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特表2024-544321パウチフィルム積層体およびこれを用いて製造された電池ケース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】パウチフィルム積層体およびこれを用いて製造された電池ケース
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/131 20210101AFI20241121BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20241121BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20241121BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20241121BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20241121BHJP
【FI】
H01M50/131
H01M50/129
H01M50/121
H01M50/119
H01M50/105
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536499
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 KR2022021112
(87)【国際公開番号】W WO2023121364
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0187275
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ス・ジ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】デ・ウォン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】サン・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・キョン・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ヒョン・カン
(72)【発明者】
【氏名】フン・ヒ・リム
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011BB03
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD03
(57)【要約】
本発明は、ガスバリア層と、前記ガスバリア層の一面に配置される基材層と、前記ガスバリア層の他面に配置されるシーラント層とを含み、MD方向のループ剛性が750mN~1300mNであるパウチフィルム積層体およびこれを用いて製造された電池ケースに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリア層と、
前記ガスバリア層の一面に配置される基材層と、
前記ガスバリア層の他面に配置されるシーラント層とを含むパウチフィルム積層体であって、
前記パウチフィルム積層体のMD方向のループ剛性が750mN~1300mNである、パウチフィルム積層体。
【請求項2】
前記パウチフィルム積層体のTD方向のループ剛性が750mN~1300mNである、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項3】
前記パウチフィルム積層体のMD方向のループ剛性に対するTD方向のループ剛性の比が0.8~1.2である、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項4】
前記基材層のMD方向の破断強度が10N/15mm~18N/15mmである、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項5】
前記基材層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの積層構造である、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項6】
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さが5μm~20μmであり、
前記ナイロンフィルムの厚さが10μm~30μmである、請求項5に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項7】
前記ガスバリア層の厚さが50μm~100μmである、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項8】
前記ガスバリア層は、アルミニウム合金薄膜を含む、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項9】
