IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 天津大学の特許一覧 ▶ 浙江▲華▼康葯▲業▼股▲フン▼有限公司の特許一覧 ▶ 天津大学浙江研究院(紹興)の特許一覧

<>
  • 特表-結晶粒子の臨界固結周期の予測方法 図1
  • 特表-結晶粒子の臨界固結周期の予測方法 図2
  • 特表-結晶粒子の臨界固結周期の予測方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】結晶粒子の臨界固結周期の予測方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20241121BHJP
   G01N 33/00 20060101ALI20241121BHJP
   G01N 33/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G01N17/00
G01N33/00 A
G01N33/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539443
(86)(22)【出願日】2023-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-06-26
(86)【国際出願番号】 CN2023106203
(87)【国際公開番号】W WO2024082719
(87)【国際公開日】2024-04-25
(31)【優先権主張番号】202211289850.9
(32)【優先日】2022-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523095211
【氏名又は名称】天津大学
(71)【出願人】
【識別番号】520401745
【氏名又は名称】浙江▲華▼康葯▲業▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG HUAKANG PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】524242841
【氏名又は名称】天津大学浙江研究院(紹興)
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG INSTITUTE OF TIANJIN UNIVERSITY (SHAOXING)
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼ 俊波
(72)【発明者】
【氏名】李 勉
(72)【発明者】
【氏名】陳 明洋
(72)【発明者】
【氏名】楊 武龍
(72)【発明者】
【氏名】李 佳慧
(72)【発明者】
【氏名】李 明軒
(72)【発明者】
【氏名】呉 強
(72)【発明者】
【氏名】侯 宝紅
(72)【発明者】
【氏名】尹 秋響
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050AA02
2G050BA06
2G050DA03
(57)【要約】
本発明は、結晶粒子の凝集・固結の技術分野に属し、結晶粒子の臨界固結周期の予測方法に関する。本発明の方法は、まず、予測対象結晶粒子と同種の結晶粒子のCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースを作成し、その後、予測対象結晶粒子の等価粒子半径、貯蔵環境温度及び環境高低湿度サイクル条件に応じて、対応するCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存のデータを選択して、経験的な計算式によって臨界固結周期を計算し、計算結果としてこの結晶粒子について予測された臨界固結周期を得るステップを含む。本発明時間が節約でき、便利で、汎用性が高く、予測精度が高いなどの特徴があり、様々な湿度貯蔵条件下での多粒度の結晶粒子製品の臨界固結周期を最長1週間以内に迅速に予測でき、時間コストを大幅に削減させ、工業用結晶粒製品の貯蔵に関する指導の根拠を提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶粒子の臨界固結周期の予測方法であって、
まず、結晶粒子の様々な粒子径規格に対応する等価粒子半径のデータ、様々な等価粒子半径の結晶粒子の種々の環境温度、種々の環境湿度条件下での水分吸湿量のデータ、及び様々な等価粒子半径の結晶粒子の種々の環境温度、種々の環境高低湿度サイクル条件下での臨界固結周期のデータを含む、予測対象結晶粒子と同種の結晶粒子のCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースを作成し、その後、予測対象結晶粒子の等価粒子半径、貯蔵環境温度及び環境高低湿度サイクル条件に応じて、対応するCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存のデータを選択して、以下の計算式によって臨界固結周期を計算し、計算結果としてこの結晶粒子について予測された臨界固結周期を得るステップを含み、
前記計算式は、以下を含み、
(1)予測対象結晶粒子の環境温度及び環境高低湿度サイクル条件がCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースにおけるデータと同じであり、等価粒子半径のみが異なる場合、以下の式(a)によって予測対象結晶粒子の当該環境条件下での臨界固結周期N’を計算し、
/N’=(R1e/R1e’)、 式(a)
上記式において、R1eはCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の結晶粒子の等価粒子半径であり、R1e’は予測対象結晶粒子の等価粒子半径であり、NはCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の等価粒子半径R1eの結晶粒子の当該環境条件に対応する臨界固結周期であり、N’は予測対象結晶粒子の臨界固結周期であり、N及びN’は、それぞれ1以上の整数であり、
