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特表2024-544334逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/739 20060101AFI20241121BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01L29/78 655F
H01L29/78 657D
H01L29/78 655G
H01L29/78 655C
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024537123
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2022082793
(87)【国際公開番号】W WO2023117261
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】21215903.2
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボクスティーン,ボニ・コフィ
(72)【発明者】
【氏名】ビターレ,ボルフガング・アマデウス
(57)【要約】
一実施形態によれば、RC-IGBT(1000)は、エミッタ側(101)およびコレクタ側(102)を有する半導体本体(100)と、少なくとも1つのパイロット領域(10)および少なくとも1つの混合領域(11)を有するコレクタ側のコレクタ層(1)と、コレクタ側上にあり、コレクタ層と電気的に接触するコレクタ電極(2)とを備える。パイロット領域は、第1の導電型である。混合領域は、第1の導電型の第1のサブ領域(111)と、第2の導電型の第2のサブ領域(112)とを有する。第1のサブ領域内のドーピング濃度は、パイロット領域内のドーピング濃度とは異なる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)であって、
エミッタ側(101)およびコレクタ側(102)を有する半導体本体(100)と、
少なくとも1つのパイロット領域(10)および少なくとも1つの混合領域(11)を有する前記コレクタ側(102)のコレクタ層(1)と、
前記コレクタ側(102)にあり、前記コレクタ層(1)と電気的に接触するコレクタ電極(2)とを備え、
前記パイロット領域(10)は第1の導電型であり、
前記混合領域(11)は、前記第1の導電型の第1のサブ領域(111)および第2の導電型の第2のサブ領域(112)を有し、
前記第1のサブ領域(111)のドーピング濃度は前記パイロット領域(10)のドーピング濃度とは異なり、
前記コレクタ層(1)はエッジ領域(12)をさらに備え、
前記エッジ領域(12)は、前記パイロット領域(10)および/または前記混合領域(11)を横方向に取り囲み、
前記エッジ領域(12)のより大きい部分は、前記第1のサブ領域(111)と同じ導電型であるが、前記第1のサブ領域(111)とは異なるドーピング濃度を有し、または
前記エッジ領域(12)のより大きい部分は、前記第2のサブ領域(112)と同じ導電型であるが、前記第2のサブ領域(112)とは異なるドーピング濃度を有する、逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)。
【請求項2】
前記第1のサブ領域(111)の前記ドーピング濃度は、前記パイロット領域(10)の前記ドーピング濃度よりも大きい、請求項1に記載の逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)。
【請求項3】
前記エッジ領域(12)の前記より大きい部分は、前記パイロット領域(10)と同じ導電型であり、前記パイロット領域(10)と同じドーピング濃度を有する、請求項1または2に記載の逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)。
【請求項4】
前記第2のサブ領域(112)は前記エッジ領域(12)内へと延在する、先行する請求項のいずれか1項に記載の逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)。
【請求項5】
前記コレクタ側(102)において、前記第1のサブ領域(111)および前記第2のサブ領域(112)は、前記パイロット領域(10)から離れる方向に前記パイロット領域(10)から延在する、先行する請求項のいずれか1項に記載の逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)。
【請求項6】
前記パイロット領域(10)は、前記混合領域(11)によって横方向に囲まれている、先行する請求項のいずれか1項に記載の逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)。
【請求項7】
前記パイロット領域(10)は、前記コレクタ層(1)に対して斜めに貫通して延伸する対称軸(20)に関する回転対称性を有し、
前記混合領域(11)における前記第1のサブ領域(111)および前記第2のサブ領域(112)の配置は、前記対称軸(20)に関する回転対称性を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)。
【請求項8】
前記パイロット領域(10)は、前記パイロット領域(10)の中心(103)から半径方向に延在する少なくとも2つのアーム(101)を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)。
【請求項9】
前記パイロット領域(10)は、1つまたは複数の第1のサブ領域(111)に連結されており、
前記パイロット領域(10)の総面積は、前記混合領域(11)の総面積の少なくとも10%であり、
前記パイロット領域(10)は、連続したまたは単連結領域である、先行する請求項のいずれか1項に記載の逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)。
【請求項10】
前記半導体本体(100)は、
前記第2の導電型のベース層(3)と、
前記ベース層(3)によって前記コレクタ層(1)から離間されている前記第1の導電型の少なくとも1つのウェル領域(4)と、
前記ウェル領域(4)によって前記ベース層(3)から離間されている前記第2の導電型の少なくとも1つのエミッタ領域(5)とをさらに備え、
少なくとも1つのエミッタ電極(6)が、前記エミッタ側(101)に配置され、少なくとも1つのエミッタ領域(5)に電気的に接触しており、
