(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ビメンチンを発現する腫瘍を治療するためのキットおよび容器
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241122BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241122BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241122BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241122BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20241122BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20241122BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241122BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20241122BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20241122BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P25/00
A61K47/68
A61P1/18
A61K9/00
A61K45/00
A61K49/00
A61K51/10 200
A61J1/05 311
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524592
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 US2021057313
(87)【国際公開番号】W WO2023075790
(87)【国際公開日】2023-05-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518081902
【氏名又は名称】ナセント バイオテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100130845
【氏名又は名称】渡邉 伸一
(72)【発明者】
【氏名】バビチ イヴァン
【テーマコード(参考)】
4C047
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C047AA05
4C047BB01
4C047BB17
4C047BB20
4C047CC04
4C076AA95
4C076BB13
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA17
4C084MA66
4C084NA13
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA14
4C085CC03
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C085HH03
4C085HH11
4C085HH13
4C085KA04
4C085KA27
4C085KA29
4C085LL18
(57)【要約】
本明細書において提供されるものは、配列番号1を含む重鎖および配列番号2を含む軽鎖を含む抗体を含む組成物を含む容器である。本容器は、ボトルまたはバイアル、例えば、ガラスまたはポリエチレンテレフタレートG(PETG)のボトルまたはバイアルであり得る。また、本容器を含むキット、および本容器からの抗体を用いてがんを治療する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1を含む重鎖および配列番号2を含む軽鎖を含む抗体を含む、ガラスまたはポリエチレンテレフタレートG(PETG)のバイアル。
【請求項2】
バイアルがガラスバイアルである、請求項1に記載のバイアル。
【請求項3】
バイアルがPETGバイアルである、請求項1記載のバイアル。
【請求項4】
抗体が8.0~9.0の等電点を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のバイアル。
【請求項5】
抗体が約8.7の等電点を有する、請求項4に記載のバイアル。
【請求項6】
抗体が血液脳関門を通過することができる、請求項1~5のいずれか一項に記載のバイアル。
【請求項7】
抗体がビメンチンと結合する、請求項1~6のいずれか一項に記載のバイアル。
【請求項8】
ビメンチンががん細胞の表面に位置している、請求項7に記載のバイアル。
【請求項9】
ビメンチンががん細胞によって分泌される、請求項7に記載のバイアル。
【請求項10】
がんが脳腫瘍および膵臓がんからなる群から選択される、請求項8または9に記載のバイアル。
【請求項11】
バイアルが5mg/mlから15mg/mlの抗体を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のバイアル。
【請求項12】
抗体が薬剤にコンジュゲートされている、請求項1~11のいずれか一項に記載のバイアル。
【請求項13】
薬剤が治療薬または診断薬である、請求項12に記載のバイアル。
【請求項14】
治療薬が化学療法剤である、請求項13に記載のバイアル。
【請求項15】
診断薬が蛍光剤、放射性薬剤または化学発光剤である、請求項13に記載のバイアル。
【請求項16】
バイアルが長期間にわたって保存され得る、請求項1~15のいずれか一項に記載のバイアル。
【請求項17】
抗体が3回の凍結/融解サイクルにわたってその活性を保持する、請求項1~16のいずれか一項に記載のバイアル。
【請求項18】
抗体が-60℃より下の温度で保存され得る、請求項1~17のいずれか一項に記載のバイアル。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載のバイアルおよび使用説明書を含む、キット。
【請求項20】
血液脳関門を越えて抗体を送達する方法であって、請求項1~18のいずれか一項に記載のバイアルからの抗体を対象に投与し、それにより血液脳関門を越えて抗体を送達することを含む、方法。
【請求項21】
