(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】生物学的材料を保存するための包装器
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20241121BHJP
C12M 1/02 20060101ALI20241121BHJP
C12M 1/38 20060101ALI20241121BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20241121BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20241121BHJP
C12N 5/0797 20100101ALI20241121BHJP
【FI】
C12M1/34 A
C12M1/02 B
C12M1/38 Z
C12N5/078
C12N5/071
C12N5/0797
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538432
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-08-22
(86)【国際出願番号】 AU2022051570
(87)【国際公開番号】W WO2023115144
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521225247
【氏名又は名称】ヴィトラフィー ライフ サイエンシズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VITRAFY LIFE SCIENCES LIMITED
【住所又は居所原語表記】Level 1,47 Sandy Bay Road,Hobart,Tasmania 7000,AUSTRALIA
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オーウェンズ,ブレント
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン,ショーン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB11
4B029DD01
4B065AA93X
4B065AA94X
4B065CA60
(57)【要約】
【解決手段】生物学的材料を保存するための包装器であって、使用時に、包装器に生物学的材料を充填し、熱交換流体が包装器の周囲を流れるように、生物学的材料を保存するための装置内に配置され、該包装器は、生物学的材料を受容するための内部コンパートメントを画定するように構成された1つ以上の包装器壁と、包装器壁の少なくとも1つを横切って画定された1つ以上の熱輪郭と、を含み、使用時に、熱交換流体の流れは、1つ以上の熱輪郭によって少なくとも部分的に方向付けられ、熱交換流体と包装器に含まれる生物学的材料との間の熱伝達が改善される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的材料を保存するための包装器であって、使用時に、前記包装器が生物学的材料で充填され、熱交換流体が前記包装器の周囲を流れるように前記生物学的材料を保存するための装置内に配置され、前記包装器は、
a)前記生物学的材料を受容するための内部コンパートメントを画定するように構成された1つ以上の包装器壁と
b)前記包装器壁の少なくとも1つを横切って画定される1つ以上の熱輪郭と
を備え、
使用時に、前記熱交換流体の流れが、1つ以上の前記熱輪郭によって少なくとも部分的に方向付けられ、前記熱交換流体と前記包装器に含まれる前記生物学的材料との間の熱伝達を改善する、ことを特徴とする包装器。
【請求項2】
前記熱輪郭が、使用時に、前記熱交換流体の流れに実質的に整合するように配置されている、請求項1に記載の包装器。
【請求項3】
前記包装器が、互いに平行になるように配置された複数の熱輪郭を含む、請求項1または2に記載の包装器。
【請求項4】
前記熱輪郭の各々が、前記包装器壁のそれぞれの1つを横切って、
a)それぞれの前記包装器壁の細長い窪み、および
b)それぞれの前記包装器壁の細長い突出部
の1つとして画定される、請求項1から3のいずれか一項に記載の包装器。
【請求項5】
前記包装器壁が、対向する第1および第2の壁を含み、前記第1および第2の壁が、それぞれの外周の実質的な部分の周りで一緒に連結されて、前記内部コンパートメントを画定する、請求項1から4のいずれか一項に記載の包装器。
【請求項6】
1つ以上の前記熱輪郭は、前記第1および第2の壁が、1つ以上の接続線に沿って一緒に接続されることによって画定され、前記接続線は、前記内部コンパートメントを、その間に流体連通を可能にするサブコンパートメントに分割するように構成される、請求項5に記載の包装器。
【請求項7】
使用時に、前記包装器は、前記生物学的材料がサブコンパートメント間に分配されるように前記生物学的材料で充填され、前記熱交換流体の流れは、前記熱交換流体と前記サブコンパートメントの各々に含まれる前記生物学的材料との間の実質的に均等な熱伝達を促進するように、1つ以上の前記熱輪郭によって少なくとも部分的に方向付けられる、請求項6に記載の包装器。
【請求項8】
前記接続線は、前記生物学的材料が前記サブコンパートメントの各々の間に実質的に均等に分配されるように構成されている、請求項6または請求項7に記載の包装器。
【請求項9】
前記第1および第2の壁が、使用時に熱伝達流体の流れに面する前縁と、反対側の後縁とを含む複数の縁に沿って互いに接続されており、複数の前記熱輪郭が前記前縁と前記後縁との間に延在する、請求項5から8のいずれか一項に記載の包装器。
【請求項10】
前記後縁が前記前縁と実質的に平行である、請求項9に記載の包装器。
【請求項11】
前記接続線の少なくともいくつかが、前記前縁と相互接続する、請求項9または10に記載の包装器。
【請求項12】
前記熱輪郭が、前記前縁から垂直な方向に対して所定の角度で配置されている、請求項9から11のいずれか一項に記載の包装器。
【請求項13】
前記所定の角度が、前記生物学的材料を保存するための装置内の熱交換流体の流れに応じて選択される、請求項12に記載の包装器。
【請求項14】
前記所定の角度が、
a)0°から30°の間
b)5°から15°の間、および
c)約10°
の少なくとも1つである、請求項12または13に記載の包装器。
【請求項15】
隣接する熱輪郭が所定の距離間隔だけ離間している、請求項5から14のいずれか一項に記載の包装器。
【請求項16】
前記所定の距離間隔が15mmから20mmの間である、請求項15に記載の包装器。
【請求項17】
前記所定の距離間隔は、前記第1および第2の壁の分離を抑制するように選択される、請求項15または16に記載の包装器。
【請求項18】
前記所定の距離間隔は、前記第1および第2の壁の分離を所定の分離距離に制限するように選択される、請求項17に記載の包装器。
【請求項19】
前記第1および第2の壁の間で測定される前記包装器の深さが、
a)10mm未満、
b)5mm未満、
c)1mm以上4mm未満、および
d)1mm未満
の少なくとも1つである、請求項5から18のいずれか一項に記載の包装器。
【請求項20】
前記包装器は、使用時に前記包装器が前記生物学的材料で充填されるとき、前記第1および第2の壁が互いに実質的に平行のままであるように構成される、請求項5から19のいずれか一項に記載の包装器。
【請求項21】
前記第1および第2の壁が包装器材料のシートから形成されている、請求項5から20のいずれか一項に記載の包装器。
【請求項22】
前記包装器材料が、
a)ポリマー、
b)ポリプロピレン、
c)ポリ塩化ビニル、
d)ポリエチレンテレフタレート、
e)エチレン酢酸ビニルコポリマー、
f)コポリマー、
g)エチレンと酢酸ビニル、
h)金属、
i)高合金、および
j)ステンレス鋼
のうちの1つから選択される、請求項21記載の包装器。
【請求項23】
前記包装器が、前記包装器を充填及び空にするのを容易にするための1つ以上の開口部を含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の包装器。
【請求項24】
前記1つ以上の開口部は、前記包装器の縁を通って延びる1つ以上のポートを含む、請求項23に記載の包装器。
