(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】CT画像の画像処理のための方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
A61B6/03 560B
A61B6/03 573
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537026
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-16
(86)【国際出願番号】 EP2022086431
(87)【国際公開番号】W WO2023117786
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】グリンガウツ アシェル
(72)【発明者】
【氏名】ゴシェン リラン
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA06
4C093EA07
4C093FF03
(57)【要約】
本発明は、CT画像の画像処理のためのコンピュータ実施方法を提供する。該方法は、CT画像に対し1以上の前処理ステップを実行して前処理されたCT画像を得るステップであって、1以上の前処理ステップがエッジ保存ノイズ除去アルゴリズムを適用するステップを含むステップ;及び前処理されたCT画像に対し適応型スパイク抑圧アルゴリズムを実行して、処理されたCT画像を得るステップ;を有する。適応型スパイク抑圧アルゴリズムは、処理されたCT画像が前処理されたCT画像と比較して少ない数のスパイクを有するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CT画像の画像処理のためのコンピュータ実施方法であって、前記コンピュータ実施方法は、
CT画像に対し1以上の前処理ステップを実行して前処理されたCT画像を得るステップであって、前記1以上の前処理ステップがエッジ保存ノイズ除去アルゴリズムを適用するステップを含むステップと、
前記前処理されたCT画像に対し適応型スパイク抑圧アルゴリズムを実行して、処理されたCT画像を得るステップと
を有する、コンピュータ実施方法。
【請求項2】
前記適応型スパイク抑圧アルゴリズムを実行するステップが、前記前処理された画像のボクセルの3次元近傍に対してモデル、特に線形モデルを当てはめるステップを有する、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項3】
前記適応型スパイク抑圧アルゴリズムを実行するステップが、
前記モデルを認定するステップであって、該モデルが1以上の所定の基準を満たすかをチェックするステップを含む、ステップと、
前記モデルが前記1以上の所定の基準を満たしていないと判定したことに応答して、該モデルの1以上のモデルパラメータを適応させて修正されたモデルを得るステップと
を有する、請求項2に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項4】
前記スパイク抑圧アルゴリズムを実行するステップが、前記修正されたモデルを認定するステップ及び1以上のモデルパラメータを適応させるステップを、該修正されたモデルが前記所定の基準を満たすまで繰り返すステップを含む、請求項3に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項5】
前記スパイク抑圧アルゴリズムを実行するステップが、前記モデル又は前記修正されたモデルが前記所定の基準を満たすと判定したことに応答して、前記ボクセルに対して前記モデル又は前記修正されたモデルを適用するステップを更に含む、請求項3又は請求項4に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項6】
前記モデルを当てはめるステップが、ボクセル毎に、複数の最も近い隣接ボクセルの各々について重み係数を、特に、当該ボクセルと最も近い隣接ボクセルとの間の空間距離に基づく重み及び当該ボクセルと最も近い隣接ボクセルとの間の値距離に基づく重みの少なくとも一方を組み込んだ重み係数を決定するステップを含み、及び/又は、
前記適応型スパイク抑圧アルゴリズムを実行するステップが、前記モデルが1以上の所定の基準を満たすかをチェックするステップを含む前記モデルを認定するステップを有すると共に、前記モデルが1以上の所定の基準を満たすかをチェックするステップが1以上のボクセルの重み係数が所定の範囲内にあるか、特に、所定の閾値未満に留まるかをチェックするステップを含み、及び/又は
前記モデルを適用するステップが、ボクセル毎に、複数の最も近い隣接ボクセルの各々について決定された重み係数又は複数の重み係数を使用して加重平均を実行するステップを含む、
請求項2から4の何れか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項7】
前記前処理された画像におけるボクセルの3次元近傍に対して前記モデルを当てはめるステップはフィルタを使用して実行され、前記1以上のモデルパラメータを適応させるステップがフィルタパラメータを適応させるステップを含む、請求項3から6の何れか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項8】
前記1以上のモデルパラメータを適応させるステップが、
前記重みの積極性を決定するパラメータを適応させるステップ、特に、前記重みの積極性を決定するパラメータを該重みの積極性が増加するように適応させるステップ、