(2)予測対象結晶粒子の環境温度及び等価粒子半径がCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースにおけるデータと同じであり、環境高低湿度サイクル条件のみが異なる場合、以下の式(b)によって予測対象結晶粒子の臨界固結周期N’’を計算し、
/N’’=V’/V、 式(b)
ここで、
=VRH2-VRH1、式(c)
’=VRH3-VRH1、式(d)
上記式において、VRH2は、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の結晶粒子の第1環境高低湿度サイクルにおける高湿度条件下での水分吸湿量であり、VRH3は、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の結晶粒子の第2環境高低湿度サイクルにおける高湿度条件下での水分吸湿量であり、第1環境高低湿度サイクルにおける低湿度条件と第2環境高低湿度サイクルにおける低湿度条件は同じであり、VRH1は、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の結晶粒子の環境高低湿度サイクルにおける低湿度条件下での水分吸湿量であり、Vは、結晶粒子の第1環境高低湿度サイクル条件下での水分吸湿量差であり、V’は、予測対象結晶粒子の第2環境高低湿度サイクル条件下での水分吸湿量差であり、Nは、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の結晶粒子の第1環境高低湿度サイクル条件下での臨界固結周期であり、N’’は、予測対象結晶粒子の第2環境高低湿度サイクル条件下での臨界固結周期であり、N及びN’’は、それぞれ1以上の整数であり、
前記環境高低湿度サイクルにおける高湿度条件は結晶粒子の潮解点よりも低く、結晶粒子の粒子径が100ミクロン未満である場合の臨界固結周期を1回よりも大きくし、低湿度条件は高湿度条件よりも低く、両方の間の湿度差が20%よりも大きい、ことを特徴とする結晶粒子の臨界固結周期の予測方法。
【請求項2】
前記CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースにおける結晶粒子の等価粒子半径及び予測対象結晶粒子の等価粒子半径は、それぞれ、
まず、測定対象結晶粒子製品の粒度を選別し、次に、結晶粒子の粒度区間毎の質量を計量し、データm、m、…、mを順次得て、それと同時に各粒度区間の結晶粒子の個数を統計し、データP、P、…、Pを順次得て、その後、以下の計算式によって該結晶粒子の等価粒子半径Rを計算する測定方法によって得られ、前記計算式は、
+P +…+P =(P+P+…+P)R 、式(e)
:P :…:P =m:m:…:m、式(f)を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の結晶粒子の臨界固結周期の予測方法。
【請求項3】
前記様々な等価粒子半径の結晶粒子の種々の環境温度、種々の環境高低湿度サイクルでの臨界固結周期は、
まず、測定対象結晶粒子製品を固結金型に充填して、温度が設定されたボックスに置き、ボックス内の高低湿度サイクルの高湿度及び低湿度を測定対象結晶粒子の環境高低湿度サイクルと一致するように設定し、高低湿度サイクルの周期を12時間~24時間に設定し、その後、高低湿度サイクルの計時を開始し、高低湿度サイクル周期が終了するたびに、固結金型内の固結体を離型し、離型において、結晶粒子の固結体が崩壊すると結晶粒子製品が固結されていないと判定し、次の周期まで前記サイクルを持続し、結晶粒子の固結体が崩壊しなくなると、固結体が崩壊しなくなった時までの周期数を記録し、該結晶粒子の当該環境温度及び環境高低湿度サイクル条件下での臨界固結周期とすることによって得られる、ことを特徴とする請求項1に記載の結晶粒子の臨界固結周期の予測方法。
【請求項4】
臨界固結周期を測定する際に、臨界固結周期を3回繰り返して測定し、3回で測定した臨界固結周期の平均値を平均化後の臨界固結周期とする、ことを特徴とする請求項4に記載の結晶粒子の臨界固結周期の予測方法。
【請求項5】
式(c)及び(d)におけるVRH1、VRH2及びRH3はまた、以下の方法によって計算され、
環境温度が同じで、環境湿度が同じで、等価粒子半径が異なる条件で、以下の式(g)によって、等価粒子半径R’の結晶粒子の環境湿度RH条件下での水分吸湿量VRH’を計算し、
RH/VRH’=R/R’、 式(g)
上記式において、VRHは、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の等価粒子半径Rの結晶粒子の環境湿度RH条件下での水分吸湿量であり、VRH’は、VRH1、VRH2及びVRH3のいずれかに相当する、ことを特徴とする請求項1に記載の結晶粒子の臨界固結周期の予測方法。
【請求項6】
結晶粒子の水分吸湿量の測定は動的蒸気吸着装置を用いて行われ、測定前に先立って、測定対象結晶粒子サンプルに対して初期乾燥処理が予め実施され、かつ、測定対象結晶粒子サンプルの質量は10mg以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の結晶粒子の臨界固結周期の予測方法。
【請求項7】
前記キシリトール結晶粒子の環境高低湿度サイクルでは、高湿度条件は65%、低湿度条件は30%である、ことを特徴とする請求項1に記載の結晶粒子の臨界固結周期の予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶粒子の凝集・固結の技術分野に属し、特に結晶粒子の臨界固結周期の予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶粒子の固結とは、本来は流動性や分散性が良好な結晶粒子同士が凝集して不規則な固結体を形成する過程である。結晶粒子の固結現象は、結晶製品の後処理(結晶の輸送、貯蔵、乾燥を指す)の過程で極めて発生しやすく、結晶粒子製品の使用性能の低下をもたらす。したがって、結晶粒子製品の成長、貯蔵、輸送などを指導するためには、様々な温度湿度貯蔵条件における結晶粒子製品の臨界固結周期を測定し、臨界固結周期を予測することが重要である。
