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  • 特表-時計用の物体を動かすための機構 図1
  • 特表-時計用の物体を動かすための機構 図2
  • 特表-時計用の物体を動かすための機構 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】時計用の物体を動かすための機構
(51)【国際特許分類】
   G04B 45/00 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
G04B45/00 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536260
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2022085828
(87)【国際公開番号】W WO2023117622
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】21216235.8
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523207504
【氏名又は名称】グルーベル フォルセイ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】GREUBEL FORSEY S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225543
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 真
(72)【発明者】
【氏名】ステファン フォーシー
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン コルネイユ
(72)【発明者】
【氏名】アナイス へメル
(57)【要約】
フレーム要素(3)を備える携帯時計用の物体(7)を動かすための機構(1)であって、フレーム要素には、・駆動源(5)と、・駆動源(5)によって駆動されるように構成され、また主枢動軸線(A)を画定する駆動ホイール(12)であり、主枢動軸線(A)の周りを枢動するように構成される、該駆動ホイール(12)と、・駆動ホイール(12)と回転可能に一体化され、また物体(7)を駆動して主枢動軸(A)の周りに回転させるように構成される駆動要素(15)と、及び・駆動ホイール(12)と同軸状に配置され、また物体用の支持システム(13)を担持するターンテーブル(17)であり、支持システム(13)は、主枢動軸線(A)に対して中心がずれている、該ターンテーブル(17)と、が取り付けられ、支持システム(13)は、第1の枢動軸線(A1)の周りを枢動できるようにターンテーブル(17)に取り付けられた第1のフレーム(13b)、並びに、第1の枢動軸線(A1)とほぼ直交する第2の枢動軸線(A2)の周りを枢動できるように第1のフレーム(13b)の内側に取り付けられた内側フレーム(13f)を備え、物体(7)は、第3の枢動軸線(A3)の周りを枢動できるように内側フレーム(13f)の内側に取り付けられたシャフト(13h)によって担持され、シャフト(13h)は、歯部(19a)と噛み合うピニオン(13l)と回転可能に一体化しており、歯部(19a)は、駆動ホイール(12)と同軸であり、歯部(19a)は、回転するように固定又は配置されている。機構(1)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム要素(3)を備える携帯時計用の少なくとも1つの物体(7)を動かすための機構(1)であって、前記フレーム要素には、
・駆動源(5)と、
・前記駆動源(5)によって駆動されるように構成され、また主枢動軸線(A)を画定する駆動ホイール(12)であり、前記主枢動軸線(A)の周りに枢動するように構成される、該駆動ホイール(12)と、
・前記駆動ホイール(12)と回転可能に一体化されており、また前記物体(7)を駆動して前記主枢動軸線(A)の周りに回転させるように構成される駆動要素(15)と、及び
・前記駆動ホイール(12)と同軸状に配置され、また前記物体(7)用の支持システム(13)を担持するターンテーブル(17)であり、前記支持システム(13)は、前記主枢動軸線(A)に対して中心がずれている、該ターンテーブル(17)と
が取り付けられ、