請求項1~18のいずれか一項に記載のバイアルからの抗体を対象に投与し、それにより対象におけるビメンチンを発現するがんを治療することを含む、対象においてビメンチンを発現するがんを治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
血液脳関門(BBB)は、治療薬の脳への送達にとって重要な障壁となる。BBBはCNSを取り囲む保護的な内皮組織であり、神経疾患の治療のための治療薬および診断薬の全身投与に対し大きな障害を呈する。例えば、脳腫瘍または他の固形がんの脳への転移の治療は、非常に満たされていないニーズである。良い治療法の欠如は、脳内の腫瘍の侵襲性および浸潤性の特徴と、ほとんどの有効な生物学的製剤がBBBを通過できないことによる。もしBBBが漏出性または容易に乗り越えられるものであれば、新たな有用な薬剤が脳組織に送達され得るであろう。BBBを乗り越えるか、または迂回するように設計されたこれまでの製品は、制御が困難であったため、その有用性が制限されていた。本開示は、BBBを通過できる抗体または抗体フラグメントを提供することにより、これらおよび他のニーズを満たすものである。
【発明の概要】
【0002】
要約
本明細書において提供されるものは、配列番号1を含む重鎖および配列番号2を含む軽鎖を含む抗体を含む組成物を含む容器である。本容器は、ボトルまたはバイアル、例えば、ガラスまたはポリエチレンテレフタレートG(PETG)のボトルまたはバイアルであり得る。また、本容器を含むキット、および本容器からの抗体を用いてがんを治療する方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】
図1は、PETG血清バイアルに保存された臨床原薬抗体ロットが、ポリプロピレン(PP)バイアルに保存された臨床原薬抗体ロットよりも強力であることを示すグラフである。
【
図2】
図2は、毒性学的アッセイで参照標準として使用される原薬抗体ロットが、PPバイアルとPETGバイアルとで異なる効力を有することを示すグラフである。PETGバイアルに保存された抗体は、PPバイアルに保存された抗体よりも強力である。
【
図3】
図3は、プリツムマブがU251神経膠腫細胞の細胞表面に結合することを示すフローサイトメトリーのヒストグラムプロットである。左のピークは染色されていない細胞であり、右にシフトしたピークはプリツムマブ染色である。
【
図4】
図4は、組換えヒトビメンチンが神経膠腫細胞へのプリツムマブの結合に競合し得ることを示すグラフである。このグラフは、左端のピークに示される染色されていない細胞、右端のピークに示されるプリツムマブ単独(160nM)、プリツムマブ単独のピークと重なって右端のピークに示されるプリツムマブ(160nM)+ビメンチン(45nM)、左から2番目のピークに示されるプリツムマブ(160nM)+ビメンチン(450nM)を示しているヒストグラムプロットである。
【
図5A】
図5Aおよび5Bは、中枢神経系(CNS)新生物の代表的なフィールドを示すホールスライドスキャンからの画像の写真である。
【
図5B】
図5Aおよび5Bは、中枢神経系(CNS)新生物の代表的なフィールドを示すホールスライドスキャンからの画像の写真である。
【
図6A】
図6Aおよび6Bは、正常な小脳の代表的なフィールドを示すホールスライドスキャンの画像の写真である。
【
図6B】
図6Aおよび6Bは、正常な小脳の代表的なフィールドを示すホールスライドスキャンの画像の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
詳細な説明
いくつかの構成例を説明してあるが、本開示の精神から逸脱することなく、様々な修正、代替構造、および等価物が使用されうる。例えば、上記の要素は、より大きなシステムの構成要素であってもよく、その場合、他の規則が優先されるか、または本発明の適用が修正されてもよい。また、上記の要素が検討される前、検討中、検討後に、多くの手順が踏まれうる。
【0005】
本発明は、特定の方法、試薬、化合物、組成物または生物学的システムに限定されるものではないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明するためだけのものであり、限定することを意図したものではないことを理解されたい。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」は、内容が明らかにそうでないことを規定しない限り、複数の参照を含んでいる。
【0006】
本明細書において、量、時間的持続時間などの測定可能な値に言及する際に使用される「約」という用語は、開示された方法を実施するためにそのような変動が適切であるとして、規定値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらに好ましくは±1%、さらに好ましくは±0.1%の変動を包含することが意図されている。
【0007】
特に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的のおよび科学的な用語は、本発明が属する当該技術分野の通常の熟練者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または等価なあらゆる方法および材料が、本発明の試験のための実施に使用され得るが、好ましい材料および方法が本明細書に記載されている。
【0008】
「脊椎動物」、「哺乳動物」、「対象」、「哺乳動物対象」、または「患者」は互換的に使用され、ヒトの患者およびヒト以外の霊長類などの哺乳動物、ならびにウサギ、ラット、およびマウスなどの実験動物、ウシ、ウマ、ヤギ、およびその他の動物を指す。動物には、すべての脊椎動物、例えば、マウス、ヒツジ、イヌ、ウシ、鳥類、アヒル、ガチョウ、ブタ、ニワトリ、両生類、および爬虫類などの哺乳動物および非哺乳動物が含まれる。
【0009】
「治療する」または「治療」とは一般的に、(i)疾患の防止、例えば予防、または(ii)対象疾患の症状の低減または除去、例えば治療のいずれかを指す。よって、治療は、予防的なもの(疾患の発症を防止もしくは遅延させる、またはその臨床もしくは亜臨床症状の発現を防止する)、あるいは疾患の発現後の症状を治療的に抑制または緩和するものであり得る。
【0010】
「防止する」または「防止」とは、本発明の組成物による予防的投与を指す。
【0011】
「治療上有効な量」または「有効量」とは、疾患を防止するか、疾患に関連する症状の少なくとも1つを緩和(例えば、軽減、減少、低減)するのに十分な抗体組成物の量を指す。組成物の投与による利益が不利益を上回る限り、組成物の投与が疾患の症状を完全に除去する必要はない。同様に、本明細書で使用されている疾患に関する「治療する」および「治療的」という用語は、対象が必ずしもその疾患について治癒される、またはそのすべての臨床徴候が取り除かれることを意味するものではなく、対象の状態における何らかの緩和または改善が組成物の投与によってもたらされることが意図されているに過ぎない。