【0003】
しかし、現在、結晶粒子の臨界固結周期の予測は主に実験室条件下での高温高湿加速固結実験過程と実際の貯蔵環境下での固結率との対応関係を確立することに基づいて実現され、全体の実験周期は比較的に長く(数ヶ月ないし1年間を必要とする)、しかも実験量が多く、一回の実験では特定の湿度サイクル条件下での臨界固結周期を測定することしかできず、様々な温度湿度条件下での粒子群の迅速かつ正確な予測を実現することができない。加えて、結晶粒子の臨界固結周期は粒子自体のサイズと高い相関性を示し、現在の一般的な認識では、粒子サイズが大きいほど臨界固結周期は長くなるが、固結過程の理論的指導を実現する定量的な数学的関係は確立されていない。
【0004】
そのため、結晶粒子製品の臨界固結周期を予測するための迅速かつ正確で、実験量が少なく、総合的なコストが低い方法を探索することは重要かつ緊急な課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、結晶粒子製品の臨界固結周期のテストに時間がかかり、測定作業量が大きく、予測されにくく、コストが高いなどの従来の欠陥を解決するために、迅速かつ正確で、実験量が少なく、総合的なコストが低いなどの特徴がある結晶粒子の臨界固結周期の予測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のように達成される。結晶粒子の臨界固結周期の予測方法であって、まず、結晶粒子の様々な粒子径規格に対応する等価粒子半径のデータ、及び様々な等価粒子半径の結晶粒子の種々の環境温度、種々の環境湿度条件下での水分吸湿量のデータ、及び様々な等価粒子半径の結晶粒子の種々の環境温度、種々の環境高低湿度サイクル条件下での臨界固結周期のデータを含む、予測対象結晶粒子と同種の結晶粒子のCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースを作成し、その後、予測対象結晶粒子の等価粒子半径、貯蔵環境温度及び環境高低湿度サイクル条件に応じて、対応するCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存のデータを選択して、以下の計算式によって臨界固結周期を計算し、計算結果としてこの結晶粒子について予測された臨界固結周期を得るステップを含み、
前記計算式は、以下を含み、
(1)予測対象結晶粒子の環境温度及び環境高低湿度サイクル条件がCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースにおけるデータと同じであり、等価粒子半径のみが異なる場合、以下の式(a)によって予測対象結晶粒子の当該環境条件下での臨界固結周期N’を計算し、
/N’=(R1e/R1e’)、 式(a)
上記式において、R1eはCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の結晶粒子の等価粒子半径であり、R1e’は予測対象結晶粒子の等価粒子半径であり、Nは、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の等価粒子半径R1eの結晶粒子の当該環境条件に対応する臨界固結周期であり、N’は予測対象結晶粒子の臨界固結周期であり、N及びN’は、それぞれ1以上の整数であり、
(2)予測対象結晶粒子の環境温度及び等価粒子半径がCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースにおけるデータと同じであり、環境高低湿度サイクル条件のみが異なる場合、以下の式(b)によって予測対象結晶粒子の臨界固結周期N’’を計算し、
/N’’=V’/V、 式(b)
ここで、
=VRH2-VRH1、式(c)
’=VRH3-VRH1、式(d)
上記式において、VRH2は、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の結晶粒子の第1環境高低湿度サイクルにおける高湿度条件下での水分吸湿量であり、VRH3は、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の結晶粒子の第2環境高低湿度サイクルにおける高湿度条件下での水分吸湿量であり、第1環境高低湿度サイクルにおける低湿度条件と第2環境高低湿度サイクルにおける低湿度条件は同じであり、VRH1は、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の結晶粒子の環境高低湿度サイクルにおける低湿度条件下での水分吸湿量であり、Vは、結晶粒子の第1環境高低湿度サイクル条件下での水分吸湿量差であり、V’は、予測対象結晶粒子の第2環境高低湿度サイクル条件下での水分吸湿量差であり、Nは、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の結晶粒子の第1環境高低湿度サイクル条件下での臨界固結周期であり、N’’は、予測対象結晶粒子の第2環境高低湿度サイクル条件下での臨界固結周期であり、N及びN’’は、それぞれ1以上の整数であり、
前記環境高低湿度サイクルにおける高湿度条件は結晶粒子の潮解点よりも低く、結晶粒子の粒子径が100ミクロン未満である場合の臨界固結周期を1回よりも大きくし、低湿度条件は高湿度条件よりも低く、両方の間の湿度差が20%よりも大きい、結晶粒子の臨界固結周期の予測方法を提供する。
【0007】
さらに、前記CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースにおける結晶粒子の等価粒子半径及び予測対象結晶粒子の等価粒子半径は、それぞれ、