少なくとも1つのゲート電極(7)が、前記エミッタ側(101)に配置され、前記ウェル領域(4)から電気的に絶縁されている、先行する請求項のいずれか1項に記載の逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)。
【請求項11】
逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)を生産するための方法であって、
エミッタ側(101)およびコレクタ側(102)を有する半導体本体(1)を提供することであって、半導体本体(1)は、第1の導電型の少なくとも1つのパイロット領域(10)と、前記第1の導電型の第1のサブ領域(111)および第2の導電型の第2のサブ領域(112)を有する混合領域(11)とを有するコレクタ層(1)を備え、前記第1のサブ領域(111)および前記パイロット領域(10)は同じドーピング濃度を有する、提供することと、
前記パイロット領域(10)および前記第1のサブ領域(111)内の前記ドーピング濃度が異なるまで、前記パイロット領域(10)および/または前記第1のサブ領域(111)内の前記ドーピング濃度を変更することと
を含む、方法。
【請求項12】
前記ドーピング濃度を変化させるために、
前記パイロット領域(10)または前記第1のサブ領域(111)のいずれかがマスキングされ、注入プロセスが実施され、前記注入プロセスにおいて、前記第1のサブ領域(111)または前記パイロット領域(10)のドーピング濃度が増大される一方で、前記マスキングにより、前記パイロット領域(10)および前記第1のサブ領域(111)のそれぞれ他方のドーピング濃度は変化しないか、または変化がより小さく、および/または
前記第1のサブ領域(111)または前記パイロット領域(10)のいずれかがアニーリングされ、前記パイロット領域(10)および前記第1のサブ領域(111)のそれぞれの他方がアニーリングされない局所的活性化プロセスが実行される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、以下においてRC-IGBT(Reverse-Conducting Insulated Gate Bipolar Transistor)とも呼ばれる逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタに関する。さらに、本開示は、逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタを生産するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2015/097157号は、逆導通半導体デバイスに関する。米国特許出願公開第2015/236143号は、裏側電極に直接隣接するゾーンを有する半導体デバイスおよびRC-IGBTに関する。米国特許出願公開第2005/017290号は、還流ダイオードを内蔵する絶縁ゲートバイポーラトランジスタに関する。米国特許出願公開第2018/226397号は、半導体デバイスおよび電気装置に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、安全動作領域(SOA:Safe Operating Area)能力のようなロバスト性と静的損失との間の改善されたトレードオフを有する改善されたRC-IGBTが必要とされている。さらに、そのようなRC-IGBTを生産するための改善された方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の実施形態は、SOA能力と静的損失との間のトレードオフが改善されたRC-IGBTに関する。SOAは、安全動作領域(safe operation area)の略である。さらなる実施形態は、RC-IGBTを生成するための方法に関する。
【0005】
まず、RC-IGBTを記述する。
一実施形態によれば、RC-IGBTは、エミッタ側およびコレクタ側を有する半導体本体と、少なくとも1つのパイロット領域および少なくとも1つの混合領域を有するコレクタ側のコレクタ層と、コレクタ側上にあり、コレクタ層と電気的に接触するコレクタ電極とを備える。パイロット領域は、第1の導電型である。混合領域は、第1の導電型の第1のサブ領域および第2の導電型の第2のサブ領域を有する。第1のサブ領域内のドーピング濃度は、パイロット領域内のドーピング濃度とは異なる。
【0006】
パイロット領域および第1のサブ領域に対して異なるドーピング濃度を有することによって、静的損失を増大させることなくロバスト性を増大させることができる。例えば、パイロット領域内のドーピング濃度を減少させること、および/または第1のサブ領域内のドーピング濃度を増大させることによって、静的損失を維持または減少させながら、逆バイアスSOA(RBSOA:Reverse Bias SOA)を増大させることができる。特に高電流ターンオフ(RBSOA)中の、デバイスの活性領域全体におけるより均一な電流/プラズマ分布を得ることができる。
【0007】
開示されているRC-IGBTは、導通損失の増大を伴わずに、または制限されて、改善されたロバスト性(特に高いRBSOA)の利点を組み合わせる。これらの改善は、RBSOAを制限されない低状態損失デバイスの可能性の範囲を拡大する機会を提供する。これは、RC-IGBTが主に使用される低周波高電圧DC(HVDC:High-Voltage DC)システムにとって特に有利である。さらに、開示されているRC-IGBTは、製造方法に大きな変更を必要とせず、最大でも追加のフォトリソグラフィ工程が必要な程度である。
【0008】
本明細書に開示されるパイロット領域を有するRC-IGBTは、一般に、Biモード集積ゲートトランジスタ、略してBIGT(Bi-mode Integrated Gate Transistor)とも呼ばれる。BIGTは、IGBTと標準RC-IGBTとのハイブリッド構造を構成する。IGBTはパイロット領域のエリアにおいて実現され、したがってパイロットIGBTとも呼ばれ得る。標準RC-IGBTは、混合領域のエリアにおいて実現される。IGBTおよび標準RC-IGBTの両方は、それぞれ単一のデバイスまたは単一のチップ内に実装される。パイロットIGBTは、例えば、低温での順導通モードにおけるスナップバックを減少させるようなサイズにされる。以下では、特に明記しない限り、「RC-IGBT」という表現は、パイロット領域を有するRC-IGBTを指し、したがってBIGTを指し、BIGTの一部を形成する標準RC-IGBTを指さない。
【0009】
半導体本体は、シリコンを含むか、またはシリコンからなることができる。エミッタ側およびコレクタ側は、例えば、半導体本体を2つの対向する方向に境界する対向する側である。エミッタ側とコレクタ側との間の距離は、半導体本体の厚さである。
【0010】
