(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ロータを受け取ってクランプするための部品
(51)【国際特許分類】
B23B 31/14 20060101AFI20241122BHJP
B23B 31/16 20060101ALI20241122BHJP
H02K 7/08 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
B23B31/14
B23B31/16 Z
H02K7/08 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525858
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 DE2022100797
(87)【国際公開番号】W WO2023072345
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】102021128423.6
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511040469
【氏名又は名称】シェンク ロテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】ビンサック フォルカー
【テーマコード(参考)】
3C032
5H607
【Fターム(参考)】
3C032GG33
3C032HH06
5H607CC03
5H607DD07
(57)【要約】
ロータ(10)を受け取ってクランプするための部品(1)において、順々に内側に配置された複数のリング(2)を含む、中空空間を取り囲むリングアセンブリ(3)と、リングアセンブリ(3)を半径方向に貫通する接続手段(4)とが設けられ、リング(2)は、接続手段によって互いに相対回転不能に接続される。リングアセンブリ(3)には、中空空間内に突出する少なくとも2つのクランプ要素(6)が取り付けられて、ロータ(10)のための、クランプ面(9)を有するレセプタクルを形成する。リングアセンブリ(3)上には、遠心力補償用の錘(11)も存在する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ(10)を受け取ってクランプするための部品(1)であって、順々に内側に配置された複数のリング(2)を含む、中空空間を取り囲むリングアセンブリ(3)と、前記リングアセンブリ(3)を通って半径方向に延びる接続手段(4)とを備え、前記リング(2)が、前記接続手段(4)によって、互いに相対回転不能に接続され、前記中空空間内に突出する少なくとも2つのクランプ要素(6)が、前記リングアセンブリ(3)に取り付けられると共に、ロータ(10)のための、クランプ面(9)を有するレセプタクルを形成し、遠心力補償用の錘(11)が、前記リングアセンブリ(3)上に存在する、
ことを特徴とする部品(1)。
【請求項2】
前記クランプ要素(6)が、Y字形であり、その2つの脚部(8)で前記ロータ(10)を収容する前記クランプ面(9)を形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の部品(1)。
【請求項3】
前記クランプ要素(6)が、前記接続手段(4)に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の部品(1)。
【請求項4】
直径方向に配置された2つのクランプ要素(6)が、前記リングアセンブリ(3)内に存在する、
ことを特徴とする請求項1から3の1項に記載の部品(1)。
【請求項5】
3つのクランプ要素(6)が、前記リングアセンブリ(3)内に存在し、それらは互いに等間隔で離間している、
ことを特徴とする請求項1から3の1項に記載の部品(1)。
【請求項6】
前記クランプ要素(6)の前記脚部(8)が、凹状のクランプ面(9)を形成する、
ことを特徴とする請求項2から5の1項に記載の部品(1)。
【請求項7】
前記クランプ面(9)が、該クランプ面(9)と前記ロータ面との間の摩擦を高める層で被覆される、
ことを特徴とする請求項1から6の1項に記載の部品(1)。
【請求項8】
前記リング(2)が、前記半径方向に延びる接続手段(4)を通すように互いに同軸上に配置されたボアを有する、
ことを特徴とする請求項1から7の1項に記載の部品(1)。
【請求項9】
前記遠心力補償用の錘(11)が。前記クランプ要素(6)に接続されていない、更なる接続手段(4)上に存在する、
ことを特徴とする請求項1から8の1項に記載の部品(1)。
【請求項10】
前記錘(11)が、前記リングアセンブリ(3)の外周に近い、前記接続手段(4)の一端に存在する、
ことを特徴とする請求項9に記載の部品(1)。
【請求項11】
スペーサ手段(5)が、前記リング(2)間に存在する、