前記アルミニウム合金薄膜は、鉄を1.2wt%~1.7wt%含む、請求項8に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項10】
前記アルミニウム合金薄膜の結晶粒度が10μm~13μmである、請求項8に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項11】
前記シーラント層のの厚さが60μm~100μmである、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項12】
前記シーラント層は、無延伸ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、ポリプロピレン-ブチレン-エチレン共重合体またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項13】
請求項1に記載のパウチフィルム積層体を絞り成形して製造された電池ケースであって、
前記電池ケースは、少なくとも一つ以上のカップ部を含み、
前記カップ部の深さが10mm以上であり、カールの高さが25mm以下である、電池ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月24日付けの韓国特許出願第10-2021-0187275号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、パウチフィルム積層体およびこれを用いて製造された電池ケースに関し、より詳細には、成形性に優れ、成形後、カールの発生が少ないパウチフィルム積層体およびこれを用いて製造された電池ケースに関する。
【背景技術】
【0003】
二次電池は、デジタルカメラ、ポータブルDVDプレイヤー、MP3プレイヤー、携帯電話、PDA、ポータブルゲーム機(Portable Game Device)、電動工具(Power Tool)および電動自転車(E-bike)などの小型製品だけでなく、電気自動車やハイブリッドカーのような高出力を要する大型製品と余剰発電電力や新再生エネルギーを貯蔵する電力貯蔵装置とバックアップ用電力貯蔵装置にも適用され使用されている。
【0004】
通常、二次電池は、電極活物質スラリーを正極集電体および負極集電体に塗布して正極と負極を製造し、これをセパレータ(Separator)の両側に積層することで、所定の形状の電極組立体(Electrode Assembly)を形成した後、電池ケースに電極組立体を収納し、電解質を注入した後、シールする方法により製造される。
【0005】
二次電池は、電極組立体を収容するケースの材料に応じて、パウチ型(Pouch Type)および缶型(Can Type)などに分けられる。パウチ型(Pouch Type)は、柔軟なポリマー材料で製造されたパウチに電極組立体を収容する。また、管型(Can Type)は、金属またはプラスチックなどの材料で製造されたケースに電極組立体を収容する。
【0006】
パウチ型電池ケースは、柔軟性を有するパウチフィルム積層体にプレス加工を施し、カップ部を形成することにより製造される。そして、カップ部が形成されると、前記カップ部の収容空間に電極組立体を収納し、シール部をシールして、二次電池を製造する。
【0007】
このようなプレス加工のうち、絞り(Drawing)成形は、プレス装置にパウチフィルムを挿入し、パンチでパウチフィルム積層体に圧力を印加して、パウチフィルム積層体を延伸させることにより行われる。パウチフィルム積層体は、一般的に、金属材料のガスバリア層の一面にポリエチレンテレフタレートなどの高分子フィルムを積層し、他面にシーラント層が積層された複数の層で形成される。
【0008】
しかし、このような従来のパウチフィルム積層体の場合、成形性が低くてカップ部の深さを深く成形するのに限界があり、カップ部の底部の角と開放部の角にフィレッティング(Filleting、面取り)を適用する時に、フィレッティングの半径を減少させることにも限界があった。また、カップ部の壁面部を垂直に近く成形することにも限界があった。そのため、二次電池のデッドスペース(Dead Space)が増加し、電極組立体のサイズが減少して、体積に対するエネルギー効率が減少する問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決するためのものであり、絞り成形性に優れ、カップ部の成形深さを深く形成することができ、成形後、カールの発生が少ないパウチフィルム積層体およびこれを用いて製造された電池ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一側面において、本発明は、ガスバリア層と、前記ガスバリア層の一面に配置される基材層と、前記ガスバリア層の他面に配置されるシーラント層とを含み、MD方向のループ剛性が750mN~1300mNであるパウチフィルム積層体を提供する。
【0011】
好ましくは、前記パウチフィルム積層体のTD方向のループ剛性は、750mN~1300mNであることができ、MD方向のループ剛性に対するTD方向のループ剛性の比が0.8~1.2であることができる。
【0012】