空間重みを制御するパラメータを適応させるステップ、特に、空間重みを制御するパラメータを該空間重みが増加するように適応させるステップ、及び
前記最も近い隣接ボクセルの数を決定するパラメータを適応させるステップ、特に前記最も近い隣接ボクセルの数を決定するパラメータを該最も近い隣接ボクセルの数が増加するように適応させるステップ
のうちの少なくとも1つを含む、請求項3から7の何れか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項9】
前記1以上のモデルパラメータを適応させるステップが、前記重みの積極性を反復的に増加させるステップ、前記空間重みを反復的に増加させるステップ、及び/又は前記最も近い隣接ボクセルの数を反復的に増加させるステップを含む、請求項8に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項10】
ボクセルV
i,j,kと最も近い隣接ボクセルとの間の空間距離に基づいた重みが、
【数7】
として決定され、ここで、dxは軸平面におけるボクセルのサイズであり、dzはZ方向におけるボクセルのサイズであり、σ
spatialは重みの積極性を制御するアルゴリズムパラメータであり、
ボクセルV
i,j,kと最も近い隣接ボクセルとの間の値距離に基づいた重みが、
【数8】
として決定され、ここで、n^
i,j,kはボクセルV
i,j,kの局部ノイズレベル推定値であり、multは重みの積極性を制御するアルゴリズムパラメータであり、及び/又は
前記モデルを適用するステップが、
【数9】
として加重平均を適用するステップを含み、ここで、V^
1
i,j,kはボクセルV
i,j,kの無ノイズ推定値を表し、w
i’,j’,k’はボクセルV
i,j,kの最も近い隣接ボクセルの重み係数であり、特にw
i’,j’,k’=w
spatial
i’,j’,k’w
HU
i’,j’,k’である;
請求項2から9の何れか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項11】
画像処理のための請求項1から10の何れか一項に記載のコンピュータ実施方法を含む方法であって、
光子計数CT画像化システムにより、特に低線量CTスキャンにより前記CT画像をキャプチャするステップ、及び/又は、
前記処理されたCT画像を記憶装置に記憶し、及び/又は前記処理されたCT画像を特に表示装置に出力するステップ、及び/又は、
前記処理されたCT画像を画像誘導ナビゲーション及び/又はコンピュータ画像認識方法のために使用するステップ
を更に有する、方法。
【請求項12】
CT画像に対し1以上の前処理ステップを実行して前処理されたCT画像を得、ここで、該1以上の前処理ステップはエッジ保存ノイズ除去アルゴリズムを適用するステップを含み、及び
前記前処理されたCT画像に対し適応型スパイク抑圧アルゴリズムを実行して処理されたCT画像を得る、
特に、請求項1から11の何れか一項に記載の方法を実行する、
データ処理システム。
【請求項13】
請求項12に記載のデータ処理システムを備えるシステムであって、前記システムは、
前記CT画像をキャプチャするCT画像化システムであって、特に、光子計数CT画像化システムであるCT画像化システム、及び/又は、
前記処理されたCT画像を出力する表示装置
を更に備える、システム。
【請求項14】
コンピュータにより実行された場合に、該コンピュータに、
CT画像に対し1以上の前処理ステップを実行して前処理されたCT画像を得るステップであって、該1以上の前処理ステップがエッジ保存ノイズ除去アルゴリズムを適用するステップを含む、ステップと、
前記前処理されたCT画像に対し適応型スパイク抑圧アルゴリズムを実行して処理されたCT画像を得るステップと
を実行させ、
特に、前記コンピュータに請求項1から11の何れか一項に記載の方法を実行させる命令を有する、コンピュータプログラム。
【請求項15】
コンピュータにより実行された場合に、該コンピュータに、
CT画像に対し1以上の前処理ステップを実行して前処理されたCT画像を得るステップであって、該1以上の前処理ステップがエッジ保存ノイズ除去アルゴリズムを適用するステップを含む、ステップと、
前記前処理されたCT画像に対し適応型スパイク抑圧アルゴリズムを実行して処理されたCT画像を得るステップと
を実行させ、
特に、前記コンピュータに請求項1から11の何れか一項に記載の方法を実行させる命令を含む、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CT画像の画像処理のためのコンピュータ実施方法、該画像処理のための方法を含む方法、データ処理システム、該データ処理システムを含むシステム、コンピュータプログラム製品、及びコンピュータ読み取り可能な媒体を提供する。
【背景技術】
【0002】
エッジ保存型ノイズ除去処理は、基となる画像細部を保存しながらノイズを除去することにより優れた画像の質感(テクスチャ)及び外観を提供することを可能にするが、特にノイズ分布が重い裾(テール)を有する場合に、スパイクの数の増加につながり得る。重い裾のノイズは、中でもCT光子計数(PhC)システム及び低線量CTスキャン等の多くの状況において発生する。
【0003】
更に具体的には、光子計数CTシステムは、直接変換検出器技術を利用して、複数のエネルギレベルでデータを取得する。したがって、このようなシステムは、光電効果、コンプトン散乱及びkエッジエネルギ成分等の、様々なX線相互作用の詳細を提供すると共に、より詳細な定量化を可能にする潜在能力を有する。
