本明細書の実施例をさらに詳説したが、本明細書は、必ずしもこれらの実施例に限るものではなく、本明細書の技術思想を外れない範囲内における様々な変形・実施が可能である。よって、本明細書に開示の実施例は、本発明の技術思想を限定するためではない、説明するためのものであり、これらの実施例によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものでもない。よって、上述した実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。本明細書及び本発明の保護範囲は、請求の範囲によって解釈されなければならず、それと同等な範囲内にあるすべての技術思想は、本明細書及び本発明の権利範囲に含まれると解釈すべきである。
【国際調査報告】