【0012】
本明細書において使用される「がん」という用語は、白血病、がん腫および肉腫を含む、哺乳動物において見られるあらゆるタイプのがん、新生物、または悪性腫瘍を指す。例示的ながんには、脳腫瘍、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、頭頸部がん、肝臓がん、腎臓がん、肺がん、非小細胞肺がん、黒色腫、中皮腫、卵巣がん、肉腫、胃がん、子宮がん、および髄芽腫が含まれる。その他の例には、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、横紋筋肉腫、原発性血小板増多症、原発性マクログロブリン血症、原発性脳腫瘍、神経膠芽腫、悪性膵島腫、悪性カルチノイド、膀胱がん、前がん状態の皮膚病変、精巣がん、リンパ腫、甲状腺がん、神経芽細胞腫、食道がん、泌尿生殖器がん、悪性高カルシウム血症、子宮内膜がん、副腎皮質がん、膵臓内分泌部および膵臓外分泌部の腫瘍、および前立腺がんが含まれる。
【0013】
本明細書において使用される「抗体」という用語は、特定のエピトープに結合する任意の免疫グロブリンまたはインタクトな分子、ならびにそのフラグメントを指す。そのような抗体には、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、一本鎖、Fab、Fab’、F(ab)’フラグメントおよび/または抗体全体のF(v)部分、およびそれらのバリアントが含まれるが、これらに限定はされない。IgA、IgD、IgE、IgG、IgMを含むすべてのアイソタイプがこの用語に包含される。
【0014】
インタクトな「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互に結合した少なくとも2本の重鎖(H)と2本の軽鎖(L)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHと略される)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2およびCH3の3つのドメインから構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVLと略される)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、CLという1つのドメインから構成される。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化でき、そこにはフレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が散在している。各VHおよびVLは、3つのCDRと4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシル末端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置されている。重鎖および軽鎖の可変領域には、抗原と相互作用する結合ドメインが含まれている。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(Clq)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を仲介し得る。抗体という用語には、結合能力を保持するインタクトな抗体の抗原結合部分が含まれる。結合の例には、(i)VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価のフラグメントであるFabフラグメント、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド結合によって結合された2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメントであるF(ab’)2フラグメント、(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント、(iv)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.,Nature,341:544-546(1989))、ならびに(vi)単利された相補性決定領域(CDR)が含まれる。
【0015】
「CDR」という用語は、主に抗原結合に寄与する抗体の可変ドメイン内の6つの超可変領域のうちの1つを指す。6つのCDRについて最も一般的に使われている定義の一つは、Kabat E.A.et al.,(1991)Sequences of proteins of immunological interest.NIH Publication 91-3242によって規定されたものである。
【0016】
本明細書において使用される「一本鎖抗体」または「一本鎖Fv(scFv)」という用語は、Fvフラグメントの2つのドメインであるVLおよびVHの抗体融合分子を指す。Fvフラグメントの2つのドメインであるVLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされているが、それらは、組換え法を用いて、VLおよびVH領域が対になって一価の分子を形成する単一タンパク質鎖として作製することを可能にする合成リンカーによって連結され得る(単鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al.,Science,242:423-426(1988);およびHuston et al.,Proc Natl Acad Sci USA,85:5879-5883(1988)を参照)。このような単鎖抗体は、「抗体」フラグメントという用語への参照によって含まれ、組み換え技術またはインタクトな抗体の酵素的または化学的切断によって調製され得る。
【0017】
本明細書において提供されるものは、配列番号1を含む重鎖および配列番号2を含む軽鎖を含む抗体を含む容器である。場合により、容器は、抗体を含む医薬組成物を含む。場合により、容器は、治療上有効な量の抗体を含む。場合により、容器は、ボトルまたはバイアルである。場合により、容器は、ガラスまたはポリエチレンテレフタレートG(PETG)で作製され得る。場合により、容器は、ガラスバイアルまたはPETGバイアルである。場合により、容器はバイアルであり、バイアルは5mg/mlから15mg/mlの抗体を含む。