このようなシステムは、積分型検出器に関して改善された信号対雑音比(SNR)も有し得る。
【0004】
CT画像上のノイズは、平均光子数の平方根に反比例する。電子ノイズからの信号振幅が検出された光子からのものに匹敵する大きさのものである場合、電子ノイズからの信号への寄与が顕著になる。
光子計数検出器の利点の1つは、電子ノイズを大幅に低減することである。これにより、線量を減らすことができる。
【0005】
改善されたSNRは、組織の区別及び/又は物質のラベル付け並びにCTシステムによる定量的な画像化も可能にすると共に、例えばkエッジ画像化及びビームハードニングアーティファクトの低減等の新規な画像化技術を可能にする。
しかしながら、先に簡単に述べたように、PhCに課される難問は、重い裾のノイズ特性である。
【0006】
背景として、裾が重いノイズの概念について以下に簡単に説明する。ノイズは、多くの場合、おおよそのガウス分布しか有さないであろう。具体的には、分布の中心が略ガウス的であっても、裾はそうではない場合があり得る。分布の裾は、大きな分布引数に対応する密度の領域である。重い裾は、密度引数の大きな値に対して、当該密度がガウス分布よりも緩やかにゼロに近づくことを意味する。
重い裾のノイズ特性は、特に低線量では、ノイズ除去後にスパイクの発生が増加することにつながる。
【0007】
この問題にスパイクを削除することにより対処することは、しばしば、満足のいく結果をもたらさない。過度に多くの誤ったスパイク識別が存在して、実際のテクスチャ及び/又はコントラストが失われることになり、その結果、細部に欠ける人工的に滑らかな表面になってしまうからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、上述した問題の幾つかを軽減し、特に、PhCシステム及び低線量等の困難なCTイメージングのシナリオの前後関係においても改善された画像品質を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、独立請求項に従って、CT画像の画像処理のためのコンピュータ実施方法、該画像処理のための方法を含む方法、CT画像の画像処理を実行するためのデータ処理システム、該データ処理システムを含むシステム、コンピュータプログラム製品、及びコンピュータ可読媒体を提供する。好ましい実施形態は、従属請求項に規定されている。
【0010】
本発明は、CT画像の画像処理のためのコンピュータ実施方法を提供する。該方法は、CT画像に対し1以上の前処理ステップを実行して、前処理されたCT画像を得るステップを有し、該1以上の前処理ステップはエッジ保存ノイズ除去アルゴリズムを適用するステップを含む。該方法は、更に、前処理されたCT画像に対し適応型スパイク抑圧アルゴリズムを実行して、処理されたCT画像を得るステップを有する。適応型スパイク抑圧アルゴリズムは、特に、処理されたCT画像が前処理されたCT画像と比較して少ない数のスパイクを有するように構成されたアルゴリズムであり得る。
【0011】
請求項に記載される該方法は、スパイク抑圧を適応的な態様で、且つ、エッジを保持するノイズ除去により前もってノイズ除去された画像データに対して実行することにより、前記問題の少なくとも1つを解決することを可能にする。
【0012】
請求項に記載の方法は、スパイクノイズを効果的に抑圧すると共にテクスチャを維持しながら、例えば最大90%相当の線量低減さえ可能な大幅なノイズ低減を可能にする。上記テクスチャの維持は、従来のCT画像のテクスチャ及び見え方を提供でき、例えば、プラスチックのような又は人工的な見え方を有する画像を回避できる。このように、この方法は、従来のCT画像のテクスチャに依存する現在の手順と互換性のある結果をもたらす。
前処理ステップにおいてデータをノイズ除去することは、スパイクの信号対雑音比を増加させ、このことは、スパイクを識別及び除去することを容易にする。
本開示は、適応型ノイズ除去アルゴリズムを提供する。言い換えると、このアルゴリズムは適応型スパイクノイズ抑圧法(aSNS)を実行する。
【0013】
本開示による方法は、PhCシステム及び低線量CTスキャンにおいてノイズを除去すること、特に、画像のテクスチャを維持しながら、大幅なノイズ低減及びスパイクノイズの抑圧を行うことを可能にすると共に、これらに適している。
【0014】
適応型アルゴリズムとは、画像の処理に使用されるモデルが、該モデルが特定の基準を満たしているかの判定に応じて、処理される画像毎に適応され得ることを意味する。
【0015】
当該技術分野で知られているエッジ保存ノイズ除去アルゴリズム、例えばPhilips iDoseアルゴリズムを前処理ステップで適用できる。ノイズ除去アルゴリズムを適用するステップは、バイラテラルフィルタを使用してデータを線形モデル又は二次モデルに当てはめるステップを含み得る。これにより、エッジ及びテクスチャを保存しながら、スパイク及びノイズの高信頼度の除去が可能になる。
【0016】
上述されたように、「スパイク抑圧」という用語は、前処理された画像と比較して、処理された画像におけるスパイクの数が少ないことを指す。画像の前処理は、入力CT画像のスパイクの信号対雑音比(SNR)を増加させる。当該スパイク削減は、特に、これらのスパイクを除去する助けとなる。処理された画像は、前処理前の画像と比較して、少ない数のスパイクを有し得るが、必ずしも少ない数のスパイクを有するとは限らない。
【0017】
本開示におけるCT画像は、光子計数CT画像、特に多重エネルギレベルCT画像であり得る。
【0018】