コレクタ層は、半導体本体の一部であってもよい。コレクタ層は、半導体材料、例えばシリコンから作成されてもよい。例えば、コレクタ層は、コレクタ側を形成する。
【0011】
パイロット領域、サブ領域、および下に画定されたエッジ領域のようなコレクタ側の異なる領域は、コレクタ側に達することができ、すなわち、各々がコレクタ側の一部または一エリアを形成することができる。異なる領域は各々、コレクタ層の厚さ全体にわたって延在してもよい。
【0012】
コレクタ電極は、コレクタ側に隣接していてもよく、コレクタ層と電気的に接触していてもよい。コレクタ電極は、金属を含んでもよく、または金属からなってもよい。
【0013】
パイロット領域は、第1の導電型、例えば排他的に第1の導電型である。第1の導電型は、正孔伝導または電子伝導のいずれかであってもよい。したがって、パイロット領域は、pドープまたはnドープのいずれかであってもよい。例えば、パイロット領域は、その全体積にわたって、および/またはその全横方向膨張にわたって均質にドープされる。
【0014】
ここで、および以下において、均質なドーピング濃度とは、製造公差の範囲内で均質であることを意味し、例えば、平均ドーピング濃度からの最大5%の最大偏差を有する。
【0015】
本明細書では、横方向とは、それぞれコレクタ層または半導体本体のコレクタ側または主延在面に平行な方向であると理解される。
【0016】
混合領域は、第1の導電型、例えば排他的に第1の導電型の第1のサブ領域と、第2の導電型、例えば排他的に第2の導電型の第2のサブ領域とを含む。したがって、第2の導電型は、電子伝導または正孔伝導であってもよい。例えば、第1のサブ領域はpドープされ、第2のサブ領域はnドープされ、またはその逆である。すべての第1のサブ領域は、同じドーピング濃度を有してもよく、および/または、それぞれの横方向膨張および/または体積全体にわたって均質にドープされてもよい。同様に、すべての第2のサブ領域は、同じドーピング濃度を有してもよく、および/または、それぞれの横方向膨張および/または体積全体にわたって、製造公差内で均質にドープされてもよい。例えば、第1のサブ領域および第2のサブ領域は、混合領域内に交互に配置される。
【0017】
ここで、および以下において、同じドーピング濃度とは、製造公差の範囲内で同じドーピング濃度を意味し、例えば、最大または平均ドーピング濃度の最大偏差は最大5%である。
【0018】
パイロット領域の面積は、第1のサブ領域および/または第2のサブ領域の各々の面積よりも大きくてもよく、例えば、第1のサブ領域および/または第2のサブ領域の各々の面積の少なくとも5倍または少なくとも10倍または少なくとも100倍であってもよい。例えば、領域またはサブ領域の面積は、本明細書では、コレクタ側のそれぞれの領域/サブ領域の面積であると理解される。
【0019】
パイロット領域および/または混合領域は、連続した領域であってもよい。例えば、パイロット領域は、単連結領域、すなわち中断のない連続した領域である。
【0020】
パイロット領域のドーピング濃度は、第1のサブ領域のドーピング濃度とは異なる。例えば、ドーピング濃度は、少なくとも1.1または少なくとも1.5または少なくとも2または少なくとも5または少なくとも10の係数だけ互いに異なる。ここで、および以下では、2つの領域/サブ領域のドーピング濃度の比較は、これらの領域/サブ領域の平均ドーピング濃度および/または最大ドーピング濃度の比較であり得る。比較は、領域/サブ領域の表面、例えばコレクタ側のドーピング濃度にも関係し得る。最大ドーピング濃度は、領域の表面にあってもよい。
【0021】
例えば、パイロット領域内のドーピング濃度は、1・1016cm-3以上5・1019cm-3以下、例えば1・1015cm-3以上5・1018cm-3以下である。
【0022】
さらなる実施形態によれば、第1のサブ領域内のドーピング濃度は、パイロット領域内のドーピング濃度よりも大きい。例えば、各第1のサブ領域内のドーピング濃度は、パイロット領域内のドーピング濃度の少なくとも1.1倍または少なくとも1.5倍または少なくとも2倍または少なくとも5倍または少なくとも10倍である。パイロット領域および第1のサブ領域のドーパントは、同じであってもよく、例えばホウ素であってもよい。
【0023】
パイロット領域内のドーピング濃度を低減することによって、RBSOA能力および短絡SOA(SCSOA:Short Circuit SOA)(ホット)能力が増大するが、静的損失に望ましくない影響を及ぼす可能性があり、IGBT動作モードにおけるオン状態損失を増大させる可能性がある。混合領域の第1のサブ領域内のドーピング濃度を増大させると、IGBT動作モードにおけるオン状態損失が低減し、パイロット領域内のドーピング濃度の低減の効果が補償される。このようにして、既知のデバイスと同様のオン状態損失を有するが、改善されたRBSOAおよびSCSOA(ホット)能力を有するBIGTデバイスを提供することが可能である。
【0024】
さらなる実施形態によれば、コレクタ層はエッジ領域をさらに備える。エッジ領域は、横方向にコレクタ層を境界するコレクタ層の縁部まで延在してもよい。例えば、エッジ領域は、コレクタ層のすべての縁部を形成する。
【0025】
横方向において、エッジ領域は、RC-IGBTの終端領域と重なってもよい。例えば、エッジ領域は、RC-IGBTの終端領域と完全にまたは部分的に重なる。
【0026】
さらなる実施形態によれば、エッジ領域は、パイロット領域および/または混合領域を横方向に取り囲む。例えば、エッジ領域は、パイロット領域および/または混合領域を横方向に完全に取り囲む。エッジ領域は、パイロット領域および/または混合領域の周りにフレームを形成することができる。エッジ領域の面積は、各第1のサブ領域および/または第2のサブ領域の面積より大きくてもよい。例えば、エッジ領域は、混合領域および/またはパイロット領域の周りのその延在範囲に沿って一定の幅を有する。
【0027】
さらなる実施形態によれば、エッジ領域のより大きい部分(大部分)は、第1の導電型または第2の導電型のいずれかである。エッジ領域のより大きい部分は、本明細書においては、エッジ領域によって形成されるコレクタ側の面積のより大きい部分、またはエッジ領域の体積のより大きい部分を意味し得る。「より大きい部分」は、例えば、50%超または少なくとも75%を意味する。「より大きい部分」、「主要部分」、「大部分」、および「~のほとんど」は、本明細書では同義語として使用される。
【0028】
例えば、エッジ領域は、排他的に第1の導電型または第2の導電型である、第3のサブ領域とも呼ばれる1つのサブ領域を含む。第3のサブ領域は、エッジ領域のより大きい部分を形成することができる。第3のサブ領域は、エッジ領域の連続したサブ領域であってもよい。例えば、第3のサブ領域は、混合領域および/またはパイロット領域を横方向に完全に取り囲む。第3のサブ領域は、均質にドープされてもよい。