まず、測定対象結晶粒子製品の粒度を選別し、次に、結晶粒子の粒度区間毎の質量を計量し、データm、m、…、mを順次得て、それと同時に各粒度区間の結晶粒子の個数を統計し、データP、P、…、Pを順次得て、その後、以下の計算式によって該結晶粒子の等価粒子半径Rを計算するという測定方法によって得られ、前記計算式は、
+P +…+P =(P+P+…+P)R 、式(e)
:P :…:P =m:m:…:m、式(f)を含む。
【0008】
さらに、前記様々な等価粒子半径の結晶粒子の種々の環境温度、種々の環境高低湿度サイクルでの臨界固結周期は、
まず、測定対象結晶粒子製品を固結金型に充填して、温度が設定されたボックスに置き、ボックス内の高低湿度サイクルの高湿度及び低湿度を測定対象結晶粒子の環境高低湿度サイクルと一致するように設定し、高低湿度サイクルの周期を12時間~24時間に設定し、その後、高低湿度サイクルの計時を開始し、高低湿度サイクル周期が終了するたびに、固結金型内の固結体を離型し、離型において、結晶粒子の固結体が崩壊すると結晶粒子製品が固結されていないと判定し、次の周期まで前記サイクルを持続し、結晶粒子の固結体が崩壊しなくなると、固結体が崩壊しなくなった時までの周期数を記録し、該結晶粒子の当該環境温度及び環境高低湿度サイクル条件下での臨界固結周期とすることによって得られる。
【0009】
さらに、臨界固結周期を測定する際に、臨界固結周期を3回繰り返して測定し、3回で測定した臨界固結周期の平均値を平均化後の臨界固結周期とする。
【0010】
さらに、式(c)及び(d)におけるVRH1、VRH2及びVRH3はまた、以下の方法によって計算され、
環境温度が同じで、環境湿度が同じで、等価粒子半径が異なる条件で、以下の式(g)によって、等価粒子半径R’の結晶粒子の環境湿度RH条件下での水分吸湿量VRH’を計算し、
RH/VRH’=R/R’、 式(g)
上記式において、VRHは、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の等価粒子半径Rの結晶粒子の環境湿度RH条件下での水分吸湿量であり、VRH’は、VRH1、VRH2及びVRH3のいずれかに相当する。
【0011】
さらに、結晶粒子の水分吸湿量の測定は動的蒸気吸着装置を用いて行われ、測定前に先立って、測定対象結晶粒子サンプルに対して初期乾燥処理が予め実施され、かつ、測定対象結晶粒子サンプルの質量は10mg以下である。
【0012】
さらに、前記キシリトール結晶粒子の環境高低湿度サイクルでは、高湿度条件は65%、低湿度条件は30%である。
【発明の効果】
【0013】
従来技術と比べて、本発明の結晶粒子の臨界固結周期の予測方法は、まず、予測対象結晶粒子と同種の結晶粒子のCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースを作成し、その後、予測対象結晶粒子の等価粒子半径、貯蔵環境温度及び環境高低湿度サイクル条件に応じて、対応するCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存のデータを選択して、経験的な計算式によって臨界固結周期を計算し、計算結果としてこの結晶粒子について予測された臨界固結周期を得るステップを含む。本発明は、時間が節約でき、便利で、汎用性が高く、予測精度が高いなどの特徴があり、様々な湿度貯蔵条件下での多粒度の結晶粒子製品の臨界固結周期を最長1週間以内に迅速に予測でき、時間コストを大幅に削減させ、工業用結晶粒製品の貯蔵に関する指導の根拠を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の臨界固結周期を測定する際に使用される固結金型の構造の断面模式図である。
図2】本発明の実施例1におけるキシリトール結晶粒子製品の吸湿ファイル及びCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに基づいて計算された予測結果と実測結果との比較の模式図であり、(a)は、キシリトール結晶粒子の温度25℃での吸湿曲線であり、(b)は、キシリトール結晶粒子の吸湿量及び等価粒子半径の間の予測結果と実測結果との比較の模式図であり、(c)は、キシリトール結晶粒子の臨界固結周期及び吸湿量差の間の予測結果と実測結果との比較の模式図であり、(d)は、キシリトール結晶粒子の臨界固結周期及び等価粒子半径の間の予測結果と実測結果との比較の模式図である。
図3】本発明の実施例1におけるキシリトール結晶粒子の多粒度結晶製品の様々な湿度貯蔵条件下での臨界固結周期の予測結果のフィッティング模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明が解決しようとする技術的課題、技術的解決手段及び有益な効果をより明確かつ明瞭にするために、以下では、図面及び実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本明細書に記載された具体的な実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明を限定するために使用されないことを理解されたい。
【0016】
本発明の結晶粒子の臨界固結周期の予測方法の好適な実施例では、前記方法は、まず、結晶粒子の様々な粒子径規格に対応する等価粒子半径のデータ、及び様々な等価粒子半径の結晶粒子の種々の環境温度、種々の環境湿度条件下での水分吸湿量のデータ、及び様々な等価粒子半径の結晶粒子の種々の環境温度、種々の環境高低湿度サイクル条件下での臨界固結周期のデータを含む、予測対象結晶粒子と同種の結晶粒子のCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースを作成し、その後、予測対象結晶粒子の等価粒子半径、貯蔵環境温度及び環境高低湿度サイクル条件に応じて、対応するCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存のデータを選択して、以下の計算式によって臨界固結周期を計算し、計算結果としてこの結晶粒子について予測された臨界固結周期を得るステップを含む。
【0017】