適応型スパイク抑圧アルゴリズムは、前処理された画像のボクセルの3次元近傍に対してモデル、特に線形モデルを当てはめるステップを有し得る。
これにより、鋭いエッジを保存しながら、高信頼度のスパイク除去が可能になる。
【0019】
適応型スパイク抑圧アルゴリズムを実行するステップは、当該モデル、例えば線形モデルを認定するステップを含み得る。モデルを認定するステップは、該モデルが1以上の所定の基準を満たすかをチェックするステップを含み得る。適応型スパイク抑圧アルゴリズムを実行するステップは、更に、当該モデルが1以上の所定の基準を満たしていないと判定したことに応答して、該モデルの1以上のモデルパラメータを適応させて修正されたモデルを得るステップを有し得る。
【0020】
上記により、結果の品質を依然として保証しながら、当該方法を、広範囲の入力画像等の広範囲の異なる条件下で適用することが可能になる。初期モデルが所与の条件に適していない場合、本開示のフィーチャは当該モデルを調整することを可能にする。
【0021】
上記基準は、例えば、ボクセルの重みが所定の閾値を超えない及び/又は最も近い隣接ボクセルの重みを所定の量を超えて超過しないこと、及び/又は中心ボクセルの平均重みが所定の閾値を超えないことを含み得る。
【0022】
スパイク抑圧アルゴリズムを実行するステップは、修正されたモデルを認定するステップ及び1以上のモデルパラメータを適応させるステップを、修正されたモデルが所定の基準を満たすまで繰り返すステップを含み得る。
【0023】
言い換えると、モデルは、許容できる結果が得られるまで繰り返し改善され得る。このような繰り返し手順により、所定の基準を満たすモデルに可能性としてはつながるが、同時にテクスチャ及び/又はコントラストの喪失を生じ得るような、モデルを適応させる際の過剰補償を回避できる。
【0024】
スパイク抑圧アルゴリズムを実行するステップは、更に、特にモデル又は修正されたモデルが所定の基準を満たすと判定したことに応答して、ボクセルに対して該モデル又は修正されたモデルを適用するステップを含み得る。すなわち、モデルが所定の基準を満たすと判定することに応答して該モデルがボクセルに適用され得、及び/又は修正されたモデルが所定の基準を満たすと判定することに応答して該修正されたモデルがボクセルに適用され得る。
【0025】
言い換えると、ボクセル値は、必要ならば、すなわち当該ボクセルがモデルに基づいてスパイクの一部であると判定された場合に補正される。このステップは、画像のサブ領域又は画像全体の複数のボクセル、特に全てのボクセルに対して実行され得る。これにより、画像のスパイクの数は低減される。
【0026】
本開示において、モデルを当てはめるステップは、ボクセル毎に、複数の最も近い隣接ボクセルの各々について重み係数を、特に、当該ボクセルと最も近い隣接ボクセルとの間の空間距離に基づく重み及び当該ボクセルと最も近い隣接ボクセルとの間の値距離に基づく重みの少なくとも一方を組み込んだ重み係数を決定するステップを含み得る。これにより、スパイクの高信頼度の識別及び除去が可能になる。
【0027】
前述したように、本開示において、適応型スパイク抑圧アルゴリズムを実行するステップは、モデルが1以上の所定の基準を満たすかをチェックするステップを含む該モデルを認定するステップを有し得る。モデルが1以上の所定の基準を満たすかをチェックするステップは、1以上のボクセルの重み係数が所定の範囲内にあるか、特に、所定の閾値未満に留まるかをチェックするステップを含み得る。代わりに又は加えて、モデルが1以上の所定の基準を満たすかをチェックするステップは、1以上のボクセルの重みが最も近い隣接ボクセルの重みを所定の量を超えて超過するか、及び/又は幾つかの中心ボクセルの重みが所定の範囲内にあるか、特に所定の閾値未満に留まるかをチェックするステップを含み得る。
【0028】
上記により、モデルが更なる適応を必要とするか高信頼度で判定することが可能になる。
【0029】
本開示において、モデルを適用するステップは、ボクセル毎に、複数の最も近い隣接ボクセルの各々について決定された重み係数又は複数の重み係数を使用して加重平均を実行するステップを含み得る。これにより、スパイクの高信頼度の除去が可能になる。
【0030】
本開示において、前処理された画像におけるボクセルの3次元近傍に対してモデルを当てはめるステップはフィルタを使用して実行され得、1以上のモデルパラメータを適応させるステップはフィルタパラメータを適応させるステップを含み得る。これにより、エッジ及びテクスチャを保持しながら、スパイク及びノイズの高信頼度の除去が可能になる。
【0031】
1以上のモデルパラメータを適応させるステップは、重みの積極性を決定するパラメータを適応させるステップ、特に、重みの積極性を決定するパラメータを該重みの積極性が増加するように適応させるステップを含み得る。
【0032】
重みの積極性は、スパイクを識別する際に当該モデルがどの様に敏感であるかを決定する。すなわち、積極性が高いほど、一層多くのボクセルがスパイクとして識別され、全体の画像はスパイク除去後に一層滑らかとなるであろう。積極性を調整することは、スパイクを高信頼度で除去しながらテクスチャを維持するようにモデルを修正することを可能にする。
【0033】
代わりに又は加えて、1以上のモデルパラメータを適応させるステップは、空間重みを制御するパラメータを適応させるステップ、特に、空間重みを制御するパラメータを該空間重みが増加するように適応させるステップを含み得る。
【0034】