前記基材層はMD方向の破断強度が10N/15mm~18N/15mmであることができる。
【0013】
また、一実施形態によると、前記基材層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの積層体であることができ、ここで、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さが5μm~20μmであり、前記ナイロンフィルムの厚さが10μm~30μmであることができる。
【0014】
前記ガスバリア層は、その厚さが50μm~100μmであることができ、アルミニウム合金薄膜を含むことができる。好ましくは、前記アルミニウム合金薄膜は、鉄を1.2wt%~1.7wt%含むことができ、結晶粒度が10μm~13μmであることができる。
【0015】
前記シーラント層は、その厚さが60μm~100μmであることができ、無延伸ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、ポリプロピレン-ブチレン-エチレン共重合体またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0016】
他の側面において、本発明は、上述の本発明のパウチフィルム積層体を絞り成形して製造され、深さが10mm以上のカップ部を含み、カールの高さが25mm以下である電池ケースを提供する。
【発明の効果】
【0017】
パウチフィルム積層体のループ剛性が本発明の範囲を満たす場合、カップ成形時に限界成形深さが大きく、カップ部の角部分の勾配を大きく形成することができ、カップの成形後、カールの発生が少ない。したがって、本発明によるパウチフィルム積層体を用いると、電極組立体の収容体積が大きく、カール(curl)が少ない電池ケースを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態によるパウチフィルム積層体の断面図である。
図2】ループ剛性の測定方法を図示した図である。
図3】本発明の一実施形態による電池ケースを図示した図である。
図4】本発明の他の実施形態による電池ケースを図示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をより具体的に説明する。
【0020】
本明細書および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈されるものである。
【0021】
本発明において、「MD方向(Machine Direction)」は、パウチフィルム積層体の長手方向を意味し、「TD方向(Transverse Direction)」は、パウチフィルム積層体の幅方向を意味する。
【0022】
本発明者らは、電池組立体の収容空間が広くて高いエネルギー密度を実現することができ、カップ成形後、カーリングが少なくて工程不良が少ない電池ケースを製造するために鋭意研究を重ねた結果、ループ剛性が特定の範囲を満たすパウチフィルム積層体を用いて電池ケースを製造する場合、前記のような目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0023】
<パウチフィルム積層体>
図1には、本発明によるパウチフィルム積層体の一実施形態が図示されている。以下では、図1を参照して、本発明によるパウチフィルム積層体について説明する。
【0024】
図1を参照すると、本発明によるパウチフィルム積層体1は、ガスバリア層20と、前記ガスバリア層の一面に配置される基材層10と、前記ガスバリア層の他面に配置されるシーラント層30とを含み、前記パウチフィルム積層体のMD方向のループ剛性(Roof stiffness)が750mN~1300mN、好ましくは800mN~1200mN、より好ましくは800mN~1000mNを満たすことを特徴とする。
【0025】
パウチフィルム積層体1のMD方向のループ剛性が750mN~1300mNを満たす場合、優れた絞り成形性を有してカップ部を深く形成することができ、カップ部の成形時に求められるクリアランス(clearance)が小さくて、壁面の勾配をシャープ(sharp)に形成することができ、成形後、耐カーリング性に優れる。具体的には、パウチフィルム積層体のMD方向のループ剛性が750mN未満である場合には、絞り成形性が低下してカップ部の収容体積を増加させるのに限界があり、MD方向のループ剛性が1300mNを超える場合には、カップの成形後、カールがひどく発生し得る。カップ部体積が小さいと、収容可能な電池組立体が少なくて、高エネルギー密度を実現することができず、カップの成形後、カールが発生すると、電池組立工程のためにパウチ移送時に、真空破壊現象および/またはデガスシール(degas sealing)工程時に、電池ケースにしわが発生するなどの問題が発生し得る。
【0026】
また、本発明のパウチフィルム積層体は、MD方向のループ剛性に対するTD方向のループ剛性の比が0.8~1.2、好ましくは0.9~1.1であることができる。パウチフィルム積層体のMD方向のループ剛性に対するTD方向のループ剛性の比が前記範囲を満たす時に、カップ成形過程で損傷やしわの発生などを抑制することができる。