【0029】
さらなる実施形態によれば、エッジ領域のより大きい部分は、第1のサブ領域と同じ導電型であり、第1のサブ領域と同じドーピング濃度を有する。
【0030】
さらなる実施形態によれば、エッジ領域のより大きい部分は、第1のサブ領域と同じ導電型であり、第1のサブ領域とは異なるドーピング濃度を有する。例えば、エッジ領域のより大きい部分は、第1のサブ領域よりも低いドーピング濃度を有する。このようにして、SCSOA(ホット)能力をさらに改善しながら漏れを減少させることができる。
【0031】
エッジ領域のドーピング濃度は、第1のサブ領域のドーピング濃度の最大0.9倍または最大0.5倍または最大0.1倍であってもよい。例えば、エッジ領域のドーピング濃度は、パイロット領域と同じである。代替的に、エッジ領域のドーピング濃度は、第1のサブ領域のドーピング濃度の少なくとも1.1倍または少なくとも2倍または少なくとも10倍であってもよい。
【0032】
さらなる実施形態によれば、エッジ領域のより大きい部分は、パイロット領域と同じ導電型であり、パイロット領域と同じドーピング濃度を有する。
【0033】
さらなる実施形態によれば、エッジ領域のより大きい部分は、第2のサブ領域と同じ導電型である。この場合、エッジ領域のより大きい部分は、第2のサブ領域とは異なるドーピング濃度を有してもよく、または、第2のサブ領域と同じドーピング濃度を有してもよい。例えば、エッジ領域のより大きい部分はnドープされる。このようにして、p型終端領域のエミッタ連結部分がBIGTの内部ダイオードの追加のアノードエリアとして機能するため、ダイオード動作モードにおけるオン状態損失を減少させることができる。
【0034】
エッジ領域のより大きい部分のドーピング濃度は、混合領域内の第2のサブ領域のドーピング濃度よりも低くてもよく、例えば、第2のサブ領域のドーピング濃度の最大0.9倍または最大0.5倍または最大0.1倍であってもよい。付加的にまたは代替的に、エッジ領域のより大きい部分のドーピング濃度は、第1のサブ領域のドーピング濃度の少なくとも1.1倍または少なくとも2倍または少なくとも10倍であってもよい。ドーピングプロファイルの調整は、終端領域の下のプラズマ分布を改善し、(終端制限された)ダイオードターンオフSOAを維持または改善する機会を提供する。
【0035】
さらなる実施形態によれば、第2のサブ領域は、エッジ領域内へと延在する。エッジ領域は、エッジ領域内へと延在する第2のサブ領域の部分と、上述のエッジ領域のより大きい部分とからなってもよい。第1のサブ領域は、エッジ領域の前で終わってもよく、すなわち、エッジ領域内へと延在しない。例えば、第1のサブ領域は、エッジ領域に隣接する。
【0036】
さらなる実施形態によれば、パイロット領域は、混合領域によって横方向に取り囲まれ、例えば、混合領域によって完全に横方向に取り囲まれる。例えば、パイロット領域は、混合領域によってエッジ領域から離間される。
【0037】
さらなる実施形態によれば、パイロット領域、すなわちパイロット領域の形状は、対称軸に関して回転対称性を有する。対称軸は、コレクタ層に対して斜めに、例えば垂直に、および/またはコレクタ層を通って延伸してもよい。コレクタ層に対して斜めまたは垂直とは、例えば、コレクタ層の主延在面に対して斜めまたは垂直であることを意味する。対称軸は、パイロット領域を通って延伸してもよい。
【0038】
例えば、パイロット領域は、対称軸に関して2倍もしくは3倍もしくは4倍の回転対称性または円対称性を有する。コレクタ側の上面視において、パイロット領域は、円形または十字形または星形または長方形の形状を有することができる。
【0039】
さらなる実施形態によれば、混合領域内の第1のサブ領域および第2のサブ領域の配置は、対称軸に関して回転対称性を有する。例えば、回転対称性は、2倍もしくは3倍もしくは4倍であるか、または円形対称性である。
【0040】
さらなる実施形態によれば、パイロット領域は、パイロット領域の中心から半径方向に延在する少なくとも2つのアームを有する。例えば、パイロット領域は、少なくとも3つまたは少なくとも4つのそのようなアームを有する。パイロット領域の中心はコレクタ側の中心と一致してもよい。
【0041】
半径方向は、本明細書では、パイロット領域の中心を通って延伸し、それを指すか、またはその外方を指す横方向であると理解される。
【0042】
さらなる実施形態によれば、コレクタ側において、第1のサブ領域および第2のサブ領域は、パイロット領域から離れる方向、例えばパイロット領域の中心から離れる方向にパイロット領域から延在する。
【0043】
コレクタ側において、第1のサブ領域および第2のサブ領域はすべて半径方向に平行に延伸してもよい。例えば、第1のサブ領域および第2のサブ領域は、各々、帯状に形成される。第1のサブ領域および/または第2のサブ領域の幅は各々、エッジ領域および/またはパイロット領域の幅よりも小さくてもよい。例えば、第1のサブ領域および/または第2のサブ領域の各々の幅は、エッジ領域および/またはパイロット領域の幅の最大50%または最大10%または最大1%である。
【0044】
さらなる実施形態によれば、パイロット領域は、1つまたは複数の第1のサブ領域および/または第2のサブ領域に連結される。これは、パイロット領域が1つまたは複数の第1のサブ領域および/または1つまたは複数の第2のサブ領域に直接隣接することを意味する。
【0045】
さらなる実施形態によれば、パイロット領域の総面積は、混合領域の総面積の少なくとも10%または少なくとも20%である。付加的または代替的に、パイロット領域の総面積は、混合領域の総面積の最大60%または最大45%または最大35%であってもよい。
【0046】
さらなる実施形態によれば、パイロット領域は、連続した領域、例えば単連結領域である。
【0047】
さらなる実施形態によれば、半導体本体はベース層をさらに備える。ベース層は、第2の導電型であってもよい。例えば、ベース層はnドープされる。ベース層のドーピング濃度は、第2のサブ領域よりも小さくてもよい。
【0048】
さらなる実施形態によれば、半導体本体は、少なくとも1つのウェル領域を備える。例えば、半導体本体は、いくつかの、例えば少なくとも10または少なくとも100のウェル領域を備える。1つのウェル領域に関連して開示されるすべての特徴は、他のウェル領域についても開示される。例えば、ウェル領域は、第1の導電型である。例えば、ウェル領域はpドープされる。ウェル領域のドーピング濃度は、パイロット領域および/または第1のサブ領域のドーピング濃度よりも小さくてもよく、等しくてもよく、または大きくてもよい。
【0049】
ウェル領域は、ベース層によってコレクタ層から離間されてもよい。言い換えれば、ベース層は、ウェル領域とコレクタ層との間に配置されてもよい。例えば、ウェル領域とコレクタ層との間に直接連結はない。