【請求項25】
前記包装器が、
a)全血、
b)血小板、
c)赤血球、
d)白血球、
e)血漿、
f)血液製剤、
g)精子、
h)細胞、
i)幹細胞、
j)臓器またはその一部、および
k)組織
のひとつから選択される生物学的材料を保存するように構成されている、請求項1から24のいずれか一項に記載の包装器。
【請求項26】
前記包装器が、治療処置に使用される生物学的材料を保存するために構成されている、請求項1から25のいずれか一項に記載の包装器。
【請求項27】
前記包装器が、
a)生物学的材料の冷凍保存、
b)生物学的材料の凍結保存、および
c)生物学的材料の解凍
の少なくとも1つのために構成される、請求項1から26のいずれか一項に記載の包装器。
【請求項28】
前記包装器が、
a)毎分0℃から10℃の間、
b)毎分10℃から50℃の間、
c)毎分50℃から100℃の間、および
d)毎分100℃超
の1つから選択される熱伝達率で使用するように構成されている、請求項1から27のいずれか一項に記載の包装器。
【請求項29】
前記包装器がバッグとして構成されている、請求項1から28のいずれか一項に記載の包装器。
【請求項30】
前記包装器が
a)ストロー、および
b)バイアル
のいずれかとして構成されている、請求項1から28のいずれか一項に記載の包装器。
【請求項31】
生物学的材料を保存するための包装器であって、使用時に、前記包装器は生物学的材料で充填され、熱交換流体が前記包装器の周囲を流れるように前記生物学的材料を保存するための装置内に置かれ、前記包装器は、
a)対向する第1および第2の壁であって、内部コンパートメントを画定するべく、それぞれの周囲の実質的な部分の周りで一緒に連結されている、第1および第2の壁と、
b)前記第1および第2の壁によって画定され、接続線に沿って一緒に接続される、複数の熱輪郭であって、前記接続線は、内部コンパートメントを、その間に流体連通が可能であるサブコンパートメントに分割するように構成されている、熱輪郭と
を備え、
前記熱交換流体と前記包装器の前記サブコンパートメントに含まれる前記生物学的材料との間の熱伝達を改善するべく、使用時に、前記生物学的材料は、前記サブコンパートメント間に分配され、熱交換流体の流れは、前記熱輪郭によって少なくとも部分的に方向付けられる、ことを特徴とする包装器。
【請求項32】
生物学的材料を保存するための包装器の設計に使用するための方法であって、使用時に、前記包装器が前記生物学的材料で充填され、熱交換流体が前記包装器の周囲を流れるように前記生物学的材料を保存するための装置内に配置され、前記方法は、
a)前記包装器に所望の体積の前記生物学的材料を充填できるように、内部コンパートメントを画定するよう構成された1つ以上の包装器壁を含む包装器形状を決定する工程と、
b)熱特性を決定する工程であって、前記熱特性は、
i)生物学的材料、
ii)1つ以上の前記包装器壁を形成するための包装器材料、および
iii)前記熱交換流体
の熱特性を含む、工程と、
c)装置の動作条件を決定する工程であって、前記動作条件は、
i)前記熱交換流体の速度、
ii)前記熱交換流体の温度、および
iii)前記熱交換流体の流れ方向
を含む、工程と、
d)決定された前記包装器形状、前記熱的特性、および前記動作条件に従って、使用時の前記生物学的材料における予想される温度勾配を決定するべく、充填された前記包装器の周囲の装置内の熱交換流体の流れについて解析を実行する工程と、
e)前記熱交換流体と前記包装器に含まれる前記生物学的材料との間の熱伝達を改善するために、前記包装器壁の少なくとも1つを横切って画定される1つ以上の熱輪郭の構成を選択するべく前記予想される温度勾配を使用する工程と、
f)使用時の前記生物学的材料における予想される温度勾配を決定するべく、決定された前記包装器形状、1つ以上の前記熱輪郭の選択された構成、決定された前記熱的特性、および前記動作条件に従って、1つ以上の前記熱輪郭を含む、充填された前記包装器の周りの前記装置内の前記熱交換流体の流れについてさらなる解析を実行する工程と
を備える方法。
【請求項33】
所望の予想される温度勾配が決定されるまで、工程e)およびf)を繰り返すことを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、前記包装器形状は、対向する第1および第2の壁を含み、前記第1および第2の壁は、内部コンパートメントを画定するために、それぞれの周囲の実質的な部分の周りで一緒に連結され、前記第1および第2の壁によって画定される複数の熱輪郭は、接続線に沿って一緒に接続され、前記接続線は、前記内部コンパートメントを、その間に流体連通を可能にするサブコンパートメントに分割するように構成され、前記方法は、
a)充填された前記包装器の周囲の前記装置内の前記熱交換流体の流れに関する前記解析を実行する工程と、
b)前記熱交換流体と前記サブコンパートメントの各々に含まれる前記生物学的材料との間の実質的に均等な熱伝達を提供するために、前記熱輪郭の構成を選択するべく予想される温度勾配を使用する工程と
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的材料を保存するための包装器に関し、特に、全血などの生物学的材料の冷凍保存、凍結保存および融解に適しているが、これらに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
赤血球(RBC)を体外で保存する能力は、長年にわたって救命的な行為とみなされてきた。より最近では、点滴医療における冷凍保存された赤血球の使用は、広範に評価されている。冷凍保存中の赤血球は徐々に劣化し、長期保存赤血球の点滴は、術後感染症、入院期間、死亡率などの点で不利な臨床結果と関連している。
【0003】
赤血球は、赤血球単位の溶血が許容レベル(欧州では0.8%、米国では1%)以下であること、およびデグリセロリゼーション(deglycerolisation)後の赤血球の解凍後の回復率(すなわち、凍結解凍洗浄回復率)が80%以上であることを要求する国際的ガイドラインの対象である。また、凍結保存された赤血球の少なくとも75%は、点滴後24時間経っても循環していなければならない。
【0004】
大量の細胞を凍結保存することは、治療用細胞バンキングに必要である。そのためには、大量の、あるいは少量の高濃度細胞が必要である。加えて、バイオリアクタシステムは、稼働中の細胞バンクやスターターカルチャーから大量の細胞をシーディングする必要があることが多い。
【0005】
医療機器の包装は、機器そのものとほぼ同様に重要である。医療機器の包装は、患者に専門的な治療を安全に提供する上で重要な役割を果たしている。ほとんどの使い捨ての滅菌済み医療器具は、保管、取り扱い、輸送の間、無菌状態が保たれているという高い信頼性をもって開封することができる。
【0006】
医療機器の包装が二重に重要であるのは、規制当局が無菌バリアまたは一次包装の重要な性質を認識し、それらを医療機器の構成要素または付属品とみなしていることである。このことは、包装が医療機器そのものと同程度に重要であることを意味している。
【0007】
生物試料の冷却速度は、その長期的な生存率に劇的な影響を与えることが証明されている。冷却速度は、細胞内および細胞外の氷晶の形成速度や大きさに影響するだけでなく、凍結過程で生じる溶液効果にも影響する。
【0008】
結晶化は、液体の温度が結晶化温度に近づくと、細胞内外の領域で氷結晶の核生成と成長によって起こる。結晶化は、融解潜熱によるエネルギー放出を含む一次の相転移である。液体から固体への相転移には、冷却速度、均質性、圧力など多くの要因が影響する。
【0009】