代わりに又は加えて、1以上のモデルパラメータを適応させるステップは、最も近い隣接ボクセルの数を決定するパラメータを適応させるステップ、特に最も近い隣接ボクセルの数を決定するパラメータを該最も近い隣接ボクセルの数が増加するように適応させるステップを含み得る。
【0035】
オプションとして、1以上のモデルパラメータを適応させるステップは、重みの積極性を反復的に増加させるステップ、空間重みを反復的に増加させるステップ、及び/又は最も近い隣接ボクセルの数を反復的に増加させるステップを含み得る。これにより、スパイクを高信頼度で除去すると共にテクスチャを維持することを可能にするモデルパラメータに効率的に近づくことができる。
【0036】
本開示において、ボクセルV
i,j,kと最も近い隣接ボクセルとの間の空間距離に基づいた重みは、例えば、
【数1】
として決定でき、ここで、dxは軸平面におけるボクセルのサイズであり、dzはZ方向におけるボクセルのサイズであり、σ
spatialは重みの積極性を制御するアルゴリズムパラメータである。モデルを適応させるために、例えば、σ
spatialを、例えば所定の基準が満たされるまで反復的に増加されるように適応できる。これらの基準は、本開示全体を通して記載される基準であり得る。
【0037】
代わりに又は加えて、本開示において、ボクセルV
i,j,kと最も近い隣接ボクセルとの間の値距離に基づいた重みは、
【数2】
として決定でき、ここで、n^
i,j,kはボクセルV
i,j,kの局部ノイズレベル推定値であり、multは重みの積極性を制御するアルゴリズムパラメータである。モデルを適応させるために、例えば、multを、例えば所定の基準が満たされるまで反復的に増加されるように適応できる。これらの基準は、本開示全体を通して記載される基準であり得る。
【0038】
本開示において、モデルを適用するステップは、
【数3】
として加重平均を適用するステップを含むことができ、ここで、V^
1
i,j,kはボクセルV
i,j,kの(新しい)無ノイズ推定値を表し、w
i’,j’,k’はボクセルV
i,j,kの最も近い隣接ボクセルの重み係数であり、特にw
i’,j’,k’=w
spatial
i’,j’,k’ w
HU
i’,j’,k’である。特に、w
spatial
i’,j’,k’はボクセルV
i,j,kと最も近い隣接ボクセルとの間の空間距離に基づく重みであり得る一方、w
HU
i’,j’,k’はボクセルV
i,j,kと最も近い隣接ボクセルとの間の値距離に基づく重みであり得る。重みw
spatial
i’,j’,k’及び/又は重みw
HU
i’,j’,k’は、例えば、前述したように決定できる。
【0039】
本開示は、本開示による画像処理のための方法を含む方法も提供する。
【0040】
この方法は、光子計数CT画像化システムにより、特に低線量CTスキャンによりCT画像をキャプチャするステップを更に含むことができる。該CT画像化システムは、放射線を複数の異なるエネルギレベルで検出するCT画像化システムであり得る。
【0041】
代わりに又は加えて、該方法は、処理されたCT画像を記憶装置に記憶し、及び/又は処理されたCT画像を特に表示装置に出力するステップを更に有し得る。このように、処理された画像はコンピューティング要素により及び/又はユーザにより使用することができる。例えば、コンピューティング要素は、画像誘導ナビゲーションに使用するために及び/又はコンピュータ画像認識方法のために、記憶装置上の処理されたCT画像にアクセスすることができる。代わりに又は加えて、ユーザは、画像誘導ナビゲーション及び/又は視覚的分析に使用するために表示装置上の処理されたCT画像を見ることができる。
【0042】
代わりに又は加えて、当該方法は、処理されたCT画像を画像誘導ナビゲーションのために及び/又はコンピュータ画像認識方法のために使用するステップを含み得る。
【0043】
本開示による処理されたCT画像は、スパイクが高信頼度で除去され、テクスチャが維持されているので、これら使用例の全てにおいて一層良好な結果をもたらすであろう。
【0044】
本開示は、CT画像に対し1以上の前処理ステップを実行して前処理されたCT画像を得るように構成されたデータ処理システムも提供し、ここで、1以上の前処理ステップはエッジ保存ノイズ除去アルゴリズムを適用するステップを含む。このデータ処理システムは、更に、前処理されたCT画像に対し適応型スパイク抑圧アルゴリズムを実行して、処理されたCT画像を得るように構成される。適応型スパイク抑圧アルゴリズムは、特に、処理されたCT画像が前処理されたCT画像と比較して少ない数のスパイクを有するように構成できる。特に、該データ処理システムは、本開示のCT画像の画像処理のための方法のステップの何れかを実行するように構成できる。該方法のステップの文脈では、上記開示及び方法の請求項が参照される。
【0045】
本開示は、本開示のデータ処理システムを備えるシステムも提供する。このシステムは、更に、CT画像又は複数の画像をキャプチャするように構成されたCT画像化システムであって、特に、光子計数CT画像化システムであるCT画像化システムを有し得る。前述したように、スパイク除去は、さもなければ劣った画像品質を生じ得る光子計数CT画像にとり特に有益である。
【0046】
代わりに又は加えて、当該システムは、処理されたCT画像を出力するように構成された表示装置を有し得る。前述したように、この構成は、ユーザが、例えば画像誘導ナビゲーション及び/又は視覚的分析に使用するために、処理されたCT画像を表示装置上で見ることを可能にする。
【0047】