【0050】
さらなる実施形態によれば、半導体本体は、少なくとも1つのエミッタ領域をさらに備える。半導体本体は、複数のエミッタ領域、例えば少なくとも10または少なくとも100のエミッタ領域を含んでもよい。1つのエミッタ領域について開示されているすべての特徴は、他のエミッタ領域についても開示されている。
【0051】
エミッタ領域は、第2の導電型であってもよい。例えば、各ウェル領域には、少なくとも1つのエミッタ領域が割り当てられる。エミッタ領域は、ウェル領域内に埋め込まれてもよい。エミッタ領域は、ウェル領域によってベース層から離間されてもよく、すなわち、ベース層とエミッタ領域との間に直接接触はない。エミッタ領域のドーピング濃度は、第2のサブ領域内のドーピング濃度よりも小さくてもよく、等しくてもよく、または大きくてもよい。例えば、エミッタ領域のドーピング濃度は、ベース層のドーピング濃度よりも大きい。
【0052】
ウェル領域および/またはエミッタ領域は、半導体本体のエミッタ側に隣接してもよい。
【0053】
さらなる実施形態によれば、少なくとも1つのエミッタ電極がエミッタ側に配置される。エミッタ電極は、金属を含んでもよく、または金属からなってもよい。エミッタ電極は、少なくとも1つのエミッタ領域に電気的に接触していてもよい。RC-IGBTは、いくつかのエミッタ電極を備えてもよい。1つのエミッタ電極に関連して開示されるすべての特徴は、他のエミッタ電極についても開示される。例えば、各エミッタ領域には、1つの個別のエミッタ電極が割り当てられる。エミッタ電極は、エミッタ側において、割り当てられたエミッタ領域に隣接してもよい。
【0054】
さらなる実施形態によれば、少なくとも1つのゲート電極がエミッタ側に配置される。ゲート電極は、少なくとも1つのウェル領域および/または少なくとも1つのエミッタ領域から電気的に絶縁されてもよい。ゲート電極は、例えば、ウェル領域の上方に配置されるが、エミッタ領域から横方向にオフセットされる。例えば、ゲート電極は、半導体本体または半導体本体の任意の導電領域から電気的に絶縁される。RC-IGBTは、いくつかのゲート電極を備えてもよい。1つのゲート電極に関連して開示されるすべての特徴は、他のゲート電極についても開示される。例えば、各ウェル領域には、1つの個別のゲート電極が割り当てられる。ゲート電極は、金属、高濃度ドープポリシリコンのうちの少なくとも1つを含んでもよく、またはそれからなってもよい。
【0055】
横方向において、RC-IGBTのエッジ領域および/または終端領域は、任意のゲート電極または任意のエミッタ電極または任意のウェル領域または任意のエミッタ領域と重ならなくてもよい。
【0056】
さらなる実施形態によれば、パイロット領域の幅は、少なくともベース層の厚さと同じか、またはベース層の厚さの少なくとも2倍もしくは少なくとも3倍である。第1のサブ領域および/または第2のサブ領域の幅は、ベース層の厚さよりも小さくてもよく、またはベース層の厚さの最大2倍であってもよい。混合領域の全幅は、ベース層の厚さの少なくとも2倍であってもよい。
【0057】
次に、RC-IGBTを生産するための方法を記述する。本方法は、特に、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによるRC-IGBTの生産に適している。したがって、RC-IGBTに関連して説明されたすべての特徴が、方法についても開示され、逆もまた同様である。
【0058】
本方法の一実施形態によれば、エミッタ側およびコレクタ側を有する半導体本体が提供される。半導体本体は、第1の導電型の少なくとも1つのパイロット領域と、第1の導電型の第1のサブ領域および第2の導電型の第2のサブ領域を有する混合領域とを有するコレクタ層を備える。第1のサブ領域およびパイロット領域は、同じドーピング濃度を有してもよい。次いで、パイロット領域および/または第1のサブ領域内のドーピング濃度が、パイロット領域および第1のサブ領域内のドーピング濃度が異なるまで変化される。
【0059】
ドーピング濃度を変化させるために、パイロット領域をマスクすることができ、追加の注入プロセスを実行することができ、この注入プロセスでは、第1のサブ領域内のドーピング濃度が増大され、一方、マスキングにより、パイロット領域内のドーピング濃度は変化しないか、または変化がより少ない。これにより、混合領域の第1のサブ領域よりもパイロット領域のドーピング濃度が低くなり、RBSOA性能が向上する。付加的または代替的に、ドーピング濃度を変化させるために、局所的活性化プロセスが実行されてもよく、当該プロセスにおいて、第1のサブ領域がアニールされ、一方、パイロット領域はアニールされない。
【0060】
ダイオード(第3象限)性能を改善するために、パイロット領域のドーピング濃度を第1のサブ領域のドーピング濃度よりも高くすることができる。パイロット領域のドーピング濃度を変化させるために、第1のサブ領域をマスクすることができ、追加の注入プロセスを実行することができ、この注入プロセスでは、パイロット領域内のドーピング濃度が増大され、一方、マスキングにより、第1のサブ領域内のドーピング濃度は変化しないか、または変化がより少ない。付加的または代替的に、ドーピング濃度を変化させるために、局所的活性化プロセスが実行されてもよく、当該プロセスにおいて、パイロット領域がアニールされ、一方、第1のサブ領域はアニールされない。
【0061】
以下、例示的な実施形態に基づいて、RC-IGBTおよびRC-IGBTを生産するための方法を、図面を参照してより詳細に説明する。添付の図面が、さらなる理解を提供するために含まれる。図面では、同じ構造および/または機能の要素は、同じ参照符号によって参照され得る。図面に示される実施形態は例示的な表現であり、必ずしも原寸に比例して描かれていないことを理解されたい。要素または構成要素が異なる図におけるそれらの機能に関して互いに対応する限り、以下の図の各々についてその説明は繰り返さない。明確にするために、要素は、すべての図において対応する参照符号で表示されない場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】RC-IGBTの第1の例示的な実施形態を示すコレクタ側の上面図である。
図2】RC-IGBTの第2の例示的な実施形態を示す断面図である。
図3図2の断面をより詳細に示す図である。
図4】RC-IGBTの第2の例示的な実施形態を示すコレクタ側の上面図である。
図5】RC-IGBTのさらなる例示的な実施形態を示すコレクタ側の上面図である。
図6】RC-IGBTのさらなる例示的な実施形態を示すコレクタ側の上面図である。
図7】測定結果を示す図である。
図8】測定結果を示す図である。