前記計算式は、以下を含み、
(1)予測対象結晶粒子の環境温度及び環境高低湿度サイクル条件がCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースにおけるデータと同じであり、等価粒子半径のみが異なる場合、以下の式(a)によって予測対象結晶粒子の当該環境条件下での臨界固結周期N’を計算し、
/N’=(R1e/R1e’)、 式(a)
上記式において、R1eはCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の結晶粒子の等価粒子半径であり、R1e’は予測対象結晶粒子の等価粒子半径であり、Nは、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の等価粒子半径R1eの結晶粒子の当該環境条件に対応する臨界固結周期であり、N’は予測対象結晶粒子の臨界固結周期である。N及びN’は、それぞれ1以上の整数である。
【0018】
(2)予測対象結晶粒子の環境温度及び等価粒子半径がCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースにおけるデータと同じであり、環境高低湿度サイクル条件のみが異なる場合、以下の式(b)によって予測対象結晶粒子の臨界固結周期N’’を計算する。
/N’’=V’/V、 式(b)
ここで、
=VRH2-VRH1、式(c)
’=VRH3-VRH1、式(d)
上記式において、VRH2は、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の結晶粒子の第1環境高低湿度サイクルにおける高湿度条件下での水分吸湿量であり、VRH3は、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の結晶粒子の第2環境高低湿度サイクルにおける高湿度条件下での水分吸湿量である。第1環境高低湿度サイクルにおける低湿度条件と第2環境高低湿度サイクルにおける低湿度条件は同じであり、VRH1は、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の結晶粒子の環境高低湿度サイクルにおける低湿度条件下での水分吸湿量である。Vは、結晶粒子の第1環境高低湿度サイクル条件下での水分吸湿量差であり、V’は、予測対象結晶粒子の第2環境高低湿度サイクル条件下での水分吸湿量差であり、Nは、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の結晶粒子の第1環境高低湿度サイクル条件下での臨界固結周期であり、N’’は、予測対象結晶粒子の第2環境高低湿度サイクル条件下での臨界固結周期である。N及びN’’は、それぞれ1以上の整数である。
【0019】
前記環境高低湿度サイクルにおける高湿度条件は結晶粒子の潮解点よりも低く、結晶粒子の粒子径が100ミクロン未満である場合の臨界固結周期を1回よりも大きくし、低湿度条件は高湿度条件よりも低く、両方の間の湿度差が20%よりも大きい。例えば、キシリトール結晶粒子の潮解点が75%である場合、キシリトール結晶粒子の環境高低湿度サイクルでは、最適な高湿度条件は65%であり、低湿度条件は30%である。
【0020】
前記CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースにおける結晶粒子の等価粒子半径及び予測対象結晶粒子の等価粒子半径は、それぞれ、
まず、測定対象結晶粒子製品の粒度を選別し、結晶粒子製品の粒度及び粒度分布特徴に応じて、対応するミクロン数の金属篩で選別し、次に、結晶粒子の粒度区間毎の質量を計量し、データm、m、…、mを順次得て、それと同時に各粒度区間の結晶粒子の個数を統計し、データP、P、…、Pを順次得て、その後、以下の計算式によって該結晶粒子の等価粒子半径Rを計算するという測定方法によって得られる。前記計算式は、
+P +…+P =(P+P+…+P)R 、式(e)
:P :…:P =m:m:…:m、式(f)を含む。
具体的には、前記様々な等価粒子半径の結晶粒子の種々の環境温度、種々の環境高低湿度サイクルでの臨界固結周期は、以下のように得られる。
【0021】
まず、測定対象結晶粒子製品を固結金型に充填して、温度が設定されたボックスに置き、ボックス内の高低湿度サイクルの高湿度及び低湿度を測定対象結晶粒子の環境高低湿度サイクルと一致するように設定し、結晶粒子の実際の貯蔵条件下での湿度変化をシミュレーションし、結晶粒子同士に溶解-再結晶を付与して結晶ブリッジを形成し、高低湿度サイクルの周期を12時間~24時間に設定することで、結晶粒子の吸湿のバランスを確保する。その後、高低湿度サイクルの計時を開始する。高低湿度サイクル周期が終了するたびに、固結金型内の固結体を離型する。離型において、結晶粒子の固結体が崩壊したと結晶粒子製品が固結されていないと判定し、次の周期まで前記サイクルを持続し、結晶粒子の固結体が崩壊しなくなると、固結体が崩壊しなくなった時までの周期数を記録し、該結晶粒子の当該環境温度及び環境高低湿度サイクル条件下での臨界固結周期とする。
【0022】
実際の使用の際には、前記ボックスは恒温恒湿ボックスである。
【0023】
上記の方式は、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースにおける臨界固結周期の測定に加えて、予測対象の臨界固結周期の検証に適している。
【0024】
臨界固結周期を測定する際に、臨界固結周期を3回繰り返して測定し、3回で測定した臨界固結周期の平均値を平均化後の臨界固結周期とする。
【0025】