冷却速度は、細胞の生存率を最適化するために使用されてきたもう一つのパラメータである(Dumont,F.,P.A.Marechai,and P.Gervais. 2003. Influence of cooling rate on Saccharomyces cerevisiae destruction during freezing: unexpected viability at ultra-rapid cooling rates. Cryobiology 46:33-42)。凍結保護剤(CPA)と冷却速度の同時管理も可能である。実際、冷却速度は凍結中の氷結晶サイズを決定する。溶液が凍り始めると、細胞外液中の水が氷に変わり、細胞外液中の溶質濃度が上昇する。その後の浸透圧により、細胞質からより濃縮された外部溶液に水が拡散するため、細胞は脱水する(Dumont,F.,P.A.Marechai,and P.Gervais. 2004. Cell size and water permeability as determining factors for cell viability after freezing at different cooling rates. Appl. Environ. Microbiol. 70:268-272.)。冷却速度が低いと、浸透圧によって体積が減少し、細胞内結晶化の前に細胞内の水分がすべて流出する。冷却速度が中間の範囲にある場合、体積の減少は細胞に不可逆的な損傷をもたらし、著しい死亡が観察される。冷却速度が非常に速い場合、細胞は急激な熱流のために体積を減少させる時間がない可能性があり、これによってかなりの生存率を維持できる可能性がある。従って、凍結の速度論は細胞の生存率に大きな影響を与えるが、ほとんどの場合、冷却速度はうまく制御できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
細胞死は、細胞外浸透圧の上昇と膜-脂質相転移に関係する徐冷中の大量の水分流出、あるいは致死的な膜損傷を伴う細胞からの水分流出中の結晶化によって起こる。
【0011】
この仮定に基づくと、細胞死は、培地の結晶化によって決定されるラグタイムの間に起こる。細胞死は0℃から-5℃の間の温度に対応する。しかし、より低い温度では、細胞死には第二段階があった。
【0012】
主に水からなる溶液の場合、ほとんどすべての結晶化が起こる温度範囲は、凍結開始後数度まで低下し、結晶化温度は溶質の濃度に依存する。
【0013】
AU2009258341B2は、2つの実質的に平行な壁が、周縁部の一部及び包装器の中央領域において互いに連結されてなる、生物学的材料用の包装器を開示している。中央領域、壁の面積および厚さ、ならびに周縁部は、生物学的材料を包装器に充填した後、壁が平行を維持するのに十分な剛性を有するように構成されている。この包装器は、生物学的材料の凍結保存に使用することができる。
【0014】
本明細書における先行刊行物(またはそれに由来する情報)または公知の事項への言及は、その先行刊行物(またはそれに由来する情報)または公知の事項が、本明細書が関係する努力分野における一般的な知識の一部を形成していることを認めるものでも、示唆するものでもない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1つの広範な形式において、本発明の一態様は、生物学的材料を保存するための包装器を提供するものであり、使用時に、包装器は生物学的材料で満たされ、熱交換流体が包装器の周囲を流れるように生物学的材料を保存するための装置内に配置され、包装器は、生物学的材料を受容するための内部コンパートメントを画定するように構成された1つ以上の包装器壁と、包装器壁の少なくとも1つを横切って画定された1つ以上の熱輪郭とを含み、使用時に、熱交換流体の流れが、1つ以上の熱輪郭によって少なくとも部分的に方向付けられ、熱交換流体と包装器内に含まれる生物学的材料との間の熱伝達を改善する、ことを特徴とする。
【0016】
一実施形態では、熱輪郭は、使用時の熱交換流体の流れに実質的に整合するように配置される。
【0017】
一実施形態では、包装器は、互いに平行になるように配置された複数の熱輪郭を含む。
【0018】
一実施形態では、熱輪郭の各々は、それぞれの包装器壁の細長い窪み、およびそれぞれの包装器壁の細長い突出部のうちの1つとして、包装器壁のそれぞれの1つを横切って画定される。
【0019】
一実施形態では、包装器壁は、対向する第1壁及び第2壁を含み、第1壁及び第2壁は、内部コンパートメントを画定するために、それぞれの周縁の実質的な部分の周りで一緒に接続される。
【0020】
一実施形態では、1つまたは複数の熱輪郭は、第1および第2の壁が1つまたは複数の接続線に沿って一緒に接続されることによって画定され、接続線は、内部コンパートメントを、その間で流体連通を可能にするサブコンパートメントに分割するように構成される。
【0021】
一実施形態では、使用時、包装器は、生物学的材料がサブコンパートメントの間に分配されるように生物学的材料で充填され、熱交換流体の流れは、熱交換流体と各サブコンパートメントに含まれる生物学的材料との間の実質的に均等な熱伝達を促進するように、1つ以上の熱輪郭によって少なくとも部分的に方向付けられる。
【0022】
一実施形態において、接続線は、生物学的材料が各サブコンパートメント間で実質的に均等に分配されるように構成される。
【0023】
一実施形態では、第1および第2の壁は、使用時の熱伝達流体の流れに面する前縁と、反対側の後縁とを含む複数の縁に沿って一緒に接続され、複数の熱輪郭は、前縁と後縁との間に延在する。
【0024】
一実施形態では、後縁は前縁と実質的に平行である。
【0025】
一実施形態では、接続線の少なくともいくつかは前縁と相互接続する。
【0026】
一実施形態では、熱輪郭は、前縁から垂直な方向に対して所定の角度で配置される。
【0027】
一実施形態では、所定の角度は、生物学的材料を保存するための装置内の熱交換流体の流れに従って選択される。
【0028】
一実施形態において、所定の角度は、0°から30°の間、5°から15°の間、及び約10°の間の少なくとも1つである。
【0029】
一実施形態において、隣接する熱輪郭は、所定の距離間隔だけ離隔されている。
【0030】
一実施形態では、所定の距離間隔は15mmから20mmの間である。
【0031】
一実施形態では、所定の距離間隔は、第1および第2の壁の分離を抑制するように選択される。
【0032】
一実施形態では、所定の距離間隔は、第1の壁と第2の壁との分離を所定の分離距離に制限するように選択される。
【0033】
一実施形態では、第1の壁と第2の壁との間で測定される包装器深さは、10mm未満、5mm未満、1mm以上4mm未満、及び1mm未満のうちの少なくとも1つである。
【0034】
一実施形態では、包装器は、使用時に包装器が生物学的材料で充填される際に、第1および第2の壁が互いに実質的に平行を保つように構成される。
【0035】
一実施形態では、第1および第2の壁は、包装器材料のシートから形成される。
【0036】
一実施形態では、包装器材料は、ポリマー、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、エチレン酢酸ビニル共重合体、共重合体、エチレン及び酢酸ビニル、金属、高合金、及びステンレス鋼のうちの1つから選択される。
【0037】
一実施形態では、包装器は、包装器の出し入れを容易にするための1つ以上の開口部を含む。
【0038】
一実施形態では、1つ以上の開口部は、包装器の端部を通って延びる1つ以上のポートを含む。
【0039】
一実施形態では、包装器は、全血、血小板、赤血球、白血球、血漿、血液製剤、精子、細胞。幹細胞、臓器またはその一部、および組織のいずれかから選択される生物学的材料の保存用に構成される。
【0040】
一実施形態では、包装器は、治療的処置に使用される生物学的材料を保存するために構成される。
【0041】
一実施形態では、包装器は、生物学的材料の冷凍保存、生物学的材料の凍結保存、および生物学的材料の融解の少なくとも1つで使用するように構成される。
【0042】
一実施形態では、包装器は、0℃~10℃/分、10℃~50℃/分、50℃~100℃/分、および100℃/分より大きい熱伝達率のうちの1つから選択される熱伝達率で使用するように構成される。
【0043】
一実施形態では、包装器はバッグとして構成されている。
【0044】
一実施形態では、包装器は、ストローおよびバイアルのうちの1つとして構成される。
【0045】
別の広範な形式において、本発明の一態様は、生物学的材料を保存するための包装器を提供するものであり、使用時に、包装器は、生物学的材料で充填され、熱交換流体が包装器の周囲を流れるように生物学的材料を保存するための装置内に配置され、包装器は、第1および第2の壁であって、それぞれの外周の実質的な部分の周りで一緒に連結されて、内部コンパートメントを画定する、第1および第2の壁と、第1および第2の壁によって画定される複数の熱輪郭であって、接続線に沿って一緒に連結され、接続線は内部コンパートメントを、その間に流体連通を可能とするサブコンパートメントに分割するように構成される、複数の熱輪郭とを含み、使用時に、生物学的材料が、サブコンパートメント間に分配され、熱交換流体の流れは、少なくとも部分的に熱輪郭によって方向付けられ、熱交換流体と包装器のサブコンパートメントに含まれる生物学的材料との間の熱伝達を改善する、ことを特徴とする。