【0018】
提供される抗体の配列を以下に示す:
配列番号1:
EVQLLESGGDLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYAMSWVRQAPGKGLEWVSAITPSGGSTNYADSVKGRFTISRDNSQNTLYLQMNSLRVEDTAVYICGRVPYRSTWYPLYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0019】
配列番号2:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISNYLAWFQQKPGKAPKSLIYAASSLHSKVPTQFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQYSTYPITFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0020】
場合により、抗体は8.0~9.0の等電点を有する。場合により、抗体は約8.7の等電点を有する。
【0021】
場合により、例えば、ボトルまたはバイアルで、抗体は8から9ug/mlの結合有効濃度(EC50)の中央値を有する。場合により、ガラス容器中では、ガラスバイアル中の抗体のEC50は8から9ug/mlである。場合により、PETG容器中では、ガラスバイアル中の抗体のEC50は9から12ug/mlである。場合により、抗体のEC50値は、実施例に記載されている条件を用いて決定された値である。換言すれば、抗体は、以下の実施例に記載されている条件下で、9から12ug/mlのEC50値を有し得る。
【0022】
配列番号1を含む重鎖および配列番号2を含む軽鎖を含む本明細書において提供される抗体は、プリツムマブと呼ばれることもあり、血液脳関門を通過する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第11,028,155号を参照。さらに、実施例に記載されているように、本抗体はビメンチンと結合する。場合により、ビメンチンはがん細胞の表面に位置するか、またはがん細胞によって分泌されてがん細胞の外部に位置する。場合により、がんは脳腫瘍である。
【0023】
抗体を含む容器は、長期間にわたって保存され得る。場合により、期間は3、6、9、12、15、18、21、もしくは24ヶ月またはそれ以上である。場合により、抗体は-60℃以下の温度で保存され得る。場合により、抗体は3回の凍結/融解サイクルにわたってその活性を維持する。
【0024】
以下に説明するように、抗体は薬剤にコンジュゲートされ得る。場合により、薬剤は治療薬または診断薬である。場合により、治療薬は化学療法剤である。場合により、診断薬は蛍光剤、放射性薬剤または化学発光剤である。
【0025】
また、本明細書に記載の容器、例えばボトルまたはバイアルからの本明細書に記載の抗体を対象に投与し、それにより血液脳関門を超えて抗体を送達することを含む、血液脳関門を超えて抗体を送達する方法も提供される。場合により、容器は、ガラスまたはPETG容器である。
【0026】
上述のように、本明細書に開示され提供される抗体は、薬剤、例えば、細胞毒素、薬剤(例えば、免疫抑制剤)または放射性毒素などの治療部分にコンジュゲートされ得る。そのようなコンジュゲートは、本明細書では「イムノコンジュゲート」と呼ばれる。
【0027】
本発明の抗体コンジュゲートは、所定の生物学的反応を修飾するために使用されてもよく、薬物部分は古典的な化学療法剤に限定して解釈されるべきものではない。例えば、薬物部分は、所望の生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドでありうる。そのようなタンパク質には、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、またはジフテリア毒素などの酵素活性毒素またはその活性フラグメント;腫瘍壊死因子またはインターフェロン-γなどのタンパク質;または、例えば、リンホカイン、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)、または他の成長因子などの生物学的応答調節因子が含まれる。
【0028】
プリツムマブは血液脳関門を通過することができるため、他の薬剤、例えば、イメージングまたは治療薬を脳または他の腫瘍組織に送達するための送達媒体として使用され得る。よって、重鎖および軽鎖を含む抗体であって、重鎖が配列番号1の配列を含み、軽鎖が配列番号2の配列含む抗体と、1つ以上の薬剤、例えば、イメージング剤または治療薬とを含む組成物が提供される。場合により、薬剤は抗体にコンジュゲートされている。場合により、治療薬は化学療法剤である。場合により、コンジュゲートは、1つ以上の薬剤にコンジュゲートされた本明細書に記載の組換え抗原結合タンパク質を含む。場合により、組成物は、脳への送達のために製剤化される。場合により、組成物は、血液脳関門を通過することができる。場合により、抗体の重鎖は配列番号1を含み、軽鎖は配列番号2を含む。場合により、抗体はプリツムマブである。
【0029】
そのような治療用部分を抗体にコンジュゲートするための技術は周知であり、例えば、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeld et al.(eds.),pp.243-56のAmon et al.,“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”(Alan R.Liss,Inc.1985);Controlled Drug Delivery(2nd Ed.),Robinson et al.(eds.),pp.623-53のHellstrom et al.,“Antibodies For Drug Delivery”(Marcel Dekker,Inc.1987);Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications,Pinchera et al.(eds.),pp.475-506のThorpe,”Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review”(1985);Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwin et al.(eds.),pp.303-16の“Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”(Academic Press 1985)、およびThorpe et al.,“The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates,”Immunol.Rev.,62:119-58(1982)を参照されたい。