具体的には、図1に示すように、本発明で使用される固結金型の構造の断面模式図である。前記固結金型は、ベース1と、ベース1に垂直に配置された円柱状容器2と、容器2の外周に設けられて着脱容易な固定スリーブ3と、を含み、容器2は、離型を容易にする左側ケースと右側ケースとを含み、固定スリーブ3は左側ケースと右側ケースとを結合して容器2を構成する。容器2内に測定対象結晶粒子製品Jが収容されており、容器2の側壁のそれぞれに複数の通気孔(図示せず)が設けられる。各気孔の内径が結晶粒子の粒子径よりも小さい。結晶粒子製品の最上部に加圧ブロック4が設けられ、加圧ブロックの最上部に分銅5が設けられる。加圧ブロック4及び分銅5の両方は、容器2内の結晶粒子を加圧して圧縮し、固結体にする。容器2内の結晶粒子固結体を離型する際に、固結体に更なる応力が加わり、固結体が破砕されて崩壊し、固結周期の誤判断を避ける必要がある。
【0026】
式(c)及び(d)において、VRH1、VRH2及びVRH3はまた、以下の方法によって計算される。環境温度が同じで、環境湿度が同じで、等価粒子半径が異なる条件で、以下の式(g)によって、等価粒子半径R’の結晶粒子の環境湿度RH条件下での水分吸湿量VRH’を計算する。
RH/VRH’=R/R’、 式(g)
上記式において、VRHは、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の等価粒子半径Rの結晶粒子の環境湿度RH条件下での水分吸湿量であり、VRH’は、VRH1、VRH2及びVRH3のいずれかに相当する。
【0027】
結晶粒子の水分吸湿量の測定は動的蒸気吸着装置を用いて行われ、測定前に先立って、測定対象結晶粒子サンプルに対して初期乾燥処理が予め実施され、かつ、測定対象結晶粒子サンプルの質量は10mg以下である。
【0028】
以下、特定の実施例によって本発明の結晶粒子の臨界固結周期の予測方法をさらに説明する。
実施例1
【0029】
本発明の結晶粒子の臨界固結周期の予測方法の第1実施例は、以下のステップを含む。
【0030】
一定の質量のキシリトール結晶粒子製品を用意し、キシリトール結晶粒子製品の粒度及び粒度分布特徴に応じて、500ミクロン~600ミクロンの金属篩を選択し、粒度区間毎の質量を測定し、各粒度区間の結晶粒子の粒子個数を統計し、式(e)及び式(f)によって計算した結果、等価粒子半径Rは550ミクロンである。動的蒸気吸着装置によって該結晶粒子製品の吸湿特性を測定し、図2(a)に示す該結晶粒子製品の温度25℃での吸湿特性ファイルを得る。図2(a)から明らかに、キシリトール結晶粒子の潮解点は75%程度であり、したがって、キシリトール結晶粒子の臨界固結周期実験の高湿度条件は75%以下に設定する必要がある。本実施例では、等価粒子半径が550ミクロン、温度が25℃、貯蔵環境の高低湿度サイクル条件が65%~30%である場合を例にして、他の等価粒子半径、例えば312ミクロン、404ミクロン、507ミクロンや550ミクロンの結晶粒子の様々な環境高低湿度サイクル、例えば65%~30%、60%~30%、55%~30%、50%~30%での臨界固結周期を予測し取得して、臨界固結周期の実測結果と比較して、本発明の方法の予測精度を説明する。
【0031】
本実施例では、臨界固結周期の予測は以下の通りである。まず、動的蒸気吸着装置によって、等価粒子半径550ミクロンの結晶粒子の様々な湿度条件下での水分吸湿量VRHを測定する。該結晶粒子は、500ミクロン~600ミクロンの金属篩で選別されたものである。図2(a)に示すように、30%湿度では、その吸湿量VRHは0.02000%であり、50%湿度条件下では、吸湿量VRHは0.02740%であり、55%湿度条件下では、吸湿量VRHは0.03266%であり、60%湿度条件下では、吸湿量VRHは0.03747%であり、65%湿度条件下では、吸湿量VRHは0.04595%である。その後、該結晶粒子製品を固結金型に充填して恒温恒湿ボックスに置き、恒温恒湿ボックスの湿度条件を65%~30%高低湿度交互サイクルに設定し、臨界固結周期Nを測定した結果、7回である。
【0032】
次に、計算式によって、臨界固結周期を計算して予測する。得たパラメータをCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに入力し、式(g):VRH/VRH’=R/R’によって様々な等価粒子半径の結晶粒子製品の同一湿度条件下での水分吸湿量(即ちH-Sファイル)を計算し、計算結果を以下の表1に示す。例えば、等価粒子半径312ミクロンの結晶粒子の場合、30%湿度では、その吸湿量VRHは0.01135%であり、50%湿度条件下では、吸湿量VRHは0.01554%であり、55%湿度条件下では、吸湿量VRHは0.01853%であり、60%湿度条件下では、吸湿量VRHは0.02126%であり、65%湿度条件下では、吸湿量VRHは0.02607%である。404ミクロン、507ミクロンなどの他の等価粒子半径の結晶粒子の様々な湿度環境での吸湿量の計算結果を以下の表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
さらに、等価粒子半径R1eが550ミクロンの結晶粒子の場合、65%~30%環境高低湿度サイクル条件に対応する臨界固結周期Nが7回であることが知られている。得たパラメータをCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに入力し、式(a):N/N’=(R1e/R1e’)によって、同一湿度RH条件下で、等価粒子半径R1e’の結晶粒子に対応する臨界固結周期N’(即ちC-Sファイル)を算出し、臨界固結周期について整数を取り、例えば、等価粒子半径が312ミクロンの粒子の場合、65%~30%湿度サイクル条件に対応する臨界固結周期N’は1回であり、等価粒子半径が404ミクロンの粒子の場合、65%~30%湿度サイクル条件に対応する臨界固結周期N’は2回であり、等価粒子半径が507ミクロンの粒子の場合、65%~30%湿度サイクル条件に対応する臨界固結周期N’は5回である。
【0035】
前述のH-Sファイル及び式(c):V=VRH2-VRH1によって、結晶粒子が環境高低湿度サイクルを1回受けた条件下での吸湿量差V、及び等価粒子半径が550ミクロンの結晶粒子の吸湿量差Vデータを計算し、同様に他の等価粒子半径の結晶粒子の様々な環境高低湿度サイクル条件下での吸湿量差Vデータを計算し、計算結果を以下の表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