図9】RC-IGBTを生産するための方法の例示的な実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1は、RC-IGBT1000の第1の例示的な実施形態を、コレクタ側の上面視において示す。RC-IGBT1000は、エミッタ側およびコレクタ側を有する半導体本体と、コレクタ側にあるコレクタ層とを備える。コレクタ側を形成するコレクタ層は、パイロット領域10および混合領域11(図示のために破線によって分離されている)を備える。パイロット領域10は、第1の導電型である。混合領域は、同じく第1の導電型の第1のサブ領域11と、第2の導電型の第2のサブ領域112とを備える。例えば、パイロット領域10および第1のサブ領域111はpドープされ、第2のサブ領域112はnドープされる。
【0064】
異なる領域/サブ領域の異なる構造化によって示されるように、パイロット領域10内のドーピング濃度は、第1のサブ領域111内のドーピング濃度とは異なる。例えば、パイロット領域10のドーピング濃度は、第1のサブ領域111のドーピング濃度よりも小さい。
【0065】
図2図4は、RC-IGBT1000の第2の例示的な実施形態を示す。これにより、図2は、図4の断面AA’上のビューである。図4は、RC-IGBT1000を、RC-IGBTのコレクタ側の上面視において示す。図3は、図2の枠付き部分をより詳細に示す。
【0066】
RC-IGBT1000は、ベース層3、バッファ層8、およびコレクタ層1を有する半導体本体100を備える。バッファ層8およびベース層3は、第2の導電型であってもよい。本実施形態では、第1の導電型は正孔伝導であり、第2の導電型は電子伝導である。したがって、ベース層3およびバッファ層8は両方ともnドープされる。しかしながら、それらは異なるドーピング濃度を有してもよい。例えば、バッファ層8のドーピング濃度は、ベース層3のドーピング濃度よりも高い。ベース層3は、バッファ層8よりも厚くてもよい。また、ベース層3および/またはバッファ層8は、コレクタ層1よりも厚くてもよい。
【0067】
コレクタ層1は、パイロット領域10および混合領域11を備える。混合領域11は、複数の第1のサブ領域111と、複数の第2のサブ領域112とを備える。第1のサブ領域111およびパイロット領域10は、両方とも第1の導電型であるが、ドーピング濃度が異なる。したがって、この場合、それらは両方ともpドープされる。例えば、パイロット領域10のドーピング濃度は、第1のサブ領域111よりも例えば少なくとも2倍小さい。
【0068】
第2のサブ領域112は第2の導電型であり、そのため、この場合、n型ドープされる。コレクタ層1は、半導体本体100のコレクタ側102を形成する。パイロット領域10およびサブ領域111、112はコレクタ側102に達し、すなわち各々がコレクタ側102の一部を形成する。コレクタ電極2は、コレクタ側102の上部に配置され、コレクタ側102と電気的に接触している。コレクタ電極2は、例えば、金属製である。
【0069】
さらに、コレクタ層1は、エッジ領域12を備える。エッジ領域12は、コレクタ層1の側縁に隣接するか、または、これを形成する。エッジ領域12は、横方向においてRC-IGBTの終端領域と部分的にまたは完全に重なってもよい。例えば、終端領域によりエッジ領域12が規定される。
【0070】
終端領域は、RC-IGBTの活性領域を側方に取り囲むRC-IGBTの領域である。活性領域は、オン状態中にデバイスが電流を伝導する領域である。
【0071】
コレクタ側102の反対側のエミッタ側101において、半導体本体100は、複数のウェル領域4(よりよい例示については、図3を参照されたい)を備える。ウェル領域4は、例えば、第1の導電型であり、すなわちpドープされている。ウェル領域4にはエミッタ領域5が埋め込まれており、エミッタ領域5は、例えば、第2の導電型であり、すなわちnドープされている。エミッタ側101の上部には、エミッタ領域5に電気的に接触するエミッタ電極6が配置されている。さらに、ゲート電極7は、エミッタ側101に配置され、絶縁材料9によって半導体本体100と絶縁されている。エミッタ電極6およびゲート電極7は、例えば、金属から形成されている。絶縁材料9は、SiOを含んでもよく、またはSiOからなってもよい。
【0072】
終端領域および/またはエッジ領域12は、横方向において任意のエミッタ電極6および/または任意のゲート電極7および/または任意のエミッタ領域5および/または任意のウェル領域4と重ならない、RC-IGBTの横方向側の領域によって画定されてもよい。
【0073】
ここで、コレクタ側101の上面視においてRC-IGBT1000の第2の例示的な実施形態を示す図4を見ると、パイロット領域10が十字形の形状を有することが分かる。パイロット領域10の中心103はコレクタ側102の中心と一致する。パイロット領域10は、図面平面に垂直に、中心103を通って延伸する対称軸20に関して4回回転対称性を有する。
【0074】
図4にも見られるように、混合領域11における第1のサブ領域111および第2のサブ領域112の配置も、対称軸20に関する4回回転対称性に従う。混合領域11は、パイロット領域10を横方向に完全に取り囲む。混合領域11およびパイロット領域10は、さらに、エッジ領域12によって横方向に完全に取り囲まれている。混合領域11とパイロット領域10との間、および混合領域11とエッジ領域12との間の境界は、各々について破線によって示されている。
【0075】
図4の例示的な実施形態では、パイロット領域10の面積は、第1のサブ領域111および/または第2のサブ領域112の各々の面積よりも大きく、例えば、第1のサブ領域111および/または第2のサブ領域112の各々の面積の少なくとも5倍である。パイロット領域10の面積は、例えば、混合領域の面積の10%~35%である。パイロット領域10の幅は、少なくともベース層3の厚さの2倍であってもよい。
【0076】
第1のサブ領域111および第2のサブ領域112は、各々について帯状に形成される。サブ領域111、112の各々の幅は、ベース層3の厚さよりも小さくてもよく、例えば、ベース層3の厚さの最大50%であってもよい。
【0077】
エッジ領域12の面積はまた、第1のサブ領域111および/または第2のサブ領域112の各々の面積よりも大きくてもよく、例えば少なくとも5倍大きくてもよい。
【0078】
図2図4の例示的な実施形態では、第2のサブ領域112は、エッジ領域12内へと延在し、エッジ領域12の一部を形成する。残りのエッジ領域12、すなわちエッジ領域12のより大きい部分は、パイロット領域10および第1のサブ領域111と同じ導電型、すなわち第1の導電型である。
【0079】
本例示的実施形態では、エッジ領域12のより大きい部分のドーピング濃度は、第1のサブ領域111と同じである。しかしながら、パイロット領域10のドーピング濃度は、第1のサブ領域111およびエッジ領域12のより大きい部分よりも小さい。