前記支持システム(13)は、第1の枢動軸線(A1)の周りを枢動できるように前記ターンテーブル(17)に取り付けられた第1のフレーム(13b)、並びに、前記第1の枢動軸線(A1)とほぼ直交する第2の枢動軸線(A2)の周りを枢動できるように前記第1のフレーム(13b)の内側に取り付けられた内側フレーム(13f)を備え、
前記物体(7)は、第3の枢動軸線(A3)の周りを枢動できるように前記内側フレーム(13f)の内側に取り付けられたシャフト(13h)によって担持され、前記シャフト(13h)は、歯部(19a)と噛み合うピニオン(13l)と回転可能に一体化しており、前記歯部(19a)は、前記駆動ホイール(12)と同軸であり、前記歯部(19a)は、回転するように固定又は配置されている、機構(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の機構(1)において、前記駆動要素(15)は、前記シャフト(13h)の一端と協働する、機構(1)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の機構(1)において、前記ピニオン(13l)と前記歯部(19a)の間の直径の比が、少なくとも5、好ましくは5~400、さらにより好ましくは5~50、さらにより好ましくは5~20である、機構(1)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の機構(1)において、前記フレーム要素(3)の平面内で考えたときに、前記ターンテーブル(17)は、前記フレーム要素(3)の外側に配置される、機構(1)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の機構(1)であって、さらに、前記駆動源(5)によって駆動されるように構成される調整システム(11)を備える、機構(1)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の機構(1)を備える時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計製作の分野に関する。より詳細には、本発明は、1つ以上の宝石、1つ以上の貴石若しくは半貴石、1つ以上の彫刻若しくは任意の他の(1つ以上の)小型物体、又はそれらの組み合わせ等の少なくとも1つの物体であって、時計に組み込まれるように適合された物体を動かす(animating)ための機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(FR2988866)は、貴石又は半貴石を動かすための機構を記載しており、この機構では、駆動ばねが、可撓性ベルトによって、単一の回転軸を中心とした回転運動で石を動かすように構成されている。石は、石を定位置に保持する4つの爪状体又は顎状体(jaws)によってシャフトに取り付けられる。しかしながら、石の動きは単調であり、石の一面しか見せないため、着用者には常に同じ角度しか見せず、そのため石の可視性が制限される。さらに、石のシンチレーション(煌めき)はその結果として相対的に制限され、また着用者は、石のクラウン以外を見るために、鋭角の角度から石を観察せざるをえない。
【0003】
特許文献2(US4734895)には、石を動かす機構が記載されており、石は、ダイアルの周りを回転するように構成されている。これを達成するために、石は、ムーブメントの中心の周りを枢動するように取り付けられたレバーに取り付けられ、使用者の手首の動きによって石が重力の影響の下で動く。しかしながら、部品が動いていない場合、石は静止したままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2988866号
【特許文献2】米国特許第4734895号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、上述の欠点を少なくとも部分的に克服する運動機構を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の開示)
より詳細には、本発明は、請求項1に定義される、装着型時計用の少なくとも1つの物体を動かすための機構に関する。
【0007】
この機構はフレーム要素を備え、フレーム要素には、以下のものが取り付けられている。
【0008】
・主ぜんまい又は電気モータ、手動力入力部(アーバ(arbor)、トリガーピースなど)、振動錘等の駆動源。
【0009】
・駆動源によって駆動されるように構成され、また主枢動軸を回転する駆動ホイールであり、駆動ホイールは主枢動軸の周りを枢動する、該駆動ホイール。