【0030】
提供される組成物および方法における使用のために適した治療薬、例えば、提供される抗体にコンジュゲートするための治療薬には、鎮痛剤、麻酔剤、興奮剤、コルチコステロイド、抗コリン剤、抗コリンエステラーゼ、抗けいれん剤、抗腫瘍剤、アロステリック阻害剤、アナボリックステロイド、抗リウマチ剤、精神治療剤、神経遮断剤、抗炎症剤、駆虫剤、抗生物質、抗凝固剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、抗ムスカリン剤、抗マイコバクテリア剤、抗原虫剤、抗ウイルス剤、ドーパミン作動薬、造血剤、免疫剤、ムスカリン剤、プロテアーゼ阻害剤、ビタミン、成長因子、およびホルモンからなる群から選択される治療薬が含まれるが、これらに限定はされない。薬剤および投与量の選択は、治療される所定の疾患に基づいて当業者が容易に決定され得る。
【0031】
本明細書に記載されているように、抗体はイメージング剤に連結またはコンジュゲートされ得る。イメージング剤およびその使用法は既知である。場合により、イメージング剤は「検出可能な部分」であり、これは分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、または他の物理的手段によって検出可能な組成物である。例えば、有用な標識には、32P、蛍光色素、電子密度の高い試薬、酵素(例えば、ELISAで一般的に使用されるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、もしくはハプテン、ならびに、例えば、標的ペプチドと特異的に反応するペプチドもしくは抗体に放射性標識を組み込むことによって検出可能とされ得るタンパク質もしくは他の実体が含まれる。例えば、Hermanson,Bioconjugate Techniques 1996,Academic Press,Inc,San Diegoに記載されている方法を使用して、抗体を標識にコンジュゲートするための当該技術分野で既知の任意の方法が用いられうる。検出可能な部分は、ガンマエミッター、ベータエミッター、およびアルファエミッター、ガンマエミッター、ポジトロンエミッター、X線エミッター、および蛍光エミッターからなる群から選択され得る。適切な蛍光化合物には、フルオレセインナトリウム、フルオレセインイソチオシアネート、フィコエリトリン、テキサスレッドスルホニルクロライド、アロフィコシアニン(APC)、Cy5-PE、CY7-APC、およびカスケードイエローが含まれる。
【0032】
場合により、検出可能な部分は、組織化学的技術、ELISA様アッセイ、共焦点顕微鏡法、蛍光検出法、細胞選別法、核磁気共鳴法、放射免疫シンチグラフィー、X線撮影法、陽電子放射断層撮影法、コンピュータ軸断層撮影法、磁気共鳴画像法、および超音波撮影法を用いて可視化され得る。
【0033】
「標識」または「検出可能な部分」とは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、または他の物理的手段によって検出可能な組成物である。例えば、有用な標識には、32P、蛍光色素、電子密度の高い試薬、酵素(例えば、ELISAで一般的に使用されるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、もしくはハプテン、ならびに、例えば、標的ペプチドと特異的に反応するペプチドもしくは抗体に放射性標識を組み込むことによって検出可能とされ得るタンパク質もしくは他の実体が含まれる。例えば、Hermanson,Bioconjugate Techniques 1996,Academic Press,Inc,San Diegoに記載されている方法を使用して、抗体を標識にコンジュゲートするための当該技術分野で既知の任意の方法が用いられうる。
【0034】
本開示の主題は、本開示において提供される抗体を含む医薬組成物を含む容器を提供する。場合により、本開示に係る抗体は、1つ以上の追加の薬剤、例えば、抗ウイルス剤または抗がん剤または鎮痛剤と共に対象に投与され得る。
【0035】
医薬組成物はまた、抗体または抗原結合タンパク質を投与するための薬学的に許容される担体またはアジュバントも含み得る。場合により、担体は、ヒトにおける使用のために薬学的に許容されるものである。担体またはアジュバントは、それ自体で、組成物を投与される個体に有害な抗体の産生を誘導すべきではなく、毒性を有するべきではない。適切な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、および不活性ウイルス粒子などの大型で代謝の遅い巨大分子であり得る。
【0036】
薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩および硫酸塩などの鉱酸塩、または酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩および安息香酸塩などの有機酸塩が使用され得る。
【0037】
治療用組成物中の薬学的に許容される担体は、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールなどの液体を追加的に含み得る。さらに、湿潤剤または乳化剤またはpH緩衝物質などの補助的な物質が、そのような組成物中に存在し得る。そのような担体は、患者による摂取のために、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリーおよび懸濁液として医薬組成物を製剤化することを可能にする。
【0038】