【0027】
具体的には、本発明のパウチフィルム積層体のTD方向のループ剛性は、750mN~1300mN、好ましくは800mN~1200mN、より好ましくは800mN~1000mNを満たすことが好ましい。TD方向のループ剛性が前記範囲を満たす時に、絞り成形性に優れ、カップの成形後、カールの発生を効果的に抑制することができ、MD方向のループ剛性との差が大きくなくて、成形後の損傷やしわの発生を抑制することができる。
【0028】
図2には、本発明のパウチフィルム積層体のループ剛性の測定過程が図示されている。図2の(a)に図示されているように、先ず、パウチフィルム積層体を幅×長さが15mm×150mmになるように裁断して測定用サンプルを製造する。MD方向(Machine Direction)のループ剛性を測定しようとする場合には、MD方向と前記測定用サンプルの幅方向が一致するように裁断し、TD方向(Transverse Direction)のループ剛性を測定しようとする場合には、TD方向と前記測定用サンプルの幅方向が一致するように裁断する。その後、図2の(b)に示されているように、前記測定用サンプルの両端部を測定装置のクリップで挟んで固定し、図2の(c)に示されているように、前記クリップを移動させて測定用サンプルをループ形状に変形させる。その後、図2の(d)に示されているように、前記ループを5mm/minの速度で圧入しながらループを変形時にかかる最大荷重値で測定し、これをループ剛性値とする。
【0029】
パウチフィルム積層体のループ剛性は、パウチフィルム積層体を構成する各層(すなわち、基材層、ガスバリア層、シーラント層)の厚さおよび材料などの影響を受けるため、パウチフィルム積層体を構成する各層の厚さ、材料などを調節して、所望のループ剛性を有するパウチフィルム積層体を製造することができる。例えば、ガスバリア層を伸び率が高い軟質アルミニウム薄膜(例:AA8021)で形成し、ガスバリア層の厚さを50μm~100μmと厚く形成し、基材層をMD方向の破断強度が10N/15mm~18N/15mmであるフィルムまたはフィルム積層体に構成することで、本発明のループ剛性を満たすパウチフィルム積層体を製造することができる。ただし、本発明のループ剛性値を満たすパウチフィルム積層体の製造方法がこれに限定されるものではない。
【0030】
以下、本発明によるパウチフィルム積層体の各層について詳細に説明する。
【0031】
基材層
基材層10は、電池ケースの最外層に配置されて電極組立体を外部衝撃から保護し、電気的に絶縁させるためのものである。
【0032】
前記基材層10は、ポリマー材料からなることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、アクリル系高分子、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、アラミド、ナイロン、ポリエステル、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリアリレート、およびテフロン(登録商標)からなる群から選択される1種以上のポリマー材料からなることができる。
【0033】
前記基材層10は、単層構造であってもよく、図1に図示されているように、互いに異なるポリマーフィルム12、14が積層された多層構造であってもよい。基材層10が多層構造である場合、ポリマーフィルムの間に接着層16aが介在することができる。
【0034】
一方、前記基材層10は、全厚が5μm~60μm、好ましくは10μm~50μm、さらに好ましくは20μm~50μmであることができる。基材層が多層構造である場合、前記厚さは、フィルムとフィルムとの間に介在する接着層の厚さを含む厚さである。ここで、前記接着層の厚さは、1~10μm、好ましくは1~7μm、さらに好ましくは1~4μmであることができる。基材層10の厚さが前記範囲を満たす時に、耐久性、絶縁性および成形性に優れる。基材層の厚さが薄すぎると、耐久性が低下し、成形過程で基材層の破損が発生し得、厚すぎると、成形性が低下し得、パウチフィルム積層体フィルムの全厚が増加し、電池収容空間が減少して、エネルギー密度が低下し得る。
【0035】
本発明において、前記基材層は、MD方向の破断強度が10N/15mm~18N/15mm、好ましくは10N/15mm~15N/15mm程度であることができる。基材層のMD方向の破断強度が前記範囲を満たす時に、本発明で求められるMD方向のループ剛性値を容易に実現することができる。基材層のMD方向の破断強度が小さすぎると、パウチフィルム積層体のMD方向のループ剛性が低下し、大きすぎると、パウチフィルム積層体のMD方向のループ剛性が過剰に大きくなる。
【0036】
一方、前記基材層のMD方向の破断強度は、基材層をMD方向に引張させた時に破断が発生する強度であり、基材層を構成するフィルムまたはフィルム積層体をMD方向が長手方向になるように裁断して測定用サンプルを作製した後、前記測定用サンプルをUTM装置に装着して引張させて破断が発生する最大強度を測定する方法で測定されることができる。
【0037】