【0010】
・駆動ホイールと回転可能に一体化されており、また物体を駆動して主枢動軸線の周りを回転させるように構成される駆動要素。
【0011】
・駆動ホイールと同軸であり、また物体用の支持システムを担持するターンテーブルであり、支持システムは、主枢動軸線に対して中心がずれている、ターンテーブル。
【0012】
支持システムは、第1の枢動軸線の周りを枢動できるようにターンテーブルに取り付けられた第1のフレーム、並びに、第1の枢動軸線とほぼ直交する第2の枢動軸線の周りを枢動できるように第1のフレームの内側に取り付けられた内側フレームを備える。物体は、第3の枢動軸線の周りを枢動できるように内側フレームの内側に取り付けられたシャフトによって担持され、シャフトは、歯部と噛み合うピニオンと回転可能に一体化しており、歯部は、駆動ホイールと同軸であり、歯部は、回転するよう固定又は配置されている。この歯部は、典型的には二次ホイールによって担持される。
【0013】
これらの手段により、物体の軌道運動を得ることができ、物体は、主枢動軸線に対して傾斜し、且つ、第3の軸線の周りを回転する。物体が第3の軸線の周りを運動することにより、物体の可視性を高めることができる。さらに、フレームによって提供される自由度によって、製造公差を補償することが可能になり、したがって、機構の妨害、及び/又は、ピニオンと、ピニオンが噛み合う歯との間の噛み合い損失が回避される。物体がカットされた石である場合、その運動がシンチレーション(きらめき)を最適化し、また物体の傾斜角度は、例えば、特定の石のシンチレーションを最適化するために、又は任意の物体の可視性を最適化するために、ホイールの直径及びホイールの歯の角度並びにピニオンの直径を修正することによって、製造業者が事前に容易に決定することができる。
【0014】
有利には、駆動要素は、レバー、クランク等であってもよく、シャフトの一端と協働する。したがって、ピニオンは、この目的のための他の手段を設ける必要なしに、ピニオンが噛み合う歯部と係合したままになるように拘束される。
【0015】
有利には、ピニオンと歯部との間の直径の比は、少なくとも5、好ましくは5~400、さらにより好ましくは5~50、さらにより好ましくは5~20である。
【0016】
有利には、ターンテーブルはフレーム要素の外側に配置され、フレーム要素の平面内でフレーム要素を取り囲む。
【0017】
有利には、機構は、さらに、駆動源によって駆動され、したがって物体の回転速度を調整するように構成される調整システム、例えば、脱進機-バランス-ひげぜんまいシステム、音叉、石英システム、遠心調速機、空気中又は液体中で回転するパドルホイール、単軸、二軸又は三軸トルビロン、カルーセルなどを備える。
【0018】
本発明の目的を形成する機構は、当然、腕時計又はポケットウォッチなどの時計だけでなく、置時計にも組み込むことができる。
【0019】
本発明のさらなる詳細は、添付の図面を参照してなされる以下の説明を読むことによって、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】時計に組み込まれている、本発明による運動機構の概略断面図である。
図2】支持システム及び支持システムによって支持される物体の等角図である。
図3】支持システム及び支持システムによって支持される物体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、時計に組み込まれている、本発明による運動機構を示す。
【0022】
運動機構1はフレーム要素3を備える。フレーム要素3は、機構1の他の構成要素の支持体として機能し、また、ベースムーブメントMのフレーム(例えば、板又はブリッジ)に固定することができ、又はそのようなフレームと一体化することができる。主ぜんまい又はステッピングモータを収容する香箱(barrel)等の駆動源5は、フレーム要素3に取り付けられ、また物体7を駆動するのに必要なエネルギーを供給するように構成される。駆動源5は、運動機構1の専用であってもよく、又は(もし存在する場合は)ダイアル10を覆う任意のタイプの表示素子9を任意の公知の方法で駆動するように構成される時計ムーブメントMと共用であってもよい。代替的に、駆動源5は、ユーザによって操作されるように構成されるアーバ若しくはトリガーピース等、又は振動錘であってもよい。
【0023】