本開示の主題の組成物は、組成物の調製および投与を容易にするための担体をさらに含みうる。マイクロカプセル、例えば、ミクロスフェアもしくはナノスフェア(Manome et al.(1994)Cancer Res 54:5408-5413;Saltzman & Fung(1997)Adv Drug Deliv Rev 26:209-230)、グリコサミノグリカン(米国特許第6,106,866号)、脂肪酸(米国特許第5,994,392号)、脂肪乳剤(米国特許第5,651,991号)、脂質もしくは脂質誘導体(米国特許第5,786,387号)、コラーゲン(米国特許第5,922,356号)、多糖もしくはその誘導体(米国特許第5,688,931)、ナノサスペンション(米国特許第5,858,410号)、ポリマーミセルもしくはコンジュゲート(Goldman et al.(1997)Cancer Res 57:1447-1451、ならびに米国特許第4,551,482号、5,714,166号、5,510,103号、5,490,840号、および5,855,900号)、ならびにポリソーム(米国特許第5,922,545号)を含む、任意の適切な送達媒体または担体が使用され得るが、これらに限定はされない。
【0039】
抗体配列は、カルボジイミドコンジュゲーション、エステル化、過ヨウ素酸ナトリウム酸化に続く還元的アルキル化、およびグルタルアルデヒド架橋を含むが、これらに限定されない、当該分野で公知の方法を使用して、活性剤または担体にカップリングされ得る(Goldman et al.(1997)Cancer Res.57:1447-1451;Cheng(1996)Hum.Gene Ther.7:275-282;Neri et al.(1997)Nat.Biotechnol.15:1271-1275;Nabel(1997)Vectors for Gene Therapy.In Current Protocols in Human Genetics,John Wiley & Sons,New York;Park et al.(1997)Adv.Pharmacol.40:399-435;Pasqualini et al.(1997)Nat.Biotechnol.15:542-546;Bauminger & Wilchek(1980)Meth.Enzymol.70:151-159;米国特許第6,071,890号;および欧州特許第0439095号)。
【0040】
本発明の治療用組成物は、いくつかの実施形態において、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を含む。適切な製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、殺菌性抗生物質、および製剤を意図されるレシピエントの体液と等張にする溶質を含み得る水性および非水性の無菌注射液;ならびに懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性の無菌懸濁液が含まれる。製剤は、例えば、封をされたアンプルおよびバイアルといった単位用量または複数用量容器に入れられて提示されてもよく、また、使用の直前に無菌液体担体、例えば、注射用水を加えることしか要求されない凍結状態またはフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存され得る。いくつかの例示的な成分は、いくつかの実施形態では0.1から10mg/mlの範囲、いくつかの実施形態では約2.0mg/mlのSDS;および/または、いくつかの実施形態では10から100mg/mlの範囲、いくつかの実施形態では約30mg/mlのマンニトールもしくは別の糖;および/または、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。問題の製剤のタイプを考慮して、当該技術分野で慣用されている他の任意の薬剤が使用され得る。いくつかの実施形態において、担体は薬学的に許容されるものである。いくつかの実施形態において、担体は、ヒトにおける使用のために薬学的に許容されるものである。
【0041】
本開示の医薬組成物は、5.5~8.5、好ましくは6~8、より好ましくは約7のpHを有し得る。pHは、緩衝剤の使用により維持され得る。組成物は、無菌および/またはパイロジェンフリーであり得る。組成物は、ヒトに対して等張性であり得る。本開示の主題の医薬組成物は、密封された容器に入れて供給され得る。
【0042】
医薬組成物は、本明細書に記載の1つ以上の抗体の有効量を含み得る。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、所望の疾患もしくは状態を治療、改善、もしくは防止するのに十分な量、または検出可能な治療効果を示すのに十分な量を含み得る。また、治療効果には身体症状の低減も含まれる。特定の対象に対する正確な有効量は、対象の体格および健康状態、状態の性質および程度、投与のために選択された治療薬または治療薬の組み合わせに応じて異なるであろう。所定の状況に対する有効量は、当業者により行われる日常的な実験によって決定される。
【0043】
本発明の医薬組成物は、投与方法に応じて様々な単位剤形で投与され得る。典型的な抗体医薬組成物の投与量は、当業者によく知られている。そのような投与量は、典型的には助言的なものであり、特定の治療状況または患者の忍容性に応じて調整される。これを達成するのに十分な抗体量が、「治療上有効な量」として定義される。この使用のために有効な投与スケジュールおよび量、すなわち「投与レジメン」は、疾患または状態のステージ、疾患または状態の重症度、患者の一般的な健康状態、患者の身体状態、年齢、活性剤の医薬配合および濃度などを含む様々な要因に依存するであろう。患者に対する投与レジメンを計算する際には、投与の様式も考慮される。また、投与レジメンは、薬物動態、すなわち、医薬組成物の吸収速度、バイオアベイラビリティ、代謝、クリアランスなども考慮に入れる必要がある。例えば、最新のRemington’s;Egleton,Peptides 18:1431-1439,1997;Langer,Science 249:1527-1533,1990を参照されたい。
【0044】
また、本明細書においては、本明細書で提供される容器、例えば、ボトルまたはバイアルからの抗体を対象に投与し、それによって対象におけるビメンチンを発現するがんを治療することを含む、対象におけるビメンチンを発現するがんを治療する方法も提供される。場合により、容器は、ガラスまたはPETG容器である。場合により、脳腫瘍および膵臓がんである。場合により、脳腫瘍は神経膠芽腫である。場合により、対象には、治療上有効な量の組成物が投与される。
【0045】