基材層のMD方向の破断強度は、基材層を構成するフィルムの種類、フィルム厚さ、および/または接着層の厚さなどに応じて変化するため、フィルムの種類、フィルムの厚さ、および/または接着層の厚さなどを適切に調節して所望の破断強度を有する基材層を形成することができる。
【0038】
一実施形態によると、前記基材層10は、ポリエチレンテレフタレート(PolyEthyleneTerephtalate;PET)フィルムとナイロン(Nylon)フィルムの積層構造であることができる。ここで、前記ナイロンフィルムが、ガスバリア層20側、すなわち、内側に配置され、ポリエチレンテレフタレートフィルムが、電池ケースの表面側に配置されることが好ましい。
【0039】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、耐久性および電気絶縁性に優れ、PETフィルムが表面側に配置される時に、耐久性および絶縁性に優れる。ただし、PETフィルムの場合、ガスバリア層20を構成するアルミニウム合金薄膜との接着性が弱く、延伸挙動も相違するため、PETフィルムをガスバリア層側に配置する場合、成形過程で基材層とガスバリア層の剥離が発生し得、ガスバリア層が均一に延伸されず、成形性が低下する問題が発生し得る。これに対し、ナイロンフィルムは、ガスバリア層20を構成するアルミニウム合金薄膜と延伸挙動が類似するため、ポリエチレンテレフタレートとガスバリア層との間にナイロンフィルムを配置する場合、成形性の改善効果を得ることができる。
【0040】
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムは、その厚さが5μm~20μm、好ましくは5μm~15μm、さらに好ましくは7μm~15μmであることができ、前記ナイロンフィルムは、その厚さが10μm~40μm、好ましくは15μm~35μm、さらに好ましくは15μm~25μmであることができる。ポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの厚さが前記範囲を満たす時に、成形性、屈曲性および耐久性が改善し、本発明で求められるループ剛性値を容易に実現することができる。
【0041】
ガスバリア層
ガスバリア層20は、電池ケースの機械的強度を確保し、二次電池の外部のガスまたは水分などの出入りを遮断し、電解質の漏れを防止するためのものである。
【0042】
前記ガスバリア層は、その厚さが50μm~100μm、好ましくは55μm~90μm、さらに好ましくは55μm~80μmであることができる。ガスバリア層の厚さが前記範囲を満たす場合、所望のループ剛性値を実現することが容易であり、成形性が増加して、カップ部を深くシャープ(sharp)に成形することができる。従来、40μmの厚さを有するアルミニウム合金薄膜を用いてガスバリア層を形成することが一般的であった。しかし、ガスバリア層の厚さが40μmの水準である場合、パウチフィルム積層体の屈曲性が低下して所望のループ剛性値を実現することが困難であり、成形性が低下して成形深さの増加に限界があり、カップ部の角をシャープ(sharp)に形成することも困難である。
【0043】
一方、前記ガスバリア層は、金属材料からなることができ、具体的には、アルミニウム合金薄膜からなることができる。
【0044】
前記アルミニウム合金薄膜は、アルミニウムと、前記アルミニウム以外の金属元素、例えば、鉄(Fe)、銅(Cu)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)および亜鉛(Zn)からなる群から選択される1種または2種以上を含むことができる。
【0045】
好ましくは、前記アルミニウム合金薄膜は、鉄(Fe)含有量が1.2wt%~1.7wt%、好ましくは1.3wt%~1.7wt%、より好ましくは1.3wt%~1.45wt%であることができる。アルミニウム合金薄膜内の鉄(Fe)含有量が1.2wt%未満である場合には、アルミニウム合金薄膜の強度が低下して成形時にクラックおよびピンホールが発生し得、1.7wt%を超える場合には、アルミニウム合金薄膜の柔軟性が低下して成形性および屈曲性の向上に限界がある。
【0046】
また、前記アルミニウム合金薄膜は、結晶粒度が10μm~13μm、好ましくは10.5μm~12.5μm、さらに好ましくは11μm~12μmであるアルミニウム合金薄膜を含む。アルミニウム合金薄膜の結晶粒度が前記範囲を満たす時に、カップ成形時にピンホール(Pinhole)や亀裂の発生なく成形深さを増加させることができる。アルミニウム合金薄膜の結晶粒度が13μmを超える場合、アルミニウム合金薄膜の強度が低下し、延伸時に内部応力の分散が難しくてクラックやピンホールの発生が増加し、結晶粒度が10μm未満である場合には、アルミニウム合金薄膜の柔軟性が低下して、成形性および屈曲性の向上に限界がある。
【0047】
前記結晶粒度は、アルミニウム合金薄膜の組成およびアルミニウム合金薄膜の加工法に応じて変化し、アルミニウム合金薄膜の厚さ方向の断面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)で観測して測定することができる。具体的には、本発明では、走査型電子顕微鏡を用いて、アルミニウム合金薄膜の厚さ方向の断面SEMイメージを取得し、前記SEMイメージで観察される結晶粒のうち任意の30個の結晶粒の最大径を測定した後、これらの平均値を結晶粒度として評価した。