ことを特徴とする請求項1から10の1項に記載の部品(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータを受け取ってクランプするための部品であって、複数のリングを含むリングアセンブリを備え、リングアセンブリにロータを受け取るためのクランプ要素及び遠心力補償用の錘が存在する、部品に関する。
【背景技術】
【0002】
回転体に作用する荷重を測定するために、ロータなどの回転体をその動作速度範囲以上で動作させるスピン試験装置(spin test rigs)が使用される。連続生産では、その後の動作中のバランス変化を伴わないバランス調整が可能であるように設定動作(settling behavior)を行うために、ロータを回転させることが必要な場合もある。また、ロータは、例えば周期的な速度変化又は温度変動を受けることもある。ロータは、シャフトジャーナル(shaft journal)を介して細い弾性シャフト上に懸架して加速させることができる。ロータは、この目的のために遠心シャフトに着脱自在に取り付け可能でなければならない。
【0003】
既知のロータクランプ装置は、ロータ張力に対する遠心力の影響を補償する遠心力セグメントを有する。
【0004】
独国特許第1,552,197号Cには、複数のチャック爪が互いを補完してチャック爪セットを形成する高速回転工具用の遠心チャックが開示されている。遠心チャックは、レバー枢軸を中心に二腕レバー(two-armed lever)として枢動可能な、チャック爪と共に形成される遠心錘(centrifugal weights)を有する。遠心錘は、軸方向に間隔を空けた2つのチャック爪セット間に配置され、それぞれが2つのチャック爪セットの一方のチャック爪と一体に形成されている。チャック爪セットは、その端部間で半径方向外向きに突出してレバー枢動点(lever pivot points)を形成する。
【0005】
米国特許第2,830,822号Aには、ロータの周囲に複数の錘が配置され、従ってロータが回転する際の遠心力の結果として半径方向外向きに移動する遠心チャックが開示されている。錘は、半径方向に移動できるようにロータ上に配置された爪に接続されたリングにも接続されている。遠心力によって錘が半径方向外向きに移動すると、錘に接続されたリングの部品も外向きに押され、これによってリングの中間部分に接続された爪が共に引っ張られるようになる。
【0006】
独国特許第4,220,136号C1には、チャック又はベース本体(base body)、クランプギア、ベースジョー及びトップジョーを含む、回転自在に配向された工具及び/又は加工物をクランプするための工作機械用クランプシステムが開示されている。トップジョーは少なくとも部分的に繊維複合プラスチックから成り、チャック本体、クランプギア、ベースジョー、及びベースジョーとトップジョーとの間の界面は金属材料で形成される。クランプ要素間の繊維複合プラスチック製の包帯(bandage)上には、繊維複合プラスチック製の包帯と共に半径方向に移動可能であって接線方向に固定されるように遠心釣り合い錘が配置される。速度が増加して遠心力が外向きに高まるにつれ、繊維複合プラスチックドラムが外向きに移動する。
【0007】
さらに、独国特許第19,834,739号C1には、多角形のベース本体が弾性的に円形に形成されたクランプ装置が記載されている。このプロセスでは、力の作用点(force application points)間に位置するベース本体の領域が、マウントが広がって丸いシャフトを嵌合できるように変形する。ベース本体に作用する半径方向力が減少又は消失すると、ベース本体はその弾性特性によって直ぐに元の多角形に戻り、シャフトはレセプタクル内に固定される。欧州特許第1,669,621号B1は、この教示を採用し、ベース本体に存在する空洞に遠心釣り合い錘を挿入することで、発生する遠心力によって遠心釣り合い錘が外向きに押されるようにしている。これにより、中間域が内向きに曲がってシャフトに対するクランプ力が増す。
【0008】
独国特許第907,233号Bには、工作機械用の可変直径の管状加工物ホルダが記載されており、ホルダは、保持すべき部品の直径を越えて突出してその円周の一部のみに延びるクランプ面を有し、クランプ面は、加工物との間に位置するホルダの領域の弾性変形により、加工物直径に合わせて調整することができる。
【0009】
独国特許第102,020,113,330号B3には、ロータを収容できるクランプ装置にシャフトを接続することにより、クランプ装置をポット状のハウジングに挿入し、締結手段によってそこに固定できる部品が開示されている。ハウジングの底部には、ハウジングをシャフトに相対回転不能に(in a rotationally fixed manner)接続する接続手段が設けられている。締結手段は、底面に少なくとも1つの凹部を有し、この底面が特定の領域のみにおいて外側ケーシング表面に載るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許第1,552,197号明細書
【特許文献2】米国特許第2,830,822号明細書
【特許文献3】独国特許第4,220,136号明細書