【0046】
別の広範な形式において、本発明の一態様は、生物学的材料を保存するための包装器を設計する際に使用する方法を提供するものであり、使用時に、包装器は生物学的材料で充填され、熱交換流体が包装器の周囲を流れるように生物学的材料を保存するための装置内に配置され、当該方法は、a)包装器が所望の体積の生物学的材料で充填されることを可能にする内部コンパートメントを画定するように構成された1つ以上の包装器壁を含む包装器形状を決定する工程と、b)生物学的材料、1つ以上の包装器壁を形成するための包装器材料、および熱交換流体の熱的特性を決定する工程と、c)熱交換流体の速度、熱交換流体の温度、および熱交換流体の流れ方向を含む装置の動作条件を決定する工程と、d)決定された包装器形状、熱特性、および動作条件に従って、充填された包装器の周りの装置内の熱交換流体の流れについて解析を行い、使用時の生物学的材料における予想される温度勾配を決定する工程と、e)予想される温度勾配を使用して、熱交換流体と包装器に含まれる生物学的材料との間の熱伝達を改善するために、包装器壁の少なくとも1つを横切って画定される1つ以上の熱輪郭の構成を選択する工程と、f)使用時の生物学的材料における予想される温度勾配を決定するために、決定された包装器形状、1つ以上の熱輪郭の選択された構成、熱特性、および動作条件に従って、1つ以上の熱輪郭を含む、充填された包装器の周りの装置内の熱交換流体の流れについてさらなる解析を実行する工程とを含む。
【0047】
一実施形態において、本方法は、望ましい予想される温度勾配が決定されるまで、工程e)およびf)を繰り返すことを含む。
【0048】
一実施形態では、包装器形状は、対向する第1および第2の壁であって、内部コンパートメントを画定するように、それぞれの周縁の実質的な部分の周りで一緒に接続されている、第1および第2の壁と、第1および第2の壁によって画定される複数の熱輪郭であって、接続線に沿って一緒に接続され、接続線は、内部コンパートメントを、その間に流体連通が可能となるサブコンパートメントに分割するように構成されている、熱輪郭を含み、本方法は、充填された包装器の周囲の装置内の熱交換流体の流れに関する解析を実行すること、および予想される温度勾配を使用して、熱交換流体とサブコンパートメントの各々に含まれる生物学的材料との間の実質的に均等な熱伝達を提供するための熱輪郭の構成を選択することを含む。
【0049】
本発明の広範な形式およびそれぞれの特徴は、組み合わせて、互換的に、および/または独立して使用することができ、別々の広範な形式への言及は限定を意図するものではないことが理解されよう。
【0050】
以下、添付図面を参照して、本発明の様々な実施例および実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1は、生物学的材料の保存のための包装器の一例の平面図である。
【
図3A】
図3Aは、
図2Aの包装器の簡略化された解析モデルの概略平面図であり、包装器全体の解析位置を示す。
【
図3B】
図3Bは、断面A-Aにおける
図3Aの包装器の簡略化された解析モデルの概略断面図である。
【
図3C】
図3Cは、詳細Bにおける
図3Bの包装器の簡略化された解析モデルの断面図の概略詳細図であり、包装器内の解析点を示す。
【
図4A】
図4Aは、包装器を使用する全血の凍結保存中の、
図3Aに示す解析位置P101における経時的な予想される温度勾配のプロットである。
【
図4B】
図4Bは、包装器を用いた全血の凍結保存中の、
図3Aに示す解析位置P103における経時的な予想される温度勾配のプロットである。
【
図4C】
図4Cは、包装器を用いた全血の凍結保存中の、
図3Aに示す解析位置P105における経時的な予想される温度勾配のプロットである。
【
図5A】
図5Aは、包装器を用いた全血の凍結保存中の、その後の時間間隔における包装器の中心層の温度マップを示す。
【
図5B】
図5Bは、包装器を用いた全血の凍結保存中の、その後の時間間隔における包装器の中心層の温度マップを示す。
【
図5C】
図5Cは、包装器を用いた全血の凍結保存中の、その後の時間間隔における包装器の中心層の温度マップを示す。
【
図5D】
図5Dは、包装器を用いた全血の凍結保存中の、その後の時間間隔における包装器の中心層の温度マップを示す。
【
図6A】
図6Aは、従来の血液バッグを用いた全血の凍結保存中の、その後の時間間隔における温度マップを示す。
【
図6B】
図6Bは、従来の血液バッグを用いた全血の凍結保存中の、その後の時間間隔における温度マップを示す。
【
図6C】
図6Cは、従来の血液バッグを用いた全血の凍結保存中の、その後の時間間隔における温度マップを示す。
【
図6D】
図6Dは、従来の血液バッグを用いた全血の凍結保存中の、その後の時間間隔における温度マップを示す。
【
図7A】
図7Aは、包装器と共に使用するための、生物学的材料の保存のための装置内の熱伝達流体の流れを描写する計算流体力学(CFD)解析結果の上面図及び側面図である。
【
図7B】
図7Bは、包装器と共に使用するための、生物学的材料の保存のための装置内の熱伝達流体の流れを描写する計算流体力学(CFD)解析結果の上面図及び側面図である。
【
図8A】
図8Aは、バッグ幅、血液量および赤血球生存率の間の関係を描写したプロットを示す。
【
図8B】
図8Bは、バッグ幅、血液量および赤血球生存率の間の関係を描写したプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
次に、生物学的材料の保存のための包装器100の一例を、
図1および
図2A~
図2Cを参照して説明する。包装器100は、使用時に、包装器100を生物学的材料で充填し、熱交換流体が包装器100の周囲を流れるように生物学的材料を保存するための装置内に配置することができるように提供される。
【0053】
本明細書で使用される場合、「生物学的材料」には、以下の材料の非網羅的リストが含まれる。それは、血液、血漿、血小板、白血球または他の血液産物、細菌、ウイルス細菌、真菌または他の微生物、臓器またはその一部、精液、卵、初乳、皮膚、血清、ワクチン、幹細胞(例えば、骨髄、臍帯血、羊水などからのもの)、臍帯、骨髄、生殖細胞、腫瘍細胞、初乳、および植物細胞を含む。
【0054】
本明細書に記載の包装器100の実施形態は、生物学的材料としての全血の保存のために特に構成されているが、包装器100は、本明細書に明示的に記載されていない他の材料を含む広範な生物学的材料のために構成され得ることが理解されるべきである。
【0055】
本明細書で使用される場合、生物学的材料の「保存」は、生物学的材料の保存に関連して使用され得る種々の工程を指す。いくつかの例において、保存は、生物学的材料の凍結または冷却、凍結または冷却された生物学的材料の保存、および生物学的材料の解凍、または必要に応じてその後の使用のために生物学的材料を所望の温度に戻すことを含み得る。包装器の好ましい実施形態は、生物学的材料の冷凍保存、生物学的材料の凍結保存、および生物学的材料の解凍の少なくとも1つのために特に構成され得る。
【0056】
生物学的材料を保存するための適切な装置の例は、W02020/102854A1に記載されており、その開示全体は本明細書に参考文献として組み込まれる。例えば、前述の刊行物に記載されているように、装置は、外側断熱ハウジング内に配置された内側ハウジングを含むことができ、該内側ハウジングの壁は、生物学的産物を受容するためのコンパートメントを画定し、該壁は、該コンパートメント内への熱交換流体の流入のためのインレット壁と、該コンパートメントからの熱交換流体の流出のための対向するアウトレット壁と、該インレット壁を該アウトレット壁へ隣接させる側壁および基部とを含み、該インレット壁および該アウトレット壁は、動作中、該内側ハウジングの該コンパートメント内に受容されたアイテムが、該熱交換流体中に浸漬され、該熱交換流体と熱交換するように、各々、連続的な熱交換流体の流れを収容するための一連の開口を含む。この文脈において、包装器100は生物学的材料で充填され、熱交換流体が包装器100の周囲を流れるように装置の内側ハウジングのコンパートメント内に配置される。