駆動源5は、好ましくは、(特に、また限定されるわけではないが、駆動源が主ぜんまいである場合に)調整システム11を駆動するように構成され、調整システム11は、例えば、遠心調速機、空気中若しくは液体中で回転するパドルホイール、音叉式調整器、脱進機-バランス-ひげぜんまい調整器、単軸、二軸若しくは三軸のトゥルービヨン、カルーセル、又は任意の他の同様のシステム(又はシステムの組み合わせ)などの任意の公知の機械タイプであってもよい。ステッピングモータの場合、調整システム11は、電気式又は電子式(例えば、クオーツ式調整器)であってもよい。
【0024】
調整システム11によって調整された駆動力は、フレーム要素3に、例えば、フレーム要素3の円筒状のベアリング面3aに、ボールベアリング又は他の任意の既知のタイプのベアリングの手段によって枢動可能に取り付けられた駆動ホイール12を回転させる。駆動源5と駆動ホイール12の間の運動学的連結の性質は、重要ではなく、またホイール、ピニオン、ベルト、チェーン、これらの組み合わせ等から構成されることによって任意の適切な形態をとることができる。図示の構造では、この目的のために中間運動体14が設けられている。
【0025】
駆動要素15が、駆動ホイール12に回転可能に取り付けられ、また、後に明らかになるように、駆動ホイールの回転軸線Aの周りで支持システム13を駆動するように機能する。図示の構造では、駆動要素15はレバーであるが、ディスク、セクタ等であってもよく、又は駆動ホイール12に一体化されてもよい。
【0026】
支持システム13及び支持システム13が担持する装飾物体7(又はいくつかのグループ化した装飾物体)は、主枢動軸線A(シャフトではなく幾何学的軸線)として定義される駆動ホイールの軸線Aに対して中心がずれている。図示の実施形態では、支持システム13及び装飾物体7は、軸線Aと交差していない(すなわち、軸線Aから離れている)が、逆も同様である。したがって、支持システム13は、軸線Aの周りで軌道運動を行うように構成される。物体7、及び場合により支持システム13全体もダイアル10(存在する場合)の上方で重ならず、またこれらの要素がダイアルの周りを軌道運動するように、配置することができる。代替的に、これらの要素は、少なくとも部分的にダイアル10の上に、又は少なくとも部分的にダイアル10の下方に、重ねられてもよい。
【0027】
支持システム13は、支持体13mによって担持される一対のピボット13aによって、環状のターンテーブル17に取り付けられ、ターンテーブル17自体は、ボールベアリング又は他の任意の適切なタイプのベアリングによって、フレーム要素3に枢動可能に取り付けられる。その結果、ターンテーブル17は、フレーム要素3を取り囲むことになる。代替的に、ターンテーブル17を、任意の形状にすることができ、且つ/又はフレーム要素3に設けられた任意のシャフト又はベアリングに対して枢動させることができる。
【0028】
ピボット13aは、第1の枢動軸線A1を画定し、第1の枢動軸線A1の周りを、略円形の環状リングによって構成される第1のフレーム13bが枢動する。また、他の形状(楕円形、正方形、長方形など)も可能である。このフレームは、一対の中間ピボット13dを担持し、中間ピボット13dは、第1の軸線A1とほぼ直交する第2の枢動軸線A2を画定する。内側フレーム13fが、この第2の軸線A2の周りで枢動可能なように取り付けられ、また、動かされる物体7を直接的又は間接的に担持するベース13gと一体化している。内側フレーム13fは、ほぼ円形の部品と、ピボット13dをベース13gに連結する2本のアーム13f1と、から構成されている。言うまでもなく、他の形状も可能であり、フレーム13fが環状部を備えることも必須ではない。実際には、ベース13gは、アーム13f1によって、又は別の適切な構成によって、ピボットに単純に連結することができる。
【0029】
フレーム13b、13fのうちの少なくとも一方に、装飾、例えばエナメル、貴石若しくは半貴石、又は任意の他の所望の装飾を設けることができる。さらに、ピボット13d、13aのシャフトのうちの少なくとも一方は、シャフトが貫通する要素の表面、すなわち、ピボット13dの場合には第1のフレーム13bの外面、又はピボット13aの場合には支持体13mの外面を越えて突出してもよく、また貴石又は半貴石等の装飾が施されてもよい。したがって、この石の動きによってシンチレーションが発生し、このシンチレーションは、石が回転可能に一体化されているフレームの枢動を強調して知覚させる。
【0030】
また、フレーム13b、13fのいずれも、動かされる物体7とは重なり合わず、動かされる物体7は、フレーム13b、13fのうちのフレーム13fから飛び出ており、そのため、物体7の可視性が最大になることに留意されたい。言い換えれば、物体7の少なくとも一部は、フレーム13b、13fの全体よりも駆動要素15からさらに離れている。