【特許文献4】独国特許第19,834,739号明細書
【特許文献5】欧州特許第1,669,621号明細書
【特許文献6】独国特許第907,233号明細書
【特許文献7】独国特許第102,020,113,330号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
既知のクランプ装置の問題点は、高速によって高遠心力が発生することによりクランプ力が低下する点である。また、クランプ装置の製造及びメンテナンスも高価である。クランプ解除も面倒である。主な不利点は、クランプ装置を適合させることができず、すなわちその設計及び構成に起因して対応する規定のクランプ力を達成できない点である。
【0012】
本発明は、強い遠心力によってロータの張力が損なわれない、調整が容易なロータクランプ装置を提供するという課題に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、請求項1の特徴によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項に記載する。
【0014】
本発明によれば、ロータを受け取ってクランプするための部品であって、順々に内側に配置された(lying one inside the other)複数のリングを含む、中空空間を取り囲むリングアセンブリと、リングアセンブリを通って半径方向に延びる接続手段とを備え、リングが接続手段によって互いに相対回転不能に接続され、リングアセンブリに、中空空間内に突出する少なくとも2つのクランプ要素が取り付けられて、ロータのための、クランプ面を有するレセプタクルを形成し、リングアセンブリ上に遠心力補償用の錘が存在する、部品を提供することによって上記課題が解決される。リングアセンブリのリングは、基本的に引張荷重下ではほぼ剛性である板ばねのように挙動する。この結果、遠心力セグメントとして作用する錘が外向きに移動すると、クランプ要素が内向きに引っ張られる。すなわち、高遠心力によってクランプ力が悪影響を受け取ることはない。この部品の主な利点は、その設計に起因して、例えばリングの数を変化させることによってリングアセンブリの柔軟性又は弾性を変化させることなどにより、異なるタイプのクランプ作業に容易に適応できる点である。これにより、異なるクランプ力及び適合すべき動作速度のためのソリューションが可能になる。とりわけ、高速を実現することができる。
【0015】
ロータをクランプするには、部品、とりわけ錘に外圧を加えることで、遠心力セグメントが内向きに移動してクランプ要素が外向きに移動するようにする。これにより、素早く容易なクランプ解除が可能になる。
【0016】
この部品は、クランプすべきロータが自動的にクランプ及びクランプ解除される、完全に自動化されたカップリング装置の一部であることができる。この部品は、スピン試験装置においてロータをクランプするために使用することもできる。
【0017】
1つの実施形態では、クランプ要素がY字形であり、その2つの脚部でロータを収容するクランプ面を形成することができる。従って、クランプ要素は、安価に製造できる単純な構造を有する。クランプ要素は、1又は2以上のパーツで設計することができ、軽量化のために中空空間を有することができる。クランプ要素の一体部品設計には製造上の利点があるのに対し、複数部品設計には組み立て及びメンテナンス上の利点がある。
【0018】
ロータに特化したクランプ部品を形成することも可能と考えられる。これにより、非円形形状をクランプすることもできる。例えば、成形されたクランプ片で歯車形状をクランプすることができる。これによって応用範囲が広がるとともに、伝達可能なトルクも高まる。
【0019】
クランプ要素が接続手段に、とりわけ接続手段によって形成される接続点に取り付けられるようにすることもできる。接続手段は、例えばねじ/ナット接続、リベット又はボルトとして設計して、リングアセンブリに半径方向に通すことができる。本発明では、接続手段が、リングを互いに相対回転不能に接続する役割を果たす。接続手段は、リングを半径方向に貫通して回転不能に接続する材料ロック接続の形態であることもできる。
【0020】
クランプ要素は、適切な締結手段を使用して接続手段のレセプタクル又は接続点に取り付けることができる。例えば、接続手段間、とりわけ接続点とクランプ要素との間には、クランプ要素をリングアセンブリに可逆的に取り付けることができる一方で高速に耐えることができるように、ねじ接続、さね継ぎ接続(tongue and groove connection)、蟻継ぎ接続(dovetail connection)、その他の差し込み式接続(plug-in connection)、又はこれらの組み合わせを設けることができる。これにより、部品のメンテナンスが単純になる。この理由は、必要に応じてクランプ要素を容易に交換できるからである。
【0021】