本発明の目的のために、抗体を含む組成物の治療上有効な量は、約0.05から1500μgのタンパク質、好ましくは約10から1000μgのタンパク質、より好ましくは約30から500μg、最も好ましくは約40から300pg、またはこれらの値の間の任意の整数を含む。例えば、本発明の抗体は、約0.1μgから約200mg、例えば、約0.1μgから約5μg、約5μgから約10μg、約10μgから約25μg、約25μgから約50μg、約50μgから約100μg、約100μgから約500μg、約500μgから約1mg、約1mgから約2mgの用量で対象に投与され得るが、場合により、例えば、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、2ヵ月後、3ヵ月後、6ヵ月後、および/または1年後にブースターが投与されてもよい。特定の患者に対する具体的な投与量レベルは、使用される抗体の活性、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、および排泄速度、薬剤の組み合わせ、および治療中の特定の疾患の重症度を含む様々な要因に依存することが理解される。
【0046】
投与経路には、経口、局所、皮下、筋肉内、静脈内、皮下、皮内、経皮および皮下が含まれるが、これらに限定はされない。投与経路に応じて、1投与あたりの量は、好ましくは約0.001から10ml、より好ましくは約0.01から5ml、そして最も好ましくは約0.1から3mlである。組成物は、対象の年齢、体重および状態、使用される特定の抗体製剤、および投与経路に適したスケジュールで、一定の期間にわたり、単回投与治療または複数回投与治療で投与され得る。
【0047】
また、本明細書では、抗体を含む容器および使用説明書を含むキットも提供される。場合により、容器はラベルを有する。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、および試験管が含まれる。容器は、ガラスまたはPETGで形成されている。容器は、治療用途に有効な、本明細書で提供される抗体を含む組成物を保持する。容器上のラベルは、組成物が特定の治療または非治療の用途のために使用されることを指し示し、また、in vivoまたは in vitroのいずれかでの使用のための指示も指し示し得る。
【0048】
本発明を実施するための具体的な態様の以下の例は、例示のみを目的として提供されるものであり、いかなる意味においても本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0049】
実施例1.保存容器および条件は抗体の活性に影響を与える
抗体プリツムマブを含む市販の保存バイアルが、抗体の効力に影響するかどうかを調べるため、3つの異なる抗体ロットで結合アッセイを行った。第1の原薬(DS)抗体ロットは、(i)20mmクリンプトップ仕上げのWheaton(#223739)透明ガラス血清ボトル(10mlサイズ)(低アルカリホウケイ酸成形ガラス)に10mg/mlの濃度(約4.5ml容量)で、または(ii)ライナー付きスクリューキャップの透明PETG血清バイアル(#1-0456-81P;ThermoFisher Scientific)(5mlサイズ)に10mg/mlの濃度(約4ml容量)で収容されていた。第2のDS抗体ロットは、Nalgene低温貯蔵バイアル(#5000-1020)(1.5mlサイズのポリプロピレン(PP)スクリュートップバイアル)に9.9mg/mlの濃度(1ml容量)で収容されていた。第3の抗体ロットおよび効力アッセイのための参照標準は、ライナー付きスクリューキャップのPETG血清バイアル(#1-0456-81P;ThermoFisher Scientific)中、9.72mg/mlの濃度(4ml容量)である(5mlサイズ;ポリエチレンテレフタレートG(PETG))。
【0050】
PPクライオバイアルに保存された第2の抗体ロットの効力を、透明PETG血清バイアルに保存された第1の抗体ロットと比較した。
図1の結果は、PPクライオバイアルとPETG血清バイアルに保存された原薬(DS)の効力に有意差があることを示している。PETGバイアルの臨床DSのEC50は9.6ug/mlであったのに対し、PPクライオバイアルのEC50は20ug/mlであった。PETG血清バイアルに保存されたDS臨床用ロットの効力(9.6ug/ml)は、ガラス血清容器に保存されたDS臨床用ロットの効力(8.25ug/ml)と同様であった。この結果は、臨床原薬と臨床製剤の間のEC50値の違いが、異なる容器での保存の結果であることを示唆している。PPクライオバイアルに保存された臨床DSロットは弱い効力を示し、ガラス血清容器に保存された製剤原料の効力に対応していない可能性がある。
【0051】
PPクライオバイアルに保存された第3の抗体DSロットおよび参照標準と、PETG血清バイアルに保存されたものとを比較するため、結合力アッセイを実施した。PPクライオバイアルの3つの別個の第3の抗体DSロットとPETG血清バイアルの1つの第3の抗体DSロットにおいて、ELISA結合アッセイを実施した。
図2の結果は、PPクライオバイアルに保存されたDSロットがPETG血清バイアルに保存されたものと同じ効力を示さないことを示している。PPクライオバイアル保存DSロットは、PETG血清バイアルのDSロット(EC50 11ug/ml)と比較して、有意に低い結合を示した(37ug/mlから40ug/mlの範囲のEC50)。
【0052】
結合ELISAアッセイでは、PPクライオバイアルに保存されたDSの臨床ロットとPETG血清バイアルに保存されたDSの臨床ロットとを比較した。これらのサンプル間には有意な力価の差があった。PETG血清バイアルに保存されたDSのEC50値は、ガラス容器に保存された臨床DSロットおよび以前の結合アッセイに使用されたロットDS参照標準について報告されたものと同様であった。PPクライオバイアルに保存された臨床DSとPPクライオバイアルに保存された参照標準DSはいずれも、効力に関して(ガラス血清バイアルに保存された)製剤に対応していない。しかしながら、PETG血清バイアルに保存された臨床DSと毒性学的DSはどちらも、製剤材料と同様なEC50値を示し、効力に関して製剤に対応している。
【0053】
抗体を保存するために使用される容器に加えて、抗体の保存条件および配合も試験した。5℃での製品の保存は抗体の分解をもたらすことが判明した。3回の凍結融解サイクルにわたって-60℃より下の温度で保存しても、分解はもたらされなかった。この抗体は長期保存のために-60℃より下の温度で保存することが推奨/文書化されている。さらに、臨床製品バイアル中の抗体の好ましい濃度および配合は、10mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウムpH7.0(リン酸緩衝生理食塩水(PBS))中、約10mg/mlであると決定された。
【0054】