【0057】
広義には、包装器100は、生物学的材料を受容するための内部コンパートメント101を画定するように構成された1つ以上の包装器壁111、112と、包装器壁111の少なくとも1つを横切って画定された1つ以上の熱輪郭120、121とを含む。使用時、熱交換流体の流れは、1つ以上の熱輪郭120、121によって少なくとも部分的に方向付けられ、熱交換流体と包装器100に収容された生物学的材料との間の熱伝達を改善する。
【0058】
例えば、熱交換流体が装置内で包装器100の周囲を流れる際、熱輪郭120、121は、熱交換流体と生物学的材料との間の熱伝達をより均一にするために、熱交換流体の流れを包装器壁を横切って誘導するのに役立つ。これにより、使用時の生物学的材料に「ホットスポット」または「コールドスポット」が存在する原因となる、熱伝達が相対的に高い領域または低い領域を回避することができる。このようなホットスポットまたはコールドスポットは、生物学的材料の保存中または保存後に細胞の生存率などに悪影響を及ぼす可能性のある熱伝達率の変動を示すため、一般に望ましくないことが理解されよう。
【0059】
対照的に、熱輪郭120、121は、熱交換流体と生物学的材料との間の熱伝達速度を少なくとも部分的に制御または最適化するために設けられてもよいことが理解されるべきである。例えば、熱輪郭120、121は、熱交換流体と生物学的材料との間の熱伝達が包装器形状に対して実質的に均等に分配されるように、包装器形状、生物学的材料、包装器材料および熱交換流体の熱特性、ならびに装置の動作条件に関して構成することができる。この点に関して、熱輪郭120、121の構成は、意図された使用における包装器の熱解析に基づいて選択することができ、そのための適切な技術については、追ってさらに詳細に説明する。
【0060】
いずれにせよ、包装器壁111の少なくとも1つにわたって熱輪郭120、121が画定されている包装器100の使用は、熱輪郭120、121の存在しない従来の包装器の使用と比較して、生物学的材料の冷凍保存、凍結保存および/または融解の改善を促進し得ることが理解されよう。
【0061】
次に、包装器100の好適な実施形態の好ましい及び/又は任意の特徴の更なる詳細を、
図1及び
図2A~
図2Cに関して説明する。
【0062】
好ましい実施形態では、熱輪郭120、121は、使用時の熱交換流体の流れに実質的に整合するように配置する。使用時の装置内及び包装器100に対する熱交換流体の予想される流れ方向は、例えば、数値流体力学(CFD)解析などを用いて流れ状態の熱解析を行うことにより、実験的又は理論的に決定することができる。したがって、熱輪郭120、121が予想される流れ方向と実質的に整合するように包装器を構成することができる。これには、例えば、以下でさらに詳細に説明するように、包装器形状に対して所定の角度で熱輪郭120、121を配置することが含まれる。
【0063】
多くの実施形態では、包装器100は、好ましくは互いに平行になるように配置された複数の熱輪郭120、121を含むことができる。このような平行配置は、熱輪郭120、121が使用時の包装器100に対する熱交換流体の流れをどのように方向付けるかを改善するのに役立つことが理解されよう。しかしながら、複数の熱輪郭を設けることは必須ではなく、いくつかの例では単一の熱輪郭を設けてもよいことが理解されるべきである。例えば、ストローやチューブ構成などの一部の包装器形状では、単一の熱輪郭が包装器100の円筒壁を横切って螺旋状に配置されてよい。
【0064】
図1及び
図2A~
図2Cに示されるような例示的な実施形態では、熱輪郭120、121の各々は、
図2Cに示される断面プロファイルにおいて最もよく観察されるように、それぞれの包装器壁111における細長い窪みとして、包装器壁111のそれぞれの1つを横切って画定され得る。この例では、熱輪郭120、121の各々は、それぞれの包装器壁111における溝、チャネルまたは凹部として記載される。しかしながら、代替実施形態では、熱輪郭120、121は、それぞれの包装器壁111における細長い突出部として、例えば、それぞれの包装器壁における隆起等の形態で画定されてもよい。いずれの場合においても、熱輪郭120、121は、使用時の熱伝達流体の流れを方向付けるのに役立つことが理解されよう。
【0065】
図1及び
図2A~
図2Cに示されるようないくつかの実施形態では、包装器壁111、112は、対向する第1および第2の壁を含み、第1の壁111及び第2の壁112は、内部コンパートメント101を画定するために、それぞれの外周の実質的な部分の周りで一緒に接続される。この文脈において、熱輪郭120、121は、第1の壁111および第2の壁112が1つまたは複数の接続線210に沿って一緒に接続されることによって画定され得る。例えば、
図2Cに示されるように、熱輪郭120は、第1の壁111の細長い窪みとして形成されてもよく、第1の壁111は、それぞれの接続線210に沿って第2の壁112に接続される。
【0066】
接続線210は、内部コンパートメント101を、その間に流体連通が可能なサブコンパートメント201に効果的に分割するように構成することができる。使用時には、生物学的材料がサブコンパートメント201の間に分配されるように、包装器100を生物学的材料で充填することができ、熱交換流体の流れは、熱交換流体とサブコンパートメント201の各々に含まれる生物学的材料との間の実質的に均等な熱伝達を促進するように、熱輪郭120、121によって少なくとも部分的に方向付けられる。好ましい実施形態では、接続線210は、生物学的材料がサブコンパートメント201の各々の間に実質的に均等に分配されるように構成され得る。
【0067】
サブコンパートメント201間の生物学的材料のこの均等な分配と、熱交換流体と各サブコンパートメント201に含まれる生物学的材料との間の実質的に均等な熱伝達を促進するように熱交換流体の流れを方向付ける熱輪郭120、121との組み合わせは、生物学的材料全体の温度変動を最小限に抑えるのに役立ち、それによって生物学的材料の保存中に一貫した熱伝達が可能となることが理解されよう。
【0068】
いくつかの実施形態では、第1の壁111および第2の壁112は、使用時の熱伝達流体の流れに面する前縁131、および対向する後縁132を含む複数の縁に沿って一緒に接続されてもよい。複数の熱輪郭120、121は、好ましくは、前縁131と後縁132との間に延在する。熱輪郭120、121は、熱交換流体が前縁131に到達し、続いて包装器100のそれぞれの壁を横切って後縁132に向かうときに、熱交換流体の流れを方向付けることが理解されよう。
【0069】
典型的には、後縁132は、
図1および
図2A~
図2Cに示す包装器100の構成のように、前縁131と実質的に平行であるが、これは必ずしも常にそうでなくてよい。
【0070】
熱輪郭120、121を画定する接続線210の少なくとも一部は、前縁131と相互接続してもよい。このような配置は、前縁131の周囲における熱伝達流体の流れの乱れを防止するように、前縁131においてより流線形のプロファイルを有する包装器を提供するのに役立つ。
【0071】
しかしながら、接続線210及び関連する熱輪郭120、121の全てが必ずしも前縁131と相互接続するわけではないことを理解されたい。この点に関して、
図1および
図2A~
図2Cの実施形態における一つの熱輪郭121は、前縁131と相互接続されていないことに留意されたい。この熱輪郭121を前縁131に相互接続すると、小さなサブコンパートメントが形成され、このサブコンパートメントのカマー(comer)に生物学的材料が捕捉される可能性があり、これは熱伝達にとって望ましくなく、また包装器100を充填または空にすることを阻害する可能性があることが理解されよう。
【0072】
また、熱輪郭120、121は、接続線210、211を含まない実施形態であっても、上記の配置と同様に、前縁131まで延びることができることを理解されたい。
【0073】
熱輪郭120、121は、前縁131から垂直な方向に対して所定の角度で配置することができる。好ましくは、所定の角度は、生物学的材料を保存するための装置内の熱交換流体の流れに従って選択される。例えば、所定の角度は、上述したように、熱交換流体の流れに対して熱輪郭120、121を実質的に一致させるように選択することができる。