ロータは、リングアセンブリ内に直径方向に(diametrically)配置された2つのクランプ要素によってクランプすることができる。これにより、円筒形設計から逸脱したロータのクランプが容易になる。しかしながら、リングアセンブリ内に等間隔で配置された3つのクランプ要素を有することも可能である。この設計は、重いロータをクランプする際に特に有利である。
【0022】
ロータ又はそのシャフトジャーナルに最良にトルクを伝達するために、クランプ要素の脚部は、ロータのシャフトジャーナルの広い表面を包み込む凹状のクランプ面を形成するように意図される。
【0023】
1つの実施形態では、クランプ面が、クランプ面とロータ面との間の摩擦を高める層で被覆される。これによってトルクの伝達が向上する。さらに、この層は容易に除去することができ、従って収容すべきロータの直径に適合することができる。必要であれば、ロータをクランプする前に特定の領域で層を除去することもできる。
【0024】
接続手段をリングに通し易くするために、リングは、半径方向に延びる接続手段が通過する同軸ボアを有することができる。これらのボアは、接続手段を伴わずにリングを互いに接続できるように、後続のボアに係合するカラーを有することができる。また、ボアは、接続手段の対応する雄ねじと相互作用する雌ねじを有することができる。接続手段は、リングを半径方向に貫通する材料ロック接続の形態であることもできる。この実施形態では、ボアを省略することができる。
【0025】
リングアセンブリ上、とりわけその外周には、遠心力補償用の錘が存在する。1つの実施形態では、錘がリングアセンブリの外周上又はそれに近い接続手段又は接続点の一端に有利に存在するように、クランプ要素に接続されていないさらなる接続手段、又は接続手段によって形成される接続点に錘を取り付けることが意図される。この目的のために、錘は、例えば接続手段をリングとの係合前に案内する皿穴(counter sunk bore)を有することができる。
【0026】
リング間にはスペーサ手段が存在することができる。1つの実施形態では、スペーサ手段がボアを有し、これらのボアがリングのボアと同心上にくるように位置合わせされる。これらのスペーサ手段によってリング間の距離が一定に保たれ、接続手段又はリングに作用する力によってリングが損傷することがない。スペーサは、2つのリング間に金属板の形態で配置することができ、好ましくは円周上に複数配置することができる。凹面及び反対側の凸面を有するスペーサ手段により、適合度を高めることができる。
【0027】
高精度要件では、アセンブリ一式を装置内のクランプ位置に予め配置し、ユニット一式を好適なクランプ面上に研磨することができる。これにより、クランプ装置を正確に動作位置に導くことができる。このプロセスにより、個々の部品の製造上の不正確さを補償することができる。
【0028】
以下、図面に示す本発明の実施形態を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】ロータが取り付けられた部品の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、ロータが取り付けられた部品の実施形態の断面図であり、
図2は、
図1に示す部品の断面図である。部品1は、順々に内側に配置された異なる直径の複数のリング2を有し、従ってリングアセンブリ3を形成する。リング2は、例えば金属又はプラスチック、とりわけ繊維強化プラスチックで形成することができ、中空シリンダーとして設計することができる。リング2の厚みは、全てのリング2で同じであることができる。リング2の数は、クランプ作業に応じて様々であることができる。
【0031】
リング2は、図示していないボアを有することができ、これらは互いに同軸上に配置されて半径方向に延びる通路を形成し、そこに接続手段4を挿入し又は通すことができる。リング2間の、通路を形成するボアの周囲には、やはり接続手段4を通すためのボアを有することができるスペーサ手段5を配置することができる。スペーサ手段5のボアは、リング2の接続をより安定させるために雌ねじを有することができる。スペーサ手段5の厚みは、必要に応じてリングアセンブリ3の所望の厚みに適合させることができる。また、スペーサ手段5がそれぞれ凸状及び凹状の側面を有することも有利である。例えば、スペーサ手段5の材料としては、金属、プラスチック、又はこれらの組み合わせを使用することができる。
【0032】
接続手段4は、通路を通じて案内されてリング2が回転しないように互いに接続される、ねじ/ナット接続、リベット又はボルトとして設計することができる。接続手段4は、例えば接着、はんだ付け又は溶接による接続が可能であるように、材料ロック接続(material-locking connection)として設計することもできる。
【0033】