本開示は、コンピュータにより実行された場合に、該コンピュータに、CT画像に対し1以上の前処理ステップを実行して前処理されたCT画像を得るステップであって、該1以上の前処理ステップがエッジ保存ノイズ除去アルゴリズムを適用するステップを含む、ステップ、及び前処理されたCT画像に対し適応型スパイク抑圧アルゴリズムを実行して処理されたCT画像を得るステップを実行させる命令を有するコンピュータプログラム製品も提供する。適応型スパイク抑圧アルゴリズムは、特に、処理された画像が前処理された画像と比較して低減された数のスパイクを有するように構成され得る。特に、上記命令は、プログラムがコンピュータにより実行された場合に、該コンピュータに本開示のCT画像の画像処理のための方法の何れかを実行させ得る。
【0048】
本開示は、コンピュータにより実行された場合に、該コンピュータに、CT画像に対し1以上の前処理ステップを実行して前処理されたCT画像を得るステップであって、該1以上の前処理ステップがエッジ保存ノイズ除去アルゴリズムを適用するステップを含む、ステップ、及び前処理されたCT画像に対し適応型スパイク抑圧アルゴリズムを実行して処理されたCT画像を得るステップを実行させる命令を有するコンピュータ可読媒体も提供する。適応型スパイク抑圧アルゴリズムは、特に、処理されたCT画像が前処理されたCT画像と比較して低減された数のスパイクを有するように構成され得る。
【0049】
特に、上記命令は、コンピュータにより実行された場合に、該コンピュータに本開示のCT画像の画像処理のための方法の何れかを実行させることができる。
【0050】
画像処理のための方法のコンテキストで概説したフィーチャ及び利点は、本開示の画像処理のための方法を含む方法、データ処理システム、データ処理システムを含むシステム、コンピュータプログラム製品、及びコンピュータ読み取り可能な媒体にも同様に当てはまる。
【0051】
更なるフィーチャ、例、及び利点は、添付図面を参照してなされる詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】
図1は、本発明によるCT画像の画像処理のための方法のフローチャートを示す。
【
図2】
図2は、本開示によるシステムの実寸でない概略図を示す。
【
図3】
図3は、本開示による適応型スパイク抑圧法の一例のフローチャートを示す。
【
図4】
図4は、本開示によるエッジ保存ノイズ除去法の一例のフローチャートを示す。
【
図5a】
図5aは、或る倍率における前処理前の、前処理後の、及び適応型スパイク抑圧後の第1の例示的なCT画像を示す。
【
図5b】
図5bは、他の倍率における前処理前の、前処理後の、及び適応型スパイク抑圧後の第1の例示的なCT画像を示す。
【
図6a】
図6aは、或る倍率における前処理前の、前処理後の、及び適応型スパイク抑圧後の第2の例示的なCT画像を示す。
【
図6b】
図6bは、他の倍率における前処理前の、前処理後の、及び適応型スパイク抑圧後の第2の例示的なCT画像を示す。
【
図7a】
図7aは、或る倍率における前処理前の、前処理後の、及び適応型スパイク抑圧後の第3の例示的なCT画像を示す。
【
図7b】
図7bは、他の倍率における前処理前の、前処理後の、及び適応型スパイク抑圧後の第3の例示的なCT画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、本開示によるCT画像の画像処理のための例示的方法のフローチャートを示す。
【0054】
この方法は、前処理された画像を得るために1以上の前処理ステップを実行するステップS1、より具体的には、例えばPhilips iDoseアルゴリズム等のエッジ保存ノイズ除去アルゴリズムを適用するステップを含む。このアルゴリズムは、ノイズを除去するために、局部構造を線形(定数)モデル又は非線形モデルに当てはめるモデルフィッタ(モデル当てはめ器)を使用する。これにより、基礎となる画像細部を保存しながらノイズを除去できる。
【0055】
このようなエッジ保存ノイズ除去法の一例が、以下に
図4の前後関係において示される。しかしながら、ステップS1に関しては、他のエッジ保存ノイズ除去アルゴリズムも考えられる。
【0056】
当該方法は、更に、前処理されたCT画像に対して適応型スパイク抑圧アルゴリズムを実行して、処理された画像を得るステップS2を含む。この適応型スパイク抑圧アルゴリズムは、処理されたCT画像が前処理されたCT画像と比較して少ない数のスパイクを有するように構成され得る。
適応型スパイク抑圧法の一例は、後に
図3の前後関係において示される。
【0057】
図2は、本開示によるシステム1の実寸ではない概略図を示す。この例において、システム1はデータ処理システム2を含む。このデータ処理システムは、CT画像に対して1以上の前処理ステップを実行して前処理されたCT画像を得るように構成され、その場合において、上記1以上の前処理ステップはエッジ保存ノイズ除去アルゴリズムを適用するステップを含む。該データ処理システムは、更に、前処理されたCT画像に対して適応型スパイク抑圧アルゴリズムを実行して、処理されたCT画像を得るように構成される。この適応型スパイク抑圧アルゴリズムは、処理されたCT画像が前処理されたCT画像と比較して少ない数のスパイクを有するように構成され得る。
【0058】
当該データ処理システムは、特に、本開示の画像処理方法の何れかを実行するように構成され得る。該データ処理システムは、コンピューティング装置とすることができ、又は、オプションとしてクラウド装置含む、相互接続されたコンピューティング装置の分散システムとすることもできる。
【0059】