【0048】
具体的には、前記アルミニウム合金薄膜は、合金番号AA8021のアルミニウム合金であることができるが、これに限定されるものではない。
【0049】
シーラント層
シーラント層30は、熱圧着により接着されて、電池ケースを密封するためのものであり、パウチフィルム積層体1の最内層に位置する。
【0050】
シーラント層30は、電池ケースとして成形された後に電解質および電極組立体と接触する面であるため、絶縁性および耐食性を有する必要があり、内部を完全に密閉して内部と外部との物質移動を遮断しなければならないため、高いシール性を有する必要がある。
【0051】
前記シーラント層30は、ポリマー材料からなることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、アクリル系高分子、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、アラミド、ナイロン、ポリエステル、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリアリレート、およびテフロン(登録商標)からなる群から選択される1種以上からなることができ、中でも、引張強度、剛性、表面硬度、耐磨耗性、耐熱性などの機械的物性と耐食性などの化学的物性に優れたポリプロピレン(PP)を含むことが特に好ましい。
【0052】
より具体的には、前記シーラント層30は、ポリプロピレン、無延伸ポリプロピレン(Cast Polypropylene;CPP)、酸変性ポリプロピレン(Acid Modified Polypropylene)、ポリプロピレン-ブチレン-エチレン共重合体またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0053】
前記シーラント層30は、単層構造であってもよく、互いに異なるポリマー材料からなる2以上の層を含む多層構造であってもよい。
【0054】
前記シーラント層は、全厚が60μm~100μm、好ましくは60μm~90μm、さらに好ましくは70μm~90μmであることができる。シーラント層の厚さが薄すぎると、シール耐久性および絶縁性が低下し得、厚すぎると、屈曲性が低下し、パウチフィルム積層体の全厚が増加して、体積に対するエネルギー密度が低下し得る。
【0055】
前記のような本発明のパウチフィルム積層体は、当該技術分野において周知のパウチフィルム積層体の製造方法により製造されることができる。例えば、本発明のパウチフィルム積層体は、ガスバリア層20の上面に接着剤により基材層10を付着し、前記ガスバリア層20の下面に共押出や接着層によりシーラント層30を形成する方法により製造されることができるが、これに限定されるものではない。
【0056】
本発明によるパウチフィルム積層体は、全厚が160μm~200μm、好ましくは180μm~200μmであることができる。パウチフィルム積層体の厚さが前記範囲を満たす時に、パウチ積層体の厚さの増加による電池収容空間の減少、密封耐久性の低下などを最小化し、且つ成形深さを増加させることができる。
【0057】
<電池ケース>
図3および図4には、本発明による電池ケースの実施形態が図示されている。以下、図3および図4を参照して、本発明による電池ケースについて説明する。
【0058】
図3および図4に図示されているように、本発明による電池ケース100は、上述の本発明のパウチフィルム積層体1を絞り(Drawing)成形して製造され、少なくとも一つ以上のカップ部110a、110bを含む。
【0059】
パウチフィルム積層体1は、上述のとおりであるため、具体的な説明は省略する。
【0060】
前記カップ部110a、110bは、電極組立体(図示せず)および電解質(図示せず)を収容するための空間112であり、パウチフィルム積層体1をパンチなどを用いて絞り成形して製造される。ここで、前記絞り成形は、パウチフィルム積層体1のシーラント層側にパンチを加圧して行われることができる。
【0061】
一方、本発明による電池ケース100は、図3に図示されているように、一つのカップ部110aを含んでもよく、図4に図示されているように、2個のカップ部110a、110bを含んでもよい。
【0062】
一方、本発明による電池ケース100は、下部ケース110および上部ケース120を含み、前記カップ部110a、110bは、下部ケース110および上部ケース120のうち一つにのみ形成されてもよく、両方に形成されてもよい。パウチフィルム積層体1を1カップ成形装置で成形する場合、図3に図示されているように、カップ部が1個である電池ケースを製造することができ、2カップ成形装置で成形する場合、図4に図示されているように、下部ケース110と上部ケース120の両方にカップ部が形成された電池ケースを製造することができる。
【0063】
前記カップ部110a、110bに電極組立体を収納し、電解液を注入した後、上部ケース120が下部ケース110の上端に接するように折り畳み(folding)、電極組立体および電解質が外部と遮断されるようにする。