上記の各等価粒子半径の結晶粒子の環境高低湿度サイクル条件下での吸湿量差V及びC-Sファイルをまとめて、式(b):N/N’’=V’/Vによって、同じ等価粒子半径の結晶粒子製品の様々な環境高低湿度サイクル条件下での臨界固結周期N’’(即ちC-Hファイル)を計算し、算出した臨界固結周期について整数を取り、計算結果を表3に示す。例えば、等価粒子半径が550ミクロンの結晶粒子の場合、吸湿量差V(65%~30%)のデータは0.02595であり、65%~30%高低湿度サイクル環境条件下では臨界固結周期Nは7回であることが知られており、表2によれば、V’(60%~30%)のデータは0.01747である。式(b)によって計算した結果、60%~30%高低湿度サイクル条件下では結晶粒子の臨界固結周期N’’は10回である。同様に、他の条件下での臨界固結周期N’’を計算する。
【0038】
【表3】
【0039】
上記の各ファイルのデータをまとめて、キシリトール多粒度結晶粒子製品の様々な環境高低湿度サイクル貯蔵条件下での臨界固結周期の予測結果をフィッティングした図を得て、その図を図3に示す。
【0040】
次に、臨界固結周期の実測結果と予測値を検証する。一定の質量のキシリトール結晶粒子製品を用意し、結晶粒子製品の粒度及び粒度分布特徴に応じて、200ミクロン~300ミクロン、300ミクロン~400ミクロン、400ミクロン~500ミクロンの金属篩で選別し、当該粒度区間に対応する半径中央値は、それぞれ、250ミクロン、350ミクロン、450ミクロンである。選別後、粒度区間毎の結晶粒子質量を測定した結果、質量比が略1:1:1である場合、各粒度区間の結晶粒子の質量比から計算した結果、等価粒子半径Rは312ミクロンである。その後、動的蒸気吸着装置によって該結晶粒子製品の湿度50%、55%、60%、65%での吸湿量をそれぞれ測定し、臨界固結周期実験では、環境高低湿度サイクル条件をそれぞれ65%~30%、60%~30%、55%~30%、50%~30%に設定し、その臨界固結周期を測定する。同様に、等価粒子半径が404ミクロン、507ミクロンの結晶粒子をそれぞれ選別し、その後、動的蒸気吸着装置によって、該結晶粒子製品の湿度50%、55%、60%、65%での吸湿量をそれぞれ測定し、臨界固結実験では環境高低湿度サイクル条件をそれぞれ65%~30%、60%~30%、55%~30%、50%~30%に設定し、その臨界固結周期を測定する。臨界固結周期の実測データを記録する。
【0041】
図2(b)に示すように、等価粒子半径が312ミクロン、404ミクロン、507ミクロン、550ミクロンの結晶粒子の湿度50%、55%、60%、65%での吸湿量は、結晶粒子サイズに応じて直線的に増加し、式(g):VRH/VRH’=R/R’による予測結果とのフィッティングがよく50%、55%、60%及び65%湿度条件下では、フィッティングの相関係数は、それぞれ、0.9966、0.9896、0.9982、及び0.9974であり、0.98以上であるので、フィッティング効果がよい。
【0042】
図2(c)に示すように、吸湿量は、臨界固結周期との間には反比例の関係があり、式(b):N/N’’=V’/Vによる予測結果とのフィッティングがよく、等価粒子サイズが311μm、404μm、507μm及び550μmである場合、フィッティングの相関係数は、それぞれ、0.9052、0.9703、0.9619、及び0.9578であり、0.90以上であり、フィッティング効果がよい。
【0043】
図2(d)に示すように、結晶粒子サイズは、臨界固結周期とは4乗関数の関係があり、式(a):N/N’=(R1e/R1e’)による予測結果との一致性がよい。50%、55%、60%、及び65%高湿サイクル条件では、フィッティングの相関係数は、それぞれ0.9767、0.9679、0.9035、及び0.9011であり、0.90以上であり、フィッティング効果がよい。
【0044】
したがって、本発明のCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースによって、多結晶粒子サイズの様々な環境高低湿度サイクル条件下での臨界固結周期を予測することによって、予測効果が正確で、また、実験量が少なく、予測速度が速いなどの特徴を有する。
【0045】
以上は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の精神及び原理の範囲内で行われたあらゆる修正、同等の置換、改良等は、本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-06-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶粒子の臨界固結周期の予測方法であって、
まず、結晶粒子の様々な粒子径規格に対応する等価粒子半径のデータ、様々な等価粒子半径の結晶粒子の種々の環境温度、種々の環境湿度条件下での水分吸湿量のデータ、及び様々な等価粒子半径の結晶粒子の種々の環境温度、種々の環境高低湿度サイクル条件下での臨界固結周期のデータを含む、予測対象結晶粒子と同種の結晶粒子のCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースを作成し、その後、予測対象結晶粒子の等価粒子半径、貯蔵環境温度及び環境高低湿度サイクル条件に応じて、対応するCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存のデータを選択して、以下の計算式によって臨界固結周期を計算し、計算結果としてこの結晶粒子について予測された臨界固結周期を得るステップを含み、
前記計算式は、以下を含み、
(1)予測対象結晶粒子の環境温度及び環境高低湿度サイクル条件がCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースにおけるデータと同じであり、等価粒子半径のみが異なる場合、以下の式(a)によって予測対象結晶粒子の当該環境条件下での臨界固結周期N’を計算し、