図2に示されるシステム1は、CT画像を取得するように構成されたオプションとしてのCT画像化システム3を備える。例えば、該CT画像化システムは光子計数CT画像化システムであり得る。該CT画像化システムは第1のデータ接続部6を介してデータ処理システムに接続され得る。
【0060】
図2に示されるシステム1は、オプションとしての表示装置4も備える。該表示装置は、少なくとも前記処理された画像を表示すると共に、オプションとして初期画像及び/又は前処理された画像も表示するように構成され得る。該表示装置は、第2のデータ接続部5を介してデータ処理システムに接続され得る。
【0061】
図2に示されるように、当該システムがCT画像化システム3及び表示装置4を有する場合、これらはオプションとして第3のデータ接続部7を介して相互に接続することもできる。
【0062】
データ接続部5、6及び7は、各々、有線接続又は無線データ接続であり得る。
【0063】
当該システムは上記要素の全て含む必要はなく、上述されていない要素を有することもできると理解されたい。
【0064】
例えばiDoseを適用した後に得られる前処理された(すなわち、ノイズ除去された)画像データに適用される本開示による適応型スパイク抑圧法の一例を、以下に
図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0065】
前述したように、当該データのノイズは除去されているため、スパイクの信号対雑音比は高くなり、スパイクを識別及び除去することは一層容易になる。当該適応型スパイク抑圧は、以下では、適応型スパイクノイズ抑圧(aSNS)とも称される。上記ステップは、解説のみを目的とした例示的なステップであると理解されたい。
【0066】
図3のフローチャートから分かるように、例示的なaSNS「ノイズ除去部」は、ボクセルの3D近傍に対して線形(定数)モデルを当てはめる線形モデルフィッタ要素、当該モデルがaSNS要件を満たすかをチェックするモデル認定部要素、当該モデルが所定の要件を満たしていない場合に該モデルのパラメータを適応させるモデルパラメータ適応要素、及び当該ボクセルにモデルを適用するモデル適用部要素を有する。
上記要素の各々に関する例を以下に示す。以下の各要素は、解説のみを目的とした例示的な要素である。
【0067】
[線形モデルフィッタ]
線形モデルフィッタ要素は以下のように構成できる。当該ボリュームの各ボクセルVi,j,kに関して、N個の最も近い隣接ボクセルに対する重み係数が、式1:wi’,j’,k’=wspatial
i’,j’,k’wHU
i’,j’,k’に基づいて決定され、ここで、wspatial
i’,j’,k’はVi,j,kまでの空間距離に応じた隣接ボクセルに対する重みを表し、wHU
i’,j’,k’はHU(ハウンズフィールド単位)空間におけるVi,j,kまでの値距離に応じた隣接ボクセルに対する重みを表す。
【0068】
空間距離に応じた隣接ボクセルに対する重みw
spatial
i’,j’,k’は、式2:
【数4】
に基づいて決定でき、ここで、dxは軸平面におけるボクセルのサイズ(例えば、mmでの)であり、dzはZ方向におけるボクセルのサイズ(例えば、mmでの)であり、σ
spatialは重みの積極性を制御するアルゴリズムパラメータである。w
HU
i’,j’,k’は、式3:
【数5】
に基づいて決定でき、ここで、n^
i,j,kはボクセルV
i,j,kの局部ノイズレベル推定値であり、multは重みの積極性を制御するアルゴリズムパラメータである。この特定の局所性重み付けは、当てはめられたモデルに当該ボリュームの局部構造を保持するようにさせる。
【0069】
[モデル認定部]
モデル認定部要素は、得られた重みwi’,j’,k’を分析して、当該モデルが所定の基準を満たしているかを判断できる。中心ボクセルの重みが所定の閾値を超え、若しくは最も近い隣接ボクセルの重みを所定量より多くえるか、又は中心ボクセルの平均重みが或る閾値を超える場合、このことは、モデルの適応化が必要であることを示し得る。例えば、中心ボクセルの重みが最も近い隣接ボクセルの重みを大幅に超える場合、これは、当該ボクセルが隣接ボクセルから十分なサポートを受けていないことを意味する。当該モデルが基準を満たしていない場合、当該方法は、モデルパラメータを、例えばモデルパラメータ適応部要素を使用して適応するステップに進む。それ以外の場合は、当該モデルが例えばモデル適用部要素により適用される。
【0070】
[モデルパラメータ適応部]
モデルパラメータ適応部要素は、以下のパラメータのうちの1以上を変更する(特に増加させる)ことにより当該モデルを適応させることができる:
mult(これは、重みの積極性を制御するアルゴリズムパラメータである);
σspatial(これは、空間的な重みを制御するアルゴリズムパラメータである);及び
隣接ボクセルの数N。
【0071】
本開示によれば、モデルパラメータを適応させた後、モデル認定部要素は該適応させたモデルを再度認定できることに留意されたい。これらのモデルを適応させ及び認定するステップは、モデル認定部要素がそれ以上の適応化は不要であると判定するまで繰り返され得る。その後、当該モデルは、例えばモデル適用部要素により適用される。
【0072】
[モデル適用部]
モデル適用部要素は、式4:
【数6】
に示されるような加重平均を適用することによりモデルを適用でき、ここで、V^
1
i,j,kはボクセルV
i,j,kの(新しい)無ノイズ推定値を表す。前述したように、当該モデルは、モデル認定部要素が該モデルの適応化が不要又はそれ以上の適応化が不要であると判定した場合にのみ適用され得る。
【0073】
本開示に従ってCT画像を前処理するために使用できる例示的なノイズ除去アルゴリズムのフローチャートが