【0080】
第1の導電型であるエッジ領域12のより大きい部分は、混合領域11およびパイロット領域10を完全に取り囲むエッジ領域の連続したサブ領域を形成する。
【0081】
図5は、RC-IGBT1000のさらなる例示的な実施形態を示す。このRC-IGBT100の断面は、図2の断面と同様に見え得る。しかしながら、前の例示的な実施形態と比較すると、コレクタ側の上面視は異なって見える。前の例示的な実施形態とは対照的に、エッジ領域12のより大きい部分は、第1のサブ領域111と同じドーピング濃度を有せず、パイロット領域11と同じドーピング濃度を有する。
【0082】
図6の例示的な実施形態では、ここでもコレクタ側の上面視のみが示されている。ここで、前の例示的な実施形態とは対照的に、エッジ領域12のより大きい部分は、第1の導電型ではなく、第2の導電型である。それにより、エッジ領域のより大きい部分は、混合領域11の第2のサブ領域112とは異なるドーピング濃度を有してもよい。
【0083】
示されているすべての例示的な実施形態は、パイロット領域および混合領域の第1のサブ領域のドーピング濃度が異なるという共通点を有する。説明した例示的な実施形態では、第1の導電型は正孔伝導であり、第2の導電型は電子伝導であった。しかしながら、これは一例に過ぎず、逆の場合、すなわち、第1の導電型が電子伝導であり、第2の導電型が正孔伝導であることが可能である。
【0084】
図7(左側)は、第1のサブ領域とパイロット領域の両方が常に同じドーピング濃度を有する場合の、注入線量(20%または40%)(矢印参照)を増大させるための技術曲線の影響の測定例を示す。y軸上には、ターンオフスイッチング損失(すなわち、オン状態からオフ状態へのスイッチング事象中に散逸されるエネルギー)が示されている。x軸上には、VCEsat(飽和時のエミッタとコレクタとの間の電圧)が示されている。予想通り、注入線量の増大(ドーピング濃度の増大)はVCEsatを低下させ、一方、対応するRBSOA減少も示されている(最大電流ターンオフ能力に関して、4×Inomから1.5×Inomへの低減)。3点すべてについて、RBSOA障害位置がパイロット領域の上方で観察されている。これは、すべてのドーピング範囲にわたってパイロット領域を弱点として示している。これは、特に、BIGTが主に使用される(低スイッチング周波数)HVDC用途に有利な領域である、技術曲線の低状態損失部分への移動を制限する。特に改善されたRBSOAのためにパイロット領域におけるドーピングを調整し、および、改善されたオン状態の推定SOA性能のために混合領域におけるドーピングを調整することによって、図7(右側)に示すような改善を期待することができる。
【0085】
BIGT MOS制御あり(左図)およびなし(右図)の両方での低下したダイオードオン状態の実験結果を図8に示す。y軸上には、ダイオードモードの導通損失が示されている。両方の図において、左側のデータ点は、終端領域の下のエッジ領域が第1のサブ領域と同じドーピング濃度および同じ導電型を有する場合に対応する(図4参照)。右側のデータ点のオン状態の低下は、そのより大きい部分がそれぞれパイロット領域または第1のサブ領域とは異なる導電型、例えばnドープであるエッジ領域の使用によるものである。ここでは、一例として、エッジ領域におけるnドーピングは、混合領域内の第2のサブ領域のドーピングと等しい。ちょうどIGBTオン状態と同様のダイオードオン状態の改善は、ここでも、低周波HVDCシステムにおけるシステムレベル性能を向上させるための重要な鍵である。最後に、MOS制御なしオン状態の改善は、より一般的な(MOS制御なし)システムトポロジのためのプラグアンドプレイ構成要素としてBIGTが使用されるシステムにも利益をもたらす。
【0086】
図9は、RC-IGBTを生産するための方法の例示的な実施形態のフローチャートを示す。まず、ステップS1において、エミッタ側およびコレクタ側を有する半導体本体が提供される。半導体本体は、第1の導電型の少なくとも1つのパイロット領域と、第1の導電型の第1のサブ領域および第2の導電型の第2のサブ領域を有する混合領域とを有するコレクタ層を備える。第1のサブ領域およびパイロット領域は、同じドーピング濃度を有する。次いで、ステップS2において、パイロット領域および/または第1のサブ領域内のドーピング濃度が、パイロット領域および第1のサブ領域内のドーピング濃度が異なるまで変化される。
【0087】
上述の図1図6および図9に示す実施形態は、改善されたRC-IGBTおよび方法の例示的な実施形態を表す。したがって、それらは、改善されたRC-IGBTおよび方法によるすべての実施形態の完全なリストを構成するものではない。実際のRC-IGBTおよび実際の方法は、例えば配置に関して示された実施形態とは異なり得る。
【符号の説明】
【0088】
参照符号
1 コレクタ層
2 コレクタ電極
3 ベース層
4 ウェル領域
5 エミッタ領域
6 エミッタ電極
7 ゲート電極
8 バッファ層
9 絶縁材料
10 パイロット領域
11 混合領域
12 エッジ領域
20 対称軸
100 半導体本体
101 エミッタ側
102 コレクタ側
103 中心
111 第1のサブ領域
112 第2のサブ領域
1000 逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ
S1,S2 方法ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)であって、
エミッタ側(101)およびコレクタ側(102)を有する半導体本体(100)と、
少なくとも1つのパイロット領域(10)および少なくとも1つの混合領域(11)を有する前記コレクタ側(102)のコレクタ層(1)と、
前記コレクタ側(102)にあり、前記コレクタ層(1)と電気的に接触するコレクタ電極(2)とを備え、
前記パイロット領域(10)は第1の導電型であり、
前記混合領域(11)は、前記第1の導電型の第1のサブ領域(111)および第2の導電型の第2のサブ領域(112)を有し、
前記パイロット領域(10)は連続した領域であり、前記コレクタ側(102)における前記パイロット領域(10)の面積は、前記コレクタ側(102)における前記第1のサブ領域(111)および/または前記第2のサブ領域(112)の各々の面積よりも大きく、
前記第1のサブ領域(111)のドーピング濃度は前記パイロット領域(10)のドーピング濃度とは異なり、
前記コレクタ層(1)はエッジ領域(12)をさらに備え、
前記エッジ領域(12)は、前記パイロット領域(10)および前記混合領域(11)を横方向に取り囲み、
前記エッジ領域(12)のほとんどは、前記第1のサブ領域(111)と同じ導電型であり、または