/N’=(R1e/R1e’)、 式(a)
上記式において、R1eはCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の結晶粒子の等価粒子半径であり、R1e’は予測対象結晶粒子の等価粒子半径であり、NはCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の等価粒子半径R1eの結晶粒子の当該環境条件に対応する臨界固結周期であり、N’は予測対象結晶粒子の臨界固結周期であり、N及びN’は、それぞれ1以上の整数であり、
(2)予測対象結晶粒子の環境温度及び等価粒子半径がCHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースにおけるデータと同じであり、環境高低湿度サイクル条件のみが異なる場合、以下の式(b)によって予測対象結晶粒子の臨界固結周期N’’を計算し、
/N’’=V’/V、 式(b)
ここで、
=VRH2-VRH1、式(c)
’=VRH3-VRH1、式(d)
上記式において、VRH2は、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の結晶粒子の第1環境高低湿度サイクルにおける高湿度条件下での水分吸湿量であり、VRH3は、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の結晶粒子の第2環境高低湿度サイクルにおける高湿度条件下での水分吸湿量であり、第1環境高低湿度サイクルにおける低湿度条件と第2環境高低湿度サイクルにおける低湿度条件は同じであり、VRH1は、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の結晶粒子の環境高低湿度サイクルにおける低湿度条件下での水分吸湿量であり、Vは、結晶粒子の第1環境高低湿度サイクル条件下での水分吸湿量差であり、V’は、予測対象結晶粒子の第2環境高低湿度サイクル条件下での水分吸湿量差であり、Nは、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の結晶粒子の第1環境高低湿度サイクル条件下での臨界固結周期であり、N’’は、予測対象結晶粒子の第2環境高低湿度サイクル条件下での臨界固結周期であり、N及びN’’は、それぞれ1以上の整数であり、
前記環境高低湿度サイクルにおける高湿度条件は結晶粒子の潮解点よりも低く、結晶粒子の粒子径が100ミクロン未満である場合の臨界固結周期を1回よりも大きくし、低湿度条件は高湿度条件よりも低く、両方の間の湿度差が20%よりも大きい、ことを特徴とする結晶粒子の臨界固結周期の予測方法。
【請求項2】
前記CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースにおける結晶粒子の等価粒子半径及び予測対象結晶粒子の等価粒子半径は、それぞれ、
まず、測定対象結晶粒子製品の粒度を選別し、次に、結晶粒子の粒度区間毎の質量を計量し、データm、m、…、mを順次得て、それと同時に各粒度区間の結晶粒子の個数を統計し、データP、P、…、Pを順次得て、その後、以下の計算式によって該結晶粒子の等価粒子半径Rを計算する測定方法によって得られ、前記計算式は、
+P +…+P =(P+P+…+P)R 、式(e)
:P :…:P =m:m:…:m、式(f)を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の結晶粒子の臨界固結周期の予測方法。
【請求項3】
前記様々な等価粒子半径の結晶粒子の種々の環境温度、種々の環境高低湿度サイクルでの臨界固結周期は、
まず、測定対象結晶粒子製品を固結金型に充填して、温度が設定されたボックスに置き、ボックス内の高低湿度サイクルの高湿度及び低湿度を測定対象結晶粒子の環境高低湿度サイクルと一致するように設定し、高低湿度サイクルの周期を12時間~24時間に設定し、その後、高低湿度サイクルの計時を開始し、高低湿度サイクル周期が終了するたびに、固結金型内の固結体を離型し、離型において、結晶粒子の固結体が崩壊すると結晶粒子製品が固結されていないと判定し、次の周期まで前記サイクルを持続し、結晶粒子の固結体が崩壊しなくなると、固結体が崩壊しなくなった時までの周期数を記録し、該結晶粒子の当該環境温度及び環境高低湿度サイクル条件下での臨界固結周期とすることによって得られる、ことを特徴とする請求項1に記載の結晶粒子の臨界固結周期の予測方法。
【請求項4】
臨界固結周期を測定する際に、臨界固結周期を3回繰り返して測定し、3回で測定した臨界固結周期の平均値を平均化後の臨界固結周期とする、ことを特徴とする請求項4に記載の結晶粒子の臨界固結周期の予測方法。
【請求項5】
式(c)及び(d)におけるVRH1、VRH2及びRH3はまた、以下の方法によって計算され、
環境温度が同じで、環境湿度が同じで、等価粒子半径が異なる条件で、以下の式(g)によって、等価粒子半径R’の結晶粒子の環境湿度RH条件下での水分吸湿量VRH’を計算し、
RH/VRH’=R/R’、 式(g)
上記式において、VRHは、CHS結晶ブリッジ成長モデルデータベースに既存の等価粒子半径Rの結晶粒子の環境湿度RH条件下での水分吸湿量であり、VRH’は、VRH1、VRH2及びVRH3のいずれかに相当する、ことを特徴とする請求項1に記載の結晶粒子の臨界固結周期の予測方法。
【請求項6】
結晶粒子の水分吸湿量の測定は動的蒸気吸着装置を用いて行われ、測定前に先立って、測定対象結晶粒子サンプルに対して初期乾燥処理が予め実施され、かつ、測定対象結晶粒子サンプルの質量は10mg以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の結晶粒子の臨界固結周期の予測方法。
【請求項7】
記結晶粒子の環境高低湿度サイクルでは、高湿度条件は65%、低湿度条件は30%である、ことを特徴とする請求項1に記載の結晶粒子の臨界固結周期の予測方法。
【国際調査報告】