【0074】
いくつかの例では、所定の角度は0°から30°の間である。好ましくは、所定角度は5°から15°の間であってよい。
図2A~
図2Cの特定の実施形態では、所定の角度は約10°であってよい。しかしながら、所定の角度は、例えば、熱交換流体の流れの方向が上記よりも急な角度である場合には、これらの範囲外に選択されてもよいことが理解されるべきである。
【0075】
複数の熱輪郭120、121を含む包装器100の例では、隣接する熱輪郭120、121は、典型的には、所定の距離間隔だけ離間される。例えば、
図2A~
図2Cの実施形態では、所定の距離間隔は、15mm~20mmの間であってもよい。しかしながら、特定の距離間隔は、典型的には、包装器100の幾何学的構成に依存し、包装器100が充填される特定の生物学的材料などの他の要因にも依存し得る。
【0076】
一般的な原理として、所定の距離間隔は、特に使用時に、第1の壁111と第2の壁112との分離を抑制するように選択することができる。熱輪郭120、121が接続線210と一致するように画定される実施形態では、第1の壁111および第2の壁112が接続線210で分離することが防止され、包装器が生物学的材料で充填されるときの膨らみなどによる第1の壁111と第2の壁112との間の分離が、隣接する熱輪郭120、121間の所定の距離間隔に応じて抑制されることが理解されるであろう。
【0077】
好ましい実施形態では、所定の距離間隔は、第1の壁111と第2の壁112との分離を所定の分離距離に制限するように選択することができる。所定の距離間隔を小さくすることによって比較的小さい所定の分離距離が提供されてもよく、所定の距離間隔を大きくすることによって比較的大きい所定の分離距離が可能であってよいことが理解されよう。
【0078】
いくつかの例では、第1の壁111と第2の壁112との間で測定される包装器深さは、好ましくは10mm未満である。包装器深さは5mm未満であってもよく、いくつかの実施形態では、包装器深さは1mmと4mmの間であってもよい。しかしながら、用途によっては、1mm未満など、より小さい包装器深さを提供することが望ましい場合がある。最適な包装器深さは、一般的に、全体的な包装器形状および熱的な考慮事項に依存することを理解されたい。
【0079】
好ましくは、包装器100は、包装器100が使用時に生物学的材料で充填されたときに、第1の壁111および第2の壁112が互いに実質的に平行を保つように構成される。これは、接続線210間の間隔および関連する熱輪郭120、121の組み合わせによって達成され得る。
【0080】
包装器100の構造に関する限り、第1の壁111および第2の壁112は、包装器材料のシートから形成することができる。例えば、包装器材料は、ポリマー(ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、またはエチレン酢酸ビニル共重合体など)、共重合体(エチレンおよび酢酸ビニルなど)、または金属(高合金金属またはステンレス鋼など)から選択することができる。異なる包装器材料から、異なる特性を有する包装器が作成可能であることが理解されよう。
【0081】
例えば、第1の壁111及び第2の壁112がポリマーのような可撓性材料のシートから形成される場合、これは、充填されたときに膨らみを持つ包装器をもたらす可能性があるが、例えば、上述したように、熱輪郭120、121の間の適切な距離間隔を選択することによって制御することができる。第1の壁111および第2の壁112間の接続は、ヒートシールまたは他の適切な熱成形技術によって達成することができる。
【0082】
一方、第1の壁111及び第2の壁112が金属などの剛性材料のシートから形成される場合、熱輪郭120、121は、第1の壁111及び第2の壁112間の接続又はその間の特定の距離間隔を必要とすることなく、シートの変形として画定され得る。しかしながら、第1の壁111及び第2の壁112間の接続は、上述した理由でサブコンパートメントを画定するように、溶接などによって提供されてもよい。
【0083】
包装器100は、包装器100を充填及び空にすることを容易にするための1つ以上の開口部を含むことができる。これらの開口部は、
図2A及び
図2Bに示すように、包装器100の縁部134を通って延びる1つ以上のポート141、142を含むことができる。好ましくは、ポート141、142は、前縁131および後縁132以外の縁部134に設けられる。この例では、ポート141、142は、包装器100の第1の壁111及び第2の壁112から離れて延びていてもよい。具体的な一例では、各ポート141、142は、包装器を充填または空にするのを助けるためのチューブ等への接続を容易にするためのルアーロックコネクタを含むことができる。
【0084】
包装器は、全血、血小板、赤血球、白血球、血漿、血液製剤、精子、細胞、幹細胞、臓器またはその一部、および組織のいずれかから選択される生物学的材料など、さまざまな生物学的材料を保存するように構成することができる。
【0085】
上述したように、
図1および
図2A~
図2Cに示す包装器100の実施形態は、特に全血の凍結保存に使用するように構成されている。
【0086】
他の実施形態において、包装器は、造血幹細胞、間葉系幹細胞、神経幹細胞、上皮幹細胞、皮膚幹細胞等の成体幹細胞;胚性/多能性幹細胞;誘導多能性幹細胞;骨髄由来幹細胞;又は臍帯血幹細胞等の幹細胞などの保存に使用するために特に構成され得る。
【0087】
さらに他の実施形態では、包装器は、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞、遺伝子改変細胞、ナチュラルキラー細胞、胚盤胞、胚、卵子、接合体、卵巣組織、精巣組織、精子、および心臓弁のような、様々な他のタイプの生物学的材料の保存に使用するために構成され得る。
【0088】
本明細書で識別された生物学的材料の例は、網羅的なリストであることを意図せず、包装器は他の生物学的材料の保存にも使用され得ることが理解されるべきである。
【0089】
いくつかの例では、包装器100は、CAR-T細胞療法などの治療的処置に使用される生物学的材料の保存のために特別に構成されてもよい。
【0090】
包装器100は、生物学的材料を保存するための様々な装置と共に使用するために、様々な異なる動作パラメータを有するように構成され得る。例えば、包装器100は、毎分0℃から10℃の間、毎分10℃から50℃の間、毎分50℃から100℃の間、および毎分100℃を超える間から選択される熱伝達速度に適合するように構成することができる。
【0091】
包装器100は、上述したような機能性を提供する一方で、様々な異なる包装器形状及びフォームファクタで提供することもできる。例えば、包装器100は、
図1及び
図2A~
図2Cに示すように、バッグとして構成することができる。しかしながら、包装器は、他の例では、代替的にストロー又はバイアルとして構成されてもよい。また、本発明の特徴は、他の様々なフォームファクタの包装器に適用できることも理解されよう。
【0092】
1つの好ましい実施形態において、包装器100は、具体的には、対向する第1の壁111及び第2の壁112であって、内部コンパートメント101を画定するためにそれぞれの周縁の実質的な部分の周りで一緒に接続されている、第1の壁111及び第2の壁112と、第1の壁111及び第2の壁112によって画定される複数の熱輪郭120、121であって、接続線210に沿って一緒に接続されている、複数の熱輪郭120、121とを含むように構成され得る。接続線210は、内部コンパートメント101を、その間に流体連通が可能なサブコンパートメント201に分割するように構成される。使用時に、生物学的材料はサブコンパートメント201の間に分配され、熱交換流体の流れは、熱交換流体と包装器のサブコンパートメント201に含まれる生物学的材料との間の熱伝達を改善するために、熱輪郭120、121によって少なくとも部分的に方向付けられる。
【0093】
次に、包装器100の好ましい実施形態を構成する際に適用することができる、さらなる詳細な設計上の考慮事項について説明する。
【0094】