実施例2.プリツムマブは神経膠腫細胞の細胞表面に特異的に結合し、ビメンチンに対する特異性を示す。
プリツムマブが神経膠腫細胞の表面に結合するかどうかを決定するために、プリツムマブが組換えヒトビメンチンと競合して排除できるかどうかを決定するアッセイを行った。この実験の根拠は、細胞外のビメンチンに対するプリツムマブ抗体の特異性をさらに実証することである。
【0055】
図1および2は、フローサイトメトリー実験の結果を示している。表1は結合競合実験についてまとめたものである。160nMのプリツムマブを45nMの組換えビメンチンと共にインキュベートしても、U251細胞との結合を上回ることはない。しかしながら、160nMのプリツムマブを2.5モル過剰の組換えビメンチン(450nM)と共にインキュベートすると、U251細胞表面へのプリツムマブの結合を阻止することができる。
【0056】
【0057】
結論は、組換えビメンチンが神経膠腫細胞の細胞表面に結合するプリツムマブと競合できるということである。このことはさらに、プリツムマブのビメンチンに対する結合の特異性を実証している。
【0058】
抗体プリツムマブのビメンチンに対する結合親和性を決定するため、Octet HTX を使用して、ヒトビメンチンへの抗体の結合を測定した。結合実験はOctet HTXで25℃において実施した。プリツムマブ(10ug/ml)を抗ヒトFc(AHC)バイオセンサーに負荷した。負荷したセンサーを一連の抗原希釈液(組み換えヒトビメンチン)(300nM開始、1:3下降、7点)に浸した。一価(1:1)モデルを用いて動力学定数を計算した。抗体プリツムマブのビメンチンへの結合親和性は7.55E-9Mであると決定された。
【0059】
【0060】
実施例3.CNS組織の免疫組織化学染色
この実施例の目的は、プリツムマブヒトモノクローナル抗体が、中枢神経系(CNS)新生物、特に多発性膠芽腫および星細胞腫を染色するかどうかを決定することであった。これらは最も一般的で、侵攻性の原発性CNS悪性腫瘍である。そのため、80のヒト組織コアに対して免疫組織化学的染色を行った。70のコアは膠芽腫および星細胞腫の患者由来、10は正常脳由良得のものであった。
【0061】
正常なヒトおよびサルの対象の未染色TMAコアを含むガラススライドを入手した。組織ブロックから、パラフィン切片スライドを切り出し、60度のオーブンで一晩乾燥させた。Dako Target Retrieval Solution,ph 9.0 EDTA(Dako cat #S2367)を用いて、30分間加圧調理を行い、加熱誘導エピトープ回収技術でスライドを脱パラフィンした。その後、スライドをDAKO Autostainer(モデル#S3800)中で3%のH2O2に10分間暴露し、1:10に希釈した一次プリツムマブ抗体に室温で2時間暴露した。次に、スライドをポリマー-西洋わさびペルオキシダーゼ抗ヒトIgG/ウサギ抗体に30分間暴露した後、スライドをDABに10分間暴露し、ヘマトキシリンで1分間対比染色した後、脱水して、カバーガラスを加えた。TMAコアをAperio ST Turboスキャナーでスキャンし、画像へのリンクを組織形態学的検査およびスコアリングのために利用できるようにした。表示ソフトウェアはHistoWiz独自のものである。
【0062】
TMAコアはヒトの脳(CNS)組織由来のものであり、神経膠芽腫、星細胞腫、および正常大脳の例からなる。ヒト神経膠芽腫TMAコアはすべて、核または細胞質のいずれかの陽性を示す。染色の強度にはばらつきがあるが、これは神経膠芽腫のグレードまたはタイプとは関係が無かった。まれな例では、強い細胞質染色がみられた(
図5Aおよび5B参照)。大円形細胞性パターンを有する神経膠芽腫はすべて、中等度の細胞質染色を示した。低グレードの星状細胞腫でも、核の染色が実証された。正常な脳コアは、星状膠細胞の染色を示す。神経細胞は、いくらか顆粒状の細胞質染色を示す。
図6Aおよび6Bを参照。
【0063】
要約すると、プリツムマブはすべての星細胞腫および神経膠芽腫において陽性を示した。染色の強度は、ケースごとにばらつきがある。主な局在は核である。細胞質染色は通常弱いか欠如しているが、1つ例で強い細胞質染色が示された。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1を含む重鎖および配列番号2を含む軽鎖を含む抗体を含む、ガラスまたはポリエチレンテレフタレートG(PETG)のバイアル。
【請求項2】
バイアルがガラスバイアルである、請求項1に記載のバイアル。
【請求項3】
バイアルがPETGバイアルである、請求項1記載のバイアル。
【請求項4】
抗体が8.0~9.0の等電点を有する、請求項
1に記載のバイアル。
【請求項5】
抗体が約8.7の等電点を有する、請求項4に記載のバイアル。
【請求項6】
抗体が血液脳関門を通過することができる、請求項
1に記載のバイアル。
【請求項7】
抗体がビメンチンと結合する、請求項
1に記載のバイアル。
【請求項8】
ビメンチンががん細胞の表面に位置している、請求項7に記載のバイアル。
【請求項9】
ビメンチンががん細胞によって分泌される、請求項7に記載のバイアル。
【請求項10】
がんが脳腫瘍および膵臓がんからなる群から選択される、請求項8または9に記載のバイアル。
【請求項11】
バイアルが5mg/mlから15mg/mlの抗体を含む、請求項
1に記載のバイアル。
【請求項12】
抗体が薬剤にコンジュゲートされている、請求項
1に記載のバイアル。
【請求項13】
薬剤が治療薬または診断薬である、請求項12に記載のバイアル。
【請求項14】
治療薬が化学療法剤である、請求項13に記載のバイアル。
【請求項15】
診断薬が蛍光剤、放射性薬剤または化学発光剤である、請求項13に記載のバイアル。
【請求項16】
バイアルが長期間にわたって保存され得る、請求項
1に記載のバイアル。
【請求項17】
抗体が3回の凍結/融解サイクルにわたってその活性を保持する、請求項
1に記載のバイアル。
【請求項18】
抗体が-60℃より下の温度で保存され得る、請求項
1に記載のバイアル。
【請求項19】
請求項
1に記載のバイアルおよび使用説明書を含む、キット。
【請求項20】
血液脳関門を越えて抗体を送達する方法であって、請求項
1に記載のバイアルからの抗体を対象に投与し、それにより血液脳関門を越えて抗体を送達することを含む、方法。
【請求項21】
請求項
1に記載のバイアルからの抗体を対象に投与し、それにより対象におけるビメンチンを発現するがんを治療することを含む、対象においてビメンチンを発現するがんを治療する方法。
【国際調査報告】