【0064】
その後、上部ケース120と下部ケース110の角部分を熱圧着してシール工程を行う。
【0065】
本発明による電池ケースは、上述のように、MD方向のループ剛性が750mN~1300mNと高いパウチフィルム積層体1を用いて製造されることから、屈曲性に優れ、カップ部の成形時に限界成形深さが大きく、カップ部の角部分の勾配を大きく形成することができ、カップ成形後、カールの発生を最小化することができる。
【0066】
したがって、本発明の電池ケースは、従来に比べてカップ部内の収容体積を増加させることができ、結果、収容可能な電極組立体の体積が増加して高エネルギー密度を実現することができ、成形後のカールの発生による不良を最小化することができる。
【0067】
具体的には、本発明による電池ケースは、カップ部の深さが10mm以上、好ましくは10mm~30mmで、カールの高さが25mm以下、好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下である。
【0068】
一方、電池ケースのカップ部が2個である場合、前記カップ部の深さは、上部ケースのカップ部と下部ケースのカップ部の深さを合算した値を意味する。
【0069】
また、前記電池ケースのカールの高さは、両面テープで電池ケースのカップ部を底部に固定した時に、電池ケースの各角が巻き上がった高さをスチール定規で測定し、このうち最も大きい値をカールの高さとして評価した。
【0070】
以下、具体的な実施例により、本発明をより具体的に説明する。
【0071】
実施例1
厚さ60μmのAA8021アルミニウム(Al)合金薄膜(製造会社:SAMAアルミニウム)の一面に、厚さ25μmのナイロンフィルム(商品名:Nylon 6、製造会社:HYOSUNG)と厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製造会社:HYOSUNG)をウレタン接着剤を用いてドライラミネーション方式で積層して、基材層を形成した。ここで、ウレタン接着体は、接着層の厚さが3μmになるように塗布した。次に、前記アルミニウム合金薄膜の他面に溶融された無延伸ポリプロピレン(CPP)を共押出して厚さ80μmのシーラント層を形成し、パウチフィルム積層体を製造した。
【0072】
実施例2
厚さ80μmのAA8021アルミニウム(Al)合金薄膜を使用した以外は、実施例1と同じ方法でパウチフィルム積層体を製造した。
【0073】
実施例3
厚さ15μmのナイロンフィルム(商品名:Nylon 6、製造会社:HYOSUNG)と厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製造会社:HYOSUNG)をウレタン接着剤を用いてドライラミネーション方式で積層して基材層を形成した以外は、実施例1と同じ方法でパウチフィルム積層体を製造した。
【0074】
比較例1
厚さ40μmのAA8021アルミニウム(Al)合金薄膜(製造会社:SAMAアルミニウム)を使用した以外は、実施例3と同じ方法でパウチフィルム積層体を製造した。
【0075】
比較例2
基材層の形成時に、ウレタン接着体を接着層の厚さが5μmになるように塗布した以外は、実施例1と同じ方法でパウチフィルム積層体を製造した。
【0076】
実験例1:ループ剛性の測定
実施例1~3および比較例1~2によって製造されたパウチフィルム積層体それぞれをMD方向長さが15mm、TD方向長さが150mmになるように裁断して第1サンプルを製造した。
【0077】
また、実施例1~3および比較例1~2によって製造されたパウチフィルム積層体それぞれをTD方向長さが15mm、MD方向長さが150mmになるように裁断して第2サンプルを製造した。
【0078】
前記第1サンプルおよび第2サンプルそれぞれを半径16mm、円周100mmになるようにループ状に変形した後、5mm/minの速度で力を加えてループを変形するのにかかる最大強度を測定し、これをループ剛性として評価した。測定結果は、下記[表1]に示した。
【0079】
実験例2:基材層フィルムのMD方向の破断強度の測定
実施例1~3および比較例1および2で使用された基材層フィルム(ナイロンフィルム/接着層/ポリエチレンテレフタレートフィルム積層体)を幅×長さが15mm×80mmになるように裁断してサンプルを製造した。ここで、サンプルの長手方向がパウチフィルム積層体のMD方向と一致するように裁断した。UTM装置に前記サンプルをグリップギャップ(Grip gap)30mmで固定した後、50mm/minの引張速度で前記サンプルを引っ張って破断が発生する強度を測定した。測定結果は、下記[表1]に示した。
【0080】
実験例3:限界成形深さの測定