図4に示されている。ノイズ除去部は、前処理するための画像データを受け取り、適切な線形モデル又は二次モデルを選択し、画像データからノイズを除去して、本開示のスパイク抑圧部の入力として使用されるべき前処理されたノイズ除去された画像データを得る。
【0074】
以下では、各々が
図5a及び
図5b、
図6a及び
図6b、並びに
図7a及び
図7bに示された本開示の方法の効果を示す3つの例が説明される。これらの例における画像データは、スペクトル光子計数CTスキャナ、より具体的にはフィリップススペクトル光子計数CT(SPCCT)スキャナを使用して取得されたものである。評価には、非常に低い線量のデータが使用された。図において強調された長方形は、各々、例示のみとしての100×100ピクセルのサイズの正方形領域である。
【0075】
スパイク及びその強度を識別するための一例として、スパイク閾値を定義することができる。そのようにするために、例えば、中央値Q2、第1四分位数Q1及び第3四分位数Q3決定でき、四分位範囲IQR=Q3-Q1を正方形領域に関して計算できる。この場合、スパイク閾値は、正のスパイク値の場合はスパイク閾値=Q3-Q2+1.5*IQRと定義でき、負のスパイク値の場合はスパイク閾値=Q2-Q1+1.5*IQRと定義できる。
【0076】
abs(ピクセル値-局部中央値)>スパイク閾値となる如何なるピクセルもスパイクとして識別され得る一方、スパイクの強度はabs(ピクセル値-局部中央値)として定義でき、ここで、局部中央値は5x5の正方形のピクセル内の中央値として計算できる。
【0077】
図5a及び
図5bは第1の例を示す。より具体的には、左から右に、前処理の前(FBP(フィルタリング逆投影の略)とラベル付けされている)、前処理の後(iDoseとラベル付けされている)、及び適応型スパイク抑圧の後(aSNS(適応型スパイクノイズ抑圧の略)とラベル付けされている)の異なる倍率における第1の例示的CT画像が示されている。選択された正方形領域は各画像において強調表示されており、スパイクは円により印されている。
図5bは、選択された正方形領域の拡大図である。この例において、初期画像はFBP画像であり、前処理された画像は前処理のためにiDoseアルゴリズム(本開示によるエッジ保存ノイズ除去アルゴリズムの一例である)を適用することにより得られたものである。処理された画像は、前処理された画像に本開示のスパイク抑圧法を適用することにより得られたものである。FBP画像には、4つのスパイクがある。平均スパイク強度は820HUである。iDose画像において、スパイクの数は29に増加する。平均スパイク強度は446HUである。aSNS画像において、スパイクの数は2に減少する。平均スパイク強度は284HUである。
【0078】
図6a及び
図6bは第2の例を示す。より具体的には、左から右に、前処理の前、前処理の後、及び適応型スパイク抑圧後の異なる倍率での第2の例示的なCT画像が示されている。選択された正方形領域は各画像で強調表示され、スパイクは円により印されている。
図6bは、選択された正方形領域の拡大図を示している。この例において、初期画像はFBP画像であり、前処理された画像はiDoseアルゴリズムを適用することにより得られている。処理された画像は、前処理された画像に本開示のスパイク抑圧法を適用することにより得られている。FBP画像には12個のスパイクがある。平均スパイク強度は436HUである。iDose画像において、スパイクの数は31に増加する。平均スパイク強度は189HUである。aSNS画像において、スパイクの数は2に減少する。平均スパイク強度は154HUである。
【0079】
図7a及び
図7bは第3の例を示す。より具体的には、左から右に、前処理の前、前処理の後、及び適応型スパイク抑圧の後の異なる倍率での第3の例示的なCT画像が示されている。選択された正方形領域は各画像で強調表示され、スパイクは円により印されている。
図7bは、選択された正方形領域の拡大図を示している。この例において、初期画像はFBP画像であり、前処理された画像はiDoseアルゴリズムを適用することにより得られている。処理された画像は、前処理された画像に本開示のスパイク抑圧法を適用することにより得られている。FBP画像には、9個のスパイクがある。平均スパイク強度は426HUである。iDose画像において、スパイクの数は22に増加する。平均スパイク強度は176HUである。aSNS画像において、スパイクの数は2に減少する。平均スパイク強度は137HUである。
【0080】
上記3つの例の結果が下記の表1に要約されており、これによれば、スパイク抑圧によってスパイクの数が91~94%抑圧され、スパイク強度の平均が19~36%抑圧されることが示されている。
【0081】
【0082】
このように、画像及び計算の両方から、スパイクの数及びそれらの強度が著しく改善されることが分かる。
【0083】
本発明を図面及び上記記載において詳細に図示及び説明したが、このような図示及び説明は例示的なものであり、限定するものではないと見なされるべきである。すなわち、本発明は開示された実施形態に限定されるものではない。上記記載及び図面を考慮すれば、請求項により定められる本発明の範囲内で、当業者により様々な変形例を実施できることは明らかであろう。
【符号の説明】
【0084】
S1 1以上の前処理ステップを実行する
S2 適応型スパイク抑圧アルゴリズムを実行する
1 システム
2 データ処理システム2
3 CT画像化システム
4 表示装置
5 データ接続部
6 データ接続部
7 データ接続部
【国際調査報告】