少なくとも2つの接続手段4上には、基部7及び2つの脚部8を有するY字型クランプ要素6が配置される。基部7は、例えばねじ接続を介して接続手段4又はリングアセンブリ3に接続することができるが、例えばメンテナンス中にクランプ要素6を交換できるように、プラグイン接続又はこれらの組み合わせを設けることもできる。Y字型クランプ要素6の2つの脚部8は、それぞれロータ10を受け取るための凹状クランプ面9を形成する。2つのクランプ要素6をリングアセンブリ3内で直径方向に向かい合わせることができる。一方で、3つのクランプ要素6をリングアセンブリ3内で互いに120°の角度などで等間隔で配置することも好ましいと考えられる。クランプ面9を形成する隣接するクランプ要素6の脚部8間には自由空間が有利に存在し、この自由空間はクランプ要素6の設計に応じて小さく又は大きくすることができる。クランプ要素6は、金属又は繊維強化プラスチックで形成することができ、軽量化のために1又は2以上の空洞を有することができる。また、クランプ面9とロータ面との間の摩擦を増大させてトルクの伝達を改善する層でクランプ面9をコーティングすることも有利と考えられる。
【0034】
クランプ要素6が取り付けられておらず接続手段5によって形成されるリング2の他の接続点には、接続手段4に可逆的に取り付けることができる、例えば金属部品の形態の錘11が設けられる。錘11は、例えば接続手段4をリング2のボア内に案内する皿穴を有することにより、とりわけリングアセンブリの外周に配置される。クランプ装置に応じて交換可能な異なる錘11を使用することができる。錘11をリングアセンブリ3の内周に取り付けることも可能である。
【0035】
部品1は、部品1とその内部に収容されたロータ10とを駆動シャフトに取り付ける手段を有することができる。また、部品1を別の部品に挿入して、これをさらに駆動シャフトに接続することも可能である。
【0036】
ロータ10が回転すると、クランプ要素6、接続手段4及び錘11が遠心力を発生させる。錘11を伴う接続手段4は、クランプ要素6を伴う接続手段4よりも大きな重量を有利に有して遠心力セグメントとして機能し、クランプ要素6を伴う接続手段4よりも多少大きな遠心力を発生させる。リング2、とりわけリングアセンブリ3は、引張荷重下ではほぼ剛性であるため、遠心力セグメントとして機能する錘11が外向きに移動すると、クランプ要素6が内向きに引っ張られる。これにより、たとえ高速であり、対応して遠心力が強い場合でも、ロータの張力の解除が防がれる。それどころか、本発明による部品1が高速で回転して遠心力が大きくなればなるほど、錘11はますます外向きに引っ張られてクランプ要素6はますます内向きに引っ張られるようになる。接続手段4の質量が同じである場合、回転速度の増加と共にクランプ力がどれほど増加するかは、基本的に錘11の質量及び重心に対するクランプ要素6の質量及び重心の比率によって決まる。
【0037】
ロータ10又はロータ10のシャフトジャーナルを収容するには、錘11を外側からの力で内向きに押す。これによってクランプ要素6が外向きに移動するようになる。クランプ解除は手動で、又は補助装置を使用して行うことができる。この補助装置は、例えば部品1の他の2つの錘11が2つの固定されたストップ内に固定されている間に1つの錘11を押すシリンダーであることができる。しかしながら、錘11を同時に押す3つの同期したシリンダーを使用することもできる。リング2又はリングアセンブリ3は長手方向に剛性があるため、錘11が内向きに移動するとクランプ要素6は外向きに移動する。錘11に対する力の影響がない場合でも、リング2は、ロータ10又はシャフトジャーナが中心に配置されて摩擦係合的にトルクが伝わるように、クランプ要素6をロータ10又はシャフトジャーナルの表面に押し付ける予圧力を生じる。
【0038】
本発明による部品1は、例えばロータをクランプして、とりわけ遠心試験台(centrifugal test stand)の遠心シャフトであるシャフトに着脱可能に固定するために使用することができる。しかしながら、部品1は、ロータ又は回転する加工物をクランプする必要がある他のクランプ作業に使用することもできる。例えば、部品1は、回転機械に挿入してそこに保持することができる。リング2の数が可変であるということは、とりわけ部品1をクランプ作業に容易に適合できるということである。また、部品1のメンテナンス、組み立て及び分解を容易に行うこともできる。
【0039】
部品1の各パーツは、異なる材料で形成して容易に結合することができ、これによって組み立て及びメンテナンスが大幅に単純化される。また、部品1の各パーツは異なる物理的特性を有することができる。例えば、リング2及びクランプ要素6が繊維複合材料で形成され、接続手段4が金属で形成されていれば有利であると考えられる。
【0040】
本発明による部品1の主な利点は、高速化が可能であり、高負荷容量によってクランプオプションが改善され、クランプ要素6の設計時にさらなる柔軟性が可能になる点である。さらに、クランプ力を高めてサイクルタイムを延ばすこともできる。この錘11の設計及び可変数のリング2により、クランプ力が異なるモータ又はロータの形状及び用途に適合できるようになることも示されている。
【符号の説明】
【0041】
1 部品
2 リング
3 リングアセンブリ
4 接続手段
5 スペーサ手段
6 クランプ要素
7 基部
8 脚部
9 クランプ面
10 ロータ
11 錘
【国際調査報告】