包装器100の実施形態を設計する際、及びこれらの実施形態の検証試験の結果、本出願人は、使用時に包装器100全体の熱伝達の均一性に関連する問題に遭遇した。包装器の寸法、構成及び材質を変化させることと、細胞生存率の低下との間に相関関係があることを見出した研究が実施された。この研究では、特に血液と血液製剤の凍結保存用の包装器の設計と製造に焦点を当てた。検証試験の結果、バッグ全体に均一な熱伝達が残るほど、細胞生存率は変わらないままであることが確認された。さらに、熱解析を実行し、上記のように包装器の一部として熱輪郭を含めることにより、熱伝達係数は包装器の体積が増加するにつれて、より制御された熱伝達のために改善された。
【0095】
図1Aおよび
図2A~
図2Cの実施形態に示す包装器100の具体的な構成は、この研究および熱解析の結果として決定されたが、その詳細について次に概説する。
【0096】
包装器100は、具体的には、全血の凍結保存に使用するように構成された包装器の形態で提供され、15mLの容積を有し、約150mm×120mmの全体寸法を有するように設計されている。
【0097】
この実施形態では、複数の熱輪郭120、121が、熱交換流体間の均等な熱伝達を可能にするために、それらの間に画定された各サブコンパートメントの周囲に熱交換流体の流れを向けるように含まれている。
【0098】
熱輪郭120、121間の間隔要件は、全体の最小サンプル容積によって決定された。熱輪郭120、121間の間隔は、均一な熱伝達を可能にするために、包装器全体にわたって実質的に均等に分散されたサブコンパートメントを形成するように使用された。隣接する熱輪郭120、121間の間隔は、最小15mm、最大20mmである。包装器の容積と寸法が大きくなっても、同じ最小間隔と最大間隔を使用することができる。
【0099】
熱輪郭120、121は、均等で均一な熱伝達を可能にするために、使用時の凍結保存装置内の熱交換流体の流れの方向と整合するように配置されている。
【0100】
包装器の縁が盛り上がっていると、使用時の熱交換流体の方向性のある流れが乱れる可能性があると判断された。この問題を解消し、熱伝達の一貫性を向上させるために、熱輪郭120、121は包装器の前縁131まで取られ、この領域における包装器の膨らみを減少させ、従って熱交換流体の流れの乱れを減少させようとした。
【0101】
合計7つの熱輪郭120、121が、この特定の設計のために含まれている。サンプルおよびバッグの体積が増加するにつれて、追加の均等に分配されたサブコンパートメントを提供するために、追加の熱輪郭120、121が含まれることが予想される。
【0102】
図1及び
図2A~
図2Cの実施形態では、包装器100は、250ミクロンの食品及び医療グレードのグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)を使用したクラムシェル半剛性設計として構成されている。包装器100は、充填/空化および通気用の2ポート設計を含む。
【0103】
医療産業におけるIVバッグの標準的な充填方法は、一般的にルアーロックを使用するものであり、ポートのデザインにも採用されることがある。これらは、清潔で、安全で、無菌の充填ポイントを達成するためのネジ山、テーパー、シールの点で標準的なものである。さらに、ポートにはEVAチューブが使用されることもあり、このチューブはシーリングに超音波を使用することができる。
【0104】
包装器100は、250ミクロンのPETGプラスチックシート2枚を成形して密閉容器を製造するクラムシェルタイプの製造方法を利用して製造することができる。大まかに言えば、この製造方法は、金型設計と3Dプリント、0.25mmPETGシートの真空成形、部品のトリミング、恒温シーラーを使用した部品の溶接、圧力試験/品質チェックの工程を含む。
【0105】
包装器100は、3D設計ソフトウェアを使用して設計された。これに関して、3Dコンピュータ支援設計(CAD)モデルは、設計プロセスの各工程が容易になるように、以下のように3つの異なる構成で開発された。
・構成1:3Dプリント用の金型形状で、その後の真空成形プロセスに使用。
・構成2:熱伝達の数値流体力学(CFD)解析用の簡易解析モデル。
・構成3:パッケージの完成品の3D表現。
【0106】
CFD解析に使用した解析モデルを
図3A~3Cに示す。この解析モデルを使用して、
図3A~3Cに示すように、さまざまな位置でコアからパッケージ表皮までの温度勾配を解析した。
図3Aは、パッケージ全体の解析位置を示し、特に、熱交換流体の流れ方向において、熱輪郭間の同じサブコンパートメント内で間隔をあけて配置された解析位置P101、Pl02、Pl03、Pl04、およびPl05を示している。
【0107】
図3Bは、
図3Aの解析モデルの断面A-Aにおける断面図であり、
図3Cは、位置P101における包装器内の解析点の拡大詳細で、芯から包装器表皮までの範囲を示している。解析モデルにおいて、解析点P101Xは包装器表皮の外壁面を表し、解析点P101Yは包装器表皮の内壁面を表す。一方、解析点P101は生物学的材料のコアを表し、解析点P101BからP101Fは、コアから包装器表皮の内壁面直前までの生物学的材料内の様々な位置を表す。同様の解析点の命名法は、他の解析位置にも適用される。
【0108】
生物学的材料(全血)、包装器の材料(PETG)、および熱交換流体(炭化水素)の熱特性に関してCFD解析を実行した。CFD解析は、熱交換流体の速度、熱交換流体の温度、および装置内の熱交換流体の流れ方向を含む凍結保存装置の動作条件をシミュレートする。この例では、
図3Aに示されるように、包装器は、その前縁が熱交換流体の流れ方向を向いて装置内に自由に浮遊していると仮定した。
【0109】
CFD解析結果の例を,解析位置P101、P103、およびP105の異なる解析点における経時的な温度勾配のプロットの形で
図4A~4Cに示す。この結果からわかるように、これらの温度勾配は、包装器の前縁からの相対的な距離にもかかわらず、異なる解析位置において同様の冷却速度を反映しており、包装器設計が包装器全体にわたってより均一な熱伝達を提供することを示している。
【0110】
このCFD解析結果は、
図5A~
図5Dにもグラフで表されており、それぞれ、その後の時間間隔、特に、凍結保存装置の動作中に熱交換流体の流れを開始してから約2秒、17秒、22秒、42秒における包装器の中心層の温度マップを示している。
【0111】
図5A~
図5Dの温度マップは、同様の運転条件下で全血を凍結保存するための従来のIV血液バッグのモデルを使用して実行された同様のCFD解析に対して生成された
図6A~
図6Dに示す温度マップと対比することができる。
【0112】
図6A~
図6Dに見られるように、従来のIV血液バッグの温度マップは、バッグ全体にわたる著しい温度変化と、バッグの外側領域の温度が低下するにつれてバッグの中心付近に持続する実質的な「ホットスポット」を示す。一方、
図5A~
図5Dは、本発明による包装器の設計が、熱輪郭の間に画定された各サブコンパートメント内でより均等な熱伝達が可能となることにより、この問題を実質的に低減することを示している。
【0113】
上述したように、熱輪郭は、好ましくは、包装器の前縁に対してある角度で設けられ、この角度は、保存装置内の熱交換流体の流れの方向に従って選択される。熱輪郭の角度を選択する際に使用する熱交換流体の流れの方向を決定するために、CFD解析を使用することもできることが理解されよう。
【0114】
この点に関して、
図7Aおよび
図7Bは、包装器が構成された凍結保存装置内の伝熱流体の流れを描いたCFD解析結果の上面図および側面図の例を示している。
図7Aを参照すると、包装器は左側のチャンバーに配置され、前縁が流れに対して下向きになっており、この文脈では熱輪郭の角度が流れ方向とほぼ一致することが理解されよう。
【0115】
したがって、包装器の熱輪郭は、熱交換流体と使用時の生物学的材料との間の熱伝達をさらに改善するために、使用時の熱交換流体の流れの方向と実質的に一致させることができる。
【0116】
熱輪郭の具体的な構成は、多数の競合する設計上の考慮事項に関して選択することができる。上述したように、熱輪郭は、熱交換流体を包装器全体に向けることによって熱伝達を改善する。熱輪郭が包装器内のサブコンパートメントを画定する好ましい実施形態では、熱輪郭は各サブコンパートメントを通る流体の流れを誘導し、上記のCFD結果の概要で実証されたように均等な熱伝達を可能にする。
【0117】