【0031】
図示の実施形態では、動かされる物体7はシャフト13hによって支持され、シャフト13hは、ベース13gを貫通し、支持体13jと一体化し、また支持体13j内では、動かされる物体7がセットすることによって固定される。代替的に、物体7は、物体7及び支持体13jの性質に応じて、接着、ねじ込み、溶接、圧力嵌め等によって取り付けられてもよく、動かされる物体7は、シャフト13hと同軸であってもよく、又はこのシャフト13hに対して中心がずれてもよいことに留意されたい。さらに、動かされる物体7と内側フレーム13fとの間の連結部は、例えばエラストマー製の可撓性要素を備えてもよく、これにより、物体は、部品の動きの影響でわずかに「浮遊する」ことができる。
【0032】
シャフト13hは、シャフト13hがベース13gに対して枢動できるように、ベース13gに設けられたベアリング13kに取り付けられる。
【0033】
上記から、支持システムは、ジンバル支持体を画定し、これは、回転においては2つの自由度を動かされる物体7に与え、また平行移動においては自由度をほぼ与えないことが明らかである。ベース13g内のシャフト13hの回転は、シャフト13hの幾何学的軸線に対応する第3の軸線A3の周りの第3の回転自由度を、動かされる物体7に与える。好都合なことに、軸線A3は、軸線A1及びA2の各々に直交するが、このことは必須ではない。
【0034】
第3の軸線A3の周りで動かされる物体7の駆動は、シャフト13hに含まれる歯部から構成されるピニオン13lと、駆動要素15と同軸であり図示の構造で固定される二次ホイール19に含まれる傘歯部19aとの協働によって保証される。また他の形態の歯車装置も可能であり、例えば、クラウンホイールによって支持される内側傘歯車、又は他の適切な歯車が挙げられる。付加的に、二次歯車19は、任意の適切な機構によって回転することにより、軸線A3の周りの物体7の回転を、固定二次歯車19を用いて得られる回転よりも速く、遅く、且つ/又は他の方向に回転させることができる。
【0035】
駆動要素15は、ピニオン13lを歯部19aと係合した状態に保ちながら、支持システム13及びターンテーブル17に軸線Aの周りを回転させるように、シャフト13hの一端と協働する。付加的に、駆動要素15、又は駆動ホイール12と回転可能に一体化された別の要素は、例えば、ピンと、これら2つの要素に設けられた長方形又は楕円形のスロットとの協働によって、ターンテーブル17と直接的又は間接的に協働することもできる。図示されていないさらに別の変形例では、駆動要素15は、ターンテーブル17と協働することができる。付加的に、ピニオン13lと歯部19aとの噛み合い、ならびにシャフト13hの位置決めを保証するために、他の手段が設けられてもよい。この目的のために、ターンテーブル17に直接的又は間接的に取り付けられた1つ以上の圧力ばねを挙げることができる。
【0036】
これらの手段によって、動かされる物体7は、中心軸線Aの周りを回転させられ、同時に、物体7自体の枢動軸線A3の周りを枢動し、回転の間、これらの2つの軸線の間に形成される角度は一定に保たれる。したがって、物体の可視性は非常に高くなり、石の場合、シンチレーションを強調することができる。
【0037】
一見すると、回転軸線A1及びA2を付与する必要はないように思われる。しかし、そうではない。小型サイズのピニオン13l(典型的には0.10~1mmのオーダ)及び相対的に大きな直径の二次ホイール19(典型的には15~40mmのオーダ)を考慮すると、通常の公差、並びに歯車の動作用バックラッシのせいで、枢動軸線A3のみを与える支持システム13を実施することを困難になり、又は不可能にさえなる。したがって、軸線A1及びA2は、機構が正しく動作して、特に衝撃が発生した場合に、噛み合いの遮断又は噛み合い損失を回避するために、必要である。
【0038】
付加的に、図示の構造によって、例えば、任意の形状の宝石のシンチレーションを最適化するために、製造時に軸線Aと軸線A3の間に形成される角度を適応させることが容易になる。これを行うために、製造者は、二次ホイール19の直径、ならびにピニオン13lと歯部19aとの間の噛み合いの角度を単純に適応させることができる。そうすることにより、軸線A3は、ダイアル側で(すなわち、観察者に向かって)、又は機構の裏側で、主枢動軸線Aと交差することが可能である(すなわち、物体は、観察者の視点に応じて、それぞれ内側又は外側を向く)。
【0039】