前記エッジ領域(12)のほとんどは、前記第2のサブ領域(112)と同じ導電型であるが、前記第2のサブ領域(112)とは異なるドーピング濃度を有し、
前記第2のサブ領域(112)は前記エッジ領域(12)内へと延在し、前記第1のサブ領域(111)は前記エッジ領域(12)の前で終端し、
前記エッジ領域(12)のほとんどを形成する前記エッジ領域(12)のサブ領域は、排他的に1つの導電型であり、連続して形成され、前記混合領域(11)および前記パイロット領域(10)を横方向に完全に取り囲んでいる、逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)。
【請求項2】
前記第1のサブ領域(111)の前記ドーピング濃度は、前記パイロット領域(10)の前記ドーピング濃度よりも大きい、請求項1に記載の逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)。
【請求項3】
前記エッジ領域(12)のほとんどは、前記パイロット領域(10)と同じ導電型であり、前記パイロット領域(10)と同じドーピング濃度を有する、請求項1または2に記載の逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)。
【請求項4】
前記コレクタ側(102)において、前記第1のサブ領域(111)および前記第2のサブ領域(112)は、前記パイロット領域(10)から離れる方向に前記パイロット領域(10)から延在する、請求項1または2に記載の逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)。
【請求項5】
前記パイロット領域(10)は、前記混合領域(11)によって横方向に囲まれている、請求項1または2に記載の逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)。
【請求項6】
前記パイロット領域(10)は、前記コレクタ層(1)に対して斜めに貫通して延伸する対称軸(20)に関する回転対称性を有し、
前記混合領域(11)における前記第1のサブ領域(111)および前記第2のサブ領域(112)の配置は、前記対称軸(20)に関する回転対称性を有する、請求項1または2に記載の逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)。
【請求項7】
前記パイロット領域(10)は、前記パイロット領域(10)の中心(103)から半径方向に延在する少なくとも2つのアーム(101)を有する、請求項1または2に記載の逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)。
【請求項8】
前記パイロット領域(10)は、1つまたは複数の第1のサブ領域(111)に連結されており、
前記パイロット領域(10)の総面積は、前記混合領域(11)の総面積の少なくとも10%であり、
前記パイロット領域(10)は、連続したまたは単連結領域である、請求項1または2に記載の逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)。
【請求項9】
前記半導体本体(100)は、
前記第2の導電型のベース層(3)と、
前記ベース層(3)によって前記コレクタ層(1)から離間されている前記第1の導電型の少なくとも1つのウェル領域(4)と、
前記ウェル領域(4)によって前記ベース層(3)から離間されている前記第2の導電型の少なくとも1つのエミッタ領域(5)とをさらに備え、
少なくとも1つのエミッタ電極(6)が、前記エミッタ側(101)に配置され、少なくとも1つのエミッタ領域(5)に電気的に接触しており、
少なくとも1つのゲート電極(7)が、前記エミッタ側(101)に配置され、前記ウェル領域(4)から電気的に絶縁されている、請求項1または2に記載の逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)。
【請求項10】
逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(1000)を生産するための方法であって、
エミッタ側(101)およびコレクタ側(102)を有する半導体本体(1)を提供することであって、前記半導体本体(1)は、第1の導電型の少なくとも1つのパイロット領域(10)と、前記第1の導電型の第1のサブ領域(111)および第2の導電型の第2のサブ領域(112)を有する混合領域(11)とを有するコレクタ層(1)を備え、前記第1のサブ領域(111)および前記パイロット領域(10)は同じドーピング濃度を有する、提供することと、
前記パイロット領域(10)および前記第1のサブ領域(111)内の前記ドーピング濃度が異なるまで、前記パイロット領域(10)および/または前記第1のサブ領域(111)内の前記ドーピング濃度を変更することとを含み、
前記パイロット領域(10)は連続した領域であり、前記コレクタ側(102)における前記パイロット領域(10)の面積は、前記コレクタ側(102)における前記第1のサブ領域(111)および/または前記第2のサブ領域(112)の各々の面積よりも大きく、
前記コレクタ層(1)はエッジ領域(12)をさらに備え、
前記エッジ領域(12)は、前記パイロット領域(10)および前記混合領域(11)を横方向に取り囲み、
前記エッジ領域(12)のほとんどは前記第1のサブ領域(111)と同じ導電型であるか、または前記エッジ領域(12)のほとんどは前記第2のサブ領域(112)と同じ導電型であるが、前記第2のサブ領域(112)とは異なるドーピング濃度を有し、
前記第2のサブ領域(112)は前記エッジ領域(12)内へと延在し、前記第1のサブ領域(111)は前記エッジ領域(12)の前で終端し、
前記エッジ領域(12)のほとんどを形成する前記エッジ領域(12)のサブ領域は、排他的に1つの導電型であり、連続して形成され、前記混合領域(11)および前記パイロット領域(10)を横方向に完全に取り囲んでいる、方法。
【請求項11】
前記ドーピング濃度を変化させるために、
前記パイロット領域(10)または前記第1のサブ領域(111)のいずれかがマスキングされ、注入プロセスが実施され、前記注入プロセスにおいて、前記第1のサブ領域(111)または前記パイロット領域(10)のドーピング濃度が増大される一方で、前記マスキングにより、前記パイロット領域(10)および前記第1のサブ領域(111)のそれぞれ他方のドーピング濃度は変化しないか、または変化がより小さく、および/または
前記第1のサブ領域(111)または前記パイロット領域(10)のいずれかがアニーリングされ、前記パイロット領域(10)および前記第1のサブ領域(111)のそれぞれの他方がアニーリングされない局所的活性化プロセスが実行される、請求項10に記載の方法。
【国際調査報告】