熱除去の一貫性を向上させるために、熱伝達流体が隆起した縁や境界による流れの乱れを克服できるように、熱輪郭を前縁まで取ることができる。しかし、この実施形態では、内容物がバッグから排出されることを可能にするために、熱輪郭は包装器の対向する後縁には取られていない。
【0118】
熱輪郭は、上述したように、方向性のある熱交換流体の流れを可能にするために角度をもって含まれているが、熱輪郭の角度は、包装器からの内容物の排出も容易にすることに留意されたい。
【0119】
包装器100の実施形態を設計する際、及びこれらの実施形態の検証試験の結果、本出願人は、試料量が増加した場合の問題にも遭遇した。試料量の増加と細胞生存率の低下との間に相関関係があることを発見した研究が実施された。この研究は、特に血液および血液製剤の保存用包装器の設計および製造に焦点を当てたものである。検証試験では、量が増えてもバッグの深さが変わらなければ、細胞生存率は変わらないことが確認された。
【0120】
以下の表1は、包装器の測定値を増加させた赤血球比較試験および関連する活力変化を示している。
【0121】
【0122】
この実験で試験した血液はすべて、凍結保護剤を添加していない原液全血であり、すべての凍結保存と融解は、生物学的材料を保存するために提供された装置の標準的な実験手順に従った。包装器を充填し、バッグの最も厚い部分と最も薄い部分とをデジタルノギスを用いて測定した。バッグの平均断面幅を推定し、その傾向を調べた。
【0123】
図8Aおよび8Bは、バッグの幅、血液量、および赤血球の生存率の間の関係を描いたプロットである。収集したデータから、血液バッグの幅が大きくなると赤血球の生存率が低下するという傾向が存在することが明らかである。
【0124】
この傾向に基づいて、本出願人は、包装器の平均バッグ幅と凍結保存後の赤血球の生存率との間の関係を記述する以下の一次方程式を導き出した。
ベースラインからのRBC%差=-3.1484×平均バッグ幅(mm)+5.054
【0125】
この式を用いると、バッグの幅を大きくすることが赤血球の生存率に与える影響を推定することができるが、注意すべきは、それが結果に影響を与える唯一の要因ではないということである。
【0126】
上記の設計上の考察を考慮すると、本発明の別の態様は、生物学的材料の保存のための包装器の設計に使用するための方法であって、使用時に、包装器に生物学的材料を充填し、熱交換流体が包装器の周囲を流れるように生物学的材料を保存するための装置内に配置する方法であることが理解されよう。広義には、本方法は以下の工程を含み得る。
【0127】
典型的には、本方法は、所望の体積の生物学的材料で包装器を充填できるように内部コンパートメントを画定するように構成された1つ以上の包装器壁を含む所望の包装器形状を決定することから開始する。この方法はまた、生物学的材料、1つ以上の包装器壁を形成するための包装器材料、および熱交換流体の熱特性を決定すること、ならびに熱交換流体の速度、熱交換流体の温度、および熱交換流体の流れ方向を含む装置の動作条件を決定することを含む。
【0128】
包装器形状、熱的性質および動作条件が決定されたので、方法の次の段階は、決定された包装器形状、熱的性質および動作条件に従って、充填された包装器の周りの装置内の熱交換流体の流れに関する解析を実行して、使用時の生物学的材料における予想される温度勾配を決定することを含む。
【0129】
予想される温度勾配は、熱交換流体と包装器に含まれる生物学的材料との間の熱伝達を改善するために、包装器壁の少なくとも1つを横切って画定される1つ以上の熱輪郭の構成を選択するために使用される。本方法は、その後、使用時の生物学的材料における予想される温度勾配を決定するべく、決定された包装器形状、1つ以上の熱輪郭の選択された構成、熱的特性および動作条件に従って、1つ以上の熱輪郭を含む、充填された包装器の周りの装置内の熱交換流体の流れについてさらなる解析を実行することを含み得る。
【0130】
熱輪郭を構成する工程と、それに対してさらなる解析を実行する工程は、望ましい予想される温度勾配が決定されるまで、任意で反復的に繰り返すことができる。
【0131】
一例では、この方法は、包装器形状が、対向する第1および第2の壁を含み、第1および第2の壁が、内部コンパートメントを画定するために、それぞれの周縁の実質的な部分の周りで一緒に接続され、第1および第2の壁によって画定される複数の熱輪郭が、接続線に沿って一緒に接続され、接続線が、内部コンパートメントを、その間に流体連通を可能とするサブコンパートメントに分割するように構成される、包装器の好ましい実施形態を設計するために有利に適用され得る。
【0132】
特に、本方法は、充填された包装器の周りの装置内の熱交換流体の流れに関する解析を実行すること、および予想される温度勾配を使用して、熱交換流体と各サブコンパートメントに含まれる生物学的材料との間の実質的に均等な熱伝達を提供するための熱輪郭の構成を選択することを含むように拡張され得る。
【0133】
いずれにせよ、本明細書に記載される生物学的材料の保存のための包装器は、熱交換流体と包装器に含まれる生物学的材料との間の熱伝達の改善を促進するために、そして特に、持続的なホットスポットなどをもたらす一貫性のない熱伝達を受ける従来の包装器における問題を回避するために、熱輪郭を備えることが理解されよう。
【0134】
熱輪郭は、包装器を横切る熱交換流体の流れをより均一な方法で方向付けるために使用され、したがって、より一貫した熱伝達を提供する。さらに、好ましい実施形態では、熱輪郭は、包装器の内部コンパートメントをサブコンパートメントに効果的に分割する包装器の壁間の接続部と一致し、熱輪郭は、熱交換流体とサブコンパートメントの各々に含まれる生物学的材料との間の実質的に均等な熱伝達を促進することができる。好ましい実施形態では、生物学的材料は、熱伝達をさらに調節し、より一貫した結果を可能にするために、各サブコンパートメント間で実質的に均等に分配され得る。
【0135】
本明細書およびその後に続く特許請求の範囲を通じて、文脈上別段の定めがない限り、「comprise」という語、および「comprises」または「comprising」などの変形は、記載された整数または整数群のステップを含むことを意味するが、他の整数または整数群を除外することを意味しないと理解される。本明細書において、特に断らない限り、「約」という用語は±20%を意味する。
【0136】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」、「the」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、複数の参照語を含むことに留意しなければならない。従って、例えば、「支持体」への言及は、複数の支持体を含む。本明細書およびそれに続く特許請求の範囲において、以下の意味を有すると定義される多数の用語が参照される。
【0137】
もちろん、上記は本発明の例示的な実施例として与えられたものであるが、当業者には明らかであるように、ここでの全てのそのようなおよび他の修正および変形は、本明細書で規定される本発明の広範な範囲および範疇に含まれるものとみなされることが理解されるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0138】
【特許文献1】オーストラリア特許第2009258341号公報
【特許文献2】国際公開2020/102854号公報
【非特許文献】
【0139】
【非特許文献1】Dumont, F., P. A. Marechai, and P. Gervais. 2003. Influence of cooling rate on Saccharomyces cerevisiae destruction during freezing: unexpected viability at ultra-rapid cooling rates. Cryobiology 46:33-42
【非特許文献2】Dumont, F., P. A. Marechai, and P. Gervais. 2004. Cell size and water permeability as determining factors for cell viability after freezing at different cooling rates. Appl. Environ. Microbiol. 70:268-272.
【国際調査報告】