上記を考慮すると、支持システム13は、調整システム11とは異なっており、調整システム11は、単に駆動ホイール12の回転速度及び動かされる物体7の動きを決定するように働くということを強調する必要がある。言い換えれば、動かされる物体7は、機能要素又は支持要素としての調整システム11の一部ではなく、調整システム11の要素には取り付けられず、調整システム11の要素を担持せず、調整システム11と並行して運動学的に考慮することができる。
【0040】
下から(すなわち、駆動要素15の方向から)物体7を照明できるようにするために、支持システム13を、光沢仕上げされたウエル(well)(図示せず)の中に配置し又はその上に重ねることができ、このウエルは、例えば、ゴブレット、放物面、楕円面、又は半球面などの形態をとることができ、また物体の下面に周囲光を向けるように構成される。代替的に、光源(例えば、トリチウム要素、1つ以上のLED等)を、物体及びフレーム13b、13fの下に配置することができる。これらの手段により、物体7が石であれば、そのシンチレーションを高めることができる。
【0041】
本発明は、特定の実施形態に関連して上記で説明されてきたが、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、他のさらなる変形形態も想定され得る。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-08-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム要素(3)を備える携帯時計用の少なくとも1つの物体(7)を動かすための機構(1)であって、前記フレーム要素には、
・駆動源(5)と、
・前記駆動源(5)によって駆動されるように構成され、また主枢動軸線(A)を画定する駆動ホイール(12)であり、前記主枢動軸線(A)の周りに枢動するように構成される、該駆動ホイール(12)と、
・前記駆動ホイール(12)と回転可能に一体化されており、また前記物体(7)を駆動して前記主枢動軸線(A)の周りに回転させるように構成される駆動要素(15)と、及び
・前記駆動ホイール(12)と同軸状に配置され、また前記物体(7)用の支持システム(13)を担持するターンテーブル(17)であり、前記支持システム(13)は、前記主枢動軸線(A)に対して中心がずれている、該ターンテーブル(17)と
が取り付けられ、
前記支持システム(13)は、第1の枢動軸線(A1)の周りを枢動できるように前記ターンテーブル(17)に取り付けられた第1のフレーム(13b)、並びに、前記第1の枢動軸線(A1)とほぼ直交する第2の枢動軸線(A2)の周りを枢動できるように前記第1のフレーム(13b)の内側に取り付けられた内側フレーム(13f)を備え、
前記物体(7)は、第3の枢動軸線(A3)の周りを枢動できるように前記内側フレーム(13f)の内側に取り付けられたシャフト(13h)によって担持され、前記シャフト(13h)は、歯部(19a)と噛み合うピニオン(13l)と回転可能に一体化しており、前記歯部(19a)は、前記駆動ホイール(12)と同軸であり、前記歯部(19a)は、回転するように固定又は配置されている、機構(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の機構(1)において、前記駆動要素(15)は、前記シャフト(13h)の一端と協働する、機構(1)。
【請求項3】
請求項1に記載の機構(1)において、前記ピニオン(13l)と前記歯部(19a)の間の直径の比が、少なくとも5である、機構(1)。
【請求項4】
請求項3に記載の機構(1)において、前記ピニオン(13l)と前記歯部(19a)の間の直径の比が、5~400である、機構(1)。
【請求項5】
請求項4に記載の機構(1)において、前記ピニオン(13l)と前記歯部(19a)の間の直径の比が、5~50である、機構(1)。
【請求項6】
請求項5に記載の機構(1)において、前記ピニオン(13l)と前記歯部(19a)の間の直径の比が、5~20である、機構(1)。
【請求項7】
請求項1に記載の機構(1)において、前記フレーム要素(3)の平面内で考えたときに、前記ターンテーブル(17)は、前記フレーム要素(3)の外側に配置される、機構(1)。
【請求項8】
請求項1に記載の機構(1)であって、さらに、前記駆動源(5)によって駆動されるように構成される調整システム(11)を備える、機構(1)。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の機構(1)を備える時計。
【国際調査報告】