実施例1~3および比較例1~2によって製造されたパウチフィルム積層体それぞれを240mm×200mmのサイズに裁断した後、横160mm×縦90mmのサイズのカップ成形部を1個有する電池ケース成形装置と横160mm×縦61mmのサイズのカップ成形部を2個有する電池ケース成形装置で成形深さを変化しながらそれぞれ成形を行って、クラックが発生する直前までの最大成形深さ(限界成形深さ)を測定した。ここで、電池ケース成形装置のパンチと成形部は、コーナーと角にフィレッティング(Filleting、面取り)され、パンチのコーナーは、2mm、角は0.5mmの曲率を有し、成形部のコーナーは2.5mm、角は0.5mmの曲率を有した。また、パンチと成形部のクリアランス(Clearance)は0.5mmであった。カップ成形部を2個有する電池ケース成形装置において、2個の成形部間の距離は1mmであった。測定結果は、下記[表1]に示した。
【0081】
実験例4:カール特性の測定
前記実験例3で限界成形深さまで1カップ成形された電池ケースのカップ部を両面テープで底部に固定した後、電池ケースの各角が巻き上がった高さをスチール定規で測定し、このうち最も大きい値をカールの高さとして評価した。測定結果は、下記[表1]に示した。
【0082】
【表1】
【0083】
前記[表1]に示されているように、MD方向のループ剛性が本発明の範囲を満たすパウチフィルム積層体を用いて電池ケースを製造する場合、限界成形深さが深く、カールが小さい電池ケースを製造することができた。これに対し、MD方向のループ剛性が730mN未満である比較例1のパウチフィルム積層体を用いる場合、限界成形深さが小さく示され、ループ剛性が1300mN以上である比較例2のパウチフィルム積層体を使用する場合、成形性には優れているが、カップ成形後のカールがひどく発生することを確認することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 パウチフィルム積層体
10 基材層
20 ガスバリア層
30 シーラント層
16a、16b 接着層
100 電池ケース
110 下部ケース
120 上部ケース
110a、110b カップ部
130 ブリッジ
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-06-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリア層と、
前記ガスバリア層の一面に配置される基材層と、
前記ガスバリア層の他面に配置されるシーラント層とを含むパウチフィルム積層体であって、
前記パウチフィルム積層体のMD方向のループ剛性が750mN~1300mNである、パウチフィルム積層体。
【請求項2】
前記パウチフィルム積層体のTD方向のループ剛性が750mN~1300mNである、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項3】
前記パウチフィルム積層体のMD方向のループ剛性に対するTD方向のループ剛性の比が0.8~1.2である、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項4】
前記基材層のMD方向の破断強度が10N/15mm~18N/15mmである、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項5】
前記基材層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの積層構造である、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項6】
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さが5μm~20μmであり、
前記ナイロンフィルムの厚さが10μm~30μmである、請求項5に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項7】
前記ガスバリア層の厚さが50μm~100μmである、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項8】
前記ガスバリア層は、アルミニウム合金薄膜を含む、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項9】
前記アルミニウム合金薄膜は、鉄を1.2wt%~1.7wt%含む、請求項8に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項10】
前記アルミニウム合金薄膜の結晶粒度が10μm~13μmである、請求項8に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項11】
前記シーラント層のの厚さが60μm~100μmである、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項12】
前記シーラント層は、無延伸ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、ポリプロピレン-ブチレン-エチレン共重合体またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のパウチフィルム積層体を含む電池ケースであって、
前記電池ケースは、少なくとも一つ以上のカップ部を含み、
前記カップ部の深さが10mm以上であり、カールの高さが25mm以下である、電池ケース。
【国際調査報告】